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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】乗り物用温度制御システム及び制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20230704BHJP
   B60H 1/24 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
B60H1/22 611D
B60H1/24 661D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019082484
(22)【出願日】2019-04-24
(65)【公開番号】P2020179721
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2021-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】山内 徳康
(72)【発明者】
【氏名】壬生 俊英
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 朗紀
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-113511(JP,A)
【文献】特開2004-028450(JP,A)
【文献】特開平06-234318(JP,A)
【文献】特開2012-158226(JP,A)
【文献】特開2007-192418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00-3/06
F24F 11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内に配置されるシート本体と前記シート本体の温度であるシート温度を調整するシート温度調整装置とを有するシートと、
前記室内の空調を行う空調装置と前記シート温度調整装置とを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
乗員が快適であると感じる室内温度である快適室内温度と当該快適室内温度であるときに前記乗員が快適であると感じる前記シート温度である快適シート温度との関係を示す快適温度情報を記憶する記憶部と、
前記シート温度調整装置の駆動中において、前記記憶部に記憶された前記快適温度情報と前記シート温度とに基づいて前記快適室内温度を算出するとともに、前記室内温度が前記快適室内温度となるように前記空調装置を制御する制御部と、を有し、
前記空調装置は、前記室内温度の初期の設定温度である初期設定温度を記憶する初期設定温度記憶部を有し、
前記制御部は、当該制御部が算出した前記快適室内温度と前記初期設定温度との温度差が基準温度未満である場合、前記室内温度が前記快適室内温度となるように前記空調装置を制御する、乗り物用温度制御システム。
【請求項2】
前記シート温度調整装置は、前記シート本体を加温するシートヒータを有し、
前記制御部は、前記シートヒータの駆動中において前記温度差が前記基準温度以上である場合、前記室内温度が前記初期設定温度から前記基準温度を引いた最小許容温度となるように前記空調装置を制御するとともに、前記シート温度が前記最小許容温度と前記快適温度情報とに基づいて算出された前記快適シート温度となるように前記シートヒータを制御する、請求項に記載の乗り物用温度制御システム。
【請求項3】
前記シート温度調整装置は、前記シート本体の換気が可能なシート換気ユニットを有し、
前記制御部は、前記シート換気ユニットの駆動中において前記温度差が前記基準温度以上である場合、前記室内温度が前記初期設定温度と前記基準温度との和である最大許容温度となるように前記空調装置を制御するとともに、前記シート温度が前記最大許容温度と前記快適温度情報とに基づいて算出された前記快適シート温度となるように前記シート換気ユニットを制御する、請求項に記載の乗り物用温度制御システム。
【請求項4】
室内に配置されるシート本体と前記シート本体の温度であるシート温度を調整するシート温度調整装置とを有するシートと、
前記室内の空調を行う空調装置と前記シート温度調整装置とを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
乗員が快適であると感じる室内温度である快適室内温度と当該快適室内温度であるときに前記乗員が快適であると感じる前記シート温度である快適シート温度との関係を示す快適温度情報であって、前記快適室内温度が最高温度と最低温度との間の快適温度範囲に設定されている前記快適温度情報を記憶する記憶部と、
前記空調装置の駆動中において、前記室内温度が前記快適温度範囲内である場合、前記室内温度が前記快適温度範囲内のうち前記室内温度と同じ温度である前記快適室内温度となるように前記空調装置を制御するとともに、前記シート温度がその快適室内温度と前記快適温度情報とに基づいて算出された前記快適シート温度となるように前記シート温度調整装置を駆動し、前記室内温度が前記快適温度範囲外である場合、前記室内温度が前記快適温度範囲内のうち前記室内温度に最も近い温度となるように前記空調装置を制御するとともに、前記シート温度が前記温度と前記快適温度情報とに基づいて算出された前記快適シート温度となるように前記シート温度調整装置を駆動する制御部と、を有する、乗り物用温度制御システム。
【請求項5】
室内に配置されるシート本体の温度であるシート温度を調整するシート温度調整装置と前記室内の空調を行う空調装置とを制御する制御装置であって、
乗員が快適であると感じる室内温度である快適室内温度と当該快適室内温度であるときに前記乗員が快適であると感じる前記シート温度である快適シート温度との関係を示す快適温度情報であって、前記快適室内温度が最高温度と最低温度との間の快適温度範囲に設定されている前記快適温度情報を記憶する記憶部と、
前記空調装置の駆動中において、前記室内温度が前記快適温度範囲内である場合、前記室内温度が前記快適温度範囲内のうち前記室内温度と同じ温度である前記快適室内温度となるように前記空調装置を制御するとともに、前記シート温度がその快適室内温度と前記快適温度情報とに基づいて算出された前記快適シート温度となるように前記シート温度調整装置を駆動し、前記室内温度が前記快適温度範囲外である場合、前記室内温度が前記快適温度範囲内のうち前記室内温度に最も近い温度となるように前記空調装置を制御するとともに、前記シート温度が前記温度と前記快適温度情報とに基づいて算出された前記快適シート温度となるように前記シート温度調整装置を駆動する制御部と、を備える、制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗り物用温度制御システム及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2009-1098号公報(以下、「特許文献1」という。)に見られるように、空調装置を備えた車両が知られている。通常、このような空調装置では、車室内の温度が設定された温度となるように制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-1098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるような空調装置では、消費電力を削減することが求められている。また、この課題は、車両以外の乗り物にも同様に生じ得る。
【0005】
本発明の目的は、空調装置の消費電力を削減可能な乗り物用温度制御システム及び制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明らは、乗員が快適であると感じる室内の温度とシートの温度との間には相関があること、より詳細には、シートの温度が高くなるにしたがって、乗員が快適であると感じる室内の温度が次第に低くなり、逆に、シートの温度が低くなるにしたがって、乗員が快適であると感じる室内の温度が次第に高くなることを見出した。そして、シートの温度を調整するシート温度調整装置(シートヒータやシート換気ユニット等)は、空調装置の消費電力よりも小さな消費電力で駆動可能であるため、本発明者らは、このシート温度調整装置を併用することにより、空調装置の消費電力を削減可能であることに想到した。
【0007】
本発明は、上記の観点に基づいてなされたものである。具体的に、本発明の一局面に従った乗り物用温度制御システムは、室内に配置されるシート本体と前記シート本体の温度であるシート温度を調整するシート温度調整装置とを有するシートと、前記室内の空調を行う空調装置と前記シート温度調整装置とを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、乗員が快適であると感じる室内温度である快適室内温度と当該快適室内温度であるときに前記乗員が快適であると感じる前記シート温度である快適シート温度との関係を示す快適温度情報を記憶する記憶部と、前記シート温度調整装置の駆動中において、前記記憶部に記憶された前記快適温度情報と前記シート温度とに基づいて前記快適室内温度を算出するとともに、前記室内温度が前記快適室内温度となるように前記空調装置を制御する制御部と、を有する。
【0008】
本乗り物用温度制御システムでは、シート温度調整装置の駆動によって乗員が快適であると感じる室内温度(快適室内温度)が変化し、その快適室内温度となるように空調装置が制御されるため、空調装置の消費電力が削減される。
【0009】
また、前記空調装置は、前記室内温度の初期の設定温度である初期設定温度を記憶する初期設定温度記憶部を有し、前記制御部は、当該制御部が算出した前記快適室内温度と前記初期設定温度との温度差が基準温度未満である場合、前記室内温度が前記快適室内温度となるように前記空調装置を制御することが好ましい。
【0010】
例えば、前記シート温度調整装置は、前記シート本体を加温するシートヒータを有していてもよい。この場合において、前記制御部は、前記シートヒータの駆動中において前記温度差が前記基準温度以上である場合、前記室内温度が前記初期設定温度から前記基準温度を引いた最小許容温度となるように前記空調装置を制御するとともに、前記シート温度が前記最小許容温度と前記快適温度情報とに基づいて算出された前記快適シート温度となるように前記シートヒータを制御することが好ましい。
【0011】
この態様では、空調装置の設定温度(快適室内温度)が初期設定温度よりも低くなり過ぎることが回避されるため、乗員の快適感が維持される。
【0012】
また、前記シート温度調整装置は、前記シート本体の換気が可能なシート換気ユニットを有していてもよい。この場合において、前記制御部は、前記シート換気ユニットの駆動中において前記温度差が前記基準温度以上である場合、前記室内温度が前記初期設定温度と前記基準温度との和である最大許容温度となるように前記空調装置を制御するとともに、前記シート温度が前記最大許容温度と前記快適温度情報とに基づいて算出された前記快適シート温度となるように前記シート換気ユニットを制御することが好ましい。
【0013】
この態様では、空調装置の設定温度(快適室内温度)が初期設定温度よりも高くなりすぎることが回避されるため、乗員の快適感が維持される。
【0014】
また、本発明の他の局面に従った乗り物用温度制御システムは、室内に配置されるシート本体と前記シート本体の温度であるシート温度を調整するシート温度調整装置とを有するシートと、前記室内の空調を行う空調装置と前記シート温度調整装置とを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、乗員が快適であると感じる室内温度である快適室内温度と当該快適室内温度であるときに前記乗員が快適であると感じる前記シート温度である快適シート温度との関係を示す快適温度情報であって、前記快適室内温度が最高温度と最低温度との間の快適温度範囲に設定されている前記快適温度情報を記憶する記憶部と、前記空調装置の駆動中において、前記室内温度が前記快適温度範囲内である場合、前記室内温度が前記快適温度範囲内のうち前記室内温度と同じ温度である前記快適室内温度となるように前記空調装置を制御するとともに、前記シート温度がその快適室内温度と前記快適温度情報とに基づいて算出された前記快適シート温度となるように前記シート温度調整装置を駆動し、前記室内温度が前記快適温度範囲外である場合、前記室内温度が前記快適温度範囲内のうち前記室内温度に最も近い温度となるように前記空調装置を制御するとともに、前記シート温度が前記温度と前記快適温度情報とに基づいて算出された前記快適シート温度となるように前記シート温度調整装置を駆動する制御部と、を有する。
【0015】
本乗り物用温度制御システムでは、シート温度調整装置の駆動により、室内温度が現在の室内温度と同じ温度である快適室内温度となるように、あるいは、快適温度範囲内のうち現在の室内温度に最も近い温度となるように空調装置が駆動されるため、つまり、空調装置のみで乗員が快適と感じる温度とされる場合に比べて空調装置の出力が下がるため、空調装置の消費電力が削減される。
【0016】
また、本発明の一局面に従った制御装置は、室内に配置されるシート本体の温度であるシート温度を調整するシート温度調整装置と前記室内の空調を行う空調装置とを制御する制御装置であって、乗員が快適であると感じる室内温度である快適室内温度と当該快適室内温度であるときに前記乗員が快適であると感じる前記シート温度である快適シート温度との関係を示す快適温度情報を記憶する記憶部と、前記シート温度調整装置の駆動中において、前記記憶部に記憶された前記快適温度情報と前記シート温度とに基づいて前記快適室内温度を算出するとともに、前記室内温度が前記快適室内温度となるように前記空調装置を制御する制御部と、を備える。
【0017】
また、本発明の他の局面に従った制御装置は、室内に配置されるシート本体の温度であるシート温度を調整するシート温度調整装置と前記室内の空調を行う空調装置とを制御する制御装置であって、乗員が快適であると感じる室内温度である快適室内温度と当該快適室内温度であるときに前記乗員が快適であると感じる前記シート温度である快適シート温度との関係を示す快適温度情報であって、前記快適室内温度が最高温度と最低温度との間の快適温度範囲に設定されている前記快適温度情報を記憶する記憶部と、前記空調装置の駆動中において、前記室内温度が前記快適温度範囲内である場合、前記室内温度が前記快適温度範囲内のうち前記室内温度と同じ温度である前記快適室内温度となるように前記空調装置を制御するとともに、前記シート温度がその快適室内温度と前記快適温度情報とに基づいて算出された前記快適シート温度となるように前記シート温度調整装置を駆動し、前記室内温度が前記快適温度範囲外である場合、前記室内温度が前記快適温度範囲内のうち前記室内温度に最も近い温度となるように前記空調装置を制御するとともに、前記シート温度が前記温度と前記快適温度情報とに基づいて算出された前記快適シート温度となるように前記シート温度調整装置を駆動する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0018】
以上に説明したように、この発明によれば、空調装置の消費電力を削減可能な乗り物用温度制御システム及び制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態の乗り物用温度制御システムの全体構成を概略的に示す図である。
図2】快適室内温度と快適シート温度との関係を示す快適温度情報を示すグラフである。
図3図5において二点鎖線IIIで示されるステップが繰り返し実行されたときの室内温度及びシート温度の推移を概略的に示す図である。
図4図5において二点鎖線IVで示されるステップが繰り返し実行されたときの室内温度及びシート温度の推移を概略的に示す図である。
図5】制御装置の制御内容を示すフローチャートである。
図6】本発明の第2実施形態の乗り物用温度制御システムの制御装置の制御内容を示すフローチャートである。
図7図6において二点鎖線VIIで示されるステップが繰り返し実行されたときの室内温度及びシート温度の推移を概略的に示す図である。
図8図6において二点鎖線VIIIで示されるステップが繰り返し実行されたときの室内温度及びシート温度の推移を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0021】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態の乗り物用温度制御システムの全体構成を概略的に示す図である。図1に示されるように、本実施形態の乗り物用温度制御システム1は、シート10と、制御装置20と、を備えている。乗り物用温度制御システム1は、例えば、車両に搭載可能である。
【0022】
シート10は、乗り物用シート、特に車両用シートとして機能する。シート10は、シート本体11と、シート温度調整装置16と、を有している。
【0023】
シート本体11は、室内に配置される。シート本体11は、シートクッション11aと、シートバック11bと、ヘッドレスト11cと、を有している。
【0024】
シートクッション11aは、座部を構成する。シートクッション11aは、乗員を弾性的に支持する。
【0025】
シートバック11bは、シートクッション11aに着座した乗員の背部を支持する。シートバック11bは、その前面が背凭れ面を形成している。
【0026】
ヘッドレスト11cは、シートバック11bの上部に設けられており、乗員の頭部を受ける。
【0027】
シート温度調整装置16は、シート本体11の温度であるシート温度Tseatを調整する。なお、シート温度は、例えばシートクッション11aに設けられた温度センサ31によって検出される。この温度センサ31の検出値(シート温度Tseat)は、制御装置20に送られる。シート温度調整装置16は、シートヒータ17と、シート換気ユニット(SVS)18と、を有している。
【0028】
シートヒータ17は、シート本体11を加温する。シートヒータ17は、シートクッション11a及びシートバック11bの少なくとも一方に設けられている。本実施形態では、シートヒータ17は、シートクッション11aに設けられている。具体的に、シートヒータ17は、シートクッション11aにおけるクッションパッドとクッションシートとの間に配置されている。なお、シートヒータ17は、シートクッション11a及びシートバック11bの双方に設けられてもよいし、シートバック11bのみに設けられてもよい。シートヒータ17がシートバック11bに設けられる場合、シートヒータ17は、シートバック11bにおけるバックパッドとバックシートとの間に配置される。
【0029】
シートヒータ17は、シート状に形成されている。シートヒータ17は、基材(図示略)と、ヒータ線(図示略)と、を有している。基材は、樹脂等からなり、可撓性を有するシート状に形成されている。ヒータ線は、基材上に配置されている。ヒータ線は、当該ヒータ線に通電されることにより発熱する。ヒータ線は、ニクロム線等からなる。ヒータ線は、当該ヒータ線への通電量の増減に応じて発熱量が増減するように構成されている。このため、ヒータ線への通電量を制御することにより、シート温度Tseatが制御される。
【0030】
シート換気ユニット18は、シート本体11の換気が可能である。シート換気ユニット18は、例えば送風機で構成される。シート換気ユニット18は、シートクッション11a及びシートバック11bの少なくとも一方に設けられている。本実施形態では、シート換気ユニット18は、シートクッション11a及びシートバック11bの双方に設けられている。具体的に、シート換気ユニット18は、クッションパッドの下方とバックパッドの後方とに配置されている。シートクッション11aに設けられたシート換気ユニット18が駆動されると、シートクッション11aの下方からシートクッション11aの表面(座面)を通って上方に向かう気流、あるいは、その逆向きの気流が形成される。シートバック11bに設けられたシート換気ユニット18が駆動されると、シートバック11bの後方からシートバック11bの前面(背凭れ面)を通って前方に向かう気流、あるいは、その逆向きの気流が形成される。このため、シート換気ユニット18の回転数を制御することにより、シート温度Tseatが制御される。
【0031】
制御装置20は、空調装置3とシート温度調整装置16とを制御する。
【0032】
空調装置3は、室内の空調を行う。図1に示されるように、空調装置3は、室内に配置されたパネル2内に収容されている。パネル2は、室内におけるシート10の前方でかつフロントガラスFGの下方に設けられている。パネル2には、空調装置3を含む車両の各種機器を操作可能な操作部2aと、空調装置3が生成した空調風を室内に吹き出すための吹出し口2hと、が設けられている。操作部2aには、後述する省エネモードに切り替えるための省エネモードスイッチ2bが設けられている。
【0033】
空調装置3は、装置本体4と、空調制御部5と、を有している。
【0034】
装置本体4は、パネル2内に配置されており、前記空調風を生成する。装置本体4が生成した空調風は、装置本体4と吹出し口2hとを連結する流路を通じて吹出し口2hから吹き出される。
【0035】
空調制御部5は、装置本体4を制御する。空調制御部5は、室内温度Tinが操作部2aで設定された設定温度Tsetとなるように装置本体4を制御する。具体的に、空調制御部5は、設定温度Tsetが室外の温度である室外温度Toutよりも高い場合、装置本体4に暖房運転を行わせる信号を装置本体4に送信し、設定温度Tsetが室外温度Toutよりも低い場合、装置本体4に冷房運転を行わせる信号を装置本体4に送信する。
【0036】
なお、室内温度Tinは、温度センサ32によって検出され、室外温度Toutは、温度センサ33によって検出される。温度センサ32は、例えばパネル2における操作部2aの下部に設けられる。温度センサ33は、例えば車体の前部(エンジンの熱や路面からの熱の影響が少ない部位)に設けられる。各温度センサ32,33の検出値は、空調制御部5に送られる。
【0037】
空調制御部5は、室内温度Tinの初期の設定温度である初期設定温度Tset_iを記憶する初期設定温度記憶部5aを有している。この初期設定温度Tset_iは、制御装置20に送られる。なお、初期設定温度Tset_iは、空調装置3が起動された後、最初に設定された設定温度Tsetである。初期設定温度Tset_iは、空調装置3の起動後に操作部2aから入力された温度、あるいは、前回空調装置3が停止する前に設定されていた温度などである。
【0038】
制御装置20は、シート温度調整装置16及び空調制御部5を制御する。なお、図1では、説明のため、制御装置20が車体の下方に示されているが、制御装置20は、例えばシート本体11に設けられてもよいし、空調制御部5と一体の装置としてパネル2内に設けられてもよい。
【0039】
制御装置20は、記憶部21と、制御部22と、を有している。
【0040】
記憶部21は、図2に示される快適温度情報を記憶している。快適温度情報は、室内温度Tinとシート温度Tseatとの関係であって乗員が快適である感じる関係を示す情報である。以下、乗員が快適であると感じる室内温度Tinを「快適室内温度Tin_c」と称し、乗員が快適である感じるシート温度Tseatを「快適シート温度Tseat_c」と称する。快適温度情報は、快適室内温度Tin_cと、快適室内温度Tin_cであるときに乗員が快適であると感じる快適シート温度Tseat_cと、の関係を示す情報である。快適温度情報において、快適室内温度Tin_cは、最高温度Thiと最低温度Tloとの間の快適温度範囲に設定されている。
【0041】
図2に示されるように、シート温度Tseatが高くなるにしたがって、快適シート温度Tseat_cに対応する快適室内温度Tin_cが低くなり、逆に、シート温度Tseatが低くなるにしたがって、快適シート温度Tseat_cに対応する快適室内温度Tin_cが高くなる。
【0042】
このため、空調装置3の設定温度Tsetが室外温度Toutよりも高くなる時期(例えば冬)には、シートヒータ17の駆動によってシート温度Tseatを上げることによって快適シート温度Tseat_cが下がるため、その快適シート温度Tseat_cまで空調装置3の設定温度Tsetを下げることにより、空調装置3の消費電力を削減することが可能となる。逆に、空調装置3の設定温度Tsetが室外温度Toutよりも低くなる時期(例えば夏)には、シート換気ユニット18の駆動によってシート温度Tseatを下げることによって快適シート温度Tseat_cが上がるため、その快適シート温度Tseat_cまで空調装置3の設定温度Tsetを上げることにより、空調装置3の消費電力を削減することが可能となる。制御部22は、この思想に基づいた制御を行う。
【0043】
制御部22は、シート温度調整装置16の駆動中において、現在のシート温度Tseat(温度センサ31の検出値)と快適温度情報とに基づいてそのシート温度Tseatに対応する快適室内温度Tin_cを算出するとともに、その快適室内温度Tin_cとなるように、空調装置3を制御する(算出された快適室内温度Tin_cを設定温度Tsetに入力する)。
【0044】
制御部22は、当該制御部22が算出した快適室内温度Tin_cと初期設定温度Tset_iとの温度差が基準温度α(例えば5℃)未満である場合、室内温度Tinが快適室内温度Tin_cとなるように空調装置3を制御する。この制御により、シート温度Tseat及び室内温度Tinは、シートヒータ17の駆動中は、図3において矢印で示されるように推移し、シート換気ユニット18の駆動中は、図4において矢印で示されるように推移する。
【0045】
一方、制御部22は、当該制御部22が算出した快適室内温度Tin_cと初期設定温度Tset_iとの温度差が基準温度α以上である場合、上記とは異なる制御を行う。具体的に、制御部22は、シートヒータ17の駆動中において前記温度差が基準温度α以上である場合、室内温度Tinが初期設定温度Tset_iから基準温度αを引いた最小許容温度Tminとなるように空調装置3を制御するとともに、シート温度Tseatが最小許容温度Tminと快適温度情報とに基づいて算出された快適シート温度Tseat_cとなるように、シートヒータ17を制御する(シートヒータ17の通電量を制御する)。また、制御部22は、シート換気ユニット18の駆動中において前記温度差が基準温度α以上である場合、室内温度Tinが初期設定温度Tset_iと基準温度αとの和である最大許容温度Tmaxとなるように空調装置3を制御するとともに、シート温度Tseatが最大許容温度Tmaxと快適温度情報とに基づいて算出された快適シート温度Tseat_cとなるように、シート換気ユニット18を制御する(シート換気ユニット18の回転数を制御する)。
【0046】
以上の制御部22による制御は、操作部2aの省エネモードスイッチ2bを操作することにより実行される。
【0047】
次に、図5を参照しながら、制御部22の制御内容について説明する。図5において、二点鎖線IIIで示されるステップは、図3において矢印で示されるシート温度Tseat及び室内温度Tinの推移を実現するための操作であり、二点鎖線IVで示されるステップは、図4において矢印で示されるシート温度Tseat及び室内温度Tinの推移を実現するための操作である。
【0048】
まず、空調装置3が起動され、シート温度調整装置16が起動される(ステップS101)。このとき、乗員は、操作部2aで設定温度Tsetを入力する。この設定温度Tsetは、初期設定温度Tset_iとして初期設定温度記憶部5aに記憶される。なお、設定温度Tsetが入力されなかった場合、前回の設定温度Tsetが初期設定温度Tset_iとして初期設定温度記憶部5aに記憶される。
【0049】
この状態において、乗員により省エネモードスイッチ2bが押されると(ステップS102)、空調制御部3bは、装置本体4を暖房運転するか冷房運転するかを判断するために、室外温度Toutが設定温度Tset未満であるか否かを判断する(ステップS103)。一方、省エネモードスイッチ2bが押されない場合、制御部22は、再度ステップS102に戻る。
【0050】
ステップS103の結果、室外温度Toutが設定温度Tset未満である場合、空調制御部3bは、装置本体4に対し、設定温度Tsetとなるように暖房運転を行わせる信号を送信する(ステップS111)。そして、制御部22は、シートヒータ17を駆動するとともに(ステップS112)、現在の室内温度Tin(温度センサ32の検出値)と記憶部21に記憶されている快適温度情報とに基づいて、現在の室内温度Tinに対応する快適シート温度Tseat_cを算出する(ステップS113)。なお、ステップS112とステップS113とは、この順に行われてもよいし、逆の順に行われてもよいし、同時に行われてもよい。
【0051】
続いて、制御部22は、現在のシート温度Tseat(温度センサ31の検出値)がステップS113で算出された快適シート温度Tseat_cよりも大きいか否か、すなわち、空調装置3の設定温度Tsetを下げる余地があるか否かを判断する(ステップS114)。この結果、現在のシート温度Tseatが快適シート温度Tseat_c以下である場合、制御部22は、再びステップS114に戻り、現在のシート温度Tseatが快適シート温度Tseat_cよりも大きい場合、制御部22は、現在のシート温度Tseatと快適温度情報とに基づいて、現在のシート温度Tseatにおいて乗員が快適であると感じる快適室内温度Tin_c(現在の室内温度Tinよりも低い温度)を算出する(ステップS115)。
【0052】
そして、制御部22は、初期設定温度Tset_iからステップS115において算出された快適室内温度Tin_cを引いた温度差が基準温度α未満であるか否かを判断する(ステップS116)。
【0053】
この結果、初期設定温度Tset_iから快適室内温度Tin_cを引いた温度差が基準温度α未満である場合、制御部22は、設定温度Tsetをその快適室内温度Tin_c(現在の室内温度Tinよりも低い温度)に書き換える信号を空調制御部3bに送信し(ステップS117)、ステップS102に戻る。一方、初期設定温度Tset_iから快適室内温度Tin_cを引いた温度差が基準温度α以上である場合、すなわち、空調装置3の設定温度Tsetが初期設定温度Tset_iに対して比較的小さくなる場合、制御部22は、設定温度Tsetを初期設定温度Tset_iから基準温度αを引いた最小許容温度Tminに書き換える信号を空調制御部3bに送信する(ステップS118)。
【0054】
制御部22は、ステップS118の後、再びステップS102に戻る。これにより、シート温度Tseatが最小許容温度Tminと快適温度情報とに基づいて算出された快適シート温度Tseat_cとなるように、シートヒータ17が制御される。
【0055】
ステップS103の結果、室外温度Toutが設定温度Tset以上である場合、空調制御部3bは、装置本体4に対し、設定温度Tsetとなるように冷房運転を行わせる信号を送信する(ステップS121)。そして、制御部22は、シート換気ユニット18を駆動するとともに(ステップS122)、現在の室内温度Tin(温度センサ32の検出値)と記憶部21に記憶されている快適温度情報とに基づいて、現在の室内温度Tinに対応する快適シート温度Tseat_cを算出する(ステップS123)。なお、ステップS122とステップS123とは、この順に行われてもよいし、逆の順に行われてもよいし、同時に行われてもよい。
【0056】
続いて、制御部22は、現在のシート温度Tseat(温度センサ31の検出値)がステップS123で算出された快適シート温度Tseat_cよりも小さいか否か、すなわち、空調装置3の設定温度Tsetを上げる余地があるか否かを判断する(ステップS124)。この結果、現在のシート温度Tseatが快適シート温度Tseat_c以上である場合、制御部22は、再びステップS124に戻り、現在のシート温度Tseatが快適シート温度Tseat_cよりも小さい場合、制御部22は、現在のシート温度Tseatと快適温度情報とに基づいて、現在のシート温度Tseatにおいて乗員が快適であると感じる快適室内温度Tin_c(現在の室内温度Tinよりも高い温度)を算出する(ステップS125)。
【0057】
そして、制御部22は、ステップS125において算出された快適室内温度Tin_cから初期設定温度Tset_iを引いた温度差が基準温度α未満であるか否かを判断する(ステップS126)。
【0058】
この結果、快適室内温度Tin_cから初期設定温度Tset_iを引いた温度差が基準温度α未満である場合、制御部22は、設定温度Tsetをその快適室内温度Tin_c(現在の室内温度Tinよりも高い温度)に書き換える信号を空調制御部3bに送信し(ステップS127)、ステップS102に戻る。一方、快適室内温度Tin_cから初期設定温度Tset_iを引いた温度差が基準温度α以上である場合、すなわち、空調装置3の設定温度Tsetが初期設定温度Tset_iに対して比較的大きくなる場合、制御部22は、設定温度Tsetを初期設定温度Tset_iに基準温度αを加えた最大許容温度Tmaxに書き換える信号を空調制御部3bに送信する(ステップS128)。
【0059】
制御部22は、ステップS128の後、再びステップS102に戻る。これにより、シート温度Tseatが最大許容温度Tmaxと快適温度情報とに基づいて算出された快適シート温度Tseat_cとなるように、シート換気ユニット18が制御される。
【0060】
以上に説明したように、本実施形態の乗り物用温度制御システム1では、シート温度調整装置16の駆動によって乗員が快適であると感じる室内温度(快適室内温度Tin_c)が変化し、その快適室内温度Tin_cとなるように空調装置3が制御されるため、空調装置3の消費電力が削減される。
【0061】
また、制御部22は、シートヒータ17の駆動中において前記温度差が基準温度α以上である場合(ステップS116においてNOの場合)、室内温度Tinが最小許容温度Tminとなるように空調装置3を制御するとともに、シート温度Tseatが最小許容温度Tminと快適温度情報とに基づいて算出された快適シート温度Tseat_cとなるようにシートヒータ17を制御する。このため、空調装置3の設定温度Tset(快適室内温度)が初期設定温度Tset_iよりも低くなり過ぎることが回避される。よって、乗員の快適感が維持される。
【0062】
また、制御部22は、シート換気ユニット18の駆動中において前記温度差が基準温度α以上である場合(ステップS126でNOの場合)、室内温度Tinが最大許容温度Tmaxとなるように空調装置3を制御するとともに、シート温度Tseatが最大許容温度Tmaxと快適温度情報とに基づいて算出された快適シート温度Tseat_cとなるようにシート換気ユニット18を制御する。このため、空調装置3の設定温度Tset(快適室内温度)が初期設定温度Tset_iよりも高くなりすぎることが回避される。よって、乗員の快適感が維持される。
【0063】
(第2実施形態)
次に、図6図8を参照しながら、本開示の第2実施形態の乗り物用温度制御システム1について説明する。図6は、本発明の第2実施形態の乗り物用温度制御システムの制御装置の制御内容を示すフローチャートである。図7は、図6において二点鎖線VIIで示されるステップが繰り返し実行されたときの室内温度及びシート温度の推移を概略的に示す図である。図8は、図6において二点鎖線VIIIで示されるステップが繰り返し実行されたときの室内温度及びシート温度の推移を概略的に示す図である。なお、第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は繰り返さない。
【0064】
本実施形態では、制御部22は、空調装置3の駆動中において、室内温度Tinが快適温度範囲(最高温度Thiと最低温度Tloとの間の範囲)内である場合、室内温度Tinが現在の室内温度Tinと同じ温度である快適室内温度Tin_cとなるように空調装置3を制御するとともに、シート温度Tseatがその快適室内温度Tin_cと快適温度情報とに基づいて算出された快適シート温度Tseat_cとなるようにシート温度調整装置16を駆動する。
【0065】
例えば、制御部22は、空調装置3による暖房運転中において、現在の室内温度Tin(温度センサ32の検出値)が快適温度範囲内である場合、設定温度Tsetをその室内温度Tin(快適室内温度Tin_c)に書き換える信号を空調制御部3bに送信するとともに、シート温度Tseatがその設定温度Tset(快適室内温度Tin_c)と快適温度情報とに基づいて算出された快適シート温度Tseat_cとなるようにシートヒータ17の通電量を制御する。この制御により、シート温度Tseat及び室内温度Tinは、図6において破線の矢印で示されるように推移する。
【0066】
また、制御部22は、空調装置3による冷房運転中において、現在の室内温度Tin(温度センサ32の検出値)が快適温度範囲内である場合、設定温度Tsetをその室内温度Tin(快適室内温度Tin_c)に書き換える信号を空調制御部3bに送信するとともに、シート温度Tseatがその設定温度Tset(快適室内温度Tin_c)と快適温度情報とに基づいて算出された快適シート温度Tseat_cとなるようにシート換気ユニット18の回転数を制御する。この制御により、シート温度Tseat及び室内温度Tinは、図7において破線の矢印で示されるように推移する。
【0067】
また、制御部22は、空調装置3の駆動中において、室内温度Tinが前記快適温度範囲外である場合、室内温度Tinが快適温度範囲内のうち現在の室内温度Tinに最も近い温度となるように空調装置3を制御するとともに、シート温度Tseatが前記温度と快適温度情報とに基づいて算出された快適シート温度Tseat_cとなるようにシート温度調整装置16を駆動する。
【0068】
具体的に、制御部22は、空調装置3による暖房運転中において、室内温度Tinが最低温度Tloよりも低い場合、設定温度Tsetを快適温度範囲内のうち現在の室内温度Tinに最も近い温度である最低温度Tloに書き換える信号を空調制御部3bに送信するとともに、シート温度Tseatが最低温度Tloと快適温度情報とに基づいて算出された快適シート温度Tseat_cとなるようにシートヒータ17の通電量を制御する。この制御により、シート温度Tseat及び室内温度Tinは、図6において実線の矢印で示されるように推移する。
【0069】
また、制御部22は、空調装置3による冷房運転中において、室内温度Tinが最高温度Thiよりも高い場合、設定温度Tsetを快適温度範囲内のうち現在の室内温度Tinに最も近い温度である最高温度Thiに書き換える信号を空調制御部3bに送信するとともに、シート温度Tseatが最高温度Thiと快適温度情報とに基づいて算出された快適シート温度Tseat_cとなるようにシート換気ユニット18の回転数を制御する。この制御により、シート温度Tseat及び室内温度Tinは、図7において実線の矢印で示されるように推移する。
【0070】
次に、図8を参照しながら、制御部22の制御内容について説明する。図8において、二点鎖線VIで示されるステップは、図6において破線及び実線の矢印で示されるシート温度Tseat及び室内温度Tinの推移を実現するための操作であり、二点鎖線VIIで示されるステップは、図7において破線及び実線の矢印で示されるシート温度Tseat及び室内温度Tinの推移を実現するための操作である。
【0071】
ステップS201~ステップS203の内容は、第1実施形態におけるステップS101~ステップS103の内容と同じである。
【0072】
ステップS203の結果、室外温度Toutが設定温度Tset未満である場合、空調制御部3bは、装置本体4に対し、設定温度Tsetとなるように暖房運転を行わせる信号を送信する(ステップS211)。そして、制御部22は、現在の室内温度Tin(温度センサ32の検出値)が最低温度Tlo未満であるか否かを判断する(ステップS212)。
【0073】
この結果、現在の室内温度Tinが最低温度Tlo未満である場合、制御部22は、空調装置3の消費電力を最小限に抑えるために、設定温度Tsetを最低温度Tloに書き換える信号を空調制御部3bに送信し(ステップS213)、最低温度Tloと快適温度情報とに基づいて最低温度Tloに対応する快適シート温度Tseat_cを算出する(ステップS214)。一方、ステップS212の結果、現在の室内温度Tinが最低温度Tlo以上である場合、制御部22は、設定温度Tsetを現在の室内温度Tinに書き換える信号を空調制御部3bに送信し(ステップS215)、現在の室内温度Tinと快適温度情報とに基づいて現在の室内温度Tinに対応する快適シート温度Tseat_cを算出する(ステップS216)。
【0074】
ステップS214又はステップS216の後、制御部22は、シート温度Tseatを快適シート温度Tseat_cに近づけるためにシートヒータ17を駆動する(ステップS217)。
【0075】
そして、現在のシート温度Tseat(温度センサ31の検出値)がステップS214又はステップS216で算出された快適シート温度Tseat_cよりも大きいか否かを判断する(ステップS218)。この結果、現在のシート温度Tseatが快適シート温度Tseat_c以下である場合、制御部22は、再度ステップS218に戻る一方、現在のシート温度Tseatが快適シート温度Tseat_cよりも大きい場合、制御部22は、再度ステップS202に戻る。
【0076】
ステップS203の結果、室外温度Toutが設定温度Tset以上である場合、空調制御部3bは、装置本体4に対し、設定温度Tsetとなるように冷房運転を行わせる信号を送信する(ステップS221)。そして、制御部22は、現在の室内温度Tin(温度センサ32の検出値)が最高温度Thiよりも大きいか否かを判断する(ステップS222)。
【0077】
この結果、現在の室内温度Tinが最高温度Thiよりも大きい場合、制御部22は、空調装置3の消費電力を最小限に抑えるために、設定温度Tsetを最高温度Thiに書き換える信号を空調制御部3bに送信し(ステップS223)、最高温度Thiと快適温度情報とに基づいて最高温度Thiに対応する快適シート温度Tseat_cを算出する(ステップS224)。一方、ステップS222の結果、現在の室内温度Tinが最高温度Thi以下である場合、制御部22は、設定温度Tsetを現在の室内温度Tinに書き換える信号を空調制御部3bに送信し(ステップS225)、現在の室内温度Tinと快適温度情報とに基づいて現在の室内温度Tinに対応する快適シート温度Tseat_cを算出する(ステップS226)。
【0078】
ステップS224又はステップS226の後、制御部22は、シート温度Tseatを快適シート温度Tseat_cに近づけるためにシート換気ユニット18を駆動する(ステップS227)。
【0079】
そして、現在のシート温度Tseat(温度センサ31の検出値)がステップS224又はステップS226で算出された快適シート温度Tseat_c以下であるか否かを判断する(ステップS228)。この結果、現在のシート温度Tseatが快適シート温度Tseat_cよりも大きい場合、制御部22は、再度ステップS228に戻る一方、現在のシート温度Tseatが快適シート温度Tseat_c以下である場合、制御部22は、再度ステップS202に戻る。
【0080】
以上に説明したように、本実施形態の乗り物用温度制御システム1では、シート温度調整装置16の駆動により、室内温度Tinが現在の室内温度Tinと同じ温度である快適室内温度Tin_cとなるように、あるいは、快適温度範囲内のうち現在の室内温度Tinに最も近い温度となるように空調装置3が駆動されるため、つまり、空調装置3のみで乗員が快適と感じる温度とされる場合に比べて空調装置3の出力が下がるため、空調装置3の消費電力が削減される。
【0081】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0082】
例えば、第1実施形態において、制御部22は、ステップS116において、ステップS115で算出された快適室内温度Tin_cが最低温度Tlo以上であるか否かを判断し、ステップS118において、最低温度Tloを設定温度Tsetに書き換える信号を空調制御部3bに送信してもよい。同様に、制御部22は、ステップS126において、ステップS125で算出された快適室内温度Tin_cが最高温度Thi以下であるか否かを判断し、ステップS128において、最高温度Thiを設定温度Tsetに書き換える信号を空調制御部3bに送信してもよい。
【0083】
また、第2実施形態において、制御部22は、ステップS215~ステップS218の操作を実行した後、すなわち、室内温度Tinが最低温度Tloよりも大きい場合においてシート温度Tseatが快適シート温度Tseat_cに達した後(図6において破線の矢印の先端に至った後)、第1実施形態に示される制御を行ってもよい。同様に、制御部22は、ステップS225~ステップS228の操作を実行した後、すなわち、室内温度Tinが最高温度Thi未満である場合においてシート温度Tseatが快適シート温度Tseat_cに達した後(図7において破線の矢印の先端に至った後)、第1実施形態に示される制御を行ってもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 乗り物用温度制御システム、2 パネル、2a 操作部、2b 省エネモードスイッチ、2h 吹出し口、3 空調装置、4 装置本体、5 空調制御部、5a 初期設定温度記憶部、10 シート、11 シート本体、11a シートクッション、11b シートバック、11c ヘッドレスト、16 シート温度調整装置、17 シートヒータ、18 シート換気ユニット、20 制御装置、21 記憶部、22 制御部、31 温度センサ、32 温度センサ、33 温度センサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8