(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20230704BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
E02F9/20 M
E02F9/26 B
(21)【出願番号】P 2019180424
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100214961
【氏名又は名称】中村 洋三
(72)【発明者】
【氏名】植田 登志郎
(72)【発明者】
【氏名】平山 道夫
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 一臣
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-039207(JP,A)
【文献】特公平04-059572(JP,B2)
【文献】特開2015-141092(JP,A)
【文献】特開2014-101701(JP,A)
【文献】特開2012-035973(JP,A)
【文献】特許第3830151(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
E02F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業現場において作業機械が行う作業の対象となる物であり移動先に積み込まれる対象物を保持する保持作業と、保持された前記対象物を前記移動先の上に移動させる移動作業と、前記移動先の上で前記対象物を解放する解放作業と、を行う作業機械であって、
前記対象物を保持することが可能なアタッチメントを含む作業装置と、
前記アタッチメントにより保持される前記対象物の荷重を取得する荷重取得部と、
コントローラと、を備え、
前記コントローラは、予め設定された予測荷重決定条件が満たされた場合に、前記解放作業において前記移動先の上で解放されると予測される前記対象物の荷重である予測荷重を、前記荷重取得部により取得される前記荷重に基づいて決定し、
前記予測荷重決定条件は、予め設定された第1の減少操作が前記保持作業の後に検出されるという条件が満たされることを含み、
前記第1の減少操作は、前記アタッチメントにより保持される前記対象物の一部又は全部を前記アタッチメントから解放することにより前記アタッチメントにより保持される前記対象物の量を減少させるための操作であり、
前記予測荷重の決定後に前記荷重取得部により取得される前記荷重が予め設定された荷重閾値以下であるという条件を含む確定荷重決定条件が予め設定されており、
前記確定荷重決定条件は、前記第1の減少操作が、前記移動先の上で前記アタッチメントにより保持される前記対象物の全部を前記アタッチメントから解放する前記解放作業を行うための操作であるか、前記解放作業を行う前に前記アタッチメントに保持される前記対象物の一部を前記アタッチメントから
前記移動先以外のところにこぼすことにより前記アタッチメントに保持される前記対象物の量を減少させて前記解放作業において前記アタッチメントから解放する前記対象物の量を調節するための解放量調節動作を行うための操作であるか、を判定するための条件であり、
前記コントローラは、
前記第1の減少操作が行われることによって前記予測荷重決定条件が満たされるとともに前記確定荷重決定条件が満たされた場合には、前記予測荷重を、前記解放作業において前記移動先の上で実際に解放される前記対象物の荷重である確定荷重として決定し、
前記第1の減少操作が行われることによって前記予測荷重決定条件が満たされる一方で前記確定荷重決定条件が満たされない場合には、前記確定荷重の決定を行わない、作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械であって、
前記コントローラは、前記第1の減少操作が行われることによって前記予測荷重決定条件が満たされる一方で前記確定荷重決定条件が満たされない場合には、前記予測荷重の決定後に前記荷重取得部により取得される前記荷重に基づいて前記予測荷重を更新する、作業機械。
【請求項3】
請求項2に記載の作業機械であって、
前記コントローラは、予め設定された第2の減少操作が前記予測荷重の決定後に検出される
とともに、前記荷重取得部により取得される前記荷重が前記荷重閾値以下になるという条件が満たされた場合に、前記更新された前記予測荷重を前記確定荷重として決定し、
前記第2の減少操作は、前記アタッチメントにより保持される前記対象物を
前記移動先の上で前記アタッチメントから解放することにより前記アタッチメントにより保持される前記対象物の量を減少させるための操作であり、前記第1の減少操作の完了後に行われる操作である、作業機械。
【請求項4】
請求項3に記載の作業機械であって、
前記コントローラは、前記第1の減少操作が完了してから前記第2の減少操作が開始されるまでの時間が予め設定された時間閾値以上であるという条件が満たされる場合に、前記更新された前記予測荷重を前記確定荷重として決定する、作業機械。
【請求項5】
請求項4に記載の作業機械であって、
前記第2の減少操作は、前記アタッチメントにより保持される前記対象物を解放する動作を前記アタッチメントに行わせるための操作であるアタッチメント解放操作を含む、作業機械。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の作業機械であって、
前記第1の減少操作は、前記アタッチメントにより保持される前記対象物の一部又は全部を解放する動作を前記アタッチメントに行わせるための操作であるアタッチメント解放操作を含む、作業機械。
【請求項7】
請求項6に記載の作業機械であって、
前記作業装置を支持する機体をさらに備え、
前記作業装置は、前記機体に回動可能に取り付けられるブームと、前記ブームの先端部に回動可能に取り付けられるアームであって当該アームの先端部に前記アタッチメントが取り付けられるアームと、をさらに含み、
前記アタッチメントは、バケットにより構成され、
前記第1の減少操作は、前記アームの先端が前記ブームから離れる方向に前記アームを押し出すための操作であるアーム押し操作をさらに含み、
前記コントローラは、前記第1の減少操作のうち前記アタッチメント解放操作及び前記アーム押し操作の少なくとも一方が検出された場合に、前記予測荷重を決定する、作業機械。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載の作業機械であって、
前記コントローラは、決定された前記確定荷重に関する情報を含む情報を表示装置に出力する、作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベルなどの作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば油圧ショベルなどの作業機械が知られている。前記油圧ショベルは、ブーム、アーム及びバケットを含む作業装置を備え、作業現場において、土砂などの作業の対象物を、例えばダンプトラックなどの移動先に積み込むための積込作業を行う。具体的に、前記積込作業は、前記バケットによって前記土砂を掘削して当該土砂を前記バケットに保持する保持作業(掘削作業)と、前記バケットに保持された前記土砂を前記移動先の前記ダンプトラックの上まで移動させる移動作業と、前記土砂を前記ダンプトラックの上で前記バケットから解放する解放作業(排土作業)と、を含む。このような油圧ショベルとして、いわゆるペイロード機能を搭載するものも知られている。このペイロード機能は、前記バケットに保持される前記土砂の荷重を計測する機能である。前記油圧ショベルによる前記ダンプトラックへの積込動作時にこのペイロード機能を機能させることで、前記ダンプトラックに積み込まれる土砂量を演算することが出来る。
【0003】
特許文献1は、ダンプトラックへの積込動作を精度よく検出することにより、ダンプトラックに積み込まれた掘削物の荷重を正確に把握するための技術を開示している(特許文献1の段落0005)。この特許文献1の油圧ショベルでは、バケットが基準高さを通過したことを条件に、油圧ショベルの動作がダンプトラックに対する掘削物の積込動作であると判定され、積込荷重値決定部によって積込荷重値が決定される(特許文献1の段落0104~段落0107)。前記基準高さは、油圧ショベルのユーザによって設定される(引用文献1の段落0044)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記積込作業においてダンプトラックに土砂を積み込むために前記バケットを上昇させる高さは、作業現場の状況に応じて異なる。例えば、前記積込作業において前記油圧ショベルが配置される地面と前記ダンプトラックが配置される地面との高低差や、前記積込作業において前記バケットにより掘削される前記作業の対象物である土砂と前記ダンプトラックが配置される地面との高低差は、作業現場により異なる。このため、前記特許文献1の技術では、前記油圧ショベルのオペレータは前記作業現場の状況に応じて前記基準高さの設定を変更するという煩雑な設定作業が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、作業現場の状況に応じた煩雑な設定作業を行わなくても、バケットなどのアタッチメントから移動先の上で解放される対象物の荷重を取得することができる作業機械を提供することを目的とする。
【0007】
提供されるのは、作業の対象物を保持する保持作業と、保持された前記対象物を移動先の上に移動させる移動作業と、前記移動先の上で前記対象物を解放する解放作業と、を行う作業機械である。この作業機械は、前記対象物を保持することが可能なアタッチメントを含む作業装置と、前記アタッチメントにより保持される前記対象物の荷重を取得する荷重取得部と、予め設定された予測荷重決定条件が満たされた場合に、前記解放作業において前記移動先の上で解放されると予測される前記対象物の荷重である予測荷重を、前記荷重取得部により取得される前記荷重に基づいて決定する予測荷重決定部と、を備える。前記予測荷重決定条件は、予め設定された第1の減少操作が前記保持作業の後に検出されるという条件が満たされることを含み、前記第1の減少操作は、前記アタッチメントにより保持される前記対象物の量を減少させるための操作である。
また、作業機械は、作業の対象物を保持する保持作業と、保持された前記対象物を移動先の上に移動させる移動作業と、前記移動先の上で前記対象物を解放する解放作業と、を行うものであり、前記対象物を保持することが可能なアタッチメントを含む作業装置と、前記アタッチメントにより保持される前記対象物の荷重を取得する荷重取得部と、予め設定された予測荷重決定条件が満たされた場合に、前記解放作業において前記移動先の上で解放されると予測される前記対象物の荷重である予測荷重を、前記荷重取得部により取得される前記荷重に基づいて決定する予測荷重決定部と、を備え、前記予測荷重決定条件は、予め設定された第1の減少操作が前記保持作業において検出されるという条件が満たされることを含み、前記第1の減少操作は、前記アタッチメントにより保持される前記対象物の量を減少させるための操作であってもよい。
【0008】
この作業機械では、前記保持作業の後に前記第1の減少操作が検出されるという条件が満たされることを含む前記予測荷重決定条件又は前記保持作業において前記第1の減少操作が検出されるという条件が満たされることを含む前記予測荷重決定条件が満たされた場合に前記予測荷重が決定されるので、作業現場に応じた煩雑な設定作業を行わなくても、前記アタッチメントから前記移動先の上で解放されると予測される前記対象物の前記予測荷重を取得することができる。
【0009】
ところで、前記作業機械の一例である前記油圧ショベルのオペレータは、前記掘削作業(前記保持作業の一例)を行った後、前記解放作業の開始前に、前記バケット(前記アタッチメントの一例)に保持された土砂(前記対象物の一例)の一部を当該バケットから解放することにより前記バケットに保持された前記土砂の量を減少させ、前記ダンプトラック(前記移動先の一例)の上で解放する前記対象物の量(解放量)を調節する動作のための操作(減少操作)を行う場合がある。仮に、このような減少操作が、前記予測荷重の決定後でかつ前記解放作業の開始前に行われると、前記予測荷重と、前記移動先の上で実際に解放される前記対象物の荷重との間にずれが生じる場合がある。従って、前記減少操作が行われる場合には、前記作業機械は、さらに以下の構成を備えることが好ましい。
【0010】
すなわち、前記作業機械は、予め設定された予測荷重更新条件が満たされた場合に、前記予測荷重の決定後に前記荷重取得部により取得される前記荷重に基づいて前記予測荷重を更新する予測荷重更新部と、前記解放作業において前記移動先の上で実際に解放される前記対象物の荷重としての確定荷重を決定するために予め設定された確定荷重決定条件が満たされた場合に、前記予測荷重を前記確定荷重として決定する確定荷重決定部と、をさらに備え、前記予測荷重更新条件は、予め設定された第2の減少操作が前記予測荷重の決定後に検出されるという条件が満たされることを含み、前記第2の減少操作は、前記アタッチメントにより保持される前記対象物の量を減少させるための操作であり、前記第1の減少操作の完了後に行われる操作であることが好ましい。
【0011】
この態様では、前記第2の減少操作が前記予測荷重の決定後に行われる場合、前記予測荷重の決定後に前記荷重取得部により取得される前記荷重に基づいて前記予測荷重が更新される。従って、前記予測荷重の決定後に、前記第2の減少操作が行われる場合であっても、前記予測荷重と、前記移動先の上で実際に解放される前記対象物の荷重との間にずれが生じることを抑制できる。
【0012】
前記作業機械において、前記確定荷重決定条件は、前記予測荷重の決定後に前記荷重取得部により取得される前記荷重が予め設定された荷重閾値以下であるという条件が満たされることを含んでいてもよい。
【0013】
この態様では、前記荷重が前記荷重閾値以下に減少した場合に前記解放作業が行われたとみなし、前記予測荷重を前記確定荷重として決定することができる。
【0014】
前記作業機械において、前記予測荷重更新条件は、前記第1の減少操作が完了してから前記第2の減少操作が開始されるまでの時間が予め設定された時間閾値以上であるという条件をさらに含むことが好ましい。
【0015】
この態様では、前記予測荷重の更新の要否がより適切に判定される。具体的には次の通りである。この態様では、前記予測荷重更新部は、前記第1の減少操作が完了してから前記第2の減少操作が開始されるまでの経過時間の大小に基づいて前記予測荷重の更新の要否を判定する。具体的に、前記経過時間が前記時間閾値以上である場合には、前記第1の減少操作と前記第2の減少操作とが互いに間欠的な操作であり、前記第1の減少操作が前記解放量を調節する動作を行うための操作であるとみなすことができ、かかる場合、前記予測荷重の更新が必要である。従って、前記予測荷重更新部は、前記経過時間が前記時間閾値以上であるという条件が満たされることを含む前記予測荷重更新条件が満たされると、前記予測荷重を更新する。一方、前記経過時間が前記時間閾値よりも小さい場合には、前記第1の減少操作と前記第2の減少操作とが一連の操作であるとみなすことができ、かかる場合、前記第1の減少操作に伴う前記予測荷重の更新は不要である。従って、前記予測荷重更新部は、前記経過時間が前記時間閾値以上であるという条件が満たされない場合、前記予測荷重を更新しない。
【0016】
前記作業機械において、前記第2の減少操作が前記第1の減少操作と同じ操作であっても、上記のように前記経過時間の大小に基づいて前記予測荷重の更新の要否を判定することにより、前記予測荷重の更新の要否を適切に判定することが可能である。
【0017】
前記作業機械において、前記第1の減少操作は、前記アタッチメントにより保持される前記対象物の少なくとも一部を解放する動作を前記アタッチメントに行わせるための操作であるアタッチメント解放操作を含むことが好ましい。
【0018】
前記アタッチメント解放操作は、前記解放量調節動作を行うための操作、及び前記解放作業を行うための操作の何れにも該当し得る操作である。従って、この態様では、前記第1の減少操作が前記アタッチメント解放操作を含むことにより、前記予測荷重の決定及び前記予測荷重の更新の要否がより適切に判定される。
【0019】
前記作業機械は、前記作業装置を支持する機体をさらに備え、前記作業装置は、前記機体に回動可能に取り付けられるブームと、前記ブームの先端部に回動可能に取り付けられるアームであって当該アームの先端部に前記アタッチメントが取り付けられるアームと、をさらに含み、前記アタッチメントは、バケットにより構成され、前記第1の減少操作は、前記アームの先端が前記ブームから離れる方向に前記アームを押し出すための操作であるアーム押し操作をさらに含み、前記予測荷重決定部は、前記第1の減少操作のうち前記アタッチメント解放操作及び前記アーム押し操作の少なくとも一方が検出された場合に、前記予測荷重を決定するように構成されていてもよい。
【0020】
前記アタッチメントがバケットにより構成される場合、前記アーム押し操作は、前記解放量調節動作を行うための操作、及び前記解放作業を行うための操作の何れにも該当し得る操作である。具体的に、前記バケットに保持される土砂などの対象物の少なくとも一部は、前記アーム押し操作により前記アームが前記ブームに対して前方に押し出されることによって解放され得る。従って、この態様では、前記第1の減少操作が前記アタッチメント解放操作及び前記アーム押し操作を含み、これらの操作の少なくとも一方が検出された場合に前記予測荷重が決定されるので、前記予測荷重の決定の要否がより適切に判定される。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、作業現場の状況に応じた煩雑な設定作業を行わなくても、バケットなどのアタッチメントからダンプトラックなどの移動先の上で解放される土砂などの対象物の荷重を取得することができる作業機械が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態に係る作業機械の一例である油圧ショベルを示す側面図である。
【
図2】前記油圧ショベルに搭載されるコントローラ及びこれにより制御される回路の構成を示す図である。
【
図3】前記コントローラにより実行される制御動作を示すフローチャートである。
【
図4】前記制御動作においてコントローラに入力される操作信号の経時変化の一例、及び前記油圧ショベルのバケットに保持される対象物の荷重値の経時変化の一例を示すグラフである。
【
図5】前記油圧ショベルによる土砂の積込作業、及び前記制御動作により表示装置に表示される内容の一例を示す図である。
【
図6】前記油圧ショベルによる土砂の積込作業、及び前記制御動作により表示装置に表示される内容の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態に係る作業機械の一例である油圧ショベルを示す。
図2は、前記油圧ショベルに搭載されるコントローラ及びこれにより制御される回路の構成を示す図である。
【0025】
図1及び
図2に示すように、油圧ショベル10は、下部走行体11と、前記下部走行体11に旋回可能に搭載される上部旋回体12と、前記上部旋回体12に搭載される作業装置13と、複数の油圧アクチュエータと、少なくとも一つの油圧ポンプ21と、パイロットポンプ22と、複数の操作装置と、複数の制御弁と、複数の圧力センサと、姿勢検出部と、コントローラ50と、を備える。
【0026】
前記下部走行体11及び前記上部旋回体12は、前記作業装置13を支持する機体を構成する。前記下部走行体11は、前記油圧ショベル10を走行させるための図略の走行装置を有し、地面Gの上を走行することができる。前記上部旋回体12は、旋回フレーム12Aと、その上に搭載されるエンジンルーム12B及びキャブ12Cとを含む。前記エンジンルーム12Bはエンジンを収容し、前記キャブ12Cには、オペレータが着座する座席、種々の操作レバー、操作ペダルなどが配置されている。
【0027】
前記作業装置13は、土砂をダンプトラックに積み込むための積込作業を行うことが可能な複数の可動部を含む。前記複数の可動部は、ブーム14、アーム15及びバケット16を含む。前記土砂は、作業の対象物の一例であり、前記ダンプトラックは、移動先の一例であり、前記バケット16は、アタッチメントの一例である。
【0028】
前記積込作業は、前記土砂を掘削して前記バケット16に保持する保持作業(掘削作業)と、保持された前記土砂を前記ダンプトラックの上に移動させる移動作業と、前記ダンプトラックの上で前記土砂を解放する解放作業(排土作業)と、を含む。
【0029】
前記ブーム14は、
図1の矢印A1に示されるように起伏可能すなわち水平軸回りに回動可能となるように前記旋回フレーム12Aの前部に支持される基端部と、その反対側の先端部と、を有する。前記アーム15は、
図1の矢印A2に示されるように水平軸回りに回動可能となるように前記ブーム14の先端部に取り付けられる基端部と、その反対側の先端部と、を有する。前記バケット16は、
図1の矢印A3に示されるように回動可能となるように前記アーム15の先端部に取り付けられる。
【0030】
前記複数の油圧アクチュエータは、複数の油圧シリンダと、旋回モータ20と、を含む。前記複数の油圧シリンダは、前記ブーム14を動かすための少なくとも一つのブームシリンダ17と、前記アーム15を動かすためのアームシリンダ18と、前記バケット16を動かすためのバケットシリンダ19と、を含む。
図2では、1つの油圧ポンプ21のみが図示されているが、前記油圧ショベル10は、複数の油圧ポンプを備えていてもよい。
【0031】
前記少なくとも一つのブームシリンダ17は、前記上部旋回体12と前記ブーム14との間に介在し、前記油圧ポンプ21から吐出される作動油の供給を受けることにより伸長又は収縮し、これにより、前記ブーム14を前記矢印A1で示す起立方向又は倒伏方向に回動させる。
【0032】
前記アームシリンダ18は、前記ブーム14と前記アーム15との間に介在し、前記作動油の供給を受けることにより伸長又は収縮し、これにより、前記アーム15を前記矢印A2で示すアーム引き方向又はアーム押し方向に回動させる。前記アーム引き方向は、前記アーム15の先端が前記ブーム14に近づく方向であり、前記アーム押し方向は、前記アーム15の先端が前記ブーム14から離れる方向である。
【0033】
前記バケットシリンダ19は、前記アーム15と前記バケット16との間に介在し、作動油の供給を受けることにより伸長又は収縮し、これにより、前記バケット16を前記矢印A3で示すバケット引き方向又はバケット押し方向に回動させる。前記バケット引き方向は、
図1に示す前記アーム15の長手方向15aと、前記バケット16の開口を画定する縁部16aとのなす角度θが小さくなる方向であり、前記バケット押し方向は、前記角度θが大きくなる方向である。
【0034】
図2に示すように、前記複数の操作装置は、ブーム操作装置61と、アーム操作装置62と、バケット操作装置63と、旋回操作装置64と、を含む。これらの操作装置61~64は、オペレータの操作を受ける操作レバー61A~64Aをそれぞれ有する。各操作装置は、油圧式の操作装置により構成されていてもよく、電気式の操作装置により構成されていてもよい。一つの操作レバーが複数の操作レバーを兼ねていてもよい。例えば、オペレータが着座する座席の前方右側に右側操作レバーを設け、前後方向に操作された場合にブームレバーとして機能し、かつ、左右方向に操作された場合にバケットレバーとして機能してもよい。同様に、前記座席の前方左側に左側操作レバーを設け、前後方向に操作された場合にアームレバーとして機能し、かつ、左右方向に操作された場合に旋回レバーとして機能してもよい。レバーパターンは、オペレータの操作指示によって任意に変更されてもよい。
図2は、前記操作装置61~64が電気式の操作装置により構成される場合の回路構成を示している。
【0035】
前記複数の制御弁は、ブーム制御弁41と、アーム制御弁42と、バケット制御弁43と、旋回制御弁44と、一対のブーム電磁比例弁45と、一対のアーム電磁比例弁46と、一対のバケット電磁比例弁47と、一対の旋回電磁比例弁48と、を含む。
【0036】
例えば、前記バケット操作装置63の前記操作レバー63Aが操作されると、前記操作レバー63Aの操作量は電気信号(操作信号)に変換されてコントローラ50に入力される。コントローラ50は、前記操作信号に対応した指令信号(指令電流)を、前記一対のバケット電磁比例弁47のうちの前記操作レバー63Aの操作方向に対応するバケット電磁比例弁47に入力する。当該バケット電磁比例弁47は、前記パイロットポンプ22が吐出するパイロット油の圧力を前記指令信号に応じて減圧し、減圧されたパイロット圧を、前記バケット制御弁43における一対のパイロットポートの一方に導く。これにより、前記バケット制御弁43は、前記パイロット圧が入力される前記パイロットポートに対応する方向に、前記パイロット圧の大きさに対応するストロークで開弁する。その結果、前記油圧ポンプ21から吐出される作動油が、前記ストロークに対応する流量で前記バケットシリンダ19のヘッド側室又はロッド側室に供給されることが許容される。なお、他の操作装置61,62,64の操作レバーが操作された場合の動作は、上記と同様であるので説明を省略する。
【0037】
なお、各操作装置が油圧式である場合の油圧回路図は省略するが、その場合、前記油圧ショベル10の油圧回路は次のように動作する。例えば前記バケット操作装置63の前記操作レバー63Aが操作されると、パイロットポンプからのパイロット一次圧が前記バケット操作装置63のリモコン弁において前記操作レバー63Aの操作量に応じて減圧され、減圧されたパイロット圧が前記リモコン弁から出力される。出力されたパイロット圧は、バケット制御弁における一対のパイロットポートの一方に入力される。これにより、前記バケット制御弁は、前記パイロット圧が入力される前記パイロットポートに対応する方向に、前記パイロット圧の大きさに対応するストロークで開弁する。その結果、油圧ポンプから吐出される作動油が、前記ストロークに対応する流量で前記バケットシリンダ19のヘッド側室又はロッド側室に供給されることが許容される。
【0038】
前記複数の圧力センサは、
図2に示すように、前記ブームシリンダ17のヘッド圧を検出するための圧力センサ35と、前記ブームシリンダ17のロッド圧を検出するための圧力センサ36と、を含む。
【0039】
前記姿勢検出部は、前記ブーム14の姿勢を検出可能なブーム姿勢検出装置31と、前記アーム15の姿勢を検出可能なアーム姿勢検出装置32と、前記バケット16の姿勢を検出可能なバケット姿勢検出装置33と、を含む。本実施形態では、これらの姿勢検出装置31,32,33のそれぞれは、例えば、慣性計測装置(Inertial Measurement Unit:IMU)により構成される。
【0040】
なお、前記ブーム14の姿勢、前記アーム15の姿勢、及び前記バケット16の姿勢は、例えば、前記ブームシリンダ17、前記アームシリンダ18、及び前記バケットシリンダ19のストロークを検出するセンサにより得られるストローク値に基づいて演算されてもよい。また、前記ブーム14の姿勢、前記アーム15の姿勢、及び前記バケット16の姿勢は、例えば、GNSSセンサのような衛星測位システムを利用した位置検出装置により得られる検出値に基づいて演算されてもよい。
【0041】
前記コントローラ50(メカトロコントローラ)は、例えばCPU、メモリなどを備えるコンピュータにより構成され、操作判定部51と、姿勢演算部52と、荷重演算部53と、予測荷重決定部54と、予測荷重更新部55と、確定荷重決定部56と、荷重情報出力部57と、を機能として有する。
【0042】
前記操作判定部51は、前記複数の操作装置61~64のそれぞれの操作レバーに操作が与えられたか否かを判定する。前記複数の操作装置61~64のそれぞれが
図2に示すような前記電気式の操作装置である場合、前記操作装置61~64のそれぞれは、対応する操作レバーに与えられる操作量及び操作方向に応じた前記操作信号を前記コントローラ50に入力する。前記操作判定部51は、入力された前記操作信号に基づいて、対応する操作装置の操作レバーに操作が与えられたことを判定することができる。
【0043】
具体的に、本実施形態では、前記操作判定部51は、前記ブーム操作装置61の前記操作レバー61Aに前記ブームシリンダ17を伸張させるブーム上げ操作又は前記ブームシリンダ17を収縮させるブーム下げ操作が与えられたこと、前記アーム操作装置62の前記操作レバー62Aに前記アームシリンダ18を伸張させるアーム引き操作又は前記アームシリンダ18を収縮させるアーム押し操作が与えられたこと、前記バケット操作装置63の前記操作レバー63Aに前記バケットシリンダ19を伸張させるバケット引き操作及び前記バケットシリンダ19を収縮させるバケット押し操作が与えられたこと、前記旋回操作装置64の前記操作レバー64Aに前記上部旋回体12を旋回させる右旋回操作又は左旋回操作が与えられたこと、をそれぞれ判定することができる。前記複数の操作装置61~64のそれぞれが前記電気式の操作装置である場合、前記操作判定部51は、前記複数の操作装置61~64の操作レバー61A~64Aに与えられる操作を検出可能な操作検出部を構成する。
【0044】
前記操作装置61~64のそれぞれが前記油圧式の操作装置である場合、前記油圧ショベル10は、前記複数の操作装置61~64のそれぞれの前記操作レバーに与えられる操作量に応じて前記リモコン弁から出力されるパイロット圧を検出する図略の複数のパイロット圧センサを備える。複数のパイロット圧センサのそれぞれは、検出したパイロット圧に対応する信号である操作信号を前記コントローラ50に入力する。前記操作判定部51は、入力された前記操作信号に基づいて、対応する操作装置の操作レバーに操作が与えられたことを判定することができる。前記複数の操作装置61~64のそれぞれが前記油圧式の操作装置である場合、前記複数のパイロット圧センサと前記操作判定部51は、前記複数の操作装置61~64の操作レバー61A~64Aに与えられる操作を検出可能な操作検出部を構成する。
【0045】
前記姿勢演算部52は、前記姿勢検出部から入力される姿勢信号に基づいて、前記ブーム14の姿勢、前記アーム15の姿勢、及び前記バケット16の姿勢のそれぞれを演算する。
【0046】
前記荷重演算部53は、前記バケット16に保持される前記対象物の荷重を例えば以下のようにして算出する。なお、前記対象物の荷重は、以下の演算方法に限られず、他の公知の手段を用いて演算することが可能である。
【0047】
本実施形態では、前記荷重演算部53は、前記バケット16に保持される前記対象物の荷重を次の式(1)に基づいて算出する。
【0048】
M=M1+M2+M3+W×L ・・・(1)
式(1)において、Mは、前記ブームシリンダ17のブームフートピン回りのモーメントである。M1は、前記ブーム14の前記ブームフートピン回りのモーメントである。M2は、前記アーム15の前記ブームフートピン回りのモーメントである。M3は、前記バケット16の前記ブームフートピン回りのモーメントである。Wは、前記バケット16に保持される土砂等の対象物の荷重である。Lは、前記ブームフートピンから前記バケット16の基端部までの水平方向の距離である。
【0049】
前記モーメントMは、ブームシリンダ17のヘッド圧とロッド圧とから算出される。前記モーメントM1は、前記ブーム14の重心と前記ブームフートピンとの間の距離と、前記ブーム14の重量との積により算出される。前記モーメントM2は、前記アーム15の重心と前記ブームフートピンとの間の距離と、前記アーム15の重量との積により算出される。前記モーメントM3は、前記バケット16の重心と前記ブームフートピンとの間の距離と、前記バケットの重量との積により算出される。
【0050】
前記ブーム14の重心の位置、前記アーム15の重心の位置、及び前記バケット16の重心の位置のそれぞれは、前記姿勢検出部により検出される前記作業装置13の姿勢に関する情報に基づいて算出される。前記ブームシリンダ17の前記ヘッド圧は、圧力センサ35により検出され、前記ブームシリンダ17の前記ロッド圧は、圧力センサ36により検出される。前記水平方向の距離Lは、前記姿勢検出部により検出される前記作業装置13の姿勢に関する情報に基づいて算出される。
【0051】
なお、本実施形態では、前記姿勢検出部、前記圧力センサ35,36、前記姿勢演算部52及び前記荷重演算部53は、前記バケット16により保持される前記対象物の荷重を取得する荷重取得部を構成する。
【0052】
前記予測荷重決定部54は、予め設定された予測荷重決定条件が満たされた場合に、前記解放作業において前記移動先の上で解放されると予測される前記対象物の荷重である予測荷重を決定する。
【0053】
前記予測荷重決定条件は、前記バケット16により保持される前記対象物の量を減少させるための第1の減少操作が前記保持作業の後に検出されるという条件を含む。
【0054】
本実施形態では、前記第1の減少操作は、前記バケット押し操作と前記アーム押し操作とを含む。前記バケット押し操作はアタッチメント解放操作の一例である。前記バケット押し操作及び前記アーム押し操作のそれぞれは、解放量調節動作を行うための操作、及び解放作業を行うための操作の何れにも該当し得る操作である。前記解放量調節動作は、前記保持作業を行った後に、前記バケット16に保持された土砂(対象物)の一部を当該バケット16から解放することにより前記バケット16に保持された前記土砂の量を減少させ、前記ダンプトラックの上で解放する前記対象物の量(解放量)を調節する動作である。
【0055】
前記予測荷重決定部54は、前記バケット押し操作が前記操作レバー63Aに与えられたこと及び前記アーム押し操作が前記操作レバー62Aに与えられたことの少なくとも一方が前記操作判定部51によって判定されると、前記予測荷重を決定する。
【0056】
前記予測荷重の決定は、例えば、前記第1の減少操作の検出時及び前記第1の減少操作の検出前の少なくとも一方において前記荷重取得部により取得された前記荷重に基づいて行われる。
【0057】
具体的に、前記予測荷重決定部54は、例えば、前記バケット押し操作に対応する操作信号及び前記アーム押し操作に対応する操作信号の少なくとも一方の操作信号が前記コントローラ50に入力された場合、その時点で前記荷重取得部が取得する前記対象物の荷重(前記バケット16が保持する前記対象物の荷重)を、前記予測荷重として決定してもよい。また、前記予測荷重決定部54は、例えば、前記少なくとも一方の操作信号が前記コントローラ50に入力された場合、前記保持作業の完了後から前記少なくとも一方の操作信号が前記コントローラ50に入力された時点までに取得された荷重を、前記予測荷重として決定してもよい。前記保持作業の完了後から前記少なくとも一方の操作信号が前記コントローラ50に入力された時点までに取得された荷重が複数存在する場合、例えば当該複数の荷重の平均値を、前記予測荷重として決定してもよい。
【0058】
前記予測荷重更新部55は、予め設定された予測荷重更新条件が満たされた場合に、前記予測荷重の決定後に前記荷重取得部により取得される前記荷重に基づいて前記予測荷重を更新する。
【0059】
前記予測荷重更新条件は、前記バケット16により保持される前記対象物の量を減少させるための第2の減少操作が前記予測荷重の決定後に検出されるという条件と、前記第1の減少操作が完了してから前記第2の減少操作が開始されるまでの時間が予め設定された時間閾値以上であるという条件と、を含む。
【0060】
本実施形態では、前記第2の減少操作は、前記第1の減少操作と同じ操作である。すなわち、前記第2の減少操作は、前記バケット押し操作と前記アーム押し操作とを含む。
【0061】
前記予測荷重更新部55は、前記予測荷重の決定後に、前記バケット押し操作が前記操作レバー63Aに与えられたこと及び前記アーム押し操作が前記操作レバー62Aに与えられたことの少なくとも一方が前記操作判定部51によって判定され、かつ、前記第1の減少操作が完了してから前記第2の減少操作が開始されるまでの時間が予め設定された時間閾値以上である場合に、前記予測荷重を更新する。前記予測荷重更新部55は、前記第1の減少操作が完了してから前記第2の減少操作が開始されるまでの経過時間を計測する機能を有する。
【0062】
前記予測荷重の更新は、前記予測荷重の決定後に前記荷重取得部により取得される前記荷重に基づいて行われる。
【0063】
具体的に、前記予測荷重更新部55は、例えば、前記予測荷重の決定後に、前記バケット押し操作に対応する操作信号及び前記アーム押し操作に対応する操作信号の少なくとも一方の操作信号が前記コントローラ50に入力された場合、その時点で前記荷重取得部が取得する前記対象物の荷重(前記バケット16が保持する前記対象物の荷重)を、前記予測荷重として更新してもよい。また、前記予測荷重更新部55は、例えば、前記予測荷重の決定後に、前記少なくとも一方の操作信号が前記コントローラ50に入力された場合、前記予測荷重の決定後から前記少なくとも一方の操作信号が前記コントローラ50に入力された時点までに取得された荷重を、前記予測荷重として更新してもよい。前記予測荷重の決定後から前記少なくとも一方の操作信号が前記コントローラ50に入力された時点までに取得された荷重が複数存在する場合、例えば当該複数の荷重の平均値を、前記予測荷重として更新してもよい。
【0064】
前記確定荷重決定部56は、前記予測荷重を前記対象物の荷重として確定することができる予め設定された確定荷重決定条件が満たされた場合に、前記予測荷重を前記対象物の確定荷重として決定する。
【0065】
前記確定荷重決定条件は、前記予測荷重の決定後に前記荷重取得部により取得される前記荷重が予め設定された荷重閾値以下であるという条件を含む。この荷重閾値は、例えばゼロよりも大きな値に設定される。具体的に、前記解放作業(排土作業)において前記バケット押し操作が行われると、前記バケット16に保持されていた土砂の大半は当該バケット16から前記ダンプトラックに落下するが、前記バケットに付着した土砂が前記バケットに残存する場合がある。このような場合でも、前記確定荷重決定部56が前記予測荷重を前記対象物の荷重として確定することができるように、前記荷重閾値は、ゼロよりも大きな値に設定される。また、前記荷重閾値は、前記荷重取得部により得られる荷重の精度を考慮したゼロよりも大きな値に設定されてもよい。
【0066】
前記確定荷重決定部56は、前記予測荷重の決定後に、前記予測荷重の更新が行われていない段階で、前記確定荷重決定条件が満たされた場合、前記予測荷重決定部54が決定した前記予測荷重を前記対象物の確定荷重として決定する。一方、前記確定荷重決定部56は、前記予測荷重の決定後に、前記予測荷重の更新が行われ、その後に前記確定荷重決定条件が満たされた場合、前記予測荷重更新部55が更新した前記予測荷重を前記対象物の確定荷重として決定する。前記予測荷重の更新が複数回行われた場合、前記確定荷重決定部56は、前記予測荷重更新部55が更新した直近の前記予測荷重を前記対象物の確定荷重として決定する。
【0067】
前記荷重情報出力部57は、決定された前記確定荷重に関する情報を表示装置70に出力する。前記荷重情報出力部57は、前記確定荷重に関する情報の他、例えば、前記保持作業が行われているときの前記バケット16が保持する土砂(対象物)の荷重をリアルタイムで出力してもよい。また、前記荷重情報出力部57は、前記積込作業において、前記ダンプトラックに排土された土砂の荷重の累積値、前記ダンプトラックに排土する土砂の目標積み込み量、前記ダンプトラックに排土した回数などを出力してもよい。
【0068】
前記表示装置70は、入力された前記確定荷重に関する情報などの情報を表示する。前記表示装置70は、前記油圧ショベル10のキャブ12Cにおいてオペレータが視認可能な位置に配置されていてもよい。前記表示装置70が上記のような各種情報を表示することにより、オペレータは、前記ダンプトラックへの目標積み込み量(積込み目標)に対するその時点での差分(解放可能な対象物の残量)と、その時点でバケット16が保持している土砂(対象物)の荷重と、をリアルタイムで把握することができる。そして、前記排土可能な残量よりも前記バケット16が保持している土砂(対象物)の荷重の方が大きい場合には、オペレータは、前記解放量調節動作が行われるように前記操作装置の操作レバーを操作し、前記バケット16から前記対象物の一部をこぼして調節する。その後、オペレータは、前記解放作業を行うことにより、前記ダンプトラックに前記目標積み込み量に近い土砂(対象物)を積み込むことができる。
【0069】
なお、前記表示装置70は、前記油圧ショベル10とは別の場所にあるパーソナルコンピュータやモバイル情報端末などの表示装置を構成するものであってもよい。
【0070】
図3は、前記コントローラ50により実行される制御動作を示すフローチャートである。
【0071】
前記コントローラ50が、前記積込作業のうちの前記保持作業が完了したことを示す信号の入力を受けると(ステップS1)、前記コントローラ50は、
図3に示すステップS2~S7の制御動作を行う。前記保持作業が完了したことを示す信号は、前記保持作業の具体的な内容に応じて種々の態様を取り得るため、特に限定されるものではないが、具体例を挙げると次の通りである。
【0072】
本実施形態では、前記積込作業は、前記保持作業(掘削作業)と、前記移動作業と、前記解放作業(排土作業)と、を含む。前記保持作業は、土砂を掘削して前記バケット16に保持する作業である。従って、前記保持作業において、オペレータは、前記ブーム上げ操作、前記アーム引き操作、及び前記バケット引き操作を行う一方で、前記上部旋回体12を旋回させるための旋回操作を行わない。前記保持作業の次に行われる前記移動作業は、土砂を保持した前記バケット16をダンプトラックの真上に移動させるために、前記上部旋回体12を平面視で例えば約90°旋回させながら、前記バケット16を前記ダンプトラックよりも上方に移動させる作業である。従って、前記移動作業が開始されるときには、前記オペレータは前記旋回操作を行う。この場合、前記コントローラ50には、前記旋回操作装置64の前記操作レバー64Aが操作されたことを示す操作信号(旋回操作信号)が入力され、前記コントローラ50は、前記保持作業が完了したと判定する(ステップS1)。
【0073】
図4は、
図3に示す前記制御動作においてコントローラ50に入力される操作信号の経時変化の一例、及び前記バケット16に保持される土砂(対象物)の荷重(荷重値)の経時変化の一例を示すグラフである。
【0074】
図4は、3つのデータを、時間軸(横軸)を揃えて表示したものである。
図4の上段のデータは、コントローラ50に入力される前記操作信号のうち、前記バケット操作装置63の前記操作レバー63Aに与えられる前記バケット押し操作の操作信号(バケット押し操作信号)の時系列変化を示すものである。前記バケット押し操作は、前記第1の減少操作及び前記第2の減少操作のそれぞれに含まれる。
【0075】
図4の中段のデータは、前記保持作業の後、前記操作レバー63Aに前記バケット押し操作が与えられることにより、前記予測荷重が決定され(
図4の点Aで示す時点)、その予測荷重の決定後に、前記予測荷重の更新が行われていない段階で、前記確定荷重決定条件が満たされ(
図4の点Bで示す時点)、前記確定荷重が決定される第1のパターンを示すものである。
【0076】
図4の下段のデータは、前記保持作業の後、前記操作レバー63Aに前記バケット押し操作が与えられることにより、前記予測荷重が決定され(
図4の点Cで示す時点)、その予測荷重の決定後に、前記予測荷重が更新され(
図4の点Eで示す時点)、その予測荷重の更新後に前記確定荷重決定条件が満たされ(
図4の点Fで示す時点)、前記確定荷重が決定される第2のパターンを示すものである。
【0077】
通常の現場作業では、前記積込作業が複数回繰り返されることによって前記ダンプトラックの上で解放される対象物(排土される土砂)の荷重の合計値が、前記ダンプトラックへの目標積み込み量に到達する。
図5及び
図6は、前記油圧ショベル10による土砂の積込作業、及び前記制御動作により表示装置70に表示される内容の一例をそれぞれ示す図である。
図5及び
図6では、これまでに7回の積込作業が行われており、これから8回目の積込作業をする場合における解放作業(排土作業)が行われることにより、前記対象物の荷重の合計値(
図5では、「積込み荷重」)が、前記目標積み込み量(
図5では、「積込み目標」)の2.0tに到達する場合を例示している。
【0078】
図5及び
図6に示される表示装置70の具体的な表示内容は次のとおりである。「バケット荷重」は荷重演算部53により演算される前記バケット16が保持する土砂等の対象物の荷重である。「積込み荷重」は前記ダンプトラック等の移動先に積み込んだ前記対象物の荷重の合計値を示す。
図5ではこれまでの解放作業(排土作業)により1.94t積み込まれたことを示す。「積込み目標」は前記ダンプトラック等の移動先に積み込まれるべき目標量である。「積込回数」は前記ダンプトラック等の移動先で解放作業(排土作業)が行われた回数を示す。
図5右図では、「バケット荷重」が強調表示されているが、この強調表示は、7回の積込作業の完了時点における前記「積込み荷重」が1.94tであるので、バケット16が保持する土砂(「バケット荷重」0.15t)を、仮に、次の積込作業(8回目の積込作業)において前記ダンプトラック等の移動先で積み込んでしまうと前記積込み目標を超過してしまうことを示す。一方、
図6の下図に示すように前記解放量調節動作が行われ、超過状態が解消されると、上記の強調表示は解除される。また、
図6上図のように「積込み荷重」が「積込み目標」を超過した場合に「積込み荷重」が強調表示されてもよい。前記強調表示は、項目を点滅させたり赤などの強調色による表示に切り替えるなどをしてもよい。また、警報音を同時に鳴らしたり荷重超過があることを音声によるガイダンスで報知するようにしてもよい。
【0079】
従って、1回目から7回目までの積込作業では、オペレータは、前記表示装置70に表示される情報(前記強調表示がない情報)に基づいて、前記解放量調節動作を行う必要がないと判断し、
図4に示す第1のパターンに示されるような操作を行う。この第1のパターンについて
図3のフローチャート及び
図4のグラフを参照して説明する。
【0080】
前記コントローラ50の前記予測荷重決定部54は、前記予測荷重決定条件が満たされたか否かを判定する(ステップS2)。
図4の点Aで示す時点において、前記バケット押し操作信号が前記コントローラ50に入力されると、前記予測荷重決定部54は、前記予測荷重決定条件が満たされたと判定し(ステップS2においてYES)、例えばその時点において前記荷重取得部により取得される、前記バケット16が保持する荷重を、予測荷重に決定する(ステップS3)。
図4~
図6に示す具体例では、前記予測荷重は0.24tに決定される。
【0081】
次に、前記確定荷重決定部56は、前記確定荷重決定条件が満たされたか否かを判定する(ステップS4)。前記予測荷重の決定後に、
図4の点Bに示す時点において前記荷重取得部により取得される前記荷重が前記荷重閾値以下になると、前記確定荷重決定部56は、前記確定荷重決定条件が満たされたと判定し(ステップS4においてYES)、前記予測荷重を確定荷重として決定する(ステップS5)。
図4~
図6に示す具体例では、前記確定荷重は0.24tに決定される。
【0082】
次に、8回目の積込作業では、オペレータは、前記表示装置70に表示される情報(前記強調表示がある情報)に基づいて、前記解放量調節動作を行う必要があると判断し、
図4に示す第2のパターンに示されるような操作を行う。この第2のパターンについて
図3のフローチャート及び
図4のグラフを参照して説明する。
【0083】
前記コントローラ50の前記予測荷重決定部54は、前記予測荷重決定条件が満たされたか否かを判定する(ステップS2)。
図4の点Cで示す時点において、前記バケット押し操作信号が前記コントローラ50に入力されると、前記予測荷重決定部54は、前記予測荷重決定条件が満たされたと判定し(ステップS2においてYES)、例えばその時点において前記荷重取得部により取得される、前記バケット16が保持する荷重を、予測荷重に決定する(ステップS3)。
図4~
図6に示す具体例では、前記予測荷重は0.15tに決定される。
【0084】
次に、前記確定荷重決定部56は、前記確定荷重決定条件が満たされたか否かを判定する(ステップS4)。前記予測荷重の決定後から次のバケット押し操作が開始される時点(
図4の点Eで示す時点)までの期間において前記荷重取得部により取得される前記荷重は前記荷重閾値より大きいため、前記確定荷重決定部56は、前記確定荷重決定条件が満たされていないと判定し(ステップS4においてNO)、確定荷重の決定を行わない。
【0085】
次に、前記予測荷重更新部55は、前記予測荷重更新条件が満たされたか否かを判定する(ステップS6)。
図4の点Eで示す時点において次のバケット押し操作が開始されることを示すバケット押し操作信号が前記コントローラ50に入力され、かつ、前回の前記バケット押し操作が完了した時点(
図4の点Dで示す時点)から次のバケット押し操作が開始される時点(
図4の点Eで示す時点)までの経過時間(
図4では、例えば2秒)が前記時間閾値以上である。このため、前記予測荷重更新部55は、前記予測荷重更新条件が満たされたと判定し(ステップS6においてYES)、例えばその時点において前記荷重取得部により取得される、前記バケット16が保持する荷重を、予測荷重として更新する(ステップS7)。
図4~
図6に示す具体例では、前記予測荷重は0.05tに更新される。
【0086】
次に、前記確定荷重決定部56は、前記確定荷重決定条件が満たされたか否かを判定する(ステップS4)。前記予測荷重の決定後に(前記予測荷重の更新後に)、
図4の点Fに示す時点において前記荷重取得部により取得される前記荷重が前記荷重閾値以下になると、前記確定荷重決定部56は、前記確定荷重決定条件が満たされたと判定し(ステップS4においてYES)、前記予測荷重を確定荷重として決定する(ステップS5)。
図4~
図6に示す具体例では、前記確定荷重は0.05tに決定される。
【0087】
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されない。本発明は、例えば次のような態様を包含する。
【0088】
(A)作業機械について
前記実施形態では、前記作業機械は、油圧ショベル10であるが、これに限られず、例えばホイールローダーなどの他の作業機械であってもよい。
【0089】
(B)予測荷重決定条件について
前記実施形態では、前記予測荷重決定条件は、前記アタッチメントにより保持される前記対象物の量を減少させるための第1の減少操作が前記保持作業の後に検出されるという条件であるが、これ以外の条件をさらに含んでいてもよい。
【0090】
(C)予測荷重更新条件について
前記実施形態では、前記予測荷重更新条件は、前記バケット16により保持される前記対象物の量を減少させるための第2の減少操作が前記予測荷重の決定後に検出されるという条件(減少操作条件)と、前記第1の減少操作が完了してから前記第2の減少操作が開始されるまでの時間が予め設定された時間閾値以上であるという条件(時間条件)と、を含むが、これに限られない。前記予測荷重更新条件は、例えば、前記減少操作条件を含み、前記時間条件を含まないものであってもよい。
【0091】
(D)確定荷重決定条件について
前記実施形態では、前記確定荷重決定条件は、前記予測荷重の決定後に前記荷重取得部により取得される前記荷重が予め設定された荷重閾値以下であるという条件(荷重条件)であるが、これに限られない。前記確定荷重決定条件は、例えば、前記バケット押し操作が行われるときの前記バケットの角度(例えば
図1に示すバケット角度θ)が、予め設定された角度閾値以上になるという条件(角度条件)を含むものであってもよい。すなわち、前記確定荷重決定条件は、前記荷重条件及び前記角度条件の少なくとも一方を含むものであってもよい。
【0092】
(E)減少操作について
前記実施形態では、前記第2の減少操作は、前記第1の減少操作と同じ操作であるが、これに限られず、前記第1の減少操作とは異なる操作であってもよい。
【0093】
(F)アタッチメントについて
前記実施形態では、前記アタッチメントが前記バケット16であるが、これに限られない。前記アタッチメントは、例えば、フォーク、グラップルなどの他のアタッチメントであってもよい。前記フォーク及び前記グラップルのそれぞれは、作業の対象物を保持することが可能なアタッチメントである。前記フォーク及び前記グラップルのそれぞれは、運搬物、廃材などの作業の対象物を把持するための開閉可能な複数のアームを備える。
【0094】
(G)予測荷重更新部及び確定荷重決定部について
前記実施形態に係る作業機械10は、予測荷重更新部55及び確定荷重決定部56を備えるが、これらの予測荷重更新部55及び確定荷重決定部56は、省略可能である。
【0095】
(H)予測荷重が決定される作業について
前記実施形態では、前記予測荷重決定部は、前記保持作業の完了後、前記移動作業において前記予測荷重決定条件が満たされた場合に前記予測荷重を決定するが、このような態様に限られない。前記予測荷重決定部は、前記保持作業において前記予測荷重決定条件が満たされた場合に前記予測荷重を決定してもよい。この場合、前記予測荷重決定条件は、前記第1の減少操作が前記保持作業において検出されるという条件が満たされることであってもよい。また、前記予測荷重決定条件は、前記第1の減少操作が前記保持作業及び前記移動作業の少なくとも一方の作業において検出されるという条件が満たされることであってもよい。
【0096】
(I)荷重取得部について
前記アタッチメントにより保持される前記対象物の荷重は、例えば、前記アタッチメントに取り付けられたロードセル等のセンサにより検出された値に基づいて演算されてもよい。この場合、前記荷重取得部は、前記センサと、当該センサにより検出された値に基づいて前記対象物の荷重を演算する荷重演算部と、を含む。
【符号の説明】
【0097】
10 油圧ショベル(作業機械の一例)
11 下部走行体(機体の一部を構成する構成要素の一例)
12 上部旋回体(機体の一部を構成する構成要素の一例)
13 作業装置
14 ブーム
15 アーム
16 バケット(アタッチメントの一例)
50 コントローラ
54 予測荷重決定部
55 予測荷重更新部
56 確定荷重決定部