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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】利得可変差動増幅回路
(51)【国際特許分類】
   H03G 3/10 20060101AFI20230704BHJP
   H03F 3/45 20060101ALI20230704BHJP
   H03F 1/32 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
H03G3/10 B
H03F3/45 109
H03F1/32
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019193433
(22)【出願日】2019-10-24
(65)【公開番号】P2021069026
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】板橋 直樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 啓二
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-205055(JP,A)
【文献】特開平10-284962(JP,A)
【文献】特開2019-036817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03G 1/00 ー 3/34
H03F 1/00 ー 3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ、制御端子と第1電流端子と第2電流端子とを有する一対の差動対トランジスタと、
ゲートと、前記一対の差動対トランジスタの一方の第1電流端子に接続された第1端子と、前記一対の差動対トランジスタの他方の第1電流端子に接続された第2端子と、を有する電界効果トランジスタと、
前記一対の差動対トランジスタの一方の第1電流端子に第1電流を供給する第1電流源と、
前記一対の差動対トランジスタの他方の第1電流端子に第2電流を供給する第2電流源と、
前記電界効果トランジスタのゲートに入力されるゲート電位を調整して前記電界効果トランジスタの第1端子と前記電界効果トランジスタの第2端子との間の抵抗値を制御する制御回路と、
を備え、
前記一対の差動対トランジスタの一方の制御端子は、単一の入力信号を受け、
前記一対の差動対トランジスタの他方の制御端子は、基準信号を受け、
前記一対の差動対トランジスタの一方の第2電流端子と前記一対の差動対トランジスタの他方の第2電流端子は、前記単一の入力信号に応じて差動出力信号を生成し、
前記制御回路は、第1抵抗素子と、第2抵抗素子と、第3抵抗素子と、利得制御電流源と、を備え、
前記第1抵抗素子の一端は、前記電界効果トランジスタの第1端子に接続され、
前記第2抵抗素子の一端は、前記電界効果トランジスタの第2端子に接続され、
前記第1抵抗素子の他端は、前記第2抵抗素子の他端に接続され、
前記第3抵抗素子は、前記第1抵抗素子の他端と前記第2抵抗素子の他端との接続点と、前記電界効果トランジスタのゲートと、の間に接続され、
前記利得制御電流源は、利得調整信号を受けて、前記利得調整信号に応じた利得制御電流を前記第3抵抗素子に供給し、
前記第1抵抗素子の抵抗値は、前記第2抵抗素子の抵抗値と同じ値に設定されている、
利得可変差動増幅回路。
【請求項2】
前記制御回路は、キャパシタをさらに備え、
前記キャパシタは、前記第3抵抗素子に並列に接続されている、
請求項1に記載の利得可変差動増幅回路。
【請求項3】
前記制御回路は、第4抵抗素子をさらに備え、
前記第4抵抗素子は、前記第3抵抗素子、前記キャパシタ、および前記利得制御電流源の接続点と、前記電界効果トランジスタのゲートとの間に接続される、
請求項2に記載の利得可変差動増幅回路。
【請求項4】
前記制御回路は、第4抵抗素子をさらに備え、
前記第4抵抗素子は、前記第3抵抗素子と前記利得制御電流源との接続点と、前記電界効果トランジスタのゲートとの間に接続される、
請求項1に記載の利得可変差動増幅回路。
【請求項5】
前記制御回路は、キャパシタをさらに備え、
前記キャパシタは、前記第3抵抗素子と前記第4抵抗素子との直列回路に並列に接続されている、
請求項4に記載の利得可変差動増幅回路。
【請求項6】
前記第1電流の大きさは、前記第2電流の大きさと同じ値に設定されている、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の利得可変差動増幅回路。
【請求項7】
前記一対の差動対トランジスタの一方の電気的特性は、前記一対の差動対トランジスタの他方の電気的特性と同じとなるように設定されている、
請求項6に記載の利得可変差動増幅回路。
【請求項8】
前記利得制御電流源は、第1電界効果トランジスタ、第2電界効果トランジスタ、第3電界効果トランジスタ、第4電界効果トランジスタ、および第5電界効果トランジスタと、第3電流源とを備え、
前記第1電界効果トランジスタのゲートは、一定の電圧信号が入力され、
前記第2電界効果トランジスタのゲートには、前記利得調整信号を受け、
前記第1電界効果トランジスタおよび前記第2電界効果トランジスタのそれぞれのソースは、前記第3電流源に電気的に接続され、
前記第3電界効果トランジスタおよび前記第1電界効果トランジスタのそれぞれのドレインは、互いに電気的に接続され、
前記第4電界効果トランジスタおよび前記第2電界効果トランジスタのそれぞれのドレインは、互いに電気的に接続され、
前記第3電界効果トランジスタ、前記第4電界効果トランジスタ、および前記第5電界効果トランジスタのそれぞれのソースは、互いに電気的に接続され、
前記第3電界効果トランジスタのゲートおよびドレインは、互いに電気的に接続され、
前記第4電界効果トランジスタのゲートおよびドレインは、互いに電気的に接続され、
前記第5電界効果トランジスタおよび前記第3電界効果トランジスタのそれぞれのゲートは、互いに電気的に接続され、
前記第5電界効果トランジスタのドレインは、前記利得制御電流を生成する、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の利得可変差動増幅回路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、利得可変差動増幅回路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、可変利得型差動増幅器に係る技術が開示されている。可変利得型差動増幅器において、一対のトランジスタのそれぞれのコレクタは、抵抗を介して電源端子に接続されている。一対のトランジスタのそれぞれのエミッタは、抵抗を介して接地端子に接続されている。一対のトランジスタのそれぞれのエミッタの間には、シャント抵抗、FET、シャント抵抗が直列に接続されている。FETのゲートは、抵抗を介して制御端子に接続されている。二つのシャント抵抗およびFETは、可変抵抗回路を構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-304775号公報
【文献】特開昭58-204614号公報
【文献】特開平11-509711号公報
【文献】特開2003-168937号公報
【文献】特開2003-168938号公報
【文献】特開2003-243951号公報
【文献】特開2011-205470号公報
【文献】特開昭63-175510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の可変利得型差動増幅器等の利得可変差動増幅回路は、一対の相補信号(差動入力信号)の入力に応じて、一対の相補信号(差動出力信号)の出力を行い得る。差動入力信号に対する差動出力信号の増幅率(利得)は、利得調整信号に応じて調整され得る。このような利得可変差動増幅回路の場合、入力信号に対する出力信号の線形性が要求され得る。しかしながら、差動入力の一方にのみ単一の入力信号が入力され、差動入力の他方に一定電圧の基準信号が入力されるときには、差動入力信号が入力されるときと回路動作が異なることにより線形性が劣化する場合がある。本開示は、利得可変差動増幅回路において、単一の入力に対する差動出力の線形性を向上し得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの例示的実施形態において、利得可変差動増幅回路が開示されている。利得可変差動増幅回路は、差動対トランジスタと、電界効果トランジスタと、第1電流源と、第2電流源と、制御回路とを備える。差動対トランジスタは、それぞれ、制御端子と第1電流端子と第2電流端子とを有する。電界効果トランジスタは、ゲートと、一対の差動対トランジスタの一方の第1電流端子に接続された第1端子と、一対の差動対トランジスタの他方の第1電流端子に接続された第2端子と、を有する。第1電流源は、一対の差動対トランジスタの一方の第1電流端子に第1電流を供給する。第2電流源は、一対の差動対トランジスタの他方の第1電流端子に第2電流を供給する。制御回路は、電界効果トランジスタのゲートに入力されるゲート電位を調整して電界効果トランジスタの第1端子と電界効果トランジスタの第2端子との間の抵抗値を制御する。一対の差動対トランジスタの一方の制御端子は、単一の入力信号を受ける。一対の差動対トランジスタの他方の制御端子は、基準信号を受ける。一対の差動対トランジスタの一方の第2電流端子と一対の差動対トランジスタの他方の第2電流端子は、単一の入力信号に応じて差動出力信号を生成する。制御回路は、第1抵抗素子と、第2抵抗素子と、第3抵抗素子と、利得制御電流源と、を備える。第1抵抗素子の一端は、電界効果トランジスタの第1端子に接続される。第2抵抗素子の一端は、電界効果トランジスタの第2端子に接続される。第1抵抗素子の他端は、第2抵抗素子の他端に接続される。第3抵抗素子は、第1抵抗素子の他端と第2抵抗素子の他端との接続点と、電界効果トランジスタのゲートと、の間に接続される。利得制御電流源は、利得調整信号を受けて、利得調整信号に応じた利得制御電流を第3抵抗素子に供給する。第1抵抗素子の抵抗値は、第2抵抗素子の抵抗値と同じ値に設定されている。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、利得可変差動増幅回路において、単一の入力に対する差動出力の線形性を向上し得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一つの例示的実施形態に係る利得可変差動増幅回路の構成を示す図である。
図2図1に示す利得可変差動増幅回路の具体的な構成を例示する図である。
図3図1に示す利得可変差動増幅回路の具体的な構成を例示する図である。
図4図1に示す利得可変差動増幅回路の具体的な構成を例示する図である。
図5図1に示す利得可変差動増幅回路の具体的な構成を例示する図である。
図6図1に示す利得可変差動増幅回路の具体的な構成を例示する図である。
図7図2図6のそれぞれに示す制御回路の電流源の具体的な構成を例示する図である。
図8図1図6のそれぞれに示す利得可変回路の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[例示的実施形態の説明]
以下、種々の例示的実施形態について説明する。一つの例示的実施形態において、利得可変回路が開示されている。利得可変差動増幅回路は、差動対トランジスタと、電界効果トランジスタと、第1電流源と、第2電流源と、制御回路とを備える。差動対トランジスタは、それぞれ、制御端子と第1電流端子と第2電流端子とを有する。電界効果トランジスタは、ゲートと、一対の差動対トランジスタの一方の第1電流端子に接続された第1端子と、一対の差動対トランジスタの他方の第1電流端子に接続された第2端子と、を有する。第1電流源は、一対の差動対トランジスタの一方の第1電流端子に第1電流を供給する。第2電流源は、一対の差動対トランジスタの他方の第1電流端子に第2電流を供給する。制御回路は、電界効果トランジスタのゲートに入力されるゲート電位を調整して電界効果トランジスタの第1端子と電界効果トランジスタの第2端子との間の抵抗値を制御する。一対の差動対トランジスタの一方の制御端子は、単一の入力信号を受ける。一対の差動対トランジスタの他方の制御端子は、基準信号を受ける。一対の差動対トランジスタの一方の第2電流端子と一対の差動対トランジスタの他方の第2電流端子は、単一の入力信号に応じて差動出力信号を生成する。制御回路は、第1抵抗素子と、第2抵抗素子と、第3抵抗素子と、利得制御電流源と、を備える。第1抵抗素子の一端は、電界効果トランジスタの第1端子に接続される。第2抵抗素子の一端は、電界効果トランジスタの第2端子に接続される。第1抵抗素子の他端は、第2抵抗素子の他端に接続される。第3抵抗素子は、第1抵抗素子の他端と第2抵抗素子の他端との接続点と、電界効果トランジスタのゲートと、の間に接続される。利得制御電流源は、利得調整信号を受けて、利得調整信号に応じた利得制御電流を第3抵抗素子に供給する。第1抵抗素子の抵抗値は、第2抵抗素子の抵抗値と同じ値に設定されている。
【0009】
一つの例示的実施形態において、制御回路は、キャパシタをさらに備える。キャパシタは、第3抵抗素子に並列に接続されている。
【0010】
一つの例示的実施形態において、制御回路は、第4抵抗素子をさらに備える。第4抵抗素子は、第3抵抗素子、キャパシタ、および利得制御電流源の接続点と、電界効果トランジスタのゲートとの間に接続される。
【0011】
一つの例示的実施形態において、制御回路は、第4抵抗素子をさらに備える。第4抵抗素子は、第3抵抗素子と利得制御電流源との接続点と、電界効果トランジスタのゲートとの間に接続される。
【0012】
一つの例示的実施形態において、制御回路は、キャパシタをさらに備える。キャパシタは、第3抵抗素子と第4抵抗素子との直列回路に並列に接続されている。
【0013】
一つの例示的実施形態において、第1電流の大きさは、第2電流の大きさと同じ値に設定されている。
【0014】
一つの例示的実施形態において、一対の差動対トランジスタの一方の電気的特性は、一対の差動対トランジスタの他方の電気的特性と同じとなるように設定されている。
【0015】
一つの例示的実施形態において、利得制御電流源は、第1電界効果トランジスタ、第2電界効果トランジスタ、第3電界効果トランジスタ、第4電界効果トランジスタ、および第5電界効果トランジスタと、第3電流源とを備える。第1電界効果トランジスタのゲートは、一定の電圧信号が入力される。第2電界効果トランジスタのゲートには、利得調整信号を受ける。第1電界効果トランジスタおよび第2電界効果トランジスタのそれぞれのソースは、第3電流源に電気的に接続される。第3電界効果トランジスタおよび第1電界効果トランジスタのそれぞれのドレインは、互いに電気的に接続される。第4電界効果トランジスタおよび第2電界効果トランジスタのそれぞれのドレインは、互いに電気的に接続される。第3電界効果トランジスタ、第4電界効果トランジスタ、および第5電界効果トランジスタのそれぞれのソースは、互いに電気的に接続される。第3電界効果トランジスタのゲートおよびドレインは、互いに電気的に接続される。第4電界効果トランジスタのゲートおよびドレインは、互いに電気的に接続される。第5電界効果トランジスタおよび第3電界効果トランジスタのそれぞれのゲートは、互いに電気的に接続される。第5電界効果トランジスタのドレインは、利得制御電流を生成する。
【0016】
[例示的実施形態の詳細]
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0017】
図1を参照して、一つの例示的実施形態に係る利得可変差動増幅回路1の構成を説明する。利得可変差動増幅回路1は、入力端子IN1、IN2と出力端子OUT1、OUT2と差動回路DSと電流源CS1(第1電流源)と電流源CS2(第2電流源)と制御回路CNTと抵抗素子Rc1と抵抗素子Rc2とを備える。差動回路DSは、トランジスタTa1とトランジスタTa2とトランジスタT(電界効果トランジスタ)とを備える。
【0018】
トランジスタTa1のベース(制御端子)は、入力端子IN1に電気的に接続される。トランジスタTa2のベースは、入力端子IN2に電気的に接続される。一実施形態において、例えばトランジスタTa1のベースには単一の入力信号Vinが入力端子IN1を介して入力され、トランジスタTa2のベースには一定の電圧値に設定された基準信号Vref(基準電圧)が入力端子IN2を介して入力される。
【0019】
トランジスタTa1のコレクタ(第2電流端子)は、抵抗素子Rc1を介して電源Vccに電気的に接続される。トランジスタTa2のコレクタは、抵抗素子Rc2を介して電源Vccに電気的に接続される。電源Vccは、トランジスタTa1およびトランジスタTa2にトランジスタ動作に必要な電圧(例えばエミッタ・コレクタ間電圧)を供給する。
【0020】
トランジスタTa1のコレクタは、出力端子OUT1に電気的に接続される。トランジスタTa2のコレクタは、出力端子OUT2に電気的に接続される。トランジスタTa1のコレクタおよびトランジスタTa2のコレクタからは、単一の入力信号である入力信号Vinに応じて差動出力信号Vdiffが出力される。差動出力信号Vdiffの電圧は、例えば出力端子OUT1における電圧と出力端子OUT2における電圧との差に等しい。トランジスタTa1とトランジスタTa2は、一対の差動対トランジスタとして同じ電気的特性を有することが好ましい。
【0021】
トランジスタTのドレイン(第2端子)は、例えばトランジスタTa1のエミッタ(第1電流端子)に電気的に接続される。その場合、トランジスタTのソース(第1端子)は、トランジスタTa2のエミッタに電気的に接続される。
【0022】
なお、それとは反対に、トランジスタTのソースがトランジスタTa1のエミッタ(第1電流端子)に電気的に接続され、トランジスタTのドレインが、トランジスタTa2のエミッタに電気的に接続されてもよい。トランジスタTは、可変抵抗素子として使用されるため、ドレインとソースを入れ替えても電気的特性は変わらないことが好ましい。例えば、トランジスタTの構造において、ゲートを中心としてドレインとソースの形状が左右対称であることが好ましい。
【0023】
制御回路CNTは、トランジスタTのゲートに電気的に接続される。制御回路CNTは、トランジスタTのドレインとソースとに電気的に接続される。制御回路CNTは、トランジスタTのドレインの電位とソースの電位との中間電位を基準電位(調整電圧基準電位)として、トランジスタTのゲートに抵抗値調整電圧を印加する。
【0024】
制御回路CNTは、利得調整信号Vampを受ける。利得調整信号Vampは、例えば、入力信号Vinの振幅または差動出力信号Vdiffの振幅に応じて調整される電圧信号である。制御回路CNTは、利得調整信号Vampの大きさに応じてトランジスタTのゲートに印加する抵抗値調整電圧(ゲート電位)を調整する。制御回路CNTは、抵抗値調整電圧を調整してトランジスタTのドレインとソースの間の抵抗値を制御する。抵抗値調整電圧を所定の電圧値(例えばトランジスタTの閾値電圧)よりも大きい値に設定し抵抗値調整電圧を増減することで、トランジスタTのソース・ドレイン間の抵抗(オン抵抗)が増減する。トランジスタTのオン抵抗が変化することによって利得可変差動増幅回路1の利得が変化する。制御回路CNTは、抵抗値調整電圧を調節しつつ、トランジスタTのゲートに印加する抵抗値調整電圧の基準電位となる調整電圧基準電位を、トランジスタTのドレインにおける電位(ドレイン電位)とトランジスタTのソースにおける電位(ソース電位)との平均値となるように生成する。
【0025】
調整電圧基準電位は、トランジスタTのドレイン電位とソース電位の変動に応じて変動し得る。調整電圧基準電位が変動しても抵抗値調整電圧は調整電圧基準電位を基準として一定電圧としてトランジスタTのゲートに印加される。抵抗値調整電圧が変動するとトランジスタTのオン抵抗が変動し、利得可変差動増幅回路1の利得が変動するため、抵抗値調整電圧は利得調整信号Vampによって調整された値に一定に保たれることが好ましい。
【0026】
電流源CS1は、トランジスタTa1のエミッタに電気的に接続される。電流源CS2は、トランジスタTa2のエミッタに電気的に接続される。電流源CS1、CS2は、トランジスタTa1、Ta2にそれぞれ一定値の電流を供給する。例えば、電流源CS1は、一定値の電流(第1電流)をトランジスタTa1のエミッタからグランドに向けて流し、電流源CS2は、一定値の電流(第2電流)をトランジスタTa2のエミッタからグランドに向けて流す。電流源CS1およびCS2は、同じ大きさの電流を供給してもよい。
【0027】
トランジスタTa1およびトランジスタTa2は、例えば、NPN型バイポーラトランジスタであり得る。トランジスタTは、例えば、MOSトランジスタ(MOS:Metal Oxide Semiconductor)であり得る。
【0028】
このように、利得可変差動増幅回路1では、利得調整信号Vampの大きさに応じた抵抗値調整電圧の調節が行われる。抵抗値調整電圧が調節されることによって、トランジスタTa1とトランジスタTa2とのそれぞれのエミッタ間に接続されたトランジスタTの抵抗(オン抵抗)が調節される。従って、利得可変差動増幅回路1では、入力信号Vinまたは差動出力信号Vdiffの大きさに応じた利得の変更調整が可能となる。また、利得可変差動増幅回路1では、トランジスタTのゲートに印加される抵抗値調整電圧の基準電位(調整電圧基準電位)がドレイン電位とソース電位との平均値となるように生成され得る。この場合、単一の入力信号Vinの変化に応じてトランジスタTのドレイン電位とソース電位とが変化するが、トランジスタTにおいてゲートとドレインとの間の電圧の振幅とゲートとソースとの間の電圧の振幅とが概ね等しくなる。従って、単一の入力に対して差動出力信号Vdiffの歪が低減され得る。トランジスタTのゲートに印加される抵抗値調整電圧は、調整電圧基準電位に対して一定電圧となるように設定されている。従って、入力信号Vinが変化してもトランジスタTのオン抵抗は一定値に保たれる。なお、調整電圧基準電位は、入力信号Vinの変化に応じてトランジスタTのドレイン電位およびソース電位が変化するため時間とともに変動する。従って、トランジスタTのゲートに印加される抵抗値調整電圧は、グランドを基準電位としたときには入力信号Vinの変化に応じて時間とともに変動する。すなわち、トランジスタTのゲートに印加されるゲート電圧は、グランドを基準電位としたとき、調整電圧基準電位が上下に変動するのと共に同様に上下に変動し、ゲート電位と調整電圧基準電位との差は一定の抵抗値調整電圧となるように保たれる。
【0029】
図1に示す制御回路CNTは、例えば、図2示す制御回路CNT1、図3に示す制御回路CNT2、図4に示す制御回路CNT3、図5に示す制御回路CNT4、図6に示す制御回路CNT5の何れかであり得る。
【0030】
まず、図2に示す制御回路CNT1の構成を説明する。制御回路CNT1は、抵抗素子Re1(第1抵抗素子)、抵抗素子Re2(第2抵抗素子)、抵抗素子Rcnt(第3抵抗素子)、および抵抗素子Rg(第4抵抗素子)を備える。制御回路CNT1は、キャパシタCcntと、利得制御電流源Scntとを備える。
【0031】
抵抗素子Re1と抵抗素子Re2とは、トランジスタTのドレインとソースとの間に、互いに直列に電気的に接続される。例えば、トランジスタTのドレインと抵抗素子Re1の一端とが接続され、トランジスタTのソースと抵抗素子Re2の一端とが接続され、抵抗素子Re1の他端と抵抗素子Re2の他端とが接続される。抵抗素子Re1の抵抗値および抵抗素子Re2の抵抗値は、同一となるように設定される。抵抗素子Re1および抵抗素子Re2の接続点は、調整電圧基準電位を生成する。
【0032】
抵抗素子RcntとキャパシタCcntとは、抵抗素子Re1および抵抗素子Re2の接続点と利得制御電流源Scntとの間、さらに、抵抗素子Re1および抵抗素子Re2の接続点とトランジスタTのゲートとの間において、互いに並列に電気的に接続される。抵抗素子Rgは、利得制御電流源Scnt、抵抗素子Rcnt、およびキャパシタCcntの接続点と、トランジスタTのゲートとの間に、電気的に接続される。利得制御電流源Scntは、利得調整信号Vampを受けて、抵抗素子Rcntに利得調整信号Vampに応じた利得制御電流Icntを供給する。抵抗素子Rcntに利得制御電流Icntが流れることによって、抵抗素子Rcntの両端に抵抗値調整電圧が生成される。抵抗値調整電圧は、抵抗素子Re1および抵抗素子Re2の接続点に生成された調整電圧基準電位を基準としてトランジスタTのゲートに抵抗素子Rgを介して印加される。トランジスタTはMOSトランジスタなので、入力インピーダンスが高いためにトランジスタTのゲートには直流電流はほとんど流れ込まず、抵抗素子Rgには直流電圧は発生しない。従って、抵抗素子Rcntによって生成された抵抗値調整電圧は、そのままトランジスタTのゲートに印加される。
【0033】
図3に示す制御回路CNT2の構成を説明する。制御回路CNT2は、制御回路CNT1を構成する回路素子のうちキャパシタCcntが除かれている点において、制御回路CNT1と異なる。制御回路CNT2は、抵抗素子Re1、抵抗素子Re2、抵抗素子Rcnt、および抵抗素子Rgと、利得制御電流源Scntとを備える。
【0034】
抵抗素子Re1と抵抗素子Re2とは、トランジスタTドレインとソースとの間に、互いに直列に電気的に接続される。例えば、トランジスタTのドレインと抵抗素子Re1の一端とが接続され、トランジスタTのソースと抵抗素子Re2の一端とが接続され、抵抗素子Re1の他端と抵抗素子Re2の他端とが接続される。抵抗素子Re1の抵抗値および抵抗素子Re2の抵抗値は、同一となるように設定される。抵抗素子Re1および抵抗素子Re2の接続点は、調整電圧基準電位を生成する。
【0035】
抵抗素子Rcntは、抵抗素子Re1および抵抗素子Re2の接続点と利得制御電流源Scntとの間、さらに、抵抗素子Re1および抵抗素子Re2の接続点とトランジスタTのゲートとの間において、電気的に接続される。抵抗素子Rgは、利得制御電流源Scntおよび抵抗素子Rcntの接続点と、トランジスタTのゲートとの間に、電気的に接続される。利得制御電流源Scntは、利得調整信号Vampを受けて、抵抗素子Rcntに利得調整信号Vampに応じた利得制御電流Icntを供給する。抵抗素子Rcntに利得制御電流Icntが流れることによって、抵抗素子Rcntの両端に抵抗値調整電圧が生成される。抵抗値調整電圧は、抵抗素子Re1および抵抗素子Re2の接続点に生成された調整電圧基準電位を基準としてトランジスタTのゲートに抵抗素子Rgを介して印加される。
【0036】
図4に示す制御回路CNT3の構成を説明する。制御回路CNT3は、制御回路CNT1を構成する回路素子のうち抵抗素子Rgが除かれている点において、制御回路CNT1と異なる。制御回路CNT3は、抵抗素子Re1、抵抗素子Re2、および抵抗素子Rcntと、キャパシタCcntと、利得制御電流源Scntとを備える。
【0037】
抵抗素子Re1と抵抗素子Re2とは、トランジスタTドレインとソースとの間に、互いに直列に電気的に接続される。例えば、トランジスタTのドレインと抵抗素子Re1の一端とが接続され、トランジスタTのソースと抵抗素子Re2の一端とが接続され、抵抗素子Re1の他端と抵抗素子Re2の他端とが接続される。抵抗素子Re1の抵抗値および抵抗素子Re2の抵抗値は、同一となるように設定される。抵抗素子Re1および抵抗素子Re2の接続点は、調整電圧基準電位を生成する。
【0038】
抵抗素子RcntとキャパシタCcntとは、抵抗素子Re1および抵抗素子Re2の接続点と利得制御電流源Scntとの間、さらに、抵抗素子Re1および抵抗素子Re2の接続点とトランジスタTのゲートとの間において、、互いに並列に電気的に接続される。トランジスタTのゲートは、利得制御電流源Scnt、抵抗素子Rcnt、およびキャパシタCcntの接続点に電気的に接続される。
【0039】
利得制御電流源Scntは、利得調整信号Vampを受けて、抵抗素子Rcntに利得調整信号Vampに応じた利得制御電流Icntを供給する。抵抗素子Rcntに利得制御電流Icntが流れることによって、抵抗素子Rcntの両端に抵抗値調整電圧が生成される。抵抗値調整電圧は、抵抗素子Re1および抵抗素子Re2の接続点に生成された調整電圧基準電位を基準としてトランジスタTのゲートに印加される。
【0040】
図5に示す制御回路CNT4の構成を説明する。制御回路CNT4は、制御回路CNT1を構成する回路素子のうちキャパシタCcntおよび抵抗素子Rgが除かれている点において、制御回路CNT1と異なる。制御回路CNT4は、抵抗素子Re1、抵抗素子Re2、および抵抗素子Rcntと、利得制御電流源Scntとを備える。
【0041】
抵抗素子Re1と抵抗素子Re2とは、トランジスタTドレインとソースとの間に、互いに直列に電気的に接続される。例えば、トランジスタTのドレインと抵抗素子Re1の一端とが接続され、トランジスタTのソースと抵抗素子Re2の一端とが接続され、抵抗素子Re1の他端と抵抗素子Re2の他端とが接続される。抵抗素子Re1の抵抗値および抵抗素子Re2の抵抗値は、同一となるように設定される。抵抗素子Re1および抵抗素子Re2の接続点は、調整電圧基準電位を生成する。
【0042】
抵抗素子Rcntは、抵抗素子Re1および抵抗素子Re2の接続点と利得制御電流源Scntとの間、さらに、抵抗素子Re1および抵抗素子Re2の接続点とトランジスタTのゲートとの間において、電気的に接続される。トランジスタTのゲートは、利得制御電流源Scntおよび抵抗素子Rcntの接続点に電気的に接続される。利得制御電流源Scntは、利得調整信号Vampを受けて、抵抗素子Rcntに利得調整信号Vampに応じた利得制御電流Icntを供給する。抵抗素子Rcntに利得制御電流Icntが流れることによって、抵抗素子Rcntの両端に抵抗値調整電圧が生成される。抵抗値調整電圧は、抵抗素子Re1および抵抗素子Re2の接続点に生成された調整電圧基準電位を基準としてトランジスタTのゲートに印加される。
【0043】
図6に示す制御回路CNT5の構成を説明する。制御回路CNT5は、制御回路CNT1を構成する回路素子のうちキャパシタCcntの接続先が異なっている。制御回路CNT5は、抵抗素子Re1、抵抗素子Re2、抵抗素子Rcnt、および抵抗素子Rgと、キャパシタCcntと、利得制御電流源Scntとを備える。
【0044】
抵抗素子Re1と抵抗素子Re2とは、トランジスタTドレインとソースとの間に、互いに直列に電気的に接続される。例えば、トランジスタTのドレインと抵抗素子Re1の一端とが接続され、トランジスタTのソースと抵抗素子Re2の一端とが接続され、抵抗素子Re1の他端と抵抗素子Re2の他端とが接続される。抵抗素子Re1の抵抗値および抵抗素子Re2の抵抗値は、同一となるように設定される。抵抗素子Re1および抵抗素子Re2の接続点は、調整電圧基準電位を生成する。
【0045】
抵抗素子Rcntは、抵抗素子Re1および抵抗素子Re2の接続点と利得制御電流源Scntとの間、さらに、抵抗素子Re1および抵抗素子Re2の接続点とトランジスタTのゲートとの間において、電気的に接続される。抵抗素子Rgは、利得制御電流源Scntおよび抵抗素子Rcntの接続点と、トランジスタTのゲートとの間に、電気的に接続される。利得制御電流源Scntは、利得調整信号Vampを受けて、抵抗素子Rcntに利得調整信号Vampに応じた利得制御電流Icntを供給する。抵抗素子Rcntに利得制御電流Icntが流れることによって、抵抗素子Rcntの両端に抵抗値調整電圧が生成される。抵抗値調整電圧は、抵抗素子Re1および抵抗素子Re2の接続点に生成された調整電圧基準電位を基準としてトランジスタTのゲートに抵抗素子Rgを介して印加される。
【0046】
キャパシタCcntは、抵抗素子Re1および抵抗素子Re2の接続点と、トランジスタTのゲートとの間に、電気的に接続される。
【0047】
図7を参照して、利得制御電流源Scntの構成について説明する。利得制御電流源Scntは、抵抗素子Rcntに供給する電流の増減を、例えば、単一の入力信号Vinまたは差動出力信号Vdiffの振幅の増減の逆になるように調節する。入力信号Vinは、トランジスタTa1およびトランジスタTa2の何れかのベースに入力される信号である。図1には、一例として、単一の入力信号VinがトランジスタTa1のベースに入力される場合が示されている。差動出力信号Vdiffは、トランジスタTa1のコレクタおよびトランジスタTa2のコレクタから出力される差動信号である。
【0048】
利得制御電流源Scntは、トランジスタT1(第1電界効果トランジスタ)、トランジスタT2(第2電界効果トランジスタ)を備える。利得制御電流源Scntは、さらに、例えば、トランジスタT3(第3電界効果トランジスタ)、トランジスタT4(第4電界効果トランジスタ)、およびトランジスタT5(第5電界効果トランジスタ)を備える。利得制御電流源Scntは、さらに電流源CS3(第3電流源)を備える。
【0049】
トランジスタT1およびトランジスタT2は、例えば、N型MOSトランジスタであり得る。トランジスタT1とトランジスタT2は、一対の差動対トランジスタとして同一の電気的特性を有することが好ましい。トランジスタT3、トランジスタT4、およびトランジスタT5は、例えば、P型MOSトランジスタであり得る。トランジスタT3とトランジスタT4は、一対の負荷素子として同一の電気的特性を有することが好ましい。
【0050】
トランジスタT1のゲートには、外部から供給される一定電位Vst(一定の電圧信号)が入力される。一定電位Vstは、外部から供給されても利得制御電流源Scnt内で生成されてもよい。トランジスタT2のゲートには、利得調整信号Vampが入力される。トランジスタT1およびトランジスタT2のそれぞれのソースは、電流源CS3に電気的に接続される。電流源CS3は、一定の大きさの電流をトランジスタT1、T2に供給する。
【0051】
トランジスタT3およびトランジスタT1のそれぞれのドレインは、互いに電気的に接続される。トランジスタT4およびトランジスタT2のそれぞれのドレインは、互いに電気的に接続される。トランジスタT3、トランジスタT4、およびトランジスタT5のそれぞれのソースは、互いに電気的に接続され、電源Vccに電気的に接続される。電源Vccは、トランジスタT3、トランジスタT4、トランジスタT5にトランジスタ動作に必要な電圧(例えば、ドレイン・ソース間電圧)を供給する。
【0052】
トランジスタT1、T2、T3、T4および電流源CS3は、差動増幅回路を構成する。利得調整信号Vampが一定電位Vstよりも大きくなると、電流源CS3の供給する電流は、トランジスタT1、T3よりもトランジスタT2、T4に多く流れるようになり、トランジスタT3を流れる電流が減少するため、トランジスタT5から出力される利得制御電流Icntは減少する。反対に、利得調整信号Vampが一定電位Vstよりも小さくなると、電流源CS3の供給する電流は、トランジスタT2、T4よりもトランジスタT1、T3に多く流れるようになり、トランジスタT3を流れる電流が増加するため、トランジスタT5から出力される利得制御電流Icntは増加する。従って、利得調整信号Vampが増加すると利得制御電流Icntは減少し、利得調整信号Vampが減少すると利得制御電流Icntは増加する。
【0053】
トランジスタT3のゲートおよびドレインは、互いに電気的に接続される。トランジスタT4のゲートおよびドレインは、互いに電気的に接続される。トランジスタT5およびトランジスタT3のそれぞれのゲートは、互いに電気的に接続される。トランジスタT3およびトランジスタT5は、カレントミラー回路を構成する。第5電界効果トランジスタのドレインは、利得制御電流源Scntの出力として利得制御電流Icntを出力する。利得制御電流源Scntの出力は、例えば抵抗素子Rcntを介して、抵抗素子Re1および抵抗素子Re2の接続点に電気的に接続される。
【0054】
上述したように、抵抗素子Rcntに利得制御電流Icntが流れることによって抵抗値調整電圧が生成される。抵抗値調整電圧は、抵抗素子Re1および抵抗素子Re2の接続点に生成される調整電圧基準電位を基準にしてトランジスタTのゲートに印加される。例えば、図7に図示される利得制御電流源Scntによると、利得調整信号Vampが大きくなると、利得制御電流Icntは小さくなり、抵抗値調整電圧は小さくなってトランジスタTのオン抵抗は大きくなる。それにより利得可変差動増幅回路1の利得は小さくなる。また、利得調整信号Vampが小さくなると、利得制御電流Icntは大きくなり、抵抗値調整電圧は大きくなってトランジスタTのオン抵抗は小さくなる。それにより利得可変差動増幅回路1の利得は大きくなる。例えば、単一の入力信号Vinの振幅または差動出力信号Vdiffの振幅の増加に対して利得調整信号Vampを増加するように設定すると、利得可変差動増幅回路1の利得を小さくするよう制御が働く。また、単一の入力信号Vinの振幅または差動出力信号Vdiffの振幅の減少に対して利得調整信号Vampを減少するように設定すると、利得可変差動増幅回路1の利得を大きくするよう制御が働く。従って、単一の入力信号Vinの振幅または差動出力信号Vdiffの振幅の増減と利得調整信号Vampの増減の関係を一致させておくことで、差動出力信号Vdiffの振幅を一定の値に保つように自動的な利得の制御(自動利得制御)を行うことができる。
【0055】
図8を参照して、図2に示す制御回路CNT1、図3に示す制御回路CNT2、図4に示す制御回路CNT3がそれぞれ用いられた場合の利得可変差動増幅回路1の動作について説明する。図8に示す結果は、入力信号Vinの強度(振幅)を基準にして得られた結果である。図8において、横軸は単一の入力信号Vinの周波数[Hz]を表し、縦軸はトランジスタTのゲートに印加されるゲート電位の強度(振幅)[dB]を表している。上述したように、単一の入力信号Vinが変化したときに、調整電圧基準電位は変動し、それによってトランジスタTのゲート電位も変動する。
【0056】
図8において、曲線G1は、図2に示す制御回路CNT1が用いられた場合に得られた結果である。図8において、曲線G2は、図3に示す制御回路CNT2が用いられた場合に得られた結果である。図8において、曲線G3は、図4に示す制御回路CNT3が用いられた場合に得られた結果である。
【0057】
曲線G1に示すように、図2に示す制御回路CNT1が用いられた場合には、比較的に広い周波数帯域(例えば、10[GHz]以上)にわたって、ゲート電位の振幅(強度)は、単一の入力信号Vinの振幅(強度)0[dB]の概ね1/2の大きさの-6[dB]程度に維持され得る。これは、単一の入力信号Vinの変化に応じて生じる調整電圧基準電位の変化が、単一の入力信号Vinの強度(振幅)に対してほぼ1/2であり、それがそのままグランドを基準電位としたときのゲート電位の変化として現れることを表している。従って、図2に示す制御回路CNT1が用いられた場合には、比較的に広い周波数帯域にわたって、調整電圧基準電位がトランジスタTのドレイン電位およびソース電位の平均値として保たれ、トランジスタTのオン抵抗が抵抗値調整電圧によって調整された抵抗値に維持される。それにより、利得可変差動増幅回路1から出力される差動出力信号Vdiffの歪が十分に低減され、入力に対する出力の線形性が向上され得る。
【0058】
また、曲線G2に示すように、図3に示す制御回路CNT2が用いられた場合には、0.1[GHz]以下の周波数帯域、および、10[GHz]以上の周波数帯域において、ゲート電圧の振幅(強度)は、入力信号Vinの振幅(強度)0[dB]の概ね1/2の大きさの-6[dB]程度に維持され得る。従って、図3に示す制御回路CNT2が用いられた場合には、例えば単一の入力信号Vinの基本周波数が0.1[GHz]以下の周波数帯域、および、10[GHz]以上の周波数帯域において制限されるとき、利得可変差動増幅回路1から出力される差動出力信号Vdiffの歪が十分に低減され、入力に対する出力の線形性が向上され得る。
【0059】
曲線G1と曲線G2とでこのような周波数特性の差が現れるのは、抵抗素子Re1および抵抗素子Re2の接続点に抵抗素子Rcntを接続しているが、それに伴って寄生容量が付加されることに起因する。例えば、図8の結果において、抵抗素子Rcntの抵抗値を5[KΩ]としたときに、抵抗素子Re1および抵抗素子Re2の接続点と抵抗素子Rcntとの接続に容量値1[pF]程度の寄生容量Cpが発生し得る。寄生容量Cpによって、入力信号Vinの周波数が高くなると、寄生容量Cpの充放電の影響によってトランジスタTのゲート電位の変化が調整電圧基準電位の変化に追いつかなくなり、抵抗値調整電圧が所定の値からずれてしまう。曲線G2は、そのような劣化が0.1[GHz]以上で起きていることを示している。曲線G2は、1.5[GHz]辺りから再び大きくなるが、それはトランジスタTのドレイン電位とソース電位の変動がトランジスタTのゲート・ドレイン間容量Cgdとゲート・ソース間容量Cgsを介してゲートに伝達されることによる。制御回路CNT1は、抵抗素子Rcntに並列にキャパシタCcntが接続されている。このキャパシタCcntによって調整電圧基準電位の変動がゲート電位に伝達されることにより、曲線G1は10[GHz]以上まで抵抗値調整電圧を所定の値に保つことができる。
【0060】
また、曲線G3に示すように、図4に示す制御回路CNT3が用いられた場合には、10[GHz]以下の周波数帯域において、ゲート電位の振幅(強度)は、入力信号Vinの振幅(強度)の概ね1/2の大きさの-6[dB]程度に維持され得る。従って、図4に示す制御回路CNT3が用いられた場合には、10[GHz]以下の周波数帯域において、利得可変差動増幅回路1から出力される差動出力信号Vdiffの歪が十分に低減され、入力に対する出力の線形性が向上され得る。
【0061】
なお、曲線G3は、周波数が20[GHz]を超えると急激にゲート電位の振幅(強度)が低下することを示している。これは、制御回路CNT3では、制御回路CNT2と同様にゲート・ドレイン間容量Cgdとゲート・ソース間容量Cgsを介してトランジスタTのドレイン電位とソース電位の変動がゲートに伝達されているのが、上述の寄生容量Cpを介してグランドに向けてリーク電流が流れてそのようなゲート電位の変動が抑制されてしまうことによる。制御回路CNT1は、抵抗素子RcntとキャパシタCcntとの接続点とトランジスタTのゲートとの間に抵抗素子Rgを備えているため、リーク電流が抑えられ、周波数10[GHz]を超えてもゲート電位の振幅(強度)の急激な減少が抑えられる。例えば、単一の入力信号Vinの周波数が10[GHz]未満であれば、制御回路CNT3のように抵抗素子Rgは省いてもよく、単一の入力信号Vinの周波数が10[GHz]を超える場合は、制御回路CNT1のように抵抗素子Rgを備えていた方が好ましい。
【0062】
図5に示す制御回路CNT4が用いられた場合には、制御回路CNT1に対して上述のキャパシタCcntおよび抵抗素子Rcntが除かれており、制御回路CNT2と同様に、例えば単一の入力信号Vinの基本周波数が0.1[GHz]以下の周波数帯域のとき、利得可変差動増幅回路1から出力される差動出力信号Vdiffの歪が十分に低減され、入力に対する出力の線形性が向上され得る。上述したように、抵抗素子Rgは周波数10[GHz]以上で作用するため、省くことができる。
【0063】
図6に示す制御回路CNT5が用いられた場合には、抵抗素子Rgを介さずに、抵抗素子Re1および抵抗素子Re2の接続点とトランジスタTのゲートとがキャパシタCcntによって電気的に結合される。それにより、調整電圧基準電位の変動を直接、ゲート電位に伝達することができ、抵抗値調整電圧について制御回路CNT1と同様の周波数以上まで一定値に維持されることが期待できる。
【0064】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0065】
以上の説明から、本開示の種々の実施形態は、説明の目的で本明細書で説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0066】
1…利得可変差動増幅回路、Ccnt…キャパシタ、CNT,CNT1,CNT2,CNT3,CNT4,CNT5…制御回路、CS1,CS2,CS3…電流源、DS…差動回路、G1,G2,G3…曲線、Icnt…利得制御電流、IN1,IN2…入力端子、OUT1,OUT2…出力端子、Rc1,Rc2,Re1,Re2,Rg,Rcnt…抵抗素子、Scnt…利得制御電流源、T,T1,T2,T3,T4,T5,Ta1,Ta2…トランジスタ、Vamp…利得調整信号、Vcc…電源、Vdiff…差動出力信号、Vin…入力信号、Vref…基準信号。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8