(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】空調コントローラ用タッチパネル装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20230704BHJP
F24F 11/52 20180101ALI20230704BHJP
【FI】
G06F3/041 520
F24F11/52
(21)【出願番号】P 2019217678
(22)【出願日】2019-12-02
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 駿弥
(72)【発明者】
【氏名】森田 裕也
(72)【発明者】
【氏名】服部 徹
【審査官】岩橋 龍太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-009462(JP,A)
【文献】特開2018-005659(JP,A)
【文献】特開2018-109964(JP,A)
【文献】特開2016-170754(JP,A)
【文献】特開2002-023942(JP,A)
【文献】特開2017-021471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/044
F24F 11/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量方式の空調コントローラ用タッチパネル装置であって、
マトリクス状に配置された複数の電極と、
前記複数の電極を走査して各電極の静電容量値を繰り返し検出するタッチ検出用IC(Integrated Circuit)と、
前記タッチ検出用ICにより繰り返し検出される各電極の静電容量値を取得し、取得した各電極の静電容量値を利用してタッチ位置を特定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記複数の電極のうち、設定されている判定領域を形成する電極である判定対象電極の静電容量値が予め定められた閾値回数連続して変化しない場合に前記タッチ検出用ICをリセットし、前記判定対象電極についての前記静電容量値が前記閾値回数未満のうちに変化する場合に前記タッチ検出用ICをリセットしない、空調コントローラ用タッチパネル装置。
【請求項2】
請求項1に記載の空調コントローラ用タッチパネル装置において、
前記判定領域は、複数の前記判定対象電極により形成され、
前記制御部は、各電極の静電容量値を取得すると、前記複数の判定対象電極の静電容量値同士を加算して合計値を求め、前記合計値が前記閾値回数連続して変化しない場合に前記タッチ検出用ICをリセットし、前記合計値が前記閾値回数未満のうちに変化する場合に前記タッチ検出用ICをリセットしない、空調コントローラ用タッチパネル装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の空調コントローラ用タッチパネル装置において、
前記判定領域は、前記複数の電極のうちの一部の電極が前記判定対象電極となるように設定されている、空調コントローラ用タッチパネル装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の空調コントローラ用タッチパネル装置において、
前記判定領域を設定する領域設定部を、さらに備え、
前記領域設定部は、前記判定対象電極の前記静電容量値が前記閾値回数連続して変化しない場合に、前記判定領域の位置と大きさとのうちの少なくとも一方を前回設定した前記判定領域から変更して今回の前記判定領域を設定し、
前記制御部は、前回設定された前記判定領域の前記判定対象電極の前記静電容量値と、今回設定された前記判定領域の前記判定対象電極の前記静電容量値と、がいずれも前記閾値回数連続変化しない場合に前記タッチ検出用ICをリセットし、前回設定された前記判定領域の前記判定対象電極の前記静電容量値と、今回設定された前記判定領域の前記判定対象電極の前記静電容量値と、のうちの少なくとも一方が前記閾値回数未満のうちに変化する場合に前記タッチ検出用ICをリセットしない、空調コントローラ用タッチパネル装置。
【請求項5】
請求項4に記載の空調コントローラ用タッチパネル装置において、
前記領域設定部は、前回設定した前記判定領域を形成する前記判定対象電極のうちの少なくとも一部の電極が今回の前記判定領域に含まれるように、今回の前記判定領域を設定する、空調コントローラ用タッチパネル装置。
【請求項6】
請求項4に記載の空調コントローラ用タッチパネル装置において、
前記領域設定部は、前回設定した前記判定領域を形成する前記判定対象電極が今回の前記判定領域に含まれないように、今回の前記判定領域を設定する、空調コントローラ用タッチパネル装置。
【請求項7】
請求項4から請求項6までのいずれか一項に記載の空調コントローラ用タッチパネル装置において、
前記領域設定部は、今回の前記判定領域を、前回の前記判定領域よりも大きく設定する、空調コントローラ用タッチパネル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空調コントローラに用いられる静電容量方式のタッチパネル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、空気調和(以下、単に「空調」とも呼ぶ)コントローラに、静電容量方式のタッチパネル装置が用いられる場合がある。例えば、目標温度や吹き出し風量などを設定するためのメニュー画面や操作ボタンを表示し、また、かかる操作ボタンに対する操作入力を受け付けるために、液晶パネル等の表示装置に対して静電容量方式のタッチパネル装置が取り付けて用いられる場合がある。静電容量方式のタッチパネル装置は、マトリクス状に配置された複数の電極を走査して各電極の静電容量値を検出する機能部と、検出された静電容量値の変化からタッチ位置を特定する機能部とを備える。特許文献1に記載のタッチパネル装置では、これら2つの機能部が1つのマイコンにより実現されている。また、これら2つの機能部のうち、各電極の静電容量値を検出する機能をタッチ検出用IC(Integrated Circuit)により実現し、タッチ位置を特定する機能をMPU(マクロプロセッサユニット)を有するコンピュータからなる制御部により実現する構成も採用される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、各電極の静電容量値を検出する機能をタッチ検出用ICにより実現し、タッチ位置を特定する機能をコンピュータ等の制御部により実現する構成においては、タッチパネル装置の操作の際にユーザが帯びている静電気に起因して、タッチ検出用ICにおける静電容量値の検出機能が異常となり、タッチ検出用ICが何ら応答しなくなる等の不具合が生じる場合がある。このような場合、意図しない温度や湿度で空調装置が動作するおそれがある。この結果、例えば、真冬に冷房が動作する或いは真夏に暖房が動作するなどの誤動作のおそれがある。また、意図しない温度や湿度での空調装置の動作に伴い、電気代が意図せずに上昇するおそれもある。このため、ユーザにとっては、このような不具合が生じた場合に、空調コントローラの早期復旧が望まれる。また、空調コントローラの製造メーカや空調装置の導入メーカにとっては、上記不具合に伴ってユーザからクレームを受けるという問題が生じ得る他、不具合解消のための対処を行う、或いは、ユーザに対処方法を伝える等をしなければならず、大変不便であるという問題も生じ得る。対処方法としては、例えば、タッチパネル装置に設けられているリセットスイッチの押下や、タッチパネル装置の主電源をオフするなどの操作が伴うため、ユーザにとっても大変不便であるという問題も生じ得る。そこで、空調コントローラ用タッチパネル装置においてタッチ検出用ICにおける静電容量検出機能が異常となった場合に、ユーザを煩わせることなく早期復旧可能な技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、静電容量方式の空調コントローラ用タッチパネル装置が提供される。この空調コントローラ用タッチパネル装置は、マトリクス状に配置された複数の電極と、前記複数の電極を走査して各電極の静電容量値を繰り返し検出するタッチ検出用IC(Integrated Circuit)と、前記タッチ検出用ICにより繰り返し検出される各電極の静電容量値を取得し、取得した各電極の静電容量値を利用してタッチ位置を特定する制御部と、を備える。前記制御部は、前記複数の電極のうち、設定されている判定領域を形成する電極である判定対象電極の静電容量値が予め定められた閾値回数連続して変化しない場合に前記タッチ検出用ICをリセットし、前記判定対象電極についての前記静電容量値が前記閾値回数未満のうちに変化する場合に前記タッチ検出用ICをリセットしない。
この形態の空調コントローラ用タッチパネル装置によれば、複数の電極のうち、判定領域を形成する電極である判定対象電極の静電容量値が閾値回数連続して変化しない場合にタッチ検出用ICをリセットし、判定対象電極についての静電容量値が閾値回数未満のうちに変化する場合にタッチ検出用ICをリセットしないので、タッチ検出用ICにおける静電容量検出機能が異常となった場合に自動的にタッチ検出用ICをリセットでき、タッチ検出用ICにおける静電容量検出機能が異常となった場合に、ユーザを煩わせることなく早期に復旧できる。一般に、各電極の静電容量値は、タッチ入力が無い場合であっても、電極と触れている空気中の静電気に起因して刻々と変化している。このため、タッチ検出用ICが正常である場合、タッチ検出用ICが検出する静電容量値は、刻々と変化する。したがって、本形態の空調コントローラ用タッチパネル装置のように、判定対象電極についての静電容量値が閾値回数連続して変化しない場合にタッチ検出用ICをリセットし、判定対象電極についての静電容量値が閾値回数未満のうちに変化する場合にタッチ検出用ICをリセットしないことにより、タッチ検出用ICが異常の場合にリセットし正常の場合にリセットしないように制御できる。
(2)上記形態の空調コントローラ用タッチパネル装置において、前記判定領域は、複数の前記判定対象電極により形成され、前記制御部は、各電極の静電容量値を取得すると、前記複数の判定対象電極の静電容量値同士を加算して合計値を求め、前記合計値が前記閾値回数連続して変化しない場合に前記タッチ検出用ICをリセットし、前記合計値が前記閾値回数未満のうちに変化する場合に前記タッチ検出用ICをリセットしなくてもよい。
この形態の空調コントローラ用タッチパネル装置によれば、複数の判定対象電極の静電容量値同士を加算して合計値を求め、合計値が閾値回数連続して変化しない場合にタッチ検出用ICをリセットし、合計値が閾値回数未満のうちに変化する場合にタッチ検出用ICをリセットしないので、タッチ検出用ICをリセットするか否かの判定のための処理を簡易な処理にでき、制御部の処理負荷が高負荷となることを抑制できる。
(3)上記形態の空調コントローラ用タッチパネル装置において、前記判定領域は、前記複数の電極のうちの一部の電極が前記判定対象電極となるように設定されていてもよい。
この形態の空調コントローラ用タッチパネル装置によれば、判定領域は、複数の電極のうちの一部の電極が判定対象電極となるように設定されているので、複数の電極のすべてが判定対象電極となるように設定する構成に比べて、タッチ検出用ICをリセットするか否かの判定のための処理負荷が高負荷となることを抑制できる。
(4)上記形態の空調コントローラ用タッチパネル装置において、前記判定領域を設定する領域設定部を、さらに備え、前記領域設定部は、前記判定対象電極の前記静電容量値が前記閾値回数連続して変化しない場合に、前記判定領域の位置と大きさとのうちの少なくとも一方を前回設定した前記判定領域から変更して今回の前記判定領域を設定し、前記制御部は、前回設定された前記判定領域の前記判定対象電極の前記静電容量値と、今回設定された前記判定領域の前記判定対象電極の前記静電容量値と、がいずれも前記閾値回数連続変化しない場合に前記タッチ検出用ICをリセットし、前回設定された前記判定領域の前記判定対象電極の前記静電容量値と、今回設定された前記判定領域の前記判定対象電極の前記静電容量値と、のうちの少なくとも一方が前記閾値回数未満のうちに変化する場合に前記タッチ検出用ICをリセットしなくてもよい。
この形態の空調コントローラ用タッチパネル装置によれば、判定対象電極の静電容量値が閾値回数連続して変化しない場合に、判定領域の位置と大きさとのうちの少なくとも一方を前回設定した判定領域と変更して今回の判定領域が設定され、前回設定された判定領域の判定対象電極の静電容量値と、今回設定された判定領域の判定対象電極の静電容量値と、のいずれもが閾値回数連続変化しない場合にタッチ検出用ICをリセットするので、複数の電極の全体に亘って静電気等に起因する異常が発生している可能性がより高いと推定される状況においてタッチ検出用ICをリセットでき、タッチ検出用ICの無駄なリセットを抑制できる。判定領域の位置および大きさが固定されている構成では、かかる判定領域を形成する電極が断線等により故障して他の電極は正常であり操作入力を受け付けられる状況であってもタッチ検出用ICを無駄にリセットしてしまう。これに対して本形態の空調コントローラ用タッチパネル装置によれば、このような状況においてタッチ検出用ICがリセットされることを抑制できる。
(5)上記形態の空調コントローラ用タッチパネル装置において、前記領域設定部は、前回設定した前記判定領域を形成する前記判定対象電極のうちの少なくとも一部の電極が今回の前記判定領域に含まれるように、今回の前記判定領域を設定してもよい。
この形態の空調コントローラ用タッチパネル装置によれば、前回設定した判定領域を形成する判定対象電極のうちの少なくとも一部の電極が今回の判定領域に含まれるように、今回の判定領域が設定されるので、前回と今回で重複して判定領域に含まれる電極についてのみ前回と今回とで静電容量値が同一であり、他の電極については前回と今回とで静電容量値が異なる場合に、重複して判定領域に含まれる電極について、断線等の異常が局所的に発生していることを特定できる。
(6)上記形態の空調コントローラ用タッチパネル装置において、前記領域設定部は、前回設定した前記判定領域を形成する前記判定対象電極が今回の前記判定領域に含まれないように、今回の前記判定領域を設定してもよい。
この形態の空調コントローラ用タッチパネル装置によれば、前回設定した判定領域を形成する判定対象電極が今回の判定領域に含まれないように、今回の判定領域を設定が設定されるので、複数の電極の全体に亘って静電気等に起因する異常が発生していることを精度良く特定できる。
(7)上記形態の空調コントローラ用タッチパネル装置において、前記領域設定部は、今回の前記判定領域を、前回の前記判定領域よりも大きく設定してもよい。
この形態の空調コントローラ用タッチパネル装置によれば、今回の判定領域を、前回の判定領域よりも大きく設定するので、複数の電極の全体に亘って静電気等に起因する異常が発生している可能性がより高いと推定される状況においてタッチ検出用ICをリセットできる。
【0007】
本開示は、種々の形態で実現することも可能である。例えば、空調コントローラ用タッチパネル装置を備える空調コントローラ、タッチ検出用ICのリセット方法、空調コントローラ用タッチパネル装置が有するコンピュータ用のコンピュータプログラム、かかるコンピュータプログラムを記憶した記憶媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態としての空調コントローラ用タッチパネル装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】タッチパネル操作処理の手順を示すフローチャートである。
【
図3】第1実施形態におけるリセット処理の手順を示すフローチャートである。
【
図4】第1実施形態における判定領域を模式的に示す説明図である。
【
図5】タッチ検出用ICが正常の場合における判定対象電極の静電容量値の変化の一例を示す説明図である。
【
図6】タッチ検出用ICが異常の場合における判定対象電極の静電容量値の変化の一例を示す説明図である。
【
図7】第2実施形態におけるリセット処理の手順を示すフローチャートである。
【
図8】第3実施形態の空調コントローラ用タッチパネル装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図9】第3実施形態におけるリセット処理の手順を示すフローチャートである。
【
図10】第3実施形態における判定領域の位置の変化例を示す説明図である。
【
図11】他の実施形態における判定領域の一例を示す説明図である。
【
図12】他の実施形態における判定領域の一例を示す説明図である。
【
図13】他の実施形態における判定領域の一例を示す説明図である。
【
図14】他の実施形態における判定領域の変化例を示す説明図である。
【
図15】他の実施形態における判定領域の変化例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
A1.装置構成:
図1は、本開示の一実施形態としての空調コントローラ用タッチパネル装置100の概略構成を示すブロック図である。空調コントローラ用タッチパネル装置(以下、単に「タッチパネル装置」とも呼ぶ)100は、空気調和(以下、単に「空調」とも呼ぶ)コントローラ10に用いられる。空調コントローラ10は、空調装置20を制御する。空調装置20は、環境温度が目標温度となるように冷風または温風を吹き出す。空調コントローラ10は、ユーザによる操作入力を受け付けると共に、かかる操作入力に応じて空調装置20の目標温度や吹き出し風量等の空調にかかる各種パラメータを制御する。空調コントローラ10は、上述のタッチパネル装置100に加えて、表示装置300と、GPU(Graphics Processing Unit)310と、制御装置200と、温度センサ400とを備える。
【0010】
表示装置300は、本実施形態では、液晶パネルを備え、空調制御に関する各種メニュー画面や、現在温度や目標温度や吹き出し風量等を表示する。GPU310は、制御装置200から送信される表示データに基づき、表示装置300における表示を制御する。
【0011】
制御装置200は、空調コントローラ10を全体制御する。本実施形態において、制御装置200は、CPU210と、ROM220と、RAM230とを備えるコンピュータとして構成されている。CPU210は、ROM220に記憶されている制御プログラムをRAM230に展開して実行することにより、タッチパネル制御部211および空調制御部213として機能する。タッチパネル制御部211は、タッチパネル装置100の全体制御を行う。具体的には、タッチパネル制御部211は、後述のタッチパネル操作処理を実行して、ユーザによるタッチ位置を特定する。また、後述のリセット処理を実行して、後述のタッチ検出用IC130をリセットする。空調制御部213は、空調装置20の制御を行う。具体的には、空調制御部213は、GPU310を制御して表示装置300に空調制御に関する各種メニュー画面等を表示させたり、タッチパネル制御部211により特定されるタッチ位置に基づき、ユーザの指示内容を特定し、かかる指示内容に応じた制御コマンドを空調装置20に送信したり、空調装置20の運転状況をモニタしたりする。温度センサ400は、空調装置20の設置環境における温度を検出する。なお、温度センサ400は、設置環境における温度に加えてまたは温度に替えて湿度を検出してもよい。制御装置200は、温度センサ400と電気的に接続されており、空調制御部213は、温度センサ400による検出温度を特定する。
【0012】
タッチパネル装置100は、静電容量方式のタッチパネル装置であり、タッチセンサ部110と、タッチ検出用IC(Integrated Circuit)130と、上述のタッチパネル制御部211とを備える。
【0013】
タッチセンサ部110は、マトリクス状に配列された複数の電極を備える。具体的には、タッチセンサ部110は、所定方向に並ぶ複数の電極(以下、「複数のX電極」と呼ぶ)と、かかる所定の方向と直交する方向に並ぶ複数の電極(以下、「複数のY電極列」と呼ぶ)とを備える。なお、X電極およびY電極は、互いに直交することに代えて、互いに90度とは異なる角度で交差してもよい。各X電極および各Y電極は、いずれも透明電極として形成されており、光透過性を有する板状部材、例えば、ガラス板の表面に配置されている。ユーザがかかるガラス板に指を近づけるまたはタッチすると、指に対応する位置に配置されている電極と隣合う電極との間において静電容量(寄生容量)が増大する。この静電容量の変化を検出することにより、タッチパネル制御部211によりタッチ位置が検出される。
【0014】
タッチ検出用IC130は、各X電極および各Y電極とそれぞれ電気的に接続されており、X電極およびY電極を所定の時間間隔でそれぞれ走査して順次選択し、選択した電極列に対して電圧を印加する。また、タッチ検出用IC130は、各X電極および各Y電極の静電容量、すなわち、各電極と隣り合う電極との間の静電容量を検出する。タッチ検出用IC130は、制御装置200と電気的に接続されており、タッチパネル制御部211は、タッチ検出用IC130により検出された各X電極および各Y電極の静電容量値を取得可能に構成されている。具体的には、制御装置200が備える図示しないアナログディジタル変換部は、タッチ検出用IC130から入力されるアナログの静電容量値を、0~255のディジタルの静電容量値に変換してCPU210に出力する。そして、タッチパネル制御部211は、かかる静電容量値を受信することにより、静電容量値を取得する。なお、タッチ検出用IC130には、リセット用のポートが設けられており、かかるポートには、リセット用専用線R1が接続されている。かかるリセット用専用線R1は、制御装置200にも接続されている。制御装置200は、リセット用専用線R1を介してリセット信号を送信することにより、タッチ検出用IC130をリセットできる。
【0015】
タッチパネル装置100を操作する際に、ユーザが帯電する静電気に起因して、タッチ検出用IC130の静電容量を検出する機能が異常となり得る。かかる異常が発生すると、タッチ検出用IC130は、各電極の静電容量を検出できなくなり、同じ静電容量値をタッチパネル制御部211に通知するようになってしまう。しかし、後述のリセット処理が実行されることにより、このような場合にタッチ検出用IC130が自動的にリセットされる。
【0016】
A2.タッチパネル操作処理:
図2は、タッチパネル操作処理の手順を示すフローチャートである。タッチパネル操作処理とは、タッチパネル装置100におけるタッチ位置を検出し、そのタッチ位置を空調制御部213に通知するための処理を意味する。タッチパネル装置100の電源がオンすると、タッチパネル制御部211によりタッチパネル操作処理が実行される。なお、タッチパネル装置100の電源がオンすると、タッチ検出用IC130は、上述したとおり、各電極を所定の時間間隔でそれぞれ走査して順次選択し、選択した電極列に対して電圧を印加し、各電極の静電容量を検出することを繰り返し実行する。
【0017】
タッチパネル制御部211は、検出タイミングが到来したか否かを判定する(ステップS105)。検出タイミングとは、タッチ位置を検出するためのタイミングを意味する。本実施形態では、タッチセンサ部110のすべての電極を1回走査して各電極の静電容量を検出することが完了したタイミングが検出タイミングとして予め設定されている。検出タイミングが到来していないと判定された場合(ステップS105:NO)、再度ステップS105が実行される。すなわち、検出タイミングが到来するまで処理は待機する。
【0018】
検出タイミングが到来したと判定された場合(ステップS105:YES)、タッチパネル制御部211は、タッチ検出用IC130から各電極の静電容量値を取得する(ステップS110)。タッチパネル制御部211は、静電容量値が閾値以上である電極があるか否かを判定する(ステップS115)。ステップS115の閾値は、例えば、以下のように設定してもよい。まず、所定の距離以下まで指が電極に近づいた場合の静電容量値の変化量を予め実験等により求めておく。また、指が近接していない状況における各電極の静電容量値を、例えば電源オン直後のキャリブレーション実行時などに検出しておく。そして、検出された各電極の静電容量値に、予め求めておいた静電容量値の変化量を加えることにより、閾値を算出する。
【0019】
静電容量値が閾値以上である電極が無いと判定された場合(ステップS115:NO)、処理はステップS105に戻る。これに対して、静電容量値が閾値以上である電極があると判定された場合(ステップS115:YES)、タッチパネル制御部211は、同一の電極について所定回数連続して静電容量値が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS120)。所定回数は、本実施形態では2回である。なお、かかる所定回数は2回に限らず任意の値にしてもよい。かかるステップS120は、偶然に静電容量値が閾値以上になった場合や、一瞬誤ってユーザの指が触れた場合など、実際にユーザが触れることを意図して触れていない状況を排除するための処理である。同一の電極について閾値回数未満のうちに静電容量値が閾値以上でないと判定された場合(ステップS120:NO)、処理はステップS105に戻る。
【0020】
同一の電極について所定回数連続して静電容量値が閾値以上であると判定された場合(ステップS120:YES)、タッチパネル制御部211は、該当の電極に対応する位置をタッチ位置として特定する(ステップS125)。なお、ステップS115において、複数の電極について静電容量値が閾値以上であると判定された場合には、ステップS125において、これら複数の電極の重心位置をタッチ位置として特定してもよい。タッチパネル制御部211は、ステップS125により特定されたタッチ位置を空調制御部213に通知する(ステップS130)。上述したとおり、タッチ位置を通知された空調制御部213は、表示装置300に表示されたメニュー画面とタッチ位置とからユーザの指示内容を特定し、かかる指示内容に応じた制御コマンドを空調装置20に送信したり、空調装置20の運転状況をモニタしたりする。ステップS130の完了後、処理はステップS105に戻る。
【0021】
A3.リセット処理:
図3は、第1実施形態におけるリセット処理の手順を示すフローチャートである。リセット処理とは、タッチ検出用IC130をリセットするための処理である。タッチパネル装置100の電源がオンすると、タッチパネル制御部211によりリセット処理が実行される。したがって、タッチパネル制御部211は、上述のタッチパネル制御処理とリセット処理とを並行して実行することとなる。
【0022】
タッチパネル制御部211は、タッチパネル操作処理において新たに静電容量値を取得したか否かを判定する(ステップS205)。新たに静電容量値を取得していないと判定された場合(ステップS205:NO)、ステップS205が再度実行される。すなわち、新たに静電容量値を取得するまで処理は待機する。
【0023】
新たに静電容量値を取得したと判定された場合(ステップS205:YES)、タッチパネル制御部211は、取得された静電容量値のうち、判定領域を形成する電極(以下、「判定対象電極」と呼ぶ)の静電容量値を特定する(ステップS210)。判定領域とは、タッチ検出用IC130をリセットすべき状況、つまり、タッチ検出用IC130に異常が発生している状況であるか否かを判定するために用いられる領域である。本実施形態において、判定領域は、縦3×横3の合計9つの電極が判定対象電極となるように設定されている。
【0024】
図4は、第1実施形態における判定領域A1を模式的に示す説明図である。
図4では、各X電極および各Y電極の交点(実際には、隣接する電極間の位置)がマトリクス状に示されている。タッチ検出用IC130は、この交点に相当する判定対象電極ごとに静電容量値を検出する。
図4に示すように、本実施形態では、判定領域A1は、タッチセンサ部110において、向かって右上の角に位置する3×3の合計9つの判定対象電極により形成されている。
図4の例では、指はいずれの電極にも近接していない。
図4における各電極の数値は、各電極の静電容量値(ディジタル値への変換後の値)を示す。指が近接していない場合においても、各電極の静電容量値(寄生容量値)は、空気中の静電気によりゼロでは無い値を示し得る。したがって、
図4に示すように、いくつかの電極では、「1」~「3」の値を示している。上述のステップS210では、判定領域A1に含まれる合計9つの判定対象電極の各静電容量値が特定される。
【0025】
図3に示すように、タッチパネル制御部211は、判定対象電極の静電容量値は前回と同一であるか否かを判定する(ステップS215)。リセット処理は繰り返し実行されるため、ステップS210が前回実行された際に特定された判定領域A1の各判定対象電極の静電容量値が、ステップS210が今回実行された際に特定された判定領域A1の各判定対象電極の静電容量値と同一であるか否かが判定される。本実施形態では、判定領域A1を形成する合計9つの判定対象電極のひとつひとつについて、静電容量値が前回と今回とで同一であるか否かが判定される。判定領域A1を形成する判定対象電極のうちの少なくとも1つの静電容量値が前回と同一でないと判定された場合(ステップS215:NO)、処理はステップS205に戻る。
【0026】
他方、すべての判定対象電極の静電容量値が前回と同一であると判定された場合(ステップS215:YES)、タッチパネル制御部211は、判定対象電極の静電容量値は、閾値回数連続して変化しないか否かを判定する(ステップS220)。本実施形態において、ステップS220の閾値回数は2回である。なお、閾値回数は、2回に限らず任意の回数であってもよい。判定対象電極の静電容量値は、閾値回数未満のうちに変化したと判定された場合(ステップS220:NO)、処理は上述のステップS205に戻る。すなわち、判定対象電極の静電容量値が1回は同一であったが、次の回では、異なる値であった場合には、処理はステップS205に戻ることとなる。この場合、タッチ検出用IC130はリセットされないこととなる。
【0027】
他方、判定対象電極の静電容量値は、閾値回数連続して変化しないと判定された場合(ステップS220:YES)、タッチパネル制御部211は、タッチ検出用IC130をリセットする(ステップS225)。ステップS225の完了後、処理はステップS205に戻る。
【0028】
図5は、タッチ検出用IC130が正常の場合における判定対象電極の静電容量値の変化の一例を示す説明図である。
図5に示すように、判定対象電極のうちのほぼすべての電極では、第n-1回目の静電容量値は、第n-2回目の静電容量値と異なる。同様に、判定対象電極のうちのほぼすべての電極において、第n回目の静電容量値は、第n-1回目の静電容量値と異なる。これは、タッチパネル装置100に接する空気中の静電気の大きさは絶えず変化しているため各電極の静電容量値も絶えず変化するので、タッチ検出用IC130が正常であれば、各判定対象電極の静電容量値は各回ごとに変化して検出されるからである。
【0029】
図6は、タッチ検出用IC130が異常の場合における判定対象電極の静電容量値の変化の一例を示す説明図である。タッチ検出用IC130において、静電容量値の検出機能に異常が生じた場合、
図6に示すように、各判定対象電極の静電容量値は、第n-2回、第n-1回、第n回のいずれにおいても同一の値として検出されることとなる。
【0030】
以上説明した第1実施形態のタッチパネル装置100によれば、タッチセンサ部110を形成する複数の電極のうち、判定領域A1を形成する電極である判定対象電極の静電容量値が閾値回数(2回)連続して変化しない場合にタッチ検出用IC130をリセットし、判定対象電極についての静電容量値が閾値回数未満のうちに変化する場合にタッチ検出用IC130をリセットしないので、タッチ検出用IC130における静電容量検出機能が異常となった場合に、自動的にタッチ検出用IC130をリセットできる。このため、タッチ検出用IC130における静電容量検出機能が異常になった場合に、ユーザを煩わせることなく早期に復旧できる。一般に、各電極の静電容量値は、タッチ入力が無い場合であっても、電極と触れている空気中の静電気に起因して変化している。このため、タッチ検出用IC130が正常である場合、タッチ検出用IC130が検出する静電容量値は、刻々と変化する。したがって、本形態のタッチパネル装置100のように、判定対象電極についての静電容量値が閾値回数連続して変化しない場合にタッチ検出用IC130をリセットし、判定対象電極についての静電容量値が閾値回数未満のうちに変化する場合にタッチ検出用IC130をリセットしないことにより、タッチ検出用IC130が異常の場合にリセットし正常の場合にリセットしないように制御できる。
【0031】
また、判定領域A1は、タッチセンサ部110を構成する全ての電極(X電極およびY電極)のうちの一部の電極が判定対象電極となるように設定されているので、すべての電極を判定対象電極となるように設定する構成に比べて、タッチ検出用IC130をリセットするか否かの判定のためのCPU210の処理負荷が高負荷となることを抑制できる。
【0032】
また、判定領域A1を形成する各判定対象電極について、静電容量値が前回と一致するか否かが判定されるので、タッチ検出用IC130の静電容量検出機能に異常が生じているか否かを精度良く特定できる。
【0033】
B.第2実施形態:
図7は、第2実施形態におけるリセット処理の手順を示すフローチャートである。第2実施形態におけるリセット処理は、ステップS212を追加して実行する点と、ステップS215およびステップS220に代えてステップS215aおよびステップS220aを実行する点において、
図3に示す第1実施形態におけるリセット処理と異なる。第2実施形態におけるリセット処理のその他の手順は、第1実施形態におけるリセット処理と同じであるので、同一の手順には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、第2実施形態のタッチパネル装置100および空調コントローラ10の構成は、第1実施形態のタッチパネル装置100および空調コントローラ10の構成と同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0034】
上述のステップS210の完了後、タッチパネル制御部211は、各判定対象電極の静電容量値同士を加算して合計値を算出する(ステップS212)。
【0035】
タッチパネル制御部211は、合計値は前回と同一であるか否かを判定する(ステップS215a)。タッチ検出用IC130が正常の場合、今回の合計値は前回の合計値と一致しない可能性が高い。したがって、合計値が前回と同一でないと判定された場合(ステップS215a:NO)、処理はステップS205に戻り、タッチ検出用IC130のリセット(ステップS225)は実行されない。
【0036】
他方、今回の合計値は前回の合計値と一致すると判定された場合(ステップS215a:YES)、タッチパネル制御部211は、合計値は閾値回数連続して変化しないか否かを判定する(ステップS220a)。本実施形態において、ステップS220aの閾値回数は2回である。なお、閾値回数は、2回に限らず任意の回数であってもよい。閾値回数未満のうちに合計値が変化したと判定された場合(ステップS220a:NO)、処理は上述のステップS205に戻る。この場合、タッチ検出用IC130のリセット(ステップS225)は実行されない。他方、閾値回数連続して合計値が変化したと判定された場合(ステップS220a:YES)、上述のステップS225が実行され、タッチ検出用IC130はリセットされることとなる。
【0037】
以上説明した第2実施形態のタッチパネル装置100は、第1実施形態のタッチパネル装置100と同様な効果を有する。加えて、判定領域A1を形成する合計9つの判定対象電極の静電容量値同士を加算して合計値を求め、合計値が閾値回数連続して変化しない場合にタッチ検出用IC130をリセットし、合計値が閾値回数未満のうちに変化する場合にタッチ検出用IC130をリセットしないので、タッチ検出用IC130をリセットするか否かの判定のための処理を簡易な処理にでき、CPU210の処理負荷が高負荷となることを抑制できる。
【0038】
C.第3実施形態:
図8は、第3実施形態のタッチパネル装置100aの概略構成を示すブロック図である。第3実施形態のタッチパネル装置100aは、CPU210が領域設定部212としても機能する点において、
図1に示す第1実施形態のタッチパネル装置100と異なる。第3実施形態のタッチパネル装置100aにおけるその他の構成は、第1実施形態におけるタッチパネル装置100と同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0039】
領域設定部212は、判定領域A1を設定する。本実施形態において領域設定部212は、判定領域A1の大きさ、すなわち、3×3の合計9つの電極により形成される点はそのままで、判定領域A1の位置を設定可能(変更可能)に構成されている。領域設定部212は、タッチパネル制御部211および空調制御部213と同様に、ROM220に記憶されている制御プログラムを実行することによりCPU210が機能する機能部である。
【0040】
図9は、第3実施形態におけるリセット処理の手順を示すフローチャートである。第3実施形態におけるリセット処理は、ステップS222およびステップS223を追加して実行する点において、
図3に示す第1実施形態におけるリセット処理と異なる。第3実施形態におけるリセット処理のその他の手順は、第1実施形態におけるリセット処理と同じであるので、同一の手順には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0041】
ステップS220において、判定対象電極の静電容量値は、閾値回数連続して変化しないと判定された場合(ステップS220:YES)、タッチパネル制御部211は、静電容量値の閾値回数連続不変化が、2回連続して発生したか否かを判定する(ステップS222)。例えば
図6に示すように、閾値回数である2回の連続不変化が最初に発生した場合、かかる連続不変化は1回目であるので、2回連続して発生しないと判定される。そして、この場合(ステップS222:NO)、領域設定部212は、判定領域の位置を変更して判定領域を設定する(ステップS223)。ステップS223の実行後、処理はステップS205に戻る。したがって、この場合、タッチ検出用IC130のリセット(ステップS225)は実行されない。
【0042】
図10は、第3実施形態における判定領域の位置の変化例を示す説明図である。上段は、ステップS223が実行される前の判定領域A1を示し、下段はステップS223実行後の判定領域A2を示す。本実施形態では、領域設定部212は、ステップS223において、向かって右上角と左下角とのうち、既に設定されている位置とは異なる位置を選択して、判定領域の位置として設定する。したがって、
図10に示すように、ステップS223の実行前に右上角の位置であった場合には、左下角の位置の領域A2が判定領域として設定される。そして、このようにして判定領域の位置が変更して新たな判定領域として判定領域A2が設定された後に処理はステップS205に戻るので、かかる判定領域A2を形成する合計9つの電極について、改めてステップS205~S222が実行されることとなる。
【0043】
上述のようにステップS223が実行されて、判定領域の位置が変更された後においても、各判定対象電極の静電容量が閾値回数連続して変化しない場合には、ステップS222において、静電容量値の閾値回数連続不変化が、2回連続して発生したと判定される(ステップS222:YES)。この場合、
図9に示すように、ステップS225が実行されてタッチ検出用IC130がリセットされることとなる。
【0044】
以上説明した第3実施形態のタッチパネル装置100aは、第1実施形態のタッチパネル装置100と同様な効果を有する。加えて、判定対象電極についての静電容量値が閾値回数連続して変化しない場合に、判定領域の位置を前回設定した判定領域から変更して今回の判定領域が設定され、前回設定された判定領域の判定対象電極の静電容量値と、今回設定された判定領域の判定対象電極の静電容量値と、がいずれも閾値回数連続変化しない場合にタッチ検出用IC130をリセットするので、複数の電極の全体に亘って静電気等に起因する異常が発生している可能性がより高いと推定される状況においてタッチ検出用IC130をリセットでき、タッチ検出用ICの無駄なリセットを抑制できる。判定領域の位置が固定されている構成では、かかる判定領域を形成する電極が断線等により故障して他の電極は正常であり操作入力を受け付けられる状況であってもタッチ検出用IC130を無駄にリセットしてしまう。これに対して本形態のタッチパネル装置100aによれば、このような状況においてタッチ検出用IC130がリセットされることを抑制できる。また、前回設定した判定領域を形成する判定対象電極が今回の判定領域に含まれないように、今回の判定領域を設定が設定されるので、タッチセンサ部110の全体に亘って静電気等に起因する異常が発生していることを精度良く特定できる。
【0045】
D.他の実施形態:
(D1)各実施形態において、判定領域A1、A2は、3×3の合計9つの電極により形成されていたが、本開示はこれに限定されない。
図11、
図12、
図13は、他の実施形態における判定領域の一例を示す説明図である。例えば、
図11のように、8×1の合計8つの電極により判定領域A3が形成されてもよい。また、
図12のように、1×6の合計6つの電極により判定領域A4が形成されてもよい。また、
図13に示すように、互いに離れて配置された合計3つの副判定領域A51、A52、A53により、判定領域A5が形成されてもよい。
図13の例では、各副判定領域A51~A53は、いずれも2×2の合計4つの電極により形成されている。なお、
図13の例において、3つの副判定領域A51~A53のうち少なくとも2つの副判定領域について互いに大きさが異なってもよい。また、
図13の例において、副判定領域の数は3つに限らず任意の数であってよい。また、
図13の例において、3つの副判定領域A51~A53のうち少なくとも2つの副判定領域について互いに接してもよい。また、
図13の例において、副判定領域A51~A53の大きさは2×2に限らず任意の大きさであってもよい。
【0046】
(D2)第2実施形態のリセット処理のステップS223では、判定領域の位置が変更されていたが、本開示はこれに限定されない。
図14および
図15は、他の実施形態における判定領域の変化例を示す説明図である。例えば、判定領域の位置は同じで判定領域の大きさが変更されてもよい。具体的には、
図14のように、ステップS223実行前の判定領域A1と、ステップS223実行後の判定領域A6とは、右上角に位置する点で互いに等しい。但し、判定領域A6は、4×4の合計16個の電極により形成されており、判定領域A1とは大きさが異なる。また、例えば、判定領域の位置と大きさとがいずれも変更されてもよい。具体的には、
図15のように、ステップS223実行前の判定領域A1と、ステップS223実行後の判定領域A7とは、位置および大きさがいずれも異なる。判定領域A1の大きさは3×3の合計9つの電極により形成されているのに対して、判定領域A7は、3×5の合計15個の電極により形成されている。また、判定領域A1の位置は向かって右上角であるのに対して、判定領域A7の位置は向かって左下角である。
図15の例のように、今回の判定領域を前回の判定領域よりも大きく設定することにより、複数の電極の全体に亘って静電気等に起因する異常が発生している可能性がより高いと推定される状況においてタッチ検出用IC130をリセットできる。すなわち、一般には、判定対象電極についての静電容量値が閾値回数連続して変化しない場合に、判定領域の位置と大きさとのうちの少なくとも一方を前回設定した判定領域と変更して設定する領域設定部を、本開示のタッチパネル装置に適用してもよい。
【0047】
(D3)各実施形態において、判定対象電極は、タッチセンサ部110を構成するすべての電極のうちの一部の電極であったが、これに代えて、すべての電極としてもよい。このような構成とすることにより、タッチ検出用IC130の異常をより精度良く特定できる。また、これとは対照的に、判定対象電極は、単一の電極により形成されてもよい。
【0048】
(D4)第1および第3実施形態では、今回と前回との比較対象は、判定領域を形成する各判定対象電極の静電容量値であった。また、第2実施形態では、今回と前回との比較対象は、判定領域を形成する各判定対象電極の静電容量値の合算値であった。本開示は、これらに限定されない。例えば、判定領域を形成する各判定対象電極の静電容量値の平均値や中央値などの統計値を、今回と前回との比較対象としてもよい。
【0049】
(D5)第2実施形態のリセット処理のステップS223では、変更後の判定領域は、変更前の判定領域と重複していなかったが本開示はこれに限定されない。前回設定された判定領域を形成する判定対象電極のうちの一部の電極が今回設定される判定領域に含まれるように、今回の判定領域を設定してもよい。かかる構成によれば、例えば、前回と今回とで重複して判定対象電極として設定された電極についてのみ静電容量値が変化せず、他の電極についての静電容量が変化していることが特定された場合に、重複する電極に断線等の故障が局所的に生じていると故障を切り分けることができるという効果が得られる。
【0050】
(D6)各実施形態において、タッチパネル制御部211は、制御装置200とは別の装置、例えば、別のコンピュータにより構成されてもよい。
【0051】
(D7)各実施形態において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。例えば、タッチパネル制御部211、領域設定部212、空調制御部213のうちの少なくとも1つの機能部を、集積回路、ディスクリート回路、またはそれらの回路を組み合わせたモジュールにより実現してもよい。また、本開示の機能の一部または全部がソフトウェアで実現される場合には、そのソフトウェア(コンピュータプログラム)は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納された形で提供することができる。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスクやCD-ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種のRAMやROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスク等のコンピュータに固定されている外部記憶装置も含んでいる。すなわち、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、データパケットを一時的ではなく固定可能な任意の記録媒体を含む広い意味を有している。
【0052】
本開示は、上記各実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する各実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
10…空調コントローラ、20…空調装置、100…空調コントローラ用タッチパネル装置、100a…空調コントローラ用タッチパネル装置、110…タッチセンサ部、130…タッチ検出用IC、200…制御装置、210…CPU、211…タッチパネル制御部、212…領域設定部、213…空調制御部、220…ROM、230…RAM、300…表示装置、310…GPU、400…温度センサ、A1~A7…判定領域、A51~A53…副判定領域