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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】建設機械の遠隔操縦システム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20230704BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
E02F9/20 N
H04N7/18 J
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019235415
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021102902
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】弁理士法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 均
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 誠司
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 洋一郎
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-244745(JP,A)
【文献】特開2010-248703(JP,A)
【文献】特開2019-047442(JP,A)
【文献】特開2018-021395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オペレータが操作可能な操縦装置の操作に応じて、操縦対象の建設機械を操縦し得るように構成された操縦システムであって、
前記建設機械の操縦を開始すべきタイミングである操縦要求タイミングに関連する所定のイベントとして前記建設機械に対応付けられて事前に登録された前記建設機械を前記オペレータが操縦することにより実施する予定の作業に適合するイベントが発生したか否かを示す情報を取得する装置と、
記オペレータに報知情報を出力可能な報知装置と、を備えており、
前記報知装置は、前記装置が前記所定のイベントの発生を示す情報取得したとき、その旨を示す報知情報を出力する、ことを特徴とする建設機械の操縦システム
【請求項2】
請求項1記載の建設機械の操縦システムにおいて、
前記建設機械に対応付けられた前記所定のイベントは、記オペレータ又は関係者によりあらかじめ設定された1つ以上のイベントであることを特徴とする建設機械の操縦システム
【請求項3】
請求項1又は2記載の建設機械の操縦システムにおいて、
前記装置が前記所定のイベントの発生を示す情報を取得したとき、前記建設機械の始動処理を実行することを特徴とする建設機械の操縦システム
【請求項4】
請求項1又は2記載の建設機械の操縦システムにおいて、
前記所定のイベントは操縦開始の緊急度合いの高低が設定されており、前記装置が前記所定のイベントの発生を示す情報を取得したとき、該イベントに設定された緊急度合いが高いことを必要条件として、前記建設機械の始動処理を実行することを特徴とする建設機械の操縦システム
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の建設機械の操縦システムにおいて、
前記所定のイベントは操縦開始の緊急度合いの高低が設定されており、
前記報知装置は、前記装置が前記所定のイベントの発生を示す情報を取得したとき、前記緊急度合いの高低に応じて前記報知情報の出力形態を異ならせて出力することを特徴とする建設機械の操縦システム
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の建設機械の操縦システムにおいて、
前記装置は、前記建設機械に搭載されたカメラ、又は、前記建設機械の作業現場に配置されたカメラの撮影映像に基づいて記所定のイベントの発生の有無を検知することを特徴とする建設機械の操縦システム
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の建設機械の操縦システムにおいて、
前記操縦システムは、前記オペレータが操作可能な前記操縦装置の操作に応じて、複数の操縦対象の建設機械を遠隔操縦し得るように構成された遠隔操縦システムであり、
前記装置は、前記複数の建設機械のそれぞれの遠隔操縦を開始すべきタイミングである操縦要求タイミングに関連する所定のイベントとし各建設機械に対応付けられて事前に登録された前記建設機械を前記オペレータが操縦することにより実施する予定の作業に適合するイベントが発生したか否かを示す情報を取得し、
前記報知装置は、前記装置が、前記複数の建設機械のうちのいずれかの建設機械に関して、該建設機械に対応付けられた前所定のイベントの発生を示す情報を取得したとき、その旨を示す報知情報を出力する、ことを特徴とする建設機械の遠隔操縦システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オペレータが複数の建設機械を遠隔操縦するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の建設機械の遠隔操縦を行うシステムとして、従来、例えば特許文献1、2に見られるものが知られている。これらのシステムでは、建設機械に制御信号を無線で送信し得る操縦装置をオペレータが操作することで、建設機械を遠隔操縦することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-047442号公報
【文献】特開2018-021395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本願出願人は、一人のオペレータが、該オペレータ用の操縦装置を操作することで、1つ又は複数の作業現場に配置される複数の建設機械を選択的に操縦し得るシステムの構築を検討している。
【0005】
この場合、オペレータは、操縦対象の各建設機械の操縦を開始すべきタイミングを適切に認識し、そのタイミングで、操縦対象の建設機械の切替作業を行う必要がある。該切替作業には、切替前に操縦していた建設機械の運転を停止する作業、切替後の操縦対象の建設機械を起動する作業、オペレータ用の操縦装置と操縦対象の建設機械との通信接続を切替える作業等が含まれ得る。
【0006】
そして、操縦対象の各建設機械の操縦を開始すべきタイミングが遅れると、新たに操縦を開始した建設機械の作業現場での作業の進行の遅れを招いてしまう。また、操縦対象の各建設機械の操縦を開始すべきタイミングが早過ぎると、新たに操縦を開始した建設機械による実際の作業を直ちには実施できず、実際の作業を開始できるようになるまで、待機しなければならないという状況が発生しやすい。ひいては、オペレータの作業効率の低下を招いてしまう。
【0007】
従って、オペレータは、操縦対象の各建設機械の操縦を開始すべきタイミングを適切に認識し得るようにすることが望まれる。
【0008】
ここで、オペレータの操縦対象の各建設機械のそれぞれの操縦を開始すべきタイミングが、あらかじめ所定の時刻に定められている場合には、オペレータは時刻に基づいて各建設機械の操縦を開始すべきタイミングを認識することは可能である。
【0009】
しかるに、各建設機械の操縦を開始すべきタイミングは、一般には、各建設機械の作業現場での作業の進行状況等に応じて変動する。例えば、ダンプカーに土砂等を積み込む作業は、ダンプカーが作業現場に到着してから行うことになるが、その到着時刻は一般には、スケジュール通りの時刻にはならない場合が多い。
【0010】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされてものであり、複数の建設機械を選択的に遠隔操縦するオペレータが、各建設機械の操縦を開始すべきタイミングを容易に適切に認識することができ、さらに、作業効率の向上を図ることができる遠隔操縦システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の建設機械の遠隔操縦システムは、上記の目的を達成するために、
オペレータが操作可能な操縦装置の操作に応じて、操縦対象の建設機械を操縦し得るように構成された操縦システムであって、
前記建設機械の操縦を開始すべきタイミングである操縦要求タイミングに関連する所定のイベントとして前記建設機械に対応付けられて事前に登録された前記建設機械を前記オペレータが操縦することにより実施する予定の作業に適合するイベントが発生したか否かを示す情報を取得する装置と、
記オペレータに報知情報を出力可能な報知装置と、を備えており、
前記報知装置は、前記装置が前記所定のイベントの発生を示す情報取得したとき、その旨を示す報知情報を出力する、ことを特徴とする(第1発明)。
【0012】
なお、本発明において、「操縦要求タイミングに関連する所定のイベント」とは、操縦要求タイミング(操縦を開始すべきタイミング)の直前の期間に発生し得るイベントを意味する。
【0013】
上記第1発明によれば、各建設機械に対応付けられた所定のイベントが発生すると、その旨を示す報知情報がオペレータに報知される。このため、オペレータは、該イベントに対応する建設機械の操縦を開始すべきタイミング(操縦要求タイミング)が近いことを容易に認識することができる。従って、オペレータは、操縦対象の各建設機械の操縦を開始すべきタイミングを容易に適切に認識することができる。
【0014】
よって、第1発明によれば、複数の建設機械を選択的に遠隔操縦するオペレータが、各建設機械の操縦を開始すべきタイミングを容易に適切に認識することができ、さらに、作業効率の向上を図ることができる。
【0015】
上記第1発明では、前記建設機械に対応付けられた前記所定のイベントは、記オペレータ又は関係者によりあらかじめ設定された1つ以上のイベントであることが好ましい(第2発明)。
【0016】
これによれば、オペレータあるいは関係者(例えば作業現場の監督者等)が適宜、一つ以上の所定のイベントを設定することが可能である。この場合、オペレータが前記所定のイベントを設定する場合には、オペレータは、自身にとって判り易いイベントを設定できる。また、作業現場の監督者等の関係者が前記所定のイベントを設定する場合には、作業現場の様子等を踏まえて、オペレータにとって判り易いイベントを設定できる。
【0017】
上記第1発明又は第2発明では、前記装置が前記所定のイベントの発生を示す情報を取得したとき、前記建設機械の始動処理を実行する機能をさらに有するように構成され得る(第3発明)。
【0018】
これによれば、サーバにより自動的に建設機械の起動処理が実行されるので、オペレータは新たに操縦する建設機械の操縦を速やかに開始することが可能となる。なお、上記「起動処理」は、例えば、建設機械のエンジンを始動する処理を含み得る。ただし、該「起動処理」は、例えば、建設機械の主要な電子機器の電源をONにする処理であってもよい。
【0019】
上記第1発明又は第2発明では、前記所定のイベントは操縦開始の緊急度合いの高低が設定されており、前記装置が前記所定のイベントの発生を示す情報を取得したとき、該イベントに設定された緊急度合いが高いことを必要条件として、前記建設機械の始動処理を実行する機能をさらに有するように構成され得る(第4発明)。
【0020】
これによれば、前記所定のイベントに設定された緊急度合いが高い場合、すなわち、該イベントの発生に応じて、該イベントに対応する建設機械の操縦を速やかに開始することの必要性が高い場合には、該建設機械のエンジンが自動的に始動される。これにより、オペレータは、該建設機械の遠隔操縦による作業を素早く開始することが可能となる。また、イベントに設定された緊急度合いが低い場合には、該イベントに対応する建設機械のエンジンの始動処理が自動的には実行されないので、該建設機械のエンジンの燃料使用を抑制できる。
【0021】
上記第1~第4発明では、前記所定のイベントは操縦開始の緊急度合いの高低が設定されており、
前記報知装置は、前記装置が前記所定のイベントの発生を示す情報を取得したとき、前記緊急度合いの高低に応じて前記報知情報の出力形態を異ならせて出力するように構成されていることが好ましい(第5発明)。
【0022】
これによれば、前記所定のイベントに設定された緊急度合いの高低に応じて、オペレータに対して出力される報知情報の出力形態が異なるので、オペレータは、発生したイベントに対応する建設機械の操縦を直ぐに開始しなければならないのか、あるいは、未だ余裕がある状態なのかを区別して認識することができる。
【0023】
上記第1~第5発明では、前記装置は、前記建設機械に搭載されたカメラ、又は、前記建設機械の作業現場に配置されたカメラの撮影映像に基づいて記所定のイベントの発生の有無を検知するように構成され得る(第6発明)。
【0024】
これによれば、上記カメラの撮影映像に基づいてイベントの発生の有無を検知することで、様々なイベントの発生の有無を検知できる。また、遠隔操縦システムでは、通常、オペレータや、作業現場の監督者等が作業現場の状況や、操縦対象の建設機械の動作状態等を確認するために、上記カメラが備えられるので、イベント発生の検知用のセンサ等を新たに備えることを省略できる。
上記第1~第6発明では、
前記操縦システムは、前記オペレータが操作可能な前記操縦装置の操作に応じて、複数の操縦対象の建設機械を遠隔操縦し得るように構成された遠隔操縦システムであり、
前記装置は、前記複数の建設機械のそれぞれの遠隔操縦を開始すべきタイミングである操縦要求タイミングに関連する所定のイベントとし各建設機械に対応付けられて事前に登録された前記建設機械を前記オペレータが操縦することにより実施する予定の作業に適合するイベントが発生したか否かを示す情報を取得し、
前記報知装置は、前記装置が、前記複数の建設機械のうちのいずれかの建設機械に関して、該建設機械に対応付けられた前所定のイベントの発生を示す情報を取得したとき、その旨を示す報知情報を出力する、ことが好ましい(第7発明)。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態の遠隔操縦システムの全体構成を概略的に示す図。
図2】実施形態の遠隔操縦システムの制御処理に関する構成を示すブロック図。
図3図1に示す操縦装置の構成を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の一実施形態を図1図3を参照して以下に説明する。図1を参照して、本実施形態の建設機械の遠隔操縦システム1は、オペレータが操縦装置40を操作することで、該オペレータ又は操縦装置40に対して操縦対象の建設機械として割り当てられた複数の建設機械10のそれぞれを選択的に遠隔操縦し得るように構成されたシステムである。
【0027】
この遠隔操縦システム1は、操縦装置40及び建設機械10の他、遠隔操縦システム1に関する様々な運営処理、情報処理等を行うサーバ50と、各建設機械10が配置される作業現場に設置された複数のカメラ60(以降、現場設置カメラ60という)とを含む。
【0028】
そして、各建設機械10と操縦装置40とサーバ50とが、無線通信網を含むネットワークNWを介して相互に通信を行うことが可能である。また、操縦装置40及びサーバ50は、適宜、ネットワークNWを介して現場設置カメラ60の撮影映像を取得することが可能である。なお、操縦装置40による操縦対象の複数の建設機械10が配置される作業現場は、1つの作業現場、あるいは、複数の作業現場のいずれでもよい。
【0029】
各建設機械10としては、例えば油圧ショベルを採用し得る。この場合、各建設機械10は、公知の油圧ショベルと同様に、クローラ式(又は車輪型)の走行体11と、該走行体11に旋回可能に搭載された旋回体12と、旋回体12の前部に取り付けられた作業装置13とを備える。旋回体12は、運転室12aを前部に有し、後述のエンジン22及び油圧回路装置21等が収容された機械室12bを後部に有する。また、作業装置13は、ブーム13a、アーム13b及びアタッチメント13c(例えばバケット)を有する。
【0030】
また、詳細な図示は省略するが、各建設機械10は、図2に示すように、複数の油圧アクチュエータ20と、各油圧アクチュエータ20に作動油を供給するための図示しない油圧ポンプや方向切換弁等を含む油圧回路装置21と、油圧回路装置21の油圧ポンプを駆動するエンジン22と、各油圧アクチュエータ20の作動を操作するための操作装置23と、操作装置23を駆動する電動式の操作駆動装置24と、建設機械10の周囲(運転室12aの前方を含む)の状況を撮影し得るように旋回体12等に搭載された複数のカメラ25(以降、機械搭載カメラ25という)と、建設機械10の運転制御を行う機能を有する制御装置30(以降、機械側制御装置30という)とを備える。なお、図2では、油圧アクチュエータ20及び機械搭載カメラ25は、それぞれの1つを代表的に記載している。
【0031】
油圧アクチュエータ20には、走行体11の走行駆動を行う走行用油圧モータ、旋回体12の旋回駆動を行う旋回用油圧モータ、作業装置13のブーム13a、アーム13b及びアタッチメント13cをそれぞれ駆動する油圧シリンダが含まれる。
【0032】
操作装置23は、運転室12aに配置される操作レバーや操作ペダル、操作スイッチ等を含む。また、操作駆動装置24は、例えば複数の電動モータを有し、操作装置23に含まれる操作レバーや操作ペダルを、適宜の動力伝達機を介して電動モータにより駆動し得るように構成されている。
【0033】
機械側制御装置30は、例えばマイクロコンピュータ、メモリ(RAM、ROM等)、インターフェース回路、無線通信機等を含む1つ以上の電子回路ユニットにより構成される。そして、機械側制御装置30は、実装されたハードウェア構成及びプログラム(ソフトウェア構成)の一方又は両方により実現される機能として、機械搭載カメラ25の撮影映像を取得する機能と、操縦装置40の後述のマスター側制御装置47及びサーバ50のそれぞれとの通信をネットワークNWを介して行う機能と、油圧回路装置21に備えられた電動弁(電磁比例弁等)、エンジン22及び操作駆動装置24のそれぞれの作動制御を通じて建設機械10の運転制御を行う機能とを有する。
【0034】
この場合、機械側制御装置30は、マスター側制御装置47又はサーバ50との通信によって、建設機械10の作動指令を受信することや、機械搭載カメラ25の撮影映像や建設機械10の作動状態を示す情報をマスター側制御装置47又はサーバ50に送信することが可能である。
補足すると、操縦装置40の操縦対象の複数の建設機械10は、同一機種の建設機械に限らず、サイズや能力等の仕様が互いに異なる複数機種の建設機械であってもよい。
【0035】
操縦装置40は、図3に示すように、遠隔操縦室41内に、オペレータが着座するシート42と、建設機械10の遠隔操縦のためにオペレータが操作する操作装置43と、音響情報(聴覚的情報)の出力装置としてのスピーカ44、表示情報(視覚的情報)の出力装置としてのディスプレイ45とを備える。
【0036】
操作装置43は、例えば、建設機械10の操作装置23と同様もしくは類似の構成のものを採用し得る。例えば図3に例示する操作装置43は、シート42に着座したオペレータが操作し得るようにシート42の前側に配置された操作ペダル43ap付きの操作レバー43aと、シート42の左右の両側に各々配置された操作レバー43bとを含む。ただし、操作装置43は、建設機械10の操作装置23と異なる構成のものであってもよい。例えば操作装置43は、ジョイスティック、操作ボタン等を有する携帯型の操作装置であってもよい。
【0037】
スピーカ44は、遠隔操縦室41の複数個所(例えば、遠隔操縦室41の前部、後部及び左右の両側)に設置されている。ディスプレイ45は、例えば液晶ディスプレイ、ヘッドアップディスプレイ等により構成され、シート42に着座したオペレータが視認し得るように遠隔操縦室41に設置されている。なお、本実施形態では、スピーカ44及びディスプレイ45は、本発明における報知装置として機能し得るものである。
【0038】
また、図2に示すように、操縦装置40は、さらに、操作装置43の操作状態を検出するための操作状態検出器46と、操縦装置40に関する制御処理を実行する機能を有するマスター側制御装置47とを備える。なお、マスター側制御装置47は、遠隔操縦室41の内部及び外部のいずれに配置されていてもよい。
【0039】
操作状態検出器46は、例えば、操作装置43に組み込まれたポテンショメータ、接点スイッチ等を含み、操作装置43の各操作部(操作レバー43a,43b、操作ペダル43ap等)の操作状態を示す検出信号を出力するように構成されている。
【0040】
マスター側制御装置47は、例えば、マイクロコンピュータ、メモリ(RAM、ROM等)、インターフェース回路、通信機等を含む1つ以上の電子回路ユニットにより構成される。そして、マスター側制御装置47は、実装されたハードウェア構成及びプログラム(ソフトウェア構成)の一方又は両方により実現される機能として、操作状態検出器46の検出信号を取得する機能と、操縦対象の各建設機械10が配置された作業現場の現場設置カメラ60の撮影映像をネットワークNWを介して取得する機能と、操縦対象の各建設機械10の機械側制御装置30及びサーバ50のそれぞれとの通信をネットワークNWを介して行う機能と、スピーカ44の作動制御及びディスプレイ45の表示制御を行う機能とを有する。
【0041】
この場合、マスター側制御装置47は、各建設機械10の機械側制御装置30との通信によって、該建設機械10の機械搭載カメラ25の撮影映像や、該建設機械10の作動状態を示す情報を機械側制御装置30から取得し得ると共に、操作装置43の操作状態に応じて生成した建設機械10の作動指令を機械側制御装置30に送信することが可能である。また、マスター側制御装置47は、サーバ50との通信によって、各建設機械10の遠隔操縦に関する様々な情報や指令をサーバ50から取得することが可能である。
【0042】
サーバ50は、例えば1つ以上のコンピュータ、あるいは、マイクロコンピュータ等を含む1つ以上の電子回路ユニット、あるいは、これらの組み合わせにより構成される。そして、サーバ50は、実装されたハードウェア構成及びプログラム(ソフトウェア構成)の一方又は両方により実現される機能として、現場設置カメラ60の撮影映像をネットワークNWを介して取得する機能と、各建設機械10の機械側制御装置30及び操縦装置40のマスター側制御装置47のそれぞれとの通信をネットワークNWを介して行う機能とを有する。
【0043】
さらに、サーバ50は、操縦装置40のオペレータが操作可能な図示しない通信端末(例えば、スマートフォン、タブレット端末、パソコン等)や、各建設機械10が配置される作業現場の監督者等が操作可能な図示しない通信端末(例えば、スマートフォン、タブレット端末、パソコン等)と通信を行うことも可能である。
【0044】
そして、サーバ50は、各建設機械10の機械側制御装置30との通信によって、該建設機械10の機械搭載カメラ25の撮影映像や、該建設機械10の作動状態を示す情報を機械側制御装置30から取得し得ると共に、該建設機械10の起動指令(建設機械10のメインスイッチをONにする指令、あるいは、エンジン22を始動させる指令)等の作動指令を機械側制御装置30に送信することが可能である。
【0045】
また、サーバ50は、操縦装置40のマスター側制御装置47との通信によって、操縦装置40の作動状態を示す情報をマスター側制御装置47から取得し得ると共に、建設機械10の遠隔操縦に関する様々な情報や指令をマスター側制御装置47に送信することが可能である。
【0046】
また、サーバ50には、各建設機械10及び操縦装置40の稼働スケジュールを示す情報や、操縦装置40により、各建設機械10の操縦を開始すべきタイミングである操縦要求タイミングに関連するイベントの内容を示す情報が事前に(操縦装置40による各建設機械10の遠隔操縦の実行前に)に登録されている。該イベントは、操縦装置40により、各建設機械10の操縦を開始する直前の期間に生じ得る1つ以上のイベントであり、以降、操縦開始直前イベントという。
【0047】
そして、本実施形態では、操縦装置40のオペレータ、又は、関係者(例えば建設機械10の作業現場の監督者等)が、遠隔操縦対象の建設機械10毎に、所望の操縦開始直前イベントを通信端末を介してサーバ50に登録(設定)することが可能である。また、この場合、該操縦開始直前イベントの発生に応じて建設機械10の操縦を開始すべき緊急度合いの高低を該操縦開始直前イベントに付加することも可能である。
【0048】
そして、サーバ50は、現場設置カメラ60もしくは各建設機械10の機械搭載カメラ25の撮影映像、あるいは、各建設機械10の作業現場の監督者等が作業の進捗に応じてサーバ50に入力する情報、あるいは、時刻情報等に基づいて、各建設機械10毎に登録されたイベントの発生の有無を検知する機能をさらに有する。
【0049】
次に、オペレータが操縦装置40を使用して、複数の建設機械10の遠隔操縦を行う場合の作動を具体的に説明する。複数の建設機械10が遠隔操縦を実施される前に、事前に、オペレータ又は関係者(以降、これを総称的に現場関係者という)が操作可能な通信端末(図示せず)を使用して、当該遠隔操縦対象の各建設機械10毎に、操縦開始直前イベントをサーバ50に対して設定(登録)しておく。
【0050】
この場合、サーバ50は認識可能な操縦開始直前イベントの種類に関するデータベースを保有している。そして、現場関係者は、操縦対象の各建設機械10により実施する作業内容や作業現場の様子等を踏まえて、各建設機械10毎に、所望の操縦開始直前イベント(1つ又は複数の操縦開始直前イベント)を上記データベースから選定し、その選定した操縦開始直前イベントをサーバ50に設定する。この場合、サーバ50は、操縦対象の各建設機械10により実施する作業内容を踏まえて、該作業内容に適合する複数の操作開始直前イベントの候補を現場関係者に提示するようにしてもよい。
【0051】
具体的には、例えば、遠隔操縦対象の建設機械10により実施する予定の作業が、トラックへの土砂等の積み込み作業である場合、トラックが作業現場に新たに到着するというイベント、あるいは、トラックが操縦対象の建設機械10から所定の距離内の位置に接近するというイベント、あるいは、作業現場に居る特定の作業者が操縦対象の建設機械10に対して所定の合図をするというイベント、あるいは、作業現場の監督者等がサーバ50に対して所定の入力操作(例えば、操縦対象の建設機械10による作業の開始を許可する旨の入力操作等)を行うというイベント、あるいは、これらのイベントのうちの複数のイベントを組み合わせたもの、あるいは、これらのイベントと時刻範囲(午前、午後、13:00~14:00等の時刻範囲)を組み合わせたものを、操縦開始直前イベントとして選定して、サーバ50に設定(登録)することが可能である。
【0052】
なお、操縦対象の建設機械10による作業の開始時刻があらかじめ決まっているような場合には、例えば実際の時刻が当該開始時刻の所定時間前(例えば5分前等)の時刻に達するというイベントを操縦開始直前イベントとして設定することも可能である。
【0053】
本実施形態では、現場関係者は、さらに、サーバ50に設定する操縦開始直前イベントの発生に応じて建設機械10の操縦を開始することの緊急度合いの高低を、該操縦開始直前イベントに付加することが可能である。
【0054】
具体的には、例えば、操縦対象の建設機械10により実施する予定の作業が、トラックへの土砂等の積み込み作業である場合、トラックが作業現場に新たに到着するというイベントを、操縦開始の緊急度合いが低い操縦開始直前イベントとしてサーバ50に設定することや、トラックが操縦対象の建設機械10から所定の距離内の位置に接近するというイベントを、操縦開始の緊急度合いが高い操縦開始直前イベントとしてサーバ50に設定することが可能である。
【0055】
また、時間的に前後して(時間差をおいて)発生し得る複数のイベントを、各別の操作開始直前イベントとしてサーバ50に設定することも可能であると共に、それぞれの操作開始直前イベントに、互いに異なる緊急度合いを付加することも可能である。例えば、操縦対象の建設機械10により実施する予定の作業が、トラックへの土砂等の積み込み作業である場合、トラックが作業現場に新たに到着するというイベントと、トラックが操縦対象の建設機械10から所定の距離内の位置に接近するというイベントとをそれぞれ、緊急度合いが低い操縦開始直前イベント、緊急度合いが高い操縦開始直前イベントとしてサーバ50に設定することが可能である。
【0056】
補足すると、操縦対象の建設機械10により実施する作業内容の種類、あるいは、作業スケジュール等に応じて、サーバ50が自動的に、操縦開始直前イベント及びそれに対応する緊急度合いを設定し得るようにすることも可能である。
【0057】
上記の如く、操縦対象の各建設機械10毎に、操縦開始直前イベントがサーバ50に設定(登録)された後、サーバ50は、操縦対象の各建設機械10による作業を実施する当日において、各建設機械10毎に、操縦開始直前イベントが発生したか否かを検知する。この場合、サーバ50は、操縦開始直前イベントが、各建設機械10の作業現場の現場設置カメラ60の撮影画像、あるいは、該作業現場に配置された各建設機械10(操縦対象の建設機械10以外の建設機械も含む)の機械搭載カメラ25の撮影画像から認識し得るイベントである場合には、これらの撮影画像を取得しつつ、該撮影画像に基づいて、操縦開始直前イベントの発生の有無を検知する。
【0058】
例えば、操縦開始直前イベントが、トラックが作業現場に新たに到着するというイベントである場合、サーバ50は、作業現場の入口を撮影し得る現場設置カメラ60又は機械搭載カメラ25の撮影画像に基づいて、操縦開始直前イベントの発生の有無を検知することができる。
【0059】
また、操縦開始直前イベントが、例えば、トラックが操縦対象の建設機械10から所定の距離内の位置に接近するというイベント、あるいは、作業現場に居る特定の作業者が操縦対象の建設機械10に対して所定の合図をするというイベントである場合、サーバ50は、操縦対象の建設機械10の周辺を撮影し得る現場設置カメラ60又は機械搭載カメラ25の撮影画像に基づいて、操縦開始直前イベントの発生の有無を検知することができる。
【0060】
なお、操縦開始直前イベントが、作業現場の監督者等によるサーバ50への入力操作である場合、あるいは、時刻により規定されるイベントである場合には、サーバ50は、撮影映像を必要とせずに、該操作開始直前イベントの発生の有無を検知できる。補足すると、操作開始直前イベントの発生の有無は、サーバ50とは別の装置により行い、その検知結果を示す情報をサーバ50が取得し得るようにしてもよい。
【0061】
サーバ50は、いずれかの操縦対象の建設機械10に関して、操縦開始直前イベントの発生を検知すると(又はその検知を示す情報を取得すると)、当該操縦開始直前イベントが発生したことを示す報知情報(以降、イベント発生報知情報という)をオペレータに対して出力させることを、操縦装置40のマスター側制御装置47に指令する。
【0062】
さらに、サーバ50は、発生した操縦開始直前イベントに緊急度合いが付加されている場合には、その緊急度合いの高低を示す情報もマスター側制御装置47に送信する。また、該緊急度合いが「高い」緊急度合いである場合には、サーバ50は、操縦開始直前イベント発生に応じて操縦を開始すべき建設機械10の機械側制御装置30に、該建設機械10の起動処理、例えば該建設機械10のメインスイッチ(該建設機械10の主要機器に電源を投入するスイッチ)をONにする指令やエンジン22の始動処理を実行すべき旨の指令を送信する。
【0063】
このとき、イベント発生報知情報の出力の指令を受けたマスター側制御装置47は、該イベント発生報知情報をスピーカ44から音声等により出力することと、該イベント発生報知情報をディスプレイ45に表示させることとの一方又は両方を行わせるように、スピーカ44及びディスプレイ45に一方又は両方を制御する。これにより、サーバ50は、マスター側制御装置47を介してスピーカ44及びディスプレイ45に一方又は両方から、イベント発生報知情報を出力させる。
【0064】
さらに、この場合、マスター側制御装置47は、操縦開始直前イベントに緊急度合いが付加されている場合には、その緊急度合の高低に応じた出力形態で、スピーカ44及びディスプレイ45に一方又は両方からイベント発生報知情報を出力させる。
【0065】
例えば、マスター側制御装置47は、緊急度合いが高いほど、スピーカ44から出力させる音声や警報音(操縦開始直前イベントの発生を示す音声や警報音)の音量を大きくするように、スピーカ44を制御する。あるいは、マスター側制御装置47は、緊急度合いが高いほど、ディスプレイ45に表示させる情報(操縦開始直前イベントの発生を示す情報)の輝度や彩度を大きくするように、あるいは、該情報の表示色をより目立ちやすい色にするように、ディスプレイ45を制御する。また、例えば、操縦装置40のシート42に加振器が組付けられている場合には、緊急度合いが高いほど、シート42の振動強度を高めるようにしてもよい。
【0066】
また、エンジン22の始動処理を実行すべき旨の指令を受けた機械側制御装置30は、建設機械10のメインスイッチをONにすると共に該建機械10のエンジン22を始動させる。これにより、サーバ50は、機械側制御装置30を介して、操縦対象の建設機械10のエンジン22を自動的に始動させる。
【0067】
操縦装置40のオペレータは、上記の如く、イベント発生報知情報を受けることで、他の建設機械10の遠隔操縦による作業中であっても、該イベント発生報知情報により示される操縦開始直前イベントに対応する建設機械10の遠隔操縦をまもなく開始すべきタイミングであることを認識することができる。また、このとき、緊急度合いに応じた出力形態で、イベント発生報知情報の報知がなされるため、オペレータは、建設機械10の遠隔操縦を開始することの緊急度合いの高低を適切に認識することもできる。
【0068】
従って、オペレータは、適切なタイミングで、操縦対象の建設機械10を切替えて、新たな建設機械10の遠隔操縦を開始することができる。ひいては、オペレータの遠隔操縦による作業効率を高めることができる。また、緊急度合いが「高い」緊急度合いに設定されている場合には、新たに操縦を開始すべき建設機械10のエンジン22がサーバ50から機械側制御装置30に送信される指令に応じて自動的に始動させるので、オペレータは速やかに該建設機械10の遠隔操縦による作業を開始することができる。
【0069】
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態を採用することもできる。以下に、他の実施形態をいくつか説明する。
【0070】
前記実施形態では、操縦開始直前イベントに対応付けられた緊急度合いが高いことを必要条件として、新たに操縦を開始すべき建設機械10の機械側制御装置30が、サーバ50から指令に応じて該建設機械10のエンジン22を自動的に始動させるようにしたが、緊急度合いの高低によらずに、該建設機械10のエンジン22を自動的に始動させるようにしてもよい。あるいは、緊急度合いが低い場合には、該建設機械10の起動処理として、例えば該建設機械10のエンジン22を始動させずに該建設機械10のメインスイッチをONにする処理を機械側制御装置30に実行させるようしてもよい。こうすることで、緊急度合いが低い操縦開始直前イベントに対しては該建設機械10のエンジンの始動処理が自動的には実行されないので、該建設機械10のエンジンの燃料使用を抑制することができる。
【0071】
また、前記実施形態では、操縦対象の建設機械10の作業現場に配置されるカメラとして、現場設置カメラ60又は機械搭載カメラ25を用いたが、例えば該作業現場にて適宜飛行させるドローン等の遠隔操縦式の飛行体に搭載されるカメラを、該作業現場に配置されるカメラとして用いることも可能である。
【0072】
また、前記実施形態では、報知装置として、操縦装置40に備えたスピーカ44及びディスプレイ45を例示したが、該報知装置は、例えばオペレータが所持するスマートフォン、タブレット端末等の携帯型の通信端末であってもよい。
【0073】
また、前記実施形態では、建設機械として油圧ショベルを例示したが、本発明の遠隔操縦装置における建設機械は、油圧ショベルに限らず、クレーン等の建設機械であってもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…遠隔操縦システム、10…建設機械、22…エンジン、25…機械搭載カメラ、40…操縦装置、44…スピーカ(報知装置)、45…ディスプレイ(報知装置)、60…現場設置カメラ。
図1
図2
図3