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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】パージ制御弁装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 25/08 20060101AFI20230704BHJP
   F16K 27/02 20060101ALI20230704BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
F02M25/08 G
F02M25/08 L
F16K27/02
F16K31/06 305M
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019212544
(22)【出願日】2019-11-25
(65)【公開番号】P2021085333
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】592056908
【氏名又は名称】浜名湖電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 義彦
(72)【発明者】
【氏名】河村 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】中神 有容
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-004324(JP,A)
【文献】特開2006-308045(JP,A)
【文献】特開2000-179739(JP,A)
【文献】特開2015-051578(JP,A)
【文献】国際公開第2013/076768(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/08
F16K 27/00
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャニスタ(13)から流出した蒸発燃料が流入する流入ポート(31a)と、
蒸発燃料がエンジン(2)に向けて流出する流出ポート(32a)と、
前記流入ポートと前記流出ポートとを連絡する内部通路の一部である、第1内部通路(43a)および第2内部通路(43b)と、
前記第1内部通路を開閉可能な第1弁体(42a)を変位させる電磁力を発生する第1ソレノイド部(37)と、
前記第2内部通路を開閉可能な第2弁体(42b)を変位させる電磁力を発生する第2ソレノイド部(38)と、
前記第1ソレノイド部と前記第2ソレノイド部の両方とを樹脂モールドして内蔵するソレノイドハウジング(31)と、
前記第1弁体が着座する第1弁座(332a)と前記第2弁体が着座する第2弁座(332b)とが一体に形成されており、前記ソレノイドハウジングに溶着または接着により結合された樹脂製のシートバルブ部材(33)と、
を備え
前記シートバルブ部材は、端部に前記第1弁座が設けられ前記第1内部通路を内部に有する第1筒状部(331a)と、端部に前記第2弁座が設けられ前記第2内部通路を内部に有する第2筒状部(331b)と、厚さ方向に突出する前記第1筒状部と前記第2筒状部に一体に形成された板状部(333)と、を備え、
前記シートバルブ部材と前記ソレノイドハウジングは、前記第1筒状部および前記第2筒状部の周囲を取り囲み、溶着または接着により結合された周囲結合部(317b1)を有するパージ制御弁装置。
【請求項2】
前記シートバルブ部材と前記ソレノイドハウジングは、前記周囲結合部から内方に向けて前記第1筒状部と前記第2筒状部との間を横断するように延びて、溶着または接着により結合された仕切り結合部(317b2)をさらに有する請求項1に記載のパージ制御弁装置。
【請求項3】
前記仕切り結合部は、前記第1弁座および前記第2弁座よりも、前記第1筒状部の下流端部(331a1)寄りにおよび前記第2筒状部の下流端部(331b1)寄りに位置している請求項2に記載のパージ制御弁装置。
【請求項4】
前記仕切り結合部は、前記ソレノイドハウジングから前記板状部に向けて突出する仕切り壁(318)と前記板状部との接触部分に形成されている請求項3に記載のパージ制御弁装置。
【請求項5】
前記ソレノイドハウジングは、前記仕切り結合部に対して横断するように交差する突部であって、かつ前記シートバルブ部材に対して溶着または接着されていない非結合状態で接触する交差接触部(319)をさらに有す請求項2から請求項4のいずれか一項に記載のパージ制御弁装置。
【請求項6】
前記第1ソレノイド部と前記第2ソレノイド部は、前記ソレノイドハウジングの一方側に偏って並んで配置されて、樹脂モールドされている請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のパージ制御弁装置。
【請求項7】
前記第1内部通路は、前記第2内部通路よりも通路横断面積が大きく形成された通路である請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のパージ制御弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、パージ制御弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、1個の電磁弁をそれぞれ内蔵した2個のハウジングを備えるパージ制御弁装置が開示されている。特許文献1のパージ制御弁装置は、電磁弁を内蔵する2個のハウジングと、各電磁弁が着座する弁座をそれぞれ有する2個のシートバルブ部材とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5717876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置は、それぞれ電磁弁を内蔵する2個のハウジングと、2個のシートバルブ部材とを備える。このため、部品点数が多いという課題がある。
【0005】
この明細書に開示する目的の一つは、部品点数の軽減が図れるパージ制御弁装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この明細書に開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。また、特許請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例であって、技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
開示されたパージ制御弁装置の一つは、キャニスタ(13)から流出した蒸発燃料が流入する流入ポート(31a)と、蒸発燃料がエンジン(2)に向けて流出する流出ポート(32a)と、流入ポートと流出ポートとを連絡する内部通路の一部である、第1内部通路(43a)および第2内部通路(43b)と、第1内部通路を開閉可能な第1弁体(42a)を変位させる電磁力を発生する第1ソレノイド部(37)と、第2内部通路を開閉可能な第2弁体(42b)を変位させる電磁力を発生する第2ソレノイド部(38)と、第1ソレノイド部と第2ソレノイド部の両方とを樹脂モールドして内蔵するソレノイドハウジング(31)と、第1弁体が着座する第1弁座(332a)と第2弁体が着座する第2弁座(332b)とが一体に形成されており、ソレノイドハウジングに溶着または接着により結合された樹脂製のシートバルブ部材(33)と、を備える。
シートバルブ部材は、端部に第1弁座が設けられ第1内部通路を内部に有する第1筒状部(331a)と、端部に第2弁座が設けられ第2内部通路を内部に有する第2筒状部(331b)と、厚さ方向に突出する第1筒状部と第2筒状部に一体に形成された板状部(333)と、を備える。
シートバルブ部材とソレノイドハウジングは、第1筒状部および第2筒状部の周囲を取り囲み、溶着または接着により結合された周囲結合部(317b1)を有する。
【0008】
この装置によれば、2個のソレノイド部を樹脂モールドするソレノイドハウジングと、2個の弁座が一体に形成されてソレノイドハウジングに溶着または接着により結合されたシートバルブ部材とを備える。このパージ制御弁装置によれば、2個の電磁弁と2個の弁座とを2個の部材で構成できる。以上より、パージ制御弁装置は、部品点数の軽減を図ることができる。さらにパージ制御弁装置は、第1弁座を有する部材と第2弁体を有する部材とを備える場合に比べて、溶着または接着による結合部の面積を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態のパージ制御弁装置を備えた蒸発燃料処理装置の構成図である。
図2】第3被取付部を正面から視たパージ制御弁装置の部分断面図である。
図3】パージ制御弁装置の背面図である。
図4】第2被取付部を正面から視たパージ制御弁装置の側面図である。
図5】第1被取付部を正面から視たパージ制御弁装置の側面図である。
図6】流入側ハウジング側から視たパージ制御弁装置の外観図である。
図7】流出側ハウジング側から視たパージ制御弁装置の外観図である。
図8】2個の電磁弁、流入ポートおよび流出ポートの位置関係を示す概要図である。
図9図4のIX-IX断面における断面図である。
図10図4のX-X断面における断面図である。
図11】ハウジングとシートバルブ部材との接合部の部分断面図である。
図12】流入側ハウジングにおける接合部を示す図である。
図13】シートバルブ部材における接合部を示す図である。
図14】シートバルブ部材における接合部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0011】
<第1実施形態>
第1実施形態について図1図14を参照しながら説明する。パージ制御弁装置は、車両に搭載される蒸発燃料パージシステムである蒸発燃料処理装置1に用いられる。パージバルブ3は、パージ制御弁装置の一例である。蒸発燃料処理装置1は、図1に示すように、キャニスタ13に吸着した燃料中のHCガス等をエンジン2の吸気通路に供給する。これにより、燃料タンク10からの蒸発燃料が大気に放出されることを防止できる。蒸発燃料処理装置1は、内燃機関であるエンジン2の吸気通路を構成するエンジン2の吸気系と、蒸発燃料をエンジン2の吸気系に供給する蒸発燃料パージ系とを備える。
【0012】
エンジン2の吸気圧によって吸気通路に導入された蒸発燃料は、インジェクタ等からエンジン2に供給される燃焼用燃料と混合されて、エンジン2の燃焼室で燃焼される。エンジン2は少なくともキャニスタ13から脱離された蒸発燃料と燃焼用燃料とを混合して燃焼する。エンジン2の吸気系は、吸気通路を構成する吸気管21が吸気マニホールド20に接続されている。この吸気系は、さらに吸気管21の途中にスロットルバルブ25、エアフィルタ24等が設けられて構成されている。
【0013】
蒸発燃料パージ系において燃料タンク10とキャニスタ13は、ベーパ通路を構成する配管11によって接続されている。蒸発燃料パージ系においてキャニスタ13と吸気管21は、パージ通路を構成する配管14とパージバルブ3とを介して接続されている。また、パージ通路の途中には、パージポンプを設けるように構成してもよい。エアフィルタ24は、吸気管21の上流部に設けられ、吸気中の塵や埃等を捕捉する。スロットルバルブ25は、吸気マニホールド20の入口部の開度を調節して、吸気マニホールド20内に流入する吸気量を調節する吸気量調節弁である。吸気は、吸気通路を通過して吸気マニホールド20内に流入し、インジェクタ等から噴射される燃焼用燃料と所定の空燃比となるように混合されて燃焼室で燃焼される。
【0014】
燃料タンク10は、例えばガソリン等の燃料を貯留する容器である。燃料タンク10は、ベーパ通路を形成する配管11によってキャニスタ13の流入部に接続されている。キャニスタ13は、内部に活性炭等の吸着材が封入された容器である。キャニスタ13は、燃料タンク10内で発生する蒸発燃料を、ベーパ通路を介して取り入れて吸着材に一時的に吸着する。
【0015】
キャニスタ13には、バルブモジュール12が一体に設けられ、またはダクト部を介して設けられている。バルブモジュール12には、キャニスタクローズバルブと内部ポンプとを含んでいる。キャニスタクローズバルブは、外部の新鮮な空気を吸入するための吸入部を開閉する。内部ポンプは、大気に対してガスを放出したり、大気を吸入したりすることが可能なポンプである。キャニスタ13はキャニスタクローズバルブを備えることにより、キャニスタ13内に大気圧を作用させることができる。キャニスタ13は、吸入された新鮮な空気によって吸着材に吸着した蒸発燃料を容易に脱離可能、すなわちパージすることができる。
【0016】
パージバルブ3は、パージ通路の一部である内部通路を開閉する弁体を備えたパージ制御弁装置である。パージ制御弁装置は、複数の電磁弁を内部に有する。パージバルブ3は、キャニスタ13からの蒸発燃料をエンジン2へ供給することを許可および阻止できる。パージバルブ3の構成について説明する。パージバルブ3は、ハウジングの内部に設けられた複数の内部通路のそれぞれを開閉する電磁弁を有している。パージバルブ3は、1個の流入ポート31aと1個の流出ポート32aとを備える。流入ポート31aは、接続された配管14を介してキャニスタ13に連通している。流入ポート31aは、キャニスタ13から流出した蒸発燃料が流入する流入通路31a1を有している。流出ポート32aは、接続された配管を介して吸気管21に連通している。流出ポート32aは、蒸発燃料がエンジン2に向けて流出する流出通路32a1を有している。パージバルブ3の内部には、流入ポート31aよりも下流側で分岐する2個の内部通路が設けられている。この2個の内部通路は、さらに下流において流出ポート32aに集約されている。2個の内部通路のそれぞれは、電磁弁によって個別に開閉される通路である。
【0017】
車両の走行時に、制御装置によってパージバルブ3が開弁状態になると、ピストンの吸入作用によって発生する吸気マニホールド20内の負圧とキャニスタ13にかかる大気圧との差が生じる。この圧力差によって、キャニスタ13内に吸着された蒸気燃料は、パージ通路、パージバルブ3を流れ、吸気管21内を通じて吸気マニホールド20内に吸引される。
【0018】
吸気マニホールド20内に吸引された蒸発燃料は、インジェクタ等からエンジン2に供給される本来の燃焼用燃料と混合されて、エンジン2のシリンダ内で燃焼される。エンジン2のシリンダ内においては、燃焼用燃料と吸気との混合割合である空燃比が予め定めた所定の空燃比となるように制御される。制御装置は、パージバルブ3をデューティ通電制御することで、蒸発燃料をパージしても、所定の空燃比が維持されるように蒸発燃料のパージ量を調節する。
【0019】
図2図8図10に示すように、パージバルブ3は、複数の電磁弁の一例として、第1電磁弁37と第2電磁弁38とを内蔵する。第1電磁弁37と第2電磁弁38のそれぞれは、同様の構成部品によって構成されている。第1電磁弁37と第2電磁弁38のそれぞれは、ソレノイド部41と弁体42と筒状部331とを有する。第1電磁弁37は、第1弁体42aと、第1弁体42aを変位させる電磁力を発生する第1ソレノイド部とを備える。第1弁体42aは、一つの筒状部331内に連通する第1内部通路43aを開閉可能である。第2電磁弁38は、第2弁体42bと、第2弁体42bを変位させる電磁力を発生する第2ソレノイド部とを備える。第2弁体42bは、もう一つの筒状部331内に連通する第2内部通路43bを開閉可能である。筒状部331の端部には、弁体が閉状態で着座し開状態で離間する弁座332が設けられている。第1電磁弁37、第2電磁弁38は、例えば、電圧の非印加時に内部通路を閉じる閉状態であり電圧の印加時に内部通路を開く開状態に制御されるノーマルクローズ式の弁である。
【0020】
各電磁弁のソレノイド部41は、コイル部410、ボビン411、固定コア413、可動コア412、シャフト部材415、スプリング414等を含んでいる。ソレノイド部41は、樹脂材料により形成された被覆部によって覆われている。被覆部は、ハウジングと一体に形成されている。ソレノイド部41は、被覆部によって樹脂モールドされているともいえる。第1ソレノイド部と第2ソレノイド部は、樹脂モールドされており、流入側ハウジング31に内蔵されている。流入側ハウジング31はソレノイド部を内蔵するソレノイドハウジングの一例である。ソレノイド部41の中心軸は、電磁弁の中心軸でもある。ソレノイド部41はハウジングよりも比重が大きいため、外力に対してソレノイド部が振動しやすい。
【0021】
可動コア412は磁気を通す材質、例えば磁性材料で構成されている。筒状体である可動コア412は、開口端から内挿された状態のシャフト部材415およびスプリング414を取り囲んでいる。弁体42は、ゴム等の弾性変形可能な材質で形成されている。弁体42は、基部と弁部とで可動コア412の頭部を両側から挟むようにして可動コア412に装着されて可動コア412と一体になっている。
【0022】
固定コア413は、電磁力によってスプリング414の付勢力に抗して軸方向に移動する可動コア412を摺動可能に支持する。スプリング414は、固定コア413に固定されているシャフト部材415に軸方向の一端部が接触し可動コア412の頭部に軸方向の他端部が接触した状態で可動コア412の筒状部の内側に設けられている。したがって、スプリング414は、可動コア412を弁座332側へ移動させようとする付勢力を提供する。固定コア413は、シャフト部材415を固定するとともに、ボビン411に組み付けられている。固定コア413、シャフト部材415、可動コア412、弁体42は、軸心が同軸をなすように設置されている。シャフト部材415は、例えばナイロン、ガラス繊維を含有して強化されたナイロンによって形成されている。固定コア413、可動コア412は磁気を通す材質で構成されている。固定コア413は、例えば冷間圧造用炭素鋼線によって形成されている。各電磁弁は、コイル部410に通電されたときに発生する電磁力とスプリング414の付勢力とのバランスに応じて弁体42を駆動することによって、内部通路43を開閉する。
【0023】
ハウジングには、第1電磁弁37のソレノイド部41側からソレノイド部41の中心軸に対して直交する方向に延びるコネクタ31cが設けられている。ハウジングには、第2電磁弁38のソレノイド部41側からソレノイド部41の中心軸に対して直交する方向に延びるコネクタ31dが設けられている。各コネクタは、コイル部410に通電するためのターミナルを内蔵する。コネクタは、ハウジングの内部から底部を貫通して外部に突出するターミナルを支持する樹脂成形部である。ターミナルはコイル部410と電気的に接続されている通電用端子である。コネクタには、電源部や電流制御装置からの電力を供給するための電源側コネクタが接続される。コネクタと電源側コネクタとが接続されてターミナルが電流制御装置等に電気的に接続されると、パージバルブ3はコイル部410に通電する電流を制御できる。
【0024】
図2図10に示すように、パージバルブ3は、ハウジングとして、流入側ハウジング31と、流出側ハウジング32と、シートバルブ部材33とを備えている。流入側ハウジング31、流出側ハウジング32、シートバルブ部材33は、樹脂材料によって形成されている。流入側ハウジング31は、キャニスタ13からの蒸発燃料が流入する流入ポート31aと、流入ポート31aよりも下流に設けられた流入側チャンバ室31bとを備える。流入側ハウジング31には、フランジ部31fが設けられている。流入側ハウジング31と流出側ハウジング32は、シートバルブ部材33の外周縁を挟持した状態で両者のフランジ部同士が重ね合わされて一体に接合されている。流入側ハウジング31のフランジ部31fは、流入側ハウジング31の下流端部に位置する下流開口部の外周縁から放射状に突出する部分である。フランジ部31fは、図11に示すように、溶着または接着によって、流出側ハウジング32のフランジ部32fに結合されている。
【0025】
流入ポート31aは、内部に流体の流入通路を有する管状部であり、流入側ハウジング31の上流端部に位置する。流入ポート31aは、蒸発燃料処理装置1においてパージ通路を形成する配管14に接続されており、配管14を介してキャニスタ13に連通している。
【0026】
流入側チャンバ室31bは、上流端において流入側チャンバ室31bよりも通路横断面積が小さい流入通路31a1に連通する。流入通路31a1と流入側チャンバ室31bは、流入通路31a1における流体の流入方向に並ぶように設けられている。流入通路31a1の下流端部は、流入側チャンバ室31bに臨むチャンバ室流入部31a2である。図9に示すように、第1内部通路43aの上流端部は、チャンバ室流入部31a2よりも、蒸発燃料が流入通路31a1を流下する流入方向に位置する。流入方向は、流入ポート31aの軸方向に沿う方向である。流入側チャンバ室31bは、流入側チャンバ室31bよりも下流において、第1内部通路43aと第2内部通路43bとに連通している。流入ポート31a内の通路横断面積は、この通路の中心軸に対して直交する平面によって流入ポート31aを切断した場合の断面積である。流入側チャンバ室31bの通路横断面積は、流入側チャンバ室31bが形成する通路の中心軸に直交する平面によって流入側チャンバ室31bを切断した場合の断面積である。パージバルブ3内の通路は、流入ポート31a内の通路から流入側チャンバ室31bに進んだところで通路横断面積が急激に増加するようになっている。流入側チャンバ室31bは、パージバルブ3において発生する脈動を抑えるチャンバ容積を提供している。
【0027】
流入側ハウジング31は、第1側壁311と、第2側壁312と、第3側壁313と、第4側壁314とを備える。流入側ハウジング31は、下流開口部に対向してこれらの側壁を連結する連結壁部を備える。図6に示すように、連結壁部は、第1電磁弁37および第2電磁弁38の軸方向端部と流入側チャンバ室31bとを覆う壁部である。流入ポート31aは、連結壁部よりも流出側ハウジング32寄りに位置している。流入ポート31aは、連結壁部よりも外側に突出しないで内側に位置している。流入ポート31aは、連結壁部、第3側壁313、および第4側壁314に沿うように延びている。流入ポート31aは、フランジ部31fからの高さ寸法が連結壁部よりも低くなるように、設けられている。
【0028】
第1側壁311と第2側壁312は対向している。第3側壁313と第4側壁314は対向している。第1側壁311は、第3側壁313と第4側壁314に隣接してこれらを連結している。第2側壁312は、第3側壁313と第4側壁314に隣接してこれらを連結している。コネクタ31cとコネクタ31dは、第3側壁313から外方に突出するように延びている。
【0029】
流入側ハウジング31は、第1電磁弁37、第2電磁弁38を収容している。図6に示すように、第1電磁弁37と第2電磁弁38は、流入側ハウジング31内において、第3側壁313寄りの一方側に並んで配置されている。第1電磁弁37と第2電磁弁38は、第3側壁313に沿うように並んでいる。第1電磁弁37は、第1側壁311と第3側壁313との両方に隣接するように配置されている。第2電磁弁38は、第2側壁312と第3側壁313との両方に隣接するように配置されている。流入ポート31aと流入側チャンバ室31bは、流入側ハウジング31内において、第1電磁弁37および第2電磁弁38とは反対側である他方側に配置されている。流入ポート31aと流入側チャンバ室31bは、第1電磁弁37と第2電磁弁38の並び方向に並ぶように配置されている。流入側チャンバ室31bは、第4側壁314と、第1電磁弁37および第2電磁弁38との間に形成されている。
【0030】
シートバルブ部材33は、2個の筒状部331を有している。2個の筒状部331のそれぞれは、板状部333の両面から突出する形状である。筒状部331は、上流側または弁体側に突出する上流側突出部と、下流側または流出ポート32a側に突出する下流側突出部とを有している。板状部333の外周縁に位置するフランジ部33fは、図11に示すように流入側ハウジング31と流出側ハウジング32とによって挟持されている部分である。シートバルブ部材33の板状部333は、パージバルブ3において、流入側ハウジング31側と流出側ハウジング32側とを仕切っている仕切り壁部である。2個の筒状部331は、第1電磁弁37側に位置する第1筒状部331aと、第2電磁弁38側に位置する第2筒状部331bである。
【0031】
第1筒状部331aは、内部の第1内部通路43aと、先端に形成された第1弁座332aとを有している。第1弁座332aには、閉弁時に第1弁体42aが着座する。第2筒状部331bは、内部の第2内部通路43bと、先端に形成された第2弁座332bとを有している。第2弁座332bには、閉弁時に第2弁体42bが着座する。これら2個の弁座332は、流入側ハウジング31の内部に位置している。第1筒状部331aの下流端部331a1、第2筒状部331bの下流端部331b1は、流出側ハウジング32の内部に位置している。
【0032】
図9に示すように、第2内部通路43bの上流端部は、チャンバ室流入部31a2に対して、流入通路31a1における流体の流入方向とは反対側に位置している。第2内部通路43bの上流端部は、当該流体の流入方向について、第1内部通路43aがチャンバ室流入部31a2に対して位置する側とは反対側に位置している。
【0033】
第1内部通路43aは、第2内部通路43bよりも流下する流体流量が大きい通路である。ハウジングの内部通路は、蒸発燃料が、第1内部通路43aに流下する大流量側流路と、第2内部通路43bへ流下する小流量側流路とを含む。大流量側流路は、蒸発燃料が、流入通路31a1、流入側チャンバ室31b、第1連絡通路315、第1内部通路43aの順に流下する流路である。小流量側流路は、蒸発燃料が、流入通路31a1、流入側チャンバ室31b、第2連絡通路316、第2内部通路43bの順に流下する流路である。流入側チャンバ室31bは、大流量側流路と小流量側流路とにおける共通の通路である。蒸発燃料は、流入側チャンバ室31bから、第1内部通路43aに流下する流路と第2内部通路43bに流下する流路とに分流する。
【0034】
第1連絡通路315は、第1内部通路43aよりも上流側において、第1内部通路43aと流入側チャンバ室31bとを連絡する通路である。第1連絡通路315は、第1ソレノイド部よりも流入通路31a1寄りに設けられた通路である。第1連絡通路315には、フィルタ枠部44aに支持された濾材部または網部を有するフィルタ部材44が設置されている。第1連絡通路315のフィルタ部材44は、流入側チャンバ室31bから分流して第1内部通路43aへ流下する前の蒸発燃料に含まれる異物を捕集する。
【0035】
第2連絡通路316は、第2内部通路43bよりも上流側において、第2内部通路43bと流入側チャンバ室31bとを連絡する通路である。第2連絡通路316は、第2ソレノイド部よりも流入通路31a1寄りに設けられた通路である。第2連絡通路316は、通路横断面積が、第1連絡通路315と流入側チャンバ室31bとのそれぞれよりも小さく形成されている。この構成により、蒸発燃料は、流入側チャンバ室31bから第2連絡通路316に流入するときに広い通路から狭い通路に流下するため、圧力損失が大きくなる。これにより、流下流量が小さい第2内部通路43bに至る流路の圧力損失をさらに大きくできる。このため、パージバルブ3は、小流量域の流量範囲を広げることができる。第2連絡通路316には、フィルタ枠部44aに支持された濾材部または網部を有するフィルタ部材44が設置されている。第2連絡通路316のフィルタ部材44は、流入側チャンバ室31bから分流して第2内部通路43bへ流下する前の蒸発燃料に含まれる異物を捕集する。
【0036】
図9図10に図示するように、第1内部通路43aと第2内部通路43bは、流体の流入方向に直交する直交方向について一方側に位置している。流入通路31a1は、当該直交方向についてハウジングにおける他方側に位置している。直交方向は、流入側ハウジング31と流出側ハウジング32との結合方向と、流入方向との両方に直交する方向である。結合方向は、流入側ハウジング31と流出側ハウジング32の積層方向でもある。この構成によれば、流入通路31a1から流入側チャンバ室31bを経由して第1内部通路43aに至る大流量側流路を、流入方向と直交方向とにわたって延設できる。これにより、チャンバ室流入部31a2と第1内部通路43aとをハウジング内において対角線上に配置することができる。このため、大流量側流路を長く設定でき、圧力損失をさらに抑えた流路を提供できる。
【0037】
流出ポート32aは、当該直交方向について、流入ポート31aと、第1内部通路43aおよび第2内部通路43bとの間に位置している。この構成によれば、蒸発燃料は、流入側チャンバ室31bから第1内部通路43aと第2内部通路43bとに至る流路において、当該直交方向の流路を長く流下できる。当該直交方向の流路を長く構成できることにより、大流量側流路と小流量側流路における流路抵抗を抑えられるので、流量確保に貢献できる。第1内部通路43aの下流端部は、第2内部通路43bの下流端部よりも、流出通路32a1の上流端部に近い位置に設けられている。この構成により、流出通路32a1側の流路においても、大流量側流路の流路抵抗を小流量側流路の流路抵抗よりも抑えることができる。このため、パージバルブ3における大流量の確保に貢献できる。
【0038】
パージバルブ3は、流入通路31a1から、各弁体が開度調節する内部通路に至るまでの流路について、小流量側流路に圧力損失を集中させるような構成を有する。パージバルブ3は、大流量側流路について、流路が逆向きに屈曲したり、極端に狭い流路を経由したりすることがない流路構成を提供する。パージバルブ3は、小流量側流路について、逆向きの流路を有することにより、大流量側流路よりも流路抵抗が大きくなる流路構成を提供する。
【0039】
図10に示すように、流出側ハウジング32は、2個の筒状部331においてシートバルブ部材33の板状部333から突出している下流側突出部を囲んでいる。第1筒状部331aと第2筒状部331bは、互いに沿うように延びる形状である。第1筒状部331aの下流側突出部は、第2筒状部331bの下流側突出部よりも長い。第1筒状部331aは、弁座から下流端部331a1までの軸方向長さが、第2筒状部331bよりも長く構成されている。下流端部331a1は、シートバルブ部材33の板状部333に対して下流端部331b1よりも離間した位置にある。第1筒状部331aは、第2筒状部331bよりも長い内部通路を形成している。したがって、第2筒状部331bよりも流下流量が大きい第1筒状部331aの方が長い。この構成は、エンジン2側が低負圧である条件において流量を確保する上で、有利であり、第1筒状部331aの方を長くする方が効率がよい。一方、第2筒状部331bの方を長くしても、流量確保に関して効果が低い。よって、第2筒状部331bの方を短くすることで、当該部位においてハウジングの体格を抑えることができ、さらに第2筒状部331bを形成する材料の量が抑えられる。
【0040】
流出側ハウジング32は、吸気管21へ向けて蒸発燃料を流出する流出ポート32aと、流出ポート32aの上流側に設けられている流出側チャンバ室32bとを備える。流出側ハウジング32のフランジ部32fは、流出側ハウジング32の上流端部に位置する上流開口部の外周縁から放射状に突出する部分である。流出側チャンバ室32bは、下流端部において流出側チャンバ室32bよりも通路横断面積が小さい流出ポート32a内の流出通路32a1に連通する。流出側チャンバ室32bは、ハウジングの内部において、流出ポート32aと第1内部通路43aおよび第2内部通路43bとを連絡している。
【0041】
流出ポート32aは、内部に流体の流出通路を有する管状部であり、流出側ハウジング32の下流端部に位置する。流出ポート32aは、接続される配管を介して吸気管21内に連通している。流出ポート32aは、流出側ハウジング32を形成する最外壁部よりも、流入側ハウジング31寄りに位置していることが好ましい。流出ポート32aは、最外壁部よりも外側に突出しないで内側に位置している。流出ポート32aは、第1電磁弁37と第2電磁弁38の並び方向に並ぶように配置されている。流出ポート32aは、先端に向かって流入ポート31aと同じ方向に沿うように延びている。流出ポート32aは、フランジ部32fからの高さ寸法が流出側ハウジング32の最外壁部と同等または最外壁部よりも低くなるように、設けられている。
【0042】
シートバルブ部材33は、流入側ハウジング31または流出側ハウジング32に溶着または接着により結合されている。シートバルブ部材33と流入側ハウジング31または流出側ハウジング32は、溶着または接着により結合された結合部317bを構成する。溶着は、例えば、レーザーを用いて樹脂部材同士を溶着するレーザー溶着によって実施することができる。溶着は、シートバルブ部材33の結合部とハウジングの結合部とを重ね合わせ、シートバルブ部材33にレーザーを照射してハウジングの結合部を溶かすことにより実施する。この場合、シートバルブ部材33は、レーザー光に対して透過性のある樹脂材料によって構成される。ハウジングは、例えばカーボンなどを含むことによりレーザー光を吸収する部材で構成される。接着は、例えば、シートバルブ部材33の結合部とハウジングの結合部との間に接着剤を介在させた状態で積層部を形成し、この積層部に熱を与えることで実施できる。
【0043】
図11図14には、シートバルブ部材33と流入側ハウジング31とが、溶着または接着により結合されている例を図示している。図13図14は、シートバルブ部材33における結合部317bの位置を理解しやすいように両面側から図示している。
【0044】
図11に示すようにフランジ部33fは、フランジ部31fよりも内側に位置する環状凹部317とフランジ部32fよりも内周側に位置する部分とによって挟持されている。環状凹部317は、フランジ部31fよりも凹んだ部分であり、フランジ部31fよりも内側に位置する内周縁部に設けられている。環状凹部317とフランジ部33fとの接触部は、溶着または接着によって結合している。
【0045】
図12図14に示すように、環状凹部317とフランジ部33fとの接触部は、結合部317bの一部である周囲結合部317b1を構成する。周囲結合部317b1は、環状凹部317上のほぼ全域に設けられている。周囲結合部317b1は、フランジ部33fにおける流入側ハウジング31側の面上のほぼ全域に設けられている。周囲結合部317b1は、第1筒状部331aおよび第2筒状部331bの周囲を取り囲むように形成されている。周囲結合部317b1は、図12に示すように、フランジ部33fに沿うように内周縁部に設けられている。周囲結合部317b1は、図14に示すように、板状部333における弁座側の面の外周縁部に沿うように設けられている。
【0046】
パージバルブ3は、結合部317bの一部として、仕切り結合部371b2を備えている。結合部317bは、周囲結合部317b1と、周囲結合部317b1から延びている仕切り結合部371b2とを含んでいる。仕切り結合部371b2は、シートバルブ部材33と流入側ハウジング31とにおいて溶着または接着により結合された部分である。図12図14に示すように仕切り結合部371b2は、周囲結合部317b1から切れ目なしに延びている。図12に示すように流入側ハウジング31には、環状凹部317から切れ目なく内方に延びている仕切り壁318が設けられている。仕切り壁318は、流入側ハウジング31において、第1ソレノイド部と第2ソレノイド部との間を横断するように環状凹部317から延びている。仕切り壁318は、環状凹部317から内方に向けて第1筒状部331aと第2筒状部331bとの間を横断するように延びる突出壁である。仕切り壁318は、図10に示すように結合方向について環状凹部317と同じ高さとなるように、流入側ハウジング31に形成されている。
【0047】
仕切り壁318は、図10に示すように、第1弁座332aよりも、第1筒状部の下流端部331a1寄りに設けられている。仕切り壁318は、第2弁座332bよりも、第2筒状部の下流端部331b1寄りに設けられている。
【0048】
仕切り結合部317b2は、仕切り壁318の頂面と、板状部333において仕切り壁318が接触する部分とを一体に結合する結合部である。流入側ハウジング31は、仕切り壁318に対して横断するように交差する、突出壁である交差接触部319を備える。交差接触部319は、図12図14に示すように、一方側から他方側へ延びる仕切り壁318の端部の両側にソレノイド部の並び方向に突出するように延びている。交差接触部319は、仕切り壁318とは異なり、シートバルブ部材33に対して溶着または接着されていない非結合状態で接触している。つまり、交差接触部319と板状部333とは、当接しているだけであり固定されていない非結合部である。
【0049】
パージバルブ3において電磁弁が開閉動作すると、弁体が着座する弁座を中心として放射状に振動が伝搬する。この放射状の振動伝搬に伴って、放射状に拡大する放射音が発生し得る。2個の電磁弁のうち片側の電磁弁のみが開閉動作した場合、振動が片側の弁座から放射状に伝搬し、放射音を発生させる。この場合、片側の弁座からの伝搬する振動は、仕切り結合部317b2によって放射状に拡大することが阻害される。このように仕切り結合部317b2は、片側の弁座からの振動伝搬を片側領域に抑えて、振動面積を抑制することに寄与する。また、仕切り壁318や仕切り結合部317b2は、第1弁座332aと第2弁座332bとの間においてシートバルブ部材33の補強し、剛性を高めている。これにより、仕切り壁318や仕切り結合部317b2は弁体の開閉動作による振動によって、シートバルブ部材33が撓むことを阻害する。シートバルブ部材33の撓みを抑制することによれば、弁体の開閉動作に伴うパージバルブ3の振動を抑制することができる。
【0050】
また、交差接触部319は、仕切り壁318にぶつかった振動が仕切り壁318の延びる方向に伝搬し、仕切り壁318よりもさらに先に伝搬することを阻害する。このように交差接触部319は、仕切り壁318を介した振動伝搬の拡大を抑えることに寄与する。また、交差接触部319は、仕切り壁318に対して交差する両側の方向に延びているため、弁座を中心として放射状に伝搬する振動範囲を阻害する効果も奏する。
【0051】
パージバルブ3は、複数の被取付部を介して、ボルトなど固定手段によって車両側部材に固定されている。例えば、車両側部材には、ボルトに螺合する雌ねじ部が埋め込まれている。パージバルブ3は、流入側ハウジング31の第1側壁311から外方に突出する第1被取付部34を有している。第1被取付部34には、流入側ハウジング31と流出側ハウジング32を重ね合わせる結合方向に貫通する取付穴が設けられている。第1被取付部34の取付穴は、車両側部材に結合されるボルトなどの固定手段を挿通するための貫通穴である。第1被取付部34は、流入側ハウジング31において一方側に偏った位置に配置されている。第1被取付部34は、流入側ハウジング31において第1電磁弁37に対して並ぶように側方に配置されている。
【0052】
パージバルブ3は、流入側ハウジング31の第2側壁312から外方に突出する第2被取付部35を有している。第2被取付部35には、流入側ハウジング31と流出側ハウジング32を重ね合わせる結合方向に貫通する取付穴が設けられている。第2被取付部35の取付穴は、車両側部材に結合されるボルトなどの固定手段を挿通するための貫通穴である。第2被取付部35は、流入側ハウジング31においてソレノイド部の並び方向において一方側に偏った位置に配置されている。第2被取付部35は、流入側ハウジング31において第2電磁弁38に対して並ぶように側方に配置されている。第1被取付部34、第1ソレノイド部、第2ソレノイド部、第2被取付部35は、第1ソレノイド部と第2ソレノイド部の並び方向に重なるように配置されている。
【0053】
パージバルブ3は、流入側ハウジング31の第3側壁313から外方に突出する第3被取付部36を有している。第3被取付部36は、流入側ハウジング31の一方側に位置し第1被取付部34と第2被取付部35とに隣り合う第3側壁313に設けられている。第3被取付部36には、流入側ハウジング31と流出側ハウジング32を重ね合わせる結合方向に貫通する取付穴が設けられている。第3被取付部36の取付穴は、車両側部材に結合されるボルトなどの固定手段を挿通するための貫通穴である。
【0054】
第2電磁弁38は、全開した第2内部通路43bを流れる流体流量が複数の電磁弁の中で最も少なくなるように構成されている。第1電磁弁37は、全開した第1内部通路43aを流れる流体流量が第2電磁弁38よりも多くなるように構成されている。パージバルブ3において、第1電磁弁37は大流量性能を提供する流量調整弁であり、第2電磁弁38は小流量性能を提供する流量調整弁である。第1内部通路43aは、通路横断面積が第2内部通路43bよりも大きく形成されている。
【0055】
第1内部通路43aは、流下可能な流体流量が第2内部通路43bよりも大きくなるように形成されている。この構成により、第1弁体42aの開閉動作に伴う振動が第2弁体42bの開閉動作に伴う振動よりも大きくなりうる。パージバルブ3は、この振動を抑制可能な構成として、第1ソレノイド部を間において第1被取付部34と第2被取付部35とが並ぶ構成を有している。
【0056】
例えば、エンジン2への供給流量が小流量要求である場合には、第1電磁弁37は閉弁状態であり、第2電磁弁38は制御装置によって通電制御されて開弁状態になる。小流量要求時には、制御装置は、通電オンとオフの合計時間に対するオン時間の比率、すなわちデューティ比を制御して第2電磁弁38のコイル部410に通電を行う。小流量要求時には、デューティ通電制御により、第2内部通路43bを流通する小流量の蒸発燃料が流出ポート32aから吸気管21内に供給されるようになる。
【0057】
小流量要求時から、多くの供給流量が要求される大流量要求時に移行すると、第2電磁弁38は常時開弁したまま、第1電磁弁37はデューティ通電制御されて開弁状態になる。大流量要求時には、全開状態の第2内部通路43bを流通する小流量に加えて、デューティ通電制御によって第1内部通路43aを流通する大流量の蒸発燃料が流出ポート32aから吸気管21内に供給される。小流量要求時では、大流量要求時に向けて第2弁体42bの開弁率が増加して供給流量が増加していくように制御する。大流量要求時では、第2弁体42bが常時開状態である場合の供給流量から、第1弁体42aの開弁率が増加して供給流量が増加していくように制御する。このような制御により、大流量要求時の流量増加率は、小流量要求時の流量増加率よりも大きくなる。パージバルブ3は、エンジン2への供給流量がゼロである状態から供給し始めるときには、小流量性能を提供する第2電磁弁38の方が先に開弁状態になるように制御される。
【0058】
第1実施形態のパージバルブ3によって開示されるパージ制御弁装置がもたらす作用効果について説明する。パージ制御弁装置は、流入ポート31aと流出ポート32aとを連絡する内部通路の一部である、第1内部通路43aおよび第2内部通路43bを備える。パージ制御弁装置は、第1内部通路43aを開閉可能な第1弁体42aを変位させる電磁力を発生する第1ソレノイド部と、第2内部通路43bを開閉可能な第2弁体42bを変位させる電磁力を発生する第2ソレノイド部とを備える。パージ制御弁装置は、第1ソレノイド部と第2ソレノイド部の両方とを樹脂モールドして内蔵するソレノイドハウジングと、シートバルブ部材33とを備える。シートバルブ部材33は、第1弁座332aと第2弁座332bとが一体に形成された樹脂製であり、ソレノイドハウジングに溶着または接着により結合されている。
【0059】
この装置によれば、2個の電磁弁を樹脂モールドするソレノイドハウジングと、2個の弁座が一体に形成されたシートバルブ部材33とを備える。さらにシートバルブ部材33とソレノイドハウジングは、溶着または接着により結合されているため、部品点数の軽減が図れるパージ制御弁装置を提供できる。さらに第1弁座を有する部材と第2弁体を有する部材との両方を備える装置に比べて、パージ制御弁装置は溶着または接着による結合部の面積を小さくできる。
【0060】
シートバルブ部材33は、第1筒状部331aと、第2筒状部331bと、厚さ方向に突出する第1筒状部331aと第2筒状部331bに一体に形成された板状部333とを備える。シートバルブ部材33とソレノイドハウジングは、溶着または接着により結合された周囲結合部317b1を有する。周囲結合部317b1は、第1筒状部331aおよび第2筒状部331bの周囲を取り囲むように設けられている。
【0061】
この構成によれば、周囲結合部317b1は第1弁座332aと第2弁座332bの周囲を環状に囲むため、閉弁によって板状部333を放射状に伝搬する振動が抑えられる。この周囲結合部317b1によれば、第1弁座332aや第2弁座332bを中心として拡大する放射音を抑制することができる。
【0062】
シートバルブ部材33とソレノイドハウジングは、溶着または接着により結合された仕切り結合部317b2をさらに有する。仕切り結合部317b2は、周囲結合部317b1から内方に向けて第1筒状部331aと第2筒状部331bとの間を横断するように延びている。この構成によれば、第1弁座332a側から伝搬する放射振動が第2弁座332b側へ拡大することを仕切り結合部317b2によって抑制することができる。さらに、第2弁座332b側から伝搬する放射振動が第1弁座332a側へ拡大することを仕切り結合部317b2によって抑制することができる。
【0063】
仕切り結合部317b2は、第1弁座および第2弁座よりも、第1筒状部の下流端部331a1寄りに、および第2筒状部の下流端部331b1寄りに位置している。この構成によれば、閉弁時に振動の起点となる第1弁座や第2弁座と、仕切り結合部317b2とが、筒状部の延びる方向について離れることになる。これにより第1弁座や第2弁座から仕切り結合部317b2までの振動の伝搬距離を長くできるので、仕切り結合部317b2に伝搬するまでの振動を抑えることに貢献できる。
【0064】
仕切り結合部317b2は、ソレノイドハウジングから板状部333に向けて突出する仕切り壁318と板状部333との接触部分に形成されている。この構成によれば、仕切り結合部317b2に伝搬した放射振動や放射音を仕切り壁318の突出高さ寸法によって吸収する効果を奏する。
【0065】
ソレノイドハウジングは、仕切り結合部317b2に対して横断するように交差する突部である交差接触部319をさらに有する。交差接触部319は、シートバルブ部材33に対して、溶着または接着されていない非結合状態で接触している。この構成によれば、仕切り結合部317b2に伝搬した振動等を交差接触部319によって吸収することができる。これにより、仕切り結合部317b2を介して振動等がさらに周囲に拡大することを抑制するパージバルブ3を提供できる。
【0066】
第1ソレノイド部と第2ソレノイド部は、ソレノイドハウジングの一方側に偏って並んで配置されて、樹脂モールドされている。この構成によれば、放射状の振動は、シートバルブ部材33の外周縁における一方側に早く到達しやすく他方側に遅く到達するようになる。周囲結合部317b1は第1弁座332aと第2弁座332bの周囲を環状に囲むため、周方向に不均衡な放射状振動を安定的に低減することに寄与する。
【0067】
第1内部通路43aは、第2内部通路43bよりも通路横断面積が大きく形成された通路である。この構成によれば、第1電磁弁37は第2電磁弁38よりも大流量の流体を制御可能とする電磁弁である。シートバルブ部材33は、大流量を制御する電磁弁が着座する第1弁座と小流量を制御する電磁弁が着座する第2弁座とを一体に有する部材である。シートバルブ部材33は、放射状に伝搬する放射振動や放射音が相違する2個の弁座を一体に備える。このため、シートバルブ部材33を伝搬する振動や音が不均衡なパージバルブ3において、効果的に放射音等を抑制可能なパージバルブ3を提供できる。また、シートバルブ部材33を伝搬する大きい方の放射振動や放射音を抑えることに寄与するパージバルブ3を提供できる。
【0068】
(他の実施形態)
この明細書の開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品、要素の組み合わせに限定されず、種々変形して実施することが可能である。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品、要素が省略されたものを包含する。開示は、一つの実施形態と他の実施形態との間における部品、要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示される技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0069】
明細書に開示の目的を達成可能なパージ制御弁装置は、前述の実施形態において図を参照しながら説明した構成だけに限定されるものではない。前述の実施形態におけるパージバルブは、流入ポート31aが流出ポート32aよりも下方に位置するように図示されている。流入ポート31aと流出ポート32aの位置関係は、この形態に限定されるものではない。流入ポート31aは流出ポート32aよりも上方に位置する構成でよいし、流入ポート31aと流出ポート32aは横方向に並ぶような構成でもよい。また、流入ポート31aと、第1内部通路43aおよび第2内部通路43bとの位置関係も、上下方向に並ぶ形態でもよい。
【符号の説明】
【0070】
2…エンジン、 13…キャニスタ
31…流入側ハウジング(ソレノイドハウジング)、 31a…流入ポート
32a…流出ポート、 33…シートバルブ部材
37…第1電磁弁(第1ソレノイド部)、 38…第2電磁弁(第2ソレノイド部)
42a…第1弁体、 42b…第2弁体、 43a…第1内部通路
43b…第2内部通路、 332a…第1弁座、 332b…第2弁座
図1
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