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特許7305935レドックスフロー電池用電極およびレドックスフロー電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】レドックスフロー電池用電極およびレドックスフロー電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/18 20060101AFI20230704BHJP
   H01M 4/96 20060101ALI20230704BHJP
   D04H 1/4242 20120101ALI20230704BHJP
   D04H 1/587 20120101ALI20230704BHJP
【FI】
H01M8/18
H01M4/96 B
H01M4/96 H
H01M4/96 M
H01M4/96 Z
D04H1/4242
D04H1/587
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018148140
(22)【出願日】2018-08-07
(65)【公開番号】P2019175833
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2018064025
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大竹 宏明
(72)【発明者】
【氏名】梶原 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】下山 悟
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 史宜
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-000885(JP,A)
【文献】特開2001-028268(JP,A)
【文献】国際公開第2018/016626(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維が樹脂炭化物により結着された炭素繊維不織布からなるレドックスフロー電池用電極であって:
炭素繊維の繊維長が20mm以上、120mm以下であり;
炭素繊維と樹脂炭化物の合計に対する炭素繊維の体積率が0%以上95%未満であり;
密度が0.20g/cm以上であり;
1.0MPaの圧縮応力における圧縮ひずみが20%以上、40%以下である;
レドックスフロー電池用電極。
【請求項2】
密度が0.30g/cm以上である、請求項1に記載のレドックスフロー電池用電極。
【請求項3】
0.40mmを超える厚みを有する、請求項1または2に記載のレドックスフロー電池用電極。
【請求項4】
水/エタノールの等量混合溶液5μLを滴下した際の接触角が10°以下である、請求項1~のいずれかに記載のレドックスフロー電池用電極。
【請求項5】
目付が50~1500g/mである、請求項1~のいずれかに記載のレドックスフロー電池用電極。
【請求項6】
請求項1~のいずれかに記載のレドックスフロー電池用電極を有するレドックスフロー電池。
【請求項7】
フローバイタイプである、請求項に記載のレドックスフロー電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レドックスフロー電池用電極およびレドックスフロー電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レドックスフロー電池は、エネルギー容量の増減が容易である、長寿命である、電池の充電状態が把握できる、といった特徴を有するため、風力発電や太陽光発電などで発電した電力を蓄電・放電して電力系統を安定化させるための蓄電池として普及が期待されている。
【0003】
レドックスフロー電池は、電解液を貯える外部タンクと相対する2枚の集電板、隔膜(イオン交換膜)、および2枚の電極から主に構成される。レドックスフロー電池においては、電極の正極または負極のうち少なくとも一方の極において、活物質を含む電解液を供給し、酸化還元反応によって充電と放電が行われる。活物質としては、例えば、バナジウムやハロゲン、鉄、亜鉛、硫黄、チタン、銅、クロム、マンガン、セリウム、コバルト、リチウム等のイオンや、これらの化合物イオン、非金属のキノン系化合物イオンや芳香族化合物イオンが用いられている。また、電極には、炭素繊維集合体、具体的には炭素単繊維を使ったペーパーやフェルトや、炭素繊維を使ったクロスやニットが使用されている。
【0004】
レドックスフロー電池においては、エネルギー変換効率を高めるため、電池内部抵抗を低減することが求められている。電池内部抵抗は主に隔膜と電極での抵抗に由来する。隔膜での抵抗は、隔膜の薄膜化によって低減することができる。一方、電極での抵抗は、電極内部の導電抵抗、電解液の電極内での通液性、電極と集電板の接触抵抗等から生じる。
【0005】
電極内部の導電抵抗を低減するため、特許文献1においては、樹脂バインダーを用いることで単繊維間を樹脂炭化物で結着し、繊維間の抵抗を低減する手法が検討されている。また、特許文献2のレドックスフロー電池では電極として薄いカーボンペーパーを用いることで、電極内の導電抵抗は小さく抑えていると考えられる。特許文献3においては酸化繊維シートを圧縮処理することにより嵩密度を高くし、厚さ方向の導電抵抗を低減していると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-196071号公報
【文献】特表2015-505148号公報
【文献】国際公開第2002/042534号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されている電極は、樹脂バインダーを用いることで単繊維間を樹脂炭化物で結着しているものの、電極の密度が低いため電極中の繊維同士の接触が少なく、導電抵抗が大きくなる。加えて圧縮ひずみが大きいため、フロー電池のセルにスタッキングする際、電極を構成する繊維が隔膜を突き刺すという短絡が発生しやすい。
【0008】
特許文献2に記載されている電極は薄く、電極内の導電抵抗は小さい。しかし、カーボンペーパーから作られており、圧縮ひずみは小さいものの、炭素繊維長が短いため、繊維端部が多い。この繊維端部は隔膜に刺さりやすく、短絡の原因となりやすい。
【0009】
特許文献3に記載されている電極は樹脂の添加量が少ないため、繊維同士の結着部分が少なく、導電抵抗が大きい。
【0010】
本発明は、電極内部の抵抗を低減するとともに、短絡を抑制して集電板との接触抵抗も低減した、レドックスフロー電池用電極を提供することを課題とする。また、この電極をレドックスフロー電池の電極として用いることで、優れた充放電性能を実現するレドックスフロー電池を提供することをさらなる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明は、炭素繊維が樹脂炭化物により結着された炭素繊維不織布からなるレドックスフロー電池用電極であって、炭素繊維の繊維長が20mm以上、120mm以下であり、炭素繊維と樹脂炭化物の合計に対する炭素繊維の体積率が0%以上95%未満であり、密度が0.20g/cm以上であり、1.0MPaの圧縮応力における圧縮ひずみが20%以上40%以下であるレドックスフロー電池用電極である。また、本発明のレドックスフロー電池は、本発明の電極を用いて構成されたセルを有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、電極内の導電抵抗が軽減され、かつ短絡を抑えることで集電板との接触抵抗も低減できるレドックスフロー電池用電極を得ることができる。また、本発明の電極を用いたレドックスフロー電池は、優れた充放電性能を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書中において「~」はその上限値および下限値を含む範囲を意味する。
【0014】
本発明のレドックスフロー電池用電極(以下、単に「電極」という場合がある)は、炭素繊維が樹脂炭化物により結着された炭素繊維不織布であって、炭素繊維体積率が70%以上95%未満の炭素繊維不織布からなる。この炭素繊維不織布は、単繊維間が、樹脂バインダーが炭化してなる樹脂炭化物で結着されている。樹脂炭化物により炭素繊維が結着されていると、炭素繊維同士の接点で接触面積が大きくなり、優れた導電性と熱伝導性が得られる。このようなバインダーを付与する方法としては、炭化処理後の炭素繊維不織布にバインダー溶液を含浸またはスプレーし、不活性雰囲気下で再度加熱処理してバインダーを炭化する方法が挙げられる。この場合、バインダーとしては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂といった熱硬化性樹脂を用いることができ、中でも、炭化収率が高い点でフェノール樹脂が特に好ましい。また、熱可塑性樹脂を炭素繊維前駆体不織布に混綿しておく方法も好ましい。また、本発明の電極は炭素繊維と樹脂炭化物のみからなるものでもよいが、カーボン粒子等の導電助剤等を電極としての機能を阻害しない範囲で付加的に含むものであってもよい。
【0015】
本発明の電極は、炭素繊維と樹脂炭化物の合計に対する炭素繊維の体積率(以下、単に「炭素繊維体積率」という)が70%以上95%未満である。炭素繊維体積率は、具体的には後述する測定例2に記載の方法にて測定される。炭素繊維体積率が低すぎると、樹脂炭化物が炭素繊維表面を覆うことで炭素繊維表面の反応サイトが減少し、電池内部抵抗が大きくなる。加えて、炭素繊維間で凝集した樹脂塊は、スタッキングの際の電極圧縮時に隔膜に局所的な強い圧力を与え、短絡の発生原因となるため、炭素繊維体積率は80%以上がより好ましく、85%以上がさらに好ましい。一方炭素繊維体積率が高すぎると繊維同士の結着部分が少ないため、導電抵抗が大きくなる。そのため、炭素繊維体積率は95%以下が好ましく、92%以下がさらに好ましい。
【0016】
炭素繊維不織布とは、一般には繊維長15mm~152mmの炭素繊維からなる乾式不織布である。炭素繊維不織布を構成する炭素繊維の繊維長は20mm以上が好ましく、30mm以上がより好ましい。長いほど繊維端が少なくなるため隔膜への突き刺しが生じにくいためである。また、120mm以下が好ましく、100mm以下がより好ましい。長すぎると工程通過性が悪くなり、生産性が下がるためである。
【0017】
このような炭素繊維不織布は、炭素繊維前駆体繊維を15mm~152mmにカットした後ウェブ状に加工し、さらにニードルパンチやウォータジェット加工で繊維同士を交絡させること、繊維同士を加熱して接着させること、および繊維同士をバインダーで接着させることにより得られる炭素繊維前駆体繊維不織布を炭化して得られる。炭素繊維前駆体繊維としては、レーヨン繊維、アクリル繊維、リグニン繊維などが挙げられるが、機械強度やコストの観点からアクリル繊維(ポリアクリロニトリル系繊維)が好ましい。また、炭素繊維前駆体繊維として、アクリル繊維を空気中200~300℃で熱処理(耐炎化処理)することで得られる耐炎糸を用いてもよい。耐炎糸を用いない場合には、炭素繊維前駆体繊維を不織布に形成した後に耐炎化処理を行うことが好ましい。
【0018】
また、レドックスフロー電池用電極としては、電解液が電極となる炭素繊維の表面に対して十分接触しやすい必要がある。表面への接触が容易かどうかは、例えば、電解液をモデルとした水/エタノールの等量混合溶液5μLを静置した電極上に滴下した時の接触角で判断することができ、当該接触角が10°以下であることが好ましい。接触角は自動接触角計を用いて測定する。具体的には、電極を装置ステージに固定し、混合溶液を電極に着滴させ、1秒後に断面から液滴を観察し、電極と液滴の接する点から液体の表面に接線を引いたときに接線と固体表面のなす角度を接触角とする。
【0019】
このような接触角を達成するために、炭素繊維の表面を改質して、電解液の濡れ性を向上させても良い。この場合の炭素繊維表面の改質方法としては、空気酸化や電解酸化がプロセス性およびコストの点で優れ、好ましく用いることができる。これら熱処理の温度や炭素繊維表面の改質は、電池性能や耐久性の観点から適宜設定される。
【0020】
本発明のレドックスフロー電池用電極の目付は、50~1500g/mが好ましく、200~1000g/mがより好ましい。50g/mを下回ると電極の表面積が不足しやすく、1500g/mを超えると、生産性が低下するためである。
【0021】
本発明のレドックスフロー電池用電極は、0.40mmを超える厚みを有することが好ましい。厚みが0.40mm以下であると電解液の通液抵抗が大きくなり易い。電極の厚みは0.50mm以上が好ましく、0.60mmを以上がより好ましい。電極の厚みの上限は特に限定されないが、厚すぎると導電抵抗が大きくなりやすいため、10.0mm以下であることが好ましい。なお、本明細書における電極の厚みとは、φ10mm以上の面積を、面圧0.088MPaで加圧した状態で測定した厚みである。
【0022】
本発明のレドックスフロー電池用電極は、0.20g/cm以上の密度を有する。密度が高いと高い導電性が得られるとともに、セル内の電極量を増やすことができるため好ましい。加えて、密度が高いほど短絡が発生しにくくなる。短絡はスタッキング時の圧縮ひずみの絶対量が小さいほど発生しにくく、密度が高い電極では圧縮ひずみが小さくなる。そのため密度は0.30g/cm以上がより好ましく、0.40g/cm以上がさらに好ましい。
【0023】
本発明のレドックスフロー電池用電極は、1.0MPaの圧縮応力における圧縮ひずみ(以下、単に「圧縮ひずみ」という)が40%以下である。圧縮ひずみは30%以下が好ましく、25%以下がより好ましい。圧縮ひずみが小さいと、同じ厚みで圧縮ひずみが大きいものよりも変位が小さくなり、隔膜の突き刺しを生じにくいためである。なお、上述の厚みが薄いほど同じ圧縮ひずみでも変位量が小さくなるため、隔膜の突き刺しを生じ難い。一方、圧縮ひずみが小さすぎると他部材と組み合わせてスタックした際に電極の厚み変化が小さくなり、電極と他部材との接触が悪くなって接触抵抗が大きくなるため、圧縮ひずみは5%以上であることが好ましい。加えて、圧縮ひずみが小さい電極は柔軟性が小さく、スタッキング時に電極に大きな圧力がかかると電極内部の構造が壊れて電解液の流れを阻害するため、20%以上がさらに好ましい。圧縮ひずみは、後述の電極密度と結着材量、結着材の付着状態を制御することにより制御できる。
【0024】
本発明のレドックスフロー電池用電極は、フロースルータイプとフローバイタイプのいずれのセルでも使用することができるが、フローバイタイプで本発明の電極は大きな効果が得られる。フローバイタイプとは、イオン交換膜と、溝を有する集電板に挟まれた電極に、集電板の溝から電解液を供給して通液させる方式をいう。フローバイタイプのレドックスフロー電池は、集電板の溝から溝へ電解液を移動させるため、特に電極を厚くすると、厚み方向へ十分に電解液が移動しにくく、本発明の電極のように高密度にすることで、厚みを増すことなくセル内の電極量を増やす効果が顕著に得られる。フローバイタイプのレドックスフロー電池で使用する溝を有する集電板の、溝の形状はパラレル、カラム、サーペンタイン、櫛歯型等、レドックスフロー電池または固体高分子形燃料電池で知られる形状を用いることができる。
【実施例
【0025】
[測定例1]電極の厚みおよび密度
厚み測定装置(PEACOCK(登録商標))、尾崎製作所製)を用いて、測定端子部に面圧0.088MPaで加圧した状態で、φ10mm端子で試料の9点を測定した平均値を厚みとし、電極の重量、面積から密度を算出した。
【0026】
[測定例2]炭素繊維体積率
X線CT観察装置(TDM1000 H-II、ヤマト科学)を用いて炭素繊維不織布を観察し、炭素繊維と樹脂炭化物の合計に対する炭素繊維の体積率を測定した。CT観察による画像はノイズを含むため、繊維部あるいは樹脂炭化物部(以下、固体部と呼称)と空隙部の境界が明瞭ではない。そこで、ノイズ除去および明瞭化を目的とし、画像処理ソフトPhotoShop(登録商標)(Adobe社製)を用いて以下に示す画像操作を行った。
(1)明度・彩度の調節による固体部と空隙部の明確化
(2)二値化処理による固体部(白)・繊維(黒)の分離
(3)ノイズ成分の除去
(4)白黒の反転操作(固体部を黒へ、空隙部を白へ)
上記操作に用いる条件は、CT画像の明度・輝度に応じて適宜変更する必要があり、上記の一連の操作によって、CT画像から電極のイメージベースドモデルを作製することができる。
【0027】
次に炭素繊維不織布中の固体部に内接する仮想球を、直径の大きい順に逐次配置し、樹脂炭化物部とみなす領域の内接球の直径が、繊維部とみなす領域の内接球の直径よりも小さいことを考慮し、測定した内接球の直径に閾値を設けて両者を区別した。本実施例においては、直径6μmを、繊維部と樹脂炭化物部を判別するための内接球直径の閾値とし、直径6μm以上の内接球を繊維部の体積、直径6μm未満の内接球を樹脂炭化物の体積とみなした。炭素繊維体積率は以下の式を用いて算出した。
炭素繊維体積率(%)=100×A/(A+B)
A:直径6μm以上の仮想球の体積、B:直径6μm未満の仮想球の体積
なお、炭素繊維と樹脂炭化物以外にカーボン粒子等の導電助剤を含む場合においても、本発明においては上記の算出方法において算出された数値を炭素繊維体積率とみなす。
【0028】
[測定例3]圧縮ひずみ
引張試験機(オートグラフタイプ、島津製作所製)を用いて、30mm以上×30mm以上の平滑な金属ブロックで30mm×30mmのサンプルを加圧し、1.0MPa加圧した際の厚みを測定した。1.0MPaの圧縮応力における圧縮ひずみは以下の式により算出した。
圧縮ひずみ(%)=100×(0.088MPa加圧時の厚み-1.0MPa加圧時の厚み)/(0.088MPa加圧時の厚み)
[測定例4]導電抵抗
電極の面直方向の電気抵抗は、2.23mm×2.23mmにカットした電極を2枚の金メッキ板の間に挟んで1.0MPaの一様な面圧をかけたとき、1.0Aの電流を流して、電気抵抗を測定して面積をかけて求めた。
【0029】
[測定例5]短絡電流密度
高分子電解質膜“Nafion”(登録商標)NR212(DuPont社製)(膜厚50μm)の両面を、作製した電極で挟み込んだ。ここで、電極は1辺4cmの正方形、高分子電解質膜は1辺6cm以上の正方形として、高分子電解質膜の各辺と電極の各辺とを平行にして、高分子電解質膜の中心と電極の中心とが一致するように重ねた。重ねた高分子電解質膜と電極を、金メッキしたステンレスブロック電極2個で挟み(挟む面は1辺3cmの正方形)、電極の9cmの面積に圧力が1MPaとなるように加圧した。この際、ステンレスブロック電極の挟む面の各辺と電極の各辺とを平行にして、ステンレスブロック電極の中心と電極の中心とが一致するように挟んだ。デジタルマルチメーター(KEITHLEY Model196 SYSTEM DMM)を用いて金メッキしたステンレスブロック電極間に2Vの直流電圧を印加し、電極間の電流を測定し、得られた値を短絡電流とした。そして、電極に加圧印加している面積9cmで前記短絡電流を除して短絡電流密度とした。
【0030】
[実施例1]
ポリアクリロニトリル繊維の耐炎糸のけん縮糸を数平均繊維長51mmに切断した後、カード、クロスレヤーでシート化した後、針密度500本/cmのニードルパンチを行って見かけ密度が0.10g/cmの炭素繊維前駆体繊維不織布を得た。フェノール樹脂7重量%、アセトン93重量%を混合した溶液を作成し、該不織布を浸漬後、マングルで絞り、100℃で5分間乾燥させ、フェノール樹脂が添着した不織布を得た。
【0031】
この不織布を200℃で5MPaのプレス圧、圧縮時間は3分間として密度を0.68g/cmに調整後、窒素ガス中で2000℃まで昇温し、この温度で1時間保持し炭化を行って炭素繊維不織布を得た。
【0032】
[実施例2]
プレス時に不織布の周りを取り囲むようにスペーサーを設置することで、プレス後の不織布厚みを制御し、密度を0.40g/cmにした以外は実施例1と同様にして炭素繊維不織布を得た。
【0033】
参考例
炭素繊維前駆体繊維不織布をフェノール樹脂重量15%、アセトン85重量%を混合した溶液浸漬後、実施例1と同様にして炭素繊維不織布を得た。
【0034】
[実施例4]
プレス時に不織布の周りを取り囲むようにスペーサーを設置することで、プレス後の不織布厚みを制御し、密度を0.28g/cmにした以外は実施例1と同様にして炭素繊維不織布を得た。
【0035】
[比較例1]
プレス時に不織布の周りを取り囲むようにスペーサーを設置することで、プレス後の不織布厚みを制御し、密度を0.18g/cmにした以外は実施例1と同様にして炭素繊維不織布を得た。
【0036】
[比較例2]
浸漬に使用する混合溶液をフェノール樹脂2重量%、アセトン98重量%にした以外は実施例1と同様にして炭素繊維不織布を得た。
【0037】
各実施例、比較例で作製した電極の評価結果を表1に示す。
【0038】
【表1】