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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】制御盤
(51)【国際特許分類】
   H02B 1/04 20060101AFI20230704BHJP
   H02B 3/00 20060101ALI20230704BHJP
   H02B 1/20 20060101ALI20230704BHJP
   H02B 1/30 20060101ALI20230704BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
H02B1/04 D
H02B3/00 M
H02B1/20 M
H02B1/30 B
H05K5/02 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019081337
(22)【出願日】2019-04-22
(65)【公開番号】P2020178518
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】松下 浩
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-059501(JP,U)
【文献】実開平05-025903(JP,U)
【文献】実開昭50-023624(JP,U)
【文献】実開平04-005676(JP,U)
【文献】実開昭55-004647(JP,U)
【文献】特開2011-061892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/00 - 1/38
H02B 1/46 - 7/08
H05K 5/00 - 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパネル部材によって構成される中空の筐体と、
前記筐体の正面に配置されたパネル部材を板厚方向に貫通する第1の開口と、
板厚方向に貫通する第2の開口が形成された板形状をなし、表面を前記筐体の正面側に位置づけた状態で前記第1の開口を塞ぐ第1の位置と、裏面を外部に開放する第2の位置とに選択的に位置づけられる取付部材と、
前記筐体内に引き回された電線が接続される端子が前記取付部材の裏面側に位置づけられ、当該取付部材の表面側から盤面を視認可能な状態で前記第2の開口に嵌め込まれた保護継電器と、
前記保護継電器に接続された電線を支持する支持部材と、
を備え
前記取付部材は、前記筐体に対して鉛直方向に平行な軸心周りに回動可能に連結され、
前記支持部材は、前記取付部材の裏面に水平方向に取り付けられたレール部材であって、前記保護継電器に接続された前記電線を当該レール部材に固定し、当該レール部材に沿って前記筐体の内部に引き回すことを特徴とする制御盤。
【請求項2】
前記レール部材は、前記保護継電器の下側に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の制御盤。
【請求項3】
前記第1の開口の周縁に配置される補強部材を備え、
前記取付部材は、前記補強部材に連結されていることを特徴とする請求項1または2に記載の制御盤。
【請求項4】
前記取付部材を第1の位置に位置づけた状態でロックするロック機構を備えたことを特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載の制御盤。
【請求項5】
前記筐体に収容された遮断器を備えたことを特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載の制御盤。
【請求項6】
前記保護継電器の盤は、当該保護継電器に対する操作を受け付ける操作部材、および、当該保護継電器の動作状態を表示する表示部材の少なくとも一方が配置されたことを特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載の制御盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、保護継電器を備えた制御盤に関する。
【背景技術】
【0002】
直流電源設備から供給される直流の制御電源を必要とする設備(直流負荷)は、直流制御盤を介して直流電源設備と接続される。直流制御盤には、地絡が発生したときに当該地絡に起因して流れる地絡電流を検知する直流制御回路地絡継電器(以下「64D」という)が設けられている。64Dは、たとえば、グランドに対する正側母線および負側母線の電圧に基づいて地絡が発生したことを検出する。
【0003】
64Dは、各種操作スイッチや表示灯などが配置された操作盤を直流制御盤の正面側から視認できる状態で、筐体をパネルカットした貫通孔に嵌め込まれることによって直流制御盤に取り付けられる。このため、64Dが備える零相変流器などは、直流制御盤の裏面側において、電線と接続されていた。
【0004】
64Dは直流電源母線に近い場所に設置される。このため、従来、点検作業や直流地絡故障探査時における解線作業に際しては、発電所や変電所などの受変電設備における母線を停電した状態で、直流制御盤の裏面側から作業をおこなっていた。
【0005】
関連する技術として、具体的には、従来、たとえば、太陽光パネルから直流電力を交流電力に変換するインバータを有したパワーコンディショナと、パワーコンディショナから出力される交流電力を高圧電力に昇圧する変圧器と、変圧器と既存の電力系統の間に配置された遮断器とを1台の配電盤に収納し、配電盤は、パワーコンディショナを収納する室と遮断器及び継電器を収納する室とで形成し、遮断器および継電器を収納する室の後側に変圧器を配置した配電盤に関する技術があった(たとえば、下記特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-103976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の技術は、点検作業や解線作業に際しての受変電設備における母線の停電が、受変電設備における停電をともなう。このため、点検作業中や解線作業中は、受変電設備における排水がおこなえなかったり照明が使用できなかったりするなどの不具合を生じるという問題があった。
【0008】
また、64Dが直流制御盤の表面に取り付けられているため、点検作業や解線作業は、直流制御盤の表面側から裏面側をのぞき込むような体勢でおこなわなくてはならず、直流制御盤における64Dの取り付け位置によっては作業者は無理な体勢で直流制御盤の裏面側をのぞき込む場合があり、作業者にかかる負担が大きいという問題があった。
【0009】
また、上述した特許文献1に記載された従来の技術は、太陽光発電システムで使用される各種電気機器を1つの筐体に納めることによって小型化を図るようにしているものの、点検作業や解線作業にかかる母線の停電を不要とする技術ではなく、また、これらの作業にかかる作業者の負担軽減を図ることはできないという問題があった。
【0010】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、保護継電器に対する作業にかかる作業者の負担軽減を図ることができる制御盤を提供することを目的とする。
【0011】
また、この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、直流電源母線を停電することなく保護継電器に対する作業を安全におこなうことができ、保護継電器に対する作業にかかる作業者の負担軽減を図ることができる制御盤を提供することを目的とする。
【0012】
さらに、この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、制御盤に接続された電気設備の利用者の利便性を確保することができる制御盤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかる制御盤は、複数のパネル部材によって構成される中空の筐体と、前記筐体の正面に配置されたパネル部材を板厚方向に貫通する第1の開口と、板厚方向に貫通する第2の開口が形成された板形状をなし、表面を前記筐体の正面側に位置づけた状態で前記第1の開口を塞ぐ第1の位置と、裏面を外部に開放する第2の位置とに選択的に位置づけられる取付部材と、前記筐体内に引き回された電線が接続される端子が前記取付部材の裏面側に位置づけられ、当該取付部材の表面側から盤面を視認可能な状態で前記第2の開口に嵌め込まれた保護継電器と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる制御盤は、上記の発明において、前記取付部材が、前記筐体に対して回動可能に連結されていることを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかる制御盤は、上記の発明において、前記取付部材が、鉛直方向に平行な軸心周りに回動可能に連結されていることを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかる制御盤は、上記の発明において、前記取付部材の裏面に設けられて、前記保護継電器に接続された電線を支持する支持部材を備えたことを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる制御盤は、上記の発明において、前記第1の開口の周縁に配置される補強部材を備え、前記取付部材が、前記補強部材に連結されていることを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる制御盤は、上記の発明において、前記取付部材を第1の位置に位置づけた状態でロックするロック機構を備えたことを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる制御盤は、上記の発明において、前記筐体に収容された遮断器を備えたことを特徴とする。
【0020】
また、この発明にかかる制御盤は、上記の発明において、前記保護継電器の盤が、当該保護継電器に対する操作を受け付ける操作部材、および、当該保護継電器の動作状態を表示する表示部材の少なくとも一方が配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
この発明にかかる制御盤によれば、保護継電器に対する作業にかかる作業者の負担軽減を図ることができるという効果を奏する。
【0022】
また、この発明にかかる制御盤によれば、直流電源母線を停電することなく保護継電器に対する作業を安全におこなうことができ、保護継電器に対する作業にかかる作業者の負担軽減を図ることができるという効果を奏する。
【0023】
また、この発明にかかる制御盤によれば、制御盤に接続された電気設備の利用者の利便性を確保することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】この発明にかかる実施の形態の直流制御盤の構成を示す説明図(その1)である。
図2】この発明にかかる実施の形態の直流制御盤の構成を示す説明図(その2)である。
図3】従来の直流制御盤の点検方法を示す説明図である。
図4】この発明にかかる実施の形態の直流制御盤の点検方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる制御盤の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0026】
(直流制御盤の構成)
まず、この発明にかかる制御盤を実現する、実施の形態の直流制御盤の構成について説明する。図1および図2は、この発明にかかる実施の形態の直流制御盤の構成を示す説明図である。この発明にかかる実施の形態の直流制御盤は、分電盤を介して各負荷設備に接続され、DC110Vなどの直流の電源を必要とする電気設備に対して電源を供給する。
【0027】
図1および図2に示すように、直流制御盤100は、中空の筐体101を備えている。筐体101は、それぞれが方形の板形状をなす6つのパネル部材によって構成され、直方体(長方体)形状をなす。筐体101において、互いに正対するパネル部材の外形は、同一形状をなす。具体的に、正面部を構成するパネル部材101aと背面部を構成するパネル部材とは、同一の外形状をなす。また、側面部を構成するパネル部材どうしは、同一の外形状をなす。また、天面部を構成するパネル部材と底面部を構成するパネル部材とは、同一の外形状をなす。
【0028】
直流制御盤100は、床面上に設置されたチャンネルベース102の天面に、筐体101の底面部を構成するパネル部材を当接させることによって、当該チャンネルベース102の上に設置されている。直流制御盤100(直流制御盤100の筐体101)とチャンネルベース102とは、分離可能な別体で構成されている。
【0029】
直流制御盤100は、筐体101内に収容された各種の制御機器を備えている(図示を省略する)。制御機器には、それぞれ、直流電源母線から、底面部を構成するパネル部材に設けられた開口を介して引き回された電線が接続されている。制御機器は、たとえば、電磁開閉器、配線用遮断器あるいは漏電遮断器などの遮断器によって実現することができる(いずれも図示を省略する)。また、制御機器は、たとえば、電磁開閉器、保護装置、遮断器などの動作の監視や制御をおこなうPLC(Programmable Logic Controller)によって実現することができる。
【0030】
筐体101の正面に配置されて筐体101の正面部を構成するパネル部材101aには、制御機器を含む電気回路の接続と開放とを切り替える操作スイッチ103が設けられている。操作スイッチ103は、筐体101の内部に収容される制御機器に接続されている。操作スイッチ103は、作業者の操作を受け付けるレバー103aを備え、レバー103aの位置によって制御機器を含む電気回路の接続と開放とを切り替える。
【0031】
直流制御盤100は、直流地絡保護継電器104を備えている。直流地絡保護継電器104は、直流電源によって動作し、グランドに対する正側母線および負側母線の電圧を検出し、これらの電圧のバランスの崩れ具合に基づいて地絡の発生を検出する。直流地絡保護継電器104は、筐体101内部に収容される遮断器と接続されており、地絡事故を検出した場合に警報を出力する。直流地絡保護継電器104は、筐体101の正面部を構成するパネル部材101aに取り付けられている。
【0032】
直流地絡保護継電器104は、直方体(長方体)形状をなし、一面側(正面側)に操作盤を備えている。操作盤には、図示を省略する各種の操作ツマミや表示灯などが配置されている。操作盤は、光学的に透明な材料によって覆われた窓部105を備えたカバー(符号を省略する)によって覆われている。これにより、窓部105を介して操作盤を視認することができる。
【0033】
カバーは、図示を省略するツマミネジによって直流地絡保護継電器104の本体部に固定されており、ツマミネジを緩めることによって直流地絡保護継電器104から取り外すことができる。カバーを取り外すことによって操作盤を開放し、操作盤に配置された操作ツマミを操作することができる。
【0034】
また、直流地絡保護継電器104は、直流地絡が発生するときに直流電路上の検出地点を流れる電流を検出する零相変流器(ZCT)などの機器や、これらの機器に接続される端子を備えている。端子は、図2に示すように、直流地絡保護継電器104の他面側(背面側)に設けられており、筐体101内に引き回された電線201が接続されている。直流地絡保護継電器104は、取付部材106を介して、筐体101に取り付けられている。
【0035】
取付部材106は、枠部材107を介して、筐体101の正面部を構成するパネル部材101aに取り付けられている。枠部材107は、筐体101の正面部を構成するパネル部材101aを板厚方向に貫通する取付用開口を縁取る枠形状をなし、内側に第1の開口202を形成する。第1の開口202を介して、筐体101の内側と外側とが連通されている。
【0036】
枠部材107は、筐体101の正面部を構成するパネル部材101aにネジ留めされ、筐体101の正面部を構成するパネル部材101aに対して、取り外し可能に取り付けられている。この実施の形態においては、枠部材107によって補強部材を実現することができる。
【0037】
枠部材107の外形は取付用開口より大きく、第1の開口202は取付用開口より小さい。取付部材106は、第1の開口202よりも大きい板形状をなす。この実施の形態の取付部材106は、長方形の平板形状をなす。取付部材106は、蝶番(平蝶番)108を介して枠部材107に連結されている。蝶番108は、1本の軸に2枚の金属プレートをそれぞれ回動可能に連結することによって構成されている。
【0038】
蝶番108における一方の金属プレートは枠部材107に固定され、他方の金属プレートは取付部材106に固定されている。これにより、取付部材106は、蝶番108における軸を中心として回動することができる。蝶番108は、軸が鉛直方向に沿った状態で設けられている。これにより、取付部材106は、鉛直方向に平行な軸心周りに回動することができる。
【0039】
取付部材106は、図1に示すように表面を筐体101の正面側に位置づけた状態で第1の開口202を塞ぐ第1の位置と、図2に示すように裏面を外部に開放する第2の位置と、の間において回動する。取付部材106が第2の位置に位置づけられている状態では、第1の開口202が開放され、第1の開口202を介して筐体101の内側と外側とが連通される。取付部材106は、第1の開口202を開放可能に閉塞する扉としても機能する。
【0040】
取付部材106において、蝶番108とは反対側には、ツマミネジ109が設けられている。ツマミネジ109は、取付部材106を板厚方向に貫通しており、取付部材106が第1の位置に位置づけられた状態において、筐体101の正面部を構成するパネル部材101aに設けられたネジ孔203に螺合される。これにより、取付部材106を第1の位置において固定し、取付部材106の不用意な回動を防止することができる。
【0041】
直流地絡保護継電器104は、直流地絡保護継電器104の外形にあわせて取付部材106をパネルカットすることによって形成された第2の開口204に嵌め込まれた状態で、取付部材106に取り付けられている。直流地絡保護継電器104は、電線201が接続される端子が取付部材106の裏面側に位置づけられ、当該取付部材106の表面側から盤面を視認可能な状態で第2の開口204に嵌め込まれている。
【0042】
取付部材106を第2の位置に位置づけて、取付部材106の裏面を外部に開放した状態では、取付部材106に取り付けられた直流地絡保護継電器104の背面側を外部に露出させることができる。これにより、直流地絡保護継電器104の背面に設けられた端子を、筐体101の正面側において、外部に露出させることができる。
【0043】
取付部材106の裏面には、レール205が設けられている。端子に接続された電線201は、レール205に沿って筐体101の内部に引き回されている。これにより、取付部材106の回動に際して、端子に接続された電線201が取付部材106の回動軌跡に干渉することを防止できる。この実施の形態においては、レール205によって、この発明にかかる支持部材を実現することができる。
【0044】
(従来の直流制御盤100の点検方法)
つぎに、従来の直流制御盤100の点検方法について説明する。図3は、従来の直流制御盤の点検方法を示す説明図である。図3においては、直流制御盤100と同一部分は同一符号で示し説明を省略する。
【0045】
図3に示すように、従来の直流制御盤300において、直流地絡保護継電器104は、筐体301の正面部を構成するパネル部材301aに直接取り付けられていた。このため、直流地絡保護継電器104の点検の点検に際して、作業者Pは、筐体301と直流地絡保護継電器104との隙間や直流制御盤300の背面側から直流地絡保護継電器104を覗き込むようにして、直流地絡保護継電器104における電線201の接続状態を確認していた。
【0046】
直流地絡保護継電器104は、頻繁に操作する装置ではないため、直流制御盤300においては、直流地絡保護継電器104よりも操作頻度が高い各種の操作スイッチ103を操作性の良好な場所に配置し、直流地絡保護継電器104を筐体301における下側(床に近い位置)などに取り付けることがあった。このように、直流地絡保護継電器104が筐体301における下側に取り付けられている場合、作業者Pは、直流地絡保護継電器104の点検に際して、図3に示すように、姿勢を低くして、床面に顔を近づけるような体勢を取らなくてはならず、作業者Pにかかる負担が大きくなるとともに、充分な点検が難しいという状況が生じていた。
【0047】
これに対し、この発明にかかる実施の形態の直流制御盤100によれば、直流地絡保護継電器104に対する作業を、以下のようにしておこなうことができる。これにより、点検や解線などの直流地絡保護継電器104に対する作業にかかる作業者Pの負担を軽減することができる。
【0048】
(直流制御盤100の点検方法)
つぎに、この発明にかかる実施の形態の直流制御盤100の点検方法について説明する。図4は、この発明にかかる実施の形態の直流制御盤100の点検方法を示す説明図である。この発明にかかる実施の形態の直流制御盤100の点検に際しては、まず、ツマミネジ109を操作して、取付部材106のロックを解除する。
【0049】
つぎに、図4に示すように、蝶番108を支点として取付部材106を第2の位置に位置づける。取付部材106は、取付部材106の裏面が完全に視認できる位置まで回動させる。これにより、直流地絡保護継電器104の背面の全体を視認することができる。そして、この状態で、直流地絡保護継電器104の背面を視認して、背面に設けられた端子や、当該端子に接続された電線201、および、端子と電線201との接続状態などを確認する。
【0050】
この発明にかかる実施の形態の直流制御盤100においては、取付部材106の裏面が視認できるまで回動させることにより、作業者Pは、筐体101の正面側において、直流地絡保護継電器104の端子や、当該端子における電線201の接続状態などを確認することができる。
【0051】
また、取付部材106を第2の位置に位置づけることにより第1の開口202を開放することができるので、筐体101に収容された各種の制御機器の状態や当該制御機器における電線201の接続状態などを、第1の開口202を介して目視点検することができる。点検作業が終了した後は、取付部材106を回動させて第1の位置に位置づける。その後、ツマミネジ109によって、取付部材106を第1の位置でロックする。
【0052】
取付部材106は、直流地絡保護継電器104の点検作業のほか、直流地絡故障が発生した場合の探査に際して解線をおこなう場合に第2の位置に位置づけられる。通常、直流制御盤100の正面側には、通路や点検などの作業空間として利用するスペースが確保されている。このようなスペースは、直流制御盤100の周囲において、別の制御盤や壁が配置されることがある直流制御盤100の側方や背面側には必ずしも確保できるものではない。
【0053】
この発明にかかる実施の形態の直流制御盤100は、取付部材106を筐体101の正面側に回動させることにより、作業スペースが確保された直流制御盤100の正面側において、直流地絡保護継電器104の周囲に作業スペースを確保することができる。これにより、作業者Pは、直流制御盤100の正面において、解線作業などの直流地絡保護継電器104に対する作業をおこなうことができる。
【0054】
以上説明したように、この発明にかかる実施の形態の直流制御盤100は、複数のパネル部材によって構成される中空の筐体101と、筐体101の正面に配置されたパネル部材を板厚方向に貫通する第1の開口202と、板厚方向に貫通する第2の開口204が形成された板形状をなし、表面を筐体101の正面側に位置づけた状態で第1の開口202を塞ぐ第1の位置と、裏面を外部に開放する第2の位置とに選択的に位置づけられる取付部材106と、筐体101内に引き回された電線が接続される端子が取付部材106の裏面側に位置づけられ、当該取付部材106の表面側から盤面を視認可能な状態で第2の開口204に嵌め込まれた直流地絡保護継電器104と、を備えたことを特徴としている。
【0055】
この発明にかかる実施の形態の直流制御盤100によれば、通常運転時は、取付部材106を第1の位置に位置づけることで、直流地絡保護継電器104を筐体101の内側に収容した状態で、筐体101の正面側から盤面を視認することができる。また、直流地絡保護継電器104の点検や直流地絡故障探査に際しての解線作業などの直流地絡保護継電器104に対する作業時は、取付部材106を第2の位置に位置づけることで、直流地絡保護継電器104を筐体101の正面側に引き出して外部に露出させることができる。
【0056】
これにより、通常運転時における直流地絡保護継電器104の盤面(窓部105)の視認性を維持した状態で、直流地絡保護継電器104に対する作業に際し、直流制御盤100の正面側において、直流地絡保護継電器104の周囲に作業スペースを確保することができる。そして、これによって、作業者Pは、無理な姿勢をとることなく、作業スペースが確保された直流制御盤100の正面側において、点検や解線作業などの直流地絡保護継電器104に対する作業をおこなうことができるので、直流地絡保護継電器104に対する作業にかかる作業者Pの負担軽減を図ることができる。
【0057】
また、直流制御盤100の正面側において、直流地絡保護継電器104の周囲に作業スペースを確保することができるので、作業者Pは、直流電源母線を停電しなくても、充電部に触れないように制限されることなく、直流地絡保護継電器104に対する作業をおこなうことができる。これにより、直流電源母線を停電することなく直流地絡保護継電器104に対する作業を安全におこなうことができ、直流地絡保護継電器104に対する作業にかかる作業者Pの負担軽減を図ることができる。
【0058】
また、直流電源母線を停電することなく、解線作業などの直流地絡保護継電器104に対する作業をおこなうことができるので、直流地絡保護継電器104が接続された電気回路を介して給電を受ける電気設備の停電を不要とすることができ、直流地絡保護継電器104に対する作業に際して電気設備が使用できない不具合を回避することができる。これにより、電気設備の利用者の利便性を確保することができる。
【0059】
また、この発明にかかる実施の形態の直流制御盤100によれば、取付部材106を第2の位置に位置づけることにより、第1の開口202を開放することができるので、第1の開口202を介して筐体101内に収容された機器の点検などをおこなうことができる。これにより、筐体101内に収容された機器の点検を容易におこなうことができる。
【0060】
また、この発明にかかる実施の形態の直流制御盤100は、取付部材106が、筐体101に対して回動可能に連結されていることを特徴としている。
【0061】
この発明にかかる実施の形態の直流制御盤100によれば、取付部材106を回動させるだけで第2の位置に位置づけ、直流地絡保護継電器104を筐体101から引き出して外部に露出させることができる。これにより、直流地絡保護継電器104を取付部材106に取り付けた状態で、直流地絡保護継電器104に対する作業をおこなうことができ、直流地絡保護継電器104に対する作業にかかる作業者Pの負担軽減を図ることができる。
【0062】
また、この発明にかかる実施の形態の直流制御盤100は、取付部材106が、鉛直方向に平行な軸心周りに回動可能に連結されていることを特徴としている。
【0063】
この発明にかかる実施の形態の直流制御盤100によれば、取付部材106が鉛直方向に平行な軸心周りに回動することにより、直流地絡保護継電器104の上下を入れ替えることなく、直流地絡保護継電器104を筐体101から引き出して外部に露出させることができる。これにより、直流地絡保護継電器104に対する作業を容易におこなうことができ、直流地絡保護継電器104に対する作業にかかる作業者Pの負担軽減を図ることができる。
【0064】
また、この発明にかかる実施の形態の直流制御盤100は、取付部材106の裏面に設けられて、直流地絡保護継電器104に接続された電線201を支持する支持部材を備えたことを特徴としている。
【0065】
この発明にかかる実施の形態の直流制御盤100によれば、レール205に電線201を固定することにより、取付部材106の回動にともなって、直流地絡保護継電器104に接続された電線が弛んだり、弛んだ電線が取付部材106の回動軌跡に干渉したりすることを防止できる。これにより、直流地絡保護継電器104に対する作業を円滑におこなうことができ、直流地絡保護継電器104に対する作業にかかる作業者Pの負担軽減を図ることができる。
【0066】
また、この発明にかかる実施の形態の直流制御盤100は、第1の開口202の周縁に配置される補強部材を備え、取付部材106が、補強部材に連結されていることを特徴としている。
【0067】
この発明にかかる実施の形態の直流制御盤100によれば、補強部材を介して取付部材106を連結することにより、取付部材106を回動可能に連結することにより、第2の位置に位置づけた際に直流地絡保護継電器104などの重量に起因する負担が回動軸に集中する場合にも、筐体101の正面に配置されたパネル部材の変形や損傷を防止することができる。これにより、直流地絡保護継電器104に対する作業にかかる作業者Pの負担軽減を図ることができる直流制御盤100を、長期にわたって使用することができる。
【0068】
また、この発明にかかる実施の形態の直流制御盤100は、取付部材106を第1の位置に位置づけた状態でロックするロック機構を備えたことを特徴としている。
【0069】
この発明にかかる実施の形態の直流制御盤100によれば、取付部材106が不用意に動いてしまうことを防止し、直流地絡保護継電器104や筐体101内の充電部が不用意に露出されることを防止することができる。これにより、直流制御盤100の周囲における安全性を確保することができる。
【0070】
また、この発明にかかる実施の形態の直流制御盤100は、筐体101に収容された遮断器を備えたことを特徴としている。
【0071】
この発明にかかる実施の形態の直流制御盤100によれば、筐体101の内側に収容されている遮断器を、直流制御盤100の正面側から第1の開口202を介して点検することができる。これにより、直流地絡保護継電器104に対する作業にかかる作業者Pの負担軽減を図ることができる。
【0072】
また、この発明にかかる実施の形態の直流制御盤100は、直流地絡保護継電器104の操作盤が、直流地絡保護継電器104に対する操作を受け付ける操作部材、および、直流地絡保護継電器104の動作状態を表示する表示部材の少なくとも一方が配置されたことを特徴としている。
【0073】
この発明にかかる実施の形態の直流制御盤100によれば、直流地絡保護継電器104の操作性や動作確認の利便性を損なうことなく、直流地絡保護継電器104に対する作業にかかる作業者Pの負担軽減を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上のように、この発明にかかる制御盤は、保護継電器を備えた制御盤に有用であり、特に、直流地絡保護継電器を備えた直流制御盤に適している。
【符号の説明】
【0075】
100 直流制御盤
101 筐体
101a 正面部を構成するパネル部材
104 直流地絡保護継電器
106 取付部材
107 枠部材
108 蝶番
201 電線
202 第1の開口
204 第2の開口
205 レール
図1
図2
図3
図4