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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】光学式粒状物選別機
(51)【国際特許分類】
   B07C 5/342 20060101AFI20230704BHJP
   B07C 5/36 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
B07C5/342
B07C5/36
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019154297
(22)【出願日】2019-08-27
(65)【公開番号】P2021030168
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100158702
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 卓也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆文
(72)【発明者】
【氏名】定丸 雅明
(72)【発明者】
【氏名】松下 忠史
【審査官】宮部 菜苗
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-179292(JP,A)
【文献】実開平6-41876(JP,U)
【文献】特開2017-176896(JP,A)
【文献】特開2017-80732(JP,A)
【文献】特開2011-241961(JP,A)
【文献】特開2008-055274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B07C 5/00-5/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被選別物を移送する移送手段と、
該移送手段の端部から落下する被選別物を検出位置において検出する光学検出手段と、
前記光学検出手段のさらに下方に設けられ、前記光学検出手段による検出結果に基づいて被選別物を圧縮気体の噴風により吹き飛ばす噴風手段と、
前記光学検出手段による検出結果に基づいて前記噴風手段からの圧縮気体の噴射時間を制御する制御手段と、を備えてなる光学式粒状物選別機において、
前記制御手段は、前記光学検出手段による被選別物の欠陥検出時間を事前に設定される単粒通過設定時間と比較する比較部、前記比較部による比較結果に基づいて前記欠陥検出時間に所定の係数を掛け合わせて噴射時間を算出する算出部を有し、前記比較部による比較の結果、前記欠陥検出時間が前記単粒通過設定時間以下の場合、前記算出部は前記欠陥検出時間が前記単粒通過設定時間を超える場合に比べ、前記欠陥検出時間に小さな係数を掛け合わせて前記噴射時間を算出し、該算出結果に基づいて前記噴風手段からの圧縮気体の噴射時間を制御することを特徴とする光学式粒状物選別機。
【請求項2】
前記制御手段は、前記比較部による比較の結果、前記欠陥検出時間が前記単粒通過設定時間以下の場合、前記算出部は前記欠陥検出時間に前記小さな係数として0.5以上1.0未満の係数を掛け合わせて前記噴射時間を算出し、該算出結果に基づいて前記噴風手段からの圧縮気体の噴射時間を制御する請求項1記載の光学式粒状物選別機。
【請求項3】
前記比較部は、前記欠陥検出時間に前記小さな係数を掛け合わせて算出される算出値を、前記単粒通過設定時間よりも短くかつ事前に設定される最小噴射設定時間と比較し、前記算出値が前記最小噴射設定時間未満の場合、前記最小噴射設定時間に基づいて前記噴風手段からの圧縮気体の噴射時間を制御する請求項1又は2記載の光学式粒状物選別機。
【請求項4】
前記噴風手段は、圧電素子の変位を利用してバルブの開閉を行う圧電式バルブを備え、
前記圧電式バルブは、外部から供給される圧縮気体を受け入れる気体圧力室、及び該気体圧力室から前記圧縮気体を排出する気体排出路、を有し、
前記圧電式バルブは、前記気体圧力室に配置され前記気体排出路を開閉する弁体、前記弁体の動作に必要な駆動力を変位として発生する圧電素子、及び前記圧電素子の変位を拡大して前記弁体に作用させる変位拡大機構、をさらに有し、
前記圧電素子に電圧を印加し、該圧電素子を伸張させて前記弁体を開弁する請求項1乃至3のいずれかに光学式粒状物選別機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状物の不良品等を噴風により吹き飛ばして選別を行う光学式粒状物選別機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、穀粒や樹脂ペレット等の粒状物を噴風により吹き飛ばして良品と不良品に選別したり、粒状物に混入する異物等を噴風により除去したりする光学式粒状物選別機が知られている。
【0003】
この種の粒状物選別機は、搬送路の端部から所定の軌跡に沿って落下する粒状物を、不良品等の検出信号に基づいて噴風により吹き飛ばして除去することで、前記粒状物の選別を行うものである(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載された光学式粒状物選別機は、不良品の検出信号の幅の値と比例の関係でエア噴射時間が設定されるものであり、エア噴射時間を一定とする場合に比べ、全体としてのエア消費量を少なくし、かつ良品を巻き込んで吹き飛ばす割合を少なくすることができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された粒状物選別機は、不良品検出時間に対するエア噴射時間の比率を小さくすると、複数の不良品等が重なり合う状態で落下する場合であって、前記複数の不良品等を1つの不良品検出信号に基づいて吹き飛ばす場合には、全ての不良品等を吹き飛ばすことができないおそれがある。また、不良品検出時間に対するエア噴射時間の比率を大きくすると、不良品等を吹き飛ばす際に良品を巻き込んで吹き飛ばす割合が増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-179292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、良品を巻き込んで吹き飛ばす割合を少なくできるとともに、複数の不良品等が重なり合う状態で落下する場合でも、全ての不良品等を吹き飛ばすことができる光学式粒状物選別機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、
被選別物を移送する移送手段と、
該移送手段の端部から落下する被選別物を検出位置において検出する光学検出手段と、
前記光学検出手段のさらに下方に設けられ、前記光学検出手段による検出結果に基づいて被選別物を圧縮気体の噴風により吹き飛ばす噴風手段と、
前記光学検出手段による検出結果に基づいて前記噴風手段からの圧縮気体の噴射時間を制御する制御手段と、を備えてなる光学式粒状物選別機において、
前記制御手段は、前記光学検出手段による被選別物の欠陥検出時間を事前に設定される単粒通過設定時間と比較する比較部、前記比較部による比較結果に基づいて前記欠陥検出時間に所定の係数を掛け合わせて噴射時間を算出する算出部を有し、前記比較部による比較の結果、前記欠陥検出時間が前記単粒通過設定時間以下の場合、前記算出部は前記欠陥検出時間が前記単粒通過設定時間を超える場合に比べ、前記欠陥検出時間に小さな係数を掛け合わせて前記噴射時間を算出し、該算出結果に基づいて前記噴風手段からの圧縮気体の噴射時間を制御することを特徴とする。
【0009】
ここで、前記単粒通過設定時間は、前記被選別物の単粒が前記検出位置を通過(落下)する際に検出する時間(単粒通過時間)に相当し、被選別物に応じて事前に設定することができる。
【0010】
本発明は、
前記制御手段が、前記比較部による比較の結果、前記欠陥検出時間が前記単粒通過設定時間以下の場合、前記算出部は前記欠陥検出時間に前記小さな係数として0.5以上1.0未満の係数を掛け合わせて前記噴射時間を算出し、該算出結果に基づいて前記噴風手段からの圧縮気体の噴射時間を制御することが好ましい。
【0011】
本発明は、
前記比較部が、前記欠陥検出時間に前記小さな係数を掛け合わせて算出される算出値を、前記単粒通過設定時間よりも短くかつ事前に設定される最小噴射設定時間と比較し、前記算出値が前記最小噴射設定時間未満の場合、前記最小噴射設定時間に基づいて前記噴風手段からの圧縮気体の噴射時間を制御することが好ましい。
【0012】
ここで、前記最小噴射設定時間は、被選別物を吹き飛ばすことができる最低限のエア噴射時間であり、被選別物に応じて事前に設定することができる。
【0013】
本発明は、
前記噴風手段が、圧電素子の変位を利用してバルブの開閉を行う圧電式バルブを備え、
前記圧電式バルブが、外部から供給される圧縮気体を受け入れる気体圧力室、及び該気体圧力室から前記圧縮気体を排出する気体排出路、を有し、
前記圧電式バルブが、前記気体圧力室に配置され前記気体排出路を開閉する弁体、前記弁体の動作に必要な駆動力を変位として発生する圧電素子、及び前記圧電素子の変位を拡大して前記弁体に作用させる変位拡大機構、をさらに有し、
前記圧電素子に電圧を印加し、該圧電素子を伸張させて前記弁体を開弁することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の光学式粒状物選別機は、前記制御手段が、前記光学検出手段による被選別物の欠陥検出時間を事前に設定される単粒通過設定時間と比較する比較部、前記比較部による比較結果に基づいて前記欠陥検出時間に所定の係数を掛け合わせて噴射時間を算出する算出部を有し、前記比較部による比較の結果、前記欠陥検出時間が前記単粒通過設定時間以下の場合、前記算出部は前記欠陥検出時間が前記単粒通過設定時間を超える場合に比べ、前記欠陥検出時間に小さな係数を掛け合わせて前記噴射時間を算出し、該算出結果に基づいて前記噴風手段からの圧縮気体の噴射時間を制御するので、前記欠陥検出時間が前記単粒通過設定時間以下の場合には、欠陥検出時間に対するエア噴射時間の比率を小さくすることで、不良品等を吹き飛ばす際に良品を巻き込んで吹き飛ばす割合を少なくできるとともに、前記欠陥検出時間が前記単粒通過設定時間を超える場合には、前記欠陥検出時間に対するエア噴射時間の比率を大きくしてエア噴射時間を確保することで、複数の不良品等が重なり合う状態で落下する場合でも、全ての不良品等を吹き飛ばすことができる。
【0015】
本発明の光学式粒状物選別機は、前記制御手段が、前記比較部による比較の結果、前記欠陥検出時間が前記単粒通過設定時間以下の場合、前記算出部は前記欠陥検出時間に前記小さな係数として0.5以上1.0未満の係数を掛け合わせて前記噴射時間を算出し、該算出結果に基づいて前記噴風手段からの圧縮気体の噴射時間を制御することとすれば、前記欠陥検出時間に対するエア噴射時間の比率を0.5以上1.0未満と小さくすることで、不良品等を吹き飛ばす際に良品を巻き込んで吹き飛ばす割合を少なくできるとともに、前記欠陥検出時間が前記単粒通過設定時間を超える場合には、前記欠陥検出時間が前記単粒通過設定時間以下の場合に比べ、欠陥検出時間に対するエア噴射時間の比率を大きくしてエア噴射時間を確保することで、複数の不良品等が重なり合う状態で落下する場合でも、全ての不良品等を吹き飛ばすことができる。
【0016】
本発明の光学式粒状物選別機は、前記比較部が、前記欠陥検出時間に前記小さな係数を掛け合わせて算出される算出値を、前記単粒通過設定時間よりも短くかつ事前に設定される最小噴射設定時間と比較し、前記算出値が前記最小噴射設定時間未満の場合、前記最小噴射設定時間に基づいて前記噴風手段からの圧縮気体の噴射時間を制御することとすれば、被選別物の欠陥が小さい場合でも、被選別物を吹き飛ばすために必要な最低限のエア噴射時間を確保できるため、不良品等を確実に吹き飛ばすことができる。
【0017】
本発明の光学式粒状物選別機は、前記噴風手段が、圧電素子の変位を利用してバルブの開閉を行う圧電式バルブを備え、前記圧電式バルブが、外部から供給される圧縮気体を受け入れる気体圧力室、及び該気体圧力室から前記圧縮気体を排出する気体排出路、を有し、前記圧電式バルブが、前記気体圧力室に配置され前記気体排出路を開閉する弁体、前記弁体の動作に必要な駆動力を変位として発生する圧電素子、及び前記圧電素子の変位を拡大して前記弁体に作用させる変位拡大機構、をさらに有し、前記圧電素子に電圧を印加し、該圧電素子を伸張させて前記弁体を開弁することとすれば、前記圧電式バルブが、バルブ開閉時の応答性に優れることから、電磁バルブを利用した噴風手段を備える従来の光学式粒状物選別機に比べ、エア噴射時間を短縮できるとともに、良品を巻き込むことなく不良品のみを精度よく吹き飛ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】圧電式バルブを利用する光学式粒状物選別機の要部側断面図。
図2図1に示す光学式粒状物選別機の制御ブロック図。
図3】光学検出装置における撮像データの出力信号の波形グラフ。
図4】電磁バルブと圧電式バルブのエア噴出圧特性を比較した概略説明図。
図5】電磁バルブと圧電式バルブの応答性能を比較した表。
図6】圧電式バルブの概略説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
図1は光学式粒状物選別機1の内部構造を簡略化して示した要部側断面図を示す。図2は光学式粒状物選別機における制御ブロック図を示す。
光学式粒状物選別機1は、上部にタンク2と振動フィーダ3とからなる粒状物供給部を有する。該粒状物供給部の下方には所定幅を有する傾斜状シュート4が配置される。
前記粒状物供給部から供給された粒状物は、前記傾斜状シュート4上を幅方向に広がって連続状に自然流下した後、その下端から所定の落下軌跡に沿って空中に放出される。
【0020】
前記所定の落下軌跡の前後には、前記傾斜状シュート4の幅方向に平行に直線状に延びる粒状物検出位置Oにおいて粒状物を撮像する少なくとも一対の光学検出装置5a,5bが対向して配設される。各光学検出装置5a,5bは、それぞれCCDラインセンサを内蔵するCCDカメラ等の撮像手段51a,51b、LED等からなる照明手段52a,52b、及び前記粒状物を撮像する際の背景となるバックグラウンド53a,53b等から構成される。
【0021】
また、前記粒状物検出位置Oの下方には、不良品や異物等(以下、「不良品等」という。)をエアの噴風により除去する噴風装置7が配設される。前記噴風装置7は、後述する圧電式バルブを複数並設して組み込んでなる噴風ノズル71と、該噴風ノズル71に組み込まれる前記圧電式バルブを開閉駆動する駆動装置72と、前記噴風ノズル71に圧縮エアを送る圧縮エア供給装置73を備え、前記各光学検出装置5a,5bの検出結果に基づいて前記圧電式バルブを選択的に開弁駆動し、前記傾斜状シュート4の下端から放出される粒状物を、該粒状物の落下軌跡の幅方向各位置に対応して設けられる前記噴風ノズル71の複数のノズル孔からのエアの噴射により吹き飛ばす。なお、前記圧電式バルブの圧電素子は、前記駆動装置72の駆動回路と電気的に接続される。
【0022】
上記光学式粒状物選別機1において、前記傾斜状シュート4を幅方向に広がって連続状に自然流下した後、その下端から所定の落下軌跡に沿って空中に放出される粒状物は、前記粒状物検出位置Oにおいて前記各光学検出装置5a,5bの撮像手段51a,51bにより撮像され、当該撮像データが制御装置6に送られる。
【0023】
前記制御装置6は、前記撮像データに基づいて不良品等の除去するべき粒状物を特定するとともに、当該粒状物の大きさに関する情報や粒状物の欠陥の大きさに関する情報等を取得し、前記不良品等の排除信号を前記駆動装置72に送る。
【0024】
前記噴風装置7は、前記駆動装置72に送られる前記排除信号に基づいて所定のタイミングで前記複数の圧電式バルブを選択的に駆動し、前記傾斜状シュート640の幅方向に平行に直線状に延びる粒状物排除位置Eを通過する不良品等に対し、該幅方向の各位置に対応して設けられる前記噴風ノズル71の各ノズル孔からエアを噴風する。
【0025】
そして、前記噴風ノズル71の各ノズル孔からの噴風により吹き飛ばされた不良品等は、不良品排出口81から機外に排出される。また、噴風により吹き飛ばされることなく所定の落下軌跡をそのまま通過した良品等は、良品排出口82から回収される。
【0026】
本発明の実施の形態において、前記制御装置6は、前記撮像データにおける欠陥検出時間tを事前に設定される単粒通過設定時間t1と比較する比較部61、前記比較部61による比較結果に基づいてエア噴射時間を算出する算出部62を有する。
ここで、前記単粒通過設定時間t1は、粒状物の単粒が粒状物検出位置Oを通過(落下)する際に検出される時間(単粒通過時間)に相当し、選別対象に応じて事前に設定することができる。
【0027】
本発明の実施の形態では、前記比較部61において前記欠陥検出時間tを前記単粒通過設定時間t1と比較した結果、前記欠陥検出時間tが前記単粒通過設定時間t1以下の場合(t≦t1)、欠陥を含む粒状物は単粒であるとみなし、また、前記欠陥検出時間tが前記単粒通過設定時間t1を超える場合(t>t1)、欠陥を含む粒状物は複数粒であるとみなすものとする。
そして、前記算出部62において、欠陥を含む粒状物を単粒とみなす場合と複数粒とみなす場合とで前記欠陥検出時間tに異なる係数を掛け合わせて前記エア噴射時間を算出する。
前記制御装置6は、前記算出部62による算出結果に基づいて前記不良品等の排除信号を前記駆動装置72に送り、前記噴風装置7からのエア噴射時間等を制御する。
【0028】
図3は、光学検出装置における撮像手段の撮像データの出力信号の波形グラフを示す。
前記制御装置6は、撮像手段51a,51bにおける撮像データの出力信号をしきい値と比較して欠陥部分を検出し、前記欠陥検出時間tを取得する。
ここで、本発明の実施の形態において、欠陥とは、例えば粒状物が米粒の場合、被害粒、死米、着色粒、未熟粒等の欠陥部分(全体部分を含む)、異物の場合はその全体部分を意味する。
【0029】
本発明の実施の形態において、前記制御装置6は、前記比較部61による比較の結果、欠陥を含む粒状物を単粒とみなす場合、前記算出部62において前記欠陥検出時間tに例えば0.5以上1.0未満の係数、好ましくは0.6以上0.8未満の係数、より好ましくは0.7程度の係数を掛け合わせてエア噴射時間を算出し、前記比較部61による比較の結果、欠陥を含む粒状物を複数粒とみなす場合、前記単粒とみなす場合に比べ、前記欠陥検出時間tに大きな係数、例えば1.0以上1.5未満、好ましくは1.0の係数を掛け合わせてエア噴射時間を算出する。
【0030】
前記比較部61による比較の結果、欠陥を含む粒状物を単粒とみなす場合、前記算出部62において前記欠陥検出時間tに例えば0.5以上1.0未満の係数、好ましくは0.6以上0.8未満の係数、より好ましくは0.7程度の係数を掛け合わせてエア噴射時間を算出することとすれば、欠陥検出時間tに対するエア噴射時間の比率を小さくすることで、不良品等を吹き飛ばす際に良品を巻き込んで吹き飛ばす割合を少なくできるとともに、エア消費量を削減することができる。
【0031】
また、前記比較部61による比較の結果、欠陥を含む粒状物を複数粒とみなす場合、前記算出部62において前記欠陥検出時間tに単粒とみなす場合よりも大きな係数、例えば1.0以上1.5未満、好ましくは1.0の係数を掛け合わせてエア噴射時間を算出することとすれば、欠陥検出時間tに対するエア噴射時間の比率を大きくしてエア噴射時間を確保することで、複数の不良品等が重なり合う状態で落下する場合でも、全ての不良品等を吹き飛ばすことができる。
【0032】
本発明の実施の形態において、前記制御装置6は、前記比較部61による比較の結果、欠陥を含む粒状物を単粒とみなす場合、さらに前記比較部61において、前記単粒とみなす場合の前記係数を前記欠陥検出時間tに掛け合わせて算出される算出値を、前記単粒通過設定時間t1よりも短くかつ事前に設定される最小噴射設定時間t2と比較し、前記算出値が前記最小噴射設定時間t2未満の場合、前記最小噴射設定時間t2を噴射時間とすることができる。
ここで、前記最小噴射設定時間t2は、粒状物を吹き飛ばすことができる最低限のエア噴射時間であり、選別対象に応じて事前に設定することができる。
【0033】
前記比較部61が、前記算出値を、前記単粒通過設定時間t1よりも短くかつ事前に設定される最小噴射設定時間t2と比較し、前記算出値が前記最小噴射設定時間t2未満の場合、前記最小噴射設定時間t2を噴射時間とすることとすれば、不良品等の欠陥が小さい場合でも粒状物を吹き飛ばすために必要な最低限のエア噴射時間を確保できるため、不良品等を確実に吹き飛ばすことができる。
【0034】
本発明の実施の形態において、前記制御装置6は、前記比較部61による比較の結果、欠陥を含む粒状物を単粒とみなす場合、さらに前記比較部61において、前記単粒とみなす場合の前記係数を前記欠陥検出時間tに掛け合わせて算出される算出値を、前記単粒通過設定時間t1よりも短くかつ事前に設定される最小噴射設定時間t2と比較することとしたが、前記比較部61において、前記欠陥検出時間tを前記単粒通過設定時間t1と比較する前の段階で、前記欠陥検出時間tに前記単粒とみなす場合の前記係数を掛け合わせて算出される算出値を前記最小噴射設定時間t2と比較することもできる。
【0035】
その場合において、前記欠陥検出時間tに前記単粒とみなす場合の前記係数を掛け合わせて算出される算出値が前記最小噴射設定時間t2よりも長い場合、前記欠陥検出時間tを前記単粒通過設定時間t1と比較し、前記欠陥検出時間tに所定の係数を掛け合わせてエア噴出時間を算出する。
【0036】
図4は電磁バルブと圧電式バルブのエア噴出圧特性を比較した概略説明図を示す。
図4において、上図は噴風ノズルに組み込まれるバルブを開閉駆動するためのエア噴射信号(前記駆動装置72の場合、圧電素子を伸縮変位させるための駆動回路への入力信号)のON・OFFを示すものであり、下図はバルブの開閉にともなうエア噴出圧力の一例を示すものである。
【0037】
図4に示すように、電磁バルブの場合、エア噴射信号のON・OFFに対するエア噴出圧力の立ち上がり・立ち下がりの遅れが大きいのに対し、圧電式バルブの場合、エア噴出圧力の立ち上がり・立ち下がりの遅れがほとんどなく、圧電式バルブが電磁バルブに比べ、バルブ開閉時の応答性に格段優れている。
【0038】
なお、図4には、バルブ開放時間(エア噴射信号ON時間)c、電磁バルブについて不良品等を確実に除去できるエア噴出圧p以上のエア噴射時間a、圧電式バルブについて前記エア噴出圧p以上のエア噴射時間bを示している。
【0039】
図5は電磁バルブと圧電式バルブの応答性能を比較した一例であって、図4における各エア噴射時間a,bと、バルブ開放時間cを比較した表を示す。
図5に示すように、電磁バルブの場合、バルブ開放時間cが0.50(ms)から1.00(ms)で、エア噴射時間aが0.18(ms)から0.75(ms)であり、バルブ開放時間cが短くなるほど該バルブ開放時間cに対するエア噴射時間aの割合が小さくなり、バルブ開弁時間cが0.45(ms)以下では、エア噴射時間aはゼロとなる。
【0040】
これに対し、圧電式バルブの場合、バルブ開放時間cが0.35(ms)から1.00(ms)で、エア噴射時間bは0.32(ms)から1.00(ms)であり、バルブ開放時間cとエア噴射時間cがほぼ一致している。
図5に示す例では、圧電式バルブは、電磁バルブの0.5~0.8倍程度のバルブ開放時間で、前記電磁バルブとほぼ同程度の不良品等の排除時間を確保することができる。
【0041】
上記光学式粒状物選別機1は、圧電式バルブを利用した噴風ノズルを備えるものであり、エアの供給を早期に安定させることができるため、開弁時の応答性の良さと相俟って、粒状物のより安定した選別を行うことができる。
【0042】
上記光学式粒状物選別機において、選別対象となる粒状物は、代表的には穀物粒、特に米粒であるが、必ずしも穀物粒に限られるわけではなく、その対象物は、噴風によって吹き飛ばすことが可能な大きさと質量である限り何でも構わない。
【0043】
次に、圧電式バルブについて説明する。
図6はバルブ本体の側面が開放された状態における圧電式バルブの概略説明図であって、閉弁時における側面図を示す。
圧電式バルブ9は、バルブ本体91と、弁体92と、圧電素子93と、変位拡大機構94と、駆動装置95を備える。
【0044】
前記バルブ本体91は、外部の圧縮気体供給源(図示せず)から圧縮気体の供給を受ける気体圧力室911、及び該気体圧力室911内の気体を外部に噴出する気体排出路912を有する。
前記弁体92は、前記バルブ本体91の前記気体圧力室911内に配置され、前記気体排出路912を開閉する。
前記圧電素子93は、前記バルブ本体91内に配置され、該バルブ本体91に一端が固定される。
【0045】
前記変位拡大機構94は、前記バルブ本体91の前記気体圧力室911内に配置され、前記圧電素子93の変位を拡大して前記弁体92に作用させる。
前記駆動装置95は、前記圧電素子93に駆動電圧を印加して電荷を充電し、該圧電素子93を伸張させる充電用駆動回路と、前記充電した電荷を放電し、前記圧電素子93を収縮させる放電用駆動回路を備え、前記圧電素子93を伸縮変位させることにより前記弁体92を開閉駆動する。
なお、前記駆動装置95は、前記両駆動回路が前記圧電素子と電気的に接続されるものであれはよく、例えば前記バルブ本体91と物理的に一体とされる必要はない。
【0046】
前記変位拡大機構94は、前記圧電素子93の長手方向軸線と気体排出路912とを結ぶ線(以下、「中心線」という。)に対し対称に一対設けられるものである。
第1変位拡大機構は、第1ヒンジ96a、第2ヒンジ97a、第1アーム部材98a及び第1板ばね99aで構成される。第1ヒンジ96aの一端はバルブ本体91に接合される。第2ヒンジ97aの一端は前記圧電素子93に取り付けられるキャップ部材931に接合される。第1ヒンジ96a及び第2ヒンジ97aの各他端は、第1アーム部材98aの基部に接合される。第1アーム部材98aの外側先端部分には、第1板ばね99aの一端が接合される。第1板ばね99aの他端は弁体92の一方側の側端部に接合される。
【0047】
一方、第2変位拡大機構は、第3ヒンジ96b、第4ヒンジ97b、第2アーム部材98b及び第2板ばね99bで構成される。第3ヒンジ96bの一端はバルブ本体91に接合される。第4ヒンジ97bの一端は前記圧電素子93に取り付けられるキャップ部材931に接合される。第3ヒンジ96b及び第4ヒンジ97bの各他端は、第2アーム部材98bの基部に接合される。第2アーム部材98bの外側先端部分には、第2板ばね99bの一端が接合される。第2板ばね99bの他端は弁体92の他方側の側端部に接合される。
【0048】
圧電式バルブ9は、図6の状態において、駆動装置95により圧電素子93に通電すると、当該圧電素子93が図面上右方向に伸長する。当該圧電素子93の伸長に伴う変位は、第1変位拡大機構では、第2ヒンジ97aを力点、第1ヒンジ96aを支点、第1アーム部材98aの先端部を作用点としてテコの原理により拡大され、第1アーム部材98aの外側先端部を大きく変位させる。同様に、当該圧電素子93の伸長に伴う変位は、第2変位拡大機構では、第4ヒンジ97bを力点、第3ヒンジ96bを支点、第2アーム部材98bの先端部を作用点としてテコの原理により拡大され、第2アーム部材98bの外側先端部を大きく変位させる。
【0049】
そして、前記第1アーム部材98a及び第2アーム部材98bの各外側先端部における変位は、第1板ばね99a及び第2板ばね99bを介して弁体92を弁座95から離間させ、気体排出路912を開放する。
【0050】
一方、圧電式バルブ9は、駆動装置95による上記圧電素子93への通電が解除されると該圧電素子93が収縮し、当該収縮が第1及び第2変位拡大機構を介して弁体92に伝達され、当該弁体92が弁座95に着座する。
【0051】
上記圧電式バルブは、圧縮気体供給源から圧縮気体の供給を受ける気体圧力室、及び該気体圧力室内の気体を外部に噴出する気体排出路を有するバルブ本体と、前記気体圧力室内に配置され前記気体排出路を開閉する弁体と、前記バルブ本体内に配置され該バルブ本体に一端が固定される圧電素子と、前記気体圧力室内に配置され前記圧電素子の変位を拡大し前記弁体に作用させる変位拡大機構とを備えるものであれば、その構造は図6に示すものに限らない。
【0052】
上記本発明の実施の形態における光学式粒状物選別機は、バルブ開閉時の応答性に優れる圧電式バルブを組み込む噴風ノズル71を備えるものであったが、圧電式バルブに代えて電磁バルブを組み込む噴風ノズル71を備えるものとすることもできる。
【0053】
本発明は、上記実施の形態に限らず発明の範囲を逸脱しない限りにおいてその構成を適宜変更できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の光学式粒状物選別機は、良品を巻き込んで吹き飛ばす割合を少なくできるとともに、複数の不良品等が重なり合う状態で落下する場合でも、全ての不良品等を吹き飛ばすことができるものであり、極めて有用である。
【符号の説明】
【0055】
1 光学式粒状物選別機
4 傾斜状シュート
5a,5b 光学検出装置
51a,51b CCDカメラ(撮像手段)
6 制御装置
61 比較部
62 算出部
7 噴風装置
71 噴風ノズル
72 駆動装置
73 圧縮エア供給装置
9 圧電式バルブ
91 バルブ本体
911 気体圧力室
912 気体排出路
92 弁体
93 圧電素子
94 変位拡大機構
95 駆動装置
95 弁座
98a,98b アーム部材
99a,99b 板ばね
a 電磁バルブについてエア噴出圧p以上のエア噴射時間
b 圧電式バルブについてエア噴出圧p以上のエア噴射時間
c バルブ開放時間(エア噴射信号ON時間)
p 不良品等を確実に除去できるエア噴出圧
t 欠陥検出時間

図1
図2
図3
図4
図5
図6