(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】層転写装置
(51)【国際特許分類】
B41F 16/00 20060101AFI20230704BHJP
B65H 16/06 20060101ALI20230704BHJP
B65H 18/06 20060101ALI20230704BHJP
B41J 15/06 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
B41F16/00 B
B65H16/06 B
B65H18/06
B41J15/06
(21)【出願番号】P 2019011989
(22)【出願日】2019-01-28
【審査請求日】2022-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】酒井 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】市川 智也
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-218960(JP,A)
【文献】特開平03-056349(JP,A)
【文献】特開平10-301464(JP,A)
【文献】特開平09-314968(JP,A)
【文献】特開平04-071883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 16/00
B65H 16/00
B65H 18/00
G03G 15/00
B41J 2/00
B41J 17/00
B41J 29/00
B65C 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートのトナー像が形成された面に複数の層からなる多層フィルムを重ね、前記トナー像の上に前記多層フィルムの少なくとも一層を転写する層転写装置であって、
前記多層フィルムが巻回される供給リール、前記多層フィルムを巻き取るための巻取リール、および、前記供給リールおよび前記巻取リールを支持するホルダを備えるフィルムユニットと、
前記フィルムユニットが着脱可能であり、前記巻取リールを駆動するための駆動源を支持する筐体と、を備え、
前記巻取リールは、前記駆動源から駆動力が入力される駆動力入力部材を備え、
前記筐体は、
前記フィルムユニットが前記筐体に着脱される際において、前記供給リールの回転軸に直交する第1方向に前記ホルダをガイドする第1ガイドと、
前記フィルムユニットが前記筐体に着脱される際において、前記巻取リールの回転軸に直交する第2方向に前記巻取リールをガイドする第2ガイドと、
前記第1ガイドのガイド方向端部を含み、前記ホルダを位置決めする第1位置決め部と、
前記第2ガイドのガイド方向端部を含み、前記巻取リールを位置決めする第2位置決め部と、を備え
、
前記巻取リールは、前記ホルダに対して移動可能に支持され、
前記第1ガイドは、
前記第1方向に沿って延びる第1部位と、
前記第1部位と前記第1位置決め部とを繋ぐ第2部位と、を有し、
前記第1位置決め部は、前記第1部位よりも前記第2位置決め部の近くに位置し、
前記第2部位は、前記第1方向に対して傾斜していることを特徴とする層転写装置。
【請求項2】
前記巻取リールは、前記巻取リールの回転軸に沿った方向に延びる巻取軸部を備え、
前記駆動力入力部材は、前記巻取リールの回転軸上に配置され、
前記第2ガイドは、前記第2方向に前記巻取軸部をガイドし、
前記第2位置決め部は、前記巻取軸部を前記筐体に対して位置決めすることを特徴とする請求項
1に記載の層転写装置。
【請求項3】
前記ホルダは、前記供給リールの回転軸と前記巻取リールの回転軸とを結ぶ直線に沿った第3方向の一方側への前記巻取リールの移動を規制する第1規制面と、前記第3方向の他方側への前記巻取リールの移動を規制する第2規制面と、を有し、
前記フィルムユニットが前記筐体に位置決めされた状態において、前記第1規制面と前記第2規制面の両方が前記第3方向において前記巻取リールから離れることを特徴とする請求項
1または請求項2に記載の層転写装置。
【請求項4】
前記ホルダは、前記第2方向の一方側への前記巻取リールの移動を規制する第3規制面と、前記第2方向の他方側への前記巻取リールの移動を規制する第4規制面と、を有し、
前記フィルムユニットが前記筐体に位置決めされた状態において、前記第3規制面と前記第4規制面の両方が前記第2方向において前記巻取リールから離れることを特徴とする請求項
3に記載の層転写装置。
【請求項5】
前記筐体は、前記フィルムユニットが通過可能な開口を有する筐体本体と、前記供給リールの回転軸方向に沿って延びる回動軸を中心に前記筐体本体に対して回動することで前記開口を開閉するカバーと、を備え、
前記ホルダは、前記第1ガイドでガイドされるボスを有し、前記第1ガイドで前記ボスがガイドされた状態で前記ボスを中心に回動可能であり、
前記第1ガイドは、前記第2ガイドよりも前記カバーの回動軸の近くに位置することを特徴とする請求項
1から請求項
4のいずれか1項に記載の層転写装置。
【請求項6】
前記供給リールは、前記供給リールの回転軸を中心にして前記供給リールとともに回転する供給ギヤを有し、
前記ホルダは、
前記筐体が保持する筐体ギヤと噛み合うホルダギヤと、
前記ホルダギヤの回転方向が前記供給ギヤの回転方向とは逆方向となるように、前記ホルダギヤと前記供給ギヤを連結するギヤ列と、を有し、
前記供給ギヤが回転する際に、前記ホルダの前記ボスが前記第1位置決め部に付勢されることを特徴とする請求項
5に記載の層転写装置。
【請求項7】
前記供給ギヤおよび前記ホルダギヤは、前記供給リールの回転軸を中心に回転し、
前記ボスは、前記供給リールの回転軸上に位置することを特徴とする請求項
6に記載の層転写装置。
【請求項8】
前記筐体に支持され、前記駆動源の駆動力を伝達する駆動ギヤを備え、
前記駆動力入力部材は、前記駆動ギヤと噛合可能な巻取ギヤであることを特徴とする請求項1から請求項
7のいずれか1項に記載の層転写装置。
【請求項9】
前記筐体に支持され、前記巻取リールの回転軸に沿った方向に進退可能な駆動力出力部材を備え、
前記駆動力入力部材は、前記駆動力出力部材と前記巻取リールの回転方向で係合可能なカップリングであることを特徴とする請求項1から請求項
7のいずれか1項に記載の層転写装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートのトナー像の上に多層フィルムの少なくとも一層を転写する層転写装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、層転写装置として、多層フィルムが巻回された供給リールと、多層フィルムを巻き取るための巻取リールとを備えたカートリッジを備えるものが知られている(特許文献1参照)。この技術では、カートリッジが、層転写装置の筐体に着脱可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来技術のように供給リールと巻取リールをカートリッジ化した場合には、筐体に対するカートリッジの位置決めが重要となる。特に、駆動力が入力される巻取リールについては、筐体に対する位置決めがより重要となっている。
【0005】
そこで、本発明は、層転写装置において、筐体に対してカートリッジを良好に位置決めすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る層転写装置は、シートのトナー像が形成された面に複数の層からなる多層フィルムを重ね、前記トナー像の上に前記多層フィルムの少なくとも一層を転写する層転写装置であって、前記多層フィルムが巻回される供給リール、前記多層フィルムを巻き取るための巻取リール、および、前記供給リールおよび前記巻取リールを支持するホルダを備えるフィルムユニットと、前記フィルムユニットが着脱可能であり、前記巻取リールを駆動するための駆動源を支持する筐体と、を備える。
前記巻取リールは、前記駆動源から駆動力が入力される駆動力入力部材を備える。
前記筐体は、前記フィルムユニットが前記筐体に着脱される際において、前記供給リールの回転軸に直交する第1方向に前記ホルダをガイドする第1ガイドと、前記フィルムユニットが前記筐体に着脱される際において、前記巻取リールの回転軸に直交する第2方向に前記巻取リールをガイドする第2ガイドと、前記第1ガイドのガイド方向端部を含み、前記ホルダを位置決めする第1位置決め部と、前記第2ガイドのガイド方向端部を含み、前記巻取リールを位置決めする第2位置決め部と、を備える。
【0007】
この構成によれば、供給リールの回転軸に直交する方向に着脱されるフィルムユニットを、筐体に対して良好に位置決めすることができる。駆動力入力部材を有する巻取リールを、第2位置決め部によって筐体に直接位置決めするので、駆動力入力部材を駆動源に対して適正な位置に配置することができ、駆動源からの駆動力を良好に巻取リールに伝達させることができる。
【0008】
また、前記巻取リールは、前記ホルダに対して移動可能に支持されていてもよい。
【0009】
これによれば、ホルダに対して巻取リールが移動可能であるため、ホルダと巻取リールを各位置決め部に良好に位置決めすることができる。
【0010】
また、前記巻取リールは、前記巻取リールの回転軸に沿った方向に延びる巻取軸部を備え、前記駆動力入力部材は、前記巻取リールの回転軸上に配置され、前記第2ガイドは、前記第2方向に前記巻取軸部をガイドし、前記第2位置決め部は、前記巻取軸部を前記筐体に対して位置決めするように構成されていてもよい。
【0011】
これによれば、駆動力入力部材と同軸上の巻取軸部をガイドして位置決めするので、駆動力入力部材と同軸上にない巻取リールの部分をガイドして位置決めするよりも、駆動力入力部材を駆動源に対して適正な位置に配置することができる。
【0012】
また、前記第1ガイドは、前記第1方向に沿って延びる第1部位と、前記第1部位と前記第1位置決め部とを繋ぐ第2部位と、を有し、前記第1位置決め部は、前記第1部位よりも前記第2位置決め部の近くに位置し、前記第2部位は、前記第1方向に対して傾斜していてもよい。
【0013】
これによれば、第1ガイドが、第1部位と第2部位との間で屈曲しているので、ホルダが第1位置決め部から外れるのを抑えることができる。
【0014】
また、前記ホルダは、前記供給リールの回転軸と前記巻取リールの回転軸とを結ぶ直線に沿った第3方向の一方側への前記巻取リールの移動を規制する第1規制面と、前記第3方向の他方側への前記巻取リールの移動を規制する第2規制面と、を有し、前記フィルムユニットが前記筐体に位置決めされた状態において、前記第1規制面と前記第2規制面の両方が前記第3方向において前記巻取リールから離れていてもよい。
【0015】
これによれば、巻取リールの第2位置決め部で位置決めされる部分が、第2位置決め部に装着される前の状態で、第2位置決め部に対して第3方向の一方側と他方側に動けるので、ホルダが第1ガイドでガイドされた状態でも、巻取リールを第2位置決め部に良好に装着することができる。
【0016】
また、前記ホルダは、前記第2方向の一方側への前記巻取リールの移動を規制する第3規制面と、前記第2方向の他方側への前記巻取リールの移動を規制する第4規制面と、を有し、前記フィルムユニットが前記筐体に位置決めされた状態において、前記第3規制面と前記第4規制面の両方が前記第2方向において前記巻取リールから離れていてもよい。
【0017】
これによれば、前記フィルムユニットが前記筐体に位置決めされた状態において、巻取リールが各規制面と接触しないので、巻取リールの回転時において各規制面が摩耗するのを抑えることができる。
【0018】
また、前記筐体は、前記フィルムユニットが通過可能な開口を有する筐体本体と、前記供給リールの回転軸方向に沿って延びる回動軸を中心に前記筐体本体に対して回動することで前記開口を開閉するカバーと、を備え、前記ホルダは、前記第1ガイドでガイドされるボスを有し、前記第1ガイドで前記ボスがガイドされた状態で前記ボスを中心に回動可能であり、前記第1ガイドは、前記第2ガイドよりも前記カバーの回動軸の近くに位置していてもよい。
【0019】
これによれば、カバーを開けてフィルムユニットをカバーの回動軸に向けて装着していく場合において、フィルムユニットのボスを、カバーの回動軸側、つまり層転写装置の奥側の第1ガイドに係合させた後、このボスを中心にして手前の巻取リールを回動させて第2ガイドに係合させることができるので、フィルムユニットの装着作業を容易に行うことができる。
【0020】
また、前記供給リールは、前記供給リールの回転軸を中心にして前記供給リールとともに回転する供給ギヤを有し、前記ホルダは、前記筐体が保持する筐体ギヤと噛み合うホルダギヤと、前記ホルダギヤの回転方向が前記供給ギヤの回転方向とは逆方向となるように、前記ホルダギヤと前記供給ギヤを連結するギヤ列と、を有し、前記供給ギヤが回転する際に、前記ホルダの前記ボスが前記第1位置決め部に付勢されるように構成されていてもよい。
【0021】
これによれば、供給ギヤの回転方向とホルダギヤの回転方向が逆方向であるため、例えば、供給ギヤの回転方向を多層フィルムの送り出し方向に維持しつつ、ホルダを第1位置決め部に付勢することができるので、供給ギヤが回転する際にホルダが第1位置決め部から外れるのを抑制することができる。
【0022】
また、前記供給ギヤおよび前記ホルダギヤは、前記供給リールの回転軸を中心に回転し、前記ボスは、前記供給リールの回転軸上に位置していてもよい。
【0023】
これによれば、ボス、供給ギヤおよびホルダギヤを精度良く配置することができる。
【0024】
また、前記層転写装置は、前記筐体に支持され、前記駆動源の駆動力を伝達する駆動ギヤを備え、前記駆動力入力部材は、前記駆動ギヤと噛合可能な巻取ギヤであってもよい。
【0025】
また、前記筐体は、前記巻取リールの回転軸に沿った方向に進退可能な駆動力出力部材を備え、前記駆動力入力部材は、前記駆動力出力部材と前記巻取リールの回転方向で係合可能なカップリングであってもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、層転写装置において、筐体に対してカートリッジを良好に位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態に係るフィルムユニットが装着された層転写装置を示す図である。
【
図2】層転写装置のカバーを開けた状態を示す図である。
【
図5】フィルムユニットを軸方向から見た側面図である。
【
図6】規制フレームを解除位置に移動させた状態を示す断面図(a)と、規制位置に位置する規制フレームを第2開口側から見た図(b)である。
【
図7】巻取リールの一端部周りの構造を示す図(a)と、他端部周りの構造を示す図(b)である。
【
図8】ギヤ機構を示す斜視図(a)と、ギヤ機構と第1位置決め部との関係を示す側面図(b)である。
【
図9】供給リールの供給ギヤ側の構造を示す断面図である。
【
図10】フィルムユニットを筐体本体に装着する動作を示す図(a),(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明においては、まず、層転写装置の全体構成を簡単に説明した後、本願発明の特徴部分の構成について説明する。
以下の説明において、方向は、
図1に示す方向で説明する。すなわち、
図1の右側を「前」とし、
図1の左側を「後」とし、
図1の紙面手前側を「左」とし、
図1の紙面奥側を「右」とする。また、
図1の上下を「上下」とする。
【0029】
図1に示すように、層転写装置1は、例えばレーザプリンタ等の画像形成装置でシートSにトナー像を形成した後、シートSのトナー像の上にアルミニウム等の箔を転写するための装置である。層転写装置1は、筐体2と、シートトレイ3と、シート搬送部10と、フィルム供給部30と、転写部50とを備えている。
【0030】
筐体2は、樹脂などからなり、筐体本体21と、カバー22とを備えている。筐体本体21は、上部に開口21A(
図2参照)を有している。開口21Aは、筐体本体21に後述するフィルムユニットFUを着脱するための開口であり、フィルムユニットFUが通過可能となっている。カバー22は、開口21Aを開閉するための部材である。カバー22の後端部は、筐体本体21に回動可能に支持されている。詳しくは、カバー22は、後述する供給リール31の回転軸方向に沿って延びる回動軸X3を中心に筐体本体21に対して回動可能となっている。
【0031】
シートトレイ3は、用紙、OHPフィルム等のシートSが載置されるトレイである。シートトレイ3は、筐体2の後部に設けられている。なお、シートSは、トナー像が形成された面を下向きにしてシートトレイ3上に載置される。
【0032】
シート搬送部10は、シート供給機構11と、シート排出機構12とを備えている。シート供給機構11は、シートトレイ3上のシートSを一枚ずつ転写部50に向けて搬送する機構である。シート供給機構11は、ピックアップローラと搬送ローラを備えている。
【0033】
シート排出機構12は、転写部50を通過したシートSを筐体2の外部に排出する機構である。シート排出機構12は、複数の搬送ローラを備えている。
【0034】
フィルム供給部30は、シート供給機構11から搬送されたシートSに重ねるように多層フィルムFを供給する部分である。フィルム供給部30は、フィルムユニットFUと、モータ等の駆動源80を備えている。駆動源80は、筐体2に支持されている。
【0035】
フィルムユニットFUは、
図2に示すように、後述する供給リール31の軸方向に直交する方向において、筐体本体21に着脱可能となっている。フィルムユニットFUは、供給リール31と、巻取リール35と、第1案内軸41と、第2案内軸42と、第3案内軸43とを備えている。フィルムユニットFUの供給リール31には、多層フィルムFが巻回されている。
【0036】
多層フィルムFは、複数の層からなるフィルムである。詳しくは、多層フィルムFは、
支持層と、被支持層とを有する。支持層は、高分子材料からなるテープ状の透明な基材であり、被支持層を支持している。被支持層は、例えば、剥離層と、転写層と、接着層とを有する。剥離層は、支持層から転写層を剥離しやすくするための層であり、支持層と転写層との間に配置されている。剥離層は、支持層から剥離しやすい透明な材料、例えばワックス系樹脂を含んでいる。
【0037】
転写層は、トナー像に転写される層であり、箔を含んでいる。箔とは、金、銀、銅、アルミニウム等の金属であって薄く延された金属である。また、転写層は、金色、銀色、赤色などの着色材料と、熱可塑性樹脂とを含む。転写層は、剥離層と接着層との間に配置されている。接着層は、転写層をトナー像に接着しやすくするための層である。接着層は、後述する転写部50によって加熱されたトナー像に付着しやすい材料、例えば塩化ビニル系樹脂やアクリル系樹脂を含んでいる。
【0038】
供給リール31は、樹脂などからなり、多層フィルムFが巻回される供給軸部31Aを有している。多層フィルムFは、支持層を外側、被支持層を内側にして、供給リール31に巻回されている。
【0039】
巻取リール35は、樹脂などからなり、多層フィルムFを巻き取るための巻取軸部35Aを有している。多層フィルムFは、支持層を外側、被支持層を内側にして、巻取リール35に巻回されている。
【0040】
なお、
図1等においては、便宜上、供給リール31および巻取リール35の両方に多層フィルムFが最大に巻回された状態を図示することとする。実際には、フィルムユニットFUが新品の状態においては、供給リール31に巻回されたロール状の多層フィルムFの径は最大となっており、巻取リール35には多層フィルムFが巻回されていない、もしくは、巻取リール35に巻回されたロール状の多層フィルムFの径は最小となっている。また、フィルムユニットFUの寿命時(多層フィルムFを使い切ったとき)においては、巻取リール35に巻回されたロール状の多層フィルムFの径は最大となり、供給リール31には多層フィルムFが巻回されていない、もしくは、供給リール31に巻回されたロール状の多層フィルムFの径は最小となる。
【0041】
第1案内軸41は、供給リール31から引き出される多層フィルムFの進行方向を変更するための軸である。第1案内軸41は、樹脂などからなっている。
【0042】
第2案内軸42は、第1案内軸41で案内された多層フィルムFの進行方向を変更するための軸である。第2案内軸42は、樹脂などからなっている。
【0043】
第3案内軸43は、第2案内軸42で案内された多層フィルムFの進行方向を変更して巻取リール35に案内する軸である。第3案内軸43は、樹脂などからなっている。
【0044】
フィルムユニットFUを層転写装置1に装着した状態において、巻取リール35は、筐体2に設けられた駆動源80によって図示反時計回りに回転駆動される。巻取リール35が回転すると、供給リール31に巻回された多層フィルムFが引き出され、引き出された多層フィルムFが巻取リール35に巻き取られていく。詳しくは、箔転写中において、後述する加圧ローラ51と加熱ローラ61によって多層フィルムFが送り出されることで、供給リール31から多層フィルムFが引き出される。そして、加圧ローラ51と加熱ローラ61から送り出された多層フィルムFが、巻取リール35に巻き取られていく。
【0045】
第1案内軸41は、トナー像を下にした状態で搬送されるシートSに対して、供給リール31から引き出された多層フィルムFを、被支持層F2(
図3参照)を上にした状態で下から重ねるように案内している。第1案内軸41は、供給リール31から引き出された多層フィルムFの搬送方向を変えて、シートSの搬送方向と略平行に多層フィルムFを案内する。
【0046】
第2案内軸42は、転写部50を通過した多層フィルムFと接触し、転写部50を通過した多層フィルムFの搬送方向をシートSの搬送方向とは異なる方向に変更している。転写部50を通過してシートSと重なった状態で搬送された多層フィルムFは、第2案内軸42を通過する際にシートSとは異なる方向に案内され、シートSから剥離される。
【0047】
転写部50は、シートSと多層フィルムFを重ねた状態で加熱および加圧することで、シートSに形成されたトナー像の上に転写層を転写するための部分である。転写部50は、加圧部材の一例としての加圧ローラ51と、加熱部材の一例としての加熱ローラ61とを備えている。転写部50は、加圧ローラ51と加熱ローラ61のニップ部において、シートSと多層フィルムFを重ねて加熱および加圧する。
【0048】
加圧ローラ51は、円筒状の芯金の周囲をシリコンゴムからなるゴム層で被覆したローラである。加圧ローラ51は、多層フィルムFの上側に配置され、シートSの裏面(トナー像が形成された面と反対側の面)と接触可能となっている。
【0049】
加圧ローラ51は、両端部がカバー22に回転可能に支持されている。加圧ローラ51は、加熱ローラ61との間でシートSおよび多層フィルムFを挟み、駆動源80によって回転駆動されることで加熱ローラ61を従動回転させる。
【0050】
加熱ローラ61は、円筒状に形成された金属管の内部にヒータを配置したローラであり、多層フィルムFおよびシートSを加熱している。加熱ローラ61は、多層フィルムFの下側に配置され、多層フィルムFと接触している。
【0051】
なお、本実施形態では、加熱ローラ61を多層フィルムFに対して接触・離間させるための接離機構70によって加熱ローラ61を移動させている。接離機構70は、カバー22を閉じている状態においては、シートSが転写部50に供給されるタイミングに合わせて加熱ローラ61を、多層フィルムFに接触する接触位置に移動させている。また、接離機構70は、カバー22が開けられた場合や、転写部50においてシートSに箔転写を行わない場合には、加熱ローラ61を、多層フィルムFから離間する離間位置に位置させている。
【0052】
このように構成された層転写装置1では、シートSの表面を下向きにしてシートトレイ3に載置されたシートSが、シート供給機構11により一枚ずつ転写部50に向けて搬送される。シートSは、転写部50のシート搬送方向における上流側で、供給リール31から供給された多層フィルムFと重ねられ、シートSのトナー像と多層フィルムFが接触した状態で転写部50に搬送される。
【0053】
転写部50においては、シートSと多層フィルムFが加圧ローラ51と加熱ローラ61の間のニップ部を通過する際に、加熱ローラ61と加圧ローラ51により加熱および加圧され、トナー像の上に箔が転写される。
【0054】
箔が転写された後、シートSと多層フィルムFは密着した状態で第2案内軸42まで搬送される。シートSと多層フィルムFが第2案内軸42を通過すると、多層フィルムFの搬送方向がシートSの搬送方向と異なる方向に変わるため、シートSから多層フィルムFが剥離される。
【0055】
シートSから剥離された多層フィルムFは、巻取リール35に巻き取られていく。一方、多層フィルムFが剥離されたシートSは、シート排出機構12によって、箔が転写された表面を下に向けた状態で、筐体2の外部に排出される。
【0056】
図2に示すように、筐体本体21は、第1位置決め部P1と、第2位置決め部P2と、第3位置決め部P3と、第1ガイドGD1と、第2ガイドGD2とを備えている。第1位置決め部P1は、フィルムユニットFUの後述するホルダ100を位置決めするための部位である。詳しくは、
図4に示すように、ホルダ100は、円柱状のボス111Cを供給リール31の回転軸方向両端に有している。
図2に戻って、第1位置決め部P1は、ボス111Cの外周面に沿った略半円状の溝として形成されている。第1位置決め部P1は、第1ガイドGD1のガイド方向端部を含む。つまり、第1位置決め部P1は、第1ガイドGD1のガイド方向端部に一体に形成されている。
【0057】
第2位置決め部P2は、巻取リール35を位置決めするための部位である。詳しくは、
図3に示すように、巻取リール35は、当該巻取リール35の回転軸に沿った方向に延びる巻取軸部35Aを備えている。巻取軸部35Aの両端部は、円柱状に形成されている。
図2に戻って、第2位置決め部P2は、巻取軸部35Aの端部の外周面に沿った略半円状の溝として形成され、巻取軸部35Aを筐体2に対して位置決めする。第2位置決め部P2は、第2ガイドGD2のガイド方向端部を含む。つまり、第2位置決め部P2は、第2ガイドGD2のガイド方向端部に一体に形成されている。
【0058】
第3位置決め部P3は、ホルダ100を位置決めするための部位である。詳しくは、
図10(a)に示すように、ホルダ100は、位置決め用の穴HPを有している。穴HPは、供給リール31よりも巻取リール35の近くに配置されている。詳しくは、穴HPは、後述するホルダ100の第2保持部112に形成されている。
【0059】
図2に戻って、第1ガイドGD1は、フィルムユニットFUが筐体本体21に着脱される際において、供給リール31の回転軸に直交する第1方向にホルダ100をガイドするガイドである。なお、本実施形態では、第1方向を、供給リール31の回転軸に直交する方向であって、上下方向および前後方向に対して傾いた方向とする。
【0060】
第2ガイドGD2は、フィルムユニットFUが筐体本体21に着脱される際において、巻取リール35の回転軸に直交する第2方向に巻取リール35の巻取軸部35Aをガイドするガイドである。なお、本実施形態では、第2方向を第1方向と同じ方向であることとする。なお、第2方向は、第1方向に対して若干異なる方向であってもよい。第2ガイドGD2は、第1方向に沿った溝であり、上端が開口21Aに向けて開口し、下端が第2位置決め部P2に繋がっている。
【0061】
第1ガイドGD1は、第2ガイドGD2よりもカバー22の回動軸X3の近くに位置している。第1ガイドGD1は、第1部位GD11と、第2部位GD12とを有している。第1部位GD11は、第1方向に沿って延びる溝であり、上端が開口21Aに向けて開口している。
【0062】
第2部位GD12は、第1部位GD11と第1位置決め部P1とを繋ぐ溝であり、第1部位GD11の下端から下方に延びている。つまり、第2部位GD12は、第1方向に対して傾斜している。
【0063】
第1位置決め部P1は、第1方向および回動軸X3に直交する第3方向において、第1部位GD11よりも第2位置決め部P2の近くに位置している。つまり、第3方向において、第1位置決め部P1から第2位置決め部P2までの距離は、第1部位GD11から第2位置決め部P2までの距離よりも小さくなっている。
【0064】
図3および
図4に示すように、フィルムユニットFUは、樹脂などからなるホルダ100と、ホルダ100に着脱可能なフィルムカートリッジ200とを備えている。フィルムカートリッジ200は、前述した多層フィルムFが巻回された供給リール31および巻取リール35と、供給ケース32とを備えている。供給リール31(詳しくは、供給ケース32)および巻取リール35は、ホルダ100に対して、供給リール31の軸方向に直交する方向に着脱可能となっている。
【0065】
供給ケース32は、供給リール31を収容する中空のケースである。供給ケース32は、樹脂などからなり、略円筒状の外周壁32Aと、外周壁32Aの両端に設けられる略円板状の2つの側壁32Bとを有する。供給リール31は、供給ケース32の各側壁32Bに回転可能に支持されている。
【0066】
各側壁32Bは、供給リール31の軸方向から見て長尺状の係合部32Cを有している。各係合部32Cは、後述するホルダ100の着脱ガイドGによってガイドされる部位であり、角丸長方形状に形成されている。
【0067】
供給リール31は、供給軸部31Aのうち供給リール31の軸方向端部に供給ギヤ31Gを有している。供給ギヤ31Gは、供給リール31の回転軸を中心にして供給リール31とともに回転するギヤである。供給ギヤ31Gは、外周壁32Aに形成された切欠から外部に露出している。
【0068】
巻取リール35は、前述した巻取軸部35Aと、2つのフランジ35Bと、駆動力入力部材の一例としての巻取ギヤ35Cとを有している。巻取軸部35Aのうち巻取リール35の軸方向端部は、筐体本体21に形成された第2ガイドGD2(
図2参照)でガイドされる部位であり、フランジ35Bよりも外側に突出している。
【0069】
フランジ35Bは、巻取軸部35Aに巻回される多層フィルムFの幅方向の移動を規制するための部位である。フランジ35Bは、巻取軸部35Aよりも大径の円板状に形成されており、巻取軸部35Aの両端部に設けられている。
【0070】
巻取ギヤ35Cは、層転写装置1に設けられる駆動源80から駆動力が入力されるギヤであり、駆動力を巻取軸部35Aに伝達している。巻取ギヤ35Cは、軸方向において、フランジ35Bの外側に配置されている。巻取ギヤ35Cは、巻取リール35の回転軸上、詳しくは巻取軸部35Aと同軸に配置されている。詳しくは、
図7に示すように、巻取ギヤ35Cは、筐体2に回転可能に支持される駆動ギヤDGと噛合可能となっている。これにより、駆動源80の駆動力は、駆動ギヤDGを介して巻取ギヤ35Cに伝達される。
【0071】
図4に示すように、ホルダ100は、ベースフレーム110と、ベースフレーム110に回動可能(移動可能)に支持される規制フレーム120とを有している。ベースフレーム110は、第1保持部111と、第2保持部112と、2つの連結部113と、2つの取手114とを有している。
【0072】
第1保持部111は、供給ケース32を保持する部位である。第1保持部111は、供給ケース32を介して供給リール31を保持(支持)している。第1保持部111は、断面視略円弧状の外周壁111Aと、2つの側壁111Bとを有する。
【0073】
外周壁111Aは、供給ケース32の外周面に沿って配置されている。各側壁111Bは、供給リール31の軸方向において、外周壁111Aの各端部に配置されている。
【0074】
各側壁111Bは、第1案内軸41を軸方向で挟んでおり、第1案内軸41を回転可能に支持している。各側壁111Bは、供給ケース32の着脱時に供給ケース32を所定方向にガイドする着脱ガイドGを有している。着脱ガイドGは、各側壁111Bの軸方向内側の面(供給ケース32と軸方向で対面する内面)に形成されている。
【0075】
着脱ガイドGは、所定方向に延びるガイド溝と、円形の保持穴とを有している。ガイド溝の幅(所定方向に直交する長さ)は、係合部32Cの長辺よりも小さく、かつ、係合部32Cの短辺より大きくなっている。保持穴は、係合部32Cを回動可能に保持する穴であり、ガイド溝に繋がっている。保持穴の直径は、係合部32Cの長辺よりも大きくなっている。係合部32Cをガイド溝に通して保持穴内に入れた後、供給ケース32を図示反時計回りに回動させると、供給ケース32が、図示せぬ規制部と接触して位置決めされることで、供給ケース32がホルダ100に装着される。
【0076】
2つのうち一方の側壁111Bには、ギヤ機構130が設けられている。ギヤ機構130は、筐体本体21に設けられる図示せぬトルクリミッタの負荷を供給リール31に付与するための機構である。なお、ギヤ機構130の構造については、後で説明する。
【0077】
各側壁111Bは、ボス111Cを有している。詳しくは、後述するギヤ機構130が設けられる側の側壁111Bは、ギヤカバーGCを介してボス111Cを有している。ここで、ギヤカバーGCは、ギヤ機構130を覆うカバーであり、ボス111Cを有している。ギヤカバーGCは、側壁111Bに軸方向外側の面に固定されている。
【0078】
各ボス111Cは、フィルムユニットFUの筐体本体21への着脱時において、筐体本体21に形成された第1ガイドGD1(
図2参照)でガイドされる部位である。一方のボス111Cは、側壁111Bの軸方向外側の面から突出している。他方のボス111Cは、ギヤカバーGCの軸方向外側の面から突出している。
【0079】
各ボス111Cは、円柱状に形成され、同軸に配置されている。これにより、
図10(b)に示すように、第1ガイドGD1でボス111Cがガイドされた状態において、ホルダ100がボス111Cを中心に回動可能となっている。
【0080】
図4に戻って、第2保持部112は、巻取リール35を保持(支持)する部位である。詳しくは、第2保持部112は、規制フレーム120とともに、中空のケースを構成しており、中空のケース内に巻取リール35を収容している。
【0081】
第2保持部112は、被覆部112Aと、2つの側壁112Bとを有する。被覆部112Aは、巻取リール35に巻回された多層フィルムFを覆う部位である。各側壁112Bは、巻取リール35の軸方向において、被覆部112Aの各端部に配置されている。
【0082】
2つの連結部113は、第1保持部111と第2保持部112とを連結する部位である。詳しくは、各連結部113は、供給リール31の軸方向に間隔を開けて配置されている。軸方向の一方側の連結部113は、第1保持部111の一方側の側壁111Bと、第2保持部112の一方側の側壁112Bとを連結している。また、軸方向の他方側の連結部113は、第1保持部111の他方側の側壁111Bと、第2保持部112の他方側の側壁112Bとを連結している。
【0083】
このように連結部113が形成されることで、ホルダ100は、供給リール31の軸方向に直交する直交方向に貫通する貫通穴100Aを有している。各取手114は、各連結部113の上に配置されている。各取手114は、ホルダ100のうち巻取リール35の軸方向両端にそれぞれ配置されている。
【0084】
図5に示すように、連結部113は、供給リール31の回転軸X1と巻取リール35の回転軸X2を含む平面FFの一方側(図示上側)に配置されている。各取手114は、第1案内軸41と第2案内軸42とに架かる多層フィルムFよりも、第1案内軸41および第2案内軸42とは反対側(図示上側)に突出している。
【0085】
ベースフレーム110の外表面は、供給リール31の回転軸X1と巻取リール35の回転軸X2を含む平面FFと直交する直交方向において、第3案内軸43に対して巻取リール35の回転軸X2と同一側に位置する第1面110Aを有している。第1面110Aは、巻取リール35の回転軸X2よりも第3案内軸43から離れた位置に位置している。
【0086】
規制フレーム120は、
図5に示す規制位置と、
図6(a)に示す解除位置との間で回動可能となっている。規制フレーム120は、規制位置に位置するときにおいて、巻取リール35の着脱方向への移動を規制している。また、規制フレーム120は、解除位置に位置するときにおいて、巻取リール35の移動の規制を解除する。
【0087】
規制フレーム120は、第3案内軸43を有している。規制フレーム120が規制位置に位置するときに第3案内軸43が第1位置に位置し、規制フレーム120が解除位置に位置するときに第3案内軸43が第2位置に位置する。
【0088】
第3案内軸43は、第1位置に位置するときにおいて、巻取軸部35Aの中心と第2案内軸42の中心を結ぶ直線L4よりも供給リール31側に位置している。第3案内軸43は、第2位置に位置するときにおいて、直線L4よりも供給リール31とは反対側に位置している。また、第3案内軸43は、第2位置に位置するときにおいて、第2案内軸42から、巻取リール35に巻回された多層フィルムFのロールの最大径よりも大きく離れている。つまり、第2案内軸42と第2位置に位置する第3案内軸43の軸間距離は、巻取リール35に巻回された多層フィルムFのロールの最大径よりも大きくなっている。
【0089】
規制フレーム120は、規制位置に位置する状態において、供給リール31から最も遠くに位置する一端部120Eを有している。詳しくは、一端部120Eは、供給リール31の回転軸X1と巻取リール35の回転軸X2を結ぶ直線に沿った方向において、供給リール31から最も遠い位置に位置している。
図6(b)に示すように、一端部120Eは、巻取リール35に巻回された多層フィルムFを、規制フレーム120が規制位置に位置する状態において外部に臨ませる第2開口120Aを有している。
【0090】
第2開口120Aの軸方向の長さD3は、多層フィルムFの幅D4よりも大きい。また、
図5に示すように、第2開口120Aの縁のうち多層フィルムFの外面と対向する縁E11から巻取リール35の回転軸X2までの距離D5は、巻取リール35に巻回された多層フィルムFのロールの最大半径よりも大きい。
【0091】
規制フレーム120は、回動軸121を中心にしてベースフレーム110に対して回動可能となっている。回動軸121は、前述した平面FFに直交する直交方向において、巻取リール35の回転軸X2よりも第3案内軸43から離れた位置に位置している。
【0092】
巻取リール35は、供給リール31から最も遠い最遠部B1を有している。本実施形態では、巻取リール35のフランジ35Bが、最遠部B1を有している。最遠部B1は、供給リール31の回転軸X1と巻取リール35の回転軸X2を結ぶ直線に沿った方向において、供給リール31から最も遠くに位置している。
【0093】
規制フレーム120の一端部120Eは、規制フレーム120が規制位置に位置する状態において、最遠部B1よりも供給リール31に近い。詳しくは、一端部120Eは、供給リール31の回転軸X1と巻取リール35の回転軸X2を結ぶ直線に沿った方向において、最遠部B1よりも供給リール31に近い。
【0094】
図6(b)に示すように、規制フレーム120は、2つの側壁122と、各側壁122を連結する連結壁123とを有している。
図5に示すように、各側壁122は、ベースフレーム110に回動可能に支持されている。また、各側壁122は、第3案内軸43を回転可能に支持している。さらに、各側壁122には、巻取リール35の巻取軸部35Aが入る凹部122A,122B(
図7(b)参照)が形成されている。
【0095】
図7(a)に示すように、凹部122Aは、第2保持部112に形成された凹部112Dとともに、巻取軸部35Aを保持する穴H1を形成している。この穴H1は、巻取軸部35Aと遊びをもって係合する穴である。巻取軸部35Aは、軸方向に直交する方向において、穴H1内で移動可能となっている。
【0096】
ベースフレーム110に形成された凹部112Dは、第1規制面H11を有している。規制フレーム120に形成された凹部122Aは、第2規制面H12と、第3規制面H13と、第4規制面H14とを有している。
【0097】
第1規制面H11は、供給リール31の回転軸X1と巻取リール35の回転軸X2とを結ぶ直線に沿った第3方向(
図5参照)の一方側への巻取軸部35Aの移動を規制する面である。第2規制面H12は、第3方向の他方側への巻取軸部35Aの移動を規制する面である。
【0098】
第3規制面H13は、第3方向および回転軸X1に直交する第1方向(
図5参照)の一方側への巻取軸部35Aの移動を規制する面である。第4規制面H14は、第1方向の他方側への巻取軸部35Aの移動を規制する面である。
【0099】
第1規制面H11および第2規制面H12は、フィルムユニットFUが筐体本体21に位置決めされた状態において、巻取軸部35Aから第3方向に離れている。第3規制面H13および第4規制面H14は、フィルムユニットFUが筐体本体21に位置決めされた状態において、巻取軸部35Aから第1方向に離れている。
【0100】
図7(b)に示すように、巻取軸部35Aの巻取ギヤ35Cが設けられる側の端部は、小径部A1と、中径部A2と、大径部A3とを有している。小径部A1は、第2ガイドGD2(
図2参照)によってガイドされる部分であり、円柱状に形成されている。小径部A1は、巻取ギヤ35Cよりも軸方向外側に突出している。
【0101】
中径部A2は、小径部A1よりも大径で、かつ、大径部A3よりも小径となる円柱状に形成されている。中径部A2の軸方向外側の端面には、巻取ギヤ35Cが配置されている。大径部A3は、中径部A2よりも大径で、かつ、フランジ35Bよりも小径となる円柱状に形成されている。大径部A3は、軸方向において、中径部A2とフランジ35Bとの間に配置されている。
【0102】
規制フレーム120の側壁122には、中径部A2が入る凹部122Bが形成されている。凹部122Bは、第2保持部112に形成された凹部112Eとともに、巻取軸部35Aを保持する穴H2を形成している。この穴H2は、巻取軸部35Aと遊びをもって係合する穴である。巻取軸部35Aは、軸方向に直交する方向において、穴H2内で移動可能となっている。
【0103】
ベースフレーム110に形成された凹部112Eは、第1規制面H21を有している。規制フレーム120に形成された凹部122Bは、第2規制面H22と、第3規制面H23と、第4規制面H24とを有している。
【0104】
第1規制面H21は、第3方向(
図5参照)の一方側への巻取軸部35A(詳しくは、大径部A3)の移動を規制する面である。第2規制面H22は、第3方向の他方側への巻取軸部35A(詳しくは、中径部A2)の移動を規制する面である。
【0105】
第3規制面H23は、第1方向(
図5参照)の一方側への巻取軸部35A(詳しくは、中径部A2)の移動を規制する面である。第4規制面H24は、第1方向の他方側への巻取軸部35A(詳しくは、中径部A2)の移動を規制する面である。
【0106】
第1規制面H21および第2規制面H22は、フィルムユニットFUが筐体本体21に位置決めされた状態において、巻取軸部35Aから第3方向に離れている。第3規制面H23および第4規制面H24は、フィルムユニットFUが筐体本体21に位置決めされた状態において、巻取軸部35Aから第1方向に離れている。
【0107】
図8および
図9に示すように、供給リール31に負荷を付与するためのギヤ機構130は、ホルダギヤ131と、ギヤ列132とを備えている。ホルダギヤ131は、筐体本体21に設けられる筐体ギヤ21Gと噛み合うギヤである。ホルダギヤ131は、筐体ギヤ21Gを介して前述したトルクリミッタなどに連結されている。
【0108】
ギヤ列132は、供給ギヤ31Gの回転方向がホルダギヤ131の回転方向とは逆方向となるように、ホルダギヤ131と供給ギヤ31Gを連結するギヤ列である。このように供給ギヤ31Gとホルダギヤ131の回転方向を逆にすることで、供給リール31から多層フィルムFが引き出されたときにおいて、
図8(b)に示すように、ボス111Cが第1位置決め部P1から外れる方向に移動することが抑制されている。詳しくは、供給リール31から多層フィルムFが引き出されることによって、供給ギヤ31Gが回転すると、ホルダギヤ131が供給ギヤ31Gとは逆方向に回転することで、ホルダ100のボス111Cが第1位置決め部P1に付勢されるように構成されている。
【0109】
ギヤ列132は、第1ギヤ133と、第2ギヤ134とを備えている。第1ギヤ133は、ホルダギヤ131に噛み合っている。第2ギヤ134は、2段ギヤであり、大径ギヤ部134Aと、小径ギヤ部134Bとを有する。
【0110】
大径ギヤ部134Aは、小径ギヤ部134Bよりも大径のギヤである。大径ギヤ部134Aは、第1ギヤ133に噛み合っている。小径ギヤ部134Bは、供給ギヤ31Gに噛み合っている。
【0111】
ホルダギヤ131は、供給ギヤ31Gと同軸に配置されている。供給ギヤ31Gおよびホルダギヤ131は、供給リール31の回転軸X1を中心に回転するように構成されている。また、前述したボス111Cおよび係合部32Cは、供給リール31の回転軸X1上に位置している。
【0112】
次に、フィルムユニットFUを筐体本体21に装着する作業について説明する。
図10(a)に示すように、フィルムユニットFUを筐体本体21に装着する際、ユーザは、まず、ボス111Cを第1ガイドGD1に挿入させる。その後、ユーザは、ボス111Cを第1ガイドGD1でガイドさせつつ、ボス111Cを中心にして巻取リール35を下方に向けて徐々に回動させていくことで、巻取軸部35Aを第2ガイドGD2に近づけていく。
【0113】
ボス111Cを第1位置決め部P1内に入れた後、ユーザは、巻取リール35を下方にさらに回動させることで、巻取軸部35Aおよび穴HPを、各位置決め部P2,P3に係合させる。これにより、ボス111C、巻取軸部35Aおよび穴HPがそれぞれ各位置決め部P1~P3に係合して、フィルムユニットFUが筐体本体21に位置決めされる。
【0114】
この位置決めの作業の際、巻取軸部35Aがホルダ100に対して移動可能であるため、巻取軸部35Aが適度に動いて、巻取軸部35Aを第2位置決め部P2に容易に係合させることができる。なお、フィルムユニットFUを筐体本体21から取り外す作業は、前述した作業を逆の手順で行えばよいため、説明を省略する。
【0115】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
フィルムユニットFUのホルダ100を第1位置決め部P1で位置決めし、巻取リール35を第2位置決め部P2で位置決めするので、供給リール31の回転軸X1に直交する方向に着脱されるフィルムユニットFUを、筐体本体21に対して良好に位置決めすることができる。巻取ギヤ35Cを有する巻取リール35を、第2位置決め部P2によって筐体本体21に直接位置決めするので、巻取ギヤ35Cを駆動源80(詳しくは、駆動源80からの駆動力を巻取ギヤ35Cに伝達する駆動ギヤDG)に対して適正な位置に配置することができ、駆動源80からの駆動力を良好に巻取リール35に伝達させることができる。
【0116】
これによれば、ホルダ100に対して巻取リール35が移動可能(詳しくは、フィルムユニットFUや筐体2の公差影響を吸収できる量であって、かつ、屈曲した第1ガイドGD1を考慮した量で移動可能)であるため、ホルダ100と巻取リール35を各位置決め部P1~P3に良好に位置決めすることができる。ここで、屈曲した第1ガイドGD1を考慮した量とは、第1位置決め部P1から第2位置決め部P2までの距離と第1部位GD11から第2位置決め部P2までの距離との差に相当する量である。
【0117】
巻取ギヤ35Cと同軸上の巻取軸部35Aをガイドして位置決めするので、巻取ギヤ35Cと同軸上にない巻取リール35の部分をガイドして位置決めするよりも、巻取ギヤ35Cを駆動ギヤDGに対して適正な位置に配置することができる。
【0118】
第1ガイドGD1が、第1部位GD11と第2部位GD12との間で屈曲しているので、ホルダ100のボス111Cが第1位置決め部P1から外れるのを抑えることができる。
【0119】
巻取軸部35Aが第2位置決め部P2に装着される前の状態で、第2位置決め部P2に対して第3方向の一方側と他方側に動けるので、ホルダ100のボス111Cが第1ガイドGD1または第1位置決め部P1に入った状態でも、巻取軸部35Aを第2位置決め部P2に良好に装着することができる。
【0120】
フィルムユニットFUが筐体本体21に位置決めされた状態において、巻取リール35の巻取軸部35Aが各規制面H11~H14,H21~H24と接触しないので、巻取リール35の回転時において各規制面H11~H14,H21~H24が摩耗するのを抑えることができる。
【0121】
フィルムユニットFUのボス111Cを、カバー22の回動軸X3側、つまり層転写装置1の奥側の第1ガイドGD1に係合させた後、このボス111Cを中心にして手前の巻取リール35を回動させて第2ガイドGD2に係合させることができるので、フィルムユニットFUの装着作業を容易に行うことができる。
【0122】
供給ギヤ31Gの回転方向とホルダギヤ131の回転方向を逆方向とすることで、供給ギヤ31Gの回転方向を多層フィルムFの送り出し方向に維持しつつ、ホルダ100のボス111Cを第1位置決め部P1に付勢することができるので、供給ギヤ31Gが回転する際にボス111Cが第1位置決め部P1から外れるのを抑制することができる。
【0123】
供給ギヤ31G、ホルダギヤ131およびボス111Cを供給リール31の回転軸X1上に配置したので、供給ギヤ31G、ホルダギヤ131およびボス111Cを精度良く配置することができる。
【0124】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
【0125】
前記実施形態では、駆動力入力部材として巻取ギヤ35Cを例示したが、本発明はこれに限定されず、駆動力入力部材は、例えば
図11に示すようなカップリングCPであってもよい。具体的に、カップリングCPは、巻取軸部35Aの端部に設けられている。
【0126】
カップリングCPは、駆動力出力部材300と巻取リール35の回転方向で係合可能な穴CP1を有している。駆動力出力部材300は、筐体本体21に設けられている。駆動力出力部材300は、巻取リール35の回転軸X2に沿った方向に進退可能となっている。駆動力出力部材300は、カップリングCPの穴CP1と前述した回転方向で係合可能な係合部310を有している。この形態においても、前記実施形態と同様に、巻取リール35を筐体本体21に直接位置決めすることで、カップリングCPと駆動力出力部材300とを精度良く位置決めすることができる。
【0127】
前記実施形態では、箔を含む転写層を例示したが、本発明はこれに限定されず、転写層は、例えば、箔や着色材料を含まず、熱可塑性樹脂から形成されていてもよい。
【0128】
前記実施形態では、多層フィルムFを4層で構成したが、本発明はこれに限定されず、多層フィルムは、転写層と支持層を有していれば、層の数はいくつであってもよい。
【0129】
前記実施形態では、フィルムカートリッジ200をホルダ100に対して着脱可能としたが、本発明はこれに限定されるものではない。フィルムカートリッジがホルダに着脱不能に支持されていてもよい。
【0130】
前記実施形態では、レーザプリンタ等の画像形成装置とは別の装置として層転写装置1を構成したが、本発明はこれに限定されず、層転写装置は画像形成装置と一体に構成されていてもよい。
【0131】
前記実施形態では、供給リール31および巻取リール35を、ホルダ100に対して、供給リール31の軸方向に直交する方向に着脱可能としたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、供給リールおよび巻取リールを、ホルダに対して、供給リールの軸方向に着脱可能に構成してもよい。
【0132】
前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0133】
1 層転写装置
2 筐体
31 供給リール
35 巻取リール
35C 巻取ギヤ
80 駆動源
100 ホルダ
111C ボス
F 多層フィルム
FU フィルムユニット
P1 第1位置決め部
P2 第2位置決め部
S シート