(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】粘着シート、積層体及び積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20230704BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230704BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20230704BHJP
C09J 133/04 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
C09J7/38
B32B27/00 M
C09J11/06
C09J133/04
(21)【出願番号】P 2018170281
(22)【出願日】2018-09-12
【審査請求日】2021-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】黒田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】瀬口 誠司
(72)【発明者】
【氏名】清水 滋呂
(72)【発明者】
【氏名】浅尾 万智
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/204247(WO,A1)
【文献】特開2017-210542(JP,A)
【文献】国際公開第2008/010453(WO,A1)
【文献】特開2007-191671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤組成物を半硬化状態とした粘着剤層を有する粘着シートであって、
前記粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系共重合体、水素引抜型光重合開始剤及び開裂型光重合開始剤を含み、
前記(メタ)アクリル系共重合体の理論ガラス転移温度(Tg)が、-55℃以上-40℃以下であり、
前記粘着剤組成物
は熱硬化型架橋剤を実質的に含まず、
前記粘着剤組成物
は多官能モノマーを実質的に含まず、
前記粘着剤層の引張弾性率をPとし、前記粘着剤層を完全硬化させた後の引張弾性率をQとした場合、
Q/Pの値が、3.0未満である粘着シート。
【請求項2】
前記粘着剤層の半硬化状態のゲル分率が、50%以下である請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記粘着剤層の引張弾性率が、100kPa以上200kPa以下である請求項1
又は2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記水素引抜型光重合開始剤が、ベンゾフェノン系の光重合開始剤である請求項1~
3のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記粘着剤組成物における溶剤の含有量が、0.1質量%以下である請求項1~
4のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量が40万以上100万以下である請求項1~
5のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項7】
前記粘着剤層の破断伸度が1000%以上であり、引張伸び率が2000%時の引張応力もしくは破断応力が0.1N/mm
2以上0.6N/mm
2以下である請求項1~
6のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項8】
光学部材貼合用である請求項1~
7のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の粘着シートの粘着剤層に活性エネルギー線を照射して後硬化させた後硬化後の粘着剤層と、前記後硬化後の粘着剤層の少なくとも一方の面側に光学部材を備える積層体。
【請求項10】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の粘着シートの粘着剤層を光学部材に対して半硬化状態で貼合した後、活性エネルギー線を照射して前記粘着剤層を後硬化させる工程を含む積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘着シート、積層体及び積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野で、液晶ディスプレイ(LCD)などの表示装置や、タッチパネルなどの表示装置と組み合わせて用いられる入力装置が広く用いられるようになってきている。これらの表示装置や入力装置の製造等においては、光学部材を貼り合せる用途に透明な両面粘着シートが使用されており、表示装置と入力装置との貼合にも透明な両面粘着シートが使用されている。
【0003】
粘着シートを形成する粘着剤組成物の重合方法としては、下記のような数通りの重合方法があることが知られている。具体的には、(1)熱による重合、(2)活性エネルギー線による重合、(3)熱(又は活性エネルギー線)による重合をした後に、活性エネルギー線(又は熱)による重合を行う2段重合、(4)活性エネルギー線による重合をした後に、活性エネルギー線による重合を行う2段重合といった方法がある。
【0004】
粘着剤組成物を2段重合により硬化する場合、このような粘着剤組成物は、例えば、熱硬化性および活性エネルギー線硬化性の両方、もしくは2段階の活性エネルギー線硬化性を備える(以下、このような粘着剤組成物を「デュアル硬化型粘着剤組成物」ということがある)。粘着剤組成物が、熱硬化性および活性エネルギー線硬化性の両方を備える粘着剤組成物である場合、被着体との貼合前に、例えば熱硬化のみを行うことで仮接着させることができ、その後、さらに活性エネルギー線により硬化させる(後硬化またはアフターキュアと言われる)ことで被着体に強固に接着できる。
【0005】
例えば、特許文献1には、粘着剤層を有する粘着シートであって、粘着剤層が、(メタ)アクリル酸エステル及び水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマー組成物を塊状重合法により部分重合して得られるシロップ上アクリル樹脂組成物と、多官能性(メタ)アクリレート化合物と、光重合開始剤とを含む無溶剤型硬化性樹脂組成物を活性エネルギー線の照射により硬化して形成した層である、粘着シートが開示されている。ここでは、光重合開始剤としては、開裂型光重合開始剤のみが用いられている。また、特許文献1では、粘着剤層には未反応モノマーを部分的に残存させることで段差追従性等を改善することが検討されている。
【0006】
特許文献2には、(メタ)アクリル系共重合体と、架橋剤と、光重合開始剤とを含有する粘着剤樹脂組成物からなる両面粘着シートが開示されている。ここでは、光架橋前の引張弾性率(X1)と光架橋後の引張弾性率(X2)との比(X1/X2)を3以上としており、これにより、光架橋前の粘着性を高めつつ、光架橋後には十分な硬度を得ることとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2016-117045号
【文献】特開2016-222916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般的に、アフターキュア型の粘着シートにおいては、段差追従性と加工性はトレードオフの関係にあり、その両立は困難であるとされている。すなわち、従来のアフターキュア型の粘着シートにおいて、段差追従性を高めようとした場合、貼合時に粘着剤が意図せずに広がることがあり、貼合時の加工性が劣るという問題があった。
【0009】
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、段差追従性と加工性を兼ね備えた粘着シートを提供することを目的として検討を進めた。
【0010】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、粘着剤組成物を半硬化状態とした粘着剤層を有するアフターキュア型の粘着シートにおいて、粘着剤組成物を、(メタ)アクリル系共重合体及び水素引抜型光重合開始剤を含有するが、熱硬化型架橋剤と多官能モノマーを含有しない構成とし、さらにアフターキュア前後の粘着剤層の引張弾性率の比を所定値未満とすることにより、段差追従性と加工性を兼ね備えた粘着シートが得られることを見出した。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
【0011】
[1] 粘着剤組成物を半硬化状態とした粘着剤層を有する粘着シートであって、
粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系共重合体及び水素引抜型光重合開始剤を含み、
粘着剤組成物における熱硬化型架橋剤の含有量が、0.1質量%以下であり、
粘着剤組成物における多官能モノマーの含有量が、0.1質量%以下であり、
粘着剤層の引張弾性率をPとし、粘着剤層を完全硬化させた後の引張弾性率をQとした場合、
Q/Pの値が、3.0未満である粘着シート。
[2] 粘着剤層の引張弾性率が、100kPa以上200kPa以下である[1]に記載の粘着シート。
[3] 水素引抜型光重合開始剤が、ベンゾフェノン系の光重合開始剤である[1]又は[2]に記載の粘着シート。
[4] 粘着剤層の半硬化状態のゲル分率が、50%以下である[1]~[3]のいずれかに記載の粘着シート。
[5] 粘着剤組成物は、開裂型光重合開始剤をさらに含む[1]~[4]のいずれかに記載の粘着シート。
[6] 粘着剤組成物における溶剤の含有量が、0.1質量%以下である[1]~[5]のいずれかに記載の粘着シート。
[7] (メタ)アクリル系共重合体の理論ガラス転移温度(Tg)が、-55℃以上-40℃以下である[1]~[6]のいずれかに記載の粘着シート。
[8] (メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量が40万以上100万以下である[1]~[7]のいずれかに記載の粘着シート。
[9] 粘着剤層の破断伸度が1000%以上であり、引張伸び率が2000%時の引張応力もしくは破断応力が0.1N/mm2以上0.6N/mm2以下である[1]~[8]のいずれかに記載の粘着シート。
[10] 光学部材貼合用である[1]~[9]のいずれかに記載の粘着シート。
[11] [1]~[10]のいずれかに記載の粘着シートの粘着剤層に活性エネルギー線を照射して後硬化させた後硬化後の粘着剤層と、後硬化後の粘着剤層の少なくとも一方の面側に光学部材を備える積層体。
[12] [1]~[10]のいずれかに記載の粘着シートの粘着剤層を光学部材に対して半硬化状態で貼合した後、活性エネルギー線を照射して粘着剤層を後硬化させる工程を含む積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、段差追従性と加工性を兼ね備えた粘着シートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の剥離シート付き両面粘着シートの構成の一例を表す断面図である。
【
図2】
図2は、積層体の構成の一例を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルの両方を含むことを意味する。
【0015】
(粘着シート)
本発明は、粘着剤組成物を半硬化状態とした粘着剤層を有する粘着シートに関する。粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系共重合体及び水素引抜型光重合開始剤を含む。ここで、粘着剤組成物における熱硬化型架橋剤の含有量は、0.1質量%以下であり、粘着剤組成物における多官能モノマーの含有量は、0.1質量%以下である。また、粘着剤層の引張弾性率をPとし、粘着剤層を完全硬化させた後の引張弾性率をQとした場合、Q/Pの値は、3.0未満である。
【0016】
本発明の粘着シートは、上記構成を有するものであるため、段差追従性と加工性を兼ね備えている。本発明の粘着シートは、後硬化性(光架橋性)を有する粘着シートであり、後硬化前は被着体の段差に隙間なく追従することができる。特に、本発明の粘着シートは、多官能モノマーを含まないため、粘着剤層の段差追従性をより効果的に高めることができる。また、後硬化後は耐候性試験後であってもその段差追従性を保持することができる。例えば、本発明の粘着シートは、貼着部分に粘着剤層の厚みの30%の高さを有する段差に対しても、その段差に隙間なく追従することができる。また、本発明の粘着シートは、高温環境下や紫外線暴露環境下に長時間静置した後であっても優れた段差追従性を発揮することができる。
【0017】
また、本発明の粘着シートは、水素引抜型光重合開始剤を含有するものであり、一方で、熱硬化型架橋剤を実質的に含有しないものであるため、半硬化状態における加工性にも優れている。本明細書において、粘着シートの加工性は、貼合時の粘着剤のはみ出し(ウーズ値)で評価することができる。具体的には、プレス部の温度を25℃に設定し、0.2MPaの圧力で5分間加圧した際の粘着シートの広がり(ウーズ値)が小さい場合に、加工性が良好であると評価できる。剥離シートの各辺における粘着剤層が最も広がっている点との距離(最大距離)を測定し、四辺の平均値をウーズ値とした場合、ウーズ値は1.2mm未満であることが好ましい。
【0018】
さらに、本発明の粘着シートは、熱架橋剤を実質的に含有していないため、粘着シートを形成する際にエージング工程を省略することができる。これにより、粘着シートの製造にかかる時間を短縮することができる。
【0019】
半硬化状態の粘着剤層の引張弾性率をPとし、粘着剤層を完全硬化(光架橋)した後の引張弾性率をQとした場合、Q/Pの値は、3.0未満であればよく、2.8未満であることが好ましく、2.6未満であることがより好ましく、2.4未満であることがさらに好ましい。なお、Q/Pの値の下限値は特に限定されるものではないが、1.0以上であることが好ましい。粘着剤層の光架橋前後の引張弾性率の比を上記範囲内とすることにより、段差追従性と加工性に優れた粘着シートが得られやすくなる。また、粘着剤層の光架橋前後の引張弾性率の比を上記範囲内とすることにより、完全硬化する際に光架橋による収縮ひずみを抑制することができ、これにより耐久性を向上させることができる。
【0020】
半硬化状態の粘着剤層の引張弾性率は、100kPa以上200kPa以下であることが好ましく、120kPa以上180kPa以下であることがより好ましい。ここで、半硬化状態の粘着剤層の引張弾性率は、後述する引張応力の測定において得られる応力-ひずみ曲線(SSカーブ)から算出される値である。具体的には、0%と5%の引張伸び率と応力値から傾きを算出し、引張弾性率とする。
【0021】
後硬化後(完全硬化後)の粘着剤層の引張弾性率は、150kPa以上250kPa以下であることが好ましく、170kPa以上230kPa以下であることがより好ましい。後硬化後(完全硬化後)の粘着剤層の引張弾性率は、半硬化状態の粘着剤層に積算光量が2000mJ/cm2となるように紫外線を照射した後の粘着剤層の引張弾性率である。
【0022】
ここで、半硬化状態の粘着剤層の引張応力は以下のようにして測定される。まず、粘着剤層を縦50mm、横(幅方向)Ammとなるように切り出す。この際、横(幅方向)のAの値は、粘着シートの厚み(mm)×Amm=6mm2となるように決定する。次いで、粘着シートを幅方向に丸め、円の直径が2.8mm、高さ50mmの円柱状サンプルとし、この円柱状サンプルの上端及び下端のそれぞれ10mmまでの領域を、厚み188μm、縦25mm、横50mmのPETフィルム2枚(合計4枚)で挟みこむ。そして、この領域を引張試験機のチャック部分とし、チャック間距離が30mmとなるように固定し、測定温度23℃、相対湿度50%の環境下で引張速度300mm/分の条件で引張伸び率が2000%となるまで引っ張り、引張伸び率が2000%に達する前に破断した場合、該引張伸び率を破断伸度とし、その時の応力値を破断応力とする。なお、引張伸び率が2000%に達しても破断しなかった場合は引張伸び率2000%の応力値を引張応力、破断伸度を2000%以上とする。
なお、後硬化後の粘着剤層の引張伸び率が2000%時の引張応力もしくは破断応力は、粘着剤層に積算光量が2000mJ/cm2となるように紫外線を照射した後に、円柱状サンプルを得て、同様の方法で測定する。
なお、本明細書における引張伸び率とは、以下の式で算出される率である。
引張伸び率(%)=(引張後のチャック間距離-引張前のチャック間距離(30mm))/引張前のチャック間距離(30mm)×100
【0023】
上述したように粘着シートの光架橋前の引張伸び率2000%における引張応力を測定する際には、粘着シートの光架橋前の破断伸度が2000%以上である必要がある。なお、粘着シートの光架橋前の破断伸度が2000%を下回る場合は、上述した引張応力を測定する際、引張伸び率2000%となる前に粘着シートが破断する。この場合、上記測定で得られる応力値は破断応力となる。
【0024】
半硬化状態の粘着剤層の破断伸度は、1000%以上であることが好ましく、1200%以上であることがより好ましく、1500%以上であることがさらに好ましく、2000%以上であることが特に好ましい。
【0025】
半硬化状態の粘着剤層の引張伸び率2000%における引張応力は、0.1N/mm2以上であることが好ましく、0.2N/mm2以上であることがより好ましい。また、半硬化状態の粘着剤層の引張伸び率2000%における引張応力は、0.6N/mm2以下であることが好ましく、0.5N/mm2以下であることがより好ましい。また、引張伸び率2000%となる前に粘着シートが破断場合は、破断応力は、0.1N/mm2以上であることが好ましく、0.2N/mm2以上であることがより好ましい。また、半硬化状態の粘着剤層の破断応力は、0.6N/mm2以下であることが好ましく、0.5N/mm2以下であることがより好ましい。
【0026】
後硬化後(完全硬化後)の粘着剤層の破断応力は、0.1N/mm2以上であることが好ましく、0.2N/mm2以上であることがより好ましい。また、後硬化後(完全硬化後)の粘着剤層の破断応力は、0.6N/mm2以下であることが好ましく、0.5N/mm2以下であることがより好ましい。
【0027】
半硬化状態の粘着剤層における残留モノマー量は、12質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、8質量%以下であることがさらに好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。なお、本発明においては、半硬化状態の粘着剤層における残留モノマー量は、0質量%であってもよい。半硬化状態の粘着剤層における残留モノマー量を上記範囲内とすることにより、加工性を高めることができる。また、半硬化状態の粘着剤層における残留モノマー量を上記範囲内とすることにより、粘着シートを製造する工程にいてモノマー成分が揮発することが抑制され、臭気の発生等を抑制することができる。
【0028】
粘着剤層における残留モノマー量は加熱減量測定法により算出できる。具体的には、10cm角に粘着剤層を切り出し、12cm角、12μm厚のアルミ箔に貼り付ける。その後、135℃のオーブンに投入して加熱し、10分後に取り出す。加熱前後の粘着シートの重量の減少率を計算することで、残留モノマー量の指標とする。
【0029】
半硬化状態の粘着剤層は、光架橋性(光照射による硬化能)を有している。すなわち、半硬化状態の粘着剤層は、光照射前(光架橋前)の柔らかい状態のシートである。具体的には、本明細書では、積算光量が2000mJ/cm2となるように活性エネルギー線を照射することにより、粘着剤層のゲル分率が10質量%以上高まった場合に、照射前の粘着剤層は半硬化状態であると言える。活性エネルギー線を照射する際には、粘着剤層の両表面に光学用透明PETセパレーターを貼合し、一方の光学用透明PETセパレーター側から活性エネルギー線(高圧水銀灯又はメタルハライドランプ)を積算光量が2000mJ/cm2となるように照射する。
【0030】
半硬化状態の粘着剤層のゲル分率は55%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、40%以下であることがさらに好ましく、30%以下であることが特に好ましい。また、粘着剤層の半硬化状態でのゲル分率は、1%以上であることが好ましい。半硬化状態の粘着剤層のゲル分率を上記範囲内とすることにより、段差追従性に優れた粘着シートを得ることができる。
【0031】
粘着剤層のゲル分率は、以下の方法で測定した値である。
まず、粘着シート(粘着剤層)約0.1gをサンプル瓶に採取し、酢酸エチル30mlを加えて24時間振とうする。その後、このサンプル瓶の内容物を150メッシュのステンレス製金網でろ別し、金網上の残留物を100℃で1時間乾燥して乾燥重量W(g)を測定する。得られた乾燥重量から下記式1によりゲル分率を求める。
ゲル分率(質量%)=(乾燥重量W/粘着剤層の採取重量)×100・・・式1
【0032】
後硬化後(完全硬化後)の粘着剤層のゲル分率は50%以上であることが好ましく、55%以上であることがより好ましい。なお、後硬化後(完全硬化後)の粘着シートのゲル分率は、半硬化状態の粘着剤層に積算光量が2000mJ/cm2以上となるように紫外線を照射した後の粘着シートのゲル分率である。
【0033】
粘着剤層の対ガラス粘着力は、後硬化後(完全硬化後)に20.0N/25mm以上となることが好ましく、24.0N/25mm以上となることがより好ましく、25.0N/25mm以上となることがさらに好ましく、27.0N/25mm以上となることが特に好ましい。ここで、粘着剤層の対ガラス粘着力は、JIS Z 0237に準じて引張速度300mm/分で粘着剤層をガラスから180度剥離した際の剥離強度である。
【0034】
本発明の粘着シートの厚みは、5~2000μmであることが好ましく、30~1000μmであることがより好ましく、50~500μmであることがさらに好ましく、70~200μmであることが特に好ましい。粘着シートの厚みを上記範囲内とすることにより、粘着シートをロール形状で巻取ることが容易となり、粘着シートの生産性を向上させることができる。なお、粘着剤層の厚みも上記範囲内であることが好ましい。粘着剤層の厚みを上記範囲内とすることにより、段差追従性と耐久性を十分に高めることができる。また、粘着剤のはみ出しやべたつきを抑制することができ、加工性を高めることができる。
【0035】
本発明の粘着シートは、両面粘着シートであることが好ましい。両面粘着シートは、単層の両面粘着シートであってもよく、粘着剤層を複数積層した多層の両面粘着シートであってもよい。また、両面粘着シートは、基材(好ましくは透明基材)の両面に粘着剤層を備えた両面粘着シートであってもよい。この場合、基材としては、例えば、ポリスチレン、スチレン-アクリル共重合体、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、トリアセチルセルロース等のプラスチックフィルム;反射防止フィルム、電磁波遮蔽フィルム等の光学フィルム等が挙げられる。
【0036】
本発明の粘着シートは、光学部材貼合用の粘着シートであることが好ましい。光学部材としては、タッチパネルや画像表示装置等の光学製品における各構成部材や最表層のカバーレンズに貼合される飛散防止フィルム等を挙げることができる。タッチパネルの構成部材としては、例えば透明樹脂フィルムにITO膜が設けられたITOフィルム、ガラス板の表面にITO膜が設けられたITOガラス、透明樹脂フィルムに導電性ポリマーをコーティングした透明導電性フィルム、ハードコートフィルム、耐指紋性フィルムなどが挙げられる。画像表示装置の構成部材としては、例えば液晶表示装置に用いられる反射防止フィルム、配向フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルムなどが挙げられる。
これらの部材に用いられる材料としては、ガラス、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンナフタレート、シクロオレフィンポリマー、トリアセチルセルロース,ポリイミド、セルロースアシレートなどが挙げられる。
【0037】
(粘着剤組成物)
粘着剤組成物は、上述した半硬化状態の粘着剤層を形成するものである。粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系共重合体及び水素引抜型光重合開始剤を含む。一方、粘着剤組成物は、熱硬化型架橋剤を実質的に含まず、その含有量は0.1質量%以下であり、0.0質量%であることが好ましい。また、粘着剤組成物は、多官能モノマーを実質的に含まず、その含有量は0.1質量%以下であり、0.0質量%であることが好ましい。なお、粘着剤層の全質量に対する熱硬化型架橋剤及び多官能モノマーの含有量もそれぞれ0.1質量%以下である。本発明においては、熱硬化型架橋剤と多官能モノマーの含有量を上記範囲内とすることにより、粘着剤層の段差追従性をより効果的に高めることができる。また、熱硬化型架橋剤の含有量を上記範囲内とすることにより、粘着シートを形成する際にエージング工程を省略することができ、粘着シートの製造にかかる時間を短縮することができる。
【0038】
また、粘着剤組成物は、溶剤を実質的に含まず、その含有量は0.1質量%以下であり、0.0質量%であることが好ましい。なお、粘着剤層の全質量に対する溶剤の含有量も0.1質量%以下である。このように、本発明の粘着剤組成物は無溶剤型であり、このような粘着剤組成物から形成される粘着剤層は無溶剤型粘着剤層であると言える。粘着剤層を無溶剤型粘着剤層とすることにより、環境への付加を低減することができる。
【0039】
((メタ)アクリル系共重合体)
粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系共重合体を含む。(メタ)アクリル系共重合体は、粘着剤組成物に含まれる主ポリマーであり、このようなポリマーをベースポリマーと呼ぶこともある。なお、(メタ)アクリル系共重合体は粘着剤層中にも含まれる。
【0040】
(メタ)アクリル系共重合体は、アクリル単量体単位を有するものであれば特に制限はないが、例えば、非架橋性(メタ)アクリル酸エステル単位(a1)と、架橋性官能基を有するアクリル単量体単位(a2)を含有するものであることが好ましい。(メタ)アクリル系共重合体は、表示装置の視認性を低下させない程度の透明性を有するものが好ましい。なお、本明細書および特許請求の範囲において、「単位」は重合体を構成する繰り返し単位(単量体単位)である。
【0041】
非架橋性(メタ)アクリル酸エステル単位(a1)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する繰り返し単位である。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸n-ウンデシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。これらは1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの中でも、粘着性が高くなることから、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル及び(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルから選ばれる少なくとも1種類は好ましく用いられる。また、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル及び(メタ)アクリル酸n-ブチルから選ばれる少なくとも1種と、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルを組み合わせて用いることも好ましく、(メタ)アクリル酸エチルと(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルを組み合わせて用いることがより好ましい。
【0042】
架橋性官能基を有する(メタ)アクリル単量体単位(a2)としては、ヒドロキシ基含有単量体単位、アミノ基含有単量体単位、グリシジル基含有単量体単位、カルボキシ基含有単量体単位等が挙げられる。これら単量体単位は1種でもよいし、2種以上でもよい。
ヒドロキシ基含有単量体単位は、ヒドロキシ基含有単量体に由来する繰り返し単位である。ヒドロキシ基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(メタ)アクリル酸モノ(ジエチレングリコール)などの(メタ)アクリル酸[(モノ、ジ又はポリ)アルキレングリコール]、(メタ)アクリル酸モノカプロラクトンなどの(メタ)アクリル酸ラクトンが挙げられる。
アミノ基含有単量体単位は、例えば、(メタ)アクリルアミド、アリルアミン等のアミノ基含有単量体に由来する繰り返し単位が挙げられる。
グリシジル基含有単量体単位は、(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル基含有単量体に由来する繰り返し単位が挙げられる。
カルボキシ基含有単量体単位は、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。
【0043】
(メタ)アクリル系共重合体における架橋性官能基を有する(メタ)アクリル単量体単位(a2)の含有量は、(メタ)アクリル系共重合体の全質量に対して、0.01質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル単量体単位(a2)の含有量は、40質量%以下であることが好ましく、35質量%以下がより好ましい。
【0044】
(メタ)アクリル系共重合体は、必要に応じて、他の単量体単位を有してもよい。他の単量体は、上述したアクリル単量体と共重合可能なものであればよく、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、ビニルピロリドン、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン、塩化ビニル、ビニルピリジンなどを挙げることができる。
【0045】
(メタ)アクリル系共重合体における他の単量体単位の含有量は40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。他の単量体単位の含有量が上記下限値以上であれば、凝集力を十分に高めることができ、上記上限値以下であれば、十分な粘着力を確保しやすくなる。
【0046】
(メタ)アクリル系共重合体の理論ガラス転移温度(Tg)は-55℃以上であることが好ましく、-53℃以上であることがより好ましい。また、(メタ)アクリル系共重合体の理論ガラス転移温度(Tg)は-10℃以下であることが好ましく、-20℃以下であることがより好ましく、-30℃以下であることがさらに好ましく、-40℃以下であることが特に好ましい。ここで、理論ガラス転移温度(Tg)とは、下記FOXの式より求められる理論値である。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn・・・ FOXの式
(式中のTgはアクリル系共重合体のガラス転移温度(K:ケルビン)であり、W1,W2・・・Wnはアクリル系共重合体を構成する各モノマーの質量分率であり、Tg1,Tg2・・・Tgnは各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度を表す。)
(メタ)アクリル系共重合体の理論ガラス転移温度(Tg)を上記範囲内とすることにより、粘着シートの加工性をより高めることができる。さらに、(メタ)アクリル系共重合体の理論ガラス転移温度(Tg)を上記範囲内とすることにより、粘着シートの凝集力をより高めることができ、耐久性と粘着性に優れた粘着シートを得ることができる。
【0047】
(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、25万以上であることが好ましく、30万以上であることがより好ましく、35万以上であることがさらに好ましく、40万以上であることが特に好ましい。また、(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、100万以下であることが好ましく、95万以下であることがより好ましく、90万以下であることがさらに好ましい。(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)を上記範囲内とすることにより、粘着シートの加工性をより高めることができる。また、(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)を上記範囲内とすることにより、段差追従性を高めつつ、耐久性を高めることもできる。
【0048】
なお、(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準ポリスチレン換算で求めた値である。
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)の測定条件は以下のとおりである。
溶媒:テトラヒドロフラン
カラム:Shodex KF801、KF803L、KF800L、KF800D(昭和電工(株)製を4本接続して使用した)
カラム温度:40℃
試料濃度:0.5質量%
検出器:RI-2031plus(JASCO製)
ポンプ:RI-2080plus(JASCO製)
流量(流速):0.8ml/min
注入量:10μl
校正曲線:標準ポリスチレンShodex standard ポリスチレン(昭和電工(株)製)Mw=1320~2500000迄の10サンプルによる校正曲線を使用した。
【0049】
(メタ)アクリル系共重合体は、市販のものを用いてもよいし、アクリルモノマーを重合させることによって製造してもよい。(メタ)アクリル系共重合体を重合により製造する場合は、重合方法は通常用いられる重合方法から適宜選択できる。重合方法としては、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法等が挙げられる。
【0050】
(水素引抜型光重合開始剤)
粘着剤組成物は、水素引抜型光重合開始剤を含む。なお、水素引抜型光重合開始剤は、粘着剤層にも含まれる。水素引抜型光重合開始剤は、活性エネルギー線の照射により上述した(メタ)アクリル系共重合体や、(メタ)アクリル系共重合体を構成するモノマーの重合反応を開始させるものである。水素引抜型光重合開始剤は、光励起した開始剤と系中の水素供与体とが励起錯体を形成し、水素供与体の水素を転移させることにより重合を促進する光重合開始剤である。
【0051】
水素引抜型光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、チオキサンソン、2-クロルチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2,4-ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、カンファーキノン、ジベンゾスベロン、2-エチルアンスラキノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ベンジル、9,10-フェナンスレンキノン等を挙げることができる。中でも、水素引抜型光重合開始剤は、ベンゾフェノン系の光重合開始剤であることが好ましく、ベンゾフェノン系の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン及び2,4,6-トリメチルベンゾフェノン等を挙げることができる。
【0052】
粘着剤組成物中の水素引抜型光重合開始剤の含有量は、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、1質量部以上であることがさらに好ましい。また、水素引抜型光重合開始剤の含有量は、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。
【0053】
水素引抜型光重合開始剤は、市販品を使用できる。市販品の例としては、ランブソン社製のSPEEDCURE MBPやESACURE TZT等を挙げることができる。
【0054】
(開裂型光重合開始剤)
粘着剤組成物は、開裂型光重合開始剤をさらに含むことが好ましい。開裂型光重合開始剤は、開始剤自身の単結合を開裂分解してラジカルを発生させることにより重合を促進する光重合開始剤である。
【0055】
開裂型光重合開始剤としては、例えば、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-[4-{4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)ベンジル}フェニル]-2-メチル-プロパン-1-オン、オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン)、フェニルグリオキシリック酸メチル、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドや、それらの誘導体などを挙げることができる。中でも、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系光開始剤が好ましい。
【0056】
粘着剤組成物中の開裂型光重合開始剤の含有量は、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましい。また、開裂型光重合開始剤の含有量は、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、3質量部以下であることがさらに好ましい。
【0057】
開裂型光重合開始剤は、市販品を使用できる。市販品の例としては、IGMレジン社製のIrgacure184やIrgacure819等を挙げることができる。
【0058】
(任意成分)
本発明の粘着シートは、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、粘着剤用の添加剤として公知の成分を挙げることができる。例えば、可塑剤、酸化防止剤、金属腐食防止剤、粘着付与剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系化合物等の光安定剤等の中から必要に応じて選択できる。
【0059】
可塑剤としては、無官能性アクリル重合体を用いることができる。無官能性アクリル重合体とは、アクリレート基以外の官能基を有しないアクリル単量体単位のみからなる重合体、又はアクリレート基以外の官能基を有しないアクリル単量体単位と官能基を有しない非アクリル単量体単位とからなる重合体を意味する。
アクリレート基以外の官能基を有しないアクリル単量体単位としては、例えば非架橋性(メタ)アクリル酸エステル単位と同様のものが挙げられる。
官能基を有しない非アクリル単量体単位としては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、安息香酸ビニルのようなカルボン酸ビニルエステル類やスチレン等が挙げられる。
【0060】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。これら酸化防止剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
金属腐食防止剤としては、ベンゾリアゾール系樹脂を挙げることができる。
粘着付与剤として、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、クマロンインデン系樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂、フェノール系樹脂、石油樹脂などが挙げられる。
シランカップリング剤としては、例えば、メルカプト系シランカップリング剤、(メタ)アクリル系シランカップリング剤、イソシアネート系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、アミノ系シランカップリング剤などが挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物などが挙げられる。
【0061】
(粘着シートの製造方法)
本発明の粘着シートの製造方法は、剥離シート上に上述した粘着剤組成物を塗工して塗膜を形成する工程と、この塗膜に活性エネルギー線を照射して半硬化状態の硬化物とする工程を含むことが好ましい。塗膜に活性エネルギー線を照射することにより、(メタ)アクリル系共重合体および水素引抜型光重合開始剤の反応が進行して半硬化状態の硬化物(粘着剤層)が形成される。
【0062】
粘着剤組成物の塗工は、公知の塗工装置を用いて実施できる。塗工装置としては、例えば、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター等が挙げられる。
【0063】
塗膜に活性エネルギー線を照射する際には、積算光量が500mJ/cm2以上となるように活性エネルギー線を照射することが好ましく、750mJ/cm2以上となるように活性エネルギー線を照射することがより好ましい。また、積算光量が2000mJ/cm2以下となるように活性エネルギー線を照射することが好ましく、1500mJ/cm2以下となるように活性エネルギー線を照射することがより好ましい。なお、塗膜に活性エネルギー線を照射する際には、活性エネルギー線を2段階照射することも好ましい。このような場合、例えば、1段階目では、ブラックライトを用いた照射を行い、2段階目では高圧水銀ランプを用いた照射を行うことが好ましい。1段階目にブラックライトを用いた照射を行う場合、積算光量が100mJ/cm2以上1000mJ/cm2以下となるようにブラックライトを照射することが好ましく、200mJ/cm2以上500mJ/cm2以下となるようにブラックライトを照射することがより好ましい。また、2段階目に高圧水銀ランプを用いた照射を行う場合、積算光量が300mJ/cm2以上1500mJ/cm2以下となるように高圧水銀ランプを照射することが好ましく、500mJ/cm2以上1200mJ/cm2以下となるように高圧水銀ランプを照射することがより好ましい。このような条件で活性エネルギー線を照射することにより、粘着剤層の段差追従性をより効果的に高めることができる。
【0064】
(剥離シート付き粘着シート)
本発明は、上述した粘着シートの両面に剥離シートを備える剥離シート付き粘着シートに関するものであってもよい。
【0065】
図1は、本発明の剥離シート付き粘着シートの一例の断面を表す概略図である。剥離シート付き粘着シート1は、粘着シート11と、その両面に剥離シート12a及び剥離シート12bを備える。粘着シート11は、
図1に示されるような単層の両面粘着シートであってもよく、粘着剤層を複数積層した多層の両面粘着シートであってもよい。また、粘着シート11は、基材(好ましくは透明基材)の両面に粘着剤層を備えた両面粘着シートであってもよい。
【0066】
図1に示されるように粘着シート11の表面は剥離シート12a及び剥離シート12bによって覆われていることが好ましい。剥離シートとしては、剥離シート用基材とこの剥離シート用基材の片面に設けられた剥離剤層とを有する剥離性積層シート、あるいは、低極性基材としてポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。
【0067】
剥離性積層シートにおける剥離シート用基材には、紙類、高分子フィルムが使用される。剥離剤層を構成する剥離剤としては、例えば、汎用の付加型もしくは縮合型のシリコーン系剥離剤や長鎖アルキル基含有化合物が用いられる。特に、反応性が高い付加型シリコーン系剥離剤が好ましく用いられる。
シリコーン系剥離剤としては、具体的には、東レ・ダウコーニングシリコーン社製のBY24-4527、SD-7220等や、信越化学工業(株)製のKS-3600、KS-774、X62-2600などが挙げられる。また、シリコーン系剥離剤中にSiO2単位と(CH3)3SiO1/2単位あるいはCH2=CH(CH3)SiO1/2単位を有する有機珪素化合物であるシリコーンレジンを含有することが好ましい。シリコーンレジンの具体例としては、東レ・ダウコーニングシリコーン社製のBY24-843、SD-7292、SHR-1404等や、信越化学工業(株)製のKS-3800、X92-183等が挙げられる。
剥離性積層シートとして、市販品を用いてもよい。例えば、帝人デュポンフィルム(株)製の離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムである重セパレータフィルムや、帝人デュポンフィルム(株)製の離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムである軽セパレータフィルムを挙げることができる。
【0068】
本発明の粘着シートは、剥離力が互いに異なる1対の剥離シートを有することが好ましい。すなわち、剥離シートは、剥離しやすくするために、剥離シート12aと剥離シート12bとの剥離性を異なるものとすることが好ましい。一方からの剥離性と他方からの剥離性とが異なると、剥離性が高い方の剥離シートだけを先に剥離することが容易となる。その場合、貼合方法や貼合順序に応じて剥離シート12aと剥離シート12bの剥離性を調整すればよい。
【0069】
(積層体の製造方法)
積層体の製造方法は、上述した粘着シートの粘着剤層を被着体に対して半硬化状態で貼合した後、活性エネルギー線を照射して粘着剤層を後硬化させる工程を含む。活性エネルギー線を照射する前は、粘着シートの粘着剤層は半硬化状態であることから、基材への初期密着性が良好となる。このように、粘着シートを被着体に貼合した後、粘着剤層を活性エネルギー線で後硬化させることで、粘着剤層の凝集力が高まり、被着体への粘着性が向上する。また、本発明においては、粘着剤層の引張弾性率をPとし、粘着剤層を完全硬化させた後の引張弾性率をQとした場合、Q/Pの値が、3.0未満であるため、後硬化した粘着剤層が変形したり、歪んだりすることを防止できる。
【0070】
活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、可視光線、X線、イオン線等が挙げられ、粘着剤層に含まれる光重合開始剤に応じて適宜選択できる。中でも、汎用性の点から、紫外線または電子線が好ましく、紫外線が特に好ましい。
紫外線の光源としては、例えば、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアーク、無電極紫外線ランプ等を使用できる。
電子線としては、例えば、コックロフトワルト型、バンデクラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種類の電子線加速器から放出される電子線を使用できる。
紫外線の照射出力は、積算光量が100~3000mJ/cm2となるようにすることが好ましく、500~2000mJ/cm2となるようにすることがより好ましい。
【0071】
(積層体)
本発明は、上述した粘着シートと被着体を有する積層体に関するものでもある。積層体は、上述した粘着シートの粘着剤層に活性エネルギー線を照射して後硬化させた後硬化後の粘着剤層と、後硬化後の粘着剤層の少なくとも一方の面側に被着体を備える。粘着シートが両面粘着シートである場合、2つの被着体を半硬化状態の粘着シートで貼合した状態で活性エネルギー線を照射して、粘着剤層を後硬化することで積層体を形成することが好ましい。
【0072】
図2は、本発明の粘着シート11を、段差部32を有する被着体31に貼合した積層体30の構成の一例を表す断面図である。
図2に示されているように、被着体31は段差部32を有する。段差部32の厚みは、5~60μmとすることができる。このように本発明の粘着シート11は、段差部を有する被着体の貼合用に用いることができる。特に本発明の粘着シート11は段差部32の厚みが35μm以上の被着体の貼合用にも用いることができる。
【0073】
被着体31は、光学部材であることが好ましい。光学部材としては、タッチパネルや画像表示装置等の光学製品における各構成部材を挙げることができる。
タッチパネルの構成部材としては、例えば透明樹脂フィルムにITO膜が設けられたITOフィルム、ガラス板の表面にITO膜が設けられたITOガラス、透明樹脂フィルムに導電性ポリマーをコーティングした透明導電性フィルム、ハードコートフィルム、耐指紋性フィルムなどが挙げられる。本発明の両面粘着シートは、タッチパネルのセンサー積層用であることが好ましく、タッチペンを用いるタッチパネルのセンサー積層用であることがより好ましい。この観点から、本発明の両面粘着シートの被着体としては、透明樹脂フィルムにITO膜が設けられたITOフィルム、ガラス板の表面にITO膜が設けられたITOガラス、透明樹脂フィルムに導電性ポリマーをコーティングした透明導電性フィルムが好ましい。
画像表示装置の構成部材としては、例えば液晶表示装置に用いられる反射防止フィルム、配向フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルムなどが挙げられる。
これらの部材に用いられる材料としては、ガラス、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンナフタレート、シクロオレフィンポリマー、トリアセチルセルロース、ポリイミド、セルロースアシレートなどが挙げられる。
【実施例】
【0074】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0075】
[実施例1]
(アクリル系共重合体の合成)
攪拌機、冷却管、温度計および窒素導入管を備えた反応容器にアクリル酸2-エチルヘキシル75質量部、アクリル酸5質量部、エチルメタクリレート20質量部、光重合開始剤として1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.05質量部を投入し、窒素ガスを導入しながら照度3mW/cm2の紫外線を照射し、部分重合することにより、転化率21.3%のアクリル系共重合体を含む主剤Aを得た。得られたアクリル系共重合体のGPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは70.1万であり、理論Tgは-47℃であった。なお、ガラス転移温度Tgは、下記FOXの式より求められる理論値である。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn・・・ FOXの式
(式中のTgはアクリル系共重合体のガラス転移温度(K:ケルビン)であり、W1,W2・・・Wnはアクリル系共重合体を構成する各モノマーの質量分率であり、Tg1,Tg2・・・Tgnは各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度を表す。)
【0076】
(粘着剤組成物の作製)
得られた(メタ)アクリル系共重合体100質量部に、水素引抜型光重合開始剤(ランブソン社製:4-メチルベンゾフェノン(4MBP))2.5質量部と、開裂型光重合開始剤(IGMレジン社製:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(TPO))0.5質量部を加え、均一になるまで撹拌し、粘着剤組成物Aを得た。
【0077】
(粘着シートの作製)
上記のように作製した粘着剤組成物Aを、シリコーン系剥離剤で処理された剥離剤層を備えた厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(第1の剥離シート)(王子エフテックス社製:38RL-07(2))の表面に、乾燥後の塗工膜厚が100μmになるようにアプリケーターで均一に塗工した。その後、ブラックライトを積算光量が240mJ/cm2となるように照射し、次いで、高圧水銀ランプを積算光量が750mJ/cm2となるように照射することで、第1の剥離シートの表面に粘着剤層を形成した。次いで、この粘着剤層の表面に厚さ38μmの第2の剥離シート(王子エフテックス社製:38RL-07(L))を貼合して、粘着剤層が剥離力差のある1対の剥離シートに挟まれた第1の剥離シート/粘着剤層/第2の剥離シートの構成を備える剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0078】
[実施例2~5]
実施例1の(アクリル系共重合体の合成)におけるモノマー成分の配合割合を表1に記載のとおりとなるように変更し、さらに、(粘着剤組成物の作製)における光重合開始剤の配合割合を表1に記載のとおりとなるように変更した以外は、実施例1と同様にして剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0079】
[実施例6]
実施例1の(アクリル系共重合体の合成)におけるモノマー成分の配合割合を表1に記載のとおりとなるように変更し、(粘着剤組成物の作製)における光重合開始剤の配合割合を表1に記載のとおりとなるように変更し、さらに、(粘着シートの作製)における塗工膜厚を表1に記載のとおりとなるように変更した以外は、実施例1と同様にして剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0080】
[実施例7]
実施例1の(粘着シートの作製)における塗工膜厚を表1に記載のとおりとなるように変更した以外は、実施例1と同様にして剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0081】
[実施例8]
実施例2の(粘着剤組成物の作製)における光重合開始剤の配合割合を表1に記載のとおりとなるように変更し、さらに、(粘着シートの作製)における塗工膜厚を表1に記載のとおりとなるように変更した以外は、実施例2と同様にして剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0082】
[実施例9]
実施例1の(粘着剤組成物の作製)における光重合開始剤の配合割合を表1に記載のとおりとなるように変更し、さらに、(粘着シートの作製)における光照射条件を表1の記載のとおりとなるように変更した以外は、実施例1と同様にして剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0083】
[実施例10]
実施例1の(アクリル系共重合体の合成)におけるモノマー成分の配合割合を表1に記載のとおりとなるように変更した以外は、実施例1と同様にして剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0084】
[実施例11]
実施例1の(アクリル系共重合体の合成)において照度4mW/cm2の紫外線を照射し、部分重合することにより、転化率25.5%のアクリル系共重合体を含む主剤A-2を得た。得られたアクリル系共重合体のGPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは34.8万であり、理論Tgは-47℃であった。実施例1の(粘着剤組成物の作製)おいて主剤A-2を用い、光重合開始剤の配合割合を表1に記載のとおりとなるように変更した以外は、実施例1と同様にして剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0085】
[比較例1]
実施例1の(粘着剤組成物の作製)における光重合開始剤の配合割合を表2に記載のとおりとなるように変更し、さらに多官能モノマー(新中村化学工業社製、A-HD-N)を添加した以外は、実施例1と同様にして剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0086】
[比較例2]
比較例1の(粘着シートの作製)において高圧水銀ランプを照射しなかった以外は、比較例1と同様にして剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0087】
[比較例3]
実施例1の(アクリル系共重合体の合成)におけるモノマー成分の配合割合を表2に記載のとおりとなるように変更し、(粘着剤組成物の作製)における光重合開始剤の配合割合を表2に記載のとおりとなるように変更した以外は、実施例1と同様にして剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0088】
[比較例4]
実施例2の(粘着剤組成物の作製)における光重合開始剤の配合割合を表2に記載のとおりとなるように変更した以外は、実施例2と同様にして剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0089】
[比較例5]
比較例1の(アクリル系共重合体の合成)におけるモノマー成分の配合割合を表2に記載のとおりとなるように変更し、(粘着剤組成物の作製)において、多官能モノマーを添加せずに熱架橋剤(東ソー社製、コロネートHX)を表2に記載のとおりとなるようの配合し、さらに、粘着シートを作製した後に室温にて1週間養生を行った以外は、比較例1と同様にして剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0090】
(測定)
<引張応力(破断応力)・破断伸度>
後硬化前の粘着シートの引張応力もしくは破断応力は以下のようにして測定した。まず、実施例及び比較例で得た剥離シート付き両面粘着シートを縦50mm、横(幅方向)Ammとなるように切り出した。この際、横(幅方向)のAの値は、粘着シートの厚み(mm)×Amm=6mm2となるように決定した。次いで、第1の剥離シートを剥離し、粘着シートのみを幅方向に丸め、円の直径2.8mm、高さ50mmの円柱状サンプルとした。円柱状サンプルの上端及び下端のそれぞれ10mmまでの領域を、厚み188μm、縦25mm、横50mmのPETフィルム2枚(合計4枚)で挟みこみ、この領域を引張試験機のチャック部分とし、チャック間距離が30mmとなるように固定した。その後、測定温度23℃、相対湿度50%の環境下で引張速度300mm/分の条件で引張伸び率2000%となるまで引っ張り、引張伸び率が2000%に達する前に破断した場合、該引張伸び率を破断伸度とし、その時の応力値を破断応力とした。なお、引張伸び率が2000%に達しても破断しなかった場合は引張伸び率2000%の応力値を引張応力、破断伸度を2000%以上とした。
後硬化後の粘着シートの引張伸び率が2000%時の引張応力もしくは破断応力は、切り出した剥離シート付き両面粘着シートの第1の剥離シート側から積算光量が2000mJ/cm2となるように紫外線を照射した後に、円柱状サンプルを得て、同様の方法で測定した。
【0091】
<引張弾性率>
粘着シートの引張弾性率は、<引張応力(破断応力)・破断伸度>の測定において得られる応力-ひずみ曲線(SSカーブ)から算出した。具体的には、0%と5%の引張伸び率と応力値から傾きを算出し、引張弾性率とした。
【0092】
<ゲル分率>
後硬化前後における粘着シート約0.1gをそれぞれサンプル瓶に採取し、酢酸エチル30mlを加えて24時間振とうした。その後、このサンプル瓶の内容物を150メッシュのステンレス製金網でろ別し、金網上の残留物を100℃で1時間乾燥して乾燥重量W(g)を測定した。得られた乾燥重量から下記式1によりゲル分率を求めた。
ゲル分率(質量%)=(乾燥重量W/粘着シートの採取重量)×100・・・式1
【0093】
(評価)
<積層体の作製方法>
ガラス板(縦90mm×横50mm×厚み0.5mm)の表面に、紫外線硬化型インクを塗布厚が5μmになるように額縁状(縦90mm×横50mm、幅5mm)にスクリーン印刷した。次いで、紫外線を照射して印刷した上記紫外線硬化型インクを硬化させた。この工程を所定の回数繰り返し、粘着剤層の厚みの30%、もしくは25%となるような各厚みの段差部を有する印刷段差ガラスをそれぞれ得た。
実施例及び比較例で得られた剥離シート付き両面粘着シートを、縦90mm×横50mmの形状に裁断し、第1の剥離シートを剥離し、ラミネーター(株式会社ユーボン製、IKO-650EMT)を用いて、粘着シート(粘着剤層)が印刷段差ガラスの額縁状の印刷全面を覆うように貼合した。その後、第2の剥離シートを剥離し、表出した粘着シート(粘着剤層)に、真空貼合機(常陽工学社製:真空重ね合せ装置(JE2020B-MVH))を用いてガラス板(縦90mm×横50mm×厚み0.5mm)を貼合した。この際の貼合条件は、40℃、弱加圧力0.6kN、強加圧力1.2kN、真空圧100Pa、加圧保持時間10秒とした。次いで、脱泡処理(オートクレーブ処理:40℃、0.5MPa、30分間)を実施し、その後、印刷段差ガラス側から紫外線照射器(アイグラフィックス(株)製、ECS-301G1)にて積算光量が2000mJ/cm2となるように紫外線を照射し、積層体を得た。
【0094】
<段差追従性評価・初期追従性>
上述した方法で得た積層体の印刷段差部をマイクロスコープ(倍率:25倍)で観察し、以下の基準で評価した。実用上、△以上であると段差追従性に優れていると判断できる。
○:粘着層厚みの30%の段差まで追従し、段差貼合面に気泡が見られず完全に埋まっている状態である。
△:粘着層厚みの25%の段差まで追従し、段差貼合面に気泡が見られず完全に埋まっている状態である。
×:粘着層厚みの25%の段差で、段差貼合面に気泡が見られ、段差が埋まっていない状態である。
【0095】
<段差追従性評価・耐候性試験後>
上述した方法で得た25%の厚みの段差部を有する印刷段差ガラスを有する積層体を、QUV試験機(Q-Lab社製)に投入し、紫外線Aの蛍光灯を使用し、0.8W/m2、80℃、4時間と、0.53W/m2、50℃、4時間の条件でサイクル試験を12回行った。なお、紫外線照射は印刷段差側から行った。その後、印刷段差部を目視で確認し、以下の基準で評価した。
○:段差部に発泡無し
×:段差部に発泡有り
【0096】
<加工性>
30mm×30mmのサイズとなるように粘着シート片を切り出した。粘着シート片の第1の剥離シートを剥離し、剥き出しにした粘着剤層を、予め50mm角に切り出しておいた評価用剥離PET A71#100(帝人デュポンフィルム社製)のシリコーン処理面に貼り付けた。その後、残っている第2の剥離シート上に、別途50mm角に切り出しておいた評価用の剥離PET A38ST#50(帝人デュポンフィルム社製)のシリコーン処理面を被せた。その後、プレス試験機(東洋精機社製:MP-WNL)を用いて、プレス部の温度を25℃に設定し、2MPaの圧力で5分間加圧した。その後、粘着剤層が粘着シートの第2の剥離シートの各辺から外側に広がった最大距離を測定し、四辺の平均値をウーズ値とした。実用上、△以上であると加工性に優れていると判断できる。
○:1.0mm未満
△:1.0mm以上1.2mm未満
×:1.2mm以上
【0097】
<残留モノマー量の測定>
粘着剤層における残留モノマー量は加熱減量測定法により算出した。具体的には、10cm角に粘着剤層を切り出し、12cm角、12μm厚のアルミ箔に貼り付けた。その後、135℃のオーブンに投入して加熱し、10分後に取り出した。加熱前後の粘着シートの重量の減少率を計算することで、残留モノマー量の指標とした。
【0098】
【0099】
【0100】
2EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
EMA:エチルメタクリレート
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
DMAA:ジメチルアクリルアミド
IBXA:イソボルニルアクリレート
4HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート
AAc:アクリル酸
TPO:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド
4MBP:4-メチルベンゾフェノン
A-HD-N:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート
【0101】
実施例で得られた粘着シートは、段差追従性と加工性に優れていることが分かった。一方、比較例で得られた粘着シートにおいては、段差追従性と加工性が両立されていなかった。また、実施例で得られた粘着シートは耐久性にも優れていた。
【符号の説明】
【0102】
1 剥離シート付き粘着シート
11 粘着シート
12a 剥離シート
12b 剥離シート
30 積層体
31 被着体
32 段差部