IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーウェーブの特許一覧

特許7305993ロボットの制御装置、ロボットの制御方法
<>
  • 特許-ロボットの制御装置、ロボットの制御方法 図1
  • 特許-ロボットの制御装置、ロボットの制御方法 図2
  • 特許-ロボットの制御装置、ロボットの制御方法 図3
  • 特許-ロボットの制御装置、ロボットの制御方法 図4
  • 特許-ロボットの制御装置、ロボットの制御方法 図5
  • 特許-ロボットの制御装置、ロボットの制御方法 図6
  • 特許-ロボットの制御装置、ロボットの制御方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】ロボットの制御装置、ロボットの制御方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/00 20060101AFI20230704BHJP
【FI】
B25J13/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019047107
(22)【出願日】2019-03-14
(65)【公開番号】P2020146807
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】井手 慧
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-347754(JP,A)
【文献】特開2016-124078(JP,A)
【文献】特開2015-226961(JP,A)
【文献】特開平11-090871(JP,A)
【文献】特開2000-071188(JP,A)
【文献】特開2005-111607(JP,A)
【文献】特開平10-105217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
B65G 47/00 - 47/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送装置とロボットの動作とを一括で制御する付加軸トラッキングに用いるロボットの制御装置であって、
前記搬送装置を駆動する駆動指令値を生成するための駆動指令値生成部と、
前記ロボットを動作させるための実動作指令値を生成する実動作指令値生成部と、
前記実動作指令値を補正する補正部と、を備え、
前記補正部は、目標位置に向けて移動させる際の前記ロボットの振動を抑制するために前記実動作指令値を補正し、前記実動作指令値を補正する場合、前記実動作指令値と共通する補正を前記駆動指令値に対しても行うロボットの制御装置。
【請求項2】
前記補正部は、前記実動作指令値の補正に用いるパラメータを前記ロボットの駆動軸ごとに対応付けて記憶しており、前記搬送装置の前記駆動指令値の補正に用いるパラメータを、前記ロボットの駆動軸に対応付けられているパラメータの中から選択する請求項1記載のロボットの制御装置。
【請求項3】
前記補正部は、前記ロボットの複数の駆動軸のうち、前記搬送装置の動作方向に最も近似した動作を行う駆動軸に対応付けられているパラメータを、前記搬送装置の前記駆動指令値の補正に用いる請求項2記載のロボットの制御装置。
【請求項4】
搬送装置とロボットの動作とを一括で制御する付加軸トラッキングを行うロボットの制御方法であって、
目標位置に向けて移動させる際の前記ロボットの振動を抑制するために前記ロボットに与える実動作指令値を補正する際、前記搬送装置に与える駆動指令値についても、前記ロボットの実動作指令値と共通する補正を行うロボットの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの制御装置、ロボットの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットの利用形態として、搬送装置によって搬送されるワークの位置の変化に追従させながら作業を行うトラッキングが知られている。このとき、例えば特許文献1では、搬送装置の制御もロボットの制御装置によって行うことにより、トラッキングの精度を向上させることが提案されている。以下、ロボットの制御装置によりロボットの関節部以外の駆動軸ここでは例えば搬送装置の駆動軸を制御しながらトラッキングを行う態様を、付加軸トラッキングと称する。
【0003】
また、ロボットは、付加軸トラッキングをするか否かに関わらず、指令値を補正することにより動作サイクルを短縮することが行われている。例えば特許文献2では、ロボットを移動させた際に生じる振動を抑制するための補正を行い、目標位置で素早く静止状態となるようにすることが提案されている。以下、ロボットの指令値を補正することを、便宜的にロボット側の補正と称する。また、特許文献2に記載されている補正の手法を、便宜的に従来の振動抑制処理と称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-105217号公報
【文献】特開2018-51650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記したロボット側の補正は、あくまでもロボットの指令値に対して行われていたものであり、その補正によってロボットが目標位置で素早く静止状態となったとしても、搬送装置は自身に与えられた指令値に従って動作することから、搬送装置とロボットとの間にずれが生じ、トラッキングの追従性が悪化したり、結果として素早くロボットを静止状態にできるメリットが損なわれるなど、補正の効果が薄れてしまったりするおそれがある。
【0006】
そこで、補正の効果を得たままで搬送装置とロボットとの間にずれが生じることを抑制できるロボットの制御装置、ロボットの制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載した発明では、制御装置は、搬送装置とロボットの動作とを一括で制御する付加軸トラッキングを行う際、搬送装置を駆動するための駆動指令値を生成するとともに、ロボットを動作させるための実動作指令値を生成し、その実動作指令値を補正してロボットを制御する。
【0008】
さて、このとき、搬送装置には駆動指令値をそのまま与え、ロボットには補正した実動作指令値を与えると、搬送装置とロボットとの間にずれが生じ、トラッキングの追従性が悪化したり、例えば素早くロボットを静止状態にできてもその効果が薄れてしまったりする。
そこで、制御装置は、実動作指令値を補正する場合には、実動作指令値と共通する補正を駆動指令に対しても行う。
【0009】
これにより、搬送装置に対して、ロボットと共通した補正が行われた駆動指令値が与えられ、補正が共通することから、搬送装置とロボットとの間の指令値のずれを解消することが可能になる。また、ロボットは、補正が行われた状態、つまりは、補正の効果を得ることができる状態で動作することが可能になる。
したがって、補正の効果を得たままで、搬送装置とロボットとの間にずれが生じることを抑制することができる。
【0010】
請求項2に記載した発明では、補正部は、実動作指令値の補正に用いるパラメータをロボットの駆動軸ごとに対応付けて記憶しており、搬送装置の駆動指令値の補正に用いるパラメータを、ロボットの駆動軸に対応付けられているパラメータの中から選択する。
【0011】
搬送装置は、ワークを投入するタイミングやワークの個数を事前に把握しておくことは難しく、予めパラメータを設定することが困難であるとともに、現在の負荷や重心位置を特定することも困難である。これは、ワークの数で負荷が変動したり、ワークの形状や搬送装置に設置された位置などによって重心が変化したりする可能性があるためである。また、仮にそれらをクリアできたとしても、駆動指令値に対する補正と実動作指令値に対する補正とで処理内容が異なっていると、そもそもずれを解消することができないため、精度を改善することもできない。
【0012】
そこで、制御装置は、駆動指令値の補正に用いるパラメータを、ロボットの駆動軸に対応付けられているパラメータの中から選択する。これにより、搬送装置の状態を把握できなくても、駆動指令値を補正するパラメータを得ることができる。
【0013】
請求項3に記載した発明では、補正部は、ロボットの複数の駆動軸のうち、搬送装置の動作方向に最も近似した動作を行う駆動軸に対応付けられているパラメータを、搬送装置の駆動指令値の補正に用いる。つまり、例えば搬送装置が水平方向に動作している場合、ロボットの複数の駆動軸のうち、水平方向の移動の主成分となる駆動軸に対応付けられているパラメータを、搬送装置の駆動指令値の補正に用いる。これにより、共通する動作方向への補正が行われることになり、ロボットの動作と搬送装置の動作とのずれを抑制することができる。
【0014】
請求項4に記載した発明では、制御装置は、ロボットの振動を抑制する補正を行う。これにより、より迅速にロボットを静止状態とすることができ、且つ、搬送装置もロボットと共通する補正が行われているため、ずれが生じない状態でロボットと搬送装置とを制御することが可能となり、動作サイクルの向上が期待できる。
【0015】
請求項5に記載した発明では、ロボットに与える指令値を補正する際、搬送装置に与える指令値についても、ロボットの指令値と共通する補正を行う。これにより、上記した制御装置と同様に、ロボットに対して何らかの補正を行う場合であっても、ロボットと搬送装置との間にずれが生じることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態によるロボットシステムの構成を模式的に示す図
図2】ロボットの構成を模式的に示す図
図3】制御装置の電気的構成を模式的に示す図
図4】振動抑制処理による振動抑制の効果を模式的に示す図
図5】振動抑制処理の概略を説明する図
図6】指令値補正処理の流れを示す図
図7】パラメータ設定処理の流れを示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態のロボットシステム1は、搬送装置2とロボット3の動作とを一括で制御して、搬送装置2の動作に追従するようにロボット3を動作させる付加軸トラッキングを行うものであり、搬送装置2、ロボット3の動作を制御する制御装置4等を備えている。
【0018】
本実施形態では、ロボット3として水平多関節型のいわゆる4軸ロボットを想定している。このロボット3は、図2に示すように、ベース3aと、第1アーム3b、補助アーム3c、第2アーム3d、シャフト3eを備えている。そして、ロボット3は、周知のように、ベース3aと第1アーム3bとを連結している駆動軸である第1軸(J1)、第1アーム3bと第2アーム3dとを連結している駆動軸である第2軸(J2)、および、シャフト3eの回転軸となる駆動軸である第3軸(J3)、および、図示は省略するがシャフト3eを上下動させるための第4軸(J4)を回転駆動することにより、所望の作業を行うように制御される。
【0019】
なお、ロボットシステム1は、いわゆる4軸ロボットに限らず、垂直多関節型のいわゆる6軸ロボットや7軸ロボットを対象としたシステム構成とすることもできるし、水平多関節型のものと垂直多関節型のものとが混在したシステム構成とすることもできる。
【0020】
制御装置4は、搬送装置2を駆動するモータ5、モータ5に設けられているエンコーダ6、および、搬送装置2に搬送されるワーク7の位置を検出するカメラやレーザ距離計などで構成される検出器8が接続されている。モータ5の回転軸は、搬送装置2の駆動軸となっている。つまり、ロボットシステム1は、ロボット3の関節部部分の駆動軸とは別の制御対象であるモータ5の回転軸を付加軸とした付加軸トラッキングを行う構成となっている。
【0021】
この制御装置4は、図3に示すように、駆動指令値生成部4a、単独動作指令値生成部4b、追従動作指令値生成部4c、実動作指令値生成部4d、補正部4e、駆動部4fなどを備えている。なお、本実施形態では、駆動指令値生成部4a、単独動作指令値生成部4b、追従動作指令値生成部4c、実動作指令値生成部4d、補正部4eは、図示しないCPUにてプログラムを実行することによりソフトウェアで実現されている。
駆動指令値生成部4aは、搬送装置2を駆動する駆動指令値を生成する。
【0022】
単独動作指令値生成部4bは、ロボット3を目標位置に向けて単独動作させるための単独動作指令値を生成する。ここで、単独動作指令値とは、搬送装置2の動作は考慮せず、所定の目標位置に向けてロボット3を動作させる指令値を意味している。この場合、単独動作指令値生成部4bは、図1のE0が目標位置であるとすると、E0に向かってロボット3を移動させるための単独動作指令値を生成する。
【0023】
追従動作指令値生成部4cは、駆動指令値生成部4aで生成した駆動指令値に基づいて、ロボット3を搬送装置2の動作つまりはワーク7の移動に追従動作させるための追従動作指令値を生成する。ここで、追従動作指令値とは、単独動作しているロボット3を搬送装置2の動作に追従するように動作させる指令値を意味している。具体的には、追従動作指令値生成部4cは、図1に示すE0に向かって単独動作しているロボット3を、搬送装置2の移動量(ΔL)を加味したE1に向かうようにする追従動作指令値を生成する。
【0024】
実動作指令値生成部4dは、単独動作指令値と追従動作指令値とを合成し、実際にロボット3に与える実動作指令値を生成する。
補正部4eは、詳細は後述するが、搬送装置2に与えられる駆動指令値と、ロボット3に与えられる実動作指令値とに対して、共通する態様で補正を行う。
駆動部4fは、補正が行われた駆動指令値を搬送装置2に与えるとともに、補正が行われた実動作指令値をロボット3に与えることにより、搬送装置2とロボット3とをそれぞれ駆動する。
【0025】
次に、上記した構成の作用について説明する。
まず、補正部4eにてロボット3の指令値に対して行われる補正について説明する。本実施形態では、補正部4eは、前述の従来の振動抑制処理を行うことを想定している。なお、従来の振動抑制処理は公知であるため、ここではその概略を説明する。ただし、補正部4eが行う処理は、振動抑制処理に限定されず、生成された指令値を補正するものであれば、他の処理であってもよい。
【0026】
従来の振動抑制処理は、ロボット3が水平移動するときなどにおいて、目標位置に到達した際の振動を抑制することができるように指令値を補正する。具体的には、従来の振動抑制処理は、シャフト3eとワーク7との全重心位置と加速度あるいは減速度とに基づいて、全重心位置が直近の目標位置となるように指令値を補正する。このとき、補正用のパラメータは、ロボット3の各軸について、負荷と姿勢とに対応付けられている。
【0027】
このような振動抑制処理が行われた場合、図4に示すように、補正前の指令値が破線グラフG0にて示す概ね台形状に変化するものであった場合、補正後の指令値は、実線グラフG1にて示すように、立ち上がりや立ち下がりが鈍った台形状に変化する。この場合、一般的には、補正前の指令値に従って目標位置に到達する時刻がt0であったとすると、補正後の指令値に従って目標位置に到達する時刻は、t0よりも遅れたt1になる。
【0028】
その一方で、補正前の指令値に従った場合には、破線グラフG10にて示すように、目標位置にはt0に到達するものの、振動が発生して、ロボット3が静止状態になるのは例えば時刻t2となる。
【0029】
これに対して、補正後の指令値に従った場合には、振動が抑制された結果、実線グラフG11にて示すように、目標位置に到達した時刻(t1)においてロボット3が静止状態となる。つまり、振動抑制処理を行った場合には、目標位置への到達が遅れたとしても、より早くロボット3が静止状態になることから、結果的に動作サイクルを早めることが可能になる。
【0030】
ところで、上記した振動抑制処理は、ロボット3の実動作指令値に対して行われるものである。この実動作指令値は、上記したように、目標位置への単独動作指令値と、駆動指令値に基づいて生成される追従動作指令値とを合成することにより生成されている。
【0031】
そして、従来の振動抑制処理はロボット3の実動作指令値に対して施されるため、図4に比較例として示すように、補正されていない駆動指令値と、補正された実動作指令値とが搬送装置2とロボット3とに出力されることになる。
【0032】
この場合、搬送装置2は補正されていない駆動指令値に基づいて動作する一方、ロボット3は補正された実動作指令値に基づいて動作することになり、搬送装置2とロボット3とで基準とする指令値が異なった状態になってしまう。そして、両者の指令値にずれが生じると、追従性が低下したり動作が同期しなくなったりすることで、トラッキングの精度が低下するおそれがある。
【0033】
この場合、駆動指令値についても振動を抑制するための補正を行うことにより、搬送装置2とロボット3との間の位置や速度のずれを解消することが考えられる。しかし、搬送装置2の場合には、ワーク7の投入タイミングやその個数を事前に設定することは難しく、搬送装置2の現在の負荷や重心位置を特定することは困難である。
【0034】
また、仮にそれらをクリアできたとしても、駆動指令値に対する補正と実動作指令値に対する補正とで処理内容が異なっていると、そもそもずれを解消することができないため、精度を改善することもできない。つまり、付加設備を設けることなく搬送装置2に最適なパラメータを制御装置4が単独で設定することは、現実的には困難である。
【0035】
そこで、本実施形態では、以下のようにして、実動作指令値と駆動指令値とのずれを解消している。なお、以下に説明する処理は、補正部4eによって行われるものであるが、ここでは説明の簡略化のために制御装置4を主体として説明する。
【0036】
制御装置4は、図6に示す指令値補正処理において、実動作指令値を生成すると(S1)、補正が有効か否かを判定する(S2)。なお、このステップS2では、駆動軸のいずれかに対して補正を行う設定がされているか否かを判定している。
【0037】
制御装置4は、補正が有効でないと判定すると(S2:NO)、ステップS5に移行し、補正をせずに指令値を駆動部4fに出力する。この場合、実動作指令値も駆動指令値も補正されていないため、ずれは生じない。
【0038】
一方、制御装置4は、補正が有効であると判定すると(S2:YES)、パラメータ設定処理を実行する(S3)。このパラメータ設定処理は、補正に必要となるパラメータを設定する処理であるが、パラメータとそのものは、ロボット3のキャリブレーション時に各軸と負荷とに対応付けて記憶されている。
【0039】
制御装置4は、図7に示すパラメータ設定処理において、軸を選択する(T1)。本実施形態の場合、制御装置4には、ロボット3の第1軸~第4軸と搬送装置2の駆動軸との5つの駆動軸が制御対象として設定されている。そのため、制御装置4は、ステップT1において、パラメータ設定を行う駆動軸を選択する。以下、搬送装置2の駆動軸を、便宜的に第5軸とも称する。この場合、第1軸~第4軸はロボット3の駆動軸であり、第5軸はロボット3の駆動軸ではないことになる。
【0040】
例えば第1軸を選択すると、制御装置4は、補正が有効か否かを判定する(T2)。つまり、制御装置4は、補正を行うか否かを、各駆動軸に対して個別に判定する。これは、従来の振動抑制処理を行う際のパラメータは、ロボット3の種類や駆動軸によって変化するためである。制御装置4は、補正が有効でない場合には(T2:NO)、ステップT5に移行して他の駆動軸に対するパラメータの設定が完了したかを判定する。
【0041】
これに対して、制御装置4は、補正が有効であると判定した場合には(T2:YES)、選択した駆動軸がロボット3の駆動軸であるか否かをさらに判定し(T3)、ロボット3の駆動軸である場合には(T3:YES)、ロボット3の負荷と姿勢とから、その駆動軸に対応付けられているパラメータを設定する(T4)。
【0042】
続いて、制御装置4は、全ての駆動軸に対するパラメータの設定が完了したか否かを判定し(T5)、未設定の駆動軸がある場合には(T5:NO)、ステップT1に移行して次の駆動軸を選択する。そして、各駆動軸に対して同様にパラメータの設定を繰り返す。
【0043】
さて、制御装置4は、駆動軸として第5軸を選択した場合には、第5軸はロボット3の駆動軸ではないことから(T3:NO)、参照するロボット3の駆動軸を選択する(T6)。つまり、制御装置4は、上記したように搬送装置2の負荷や重心位置を特定することは困難であることから、駆動指令値に対する補正を、ロボット3の駆動軸のうち最も適したパラメータを用いて行うようになっている。
【0044】
具体的には、制御装置4は、ロボット3の複数の駆動軸のうち、搬送装置2の動作方向に最も近似した動作を行う駆動軸に対応付けられているパラメータを、搬送装置2の駆動指令値の補正に用いる。例えば、制御装置4は、搬送装置2が水平方向に動作している場合、ロボット3の複数の駆動軸のうち水平方向の移動の主成分となる駆動軸、つまりは、水平方向の動作に最も寄与する駆動軸に対応付けられているパラメータを、搬送装置の駆動指令値の補正に用いる。この場合、制御装置4は、今回の駆動指令値と前回の駆動指令値との差分から、あるいいは、過去の複数回分の駆動指令値から、搬送装置4の動作方向を特定することができる。
【0045】
これにより、搬送装置2が水平方向にだけ動作している場合であれば、参照する駆動軸としては、水平方向の動作成分の主軸となるロボット3の第1軸が選択され、複数のパラメータのうち、より適切なパラメータで補正を行うことができる。
【0046】
なお、図示は省略するが、制御装置4は、6軸ロボットのように鉛直方向の動作成分を含む場合には、鉛直方向の動作成分の主軸となる6軸ロボットの2軸を選択するような場合もある。また、全ての種類の搬送装置2や4軸ロボットや6軸ロボットの全ての動作を説明することは現実的ではないため上記した一例を示したが、6軸ロボットであっても主として水平方向に動作するものであれば1軸が選択されることもある。
【0047】
参照する駆動軸を選択すると、制御装置4は、その駆動軸のパラメータを、駆動指令値を補正するためのパラメータに設定する(T7)。そして、制御装置4は、他の駆動軸のパラメータの設定が完了したかを判定し(T5)、全ての駆動軸についてパラメータの設定が完了した場合には(T5:YES)、図6に示す指令値補正処理にリターンする。
【0048】
指令値補正処理にリターンすると、制御装置4は、パラメータ設定処理で設定したパラメータを用いて、実動作指令値および駆動指令値を補正する(S5)。つまり、制御装置4は、図5に実施例として示すように、駆動指令値と実動作指令値とに共通の補正を行い、各指令値を駆動部4fから出力する。
【0049】
これにより、搬送装置2とロボット3に対して共通した補正が行われた状態の指令値を出力することができ、駆動指令値と実動作指令値とのずれを解消することができる。
【0050】
以上説明した実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
制御装置4は、搬送装置2とロボット3の動作とを一括で制御する付加軸トラッキングに用いられるものであって、ロボット3を動作させる実動作指令値を生成する実動作指令値生成部4dと、実動作指令値を補正する補正部4eとを備えている。
【0051】
そして、制御装置4は、実動作指令値を補正する場合、実動作指令値と共通する補正を駆動指令値に対しても行う。これにより、搬送装置2に与えられる駆動指令値とロボット3に与えられる実動作指令値とのずれが解消される。換言すると、制御装置4は、ロボット3の動作に搬送装置2の動作を併せるような制御を行う。
【0052】
これにより、ロボット3に対して何らかの補正を行う場合であっても、ロボット3の動作と搬送装置2の動作とにずれが生じることを抑制することができる。すなわち、補正の効果を得たままで、搬送装置2とロボット3との間にずれが生じることを抑制することができる。
【0053】
また、制御装置4により実動作指令値と駆動指令値とに対して共通する補正を行う制御方法によっても、同様に、ロボット3に対して何らかの補正を行う場合であっても、ロボット3の動作と搬送装置2の動作とにずれが生じることを抑制することができる。
【0054】
また、上記した構成を備えるロボットシステム1によっても、同様に、ロボット3に対して何らかの補正を行う場合であっても、ロボット3の動作と搬送装置2の動作とにずれが生じることを抑制することができる。
【0055】
また、制御装置4は、実動作指令値の補正に用いるパラメータをロボット3の駆動軸ごとに対応付けて記憶しており、搬送装置2の駆動指令値の補正に用いるパラメータを、ロボット3の駆動軸に対応付けられているパラメータの中から選択する。
【0056】
制御装置4は、ロボット3の振動を抑制する補正を行う。これにより、より迅速にロボット3を静止状態とすることができ、且つ、搬送装置2もロボット3と共通する補正が行われているためにずれが生じず、動作サイクルを向上させることができる。また、搬送装置2の状態を実測やシミュレーション等で推定するような作業を行わなくても、駆動指令値を補正するパラメータを得ることができる。
【0057】
実施形態の制御装置4は、ロボット3を目標位置に向けて単独動作させるための単独動作指令値を生成する単独動作指令値生成部4bと、駆動指令値生成部4aで生成した駆動指令値に基づいて、ロボット3を搬送装置2に追従動作させるための追従動作指令値を生成する追従動作指令値生成部4cとを備え、追従動作指令値と単独動作指令値とを合成することによりロボット3を動作させる実動作指令値を生成し、その実動作指令値に対して補正を行う。これにより、補正が含まれない状態で実動作指令値を生成することができ、目標位置がずれることを防止できる。
【0058】
実施形態ではロボット3に与える指令値と同じ補正を搬送装置2に与える駆動指令値にも施す例を示したが、搬送装置2が停止している場合には駆動指令値に対して補正を行わない構成、つまりは、補正をするか否かの判定条件をさらに加えた構成とすることもできる。これにより、停止させているにも関わらず補正によって意図せずに搬送装置2が移動することを防止できる。
【0059】
実施形態では1台のロボット3と制御装置4とで付加軸トラッキングを行う構成を示したが、1台のマスター側の制御装置4と、1台または複数台のスレーブ側の制御装置4とで付加軸トラッキングを行う構成とすることもできる。
上記した実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定することは意図していない。
【符号の説明】
【0060】
図面中、2は搬送装置、3はロボット、4は制御装置、4aは駆動指令値生成部、4bは単独動作指令値生成部、4cは追従動作指令値生成部、4dは実動作指令値生成部、4eは補正部、4fは駆動部を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7