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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】布帛体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04B 1/18 20060101AFI20230704BHJP
   A47C 7/00 20060101ALI20230704BHJP
   D04B 21/14 20060101ALI20230704BHJP
   D04B 21/18 20060101ALI20230704BHJP
   D06B 5/22 20060101ALI20230704BHJP
   D06C 7/00 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
D04B1/18
A47C7/00 Z
D04B21/14 Z
D04B21/18
D06B5/22
D06C7/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019022466
(22)【出願日】2019-02-12
(65)【公開番号】P2019143283
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2018029337
(32)【優先日】2018-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高田 奈々
(72)【発明者】
【氏名】梶山 宏史
【審査官】鈴木 祐里絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-213858(JP,A)
【文献】特開2005-349904(JP,A)
【文献】国際公開第2002/079558(WO,A1)
【文献】特開2000-248450(JP,A)
【文献】特開2004-218114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C7/00-7/74
D03D1/00-27/18
D04B1/00-1/28
21/00-21/20
D06B1/00-23/30
D06C3/00-29/00
D06G1/00-5/00
D06H1/00-7/24
D06J1/00-1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛と枠部材とを有し、
前記布帛の少なくとも一部分は、通気度が5cm/cm/sec以上200cm/cm/sec以下である部分を有し、かつ、少なくとも一方向に張力がかかった状態で前記枠部材に張設されており、
前記布帛の中心部に400Nの荷重を加えた際の撓み量が20mm以上60mm以下であり、
前記布帛が、編地であって、
前記編地が、モノフィラメントを、前記布帛全体に対し50質量%以上含有し、
前記布帛の緯(ウェル)方向および経(コース)方向の編密度(目数)が、それぞれ20本/25.4mm以上60本/25.4mm以下であり、前記モノフィラメントが、繊維繊度が500dtex以上3000dtex以下であるポリエステルエラストマーを含む繊維である布帛体の製造方法であって、
工程Aおよび工程Bを有し、
前記工程Aが、繊維繊度が500dtex以上3000dtex以下であり、かつ、乾熱収縮率が5.0%以上50.0%以下のモノフィラメントを含む繊維群を編むことで、緯(ウェル)方向の編密度(目数)が15本/25.4mm以上40本/25.4mm以下であり、経(コース)方向の編密度(目数)が15本/25.4mm以上40本/25.4mm以下である布帛を得る工程であり、
前記工程Bが、前記布帛を前記枠部材に取り付けた後、前記布帛および前記枠部材を120℃以上200℃以下の温度で5分以上20分以下の時間、加熱処理する工程である、布帛体の製造方法。
【請求項2】
前記布帛である編地が、前記枠部材を保持するための枠部材挿入部が備わっている立体形状である請求項1に記載の布帛体の製造方法
【請求項3】
前記枠部材が開口を有しており、前記開口の面積に対する、前記通気度が5cm/cm/sec以上200cm/cm/sec以下である部分の面積の比(通気度が5cm/cm/sec以上200cm/cm/sec以下である部分の面積/開口の面積)が0.5以上である請求項1または2に記載の布帛体の製造方法
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の布帛体の製造方法であって、
前記工程Bが、前記布帛を前記枠部材に取り付けた後、前記布帛および前記枠部材に150℃以上200℃以下の温度の熱風を当てることにより、前記布帛および前記枠部材を150℃以上200℃以下の温度で5分以上15分以下の時間、加熱処理する工程である、布帛体の製造方法。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載の布帛体の製造方法であって、
前記工程Bが、前記布帛を前記枠部材に取り付けた後、前記布帛および前記枠部材に120℃以上160℃以下の温度の蒸気を当てることにより、前記布帛および前記枠部材を120℃以上160℃以下の温度で5分以上20分以下の時間、加熱処理する工程である、布帛体の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の布帛体の製造方法であって、前記工程Bの前記加熱処理が、-0.1MPa以下の環境下で行われる、布帛体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布帛体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、オフィスの椅子や自動車の座席などの身体支持具では、背もたれや座面などの身体支持面にクッション性を持たせ、接触する身体を支持するようにしている。このような、クッション性を有する身体支持面は、一般に、織物や編地からなるカバー体が身体支持面の表面に配置されており、内部に金属フレーム等の枠部材とウレタンフォーム等の発泡弾性部材とを設ける構成で形成していることが多い。
【0003】
近年、ウレタンフォーム等の発泡弾性部材を内蔵しなくても、身体支持具の身体支持面に編地や織物などによる布帛と枠部材のみを使用して、良好なクッション性が与えられるようにした構成の身体支持具も提案されている。具体的には、たとえば、特許文献1のように、弾性糸を用いた弾性織物を枠部材に張設して座面に使用した椅子や、特許文献2のように、立体編み物を枠部材に張設した座席などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-303395号公報
【文献】国際公開第2005/034684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
たとえば、特許文献1のように織物を略四辺形のフレームに貼り付けた身体支持面に座ると、沈み込み量が小さいために長時間座り続けると接地面に痛みを感じることがある。また、特許文献2のように立体編み物をフレームに張設した身体支持面に座ると、立体編物であれば、その編み構造と大きい厚みによりクッション性が増し、接地面の痛みは感じにくくなる一方で、通気性が悪く長時間座り続けると蒸れを感じてしまう。
【0006】
そこで、本発明の課題は、布帛体を身体支持具の身体支持面に用いた場合に、この身体支持具の身体支持面が良好な座り心地に繋がる最適な圧縮撓み量と優れた通気性を兼ね備えたものとなる布帛体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。すなわち、
(1)布帛と枠部材とを有し、前記布帛の少なくとも一部分は、通気度が5cm/cm/sec以上200cm/cm/sec以下である部分を有し、かつ、少なくとも一方向に張力がかかった状態で前記枠部材に張設されており、前記布帛の中心部に400Nの荷重を加えた際の撓み量が20mm以上60mm以下である、布帛体、
(2)前記布帛が、編地であって、前記編地が、モノフィラメントを、前記布帛全体に対し50質量%以上含有し、前記布帛の緯(ウェル)方向および経(コース)方向の編密度(目数)が、それぞれ20本/25.4mm以上60本/25.4mm以下であり、前記モノフィラメントが、繊維繊度が500dtex以上3000dtex以下であるポリエステルエラストマーを含む繊維である、(1)の布帛体、
(3)前記布帛である編地が、前記枠部材を保持するための枠部材挿入部が備わっている立体形状である(1)または(2)の布帛体、
(4)前記枠部材が開口を有しており、前記開口の面積に対する、前記通気度が5cm/cm/sec以上200cm/cm/sec以下である部分の面積の比(通気度が5cm/cm/sec以上200cm/cm/sec以下である部分の面積/開口の面積)が0.5以上である(1)~(3)のいずれかの布帛体、
(5)(1)~(4)のいずれかの布帛体が用いられた着座用シートであって、前記布帛の枠部材に張設されている一部分が、座面および背面の少なくとも一方に配置されている、着座用シート、
(6)(1)~(4)のいずれかに記載の布帛体の製造方法であって、工程Aおよび工程Bを有し、前記工程Aが、繊維繊度が500dtex以上3000dtex以下であり、かつ、乾熱収縮率が5.0%以上50.0%以下のモノフィラメントを含む繊維群を編むことで、緯(ウェル)方向の編密度(目数)が15本/25.4mm以上40本/25.4mm以下であり、経(コース)方向の編密度(目数)が15本/25.4mm以上40本/25.4mm以下である布帛を得る工程であり、前記工程Bが、前記布帛を前記枠部材に取り付けた後、前記布帛および前記枠部材を120℃以上200℃以下の温度で5分以上20分以下の時間、加熱処理する工程である、布帛体の製造方法、
(7)(6)に記載の布帛体の製造方法であって、前記工程Bが、前記布帛を前記枠部材に取り付けた後、前記布帛および前記枠部材に150℃以上200℃以下の温度の熱風を当てることにより、前記布帛および前記枠部材を150℃以上200℃以下の温度で5分以上15分以下の時間、加熱処理する工程である、布帛体の製造方法、
(8)(6)に記載の布帛体の製造方法であって、前記工程Bが、前記布帛を前記枠部材に取り付けた後、前記布帛および前記枠部材に120℃以上160℃以下の温度の蒸気を当てることにより、前記布帛および前記枠部材を120℃以上160℃以下の温度で5分以上20分以下の時間、加熱処理する工程である、布帛体の製造方法、
(9)(8)に記載の布帛体の製造方法であって、前記工程Bの前記加熱処理が、-0.1MPa以下の環境下で行われる、布帛体の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、布帛体を身体支持具の身体支持面に用いた場合に、この身体支持具の身体支持面が良好な座り心地に繋がる最適な圧縮撓み量と優れた通気性を兼ね備えたものとなる布帛体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の布帛体の一実施形態例を示す上方平面概念図である。
図2】本発明における枠部材の一実施形態例を示す上方平面概念図である。
図3】本発明における枠部材の一実施形態例を示す正面概念図である。
図4】本発明における2種の異なる編組織を有する布帛体の一例を示す上方平面概念図である。
図5】本発明における3種の異なる編組織を有する布帛体の一例を示す上方平面概念図である。
図6図1に示す布帛体に用いられた布帛(立体形状布帛)の一例を示す上方平面概念図である。
図7図6に示す立体形状布帛のB-B‘縦断面概念図である。
図8図1に示す布帛体のA-A’縦断面概念図である。
図9】本発明における一部分が取り外し可能な構造である枠部材の一実施形態例を示す上方平面概念図である。
図10】本発明における一部分が取り外し可能な構造である枠部材の一実施形態例を示す正面概念図である。
図11】本発明における枠部材の一実施形態例を示す上方平面概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明の布帛体は、布帛と枠部材とを有する。また、この布帛の少なくとも一部分は、通気度は5cm/cm/sec以上200cm/cm/sec以下である部分を有し、かつ、少なくとも一方向に張力がかかった状態で枠部材に張設されており、この布帛の中心部に400Nの荷重を加えた際の撓み量は20mm以上60mm以下である。
【0011】
ここで、この枠部材としては特に限定されないが、布帛を少なくとも一方向に張力がかかった状態で固定した際に、布帛の張力に耐えうる強度を持ったものである。具体的には、鉄、アルミ、チタン等の金属や、カーボン、木材、プラスチックからなる枠部材が挙げられる。中でも、強度が高い点では金属やカーボンからなるものが好ましく、さらに、椅子など身体支持具の軽量化という観点からはカーボンからなる枠部材が好ましい。
【0012】
また、布帛の中心部に400Nの荷重を加えた際の撓み量は20mm以上60mm以下である。この布帛の中心部の撓み量が20mm以上であることで、この布帛体が身体支持面を形成する身体支持具において、この身体支持面の荷重付加時の撓み量は最適なものとなり、この身体支持具の座り心地は優れたものとなる。この理由から、この撓み量は25mm以上であることが好ましい。一方で、この布帛の中心部の撓み量が60mm以下であることで、この布帛体が身体支持面を形成する身体支持具において、身体支持面の最低限の弾性を保持することができる。このように、枠部材に張設されている前記布帛の中心部に400Nの荷重を付加した際の撓み量が20mm以上60mm以下であることで、布帛体を身体支持面に用いた身体支持具は、その身体支持面が適度なフィット感と弾力性を兼ね備えたものなり、たとえば人が前記身体支持具に腰掛けた場合に座り心地の良いものとなる。ここで、布帛の中心部とは、布帛の平面形状の重心のことをいう。すなわち、例えば、布帛の形状が多角形である場合には、多角形の重心が布帛の中心部となる。
【0013】
また、本発明の布帛体が有する布帛の少なくとも一部分は、通気度が5cm/cm/sec以上200cm/cm/sec以下である部分を有している。この布帛の部分(以下、「布帛の少なくとも一部分」と称することがある。)の通気度の下限値は、最低限の通気性を保つために5cm/cm・sec以上である。また、良好な通気性を保つためには15cm/cm・sec以上であることが好ましく、さらに20cm/cm・sec以上であることがより好ましい。一方で、布帛の少なくとも一部分の通気度の上限値は、枠部材に張設されている布帛の一部分の弾力性や強度を保つために200cm/cm・sec以下であり、好ましくは180cm/cm・sec以下であり、さらに100cm/cm・sec以下であることがより好ましい。布帛の少なくとも一部分の通気度をこのような範囲とすることで、良好な通気性と弾力性および強度を兼ね備えた布帛体となり、たとえば、人が、この布帛体が身体支持面を形成する身体支持具に腰掛けた場合に、蒸れ感が低減され、また、十分に身体を支持することができるものとなる。また、開口を有する枠部材(詳細は後述する)の開口の面積に対する、通気度が5cm/cm/sec以上200cm/cm/sec以下である布帛の一部分の面積比(通気度が5cm/cm/sec以上200cm/cm/sec以下である部分の面積/開口の面積)は0.5以上であることが好ましい。このような構成とすることにより、本発明の布帛体を用いた着座用シートでは、使用者の蒸れ感がより解消されることになる。
【0014】
次に、本発明の布帛体が備える布帛の中心部を、400Nの荷重を加えた際の撓み量が20mm以上60mm以下であり、かつ、通気度が5cm/cm・sec以上200cm/cm・sec以下であるものとし得る布帛の具体的な構成例として、以下の(i)~(iii)の全ての条件を充足する布帛を挙げることができる。すなわち、
(i)布帛が、編地であって、前記編地はモノフィラメントを、この編地全体に対し50質量%以上含有する。
(ii)布帛の緯(ウェル)方向および経(コース)方向の編密度(目数)が、それぞれ20本/25.4mm以上60本/25.4mm以下である。
(iii)上記のモノフィラメントは、繊維繊度が500dtex以上3000dtex以下であるポリエステルエラストマーを含む繊維である。
【0015】
なお、上記の編地とは立体編み物を含まない概念である。
【0016】
上記の各条件の詳細については後述する。
【0017】
まず、上記の(i)および(iii)の条件について説明する。布帛が、編地であって、この編地は、繊維繊度が500dtex以上3000dtex以下であるポリエステルエラストマーを含む繊維のモノフィラメントを、この編地を構成する全繊維に対し50質量%以上含有する。上記の通り、ポリエステルエラストマーを含む繊維のモノフィラメントを、編地を構成する全繊維に対し50質量%以上含有する編地とすることで、枠部材に取り付けられた際に適切な撓み量と適切な強度を発揮する編地を得ることができる。そして、この編地を少なくとも一方向に張力がかかった状態で枠部材に張設することで、この編地の一部分(布帛の中心部)に400Nの荷重を加えた際の撓み量が20mm以上60mm以下の範囲となる。すなわち、本発明の布帛体が備える布帛の中心部の400N荷重付加時における撓み量が20mm以上60mm以下となる。
【0018】
また、本発明の布帛体が備える布帛の中心部の400N荷重付加時における撓み量を20mm以上60mm以下の範囲とし、かつ、通気度5cm/cm・sec以上200cm/cm・sec以下であることを兼ね備える布帛を得るためには、荷重付加に耐えうる強度と通気性のある編密度を兼ね備える必要があり、そのためには上記のポリエステルエラストマーを含む繊維であるモノフィラメントの繊維繊度は500dtex以上3000dtex以下であることが好ましい。さらに、布帛の強度がより優れたものとなるとの理由から、上記のモノフィラメントの繊維繊度は600dtex以上であることが好ましい。一方で、上記のモノフィラメントの工程通過性をより優れたものとするとの理由により、上記のモノフィラメントの繊維繊度は2000dtex以下であることが好ましい。さらに、この布帛を有する布帛体を用いた身体支持具において身体支持面のしなやかさがより優れたものとなるとの理由から、上記のモノフィラメントの繊維繊度は1000dtex以下であることがより好ましい。
【0019】
ここで、ポリエステルエラストマーとは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系の構造体を有する熱可塑性のゴム弾性体のことをいう。また、ポリエステルエラストマーを含む繊維は、ポリエステルエラストマー単独からなる繊維であってもよいし、ポリエステルエラストマーおよびポリエステルからなる複合繊維であってもよい。ここで、複合繊維としては、芯鞘構造の繊維やサイドバイサイド構造の繊維等を挙げることができる。ここで、ポリエステルエラストマーと併用されるポリエステルとしてはポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。また、ポリエステルエラストマーを含む繊維が芯鞘構造の繊維である場合、芯鞘構造の繊維は、芯がポリエステルエラストマーから構成され、鞘がポリエステルから構成される、もしくは芯がポリエステルから構成され、鞘がポリエステルエラストマーから構成されるものであることが好ましい。
【0020】
また、本発明の布帛体が備える布帛は上記のモノフィラメント以外の繊維を含んでいても良いことはいうまでもない。そして、上記のモノフィラメント以外の繊維としては、マルチフィラメントである合成繊維や、マルチフィラメントである天然繊維等を挙げることができ、中でも、ポリエステル繊維のマルチフィラメントや、ポリアミド繊維のマルチフィラメント等が好適に用いられる。またマルチフィラメントは仮撚り等の加工が施された加工糸であっても、スパン糸であってもよい。
【0021】
次に、上記の(ii)の条件について説明する。布帛の緯(ウェル)方向および経(コース)方向の編密度(目数)が、それぞれ20本/25.4mm以上60本/25.4mm以下であることで、枠部材に取り付けられた際に適切な撓み量と強度を有する布帛(編地)を得ることができる。具体的には、布帛(編地)の緯(ウェル)方向および経(コース)方向の編密度(目数)が、それぞれ20本/25.4mm以上であることで、布帛体が備える布帛の撓み量が優れたものとなる。また、布帛の緯(ウェル)方向および経(コース)方向の編密度(目数)が、それぞれ60本/25.4mm以下であることで、この布帛の通気性が優れたものとなる。そして、上記の理由から、布帛の緯(ウェル)方向および経(コース)方向の編密度(目数)は、それぞれ30本/25.4mm以上であることがより好ましく、布帛の緯(ウェル)方向および経(コース)方向の編密度(目数)は、それぞれ50本/25.4mm以下であることがより好ましく、40本/25.4mm以下であることがさらに好ましい。
【0022】
次に、本発明の布帛体を、布帛の中心部に400Nの荷重を加えた際の撓み量が20mm以上60mm以下であり、かつ、通気度が5cm/cm・sec以上200cm/cm・sec以下であるものとし得る、布帛体の具体的な製造方法として、以下の(i)および(ii)の全ての条件を充足するものを挙げることができる。すなわち、
(i)繊維繊度が500dtex以上3000dtex以下であり、かつ、乾熱収縮率が5.0%以上50.0%以下のモノフィラメントを含む繊維群を編むことで、緯(ウェル)方向の編密度(目数)が15本/25.4mm以上40本/25.4mm以下であり、経(コース)方向の編密度(目数)が15本/25.4mm以上40本/25.4mm以下である布帛を得る工程A。
(ii)前記布帛を前記枠部材に取り付けた後、前記布帛および前記枠部材を120℃以上200℃以下の温度で5分以上15分以下の時間、処理する工程B。
なお、上記の布帛は、モノフィラメントを布帛全体に対し50質量%以上含む編地である。
【0023】
まず、(i)について説明する。(i)の工程は、特定の構成の編地を得る工程である。この工程では、上記の布帛を得るのに繊維繊度が500dtex以上3000dtex以下であり、かつ、乾熱収縮率が5.0%以上50.0%以下のモノフィラメントを含む繊維群を用いている。上記の繊維群が、繊維繊度は500dtex以上3000dtex以下であり、繊維繊度が500dtex以上3000dtex以下であり、かつ、乾熱収縮率が5.0%以上50.0%以下のモノフィラメントを含むことで、この編地を(ii)の工程で記載されるように枠部材に取り付けた後、熱処理を施すと編地に収縮が発現するとともに、この編地の緯(ウェル)方向の編密度(目数)と経(コース)方向の編密度(目数)とが共に高くなる。その結果、枠部材に取り付けられた編地の少なくとも一部(布帛の中心部を含む部分)に張力が発生することで、この布帛の中心部の400Nの荷重を加えた際の撓み量が好適なものとなり得る。ここで、この布帛の中心部の400Nの荷重を加えた際の撓み量を調整する手段、すなわち、枠部材に取り付けられた布帛に生じる張力の程度を調整する手段としては、以下のものが挙げられる。すなわち、枠部材に取り付けられた後、熱処理を施される前における、枠部材の開口に、この開口を閉塞するように取り付けられた布帛の一部分の面積と枠部材の開口の面積との比を調整することが例示できる。この比の調整は、繊維群における上記のモノフィラメントの含有割合や、上記のモノフィラメントの繊維繊度、上記のモノフィラメントの乾熱収縮率、編地の緯(ウェル)方向の編密度(目数)、編地の経(コース)方向の編密度(目数)等を考慮し行う。ここで、枠部材の開口を、図11を用いて説明する。枠部材の開口13は、図10において破線にて囲まれる部分をいう。
【0024】
ここで、繊維の乾熱収縮率は、繊維を構成する材料と繊維の繊維繊度とによって決まる。そして、乾熱収縮率が5.0%以上50.0%以下のモノフィラメントとしては、繊維繊度が500dtex以上3000dtex以下のポリエステルエラストマーを含む繊維がある。
【0025】
また、熱処理により、編地の緯(ウェル)方向の編密度(目数)を20本/25.4mm以上60本/25.4mm以下とし、かつ、編地の経(コース)方向の編密度(目数)を20本/25.4mm以上60本/25.4mm以下とすることで、この布帛の撓み量と通気性が優れたものとなることは上記のとおりである。また、編地の緯(ウェル)方向の編密度(目数)および編地の経(コース)方向の編密度(目数)を調整する手段としては、枠部材に取り付けられた布帛に生じる張力の程度を調整する手段と同様の手段を採用することができる。
【0026】
なお、上記のとおり、編地の緯(ウェル)方向の編密度(目数)と編地の経(コース)方向の編密度(目数)とは、熱処理の前後で変化する。具体的には、編成時の編密度(目数)が経(コース)方向:28本/25.4mm、緯(ウェル)方向:35本/25.4mmである編地について熱処理を行うと、熱処理後の編密度(目数)は経(コース)方向:40本/25.4mm、緯(ウェル)方向:40本/25.4mmとなるが、編成時の編密度(目数)が経(コース)方向:27本/25.4mm、緯(ウェル)方向:18本/25.4mmである編地について熱処理を行うと、熱処理後の編密度(目数)は経(コース)方向:31本/25.4mm、緯(ウェル)方向:32本/25.4mmとなり、熱処理前の編密度(目数)により熱処理後の目数の増大を調整することができる。
【0027】
次に、上記の(ii)の工程について説明する。この工程は、上記のとおり、枠部材に取り付けられた編地に収縮を発現させるとともに、この編地の緯(ウェル)方向の編密度(目数)と経(コース)方向の編密度(目数)とを共に高くするためのものである。よって、この工程により、枠部材に取り付けられた編地の少なくとも一部に張力が発生し、かつ、この編地の編密度(目数)と経(コース)方向の編密度(目数)とが共に高くなることで、この布帛の中心部の400Nの荷重を加えた際の撓み量と通気性が優れたものとなる。
【0028】
また、熱処理条件としては、布帛に収縮が発現するのに十分な熱量であり、かつ、布帛が変色したり、溶融したりしない程度の熱量を布帛に与える必要があり、具体的には、120℃以上200℃以下の温度に設定された熱処理装置に投入し、5分以上20分以下の時間、処理を行うことが好ましい。
【0029】
ここで、上記の熱処理の方法としては、大きく分けて乾熱処理、スチーム処理、液中処理の3つが挙げられる。乾熱処理は高温の空気(熱風)の熱により加熱するものである。スチーム処理は蒸気の熱により加熱するものである。液中処理は主に水などの液体の熱により加熱するものである。特に、液中処理は水に漬けた状態で熱を加えるため、この処理方法ではその後に乾燥工程が必要となる。一方で、乾熱処理やスチーム処理であればその後の乾燥工程の必要もなく、生産を効率的に行える点で、乾熱処理またはスチーム処理が熱処理としては好ましい。ここで、乾熱処理の装置としては、防爆型の熱風乾燥機やオーブンが挙げられ、スチーム処理の装置としては、スチームセッターや真空バッチセッターが挙げられる。ここで、真空バッチセッターとは、釜の中を真空状態(具体的には、-0.1MPa以下の環境下にある状態をいう)に保ったままスチーム処理を行う装置である。真空状態にすることで、乾熱処理に比べて低い温度の熱でも本発明の布帛体を得ることが可能となり、布帛に用いる繊維の耐久性を損なわずに熱処理を行うことができる。以上の点から、真空バッチセッターを用いた熱処理がより好ましい。
【0030】
ここで、熱風により乾熱処理を行う場合、布帛を枠部材に取り付けた後、布帛と枠部材を乾熱処理装置に投入し、150℃以上200℃以下の温度の熱風を布帛と枠部材に当てることで、布帛と枠部材を150℃以上200℃以下の温度で5分以上15分以下の時間、加熱処理することが好ましい。熱風の温度を150℃以上とすることで、十分な熱を布帛に与えることができる。一方、熱風の温度を200℃以下とすることで必要以上に布帛に熱を加え、布帛を構成する糸の融解を防ぐことができる。また、熱風を当てる時間を5分以上とすることで、最低限の熱を布帛に与えることができ、熱風を当てる時間を15分以下とすることで、必要以上に布帛に熱がかかり、布帛を構成する糸が融解してしまうのを防ぐことができる。布帛を構成する糸が融解してしまうと、編み目がつぶれてしまい、布帛の通気度の低下や、布帛の撓み量の低下に繋がる傾向がみられる。一方、真空バッチセッターを用いて蒸気によるスチーム処理を行う場合、前記布帛を枠部材に取り付けた後、前記布帛と前記枠部材を真空バッチセッターに投入し、熱処理空間を-0.1MPa以下の環境(すなわち、真空状態)にした後、120℃以上160℃以下の温度の蒸気を布帛と枠部材に当てることにより、布帛と枠部材を120℃以上160℃以下の温度で5分以上20分以下の時間、加熱処理することが好ましい。蒸気の温度を120℃以上とすることで、十分な熱を布帛に与えることができる。一方、蒸気の温度を160℃以下とすることで必要以上に布帛に熱を加え、布帛を構成する糸の融解を防ぐことができる。また、同様に、蒸気を当てる時間を5分以上とすることで、最低限の熱を布帛体に与えることができ、蒸気を当てる時間を20分以下とすることで、必要以上に布帛に熱がかかり、布帛を構成する糸が融解してしまうのを防ぐことができる
なお、本発明の布帛体を得るには、上記の(i)の工程および上記の(ii)の工程を有する製造方法(製造方法A)の他に、以下のような製造方法Bが挙げられる。すなわち、製造方法Bとは、枠部材に取り付けられた布帛の少なくとも一部に張力がかかるように、布帛を引っ張りながら布帛を枠部材に取り付けるという工程を有するものである。なお、この製造方法Bにおいては、この製造方法Bにより得られた布帛体における中心部の400Nの荷重を加えた際の撓み量および通気性が特定の範囲となるべく、用いる布帛の構成(構成繊維の種類や、布帛の種類、布帛の目付など)や、この布帛の枠部材への取り付けの際にどの程度の布帛を引っ張るか等を適宜、選択する必要がある。製造方法Aと製造方法Bとを比較すると、布帛体の中心部に400Nの荷重を加えた際の撓み量および布帛体の少なくとも一部分の通気性を特定の範囲とする調整が容易であるとの観点から、製造方法Aを採用することが好ましい。
【0031】
また、本発明の布帛体の一実施形態を、図面を用いて説明する。図1は、本発明の布帛体の一実施形態を示す上方平面概念図である。また、図6は、図1に示す布帛体に用いられた立体形状の布帛の上方平面概念図であり、図7図6に示した立体形状布帛7のC-C’縦断面概念図である。さらに、図8は、図1に示す布帛体のA-A’縦断面概念図である。図2は枠部材3の一実施形態例を示す上方平面概念図であり、図3は枠部材3の一実施形態例を示す正面概念図である。図1に示す布帛体1は図6に示す立体形状布帛7と図2および図3に示す枠部材3とを有しており、この立体形状布帛7は、図1に示す略四辺形である枠部材3の4つの辺のそれぞれに、立体形状布帛7の4つの辺が張設されており、この布帛の一部分2は、略四辺形である枠部材3の4つの辺のうちの、互いに対向する2つの辺が互いに引っ張り合う方向に張力がかかった状態で枠部材3に張設されている。
【0032】
ここで、枠部材3については図2および図3に例示しており、図2に示す枠部材3をB-B‘上で切断した際の枠部材3の断面形状は特に制約はないが、布帛体を身体支持具の身体支持面に使用した際に、この布帛の一部分2にかかる荷重を枠部材にうまく分散させるためには図2に示す枠部材3をB-B‘上で切断した際の枠部材3の断面形状は略円形であることが好ましい。また、枠部材の形状については図2に例示しているがこの形状に限らずどのような形状であっても良い。さらに、図9は一部分が取り外し可能な構造である枠部材3の一実施形態を示す上方概念図であり、図10は一部分が取り外し可能な構造である枠部材の一実施形態例を示す正面概念図であり、前記布帛に前記枠部材を取り付ける際の取り付け作業を簡便にするため、少なくともその一部分が、取り外し可能である構造が好ましく、たとえば、図9および図10に示すように、枠部材取り外し可能部9を備えていることが好ましい。図9に示した枠部材取り外し可能部9の両端には枠部材3の接合部10に備えられた凸部11と対になる凹部12が備わっており、対となる凸部11と凹部12をそれぞれ接合することで再び枠部材3を図2に示したような形状に戻すことが可能となる。
【0033】
ここで、布帛を枠部材に取り付ける手段について説明する。図1および図7に示すとおり、この布帛は端部に枠部材挿入部8を備えている。そして、図1および図8に示すとおり、この枠部材挿入部8に枠部材3が挿入されることで、布帛の一部分2は枠部材3に取り付けられる。また、上述したように、布帛を枠部材3に取り付ける際は、図9に示したとおり、枠部材取り外し可能部9を取り外し、立体形状布帛7の枠部材挿入部8に図9の符号の10で示した接合部から枠部材3を通していき、枠部材取り外し可能部9を除く3辺に立体形状布帛7を取り付ける。次に図9に示した枠部材取り外し可能部9を立体形状布帛7の残りの1辺の対応する部分に挿入し、最後に、対となる、枠部材取り外し可能部9の両端に備えられた凹部12と枠部材3の接合部10に備えられた凸部11とをそれぞれ接合することで簡単に布帛を枠部材3に取り付けることが可能となる。
【0034】
また、枠部材に取り付けられている前記布帛が、構成糸種および構成組織の少なくとも何れか一方が互いに異なる領域を少なくとも2種備えていることが好ましい。ここで、図4は本発明における2種の異なる編組織を有する布帛体の一例を示す上方平面概念図であり、図5は本発明における3種の異なる編組織を有する布帛体の一例を示す上方平面概念図である。前記少なくとも2種以上の部分の領域の配置の仕方については特に制約はないが、たとえば、図4の符号の4で示した領域である枠部材3を挿入する部分を第1組織とし、第1組織4以外の図4の符号の5で示した領域を第2組織とする2種の異なる編組織を有する布帛体が例示でき、さらに図5のように枠部材3を挿入する部分である、図5の符号の4で示した領域を第1組織とし、図5の符号の5で示した領域を第2組織、図5の符号の6で示した領域を第3組織とする3種の異なる編組織を有する布帛体が例示できる。このように、異なる編組織を作成するには異なる糸種および/または異なる構成組織を混在させることが有効であり、このように複数の構成糸種および/または複数の構成組織の混在により、布帛の枠部材に張設されている一部分の部分的な張力差や圧縮撓み量差を生じさせることができる。
【0035】
上述したような、複数の構成糸種および/または複数の構成組織の混在は緯編等の成形編などで部位別にデザインすることで実現可能である。より具体的には、前記布帛を編成する際に部分的に緯編機およびそのゲージ、用いる糸の素材や太さなどを変えることで周囲の隣接部位と異なる構成糸種、構成組織となり、これにより異なる2種以上の領域を備える布帛を得ることができる。さらに、本発明に係る布帛体においては、たとえば身体支持面を形成する布帛内で、各部位に応じて、糸種や布帛組織種を切り替えて異なる2種以上の領域を有する布帛を作成し、枠部材に前記布帛を取り付けた上で、たとえば素材に応じた温度で熱セットを加えることによる収縮差を利用することにより、各部位での望ましい弾力性等の性状を、簡易な手法で容易に実現できる。これにより、たとえば人が前記布帛体により形成された身体支持面に腰掛けた場合に、より身体にフィットした状態で支持することが可能となる。このように、各部位での弾力や通気性、触感の変更も可能であるため、各部位に応じて最適な機能を持たせることが可能となり、さらに色や風合いの変更も可能であるため意匠面での付加価値も付け易い。
【0036】
また、布帛は枠部材挿入部が備わっている立体形状の編地であることが好ましい。ここで、立体形状の編地とは、編地のみで構成されており、かつ前記編地の少なくとも一部に図7中の8で示したような、内側が空洞である筒状体を備えた編地のことをいい、前記内側が空洞である筒状体の内側に枠部材を挿入することができる。このように編地が枠部材挿入部を備えた立体形状であることにより、布帛を枠部材へ取り付ける作業が簡便となる。また、枠部材取り付け作業をより簡便にするため、枠部材挿入部の内径は図2のB-B‘縦断面で切断した枠部材の外径より大きいものが好ましい。
【0037】
さらに、上述のとおり、編地の編成後にそのまま枠部材に取り付けてから、たとえば、熱処理を行うことにより、布帛体を身体支持具の身体支持面に用いた場合その身体支持面に容易に弾力性を持たせることが可能となる。ここで、この枠部材挿入部の作成方法に制約はないが、生地を編成しその後縫製して枠部材挿入部を作成する方法や、生地編成時に一体的に枠部材挿入部も編成してしまう方法が挙げられる。このうち、特に、生産効率を高めることができる点で、生地編成時に一体的に枠部材挿入部も編成してしまう方法が好ましい。このような枠部材挿入部を一体的に備えた立体形状の編地は、緯編機を用いて編成することが可能である。ここで、緯編組織としては特に制約はないが、たとえば天竺組織、ガーター組織、スムース組織、リブ組織等を用いることができる。ここで、生地編成時に一体的に枠部材挿入部も編成する場合に、枠部材挿入部は、編組織および/または構成する糸の種類については枠部材挿入部以外の部分と同じであっても異なっていてもよい。
【0038】
また、本発明に係る布帛体の用途は特に限定されないが、布帛の枠部材に張設されている一部分を、着座用シート(身体支持具)の座面および背面の少なくとも一方に配置することが挙げられる。具体的には、オフィス用の椅子やカーシート、鉄道車両向けシート等の座面や背面等での使用が好ましい。本発明に係る布帛体によれば、人などの被支持体を支持する際に、部分的に深く沈み込ませる、あるいは逆に深く沈み込ませずに面で支持体をサポートする等、機能面でのデザインの幅が飛躍的に大きくなる。
【0039】
さらに、布帛体を着座用シート(身体支持具)の座面および背面の少なくとも一方に配置する場合には、身体支持面に配置される布帛の燃焼性がタテ方向およびヨコ方向それぞれにおいて100mm/min以下であることが好ましい。身体支持面に配置される布帛の燃焼性が100mm/min以下であることにより、事故などにより火災が発生した際に着座している人および周辺素材に火が燃え広がらないようにすることが可能となる。ここで、燃焼性が100mm/min以下である布帛は、難燃性を有する繊維によって構成された編地により作成することにより得られる。たとえば、立体形状布帛に使用する編地を、難燃剤が付与されたモノフィラメントで構成する方法が挙げられる。
【0040】
また、布帛体を着座用シート(身体支持具)の座面および背面の少なくとも一方に配置する場合には、身体支持面のピリング性は、4級以上であることが好ましい。ここで、ピリング性が4級および5級のものを「ピリングなし」と判定し、このように身体支持面のピリング性が4級以上であることにより、着座する人の衣服等と擦れても外観が変化せず、美観の保たれる着座用シートを得ることができる。ここで、この身体支持面のピリング性が4級以上となる布帛は、表面の摩耗に強い、モノフィラメントや撚糸のマルチフィラメントを布帛の表面に露出させた素材構成・編組織の編地により作成することが可能である。
【0041】
また、布帛体を着座用シート(身体支持具)の座面および背面の少なくとも一方に配置する場合には、身体支持面に配置される布帛の摩耗後の損失重量が10mg以下であることが好ましい。身体支持面に配置される布帛の摩耗後の損失重量が10mg以下であることにより、たとえば本発明にかかる布帛体が車の座席に使用された場合に、長時間および長期間、着座を続けても身体支持面の布帛が擦り切れることなく、耐久性を有する着座用シートを得ることが可能となる。ここで、この身体支持面に配置される布帛の摩耗後の損失重量が10mg以下となる布帛は、表面の摩耗に強い、モノフィラメントや撚糸のマルチフィラメントを布帛の身体支持面側に露出させた素材構成・編組織の編地により作成することが可能である。
【0042】
布帛体を着座用シートの座面および背面の少なくとも一方に配置する場合には、身体支持面に配置される布帛のタテ方向およびヨコ方向の最大強度がそれぞれ700N以上かつ最大伸度が30%以上であることが好ましい。身体支持面に配置される布帛のタテ方向およびヨコ方向の最大強度がそれぞれ700N以上かつ最大伸度が30%以上であることにより、身体支持面に人が腰掛けた際に十分な強度と弾力を持つ着座用シートを得ることができる。ここで、身体支持面に配置される布帛のタテ方向およびヨコ方向の最大強度がそれぞれ700N以上かつ最大伸度が30%以上である布帛の作成方法としては、弾性のあるモノフィラメントを使用する方法や、編組織や編密度などの構成組織により調整する方法が挙げられる。前述した2つの方法のうち、少なくとも一方、もしくは両方の組み合わせにより適切な最大強度および最大伸度の布帛を得ることが可能となる。
【0043】
また、布帛体を着座用シート(身体支持具)の座面および背面の少なくとも一方に配置する場合には、身体支持面に配置される布帛のタテ方向およびヨコ方向の伸長率はそれぞれ10%以上であることが好ましい。身体支持面に配置される布帛のタテ方向およびヨコ方向の伸長率がそれぞれ10%以上であることにより、着座時に身体支持面の布帛が伸長し、長時間着座を続けても痛みを感じにくい着座用シートを得ることができる。ここで、タテ方向およびヨコ方向の伸長率がそれぞれ10%以上である布帛を得る方法としては、弾性のあるモノフィラメントを使用する方法や、編組織や編密度などの構成組織により調整する方法が挙げられる。前述した2つの方法のうち、少なくとも一方、もしくは両方の組み合わせにより適切な最大強度および最大伸度の布帛を得ることが可能となる。
【実施例
【0044】
本実施例で用いた測定法を後述する。
【0045】
(400N加重付加時における撓み量)
枠部材に張設された布帛を有する布帛体について、400N荷重付加時の撓み量を日本電産シンポ株式会社製のシート用静荷重撓み試験機FGS-TVを用いて測定する。具体的には、前記金属からなる枠部材に布帛を張設して布帛体を得る。次に、前記布帛体を高さ30cmの固定冶具上に設置し、横長の楕円形状であり、幅250mm×300mmである加圧板により、前記布帛の中心部に加圧板の荷重中心が重なるように5Nの初荷重を加え、このときの加圧板の荷重中心を原点とする。まず、予備圧縮として、50mm/minの速度で900Nまで荷重を加え、その後50mm/minの速度で除荷し、1分放置した後に、同様に、50mm/minの速度で900Nの荷重まで荷重付加、除荷を行い、このときの各荷重付加時の原点からの撓み量を測定する。ここでいう、「400N荷重付加時における撓み量」とは、布帛体に400Nの荷重を付加した際の原点からの撓み量をいう。ここで、フレーム固定冶具上に布帛体を固定する際の布帛の方向性については特に制約はなく、タテ方向およびヨコ方向どちらでも構わない。
【0046】
(通気度)
JIS L 1096(8.27.1)(2010)A法(フラジール形法)に基づいて測定する。布帛の異なる5か所から20cm×20cmの試験片を採取し、フラジール形試験機を用いて、円筒の一端(吸気側)に試験片を取り付ける。試験片の取り付けに際し、円筒の上に試験片を置き、試験片上から吸気部分を塞がないように均等に約98N(10kgf)の荷重を加え試験片の取り付け部におけるエアーの漏れを防止する。試験片を取り付けた後、加減抵抗器によって傾斜形気圧計が125Paの圧力を示すように吸込みファンを調整し、そのときの垂直形気圧計の示す圧力と、使用した空気孔の種類とから、試験機に付属の表によって試験片を通過する空気量を求め、5枚の試験片についての平均値を算出する。
【0047】
(乾熱収縮率)
JIS L 1013(8.18.2)(2010)B法(フィラメント収縮率)に基づいて測定する。試料に初荷重をかけ、正しく500mmを測定して2点の印を打ち、初荷重を除いた後に185℃に設定された乾燥機内に15分間吊るした状態で放置後に取り出す。室温まで冷却後、再び初荷重をかけ、2点間の長さ(mm)を計測し、次の式((500-熱処理後の2点間の長さ)/500×100)によって乾熱収縮率(%)を求め、5回の平均値を算出する。ここで、初荷重とは、JIS L1013(8.5.1)に準じ、試料の繊維繊度に合わせてそれぞれ設定する。
【0048】
(布帛の燃焼性)
布帛からランダムにタテ方向およびヨコ方向それぞれ3枚ずつ、試験片サイズ長さ250mm×幅120mmの試験片を採取する。次にFMVSS 302(水平法)に基づいて、専用の冶具で試験片を挟み、水平に設置して端部に38mm炎を15秒間接炎し、A標線からB標線間254mmに達するまでの燃焼時間(秒)を、B標線に達さない場合はその燃焼距離(mm)とその燃焼時間(秒)を測定する。また、A標線に達さない場合は燃焼距離は0mm、燃焼時間は0秒として記録する。そして、計測した燃焼時間および燃焼距離から以下の式1を用いて燃焼速度を、布帛のタテ方向およびヨコ方向それぞれについて算出する。ここで、「布帛の燃焼性」とは、布帛のタテ方向およびヨコ方向の各3枚の試験片の燃焼速度の平均値をいう。ここで、算出したタテ方向およびヨコ方向の燃焼速度の平均が0mm/minのときは◎、0mm/minを超えて100mm/min以下の範囲にあるときは○、100mm/minを超えるときは×として3段階で評価した。式1 燃焼速度(mm/min)= 燃焼距離(mm)/燃焼時間(秒)×60
(布帛のピリング性)
布帛からランダムに、試験片ホルダー用に直径140mm、ピリングテーブル用に直径140mmの試験片をそれぞれ3枚ずつ採取する。次にISO 12945-2 マーチンデール法に基づいてマーチンデール試験機を用いて荷重415gにて4000回摩耗試験を行う。その後、級判定を行いピリング性について判定する。ここで「布帛のピリング性」とは、試験片3枚の級判定結果の平均値をいう。ここで、級判定結果の平均が4級以上であれば「ピリングなし」、4級未満であれば「ピリングあり」として2段階で評価した。
【0049】
(布帛の摩耗後の損失重量;耐摩耗性)
布帛からランダムに、直径40mmの試験片を2枚採取する。次に、ISO 12947-2 マーチンデール法に基づいて、マーチンデール試験機を用いて押圧荷重12kPaにて5万回摩耗試験を行う。前記摩耗試験の前後で試験片の重量を計測し、前期摩耗試験後の損失重量(mg)を測定する。ここで、「布帛の摩耗後の損失重量」とは、試験片2枚の損失重量の平均値をいう。ここで、算出した摩耗後の損失重量の平均値が10mg以下であった場合を○、それ以上であった場合を×として2段階で判定する。
【0050】
(布帛の最大強度・最大伸度)
布帛からランダムに、タテ方向ヨコ方向それぞれ3枚ずつ、試験片サイズ長さ295mm×幅50mmの試験片を採取する。次にISO 13934-1に基づいて引っ張り試験機を用い、つかみ間隔200mm、引っ張り速度100mm/minにて試験片が破断するまで引っ張り試験を行う。その際の最大強度(N)および最大伸度(%)を測定する。ここで、「布帛の最大強度および最大伸度」とは、採取したタテ方向およびヨコ方向それぞれの試験片3枚分の平均値をいう。
【0051】
(布帛の伸長率)
布帛からランダムに、タテ方向ヨコ方向それぞれ3枚ずつ、試験片サイズ長さ160mm×幅50mmの試験片を採取する。次にDIN15977に基づいて、試験片に標線間100mmとなるようにペンで印を付け、引っ張り試験機を用いて125Nの荷重をかけ、そのままの状態で30分放置する。30分経過直後に標線間の距離を測定し、下記式2により伸長率を算出する。ここで、「布帛の伸長率」とは、採取したタテ方向およびヨコ方向それぞれの試験片3枚分の平均値をいう。
式2 伸長率(%)= (加重30分後の標線間の距離(mm)-100(mm))/100×100
(実施例1)
50質量%以上を占めるモノフィラメントとして、難燃性のポリエステルエラストマー繊維である難燃性の“ハイトレル”(商標登録)を使用した乾熱収縮率26.6%である610dtexのモノフィラメント、その他の繊維として167detxの仮撚りポリエステル糸の双糸を用い、緯編み機を用いて編成し、布帛の枠部材に張設されている一部分の熱処理後の経(コース)方向と緯(ウェル)方向の編密度がそれぞれ40本/25.4mmと40本/25.4mmとなる布帛Aを得た。
【0052】
次に、布帛Aの縁部をフレーム内寸が500mm×500mmである金属からなる枠部材で支持して取り付けし、乾熱処理(185℃×15分)により布帛に収縮が発現された布帛体Aを作成し、前記布帛体Aの400N荷重付加時における撓み量および前記布帛体Aの通気度を測定した。
【0053】
その結果、布帛体Aの400N荷重付加時における撓み量は、41mmであり、布帛体Aの通気度は57cm/cm・secであった。
ここで、布帛Aを用いた布帛体Aの特徴(使用糸種・繊度、編密度、400N荷重付加時における撓み量および通気度等)について表1にまとめた。
【0054】
(実施例2)
50質量%以上を占めるモノフィラメントとして、難燃性のポリエステルエラストマー繊維である難燃性の“ハイトレル”(商標登録)を使用した乾熱収縮率26.6%である610dtexのモノフィラメント、その他の繊維として167detxの仮撚りポリエステル糸の双糸を用い、緯編み機を用いて編成し、布帛の枠部材に張設されている一部分の熱処理後の経(コース)方向と緯(ウェル)方向の編密度がそれぞれ45本/25.4mmと41本/25.4mmとなる布帛Bを得た。
【0055】
次に、布帛Bの縁部をフレーム内寸が500mm×500mmである金属からなる図2に示した枠部材で支持して取り付けし、乾熱処理(185℃×15分)により布帛に収縮が発現された布帛体Bを作成し、前記布帛体Bの400N荷重付加時における撓み量および前記布帛体Bの通気度を測定した。
【0056】
その結果、布帛体Bの400N荷重付加時における撓み量は、50mmであり、布帛体Bの通気度は40cm/cm・secであった。
ここで、布帛Bを用いた布帛体Bの特徴(使用糸種・繊度、編密度、400N荷重付加時における撓み量および通気度等)について表1にまとめた。
【0057】
(実施例3)
50質量%以上を占めるモノフィラメントとして、難燃性のポリエステルエラストマー繊維である難燃性の“ハイトレル”(商標登録)を使用した乾熱収縮率26.6%である610dtexのモノフィラメント、その他の繊維として167detxの仮撚りポリエステル糸の双糸を用い、緯編み機を用いて編成し、布帛の枠部材に張設されている一部分の熱処理後の経(コース)方向と緯(ウェル)方向の編密度がそれぞれ35本/25.4mmと31本/25.4mmとなる布帛Cを得た。
【0058】
次に、布帛Cの縁部をフレーム内寸が500mm×500mmである金属からなる図2に示した枠部材で支持して取り付けし、乾熱処理(185℃×15分)により布帛に収縮が発現された布帛体Cを作成し、前記布帛体Cの400N荷重付加時における撓み量および前記布帛体Cの通気度を測定した。
【0059】
その結果、布帛体Cの400N荷重付加時における撓み量は、43mmであり、布帛体Cの通気度は28cm/cm・secであった。
ここで、布帛Cを用いた布帛体Cの特徴(使用糸種・繊度、編密度、400N荷重付加時における撓み量および通気度等)について表1にまとめた。
【0060】
(実施例4)
50質量%以上を占めるモノフィラメントとして、難燃性のポリエステルエラストマー繊維である難燃性の“ハイトレル”(商標登録)を使用した乾熱収縮率26.6%である610dtexのモノフィラメント、その他の繊維として167detxの仮撚りポリエステル糸の双糸を用い、緯編み機を用いて二重生地を編成し、布帛の枠部材に張設されている一部分の熱処理後の経(コース)方向と緯(ウェル)方向の編密度がそれぞれ38本/25.4mmと33本/25.4mmとなる布帛Dを得た。
【0061】
次に、布帛Dの縁部をフレーム内寸が500mm×500mmである金属からなる図2に示した枠部材で支持して取り付けし、乾熱処理(185℃×15分)により布帛に収縮が発現された布帛体Dを作成し、前記布帛体Dの400N荷重付加時における撓み量および前記布帛体Dの通気度を測定した。
【0062】
その結果、布帛体Dの400N荷重付加時における撓み量は、46mmであり、布帛体Dの通気度は18cm/cm・secであった。
【0063】
ここで、布帛Dを用いた布帛体Dの特徴(使用糸種・繊度、編密度、400N荷重付加時における撓み量および通気度等)について表1にまとめた。
【0064】
(実施例5)
50質量%以上を占めるモノフィラメントとして、難燃性のポリエステルエラストマー繊維である難燃性の“ハイトレル”(商標登録)を使用した乾熱収縮率26.6%である610dtexのモノフィラメント、その他の繊維として167detxの仮撚りポリエステル糸の双糸を用い、緯編み機を用いて編成し、布帛の枠部材に張設されている一部分の熱処理後の経(コース)方向と緯(ウェル)方向の編密度がそれぞれ33本/25.4mmと26本/25.4mmとなる布帛Eを得た。
【0065】
次に、布帛Eの縁部をフレーム内寸が500mm×500mmである金属からなる図2に示した枠部材で支持して取り付けし、乾熱処理(185℃×15分)により布帛に収縮が発現された布帛体Eを作成し、前記布帛体Eの400N荷重付加時における撓み量および前記布帛体Eの通気度を測定した。
【0066】
その結果、布帛体Eの400N荷重付加時における撓み量は、49mmであり、布帛体Eの通気度は65cm/cm・secであった。
【0067】
ここで、布帛Eを用いた布帛体Eの特徴(使用糸種・繊度、編密度、400N荷重付加時における撓み量および通気度等)について表2にまとめた。
【0068】
(実施例6)
50質量%以上を占めるモノフィラメントとして、難燃性のポリエステルエラストマー繊維である難燃性の“ハイトレル”(商標登録)を使用した乾熱収縮率35.7%である760dtexのモノフィラメント、その他の繊維として167detxの仮撚りポリエステル糸の双糸を用い、緯編み機を用いて編成し、布帛の枠部材に張設されている一部分の熱処理後の経(コース)方向と緯(ウェル)方向の編密度がそれぞれ31本/25.4mmと32本/25.4mmとなる布帛Fを得た。
【0069】
次に、布帛Fの縁部をフレーム内寸が500mm×500mmである金属からなる図2に示した枠部材で支持して取り付けし、乾熱処理(185℃×15分)により布帛に収縮が発現された布帛体Fを作成し、前記布帛体Fの400N荷重付加時における撓み量および前記布帛体Fの通気度を測定した。
【0070】
その結果、布帛体Fの400N荷重付加時における撓み量は、47mmであり、布帛体Fの通気度は64cm/cm・secであった。
【0071】
ここで、布帛Fを用いた布帛体Fの特徴(使用糸種・繊度、編密度、400N荷重付加時における撓み量および通気度等)について表2にまとめた。
【0072】
(実施例7)
50質量%以上を占めるモノフィラメントとして、難燃性のポリエステルエラストマー繊維である難燃性の“ハイトレル”(商標登録)を使用した乾熱収縮率37.2%である771dtexのモノフィラメント、その他の繊維として167detxの仮撚りポリエステル糸の双糸を用い、緯編み機を用いて編成し、布帛の枠部材に張設されている一部分の熱処理後の経(コース)方向と緯(ウェル)方向の編密度がそれぞれ28本/25.4mmと30本/25.4mmとなる布帛Gを得た。
【0073】
次に、布帛Gの縁部をフレーム内寸が500mm×500mmである金属からなる図2に示した枠部材で支持して取り付けし、乾熱処理(185℃×15分)により布帛に収縮が発現された布帛体Gを作成し、前記布帛体Gの400N荷重付加時における撓み量および前記布帛体Gの通気度を測定した。
【0074】
その結果、布帛体Gの400N荷重付加時における撓み量は、30mmであり、布帛体Gの通気度は162cm/cm・secであった。
【0075】
ここで、布帛Gを用いた布帛体Gの特徴(使用糸種・繊度、編密度、400N荷重付加時における撓み量および通気度等)について表2にまとめた。
【0076】
(実施例8)
50質量%以上を占めるモノフィラメントとして、難燃性のポリエステルエラストマー繊維である難燃性の“ハイトレル”(商標登録)を使用した乾熱収縮率37.2%である771dtexのモノフィラメント、その他の繊維として167detxの仮撚りポリエステル糸の双糸を用い、緯編み機を用いて編成し、布帛の枠部材に張設されている一部分の熱処理後の経(コース)方向と緯(ウェル)方向の編密度がそれぞれ28本/25.4mmと30本/25.4mmとなる布帛Hを得た。
【0077】
次に、布帛Hの縁部をフレーム内寸が500mm×500mmである金属からなる図2に示した枠部材で支持して取り付けし、乾熱処理(150℃×15分)により布帛に収縮が発現された布帛体Hを作成し、前記布帛体Hの400N荷重付加時における撓み量および前記布帛体Hの通気度を測定した。
【0078】
その結果、布帛体Hの400N荷重付加時における撓み量は、30mmであり、布帛体Hの通気度は162cm/cm・secであった。
【0079】
ここで、布帛Hを用いた布帛体Hの特徴(使用糸種・繊度、編密度、400N荷重付加時における撓み量および通気度等)について表3にまとめた。
【0080】
(実施例9)
50質量%以上を占めるモノフィラメントとして、難燃性のポリエステルエラストマー繊維である難燃性の“ハイトレル”(商標登録)を使用した乾熱収縮率37.2%である771dtexのモノフィラメント、その他の繊維として167detxの仮撚りポリエステル糸の双糸を用い、緯編み機を用いて編成し、布帛の枠部材に張設されている一部分の熱処理後の経(コース)方向と緯(ウェル)方向の編密度がそれぞれ28本/25.4mmと30本/25.4mmとなる布帛Iを得た。
【0081】
次に、布帛Iの縁部をフレーム内寸が500mm×500mmである金属からなる図2に示した枠部材で支持して取り付けし、乾熱処理(185℃×5分)により布帛に収縮が発現された布帛体Iを作成し、前記布帛体Iの400N荷重付加時における撓み量および前記布帛体Iの通気度を測定した。
【0082】
その結果、布帛体Iの400N荷重付加時における撓み量は、30mmであり、布帛体Iの通気度は162cm/cm・secであった。
【0083】
ここで、布帛Iを用いた布帛体Iの特徴(使用糸種・繊度、編密度、400N荷重付加時における撓み量および通気度等)について表3にまとめた。
【0084】
(実施例10)
50質量%以上を占めるモノフィラメントとして、難燃性のポリエステルエラストマー繊維である難燃性の“ハイトレル”(商標登録)を使用した乾熱収縮率37.2%である771dtexのモノフィラメント、その他の繊維として167detxの仮撚りポリエステル糸の双糸を用い、緯編み機を用いて編成し、布帛の枠部材に張設されている一部分の熱処理後の経(コース)方向と緯(ウェル)方向の編密度がそれぞれ28本/25.4mmと30本/25.4mmとなる布帛Jを得た。
【0085】
次に、布帛Jの縁部をフレーム内寸が500mm×500mmである金属からなる図2に示した枠部材で支持して取り付けし、真空状態でのスチーム処理(125℃×5分)により布帛に収縮が発現された布帛体Jを作成し、前記布帛体Jの400N荷重付加時における撓み量および前記布帛体Jの通気度を測定した。
【0086】
その結果、布帛体Jの400N荷重付加時における撓み量は、30mmであり、布帛体Jの通気度は162cm/cm・secであった。
【0087】
ここで、布帛Jを用いた布帛体Jの特徴(使用糸種・繊度、編密度、400N荷重付加時における撓み量および通気度等)について表3にまとめた。
【0088】
(実施例11)
50質量%以上を占めるモノフィラメントとして、難燃性のポリエステルエラストマー繊維である難燃性の“ハイトレル”(商標登録)を使用した乾熱収縮率37.2%である771dtexのモノフィラメント、その他の繊維として167detxの仮撚りポリエステル糸の双糸を用い、緯編み機を用いて編成し、布帛の枠部材に張設されている一部分の熱処理後の経(コース)方向と緯(ウェル)方向の編密度がそれぞれ28本/25.4mmと30本/25.4mmとなる布帛Kを得た。
【0089】
次に、布帛Kの縁部をフレーム内寸が500mm×500mmである金属からなる図2に示した枠部材で支持して取り付けし、真空状態でのスチーム処理(130℃×10分)により布帛に収縮が発現された布帛体Kを作成し、前記布帛体Kの400N荷重付加時における撓み量および前記布帛体Kの通気度を測定した。
【0090】
その結果、布帛体Kの400N荷重付加時における撓み量は、30mmであり、布帛体Kの通気度は162cm/cm・secであった。
【0091】
ここで、布帛Kを用いた布帛体Kの特徴(使用糸種・繊度、編密度、400N荷重付加時における撓み量および通気度等)について表4にまとめた。
【0092】
(実施例12)
50質量%以上を占めるモノフィラメントとして、難燃性のポリエステルエラストマー繊維である難燃性の“ハイトレル”(商標登録)を使用した乾熱収縮率37.2%である771dtexのモノフィラメント、その他の繊維として167detxの仮撚りポリエステル糸の双糸を用い、緯編み機を用いて編成し、布帛の枠部材に張設されている一部分の熱処理後の経(コース)方向と緯(ウェル)方向の編密度がそれぞれ28本/25.4mmと30本/25.4mmとなる布帛Lを得た。
【0093】
次に、布帛Lの縁部をフレーム内寸が500mm×500mmである金属からなる図2に示した枠部材で支持して取り付けし、真空状態でのスチーム処理(130℃×20分)により布帛に収縮が発現された布帛体Lを作成し、前記布帛体Lの400N荷重付加時における撓み量および前記布帛体Lの通気度を測定した。
【0094】
その結果、布帛体Lの400N荷重付加時における撓み量は、30mmであり、布帛体Lの通気度は162cm/cm・secであった。
【0095】
ここで、布帛Lを用いた布帛体Lの特徴(使用糸種・繊度、編密度、400N荷重付加時における撓み量および通気度等)について表4にまとめた。
【0096】
(実施例13)
50質量%以上を占めるモノフィラメントとして、難燃性のポリエステルエラストマー繊維である難燃性の“ハイトレル”(商標登録)を使用した乾熱収縮率37.2%である771dtexのモノフィラメント、その他の繊維として167detxの仮撚りポリエステル糸の双糸を用い、緯編み機を用いて編成し、布帛の枠部材に張設されている一部分の熱処理後の経(コース)方向と緯(ウェル)方向の編密度がそれぞれ28本/25.4mmと30本/25.4mmとなる布帛Mを得た。
【0097】
次に、布帛Mの縁部をフレーム内寸が500mm×500mmである金属からなる図2に示した枠部材で支持して取り付けし、真空状態でのスチーム処理(160℃×15分)により布帛に収縮が発現された布帛体Mを作成し、前記布帛体Mの400N荷重付加時における撓み量および前記布帛体Mの通気度を測定した。
【0098】
その結果、布帛体Mの400N荷重付加時における撓み量は、30mmであり、布帛体Mの通気度は162cm/cm・secであった。
【0099】
ここで、布帛Mを用いた布帛体Mの特徴(使用糸種・繊度、編密度、400N荷重付加時における撓み量および通気度等)について表4にまとめた。
【0100】
(実施例14)
乾熱収縮率35.4%である1400detxのポリエステルエラストマー繊維を連結糸として使用し、167detxの仮撚りポリエステル糸の双糸を地糸として使用し、経編み機を用いて編成し、布帛の枠部材に張設されている一部分の熱処理後の経(コース)方向と緯(ウェル)方向の編密度がそれぞれ14本/25.4mmと12本/25.4mmとなり、連結糸の打ち込み本数が7本/25.4mmである立体編物の布帛Oを得た。
【0101】
次に、布帛Oの縁部をフレーム内寸が500mm×500mmである金属からなる図2に示した枠部材で支持して取り付けし、乾熱処理(185℃×15分)により布帛に収縮が発現された布帛体Oを作成し、前記布帛体Iの400N荷重付加時における撓み量および前記布帛体Oの通気度を測定した。
【0102】
その結果、布帛体Oの400N荷重付加時における撓み量は、55mmであり、布帛体Oの通気度は13cm/cm・secであった。
【0103】
ここで、布帛Oを用いた布帛体Oの特徴(使用糸種・繊度、編密度、400N荷重付加時における撓み量および通気度等)について表5にまとめた。
【0104】
(実施例15)
緯糸として乾熱収縮率35.2%である2000detxのポリエステルエラストマー繊維を、経糸として800dtexのポリエステル繊維を用いて織物を作成し、布帛の枠部材に張設されている一部分の熱処理後の経(コース)方向と緯(ウェル)方向の密度がそれぞれ35本/25.4mmと28本/25.4mmとなる織物の布帛Pを得た。
【0105】
次に、布帛Pの縁部をフレーム内寸が500mm×500mmである金属からなる図2に示した枠部材で支持して取り付けし、乾熱処理(185℃×15分)により布帛に収縮が発現された布帛体Pを作成し、前記布帛体Pの400N荷重付加時における撓み量および前記布帛体Pの通気度を測定した。
【0106】
その結果、布帛体Pの400N荷重付加時における撓み量は、30mmであり、布帛体Pの通気度は8cm/cm・secであった。
【0107】
ここで、布帛Pを用いた布帛体Pの特徴(使用糸種・繊度、編密度、400N荷重付加時における撓み量および通気度等)について表5にまとめた。
【0108】
(比較例1)
乾熱収縮率7.0%である167detxの仮撚りポリエステル糸の双糸のみを用いて緯編み機を用いて編成し、布帛の枠部材に張設されている一部分の熱処理後の経(コース)方向と緯(ウェル)方向の編密度がそれぞれ40本/25.4mmと40本/25.4mmとなる布帛Nを得た。
【0109】
次に、布帛Nの縁部をフレーム内寸が500mm×500mmである金属からなる図2に示した枠部材で支持して取り付けし、乾熱処理(185℃×15分)により布帛に収縮が発現された布帛体Nを作成し、前記布帛体Nの400N荷重付加時における撓み量および前記布帛体Nの通気度を測定した。
【0110】
その結果、布帛体Nの400N荷重付加時における撓み量は、18mmであり、布帛体Nの通気度は57cm/cm・secであった。
【0111】
ここで、布帛Nを用いた布帛体Nの特徴(使用糸種・繊度、編密度、400N荷重付加時における撓み量および通気度等)について表5にまとめた。
【0112】
(比較例2)
50質量%以上を占めるモノフィラメントとして、難燃性のポリエステルエラストマー繊維である難燃性の“ハイトレル”(商標登録)を使用した乾熱収縮率37.2%である771dtexのモノフィラメント、その他の繊維として167detxの仮撚りポリエステル糸の双糸を用い、緯編み機を用いて編成し、布帛の枠部材に張設されている一部分の熱処理後の経(コース)方向と緯(ウェル)方向の編密度がそれぞれ33本/25.4mmと62本/25.4mmとなる布帛Qを得た。
【0113】
次に、布帛Qの縁部をフレーム内寸が500mm×500mmである金属からなる図2に示した枠部材で支持して取り付けし、乾熱処理(205℃×15分)により布帛に収縮が発現された布帛体Qを作成し、前記布帛体Qの400N荷重付加時における撓み量および前記布帛体Qの通気度を測定した。
【0114】
その結果、布帛体Qの400N荷重付加時における撓み量は、18mmであり、布帛体Qの通気度は100cm/cm・secであった。
【0115】
ここで、布帛Qを用いた布帛体Qの特徴(使用糸種・繊度、編密度、400N荷重付加時における撓み量および通気度等)について表5にまとめた。
【0116】
(比較例3)
50質量%以上を占めるモノフィラメントとして、難燃性のポリエステルエラストマー繊維である難燃性の“ハイトレル”(商標登録)を使用した乾熱収縮率37.2%である771dtexのモノフィラメント、その他の繊維として167detxの仮撚りポリエステル糸の双糸を用い、緯編み機を用いて編成し、布帛の枠部材に張設されている一部分の熱処理後の経(コース)方向と緯(ウェル)方向の編密度がそれぞれ25本/25.4mmと35本/25.4mmとなる布帛Rを得た。
【0117】
次に、布帛Rの縁部をフレーム内寸が500mm×500mmである金属からなる図2に示した枠部材で支持して取り付けし、乾熱処理(140℃×15分)により布帛に収縮が発現された布帛体Rを作成し、前記布帛体Rの400N荷重付加時における撓み量および前記布帛体Rの通気度を測定した。
【0118】
その結果、布帛体Rの400N荷重付加時における撓み量は、62mmであり、布帛体Rの通気度は182cm/cm・secであった。
【0119】
ここで、布帛Rを用いた布帛体Rの特徴(使用糸種・繊度、編密度、400N荷重付加時における撓み量および通気度等)について表5にまとめた。
【0120】
(比較例4)
50質量%以上を占めるモノフィラメントとして、難燃性のポリエステルエラストマー繊維である難燃性の“ハイトレル”(商標登録)を使用した乾熱収縮率37.2%である771dtexのモノフィラメント、その他の繊維として167detxの仮撚りポリエステル糸の双糸を用い、緯編み機を用いて編成し、布帛の枠部材に張設されている一部分の熱処理後の経(コース)方向と緯(ウェル)方向の編密度がそれぞれ23本/25.4mmと35本/25.4mmとなる布帛Sを得た。
【0121】
次に、布帛Sの縁部をフレーム内寸が500mm×500mmである金属からなる図2に示した枠部材で支持して取り付けし、乾熱処理(185℃×1分)により布帛に収縮が発現された布帛体Sを作成し、前記布帛体Sの400N荷重付加時における撓み量および前記布帛体Sの通気度を測定した。
【0122】
その結果、布帛体Sの400N荷重付加時における撓み量は、65mmであり、布帛体Rの通気度は184cm/cm・secであった。
【0123】
ここで、布帛Sを用いた布帛体Sの特徴(使用糸種・繊度、編密度、400N荷重付加時における撓み量および通気度等)について表6にまとめた。
【0124】
(比較例5)
50質量%以上を占めるモノフィラメントとして、難燃性のポリエステルエラストマー繊維である難燃性の“ハイトレル”(商標登録)を使用した乾熱収縮率37.2%である771dtexのモノフィラメント、その他の繊維として167detxの仮撚りポリエステル糸の双糸を用い、緯編み機を用いて編成し、布帛の枠部材に張設されている一部分の熱処理後の経(コース)方向と緯(ウェル)方向の編密度がそれぞれ33本/25.4mmと62本/25.4mmとなる布帛Tを得た。
【0125】
次に、布帛Tの縁部をフレーム内寸が500mm×500mmである金属からなる図2に示した枠部材で支持して取り付けし、真空状態でのスチーム処理(170℃×15分)により布帛に収縮が発現された布帛体Tを作成し、前記布帛体Tの400N荷重付加時における撓み量および前記布帛体Tの通気度を測定した。
【0126】
その結果、布帛体Tの400N荷重付加時における撓み量は、17mmであり、布帛体Tの通気度は108cm/cm・secであった。
【0127】
ここで、布帛Tを用いた布帛体Tの特徴(使用糸種・繊度、編密度、400N荷重付加時における撓み量および通気度等)について表6にまとめた。
【0128】
(比較例6)
50質量%以上を占めるモノフィラメントとして、難燃性のポリエステルエラストマー繊維である難燃性の“ハイトレル”(商標登録)を使用した乾熱収縮率37.2%である771dtexのモノフィラメント、その他の繊維として167detxの仮撚りポリエステル糸の双糸を用い、緯編み機を用いて編成し、布帛の枠部材に張設されている一部分の熱処理後の経(コース)方向と緯(ウェル)方向の編密度がそれぞれ25本/25.4mmと35本/25.4mmとなる布帛Uを得た。
【0129】
次に、布帛Uの縁部をフレーム内寸が500mm×500mmである金属からなる図2に示した枠部材で支持して取り付けし、真空状態でのスチーム処理(100℃×15分)により布帛に収縮が発現された布帛体Uを作成し、前記布帛体Uの400N荷重付加時における撓み量および前記布帛体Uの通気度を測定した。
【0130】
その結果、布帛体Uの400N荷重付加時における撓み量は、62mmであり、布帛体Uの通気度は182cm/cm・secであった。
【0131】
ここで、布帛Uを用いた布帛体Uの特徴(使用糸種・繊度、編密度、400N荷重付加時における撓み量および通気度等)について表6にまとめた。
【0132】
(比較例7)
50質量%以上を占めるモノフィラメントとして、難燃性のポリエステルエラストマー繊維である難燃性の“ハイトレル”(商標登録)を使用した乾熱収縮率37.2%である771dtexのモノフィラメント、その他の繊維として167detxの仮撚りポリエステル糸の双糸を用い、緯編み機を用いて編成し、布帛の枠部材に張設されている一部分の熱処理後の経(コース)方向と緯(ウェル)方向の編密度がそれぞれ23本/25.4mmと35本/25.4mmとなる布帛Vを得た。
【0133】
次に、布帛Vの縁部をフレーム内寸が500mm×500mmである金属からなる図2に示した枠部材で支持して取り付けし、真空状態でのスチーム処理(130℃×1分)により布帛に収縮が発現された布帛体Vを作成し、前記布帛体Vの400N荷重付加時における撓み量および前記布帛体Vの通気度を測定した。
【0134】
その結果、布帛体Vの400N荷重付加時における撓み量は、65mmであり、布帛体Vの通気度は184cm/cm・secであった。
【0135】
ここで、布帛Vを用いた布帛体Vの特徴(使用糸種・繊度、編密度、400N荷重付加時における撓み量および通気度等)について表6にまとめた。
【0136】
【表1】
【0137】
【表2】
【0138】
【表3】
【0139】
【表4】
【0140】
【表5】
【0141】
【表6】
【符号の説明】
【0142】
1:布帛体
2:少なくとも一方向に張力がかかった状態で枠部材に張設された布帛の一部分
3:枠部材
4:第1組織
5:第2組織
6:第3組織
7:立体形状布帛
8:枠部材挿入部
9:枠部材取り外し可能部
10:接合部
11:凸部
12:凹部
13:枠部材の開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11