(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】引出ロック機構修理方法
(51)【国際特許分類】
A47B 88/50 20170101AFI20230704BHJP
A47B 67/04 20060101ALI20230704BHJP
E05C 19/06 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
A47B88/50
A47B67/04 502Z
E05C19/06 Z
(21)【出願番号】P 2019150519
(22)【出願日】2019-08-20
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宏樹
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】実開平6-61145(JP,U)
【文献】特開平8-240052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 88/00-88/994
A47B 67/04
E05C 19/06
E05B 65/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
引出式キャビネットにおける引出に設けられ、前記引出の位置を固定する引出ロック機構を修理する引出ロック機構修理方法であって、
ラッチ部材側へ付勢する板バネ部材が破損または欠落したラッチ受け具を当該ラッチ受け具とは別体の弾性部材を用いて当該ラッチ部材側へ付勢するように、当該弾性部材を当該ラッチ受け具の当該ラッチ部材側とは反対側に配置することを特徴とする引出ロック機構修理方法。
【請求項2】
前記弾性部材は、柔軟性を呈する材料によって形成された多孔質構造体であることを特徴とする請求項1に記載の引出ロック機構修理方法。
【請求項3】
前記弾性部材は、スポンジであることを特徴とする請求項2に記載の引出ロック機構修理方法。
【請求項4】
前記弾性部材は、マグネットを用いて前記引出に取り付けられることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の引出ロック機構修理方法。
【請求項5】
前記弾性部材は、粘着テープを用いて前記引出に取り付けられることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の引出ロック機構修理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、引出式キャビネットにおける引出に設けられ、引出の位置を固定する引出ロック機構を修理する引出ロック機構修理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
筐体に対して引出を引き出し可能に収納する引出式キャビネットにおいては、地震などに起因して引出式キャビネットが振動した場合にも、不用意に引出が筐体から飛び出さないようにロックするロックラッチ機構を備えたものがある。ラッチ機構は、たとえば、フック形状をなすラッチ部材と、ラッチ部材のフック形状部分と係合する環形状または凹形状をなすラッチ受け部材と、によって構成される。
【0003】
このようなラッチ機構におけるラッチ受け部材は、引出の前板や化粧板などに設けられた支軸を中心として、軸心周りに回動可能な状態で引出に取り付けられている。ラッチ受け部材は、引出の前板や化粧板などに設けられた引手のレバーの動作に連動して、ラッチ部材と係合する位置からラッチ部材との係合を解除する位置へ回動することによって、引出の引き出しを可能とする。
【0004】
また、このようなラッチ機構は、ラッチ部材との係合を解除する位置に位置づけられたラッチ受け部材を、ラッチ部材と係合する位置に復帰させる付勢部材を備えている。付勢部材は、たとえば、ラッチ受け部材と一体成形された板バネ部材などによって実現されている。
【0005】
関連する技術として、具体的には、従来、たとえば、ケーシングと、ケーシングの内部に揺動自在でかつ重心位置よりも上方の位置が枢支連結された振子状部材と、裏面側に被当接部が形成されたフック部材とからなり、フック部材は、振子状部材の揺動する面に対して略直交する垂直面上を揺動自在となるように上端がケーシングの開口に枢支連結されており、振子状部材は傾動にて被当接部に当接することにより振子状部材の下部側がケーシングの開口から外方に突出するように構成した引出用耐震ラッチに関する技術があった(たとえば、下記特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の技術は、ラッチ機構におけるラッチ受け部材を形成する材料の経年劣化やラッチ受け部材が繰り返し弾性変形することによる疲労などによって、板バネ部材が破断してしまい、引出のロックができなくなってしまうことがあるという問題があった。
【0008】
また、上述した従来の技術は、板バネ部材が破断することによってラッチ受け部材が損壊してしまった場合、損壊したラッチ受け部材を引出から取り外して、あらたなラッチ受け部材を取り付ける交換作業をおこなわなくてはならず、交換作業の間はキャビネットを使用することができず煩わしいという問題があった。
【0009】
また、上述した従来の技術は、一般的に専門の業者がラッチ受け部材の交換作業をおこなうため、キャビネットを使用することができない期間が長くなりがちであり、業務に支障をきたしてしまうという問題があった。
【0010】
図8は、従来の引出ロック機構におけるラッチ受け部材を示す説明図である。従来のラッチ受け具121は、矩形状をなす枠体に、板バネ部材120が、たとえば、射出成型などによって、ラッチ受け具121と枠体と一体に形成されている。したがって、板バネ部材120部材が形成されることによって、枠体には、開口部121aが形成される。また、ラッチ受け具121は、軸124を支点として揺動可能に設けられている。軸124は、たとえば、ラッチ受け具121を貫通するように形成された挿通穴に挿入されている。板バネ部材120による付勢力は、板バネ部材120と枠体との連結位置を介して枠体に作用する。ラッチ受け具121においては、板バネ部材120が枠体を付勢する付勢力が、板バネ部材120と枠体との連結位置に集中するため、繰り返し使用することによって連結位置およびその近傍が疲労し、連結位置またはその近傍から板バネ部材120が破損または欠落してしまう、すなわち、破断して枠体と分離してしまうことがあった。板バネ部材120が欠損してしまうことによって、その付勢力が失われ、後述するラッチ部材110とラッチ受け具121(の開口部121a)が確実に係合できなくなり、引出ロック機構のロック機能が不能となる。
【0011】
板バネ部材120が破断することによって損壊してしまったラッチ受け具121を、あらたなラッチ受け具121に交換する作業は、一般的に専門の業者がおこなう作業であり、使用者が容易に交換することは難しい。損壊してしまったラッチ受け具121をそのままにしておくと、キャビネットの周囲を人が通過するなどによる軽い振動によって不用意に引出が開いてしまうことがあり、キャビネットの近くを通る者の安全性を損なうおそれがあった。一方で、キャビネットの近くを通る者の安全性を確保するために、損壊してしまったラッチ受け具121が取り付けられている引出を粘着テープなどによって開かないように固定してしまうと、交換が完了するまでの間、キャビネットを使用することができず煩わしいという問題があった。
【0012】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、引出ロック機構の修理にかかる作業をおこなう作業者の負担を軽減し、筐体内に収容された状態における引出の位置を長期にわたって安定して固定することができる引出式キャビネットの引出ロック機構修理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかる引出ロック機構修理方法は、引出式キャビネットにおける引出に設けられ、前記引出の位置を固定する引出ロック機構を修理する引出ロック機構修理方法であって、ラッチ部材側へ付勢する板バネ部材が破損または欠落したラッチ受け具を当該ラッチ受け具とは別体の弾性部材を用いて当該ラッチ部材側へ付勢するように、当該弾性部材を当該ラッチ受け具の当該ラッチ部材側とは反対側に配置することを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる引出ロック機構修理方法は、上記の発明において、前記弾性部材が、柔軟性を呈する材料によって形成された多孔質構造体であることを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかる引出ロック機構修理方法は、上記の発明において、前記弾性部材が、スポンジであることを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかる引出ロック機構修理方法は、上記の発明において、前記弾性部材が、マグネットを用いて前記引出に取り付けられることを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる引出ロック機構修理方法は、上記の発明において、前記弾性部材が、粘着テープを用いて前記引出に取り付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
この発明にかかる引出ロック機構修理方法によれば、引出ロック機構による引出を固定する機能の修理にかかる作業をおこなう作業者の負担を軽減し、筐体内に収容された状態における引出の位置を長期にわたって安定して固定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明にかかる実施の形態の引出ロック機構修理方法の対象となる引出式キャビネットの外観の一例を示す斜視図である。
【
図2】この発明にかかる実施の形態の引出ロック機構修理方法の対象となる引出式キャビネットの外観の別の一例を示す斜視図である。
【
図3】この発明にかかる実施の形態の引出ロック機構修理方法の対象となる引出式キャビネットの外観の別の一例を示す斜視図である。
【
図4】修理後の引出ロック機構の構成の一例を示す分解斜視図である。
【
図5】修理後の引出ロック機構の動作の一例を示す説明図である。
【
図6】修理後の引出ロック機構の動作の別の一例を示す説明図である。
【
図7】修理後の引出ロック機構の動作の別の一例を示す説明図である。
【
図8】従来の引出ロック機構におけるラッチ受け具を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる実施の形態の引出ロック機構修理方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0021】
まず、引出式キャビネット300の外観について説明する。
図1、
図2および
図3は、この発明にかかる実施の形態の引出ロック機構修理方法の対象となる引出式キャビネット300の外観の一例を示す斜視図である。
図1は、引出式キャビネット300において、引出320が閉じられた状態を示している。また、
図2は、引出式キャビネット300において、引出320を開くために、ハンドル326に指をかけ、引出ロック機構のロックを解除した状態を示している。また、
図3は、引出式キャビネット300において、引出320を引き出した(引出320が開いた)状態を示している。
図1、
図2および
図3において、引出式キャビネット300は、オフィスなどで一般的に普及しているキャビネットであり、筐体310を備えている。筐体310は、略箱形状をなす。筐体310は、背面、天面、底面および両側面を構成する板状部材311を備えている。
【0022】
筐体310は、天面を構成する板状部材311、底面を構成する板状部材311、両側面を構成する板状部材311によって、正面側に向けて開口する複数の開口部501を構成する。この実施の形態においては、筐体310の両側面を構成する板状部材311を適宜「側壁」として説明する。
【0023】
複数の開口部501には、それぞれ、引出320が引き出し可能に挿入される。引出320は、一対の側板322を備えている。先板は、底板321の周縁の4つの辺のうち、背面側の辺に沿って設けられている。一対の側板322は、底板321の周縁の4つの辺のうち、側壁に対向する辺に沿って設けられている。
【0024】
引出320には、ハンドル326が設けられている。ハンドル326は、略長方形をなす板状部材であって、長辺を水平方向にした状態で引出320に連結されている。ハンドル326は、手でつかむ(指をかける)ことによって、ラッチ受け具121が動作するように、連結機構を介してラッチ受け具121と連結されている。
【0025】
また、
図3において、符号110は、ラッチ部材を示しており、符号121は(板バネ部材120が欠損(破損または欠落)したラッチ受け具を示しており、符号122は、弾性部材(スポンジ)を示している。これらは、ラッチ部材110、(板バネ部材120が欠損した)ラッチ受け具121、弾性部材122によって、修理後の引出ロック機構100を構成している。また、
図4は、その修理後の引出ロック機構100の構成の一例を示す分解斜視図である。
図4は、
図3における、修理後の引出ロック機構100の部分のみを拡大して示している。したがって、
図3および
図4において、同じ構成部は同じ符号を付しており、
図3および
図4における引出ロック機構100を構成するラッチ部材110、ラッチ受け具121、弾性部材122は、略同じ方向から見た状態を示している。
図3からもわかるように、引出ロック機構100を構成するラッチ部材110、ラッチ受け具121、弾性部材122は、筐体310内に引き出し可能に収容される引出320を備えた引出式キャビネット300に取り付けられている。
【0026】
また、
図5は、修理後の引出ロック機構の動作の一例を示す説明図である。
図5(a)は、
図1において、矢印A方向から見た(すなわち、引出式キャビネット300を略真上から見下ろした)透過図を示しており、
図5(b)は、
図5(a)における引出ロック機構100の周辺部分のみを拡大して示している。したがって、
図5(a)および
図5(b)において、同じ構成部は同じ符号を付しており、
図5(a)および
図5(b)に示す各構成部は、略同じ方向から見た状態を示している。また、
図6は、修理後の引出ロック機構の動作の別の一例を示す説明図である。
図6(a)は、
図2において、矢印B方向から見た(すなわち、引出式キャビネット300を略真上から見下ろした)透過図を示しており、
図6(b)は、
図6(a)における引出ロック機構100の周辺部分のみを拡大して示している。したがって、
図6(a)および
図6(b)において、同じ構成部は同じ符号を付しており、
図6(a)および
図6(b)に示す各構成部は、略同じ方向から見た状態を示している。また、
図7は、修理後の引出ロック機構の動作の別の一例を示す説明図である。
図7(a)は、
図3において、矢印C方向から見た(すなわち、引出式キャビネット300を略真上から見下ろした)図を示しており、
図7(b)は、
図7(a)における引出ロック機構100の周辺部分のみを拡大して示している。したがって、
図7(a)および
図7(b)において、同じ構成部は同じ符号を付しており、
図7(a)および
図7(b)に示す各構成部は、略同じ方向から見た状態を示している。
【0027】
図3、
図5、
図6,
図7に示すように、ラッチ部材110は、引出式キャビネット300における筐体310の内側に取り付けられる。具体的には、ラッチ部材110は、引出式キャビネット300における筐体310の一部を構成する一対の側壁のうち、いずれか一方の側壁の内側面に取り付けられる。ラッチ部材110は、ラッチ部材110が取り付けられた側壁の板面から、筐体310の内側に向かって突出する突起111を備えており、この突起111が、ラッチ受け具121(の開口部121a)に確実に係合し、筐体310内に収容された状態における引出320の位置を確実に固定(ロック)することができる。また、板バネ部材120を欠損したラッチ受け具121、引出式キャビネット300における引出320に取り付けられている。なお、ラッチ部材110およびラッチ受け具121による引出ロック機構100の構成および動作の内容は、ラッチ受け具121が板バネ部材120を備えている場合(板バネ部材120が欠損していない場合)の従来技術における引出ロック機構100の構成および動作と同様の内容である。また、
図3、
図5、
図6,
図7からも明らかなように、突起111を有するラッチ部材110およびラッチ受け具121を用いたラッチ構造(どのようにしてロックしたり、ロックした状態を保持したり、ロックした状態を解除したりするかの構造)については、突起111の形状なども含め、いずれも周知の技術を用いて実現することができる。
【0028】
弾性部材122は、引出式キャビネット300における引出320に取り付けられる。弾性部材122は、引出320の一部を構成する一対の側板のうち、ラッチ部材110が取り付けられた側壁に対向する側板の外側面に取り付けられる。弾性部材122は、ラッチ受け具121を間にして、ラッチ部材110とは反対側に配置される。弾性部材122は、扁平な長方体形状をなす。弾性部材122は、加えられた外力に応じて変形し、当該外力から解放されると元の形状に復帰する弾性を呈する弾性材料によって形成されている。弾性部材122は、自身の弾性力によってラッチ受け具121を非ロック位置側からロック位置側に付勢する。ラッチ受け具121は、筐体310に対する引出320の位置にかかわらず、弾性部材122によって付勢されることにより、常に、非ロック位置側からロック位置側に付勢される。弾性部材122は、たとえば、ウレタン、シリコン、ゴム、などの材料によって形成することができる。弾性部材122は、スポンジと称される、柔軟性を呈する材料によって形成された多孔質構造体によって実現することが好ましい。より具体的に、弾性部材122は、ウレタン、ポリエチレン、ポリエーテル、EVA(Ethylene‐Vinyl Acetate copolymer:エチレン酢酸ビニルコポリマー)、メラミンなどの材料を発泡させて成型することによって形成したスポンジによって実現されることが好ましい。スポンジであれば、安価でかつ容易に取得することができる。
【0029】
弾性部材122は、たとえば、マグネットシート125を用いて引出320に取り付けることができる。引出320の側板が鉄板などの磁石が吸着する材料によって形成されている場合、マグネットシート125を用いることにより、容易かつ迅速に、弾性部材122を引出320に取り付けることができる。引出式キャビネット300の引出320に、マグネットシート125を貼り付ける別のマグネットシートを取り付けてもよい。これにより、引出320の材質にかかわらず、マグネットシート125を用いて弾性部材122を引出320に取り付けることができる。また、弾性部材122の交換に際して、交換作業を容易かつ迅速におこなうことができる。弾性部材122は、たとえば、粘着テープを用いて引出320に取り付けてもよい。
【0030】
図5、
図6および
図7において、前板323は、底板321の周縁の4つの辺のうち、正面側の辺に沿って設けられている。
図5に示すように、引出320が筐体310内に収容された状態において、引出ロック機構100は、ラッチ部材110の突起111を、ラッチ受け具121の開口部121aに係合させることにより、引出320の位置を当該引出320が筐体310内に収容された状態で固定(ロック)する。ラッチ受け具121は、弾性部材122によって非ロック位置側からロック位置側に付勢されているため、使用者がハンドル326を操作して引出位置に位置づけない間、引出320の位置を当該引出320が筐体310内に収容された状態で確実に固定(ロック)しておくことができる。
【0031】
引出320を開ける際には、使用者は、
図2および
図6に示すように、ハンドル326に指をかけた状態で、その指を手前に引っ張る。これにより、
図6に示すように、ハンドル326が静止位置から引出位置に揺動し、ハンドル326の揺動に連動してラッチ受け具121が、弾性部材122の付勢力に抗してロック位置から非ロック位置に軸124を支点として揺動し、引出ロック機構100によるロックが解除される。このように、引出式キャビネット300の使用者は、引出320を引き出すために指をかけたハンドル326を手前に引っ張るだけで、ハンドル326を引出位置に位置づけてラッチ受け具121を非ロック位置に位置づけ、引出ロック機構100による引出320のロックを解除することができる。
【0032】
そして、使用者が、ハンドル326にかけた指をさらに手前に引っ張ると、枠体が非ロック位置に位置づけられた状態、すなわち、ロックが解除された状態のまま引出320を引き出すことができる。枠体は、使用者がハンドル326から指を離した時点で、
図7に示すように、弾性部材122の付勢力によって付勢されてロック位置に位置づけられる。ハンドル326は、ラッチ受け具121の軸124を支点として揺動に連動して静止位置に位置づけられる。
【0033】
引出320を閉める際には、ラッチ受け具121は、ラッチ部材110の突起111を通過する。その際に弾性部材122の付勢力に抗して突起111を回避するように軸124を支点として揺動し、突起111を通過した後は、
図5に示すように、弾性部材122の付勢力によって付勢されてロック位置に位置づけられる。これにより、使用者はハンドルを格別に操作することなく、引出320を筐体310に押し込むだけで引出ロック機構100によって引出320の位置を固定することができる。このように、ラッチ受け具121は、弾性部材122によって、板バネ部材120が備えられていたときと同様の動作を実現することができる。
【0034】
以上説明したように、この発明にかかる実施の形態の引出ロック機構修理方法は、引出式キャビネット300における引出320に設けられ、引出320の位置を固定する引出ロック機構100を修理するにあたり、ラッチ部材110側へ付勢する板バネ部材120が破損または欠落したラッチ受け具121をラッチ受け具121とは別体の弾性部材122を用いてラッチ部材110側へ付勢するように、弾性部材122をラッチ受け具121のラッチ部材110側とは反対側に配置することで、引出ロック機構100を修理することができる。具体的には、たとえば、ラッチ受け具120が、引出式キャビネット300における引出320に設けられ、引出320を引き出し可能に収容する筐体310側から引出320側に突出する突起111と、引出320が筐体310内に収容された状態において係合することによって引出320の位置を固定する引出ロック機構100のラッチ受け具120であって、突起111と係合可能なロック位置と、突起111との係合を解除する非ロック位置との間で揺動可能なラッチ受け具121と、ラッチ受け具121とは別体であって、ラッチ受け具121を非ロック位置側からロック位置側に付勢する弾性部材122と、を備える。また、引出式キャビネット300の引出ロック機構100が、引出式キャビネット300における引出320を引き出し可能に収容する筐体310に設けられ、当該筐体310側から当該引出320側に突出する突起111を備えたラッチ部材110と、引出320が筐体310内に収容された状態において突起111と係合可能なロック位置と、突起111との係合を解除する非ロック位置との間で揺動可能に引出320に取り付けられたラッチ受け具121と、ラッチ受け具121とは別体であって、当該ラッチ受け具121を非ロック位置側からロック位置側に付勢する弾性部材122と、を備える。したがって、ラッチ受け具121と弾性部材122とが別体であり、ラッチ受け具121と弾性部材122とをそれぞれ独立して交換することができる。これにより、破損が少なく、交換作業に手間がかかるラッチ受け具121に変更を加えることなく、ラッチ受け具121に比べて劣化に起因する破損や機能低下を生じやすい弾性部材122のみを、ラッチ受け具121の寿命にかかわらず容易に交換することができ、引出ロック機構100による引出320を固定する機能の維持にかかる作業をおこなう作業者の負担を軽減し、筐体310内に収容された状態における引出320の位置を長期にわたって安定して固定することができる。
【0035】
また、弾性部材122自身の弾性力によってラッチ受け具121を非ロック位置側からロック位置側に付勢することにより、引出320とラッチ受け具121との間に弾性部材122を位置づけるだけで、特殊な技術や経験を要することなく、弾性部材122を適正な位置に容易に取り付け、ラッチ受け具121を非ロック位置側からロック位置側に付勢することができる。これにより、引出ロック機構100による引出320を固定する機能の維持にかかる作業者の負担を軽減し、筐体310内に収容された状態における引出320の位置を長期にわたって安定して固定することができる。
【0036】
また、弾性部材122が、柔軟性を呈する材料によって形成された多孔質構造体であるので、柔軟性を呈する材料によって形成された多孔質構造体によって弾性部材122を実現することにより、安価にラッチ受け具121を非ロック位置側からロック位置側に付勢することができる。いわゆるスポンジと称される構造体によって弾性部材122を実現することにより、ラッチ受け具121を非ロック位置側からロック位置側へ付勢しつつ、当該ラッチ受け具121の形状に応じて弾性部材122を容易に変形させることができる。これにより、ラッチ受け具121の形状に左右されることなく、ラッチ受け具121をラッチ部材110に確実に係合させ、引出ロック機構100によって引出320の位置を固定することができる。また、ラッチ受け具121の形状に応じて弾性部材122を容易に変形させることができるので、弾性部材122の取り付け位置がずれても、周囲の部材と干渉して周囲の部材を損傷させることがない。これにより、引出ロック機構100による引出320を固定する機能の維持にかかる作業者および引出式キャビネット300の使用者の利便性の向上を図ることができる。
【0037】
また、弾性部材122が、粘着テープまたはマグネットシート125を用いて引出320に取り付けられるので、引出320への加工をともなうことなく、また、引出ロック機構100による引出320を固定する機能の維持にかかる作業者の経験などに左右されることなく、誰でも、弾性部材122の取付作業や交換作業を容易かつ確実におこなうことができる。これにより、作業者を選ぶことなく弾性部材122を容易かつ確実に引出320に固定することができ、修理のためにキャビネットが使用できない期間をなくし、キャビネットが使用できないことによる業務効率の低下を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上のように、この発明にかかる引出ロック機構修理方法は、筐体に対して引き出し可能に収納される引出を備えた引出式キャビネットにおける引出のロックに用いる引出ロック機構の修理方法に有用であり、特に、スライドレールなどを備えた引出式キャビネットにおける引出のロックに用いる引出ロック機構の修理方法に適している。
【符号の説明】
【0039】
100 引出ロック機構
110 ラッチ部材
120 板バネ部材
121 ラッチ受け具
121a 開口部
122 弾性部材
124 軸
125 マグネットシート
300 引出式キャビネット
310 筐体
320 引出
326 ハンドル