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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】歩行支援装置
(51)【国際特許分類】
   A61H 1/02 20060101AFI20230704BHJP
   A61H 3/04 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
A61H1/02 R
A61H3/04
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019133987
(22)【出願日】2019-07-19
(65)【公開番号】P2021016586
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 由之
(72)【発明者】
【氏名】松岡 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】金谷 学
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-115473(JP,A)
【文献】特開2008-029676(JP,A)
【文献】特開2006-102156(JP,A)
【文献】特開2017-109062(JP,A)
【文献】特開2016-073630(JP,A)
【文献】特開2015-104397(JP,A)
【文献】特開2008-036054(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0093201(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 1/02
A61H 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
前記フレームに設けられた少なくとも1つの駆動輪を含む複数の車輪と、
前記駆動輪を駆動する走行用駆動装置と、
前記走行用駆動装置を制御する走行制御装置と、
所定時間分の使用者の歩行状態に関する歩行状態情報を取得する歩行状態取得装置と、
前記歩行状態取得装置によって取得した前記歩行状態情報に基づいて、使用者の前記歩行状態が改善された目標歩行状態を設定する目標歩行状態設定装置と、
前記目標歩行状態を使用者に教示するように制御する教示制御装置と、
前記目標歩行状態を使用者に教示する教示歩行モードと、前記目標歩行状態を設定しない通常歩行モードと、を切り替え設定する切替設定装置と、
を備え、
前記走行制御装置は、前記目標歩行状態に基づいて前記走行用駆動装置を制御し、
前記切替設定装置によって前記教示歩行モードに切り替え設定された後に、前記歩行状態取得装置は、前記所定時間分又は所定移動距離分若しくは所定歩行周期分だけ歩行した使用者の歩行状態に関する前記歩行状態情報を取得する、
歩行支援装置。
【請求項2】
フレームと、
前記フレームに設けられた少なくとも1つの駆動輪を含む複数の車輪と、
前記駆動輪を駆動する走行用駆動装置と、
前記走行用駆動装置を制御する走行制御装置と、
所定時間分の使用者の歩行状態に関する歩行状態情報を取得する歩行状態取得装置と、
前記歩行状態取得装置によって取得した前記歩行状態情報に基づいて、使用者の前記歩行状態が改善された目標歩行状態を設定する目標歩行状態設定装置と、
前記目標歩行状態を使用者に教示するように制御する教示制御装置と、
歩行のタイミングを使用者に報知する報知装置と、
を備え、
前記走行制御装置は、前記目標歩行状態に基づいて前記走行用駆動装置を制御し、
前記歩行状態情報は、歩行周期を含み、
前記目標歩行状態は、前記歩行周期に基づいて設定された目標歩行周期を含み、
前記教示制御装置は、前記報知装置を介して前記目標歩行周期に基づいて歩行のタイミングを教示するように制御する、
歩行支援装置。
【請求項3】
請求項2に記載の歩行支援装置において、
前記教示制御装置は、
前記目標歩行周期に基づいて周期音を設定する周期音設定部を有し、
前記周期音設定部によって設定された周期音を前記報知装置を介して使用者に報知するように制御する、
歩行支援装置。
【請求項4】
フレームと、
前記フレームに設けられた少なくとも1つの駆動輪を含む複数の車輪と、
前記駆動輪を駆動する走行用駆動装置と、
前記走行用駆動装置を制御する走行制御装置と、
所定時間分の使用者の歩行状態に関する歩行状態情報を取得する歩行状態取得装置と、
前記歩行状態取得装置によって取得した前記歩行状態情報に基づいて、使用者の前記歩行状態が改善された目標歩行状態を設定する目標歩行状態設定装置と、
前記目標歩行状態を使用者に教示するように制御する教示制御装置と、
使用者に把持されて前記フレームに対する前後方向であるフレーム前後方向に移動可能とされた左右一対の持ち手と、
それぞれの前記持ち手の状態を検出するそれぞれの持ち手状態検出装置と、
を備え、
前記走行制御装置は、前記目標歩行状態に基づいて前記走行用駆動装置を制御し、
前記歩行状態取得装置は、
それぞれの前記持ち手状態検出装置からの検出信号に基づいて検出したそれぞれの持ち手状態に基づいて使用者の歩行周期を取得する歩行周期取得部を有し、
前記目標歩行状態設定装置は、
前記歩行周期に基づいて前記目標歩行状態として使用者に教示する目標歩行周期を設定し、
前記教示制御装置は、前記目標歩行周期を使用者に教示するように制御し、
前記走行制御装置は、前記目標歩行周期に基づいて前記走行用駆動装置を制御する、
歩行支援装置。
【請求項5】
請求項に記載の歩行支援装置において、
それぞれの前記持ち手に固定されて前記フレーム前後方向に延びる左右一対のシャフトと、
前記フレーム前後方向に延びてそれぞれの前記シャフトを前記フレーム前後方向に移動可能となるように収容しているとともに前記フレームに取り付けられる左右一対の筒状部と、
を備え、
それぞれの前記シャフトには、自身を収容している前記筒状部に対する前記フレーム前後方向における基準位置であるシャフト基準位置が設定されており、
前記持ち手状態検出装置は、
前記シャフトの前記シャフト基準位置又は前端位置若しくは後端位置への繰り返し到達時間を検出し、
前記歩行周期取得部は、
前記繰り返し到達時間に基づいて使用者の歩行周期を取得する、
歩行支援装置。
【請求項6】
請求項に記載の支援装置において、
前記駆動輪の進行速度を検出する進行速度検出装置を備え、
それぞれの前記筒状部は、前記シャフト基準位置の近傍となるように前記フレーム前後方向の前後規制範囲に前記シャフトを保持するロック状態と、前記フレーム前後方向において前記前後規制範囲を超えて前記フレーム前後方向に前記シャフトが移動することを許容する解除状態と、に切替え可能なロック機構を有し、
それぞれの前記ロック機構が前記ロック状態に切り替え設定されている場合には、前記歩行周期取得部は、前記進行速度検出装置によって検出された前記駆動輪の進行速度の周期的な速度変化に基づいて使用者の歩行周期を取得する、
歩行支援装置。
【請求項7】
フレームと、
前記フレームに設けられた少なくとも1つの駆動輪を含む複数の車輪と、
前記駆動輪を駆動する走行用駆動装置と、
前記走行用駆動装置を制御する走行制御装置と、
所定時間分の使用者の歩行状態に関する歩行状態情報を取得する歩行状態取得装置と、
前記歩行状態取得装置によって取得した前記歩行状態情報に基づいて、使用者の前記歩行状態が改善された目標歩行状態を設定する目標歩行状態設定装置と、
前記目標歩行状態を使用者に教示するように制御する教示制御装置と、
前記駆動輪の進行速度を検出する進行速度検出装置と、
を備え、
前記走行制御装置は、前記目標歩行状態に基づいて前記走行用駆動装置を制御し、
前記歩行状態取得装置は、
前記進行速度検出装置によって検出された前記駆動輪の進行速度の周期的な速度変化に基づいて使用者の歩行周期を取得する歩行周期取得部を有し、
前記目標歩行状態設定装置は、
前記歩行周期に基づいて前記目標歩行状態として使用者に教示する目標歩行周期を設定し、
前記教示制御装置は、前記目標歩行周期を使用者に教示するように制御し、
前記走行制御装置は、前記目標歩行周期に基づいて前記走行用駆動装置を制御する、
歩行支援装置。
【請求項8】
請求項2乃至請求項のいずれか1項に記載の歩行支援装置において、
前記目標歩行状態設定装置は、前記目標歩行周期を前記歩行周期よりも所定の第1割合だけ短くなるように設定し、
前記走行制御装置は、前記駆動輪の進行速度を前記歩行周期に対応する進行速度よりも所定の第2割合だけ速くするように制御する、
歩行支援装置。
【請求項9】
請求項2乃至請求項のいずれか1項に記載の歩行支援装置において、
前記目標歩行状態設定装置は、前記目標歩行周期を前記歩行周期と同一周期になるよう
に設定し、
前記走行制御装置は、前記駆動輪の進行速度を前記歩行周期に対応する進行速度よりも所定の第2割合だけ速くするように制御する、
歩行支援装置。
【請求項10】
請求項2乃至請求項のいずれか1項に記載の歩行支援装置において、
前記目標歩行状態設定装置は、前記目標歩行周期を前記歩行周期よりも所定の第3割合だけ長くなるように設定し、
前記走行制御装置は、前記駆動輪の進行速度を前記歩行周期に対応する進行速度と同一速度になるように制御する、
歩行支援装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の歩行支援装置において、
前記目標歩行状態を使用者に教示して走行する目標教示走行距離を予め記憶する目標教示走行距離記憶装置と、
前記目標歩行状態を使用者に教示して走行した走行距離を検出する走行距離検出装置と、
前記走行距離検出装置によって検出された走行距離が前記目標教示走行距離に達したか否かを判定する走行距離判定装置と、
を備え、
前記走行距離判定装置によって、前記走行距離検出装置によって検出された走行距離が前記目標教示走行距離に達したと判定された場合には、前記走行制御装置は、前記走行用駆動装置を停止させるように制御する、
歩行支援装置。
【請求項12】
フレームと、
前記フレームに設けられた少なくとも1つの駆動輪を含む複数の車輪と、
前記駆動輪を駆動する走行用駆動装置と、
前記走行用駆動装置を制御する走行制御装置と、
所定時間分の使用者の歩行状態に関する歩行状態情報を取得する歩行状態取得装置と、
前記歩行状態取得装置によって取得した前記歩行状態情報に基づいて、使用者の前記歩行状態が改善された目標歩行状態を設定する目標歩行状態設定装置と、
前記目標歩行状態を使用者に教示するように制御する教示制御装置と、
前記目標歩行状態を使用者に教示して走行する目標教示走行距離を予め記憶する目標教示走行距離記憶装置と、
前記目標歩行状態を使用者に教示して走行した走行距離を検出する走行距離検出装置と、
前記走行距離検出装置によって検出された走行距離が前記目標教示走行距離に達したか否かを判定する走行距離判定装置と、
前記教示制御装置によって前記目標歩行状態が使用者に教示されている間における前記使用者の歩行状態を取得する教示歩行状態取得装置と、
前記教示歩行状態取得装置によって取得された使用者の歩行状態と前記目標歩行状態とを比較して評価する歩行状態評価装置と、
前記歩行状態評価装置による評価の結果を出力する出力装置と、
を備え、
前記走行制御装置は、前記目標歩行状態に基づいて前記走行用駆動装置を制御し、
前記走行距離判定装置によって、前記走行距離検出装置によって検出された走行距離が前記目標教示走行距離に達したと判定された場合には、前記走行制御装置は、前記走行用駆動装置を停止させるように制御する、
歩行支援装置。
【請求項13】
請求項12に記載の歩行支援装置において、
前記教示歩行状態取得装置によって取得された使用者の前記歩行状態は、歩行周期を含み、
前記目標歩行状態は、目標歩行周期を含み、
前記歩行状態評価装置は、前記目標歩行周期に対する前記歩行周期の一致度合い、又は、一致度合いが所定値以上の達成回数、若しくは、前記達成回数の全評価回数に対する達成率に基づいて評価する、
歩行支援装置。
【請求項14】
請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載の歩行支援装置において、
前記歩行状態取得装置によって取得した前記歩行状態情報を時系列的に記憶する歩行状態情報記憶装置を備え、
前記目標歩行状態設定装置は、前記歩行状態情報記憶装置に時系列的に記憶された前記歩行状態情報に基づいて前記目標歩行状態を設定する、
歩行支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者等の歩行を支援する歩行支援装置に関する技術が種々提案されている。例えば、下記特許文献1に記載された歩行補助車では、使用者を支える基体と、基体を移動させる駆動部と、基体から使用者までの使用距離を検出する距離検出部と、使用者が基体に作用する作用力を検出する作用力検出部と、使用距離または作用力に基づいて駆動部を制御する移動制御部と、を備えている。移動制御部は、使用距離が予め定められた距離閾値より大きい場合、駆動部に制動力を作用させて基体を減速させる転倒防止制御を行う。また、移動制御部は、作用力が一定時間後も予め定められた支持力閾値以上である場合、基体を後退させる復帰アシスト制御を行うように構成されている。
【0003】
これにより、歩行補助車が使用者よりも一定以上離れて先に行こうとすると、転倒防止ブレーキがかかるため、使用者の転倒が防止されて安全を確保することができる。また、足腰の弱い高齢者等がクリップに体重を預けた前傾姿勢となって、自力で戻れない場合には、グリップに一定以上の作用力が掛かり、その状態が一定時間以上続くため、基体を後進させて、使用者の体勢を立て直すようにアシストすることで、使用者の安全性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-63980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された歩行補助車では、基体から使用者までの使用距離を検出しているが、使用者の脚の位置までは検出せず、歩行状態を推定することも、改善することもできない。そのため、使用者は、歩行補助車によって楽に歩けるが、歩行補助車を使うことによって歩行のトレーニングを行い、歩行能力を向上させる機能がないため、徐々に歩行能力が低下していくという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、使用することによって歩行トレーニングを行うことができ、歩行能力を改善することができる歩行支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1の発明は、フレームと、前記フレームに設けられた少なくとも1つの駆動輪を含む複数の車輪と、前記駆動輪を駆動する走行用駆動装置と、前記走行用駆動装置を制御する走行制御装置と、所定時間分の使用者の歩行状態に関する歩行状態情報を取得する歩行状態取得装置と、前記歩行状態取得装置によって取得した前記歩行状態情報に基づいて、使用者の前記歩行状態が改善された目標歩行状態を設定する目標歩行状態設定装置と、前記目標歩行状態を使用者に教示するように制御する教示制御装置と、を備え、前記走行制御装置は、前記目標歩行状態に基づいて前記走行用駆動装置を制御する、歩行支援装置である。
【0008】
次に、本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係る歩行支援装置において、歩行のタイミングを使用者に報知する報知装置を備え、前記歩行状態情報は、歩行周期を含み、前記目標歩行状態は、前記歩行周期に基づいて設定された目標歩行周期を含み、前記教示制御装置は、前記報知装置を介して前記目標歩行周期に基づいて歩行のタイミングを教示するように制御する、歩行支援装置である。
【0009】
次に、本発明の第3の発明は、上記第2の発明に係る歩行支援装置において、前記教示制御装置は、前記目標歩行周期に基づいて周期音を設定する周期音設定部を有し、前記周期音設定部によって設定された周期音を前記報知装置を介して使用者に報知するように制御する、歩行支援装置である。
【0010】
次に、本発明の第4の発明は、上記第1の発明乃至第3の発明のいずれか1つに係る歩行支援装置において、前記目標歩行状態を使用者に教示する教示歩行モードと、前記目標歩行状態を設定しない通常歩行モードと、を切り替え設定する切替設定装置を備え、前記切替設定装置によって前記教示歩行モードに切り替え設定された後に、前記歩行状態取得装置は、前記所定時間分又は所定移動距離分若しくは所定歩行周期分だけ歩行した使用者の歩行状態に関する前記歩行状態情報を取得する、歩行支援装置である。
【0011】
次に、本発明の第5の発明は、上記第1の発明乃至第4の発明のいずれか1つに係る歩行支援装置において、使用者に把持されて前記フレームに対する前後方向であるフレーム前後方向に移動可能とされた左右一対の持ち手と、それぞれの前記持ち手の状態を検出するそれぞれの持ち手状態検出装置と、を備え、前記歩行状態取得装置は、それぞれの前記持ち手状態検出装置からの検出信号に基づいて検出したそれぞれの持ち手状態に基づいて使用者の歩行周期を取得する歩行周期取得部を有し、前記目標歩行状態設定装置は、前記歩行周期に基づいて前記目標歩行状態として使用者に教示する目標歩行周期を設定し、前記教示制御装置は、前記目標歩行周期を使用者に教示するように制御し、前記走行制御装置は、前記目標歩行周期に基づいて前記走行用駆動装置を制御する、歩行支援装置である。
【0012】
次に、本発明の第6の発明は、上記第5の発明に係る歩行支援装置において、それぞれの前記持ち手に固定されて前記フレーム前後方向に延びる左右一対のシャフトと、前記フレーム前後方向に延びてそれぞれの前記シャフトを前記フレーム前後方向に移動可能となるように収容しているとともに前記フレームに取り付けられる左右一対の筒状部と、を備え、それぞれの前記シャフトには、自身を収容している前記筒状部に対する前記フレーム前後方向における基準位置であるシャフト基準位置が設定されており、前記持ち手状態検出装置は、前記シャフトの前記シャフト基準位置又は前端位置若しくは後端位置への繰り返し到達時間を検出し、前記歩行周期取得部は、前記繰り返し到達時間に基づいて使用者の歩行周期を取得する、歩行支援装置である。
【0013】
次に、本発明の第7の発明は、上記第6の発明に係る歩行支援装置において、前記駆動輪の進行速度を検出する進行速度検出装置を備え、それぞれの前記筒状部は、前記シャフト基準位置の近傍となるように前記フレーム前後方向の前後規制範囲に前記シャフトを保持するロック状態と、前記フレーム前後方向において前記前後規制範囲を超えて前記フレーム前後方向に前記シャフトが移動することを許容する解除状態と、に切替え可能なロック機構を有し、それぞれの前記ロック機構が前記ロック状態に切り替え設定されている場合には、前記歩行周期取得部は、前記進行速度検出装置によって検出された前記駆動輪の進行速度の周期的な速度変化に基づいて使用者の歩行周期を取得する、歩行支援装置である。
【0014】
次に、本発明の第8の発明は、上記第1の発明乃至第4の発明のいずれか1つに係る歩行支援装置において、前記駆動輪の進行速度を検出する進行速度検出装置を備え、前記歩行状態取得装置は、前記進行速度検出装置によって検出された前記駆動輪の進行速度の周期的な速度変化に基づいて使用者の歩行周期を取得する歩行周期取得部を有し、前記目標歩行状態設定装置は、前記歩行周期に基づいて前記目標歩行状態として使用者に教示する目標歩行周期を設定し、前記教示制御装置は、前記目標歩行周期を使用者に教示するように制御し、前記走行制御装置は、前記目標歩行周期に基づいて前記走行用駆動装置を制御する、歩行支援装置である。
【0015】
次に、本発明の第9の発明は、上記第2の発明乃至第8の発明のいずれか1つに係る歩行支援装置において、前記目標歩行状態設定装置は、前記目標歩行周期を前記歩行周期よりも所定の第1割合だけ短くなるように設定し、前記走行制御装置は、前記駆動輪の進行速度を前記歩行周期に対応する進行速度よりも所定の第2割合だけ速くするように制御する、歩行支援装置である。
【0016】
次に、本発明の第10の発明は、上記第2の発明乃至第8の発明のいずれか1つに係る歩行支援装置において、前記目標歩行状態設定装置は、前記目標歩行周期を前記歩行周期と同一周期になるように設定し、前記走行制御装置は、前記駆動輪の進行速度を前記歩行周期に対応する進行速度よりも所定の第2割合だけ速くするように制御する、歩行支援装置である。
【0017】
次に、本発明の第11の発明は、上記第2の発明乃至第8の発明のいずれか1つに係る歩行支援装置において、前記目標歩行状態設定装置は、前記目標歩行周期を前記歩行周期よりも所定の第3割合だけ長くなるように設定し、前記走行制御装置は、前記駆動輪の進行速度を前記歩行周期に対応する進行速度と同一速度になるように制御する、歩行支援装置である。
【0018】
次に、本発明の第12の発明は、上記第1の発明乃至第11の発明のいずれか1つに係る歩行支援装置において、前記目標歩行状態を使用者に教示して走行する目標教示走行距離を予め記憶する目標教示走行距離記憶装置と、前記目標歩行状態を使用者に教示して走行した走行距離を検出する走行距離検出装置と、前記走行距離検出装置によって検出された走行距離が前記目標教示走行距離に達したか否かを判定する走行距離判定装置と、を備え、前記走行距離判定装置によって、前記走行距離検出装置によって検出された走行距離が前記目標教示走行距離に達したと判定された場合には、前記走行制御装置は、前記走行用駆動装置を停止させるように制御する、歩行支援装置である。
【0019】
次に、本発明の第13の発明は、上記第12の発明に係る歩行支援装置において、前記教示制御装置によって前記目標歩行状態が使用者に教示されている間における前記使用者の歩行状態を取得する教示歩行状態取得装置と、前記教示歩行状態取得装置によって取得された使用者の歩行状態と前記目標歩行状態とを比較して評価する歩行状態評価装置と、前記歩行状態評価装置による評価の結果を出力する出力装置と、を備える、歩行支援装置である。
【0020】
次に、本発明の第14の発明は、上記第13の発明に係る歩行支援装置において、前記教示歩行状態取得装置によって取得された使用者の前記歩行状態は、歩行周期を含み、前記目標歩行状態は、目標歩行周期を含み、前記歩行状態評価装置は、前記目標歩行周期に対する前記歩行周期の一致度合い、又は、一致度合いが所定値以上の達成回数、若しくは、前記達成回数の全評価回数に対する達成率に基づいて評価する、歩行支援装置である。
【0021】
次に、本発明の第15の発明は、上記第1の発明乃至第14の発明のいずれか1つに係る歩行支援装置において、前記歩行状態取得装置によって取得した前記歩行状態情報を時系列的に記憶する歩行状態情報記憶装置を備え、前記目標歩行状態設定装置は、前記歩行状態情報記憶装置に時系列的に記憶された前記歩行状態情報に基づいて前記目標歩行状態を設定する、歩行支援装置である。
【発明の効果】
【0022】
第1の発明によれば、使用者の所定時間分の歩行状態に関する歩行状態情報から、当該歩行状態が改善された目標歩行状態が設定されて、使用者に教示される。また、歩行支援装置は、目標歩行状態に基づいて走行制御される。その結果、使用者は、歩行支援装置を使用して、教示される目標歩行状態に従って歩行することによって、歩行状態が改善される歩行トレーニングを行うことができ、歩行能力を改善することができる。
【0023】
第2の発明によれば、使用者の歩行周期が改善される目標歩行周期に基づいて、歩行のタイミングが報知装置を介して教示される。これにより、使用者は、歩行支援装置を使用して、教示される歩行のタイミングに従って歩行することによって、歩行周期が改善される歩行トレーニングを行うことができ、歩行能力を改善することができる。また、使用者は、教示される歩行のタイミングに従って歩行することによって、歩行のタイミングを取り易くなり、歩行状態が改善される歩行トレーニングを容易に実行することができる。
【0024】
第3の発明によれば、目標歩行周期に基づいて設定された周期音(例えば、一定周期のメトロノームのテンポ音、楽器のリズム音、掛け声等)が、報知装置を介して使用者に教示される。その結果、使用者は、教示される周期音に従って歩行することによって、歩行のタイミングを目標歩行周期に合わせて取り易くなり、歩行状態が改善される歩行トレーニングを効果的に実行することができる。
【0025】
第4の発明によれば、切替設定装置によって教示歩行モードに切り替え設定された後に、所定時間分又は所定移動距離分若しくは所定歩行周期分だけ歩行した使用者の歩行状態に関する歩行状態情報が取得される。これにより、使用者は、切替装置によって教示歩行モードに切り替え設定することによって、所望するタイミングで、歩行支援装置を使用して、歩行トレーニングを開始することができる。
【0026】
第5の発明によれば、使用者が左右一対の持ち手を把持して、持ち手と共に腕を振りながら歩行すると、腕振り状態(持ち手状態)に基づいて使用者の歩行周期が取得される。そして、歩行周期が改善される目標歩行周期が設定されて、使用者に教示される。また、目標歩行周期に基づいて走行用駆動装置が駆動制御される。これにより、使用者は、目標歩行周期に基づいて駆動制御される歩行支援装置を使用して、教示される目標歩行周期に同期させて正しく腕を振りながら歩行することによって、歩行状態が改善される歩行トレーニングを行うことができ、歩行能力を改善することができる。従って、使用者が正しく腕を振りながら歩行する質の高い歩行のトレーニングを支援することができる。
【0027】
第6の発明によれば、シャフトのシャフト基準位置又は前端位置若しくは後端位置への繰り返し到達時間を検出して、この繰り返し到達時間に基づいて使用者の歩行周期が取得される。これにより、使用者が左右一対の持ち手を把持して、持ち手と共に腕を振りながら歩行した際に、腕振り状態(持ち手状態)で歩行する歩行周期を正確に検出することができ、歩行状態が改善される質の高い歩行トレーニングを行うことができる。
【0028】
第7の発明によれば、一対のロック機構がロック状態に切り替え設定され、一対のシャフトがシャフト基準位置の近傍となるようにフレーム前後方向の前後規制範囲に保持されている場合には、駆動輪の進行速度の周期的な速度変化に基づいて使用者の歩行周期が取得される。そして、歩行周期が改善される目標歩行周期が設定されて、使用者に教示される。また、目標歩行周期に基づいて走行用駆動装置が駆動制御される。これにより、使用者が、目標歩行周期に基づいて駆動制御される歩行支援装置を使用して、ロックされた左右一対の持ち手を把持して押すモード(手押しモード)で、教示される歩行のタイミングに従って歩行することによって、歩行状態が改善される歩行トレーニングを行うことができ、歩行能力を改善することができる。
【0029】
第8の発明によれば、駆動輪の進行速度の周期的な速度変化に基づいて使用者の歩行周期が取得される。そして、歩行周期が改善される目標歩行周期が設定されて、使用者に教示される。また、目標歩行周期に基づいて走行用駆動装置が駆動制御される。これにより、使用者は、目標歩行周期に基づいて駆動制御される歩行支援装置を使用して、教示される目標歩行周期に歩行のタイミングを同期させて歩行することによって、歩行状態が改善される歩行トレーニングを行うことができ、歩行能力を改善することができる。
【0030】
第9の発明によれば、目標歩行周期が歩行周期よりも所定の第1割合だけ短くなるように設定され、駆動輪の進行速度が歩行周期に対応する進行速度よりも所定の第2割合だけ速くなる。これにより、使用者は、歩行支援装置を使用して、教示される歩行のタイミングに従って歩行することによって、歩行周期が所定の第1割合だけ短くなると共に、歩行速度が所定の第2割合だけ速くなるため、歩行率[歩/分]も歩幅[cm]も増える。つまり、使用者は、歩行支援装置を使用して、教示される歩行のタイミングに従って歩行することによって、歩行速度[m/分]が上がる歩行トレーニングを行うことができ、歩行能力を改善することができる。
【0031】
第10の発明によれば、目標歩行周期が歩行周期と同一周期になるように設定され、駆動輪の進行速度が歩行周期に対応する進行速度よりも所定の第2割合だけ速くなる。これにより、使用者は、歩行支援装置を使用して、教示される歩行のタイミングに従って歩行することによって、同じ歩行周期で、歩行速度が所定の第2割合だけ速くなるため、歩行率[歩/分]はそのままで、歩幅[cm]が増える。つまり、使用者は、歩行支援装置を使用して、教示される歩行のタイミングに従って歩行することによって、歩幅[cm]を少し広くして歩行速度[m/分]を上げる歩行トレーニングを行うことができ、歩行能力を改善することができる。
【0032】
第11の発明によれば、目標歩行周期が歩行周期よりも所定の第3割合だけ長くなるように設定され、駆動輪の進行速度が歩行周期に対応する進行速度と同一速度に設定される。これにより、使用者は、歩行支援装置を使用して、教示される歩行のタイミングに従って歩行することによって、歩行周期が所定の第3割合だけ長くなると共に、歩行速度[m/分]は同じになるため、歩行率[歩/分]が少し減少するが、歩幅[cm]が少し広くなる。つまり、使用者は、歩行支援装置を使用して、教示される歩行のタイミングに従って歩行することによって、歩幅[cm]が少し広がる歩行トレーニングを行うことができ、歩行能力を改善することができる。
【0033】
第12の発明によれば、走行距離検出装置によって検出された走行距離が、予め記憶されている目標教示走行距離に達したと判定された場合には、走行用駆動装置が停止されて、歩行支援装置が停止する。これにより、使用者は、歩行支援装置を使用して歩行トレーニングを行った距離が、目標教示走行距離に達したと容易に判断することができ、歩行トレーニングを継続するか否かを容易に判定することができる。また、歩行支援装置が停止するため、使用者は、歩行トレーニングの内容を容易に再検討することが可能となる。
【0034】
第13の発明によれば、使用者は、歩行支援装置を使用して、教示される歩行のタイミングに従って歩行した歩行トレーニング中の歩行状態と目標歩行状態とを比較した評価結果を取得することが可能となる。これにより、使用者は、歩行トレーニングの客観的な評価を行うことが可能となる。
【0035】
第14の発明によれば、歩行状態評価装置は、目標歩行周期に対する歩行周期の一致度合い、又は、一致度合いが所定値以上の達成回数、若しくは、達成回数の全評価回数に対する達成率に基づいて評価する。これにより、使用者は、歩行トレーニングの評価を迅速に取得して、容易に行うことが可能となる。
【0036】
第15の発明によれば、目標歩行状態設定装置は、歩行状態情報記憶装置に時系列的に記憶された歩行状態情報に基づいて目標歩行状態を設定する。これにより、過去の歩行状態情報を用いて目標歩行状態の最適化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】歩行支援装置の外観を説明する斜視図である。
図2】フレームを左右方向に折り畳む前の開いた状態を説明する図である。
図3】フレームを左右方向に折り畳んだ状態を説明する図である。
図4】筒状部、シャフト、持ち手の外観と構造の例を説明する斜視図である。
図5図4において筒状部をV方向から見た図である。
図6】ロック機構の構造の例を説明する図であり、シャフトを解除状態にした場合の例を説明する図である。
図7】ロック機構の構造の例を説明する図であり、シャフトをロック状態にした場合の例を説明する図である。
図8】シャフトがロック状態とされている場合であって、シャフト基準位置にシャフトが戻されている(保持されている)状態を説明する図である。
図9】シャフトがロック状態とされている場合であって、前後規制範囲内においてシャフト基準位置よりも前方へと、シャフト及び持ち手が使用者に押されている状態を説明する図である。
図10】シャフトがロック状態とされている場合であって、前後規制範囲内においてシャフト基準位置よりも後方へと、シャフト及び持ち手が使用者に引かれている状態を説明する図である。
図11】シャフトが解除状態とされている場合であって、前後規制範囲を超えてシャフト基準よりも大きく後方へと、シャフト及び持ち手が使用者に引かれている状態を説明する図である。
図12】操作パネルの外観の例を説明する図である。
図13】歩行支援装置の制御装置の入出力を説明するブロック図である。
図14】歩行支援装置の制御装置の処理手順(全体処理)を説明するフローチャートである。
図15図14に示す全体処理中の入力処理の処理手順を説明するフローチャートである。
図16図15に示す入力処理中の右(左)移動速度、移動方向、振幅算出処理の処理手順を説明するフローチャートである。
図17図14に示す全体処理中の歩行周期取得処理の処理手順を説明するフローチャートである。
図18図14に示す全体処理中の対地速度補正量算出処理の処理手順を説明するフローチャートである。
図19図14に示す全体処理中の中央位置速度補正量算出処理の処理手順を説明するフローチャートである。
図20図14に示す全体処理中の進行速度調整処理の処理手順を説明するフローチャートである。
図21図14に示す全体処理中のリズム音発生処理の処理手順を説明するフローチャートである。
図22】手押しモードにおける進行速度の一例を示す図である。
図23】歩行支援装置の平面図であり、持ち手前後位置、持ち手前後中央位置、仮想前後基準位置等を説明する図である。
図24】前後方向偏差・中央位置速度補正量特性の例を説明する図である。
図25】持ち手を把持して腕を前後に振りながら歩行する使用者と、歩行支援装置及び持ち手の位置、の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下に本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。なお、図中にX軸、Y軸、Z軸が記載されている場合、各軸は互いに直交している。そしてX軸方向は、歩行支援装置10から見て前方に向かう方向を示し、Y軸方向は、歩行支援装置10から見て左に向かう方向を示し、Z軸方向は、歩行支援装置10からみて鉛直上方に向かう方向を示している。以降では、歩行支援装置10に対して、X軸方向を“前”、X軸方向に対して反対方向を“後”とし、Y軸方向を“左”、Y軸方向に対して反対方向を“右”、Z軸方向を“上”、Z軸方向に対して反対方向を“下”とする。また以降では、フレームの前後方向を「フレーム前後方向」と記載する。
【0039】
●[歩行支援装置10の概略全体構成(図1図3)]
図1を用いて、歩行支援装置10の概略全体構成を説明する。歩行支援装置10は、フレーム50と、前輪60FL、60FRと、後輪60RL、60RRと、走行用駆動装置64L、64Rと、バッテリBと、制御装置40と、持ち手20L、20Rと、シャフト21L、21Rと、筒状部30L、30R、バッグ50K等を有している。
【0040】
フレーム50は、上下方向に延びて筒状部30L、30Rを支持する筒状部支持体51L、51Rと、フレーム50に対する前後方向であるフレーム前後方向に延びて車輪を支持する車輪支持体52L、52R等を有している。車輪支持体52Lは筒状部支持体51Lの下方に固定され、車輪支持体52Rは筒状部支持体51Rの下方に固定されている。また、図2は、フレーム50を左右方向に開いた状態を示し、図3は、フレーム50を左右方向に折り畳んだ状態を示している。なお、図2及び図3ではバッグ50Kを省略している。図2及び図3に示すように、筒状部支持体51Lと筒状部支持体51Rは、リンク部材54L、54R、55L、55Rにて接続されている。そして、図2及び図3に示すように、歩行支援装置10は、使用していない場合では、図3に示すように折り畳むことで、占有スペースを小さくできるので便利である。
【0041】
また、歩行支援装置10は、左右に折り畳まれた図3に示す状態から、左右に開いた図2に示す状態へと、容易に変更することができる。また、筒状部支持体51Lと筒状部支持体51Rの上方の側には、弾性変形可能な連結体53が設けられている。使用者は、フレーム50の開放されている側(後方)から筒状部30Lと筒状部30Rの間に入り、左右の手で持ち手20Lと持ち手20Rを把持して、歩行支援装置10を操作する。若しくは、使用者は、各持ち手20L、20Rの前端部から上方に突出するように設けられた各グリップ18L、18Rを左右の手で把持して、歩行支援装置10を操作することができる。
【0042】
筒状部支持体51Lの上端には筒状部30Lが保持され、筒状部支持体51Lの下方の側には、車輪支持体52Lが固定されている。なお、筒状部支持体51Lは上下方向に伸縮可能とされており、腕を振りながら歩行する使用者の手の高さに応じて、筒状部30Lの高さを調整可能とされている。また、車輪支持体52Lの前方の側には、旋回自在なキャスタ輪である前輪60FLが設けられており、車輪支持体52Lの後方の側には、走行用駆動装置64Lにて駆動される後輪60RLが設けられている。
【0043】
なお、筒状部支持体51R、筒状部30R、車輪支持体52R、前輪60FR、走行用駆動装置64R、後輪60RRも同様であるので、これらの説明は省略する。上記のように、フレーム50には複数の車輪(前輪60FL、60FR、後輪60RL、60RR)が設けられており、少なくとも1つの車輪(この場合、後輪60RL、後輪60RR)は、駆動輪である。
【0044】
走行用駆動装置64Lは、例えば、電動モータであり、バッテリBから供給される電力に基づいた制御装置40からの制御信号に基づいて、後輪60RLを回転駆動する。同様に、走行用駆動装置64Rは、例えば、電動モータであり、バッテリBから供給される電力に基づいた制御装置40からの制御信号に基づいて、後輪60RRを回転駆動する。
【0045】
また、走行用駆動装置64Lには、エンコーダ等の進行速度検出装置64LEが設けられており、走行用駆動装置64Lの回転に応じた検出信号を制御装置40に出力する。制御装置40は、進行速度検出装置64LEからの検出信号に基づいて、地面に対する歩行支援装置10の進行速度(後輪60RLによる進行速度)を検出することができる。同様に、走行用駆動装置64Rには、エンコーダ等の進行速度検出装置64REが設けられており、走行用駆動装置64Rの回転に応じた検出信号を制御装置40に出力する。制御装置40は、進行速度検出装置64REからの検出信号に基づいて、地面に対する歩行支援装置10の進行速度(後輪60RRによる進行速度)を検出することができる。
【0046】
筒状部30Lは、フレーム前後方向に延びる筒状の形状を有し、フレーム前後方向に延びるシャフト21Lを、フレーム前後方向に移動可能となるように収容している。同様に、筒状部30Rは、フレーム前後方向に延びる筒状の形状を有し、フレーム前後方向に延びるシャフト21Rを、フレーム前後方向に移動可能となるように収容している。筒状部30Lと筒状部30Rは、左右一対で設けられている。
【0047】
シャフト21Rは、フレーム前後方向に延びる筒状の形状を有して少なくとも一部が中空状とされ(図4参照)、筒状部30R内に収容されてフレーム前後方向に移動可能とされている。そして、シャフト21Rの後端部には、持ち手20Rが固定されている。同様に、シャフト21Lは、フレーム前後方向に延びる筒状の形状を有して少なくとも一部が中空状とされ、筒状部30L内に収容されてフレーム前後方向に移動可能とされている。そして、シャフト21Lの後端部には、持ち手20Lが固定されている。シャフト21Lとシャフト21Rは、左右一対で設けられている。
【0048】
持ち手20Lは、使用者が左手で把持する個所であり、シャフト21Lの後端部に固定され、使用者の歩行に伴う左腕の振りに合わせて、筒状部30Lに対して(すなわち、フレーム50に対して)シャフト21Lとともに、フレーム前後方向に移動可能とされている。なお、持ち手20Lには、後輪60RLの回転を減速させるブレーキレバーBKLが設けられている。また、持ち手20Lの前端部には、グリップ18Lが、使用者が左手で把持可能に上方に突出している。
【0049】
同様に、持ち手20Rは、使用者が右手で把持する個所であり、シャフト21Rの後端部に固定され、使用者の歩行に伴う右腕の振りに合わせて、筒状部30Rに対して(すなわち、フレーム50に対して)シャフト21Rとともに、フレーム前後方向に移動可能とされている。なお、持ち手20Rには、後輪60RRの回転を減速させるブレーキレバーBKLが設けられている。また、持ち手20Rの前端部には、グリップ18Rが、使用者が右手で把持可能に上方に突出している。持ち手20Lと持ち手20Rは、左右一対で設けられている。
【0050】
筒状部30L内には、持ち手20Lの状態を検出可能な持ち手状態検出装置21LSが設けられている。例えば、持ち手状態検出装置21LSはエンコーダであり、シャフト21Lのフレーム前後方向の動きに応じて回転し、筒状部30L内におけるシャフト21Lのフレーム前後方向の位置(すなわち、持ち手20Lのフレーム前後方向の位置)に応じた検出信号を制御装置40に出力する。制御装置40は、持ち手状態検出装置21LSからの検出信号に基づいて、フレーム50に対する(筒状部30Lに対する)持ち手20Lのフレーム前後方向の位置である(左)持ち手前後位置を求めることができる。
【0051】
同様に、筒状部30R内には、持ち手20Rの状態を検出可能な持ち手状態検出装置21RSが設けられている。例えば、持ち手状態検出装置21RSはエンコーダであり、シャフト21Rのフレーム前後方向の動きに応じて回転し、筒状部30R内におけるシャフト21Rのフレーム前後方向の位置(すなわち、持ち手20Rのフレーム前後方向の位置)に応じた検出信号を制御装置40に出力する。制御装置40は、持ち手状態検出装置21RSからの検出信号に基づいて、フレーム50に対する(筒状部30Rに対する)持ち手20Rのフレーム前後方向の位置である(右)持ち手前後位置を求めることができる。
【0052】
また、筒状部30R(30L)には、使用者によって操作されるロック操作部31R(31L)が設けられている。ロック操作部31R(31L)は、フレーム前後方向に移動可能とされたシャフト21R(21L)及び持ち手20R(20L)を、「ロック状態」と「解除状態」のいずれかの状態に設定する。「ロック状態」では、シャフト21R(21L)及び持ち手20R(20L)のフレーム前後方向の移動範囲は、シャフト基準位置の近傍の前後規制範囲W1内(図8図10参照)に規制される。「解除状態」では、シャフト21R(21L)及び持ち手20R(20L)の移動範囲は、前後規制範囲W1を超える範囲に許容される(図11参照)。
【0053】
操作パネル70は、例えば、筒状部30Rの上面に設けられており、図12に示すように、メインスイッチ72、バッテリ残量表示部73、腕振りモード指示部74、手押しモード指示部75、駆動トルク調整部76、各選択ボタン77A~77Dから構成される歩行モード指示部77等を有している。なお、操作パネル70の詳細については後述する。
【0054】
3軸加速度・角速度センサ50Sは、フレーム50に設けられており、X軸・Y軸・Z軸の3方向の軸のそれぞれに対して加速度を計測するとともに、3方向のそれぞれの軸を中心とした回転の角速度を計測し、計測結果に基づいた検出信号を制御装置40に出力する。例えば、3軸加速度・角速度センサ50Sは、歩行支援装置10が傾斜面を進行している場合、X軸・Y軸・Z軸のそれぞれに対する歩行支援装置10の傾斜角度に応じた検出信号を制御装置40に出力する。
【0055】
また、例えば、3軸加速度・角速度センサ50Sは、歩行支援装置10の車体に加えられた加速度(例えば、車体への衝撃)を検出し、検出した加速度に応じた検出信号を制御装置40に出力する。また、例えば、3軸加速度・角速度センサ50Sは、歩行支援装置10の車体のピッチ角速度(Y軸回りの角速度)、ヨー角速度(Z軸回りの角速度)、ロール角速度(X軸回りの角速度)を検出し、検出した角速度に応じた検出信号を制御装置40に出力する。制御装置40は、3軸加速度・角速度センサ50Sからの検出信号に基づいて、歩行支援装置10のX軸・Y軸・Z軸に対するそれぞれの傾斜角度、加速度(衝撃)の大きさ、ピッチ角速度、ヨー角速度、ロール角速度を検出することができる。
【0056】
●[筒状部30Rとシャフト21Rの詳細構造(図4図5)]
次に、図4を用いて、筒状部及びシャフトの詳細構造について説明する。なお、筒状部及びシャフト(及び持ち手)は、左右一対であるので、右側の筒状部30R、シャフト21R、蓋部34R、持ち手20Rを例として説明し、左側の筒状部30L、シャフト21L、蓋部、持ち手20L(図1参照)については説明を省略する。図4は、筒状部30R、シャフト21R、蓋部34R、持ち手20Rの斜視図を示し、図5は、図4において筒状部30RをV方向から見た図である。なお、図4及び図5では、ロック操作部31Rに連動するロック機構(図6図7参照)については記載を省略している。
【0057】
筒状部30Rは、フレーム前後方向に延びる筒状の形状を有し、内部には、案内レール32R、案内ローラ33R、持ち手状態検出装置21RS、弾性ユニット35R4等が設けられている。また、筒状部30Rの上面には、ロック操作部31R、操作パネル70等が設けられている。シャフト21Rは、持ち手嵌合孔21R1、ロック孔21R2、中空部21R3、被案内部材24R、シャフト側弾性部材26R、抜け防止部材25R等を有している。蓋部34Rには、シャフト21Rが挿通される挿通孔34R1が形成されている。持ち手20Rは、シャフト嵌合部20R1、グリップ18R、ブレーキレバーBKL等を有している。
【0058】
なお、図8に示すように、シャフト側弾性部材26R(シャフト位置復元装置に相当)における一方の側(X軸方向に向かう側の先端)は、シャフト21Rが筒状部30R内に挿通された後、筒状部30Rに固定される。また、図8に示すように、シャフト側弾性部材26Rにおける他方の側(X軸方向とは反対方向に向かう側の先端)は、シャフト21Rの中空部21R3内に挿通されてシャフト21Rに固定されている。
【0059】
また、図8に示すように、弾性ユニット35R4は、筒状部30R内の前端(X軸方向に向かう側の先端)に固定されている。そして弾性ユニット35R4は、筒状部側弾性部材35R1(シャフト位置復元装置に相当)、カラー35R2、ダンパ35R3等を有している。図8に示すように、筒状部側弾性部材35R1における一方の側(X軸方向に向かう側の先端)は、弾性ユニット35R4に固定されている。
【0060】
また、図8に示すように、筒状部側弾性部材35R1における他方の側(X軸方向とは反対方向に向かう側の先端)は、カラー35R2における前方の側の面に固定されている。また、カラー35R2における後方の側の面には、シャフト21Rの先端が衝突した際の衝撃音等を吸収するダンパ35R3が取り付けられている。そして、図8に示すシャフト基準位置では、ダンパ35R3における後方の側には、シャフト21Rの先端が接触している。
【0061】
図4において、持ち手20Rのシャフト嵌合部20R1は、蓋部34Rの挿通孔34R1に挿通されて、シャフト21Rの持ち手嵌合孔21R1に嵌め込まれ、持ち手20Rとシャフト21Rとが一体化される。そして、シャフト21RはX軸方向回りに右回りに90°旋回されて筒状部30Rの上下の案内ローラ33Rの間に差し込まれ、X軸方向に沿って押し込まれていく。シャフト21Rの先端の抜け防止部材25Rが抜け防止パネル36Rを通過して案内レール32Rに達する前に、シャフト21RはX軸方向回りに左回りに90°旋回される。
【0062】
そして、シャフト21Rが更にX軸方向に沿って押し込まれていくと、シャフト21Rの被案内部材24Rが案内レール32Rの凹状部に差し込まれ、シャフト21Rが案内レール32Rに案内される。そしてシャフト21Rの前方の側の先端がダンパ35R3に接触するまで差し込まれ、シャフト側弾性部材26Rの前方の側の先端が、作業者によって筒状部30Rに固定される。なお、案内レール32Rと被案内部材24Rは、筒状部30Rの内部において、フレーム前後方向に延びるシャフト中心軸線21RJ(図4参照)回りにシャフト21Rが回転することを防止する回転防止構造に相当する。
【0063】
●[ロック機構の構造(図6図7)]
次に、図6及び図7を用いて、ロック機構の構造について説明する。図6及び図7に示すように、ロック機構は、ロック操作部31R、スライダ31R1、揺動部材31R2、ロック突起31R3、弾性部材31R4等を有している。図6はロック機構を「解除状態」とした場合の例を示し、図7はロック機構を「ロック状態」とした場合の例を示している。ロック機構も左右一対であるので、筒状部30R、シャフト21Rの側のロック機構を説明し、筒状部30L、シャフト21Lのロック機構については説明を省略する。
【0064】
なお、図6及び図7は、使用者が持ち手20R(図1参照)を把持していない状態であって、シャフト21Rがシャフト基準位置に保持されている状態(図8参照)を示しており、ロック突起31R3がロック孔21R2と対向している状態を示している。またロック孔21R2は、ゴミ等が堆積しないように下方に向かって開口していると、より好ましい。
【0065】
ロック操作部31Rは、筒状部30Rに形成された孔部30R1に取り付けられ、孔部30R1に沿ってフレーム前後方向(X軸方向)にスライド可能とされている。使用者がロック操作部31RをX軸方向にスライドさせた図6に示す状態が「解除状態」であり、使用者がロック操作部31RをX軸方向とは反対の方向にスライドさせた図7に示す状態が「ロック状態」である。
【0066】
スライダ31R1は、案内部材31R5によって上下方向に移動可能とされており、下端部には、揺動部材31R2の一方端の側及び弾性部材31R4から上方に向かう付勢力が印加されている。図6に示す「解除状態」では、スライダ31R1は弾性部材31R4の一方端の側及び揺動部材31R2から上方に向かう付勢力を受けて上方に移動する。図7に示す「ロック状態」では、スライダ31R1はロック操作部31Rによって下方に押し下げられ、揺動部材31R2の一方端の側を下方に押し下げる。
【0067】
揺動部材31R2は、一方端の側がスライダ31R1の下端部に接触しているとともに弾性部材31R4から上方に向かう付勢力を受け、支点31R7回りに揺動可能とされている。また、揺動部材31R2の他方端の側には、ロック突起31R3が接続されている。図6に示す「解除状態」では、スライダ31R1が上方に移動しているので、揺動部材31R2の一方端の側は弾性部材31R4によって上方に押し上げられ、揺動部材31R2の他方端の側は下方に移動している。図7に示す「ロック状態」では、スライダ31R1が下方に押し下げされているので、揺動部材31R2の一方端の側はスライダ31R1によって押し下げられ、揺動部材31R2の他方端の側は上方に移動している。
【0068】
ロック突起31R3は、案内部材31R6によって上下方向に移動可能とされており、下端部の側が揺動部材31R2の他方端の側に接続されている。図6に示す「解除状態」では、揺動部材31R2の他方端の側が下方に移動しているので、ロック突起31R3はシャフト21Rのロック孔21R2から離間している。図7に示す「ロック状態」では、揺動部材31R2の他方端の側が上方に移動しているので、ロック突起31R3はシャフト21Rのロック孔21R2内に差し込まれている。
【0069】
●[ロック状態におけるシャフト21Rの可動範囲(図8図10)と、解除状態におけるシャフト21Rの可動範囲(図11)]
図8は、使用者が持ち手20Rを把持していない状態、かつ、ロック機構を「ロック状態」とした場合の例を示しており、筒状部30Rに対するフレーム前後方向(X軸方向)におけるシャフト21R及び持ち手20Rの位置が、シャフト基準位置に保持されている状態の例を示している。なお、図8図11では、ロック機構の詳細を省略し、ロック突起31R3にて「ロック状態」と「解除状態」を示している。
【0070】
持ち手20Rに前後方向(X軸方向に平行な方向)の力が付与されていない場合、シャフト21R及び持ち手20Rは、ロック機構が「ロック状態」または「解除状態」のいずれの状態であっても、図8に示すシャフト基準位置に保持される。この場合、シャフト側弾性部材26R(シャフト位置復元装置に相当)及び筒状部側弾性部材35R1(シャフト位置復元装置に相当)が、シャフト21R及び持ち手20Rを、図8に示すシャフト基準位置に保持する。
【0071】
図8に示すシャフト基準位置では、シャフト側弾性部材26Rと筒状部側弾性部材35R1が共に自由長(力が付与されていない場合の長さ)、あるいは、シャフト側弾性部材26Rがシャフト21Rを前方に引っ張る力と筒状部側弾性部材35R1がシャフト21Rを後方に押す力とが釣り合うように設定されている。
【0072】
このシャフト基準位置では、シャフト21Rに設けられたロック孔21R2の前後方向の長さ範囲である前後規制範囲W1内のほぼ中央位置にロック突起31R3が位置するように、シャフト側弾性部材26Rの長さと、筒状部側弾性部材35R1の長さとが調整されている。なお、シャフト側弾性部材26Rのバネ定数K26よりも、筒状部側弾性部材35R1のバネ定数K35のほうが大きくなるようにバネ定数が設定されている。例えば、シャフト基準位置は、図8に示すように、フレーム前後方向のシャフト21Rの可動範囲内におけるほぼ前方端に近い位置とされている。
【0073】
図9に示すように、図8に示す「ロック状態」から、使用者が持ち手20Rを把持して、力Ffにて持ち手20Rを前方(X軸方向)に押すと、ロック突起31R3がロック孔21R2の後方縁部に突き当たるまで、シャフト21R及び持ち手20Rは前方に移動可能である。そして、図9に示す状態から使用者が持ち手20Rから手を離すと、筒状部側弾性部材35R1の弾性力によって、シャフト21R及び持ち手20Rは、図8に示すシャフト基準位置に戻される。
【0074】
図10に示すように、図8に示す「ロック状態」から、使用者が持ち手20Rを把持して、力Frにて持ち手20Rを後方(X軸方向とは反対の方向)に引くと、ロック突起31R3がロック孔21R2の前方縁部に突き当たるまで、シャフト21R及び持ち手20Rは後方に移動可能である。そして、図10に示す状態から使用者が持ち手20Rから手を離すと、シャフト側弾性部材26Rの弾性力によって、シャフト21R及び持ち手20Rは、図8に示すシャフト基準位置に戻される。
【0075】
また、図11に示すように、「解除状態」では、シャフト21Rのフレーム前後方向の移動範囲が前後規制範囲W1内に規制されない。従って、使用者が持ち手20Rを把持して、力Frにて持ち手20Rを後方に引いた場合、シャフト21Rの先端の抜け防止部材25Rが抜け防止パネル36Rに干渉するまで後方に引くことができる。すなわち、使用者は、図11に示す「解除状態」にした場合、腕を大きく振りながら歩行支援装置を用いて歩行することができる。この抜け防止部材25Rと抜け防止パネル36Rが、シャフト21Rが筒状部30Rから抜けることを防止する抜け防止構造に相当する。
【0076】
このように、シャフト21R(シャフト21L)には、自身を収容している筒状部30R(筒状部30L)に対するフレーム前後方向における基準位置であるシャフト基準位置が設定されている。図8に示すように、使用者が持ち手20Rを把持していない場合、シャフト21R及び持ち手20Rは、シャフト位置復元装置(シャフト側弾性部材26R、筒状部側弾性部材35R1)によってシャフト基準位置に保持される。そして、図8に示すように、シャフト21R及び持ち手20Rがシャフト基準位置にある場合、ロック孔21R2のフレーム前後方向におけるほぼ中央位置が、ロック突起31R3と対向する。そして「ロック状態」では、シャフト21Rはシャフト基準位置の近傍となるようにフレーム前後方向の前後規制範囲W1内に保持される。
【0077】
なお、図8図10では、わかりやすくするために、ロック突起31R3からロック孔21R2の前方縁部または後方縁部までの距離を比較的大きくしている。しかし、ロック突起31R3からロック孔21R2の前方縁部または後方縁部までの距離は、1[mm]程度で充分である。また「解除状態」では、使用者はシャフト21Rを、図8に示すシャフト基準位置から後方へと、例えば、150[mm]程度まで引くことができる。
【0078】
●[操作パネル70の外観(図12)]
次に、図12を用いて操作パネル70について説明する。本実施の形態に示す例では、操作パネル70は、筒状部30Rの上面に設けられている。そして、図12に示すように、操作パネル70は、メインスイッチ72、バッテリ残量表示部73、腕振りモード指示部74、手押しモード指示部75、駆動トルク調整部76、各選択ボタン77A~77Dから構成される歩行モード指示部77等を有している。
【0079】
メインスイッチ72は、歩行支援装置10の起動を指示するスイッチであり、使用者がオンにするとバッテリBから制御装置40と走行用駆動装置64R、64Lへ電力を供給し、歩行支援装置10の操作及び動作を可能にする。また、バッテリ残量表示部73には、バッテリBの残量が表示されている。
【0080】
駆動トルク調整部76は、歩行支援装置10が進行する際の走行用駆動装置64L、64Rの駆動トルクの強弱を、使用者が調整するための入力部である。例えば、上り傾斜面で歩行支援装置10を使用する場合、使用者は、駆動トルク調整部76から駆動トルクを増量する指示を入力する。
【0081】
また、歩行支援装置10には、腕を振りながら歩行する「腕振り歩行」を支援する「腕振りモード」と、腕を振らずに手押し車状態の歩行(非腕振り歩行)を支援する「手押しモード」と、の2つの動作モードが用意されている。使用者は、「腕振り歩行」を所望する場合、腕振りモード指示部74を操作して動作モードを「腕振りモード」に設定し、「解除状態」となるようにロック操作部31L、31Rを操作し、左右の持ち手20L、20R、又は、各グリップ18L、18Rを把持して腕を振りながら歩行する「腕振り歩行」を開始する。
【0082】
また、使用者は、「非腕振り歩行」を所望する場合、手押しモード指示部75を操作して動作モードを「手押しモード」に設定し、「ロック状態」となるようにロック操作部31L、31Rを操作し、左右の持ち手20L、20R、又は、各グリップ18L、18Rを把持して腕を振らずに歩行する「非腕振り歩行」を開始する。
【0083】
また、歩行支援装置10には、使用者の目標歩行周期を、例えば、メトロノームのテンポ音等で教示しながら歩行トレーニングを行う3種類の「歩行モード1」、「歩行モード2」、「歩行モード3」と、使用者の目標歩行周期を教示しない通常の歩行支援を行う「通常モード」と、の4つの歩行支援モードが用意されている。「歩行モード1」は、歩行率[歩/分]と歩幅[cm]が共に増えて、歩行速度[m/分]が上がる歩行トレーニングである。「歩行モード2」は、歩行率[歩/分]はそのままで、歩幅[cm]を少し広くして歩行速度[m/分]を上げる歩行トレーニングである。「歩行モード3」は、歩行速度[m/分]は同じで、歩幅[cm]が少し広がる歩行トレーニングである。
【0084】
使用者は、「通常モード」の歩行支援を所望する場合には、歩行モード指示部77の選択ボタン77Aを操作して「通常モード」に設定する。また、使用者は、目標歩行周期を、例えば、メトロノームのテンポ音等で教示しながら歩行トレーニングを行う「歩行モード1」の歩行支援を所望する場合には、歩行モード指示部77の選択ボタン77Bを操作して「歩行モード1」に設定する。
【0085】
また、使用者は、目標歩行周期を、例えば、メトロノームのテンポ音等で教示しながら歩行トレーニングを行う「歩行モード2」の歩行支援を所望する場合には、歩行モード指示部77の選択ボタン77Cを操作して「歩行モード2」に設定する。また、使用者は、目標歩行周期を、例えば、メトロノームのテンポ音等で教示しながら歩行トレーニングを行う「歩行モード3」の歩行支援を所望する場合には、歩行モード指示部77の選択ボタン77Dを操作して「歩行モード3」に設定する。尚、歩行モード1~歩行モード3の詳細については、後述する(図20図21参照)。
【0086】
●[制御装置40の入出力(図13)]
図13は、制御装置40の入出力を示すブロック図である。制御装置40は、図示省略したCPU等の制御装置と、記憶装置44、タイマ45等を有している。また、制御装置40には、進行速度検出装置64LE、64REからの検出信号、持ち手状態検出装置21RS、21LSからの検出信号、3軸加速度・角速度センサ50Sからの検出信号が入力されている。
【0087】
また、制御装置40には、操作パネル70から、メインスイッチ72、腕振りモード指示部74、手押しモード指示部75、駆動トルク調整部76、歩行モード指示部77の各選択ボタン77A~77Dの操作状態が入力されている。また、制御装置40は、操作パネル70のバッテリ残量表示部73に表示するためのバッテリ残量情報を操作パネル70に出力し、走行用駆動装置64L、64Rに制御信号を出力する。また、制御装置40には、スピーカ66が電気的に接続され、周期音(例えば、一定周期のメトロノームのテンポ音、楽器のリズム音、掛け声等)を出力する。
【0088】
なお、制御装置40は、装置対地速度算出部40A、持ち手前後位置算出部40B、持ち手移動速度算出部40C、持ち手対地速度算出部40D、対地速度補正量算出部40E、進行速度調整部40F、持ち手前後中央位置算出部40G、中央位置速度補正量算出部40H等を有しているが、これらについては後述する。
【0089】
●[制御装置40の処理手順(図14図21)]
図14は、制御装置40の処理手順における全体処理を示している。使用者がメインスイッチ72をONにすると、所定時間間隔(例えば、数[ms]間隔)で、図14に示す処理が起動される。制御装置40は、図14に示す処理が起動されると、ステップS010へと処理を進める。なお以下では、使用者が歩行支援装置10とともに前進するように歩行する場合の例を説明する。
【0090】
ステップS010にて制御装置40は、SB100(入力処理)を実行してステップS020に処理を進める。なお、SB100(入力処理)の詳細については後述する。続いて、ステップS020にて制御装置40は、SB200(歩行周期取得処理)を実行してステップS040に処理を進める。なお、SB200(歩行周期取得処理)の詳細については後述する。
【0091】
ステップS040にて制御装置40は、SB400(対地速度補正量算出処理)を実行してステップS050に処理を進める。なお、SB400(対地速度補正量算出処理)の詳細については後述する。
【0092】
ステップS050にて制御装置40は、SB500(中央位置速度補正量算出処理)を実行してステップS060に処理を進める。なお、SB500(中央位置速度補正量算出処理)の詳細については後述する。
【0093】
ステップS060にて制御装置40は、SB600(進行速度調整処理)を実行してステップS070に処理を進める。なお、SB600(進行速度調整処理)の詳細については後述する。続いて、ステップS070にて制御装置40は、SB700(歩行用リズム音発生処理)を実行して処理を終了する(リターンする)。なお、SB700(歩行用リズム音発生処理)の詳細については後述する。
【0094】
●[SB100:入力処理の詳細(図15)]
次に、図15を用いて、SB100(入力処理)の詳細について説明する。図14に示すステップS010にてSB100を実行する際、制御装置40は、図15に示すステップSB010へ処理を進める。
【0095】
ステップSB010にて制御装置40は、記憶装置44に記憶しているモード切替、目標トルク、歩行モード、右持ち手前後位置、右進行速度、左持ち手前後位置、左進行速度、車体傾斜、ピッチ角速度、ヨー角速度、ロール角速度、を更新してステップSB020に処理を進める。
【0096】
具体的には、制御装置40は、腕振りモード指示部74及び手押しモード指示部75(図12参照)からの入力情報に基づいて、モード切替に、「腕振りモード」、「手押しモード」のいずれかを記憶する。また、制御装置40は、駆動トルク調整部76(図12参照)からの入力情報に基づいた目標トルクを記憶する。また、制御装置40は、歩行モード指示部77の各選択ボタン77A~77D(図12参照)からの入力情報に基づいて、歩行モードに、「通常モード」、「歩行モード1」、「歩行モード2」、「歩行モード3」のいずれかを記憶する。
【0097】
また、制御装置40は、持ち手状態検出装置21RS(図1参照)からの検出信号に基づいて求めた、フレーム50に対する持ち手20Rの位置(フレーム前後方向の位置)を右持ち手前後位置に記憶する。また、制御装置40は、(右)走行用駆動装置64Rの(右)進行速度検出装置64REからの検出信号に基づいて、(右)走行用駆動装置64Rの回転数を検出して後輪60RRの回転数から後輪60RRによる進行速度を検出して右進行速度に記憶する(図1参照)。
【0098】
同様に、制御装置40は、左持ち手前後位置、左進行速度、を記憶する。また、制御装置40は、3軸加速度・角速度センサ50S(図1参照)からの検出信号に基づいて求めた歩行支援装置10の車体の傾斜角度や傾斜方向等の傾斜情報を車体傾斜に記憶する。また、制御装置40は、3軸加速度・角速度センサ50S(図1参照)からの検出信号に基づいて求めた歩行支援装置10のY軸回りの角速度をピッチ角速度に記憶し、Z軸回りの角速度をヨー角速度に記憶し、X軸回りの角速度をロール角速度に記憶する。
【0099】
ステップSB010の処理を実行している制御装置40は、それぞれの持ち手状態検出装置21RS、21LSからの検出信号に基づいて、フレーム50(歩行支援装置10)に対するフレーム前後方向のそれぞれの持ち手20R、20Lの位置であるそれぞれの持ち手前後位置(右持ち手前後位置と左持ち手前後位置)を算出する、持ち手前後位置算出部40B(図13参照)に相当する。
【0100】
ステップSB020にて制御装置40は、SBA00(右(左)移動速度、移動方向、振幅算出処理)を実行してステップSB030に処理を進める。なお、SBA00(右(左)移動速度、移動方向、振幅算出処理)の詳細については後述する(図16参照)。
【0101】
ステップSB030にて制御装置40は、ステップSB010にて記憶した右進行速度及び左進行速度に基づいて、歩行支援装置の進行速度を求めて記憶し、ステップSB035に処理を進める。例えば、制御装置40は、進行速度=(右進行速度+左進行速度)/2にて、進行速度を求め、記憶装置44に時系列的に記憶する。
【0102】
ステップSB030の処理を実行している制御装置40は、進行速度検出装置からの検出信号に基づいて、地面に対する歩行支援装置10の進行速度を算出する、装置対地速度算出部40A(図13参照)に相当する。
【0103】
ステップSB035にて制御装置40は、記憶装置44から前回処理時の進行速度と今回処理時の進行速度とを読み出す。そして、制御装置40は、加速度=(今回処理時の進行速度(今回の進行速度)-前回処理時の進行速度(前回の進行速度))/時間にて、加速度を求め、記憶装置44に時系列的に記憶した後、ステップS050に処理を進める。なお、この場合の「時間」は、図14の処理を起動する間隔の時間である(例えば、10[ms]間隔で起動する場合は10[ms]である。)。
【0104】
ステップSB050にて制御装置40は、モード切替が「手押しモード」であるか否かを判定し、手押しモードである場合(SB050:YES)には、ステップSB070Aに処理を進め、そうでない場合(SB050:NO)はステップSB070Bに処理を進める。
【0105】
ステップSB070Aに処理を進めた場合、制御装置40は、「動作モード」に手押しモードを記憶して処理を終了する(リターンする)。
【0106】
一方、ステップSB070Bに処理を進めた場合、制御装置40は、「動作モード」に腕振りモードを記憶して処理を終了する(リターンする)。
【0107】
●[SBA00:右(左)移動速度、移動方向、振幅算出処理の詳細(図16)]
次に、図16を用いて、SBA00(右(左)移動速度、移動方向、振幅算出処理)の詳細について説明する。図15に示すステップSB020にてSBA00を実行する際、制御装置40は、図16に示すステップSBA05へ処理を進める。
【0108】
ステップSBA05にて制御装置40は、「動作モード」が腕振りモードであるか否かを判定し、「動作モード」が腕振りモードである場合(SBA05:YES)は、ステップSBA10に処理を進め、「動作モード」が腕振りモードでない場合(SBA05:NO)は、処理を終了する(リターンする)。
【0109】
ステップSBA10に処理を進めた場合、制御装置40は、右持ち手移動速度に、「(今回処理時の右持ち手前後位置(今回右持ち手前後位置)-前回処理時の右持ち手前後位置(前回右持ち手前後位置))/時間」にて求めた速度を記憶して、ステップSBA15に処理を進める。なお、この場合の「時間」は、図14の処理を起動する間隔の時間である(例えば10[ms]間隔で起動する場合は10[ms]である)。また、今回右持ち手前後位置が前回右持ち手前後位置よりも前方である場合では右持ち手移動速度は「正」の速度となり、今回右持ち手前後位置が前回右持ち手前後位置よりも後方である場合では右持ち手移動速度は「負」の速度となる。
【0110】
ステップSBA15にて制御装置40は、前回処理時の右持ち手移動速度(前回右持ち手移動速度)=正(0より大きい)、かつ、今回処理時の右持ち手移動速度(今回右持ち手移動速度)=負(0以下)であるか否かを判定する。そして、制御装置40は、満足する場合(SBA15:YES)は、ステップSBA25Aに処理を進め、満足しない場合(SBA15:NO)は、ステップSBA20に処理を進める。
【0111】
ステップSBA25Aに処理を進めた場合、制御装置40は、今回右持ち手前後位置を「右前端位置」に記憶して、後述のステップSBA30に処理を進める。
【0112】
ステップSBA20に処理を進めた場合、制御装置40は、前回処理時の右持ち手移動速度(前回右持ち手移動速度)=負(0未満)、かつ、今回処理時の右持ち手移動速度(今回右持ち手移動速度)=正(0以上)であるか否かを判定する。そして制御装置40は、満足する場合(SBA20:YES)は、ステップSBA25Bに処理を進め、満足しない場合(SBA20:NO)は、ステップSBA27に処理を進める。
【0113】
ステップSBA25Bに処理を進めた場合、制御装置40は、今回右持ち手前後位置を「右後端位置」に記憶してステップSBA26に処理を進める。ステップSBA26に処理を進めた場合、制御装置40は、記憶装置44から「右後端位置フラグ」を読み出し、「ON」に設定して再度、記憶装置44に記憶した後、ステップSBA30に処理を進める。尚、制御装置40は、起動時に右後端位置フラグを「OFF」に設定して記憶装置44に記憶する。そして、ステップSBA30に処理を進めた場合、制御装置40は、右前端位置-右後端位置(右前端位置>右後端位置)にて求めた長さを「右振幅」に記憶した後、ステップSBB10に処理を進める。
【0114】
ステップSBA27に処理を進めた場合、制御装置40は、記憶装置44から「右後端位置フラグ」を読み出し、「OFF」に設定して再度、記憶装置44に記憶した後、ステップSBB10に処理を進める。
【0115】
ステップSBB10~SBB25B、及び、SBB30の処理は、左の持ち手20Lの左移動速度、左前端位置、左後端位置、左振幅を求める処理であり、右の持ち手20Rの右移動速度、右前端位置、右後端位置、右振幅を求めるステップSBA10~SBA25B、及び、SBA30と同様であるので説明を省略する。
【0116】
ステップSBA10、SBB10の処理を実行している制御装置40は、それぞれの持ち手前後位置(右持ち手前後位置と左持ち手前後位置)に基づいて、歩行支援装置10に対するそれぞれの持ち手の移動速度であるそれぞれの持ち手移動速度(右持ち手移動速度と左持ち手移動速度)を算出する、持ち手移動速度算出部40C(図13参照)に相当する。
【0117】
●[SB200:歩行周期取得処理の詳細(図17)]
次に、図17を用いて、SB200(歩行周期取得処理)の詳細について説明する。図14に示すステップS020にてSB200を実行する際、制御装置40は、図17に示すステップSB205へ処理を進める。
【0118】
ステップSB205にて制御装置40は、記憶装置44から歩行モードを読み出し、歩行モードが「通常モード」であるか否かを判定する。そして、歩行モードが「通常モード」であると判定した場合には(SB205:YES)、制御装置40は、当該処理を終了する(リターンする)。一方、歩行モードが「通常モード」でないと判定した場合には(SB205:NO)、制御装置40は、ステップSB206に処理を進める。
【0119】
ステップSB206にて制御装置40は、歩行周期TBを取得した旨を表す「歩行周期フラグ」を記憶装置44から読み出し、「ON」に設定されているか否かを判定する。そして、歩行周期フラグが「ON」に設定されていると判定した場合には(SB206:YES)、制御装置40は、歩行周期TBを取得したと判定して、当該処理を終了する(リターンする)。一方、歩行周期フラグが「OFF」に設定されていると判定した場合には(SB206:NO)、制御装置40は、ステップSB210に処理を進める。
【0120】
ステップSB210にて制御装置40は、記憶装置44から動作モードを読み出し、動作モードが腕振りモードであるか否かを判定する。そして、動作モードが腕振りモードであると判定した場合には(SB210:YES)、制御装置40は、ステップSB211に処理を進める。
【0121】
ステップSB211に処理を進めた場合、制御装置40は、右後端位置フラグを記憶装置44から読み出し、「ON」に設定されているか否かを判定する。そして、右後端位置フラグが「OFF」に設定されていると判定した場合には(SB211:NO)、制御装置40は、当該処理を終了する(リターンする)。一方、右後端位置フラグが「ON」に設定されていると判定した場合には(SB211:YES)、制御装置40は、ステップSB212に処理を進める。ステップSB212にて制御装置40は、タイマ45から時刻T1を読み出し、記憶装置44に時系列的に記憶した後、ステップSB213に処理を進める。これにより、左足の踵が地面に着いた時刻T1が記憶される。
【0122】
ステップSB213にて制御装置40は、記憶装置44から前回処理時の時刻T1と今回処理時の時刻T1を読み出す。そして、制御装置40は、計測歩行周期TW1=今回処理時の時刻T1(今回の時刻T1)-前回処理時の時刻T1(前回の時刻T1)にて、計測歩行周期TW1[秒/歩]を求め、記憶装置44に記憶した後、ステップSB215に処理を進める。これにより、制御装置40は、前回の左足の踵が地面に着いてから今回の左足の踵が地面に着くまでの時間、つまり、計測歩行周期TW1[秒/歩]を算出して、記憶装置44に記憶する。
【0123】
ステップSB215にて制御装置40は、歩行周期を計測した回数Nを記憶装置44から読み出し、回数Nに「1」加算して、再度、記憶装置44に記憶した後、ステップSB216の処理に進む。尚、制御装置40は、起動時に、回数Nに「0」を代入して記憶装置44に記憶する。
【0124】
ステップSB216にて制御装置40は、記憶装置44から歩行周期を計測した回数Nを読み出し、回数Nが「11」以上であるか否かを判定する。そして、回数Nが、「11」未満であると判定した場合には(SB216:NO)、制御装置40は、ステップSB217の処理に進む。ステップSB217にて制御装置40は、記憶装置44から合計歩行周期TAを読み出し、この合計歩行周期TAに、今回計測した計測歩行周期TW1を加算して、再度、記憶装置44に記憶した後、当該処理を終了する(リターンする)。尚、制御装置40は、起動時に、合計歩行周期TAに「0」を代入して記憶装置44に記憶する。
【0125】
一方、上記ステップSB216で回数Nが、「11」以上であると判定した場合には(SB216:YES)、制御装置40は、ステップSB218の処理に進む。ステップSB218にて制御装置40は、記憶装置44から歩行周期を計測した回数Nを読み出し、この回数Nに「0」を代入して再度、記憶装置44に記憶した後、ステップSB219の処理に進む。
【0126】
ステップSB219にて制御装置40は、記憶装置44から10歩行周期分の合計歩行周期TAを読み出し、歩行周期TB=(合計歩行周期TA)/10にて、歩行周期TBを求め、記憶装置44に記憶した後、ステップSB220の処理に進む。尚、ステップSB219の処理を実行している制御装置40は、歩行周期取得部の一例として機能する。また、5個~10個の任意の個数の計測歩行周期TW1を合計した合計歩行周期TAの平均値を歩行周期TBとしてもよい。また、走行開始から5秒~10秒経過するまでに計測して計測歩行周期TW1を合計した合計歩行周期TAの平均値を歩行周期TBとしてもよい。また、走行開始から8m~10mの走行距離に達するまでに計測した計測歩行周期TW1を合計した合計歩行周期TAの平均値を歩行周期TBとしてもよい。
【0127】
ステップSB220にて制御装置40は、記憶装置44から合計歩行周期TAを読み出し、この合計歩行周期TAに「0」を代入して再度、記憶装置44に記憶した後、ステップSB221の処理に進む。ステップSB221にて制御装置40は、記憶装置44から歩行周期TBを取得した旨を表す歩行周期フラグを読み出し、この歩行周期フラグを「ON」に設定して、再度、記憶装置44に記憶した後、当該処理を終了する(リターンする)。尚、制御装置40は、起動時に、歩行周期フラグを「OFF」に設定して、記憶装置44に記憶する。
【0128】
他方、上記ステップSB210で、動作モードが腕振りモードでないと判定した場合、つまり、動作モードが手押しモードであると判定した場合には(SB210:NO)、制御装置40は、ステップSB230に処理を進める。ステップSB230に処理を進めた場合、制御装置40は、前回処理時の加速度と、今回処理時の加速度とを、記憶装置44から読み出し、前回処理時の加速度(前回加速度)=負(0未満)、かつ、今回処理時の加速度(今回加速度)=正(0以上)であるか否かを判定する。
【0129】
ここで、手押しモード指示部75を操作すると共に、ロック操作部31L、31Rをロック状態となるように操作して、左右の持ち手20L、20R、又は、各グリップ18L、18Rを把持して腕を振らずに歩行する「手押しモード」に設定した場合の、歩行支援装置10の進行速度の変化について図22に基づいて説明する。図22は、歩行支援装置10の手押しモードにおける進行速度(m/min)の一例を示す図である。
【0130】
図22に示すように、歩行支援装置10の手押しモードにおける進行速度[m/min]の一例である進行速度曲線81は、例えば、使用者の左足の踵が接地してから、右足が使用者の前にでるまで増速している。そして、進行速度曲線81は、右足が使用者の前にでたときから、右足の踵が接地するまで、減速している。続いて、進行速度曲線81は、使用者の右足の踵が接地してから、左足が使用者の前にでるまで、再度、増速している。そして、進行速度曲線81は、左足が使用者の前にでたときから、左足の踵が、再度、接地するまで、減速している。
【0131】
従って、使用者の左足の踵が接地したとき、又は、使用者の右足の踵が接地したときに、進行速度曲線81が減速状態から増速状態に変化する。つまり、歩行支援装置10の加速度が負(0未満)から正(0以上)に変化して、進行速度曲線81の各谷81Aを構成した時点において、使用者の左足の踵、又は、使用者の右足の踵が接地している。これより、図22に示すように、進行速度曲線81の3つの谷81Aが発生する間に経過する時間[sec]が、使用者の1歩行周期TW1(=計測歩行周期TW1)[秒/歩]であると考えられる。
【0132】
図17に示すように、ステップSB230において、前回処理時の加速度(前回加速度)=負(0未満)、かつ、今回処理時の加速度(今回加速度)=正(0以上)でないと判定した場合には(SB230:NO)、制御装置40は、当該処理を終了する(リターンする)。つまり、制御装置40は、上記進行速度曲線81の谷81A(図22参照)でないと判定して、つまり、使用者の左足の踵、又は、使用者の右足の踵が接地していないと判定して、当該処理を終了する(リターンする)。
【0133】
一方、ステップSB230において、前回処理時の加速度(前回加速度)=負(0未満)、かつ、今回処理時の加速度(今回加速度)=正(0以上)であると判定した場合には(SB230:YES)、制御装置40は、ステップSB231の処理に進む。つまり、制御装置40は、上記進行速度曲線81の谷81A(図22参照)であると判定して、つまり、使用者の左足の踵、又は、使用者の右足の踵が接地したと判定して、ステップSB231の処理に進む。
【0134】
ステップSB231にて制御装置40は、タイマ45から時刻T2を読み出し、記憶装置44に時系列的に記憶した後、ステップSB232に処理を進める。これにより、使用者の左足の踵、又は、右足の踵が地面に着いた時刻T2が記憶される。そして、ステップSB232にて制御装置40は、時刻T2を記憶した回数Mを記憶装置44から読み出し、回数Mに「1」加算して、再度、記憶装置44に記憶した後、ステップSB233の処理に進む。尚、制御装置40は、起動時に、回数Mに「0」を代入して記憶装置44に記憶する。
【0135】
ステップS233にて制御装置40は、記憶装置44から時刻T2を記憶した回数Mを読み出し、回数Mが「3」以上であるか否か、つまり、3回目の谷81A(図22参照)の時刻T2を記憶したか否かを判定する。そして、回数Mが「3」未満であると判定した場合には(SB233:NO)、制御装置40は、3回目の谷81A(図22参照)の時刻T2を記憶していないと判定して、当該処理を終了する(リターンする)。
【0136】
一方、回数Mが「3」以上であると判定した場合には(SB233:YES)、制御装置40は、3回目の谷81A(図22参照)の時刻T2を記憶したと判定して、ステップSB234の処理に進む。ステップSB234にて制御装置40は、記憶装置44から前々回処理時の時刻T2と今回処理時の時刻T2を読み出す。
【0137】
そして、制御装置40は、計測歩行周期TW1=今回処理時の時刻T2(今回の時刻T2)-前々回処理時の時刻T2(前々回の時刻T2)にて、計測歩行周期TW1[秒/歩]を求め、記憶装置44に記憶した後、ステップSB235に処理を進める。これにより、制御装置40は、前回の左足の踵が地面に着いてから今回の左足の踵が地面に着くまでの時間、又は、前回の右足の踵が地面に着いてから今回の右足の踵が地面に着くまでの時間つまり、計測歩行周期TW1(1歩行周期)[秒/歩]を算出して、記憶装置44に記憶する。
【0138】
ステップSB235にて制御装置40は、記憶装置44から時刻T2を記憶した回数Mを読み出し、この回数Mに「0」を代入して再度、記憶装置44に記憶した後、上記ステップSB215の処理に進む。そして、制御装置40は、ステップSB215~ステップSB221の処理を実行した後、当該処理を終了する(リターンする)。これにより、制御装置40は、手押しモードにおける歩行周期TBを算出し、歩行周期フラグを「ON」に設定することができる。
【0139】
●[SB400:対地速度補正量算出処理の詳細(図18)]
次に、図18を用いて、SB400(対地速度補正量算出処理)の詳細について説明する。図14に示すステップS040にてSB400を実行する際、制御装置40は、図18に示すステップSB405へ処理を進める。
【0140】
ステップSB405にて制御装置40は、動作モードが腕振りモードであるか否かを判定し、動作モードが腕振りモードである場合(SB405:YES)は、ステップSB410に処理を進め、動作モードが腕振りモードでない場合(SB405:NO)は、ステップSB450Bに処理を進める。
【0141】
ステップSB410に処理を進めた場合には、制御装置40は、「進行速度+右持ち手移動速度」を求めて右持ち手対地速度に記憶し、「進行速度+左持ち手移動速度」を求めて左持ち手対地速度に記憶した後、ステップSB420に処理を進める。
【0142】
なお、「進行速度」は、地面に対する歩行支援装置10の速度であり、「右持ち手移動速度」は、歩行支援装置10に対する(右)持ち手20Rのフレーム前後方向の移動速度であり、「右持ち手対地速度」は、地面に対する(右)持ち手20Rのフレーム前後方向の移動速度である。また、「右持ち手移動速度」は、「進行速度」と同方向が「正」の速度に設定され、「進行方向」と逆方向が「負」の速度に設定されている。つまり、進行速度が前方へ向かう速度である場合、前方へ向かう右持ち手移動速度は「正」であり、後方へ向かう右持ち手移動速度は「負」である。また、左持ち手対地速度も同様にして求められる。
【0143】
ステップSB410の処理を実行している制御装置40は、それぞれの持ち手の移動速度と、進行速度とに基づいて、地面に対するそれぞれの持ち手の速度であるそれぞれの持ち手対地速度(右持ち手対地速度と左持ち手対地速度)を算出する、持ち手対地速度算出部40D(図13参照)に相当する。
【0144】
ステップSB420にて制御装置40は、右持ち手対地速度が負(0未満)であるか否かを判定し、負(0未満)である場合(SB420:YES)は、ステップSB440に処理を進め、そうでない場合(SB420:NO)は、ステップSB430に処理を進める。
【0145】
ステップSB430に処理を進めた場合には、制御装置40は、左持ち手対地速度が負(0未満)であるか否かを判定し、負(0未満)である場合(SB430:YES)は、ステップSB440に処理を進め、そうでない場合(SB430:NO)はステップSB450Bに処理を進める。
【0146】
ステップSB440に処理を進めた場合、制御装置40は、進行速度に応じた重み係数を算出してステップSB450Aに処理を進める。例えば、重み係数は、進行速度が大きくなるにしたがって小さくなるように設定されている。
【0147】
ステップSB450Aにて制御装置40は、予め設定された加速補正量に重み係数を乗算して求めた値を、対地速度補正量に記憶して処理を終了する(リターンする)。なお、加速補正量は、種々の実験やシミュレーション等によって決められている。この場合の対地速度補正量は、0より大きな値(正の値であり、加速するための補正量)となる。
【0148】
ステップSB440、SB450Aの処理を実行している制御装置40は、進行速度を「正」とした場合にそれぞれの持ち手のそれぞれの持ち手対地速度の少なくとも一方が「負」の速度である場合、歩行支援装置10を進行速度の方向に加速させる対地速度補正量を算出する、対地速度補正量算出部40E(図13参照)に相当する。
【0149】
ステップSB450Bに処理を進めた場合、制御装置40は、予め設定された減速補正量を、対地速度補正量に記憶して処理を終了する(リターンする)。なお、減速補正量は、種々の実験やシミュレーション等によって決められている。この場合の対地速度補正量は、0以下の値(ゼロまたは負の値であり、減速するための補正量)となる。
【0150】
なお、対地速度補正量が0より大きな正の値の場合、歩行支援装置10の進行速度を加速させることができる。また、対地速度補正量が0未満の負の値の場合、歩行支援装置10の進行速度を減速させることができる。また、対地速度補正量がゼロの場合、歩行支援装置10は惰性走行となるが、転がり抵抗等によって進行速度は減速される。
【0151】
●[SB500:中央位置速度補正量算出処理の詳細(図19)]
次に、図19を用いて、SB500(中央位置速度補正量算出処理)の詳細について説明する。図14に示すステップS050にてSB500を実行する際、制御装置40は、図19に示すステップSB505へ処理を進める。
【0152】
ステップSB505にて制御装置40は、動作モードが腕振りモードであるか否かを判定し、動作モードが腕振りモードである場合(SB505:YES)は、ステップSB510に処理を進め、動作モードが腕振りモードでない場合(SB505:NO)は、ステップSB550に処理を進める。
【0153】
ステップSB510に処理を進めた場合、制御装置40は、「(右持ち手前後位置+左持ち手前後位置)/2」を求めて持ち手前後中央位置として記憶装置44に記憶し、ステップSB520に処理を進める。
【0154】
ステップSB510の処理を実行している制御装置40は、それぞれの持ち手前後位置に対するフレーム前後方向の中央となる持ち手前後中央位置を求める、持ち手前後中央位置算出部40G(図13参照)に相当する。
【0155】
図23は、歩行支援装置10を上から見た図であり、(右)持ち手20Rの持ち手前後位置(PmR)、(左)持ち手20Lの持ち手前後位置(PmL)、仮想前後基準位置(Ps)、持ち手前後中央位置(Pmc)、可動範囲(シャフト21L、21Rのフレーム前後方向の移動範囲)の中央位置(Pc)を説明する図である。例えば、フレーム前後方向において、持ち手20R、20Lの可動範囲L1は、可動範囲L1の前端位置(Po)から、可動範囲の後端位置(Pr)までである。
【0156】
そして、中央位置(Pc)は、フレーム前後方向における可動範囲L1の中央位置である。例えば、可動範囲L1の中央位置(Pc)よりも所定距離Laだけ後方となる位置が、フレーム前後方向における所定位置である仮想前後基準位置(Ps)に設定されている。また、右持ち手前後位置(PmR)と左持ち手前後位置(PmL)とのフレーム前後方向における中央位置が、持ち手前後中央位置(Pmc)となる。
【0157】
ステップSB520にて制御装置40は、「持ち手前後中央位置-仮想前後基準位置」を求めて前後方向偏差として記憶装置44に記憶し、ステップSB530に処理を進める。なお、図23に示すように、前後方向偏差ΔLは、持ち手前後中央位置(Pmc)と仮想前後基準位置(Ps)との偏差である。
【0158】
ステップSB530にて制御装置40は、前後方向偏差に応じた中央位置速度補正量を求め、求めた中央位置速度補正量を記憶して、処理を終了する(リターンする)。例えば、図24に示す前後方向偏差・中央位置速度補正量特性が記憶装置に記憶されており、制御装置40は、当該前後方向偏差・中央位置速度補正量特性と、前後方向偏差とに基づいて、中央位置速度補正量を求めて記憶する。
【0159】
ステップSB550に処理を進めた場合、制御装置40は、「右持ち手前後位置-持ち手基準位置(シャフト基準位置に対応する持ち手20Rの位置)」を求めて右偏差として記憶装置44に記憶し、ステップSB560に処理を進める。動作モードが「手押しモード」の場合、ロック操作部31L、31Rが「ロック状態」とされているので、使用者は、持ち手を把持して腕を振りながら歩行することはできない。「手押しモード」の場合、以下のステップSB550~SB580にて、各持ち手20L、20Rが前方に押されている場合に、中央位置速度補正にて歩行支援装置10を前方に加速させる。
【0160】
ステップSB560にて制御装置40は、「左持ち手前後位置-持ち手基準位置(シャフト基準位置に対応する持ち手20Lの位置)」を求めて左偏差として記憶装置44に記憶し、ステップSB570に処理を進める。
【0161】
ステップSB570にて制御装置40は、「(右偏差+左偏差)/2」を求めて前後方向偏差として記憶装置44に記憶し、ステップSB580に処理を進める。
【0162】
ステップSB580にて制御装置40は、前後方向偏差に応じた中央位置速度補正量を求め、求めた中央位置速度補正量を記憶して、処理を終了する(リターンする)。例えば、図24に示す前後方向偏差・中央位置速度補正量特性が記憶装置44に記憶されており、制御装置40は、当該前後方向偏差・中央位置速度補正量特性と、前後方向偏差とに基づいて、中央位置速度補正量を求めて記憶する。なお、前後方向偏差の値が同じであっても、ロック状態の場合の中央位置速度補正量(ステップSB580)を、解除状態の場合の中央位置速度補正量(ステップSB530)よりも大きくすると、より好ましい。
【0163】
ステップSB520、SB530、SB570、SB580の処理を実行している制御装置40は、フレーム前後方向において、持ち手前後中央位置を仮想前後基準位置に近づけるように歩行支援装置10の進行速度を調整する中央位置速度補正量を算出する、中央位置速度補正量算出部40H(図13参照)に相当する。
【0164】
●[SB600:進行速度調整処理の詳細(図20)]
次に、図20を用いて、SB600(進行速度調整処理)の詳細について説明する。図14に示すステップS060にてSB600を実行する際、制御装置40は、図20に示すステップSB610へ処理を進める。
【0165】
ステップSB610にて制御装置40は、「進行速度+対地速度補正量+中央位置速度補正量」を求めて右目標速度として記憶装置44に記憶し、「進行速度+対地速度補正量+中央位置速度補正量」を求めて左目標速度として記憶装置44に記憶し、ステップSB611へ処理を進める。
【0166】
ステップSB611にて制御装置40は、記憶装置44から歩行モードを読み出し、歩行モードが「通常モード」であるか否かを判定する。そして、歩行モードが「通常モード」であると判定した場合には(SB611:YES)、制御装置40は、ステップSB620の処理に進む。
【0167】
ステップSB620にて制御装置40は、記憶装置44から右目標速度と目標トルクとを読み出し、右目標速度、かつ、目標トルクとなるように(右)走行用駆動装置64Rを制御する。また、制御装置40は、記憶装置44から左目標速度と目標トルクとを読み出し、左目標速度、かつ、目標トルクとなるように(左)走行用駆動装置64Lを制御して、当該処理を終了する(リターンする)。
【0168】
一方、上記ステップSB611で、歩行モードが「通常モード」でないと判定した場合には(SB611:NO)、制御装置40は、ステップSB612の処理に進む。ステップSB612にて制御装置40は、歩行周期TB(図17参照)を取得した旨を表す「歩行周期フラグ」を記憶装置44から読み出し、「ON」に設定されているか否かを判定する。そして、歩行周期フラグが「OFF」に設定されていると判定した場合、つまり、歩行周期TBを計測中であると判定した場合には(SB612:NO)、制御装置40は、上記ステップSB620の処理に進む。制御装置40は、上記ステップSB620の処理を実行した後、当該処理を終了する(リターンする)。
【0169】
一方、歩行周期フラグが「ON」に設定されていると判定した場合、つまり、歩行周期TBの計測が終了したと判定した場合には(SB612:YES)、制御装置40は、ステップSB613の処理に進む。ステップSB613にて制御装置40は、記憶装置44から歩行モードを読み出し、歩行モードが「歩行モード1」であるか否かを判定する。そして、歩行モードが「歩行モード1」であると判定した場合には(SB613:YES)、制御装置40は、ステップSB614の処理に進む。
【0170】
ステップSB614にて制御装置40は、右目標速度と左目標速度とを「3%」(所定の第2割合)だけ速くするように設定した後、上記ステップSB620の処理に進む。具体的には、制御装置40は、右目標速度に「1.03」を乗算して求めた値を、右目標速度として記憶装置44に記憶する。また、制御装置40は、左目標速度に「1.03」を乗算して求めた値を、左目標速度として記憶装置44に記憶した後、上記ステップSB620の処理に進む。そして、制御装置40は、上記ステップSB620の処理を実行した後、当該処理を終了する(リターンする)。
【0171】
一方、上記ステップSB613で、歩行モードが「歩行モード1」でないと判定した場合には(SB613:NO)、制御装置40は、ステップSB615の処理に進む。ステップSB615の処理にて制御装置40は、記憶装置44から歩行モードを読み出し、歩行モードが「歩行モード2」であるか否かを判定する。そして、歩行モードが「歩行モード2」であると判定した場合には(SB615:YES)、制御装置40は、上記ステップSB614の処理に進む。制御装置40は、上記ステップSB614の処理を実行した後、上記ステップSB620の処理に進む。そして、制御装置40は、上記ステップSB620の処理を実行した後、当該処理を終了する(リターンする)。
【0172】
一方、上記ステップSB615で、歩行モードが「歩行モード2」でないと判定した場合、つまり、歩行モードは「歩行モード3」であると判定した場合には(SB615:NO)、制御装置40は、ステップSB620の処理に進む。そして、制御装置40は、上記ステップSB620の処理を実行した後、当該処理を終了する(リターンする)。
【0173】
従って、歩行モードが「歩行モード3」に設定された場合には、右目標速度と左目標速度が、歩行モードが「通常モード」に設定された場合の右目標速度と左目標速度と同じ速度に設定される。また、歩行モードが「歩行モード1」又は「歩行モード2」に設定された場合には、右目標速度と左目標速度が、歩行モードが「通常モード」に設定された場合の右目標速度と左目標速度よりも「3%」(所定の第2割合)だけ速くなるように設定される。尚、「3%」に限らず、例えば、2%~10%の任意の割合(所定の第2割合)だけ速くなるように設定してもよい。
【0174】
ステップSB610~SB620の処理を実行している制御装置40は、進行速度と対地速度補正量(と中央位置速度補正量)とに基づいて求めた目標速度となるように走行用駆動装置を制御する、進行速度調整部40F(図13参照)に相当する。
【0175】
●[使用者の腕振り歩行状態と歩行支援装置の移動状態の例(図25)]
図25は、使用者が右手で(右)持ち手20Rを把持し、左手で(左)持ち手20Lを把持し、左腕を前方から後方に振りながら歩行している状態(右腕は後方から前方に振られている)の例を示している。
【0176】
(左)持ち手20Lが後方に移動する際、地面から見た(左)持ち手20Lの移動速度である(左)持ち手対地速度が「負」になると、対地速度補正量にて歩行支援装置10は前方に加速するので、図25中に一点鎖線で示すように、(左)持ち手20Lは、地面から見た際、あたかも静止しているように見える。つまり、歩行支援装置10は、地面から見た際に、後方に移動された(左)持ち手20Lがあたかも静止して見えるように、進行速度を調整しながら進行する。
【0177】
●[SB700:歩行用リズム音発生処理の詳細(図21)]
次に、図21を用いて、SB700(歩行用リズム音発生処理)の詳細について説明する。図14に示すステップS070にてSB700を実行する際、制御装置40は、図21に示すステップSB705へ処理を進める。
【0178】
ステップSB705にて制御装置40は、歩行周期TB(図17参照)を取得した旨を表す「歩行周期フラグ」を記憶装置44から読み出し、「ON」に設定されているか否かを判定する。そして、歩行周期フラグが「OFF」に設定されていると判定した場合には(SB705:NO)、制御装置40は、当該処理を終了する(リターンする)。一方、歩行周期フラグが「ON」に設定されていると判定した場合には(SB705:YES)、制御装置40は、歩行周期TB(図17参照)を取得したと判定してステップSB706に処理を進める。
【0179】
ステップSB706にて制御装置40は、記憶装置44から歩行モードを読み出し、歩行モードが「通常モード」であるか否かを判定する。つまり、制御装置40は、歩行モード指示部77の選択ボタン77Aが操作されて、歩行モードが「通常モード」に設定されたか否かを判定する。そして、歩行モードが「通常モード」でないと判定した場合、つまり、歩行モード指示部77の選択ボタン77Aが操作されていないと判定した場合には(SB706:NO)、制御装置40は、ステップSB707の処理に進む。
【0180】
ステップSB707にて制御装置40は、歩行用リズム音として周期音の出力を開始した旨を表す「リズム開始フラグ」を記憶装置44から読み出し、「OFF」に設定されているか否かを判定する。そして、リズム開始フラグが「ON」に設定されていると判定した場合には(SB707:NO)、制御装置40は、当該処理を終了する(リターンする)。一方、リズム開始フラグが「OFF」に設定されていると判定した場合には(SB707:YES)、制御装置40は、ステップSB708に処理を進める。ステップSB708にて制御装置40は、記憶装置44から動作モードを読み出し、動作モードが腕振りモードであるか否かを判定する。
【0181】
そして、動作モードが腕振りモードであると判定した場合には(SB708:YES)、制御装置40は、ステップSB709に処理を進める。一方、動作モードが腕振りモードでないと判定した場合、つまり、動作モードが手押しモードであると判定した場合には(SB708:NO)、制御装置40は、ステップSB710に処理を進める。
【0182】
ステップSB709に処理を進めた場合には、制御装置40は、右後端位置フラグを記憶装置44から読み出し、「ON」に設定されているか否かを判定する。そして、右後端位置フラグが「OFF」に設定されていると判定した場合には(SB709:NO)、制御装置40は、当該処理を終了する(リターンする)。一方、右後端位置フラグが「ON」に設定されていると判定した場合には(SB709:YES)、制御装置40は、後述のステップSB711に処理を進める。
【0183】
また、ステップSB710に処理を進めた場合には、制御装置40は、前回処理時の加速度と、今回処理時の加速度とを、記憶装置44から読み出し、前回処理時の加速度(前回加速度)=負(0未満)、かつ、今回処理時の加速度(今回加速度)=正(0以上)であるか否かを判定する。そして、前回処理時の加速度(前回加速度)=負(0未満)、かつ、今回処理時の加速度(今回加速度)=正(0以上)でないと判定した場合には(SB710:NO)、制御装置40は、当該処理を終了する(リターンする)。つまり、制御装置40は、使用者の左足の踵、又は、使用者の右足の踵が接地していないと判定して、当該処理を終了する(リターンする)。
【0184】
一方、前回処理時の加速度(前回加速度)=負(0未満)、かつ、今回処理時の加速度(今回加速度)=正(0以上)であると判定した場合には(SB710:YES)、制御装置40は、ステップSB711の処理に進む。つまり、制御装置40は、使用者の左足の踵、又は、使用者の右足の踵が接地したと判定して、ステップSB711の処理に進む。
【0185】
ステップSB711にて制御装置40は、記憶装置44から歩行モードを読み出し、歩行モードが「歩行モード1」であるか否かを判定する。そして、歩行モードが「歩行モード1」であると判定した場合には(SB711:YES)、制御装置40は、ステップSB712の処理に進む。
【0186】
ステップSB712にて制御装置40は、記憶装置44から歩行周期TB[秒/歩]を読み出し、歩行周期TBに「0.97」を乗算して求めた値を、「目標歩行周期TS」として記憶装置44に記憶した後、後述のステップSB716の処理に進む。つまり、歩行モードが「歩行モード1」に設定された場合には、目標歩行周期TSは、歩行周期TBよりも「3%」(所定の第1割合)だけ短くなるように設定される。尚、「3%」に限らず、例えば、2%~10%の任意の割合(所定の第1割合)だけ短くなるように設定してもよい。
【0187】
一方、歩行モードが「歩行モード1」でないと判定した場合には(SB711:NO)、制御装置40は、ステップSB713の処理に進む。ステップSB713にて制御装置40は、記憶装置44から歩行モードを読み出し、歩行モードが「歩行モード2」であるか否かを判定する。そして、歩行モードが「歩行モード2」であると判定した場合には(SB713:YES)、制御装置40は、ステップSB714の処理に進む。
【0188】
ステップSB714にて制御装置40は、記憶装置44から歩行周期TB[秒/歩]を読み出し、歩行周期TBを「目標歩行周期TS」として記憶装置44に記憶した後、後述のステップSB716の処理に進む。つまり、歩行モードが「歩行モード2」に設定された場合には、目標歩行周期TSは、歩行周期TBと同一周期になるように設定される。
【0189】
一方、歩行モードが「歩行モード2」でないと判定した場合には(SB713:NO)、制御装置40は、歩行モードは「歩行モード3」であると判定して、ステップSB715の処理に進む。ステップSB715にて制御装置40は、記憶装置44から歩行周期TB[秒/歩]を読み出し、歩行周期TBに「1.03」を乗算して求めた値を、「目標歩行周期TS」として記憶装置44に記憶した後、ステップSB716の処理に進む。つまり、歩行モードが「歩行モード3」に設定された場合には、目標歩行周期TSは、歩行周期TBよりも「3%」(所定の第3割合)だけ長くなるように設定される。尚、「3%」に限らず、例えば、2%~10%の任意の割合(所定の第3割合)だけ長くなるように設定してもよい。
【0190】
ステップSB716にて制御装置40は、記憶装置44から目標歩行周期TS[秒/歩]を読み出し、スピーカ66を介して、目標歩行周期TSに等しい周期に設定した周期音(例えば、一定周期のメトロノームのテンポ音、楽器のリズム音、掛け声等)の出力を開始した後、ステップSB717の処理に進む。つまり、制御装置40は、周期音によって目標歩行周期TS[秒/歩]に等しい周期の歩行のタイミングを使用者に教示する。
【0191】
これにより、手押しモードの場合には、使用者は、スピーカ66を介して報知される周期音に合わせて右足の踵(又は左足の踵)の方だけを接地させるように歩行することによって、目標歩行周期TS[秒/歩]の歩行周期になるように、歩行のタイミングを取り易くなる。また、腕振りモードの場合には、使用者は、スピーカ66を介して報知される周期音に合わせて左足の踵(又は右足の踵)の方だけを接地させると共に、右腕(又は左腕)の方だけを後端まで振るように歩行することによって、目標歩行周期TS[秒/歩]の歩行周期になるように、歩行のタイミングを取り易くなる。ここで、ステップSB716の処理を実行している制御装置40は、周期音設定部の一例として機能する。
【0192】
尚、例えば、ステップSB716にて制御装置40は、記憶装置44から目標歩行周期TS[秒/歩]を読み出し、スピーカ66を介して、目標歩行周期TS[秒/歩]の1/2の周期に設定した周期音(例えば、一定周期のメトロノームのテンポ音、楽器のリズム音、掛け声等)の出力を開始した後、ステップSB717の処理に進むようにしてもよい。
【0193】
これにより、手押しモードの場合には、使用者は、スピーカ66を介して報知される周期音に合わせて右足の踵と左足の踵を交互に接地させるように歩行することによって、目標歩行周期TS[秒/歩]の歩行周期になるように、歩行のタイミングを取り易くなる。また、腕振りモードの場合には、使用者は、スピーカ66を介して報知される周期音に合わせて左足の踵と右足の踵を交互に接地させると共に、右腕と左腕を交互に後端まで振るように歩行することによって、目標歩行周期TS[秒/歩]の歩行周期になるように、歩行のタイミングを取り易くなる。
【0194】
ステップSB717にて制御装置40は、スピーカ66を介して、目標歩行周期TSに等しい周期に設定した周期音の出力を開始した旨を表す「リズム開始フラグ」を記憶装置44から読み出し、このリズム開始フラグを「ON」に設定して、再度、記憶装置44に記憶した後、当該処理を終了する(リターンする)。尚、制御装置40は、起動時に、リズム開始フラグを「OFF」に設定して、記憶装置44に記憶する。
【0195】
他方、上記ステップSB706の処理で、歩行モードが「通常モード」であると判定した場合、つまり、歩行モード指示部77の選択ボタン77Aが操作されたと判定した場合には(SB706:YES)、制御装置40は、ステップSB718の処理に進む。ステップSB718にて制御装置40は、スピーカ66の出力を停止して、周期音の出力を終了した後、ステップSB719の処理に進む。
【0196】
ステップSB719にて制御装置40は、リズム開始フラグを記憶装置44から読み出し、このリズム開始フラグを「OFF」に設定して、再度、記憶装置44に記憶した後、ステップSB720の処理に進む。ステップSB720にて制御装置40は、記憶装置44から歩行周期TBを取得した旨を表す歩行周期フラグを読み出し、この歩行周期フラグを「OFF」に設定して、再度、記憶装置44に記憶した後、当該処理を終了する(リターンする)。
【0197】
ここで、制御装置40は、走行制御装置、歩行状態取得装置、目標歩行状態設定装置、教示制御装置の一例として機能する。スピーカ66は、報知装置の一例として機能する。操作パネル70は、切替設定装置の一例として機能する。
【0198】
●[本願の効果]
以上の通り詳細に説明したように、本実施形態にて説明した歩行支援装置10では、使用者は、操作パネル70の歩行モード指示部77の選択ボタン77Bを操作して、「歩行モード1」の歩行支援モードを選択することによって、歩行支援装置10の速度を3%程度(所定の第2割合)だけ通常モードのときよりも速くすることができる。また、通常の歩行周期TBよりも3%程度(所定の第1割合)だけ短い目標歩行周期TSの周期に等しい周期音がスピーカ66を介して出力される(教示される)。
【0199】
その結果、使用者の歩幅[cm]が、車速に合わせて3%程度増加する。また、使用者が、通常の歩行周期TBよりも3%程度短い目標歩行周期TSの周期に等しい周期音に合わせて左足の踵を接地させるように歩行することによって、使用者の歩行率[歩/分]が3%程度増加する。
【0200】
これにより、使用者は、「歩行モード1」の歩行支援モードを選択した後、各持ち手20L、20Rを把持して、周期音に合わせて左足の踵を接地させるように歩行することによって、歩行率[歩/分]と歩幅[cm]が共に増えて、歩行速度[m/分]が上がる歩行トレーニングを行うことができ、歩行能力を改善することができる。更に、使用者は、腕振りモード指示部74を操作することによって、各持ち手20L、20Rを把持して、体幹を真っ直ぐにして周期音に合わせて腕を振りながら歩行する歩行トレーニングを行うことができ、歩行能力を効果的に改善することができる。
【0201】
また、使用者は、操作パネル70の歩行モード指示部77の選択ボタン77Cを操作して、「歩行モード2」の歩行支援モードを選択することによって、歩行支援装置10の速度を3%程度(所定の第2割合)だけ通常モードのときよりも速くすることができる。また、通常の歩行周期TBの周期に等しい周期の周期音がスピーカ66を介して出力される(教示される)。
【0202】
その結果、使用者の歩幅[cm]が、車速に合わせて3%程度増加する。また、使用者が、通常の歩行周期TBの周期に等しい周期の周期音に合わせて左足の踵を接地させるように歩行することによって、使用者の歩行率[歩/分]はそのままで、歩幅[cm]が3%程度増加する。
【0203】
これにより、使用者は、「歩行モード2」の歩行支援モードを選択した後、各持ち手20L、20Rを把持して、周期音に合わせて左足の踵を接地させるように歩行することによって、歩行率[歩/分]はそのままで、歩幅[cm]を少し広くして歩行速度[m/分]を上げる歩行トレーニングを行うことができ、歩行能力を改善することができる。更に、使用者は、腕振りモード指示部74を操作することによって、各持ち手20L、20Rを把持して、体幹を真っ直ぐにして周期音に合わせて腕を振りながら歩行する歩行トレーニングを行うことができ、歩行能力を効果的に改善することができる。
【0204】
また、使用者は、操作パネル70の歩行モード指示部77の選択ボタン77Dを操作して、「歩行モード3」の歩行支援モードを選択することによって、歩行支援装置10の速度を通常モードの速度と同じ速度にすることができる。また、通常の歩行周期TBよりも3%程度(所定の第3割合)だけ長い目標歩行周期TSの周期に等しい周期音がスピーカ66を介して出力される(教示される)。
【0205】
その結果、使用者が、通常の歩行周期TBよりも3%程度長い目標歩行周期TSの周期に等しい周期音に合わせて左足の踵を接地させるように歩行することによって、使用者の歩幅[cm]が、3%程度増加する。
【0206】
これにより、使用者は、「歩行モード3」の歩行支援モードを選択した後、各持ち手20L、20Rを把持して、周期音に左足の踵を接地させるように合わせて歩行することによって、歩行速度[m/分]は同じで、歩幅[cm]が少し広がる歩行トレーニングを行うことができ、歩行能力を改善することができる。更に、使用者は、腕振りモード指示部74を操作することによって、各持ち手20L、20Rを把持して、体幹を真っ直ぐにして周期音に合わせて腕を振りながら歩行する歩行トレーニングを行うことができ、歩行能力を効果的に改善することができる。
【0207】
また、使用者は、操作パネル70の歩行モード指示部77の選択ボタン77Aを操作して、「通常モード」の歩行支援モードを選択すると共に、腕振りモード指示部74を操作することによって、各持ち手20L、20Rを把持して、腕振り歩行する歩行動作を模擬することができる。従って、使用者は、体幹を真っ直ぐにして腕を振りながら歩行する歩行トレーニングを行うことができる。これにより、使用者は、脚の動きに同期させて正しく腕を振りながら歩行する質の高い歩行トレーニングを適切に行うことができる。
【0208】
尚、本発明は前記実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形、追加、削除が可能であることは勿論である。また、前記実施形態において、以上(≧)、以下(≦)、より大きい(>)、未満(<)等は、等号を含んでも含まなくてもよい。また、前記実施形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。尚、以下の説明において上記図1乃至図25の前記実施形態に係る歩行支援装置10の構成等と同一符号は、前記実施形態に係る歩行支援装置10の構成等と同一あるいは相当部分を示すものである。
【0209】
[他の第1実施形態]
(A)例えば、制御装置40は、記憶装置44に「歩行モード1」、「歩行モード2」、「歩行モード3」のうちのいずれかの歩行モードで走行する「目標教示走行距離」(例えば、50m~300m)を予め記憶するようにしてもよい。また、制御装置40は、「歩行モード1」、「歩行モード2」、「歩行モード3」のうちのいずれかの歩行モードで走行する場合には、各進行速度検出装置64LE、64REからの検出信号により、走行開始からの走行距離Lを検出するようにしてもよい。
【0210】
更に、制御装置40は、この走行距離Lが目標教示走行距離に達したか否かを判定するようにしてもよい。そして、走行距離Lが目標教示走行距離に達したと判定した場合には、制御装置40は、各走行用駆動装置64L、64Rを停止させて、歩行支援装置10が停止するように制御してもよい。これにより、使用者は、「歩行モード1」、「歩行モード2」、「歩行モード3」のうちのいずれかの歩行モードで歩行支援装置10を使用して、歩行トレーニングを行った距離が、目標教示走行距離に達したと容易に判断することができ、歩行トレーニングを継続するか否かを容易に判定することができる。また、歩行支援装置10が停止するため、使用者は、歩行トレーニングの内容を容易に再検討することが可能となる。
【0211】
ここで、記憶装置44は、目標教示走行距離記憶装置の一例として機能する。各進行速度検出装置64LE、64RE及び制御装置40は、走行距離検出装置の一例として機能する。制御装置40は、走行距離判定装置の一例として機能する。
【0212】
[他の第2実施形態]
(B)また、例えば、制御装置40は、上記ステップSB716で、スピーカ66を介して、目標歩行周期TSに等しい周期に設定した周期音(例えば、一定周期のメトロノームのテンポ音、楽器のリズム音、掛け声等)の出力を開始した場合には、再度、上記ステップSB210~ステップSB220の処理を実行して、歩行周期TBを算出するようにしてもよい。
【0213】
そして、制御装置40は、目標歩行周期TSに対する歩行周期TBの一致度合いによって、使用者の歩行トレーニング中における歩行状態を評価するようにしてもよい。更に、制御装置40は、使用者の歩行トレーニング中における歩行状態の評価結果を操作パネル70に表示し、スピーカ66を介して音声出力により知らせるようにしてもよい。これにより、使用者は、歩行トレーニングの評価を迅速に取得して、歩行トレーニングの内容を容易に再検討することが可能となる。
【0214】
尚、制御装置40は、目標歩行周期TSに対する歩行周期TBの一致度合いが所定値以上の達成回数によって、使用者の歩行トレーニング中における歩行状態を評価するようにしてもよい。また、制御装置40は、目標歩行周期TSに対する歩行周期TBの一致度合いが所定値以上になった達成回数をカウントし、全評価回数に対する達成回数の割合(達成率)によって、使用者の歩行トレーニング中における歩行状態を評価するようにしてもよい。
【0215】
ここで、制御装置40は、教示歩行状態取得装置、歩行状態評価装置の一例として機能する。操作パネル70とスピーカ66は、出力装置の一例として機能する。
【0216】
[他の第3実施形態]
(C)また、例えば、制御装置40は、上記ステップSB219で算出した歩行周期TB(歩行状態情報)を記憶装置44の歩行状態記憶部44A(図13参照)に、ユーザID、年月日及び時刻、進行速度、加速度(歩行状態情報)等と共に時系列的に記憶するようにしてもよい。尚、ユーザIDは、使用者が、歩行トレーニングを開始する前に、操作パネル70に設けられたID入力画面を介して予め入力するようにしてもよい。ここで、記憶装置44は、歩行状態情報記憶装置の一例として機能する。
【0217】
そして、上記ステップSB712、ステップSB714、ステップSB715において、制御装置40は、使用者のユーザIDに対応させて記憶している最新の所定個数、例えば、最新の5個の歩行周期TB(歩行状態情報)を歩行状態記憶部44Aから読み出す。続いて、制御装置40は、最新の所定個数の歩行周期TBの平均値を算出し、その平均値を歩行周期TBとして用いて、目標歩行周期TS(目標歩行状態)を算出するようにしてもよい。これにより、制御装置40は、使用者のユーザIDに対応する過去所定回数分の歩行周期TBの平均値を算出し、その平均値を用いて目標歩行周期TSを設定することができるため、目標歩行周期TSの最適化を図ることができる。
【0218】
尚、制御装置40は、上記ステップSB219で算出した歩行周期TB(歩行状態情報)をユーザID、年月日及び時刻、進行速度、加速度(歩行状態情報)等と共に、ネットワーク上のサーバへ不図示の通信装置を介して送信して、時系列的に格納するようにしてもよい。そして、上記ステップSB712、ステップSB714、ステップSB715において、制御装置40は、使用者のユーザIDに対応過去所定回数分の歩行周期TBを、不図示の通信装置を介してサーバから取得するようにしてもよい。続いて、制御装置40は、使用者のユーザIDに対応する過去所定回数分の歩行周期TBの平均値を算出し、その平均値を用いて目標歩行周期TSを設定するようにしてもよい。
【0219】
[他の第4実施形態]
(D)また、例えば、制御装置40は、上記ステップSBA25Aにおいて、今回右持ち手前後位置を「右前端位置」に記憶した後、再度、「右前端位置」を読み出し、「持ち手基準位置(シャフト基準位置)-右前端位置」を求めて、「右後ろズレ量」として記憶装置44に記憶するようにしてもよい。そして、制御装置40は、「右後ろズレ量」が所定長さ(例えば、50mm)以上の長さであるか否かを判定するようにしてもよい。
【0220】
そして、「右後ろズレ量」が所定長さ(例えば、50mm)以上の長さであると判定した場合には、制御装置40は、各走行用駆動装置64L、64Rを停止させて、歩行支援装置10が停止するように制御してもよい。一方、「右後ろズレ量」が所定長さ(例えば、50mm)未満の長さであると判定した場合には、制御装置40は、上記ステップSBA30の処理に進むようにしてもよい。
【0221】
また、例えば、制御装置40は、上記ステップSBB25Aにおいて、今回左持ち手前後位置を「左前端位置」に記憶した後、再度、「左前端位置」を読み出し、「持ち手基準位置(シャフト基準位置)-左前端位置」を求めて、「左後ろズレ量」として記憶装置44に記憶するようにしてもよい。そして、制御装置40は、「左後ろズレ量」が所定長さ(例えば、50mm)以上の長さであるか否かを判定するようにしてもよい。
【0222】
そして、「左後ろズレ量」が所定長さ(例えば、50mm)以上の長さであると判定した場合には、制御装置40は、各走行用駆動装置64L、64Rを停止させて、歩行支援装置10が停止するように制御してもよい。一方、「左後ろズレ量」が所定長さ(例えば、50mm)未満の長さであると判定した場合には、制御装置40は、上記ステップSBB30の処理に進むようにしてもよい。
【0223】
これにより、使用者は、「歩行モード1」、「歩行モード2」、「歩行モード3」のうちのいずれかの歩行モードで歩行支援装置10を使用して、歩行トレーニングを行っている際に、歩行支援装置10に追従して歩行することが困難になった場合には、歩行支援装置10が停止するため、転倒を防ぐことができる。また、歩行支援装置10が停止するため、使用者は、歩行トレーニングの内容を容易に再検討することが可能となる。
【0224】
[他の第5実施形態]
(E)また、例えば、操作パネル70に、歩行トレーニングの強度を変更するために操作する「弱選択ボタン」、「中選択ボタン」、「強選択ボタン」を設けるようにしてもよい。そして、「弱選択ボタン」が操作された場合には、制御装置40は、上記ステップSB614において、右目標速度と左目標速度とを、例えば、「3%」(所定の第2割合)だけ速くするように設定した後、上記ステップSB620の処理に進むようにしてもよい。
【0225】
また、制御装置40は、上記ステップSB712において、目標歩行周期TSを、歩行周期TBよりも「3%」(所定の第1割合)だけ短くなるように設定した後、上記ステップSB716の処理に進むようにしてもよい。また、制御装置40は、上記ステップSB715において、目標歩行周期TSを、歩行周期TBよりも「3%」(所定の第3割合)だけ長くなるように設定した後、上記ステップSB716の処理に進むようにしてもよい。
【0226】
また、「中選択ボタン」が操作された場合には、制御装置40は、上記ステップSB614において、右目標速度と左目標速度とを、例えば、「5%」(所定の第2割合)だけ速くするように設定した後、上記ステップSB620の処理に進むようにしてもよい。また、制御装置40は、上記ステップSB712において、目標歩行周期TSを、歩行周期TBよりも「5%」(所定の第1割合)だけ短くなるように設定した後、上記ステップSB716の処理に進むようにしてもよい。また、制御装置40は、上記ステップSB715において、目標歩行周期TSを、歩行周期TBよりも「5%」(所定の第3割合)だけ長くなるように設定した後、上記ステップSB716の処理に進むようにしてもよい。
【0227】
また、「強選択ボタン」が操作された場合には、制御装置40は、上記ステップSB614において、右目標速度と左目標速度とを、例えば、「8%」(所定の第2割合)だけ速くするように設定した後、上記ステップSB620の処理に進むようにしてもよい。また、制御装置40は、上記ステップSB712において、目標歩行周期TSを、歩行周期TBよりも「8%」(所定の第1割合)だけ短くなるように設定した後、上記ステップSB716の処理に進むようにしてもよい。また、制御装置40は、上記ステップSB715において、目標歩行周期TSを、歩行周期TBよりも「8%」(所定の第3割合)だけ長くなるように設定した後、上記ステップSB716の処理に進むようにしてもよい。
【0228】
これにより、「歩行モード1」、「歩行モード2」、「歩行モード3」のうちのいずれかの歩行モードで歩行支援装置10を使用して、歩行トレーニングを行う際に、使用者又は理学療法士等は、「弱選択ボタン」、「中選択ボタン」、「強選択ボタン」を操作することによって、使用者の歩行能力に合わせて歩行トレーニングの強度を変更することでき、歩行能力を効果的に改善することができる。尚、上記3%~8%は、一例であり、任意の割合に変更してもよい。
【0229】
[他の第6実施形態]
(F)また、例えば、前記実施形態では、ロック機構の各操作部31L、31Rを操作して、「ロック状態」と「解除状態」とに切り替え可能な構成にしたが、各操作部31L、31Rを「ロック状態」に固定した構成にしてもよい。つまり、左右の持ち手20L、20R、又は、各グリップ18L、18Rを把持して腕を振らずに歩行する「手押しモード」のみで使用可能な歩行支援装置10の構成にしてもよい。この場合には、操作パネル70には、「腕振りモード指示部74」と、「手押しモード指示部75」とを設けないで、制御装置40は、起動時に、切替モードを「手押しモード」に設定するようにしてもよい。つまり、制御装置40は、上記ステップSB050~ステップSB070Bの処理(図15参照)に替えて、常に、「動作モード」に「手押しモード」を記憶する処理を実行するようにしてもよい。
【0230】
これにより、上記ステップS020にて制御装置40が実行するSB200(歩行周期取得処理)では、常に、制御装置40は、ステップSB210:NO~ステップSB230~ステップSB235~ステップSB215~ステップSB221(図17参照)の処理を実行する。つまり、制御装置40は、歩行支援装置40の進行速度の変化に基づいて、使用者の歩行周期TW1(図22参照)を取得して、使用者の歩行周期TBを算出する(図17参照)。
【0231】
その結果、制御装置40は、各歩行モード1~3に対する目標歩行周期TSを設定して、スピーカ66を介して、目標歩行周期TSに等しい周期に設定した周期音(例えば、一定周期のメトロノームのテンポ音、楽器のリズム音、掛け声等)の出力をすることができる(図21参照)。また、制御装置40は、各歩行モード1~3に対する走行速度、つまり、各歩行モード1~3に対する目標歩行周期TSに応じた走行速度を設定して、各走行用駆動装置64L、64Rを駆動制御することができる(図20参照)。
【0232】
従って、使用者は、「歩行モード1」乃至「歩行モード3」のうち、いずれか1つの歩行支援モードを選択することによって、各持ち手20L、20R、又は、各グリップ18L、18Rを把持した「手押しモード」で、周期音に合わせて左足又は右足の踵を接地させるように歩行することによって、歩行率[歩/分]や歩幅[cm]を改善する歩行トレーニングを行うことができ、歩行能力を改善することができる。
【0233】
[他の第7実施形態]
(G)また、例えば、前記実施形態では、複数の車輪を有する歩行支援装置10を、四輪車として2個の駆動輪を設けた例を説明したが、歩行支援装置10を前一輪、後ろ二輪の三輪車にして、前輪を駆動輪、後輪の二輪をキャスタ輪としてもよい。つまり、歩行支援装置10は、少なくとも1つの駆動輪を有していればよい。また、前記実施形態の説明では、走行用駆動装置(電動モータ)64L、64Rの制御において、「進行速度」を調整する例を説明したが、「速度」の制御に限らず「トルク」を制御するようにしてもよく、モータトルクを制御して進行速度を調整するようにしてもよい。
【0234】
[他の第8実施形態]
(H)また、例えば、それぞれの持ち手20R、20Lの状態(位置)を検出する持ち手状態検出装置21RS、21LSや、進行速度を検出する進行速度検出装置64LE、64REは、エンコーダに限定されるものではなく、前記実施形態にて示した構成や配置等に限定されず、種々の構成や配置とすることができる。また、シャフト位置復元装置として、シャフト側弾性部材26Rと筒状部側弾性部材35R1(図8参照)を用いた例を説明したが、シャフト位置復元装置は、これに限定されるものではない。
【0235】
[他の第9実施形態]
(I)また、例えば、制御装置40は、上記ステップSB211~ステップSB212において、右持ち手20Rが右後端位置に位置する時刻T1を取得したが、制御装置40は、右持ち手20Rが右前端位置に位置する時刻T1を取得するようにしてもよい。また、制御装置40は、右持ち手20Rがシャフト基準位置に位置する時刻T1を取得するようにしてもよい。
【0236】
また、制御装置40は、左持ち手20Lが左後端位置に位置する時刻T1を取得するようにしてもよい。また、制御装置40は、左持ち手20Lが左前端位置に位置する時刻T1を取得するようにしてもよい。また、制御装置40は、左持ち手20Lがシャフト基準位置に位置する時刻T1を取得するようにしてもよい。これにより、制御装置40は、上記ステップSB213において、腕振り状態(持ち手状態)に基づいて使用者の計測歩行周期TW1を取得することができる。
【0237】
[他の第10実施形態]
(J)また、例えば、前記実施形態の説明では、対地速度補正量と中央位置速度補正量を用いて進行速度を調整する例を説明したが、中央位置速度補正量を省略して対地速度補正量にて進行速度を調整するようにしてもよいし、対地速度補正量を省略して中央位置速度補正量にて進行速度を調整するようにしてもよい。また、前記実施形態の説明では、進行速度が大きくなるにしたがって対地速度補正量を小さくする例を説明したが、これに限定されるものではない。
【0238】
[他の第11実施形態]
(K)また、例えば、シャフト21L、21Rが筒状部30L、30Rから抜けることを防止する抜け防止構造(抜け防止部材25R、抜け防止パネル36R(図11参照))、シャフト21L、21Rが筒状部30L、30R内で回転することを防止する回転防止構造(案内レール32R、被案内部材24R(図4参照))は、種々の構造とすることが可能であり、前記実施形態にて説明した構造に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0239】
10 歩行支援装置
20L、20R 持ち手
21L、21R シャフト
21LS、21RS 持ち手状態検出装置
21R1 持ち手嵌合孔
21R2 ロック孔
24R 被案内部材(回転防止構造)
25R 抜け防止部材(抜け防止構造)
26R シャフト側弾性部材(シャフト位置復元装置)
30L、30R 筒状部
30R1 孔部
31L、31R ロック操作部
31R1 スライダ
31R2 揺動部材
31R3 ロック突起
31R4 弾性部材
32R 案内レール(回転防止構造)
33R 案内ローラ
34R 蓋部
35R1 筒状部側弾性部材(シャフト位置復元装置)
35R2 カラー
35R3 ダンパ
35R4 弾性ユニット
36R 抜け防止パネル(抜け防止構造)
40 制御装置
40A 装置対地速度算出部
40B 持ち手前後位置算出部
40C 持ち手移動速度算出部
40D 持ち手対地速度算出部
40E 対地速度補正量算出部
40F 進行速度調整部
40G 持ち手前後中央位置算出部
40H 中央位置速度補正量算出部
44 記憶装置
50 フレーム
50K バッグ
50S 3軸加速度・角速度センサ
51L、51R 筒状部支持体
52L、52R 車輪支持体
53 連結体
60FL、60FR 前輪
60RL、60RR 後輪(駆動輪)
64L、64R 走行用駆動装置(電動モータ)
64LE、64RE 進行速度検出装置
66 スピーカ
70 操作パネル
72 メインスイッチ
73 バッテリ残量表示部
74 腕振りモード指示部
75 手押しモード指示部
76 駆動トルク調整部
B バッテリ
BKL ブレーキレバー
Pmc 持ち手前後中央位置
PmL、PmR 持ち手前後位置
Ps 仮想前後基準位置
W1 前後規制範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25