(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20230704BHJP
【FI】
H02M3/28 Y
(21)【出願番号】P 2020011652
(22)【出願日】2020-01-28
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100181618
【氏名又は名称】宮脇 良平
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【氏名又は名称】白井 健朗
(72)【発明者】
【氏名】廣川 明彦
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-048273(JP,U)
【文献】実開昭61-039970(JP,U)
【文献】特開2009-064911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路素子が主面に実装された基板と、
前記基板と間隔を空けて位置して前記基板の前記主面を覆うカバー部、及び、前記カバー部から前記基板に向かって延びる複数の脚部を有し、前記複数の脚部によって前記基板に取り付けられるケースと、を備え、
前記複数の脚部は、前記基板の角部に掛止される角対応脚部を含
み、
前記角対応脚部として、一対の脚部からなる第1脚部対と、前記第1脚部対とは異なる一対の脚部からなる第2脚部対と、を有し、
前記第1脚部対を構成する各脚部は、前記基板の前記主面に掛かる爪を有し、
前記第2脚部対を構成する各脚部は、前記基板の背面に掛かる爪を有する、
電源装置。
【請求項2】
回路素子が主面に実装された基板と、
前記基板と間隔を空けて位置して前記基板の前記主面を覆うカバー部、及び、前記カバー部から前記基板に向かって延びる複数の脚部を有し、前記複数の脚部によって前記基板に取り付けられるケースと、を備え、
前記複数の脚部は、前記基板の角部に掛止される角対応脚部を含
み、
前記角対応脚部は、前記基板の角部における切り欠きが設けられた部分に掛止される、
電源装置。
【請求項3】
前記角対応脚部として、一対の脚部からなる第1脚部対と、前記第1脚部対とは異なる一対の脚部からなる第2脚部対と、を有し、
前記第1脚部対を構成する各脚部は、前記基板の前記主面に掛かる爪を有し、
前記第2脚部対を構成する各脚部は、前記基板の背面に掛かる爪を有する、
請求項
2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記基板は、矩形状をなし、
前記基板における一方の対角線上に、前記第1脚部対が位置し、
前記基板における他方の対角線上に、前記第2脚部対が位置する、
請求項
1又は3に記載の電源装置。
【請求項5】
前記第1脚部対又は前記第2脚部対を構成する一対の脚部のうち、少なくともいずれかは、前記主面に掛かる爪と前記背面に掛かる爪の双方の爪を有する、
請求項
1、3又は4に記載の電源装置。
【請求項6】
前記双方の爪を有する脚部は、前記双方の爪が前記基板を挟んで互いに対向しない位置に設けられた特定脚部を含む、
請求項
5に記載の電源装置。
【請求項7】
前記基板には、他の機器と電気的に接続されるピン端子が設けられ、
前記ピン端子は、前記基板の背面から遠ざかって延び、
前記複数の脚部は、前記基板の前記主面から前記背面に至ってさらに延び、且つ、前記複数の脚部の先端は前記ピン端子の先端よりも前記基板の近くに位置する、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電源装置等の電子機器において、基板にケースを取り付けた構造が知られている。例えば、特許文献1には、基板に実装されたモータ、抵抗等の回路素子を、ケースで覆う構造が開示されている(同文献の
図4等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された構造では、ケースを基板に掛止するための切り欠きを、矩形状の基板の互いに対向する一対の辺の各々に相当する箇所に、基板の幅が狭くなる方向に向かって凹む形状で形成している。このため、基板における回路素子を実装可能な領域が狭くなる箇所が生じてしまう。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、基板に取り付けられるケースを備えつつ、基板における回路素子を実装可能な領域が狭くなることを抑制することができる電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る電源装置は、
回路素子が主面に実装された基板と、
前記基板と間隔を空けて位置して前記基板の前記主面を覆うカバー部、及び、前記カバー部から前記基板に向かって延びる複数の脚部を有し、前記複数の脚部によって前記基板に取り付けられるケースと、を備え、
前記複数の脚部は、前記基板の角部に掛止される角対応脚部を含み、
前記角対応脚部として、一対の脚部からなる第1脚部対と、前記第1脚部対とは異なる一対の脚部からなる第2脚部対と、を有し、
前記第1脚部対を構成する各脚部は、前記基板の前記主面に掛かる爪を有し、
前記第2脚部対を構成する各脚部は、前記基板の背面に掛かる爪を有する。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る電源装置は、
回路素子が主面に実装された基板と、
前記基板と間隔を空けて位置して前記基板の前記主面を覆うカバー部、及び、前記カバー部から前記基板に向かって延びる複数の脚部を有し、前記複数の脚部によって前記基板に取り付けられるケースと、を備え、
前記複数の脚部は、前記基板の角部に掛止される角対応脚部を含み、
前記角対応脚部は、前記基板の角部における切り欠きが設けられた部分に掛止される。
また、前記第2の観点に係る電源装置は、
前記角対応脚部として、一対の脚部からなる第1脚部対と、前記第1脚部対とは異なる一対の脚部からなる第2脚部対と、を有し、
前記第1脚部対を構成する各脚部は、前記基板の前記主面に掛かる爪を有し、
前記第2脚部対を構成する各脚部は、前記基板の背面に掛かる爪を有していてもよい。
【0008】
前記基板は、矩形状をなし、
前記基板における一方の対角線上に、前記第1脚部対が位置し、
前記基板における他方の対角線上に、前記第2脚部対が位置していてもよい。
【0009】
前記第1脚部対又は前記第2脚部対を構成する一対の脚部のうち、少なくともいずれかは、前記主面に掛かる爪と前記背面に掛かる爪の双方の爪を有していてもよい。
【0010】
前記双方の爪を有する脚部は、前記双方の爪が前記基板を挟んで互いに対向しない位置に設けられた特定脚部を含んでいてもよい。
【0012】
前記基板には、他の機器と電気的に接続されるピン端子が設けられ、
前記ピン端子は、前記基板の背面から遠ざかって延び、
前記複数の脚部は、前記基板の前記主面から前記背面に至ってさらに延び、且つ、前記複数の脚部の先端は前記ピン端子の先端よりも前記基板の近くに位置していてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基板に取り付けられるケースを備えつつ、基板における回路素子を実装可能な領域が狭くなることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電源装置の斜視図である。
【
図2】
図1とは異なる方向から見た電源装置の斜視図である。
【
図3】同上実施形態に係る電源装置が備える基板の平面図である。
【
図4】
図1に示す電源装置からケースを外した状態の図である。
【
図5】同上実施形態に係る電源装置が備えるケースの斜視図である。
【
図6】同上実施形態に係るケースの第1側壁部及び第2側壁部と、基板に実装された特定の回路素子との配置関係を説明するための模式図である。
【
図7】同上実施形態に係る電源装置が備えるケースの特定脚部の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係る電源装置について図面を参照して説明する。
【0016】
電源装置100は、
図1及び
図2に示すように、入力電力から必要とされる出力電力を生成する電源回路が構成された基板10と、基板10に取り付けられるケース20と、を備える。電源回路は、例えば、昇圧回路と降圧回路の少なくともいずれかを実装可能なDC-DCコンバータとして機能する。
【0017】
基板10は、銅箔などの導電体による図示しない回路配線が形成されたリジッド基板からなる。基板10は、
図3に示すように、平面視で略矩形状をなす。以下では、各図に示すように、略矩形状の基板10の長辺に沿うX軸や、基板10の短辺に沿うY軸や、X及びY軸と直交するZ軸を用いて、電源装置100の構成を説明する場合がある。
【0018】
基板10は、一方の面である主面11、及び、他方の面である背面12に、電源回路を構成する複数の回路素子を実装することで、PCB(Printed Circuit Board)を構成する。主に
図3及び
図4に示すように、基板10の主面11には、トランス(変圧器)31と、例えばMOSFETからなるスイッチング素子32と、を含む回路素子群30が実装されている。トランス31は、例えばフェライトからなるコア31aと、コア31aに巻き回され、互いに絶縁された一次コイル及び二次コイルから構成されるコイル部31bと、コイル部31bを覆う図示しない絶縁被覆と、を備える。
【0019】
この実施形態に係る電源回路は、スイッチング素子32によりトランス31に流れる電流を制御するスイッチング方式の絶縁型DC-DCコンバータとして機能する公知の回路から構成されている。例えば、電源回路は、入力電圧が印加されるトランス31の一次コイルに流れる電流をスイッチング素子32により制御し、トランス31の二次コイル側において所望の出力電圧を生成するフライバック式コンバータやフォワード式コンバータを構成する。基板10の背面12には、スイッチング素子32の動作を制御するコントローラ40や、図示しない他の回路素子が実装されている。なお、基板10の主面11に実装された回路素子群30や、基板10の背面12に実装された図示しない回路素子には、コンデンサ、ダイオード、抵抗等の電源回路を構成するために必要な回路素子が含まれる。
【0020】
また、基板10には、基板10の背面12に対する垂直方向に、基板10から離れるように延びる6つのピン端子41a~41fが設けられている。これらピン端子41a~41fによって、電源装置100は、装着される対象の電子機器と電気的に接続される。ピン端子41a~41fは、入力電圧が印加される入力端子41a~41cと、出力電圧が印加される出力端子41d~41fとを含む。
図2に示すように、各ピン端子41a~41fの背面12からの長さL1は等しく設定されている。
【0021】
ここで、基板10の主面11に実装された回路素子群30のうち、特定の回路素子の一例であるトランス31は、他の回路素子よりも外形が大きく、後に述べるケース20の形状に制約を与える要因となる。トランス31は、主に
図3に示すように、Y方向に長尺な例えばEE型のコアを含む。コア31aのY方向における一端T1(以下、トランス31の一端T1とも呼ぶ。)は、基板10のY方向における一端部E1(
図3での下端部)に至っている。また、コア31aのY方向における他端T2(以下、トランス31の他端T2とも呼ぶ。)は、基板10のY方向における他端部E2(
図3での上端部)に至っている。また、トランス31の主面11からのZ方向の高さは、回路素子群30を構成する他の回路素子よりも高い。
【0022】
なお、基板10の一端部E1や他端部E2とは、基板10のX方向に延びる辺に相当する部分を含むとともに、当該辺から基板10の内側にある程度の幅を有する部分であればよい。この実施形態では、基板10の一端部E1は、平面視においてケース20の後述の第1側壁部211によって覆われる部分を少なくとも含む。同様に、基板10の他端部E2は、Z方向から見て、ケース20の後述の第2側壁部212によって覆われる部分を少なくとも含む。
【0023】
図3に示すように、平面視において略矩形状をなす基板10の四隅に相当する角部10a~10dには、基板10の内側に向かって凹む形状の切り欠き13a~13dが形成されている。切り欠き13a~13dは、平面視において、縁が円弧状の部分を有して形成されている。角部10a,10bは、基板10における一方の対角線D1上の各隅に位置する。角部10c,10dは、基板10における他方の対角線D2上の各隅に位置する。詳しくは後述するが、切り欠き13a~13dは、ケース20における後述の脚部22a~22dが掛止される部分となる。
【0024】
ケース20は、
図1、
図2及び
図5に示すように、基板10の主面11を覆うカバー部21と、カバー部21から基板10に向かって延びる複数の脚部22a~22dと、を備え、例えば樹脂により一体に形成されている。
【0025】
カバー部21は、基板10に向かって開口した箱状をなし、基板10の主面11を覆う。例えば、平面視におけるカバー部21の外形は、基板10の外形と略一致する大きさに設定されている。カバー部21は、矩形の板状部210と、板状部210の各辺から基板10に向かって垂下する第1~第4側壁部211~214と、を備える。
【0026】
板状部210は、基板10の主面11と間隔を空けて対向し、基板10と略平行に配置されている。板状部210の天面(
図1での上面)は、電源装置100を対象の電子機器に設置する際に、自動マウンタの吸着ノズルにより吸着される部分として機能する。
【0027】
図5に示すように、第1側壁部211と第2側壁部212は、板状部210の長辺に対応して設けられ、Y方向において互いに対向する。また、第3側壁部213と第4側壁部214は、板状部210の短辺に対応して設けられ、X方向において互いに対向する。
【0028】
第1側壁部211には、トランス31の一端T1を、ケース20の外部に向かって露出させる切り欠き部211aが設けられている。具体的に、切り欠き部211aは、トランス31の一端T1の外形に沿った形状で形成されている。また、切り欠き部211aは、第1側壁部211がトランス31と接触しないように、トランス31の一端T1をY方向から見た場合の外形よりも一回り大きく形成されている。第2側壁部212には、トランス31の他端T2を、ケース20の外部に向かって露出させる切り欠き部212aが設けられている。具体的に、切り欠き部212aは、トランス31の他端T2の外形に沿った形状で形成されている。また、切り欠き部212aは、第2側壁部212がトランス31と接触しないように、トランス31の他端T2をY方向から見た場合の外形よりも一回り大きく形成されている。外形に沿った切り欠き部の形状とは、例えばトランス31のコア31aのみに沿っている場合や、コイル部31bのみに沿っている場合など、トランス31を構成する部品の一部分に沿っている場合を含んでいる。なお、ケース20の剛性を確保する観点からは、切り欠き部211a,212aは、第1側壁部211及び第2側壁部212がトランス31に接触しない範囲内で極力小さく形成されていることが好ましい。
【0029】
この実施形態では、
図6に模式的に示すように、トランス31の一端T1が第1側壁部211に設けられた切り欠き部211aの内部に位置し、且つ、トランス31の他端T2が第2側壁部212に設けられた切り欠き部212aの内部に位置する。これにより、切り欠き部211a,212aが設けられていない場合に比べて、トランス31を基板10のY方向における両端の近くにまでレイアウトすることができるとともに、切り欠き部211a,212aからケース20の外部へトランス31が発した熱を良好に逃がすことができる。なお、「トランス31の一端T1が第1側壁部211に設けられた切り欠き部211aの内部に位置する」とは、トランス31の一端T1と第1側壁部211のうち切り欠き部211aが設けられた部分とが、X方向において重なることを意味する。トランス31の他端T2と切り欠き部212aとの位置関係についてもこれと同様である。
【0030】
なお、トランス31と第1側壁部211及び第2側壁部212との位置関係は、
図6に示すように、トランス31の一端T1が第1側壁部211に設けられた切り欠き部211aの内部に位置し、且つ、トランス31の他端T2が第2側壁部212に設けられた切り欠き部212aの内部に位置する態様に限られない。基板10に対するトランス31の設置箇所の誤差を考慮し、電源装置100は、トランス31の一端T1が第1側壁部211に設けられた切り欠き部211aの内部に位置するという条件と、トランス31の他端T2が第2側壁部212に設けられた切り欠き部212aの内部に位置するという条件との少なくともいずれかを満たしていればよい。
【0031】
ケース20が備える脚部22a~22dは、基板10の角部10a~10dの各々に対応して設けられる。
図5に示すように、脚部22a及び脚部22bは、基板10における一方の対角線D1上に位置する第1脚部対51を構成する。脚部22c及び脚部22dは、基板10における他方の対角線D2上に位置する第2脚部対52を構成する。
【0032】
第1脚部対51を構成する一方の脚部22aは、
図1に示すように、基板10の角部10aの外周側に位置する。脚部22aは、柱状をなし、その基板10側に向く部分が、角部10aに設けられた切り欠き13aの形状に対応して、切り欠き13aと合わさる形状に形成されている。脚部22aの外面は、第1側壁部211の外面と面一な面と、第3側壁部213の外面と面一な面とを有している。当該面同士が交わる箇所が、脚部22aの角となっている。脚部22aには、基板10の主面11に掛かる爪H1が形成されている。爪H1は、
図5に示すように、脚部22aに設けられた段差部分のうち、X方向(
図5での右方向)に迫り出した部分により構成されている。
【0033】
第1脚部対51を構成する他方の脚部22bは、
図2に示すように、基板10の角部10bの外周側に位置する。脚部22bは、柱状をなし、その基板10側に向く部分が、角部10bに設けられた切り欠き13bの形状に対応して、切り欠き13bと合わさる形状に形成されている。脚部22bの外面は、第2側壁部212の外面と面一な面と、第4側壁部214の外面と面一な面とを有している。当該面同士が交わる箇所が、脚部22bの角となっている。脚部22bには、基板10の主面11に掛かる爪H2が形成されている。爪H2は、
図5に示すように、脚部22bに設けられた段差部分のうち、X方向(
図5での左方向)に迫り出した部分により構成されている。
【0034】
第2脚部対52を構成する一方の脚部22cは、
図1、
図2に示すように、基板10の角部10cの外周側に位置する。脚部22cは、柱状をなし、その基板10側に向く部分が、角部10cに設けられた切り欠き13cの形状に対応して、切り欠き13cと合わさる形状に形成されている。脚部22cの外面は、第2側壁部212の外面と面一な面と、第3側壁部213の外面と面一な面とを有している。当該面同士が交わる箇所が、脚部22cの角となっている。脚部22cには、
図2に示すように、基板10の背面12に掛かる爪H3と、基板10の主面11に掛かる爪H4とが形成されている。爪H3と爪H4とは、Z方向において基板10を挟んで互いに対向し、基板10を挟み込んでいる。爪H3は、
図5に示すように、X方向(
図5での右方向)に突起して脚部22cに設けられている。爪H4は、
図5に示すように、脚部22cに設けられた段差部分のうち、X方向(
図5での右方向)に迫り出した部分により構成されている。
【0035】
第2脚部対52を構成する他方の脚部22d(特定脚部の一例)は、
図1、
図2に示すように、基板10の角部10dの外周側に位置する。脚部22dは、柱状をなし、その基板10側に向く部分が、角部10dに設けられた切り欠き13dの形状に対応して、切り欠き13dと合わさる形状に形成されている。脚部22dの外面は、第1側壁部211の外面と面一な面と、第4側壁部214の外面と面一な面とを有している。当該面同士が交わる箇所が、脚部22dの角となっている。脚部22dには、
図7に拡大して示すように、基板10の背面12に掛かる爪H5と、基板10の主面11に掛かる爪H6とが形成されている。爪H5は、X方向(
図7での左方向)に突起して脚部22dに設けられている。爪H6は、脚部22dに設けられた段差部分のうち、Y方向(
図7での右方向)に迫り出した部分により構成されている。脚部22dにおいては、前述の脚部22cとは異なり、爪H5と爪H6とは、Z方向において基板10を挟んで互いに対向しない位置に設けられている。
【0036】
ケース20は、以上のように脚部22a~22dに形成された爪H1~H6によって、基板10に掛止される。なお、脚部22a~22dのうち、所定の脚部が基板10に掛止されると言う表現は、基板10に掛かる爪H1~H6を有する脚部22a~22dが協働することで、ケース20が基板10に対して固定される態様を含む表現であり、必ずしも、1つの脚部が単独で基板10に対して固定されていることを指すものではない。また、基板10の主面11又は背面12に掛けられる爪H1~H6の全てが、常時、基板10の主面11又は背面12に接触していなくともよく、少なくとも、基板10にケース20を取り付ける際に接触すれば足りる。例えば、電源装置100が
図2に示す状態で下方に設置面があると仮定した場合、脚部22cに設けられた爪H3が基板10の背面12と接触する一方で、爪H4が基板10の主面11と接触していなくともよい。
【0037】
脚部22a~22dに設けられた爪H1~H6は、基板10に掛止された際に、ケース20の板状部210を基板10に対して略平行とする位置に設けられる。また、切り欠き13a~13dと合わさる脚部22a~22dの外面は、基板10のX方向又はY方向に向く側面(つまり、主面11及び背面12以外の面)と面一となる。つまり、ケース20をZ方向から見た場合、脚部22a~22dは、基板10に設けられた切り欠き13a~13dの部分を補間するように設けられている。これにより、基板10にケース20が取り付けられることで構成される電源装置100を、余分な凹凸が生じない外形で構成することができ、また電源装置100全体の外形を所望の寸法に収められるため、電源装置100の小型化に寄与する。
【0038】
以上のように、爪H1~H6が設けられた脚部22a~22dにより、ケース20は、以下のように基板10に対して位置決めされる。
【0039】
まず、ケース20は、脚部22a~22dにより、基板10の角部10a~10dに外周側から掛止されるため、基板10に対するX及びY方向の位置が規制される。
【0040】
また、ケース20は、対角線D1上に位置する第1脚部対51を構成する脚部22a,22bにそれぞれ設けられた主面11に接する爪H1,H2により、基板10の主面11に近づく方向における位置が規制される。一方、ケース20は、対角線D2上に位置する第2脚部対52を構成する脚部22c,22dにそれぞれ設けられた背面12に接する爪H3,H5により、基板10の主面11から離れる方向における位置が規制される。つまり、ケース20は、基板10の主面11に近づく方向と、主面11から離れる方向とを含む、基板10に対するZ方向の位置が規制される。なお、本実施形態では、第2脚部対52を構成する脚部22c,22dにも、主面11に接する爪H4,H6を設けているため、基板10の主面11に近づく方向におけるケース20の位置が規制されている。
【0041】
以上のようにして、ケース20は、基板10に対するX、Y及びZ方向の各位置が規制され、基板10に安定した姿勢で取り付けられる。さらに、ケース20は、特定脚部の一例として、Z方向において基板10を挟んで互いに対向しない位置にある爪H5と爪H6が設けられた脚部22dを有することで、次に述べる理由により、より安定した姿勢を確保することが可能となっている。脚部22dは、X方向に突出する爪H5が基板10の背面12に接することにより、Y軸周りの回転方向であって、爪H5が基板10に近付く方向に傾く動き(以下、「Y軸周りに傾く動き」と言う。)が規制される。また、脚部22dは、Y方向に突出する爪H6が基板10の主面11に接することにより、X軸周りの回転方向であって、爪H6が基板10に近付く方向に傾く動き(以下、「X軸周りに傾く動き」と言う。)が規制される。以上により、脚部22dは、基板10の角部10dに対して、Y軸周りに傾く動きとX軸周りに傾く動きが規制されるため、安定して基板10の角部10dに取り付けられる。
【0042】
図2に示すように、複数の脚部22a~22dは、基板10の主面11から背面12側に至ってさらに延び、且つ、複数の脚部22a~22dの先端はピン端子41a~41fの先端よりも基板10の近くに位置する。具体的に、各脚部22a~22dの背面12からの長さL2は、等しく設定され、且つ、各ピン端子41a~41fの背面12からの長さL1よりも短く設定されている。このような条件を満たしつつ、脚部22a~22dの長さを調整することにより、ケース20の構造を用いて、電源装置100が装着される対象の電子機器に対する装着構造(具体的には、電源装置100が装着される対象の電子機器にピン端子41a~41fが差し込まれる長さや、当該対象の電子機器に対する基板10の位置)を調整することができる。つまり、この実施形態に係る電源装置100によれば、ケース20の脚部22a~22dに、基板10への取り付け部分としての機能と、電源装置100の装着される対象の電子機器に対する電源装置100の装着構造を調整する機能との役割を共用させることができるため、部品点数の増加を抑制することができる。
【0043】
以上に説明した電源装置100では、複数の脚部22a~22dが、基板10の外周側に位置して角部10a~10dに掛止される角対応脚部として構成されている。このため、基板10の辺に相当する部分にケース20を取り付けるための切り欠きを設けなくともよい。また、通常は、回路素子群30の配置やパターン配線をする頻度が少ない基板10の角部10a~10dの領域を利用してケース20を基板10に掛止させることができる。したがって、基板10の角部10a~10d以外の領域により基板10の幅が狭くなることを抑制することができ、基板10における回路素子を実装可能な領域が狭くなることを抑制することができる。
【0044】
なお、本発明は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。
【0045】
(変形例)
基板10やケース20の形状、大きさ及び材質は、目的を達成することができる限りにおいては上記の例に限られず、任意である。例えば、以上では、複数の脚部22a~22dの全てが、基板10の外周側に位置して基板10の角部10a~10dに掛止される角対応脚部として構成された例を説明したが、これに限られない。複数の脚部22a~22dの少なくともいずれかが、基板10の角部に対応する角対応脚部であれば、基板10の辺に相当する箇所にケース20を取り付けるための切り欠きや、基板10の内側にケース20を取り付けるための開口の部分を減らすことができる。このため、基板10における回路素子を実装可能な領域が狭くなることを抑制するとともに、基板10の剛性を確保することもできる。
【0046】
以上では、第1脚部対51を構成する脚部22a,22bに基板10の主面11に掛けられる爪H1,H2を設け、第2脚部対52を構成する脚部22c,22dに基板10の背面12に掛けられる爪H3,H5を設けた例を示したが、各爪の配置は目的に応じて任意である。例えば、第2脚部対52を構成する脚部22c,22dにおいて、主面11に掛けられる爪H4や爪H6を省略することも可能である。また、ケース20の脚部22a~22dにおいて、回路素子のレイアウトに応じて、爪H1~H6の配置パターンを変更してもよい。例えば、爪H1~H6の配置パターンを変更することによって、基板10における主面11に接する爪が設けられた部分の背面12側のスペース、基板10における背面12に接する爪が設けられた部分の主面11側のスペース等、基板10における爪を避けた部分に回路素子を配置することができる。
【0047】
以上では、基板10の角部10a~10dに設けた切り欠き13a~13dに、ケース20の各脚部22a~22dを掛止する例を示したが、これに限られない。例えば、切り欠き13a~13dが設けられていない基板10の角部10a~10dにケース20の各脚部22a~22dを掛止する構成を採用してもよい。こうしても、基板10における回路素子を実装可能な領域が狭くなることを抑制することができる。ただし、基板10における回路素子を実装可能な領域が狭くなることを抑制しつつも、基板10に対するケース20の外形の大きさをコンパクトにする観点からは、上記のように、基板10の角部10a~10dに切り欠き13a~13dを設けることが好ましい。
【0048】
以上では、ケース20を樹脂で形成した例を示したが、ケース20を金属で形成してもよい。そして、金属で形成したケース20を、基板10に設けられたグランドパターンと接続することにより、電磁波シールドとして機能させることもできる。ただし、ケース20の成形の容易さや、基板10に対するケース20の取り付けの容易さの観点からは、ケース20を樹脂で形成することが好ましい。
【0049】
以上では、特定の回路素子の一例であるトランス31が、その一端T1が基板10の一端部E1に至り、他端T2が基板10の他端部E2に至っている例を示したが、これに限られない。例えは、トランス31の一端T1と他端T2のうち、一端T1のみが基板10の一端部E1に至っていてもよい。この場合、ケース20の第1側壁部211にのみ放熱用の切り欠き部211aを設け、第2側壁部212には切り欠き部212aを設けなくともよい。
【0050】
以上では、電源装置100が絶縁型DC-DCコンバータである例を示したが、これに限られず、入力電力から必要とされる出力電力を生成する電源回路が基板10において構成されたものであれば、電源装置100の種別は任意である。例えば、電源装置100は、チョッパ方式の非絶縁型DC-DCコンバータであってもよい。この場合、第1側壁部211の切り欠き部211aと第2側壁部212の切り欠き部212aとの少なくともいずれかによって放熱する対象である特定の回路素子は、チョークコイル等であってもよい。また、電源装置100は、トランス方式の絶縁型AC-DCコンバータであってもよく、特定の回路素子は、当該コンバータを構成するトランスであってもよい。また、特定の回路素子は、電源回路を構成する回路素子群のうち、外形が最も大きいものでなくともよく、基板10の一端部E1と他端部E2との少なくともいずれかに至る部分を有するとともに、放熱の必要性が高い任意の回路素子であればよい。以上のように、特定の回路素子としてどのような回路素子を選択するかは、目的に応じて任意であるが、特定の回路素子とは、電源回路を構成するために必要となる回路素子であって、機能上、外装から露出させる必要のあるコネクタ以外のものを言う。また、電源回路を構成する各種の回路素子の配置も任意であり、少なくとも、基板10の主面11に実装される回路素子を含んでいればよい。
【0051】
(1-1)以上に説明した電源装置100は、回路素子(例えば、回路素子群30のうち任意の回路素子)が主面11に実装された基板10と、基板10に取り付けられるケース20と、を備える。ケース20は、基板10と間隔を空けて位置して基板10の主面11を覆うカバー部21と、カバー部21から基板10に向かって延びる複数の脚部22a~22dと、を有する。複数の脚部22a~22dは、基板10の角部10a~10dに掛止される角対応脚部を含む。
この構成により、前述のように、基板10における回路素子を実装可能な領域が狭くなることを抑制することができる。
【0052】
(1-2)電源装置100は、角対応脚部として、一対の脚部からなる第1脚部対51と、第1脚部対51とは異なる一対の脚部からなる第2脚部対52と、を有する。第1脚部対51を構成する各脚部22a,22bは、基板10の主面11に掛かる爪H1,H2を有し、第2脚部対52を構成する各脚部22c,22dは、基板10の背面12に掛かる爪H3,H5を有する。
この構成により、前述のように、基板10に対してケース20を安定した姿勢で取り付けることができる。
【0053】
(1-3)基板10は、矩形状をなし、基板10における一方の対角線D1上に、第1脚部対51が位置し、基板における他方の対角線D2上に、第2脚部対52が位置していてもよい。
【0054】
(1-4)第1脚部対51又は第2脚部対52を構成する一対の脚部のうち、少なくともいずれかは、主面11に掛かる爪と背面12に掛かる爪の双方の爪を有する。
このように、主面11に掛かる爪と背面12に掛かる爪の双方の爪を有する脚部(例えば、爪H3,H4を有する脚部22cや、爪H5,H6を有する脚部22d)により、当該脚部は、基板10の対象部分に安定して掛止される。
【0055】
(1-5)上記(1-4)に記載の双方の爪を有する脚部は、双方の爪が基板10を挟んで互いに対向しない位置に設けられた特定脚部(脚部22d)を含む。
この構成により、前述のように、特定脚部としての脚部22dは、基板10の角部10dに対して、Y軸周りに傾く動きとX軸周りに傾く動きが規制されるため、安定して基板10の角部10dに取り付けられる。
【0056】
(1-6)角対応脚部(脚部22a~22d)は、基板10の角部10a~10dにおける切り欠き13a~13dが設けられた部分に掛止されることが好ましい。
この構成により、前述のように、基板10にケース20が取り付けられることで構成される電源装置100を、余分な凹凸が生じない外形で構成することができる。
【0057】
(1-7)電源装置100において、基板10には、他の機器と電気的に接続されるピン端子41a~41fが設けられている。ピン端子41a~41fは、基板10の背面12から遠ざかって延びている。また、複数の脚部22a~22dは、基板10の主面11から背面12に至ってさらに延び、且つ、複数の脚部22a~22dの先端はピン端子41a~41fの先端よりも基板10の近くに位置する。
この構成により、前述の通り、当該他の機器に対する電源装置100の姿勢調整機能との役割を共用させることができるため、部品点数の増加を抑制することができる。
【0058】
(2-1)また、電源装置100において、基板10の主面11に実装された回路素子群30のうち、特定の回路素子(例えばトランス31)の第1側壁部211に向く一端T1は、基板10の一端部E1に至っている。そして、第1側壁部211には、特定の回路素子の一端T1の外形に沿った形状の切り欠き部211aが設けられている。
この構成により、特定の回路素子の放熱性を確保することができる。また、特定の回路素子の一端T1を切り欠き部211aの内部に位置させることもできるため、特定の回路素子を含む回路素子群30を良好にレイアウトすることができる。
【0059】
(2-2)また、ケース20は、第1側壁部211に加えて、第1側壁部211と対向し、板状部210から基板10の他端部E2に向かう第2側壁部212を有する。第2側壁部212には、特定の回路素子の他端T2の外形に沿った形状の切り欠き部212aが設けられている。
この構成により、特定の回路素子の放熱性をより確保することができる。また、特定の回路素子を、基板10の一端部E1から他端部E2に至る態様で基板10に配置することができる。
【0060】
(2-3)好ましくは、電源装置100は、特定の回路素子の一端T1が第1側壁部211に設けられた切り欠き部211aの内部に位置するという条件と、特定の回路素子の他端T2が第2側壁部212に設けられた切り欠き部212aの内部に位置するという条件との少なくともいずれかを満たす。
これにより、前述の通り、基板10に対する特定の回路素子(例えばトランス31)の設置箇所の誤差(Y方向の誤差)を考慮することができる。
【0061】
(2-4)特定の回路素子は、トランス31であってもよい。
【0062】
(2-5)特定の回路素子は、回路素子群30のうち最も外形が大きい回路素子であってもよい。こうすれば、基板10における占有部分が最も大きくなる回路素子を、基板10の端部(一端部E1や他端部E2)まで配置することができるため、電源回路を構成する上で必要となる回路素子に対して、基板10を極力小さくすることができる。また、他の回路素子よりも放熱の必要性が高いと想定される特定の回路素子を良好に放熱することができる。
【0063】
以上の説明では、本発明の理解を容易にするために、公知の技術的事項の説明を適宜省略した。
【符号の説明】
【0064】
100…電源装置
10…基板
10a~10d…角部
11…主面
12…背面
13a~13d…切り欠き
E1…一端部
E2…他端部
D1,D2…対角線
20…ケース
21…カバー部
210…板状部
211~214…第1~第4側壁部
211a,212a…切り欠き部
22a~22d…脚部
H1~H6…爪
30…回路素子群
31…トランス
31a…コア
31b…コイル部
T1…一端
T2…他端
32…スイッチング素子
40…コントローラ
41a~41f…ピン端子
51…第1脚部対
52…第2脚部対