(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】光部品の製造方法、及び押さえ治具
(51)【国際特許分類】
G02B 6/38 20060101AFI20230704BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
G02B6/38
G02B6/42
(21)【出願番号】P 2019239510
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 三千男
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 智哉
(72)【発明者】
【氏名】藤村 康
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】実公平07-037815(JP,Y2)
【文献】特開2015-125217(JP,A)
【文献】米国特許第09583862(US,B1)
【文献】特開2019-120936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/24,6/255-6/27,6/30-6/34,6/36-6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光ファイバを保持し、前記第1光ファイバの光軸に平行な第1平坦面を外面に有する円筒状のレセプタクルを有する光モジュールと、
前記第1光ファイバと光結合する第2光ファイバを保持し、前記第2光ファイバの光軸に平行な第2平坦面を外面に有する円筒状の光ファイバ保持部材と、
前記第1平坦面と前記第2平坦面の平行度を確定する第3平坦面を有し、前記レセプタクルと前記光ファイバ保持部材を相互に押圧するクリップ部材と、
を備える光部品の製造方法であって、
前記光モジュールと前記光ファイバ保持部材を準備する工程と、
前記光モジュールの前記レセプタクルと前記光ファイバ保持部材に前記クリップ部材を取り付ける工程と、
前記光モジュールの前記レセプタクルと前記光ファイバ保持部材を下側から押圧すると共に前記クリップ部材を上側から押圧する工程と、を含み、
前記押圧する工程では、
前記下側から押圧する押圧面と前記上側から押圧する押圧面との平行度が変化する治具を用いて、前記レセプタクルの前記第1平坦面と前記光ファイバ保持部材の前記第2平坦面が前記クリップ部材の前記第3平坦面で平行度を確定するまで押圧を行う、光部品の製造方法。
【請求項2】
第1光ファイバを保持し、前記第1光ファイバの光軸に平行な第1平坦面を外面に有する円筒状のレセプタクルを有する光モジュールと、前記第1光ファイバと光結合する第2光ファイバを保持し、前記第2光ファイバの光軸に平行な第2平坦面を外面に有する円筒状の光ファイバ保持部材と、を支える下板と、
前記第1平坦面と前記第2平坦面の平行度を確定する第3平坦面を有し、前記レセプタクルと前記光ファイバ保持部材を相互に押圧するクリップ部材に対し、前記クリップ部材上に位置する、可動式の押さえ部と、
前記押さえ部による押圧力が一定値以上となるときに前記押さえ部による押圧を停止させるストッパと、を備える押さえ治具。
【請求項3】
前記下板は、前記レセプタクルの第1円筒状フランジと、前記光ファイバ保持部材の第2円筒状フランジとの間の領域に突出する凸部を有する、請求項2に記載の押さえ治具。
【請求項4】
前記押さえ部は、空隙を有する台座と、前記空隙の内部において可動する支持部とを含む、請求項2又は請求項3に記載の押さえ治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光部品の製造方法、及び押さえ治具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光ファイバケーブルが接続された光コネクタが記載されている。光コネクタでは、プリント板の表面に実装される光デバイスのレセプタクルと、光ファイバの自由端に装着されたフェルールとを互いに突き合わせてスリーブに挿入する。光コネクタにおいて、光デバイスのレセプタクルと光ファイバの自由端とはクリップによって互いに連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したように、光コネクタでは、光デバイスのレセプタクルと、光ファイバの自由端に装着されたフェルールとが互いに突き合わされた状態でスリーブに挿入され、光デバイスのレセプタクルと光ファイバの自由端とはクリップによって互いに連結される。クリップは、光デバイスのレセプタクルと光ファイバに引っ掛かるフックを有し、フックが引っ掛かることによって光デバイスのレセプタクル及び光ファイバに装着される。
【0005】
上記のようにフックを引っ掛けて装着を行う場合には、フックを引っ掛けるときに光デバイスのレセプタクルと光ファイバとの距離以上にフックを広げる必要がある。広げられるフックのバネ力によってクリップの装着を行うため、装着時にクリップが意図せず外れる等、クリップの装着が困難となる場合がある。クリップの装着は手作業で行われる場合がある。よって、上記のように装着が困難である場合、装着の品質に個人差が生じることがある。更に、装着が正しくなされない等、品質上の問題が生じる可能性がある。
【0006】
本開示は、装着作業を標準化することができると共に品質を向上させることができる光部品の製造方法、及び押さえ治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一形態に係る光部品の製造方法は、第1光ファイバを保持し、第1光ファイバの光軸に平行な第1平坦面を外面に有する円筒状のレセプタクルを有する光モジュールと、第1光ファイバと光結合する第2光ファイバを保持し、第2光ファイバの光軸に平行な第2平坦面を外面に有する円筒状の光ファイバ保持部材と、第1平坦面と第2平坦面の平行度を確定する第3平坦面を有し、レセプタクルと光ファイバ保持部材を相互に押圧するクリップ部材と、を備える光部品の製造方法において、光モジュールと光ファイバ保持部材を準備する工程と、光モジュールのレセプタクルと光ファイバ保持部材にクリップ部材を取り付ける工程と、光モジュールのレセプタクルと光ファイバ保持部材を下側から押圧すると共にクリップ部材を上側から押圧する工程と、を含み、押圧する工程では、レセプタクルの第1平坦面と光ファイバ保持部材の第2平坦面を押圧する押圧面の平行度が変化する治具を用いて、レセプタクルの第1平坦面と光ファイバ保持部材の第2平坦面がクリップ部材の第3平坦面で平行度を確定するまで押圧を行う。
【0008】
一形態に係る押さえ治具は、第1光ファイバを保持し、第1光ファイバの光軸に平行な第1平坦面を外面に有する円筒状のレセプタクルを有する光モジュールと、第1光ファイバと光結合する第2光ファイバを保持し、第2光ファイバの光軸に平行な第2平坦面を外面に有する円筒状の光ファイバ保持部材と、を支える下板と、第1平坦面と第2平坦面の平行度を確定する第3平坦面を有し、レセプタクルと光ファイバ保持部材を相互に押圧するクリップ部材と、クリップ部材上に位置する可動式の押さえ部と、押さえ部による押圧力が一定値以上となるときに押さえ部による押圧を停止させるストッパと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る光部品の製造方法、及び押さえ治具によれば、装着作業を標準化することができると共に品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る光モジュールを示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1の光モジュールのレセプタクルと光ファイバ保持部材を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、光ファイバ保持部材を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5の光ファイバ保持部材及び偏波保持ファイバを示す正面図である。
【
図7B】
図7Bは、
図1の光モジュールのクリップ部材の周辺を拡大した側面図である。
【
図8】
図8は、基板に実装された光モジュールと押さえ治具を模式的に示す斜視図である。
【
図9】
図9は、
図8の押さえ治具及び光モジュールを示す斜視図である。
【
図11】
図11は、
図10の押さえ治具の可動式の押さえ部における台座と支持部を示す断面斜視図である。
【
図12】
図12は、実施形態に係る光部品の製造方法の工程の例を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、
図11の可動式の押さえ部、光モジュールのレセプタクル、光ファイバ保持部材、及びクリップ部材を示す斜視図である。
【
図14】
図14は、
図10の押さえ治具の下板と可動式の押さえ部とを模式的に示す斜視図である。
【
図15】
図15は、変形例に係る押さえ治具を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。一実施形態に係る光部品の製造方法は、第1光ファイバを保持し、第1光ファイバの光軸に平行な第1平坦面を外面に有する円筒状のレセプタクルを有する光モジュールと、第1光ファイバと光結合する第2光ファイバを保持し、第2光ファイバの光軸に平行な第2平坦面を外面に有する円筒状の光ファイバ保持部材と、第1平坦面と第2平坦面の平行度を確定する第3平坦面を有し、レセプタクルと光ファイバ保持部材を相互に押圧するクリップ部材と、を備える光部品の製造方法であって、光モジュールと光ファイバ保持部材を準備する工程と、光モジュールのレセプタクルと光ファイバ保持部材にクリップ部材を取り付ける工程と、光モジュールのレセプタクルと光ファイバ保持部材を下側から押圧すると共にクリップ部材を上側から押圧する工程と、を含み、押圧する工程では、レセプタクルの第1平坦面と光ファイバ保持部材の第2平坦面を押圧する押圧面の平行度が変化する治具を用いて、レセプタクルの第1平坦面と光ファイバ保持部材の第2平坦面がクリップ部材の第3平坦面で平行度を確定するまで押圧を行う。
【0012】
この光部品の製造方法では、光モジュールのレセプタクルと光ファイバ保持部材にクリップ部材を取り付けた後に、光モジュールのレセプタクルと光ファイバ保持部材を下側から押圧する。この押圧は、レセプタクルの第1平坦面と光ファイバ保持部材の第2平坦面を押圧する押圧面の平行度が変化する治具を用いて行われる。当該治具による押圧では、光モジュールのレセプタクルと光ファイバ保持部材を下側から押圧すると共にクリップ部材を上側から押圧する。当該押圧は、レセプタクルの第1平坦面と光ファイバ保持部材の第2平坦面の平行度がクリップ部材の第3平坦面によって確定されるまで行われる。従って、光モジュールのレセプタクルと光ファイバ保持部材を連結するクリップ部材を治具によって上側から押圧すると共に、当該レセプタクル及び光ファイバ保持部材を当該治具によって下側から押圧する。その結果、レセプタクルと光ファイバ保持部材に対するクリップ部材の強固な装着を治具によって容易に行うことができると共に、各部品の製造公差を吸収することができる。また、治具でレセプタクルと光ファイバ保持部材を下側から押圧すると共にクリップ部材を上側から押圧することにより、治具の使い方を徹底することでクリップ部材の装着を標準化することができる。従って、装着の品質に個人差が生じることを抑制することができるので、装着作業を標準化して品質を向上させることができる。
【0013】
一実施形態に係る押さえ治具は、第1光ファイバを保持し、第1光ファイバの光軸に平行な第1平坦面を外面に有する円筒状のレセプタクルを有する光モジュールと、第1光ファイバと光結合する第2光ファイバを保持し、第2光ファイバの光軸に平行な第2平坦面を外面に有する円筒状の光ファイバ保持部材と、を支える下板と、第1平坦面と第2平坦面の平行度を確定する第3平坦面を有し、レセプタクルと光ファイバ保持部材を相互に押圧するクリップ部材と、クリップ部材上に位置する可動式の押さえ部と、押さえ部による押圧力が一定値以上となるときに押さえ部による押圧を停止させるストッパと、を備える。
【0014】
この押さえ治具は、光モジュールのレセプタクルと光ファイバ保持部材を下側から押圧する下板と、クリップ部材を上側から押圧する押さえ部とを備え、押さえ部は可動式とされている。従って、レセプタクルと光ファイバ保持部材を下板で支えた状態で可動式の押さえ部によってクリップ部材を介してレセプタクルの第1平坦面と光ファイバ保持部材の第2平坦面を押圧することできる。よって、第1平坦面と第2平坦面との平行度の確定を押さえ治具によって確実且つ容易に行うことができる。押さえ治具は、更に、押さえ部による押圧力が一定値以上となるときに押さえ部による押圧を停止させるストッパを備える。ストッパにより押さえ部による押圧力が一定値を超えないようにすることができるので、クリップ部材の装着時等における各部品の破損を抑制することができる。
【0015】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の光部品の製造方法及び押さえ治具の具体例を以下で図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、下記の例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示され、特許請求の範囲と均等の範囲内における全ての変更が含まれることが意図される。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解を容易にするため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0016】
図1は、本実施形態に係る光部品を備えた光モジュール1を示す斜視図である。
図2は、光モジュール1を示す平面図である。なお、各図では、理解の容易のため、XYZ直交座標系が示されている。例えば、光モジュール1は、光トランシーバの内部に搭載されるコヒーレント用光源モジュール、すなわち、波長可変光源(Wavelength Tunable laser)である。
【0017】
光モジュール1は、直方体状の筐体2と、筐体2に固定される光ファイバ導入部3とを備える。筐体2は4つの側壁を有する。筐体2の4つの側壁のうち、窓部を有する側壁2aには、Z方向に延びる中心軸を有する筒状の光ファイバ導入部3とレセプタクル5が設けられる。光ファイバ導入部3は、側壁2aから筐体2の外側に突出する。光ファイバ導入部3は、例えば、Z方向に延びる中心軸を有する円筒状とされている。
【0018】
筐体2の側壁2aを除く少なくとも1つの側壁には、複数の端子4が設けられる。複数の端子4は、例えば、筐体2の各側壁を構成する多層セラミック層(multi-layered ceramics)から引き出される。複数の端子4には、半導体レーザ(LD)からの発振波長を制御するための端子、温度制御のための端子、及び光出力モニタのための端子等が含まれる。
【0019】
図3は、筐体2及び光ファイバ導入部3を含む光モジュール1の側面図である。光モジュール1は、光ファイバ導入部3に設けられるレセプタクル5と、レセプタクル5に連結されるプラグ6(光ファイバ保持部材)と、レセプタクル5及びプラグ6が連結された状態を保持するクリップ部材10とを備える。本実施形態に係る光部品はレセプタクル5とプラグ6とクリップ部材10とを備える。
図3に示されるように、レセプタクル5、プラグ6及びクリップ部材10の厚さH1(Y方向への高さ)は、筐体2の厚さH2よりも抑えられており低背化が実現されている。
【0020】
図4は、レセプタクル5及びプラグ6を示す斜視図である。
図4に示されるように、レセプタクル5は、光ファイバF1(第1光ファイバ)を保持するスタブ5aと、スタブ5aを収容すると共にフランジ5c(第1円筒状フランジ)を有する金属製のホルダと、スタブ5aに取り付けられた円筒状のスリーブ5bとを備える。また、フランジ5cを有する金属製のホルダには円筒部5dが設けられる。なお、
図4では、図示を分かりやすくするため、スリーブ5bの内部に収容されたスタブ5a等を実線で示している。光ファイバF1は、例えば、偏波保持ファイバ(Polarization Maintaining Fiber:PMF)である。スリーブ5bは、例えば、円筒状とされており、端面からスリーブ5bの軸線方向に延びるスリット5gを有する割スリーブである。
【0021】
フランジ5cは、スリーブ5b及び円筒部5dに対して拡径されている。フランジ5cは、例えばステンレス製である。フランジ5cの外面は、Y方向に向けられる一対の平坦面5eと、一対の平坦面5eの間において円弧状に湾曲する一対の湾曲面5fとを含む。平坦面5eは、円形状に拡径するフランジ5cを切り欠いた平坦状とされている。すなわち、各平坦面5eは例えばフランジ5cがDカットされた面である。平坦面5eがY方向に沿って一対に設けられることにより、Y方向へのレセプタクル5の高さを抑えることが可能となる。
【0022】
図5は、プラグ6を
図4とは異なる方向から示す斜視図である。
図4及び
図5に示されるように、プラグ6は、光ファイバF2(第2光ファイバ)を保持するスタブ6aと、スタブ6aから拡径されたフランジ6b(第2円筒状フランジ)とを備える。フランジ6bは円筒部6cを備える。フランジ6bは、例えば、ステンレス製である。円筒部6cの直径は、例えば、円筒部5dの直径と同程度である。光ファイバF2は、円筒部6cからプラグ6の外方に延び出している。
【0023】
図6は、光ファイバF2、及び光ファイバF2を保持するスタブ6aを示す正面図である。
図4、
図5及び
図6に示されるように、光ファイバF2は、例えば、偏波保持ファイバである。プラグ6は、スタブ6aがスリーブ5bに挿入されて光ファイバF2と光ファイバF1とが互いに接続することによってレセプタクル5と光結合する。
【0024】
フランジ6bは、スタブ6a及び円筒部6cに対して拡径されている。フランジ6bの外面は、Y方向に向けられる一対の平坦面6dと、一対の平坦面6dの間において円弧状に湾曲する一対の湾曲面6eとを含む。平坦面6dは、円形状に拡径するフランジ6bをDカットして得られた平坦状とされている。平坦面6dがY方向に沿って一対に設けられることにより、Y方向へのプラグ6の高さを抑えることが可能となる。例えば、フランジ6bの一対の平坦面6dの間の距離(プラグ6のY方向の高さ)は、フランジ5cの一対の平坦面5eの間の距離(レセプタクル5のY方向の高さ)と略同一である。
【0025】
図7Aは、クリップ部材10を示す斜視図である。
図7Bは、クリップ部材10の付近の構成を拡大させた側面図である。
図7A及び
図7Bに示されるように、クリップ部材10は、レセプタクル5の平坦面5e及びプラグ6の平坦面6dに接触する平坦状の接触面11a(第3平坦面)を有する板状部11と、板状部11から板状部11の面外方向に延びる押さえ部12と、複数の押さえ部12の間において板状部11から板状部11の面外方向に突出する突出部13とを備える。
【0026】
板状部11は、例えば、平板状とされている。板状部11は、前述した接触面11aと、接触面11aの反対側を向く外面11bとを有する。クリップ部材10は、接触面11aが平坦面5e及び平坦面6dに面接触した状態でレセプタクル5及びプラグ6を保持する。すなわち、接触面11aは平坦面5e及び平坦面6dの平行度を確定する。クリップ部材10は、接触面11aが平坦面5e及び平坦面6dに面接触することにより、光ファイバF1及び光ファイバF2を中心とする回転角度を整合する。外面11bは、接触面11aと同様、平坦状とされている。板状部11は、例えば、Z方向及びX方向に延びる長方形状とされており、Z方向に延びる一対の長辺11cと、X方向に延びる一対の短辺11dとを有する。長辺11cのZ方向の両端のそれぞれからは、Y方向に折り曲げられた押さえ部12が設けられる。なお、平坦面5e及び平坦面6dは、面接触していなくてもよい。すなわち、光ファイバF1及び光ファイバF2を中心とする回転角度が整合されていればよく、平坦面5e及び平坦面6dの平行度が確定されていればよい。なお、この平行度について、回転角度のずれは、例えば±5°の範囲に入っていればよい。例えば、平坦面5e及び平坦面6dのそれぞれと接触面11aとの距離が10μm以下であれば、平行度を保つことができる。
【0027】
クリップ部材10は、複数の押さえ部12を備えており、複数の押さえ部12のそれぞれは例えば板状部11の四隅に設けられる。X方向に沿って並ぶ一対の押さえ部12の距離D3は、例えば、円筒部5dの外径、及び円筒部6cの外径と同程度である。押さえ部12は、板状部11から湾曲する湾曲面12aと、湾曲面12aからY方向に延びる板状部12bとを備える。板状部12bは、例えば、平板状とされている。板状部12bは、クリップ部材10のZ方向の内側に突出する凸部12cを有する。また、クリップ部材10は、ステンレスを含む材料、又は銅を含む材料によって構成されている。ステンレスを含む材料、及び銅を含む材料は、共に、剛性が高いため、薄板で高いバネ力が実現可能である。なお、クリップ部材10は、樹脂からなる材料であってもよい。樹脂からなる材料は、高いバネ力が実現可能である。
【0028】
凸部12cは、例えば、板状部12bにおいてV字状に突出している。但し、凸部12cの形状は適宜変更可能である。凸部12cはレセプタクル5のフランジ5c、又はプラグ6のフランジ6bに当接する部位である。複数の凸部12cのそれぞれは、フランジ5c及びフランジ6bのそれぞれを互いに連結する連結方向(レセプタクル5とプラグ6が互いに接近する方向、クリップ部材10のZ軸の中央側)に押圧する。クリップ部材10により、レセプタクル5とプラグ6は相互に押圧される。従って、押さえ部12が凸部12cを有し、クリップ部材10がレセプタクル5とプラグ6を相互に押圧することによってレセプタクル5とプラグ6の強固な接続が実現される。また、押さえ部12は、レセプタクル5をプラグ6に向けて押圧する第1押さえ部12Aと、プラグ6をレセプタクル5に向けて押圧する第2押さえ部12Bとを含んでいる。互いに対向する2つの押さえ部12の凸部12cの間の距離は、距離D4として示される。
【0029】
長辺11cのZ方向の中央のそれぞれからはY方向に折り曲げられた突出部13が設けられる。クリップ部材10はX方向に沿って配置された一対の突出部13を備えており、各突出部13はZ方向に沿って並ぶ一対の押さえ部12の間に設けられる。突出部13は、板状部11から湾曲する湾曲部13aと、湾曲部13aからY方向に延びる板状部13bとを備える。一対の板状部13bの間にはレセプタクル5のスリーブ5bが介在する。
【0030】
以上のように、本実施形態に係る光部品では、レセプタクル5が平坦面5eを有し、光ファイバ保持部材であるプラグ6が平坦面6dを有する。クリップ部材10は、平坦面5e及び平坦面6dに接触する接触面11aを有する。クリップ部材10は、接触面11aによって平坦面5e及び平坦面6dの平行度を確定させた状態でプラグ6とレセプタクル5とが連結された状態を保持する第1押さえ部12A及び第2押さえ部12Bを有する。第1押さえ部12Aはレセプタクル5をプラグ6に向けて押圧し、第2押さえ部12Bはプラグ6をレセプタクル5に向けて押圧する。従って、クリップ部材10の第1押さえ部12A及び第2押さえ部12Bでプラグ6及びレセプタクル5を保持することにより、簡易な構成でプラグ6及びレセプタクル5を保持することができる。
【0031】
また、接触面11aが平坦面5e及び平坦面6dの平行度を確定させた状態で第1押さえ部12A及び第2押さえ部12Bのそれぞれがレセプタクル5及びプラグ6のそれぞれを押圧するため、小型のクリップ部材10で確実にレセプタクル5及びプラグ6を保持することができる。更に、平坦面5e及び平坦面6dの平行度を確定させることによってクリップ部材10、レセプタクル5及びプラグ6が筐体2からはみ出すことを抑制することができる。従って、クリップ部材10、レセプタクル5及びプラグ6を確実に光トランシーバの内部に収めることができる。その結果、光トランシーバの内部等、狭い空間にも確実に光モジュール1を搭載することができる。
【0032】
また、プラグ6が保持する光ファイバF2はPMFであり、PMFのスロー軸又はファスト軸が接触面11aに平行である。よって、プラグ6が保持する光ファイバF2が偏波保持ファイバであるため、クリップ部材10でプラグ6とレセプタクル5との連結保持を行うことにより、プラグ6から正しい偏波状態で光信号を出力することができる。
【0033】
また、レセプタクル5が保持する光ファイバF1はPMFであり、PMFのスロー軸又はファスト軸が接触面11aに平行であってもよい。この場合、レセプタクル5が保持する光ファイバF1が偏波保持ファイバであるため、レセプタクル5に偏波保持ファイバを用いることより、偏波特性を更に向上させることができる。また、クリップ部材10の装着(挿入)により、平坦面5e及び平坦面6dへの接触面11aによる面接触を行うことによって、レセプタクル5及びプラグ6のそれぞれのスタブ同士を接続する際の僅かな回転方向への位置ずれを補正することができ、偏波保持ファイバの偏波方向を一致させることができる。このように、平坦面5e及び平坦面6dにクリップ部材10の接触面11aを面接触させることによって、平坦面5e及び平坦面6dの面を倣わせることができる。
【0034】
また、クリップ部材10は、プラグ6とレセプタクル5とが連結する連結方向に沿って互いに対向する2つの押さえ部12を有し、各押さえ部12は、当該連結方向にフランジ5c及びフランジ6bのそれぞれを押圧する。よって、各押さえ部12が当該連結方向に沿ってレセプタクル5とプラグ6を押圧するので、レセプタクル5とプラグ6との連結をより強力にすることができる。
【0035】
また、押さえ部12は、フランジ5c及びフランジ6bのいずれかを押圧する凸部12cを有する。よって、フランジ5c及びフランジ6bのそれぞれが凸部12cに押圧されるので、フランジ5c及びフランジ6bに対する押圧力を更に高めることができる。従って、プラグ6及びレセプタクル5の連結保持を更に強力に行うことができる。
【0036】
押さえ部12のそれぞれと接触するフランジ5c及びフランジ6bの接触面の間の距離は、距離D5として示される。クリップ部材10をフランジ5c及びフランジ6bに装着する前の状態において、互いに対向する2つの押さえ部12の距離D4は、押さえ部12のそれぞれと接触するフランジ5c及びフランジ6bの接触面の距離D5よりも小さい。従って、一対の押さえ部12の間に入り込んだレセプタクル5及びプラグ6において、一対の押さえ部12がフランジ5c及びフランジ6bを押圧する。よって、フランジ5c及びフランジ6bのそれぞれが押さえ部12に押圧されるので、フランジ5c及びフランジ6bに対する押圧力を更に高めることができる。
【0037】
図1及び
図7Bに示されるように、クリップ部材10は、プラグ6とレセプタクル5とが連結する連結方向(Z方向)、及び連結方向に交差する交差方向(X方向)に互いに対向する複数の押さえ部12を有し、複数の押さえ部12のそれぞれは、フランジ5cのX方向に対向する一対の部分と、フランジ6bのX方向に対向する一対の部分とのそれぞれを押圧する。よって、Z方向及びX方向の双方からフランジ5c及びフランジ6bを押圧することができるので、フランジ5c及びフランジ6bに対する押圧力を更に高めることができる。従って、プラグ6及びレセプタクル5の連結保持を更に強力に行うことができる。
【0038】
また、フランジ5c及びフランジ6bは、ステンレスを含む材料によって構成されている。ステンレス材は、耐久性が高く、また、高温又は高湿等の耐環境性能に優れている。従って、フランジ5c及びフランジ6bの耐久性及び耐環境性能を高めることができる。
【0039】
本実施形態に係る光モジュール1は、レセプタクル5が設けられる窓部を有し光素子を搭載する筐体2を更に備え、筐体2は底面2bを有し、光素子は底面2bに対して平行又は垂直な偏波面を有する光を処理し、接触面11aは底面2bに対して平行である。また、光モジュール1において、筐体2は、筐体2の底面2bに対向する天井面2cを有し、接触面11aは底面2bと天井面2cとの間に位置し、レセプタクル5のフランジ5cにおける平坦面5eから当該平坦面5eと反対の縁までの長さ(例えば一対の平坦面5e間の距離)、及び、プラグ6のフランジ6bにおける平坦面6dから当該平坦面6dと反対の縁までの長さ(例えば一対の平坦面6d間の距離)はそれぞれ、筐体2の底面2bから天井面2cまでの長さよりも短い。従って、クリップ部材10、プラグ6及びレセプタクル5をよりコンパクトにすることができるので、光トランシーバの内部空間等、狭い空間への搭載を一層確実に行うことができる。
【0040】
図8は、基板20に実装された光モジュール1の例を示す斜視図である。
図8に示されるように、光モジュール1へのクリップ部材10の取り付けは、光ファイバ保持部材としてのプラグ6とレセプタクル5とを押さえ付ける押さえ治具である治具30を用いて行う。治具30は、例えば、手で持って使用されるハンディタイプの押圧治具である。治具30は、レセプタクル5のスリーブ5bと基板20との間に入り込んでレセプタクル5及びプラグ6にクリップ部材10を取り付ける。例えば、基板20はX方向及びZ方向の双方に延在しており、基板20において複数の光モジュール1はX方向に沿って並んでいる。治具30は、例えば、X方向に沿ってスリーブ5b及び基板20の間に入り込みクリップ部材10の取り付けを行う。
【0041】
図9は、光モジュール1及び治具30を拡大した斜視図である。
図9に示されるように、治具30は、載せられたレセプタクル5及びプラグ6を保持する下板41を有する保持部40と、保持部40の上方に位置する本体部50と、本体部50から下板41に向かって下方に延びる押さえ部60と、押さえ部60を下方に押し込む押し込みヘッド70とを備える。
【0042】
保持部40は、例えば、本体部50に固定された固定部42と、固定部42から下方に延在する板状部43と、板状部43の下端からX方向に延びる前述した下板41とを備える。固定部42は板状部43の上端において、例えば、Z方向に広がる形状とされている。板状部43の下部にはクリップ部材10の側面に対向する段差部45が形成されており、段差部45の下端から下板41がX方向に延びている。
【0043】
下板41は、レセプタクル5のフランジ5c、及びプラグ6のフランジ6bが載せられる一対の載置面46と、フランジ5c及びフランジ6bの間の領域Aに突出する凸部47とを有する。凸部47は、フランジ5cとフランジ6bの間においてY方向に突出すると共にZ方向に延びており、フランジ5cとフランジ6bの位置合わせのために設けられる。フランジ5cとフランジ6bの間に凸部47が介在することによって、フランジ5c及びフランジ6bが互いに近づきすぎないようにすることが可能となる。
【0044】
図10は、治具30及び光モジュール1の縦断面図である。
図9及び
図10に示されるように、本体部50は、Y方向に延びる第1部分51、及び第1部分51の上端からZ方向の両側のそれぞれに延びる一対の第2部分52を有する。本体部50は、例えば、第1部分51、及び一対の第2部分52を有するT字状とされている。例えば、第2部分52が第1部分51からZ方向の両側のそれぞれに延びることによって本体部50は手で持ちやすい形状とされている。
【0045】
押し込みヘッド70は、押さえ部60を下方に押し込む部位である。押し込みヘッド70による押さえ部60への押し込みによって押さえ部60がクリップ部材10を下方に押圧する。押し込みヘッド70は、本体部50を上下に貫通すると共に押さえ部60から上方に延びる押込棒71と、押込棒71の上側の部分を収容すると共に本体部50の上方に位置するハウジング72と、ハウジング72の内部において押込棒71に接触する球73と、球73の押込棒71との反対側に位置するバネ74と、球73との反対側においてバネ74を支持する支持部75とを有する。
【0046】
押込棒71は、その上側の部分に窪み76を有し、窪み76に球73が入り込む。球73は、例えば、鋼球である。窪み76及び球73は、例えば、押込棒71のZ方向の両側のそれぞれに設けられる。窪み76は押込棒71の表面において球状に凹んでいる。押し込みヘッド70が押さえ部60を押し込んでいない状態では窪み76に球73が嵌まり込んで係合し、押し込みヘッド70が一定値以上の押圧力で押さえ部60を押し込むと球73から窪み76が上方に移動して窪み76に対する球73の係合が解除される。
【0047】
従って、押さえ部60からクリップ部材10への押圧力が一定値以上となるときに窪み76に対する球73の係合が解除され、クリップ部材10への押さえ部60の押圧が停止する。このように、球73、及び押込棒71の窪み76は、係合及び係合解除を行うラッチ機構を構成すると共に、押圧力が一定値以上となるときに押圧を停止するストッパとして機能する。
【0048】
バネ74は、例えば、圧縮コイルバネである。バネ74は、一対の球73のそれぞれに対応して設けられ、各球73を窪み76側に付勢している。球73はバネ74の一端に支持されており、バネ74の他端には支持部75が設けられている。例えば、押込棒71はY方向に延在するハウジング72の第1内部空間77に収容されており、球73、バネ74及び支持部75はZ方向に延在するハウジング72の第2内部空間78に収容されている。第2内部空間78のZ方向の端部は、例えば、ハウジング72の外部に開口している。支持部75は、例えば、第2内部空間78に固定されている止ネジである。
【0049】
図11は、押さえ部60を拡大した断面斜視図である。
図10及び
図11に示されるように、押さえ部60は、空隙Sを有する台座61と、空隙Sの内部において可動する支持部62とを有する。支持部62は、例えば、押込棒71の下部に連結される雄ネジ部63と、雄ネジ部63の下端から広がると共に台座61の空隙Sに入り込む球状部64とを含む。雄ネジ部63は、押込棒71の下端から上方に延びる穴部71bに入り込んだ状態で固定されている。
【0050】
台座61は、例えば、X方向、Y方向及びZ方向に延びる直方体状とされている。台座61の下面66(クリップ部材10に対向する面)はクリップ部材10を押圧する押圧面に相当する。球状部64は、台座61において下方に窪む凹部65に入り込んでいる。例えば、凹部65は、円筒状を成す第1内周面65bと、第1内周面65bの下端から徐々に縮径する円錐状を成す第2内周面65cとによって画成される。
【0051】
空隙Sは、例えば、球状部64と第2内周面65cの下側の部分との間に形成されている。球状部64に対して、台座61はX方向及びZ方向の双方に傾動可能とされている。球状部64は、例えば、第1内周面65b及び第2内周面65cに沿って摺動する。これにより、押し込みヘッド70の下端において押さえ部60(台座61)が可動する構成が実現される。すなわち、クリップ部材10を押圧する押さえ部60の押圧面(台座61の下面66)の平行度が変化する構成が実現される。
【0052】
次に、本実施形態に係る光部品の製造方法の具体例について
図12に示されるフローチャートを参照しながら説明する。
図12は、光モジュール1のレセプタクル5及びプラグ6にクリップ部材10を取り付ける方法の工程の例を示すフローチャートである。まず、光モジュール1と光ファイバ保持部材であるプラグ6とを準備する(準備する工程、ステップS1)。このとき、例えば
図4に示されるように、レセプタクル5にプラグ6をZ方向に沿って対向させ、スリーブ5bにプラグ6のスタブ6aを挿入してレセプタクル5にプラグ6を連結する。
【0053】
次に、光モジュール1のレセプタクル5とプラグ6にクリップ部材10を取り付ける(クリップ部材を取り付ける工程、ステップS2)。例えば、
図7A及び
図7Bに示されるように、クリップ部材10を用意し、レセプタクル5のフランジ5c、及びプラグ6のフランジ6bにクリップ部材10を上方(Y方向)から装着する。そして、
図8及び
図9に示されるように、基板20に実装された光モジュール1のレセプタクル5及びプラグ6の下側に治具30の下板41を挿入する(治具を挿入する工程、ステップS3)。このとき、下板41の一方の載置面46にレセプタクル5のフランジ5cを載せると共に、下板41の他方の載置面46にプラグ6のフランジ6bを載せて、フランジ5cとフランジ6bの間に凸部47を介在させる。
【0054】
上記のように下板41をレセプタクル5及びプラグ6の下に挿入した後には、下板41でレセプタクル5のフランジ5c、及びプラグ6のフランジ6bを支持すると共に押さえ部60でクリップ部材10を下方に押圧する(押圧する工程、ステップS4)。このとき、レセプタクル5とプラグ6を下板41によって下側から押圧すると共に、クリップ部材10を押さえ部60によって上側から押圧する。
【0055】
押さえ部60によるクリップ部材10の押圧は、当該押圧の押圧力が一定値になるまで行われ、当該押圧の押圧力が一定値に達すると押さえ部60による押圧が停止する(押圧を停止する工程、ステップS5)。当該一定値は、レセプタクル5の平坦面5e(第1平坦面)とプラグ6の平坦面6d(第2平坦面)がクリップ部材10の接触面11a(第3平坦面)で平行度を確定する値に設定される。当該一定値は、例えば、3.0kgfである。
【0056】
例えば、当該押圧の押圧力が一定値未満であるときには、
図10及び
図11に示されるように、窪み76に球73が係合しているため、押込棒71及び押さえ部60による上方からのクリップ部材10の押圧が継続される。しかしながら、当該押圧の押圧力が強くなると、レセプタクル5の平坦面5eとプラグ6の平坦面6dとの平行度がクリップ部材10の接触面11aによって確定する。そして、当該押圧の押圧力が一定値以上になると、球73に対して窪み76が上方に移動して窪み76に対する球73の係合(ラッチ)が解除されることにより、押さえ部60によるクリップ部材10の押圧が停止する。その後、光モジュール1のレセプタクル5及びプラグ6から治具30を解除して(治具を解除する工程、ステップS6)、一連の工程が完了する。
【0057】
次に、本実施形態に係る光部品の製造方法、及び押さえ治具(治具30)から得られる作用効果について説明する。この光部品の製造方法では、光モジュール1のレセプタクル5とプラグ6を下側から押圧する。この押圧は、レセプタクル5の平坦面5eとプラグ6の平坦面6dとを押圧する下面66の平行度が変化する治具30を用いて行われる。治具30による押圧では、光モジュール1のレセプタクル5とプラグ6を下側から押圧すると共にクリップ部材10を上側から押圧する。当該押圧は、レセプタクル5の平坦面5eとプラグ6の平坦面6dの平行度がクリップ部材10の接触面11aによって確定されるまで行われる。
【0058】
従って、光モジュール1のレセプタクル5とプラグ6を連結するクリップ部材10を治具30によって上側から押圧すると共に、レセプタクル5及びプラグ6を治具30によって下側から押圧する。その結果、レセプタクル5とプラグ6に対するクリップ部材10の強固な装着を治具30によって容易に行うことができると共に、各部品の製造公差を吸収することができる。
【0059】
具体的には、
図13及び
図14に示されるように、平行度が変化する押さえ部60を備えた治具30を用いてクリップ部材10の押圧を行う場合、レセプタクル5とプラグ6を治具30の下板41でリジッドに支えた状態で押さえ部60によってフレキシブルにフランジ5cとフランジ6bを押圧することができる。従って、製造公差によってレセプタクル5(フランジ5c)の高さとプラグ6(フランジ6b)の高さにばらつきがあったとしても、当該ばらつきを吸収することができる。また、治具30でレセプタクル5とプラグ6を下側から押圧すると共にクリップ部材10を上側から押圧することにより、治具30の使い方を徹底することでクリップ部材10の装着を標準化させることができる。従って、装着の品質に個人差が生じることを抑制することができるので、装着作業を標準化して品質を向上させることができる。
【0060】
図10及び
図11に示されるように、治具30は、更に、押さえ部60による押圧力が一定値以上となるときに押さえ部60による押圧を停止させるストッパ(例えば押込棒71の窪み76及び球73)を備える。このストッパにより押さえ部60による押圧力が一定値を超えないようにすることができるので、クリップ部材10の装着時等における各部品の破損を抑制することができる。なお、ストッパの構成は、前述した窪み76及び球73に限られず、適宜変更可能である。
【0061】
治具30は下板41を備え、下板41はレセプタクル5のフランジ5cとプラグ6のフランジ6bとの間の領域Aに突出する凸部47を有する。よって、レセプタクル5のフランジ5cとプラグ6のフランジ6bとの間に凸部47が突出することにより、下板41でレセプタクル5とプラグ6を支えるときにレセプタクル5とプラグ6の位置合わせを行うことができる。すなわち、レセプタクル5のフランジ5cとプラグ6のフランジ6bとの間に凸部47が介在することによってフランジ5cの位置とフランジ6bの位置とを安定させることができる。
【0062】
また、押さえ部60は、空隙Sを有する台座61と、空隙Sの内部において可動する支持部62とを含んでもよい。この場合、空隙Sを有する台座61と空隙Sの内部において可動する支持部62によって可動式の押さえ部60が構成される。従って、レセプタクル5とプラグ6を押圧する押圧面(台座61の下面66)の平行度を変化させるための構成を簡易にすることができる。
【0063】
以上、本開示に係る光部品の製造方法、及び押さえ治具の実施形態について説明した。しかしながら、本開示に係る光部品の製造方法、及び押さえ治具は、前述の実施形態に限られず、種々の変形が可能である。すなわち、光部品の製造方法における各工程の内容及び順序、並びに、押さえ治具の各部の構成は、特許請求の範囲の要旨の範囲内において適宜変更可能である。
【0064】
図15及び
図16は、変形例に係る治具80を示している。治具80は、手で握って用いられるプライヤータイプの押圧治具である。治具80は、載せられた光モジュール1を保持する保持部90と、保持部90の上方に位置する押さえ部100と、手で握られる把持部81,82と、把持部81,82が握られたときに押さえ部100を保持部90に近づける可動部83とを備える。把持部81,82は、可動部83から保持部90及び押さえ部100の反対側に延在している。
【0065】
可動部83と押さえ部100との間には、例えば、押し込み力調整部88、第1連結部材86及び第2連結部材87が介在しており、押さえ部100は第2連結部材87の下端に取り付けられている。押し込み力調整部88は、押さえ部100によるクリップ部材10への押圧力を調整可能である。押し込み力調整部88は、押さえ部100によるクリップ部材10への押圧力が一定値以上となるときに押圧を停止するストッパとして機能する。
【0066】
例えば、押し込み力調整部88は回転式とされている。この場合、押し込み力調整部88を一方向に回転させることによって押さえ部100の押圧力の上限値が大きくなり、押し込み力調整部88を当該一方向の反対方向に回転させることによって押さえ部100の押圧力の上限値が小さくなる。押さえ部100の下方には段差部85が対向しており、段差部85にはクリップ部材10の側面が対向している。
【0067】
保持部90は、光モジュール1のレセプタクル5とプラグ6の位置を合わせる位置合わせ部として機能する。保持部90は、前述した保持部40の下板41と同様、レセプタクル5のフランジ5c、及びプラグ6のフランジ6bが載せられる一対の載置面46と、フランジ5c及びフランジ6bの間の領域Aに突出する凸部47とを有する。
【0068】
図17は、押さえ部100を示す断面斜視図である。
図16及び
図17に示されるように、押さえ部100は、空隙Sを有する台座101と、空隙Sの内部において可動する支持部102とを有する。台座101及び支持部102のそれぞれの構成は、例えば、前述した台座61及び支持部62のそれぞれの構成と同様である。支持部102は、例えば、第2連結部材87に連結される雄ネジ部63と、台座101の空隙Sに入り込む球状部64とを含む。雄ネジ部63は、第2連結部材87を上下に貫通する穴部87bに入り込んだ状態で固定されている。
【0069】
台座101の下面106(クリップ部材10に対向する面)はクリップ部材10を押圧する押圧面に相当する。球状部64は、円筒状を成す第1内周面65bと、第1内周面65bの下端から徐々に縮径する円錐状を成す第2内周面65cとによって画成された凹部65に入り込んでいる。球状部64に対して、台座101はX方向及びZ方向の双方に傾動可能とされている。これにより、第2連結部材87の下端において押さえ部100(台座101)が可動する構成が実現される。すなわち、クリップ部材10を押圧する押さえ部100の押圧面(台座101の下面106)の平行度が変化する構成が実現される。従って、押さえ部100を備えた治具80からは、治具30と同様の作用効果が得られる。
【0070】
以上、押さえ治具の変形例として治具80について説明したが、クリップ部材についても前述したクリップ部材10に限られず適宜変更可能である。すなわち、前述の実施形態では、板状部11の四隅のそれぞれに押さえ部12が設けられるクリップ部材10について説明した。しかしながら、押さえ部の位置、数及び配置態様は適宜変更可能である。更に、押さえ部の形状、大きさ及び材料についても適宜変更可能である。
【0071】
また、前述の実施形態では、スタブ5a、スリーブ5b、フランジ5c及び円筒部5dを有するレセプタクル5と、スタブ6a、フランジ6b及び円筒部6cを備えるプラグ6とを備える光モジュール1について説明した。しかしながら、レセプタクル及びプラグの形状、大きさ及び材料は適宜変更可能である。また、前述の実施形態では、光ファイバ保持部材の例としてプラグについて説明したが、光ファイバ保持部材はプラグ以外のものであってもよい。
【0072】
また、前述の実施形態では、筐体2及び光ファイバ導入部3を備えた光モジュール1について説明した。しかしながら、筐体及び光ファイバ導入部の材料、大きさ及び形状は適宜変更可能である。更に、前述の実施形態では、光源モジュール(波長可変光源)を例として説明したが、筐体の内部に搭載される光素子の種類、数及び配置態様は適宜変更可能である。
【0073】
また、前述の実施形態では、光トランシーバの内部に搭載されるコヒーレント光源モジュール、すなわち、波長可変光源について説明した。しかしながら、本開示に係る光モジュールは、例えば、ICR(Integrated Coherent Receiver)、TOSA(TransmitterOptical Sub-Assembly)、ROSA(Receiver OpticalSub-Assembly)、又は、多値変調器と受信器の機能を持たせたシリコンフォトニクスを搭載したモジュールである小型コヒーレントサブアセンブリ(Coherent Optical Sub-Assembly:COSA)若しくはTROSA(Transmitter-Receiver Optical Sub Assembly)等、他の光モジュールであってもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…光モジュール、2…筐体、2a…側壁、2b…底面、2c…天井面、3…光ファイバ導入部、4…端子、5…レセプタクル、5a…スタブ、5b…スリーブ、5c…フランジ(第1円筒状フランジ)、5d…円筒部、5e…平坦面(第1平坦面)、5f…湾曲面、5g…スリット、6…プラグ(光ファイバ保持部材)、6a…スタブ、6b…フランジ(第2円筒状フランジ)、6c…円筒部、6d…平坦面(第2平坦面)、6e…湾曲面、10…クリップ部材、11…板状部、11a…接触面(第3平坦面)、11b…外面、11c…長辺、11d…短辺、12…押さえ部、12a…湾曲面、12A…第1押さえ部、12b…板状部、12B…第2押さえ部、12c…凸部、13…突出部、13a…湾曲部、13b…板状部、20…基板、30,80…治具、40,90…保持部、41…下板、42…固定部、43…板状部、45…段差部、46…載置面、47…凸部、50…本体部、51…第1部分、52…第2部分、60,100…押さえ部、61,101…台座、62,102…支持部、63…雄ネジ部、64…球状部、65…凹部、65b…第1内周面、65c…第2内周面、70…押し込みヘッド、71…押込棒、71b…穴部、72…ハウジング、73…球、74…バネ、75…支持部、76…窪み、77…第1内部空間、78…第2内部空間、81,82…把持部、83…可動部、85…段差部、86…第1連結部材、87…第2連結部材、87b…穴部、88…押し込み力調整部、A…領域、D3,D4,D5…距離、F1…光ファイバ(第1光ファイバ)、F2…光ファイバ(第2光ファイバ)、S…空隙。