(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】作業機械における油圧シリンダの駆動装置
(51)【国際特許分類】
F15B 11/00 20060101AFI20230704BHJP
F15B 11/02 20060101ALI20230704BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
F15B11/00 V
F15B11/02 C
E02F9/22 Q
(21)【出願番号】P 2019011950
(22)【出願日】2019-01-28
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】上田 浩司
【審査官】落合 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-145717(JP,A)
【文献】特開平08-200304(JP,A)
【文献】特開平11-270514(JP,A)
【文献】特開平10-088623(JP,A)
【文献】特開2007-046732(JP,A)
【文献】米国特許第04896582(US,A)
【文献】特開2017-096215(JP,A)
【文献】特開2015-163754(JP,A)
【文献】特開2017-053413(JP,A)
【文献】特開2016-169796(JP,A)
【文献】特開平05-195552(JP,A)
【文献】特開平11-081391(JP,A)
【文献】特開2010-261521(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0263189(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械に設けられ、ピストンとこれを往復動可能に収容するシリンダ室を形成するシリンダ本体とを有する油圧シリンダを駆動するための装置であって、
前記油圧シリンダの前記シリンダ室内に供給される作動油を吐出する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプと前記油圧シリンダとの間に介在し、シリンダ駆動指令の入力を受けることにより開弁して前記油圧ポンプから当該油圧シリンダに供給される作動油の方向及び流量を前記シリンダ駆動指令に応じて変化させるシリンダ制御弁と、
前記油圧シリンダを動かすためのオペレータによるシリンダ操作を受ける操作部材と、
当該操作部材に与えられる前記シリンダ操作に対応した前記シリンダ駆動指令を生成して前記シリンダ制御弁に入力する駆動指令入力部と、
前記油圧シリンダのストロークであるシリンダストロークを検出するシリンダストローク検出部と、
前記シリンダ操作にかかわらず前記ピストンを前記油圧シリンダのストロークエンドの手前で停止させるように、前記駆動指令入力部から前記シリンダ制御弁に入力される前記シリンダ駆動指令を前記シリンダストロークに応じて制限する駆動指令制限部と、
前記シリンダ駆動指令の制限を解除するための予め設定された制限解除条件が満たされているか否かを判定する制限解除判定部とを備え、
前記駆動指令制限部は、前記制限解除条件が満たされていると前記制限解除判定部が判定した場合に前記シリンダ駆動指令の制限を解除するように構成され、
前記制限解除条件は、前記作業機械に搭載されるエンジンの回転数が予め設定された下限回転数よりも低いという条件である、油圧シリンダの駆動装置。
【請求項2】
作業機械に設けられ、ピストンとこれを往復動可能に収容するシリンダ室を形成するシリンダ本体とを有する油圧シリンダを駆動するための装置であって、
前記油圧シリンダの前記シリンダ室内に供給される作動油を吐出する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプと前記油圧シリンダとの間に介在し、シリンダ駆動指令の入力を受けることにより開弁して前記油圧ポンプから当該油圧シリンダに供給される作動油の方向及び流量を前記シリンダ駆動指令に応じて変化させるシリンダ制御弁と、
前記油圧シリンダを動かすためのオペレータによるシリンダ操作を受ける操作部材と、
当該操作部材に与えられる前記シリンダ操作に対応した前記シリンダ駆動指令を生成して前記シリンダ制御弁に入力する駆動指令入力部と、
前記油圧シリンダのストロークであるシリンダストロークを検出するシリンダストローク検出部と、
前記シリンダ操作にかかわらず前記ピストンを前記油圧シリンダのストロークエンドの手前で停止させるように、前記駆動指令入力部から前記シリンダ制御弁に入力される前記シリンダ駆動指令を前記シリンダストロークに応じて制限する駆動指令制限部と、
前記オペレータにより前記操作部材に実際に与えられている前記シリンダ操作に対応するシリンダ駆動指令が前記駆動指令制限部により制限された後の駆動指令よりも大きい場合に当該オペレータに対してその報知を行う報知部
と、
前記シリンダ駆動指令の制限を解除するための予め設定された制限解除条件が満たされているか否かを判定する制限解除判定部とを備え、
前記駆動指令制限部は、前記制限解除条件が満たされていると前記制限解除判定部が判定した場合に前記シリンダ駆動指令の制限を解除するように構成され、
前記制限解除条件は、前記作業機械に搭載されるエンジンの回転数が予め設定された下限回転数よりも低いという条件である、油圧シリンダの駆動装置。
【請求項3】
請求項1
又は2記載の油圧シリンダの駆動装置であって、前記油圧ポンプは可変容量型であり、前記駆動装置は、前記油圧ポンプのポンプ容量を制御するポンプ容量制御部をさらに備え、当該ポンプ容量制御部は、前記操作部材に与えられる前記シリンダ操作にかかわらず前記シリンダ制御弁に最終的に入力される前記シリンダ駆動指令に基づいて前記油圧ポンプの容量を制御するように構成されている、油圧シリンダの駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の作業機械に搭載される油圧シリンダを駆動するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧式の作業機械に設けられるアクチュエータとして、油圧シリンダが多く用いられている。例えば、油圧ショベルを構成する作業装置には、ブームを起伏させるためのブームシリンダ、ブームに対してアームを回動させるためのアームシリンダ、及びアームに対してバケットを回動させるバケットシリンダ等が設けられる。
【0003】
前記油圧シリンダは、シリンダ室を形成するシリンダ本体と、当該シリンダ室内に装填されるピストンと、を備える。前記ピストンは、前記シリンダ室内において、伸長及び収縮方向のそれぞれのストロークの終端であるストロークエンドの間で往復動することが可能である。しかし、当該ピストンが当該ストロークエンドに高速で突入することは大きな衝撃を伴う。
【0004】
このような衝撃を緩和するための技術として、特許文献1は、前記ストロークエンドでの衝撃の緩和のために油圧シリンダのピストンを減速させる減速手段と、当該ピストンの移動速度が大きいほど減速手段がピストンの減速を開始する減速開始位置をストロークエンドからより手前側の位置に設定する減速設定手段と、を備える制御装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に記載される装置では、ピストンの減速が行われても、当該ピストンがストロークエンドに突入するエネルギーによる衝撃を完全に回避することができない。さらに、ストロークエンドの近辺では前記減速にかかわらず大きなエネルギーロスが生じやすく、このことが作業効率の低下の要因となる。例えば、前記ピストンがシリンダ本体に衝撃的に当接するのを抑制すべく、ピストンロッドの先端部に形成されたクッション用突出部と、シリンダ本体に形成されて前記クッション用突出部を前記ストロークエンドにて受け入れるクッション室と、当該クッション室内の作動油を限られた流量で外部に逃がす絞り流路と、が設けられる油圧シリンダでは、前記クッション室内への前記クッション用突出部の突入の際、及び、前記クッション室から前記クッション突出部が離脱する際、には、前記ピストンに大きな流体抵抗が加わり、当該流体抵抗は、少なからぬエネルギーロスを招く。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、作業機械に設けられた油圧シリンダを駆動するための装置であって、前記油圧シリンダのストロークエンドでの衝撃を有効に回避し、かつ、駆動効率の向上が可能な駆動装置を提供することを目的とする。
【0008】
提供されるのは、作業機械に設けられ、ピストンとこれを往復動可能に収容するシリンダ室を形成するシリンダ本体とを有する油圧シリンダを駆動するための装置であって、前記油圧シリンダの前記シリンダ室内に供給されるべき作動油を吐出する油圧ポンプと、前記油圧ポンプと前記油圧シリンダとの間に介在し、シリンダ駆動指令の入力を受けることにより開弁して前記油圧ポンプから当該油圧シリンダに供給される作動油の方向及び流量を前記シリンダ駆動指令に応じて変化させるシリンダ制御弁と、前記油圧シリンダを動かすためのオペレータによるシリンダ操作を受ける操作部材と、当該操作部材に与えられる前記シリンダ操作に対応した前記シリンダ駆動指令を生成して前記シリンダ制御弁に入力する駆動指令入力部と、前記油圧シリンダのストロークであるシリンダストロークを検出するシリンダストローク検出部と、前記シリンダ操作にかかわらず前記ピストンを前記油圧シリンダのストロークエンドの手前で停止させるように、前記駆動指令入力部から前記シリンダ制御弁に入力される前記シリンダ駆動指令を前記シリンダストロークに応じて制限する駆動指令制限部と、を備える。
【0009】
この装置によれば、前記駆動指令制限部は、前記オペレータにより前記操作部材に与えられる前記シリンダ操作にかかわらず、前記ピストンを前記ストロークエンドの手前で停止させるように、前記シリンダ制御弁に入力されるシリンダ駆動指令を制限することにより、前記ピストンが前記ストロークエンドに突入することによる衝撃を確実に回避することを可能にするとともに、当該ピストンのストロークエンドへの突入及びストロークエンドからの離脱に伴うエネルギーロスを有効に低減して駆動効率を向上させることを可能にする。
【0010】
前記油圧駆動装置は、前記シリンダ駆動指令の制限を解除するための予め設定された制限解除条件が満たされているか否かを判定する制限解除判定部をさらに備え、前記駆動指令制限部は、前記制限解除条件が満たされていると前記制限解除判定部が判定した場合に前記シリンダ駆動指令の制限を解除するように構成されていることが、好ましい。このようなシリンダ駆動指令の制限の解除は、前記シリンダ駆動指令の制限が適切な場合にのみ行われることを可能にする。換言すれば、前記シリンダ駆動指令の制限が不要である状況にあるにもかかわらず当該制限が行われてしまうのを防ぐことを可能にする。
【0011】
前記制限解除条件は、例えば、前記シリンダ駆動指令の制限を解除するための特定の制限解除操作がオペレータにより行われたという条件であることが、好ましい。この条件は、前記ピストンが前記ストロークエンドに至ることを敢えて許容するというオペレータの意思を尊重した制御の実行を可能にする。例えば、前記油圧シリンダが油圧ショベルにおけるバケットの駆動のために用いられる場合において、オペレータは、前記制限解除操作を行うことにより、前記バケットに付着した泥や土を前記油圧シリンダのストロークエンドでの衝撃を利用して落とすといった操作(いわゆるスケルトン操作)を行うことが可能である。
【0012】
前記制限解除操作は、例えば、当該制限解除操作のために前記操作部材とは別に設けられた専用のスイッチであってもよいが、前記操作部材に対して与えられる、前記シリンダ操作とは別の特別操作であることが、より好ましい。このことは、オペレータが前記シリンダ駆動指令の入力のために通常用いている前記操作部材をそのまま利用して前記制限解除操作を行うことを可能にする。
【0013】
前記特別操作は、例えば、切り返し操作であることが好ましい。当該切り返し操作は、前記ピストンを当該ピストンの現在の動きの方向と逆の方向に動かすための逆操作と、当該逆操作と逆向きの順操作と、が連続して行われる操作である。当該切り返し操作は、簡単な操作でありながら、前記シリンダ駆動指令を入力するための通常の操作と明確に区別されることが可能である。
【0014】
前記制限解除判定部は、前記ストロークエンドの手前に設定された一定のストロークの範囲である解除有効範囲内で前記特別操作が行われた場合にのみ当該特別操作を有効とみなす(つまり前記制限解除条件が満たされると判定する)ように構成されていることが、より好ましい。このように前記特別操作を有効とするストローク範囲を限定することは、オペレータが制限解除の目的以外の目的で前記特別操作と近似した操作を行った場合に当該オペレータの意思に反して前記シリンダ駆動指令の制限が解除されるのを防ぐのに有効である。
【0015】
前記制限解除条件は、前記作業機械に搭載されるエンジンの回転数が予め設定された下限回転数よりも低いという条件であってもよい。このようにエンジン回転数が低くて作業機械の駐機が行われる可能性が高い場合に、前記シリンダ駆動指令の制限を解除することにより、オペレータが当該駐機の際に前記ピストンを敢えてストロークエンドまで至らせる操作を行うことが可能になる。
【0016】
前記装置は、前記オペレータにより前記操作部材に実際に与えられている前記シリンダ操作に対応するシリンダ駆動指令が前記駆動指令制限部により制限された後の駆動指令よりも大きい場合に当該オペレータに対してその報知を行う報知部をさらに備えることが、好ましい。前記報知は、前記ピストンの減速が前記シリンダ駆動指令の制限によるものであって故障に起因するものではないことをオペレータに知らせることを可能にする。また、当該オペレータが実際に操作部材に与えている操作がピストンをストロークエンドよりも手前の位置で停止させるには過大であることを当該オペレータに知らせることで、当該オペレータの技量の向上に寄与することが可能である。
【0017】
前記油圧ポンプが可変容量型である場合、前記駆動装置は、前記油圧ポンプのポンプ容量を制御するポンプ容量制御部をさらに備え、当該ポンプ容量制御部は、前記操作部材に与えられる前記シリンダ操作にかかわらず前記シリンダ制御弁に最終的に入力される前記シリンダ駆動指令に基づいて前記油圧ポンプの容量を制御するように構成されていることが、好ましい。当該ポンプ容量制御部は、前記シリンダ操作に対応するシリンダ駆動指令が大きい場合であっても、前記駆動指令制限部が前記シリンダ駆動指令を制限している場合にはその制限された最終のシリンダ駆動指令に基づいて前記油圧ポンプの容量を制御することにより、当該油圧ポンプの運転のためのエネルギーの節減を可能にする。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、作業機械に設けられた油圧シリンダを駆動するための装置であって、前記油圧シリンダのストロークエンドでの衝撃を有効に回避し、かつ、エネルギーロスを低減することを可能にする装置が、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態に係る作業機械である油圧ショベルの側面図である。
【
図2】前記油圧ショベルに搭載される油圧回路及びこれに接続されるコントローラを示す油圧回路図である。
【
図3】前記油圧回路に含まれるアームシリンダのへッド側端部に設けられたクッション構造を示す断面図である。
【
図4】前記コントローラの機能構成を示すブロック図である。
【
図5】前記コントローラにより実行される前記アームシリンダの制御動作を示すフローチャートである。
【
図6】前記アームシリンダのシリンダストロークと前記コントローラにより制限される最終アーム引きパイロット圧との関係を示すグラフである。
【
図7】前記アームシリンダのシリンダストロークと前記コントローラにより制限される最終アーム押しパイロット圧との関係を示すグラフである。
【
図8】前記アーム引きパイロット圧及び前記アーム押しパイロット圧と前記コントローラにより演算されるポンプ流量パラメータとの関係を示すグラフである。
【
図9】本発明の変形例に係るコントローラの機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態に係る油圧シリンダ及びその駆動装置が搭載される作業機械の例である油圧ショベルを示す。この油圧ショベルは、地面Gの上を走行可能な下部走行体10と、前記下部走行体10に搭載される上部旋回体12と、上部旋回体12に搭載される作業装置14と、を備える。
【0022】
前記下部走行体10及び前記上部旋回体12は、前記作業装置14を支持する機体を構成する。前記上部旋回体12は、旋回フレーム16と、その上に搭載される複数の要素と、を有する。当該複数の要素は、エンジンを収容するエンジンルーム17や運転室であるキャブ18を含む。
【0023】
前記作業装置14は、掘削作業その他の必要な作業のための動作を行うことが可能であり、ブーム21、アーム22及びバケット24を含む。前記ブーム21は、
図1の矢印A1に示されるように起伏可能すなわち水平軸回りに回動可能となるように前記旋回フレーム16の前端に支持される基端部と、その反対側の先端部と、を有する。前記アーム22は、
図1の矢印A2に示されるように水平軸回りに回動可能となるように前記ブーム21の先端部に取付けられる基端部と、その反対側の先端部と、を有する。前記バケット24は、
図1の矢印A3に示されるように回動可能となるように前記アーム22の先端部に取付けられる。
【0024】
前記作業装置14には、前記ブーム21、前記アーム22及び前記バケット24のそれぞれを動かすためのアクチュエータである複数の伸縮可能な油圧シリンダが設けられている。当該複数の油圧シリンダは、少なくとも一つのブームシリンダ26と、アームシリンダ27と、バケットシリンダ28と、を含む。前記少なくとも一つのブームシリンダ26は、作動油の供給を受けることにより伸長または収縮し、これにより前記ブーム21を起立方向または倒伏方向に回動させる。同様に、前記アームシリンダ27は、前記ブーム21と前記アーム22との間に介在し、作動油の供給を受けることにより前記アーム22をアーム引き方向(当該アーム22の先端がブーム21に近づく方向)及びアーム押し方向(当該アーム22の先端がブーム21から離れる方向)に回動させるように伸縮する。前記バケットシリンダ28は、作動油の供給を受けることにより前記バケット24を回動させるように伸縮する。
【0025】
前記ブームシリンダ26、前記アームシリンダ27及び前記バケットシリンダ28は互いに近似した構造を有する。そこで、これらのシリンダ26~28のうちこの実施の形態において後に詳述する駆動装置による駆動及び制御の対象となる油圧シリンダである前記アームシリンダ27の構造について、
図2及び
図3を参照しながら説明する。
【0026】
前記アームシリンダ27は、シリンダ室を形成するシリンダ本体27cと、当該シリンダ室内に装填されるピストン27pと、当該ピストン27pから軸方向の一方に延びるピストンロッド27rと、を有する。前記ピストン27pは、前記シリンダ本体27cの内周面と密着しながら軸方向に摺動可能となるように前記シリンダ室内に装填され、これにより当該シリンダ室内を前記ピストンロッド27rが位置するロッド側室27bとその反対側のへッド側室27aとに区画する。
【0027】
前記ピストン27pは、前記シリンダ室内への作動油の供給に伴って前記ピストンロッド27rと一体にその軸方向に移動し、これによりアームシリンダ27全体を伸長させる。具体的に、前記ヘッド側室27aに作動油が供給されることにより前記ピストン27pが前記へッド側室27aを膨張させる向きに移動して前記ロッド側室27b内の作動油を押出す。これによりアームシリンダ27全体が伸長して前記アーム22を前記アーム引き方向に移動させる。逆に、前記ロッド側室27bに作動油が供給されることにより前記ピストン27pが前記ロッド側室27bを膨張させる向きに移動して前記へッド側室27a内の作動油を押し出す。これによりアームシリンダ27全体が収縮して前記アーム22を前記アーム押し方向に移動させる。
【0028】
前記アームシリンダ27は、伸長方向及び収縮方向のそれぞれについて前記ピストン27pの移動に対応するシリンダストロークの終端であるストロークエンドを有し、これらのストロークエンドの間で前記ピストン27pが往復動することが可能である。それぞれのストロークエンドには、前記ピストン27pと前記シリンダ本体27cとの衝突を緩和するためのクッション構造が与えられている。
【0029】
図3は、前記クッション構造のうちへッド側端部(収縮方向のストロークエンド)に与えられたクッション構造を示している。当該クッション構造は、クッション用突出部29Aと、クッション室29Bと、図略の逃がし流路と、を含む。前記クッション用突出部29Aは前記ピストン27pから前記ピストンロッド27rと反対の側に(つまりへッド側室27a内に)突出する。前記クッション室29Bは前記シリンダ本体27cに形成された凹部であって前記ピストン27pが収縮側のストロークエンドに至る際に前記クッション用突出部29Aを受け入れる形状を有する。前記逃がし流路は、前記クッション室29B内に前記クッション用突出部29Aが入り込む際に当該クッション室29B内の作動油が限られた流量で当該クッション室29Bの外部に流出するのを許容する流路であり、当該逃がし流路の流路抵抗によって前記シリンダ本体27cと前記ピストン27pとの当接による衝撃が緩和される。
【0030】
図2は、前記油圧ショベルに搭載される油圧回路を示す。この油圧回路は、前記アームシリンダ27を含む前記複数の油圧アクチュエータに作動油を供給しかつその供給の方向及び流量を制御する機能を有する。具体的に、当該油圧回路は、前記油圧ショベルに搭載されるエンジン30の出力軸に連結される複数の油圧ポンプである第1メインポンプ31、第2メインポンプ32及びパイロットポンプ34と、複数のアクチュエータ制御弁と、複数のアクチュエータ操作器と、を含むとともに、当該油圧回路の作動を制御するためのコントローラ50に電気的に接続される。
【0031】
前記各ポンプ31,32,34は、いずれも前記エンジン30によって駆動され、これによりタンク内の油を吐出する。前記第1及び第2メインポンプ31,32は、前記タンク内の油を前記複数の油圧アクチュエータを直接動かすための作動油として吐出するものであり、本発明に係る油圧ポンプ、すなわち油圧シリンダを駆動するための油圧ポンプ、に相当する。前記パイロットポンプ34は、前記複数のアクチュエータ制御弁にパイロット圧を供給するためのパイロット油を吐出するパイロット油圧源である。この実施の形態に係る第1及び第2メインポンプ31,32はそれぞれ可変容量型油圧ポンプからなり、それぞれの容量すなわちポンプ容量は前記コントローラ50から前記第1及び第2メインポンプ31,32にそれぞれ入力されるポンプ容量指令によって操作される。
【0032】
前記複数のアクチュエータ制御弁は、前記第1メインポンプ31または前記第2メインポンプ32と、前記複数のアクチュエータ制御弁にそれぞれ対応する複数の油圧アクチュエータと、の間に介在し、当該第1メインポンプ31または前記第2メインポンプ32から当該油圧アクチュエータに供給される作動油の方向及び流量を制御するように作動する。前記複数のアクチュエータ制御弁のそれぞれは、パイロット操作式の油圧切換弁からなり、前記パイロット圧の供給を受けて当該パイロット圧の大きさに対応したストロークで開弁することにより、当該ストロークに対応した流量で前記油圧アクチュエータに作動油が供給されることを許容する。従って、当該パイロット圧を変えることによって前記流量の制御が可能である。
【0033】
この実施の形態において、前記複数のアクチュエータ制御弁は第1グループG1及び第2グループG2のいずれかに属する。前記第1グループG1に属するアクチュエータ制御弁は、前記第1メインポンプ31から吐出される作動油の供給を受けるように当該第1メインポンプ31に接続され、前記第2グループG2に属するアクチュエータ制御弁は、前記第2メインポンプ32から吐出される作動油の供給を受けるように当該第2メインポンプ32に接続される。具体的に、前記第1メインポンプ31の吐出口には、背圧弁35を介してタンクにつながる第1センターバイパスラインCL1が接続可能であり、前記第1グループG1に属するアクチュエータ制御弁は前記第1センターバイパスラインCL1に沿ってタンデムに配置される。同様に、前記第2メインポンプ32の吐出口には、前記背圧弁35を介してタンクにつながる第2センターバイパスラインCL2が接続され、前記第2グループG2に属するアクチュエータ制御弁は前記第2センターバイパスラインCL2に沿ってタンデムに配置される。
【0034】
前記第1メインポンプ31の吐出口には、前記第1センターバイパスラインCL1とパラレルに第1供給ラインSL1が接続されている。当該第1供給ラインSL1は、前記第1グループG1に属する複数のアクチュエータ制御弁に対応してさらに分岐し、前記第1メインポンプ31から吐出される作動油を前記第1グループG1に属するアクチュエータ制御弁に分配するように当該アクチュエータ制御弁に接続される。また、前記第1グループG1に接続する前記複数のアクチュエータ制御弁は第1タンクラインTL1を介して前記背圧弁35に接続されている。
【0035】
同様に、前記第2メインポンプ32の吐出口には、前記第2センターバイパスラインCL2とパラレルに第2供給ラインSL2が接続されている。当該第2供給ラインSL2は、前記第2グループG2に属する複数のアクチュエータ制御弁に対応してさらに分岐し、前記第2メインポンプ32から吐出される作動油を前記第2グループG2に属するアクチュエータ制御弁に分配するように当該アクチュエータ制御弁に接続される。また、前記第2グループG2に接続する前記複数のアクチュエータ制御弁は第2タンクラインTL2を介して前記背圧弁35に接続されている。
【0036】
前記複数のアクチュエータ制御弁は、前記アームシリンダ27の動きを制御するための制御弁(シリンダ制御弁)として、
図2に示すようなアーム1速制御弁37及びアーム2速制御弁38を含む。
【0037】
前記アーム1速制御弁37は、前記第2グループG2に属し、前記第2メインポンプ32から前記アームシリンダ27への作動油の供給を制御するように開弁する。具体的に、当該アーム1速制御弁37は、前記第2メインポンプ32から吐出された作動油が前記アームシリンダ27の前記へッド側室27aまたは前記ロッド側室27bに供給されるのを許容するとともに当該ロッド側室27bまたは当該へッド側室27aから排出される作動油が前記第2タンクラインTL2を通じてタンクに戻るのを許容する油路を形成するように、開弁する。
【0038】
前記アーム2速制御弁38は、前記第1グループG1に属し、前記第1メインポンプ31から吐出された作動油が増速用の作動油として前記第2メインポンプ32から吐出される作動油と合流するのを許容するように開弁する。具体的に、当該アーム2速制御弁38は、前記第1メインポンプ31から吐出された作動油が前記アーム1速制御弁37から前記アームシリンダ27の前記へッド側室27aまたは前記ロッド側室27bに供給される作動油と合流するのを許容するとともに当該ロッド側室27bまたは当該へッド側室27aから排出される作動油が前記第1タンクラインTL1を通じてタンクに戻るのを許容する油路を形成するように、開弁する。
【0039】
前記アーム1速制御弁37及び前記アーム2速制御弁38を含む前記アクチュエータ制御弁のそれぞれは、3位置のパイロット切換弁であり、一対のパイロットポートを有する。具体的に、前記アーム1速制御弁37は、アーム引きパイロットポート37aとその反対側のアーム押しパイロットポート37bを有する。同様に、前記アーム2速制御弁38は、アーム引きパイロットポート38aとその反対側のアーム押しパイロットポート38bを有する。
【0040】
前記アーム1速制御弁37は、前記アーム引き及びアーム押しパイロットポート37a,37bに供給されるパイロット圧がいずれも0または微小である場合は中立位置に保たれ、前記アームシリンダ27を前記第2メインポンプ32から遮断するとともに前記第2センターバイパスラインCL2を開通する。当該アーム1速制御弁37は、前記アーム引きパイロットポート37aまたはアーム押しパイロットポート37bに一定以上のパイロット圧が供給されると当該パイロットポートに対応した方向に当該パイロット圧の大きさに対応したバルブストロークで前記中立位置からシフトして前記第2供給ラインSL2と前記アームシリンダ27のへッド側室27aまたはロッド側室27bとを前記バルブストロークに対応した開口面積で連通し、これにより前記アームシリンダ27を前記バルブストロークに対応する方向(例えばアーム引きパイロットポート37aにパイロット圧が入力されたときはアーム引き方向)に前記バルブストロークに対応する速度で伸縮させる。
【0041】
前記アーム2速制御弁38は、前記アーム引き及びアーム押しパイロットポート38a,38bに供給されるパイロット圧がいずれも0または微小である場合は中立位置に保たれ、前記アームシリンダ27を前記第1メインポンプ31から遮断するとともに前記第1センターバイパスラインCL1を開通する。当該アーム2速制御弁38は、前記アーム引きパイロットポート38aまたはアーム押しパイロットポート38bに一定以上のパイロット圧が供給されると当該パイロットポートに対応した方向に当該パイロット圧の大きさに対応したバルブストロークで前記中立位置からシフトして前記第1供給ラインSL1と前記アームシリンダ27のへッド側室27aまたはロッド側室27bとを前記バルブストロークに対応した開口面積で連通し、これにより前記アームシリンダ27を前記バルブストロークに対応する方向(例えばアーム引きパイロットポート38aにパイロット圧が入力されたときはアーム引き方向)に前記バルブストロークに対応する速度で伸縮させる。
【0042】
前記複数のアクチュエータ操作器は、前記複数のアクチュエータ制御弁にそれぞれ接続され、当該アクチュエータ制御弁に接続される油圧アクチュエータを動かすための操作を受けて当該操作に対応したパイロット圧を当該アクチュエータ制御弁のパイロットポートに入力する。具体的に、当該複数のアクチュエータ操作器は、前記パイロットポンプ34と前記複数のアクチュエータ制御弁との間にそれぞれ設けられ、前記パイロットポンプ34から出力されるパイロット一次圧を前記操作に対応した度合いで減圧してパイロット二次圧を生成し、当該パイロット二次圧を前記アクチュエータ制御弁のパイロット圧として当該アクチュエータ制御弁のパイロットポートに入力する。
【0043】
前記複数のアクチュエータ操作器は、前記アームシリンダ27を動かすための操作器として
図2に示されるアーム操作器47を含む。前記アーム操作器47は、前記アームシリンダ27を伸縮させる(アーム引き方向及びアーム押し方向に動かす)ためのシリンダ操作としてアーム引き操作及びアーム押し操作を受け、これに対応するパイロット圧をシリンダ駆動指令として前記アーム1速及び2速制御弁37,38にそれぞれ入力する。
【0044】
具体的に、前記アーム操作器47は、アーム操作レバー47aと、これに連結されるアームパイロット弁47bと、を有する。前記アーム操作レバー47aは、オペレータによる前記アーム引き操作及びアーム押し操作を受ける操作部材である。前記アームパイロット弁47bは、前記アーム操作レバー47aに与えられるアーム引き操作またはアーム押し操作に対応したパイロット圧すなわちシリンダ駆動指令を生成して前記アーム1速制御弁37に入力する減圧弁であり、前記パイロットポンプ34とともに本発明に係る駆動指令入力部を構成する。前記アームパイロット弁47bは、前記アーム操作レバー47aにアーム引き操作が与えられると、当該アーム引き操作の大きさに対応した速度で前記アームシリンダ27を伸長させるようなアーム引き操作パイロット圧Pa1を生成し、このアーム引き操作パイロット圧Pa1はアーム引きパイロットライン40Aを通じて前記アーム1速制御弁37のアーム引きパイロットポート37a及び前記アーム2速制御弁38のアーム引きパイロットポート38aにそれぞれ入力されることが可能である。前記アームパイロット弁47bは、逆に前記アーム操作レバー47bにアーム押し操作が与えられると、当該アーム押し操作の大きさに対応した速度で前記アームシリンダ27を収縮させるようなアーム押し操作パイロット圧Pb1を生成し、このアーム押し操作パイロット圧Pb1はアーム押しパイロットライン40Bを通じて前記アーム1速制御弁37のアーム押しパイロットポート37b及び前記アーム2速制御弁38のアーム押しパイロットポート38bにそれぞれ入力されることが可能である。
【0045】
図2に示される油圧回路は、アーム引きパイロット圧制限弁42A及びアーム押しパイロット圧制限弁42Bをさらに備える。当該アーム引きパイロット圧制限弁42A及びアーム押しパイロット圧制限弁42Bは、前記アーム引きパイロットライン40A及び前記アーム押しパイロットライン40Bの途中にそれぞれ設けられ、前記アームパイロット弁47bから前記アーム1速及び2速制御弁37,38に供給されるパイロット圧を制限するための手段として機能する。
【0046】
この実施の形態に係る前記アーム引きパイロット圧制限弁42A及びアーム押しパイロット圧制限弁42Bは、それぞれ、ソレノイド42a,42bを有する電磁逆比例弁により構成され、当該ソレノイド42a,42bに入力される電気信号であるパイロット圧制限指令に対応したパイロット圧の制限を行う。具体的に、前記アーム引きパイロット圧制限弁42Aは、前記アームパイロット弁47bから入力されるパイロット圧であるアーム引き操作パイロット圧Pa1が前記パイロット圧制限指令に対応する制限パイロット圧Pirよりも小さい場合には、当該アーム引き操作パイロット圧Pa1がそのまま最終アーム引きパイロット圧Pa2として前記アーム1速及び2速制御弁37,38のアーム引きパイロットポート37a,38aに入力されるのを許容し、前記アーム引き操作パイロット圧Pa1が前記制限パイロット圧Pir以上である場合には、当該アーム引き操作パイロット圧Pa1の大きさにかかわらず前記アーム1速及び2速制御弁37,38に入力される最終アーム引きパイロット圧Pa2を前記制限パイロット圧Pirに制限するように、開弁する。同様に、前記アーム押しパイロット圧制限弁42Bは、前記アームパイロット弁47bから入力されるパイロット圧であるアーム押し操作パイロット圧Pb1が前記制限パイロット圧Pirよりも小さい場合には、当該アーム押し操作パイロット圧Pb1がそのまま最終アーム押しパイロット圧Pb2として前記アーム1速及び2速制御弁37,38のアーム押しパイロットポート37b,38bに入力されるのを許容し、前記アーム押し操作パイロット圧Pb1が前記制限パイロット圧Pir以上である場合には、当該操作パイロット圧Pb1の大きさにかかわらず前記アーム1速及び2速制御弁37,38に入力される最終アーム押しパイロット圧Pb2を前記制限パイロット圧Pirに制限するように、開弁する。
【0047】
つまり、この実施の形態に係る前記パイロット圧制限弁42A,42Bに入力される前記パイロット圧制限指令は、前記アーム1速及び2速制御弁37,38に入力される最終アーム引きパイロット圧Pa2及び最終アーム押しパイロット圧Pb2の上限値をそれぞれ規定する。
【0048】
前記コントローラ50は、前記パイロット圧制限弁42A,42Bのそれぞれに前記パイロット圧制限指令を入力してアーム引き及びアーム押しパイロット圧をそれぞれ制限することにより、前記アームシリンダ27のピストン27pが前記ストロークエンドに到達する前に当該ストロークエンドの手前の位置で当該ピストン27pを停止させるような制御を行う。前記駆動装置は、当該制御のために必要な情報を前記コントローラ50に与える手段として、複数の検出装置を備える。当該複数の検出装置は、前記制御に必要な物理量を検出し、その物理量に対応した電気信号である検出信号を生成して前記コントローラ50に入力する。
【0049】
前記複数の検出装置は、
図2及び
図4に示されるようなエンジン回転数センサ60と、第1ポンプ圧センサ61と、第2ポンプ圧センサ62と、アーム引き操作センサ67Aと、アーム押し操作センサ67Bと、最終アーム引きパイロット圧センサ68Aと、最終アーム押しパイロット圧センサ68Bと、姿勢検出装置70と、を含む。
【0050】
前記エンジン回転数センサ60は、前記エンジン30の回転数を検出する。前記第1ポンプ圧センサ61は、前記第1メインポンプ31から吐出される作動油の圧力である第1ポンプ圧P1を検出し、前記第2ポンプ圧センサ62は、前記第2メインポンプ32から吐出される作動油の圧力である第2ポンプ圧P2を検出する。
【0051】
前記アーム引き操作センサ67Aは、前記アーム引きパイロットライン40Aのうち前記アーム引きパイロット圧制限弁42Aの上流側の部分に接続され、前記アームパイロット弁47bから出力されるアーム引きパイロット圧である前記アーム引き操作パイロット圧Pa1を検出する。同様に、前記アーム押しパイロット圧センサ67Bは、前記アーム押しパイロットライン40Bのうち前記アーム押しパイロット圧制限弁42Bの上流側の部分に接続され、前記アームパイロット弁47bから出力されるアーム押しパイロット圧である前記アーム押し操作パイロット圧Pb1を検出する。
【0052】
前記最終アーム引きパイロット圧センサ68Aは、前記アーム引きパイロットライン40Aのうち前記アーム引きパイロット圧制限弁42Aの下流側の部分に接続され、当該部分におけるパイロット圧であって前記アーム1速及び2速制御弁37,38のアーム引きパイロットポート37a,38aにそれぞれ最終的に入力される(つまり前記アーム引きパイロット圧制限弁42Aによる制限が効いている場合にはその制限後の)パイロット圧である前記最終アーム引きパイロット圧Pa2を検出する。同様に、前記最終アーム押しパイロット圧センサ68Bは、前記アーム押しパイロットライン40Bのうち前記アーム押しパイロット圧制限弁42Bの下流側の部分に接続され、当該部分におけるパイロット圧であって前記アーム1速及び2速制御弁37,38のアーム押しパイロットポート37b,38bにそれぞれ最終的に入力される(つまり前記アーム引きパイロット圧制限弁42Bによる制限が効いている場合にはその制限後の)パイロット圧である前記最終アーム押しパイロット圧Pb2を検出する。
【0053】
前記姿勢検出装置70は、前記作業装置14の姿勢に関する情報であって、前記アームシリンダ27のシリンダストローク(この実施の形態ではアームシリンダ27が最も収縮した位置である最収縮位置からの伸長方向へのストローク)Scを取得するために必要な姿勢情報を検出する。具体的に、当該姿勢検出装置70は、
図1に示すようなブーム角度センサ71、アーム角度センサ72及びバケット角度センサ74を含む。前記ブーム角度センサ71は、前記機体に対する前記ブーム21の起伏角度であるブーム角度を検出する。前記アーム角度センサ72は、前記ブーム21に対する前記アーム22の回動角度であるアーム角度を検出する。前記バケット角度センサ74は前記アーム22に対する前記バケット24の回動角度であるバケット角度を検出する。
【0054】
前記コントローラ50は、前記のようなアーム引きパイロット圧及びアーム押しパイロット圧(シリンダ駆動指令)の制限により前記アームシリンダ27のピストン27pがストロークエンドに至るのを阻止するための制御を実行するとともに、当該パイロット圧の制限に対応した前記第1及び第2メインポンプ31,32のポンプ容量の制御を行う。これらの制御に関連する機能として、前記コントローラ50は、
図4に示すようなシリンダストローク演算部51と、パイロット圧制限指令部52と、制限解除判定部53と、ポンプ容量指令部54と、報知指令部55と、を備える。
【0055】
前記シリンダストローク演算部51は、前記姿勢検出装置70により検出される前記作業装置14の姿勢に基づき、前記アームシリンダ27のシリンダストローク(最収縮位置からのストローク)Srを演算する。すなわち、当該シリンダストローク演算部51は、前記姿勢検出装置70とともに、前記シリンダストロークSrを検出するシリンダストローク検出部を構成する。
【0056】
前記パイロット圧制限指令部52は、前記アーム操作レバー47aに与えられるシリンダ操作である前記アーム引き操作及び前記アーム押し操作にかかわらず前記ピストン27pが前記ストロークエンドに至る前に当該ピストン27pを当該ストロークエンドの手前の位置で停止させるために必要な前記パイロット圧制限指令であって前記シリンダストローク演算部51により演算される前記シリンダストロークScに対応したパイロット圧制限指令を演算し、これを前記アーム引きパイロット圧制限弁42Aまたは前記アーム押しパイロット圧制限弁42Bに入力することにより、必要なアーム引きパイロット圧またはアーム押しパイロット圧の制限を行う。従って、当該パイロット圧制限指令部52は、前記アーム引きパイロット圧制限弁42A及び前記アーム押しパイロット圧制限弁42Bとともに、本発明に係る駆動指令制限部を構成する。
【0057】
前記パイロット圧制限指令部52は、
図6に示されるようなアーム引きパイロット圧制限特性及び
図7に示すようなアーム押しパイロット圧制限特性を記憶し、これらに基づいて前記パイロット圧制限指令を生成する。前記アーム引きパイロット圧制限特性は、最収縮位置からの前記シリンダストロークScと最終アーム引きパイロット圧Pa2との関係について予め設定された特性であって、前記アームシリンダ27のピストン27pが伸長側のストロークエンドに到達する前にその手前側の位置(つまり前記シリンダストロークScが最大ストロークScmaxよりも一定ストロークだけ小さい位置)で当該ピストン27pを停止させるための特性であり、
図6に実線Laで示される特性である。同様に、前記アーム押しパイロット圧制限特性は、前記シリンダストロークScと最終アーム押しパイロット圧Pb2との関係について予め設定された特性であって、前記ピストン27pが収縮側のストロークエンドに到達する前にその手前側の位置(つまり前記シリンダストロークScが0よりも一定ストロークだけ大きい小さい位置)で当該ピストン27pを停止させるための特性であり、
図7に実線Lbで示される特性である。
【0058】
前記制限解除判定部53は、予め設定された条件であって前記アーム引きパイロット圧及び前記アーム押しパイロット圧の制限を解除するための条件である制限解除条件が満たされているか否かを判定する。この実施の形態に係る制限解除条件は、次の条件1及び条件2である。前記制限解除判定部53は、当該条件1及び当該条件2のいずれかが満たされている場合に制限解除条件が満たされていると判定する。
【0059】
条件1:前記アーム操作レバー47aに対して通常のアーム引き操作またはアーム押し操作とは異なる特定の操作(特別操作)が与えられていること。
【0060】
この実施の形態における前記の「特別操作」は、切り返し操作である。当該切り返し操作は、前記アームシリンダになのピストン27pを当該ピストン27pの現在の動きの方向と逆の方向に動かすための逆操作と、当該逆操作と逆向きの順操作と、が連続して行われる操作である。当該切り返し操作であると認定するために必要な前記逆操作の大きさは、適宜設定することが可能である。当該逆操作は、例えば中立位置を跨いで反対側にまで至るまでの大きさを有することを要件としてもよい。この場合、例えばアームシリンダ27が伸長方向すなわちアーム引き方向に作動しているときに前記中立位置を跨ぐ大きさで当該アームシリンダ27を収縮させる向きにアーム操作レバー47aが操作され、これと連続して当該アーム操作レバー47aを前記アーム引き方向の操作位置に戻す操作が行われたときに、前記切り返し操作が行われたと認定される。
【0061】
前記切り返し操作については、
図6及び
図7に示すような制限解除有効期間が設定されていることが好ましい。当該制限解除有効期間は、当該制限解除有効期間内に前記切り返し操作が行われた場合にのみ当該切り返し操作が有効とみなされる期間であり、この実施の形態では伸長側及び収縮側のストロークエンドの手前に一定のシリンダストローク分だけ設定された期間である。すなわち、前記制限解除判定部53は、前記アームシリンダ27のピストン27pがストロークエンドの手前の前記制限解除有効期間内に前記アーム操作レバー47aに前記切り返し操作が与えられた場合にのみこれを有効として制限解除条件が満たされたと判定することが、好ましい。このことは、オペレータがアーム引き操作またはアーム押し操作のつもりで前記切り返し操作と近似した操作をアーム操作レバー47aに与えた場合にその意思に反して前記アーム引きパイロット圧または前記アーム押しパイロット圧の制限が解除されるのを防ぐことを可能にする。
【0062】
条件2:エンジン回転数センサ60により検出されるエンジン回転数Neが予め設定された下限回転数Neoよりも低いこと。この下限回転数Neは、作業装置14の駆動による作業を行うための回転数よりも十分小さい回転数(例えばアイドル回転数)であることが、好ましい。このような下限回転数Neoの設定は、オペレータに作業の意思がなく、駐機が行われる可能性が高いとの推定を可能にする。そして、この条件2を満たす場合に制限解除を行うことは、駐機の際にオペレータが敢えてアームシリンダ27をストロークエンドに至らせる操作を行うことを可能にする。
【0063】
前記パイロット圧制限指令部52は、前記制限解除条件が満たされていると前記制限解除判定部53が判定した場合に、前記パイロット圧制限指令の生成及び入力を解除する、つまりアーム引きパイロット圧及びアーム押しパイロット圧の制限を解除する、ように構成されている。
【0064】
前記ポンプ容量指令部54は、前記ポンプ容量指令を生成してこれを前記第1及び第2メインポンプ31,32に入力することにより、当該第1及び第2メインポンプ31,32のポンプ容量を制御する。この実施の形態に係るポンプ容量指令部54は、エンジン30の最大馬力を考慮した馬力制御と、前記複数のアクチュエータ操作器に与えられる操作を考慮したいわゆるポジティブコントロールと、を実行するためのポンプ容量指令を生成する。
【0065】
具体的に、当該ポンプ容量指令部54は、前記第1及び第2ポンプ圧センサ61,62により検出される第1及び第2ポンプ圧P1,P2に基づいて馬力制御用の第1ポンプ容量及び第2ポンプ流量(第1及び第2メインポンプ31,32からそれぞれ吐出される作動油の流量)を演算するとともに、前記複数のアクチュエータ操作器にそれぞれ与えられる操作(実際には当該アクチュエータ操作器により生成されるパイロット圧)にそれぞれ対応したポジティブコントロール用ポンプ流量パラメータを算定し、これらのポンプ流量パラメータの総和に基づいていわゆるポジティブコントロール用の第1ポンプ容量及び第2ポンプ流量を演算する。そして、前記馬力制御用の第1及び第2ポンプ流量及び前記ポジティブコントロール用の第1及び第2ポンプ流量のうちの低いポンプ流量を採択して当該ポンプ流量を実現するための前記ポンプ容量指令を演算し、これを前記第1及び第2メインポンプ31,32にそれぞれ入力する。
【0066】
ただし、この実施の形態に係る前記ポンプ容量指令部54は、前記ポジティブコントロール用ポンプ流量パラメータのうち前記アームシリンダ27に関するポンプ流量パラメータqaについては、アーム操作レバー47aに与えられるアーム引き操作またはアーム押し操作に基づくのではなく、前記最終パイロット圧センサ68Aまたは68Bにより検出される最終アーム引きパイロット圧Pa2または最終アーム押しパイロット圧Pb2に基づいて当該ポンプ流量パラメータqaの算定を行う。具体的に、当該ポンプ容量指令部54は、予め設定された特性であって例えば
図8に示すような最終アームパイロット圧Pa2,Pb2に対するアームシリンダ27についてのポンプ流量パラメータqaの特性を記憶し、この特性に基づき、前記最終アームパイロット圧Pa2またはPb2に対応するポンプ流量パラメータqaを算定する。
【0067】
前記報知指令部55は、前記アーム引き操作パイロット圧Pa1及び前記最終アーム引きパイロット圧Pa2が発生している場合にはこれらを比較し、逆に前記アーム押し操作パイロット圧Pb1及び前記最終アーム押しパイロット圧Pb2が発生している場合にはこれらを比較し、いずれの場合も操作パイロット圧Pa1またはPb1が最終パイロット圧Pa2またはPb2と同等またはこれよりも大きいときに報知指令を生成して報知器80に入力する。報知器80は、例えば前記キャブ16内に設けられている場合、前記報知指令部55から前記報知指令の入力を受けたときに前記操作パイロット圧Pa1またはPb1が前記最終パイロット圧Pa2またはPb2以上である旨の報知を画面表示や音声といった周知の手段によって行う。
【0068】
次に、前記コントローラ50により行われる具体的な演算制御動作を、
図5のフローチャート及び
図6~
図8のグラフを参照しながら説明する。
【0069】
前記コントローラ50の制限解除判定部53は、制限解除条件を満たしているか否かの判定を行う(
図5のステップS1,S2)。当該制限解除条件が満たされていると当該制限解除判定部53が判定したとき、つまり、
図6及び
図7に示される制限解除有効期間内にアーム操作レバー47aに対して所定の切り返し操作が与えられたと制限解除判定部53が判定したとき(ステップS1でYES)、あるいはエンジン回転数センサ60により検出されるエンジン回転数Neが所定の下限回転数Neo以下であると判定したとき(ステップS2でYES)、パイロット圧制限指令部52はパイロット圧の制限を解除する(ステップS3)。
【0070】
具体的に、前記制限解除判定部53は、パイロット圧制限弁42A,42Bへのパイロット圧制限指令の入力を停止し、アーム操作レバー47aに与えられるアーム引き操作またはアーム押し操作によって生成されるアーム引き操作パイロット圧Pa1またはアーム押し操作パイロット圧Pa2がその大きさにかかわらずそのまま最終アーム引きパイロット圧Pa2または最終アーム押しパイロット圧Pb2としてアーム1速及び2速制御弁37,38のアーム引きパイロットポート37a,38aまたはアーム押しパイロットポート37b,38bに入力されることを許容する。例えば、前記アーム操作レバー47aがフル操作されている場合、
図6及び
図7にそれぞれ一点鎖線Lao,Lboに示されるように最終アーム引きパイロット圧Pa2または最終アーム押しパイロット圧Pb2はこれらの最大値(PamaxまたはPbmax)に維持され、アームシリンダ27のピストン27pが減速せずにストロークエンドに至ることが許容される。
【0071】
一方、前記制限解除条件が満たされていないと前記制限解除判定部53が判定したとき、つまり、
図6及び
図7に示される制限解除有効期間内にアーム操作レバー47aに対して所定の切り返し操作が与えられておらず(ステップS1でNO)、かつ、エンジン回転数センサ60により検出されるエンジン回転数Neが前記下限回転数Neoを上回っていると判定したとき(ステップS2でNO)、パイロット圧制限指令部52はパイロット圧制限指令を生成してこれをアーム引きパイロット圧制限弁42Aまたはアーム押しパイロット圧制限弁42Bに入力する(ステップS4)。これにより、前記アーム1速及び2速制御弁37,38に最終的に入力されるパイロット圧である前記最終アーム引きパイロット圧Pa2または最終アーム押しパイロット圧Pb2は
図6及び
図7に示される制限特性に従って制限され、実際にアーム操作レバー47aに与えられるアーム引き操作またはアーム押し操作にかかわらずストロークエンドの手前で強制的に低下させられる。
【0072】
前記最終パイロット圧Pa2またはPb2の制限により、アーム1速及び2速制御弁37,38のバルブストローク(中立位置からのスプールのストローク)が抑制され、アームシリンダ27のピストン27pはストロークエンドの手前の所定位置で自動的に減速を開始し、当該ストロークエンドに至る前に停止する。これにより、当該ピストン27pとシリンダ本体27cとの衝撃的な当接が回避される。また、それぞれストロークエンドに
図3に示すようなクッション構造またはこれに類する構造が与えられている場合でも、前記ピストン27pの前記ストロークエンドへの突入及び当該ストロークエンドからの離脱に伴うエネルギーロスが有効に低減される。
【0073】
このようなパイロット圧の制限が行われるとき、前記コントローラ50の報知指令部55は、アーム引き操作パイロット圧Pa1と最終アーム引きパイロット圧Pa2との比較またはアーム押し操作パイロット圧Pb1と最終アーム押しパイロット圧Pb2との比較を行い、当該操作パイロット圧Pa1またはPb1が当該最終パイロット圧Pa2またはPb2以上である場合に(ステップS5でYES)報知器80に報知指令を入力してその報知を行わせる。例えば、前記アーム引き操作パイロット圧Pa1が
図6に二点鎖線Lamで示されるように最終アーム引きパイロット圧Pa2(すなわち制限パイロット圧Pir)を上回る場合、あるいは、前記アーム押し操作パイロット圧Pb1が
図7に二点鎖線Lbmで示されるように最終アーム押しパイロット圧Pb2(すなわち制限パイロット圧Pir)を上回る場合、前記報知器80はオペレータに対してその旨の報知、すなわち、当該操作パイロット圧Pa1またはPbeが当該最終パイロット圧Pa2またはPb2を上回っていることの報知を行う。この報知は、前記ピストン27pの減速が前記パイロット圧の制限によるものであって故障に起因するものではないことをオペレータに知らしめるのに加え、当該オペレータが実際に操作部材に与えている操作がピストンをストロークエンドよりも手前の位置で停止させるには過大であることを当該オペレータが認識することを可能にする。このことは、アームシリンダ27のストロークエンドでの衝撃を回避するようなマニュアル運転を行うためのオペレータの技量の向上に寄与し得る。
【0074】
前記コントローラ50のポンプ指令入力部54は、前記アーム引きパイロット圧またはアーム押しパイロット圧の制限の有無にかかわらず、アーム操作レバー47aに与えられる操作に対応する操作パイロット圧Pa1またはPb1ではなくアーム1速及び2速制御弁37,38に最終的に入力される最終パイロット圧Pa2またはPb2に基づいてポジティブコントロール用のポンプ流量パラメータqa(
図8)を算定し、当該ポンプ流量パラメータqaを用いて最終のポンプ容量指令を生成して第1及び第2メインポンプ31,32に入力する(ステップS7)。このような最終パイロット圧Pa2,Pb2に基づくポンプ流量パラメータの算定は、通常のポジティブコントロールすなわち実際にアーム操作レバー47aに与えられる操作に基づくポンプ制御に比べ、前記パイロット圧の制限に伴うアームシリンダ27の必要流量の低減を考慮したより効率的な第1及び第2メインポンプ31,32の運転を可能にする。
【0075】
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されない。本発明は、例えば次のような態様を包含する。
【0076】
(A)駆動対象及び駆動指令の制限について
本発明に係る装置の駆動対象となる油圧シリンダは前記アームシリンダ27に限定されない。当該油圧シリンダは、例えば前記ブームシリンダ26やバケットシリンダ28、あるいは前記バケット24に代えて前記アーム22の先端に装着されるオプション機器を動かすオプションシリンダであってもよい。また、一つの作業機械に搭載される複数の油圧シリンダについて本発明に係る駆動装置が適用されてもよい。
【0077】
本発明に係るシリンダ駆動指令の制限は、伸長側及び収縮側ストロークエンドのうちの一方のストロークエンドについてのみ行われてもよい。例えば、伸長側ストロークエンドに比べて収縮側ストロークエンドでの衝撃が顕著である場合、当該収縮側ストロークエンドについてのみ駆動指令の制限が行われてもよい。
【0078】
(B)制限解除について
本発明において、制限解除のために行われる制限解除操作は前記アーム操作レバー47aその他の操作部材に与えられる切り返し操作に限定されない。当該制限解除操作は、前記操作部材に与えられる他種の操作であってもよいし、当該操作部材とは別に用意された制限解除専用のスイッチに与えられる操作であってもよい。例えば、前記アーム操作レバー47aの特定部位に押圧操作を受けることが可能な制限解除用スイッチが設けられてもよい。
【0079】
また、本発明においてシリンダ駆動指令の制限解除は必須ではない。すなわち、当該シリンダ駆動指令の制限が常に行われるものでもよいし。しかし、前記制限解除を可能にすることは、オペレータが意図的に油圧シリンダをストロークエンドに至らせる作業を可能にする利点がある。例えば、前記バケットシリンダ28について本発明に係る駆動装置が適用される場合、オペレータはその制限を解除することにより、前記バケットシリンダ28のピストンがストロークエンドに至る際の衝撃を利用して前記バケット24に付着した泥や土を落とすといった作業を行うことが可能である。
【0080】
(C)駆動指令入力部及び駆動指令制限部について
本発明に係る駆動指令入力部は、
図2に示されるようなパイロットポンプ34とアームパイロット弁47bの組合せ(つまり操作パイロット圧を生成する手段)に限定されない。本発明は、電気操作式の駆動装置にも適用されることが可能である。
【0081】
その例(変形例)に係るコントローラ50Aを
図9に示す。当該コントローラ50Aには電気レバー装置82及びパイロット操作弁44が電気的に接続されている。前記電気レバー装置82は、オペレータによるシリンダ操作を受け、当該シリンダ操作に対応する電気信号である操作信号を生成して前記コントローラ50Aに入力する。前記パイロット操作弁44は、図略のパイロット油圧源(例えば前記パイロットポンプ34)とパイロット操作式のシリンダ制御弁との間に介在する電磁弁(例えば電磁比例減圧弁)であり、前記コントローラ50から入力されるパイロット圧指令に対応したパイロット圧が前記シリンダ制御弁に入力されるのを許容するように開弁する。
【0082】
前記コントローラ50Aは、
図4に示される前記コントローラ50のパイロット圧制限指令部52に代えて制限パイロット圧演算部57及びパイロット圧指令部58を有する。前記制限パイロット圧演算部57は油圧シリンダのピストンがストロークエンドに至るのを防ぐための制限パイロット圧を演算する。前記パイロット圧指令部58は、前記電気レバー装置82から入力される操作信号に対応する操作パイロット圧と、前記制限パイロット圧演算部57により演算される制限パイロット圧と、を比較し、そのうち低い方のパイロット圧が最終的にシリンダ制御弁に入力されるようにパイロット操作弁44に前記パイロット圧指令を入力する。
【0083】
この変形例において、前記電気レバー装置82のうちシリンダ操作を受ける操作レバーが本発明に係る操作部材に相当し、前記操作信号を生成及び出力する部分及び前記パイロット圧指令部58がパイロット油圧源とともに駆動指令入力部を構成する。また、当該パイロット圧指令部58は、前記制限パイロット圧演算部57とともに駆動指令制限部を構成する。前記コントローラ50Aは、第1の実施の形態に係るコントローラ50と同様、
図4に示される制限解除判定部53、ポンプ容量指令部54、報知指令部55の少なくとも1つを含むことも可能である。
【0084】
(D)シリンダ制御弁について
本発明に係るシリンダ制御弁は、駆動対象である油圧シリンダに接続されるものであればよく、前記アーム1速及び2速制御弁37,38に限定されない。例えば、駆動対象が前記ブームシリンダ26またはバケットシリンダ28である場合、本発明に係るシリンダ制御弁にはブーム制御弁またはバケット制御弁が該当する。また、当該シリンダ制御弁の個数は問わず、前記アーム1速及び2速制御弁37,38のように共通の駆動対象に接続される複数の制御弁であってもよい。
【0085】
(E)駆動指令制限特性について
本発明において、油圧シリンダのピストンがストロークエンドに至るのを防ぐためのシリンダ駆動指令のシリンダストロークに対する制限特性は、
図6及び
図7に示されるような特性に限定されない。当該特性は、例えば滑らかな曲線によって与えられるものでもよいし、駆動指令を複数の段階にわたって制限するものでもよい。
【0086】
(F)ポンプ容量制御について
本発明において、ポンプ容量制御は必ずしも要しない。例えば、油圧シリンダを駆動するための油圧ポンプは固定容量型であってもよい。また、ポジティブコントロール用のポンプ流量の算定によるポンプ容量制御が実行される場合でも、当該ポンプ流量の算定は
図2に示される最終アーム引き及びアーム押しパイロット圧センサ68A,68Bのようなパイロット圧センサが検出する最終パイロット圧に基づくものに限定されない。当該算定は、例えば、前記操作パイロット圧Pa1またはPb1と、
図4に示されるパイロット圧制限指令部52からパイロット圧制限弁42A,42Bに入力されるパイロット圧制限指令に対応する制限パイロット圧Pirと、のうち低い方のパイロット圧(つまりは最終パイロット圧)に基づいて算定されてもよい。
【符号の説明】
【0087】
10 下部走行体
12 上部旋回体
14 作業装置
22 アーム
27 アームシリンダ(油圧シリンダ)
30 エンジン
31 第1メインポンプ(油圧ポンプ)
32 第2メインポンプ(油圧ポンプ)
37 アーム1速制御弁(シリンダ制御弁)
38 アーム2速制御弁(シリンダ制御弁)
42A アーム引きパイロット圧制限弁(駆動指令制限部)
42B アーム押しパイロット圧制限弁(駆動指令制限部)
44 パイロット操作弁
47 アーム操作器
47a アーム操作レバー(操作部材)
47b アームパイロット弁(駆動指令入力部)
50,50A コントローラ
51 シリンダストローク演算部(シリンダストローク検出部)
52 パイロット圧制限指令部(駆動指令制限部)
53 制限解除判定部
54 ポンプ容量指令部(ポンプ容量制御部)
55 報知指令部(報知部)
57 制限パイロット圧演算部(駆動指令制限部)
58 パイロット圧指令部(駆動指令入力部及び駆動指令制限部)
60 エンジン回転数センサ
70 姿勢検出装置(シリンダストローク検出部)
80 報知器(報知部)
82 電気レバー装置(駆動指令入力部)