(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】ベルトユニットおよび画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20230704BHJP
F16C 13/00 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
G03G15/20 510
F16C13/00 B
(21)【出願番号】P 2019217094
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古澤 尉訓
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-117357(JP,A)
【文献】特開2014-149361(JP,A)
【文献】特開2019-066558(JP,A)
【文献】特開2019-082617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
F16C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端ベルトと、
前記無端ベルトの長手方向に延びる第1軸を中心に配置され、前記無端ベルトとの間に、媒体が挟まれるニップを形成するローラ部材と、
前記無端ベルトを、前記ローラ部材の回転に追従可能に支持するガイド部材であって、前記無端ベルトの前記長手方向の少なくとも一方の端部の内周面に接触するベルト支持部と、前記無端ベルトの前記長手方向の移動を規制するベルト規制部と、を有するガイド部材と、
を備えるベルトユニットであって、
前記ガイド部材は、前記無端ベルトに前記長手方向の寄りが生じた場合の前記ベルト規制部への接触により、前記長手方向に変位可能に構成され、
前記変位は、前記媒体の搬送方向における下流側の変位が、上流側の変位よりも大き
く、
前記ガイド部材は、前記長手方向および前記搬送方向の双方に対して垂直な第2軸を中心として変位可能であり、
前記ガイド部材は、前記無端ベルトの接触に対し、前記搬送方向の少なくとも下流側で、前記ニップから離れる方向に変位可能であり、
前記第2軸は、前記無端ベルトよりも前記搬送方向の上流側にある、
ベルトユニット。
【請求項2】
前記ガイド部材は、
前記長手方向の一端で前記無端ベルトを支持する第1ガイド部材と、
前記一端とは反対側の他側で前記無端ベルトを支持する第2ガイド部材と、
を備え、
前記第2ガイド部材は、前記ベルト支持部が、前記ベルト規制部に対して前記搬送方向に移動可能に構成された、
請求項
1に記載のベルトユニット。
【請求項3】
前記第2ガイド部材は、前記ベルト支持部を、前記ベルト規制部に対して前記搬送方向の上流側へ付勢する部材を備え、前記ベルト支持部が、前記搬送方向の下流側へ移動可能である、
請求項
2に記載のベルトユニット。
【請求項4】
前記媒体が、現像剤により文字または画像が表される記録材であり、
前記無端ベルトを介して前記現像剤を前記媒体に加熱定着可能に構成された熱源をさらに備える、
請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載のベルトユニット。
【請求項5】
前記媒体に、前記画像に応じて前記現像剤を配置可能に構成された現像装置と、
請求項
4に記載のベルトユニットと、
前記媒体を、前記現像装置を通過させた後、前記ベルトユニットに供給するとともに、前記ベルトユニットを前記搬送方向に通過させる搬送装置と、
を備える、画像形成装置。
【請求項6】
無端ベルトと、
前記無端ベルトの長手方向に延びる第1軸を中心に配置され、前記無端ベルトとの間に、媒体が挟まれるニップを形成するローラ部材と、
前記無端ベルトを、前記長手方向の少なくとも一方の端部で前記ローラ部材の回転に追従可能に支持するガイド部材であって、ベース部材と、前記端部の内周面に接触するベルト支持部と、前記無端ベルトの前記長手方向の移動を規制するベルト規制部と、を有するガイド部材と、
を備えるベルトユニットであって、
前記ベルト規制部は、前記ベース部材に対し、前記長手方向に変位可能に支持され、
前記ベルト支持部は、前記ベルト規制部に対して前記媒体の搬送方向に移動可能に支持される一方、前記長手方向には前記ベルト規制部とともに移動可能であり、
前記ガイド部材は、さらに、前記ベルト支持部を、前記搬送方向に付勢する部材と、前記ベルト支持部が前記長手方向に移動した場合に、前記ベース部材と干渉して、前記ベルト支持部の移動に、前記付勢する方向とは逆向きの成分を付加する動作変換部と、を備える、
ベルトユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ベルトユニットおよびこれを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、現像剤の加熱定着用のベルトをその長手方向の両端で支持する部材のベルト規制面に、記録材の搬送方向に対する傾斜を持たせ、ベルトに長手方向の寄りが生じた場合に、記録材の搬送方向に対する上流側では、ベルトとベルト規制面とを接触させる一方、下流側では、ベルトとベルト規制面との間に隙間が形成されるようにした画像形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術は、記録材の搬送方向に対する下流側でのベルトの損傷防止を図るものであり、ベルトとベルト規制面とが接触する上流側でベルトの端部にかかる負荷を考慮したものではない。
【0005】
本開示は、ベルト規制面との接触によりベルトの端部にかかる負荷の軽減を図ることができ、もって、製品の長寿命化に資するベルトユニットおよび画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態では、ベルトユニットが提供される。本形態に係るベルトユニットは、無端ベルトと、無端ベルトの長手方向に延びる第1軸を中心に配置され、無端ベルトとの間に、媒体が挟まれるニップを形成するローラ部材と、無端ベルトを、ローラ部材の回転に追従可能に支持するガイド部材であって、無端ベルトの長手方向の少なくとも一方の端部の内周面に接触するベルト支持部と、無端ベルトの長手方向の移動を規制するベルト規制部と、を有するガイド部材と、を備える。本形態では、ガイド部材は、無端ベルトに長手方向の寄りが生じた場合のベルト規制部への接触により、長手方向に変位可能に構成され、この変位は、媒体の搬送方向の下流側における下流側の変位が、上流側の変位よりも大きく形成される。
【0007】
本開示の他の形態では、上記形態に係るベルトユニットを備える画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示のベルトユニットおよび画像形成装置によれば、無端ベルトの端部とベルト規制部との接触面積の拡大を通じて、ベルトの端部にかかる負荷の軽減を図ることができ、もって、製品の長寿命化に資する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の第1実施形態に係る画像形成装置の内部構成を概略的に示す模式図である。
【
図2】
図2は、同上画像形成装置に備わる定着ユニットの全体的な外観を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、同上定着ユニットを、無端ベルトを取り外した状態で示す斜視図である。
【
図4】
図4は、同上定着ユニットに備わるヒータ保持部材の外観を分解した状態で示す斜視図である。
【
図5】
図5は、同上定着ユニットに備わるガイド部材の全体的な外観を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、同上ガイド部材の動作説明図であり、無端ベルトに寄りが生じる前の状態を示す。
【
図7】
図7は、同上ガイド部材の動作説明図であり、無端ベルトに寄りが生じた後の状態を示す。
【
図8】
図8は、
図6中、点線の枠Faにより示す部分の拡大図である。
【
図9】
図9は、
図7中、点線の枠Faにより示す部分の拡大図である。
【
図10】
図10は、本開示の第2実施形態に係る画像形成装置の、
図2に示すA-A線による断面図である。
【
図11】
図11は、画像形成装置に備わる定着ユニットを、無端ベルトを取り外した状態で示す斜視図である。
【
図12】
図12は、同上定着ユニットに備わるガイド部材の全体的な外観を示す斜視図である。
【
図13】
図13は、同上定着ユニットの、
図6中、点線の枠Fbにより示す部分の拡大図である。
【
図14】
図14は、同上定着ユニットの、
図7中、点線の枠Fbにより示す部分の拡大図である。
【
図15】
図15は、本開示の第2実施形態に係る画像形成装置の、
図2に示すA-A線による断面図であり、無端ベルトに寄りが生じた場合の、同上定着ユニットに備わるガイド部材の動作を示す。
【
図16】
図16は、同上実施形態により得られる効果を説明する模式図である。
【
図17】
図17は、同上実施形態により得られる効果を説明する模式図である。
【
図18】
図18は、同上実施形態により得られる効果を説明する模式図である。
【
図19】
図19は、本開示の第3実施形態に係る画像形成装置に備わる定着ユニットの、媒体の搬送方向に対して垂直に上方からみた状態を示す破断平面図である。
【
図21】
図21は、
図19中、点線の枠Fcにより示す部分の拡大図であり、無端ベルトに寄りが生じる前の状態を示す。
【
図22】
図22は、
図19中、点線の枠Fcにより示す部分の拡大図であり、無端ベルトに寄りが生じ、無端ベルトがガイド部材に突き当たった瞬間の状態を示す。
【
図23】
図23は、
図19中、点線の枠Fcにより示す部分の拡大図であり、無端ベルトが
図22の状態からさらに移動し、ガイド部材のベルト規制部に変位が生じた後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
(画像形成装置の全体構成)
図1は、本開示の第1実施形態に係る画像形成装置である、印刷装置1000の内部構成を概略的に示す模式図である。本実施形態に係る印刷装置1000は、特定の種類に限定されるものではなく、複写機、プリンタ、複合機(MFP)またはファクシミリ等、後に述べる定着ユニットを適用可能な、いかなる種類のものであってもよい。本実施形態では、印刷装置1000によりカラー画像を形成する場合を例に説明するが、印刷装置1000は、現像装置1010の構成に変更を加えることにより、単色の画像を形成することも可能である。
【0012】
印刷媒体1001は、印刷装置1000により画像が形成される媒体(例えば、紙であり、以下「記録紙」という)であり、給紙貯蔵部1002に保持される。
【0013】
記録紙1002は、使用者からの印刷指示等に基づき、給紙貯蔵部1001から1枚ずつ分離され、レジストローラ1003を介して転写装置1020へ搬送される。レジストローラ1003は、記録紙1002を、次に述べる現像装置1010による現像のタイミングに合わせて送り出す。特に限定を意図するものではないが、記録紙1002の分離から転写装置1020への搬送までに係る本実施形態の構成は、公知のものと同様である。
【0014】
転写装置1020は、現像装置1010と対向して配置され、記録紙1002に対して定められる転写領域において、現像装置1010により形成される現像剤像を、記録紙1002に転写する。
【0015】
本実施形態では、現像装置1010は、原色の種類に応じた単色の現像装置1010C、1010M、1010Yおよび1010BKからなる。現像装置1010Cは、第1の色(例えば、シアン)の現像を行い、現像装置1010Mは、第2の色(例えば、マゼンタ)の現像を行い、現像装置1010Yは、第3の色(例えば、黄)の現像を行い、現像装置1010BKは、第4の色(例えば、黒)の現像を行う。第1から第4の各色の現像装置1010C、1010M、1010Y、1010BKは、いずれも同様の構成であるから、以下の説明では、シアンの現像装置1010C(便宜上、符号は、1010とする)に代表させて説明する。
【0016】
現像装置1010は、静電潜像担持体である感光ドラム1011を備えるとともに、感光ドラム1011の回転方向(
図1中、矢印により示す)に、帯電装置1012、露光装置1013、現像剤供給装置1014およびクリーニング装置1015を、この順で備える。換言すれば、本実施形態に係る現像装置1010は、感光ドラム1011が、帯電装置1012と現像剤供給装置1014との間で露光光の照射を受ける、公知の構成である。静電潜像担持体は、ドラム状に限らず、ベルト状のものであってもよい。
【0017】
転写装置1020は、一対の案内ローラ1022、1023を備えるとともに、これら一対の案内ローラ1022、1023の間に掛け渡された、無端の転写媒体1021を備える。現像装置1010の感光ドラム1011と転写装置1020の転写媒体1021とが向き合う範囲が、転写領域となる。
【0018】
記録紙が供給されると、現像装置1010は、帯電装置1012により、感光ドラム1011を帯電させる。感光ドラム1011は、帯電後、露光装置1013からの露光光が照射され、画像情報に応じた静電潜像が形成される。そして、感光ドラム1011に形成された静電潜像が、現像装置1014により現像され、現像剤像が形成される。感光ドラム1011上の現像剤像は、転写媒体1021上を搬送される記録紙1002に転写される。転写後、感光ドラム1011上に残る現像剤がクリーニング装置1015により除去され、感光ドラム1011は、その後、次の現像および転写に用いられる。
【0019】
以上の工程がシアン以外の色、つまり、マゼンタ、黄および黒のそれぞれについて行われ、目的とする画像の形成に必要な全ての現像剤の転写が完了した後、記録紙1002は、転写装置1020を出て、定着装置1030へ搬送される。
【0020】
定着装置1030は、記録紙1002上に転写された現像剤像の定着を行う。定着装置1030の構成および動作は、後に
図2から
図5を参照して、詳細に説明する。
【0021】
定着後の記録紙1002は、その後、送りローラ1004を介してさらに搬送され、排出口1005から排紙積載部1006に排出される。排気積載部1005は、目的とする画像が形成された記録紙1002を一時積載させる箇所である。
【0022】
(定着装置の構成)
図2は、本実施形態に係る印刷装置1000に備わる定着装置1030の全体的な外観を示す斜視図である。
図3は、定着装置1030を、無端ベルト1031を取り外した状態で示す斜視図である。さらに、
図4は、定着装置1030に備わるヒータ保持部材1035の外観を分解した状態で示す斜視図であり、
図5は、定着装置1030に備わるガイド部材1031の全体的な外観を示す斜視図である。
【0023】
図2および
図3を参照して、定着装置1000の全体的な構成について説明した後、
図4および
図5を参照して、各部(ガイド部材1033、ヒータ保持部材1035)の構成について説明する。
【0024】
図2に示すように、定着装置1030は、基本的には、無端ベルト1031と、加圧ローラ1032と、ガイド部材1033と、ヒータ1034(
図2において、図示せず)と、ヒータ保持部材1035と、を備える。ここで、加圧ローラ1032は、本実施形態に係る「ローラ部材」または「加圧部材」を構成するものであり、図示しない駆動源の駆動力がギア等の動力伝達媒体Gを介して伝達され、無端ベルト1031を従動回転させる。
【0025】
無端ベルト1031は、無端状のベルト部材であり、長手方向(
図2中、Y軸に平行な方向)が定められるとともに、長手方向に対して垂直な方向に、記録紙1002の搬送方向(
図2中、-X方向)が定められる。換言すれば、本実施形態において、記録紙1002は、X軸に沿って正から負の向きに搬送される。本実施形態に係る無端ベルト1031は、その内層として、基材となる金属層または樹脂層を備え、この内層の外側に、外層として、シリコンゴムからなる弾性層を、さらに、その外側の表層として、PFAチューブを備える。
【0026】
加圧ローラ1032は、無端ベルト1031のベルト表面に接触した状態で、無端ベルト1031の長手方向の軸と平行な軸を中心に配置され、無端ベルト1031との間に、換言すれば、無端ベルト1031との接触部に、記録紙1002が挟まれるニップを形成する。
【0027】
ガイド部材1033は、無端ベルト1031を、加圧ローラ1032の回転に対して追従可能に支持する。本実施形態において、ガイド部材1033は、無端ベルト1031の長手方向の両端に、夫々設けられる。
【0028】
図3に示すように、ガイド部材1033は、概して、ベース部材1033aと、ベルト支持部1033bと、ベルト規制部1033cと、を備える。ベルト支持部1033bは、無端ベルト1031の各端において、その端部の内周面に接触して、無端ベルト1031を支持するとともに、無端ベルト1031の形状を保持する。ベルト規制部1033cは、ベルト支持部1033bと結合し、ベルト支持部1033bの外周縁から径方向に張り出すことで、フランジ状部分を形成し、このフランジ状部分の干渉により、無端ベルト1031の長手方向の移動を規制する。ベース部材1033aは、定着装置1030または印刷装置1000の筐体に対する位置が固定されており、ベース部材1033aが、ベルト規制部1033cと連結することで、ベルト支持部1033bおよびベルト規制部1033cの、定着装置1030における位置が定められる。本実施形態において、ベース部材1033aとベルト規制部1033cとの連結は、ヒンジ接続による。
【0029】
ヒータ1034は、両端のガイド部材1033、1033の間、つまり、無端ベルト1031と加圧ローラ1032とが向かい合う長手方向の範囲において、無端ベルト1031の内部に設けられる。ヒータ1034は、抵抗発熱体を備え、この抵抗発熱体に電流が流れることで、熱を発生し、無端ベルト1031を内側から加熱する。ここで、ヒータ1034は、記録紙1002上の現像剤を溶融定着させるのに充分な熱量をもって無端ベルト1031を加熱する。ヒータ1034が生じた熱量は、無端ベルト1031を介してニップにある記録紙1002に伝達され、現像剤に伝達される。そして、ヒータ1034は、次に述べるヒータ保持部材1035を介してバネ1036の付勢を受け、無端ベルト1031を介して記録紙1002に押し付けられる。
【0030】
ヒータ保持部材1035は、無端ベルト1031をその長手方向に貫通し、無端ベルト1031の内部に存在する部分、つまり、両端のガイド部材1033、1033の間に、ヒータ1034を保持する。その一方で、外部に存在する部分に、バネ1036の着座面が形成され、バネ1036の付勢力を受ける。
【0031】
図4を参照すると、ヒータ保持部材1035は、底部部材1035aと上部部材1035bと、に分割して形成され、底部部材1035aの底面に、ヒータ1034を保持する。上部部材1035bが、底部部材1035aと結合することで、一体のヒータ保持部材1035が形成され、その両端に、バネ1036の着座面が形成される。両端の着座面にかかるバネ1036の付勢力は、上部部材1035bから底部部材1035aに伝達され、さらに、ヒータ1034に伝達される。
【0032】
(ガイド部材の構成)
図5を参照すると、本実施形態において、ガイド部材1033のベース部材1033aとベルト規制部1033cとは、ヒンジ接続により連結される。
【0033】
具体的には、ベース部材1033aに一対の突出部1037b、1037bが形成されるとともに、ベルト規制部1033cに、これら一対の突出部の間に収まる寸法のピン受容部1037aが形成され、ピン受容部1037aと突出部1037bとのそれぞれに形成された貫通孔にピン1037cが挿入されることで、ベース部材1033aとベルト規制部1033cとが連結される。これにより、ガイド部材1033(具体的には、ベルト規制部1033c)は、無端ベルト1031の長手方向において、ニップから離れる方向に、つまり、外向きに変位可能な状態にある。
【0034】
さらに、本実施形態では、ベース部材1033aとベルト規制部1033cとの間にバネ1037d(例えば、トーションバネ)が介装され、このバネ1037dの弾性力をベルト規制部1033cが受けることで、ベルト規制部1033cは、ベース部材1033aに近付くように付勢される。
【0035】
ここで、本実施形態において、ピン1037cの挿入孔を有するピン受容部1037aは、ベルト規制部1033cを基準として、無端ベルト1031とは反対側にあり、記録紙1002の搬送方向Dにおいて、ベルト支持部1033bよりも上流側にある。
【0036】
(定着装置の動作説明)
以上の構成を有する定着装置1030の動作について、
図6から
図9を参照して以下に説明する。
【0037】
印刷装置1000の運転中、ガイド部材1033により両端を支持されて回転する無端ベルト1031には、加圧ローラ1032に対するアライメントにずれが生じたり、ニップにかかる荷重に左右でばらつきが生じたりすることの影響により、長手方向に寄りが発生する場合がある。この寄りは、無端ベルト1031がガイド部材1033のベルト規制部1033cに突き当たることで、規制される。先に掲げた特許文献1の技術は、ベルト規制面に傾斜を付けることで、記録材の搬送方向において、その下流側で無端ベルトとベルト規制面との間に隙間を設けるものである。しかし、無端ベルトとベルト規制面との接触面積が小さいことから、ベルトがベルト規制面との干渉から受ける応力が本来的に集中する傾向にあるという懸念がある。そして、無端ベルトがベルト規制面に接触した後、無端ベルトにその長手方向に対する傾きが生じると、この傾きが大きくなるのに従って無端ベルトとベルト規制面との接触が点接触に近付き、無端ベルトに集中する応力が増大するという懸念もある。よって、無端ベルトに寄りが生じた場合の対策として、無端ベルトの端部にかかる負荷を軽減し、もって、製品の長寿命化に資することが望まれる。
【0038】
図6および
図7は、本実施形態に係るガイド部材1033の動作説明図であり、無端ベルト1031に寄りが生じる前の状態と後の状態とを、いずれも定着装置1030を上方からみた平面視により示す。
図6は、寄りが生じる前の状態を示し、
図7は、寄りが生じた後の状態を示す。さらに、
図8は、
図6中、点線の枠Faにより示す部分の拡大図であり、
図9は、
図7中、点線の枠Faにより示す部分の拡大図である。
【0039】
記録紙1002の搬送方向Dに対して左側、つまり、
図6に示すX-Y座標において、Y軸に沿って負の方向に寄りが生じた場合と、搬送方向Dに対して右側、つまり、Y軸に沿って正の方向に寄りが生じた場合とでは、無端ベルト1031の姿勢の変化に対称性があるため、以下の説明では、左側に寄りが生じた場合に代表させて説明する。
【0040】
無端ベルト1031に寄りが生じると、無端ベルト1031は、ガイド部材1033のベルト規制部1033cに突き当たり、ベルト規制部1033cに対し、Y軸に沿って負の方向に力をかける。これに対し、ベルト規制部1033cは、バネ1037dにより正の方向に付勢されていることから、寄りにより無端ベルト1031がベルト規制部1033cに及ぼす力がバネ1037dの付勢力を上回ることで、換言すれば、ベルト規制部1033cに対し、
図6で寄りによりピン1037cを中心とする反時計回りに働くモーメントが、バネ1037dの付勢によりピン1037cを中心とする時計回りに働くモーメントよりを上回ることで、
図7に示すように、ベルト規制部1033cが反時計回りに回転する。これに伴い、寄りがないうちは、
図8に示すように、ベース部材1033aと接触していたベルト規制部1033cが、寄りにより移動させられて、ベース部材1033aから離れ(
図9)、ベース部材1033aとベルト規制部1033cとの間に、隙間gが形成される。そして、寄りがさらに進み、無端ベルト1031が移動すると、無端ベルト1031に、ベルト規制部1033cとの接触点を中心とする、反時計回りの回転が生じ(
図7は、この回転の方向を矢印により示す)、無端ベルト1031とベルト規制部1033cとの接触面積が増大し、両者の接触が面接触となるか、少なくとも面接触に近付く。
【0041】
(作用効果の説明)
本実施形態により得られる主な効果を、以下に纏める。
【0042】
第1に、ガイド部材1033を、無端ベルト1031にその長手方向の寄りが生じた場合のベルト規制部1033cへの接触により、長手方向に変位可能に構成するとともに、搬送方向における下流側の変位を、上流側の変位よりも大きくした。これにより、ベルト規制部1033cの変位に追従した無端ベルト1031の姿勢の変化(回転)を促し、無端ベルト1031の端部とベルト規制部1033cとの接触面積の拡大を通じて、無端ベルト1031の端部にかかる負荷、具体的には、ベルト規制部1033cによる拘束を受ける部分における応力の集中の軽減を図ることが可能となる。よって、無端ベルト1031に疲労による亀裂等の損傷が生じるのを抑制することができる。
【0043】
第2に、ガイド部材1033(ベルト規制部1033c)を、ピン1037cを中心として、換言すれば、長手方向および搬送方向の双方に対して垂直な軸を中心として変位可能としたことで、無端ベルト1031に寄りが生じた場合の、無端ベルト031の姿勢の変化を適切な方向に生じさせ、無端ベルト1031の端部とベルト規制部1033cとのより広い接触面積を確保することが可能となる。よって、無端ベルト1031における損傷の発生をより良好に抑制することができる。
【0044】
第3に、ガイド部材1033(ベルト規制部1033c)を、無端ベルト1031の接触に対し、搬送方向の少なくとも下流側で、ニップから離れる方向に(つまり、外向きに)変位可能としたことで、無端ベルト1031に寄りが生じた場合の、無端ベルト1031の姿勢の変化を適切な方向に生じさせることが可能となる。よって、無端ベルト1031における損傷の発生をより良好に抑制することができる。
【0045】
第4に、ベルト規制部1033cの回転軸を形成するピン1037cを、無端ベルト1031よりも搬送方向の上流側としたことで、寄りによる無端ベルト1031の接触に対し、ガイド部材1033(ベルト規制部1033c)を無端ベルト1031の存在域全体に亘って外向きに変位させることが可能となる。よって、無端ベルト1031の姿勢の変化をより円滑に生じさせ、接触面積の確保を促すことができる。
【0046】
(第2実施形態の説明)
第1実施形態では、ガイド部材1033において、ベルト支持部1033bとベルト規制部1033cとを一体に形成し、ベルト支持部1033bをベルト規制部1033cに対して位置的に固定した。これに対し、本実施形態では、ベルト支持部1033bを、ベルト規制部1033cとは別体とし、ベルト規制部1033cに対して移動可能に取り付ける。
【0047】
図10は、本実施形態に係る印刷装置1000の、
図2に示すA-A線による断面図であり、
図11は、印刷装置1000に備わる定着装置1030を、無端ベルト1031を取り外した状態で示す斜視図である。
図12は、定着装置1030に備わるガイド部材1033の全体的な外観を示すとともに、構成部品(ベルト支持部1033b、ベルト規制部1033c)の外観を示す斜視図である。
図11および
図12を適宜に参照しつつ、
図10により、定着装置1030の構成について説明する。
図12において、搬送方向Dに対して左側に備わる無端ガイド1033のベルト規制部を符号1033c1により、右側に備わる無端ガイド1033のベルト規制部を符号1033c2により示す。左右のガイド部材1033、1033は、対称である以外は、同様の構成である。以下の説明では、右側のガイド部材1033およびこれに備わるベルト規制部1033c2に代表させて説明する。
【0048】
本実施形態では、ベルト支持部1033bを、ベルト規制部1033cに対し、記録紙1002の搬送方向Dに対して前後に可動に取り付ける。これにより、無端ベルト1031がガイド部材1033(ベルト規制部1033c1)との干渉により回転し、無端ベルト1031の端部(つまり、寄りが生じた側とは反対側の端部)がベルト支持部1033bと接触した場合に、ベルト支持部1033bを、無端ベルト1031の回転に追従して変位可能とする。
【0049】
図12(特に同図(C))に示すように、ガイド部材1033は、ベルト規制部1033cに、無端ベルト1031との接触面から内側に向けて、換言すれば、ニップに近付く方向に突出するバネ受け部1033dを有する。そして、ベルト支持部1031がこのバネ受け部1033dに前後に移動可能に嵌合させられるとともに(同図(A))、ベルト支持部1033bとバネ受け部1033dとの間に、バネ1033eが介装され(
図10)、このバネ1033eにより、ベルト支持部1033bが搬送方向Dの上流側に向けて付勢されている。
【0050】
図13は、定着装置1030、
図6中、点線の枠Fbにより示す部分の拡大図であり、
図14は、定着装置1030の、
図7中、点線の枠Fbにより示す部分の拡大図である。さらに、
図15は、本実施形態に係る印刷装置1000の、
図2に示すA-A線による断面図であり、無端ベルト1031に寄りが生じた場合の、定着装置1030に備わるガイド部材1033の動作を示す。
図15を適宜に参照しつつ、
図13および
図14により、本実施形態により得られる効果について説明する。
【0051】
既に述べたように、無端ベルト1031に寄りが生じ、その端部がガイド部材1033のベルト規制部1033cに突き当たると、無端ベルト1031に、ベルト規制部1033cとの接触点を中心とした回転、本実施形態では、
図7に矢印で示すような反時計回りの回転が生じる。これにより、寄りが生じた側とは反対側では、無端ベルト1031の端部がガイド部材1033のベルト支持部1033bと突き当たることとなり(
図14に示す枠P)、無端ベルト1031の回転が阻害され、寄りが生じた側での無端ベルト1031とベルト規制部1033cとの回転も制限される。
【0052】
本実施形態では、ガイド部材1033において、ベルト支持部1033bを、ベルト規制部1033cに対して搬送方向Dに移動可能な構成としたことで、無端ベルト1031の姿勢に寄りに伴う変化が生じ、無端ベルト1031の他端がガイド部材1033のベルト支持部1033bに接触した場合に、このベルト支持部1033bを無端ベルト1031の動き、つまり、回転に追従して移動させることが可能である。よって、無端ベルト1031の更なる姿勢の変化を可能として、寄りが生じた側で無端ベルト1031とベルト規制部1033cとの接触面積を充分に確保するとともに、その反対側では、無端ベルト1031とガイド部材1033(ベルト支持部1033b)との干渉を緩和し、無端ベルト1031に損傷が生じるのを抑制することができる。
【0053】
さらに、本実施形態では、ベルト支持部1033bを、バネにより搬送方向Dの上流側へ付勢するとともに、この付勢力に抗して下流側へ移動可能としたことで、無端ベルト1031の姿勢の変化に対し、寄りが生じた側とは反対側のベルト支持部1033bを適切な方向に移動可能とし、無端ベルト1031とガイド部材1033(ベルト支持部1033b)との干渉を、より良好に緩和することができる。
【0054】
本実施形態により得られる効果について、
図16から
図18を参照してさらに説明する。
図16は、無端ベルト1031に、搬送方向Dに対して左向きの寄りが生じた場合の様子を、搬送方向Dに対して垂直な上方からみた状態で模式的に示しており、
図17は、
図16中、枠Fcの部分を拡大して示す。
図18は、
図16に示す定着装置1030を、搬送方向Dに対して右側からみた状態で模式的に示す。
【0055】
無端ベルト1030に、その端部とベルト規制部1033cとの接触点を中心とする反時計回りの回転が生じると、無端ベルト1031の中心軸と、加圧ローラ1032の中心軸と、の間に、無端ベルト1031の回転に応じた角度のずれが生じる。ここで、本実施形態に係る定着装置1030は、無端ベルト1031が、加圧ローラ1032との摩擦により回転する構造であることから、無端ベルト1031上の一点が回転中に描く奇跡は、
図17のようになる。
【0056】
ここで、
図16および
図18に示すように、無端ベルト1031のうち、加圧ローラ1032と接触している領域をAとし、接触していない領域をBとする。無端ベルト1031上の一点Pが加圧ローラ1032の回転中に進む方向は、領域Aでは、加圧ローラ1032が回転する方向と一致し、領域Bでは、無端ベルト1031の中心軸に垂直な方向となる。
【0057】
無端ベルト1031が一回転する間の点Pの軌跡について、
図17および
図18に示すように、加圧ローラ1032との接触前の位置をP1とし、これを始点とする各点を夫々P2、P3、P4およびP5として、以下に説明する。
【0058】
無端ベルト1031と加圧ローラ1032とが接触するニップまでの、位置P1から位置P2までの区間では、点Pが進む方向は、無端ベルト1031の中心軸に対して垂直な方向であるため、点Pの軌跡は、加圧ローラ1032の中心軸に対し、角度のずれと同じ方向、換言すれば、位置P1を基準として、反時計回りに傾斜する。無端ベルト1031と加圧ローラ1032とが接触する位置P2から位置P3までの区間では、点Pが進む方向は、加圧ローラ1032が回転する方向と一致するため、点Pの軌跡は、加圧ローラ1032の中心軸に対して垂直な方向となる。さらに、ニップを通過した後の位置P3から位置P5までの区間では、点Pの軌跡は、位置P1から位置P2までと同様に、加圧ローラ1032の中心軸に対し、角度のずれと同じ方向、つまり、反時計回りに傾斜する。ただし、位置P4から位置P5では、位置P4までとは点Pの進む方向が逆である。ここで、一回転における始点P1と終点P5とを比較すると、終点P5は、移動が加圧ローラ1032による拘束を受ける区間P2-P3の介在により、始点P1よりも寄りとは逆向きにずれることとなる。つまり、本実施形態によれば、無端ベルト1031上の点Pの移動に、寄りとは逆向きの成分が生じることとなるので、寄りにより無端ベルト1031が及ぼす力を緩和することが可能である。
【0059】
このように、本実施形態によれば、寄りによる力を緩和することが可能であるので、無端ベルト1031に生じる応力を低減させ、無端ベルト1031の破損の抑制および製品の更なる長寿命化を図ることができる。
【0060】
この効果は、本実施形態に限らず、先に述べた実施形態によっても得ることができる。しかし、本実施形態によれば、無端ベルト1031の姿勢の変化がより促されることから、これをより顕著に得ることが可能である。
【0061】
(第3実施形態の説明)
第2実施形態では、寄りが生じる側とは反対側に備わるガイド部材1033において、ベルト支持部1033bを搬送方向Dに移動可能とし、この反対側で無端ベルト1031の端部とベルト支持部1033bとの干渉を緩和し、無端ベルト1031の寄りに伴う変位(回転)を促すこととした。本実施形態では、無端ベルト1031の変位を促進させる作用を、寄りが生じた側に備わるガイド部材1033の動作により取得可能とする。
【0062】
図19は、本実施形態に係る印刷装置1000に備わる定着装置1030の、記録紙1002の搬送方向Dに対して垂直な上方からみた状態を示す破断平面図であり、
図20は、定着装置1030の、
図19に示すB-B線による断面図である。
図19および
図20を参照して、本実施形態に係る定着装置1030の構成について説明する。
【0063】
本実施形態では、ガイド部材1033において、ベルト規制部1033cが、ベース部材1033aに対し、無端ベルト1031の長手方向に変位可能に支持される一方、ベルト支持部1033bが、ベルト規制部1033cに対し、搬送方向Dにはベルト規制部1033cに対して移動可能に、長手方向にはベルト規制部1033cとともに移動するように取り付けられる。ベルト支持部1033bをベルト規制部1033cに取り付ける構造は、第2実施形態のものと同様に、バネ受け部1033fおよびバネ1033gによることが可能であるが、本実施形態では、バネ1033gによりベルト支持部1033bを付勢する方向が、搬送方向Dである点が相違する。
【0064】
さらに、本実施形態では、ベース部材1033aに、無端ベルト1031の長手方向に延びる延設部1033hが設けられ、これに対応するベルト支持部1033bの部分として、動作変換部1033iが設けられている。動作変換部1033iは、延設部1033hに当接し、ベルト支持部1033bの移動に、バネ1033gにより付勢する方向とは逆向きの成分を付加するものである。本実施形態では、延設部1033iとの接触面を、無端ベルト1031の長手方向、つまり、寄りが生じる方向に対して傾斜させることにより、この逆向きの成分を付加する。
【0065】
延設部1033hおよび動作変換部1033iは、搬送方向Dに対する左右のガイド部材1033、1033のいずれか一方または双方に設けることが可能であり、双方に設ける場合に、左右の動作変換部1033iにおいて、傾斜面が長手方向に対してなす角度は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。これに限定されるものではないが、本実施形態では、寄りが生じ易い傾向にある側、例えば、左側の動作変換部1033iの傾斜面を、寄りが生じ難い傾向にある側、例えば、右側の動作変換部1033iの傾斜面よりも急にする。
【0066】
図21から
図23は、いずれも
図19中、点線の枠Fcにより示す部分を拡大して示しており、
図21は、無端ベルト1031に寄りが生じる前の状態を、
図22は、無端ベルト1031に寄りが生じ、無端ベルト1031がガイド部材1033に突き当たった瞬間の状態を、
図23は、無端ベルト1031が
図22の状態からさらに移動し、ガイド部材1033のベルト規制部1033cに変位が生じた後の状態を示す。
【0067】
寄りが生じる前の
図21に示す状態では、ベルト規制部1033cにベース部材1033aに対する変位は、生じておらず、ベルト支持部1033bにおいて、バネ1033gの付勢力と延設部1033hから受ける力とが釣り合っている。無端ベルト1031に、例えば、搬送方向Dに対して左向きの寄りが生じ、無端ベルト1031の端部がベルト規制部1033cに突き当たると、
図22に示すように、無端ベルト1031がベルト規制部1033cに及ぼす力により、ベルト規制部1033cが、寄りと同じ方向に変位する。ここで、動作変換部1033iが、延設部1033hによる干渉を受けて傾斜面に応じた方向、具体的には、搬送方向Dに対して逆向きに変位する。つまり、無端ベルト1031は、ベルト規制部1033cに突き当たった後、ベルト規制部1033cとともに寄りが生じる方向へ変位しつつ、ベルト規制部1033c上を、搬送方向Dとは逆向きに移動する。これにより、ベース部材1031の、ベルト規制部1033cとの接触点を中心とする回転、換言すれば、反時計回りの回転が促されることから、無端ベルト1031とベルト規制部1033cとの接触面積の増大を促し、無端ベルト1031の端部にかかる負荷の更なる低減を図ることが可能となる。
【0068】
以上の説明では、定着装置1030において、無端ベルト1031と加圧ローラ1032とによりニップを形成し、無端ベルト1031を加圧ローラ1032の上方に配置したが、無端ベルト1031を加圧ローラ1032の下方に配置したり、加圧ローラに代えて、加圧用のベルトを用いたりすることが可能である。
【0069】
さらに、抵抗発熱性のヒータ1034を採用したが、これに限らず、ヒータ1034として、ハロゲンランプまたはIHヒータ等を用いることが可能である。
【0070】
以上、本開示の実施の形態について説明したが、これらの実施形態は、本開示が適用される例の一部を示したものに過ぎず、本開示の技術的範囲を、具体例として示した構成に限定する趣旨ではない。開示された実施形態に対し、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内で、様々な変更および修正を施すことが可能である。
【0071】
以上の記載から導き出すことができる主な概念を、以下に纏める。
(1)無端ベルトと、
前記無端ベルトの長手方向に延びる第1軸を中心に配置され、前記無端ベルトとの間に、媒体が挟まれるニップを形成するローラ部材と、
前記無端ベルトを、前記ローラ部材の回転に追従可能に支持するガイド部材であって、前記無端ベルトの前記長手方向の少なくとも一方の端部の内周面に接触するベルト支持部と、前記無端ベルトの前記長手方向の移動を規制するベルト規制部と、を有するガイド部材と、
を備えるベルトユニットであって、
前記ガイド部材は、前記無端ベルトに前記長手方向の寄りが生じた場合の前記ベルト規制部への接触により、前記長手方向に変位可能に構成され、
前記変位は、前記媒体の搬送方向における下流側の変位が、上流側の変位よりも大きい、ベルトユニットである。
(2)前記ガイド部材は、前記長手方向および前記搬送方向の双方に対して垂直な第2軸を中心として変位可能である、
上記(1)のベルトユニットである。
(3)前記ガイド部材は、前記無端ベルトの接触に対し、前記搬送方向の少なくとも下流側で、前記ニップから離れる方向に変位可能である、
上記(2)のベルトユニットである。
(4)前記第2軸は、前記無端ベルトよりも前記搬送方向の上流側にある、
上記(3)のベルトユニットである。
(5)前記ガイド部材は、
前記長手方向の一端で前記無端ベルトを支持する第1ガイド部材と、
前記一端とは反対側の他側で前記無端ベルトを支持する第2ガイド部材と、
を備え、
前記第2ガイド部材は、前記ベルト支持部が、前記ベルト規制部に対して前記搬送方向に移動可能に構成された、
上記(2)から(4)のいずれかのベルトユニットである。
(6)前記第2ガイド部材は、前記ベルト支持部を、前記ベルト規制部に対して前記搬送方向の上流側へ付勢する部材を備え、前記ベルト支持部が、前記搬送方向の下流側へ移動可能である、
上記(5)のベルトユニットである。
(7)前記媒体が、インクにより文字または画像が表される記録材であり、
前記無端ベルトを介して前記インクを前記媒体に加熱定着可能に構成された熱源をさらに備える、
上記(1)から(6)のいずれかのベルトユニットである。
(8)前記媒体に、前記画像に応じて前記インクを配置可能に構成された現像装置と、
上記(7)のベルトユニットと、
前記媒体を、前記現像装置を通過させた後、前記ベルトユニットに供給するとともに、前記ベルトユニットを前記搬送方向に通過させる搬送装置と、
を備える、画像形成装置である。
(9)無端ベルトと、
前記無端ベルトの長手方向に延びる第1軸を中心に配置され、前記無端ベルトとの間に、媒体が挟まれるニップを形成するローラ部材と、
前記無端ベルトを、前記ローラ部材の回転に追従可能に支持するガイド部材であって、前記無端ベルトの前記長手方向の少なくとも一方の端部の内周面に接触するベルト支持部と、前記無端ベルトの前記長手方向の移動を規制するベルト規制部と、を有するガイド部材と、
を備えるベルトユニットであって、
前記ガイド部材は、前記ベルト支持部が、前記ベルト規制部に対して前記搬送方向に移動可能に構成された、ベルトユニットである。
(10)無端ベルトと、
前記無端ベルトの長手方向に延びる第1軸を中心に配置され、前記無端ベルトとの間に、媒体が挟まれるニップを形成するローラ部材と、
前記無端ベルトを、前記長手方向の少なくとも一方の端部で前記ローラ部材の回転に追従可能に支持するガイド部材であって、ベース部材と、前記端部の内周面に接触するベルト支持部と、前記無端ベルトの前記長手方向の移動を規制するベルト規制部と、を有するガイド部材と、
を備えるベルトユニットであって、
前記ベルト規制部は、前記ベース部材に対し、前記長手方向に変位可能に支持され、
前記ベルト支持部は、前記ベルト規制部に対して前記媒体の搬送方向に移動可能に支持される一方、前記長手方向には前記ベルト規制部とともに移動可能であり、
前記ガイド部材は、さらに、前記ベルト支持部を、前記搬送方向に付勢する部材と、前記ベルト支持部が前記長手方向に移動した場合に、前記ベース部材と干渉して、前記ベルト支持部の移動に、前記付勢する方向とは逆向きの成分を付加する動作変換部と、を備える、ベルトユニットである。
(11)第1方向に回転可能な無端ベルトと、
前記無端ベルトとの間で媒体を挟持し、前記無端ベルトとともに前記媒体を第2方向に搬送する加圧部材と、
前記第1方向に垂直な第3方向における前記無端ベルトの端部に接触し、前記無端ベルトをガイドするガイド部材と、
を備え、
前記無端ベルトが前記第3方向に変位して、前記端部に前記ガイド部材が接触すると、前記ガイド部材は、前記無端ベルトの前記変位に連動して移動し、
前記第2方向における前記ガイド部材の下流端の移動量は、前記第2方向における前記ガイド部材の上流端の移動量よりも大きい、ベルトユニットである。
【符号の説明】
【0072】
1000…印刷装置、1002…記録紙、1003…レジストローラ、1004…送りローラ、1010…現像装置、1031…無端ベルト、1032…加圧ローラ、1033…ガイド部材、1033a…ベース部材、1033b…ベルト支持部、1033c…ベルト規制部、1033e…バネ、1033g…バネ、1033i…動作変換部、1034…ヒータ。