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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】ロボット用吸着ハンド
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/06 20060101AFI20230704BHJP
【FI】
B25J15/06 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019140279
(22)【出願日】2019-07-30
(65)【公開番号】P2021020302
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-01-31
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】山中 晶貴
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 崇之
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-220812(JP,A)
【文献】国際公開第2017/090201(WO,A1)
【文献】特開2010-099780(JP,A)
【文献】特開昭62-218681(JP,A)
【文献】特開2003-129978(JP,A)
【文献】特開平10-238462(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102010009083(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0290816(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/06
H05K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットに取り付けられ、吸着部によりワークを吸着するロボット用吸着ハンドであって、
吸気口及び排気口が形成されたハウジングと、前記ハウジングに収納されて回転することで前記吸気口から空気を吸引して前記排気口から空気を排出するロータと、電動モータと、前記電動モータの回転力を前記ロータに伝達する伝達機構と、を備える真空ポンプを内蔵し、
前記吸着部は、吸引通路を介して前記吸気口に接続されており、
前記ハウジングには、内部で前記ロータが回転可能な空間であるロータ室と、前記ロータ室と前記ハウジングの外部とを連通させる排気通路とが形成されており、
前記電動モータは、前記ロータ室から前記排気口へ延びる前記排気通路の延長線上に配置されており、
前記吸着部は、前記ロボット用吸着ハンドの長手方向の先端に配置されており、
前記吸気口は、前記長手方向のうち前記吸着部の方向に開口しており、
前記電動モータの出力軸と前記ロータの回転軸とが平行であり、
前記伝達機構は、前記電動モータ及び前記ハウジングに対して前記出力軸の軸線方向のうち一方側に配置されており、
前記吸着部、前記吸引通路、前記ハウジング、前記電動モータの順で前記長手方向に並んでいる、ロボット用吸着ハンド。
【請求項2】
ロボットに取り付けられ、吸着部によりワークを吸着するロボット用吸着ハンドであって、
吸気口及び排気口が形成されたハウジングと、前記ハウジングに収納されて回転することで前記吸気口から空気を吸引して前記排気口から空気を排出するロータと、電動モータと、前記電動モータの回転力を前記ロータに伝達する伝達機構と、を備える真空ポンプを内蔵し、
前記吸着部は、吸引通路を介して前記吸気口に接続されており、
前記電動モータは、前記排気口に対向する位置に配置されており、
前記吸着部は、前記ロボット用吸着ハンドの長手方向の先端に配置されており、
前記吸気口は、前記長手方向のうち前記吸着部の方向に開口しており、
前記電動モータの出力軸と前記ロータの回転軸とが平行であり、
前記伝達機構は、前記電動モータ及び前記ハウジングに対して前記出力軸の軸線方向のうち一方側に配置されており、
前記吸着部、前記吸引通路、前記ハウジング、前記電動モータの順で前記長手方向に並んでいる、ロボット用吸着ハンド。
【請求項3】
ロボットに取り付けられ、吸着部によりワークを吸着するロボット用吸着ハンドであって、
吸気口及び排気口が形成されたハウジングと、前記ハウジングに収納されて回転することで前記吸気口から空気を吸引して前記排気口から空気を排出するロータと、電動モータと、前記電動モータの回転力を前記ロータに伝達する伝達機構と、を備える真空ポンプを内蔵し、
前記吸着部は、吸引通路を介して前記吸気口に接続されており、
前記電動モータは、前記ハウジングの内部から前記排気口へ延びる排気通路の延長線上に配置されており、
前記吸着部は、前記ロボット用吸着ハンドの長手方向の先端に配置されており、
前記吸気口は、前記長手方向のうち前記吸着部の方向に開口しており、
前記電動モータの出力軸と前記ロータの回転軸とが平行であり、
前記伝達機構は、前記電動モータ及び前記ハウジングに対して前記出力軸の軸線方向のうち一方側に配置されており、
前記吸着部、前記吸引通路、前記ハウジング、前記電動モータの順で前記長手方向に並んでいる、ロボット用吸着ハンド。
【請求項4】
前記排気口は、前記ハウジングの内側から外側に向けて広がるテーパ状に形成されている、請求項1~のいずれか1項に記載のロボット用吸着ハンド。
【請求項5】
前記吸引通路は、直線状に形成されており、
前記吸引通路、前記吸気口、及び前記排気口が同一直線上に配置されている、請求項1~のいずれか1項に記載のロボット用吸着ハンド。
【請求項6】
前記真空ポンプは、ルーツポンプである、請求項1~のいずれか1項に記載のロボット用吸着ハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットに取り付けられて用いられる吸着ハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボットに取り付けられ、ワークを吸着して保持する吸着ハンドがある(特許文献1参照)。特許文献1に記載の吸着ハンドには、空気を吸引又は放出するための管が接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-139835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、吸着ハンドに接続された管は、吸着ハンドから離れた位置に設置された真空ポンプに接続されている。このため、ロボットの動作時に、管がロボットに絡まるおそれがある。しかし、真空ポンプを吸着ハンドに内蔵して管を省略するためには、真空ポンプを小型化しなければならない。真空ポンプのロータを駆動する電動モータを小型化した場合は、電動モータの負荷が高くなり、電動モータの温度ひいては吸着ハンドの温度が過度に上昇するおそれがある。
【0005】
本発明は、こうした課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、真空ポンプを内蔵したロボット用吸着ハンドにおいて、吸着ハンドの温度が過度に上昇することを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の手段は、
ロボットに取り付けられ、吸着部によりワークを吸着するロボット用吸着ハンドであって、
吸気口及び排気口が形成されたハウジングと、前記ハウジングに収納されて回転することで前記吸気口から空気を吸引して前記排気口から空気を排出するロータと、電動モータと、前記電動モータの回転力を前記ロータに伝達する伝達機構と、を備える真空ポンプを内蔵し、
前記吸着部は、吸引通路を介して前記吸気口に接続されており、
前記電動モータは、前記排気口に対向する位置に配置されている。
【0007】
上記構成によれば、ロボット用吸着ハンドは、ロボットに取り付けられ、吸着部によりワークを吸着する。
【0008】
ここで、真空ポンプは、吸気口及び排気口が形成されたハウジングと、ハウジングに収納されて回転することで吸気口から空気を吸引して排気口から空気を排出するロータと、電動モータと、電動モータの回転力をロータに伝達する伝達機構と、を備えている。このため、電動モータを駆動することにより、電動モータの回転力が伝達機構によってロータに伝達され、ロータが回転する。ハウジングに収納されたロータが回転することで、ロータは吸気口から空気を吸引して排気口から空気を排出する。吸着部は、吸引通路を介して吸気口に接続されている。このため、吸気口から空気を吸引することにより、吸着部を負圧にすることができ、吸着部によりワークを吸着することができる。
【0009】
上記ロボット用吸着ハンドは、上記真空ポンプを内蔵している。このため、吸着ハンドから離れた位置に設置された真空ポンプと吸着ハンドとを管で接続する必要がなく、ロボットの動作時に管がロボットに絡まることを防ぐことができる。さらに、電動モータは、排気口に対向する位置に配置されている。このため、排気口から排出される空気を電動モータに当てることができ、電動モータを空冷することができる。したがって、電動モータを小型化して電動モータの負荷が高くなったとしても、電動モータの温度が過度に上昇することを抑制することができ、ひいては吸着ハンドの温度が過度に上昇することを抑制することができる。
【0010】
なお、電動モータは排気口に対向する位置に配置されているという構成は、通気性の部材や、空気を通過させる通路が形成された部材等を介して、電動モータと排気口とが対向する構成を含む。
【0011】
第2の手段は、
ロボットに取り付けられ、吸着部によりワークを吸着するロボット用吸着ハンドであって、
吸気口及び排気口が形成されたハウジングと、前記ハウジングに収納されて回転することで前記吸気口から空気を吸引して前記排気口から空気を排出するロータと、電動モータと、前記電動モータの回転力を前記ロータに伝達する伝達機構と、を備える真空ポンプを内蔵し、
前記吸着部は、吸引通路を介して前記吸気口に接続されており、
前記電動モータは、前記ハウジングの内部から前記排気口へ延びる排気通路の延長線上に配置されている。
【0012】
上記構成によれば、第1の手段と同様の前提構成を備え、電動モータは、ハウジングの内部から排気口へ延びる排気通路の延長線上に配置されている。このため、排気通路を介して排気口から排出される空気を電動モータに当てることができ、電動モータを空冷することができる。したがって、電動モータを小型化して電動モータの負荷が高くなったとしても、電動モータの温度が過度に上昇することを抑制することができ、ひいては吸着ハンドの温度が過度に上昇することを抑制することができる。
【0013】
電動モータの大きさに対して排気口の大きさが小さいと、排気口から排出される空気が電動モータのごく一部にしか当たらないおそれがある。その場合、排気により電動モータを空冷する効果が低くなるおそれがある。
【0014】
この点、第3の手段では、前記排気口は、前記ハウジングの内側から外側に向けて広がるテーパ状に形成されている。こうした構成によれば、排気口から排出される空気が流れる範囲を広げることができる。したがって、電動モータに空気が当たる範囲を広げることができ、空気により電動モータを空冷する効果を向上させることができる。
【0015】
第4の手段では、前記吸着部は、前記ロボット用吸着ハンドの長手方向の先端に配置されており、前記吸気口は、前記長手方向のうち前記吸着部の方向に開口しており、前記電動モータの出力軸と前記ロータの回転軸とが平行であり、前記伝達機構は、前記電動モータ及び前記ハウジングに対して前記出力軸の軸線方向のうち一方側に配置されており、前記吸着部、前記吸引通路、前記ハウジング、前記電動モータの順で前記長手方向に並んでいる。
【0016】
上記構成によれば、吸着部は、ロボット用吸着ハンドの長手方向の先端に配置されている。このため、ロボット用吸着ハンドの長手方向をワークに向けるようにロボットを制御することにより、長手方向の先端に配置された吸着部によりワークを吸着することができる。吸気口は、長手方向のうち吸着部の方向に開口している。このため、吸気口と吸着部とを直線状の吸引通路により接続することができ、ロボット用吸着ハンドの構成を簡潔にすることができる。
【0017】
一般に、長手方向のうち吸着部の方向に吸気口が開口している場合、吸着部と反対の方向に排気口が開口し、ロータの回転軸は長手方向と垂直になる。このため、ロボット用吸着ハンドの構成を簡潔にするために、ロータの回転軸と電動モータの出力軸とを一体にすると、電動モータはハウジングに対して回転軸の軸線方向(長手方向に垂直な方向)に配置される。この場合、排気口に対向する位置に、電動モータを配置することができなくなる。
【0018】
この点、電動モータの出力軸とロータの回転軸とが平行であり、伝達機構は、電動モータ及びハウジングに対して出力軸の軸線方向のうち一方側に配置されている。このため、ロータの回転軸と電動モータの出力軸とが一体でない構成であっても、電動モータの回転力をロータに伝達することができる。さらに、吸着部、吸引通路、ハウジング、電動モータの順で長手方向に並んでいる。このため、長手方向において、ハウジングに対して吸着部と反対の方向、すなわち排気口が開口する方向に電動モータを配置することができる。したがって、ロボット用吸着ハンドの構成を簡潔にしつつ、排気口から排出される空気により電動モータを空冷する構成を実現することができる。
【0019】
第5の手段では、前記吸引通路は、直線状に形成されており、前記吸引通路、前記吸気口、及び前記排気口が同一直線上に配置されている。
【0020】
上記構成によれば、吸引通路は、直線状に形成されている。そして、吸引通路、吸気口、及び排気口が同一直線上に配置されている。このため、吸着部から排気口までの距離を最短にすることができ、真空ポンプの排気効率を向上させることができる。さらに、吸着部から排気口まで空気を送る効率を向上させることができるため、排気により電動モータを空冷する効果を向上させることができる。
【0021】
具体的には、第6の手段のように、前記真空ポンプは、ルーツポンプである、といった構成を採用することができる。ルーツポンプは、構成が簡潔であるため、小型化が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】ロボット及び吸着ハンドを示す模式図。
図2】吸着ハンドの正面断面図。
図3】ケースを外した状態の吸着ハンドの側面図。
図4】ケースを一部省略した吸着ハンドの背面図。
図5】焼結材を空気が通過する態様を示す模式図。
図6】第1部材、第2部材の効果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、ワークを吸着して搬送する多関節ロボットに具現化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
図1に示すように、ロボット10は、台80の上に置かれたワークWを吸着ハンド20により吸着して、別の場所まで搬送する。
【0025】
ロボット10は、例えば6軸の垂直多関節型ロボットであり、基台11(ベース)とアーム10Aとを備えている。アーム10Aの隣り合うリンク13,15(一部のみ図示)は、順に関節12,14,16(一部のみ図示)を介して相対回転可能に連結されている。各関節12,14,16は、各関節12,14,16に対応する各モータ(図示せず)により駆動される。
【0026】
例えばロボット10の各関節12,14,16には、各関節12,14,16の回転角度を検出するエンコーダ81,82,83がそれぞれ設けられている。すなわち、エンコーダ81,82,83は、アーム10Aの制御点の位置及び姿勢を検出する。制御点は、アーム10Aの先端18の中央に設定されている。アーム10Aの先端18には、吸着ハンド20が取り付けられている。
【0027】
基台11の内部には、ロボット10及び吸着ハンド20の動作を制御する制御部86が設けられている。制御部86は、CPU、ROM、RAM、駆動回路、及び入出力インターフェース等を備えるコンピュータとして構成されている。
【0028】
台80の上には、シート状(薄型)の複数のワークWが置かれている。一対の把持爪を備えるグリップハンドでは、シート状のワークWを把持しにくく搬送が困難である。そこで、ロボット10は、吸着ハンド20によりワークWを吸着して搬送する。
【0029】
図2は吸着ハンド20の正面断面図であり、図3はケース78を外した状態の吸着ハンド20の側面図であり、図4はケース78を一部省略した吸着ハンド20の背面図である。図2に示すように、吸着ハンド20(ロボット用吸着ハンド)は、真空ポンプ30、ヘッド部60、吸盤部70、基板73、コネクタ76、ケース78等を備えている。吸着ハンド20は、真空ポンプ30、基板73、及びコネクタ76を内蔵している。
【0030】
真空ポンプ30は、容積型の回転ポンプであり、詳しくはルーツポンプである。真空ポンプ30は、ハウジング31、ロータ41,42、モータ45、ギヤ機構50等を備えている。
【0031】
ハウジング31は、金属等により直方体状に形成されており、内部にロータ室32が形成されている。ロータ室32は、ロータ41,42を収納し、内部でロータ41,42が回転可能な空間である。ハウジング31には、ロータ室32とハウジング31の外部とを連通させる吸気通路33及び排気通路34が形成されている。吸気通路33及び排気通路34は直線状に形成されており、同一の直線C上に配置されている。直線Cの方向は、吸着ハンド20の長手方向と一致している。ハウジング31の外部への吸気通路33の開口が吸気口33aである。ハウジング31の外部への排気通路34の開口が排気口34aである。排気口34aは、ハウジング31の内側から外側に向けて広がる円錐状(テーパ状)に形成されている。
【0032】
第1ロータ41の第1回転軸41a及び第2ロータ42の第2回転軸42aは、直線Cに垂直な平面上に配置されている。すなわち、吸着ハンド20の側面視において、直線C(吸着ハンド20の長手方向)と回転軸41a,42aとは垂直になっている。第1回転軸41aと第2回転軸42aとは平行である。ロータ41,42は、金属等により形成され、互いに噛み合う山歯及び谷歯を有する二葉型のロータである。ロータ41,42が回転することで、吸気口33aから空気を吸引して排気口34aから空気を排出する。ロータ41,42(真空ポンプ30)は、吸気口33aから間欠的に空気を吸引して排気口34aから間欠的に空気を排出する。
【0033】
モータ45(電動モータ)は、例えば直流電力により駆動される直流モータである。モータ45の出力軸46は、直線Cに垂直である。モータ45の出力軸46は、回転軸41a,42aと平行である。モータ45は、ハウジング31に対して吸盤部70と反対側に配置されている。モータ45とハウジング31との間には、所定隙間が形成されている。
【0034】
図3に示すように、モータ45及びハウジング31に対してモータ45の出力軸46の軸線方向(図3で左右方向)のうち一方側(図3で左側)には、ギヤ機構50が配置されている。すなわち、モータ45及びハウジング31は、ギヤ機構50に対して同じ側に配置されている。
【0035】
ギヤ機構50(伝達機構)は、モータ45の回転力をロータ41,42に伝達する。図4に示すように、ギヤ機構50は、ギヤ51~54と仲介軸55とを備えている。モータ45の出力軸46には、出力ギヤ51が取り付けられている。仲介軸55は、出力軸46、回転軸41a,42aと平行である。仲介軸55には、仲介ギヤ52が取り付けられている。出力ギヤ51と仲介ギヤ52とは互いに噛み合っている。第1ロータ41の第1回転軸41aには、第1ギヤ53が取り付けられている。仲介ギヤ52と第1ギヤ53とは互いに噛み合っている。第2ロータ42の第2回転軸42aには、第2ギヤ54が取り付けられている。第1ギヤ53と第2ギヤ54とは互いに噛み合っている。
【0036】
モータ45の出力軸46の回転力は、出力ギヤ51、仲介ギヤ52、及び第1ギヤ53を介して、第1ロータ41の第1回転軸41aに伝達される。これにより、第1ロータ41が回転させられる。また、モータ45の出力軸46の回転力は、出力ギヤ51、仲介ギヤ52、第1ギヤ53、及び第2ギヤ54を介して、第2ロータ42の第2回転軸42aに伝達される。これにより、第2ロータ42が回転させられる。第1ロータ41と第2ロータ42とは等しい回転速度で逆方向に回転する。
【0037】
図2,3に示すように、ハウジング31に対してモータ45と反対側にヘッド部60が配置されている。ヘッド部60は、金属等により、フランジ部60aを有する円筒状に形成されている。ヘッド部60の内部には、直線Cの方向(吸着ハンド20の長手方向)に延びる吸引通路61が形成されている。吸引通路61は直線状に形成されている。このため、吸引通路61、吸気口33a、及び排気口34aが同一の直線C上に配置されている。ヘッド部60の先端部(ハウジング31と反対側の端部)には、吸盤部70が取り付けられている。すなわち、吸盤部70は、吸着ハンド20の長手方向の先端に配置されている。そして、吸盤部70、吸引通路61、ハウジング31、モータ45の順で、直線Cの方向に並んでいる。
【0038】
吸盤部70(吸着部)は、ゴム等により円盤状に形成されている。吸盤部70には、貫通孔71が形成されている。貫通孔71は、直線Cの方向に吸盤部70を貫通している。ハウジング31の吸気口33aは、吸引通路61を介して貫通孔71に接続されている。このため、吸気口33aから空気が吸引されると、吸盤部70の貫通孔71から空気が吸引される。これにより、吸盤部70の内部が負圧となり、吸盤部70によりワークWが吸着される。
【0039】
基板73は、モータ45に電力を供給する電源回路、モータ45の駆動を制御する制御回路等を備えている。基板73は、コネクタ76により、上記アーム10Aのケーブル(図示略)に接続されている。上記制御部86からケーブルを介して、基板73に電力が供給されるとともに、信号が送信される。基板73は、制御部86から受信した信号に基づいて、モータ45の駆動を制御する。これにより、吸着ハンド20の動作が制御される。
【0040】
吸着ハンド20は、ケース78を備えている。真空ポンプ30及び基板73は、ケース78内に収納されている。
【0041】
上記構成において、真空ポンプ30は、吸着ハンド20に内蔵するために、小型化されている。このため、真空ポンプ30のロータ41,42を駆動するモータ45も小型化されている。モータ45が小型の場合、モータ45がロータ41,42を駆動する負荷が高くなり、モータ45の温度ひいては吸着ハンド20の温度が過度に上昇するおそれがある。
【0042】
そこで、本実施形態では、モータ45は、ハウジング31の排気口34aに対向する位置に配置されている。換言すれば、モータ45は、ハウジング31の内部から排気口34aへ延びる排気通路34の延長線(直線C)上に配置されている。このため、排気口34aから排出される空気がモータ45に当たり、モータ45が空冷される。
【0043】
ただし、モータ45の大きさに対して排気口34aの大きさが小さいと、排気口34aから排出される空気がモータ45のごく一部にしか当たらないおそれがある。その場合、排気によりモータ45を空冷する効果が低くなるおそれがある。
【0044】
この点、排気口34aは、ハウジング31の内側から外側に向けて広がる円錐状(テーパ状)に形成されている。このため、排気口34aから排出される空気は、広がりながらモータ45の方向へ流れる。
【0045】
また、ハウジング31において、直線Cの方向のうち吸盤部70の方向に吸気口33aが開口し、吸盤部70と反対の方向に排気口34aが開口している。ロータ41,42の回転軸41a,42aは、直線Cの方向と垂直になっている(直線Cに垂直な平面上に配置されている)。ここで、吸着ハンド20の構成を簡潔にするために、ロータ41,42の回転軸41a,42aの一方とモータ45の出力軸46とを一体にすると、モータ45はハウジング31に対して回転軸41a,42aの軸線方向に配置される。この場合、排気口34aに対向する位置に、モータ45を配置することができなくなる。
【0046】
この点、モータ45の出力軸46とロータ41,42の回転軸41a,42aとが平行であり、ギヤ機構50は、モータ45及びハウジング31に対して出力軸46の軸線方向のうち一方側に配置されている。このため、モータ45の回転力はギヤ機構50を介してロータ41,42に伝達される。
【0047】
なお、吸着ハンド20の吸盤部70によりワークWを吸着していない状態から、吸盤部70によりワークWを吸着した状態に移行すると、吸気口33aから吸引される空気及び排気口34aから排出される空気が徐々に減少する。しかし、吸盤部70とワークWとは完全には密着せず、吸盤部70とワークWとの間にわずかに隙間が形成される。このため、この隙間から空気が吸引されて、排気口34aからの空気の排出が継続される。また、排気口34aでは、空気の圧力差により、空気の逆流が生じる。このため、逆流した空気が排気口34aから再び排出されて、排気口34aからの空気の排出が継続される。したがって、吸着ハンド20によりワークWを吸着した状態であっても、モータ45を空冷することができる。また、吸着ハンド20によりワークWを吸着しない時にモータ45を停止させると、排気口34aからの空気の排出が停止する。しかし、この場合、モータ45の発熱も停止するため、モータ45の温度が過度に上昇することは抑制される。
【0048】
また、真空ポンプ30は、吸気口33aから間欠的に空気を吸引して排気口34aから間欠的に空気を排出する。真空ポンプ30が吸気口33aから間欠的に空気を吸引する時に生じる空気の圧力差により、吸気口33aにおいて脈動音が発生する。また、真空ポンプ30が排気口34aから間欠的に空気を排出する時に生じる空気の圧力差により、吸気口33aで発生する脈動音よりも大きな脈動音が排気口34aで発生する。なお、第1ロータ41の第1回転軸41aが1回転する間に、排気口34aにおいて、ロータ数(2)×ロータの葉数(2)=4回の脈動音が発生する。ロボット10とユーザ(人)とが協働して互いに近くで作業する場合もあるため、吸着ハンド20から発生する騒音を抑制することが望ましい。
【0049】
そこで、本実施形態では、第1部材48により排気口34aを覆っている。すなわち、第1部材48は、真空ポンプ30において脈動音が発生する開口(箇所)を覆っている。第1部材48は、ステンレス鋼の焼結材(多孔質材料)により形成されている。このため、第1部材48を介して排気口34aとモータ45とが対向していても、排気口34aから排出された空気は第1部材48を通過してモータ45に当たる。すなわち、通気性の第1部材48や、空気を通過させる通路が形成された第1部材48を介して、モータ45と排気口34aとが対向していても、モータ45を空冷することができる。
【0050】
第1部材48は、ハウジング31のうち排気口34aが形成された面31a(所定面)と同形状の板状に形成され、面31aに取り付けられている。詳しくは、第1部材48は、矩形板状に形成され、ボルト48a(図3参照)によりハウジング31に固定されている。これにより、第1部材48は面31aに密接している。
【0051】
そして、真空ポンプ30が駆動されると、排気口34aから第1部材48を介して空気が排出される。図5に示すように、排気口34aから排出された空気は、第1部材48を通過する際に焼結材の内部に形成された微細な隙間を通過する。その結果、空気の圧力差が小さくなり、排気口34aで発生する脈動音(騒音)が抑制される。
【0052】
上記のように、真空ポンプ30が吸気口33aから間欠的に空気を吸引する時に生じる空気の圧力差により、吸気口33aにおいても脈動音が発生する。
【0053】
そこで、本実施形態では、第2部材49により吸気口33aを覆っている。詳しくは、第2部材49は、ヘッド部60の内部に吸引通路61の一部として形成された空間61aを介して吸気口33aを覆っている。すなわち、第2部材49は、真空ポンプ30において脈動音が発生する開口(箇所)を覆っている。第2部材49は、ステンレス鋼の焼結材(多孔質材料)により形成されている。第2部材49は、円形の板状に形成されている。
【0054】
そして、真空ポンプ30が駆動されると、第2部材49及び空間61aを介して吸気口33aから空気が吸引される。図5の第1部材48と同様に、吸気口33aから吸引される空気は、第2部材49を通過する際に焼結材の内部に形成された微細な隙間を通過する。その結果、空気の圧力差が小さくなり、吸気口33aで発生する脈動音(騒音)が抑制される。
【0055】
図6は、第1部材48、第2部材49の効果を示すグラフである。第1部材48及び第2部材49がない点を除いて本実施形態と同一の第1比較例では、騒音が約77dBとなっている。第1部材48がない点を除いて本実施形態と同一の第2比較例では、騒音が約76dBとなっている。すなわち、第2部材49は、騒音を約1dB抑制する効果がある。本実施形態では、騒音が約65dBとなっている。すなわち、第1部材48及び第2部材49により、騒音を約12dB抑制する効果がある。
【0056】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0057】
・吸着ハンド20は、真空ポンプ30を内蔵している。このため、吸着ハンド20から離れた位置に設置された真空ポンプ30と吸着ハンド20とを管で接続する必要がなく、ロボット10の動作時に管がロボット10に絡まることを防ぐことができる。真空ポンプ30は、ルーツポンプであるため、構成が簡潔であり、小型化が容易である。
【0058】
・モータ45は、排気口34aに対向する位置に配置されている。換言すれば、モータ45は、ハウジング31の内部から排気口34aへ延びる排気通路34の延長線上に配置されている。このため、排気口34aから排出される空気をモータ45に当てることができ、モータ45を空冷することができる。したがって、モータ45を小型化してモータ45の負荷が高くなったとしても、モータ45の温度が過度に上昇することを抑制することができ、ひいては吸着ハンド20の温度が過度に上昇することを抑制することができる。
【0059】
・排気口34aは、ハウジング31の内側から外側に向けて広がるテーパ状に形成されている。こうした構成によれば、排気口34aから排出される空気が流れる範囲を広げることができる。したがって、モータ45に空気が当たる範囲を広げることができ、空気によりモータ45を空冷する効果を向上させることができる。
【0060】
・吸盤部70は、吸着ハンド20の長手方向(以下、単に「長手方向」という)の先端に配置されている。このため、吸着ハンド20の長手方向をワークWに向けるようにロボット10を制御することにより、長手方向の先端に配置された吸盤部70によりワークWを吸着することができる。吸気口33aは、長手方向のうち吸盤部70の方向に開口している。このため、吸気口33aと吸盤部70とを直線状の吸引通路61により接続することができ、吸着ハンド20の構成を簡潔にすることができる。
【0061】
・モータ45の出力軸46とロータ41,42の回転軸41a,42aとが平行であり、ギヤ機構50は、モータ45及びハウジング31に対して出力軸46の軸線方向のうち一方側に配置されている。このため、ロータ41,42の回転軸41a,42aの一方とモータ45の出力軸46とが一体でない構成であっても、モータ45の回転力をロータ41,42に伝達することができる。さらに、吸盤部70、吸引通路61、ハウジング31、モータ45の順で長手方向に並んでいる。このため、長手方向において、ハウジング31に対して吸盤部70と反対の方向、すなわち排気口34aが開口する方向にモータ45を配置することができる。したがって、吸着ハンド20の構成を簡潔にしつつ、排気口34aから排出される空気によりモータ45を空冷する構成を実現することができる。
【0062】
・吸引通路61は、直線状に形成されている。そして、吸引通路61、吸気口33a、及び排気口34aが同一の直線C上に配置されている。このため、吸盤部70から排気口34aまでの距離を最短にすることができ、真空ポンプ30の排気効率を向上させることができる。さらに、吸盤部70から排気口34aまで空気を送る効率を向上させることができるため、排気によりモータ45を空冷する効果を向上させることができる。
【0063】
・多孔質材料で形成された第1部材48が排気口34aを覆っているため、排気口34aから第1部材48を介して空気が排出される。排気口34aから排出された空気は、第1部材48を通過する際に多孔質材料の内部に形成された微細な隙間を通過する。その結果、空気の圧力差が小さくなり、排気口34aで発生する脈動音(騒音)を抑制することができる。さらに、多孔質材料で形成された第1部材48で排気口34aを覆うだけであるため、騒音を抑制するための構成を簡素化することができ、真空ポンプ30を小型化することができる。
【0064】
・第1部材48は、ステンレス鋼の焼結材により形成されている。こうした構成によれば、真空ポンプ30のいわゆるサイレンサと比較して、第1部材48を低コストで製造することができるとともに、第1部材48の耐久性を向上させることができる。
【0065】
・多孔質材料で形成された第2部材49が吸気口33aを覆っている。このため、吸気口33aで発生する脈動音(騒音)も抑制することができ、吸着ハンド20から発生する騒音をさらに抑制することができる。
【0066】
・第2部材49は、ステンレス鋼の焼結材により形成されている。こうした構成によれば、真空ポンプ30のいわゆるサイレンサと比較して、第2部材49を低コストで製造することができるとともに、第2部材49の耐久性を向上させることができる。
【0067】
・排気口34aは、ハウジング31の内側から外側に向けて広がるテーパ状に形成されている。このため、排気口34aの中の空気と排気口34aの外の空気との圧力差を減少させることができ、排気口34aで発生する脈動音(騒音)を抑制することができる。
【0068】
・第1部材48は、ハウジング31のうち排気口34aが形成された面31aと同形状の板状に形成され、面31aに取り付けられている。こうした構成によれば、第1部材48の大きさを確保することが容易となり、第1部材48をハウジング31の面31aに容易に取り付けることができる。
【0069】
なお、上記の実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。上記実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0070】
・吸引通路61の形状は直線状に限らず、曲線状や、屈曲部を有する形状であってもよい。
【0071】
・吸盤部70に代えてスポンジを取り付けたスポンジタイプの吸着パッド(吸着部)を採用することもできる。この場合、ワークWを吸着した時でもスポンジから空気が吸引されるため、排気口34aからの空気の排出を継続することができ、モータ45を空冷することができる。また、吸引通路61内の圧力が所定圧よりも低くなると、吸引通路61に空気を導入して所定圧に維持するバルブ等をヘッド部60に設けることもできる。吸引通路61に微量の空気を導入するオリフィスをヘッド部60に設けることもできる。これらの構成であっても、ワークWの吸着時に、排気口34aから継続して空気を排出することができ、モータ45を空冷することができる。
【0072】
・排気口34aは、テーパ状に限らず、同一の径で軸線方向に延びる円柱状に形成することもできる。
【0073】
・ギヤ機構50のギヤの形状を変更して、モータ45の出力軸46とロータ41,42の回転軸41a,42aとが平行でない構成を採用することもできる。
【0074】
・モータ45の回転力をロータ41,42に伝達する伝達機構として、ギヤ機構50に限らず、プーリとベルトにより回転力を伝達する構成等を採用することもできる。
【0075】
・第1部材48は、排気口34aの付近のみを覆う形状であってもよい。
【0076】
・第1部材48及び第2部材49は、ステンレス鋼の焼結材に限らず、他の金属の焼結材であってもよい。また、第1部材48及び第2部材49は、焼結材に限らず、セラミックや樹脂により形成された多孔質材料であってもよい。その場合であっても、図5と同様の効果を奏することができる。
【0077】
・第2部材49を省略することもできる。その場合であっても、吸気口33aで発生する騒音よりも大きな騒音である排気口34aで発生する騒音を、第1部材48により抑制することができる。
【0078】
・真空ポンプ30は、ルーツポンプに限らず、容積型の回転ポンプであるクローポンプやスクロールポンプを採用することもできる。この場合であっても、ハウジング31の排気口34aから継続して排出される空気をモータ45に当てて、モータ45を空冷することができる。また、逆止弁等を有する真空ポンプであって、ハウジング31の排気口34aから継続して空気が排出されないダイヤフラムポンプやピストンポンプ等であっても、吸気口33aから間欠的に空気を吸引して排気口34aから間欠的に空気を排出する真空ポンプであれば、第1部材48及び第2部材49により騒音を抑制する効果は奏することができる。
【0079】
・ロボット10は、垂直多関節型ロボットに限らず、水平多関節型ロボット等であってもよい。
【符号の説明】
【0080】
10…ロボット、20…吸着ハンド(ロボット用吸着ハンド)、30…真空ポンプ、31…ハウジング、32…ロータ室、33a…吸気口、34a…排気口、41…第1ロータ(ロータ)、42…第2ロータ(ロータ)、45…モータ(電動モータ)、48…第1部材、49…第2部材、50…ギヤ機構(伝達機構)、61…吸引通路、70…吸盤部(吸着部)、78…ケース。
図1
図2
図3
図4
図5
図6