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特許7306223車両用前照灯の可動シェード機構及び車両用前照灯
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】車両用前照灯の可動シェード機構及び車両用前照灯
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/689 20180101AFI20230704BHJP
   F21S 41/148 20180101ALI20230704BHJP
   F21S 45/10 20180101ALI20230704BHJP
   F21W 102/13 20180101ALN20230704BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20230704BHJP
【FI】
F21S41/689
F21S41/148
F21S45/10
F21W102:13
F21Y115:10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019197485
(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公開番号】P2021072199
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安部 俊也
【審査官】竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-146463(JP,A)
【文献】特開2001-256809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/689
F21S 41/148
F21S 45/10
F21W 102/13
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心として回転し、光源からの光の遮蔽量を調整するシェード部材と、
前記シェード部材を駆動する動力を生じさせる駆動装置と、
前記駆動装置の動力を前記シェード部材に伝達する伝達部材と、
前記回転軸及び前記駆動装置を保持する板状のブラケットと、
を備え、
前記ブラケットは、
車両搭載状態において水平面に沿って配置され、前記駆動装置を支持するベース部と、
前記ベース部の車両搭載状態における後方端部から上方に折り曲げられた状態で設けられ、前記回転軸を支持するシェード支持部と、を有する
車両用前照灯の可動シェード機構。
【請求項2】
前記ブラケットは、前記ベース部の前方端部から下方に折り曲げられた状態で設けられた補強部を有する
請求項1に記載の車両用前照灯の可動シェード機構。
【請求項3】
前記ベース部は、車両搭載状態における左右方向の外側に張り出した取付部を有する
請求項1又は請求項2に記載の車両用前照灯の可動シェード機構。
【請求項4】
前記ベース部は、車両搭載状態における上下方向に貫通する開口部を有し、
前記伝達部材は、前記開口部を前記上下方向に貫通して配置される
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の車両用前照灯の可動シェード機構。
【請求項5】
前記ベース部に装着され、前記開口部を覆うカバー部材を更に備える
請求項4に記載の車両用前照灯の可動シェード機構。
【請求項6】
前記駆動装置は、ケースを有し、
前記ケースは、板状部材が車両搭載状態における前後方向及び左右方向に折り曲げられた形状を有し、前記ベース部に嵌合させる複数の突起部を上下方向の上部に有し、
複数の前記突起部は、前記ケースの上部のうち、前記前後方向が板厚方向となる位置と、前記左右方向が板厚方向となる位置とに少なくとも1つ以上設けられ、
前記ベース部は、複数の前記突起部を挿入する嵌合孔を有する
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の車両用前照灯の可動シェード機構。
【請求項7】
光源と、
前記光源からの光を配光制御する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の車両用前照灯の可動シェード機構と、
を備える車両用前照灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用前照灯の可動シェード機構及び車両用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
光源からの光を配光制御する可動シェード機構を備えた車両用前照灯に関する技術が知られている。例えば、特許文献1には、可動シェードと、可動シェードを回動させるソレノイドと、ソレノイドの動力を可動シェードに伝達させるリンク部材とを備えた車両用前照灯が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-146463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような車両前照灯の可動シェード機構では、平板状のブラケットを折り曲げた片部にソレノイドが固定される。しかしながら、ソレノイドは銅線や鋼板を有する部品であり、重量が大きい。このため、上記のようなブラケットを折り曲げた片部に取り付けると、ブラケットが振動及び衝撃等により変形しやすくなる。そのため、剛性を高めるためにブラケットの板厚を厚くする必要があり、可動シェード機構の軽量化が困難である。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、ブラケットの剛性を高めつつ、全体の軽量化を図ることが可能な車両用前照灯の可動シェード機構及び車両用前照灯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両用前照灯の可動シェード機構は、回転軸を中心として回転し、光源からの光の遮蔽量を調整するシェード部材と、前記シェード部材を駆動する動力を生じさせる駆動装置と、前記駆動装置の動力を前記シェード部材に伝達する伝達部材と、前記回転軸及び前記駆動装置を保持する板状のブラケットと、を備え、前記ブラケットは、車両搭載状態において水平面に沿って配置され、前記駆動装置を支持するベース部と、前記ベース部の車両搭載状態における後方端部から上方に折り曲げられた状態で設けられ、前記回転軸を支持するシェード支持部と、を有する。
【0007】
上記の車両用前照灯の可動シェード機構において、前記ブラケットは、前記ベース部の前方端部から下方に折り曲げられた状態で設けられた補強部を有してもよい。
【0008】
上記の車両用前照灯の可動シェード機構において、前記ベース部は、車両搭載状態における左右方向の外側に張り出した取付部を有してもよい。
【0009】
上記の車両用前照灯の可動シェード機構において、前記ベース部は、車両搭載状態における上下方向に貫通する開口部を有し、前記伝達部材は、前記開口部を前記上下方向に貫通して配置されてもよい。
【0010】
上記の車両用前照灯の可動シェード機構は、前記ベース部に装着され、前記開口部を覆うカバー部材を更に備えてもよい。
【0011】
上記の車両用前照灯の可動シェード機構において、前記駆動装置は、ケースを有し、前記ケースは、板状部材が車両搭載状態における前後方向及び左右方向に折り曲げられた形状を有し、前記ベース部に嵌合させる複数の突起部を上下方向の上部に有し、複数の前記突起部は、前記ケースの上部のうち、前記前後方向が板厚方向となる位置と、前記左右方向が板厚方向となる位置とに少なくとも1つ以上設けられ、前記ベース部は、複数の前記突起部を挿入する嵌合孔を有してもよい。
【0012】
本発明に係る車両用前照灯は、光源と、前記光源からの光を配光制御する上記の車両用前照灯の可動シェード機構と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ブラケットの剛性を高めつつ、全体の軽量化を図ることが可能な車両用前照灯の可動シェード機構及び車両用前照灯を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本実施形態に係る可動シェード機構を備えた車両用前照灯を示す断面図である。
図2図2は、可動シェード機構の一例を示す斜視図である。
図3図3は、可動シェード機構の一例を示す分解斜視図である。
図4図4は、可動シェード機構を前方から見た場合の一例を示す正面図である。
図5図5は、可動シェード機構を左方から見た場合の一例を示す側面図である。
図6図6は、可動シェード機構のブラケットの一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る車両用前照灯の可動シェード機構及び車両用灯具の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。以下の説明において、前後、上下、左右の各方向は、車両用前照灯が車両に取り付けられた車両搭載状態における方向であって、運転席から車両の進行方向を見た場合における方向を示す。なお、本実施形態では、上下方向は鉛直方向に平行であり、左右方向は水平方向であるとする。
【0016】
図1は、本実施形態に係る可動シェード機構を備えた車両用前照灯100を示す断面図である。図1に示すように、車両用前照灯100は、光源10と、リフレクタ20と、レンズ30と、取付部材40と、可動シェード機構50とを備える。光源10、リフレクタ20、レンズ30、取付部材40および可動シェード機構50は、いわゆるプロジェクタ型のランプユニットを構成している。
【0017】
車両用前照灯100は、車両前部の左側及び右側にそれぞれ取り付けられる。車両に取り付けられる場合、車両用前照灯100は、不図示のランプハウジングとランプレンズ(例えば、素通しのアウターレンズなど)とで形成される灯室に収容され、不図示の光軸調整機構に接続される。光軸調整機構は、上下方向及び左右方向の光軸調整が可能となっている。以下、車両用前照灯100として、車両の右側に取り付けられる車両用前照灯を例に挙げて説明する。この場合、車両用前照灯100に対して、左右方向の右側が車両の外側であり、左側が車両の内側である。なお、車両の左側に取り付けられる車両用前照灯については、車両用前照灯100に対して左右対称の構成であり、同様の説明が可能である。
【0018】
灯室内には、上記ランプユニットの他、例えばクリアランスランプユニット、ターンシグナルランプユニット、デイタイムランニングランプユニットなどが配置される場合がある。また、灯室内には、インナーパネル(図示せず)やインナーハウジング(図示せず)やインナーレンズ(図示せず)などが配置される場合がある。
【0019】
[光源]
光源10は、本実施形態において、例えばLEDやOLED(有機EL)などの半導体型光源である。光源10は、発光面11を有する。車両用前照灯100が車両に取り付けられた場合、発光面11は例えば上方に向けられ、水平面に平行に配置される。光源10は、取付部材40に固定されている。光源10は、後述するレンズ30の光軸AXよりも下方に配置される。
【0020】
[リフレクタ]
リフレクタ20は、光源10からの光をレンズ30に向けて反射する。リフレクタ20は、光源10の上方に配置され、例えば樹脂部材など、耐熱性が高くかつ光不透過性の材料を用いて形成されている。リフレクタ20は、スクリューなどの固定部材によって取付部材40に固定されている。
【0021】
[レンズ]
レンズ30は、リフレクタ20に対して車両の前方に配置される。レンズ30は、例えばレンズホルダ31に支持される。レンズ30は、焦点(図示せず)と、光軸AXとを有する。レンズ30の光軸AXは、リフレクタ20の光軸と一致もしくはほぼ一致する。レンズ30は、リフレクタ20からの反射光及び光源10からの直射光を車両の前方に照射する。
【0022】
[取付部材]
取付部材40は、光源10、リフレクタ20、レンズ30、及び後述する可動シェード機構50が取り付けられる。また、取付部材40は、光源10から発生する熱を放射する。
【0023】
[可動シェード機構]
可動シェード機構50は、光源10とレンズ30との間に配置される。可動シェード機構50は、図1に示すように、シェード部材51と、ソレノイド(駆動装置)52と、伝達部材53と、ブラケット54と、カバー部材55とを備えている。可動シェード機構50は、図1に示すように、シェード部材51を第1位置P1(実線参照)から第2位置P2(破線参照)までの範囲で回転させることにより、リフレクタ20で反射した光源10から光の遮蔽量を調整する機構である。
【0024】
図2から図6を参照して、可動シェード機構50の構成について詳細に説明する。図2は、可動シェード機構50の一例を示す斜視図である。図3は、可動シェード機構50の一例を示す分解斜視図である。図4は、可動シェード機構50を前方から見た場合の一例を示す正面図である。図5は、可動シェード機構50を左方から見た場合の一例を示す側面図である。図6は、可動シェード機構50のブラケット54の一例を示す側面図である。なお、図2から図6において、各部を固定するネジ等の固定部材については図示を省略する。
【0025】
<シェード部材>
シェード部材51は、シェード本体51aと、2つの取付片51bとを有している。シェード本体51aは、光源10からの光の一部を遮蔽する板状部材である。取付片51bは、シェード本体51aの側部に一つずつ形成されている。各取付片51bには、図2に示すように、同軸上に貫通孔51cが形成されている。貫通孔51cには、回転軸56が回転自在に挿入される。回転軸56には、ねじりコイルばねであるスプリング57(図3等参照)が挿通される。スプリング57は、一端がシェード部材51に固定され、他端がブラケット54に固定される。スプリング57は、ブラケット54に対してシェード部材51を第1位置P1に向かう方向に付勢する。
【0026】
<ソレノイド>
ソレノイド52は、シェード部材51を回転させるための動力を発生させる。図3に示すように、ソレノイド52は、ソレノイドコイル(駆動源)52aと、ケース52bと、プランジャ52cとを有する。ソレノイドコイル52aは、コネクタCを介して図示しない電源装置に接続されており、駆動源として機能する。
【0027】
ケース52bは、ソレノイドコイル52aをその内部に収容する。ケース52bは、例えば板厚が均一な金属板に対して切断加工、穴開け加工、折り曲げ加工等を行うことにより形成される。ケース52bは、上方から見て矩形状となるように折り曲げられる。ケース52bの上部には、上方に突出する3つの突起部52f、52g、52hが形成されている。突起部52f、52g、52hは、ケース52bの上部において、異なる3辺に設けられる。本実施形態では、前後方向の後方の辺に突起部52fが配置され、前後方向の前方の辺に突起部52gが配置され、左右方向の左方の辺に突起部52hが配置される。突起部52f~52hは、後述するブラケット54の嵌合孔61a~61cに挿入される。板厚が均一な金属板を用いてケース52bが形成されるため、3つの突起部52f~52hは、厚さ方向の寸法が同一又はほぼ同一となっている。つまり、突起部52f及び突起部52gの前後方向の寸法と、突起部52hの左右方向の寸法とが、同一又はほぼ同一となっている。
【0028】
プランジャ52cは、ケース52bに形成された孔部52dを介してソレノイドコイル52aに挿入されている。プランジャ52cは、ソレノイドコイル52aからの動力の発生に応じて、直線移動可能とされている。プランジャ52cには、周方向に沿って溝部52eが全周にわたって形成されている。
【0029】
<伝達部材>
伝達部材53は、ソレノイド52からの動力をシェード部材51に伝達する。伝達部材53は、例えば樹脂材料を用いて形成される。図3に示すように、伝達部材53は、軸部53aと、作用部53bと、係合部53cとを有する。伝達部材53は、軸部53aから作用部53b及び係合部53cが例えば概ね100°の角度をなす方向に延出された略L字形状を有する。
【0030】
軸部53aは、円筒状に形成されており、内部に支持軸58を収容するための収容部53dを区画する。支持軸58は、伝達部材53とは別体の軸状部材である。支持軸58は、基部58aと、挿入部58bとを有する。支持軸58は、挿入部58bが回転可能な状態で収容部53dに収容される。
【0031】
作用部53bは、先端部分に押圧部53eが形成されている。押圧部53eは、可動シェード機構50の駆動時に、シェード部材51に形成された被押圧部51e(図4図5参照)を押圧可能となるように、被押圧部51eの下部に配置される。係合部53cは、軸部53aから離れるにつれて拡張するように、羽根状に形成されている。係合部53cは、図4及び図5に示すように、ソレノイド52のプランジャ52cに形成された溝部52eに係合される。これにより、伝達部材53がソレノイド52に接続される。
【0032】
<ブラケット>
ブラケット54は、シェード部材51およびソレノイド52を支持する板状の支持部材である。ブラケット54は、例えば金属板に対して切断加工、穴開け加工及び曲げ加工等を行うことにより形成される。図3に示すように、ブラケット54は、ベース部61と、シェード支持部62と、補強部63と、取付部64とを有する。
【0033】
ベース部61は、車両搭載状態において水平面に沿って配置される。ベース部61は、ソレノイド52を支持する。ベース部61は、ソレノイド52を支持するための嵌合孔61a、61b、61cを有する。嵌合孔61a、61bは、前後方向に並ぶ位置に配置され、左右方向に長い形状を有する。嵌合孔61cは、嵌合孔61a、61bが配置される位置に対して左右方向の一方の側方(例えば、左側)に配置され、前後方向に長い形状を有する。嵌合孔61a~61cは、ソレノイド52のケース52bに設けられる突起部52f~52hが挿入される。なお、3つの突起部52f~52hのうち、嵌合孔61a、61bに挿入される突起部52f、52gの2つは、それぞれ嵌合孔61a、61bに挿入された後、上端が潰されてカシメ固定される。これにより、ケース52bがベース部61に係止される。
【0034】
この構成において、前後方向については、突起部52f、52gの厚さ方向に位置決めが行われる。また、左右方向については、突起部52hの厚さ方向に位置決めが行われる。つまり、嵌合孔61a~61cに突起部52f~52hが挿入されることにより、ケース52bの板厚方向に位置決めが行われる。このため、ケース52bの原材料となる金属板を板厚が均一になるように形成することで、ベース部61とソレノイド52との位置決めを高精度に行うことができる。また、突起部52f~52h及び嵌合孔61a~61cは、長手方向の寸法精度についてはマージンを大きく確保できるため、ケース52bの切断加工及びブラケット54の穴開け加工を容易に行うことができる。
【0035】
ベース部61は、伝達部材53を配置するための開口部61dを有する。開口部61dは、伝達部材53が配置される位置に応じて配置される。本実施形態では、例えばベース部61において左右方向の中心から一方(例えば、左側)にずれた位置に開口部61dが設けられる。伝達部材53は、開口部61dを上下方向に貫通するように配置される。
【0036】
シェード支持部62は、ベース部61の後方端部61rから上方に折り曲げられた状態で設けられる。ベース部61とシェード支持部62とは、例えば垂直又は略垂直に設けられる(図6等参照)。シェード支持部62は、基部62aと回転軸保持部62bとを有する。回転軸保持部62bは、例えば基部62aのうちシェード本体51aに対して左右方向の両側に張り出した位置に配置される。回転軸保持部62bは、基部62aから前方に向けて突出して上方に屈曲された略L字形状に形成される。回転軸保持部62bは、シェード部材51の回転軸56を基部62aとの間で挟み込んで回転軸56を保持する。これにより、シェード部材51は、ブラケット54によって回転軸56を中心として回転自在に支持される。なお、シェード部材51には、図5に示すように、ブラケット54に当接可能なストッパが形成されている。ストッパにより、シェード部材51が第1位置P1を超えた位置まで回転することが規制される。また、ブラケット54には、シェード部材51が第2位置P2を超えた位置まで回転することを規制する図示しないストッパが設けられている。
【0037】
補強部63は、ベース部61の前方端部61fから下方に折り曲げられた状態で設けられる(図6等参照)。ベース部61と補強部63とは、例えば垂直又は略垂直に設けられる。補強部63は、開口部63a及び切り欠き部63bを有する。開口部63aは、例えば左右方向に並んで配置される。開口部63aは、例えば左右方向の位置及び個数等を異ならせることにより、ブラケット54を識別する指標として機能する。切り欠き部63bは、前方から見た場合にコネクタCに対応する位置を空けるように設けられる。なお、開口部63a及び切り欠き部63bは、設けられなくてもよい。
【0038】
このように、ブラケット54は、ベース部61の後方端部61r及び前方端部61fがそれぞれ上方及び下方に折り曲げられることにより、平板状の場合に比べて、ベース部61の断面二次モーメントが大きくなる。つまり、ブラケット54は、平板状の場合に比べて、ベース部61の剛性が高められるため、振動及び衝撃等による変形が抑制される。ブラケット54の変形が抑制されることにより、ブラケット54と周辺部品との隙間を小さくすることができるため、可動シェード機構50及び車両用前照灯100の小型化を図ることができる。また、ブラケット54は、後方端部61r及び前方端部61fを折り曲げた状態とすることでベース部61の剛性が高められるため、原材料となる金属板の板厚を薄くすることができる。したがって、可動シェード機構50は、部品コストの低減及びブラケット54の軽量化が可能となる。
【0039】
取付部64は、ベース部61から左右方向の外側に張り出した状態で設けられる。取付部64は、不図示の固定部材等により、取付部材40に固定される。剛性が高められたベース部61から張り出した取付部64において取付部材40に固定されるため、ブラケット54を安定した状態で取付部材40に取り付けることができる。
【0040】
<カバー部材>
カバー部材55は、ベース部61の上面に装着される。カバー部材55は、開口部61dを覆う位置に配置される。カバー部材55は、開口部61dを覆うことにより、開口部61dに太陽光等の外光が入射することを防止する。したがって、例えば開口部61dの内部に配置される伝達部材53に外光が照射されることを抑制できるため、伝達部材53の熱変形等を抑制できる。
【0041】
[動作]
次に、本実施形態に係る可動シェード機構50の動作について説明する。上述したように、ソレノイド52が作動していないときには、スプリング57がシェード部材51をブラケット54に対して第1位置P1に向かう方向に付勢する。その結果、シェード部材51は、図2に示すように、ストッパ51dによってブラケット54に対して移動が規制されて、第1位置P1に位置付けられる。このとき、シェード部材51は、リフレクタ20で反射した光源10からの光の一部を遮蔽する。それにより、レンズ30から出射される光の配光パターンとして、ロービーム配光パターンが形成される。
【0042】
一方、ソレノイド52を通電させてソレノイドコイル52aで磁力を発生させることにより、プランジャ52cがソレノイドコイル52a側へと直線移動する。そのため、プランジャ52cの溝部52eに係合された伝達部材53が、支持軸58を中心として回転する。その結果、伝達部材53の作用部53cが、押圧部53eにおいてシェード部材51の被押圧部51eを押し上げる。それにより、シェード部材51は、スプリング57の付勢力に抗して、回転軸56を中心として第2位置P2に向かう方向に回転する。そして、シェード部材51は、ブラケット54に設けられた図示しないストッパによって移動が規制され、第2位置P2に位置付けられる。このとき、リフレクタ20で反射した光源10からの光は、シェード部材51により遮蔽されることなくレンズ30から出射され、ハイビーム配光パターンが形成される。その後、ソレノイド52の通電を切ると、ソレノイドコイル52が作動を停止する。この結果、スプリング57の付勢力により、シェード部材51が第1位置P1に位置付けられ、プランジャ52cが元の位置に戻される。
【0043】
以上のように、本実施形態に係る車両用前照灯100の可動シェード機構50は、回転軸56を中心として回転し、光源10からの光の遮蔽量を調整するシェード部材51と、シェード部材51を駆動する動力を生じさせるソレノイド52と、ソレノイド52の動力をシェード部材51に伝達する伝達部材53と、回転軸56及びソレノイド52を保持する板状のブラケット54と、を備え、ブラケット54は、車両搭載状態において水平面に沿って配置され、ソレノイド52を支持するベース部61と、ベース部61の車両搭載状態における後方端部から上方に折り曲げられた状態で設けられ、回転軸56を支持するシェード支持部62と、を有する。
【0044】
この構成によれば、ブラケット54において、ベース部61の後方端部及び前方端部の2箇所がそれぞれ上方及び下方に折り曲げられた構成であるため、平板状の場合に比べてベース部61の剛性が高められる。このように剛性が高められたベース部61にソレノイド52が保持されるため、振動及び衝撃等による変形が抑制される。また、ブラケット54の剛性を高めることにより、原材料となる金属板の板厚を薄くすることができる。これにより、可動シェード機構50は、部品コストの低減及び軽量化が可能となる。
【0045】
本実施形態に係る車両用前照灯100の可動シェード機構50において、ブラケット54は、ベース部61の前方端部から下方に折り曲げられた状態で設けられた補強部63を有する。これにより、ベース部61の剛性が更に高められることになる。
【0046】
本実施形態に係る車両用前照灯100の可動シェード機構50において、ベース部61は、車両搭載状態における左右方向の外側に張り出した取付部を有する。剛性が高められたベース部61から張り出した取付部64において取付部材40に固定されるため、ブラケット54を安定した状態で取付部材40に取り付けることができる。
【0047】
本実施形態に係る車両用前照灯100の可動シェード機構50において、ベース部61は、車両搭載状態における上下方向に貫通する開口部61dを有し、伝達部材53は、開口部61dを上下方向に貫通して配置される。ベース部61の剛性が高められるため、ブラケット54の板厚を厚くすることなく、ベース部61に開口部61dを設けることができる。
【0048】
本実施形態に係る車両用前照灯100の可動シェード機構50は、ベース部61に装着され、開口部61dを覆うカバー部材55を更に備える。カバー部材55により開口部61dが覆われるため、開口部61dに太陽光等の外光が入射することを防止できる。これにより、例えば開口部61dの内部に配置される伝達部材53に外光が照射されることを抑制できるため、伝達部材53の熱変形等を抑制できる。
【0049】
本実施形態に係る車両用前照灯100の可動シェード機構50において、ケース52bは、板状部材が車両搭載状態における前後方向及び左右方向に折り曲げられた形状を有し、ベース部61に嵌合させる複数の突起部52f~52hを上下方向の上部に有し、複数の突起部52f~52hは、ケース52bの上部のうち、前後方向が板厚方向となる位置と、左右方向が板厚方向となる位置とに少なくとも1つ以上設けられ、ベース部61は、複数の突起部52f~52hを挿入する嵌合孔61a~61cを有する。この構成により、突起部52f~52hの厚さ方向に位置決めを行うことができるため、例えばケース52bの原材料となる金属板の板厚を均一にすることで、寸法バラつきを抑えることができる。これにより、前後方向及び左右方向について確実に位置決めを行うことができる。
【0050】
本実施形態に係る車両用前照灯100は、光源10からの光を配光制御する上記の可動シェード機構50と、を備える。これにより、可動シェード機構50において振動及び衝撃等による変形等の影響が抑制されるため、可動シェード機構50と周辺部品との隙間を小さくすることができ、車両用前照灯100の小型化を図ることができる。また、ブラケット54の軽量化を図ることが可能となるため、軽量の車両用前照灯100を提供することができる。
【0051】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、上記実施形態では、複数の突起部52f~52hが、前後方向が板厚方向となる位置と、左右方向が板厚方向となる位置とに少なくとも1つ以上設けられる構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。複数の突起部52f~52hは、ベース部61に嵌合可能な位置であれば他の位置に設けられてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、カバー部材55が設けられる構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。カバー部材55は、例えば設けられなくてもよい。また、カバー部材55に代えて、ブラケット54又は他の構成要素の一部に開口部61dを覆う部分が設けられた構成であってもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、ベース部61に開口部61dが設けられ、伝達部材53が開口部61dを貫通するように配置される構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、伝達部材53を配置可能であれば、ベース部61に配置される構成が開口部61dではなく切り欠き部等であってもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、取付部材40に固定するための取付部64がベース部61から張り出した構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。取付部64は、ベース部61とは異なる位置に設けられてもよい。例えば、取付部64は、シェード支持部62又は補強部63から張り出した構成であってもよい。
【符号の説明】
【0055】
AX…光軸、C…コネクタ、P1…第1位置、P2…第2位置、10…光源、11…発光面、20…リフレクタ、30…レンズ、31…レンズホルダ、40…取付部材、50…可動シェード機構、51…シェード部材、51a…シェード本体、51b…取付片、51c…貫通孔、51d…ストッパ、51e…被押圧部、52…ソレノイド、52a…ソレノイドコイル、52b…ケース、52c…プランジャ、52d…孔部、52e…溝部、52f~52h…突起部、53…伝達部材、53a…軸部、53b,53c…作用部、53c…係合部、53d…収容部、53e…押圧部、54…ブラケット、55…カバー部材、56…回転軸、57…スプリング、58…支持軸、58a,62a…基部、58b…挿入部、61…ベース部、62…シェード支持部、63…補強部、61a~61c…嵌合孔、61d,63a…開口部、61f…前方端部、61r…後方端部、62b…回転軸保持部、63b…切り欠き部、64…取付部、100…車両用前照灯
図1
図2
図3
図4
図5
図6