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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20230704BHJP
   F04B 39/06 20060101ALI20230704BHJP
   F04C 29/04 20060101ALI20230704BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20230704BHJP
   H02K 11/33 20160101ALI20230704BHJP
   H02K 5/22 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
F04B39/00 106Z
F04B39/06 A
F04C29/04 J
F04C29/00 T
H02K11/33
H02K5/22
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020013529
(22)【出願日】2020-01-30
(65)【公開番号】P2021120542
(43)【公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大河内 健史
(72)【発明者】
【氏名】矢野 順也
(72)【発明者】
【氏名】木下 雄介
(72)【発明者】
【氏名】山蔭 駿平
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-167206(JP,A)
【文献】特開2020-70739(JP,A)
【文献】特開2020-159320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00
F04B 39/06
F04C 29/04
F04C 29/00
H02K 11/33
H02K 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を圧縮する圧縮部と、
前記圧縮部を駆動する電動モータと、
前記電動モータを駆動するための回路基板を有するインバータと、
前記電動モータを収容する有底筒状のハウジングと、
板状のケース底壁、及び前記ケース底壁の外周部から筒状に延びるケース周壁を有するとともに前記ケース底壁が前記ハウジングの底壁に対向する有底筒状のインバータケースと、
前記ケース周壁の開口を閉塞して前記インバータケースと共に前記インバータを収容するインバータ収容室を形成するインバータカバーと、
前記インバータケースを前記ハウジングに締結する締結ボルトと、を備え、
前記ケース底壁には、前記回路基板に実装された電子部品が挿通される貫通孔が形成され、前記電子部品が前記ハウジングの底壁の外面に熱的に接触しており、
前記インバータケースと前記ハウジングとの間が環状のシール部材によってシールされている電動圧縮機であって、
前記インバータケースは、前記ケース底壁から前記ケース周壁とは反対側に向けて筒状に延びるシール周壁を有し、
前記ハウジングの外周面は前記シール周壁に一部囲繞されており、
前記シール部材は、前記シール周壁の内周面と前記ハウジングの外周面との間をシールしていることを特徴とする電動圧縮機。
【請求項2】
前記ケース周壁の端面と前記インバータカバーとの間をシールする環状のガスケットを備え、
前記シール周壁は、軸線方向から見たときに前記ケース周壁と少なくとも一部が重なっており、
前記ケース底壁における前記シール周壁側の面は、前記シール周壁の軸線方向から見たときに、少なくとも前記シール周壁における前記ケース周壁と重なっている部位の内周面に連続した状態で設けられ、前記ハウジングの底壁の外面に接触していることを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項3】
前記回路基板には、前記貫通孔に挿通されている電子部品とは別の電子部品であって、前記ケース底壁における前記ケース周壁側の面の一部である載置面に載置される載置部品がさらに実装されており、
前記載置面は、前記ケース底壁における前記ケース周壁側の面における前記載置面以外の部位よりも前記インバータカバー寄りに位置していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動圧縮機は、流体を圧縮する圧縮部と、圧縮部を駆動する電動モータと、電動モータを駆動するための回路基板を有するインバータと、電動モータを収容する有底筒状のハウジングと、を備えている。また、電動圧縮機は、板状のケース底壁、及びケース底壁の外周部から筒状に延びるケース周壁を有するとともにケース底壁がハウジングの底壁に対向する有底筒状のインバータケースと、ケース周壁の開口を閉塞してインバータケースと共にインバータを収容するインバータ収容室を形成するインバータカバーと、を備えている。そして、ケース周壁におけるケース底壁とは反対側の端面とインバータカバーとの間は、環状のガスケットをボルト締結により押圧することによってシールされている。
【0003】
ところで、回路基板に実装される電子部品の体格が大型化すると、インバータ収容室内に電子部品が収容できなくなる虞がある。かといって、電子部品が大型化したとしてもインバータ収容室内に電子部品が収容できるように、インバータケース及びインバータカバーを大きくしてしまうと、その分、電動圧縮機が大型化してしまう。そこで、例えば特許文献1では、ケース底壁に貫通孔を形成し、電子部品の一部を貫通孔に挿通している。このようにすることで、電子部品が大型化したとしても、インバータケース及びインバータカバーを大きくすること無く、電子部品をインバータ収容室内に収容することが可能となる。なお、この場合、インバータケースとハウジングとの間をシール部材によってシールする必要がある。
【0004】
また、例えば、貫通孔に挿通されている電子部品をハウジングの底壁の外面にゲル等を介して熱的に接触させることで、電子部品から生じる熱がインバータケースを介することなくハウジングに効率良く放熱され、電子部品の耐久性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0075353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、ケース底壁に貫通孔が形成されていると、インバータケースの剛性が低下するため、インバータカバーがガスケットを介してインバータケースに取り付けられた後のボルトの締結力によって、インバータケースが変形し易くなる。インバータケースが変形すると、ケース周壁におけるケース底壁とは反対側の端面とインバータカバーとの間に隙間が生じ易くなる。
【0007】
また、ケース底壁が不均一に変形するため、インバータケースとハウジングとの間をシールするシール部材が、例えば、ケース底壁の外面とハウジングの底壁の外面との間に介在されている場合、ケース底壁の外面とハウジングの底壁の外面との隙間が不均一となることでインバータ収容室のシール性が低下する。また、ケース底壁の外面とハウジングの底壁の外面を好適に熱的に接触させることが困難となる。その結果として、インバータ収容室内の電子部品から生じる熱をハウジングに効率良く放熱することができなくなる虞がある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、大型化を抑制しつつも、インバータ収容室のシール性を維持し、且つ電子部品から生じる熱をハウジングに効率良く放熱することができる電動圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する電動圧縮機は、流体を圧縮する圧縮部と、前記圧縮部を駆動する電動モータと、前記電動モータを駆動するための回路基板を有するインバータと、前記電動モータを収容する有底筒状のハウジングと、板状のケース底壁、及び前記ケース底壁の外周部から筒状に延びるケース周壁を有するとともに前記ケース底壁が前記ハウジングの底壁に対向する有底筒状のインバータケースと、前記ケース周壁の開口を閉塞して前記インバータケースと共に前記インバータを収容するインバータ収容室を形成するインバータカバーと、前記インバータケースを前記ハウジングに締結する締結ボルトと、を備え、前記ケース底壁には、前記回路基板に実装された電子部品が挿通される貫通孔が形成され、前記電子部品が前記ハウジングの底壁の外面に熱的に接触しており、前記インバータケースと前記ハウジングとの間が環状のシール部材によってシールされている電動圧縮機であって、前記インバータケースは、前記ケース底壁から前記ケース周壁とは反対側に向けて筒状に延びるシール周壁を有し、前記ハウジングの外周面は前記シール周壁に一部囲繞されており、前記シール部材は、前記シール周壁の内周面と前記ハウジングの外周面との間をシールしている。
【0010】
これによれば、シール周壁の内周面とハウジングの外周面との間が環状のシール部材によりシールされているため、放熱性を高めるよう電子部品がケース底壁を貫通する構成ゆえに、締結ボルトの締結力によるケース底壁の不均一な変形により、ケース底壁の外面とハウジングの底壁の外面との隙間が不均一となったとしても、インバータ収容室のシール性を維持することができる。そして、電子部品から生じる熱をハウジングに効率良く放熱することができる。以上により、電動圧縮機の大型化を抑制しつつも、インバータ収容室のシール性を維持し、且つ電子部品から生じる熱をハウジングに効率良く放熱することができる。
【0011】
上記電動圧縮機において、前記ケース周壁の端面と前記インバータカバーとの間をシールする環状のガスケットを備え、前記シール周壁は、軸線方向から見たときに前記ケース周壁と少なくとも一部が重なっており、前記ケース底壁における前記シール周壁側の面は、前記シール周壁の軸線方向から見たときに、少なくとも前記シール周壁における前記ケース周壁と重なっている部位の内周面に連続した状態で設けられ、前記ハウジングの底壁の外面に接触しているとよい。
【0012】
これによれば、インバータカバーがガスケットを介してインバータケースに取り付けられた後に、ガスケットの反力や締結ボルトの締結力がインバータケースに加わったとしても、インバータケースの変形をハウジングによって抑えることができる。その結果、ケース周壁におけるケース底壁とは反対側の端面とインバータカバーとの間に隙間が生じ難くなり、ガスケットによるケース周壁におけるケース底壁とは反対側の端面とインバータカバーとの間のシール性が維持される。
【0013】
上記電動圧縮機において、前記回路基板には、前記貫通孔に挿通されている電子部品とは別の電子部品であって、前記ケース底壁における前記ケース周壁側の面の一部である載置面に載置される載置部品がさらに実装されており、前記載置面は、前記ケース底壁における前記ケース周壁側の面における前記載置面以外の部位よりも前記インバータカバー寄りに位置しているとよい。
【0014】
これによれば、例えば、貫通孔に挿通しなくてもインバータ収容室内に十分収容できる小型の電子部品を回路基板に実装する場合に、小型の電子部品を載置部品として載置面に載置した状態で回路基板に実装することで、小型の電子部品から突出するリード線を長くすること無く、回路基板に実装することができる。したがって、小型の電子部品のリード線を極力短くすることができ、リード線の耐振動性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、大型化を抑制しつつも、インバータ収容室のシール性を維持し、且つ電子部品から生じる熱をハウジングに効率良く放熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態における電動圧縮機を一部破断して示す側断面図。
図2】電動圧縮機の一部分を示す断面図。
図3】電動圧縮機の一部分を示す分解斜視図。
図4】インバータケースの平面図。
図5】別の実施形態における電動圧縮機の一部分を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、電動圧縮機を具体化した一実施形態を図1図4にしたがって説明する。本実施形態の電動圧縮機は、例えば、車両空調装置に用いられる。
図1に示すように、電動圧縮機10は、有底筒状である金属製のハウジング11を備えている。ハウジング11は、有底筒状の吐出ハウジング12と、吐出ハウジング12に連結される有底筒状のモータハウジング13と、を有している。吐出ハウジング12及びモータハウジング13は、例えば、アルミニウム製である。モータハウジング13は、板状の底壁13aと、底壁13aの外周部から筒状に延びる周壁13bと、を有している。モータハウジング13の周壁13bには、モータハウジング13内に流体としての冷媒を吸入する吸入口13hが形成されている。
【0018】
モータハウジング13内には、回転軸15が収容されている。回転軸15は、回転軸15の軸線がモータハウジング13の周壁13bの軸心に一致した状態でモータハウジング13内に収容されている。また、モータハウジング13内には、回転軸15の回転によって駆動して冷媒を圧縮する圧縮部16と、回転軸15を回転させて圧縮部16を駆動する電動モータ17と、が収容されている。したがって、ハウジング11は、圧縮部16及び電動モータ17を収容している。圧縮部16及び電動モータ17は、回転軸15の軸線が延びる方向である軸線方向に並んで配置されている。電動モータ17は、圧縮部16よりもモータハウジング13の底壁13a側に配置されている。
【0019】
圧縮部16は、例えば、モータハウジング13内に固定された図示しない固定スクロールと、固定スクロールに対向配置される図示しない可動スクロールとから構成されるスクロール式である。
【0020】
電動モータ17は、筒状のステータ18と、ステータ18の内側に配置されるロータ19とから構成されている。ロータ19は、回転軸15と一体的に回転する。ステータ18は、ロータ19を取り囲んでいる。ロータ19は、回転軸15に止着されたロータコア19aと、ロータコア19aに設けられた図示しない複数の永久磁石と、を有している。ステータ18は、筒状のステータコア18aと、ステータコア18aに巻回されたモータコイル21と、を有している。
【0021】
吸入口13hには、外部冷媒回路22の一端が接続されている。吐出ハウジング12には、吐出口12hが形成されている。吐出口12hには、外部冷媒回路22の他端が接続されている。外部冷媒回路22から吸入口13hを介してモータハウジング13内に吸入された冷媒は、圧縮部16の駆動により圧縮部16で圧縮されて、吐出口12hを介して外部冷媒回路22へ流出する。そして、外部冷媒回路22へ流出した冷媒は、外部冷媒回路22の図示しない熱交換器や膨張弁を経て、吸入口13hを介してモータハウジング13内に還流する。電動圧縮機10及び外部冷媒回路22は、車両空調装置23を構成している。
【0022】
図1及び図2に示すように、電動圧縮機10は、有底筒状のインバータケース30を備えている。インバータケース30は、板状のケース底壁31、及びケース底壁31の外周部から筒状に延びるケース周壁32を有している。ケース底壁31は、モータハウジング13の底壁13aに対向する。そして、インバータケース30は、ケース底壁31がモータハウジング13の底壁13aに取り付けられることにより、モータハウジング13に連結されている。ケース底壁31の面積は、モータハウジング13の底壁13aの面積よりも大きい。このため、ケース底壁31の一部は、モータハウジング13の底壁13aの縁部よりも外側にはみ出している。したがって、ケース周壁32の一部も、モータハウジング13の底壁13aの縁部よりも外側にはみ出している。モータハウジング13のケース底壁31におけるモータハウジング13の底壁13aの縁部よりもはみ出した部位には、筒状の外部電源用コネクタ接続部33及び制御用コネクタ接続部34がそれぞれ突設されている。
【0023】
電動圧縮機10は、ケース周壁32の開口を閉塞する板状のインバータカバー40を備えている。インバータカバー40は、インバータケース30と共にインバータ収容室41を形成している。さらに、電動圧縮機10は、ケース周壁32におけるケース底壁31とは反対側の端面とインバータカバー40との間に介在される環状のガスケット42を備えている。ガスケット42は、ケース周壁32におけるケース底壁31とは反対側の端面とインバータカバー40との間をシールしている。
【0024】
電動圧縮機10は、インバータ43を備えている。インバータ43は、電動モータ17を駆動するための回路基板44を有している。インバータ43は、インバータ収容室41内に収容されている。したがって、インバータ収容室41は、インバータ43を収容している。圧縮部16、電動モータ17、及びインバータ43は、この順序で、回転軸15の軸線方向に並んで配置されている。
【0025】
図2に示すように、回路基板44には、コンデンサ45及びコイル46が実装されている。コンデンサ45及びコイル46は、LCフィルタを構成する電子部品である。また、回路基板44には、図示しないパワーモジュールが実装されている。パワーモジュールは、図示しない複数のスイッチング素子をモジュール化した電子部品である。コンデンサ45、コイル46、及びパワーモジュールは、回路基板44に実装された電子部品である。
【0026】
図2及び図3に示すように、モータハウジング13の外周面13cは、第1面131cと、第1面131cよりも外径が小さい第2面132cと、を有している。第2面132cは、モータハウジング13の外周面13cにおける底壁13a側の端部に位置している。第2面132cは、モータハウジング13の底壁13aの外面13eに連続している。第1面131cと第2面132cとは、モータハウジング13の径方向に環状に延びる段差面133cによって接続されている。
【0027】
モータハウジング13の底壁13aの外面13eは、最外面131eと、最外面131eから凹んだ位置に配置される凹設面132eと、を有している。最外面131eは、外面13eの外周部に位置するとともに全周に亘って延びる環状である。最外面131eは、モータハウジング13の第2面132cに連続している。最外面131eと凹設面132eとは、モータハウジング13の軸線方向に延びる環状の段差面133eによって接続されている。
【0028】
モータハウジング13には、雌ねじ孔13dが複数形成されている。各雌ねじ孔13dは、モータハウジング13の軸線方向に延びるとともに、モータハウジング13の底壁13aの最外面131eに開口している。複数の雌ねじ孔13dは、モータハウジング13の周方向に間隔を置いてそれぞれ配置されている。最外面131eにおける各雌ねじ孔13dの周囲は、モータハウジング13の軸線方向に向けて弧状に湾曲するように膨出している。
【0029】
モータハウジング13の底壁13aには、電動モータ17へ電力を供給するための導電部材47が3つ設けられている。3つの導電部材47は、支持板48を介してモータハウジング13の底壁13aに支持されている。3つの導電部材47は、モータハウジング13の底壁13aを貫通して、モータハウジング13内に突出している。そして、3つの導電部材47は、モータハウジング13内に配置されたクラスタブロック49を介して、電動モータ17から引き出された3つのモータ配線50とそれぞれ電気的に接続されている。また、支持板48は、凹設面132eに取り付けられており、3つの導電部材47は、凹設面132eから突出している。
【0030】
図3及び図4に示すように、インバータケース30は、ケース底壁31からケース周壁32とは反対側に向けて円筒状に延びるシール周壁51を有している。シール周壁51の内径は、モータハウジング13の第2面132cの外径よりも大きく、且つモータハウジング13の第1面131cの外径よりも小さい。シール周壁51の内周面51aは、モータハウジング13の第2面132cに沿って延びており、モータハウジング13の第2面132cを囲繞している。したがって、モータハウジング13の外周面13cはシール周壁51に一部囲繞されている。シール周壁51は、ケース周壁32の軸線方向で見たときにケース周壁32と一部が重なっている。
【0031】
図2及び図3に示すように、ケース底壁31におけるケース周壁32側の面311には、筒状のボス部31fが複数突設されている。各ボス部31fの内側は、ケース底壁31におけるシール周壁51側の面312に開口している。ケース底壁31におけるシール周壁51側の面312に対する各ボス部31fの内側の開口は、シール周壁51の軸線方向で見たときにシール周壁51の内側に位置している。各ボス部31fの内側は、各雌ねじ孔13dに連通している。
【0032】
図3及び図4に示すように、インバータケース30のケース底壁31には、コンデンサ45及びコイル46が挿通される貫通孔52が形成されている。そして、コンデンサ45及びコイル46は、貫通孔52に挿通されてモータハウジング13の凹設面132eに図示しないゲルを介して熱的に接触している。貫通孔52は、ケース底壁31におけるシール周壁51よりも内側の部位に形成されている。貫通孔52の内周面52aは、シール周壁51の内周面51aから離間している。貫通孔52とシール周壁51との間には、ケース底壁31の一部分が存在している。よって、ケース底壁31におけるシール周壁51側の面312は、シール周壁51の軸線方向から見たときに、シール周壁51の内周面51a全周に連続している。したがって、ケース底壁31におけるシール周壁51側の面312は、シール周壁51の軸線方向から見たときに、少なくともシール周壁51におけるケース周壁32と重なっている部位の内周面51aに連続した状態で設けられている。つまり、ケース底壁31におけるシール周壁51側の面312は、シール周壁51の軸線方向から見たときに、シール周壁51におけるケース周壁32と重なっていない部位の内周面51aにも連続している。
【0033】
図2に示すように、モータハウジング13の第2面132cには、環状のリング装着溝13gが形成されている。リング装着溝13gには、環状のシール部材53が装着されている。シール部材53は、シール周壁51の内周面51aとモータハウジング13の第2面132cとの間をシールする環状である。
【0034】
電動圧縮機10は、インバータケース30をモータハウジング13に締結する締結ボルト54を複数備えている。詳細には、インバータカバー40及びインバータケース30は、インバータカバー40及びガスケット42を貫通する複数の締結ボルト54が、各ボス部31fの内側を通過して各雌ねじ孔13dにそれぞれ螺合されることにより、モータハウジング13の底壁13aに取り付けられている。インバータケース30がモータハウジング13の底壁13aに取り付けられている状態において、シール周壁51は、モータハウジング13の第2面132cを囲むとともに、ケース底壁31におけるシール周壁51側の面312は、モータハウジング13の底壁13aの最外面131eに接触している。そして、シール周壁51の内周面51aとモータハウジング13の第2面132cとの間がシール部材53によってシールされている。したがって、インバータケース30とモータハウジング13との間がシール部材53によってシールされている。
【0035】
3つの導電部材47は、貫通孔52を通過して、インバータ収容室41内に突出するとともに、インバータ収容室41内に収容されているコネクタ55を介して回路基板44に電気的に接続されている。
【0036】
次に、本実施形態の作用について説明する。
回路基板44によって制御された電力は、コネクタ55、各導電部材47、クラスタブロック49、及び各モータ配線50を介して電動モータ17に供給される。これにより、電動モータ17が駆動し、電動モータ17の駆動に伴う回転軸15の回転によって、圧縮部16が駆動して冷媒が圧縮部16により圧縮される。そして、貫通孔52に挿通されているコンデンサ45及びコイル46がモータハウジング13の底壁13aの外面13eに熱的に接触しているため、コンデンサ45及びコイル46から生じる熱がモータハウジング13に効率良く放熱される。
【0037】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)シール周壁51の内周面51aとモータハウジング13の外周面13cとの間が環状のシール部材53によりシールされている。このため、放熱性を高めるようコンデンサ45およびコイル46がケース底壁31を貫通する構成ゆえに、締結ボルト54の締結力によるケース底壁31の不均一な変形により、ケース底壁31の外面とモータハウジング13の底壁13aの外面13eとの隙間が不均一となったとしても、インバータ収容室41のシール性を維持することができる。そして、コンデンサ45及びコイル46から生じる熱をモータハウジング13に効率良く放熱することができる。以上により、電動圧縮機10の大型化を抑制しつつ、インバータ収容室41のシール性を維持し、且つコンデンサ45及びコイル46から生じる熱をモータハウジング13に効率良く放熱することができる。
【0038】
(2)ケース底壁31におけるシール周壁51側の面312が、シール周壁51の軸線方向から見たときに、シール周壁51におけるケース周壁32と重なっている部位の内周面51aに連続した状態で設けられている。そして、ケース底壁31におけるシール周壁51側の面312が、モータハウジング13の底壁13aの外面13eに接触している。これによれば、インバータカバー40がガスケット42を介してインバータケース30に取り付けられた後に、ガスケット42の反力や締結ボルト54の締結力がインバータケース30に加わったとしても、インバータケース30の変形をモータハウジング13によって抑えられている。その結果、ケース周壁32におけるケース底壁31とは反対側の端面とインバータカバー40との間に隙間が生じ難くなり、ガスケット42によるケース周壁32におけるケース底壁31とは反対側の端面とインバータカバー40との間のシール性が維持される。
【0039】
(3)ケース底壁31におけるシール周壁51側の面312は、シール周壁51の軸線方向から見たときに、シール周壁51の内周面51a全周に連続している。これによれば、ケース底壁31におけるシール周壁51側の面312が、シール周壁51の軸線方向から見たときに、シール周壁51におけるケース周壁32と重なっていない部位の内周面51aには連続していない構成と比べると、インバータケース30の剛性を向上させることができる。また、インバータケース30の剛性が向上することにより、ケース底壁31におけるシール周壁51側の面312とモータハウジング13の底壁13aの外面13eとが熱的に好適に接触するため、インバータ収容室41内の熱を効率よくモータハウジング13へと放熱することができる。
【0040】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0041】
図5に示すように、回路基板44に実装されるパワーモジュール56が、ケース底壁31におけるケース周壁32側の面311の一部である載置面57に載置されていてもよい。よって、回路基板44には、貫通孔52に挿通されている電子部品とは別の電子部品であって、ケース底壁31におけるケース周壁32側の面311の一部である載置面57に載置される載置部品として、パワーモジュール56がさらに実装されている。パワーモジュール56は、例えば、コンデンサ45及びコイル46のように貫通孔52に挿通しなくてもインバータ収容室41内に十分収容できる小型の電子部品である。
【0042】
パワーモジュール56は、パワーモジュール56から突出するリード線56aが回路基板44に電気的に接続されることにより、回路基板44に実装されている。載置面57は、ケース底壁31におけるケース周壁32側の面311における載置面57以外の部位よりもインバータカバー40寄りに位置している。具体的には、ケース底壁31において、載置面57を有する部位の厚さH1は、載置面57以外の部位の厚さH2よりも厚くなっている。
【0043】
これによれば、例えば、貫通孔52に挿通しなくてもインバータ収容室41内に十分収容できるパワーモジュール56を回路基板44に実装する場合に、パワーモジュール56を載置面57に載置した状態で回路基板44に実装することで、パワーモジュール56から突出するリード線56aを長くすること無く、回路基板44に実装することができる。したがって、パワーモジュール56のリード線56aを極力短くすることができ、リード線56aの耐振動性を向上させることができる。
【0044】
○ 実施形態において、シール周壁51は、ケース周壁32の軸線方向で見たときにケース周壁32と全ての部位が重なっていてもよい。要は、シール周壁51は、ケース周壁32の軸線方向で見たときにケース周壁32と少なくとも一部が重なっていればよい。
【0045】
○ 実施形態において、ケース底壁31におけるシール周壁51側の面312が、シール周壁51の軸線方向から見たときに、シール周壁51におけるケース周壁32と重なっていない部位の内周面51aには連続していなくてもよい。要は、ケース底壁31におけるシール周壁51側の面312は、シール周壁51の軸線方向から見たときに、少なくともシール周壁51におけるケース周壁32と重なっている部位の内周面51aに連続した状態で設けられていればよい。
【0046】
○ 実施形態において、コンデンサ45及びコイル46とモータハウジング13との間に介在する部材はゲルでなくてもよい。例えば、放熱性の高い材質でできたシートでもよい。また、何かしらの部材を介在させずに、コンデンサ45及びコイル46を直接モータハウジング13に当接させてもよい。
【0047】
○ 実施形態において、圧縮部16は、スクロール式に限らず、例えば、ピストン式やベーン式等であってもよい。
○ 実施形態において、電動圧縮機10は、車両空調装置23を構成していたが、これに限らず、例えば、電動圧縮機10は、燃料電池車に搭載されており、燃料電池に供給される流体としての空気を圧縮部16により圧縮するものであってもよい。
【符号の説明】
【0048】
10…電動圧縮機、11…ハウジング、13a…底壁、13c…外周面、13e…外面、16…圧縮部、17…電動モータ、30…インバータケース、31…ケース底壁、32…ケース周壁、40…インバータカバー、41…インバータ収容室、42…ガスケット、43…インバータ、44…回路基板、45…電子部品であるコンデンサ、46…電子部品であるコイル、51…シール周壁、51a…内周面、52…貫通孔、53…シール部材、54…締結ボルト、56…載置部品であるパワーモジュール、57…載置面、311,312…面。
図1
図2
図3
図4
図5