(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、及びそれを備えた液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20230704BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20230704BHJP
B41J 2/19 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
B41J2/14
B41J2/18
B41J2/19
B41J2/14 305
B41J2/14 501
B41J2/14 601
B41J2/14 605
B41J2/14 607
(21)【出願番号】P 2019069610
(22)【出願日】2019-04-01
【審査請求日】2022-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】小出 祥平
(72)【発明者】
【氏名】平井 啓太
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 啓太
(72)【発明者】
【氏名】片山 寛
【審査官】小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-061695(JP,A)
【文献】特開2018-103418(JP,A)
【文献】特開2012-139825(JP,A)
【文献】特開2012-011629(JP,A)
【文献】特開2006-088575(JP,A)
【文献】特開2017-064972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルが形成されたノズルプレートと、
前記複数のノズルに対応する複数の個別流路、前記複数の個別流路の入口に接続され、前記複数の個別流路に液体を供給する供給流路、及び前記複数の個別流路の出口に接続され、前記複数の個別流路から液体を回収する回収流路が形成された流路形成体と、
を備え、
前記複数の個別流路それぞれは、
前記ノズルと接続され、鉛直方向と交差する第1方向に延びる連通路と、
前記連通路と前記供給流路との間に配置された上流側圧力室と、
前記連通路と前記回収流路との間に配置され、前記連通路よりも上方の位置にある下流側圧力室と、
前記上流側圧力室と前記連通路の一端とを接続する上流側ディセンダ流路と、
前記連通路の他端と前記下流側圧力室とを接続し、前記第1方向及び水平面と交差する第2方向に延びる下流側ディセンダ流路と、
を有しており、
前記上流側圧力室内の液体に圧力を付与する上流側アクチュエータと、
前記下流側圧力室内の液体に圧力を付与する下流側アクチュエータと、
をさらに備え、
前記連通路における、当該連通路の前記第1方向における中心位置よりも前記下流側ディセンダ流路側の位置に、前記ノズルが接続されており、
前記ノズルプレートは、前記連通路の下面を画定する壁部を有しており、
前記連通路における、前記ノズルが接続されるノズル接続部分に対して前記上流側ディセンダ流路側で隣接する隣接部分の流路断面積が、当該連通路における他の流路部分よりも流路断面積が小さく、前記連通路の前記隣接部分の上面には、下方に突出する突起部が形成されており、且つ、前記隣接部分における鉛直方向の中心位置は、当該連通路における他の流路部分の鉛直方向の中心位置よりも下方であることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記連通路における、前記下流側ディセンダ流路の前記第2方向の投影領域内の位置に、前記ノズルが接続されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記連通路の流路断面積は、前記下流側ディセンダ流路の流路断面積よりも小さいことを特徴とする
請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドと、
前記供給流路から、前記複数の個別流路を介して前記回収流路へと液体を移送させるポンプと、
を備えたことを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド、及びそれを備えた液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ノズル開口(ノズル)、連通路、第1圧力発生室(上流側圧力室)、第2圧力発生室(下流側圧力室)、供給路と連通するマニホールド(供給流路)、及び、流出路と連通するマニホールド(回収流路)を備えた液体噴射ヘッド(液体吐出ヘッド)が開示されている。この特許文献1では、連通路は、ノズル開口が形成されたノズルプレートとは異なる連通板により画定されている。また、特許文献1では、供給路と連通するマニホールドから、第1圧力発生室、連通路、及び第2圧力発生室をこの順に通って、流出路と連通するマニホールドに向けてインクが流れている。また、ノズル開口は、連通路における、第2圧力発生室側の端部に接続されている。そして、特許文献1では、第1圧力発生室内に圧力を発生させる第1圧電素子(上流側アクチュエータ)、及び、第2圧力発生室内に圧力を発生させる第2圧電素子(下流側アクチュエータ)を駆動することで、ノズル開口からインクを吐出させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の液体吐出ヘッドでは、ノズルから連通路にエアが侵入する場合がある。このようなエアが、連通路のノズル近傍に留まると、ノズルの吐出特性に影響を与える。
【0005】
ここで、特許文献1のように、供給流路から回収流路に向けて液体が流れていると、この液体の流れにより、ノズルから侵入したエアを回収流路へと排出させることができる。一方で、この液体の流れにより、ノズルから進入したエアが、回収流路へ排出されずに、ノズル側に押し込まれて留まる虞もある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、連通路のノズル近傍に留まるエアを回収流路へ効果的に排出させることが可能な液体吐出ヘッド、及びそれを備えた液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液体吐出ヘッドは、複数のノズルが形成されたノズルプレートと、前記複数のノズルに対応する複数の個別流路、前記複数の個別流路の入口に接続され、前記複数の個別流路に液体を供給する供給流路、及び前記複数の個別流路の出口に接続され、前記複数の個別流路から液体を回収する回収流路が形成された流路形成体と、
を備え、前記複数の個別流路それぞれは、前記ノズルと接続され、鉛直方向と交差する第1方向に延びる連通路と、前記連通路と前記供給流路との間に配置された上流側圧力室と、前記連通路と前記回収流路との間に配置され、前記連通路よりも上方の位置にある下流側圧力室と、前記上流側圧力室と前記連通路の一端とを接続する上流側ディセンダ流路と、前記連通路の他端と前記下流側圧力室とを接続し、前記第1方向及び水平面と交差する第2方向に延びる下流側ディセンダ流路と、を有しており、前記上流側圧力室内の液体に圧力を付与する上流側アクチュエータと、前記下流側圧力室内の液体に圧力を付与する下流側アクチュエータと、をさらに備え、前記連通路における、当該連通路の前記第1方向における中心位置よりも前記下流側ディセンダ流路側の位置に、前記ノズルが接続されており、前記ノズルプレートは、前記連通路の下面を画定する壁部を有していることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るヘッド1を備えたプリンタ100の平面図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿ったヘッド1の断面図である。
【
図4】プリンタ100の電気的構成を示すブロック図である。
【
図5】(a)は、ヘッド1における、ノズル21近傍の断面図であり、(b)は、鉛直方向から見たときの、下流側ディセンダ流路24bと、ノズル21との位置関係を示す図であり、(c)は下流側ディセンダ流路24bの隣接部分22bの鉛直方向の中心位置h1について説明する図である。
【
図6】比較例のヘッド501における
図5(a)相当の断面図である。
【
図7】第2実施形態のヘッド201における
図5(a)相当の断面図である。
【
図8】(a)は、第3実施形態のヘッド301における
図5(a)相当の断面図であり、(b)は、(a)のI-I線に沿ったヘッド301の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、本発明の好適な第1実施形態について説明する。
【0010】
図1に示すように、第1実施形態に係るプリンタ100は、ヘッドユニット1X、プラテン3、搬送機構4及び制御装置5等を備えている。
【0011】
搬送機構4は、搬送方向に並んで配置された2つの搬送ローラ4a,4bを有する。2つの搬送ローラ4a,4bは、図示しないギヤ等を介して搬送モータ4mに接続されている。制御装置5により搬送モータ4mが駆動されると、搬送ローラ4a,4bが回転し、記録媒体である用紙Sを搬送方向に搬送する。
【0012】
プラテン3は、2つの搬送ローラ4a,4bに搬送方向に挟まれて配置されている。プラテン3は、搬送機構4により搬送される用紙Sを下方から支持する。用紙Sは、搬送機構4により搬送されることで、このプラテン3上を通過する。
【0013】
ヘッドユニット1Xは、プラテン3と鉛直方向に対向して配置され、紙幅方向に長尺である。ヘッドユニット1Xは、紙幅方向に千鳥状に配置された4つのヘッド1(「液体吐出ヘッド」に相当)を備えている。ヘッド1は、ドライバIC1d(
図4参照)によって駆動され、複数のノズル21(
図2及び
図3参照)からインクを吐出する。尚、紙幅方向は、搬送方向と直交する。紙幅方向及び搬送方向は、共に、水平面と平行な方向である。ヘッド1については、後ほど詳細に説明する。
【0014】
プリンタ100では、搬送機構4により用紙Sを搬送方向に搬送させつつ、4つのヘッド1の複数のノズル21からインクを吐出させることによって、用紙Sに画像を記録する。即ち、プリンタ100は、ヘッド1が固定された状態で、ヘッド1のノズル21から用紙Sに対してインクを吐出する、いわゆるライン式のインクジェットプリンタである。
【0015】
制御装置5は、
図4に示すように、CPU(Central Processing Unit)61、ROM(Read Only Memory)62、RAM(Random Access Memory)63、フラッシュメモリ64、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)65等からなり、搬送モータ4m、ドライバIC1d、循環用ポンプ7p等の動作を制御する。例えば、制御装置5は、PC等の外部装置から入力された記録指令(画像データを含む。)に基づき、各ヘッド1のドライバIC1d、及び搬送モータ4mを制御して、用紙S上に画像を記録する記録処理を実行する。
【0016】
次いで、
図2及び
図3を参照し、ヘッド1の構成について詳細に説明する。
【0017】
ヘッド1は、ノズルプレート10、流路基板11(「流路形成体」に相当)、及びアクチュエータユニット12を有する。
【0018】
ノズルプレート10は、複数のノズル21が形成されたプレートである。ノズル21は、ノズルプレート10を鉛直方向に貫通する貫通孔である。ノズルプレート10の下面は、複数のノズル21の開口部が形成されたノズル開口面1a(
図3参照)となっている。ノズル開口面1aは、水平面と平行な面である。また、ノズル21は、
図5(a)に示すように、ノズル開口面1aに向かうに従い先細るテーパ状に形成されている。複数のノズル21は、ノズルプレート10をエッチング等することで形成される。
【0019】
流路基板11は、ノズルプレート10の上面に配置され、
図3に示すように、7枚のプレート11a~11gが上からこの順に積層されることによって形成されている。
【0020】
プレート11a~11gには、複数のノズル21のそれぞれに対応する複数の個別流路20が形成されている。また、プレート11d~11fには、複数の個別流路20に連通する共通流路30が形成されている。複数の個別流路20、及び共通流路30は、流路基板11をエッチング等することで形成される。
【0021】
共通流路30は、
図2に示すように、配列方向(搬送方向と平行な方向)に配列された回収流路31,32及び供給流路33を含む。回収流路31,32及び供給流路33は、それぞれ延在方向(紙幅方向と平行な方向)に延びている。配列方向において回収流路31と回収流路32との間に供給流路33が配置されている。
【0022】
供給流路33は、延在方向の一方(
図2の上方)の端部において、プレート11a~11fにまたがって上下方向に延びており、その上端部に流入口33xが設けられている。流入口33xは、循環用ポンプ7pを介してインクタンク7に接続されている。回収流路31,32は、それぞれ、延在方向の他方(
図2の下方)の端部において、プレート11a~11fにまたがって上下方向に延びており、その上端部に流出口31y,32yが設けられている。流出口31y,32yは、インクタンク7に接続されている。
【0023】
インクタンク7は、図示しないチューブ等を介して図示しないインクカートリッジに接続され、インクカートリッジからインクが供給される。
【0024】
個別流路20は、回収流路31と供給流路33とを結ぶ複数の第1個別流路20a、及び、回収流路32と供給流路33とを結ぶ複数の第2個別流路20bを含む。第1個別流路20aは、配列方向において回収流路31と供給流路33とに跨っている。第2個別流路20bは、配列方向において回収流路32と供給流路33とに跨っている。
【0025】
各個別流路20は、連通路22、上流側圧力室23a、下流側圧力室23b、上流側ディセンダ流路24a、下流側ディセンダ流路24b、上流側絞り流路25a、及び下流側絞り流路25bを含む。
図3に示すように、連通路22は、ノズル21に接続される流路であり、プレート11gに形成されている。連通路22は、配列方向(「第1方向」に相当)に沿って延びている。
【0026】
また、連通路22の下面は、ノズルプレート10の上面により画定されている。換言すれば、ノズルプレート10は、連通路22の下面を画定する壁部10aを有している。このように、連通路22は、ノズル21の直上を通る流路であることから、その内部におけるインクの流れが、ノズル21から吐出されるインクの吐出方向(飛翔方向)に影響を及ぼす。
【0027】
上流側圧力室23aは、連通路22と供給流路33との間に配置されている。下流側圧力室23bは、連通路22と回収流路31,32との間に配置されている。以下、上流側圧力室23a及び下流側圧力室23bを説明するに当たり、これらを区別しない場合は「圧力室23」とする。
【0028】
圧力室23は、プレート11aに形成された貫通孔である。従って、圧力室23は、連通路22よりも上方に位置する。また、圧力室23は、配列方向を長手方向とする略矩形の平面形状を有している。すなわち、圧力室23は、配列方向及び延在方向と平行な平面に沿って延びている。また、プレート11aには、4列の圧力室列23R1~23R4が形成されている。4列の圧力室列23R1~23R4は、それぞれ延在方向に延び、配列方向に並んでいる。4つの圧力室列23R1~23R4のうち、
図2の左側2つの圧力室列23R1,23R2は、第1個別流路20aの上流側圧力室23a及び下流側圧力室23bから構成されている。4つの圧力室列23R1~23R4のうち、
図2の右側2つの圧力室列23R3,23R4は、第2個別流路20bの上流側圧力室23a及び下流側圧力室23bから構成されている。各圧力室列23R1~23R4において、圧力室23は、配列方向に同じ位置で、かつ、延在方向に等間隔で配置されている。一方、圧力室列23R1~23R4間においては、圧力室23の延在方向の位置がずれている。これにより、全ての圧力室23において、延在方向の位置が、当該圧力室23以外の圧力室23と異なっている。尚、本実施形態では、圧力室23の形状は全て同じであるが、これに限定されるものではない。
【0029】
上流側ディセンダ流路24aは、上流側圧力室23aと連通路22の一方の端部とを接続する、鉛直方向に延びる流路である。下流側ディセンダ流路24bは、下流側圧力室23bと連通路22の他方の端部とを接続する、鉛直方向(「第2方向」に相当)に延びる流路である。より詳細には、上流側ディセンダ流路24aは、プレート11b~11fに形成された貫通孔41~45が鉛直方向に重なることによって形成されている。これら貫通孔41~45の中心位置は、鉛直方向から見たときに互いに重なっている。
【0030】
一方で、下流側ディセンダ流路24bは、プレート11b~11fに形成された貫通孔51~55が鉛直方向に重なることによって形成されている。これら貫通孔51~55の中心位置は、鉛直方向から見たときに互いに重なっている。上流側ディセンダ流路24a、及び下流側ディセンダ流路24bは、互いに流路の長さは同じである。
【0031】
上流側ディセンダ流路24aを形成する貫通孔41~45の貫通方向は、全て鉛直方向である。同様に、下流側ディセンダ流路24bを形成する貫通孔51~55の貫通方向は、全て鉛直方向である。
【0032】
また、上流側ディセンダ流路24aの流路断面積、及び下流側ディセンダ流路24bの流路断面積は、連通路22の流路断面積よりも大きい。以下、上流側ディセンダ流路24a及び下流側ディセンダ流路24bを説明するに当たり、これらを区別しない場合は「ディセンダ流路24」とする。
【0033】
上流側絞り流路25aは、供給流路33と上流側圧力室23aとを接続する。下流側絞り流路25bは、回収流路31,32と、下流側圧力室23bとを接続する。以下、上流側絞り流路25a及び下流側絞り流路25bを説明するに当たり、これらを区別しない場合は「絞り流路25」とする。
【0034】
絞り流路25は、その流路断面積が、圧力室23等の他の流路の流路断面積よりも小さくされることで、圧力室23で発生した圧力波が供給流路33や回収流路31,32に伝播し難くする絞りの機能を有する。この絞り流路25は、プレート11b,11cにまたがって形成されている。
【0035】
次に、連通路22に対するノズル21の接続位置について説明する。
図5(a)に示すように、ノズル21は、連通路22における、当該連通路22の配列方向における中心位置よりも下流側ディセンダ流路24b側の位置に接続されている。本実施形態では、ノズル21は、連通路22における、下流側ディセンダ流路24bの鉛直方向の投影領域内の位置に接続されている。より詳細には、
図5(b)に示すように、鉛直方向から見たときに、下流側ディセンダ流路24bを形成する、プレート11fの貫通孔55の縁よりも内側に、ノズル21が配置されている。そして、鉛直方向から見たときに、貫通孔55の中心位置が、ノズル21の中心位置と重なるように配置されている。
【0036】
また、
図5(a)に示すように、連通路22における、ノズル21が接続される接続部分であるノズル接続部分22aに対して、上流側ディセンダ流路24a側で隣接する隣接部分22bの上面には、下方に突出する突起部71が形成されている。これにより、隣接部分22bにおける流路断面積は、連通路22における他の流路部分(ノズル接続部分22a等)よりも流路断面積が小さくなっている。
【0037】
また、突起部71の下面である先端面は、水平面と平行である。従って、隣接部分22bにおける流路断面積は、当該隣接部分22bの配列方向の一端から他端に亘り一定である。尚、本実施形態では、隣接部分22bの配列方向における上流側ディセンダ流路24a側の端部は、連通路22における配列方向の中心位置よりも右側であるが、これに限定されるものではない。
【0038】
また、
図5(c)に示すように、隣接部分22bの鉛直方向の中心位置h1は、個別流路20内にエアARが存在するときに、当該エアARの鉛直方向の中心位置h2よりも下方となるように突起部71の鉛直方向の高さが調整されている。尚、エアARは、連通路22のノズル接続部分22aにおける下面22a1と、下流側ディセンダ流路24bにおける配列方向に対向する2つの側面24b1,24b2との3点に接するエアである。鉛直方向から見たときに、2つの側面24b1,24b2を結ぶ線分の中心は、下流側ディセンダ流路24bを形成する貫通孔51~55の中心位置と一致する。
【0039】
次に、循環用ポンプ7pを駆動させたときのインクの流れについて説明する。
図2中の太矢印及び
図3中の矢印は、インクの流れを示す。
【0040】
図2に示すように、制御装置5の制御により循環用ポンプ7pを駆動させると、インクタンク7内のインクは、流入口33xから供給流路33に流入される。そして、供給流路33から、各個別流路20(第1個別流路20a及び第2個別流路20b)のそれぞれにインクが供給される。
【0041】
各個別流路20に供給されたインクは、上流側絞り流路25a及び上流側圧力室23aを通って略水平に移動し、さらに上流側ディセンダ流路24aを通って下方に移動して、連通路22に流入する。当該インクは、連通路22を通って水平に移動し、一部がノズル21から吐出され、残りが下流側ディセンダ流路24bを通って上方に移動し、下流側圧力室23b及び下流側絞り流路25bを通って略水平に移動する。
【0042】
そして、第1個別流路20aに供給されたインクは、回収流路31で回収される。当該インクは、流出口31yを介して回収流路31から流出して、インクタンク7に戻される。第2個別流路20bに供給されたインクは、回収流路32で回収される。当該インクは、流出口32yを介して回収流路32から流出して、インクタンク7に戻される。
【0043】
以上のようにヘッド1とインクタンク7との間でインクが循環する。その結果として、ノズル21内のインクの増粘が抑えられる。また、個別流路20のノズル21近傍にあるエアを、回収流路31,32へ排出させることができる。尚、本実施形態では、ヘッド1とインクタンク7との間のインクの循環を常時行っている。即ち、記録処理の実行中もヘッド1とインクタンク7との間のインクの循環を行っている。
【0044】
アクチュエータユニット12は、流路基板11の上面に配置され、複数の圧力室23を覆っている。
【0045】
アクチュエータユニット12は、
図3に示すように、下から順に、振動板12a、共通電極12b、複数の圧電体12c及び複数の個別電極12dを含む。振動板12a及び共通電極12bは、流路基板11の上面の略全体に配置されており、複数の圧力室23を覆っている。一方、圧電体12c及び個別電極12dは、圧力室23毎に設けられており、圧力室23のそれぞれと対向している。共通電極12bは、ドライバIC1dに接続されて常にグランド電位に保持される。
【0046】
以上の構成において、1つの個別電極12d、共通電極12bの1つの圧力室23に対向する電極部分、及び、圧電体12cの1つの圧力室23と対向する部分によって、1つのアクチュエータ13(
図3参照)が構成されている。アクチュエータユニット12には、このようなアクチュエータ13が圧力室23毎に作り込まれている。
【0047】
ドライバIC1dは、制御装置5からの制御信号に基づいて、各アクチュエータ13の個別電極12dに対して所定の駆動パルス信号を付与して、個別電極12dの電位を駆動電位と、グランド電位との間で切り替える。駆動パルス信号は、所定のパルス幅とパルス高さを有するパルス信号である。
【0048】
次に、アクチュエータ13を駆動してノズル21からインクを吐出させる方法について説明する。ノズル21からインクを吐出させない待機状態では、全ての個別電極12dが共通電極12bと同じグランド電位に保持されている。或るノズル21からインクを吐出させるときには、そのノズル21に対応する個別流路20の2つの圧力室23に対応する2つの個別電極12dの電位をグランド電位から駆動電位に切り換える。
【0049】
すると、上記2つの個別電極12dのそれぞれと、グランド電位に保持されている共通電極12bとの間に電位差が生じ、2つの個別電極12dのそれぞれと共通電極12bとの間に挟まれた2つの圧電体12cは圧電変形する。これにより、振動板12a及び圧電体12cの上記2つの圧力室23と上下方向に重なる部分が全体として圧力室23側に凸となるように撓む。その結果として、2つの圧力室23の容積が小さくなることで2つの圧力室23内のインクの圧力が上昇し、2つの圧力室23に連通するノズル21からインクが吐出される。また、ノズル21からインクが吐出された後には、上記2つの個別電極12dの電位をグランド電位に戻す。これにより、振動板12a及び圧電体12cが変形前の状態に戻る。
【0050】
ところで、上述したように、ノズル21は、連通路22における、当該連通路22の中心位置よりも下流側ディセンダ流路24b側の位置に接続されている。このため、下流側圧力室23bからノズル21までの流路の長さは、上流側圧力室23aからノズル21までの流路の長さよりも短い。これにより、制御装置5が、ノズル21からインクを吐出させる際に、上流側圧力室23aに対応するアクチュエータ13(以下、上流側アクチュエータ13a)の駆動タイミングと、下流側圧力室23bに対応するアクチュエータ13(以下、下流側アクチュエータ13b)の駆動タイミングとが同じになるようにドライバIC1dを制御すると、下流側圧力室23bで発生した圧力波がノズル21に到達するタイミングが、上流側圧力室23aで発生した圧力波がノズル21に到達するタイミングよりも早くなる。その結果として、ノズル21から吐出されるインクの吐出方向は、鉛直方向(真下)とはならずに鉛直方向から大きくずれる虞がある。
【0051】
そこで、本実施形態では、制御装置5は、ノズル21からインクを吐出させる際には、上流側圧力室23a及び下流側圧力室23bそれぞれで発生した圧力波がノズル21に到達するタイミングが略同じとなるように、下流側アクチュエータ13bの駆動タイミングが、上流側アクチュエータ13aの駆動タイミングよりも遅れるようドライバIC1dを制御する。これにより、ノズル21から吐出されるインクの吐出方向を、鉛直方向にすることができる。
【0052】
また、上流側アクチュエータ13a及び下流側アクチュエータ13bそれぞれの駆動タイミングをずらすことで、ドライバIC1dの発熱を抑えることもできる。以下、詳細に説明する。
【0053】
ドライバIC1dには、アクチュエータ13を駆動する際に電流が流れる。とりわけ、アクチュエータ13の個別電極12dの電位を、駆動電位と、グランド電位との間で切り換える際に、ドライバIC1dに大きな電流が流れる。このようにドライバIC1dに電流が流れると、ドライバIC1dが発熱する。そして、ドライバIC1dの温度が高くなると、ドライバIC1dの故障等の要因になる。また、本実施形態のように、1つのノズルからインクを吐出させる際に2つのアクチュエータを駆動させる構成の場合には、1つのノズルからインクを吐出させる際に1つのアクチュエータのみを駆動させる構成と比べて、ドライバICに流れる電流量は多くなり、ドライバICの発熱の問題がより顕著となる。
【0054】
ここで、本実施形態のように、1つのノズル21からインクを吐出させる際に2つのアクチュエータ13を駆動させる構成において、上流側アクチュエータ13a及び下流側アクチュエータ13bの駆動タイミングが互いに同じ場合には、アクチュエータ13の個別電極12dの電位を切り換えるタイミングが一致するため、ドライバIC1dに過大な電流が集中して流れることになる。一方で、上流側アクチュエータ13a及び下流側アクチュエータ13bそれぞれの駆動タイミングがずれている場合には、アクチュエータ13の個別電極12dの電位を切り換えるタイミングがずれるため、ドライバIC1dには過大な電流は流れない。従って、本実施形態のように、上流側アクチュエータ13a及び下流側アクチュエータ13bそれぞれの駆動タイミングをずらすことで、ドライバIC1dに過大な電流が流れることを抑制することができ、その結果として、ドライバIC1dの発熱を抑えることができる。
【0055】
ところで、ノズル21等から個別流路20内にエアが侵入する場合がある。そして、個別流路20のノズル21近傍にエアが留まると、ノズル21の吐出特性に影響を与える。ここで、循環用ポンプ7pを駆動して、供給流路33から個別流路20を介して回収流路31,32に向けてインクが流れていると、このインクの流れにより、ノズル21近傍に留まるエアを回収流路31,32へと排出させることは可能である。
【0056】
しかしながら、本実施形態と異なり、連通路の下面がノズルプレートの壁部により画定されていない場合(以下、「比較例」とする)、上記インクの流れにより、却って、ノズルから進入したエアを回収流路へ速やかに排出することができない虞がある。以下、比較例のヘッド501について、
図6を参照して説明する。尚、比較例のヘッド501は、連通路の下面がノズルプレートの壁部により画定されていない点や連通路の隣接部分の上面に突起部が形成されていない点以外は、本実施形態のヘッド1と略同様の構成である。従って、ヘッド501における、ヘッド1に対応する構成については、ヘッド1の各構成に付した符号から、その数字に「500」を加算した符号を付して、説明を適宜省略する。
【0057】
図6に示すように、比較例のヘッド501では、連通路522の上面は、水平面と平行である。また、ヘッド501は、流路基板511とノズルプレート510との間に挟まれた、1つのプレート515を有している。プレート515には、連通路522とノズル521とを繋ぐ、鉛直方向に貫通する貫通孔515aが形成されている。従って、ノズル521は、貫通孔515aを介して連通路522に接続されている。そして、ノズル521から侵入したエアは、貫通孔515aを介して連通路522へと流出することになる。
【0058】
ここで、ヘッド501内に、ノズル521から進入した直後のエアBRが存在する場合について考える。エアBRは、連通路522へ完全に流出しておらず、その大部分が、貫通孔515a内に位置しているエアである。従って、エアBRの鉛直方向の中心位置h3は、連通路522の鉛直方向の高さの中心位置h4よりも下方となる。
【0059】
このようなエアBRが存在する状況下において、供給流路33から回収流路31,32に向けたインクが流れていると、中心位置h3が中心位置h4よりも下方であるため、エアBRは、貫通孔515aから下流側ディセンダ流路24bへ排出されずに、ノズル521側に押し込まれる虞がある。その結果、エアBRがノズル521近傍の貫通孔515aに留まることで、ノズル21の吐出特性が悪化する虞がある。
【0060】
これに対して、本実施形態では、上述したように、連通路22の下面がノズルプレート10の壁部10aにより画定されており、ノズル21の直上を連通路22が通っている。従って、ノズル21から進入したエアは、直ぐに連通路22へ流出する。その結果、本実施形態では、比較例と比べて、ノズル21から進入したエアの鉛直方向の中心位置が、連通路22の隣接部分22bの鉛直方向の中心位置h1よりも下方となる可能性は著しく低い。このため、供給流路33から回収流路31,32に向けて流れるインクの流れにより、エアがノズル21側に押し込まれる可能性を低減することができる。
【0061】
また、本実施形態では、ノズル21は、連通路22における、下流側ディセンダ流路24bの鉛直方向の投影領域内の位置に接続されている。これにより、ノズル21から下流側ディセンダ流路24bに至るまでのエアが流れる経路を短くすることができる。その結果として、ノズル21から侵入したエアを速やかに下流側ディセンダ流路24bに排出することができる。
【0062】
また、下流側ディセンダ流路24bは、鉛直方向に延びているため、下流側ディセンダ流路24bに流出されたエアを、供給流路33から回収流路31,32に向けたインクの流れに加えて、当該エアの浮力によって、回収流路31,32へ速やかに排出することができる。
【0063】
また、本実施形態では、連通路22の流路断面積は、下流側ディセンダ流路24bの流路断面積よりも小さい。これにより、連通路22におけるインクの流速を速くすることができるため、連通路22に留まるエアを下流側ディセンダ流路24bに速やかに排出することができる。
【0064】
また、本実施形態では、ノズル接続部分22aに隣接する隣接部分22bの上面に、下方に突出する突起部71が形成されることで、隣接部分22bの流路断面積が、当該連通路22における他の流路部分の流路断面積よりも小さくなっている。その結果として、連通路22の流路抵抗が過剰に大きくなるのを抑制しつつ、ノズル21近傍でのインクの流速を速くすることができる。その結果として、ノズル21から侵入したエアを、下流側ディセンダ流路24bへ速やかに排出することができる。
【0065】
加えて、隣接部分22bに突起部71が形成されることで、突起部71が形成されていない場合と比べて、隣接部分22bにおける鉛直方向の中心位置を下方にすることができる。その結果として、供給流路33から回収流路31,32に向けたインクの流れにより、ノズル21から侵入したエアがノズル21側に押し込まれる可能性をより低減しつつ、当該エアを下側から掬い上げるようにして下流側ディセンダ流路24bに排出することができる。
【0066】
また、本実施形態では、
図5(c)に示すように、隣接部分22bの鉛直方向の中心位置h1は、個別流路20内に、連通路22の下面22a1、下流側ディセンダ流路24bにおける配列方向に対向する2つの側面24b1,24b2の3点に接するエアARが存在するときに、当該エアARの鉛直方向の中心位置h2よりも下方となるように突起部71の鉛直方向の高さが調整されている。これにより、個別流路20内にエアARが存在する場合には、供給流路33から回収流路31,32に向けたインクの流れにより、当該エアARを下側から掬い上げるようにして下流側ディセンダ流路24bに排出することができる。
【0067】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、主に、ヘッドにおける、連通路の構成が、第1実施形態と異なっている。以下、第1実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0068】
図7に示すように、第2実施形態に係るヘッド201では、第1実施形態の連通路22の代わりに、連通路222が設けられている。連通路222は、ノズル21が接続されるノズル接続部分222aに対して、上流側ディセンダ流路24a側で隣接する隣接部分222bの流路断面積は、連通路222における他の流路部分よりも流路断面積が小さくなっている。
【0069】
また、隣接部分222bの上面222bUは、ノズル接続部分222aへ向かうに従いノズルプレート10の壁部10aに近づくように水平面(配列方向)に対して傾斜している。即ち、上面222bUは、ノズル接続部分222aへ向かうに従い、隣接部分222bの下面に近づくように傾斜している。 従って、隣接部分222bでは、ノズル接続部分222aへ向かうに従い流路断面積が小さくなっている。
【0070】
以上のように第2実施形態では、隣接部分222bにおいて、ノズル接続部分222aへ向かうに従い流路断面積が小さくなるため、連通路222の流路抵抗が過剰に大きくなるのを抑制しつつ、ノズル21近傍でのインクの流速を速くすることができる。その結果として、連通路222に留まるエアを下流側ディセンダ流路24bに速やかに排出することができる。
【0071】
また、上述の第1実施形態のヘッド1では、連通路22における流路断面積が、隣接部分22bの突起部71が形成された位置で急激に小さくなるため、突起部71よりも上流側ディセンダ流路24a側にあるエアを、下流側ディセンダ流路24bに排出し難くなり連通路22内にエアが留まる虞がある。加えて、連通路22におけるインクの流れが、突起部71により悪くなる虞がある。
【0072】
一方で、第2実施形態では、連通路222の流路断面積は、ノズル接続部分222aへ向かうに従い徐々に小さくなる。これにより、第1実施形態と比べて、連通路222内でエアを留まり難くすることができ、且つ、連通路222でのインクの流れをスムーズにすることができる。また、隣接部分222bの上面222bUは、ノズル接続部分222aへ向かうに従い、隣接部分222bの下面に近づくように傾斜している。このため、隣接部分222bでは、インクは、上面222bUに沿って斜め下方向に流れる。この斜め下方向に流れるインクの流れにより、ノズル21から侵入したエアを下側から掬い上げるようにして下流側ディセンダ流路24bに排出することができる。
【0073】
また、隣接部分222bの上面222bUを、上記のように水平面に対して傾斜させることで、隣接部分222bのノズル接続部分222a側の端部222bRにおける、鉛直方向の中心位置を、上面222bUを水平面に対して傾斜させない構成と比べて、下方にすることができる。その結果として、供給流路33から回収流路31,32に向けたインクの流れにより、ノズル21から侵入したエアがノズル21側に押し込まれる可能性を低減しつつ、当該エアを下側から掬い上げるようにして下流側ディセンダ流路24bに排出することができる。
【0074】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態は、主に、ヘッドにおける、連通路の構成が、第1実施形態と異なっている。以下、第1実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0075】
図8(a)及び(b)に示すように、第3実施形態に係るヘッド301では、第1実施形態の連通路22の代わりに、連通路322が設けられている。連通路322の上面322Uは、水平面と平行である。一方で、
図8(b)に示すように、連通路322における、ノズル21が接続されるノズル接続部分322aに対して、上流側ディセンダ流路24a側で隣接する隣接部分322bでは、その延在方向(「第3方向」に相当)の流路幅が、ノズル接続部分322aに向かうに従い小さくなっている。
【0076】
より詳細には、隣接部分322bにおける延在方向に対向する2つの側面322bF,322bRのうち、側面322bFは、配列方向に延びている。一方で、側面322bRは、ノズル接続部分322aに向かうに従い側面322bFに近づくように配列方向に対して傾斜している。
【0077】
以上より、第3実施形態においても、隣接部分322bの流路断面積が、連通路322における他の流路部分の流路断面積よりも小さくなっている。これにより、連通路322の流路抵抗が過剰に大きくなるのを抑制しつつ、ノズル21近傍でのインクの流速を速くすることができる。その結果として、連通路322に留まるエアを下流側ディセンダ流路24bに速やかに排出することができる。
【0078】
また、第3実施形態では、第2実施形態と同じく、隣接部分322bでは、ノズル接続部分222aへ向かうに従い流路断面積が小さくなっている。これにより、第1実施形態と比べて、連通路322でエアを留まり難くすることができ、且つ、連通路322でのインクの流れをスムーズにすることができる。
【0079】
また、第3実施形態では、隣接部分322bにおける2つの側面322bF,322bRのうち、側面322bFは、配列方向に延びている一方で、側面322bRは、ノズル接続部分322aに向かうに従い側面322bFに近づくように配列方向に対して傾斜している。これにより、供給流路33から回収流路31,32に向けたインクの流れが生じている際に、連通路322において、連通路322の側面322bF,322bR等を画定するプレート11gの壁部に密着したエアの縁をなぞるようなインクの流れを発生させることができる。その結果として、インクの流れにより、プレート11gの壁部に密着したエアを、当該壁部から剥がして、下流側ディセンダ流路24bへ排出させ易くすることができる。
【0080】
尚、第3実施形態では、2つの側面322bF,322bRのうち、側面322bFは、配列方向に延びていたが、これに限定されるものではない。例えば、2つの側面322bF,322bRの両方が、ノズル接続部分322aに向かうに従い互いに近づくように配列方向に対して傾斜していてもよい。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態には限られず、特許請求の範囲に記載の限りにおいて、様々な変更が可能である。例えば、ノズルの連通路との接続位置は上述の実施形態に限定されるものではなく、ノズルは、連通路における、当該連通路の配列方向における中心位置よりも下流側ディセンダ流路側の位置に接続されていればよい。この場合でも、ノズルが連通路の配列方向における中心位置や、中心位置よりも上流側ディセンダ流路側の位置に接続されている場合と比べて、ノズルから下流側ディセンダ流路に至るまでのエアが流れる経路を短くすることができる。その結果として、ノズルから侵入したエアを速やかに下流側ディセンダ流路に排出することができる。また、上述の実施形態では、連通路は水平面と平行な方向に延びていたが、これに限定されるものではなく、鉛直方向に対して交差する方向に延びていればよい。
【0082】
また、上述の実施形態では、連通路の流路断面積は、下流側ディセンダ流路の流路断面積よりも小さくされていたが、これに限定されるものではない。例えば、連通路の流路断面積と、下流側ディセンダ流路の流路断面積とが同じであってもよい。また、上述の実施形態では、隣接部分の流路断面積が、当該連通路における他の流路部分よりも流路断面積が小さくされていたが、これに限定されるものではない。例えば、連通路の各流路部分の流路断面積が同じであってもよい。
【0083】
また、上述の実施形態では、ヘッドとインクタンクとの間でインクを循環させていたが、供給流路から複数の個別流路を通って回収流路に向かうインクの流れが生じるのであれば、循環させていなくてもよい。この場合、個別流路から回収流路へ流出したエアの回収効率を高めるために、回収流路にエアを溜めるためのタンクが接続されていることが好ましい。
【0084】
また、以上では、いわゆるラインヘッドを備えたプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。走査方向に移動するキャリッジに搭載され、キャリッジとともに走査方向に移動しつつノズルからインクを吐出する、いわゆるシリアルヘッドを備えたプリンタに本発明を適用することも可能である。
【0085】
また、以上では、ノズルからインクを吐出して用紙に記録を行うプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。インク以外の液体、例えば、液体状にした樹脂や金属を吐出する液体吐出装置に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0086】
1,201,301 ヘッド
20 個別流路
21 ノズル
22 連通路
23a 上流側圧力室
23b 下流側圧力室
24a,224a,324a 上流側ディセンダ流路
24b 下流側ディセンダ流路
25a 上流側絞り流路
25b 下流側絞り流路
31,32 回収流路
33 供給流路