(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】判定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/89 20060101AFI20230704BHJP
G01N 21/95 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
G01N21/89 Z
G01N21/95
(21)【出願番号】P 2020055928
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】杉渕 義則
(72)【発明者】
【氏名】山本 隆
【審査官】古川 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-010130(JP,A)
【文献】特開2013-246174(JP,A)
【文献】特開2008-096319(JP,A)
【文献】特開2004-053302(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102016220721(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01B 11/24
B65B 57/00 - B65B 57/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状をなす一対のフラップを構成する第一フラップおよび第二フラップの各先端側の部位どうしが互いに重合し、前記第一フラップにおける前記先端側の部位である第一重合部に対して外側に前記第二フラップの前記先端側の部位である第二重合部が重合している検査対象のカートンの良否を判定する装置であって、
前記カートンにおいて前記第一重合部および前記第二重合部が重合した部分を含む所定領域の静止画像を撮像する撮像部と、
前記撮像部で撮像された前記静止画像における影の有無または影の領域に基づいて前記カートンの良否を判定する判定部と、
前記一対のフラップが平板状に延在する方向および当該方向の法線方向の双方に対して傾斜した方向であって前記第一フラップの基端側から前記第二フラップの基端側に向かう方向に前記一対のフラップを照射する照射部と、を備え
、
前記判定部は、前記第二重合部の先端縁に沿う影が無いと検出された場合に前記カートンの向きが設定されたとおりの良品と判定し、前記第二重合部の先端縁に沿う影が有ると検出された場合に前記カートンの向きが設定されたとおりではない不良品と判定する
ことを特徴とする判定装置
。
【請求項2】
前記第二重合部の先端縁に沿う方向に搬送される前記カートンの良否を判定する装置であって、
搬送される前記カートンが前記撮像部による撮像箇所に到達したことを検出するトリガー部と、
前記トリガー部によって前記撮像箇所に到達したことが検出された場合に、前記撮像部によって前記カートンを撮像させるシャッター部と、を備えた
ことを特徴とする請求項
1に記載の判定装置。
【請求項3】
前記判定部によって不良品の前記カートンが判定されると、不良品と判定された前記カートンの製造ラインからの排出,前記カートンが不良品であることの報知,および,不良品と判定された前記カートンの製造ラインの停止の少なくとも何れかを実施する出力部を備えた
ことを特徴とする請求項1
または2に記載の判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の良否を判定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物体を検査する技術の一つとして、検査対象の明暗に基づいて、物体の良否を判定する技術が知られている。
このような技術として、封筒におけるウラ面部とフラップ(「ベロ」とも称される)との間に存在する段差によって生じる影に着目し、封筒の裏返り(いわば姿勢の良否)を検出する判定手法が提案されている。この判定手法では、下記の事項X1,X2を前提としており、固定された受光部において封筒からの受光量が経時的に変化したことが検出された場合に、封筒のウラ面部が受光部側を向く姿勢であると判定する(特許文献1参照)。
・事項X1:封筒の延在する平面に沿う方向およびこの方向に直交する方向の双方に
対して傾斜した方向であってウラ面部からフラップに向かう方向に照射
する
・事項X2:ウラ面部とフラップとが並ぶ方向に封筒が搬送される
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような判定手法では、受光量の経時的な変化に基づいて判定するため、検査対象の搬送(移動)が必須であり、静止した検査対象の良否を原理的に判定することができない。
よって、検査対象の移動状態とは独立して検査対象の良否を判定するうえで、改善の余地がある。
【0005】
本件の判定装置は、上記の課題に鑑みて創案されたものであり、検査対象の移動状態とは独立して検査対象の良否を判定することを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用および効果であって、従来の技術では得られない作用および効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで開示する判定装置は、平板状をなす一対のフラップを構成する第一フラップおよび第二フラップの各先端側の部位どうしが互いに重合し、前記第一フラップにおける前記先端側の部位である第一重合部に対して外側に前記第二フラップの前記先端側の部位である第二重合部が重合している検査対象のカートンの良否を判定する装置である。
本判定装置は、前記カートンにおいて前記第一重合部および前記第二重合部が重合した部分を含む所定領域の静止画像を撮像する撮像部と、前記撮像部で撮像された前記静止画像における影の有無または影の領域に基づいて前記カートンの良否を判定する判定部と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本件の判定装置によれば、検査対象の移動状態とは独立して検査対象の良否を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】判定装置および判定対象のカートンを示す模式図である。
【
図2】貼合の不良なカートン(不良品)の要部を例示する斜視図である。
【
図3】所望の姿勢をなすカートン(良品)の影に関する説明図である。
【
図4】所望の姿勢でないカートン(不良品)の影に関する説明図である。
【
図5】判定装置による判定手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態としての判定装置を説明する。
本実施形態の判定装置は、検査対象の物体に生じうる影に基づいて、検査対象の良否を判定する装置である。
この判定装置では、カートンを検査対象とし、カートンのなす姿勢(向き)の良否が判定される。本実施形態では、製造ラインにおいて搬送されているカートンを判定対象として例示する。このカートンには、ボックスフェイスフェイシャルティシュ(「BF」と略称される)が収容されている。
【0010】
本実施形態では、水平面に載置されたカートンが搬送されるものとし、説明で用いる方向を下記のように定義する。
重力の作用方向を下方とし、下方の反対方向を上方とする。また、水平方向においてカートンの搬送方向(いわゆる「MD方向」)に直交する方向を側方(いわゆる「CD方向」)とする。
【0011】
[I.一実施形態]
下記の一実施形態では、判定装置に関する構成を項目[1]で述べる。この項目[1]では、判定装置で良否が判定されるカートンの基本的な構成を小項目[1-1]で説明し、このカートンの良否を判定する判定装置を小項目[1-2]で詳述し、判定装置による判定方法を小項目[1-3]で述べる。
そして、項目[1]の構成による作用および効果を項目[2]で述べる。
【0012】
[1.構成]
[1-1.カートン]
図1に示すように、カートン1は、直方体状の物体であり、直方体の表面に沿った外形をなす。
本実施形態で例示するカートン1は、コンベア2(搬送装置)によって搬送され、コンベア2の搬送方向に間隔をあけて載置されている。すなわち、コンベア2で搬送されているカートン1の良否がつぎつぎと判定(検査)される。
【0013】
カートン1のそれぞれは、予め設定された所望の姿勢でコンベア2に載置されている。
所望の姿勢をなすカートン1では、水平方向に沿って延在する底壁部1Bが下側に位置するとともに水平方向に沿って延在する天壁部1Uが上側に位置し、搬送方向に沿う方向かつ上下方向に沿って平面状に側壁部1Sが延在している。
すなわち、「所望の姿勢」とは、コンベア2の搬送面2Fに対してカートン1の底壁部1Bが載置されて天壁部1U(上壁部)を上方に向けた姿勢であって、カートン1の側壁部1Sを側方に向けた姿勢である。
【0014】
一方、所望の姿勢でないカートン1は、搬送されるカートン1に混在するおそれのある不良品である。このように不良な姿勢のカートン1としては、底壁部1Bを上方に向けた姿勢のカートン1(いわば「ひっくり返ったカートン1」)が挙げられる。
側壁部1Sには、外フラップFo(第二フラップ)および内フラップFi(第一フラップ)からなるフラップ対Fo,Fi(一対のフラップ)が露出している。ここでは、所望の姿勢をなすカートン1において、天壁部1Uに連設された外フラップFoのほうが底壁部1Bに連設された内フラップFiよりも上方に配置された側壁部1Sを例示する。
【0015】
所望の姿勢をなすカートン1では、外フラップFoにおける下側(先端側)の部位である外重合部Mo(第二重合部)が内フラップFiにおける上側(先端側)の部位である内重合部Mi(第一重合部)に対して外側に重ね合わせられている。このようなオーバーフラップタイプの側壁部1Sは、外重合部Moおよび内重合部Miの重合したオーバーラップ部M(部分)が形成されている。
【0016】
オーバーラップ部Mでは、外フラップFoの下端縁FE(先端縁)が内フラップFiに対して外フラップFoの厚み分だけ外側に設けられている。この下端縁FEは、カートン1において影を生じさせる段差とも言える。ここで例示する下端縁FEは、所望の姿勢をなすカートン1では側壁部1Sにおける上下方向の中間よりもやや下方に位置し、搬送方向(水平方向)に沿って延在している。
【0017】
そのほか、
図2に示すように、側壁部1Sにおいて外フラップFoの外重合部Moが内フラップFiの内重合部Miから捲れているカートン1は、フラップ対Fo,Fiどうしが正常に貼合されておらず、姿勢の良否にかかわらずカートン1に混在するおそれのある不良品である。
上記のように構成されるカートン1は、つぎに説明する判定装置3によって良否が判定される。
【0018】
[1-2.判定装置]
図1に示すように、判定装置3には、以下に示す入力系,制御系(判定系),出力系の構成が設けられている。
・入力系:判定に必要な情報を検出してその情報を制御系に入力するもの
・制御系:入力系から入力された情報に基づいて制御信号を生成するもの
・出力系:制御系で生成された制御信号によって作動するもの
なお、判定装置3の最小構成は、制御系の構成のみである。判定装置3の最大構成は、入力系の構成,制御系の構成および出力系の構成である。
【0019】
この判定装置3には、入力系の構成としてデジタル画像を静止画像で撮像するカメラ4(撮像部)が設けられ、制御系の構成として制御部5が設けられ、出力系の構成として出力部6が設けられている。
本実施形態の判定装置3では、カメラ4で撮像された静止画像が制御部5へ入力され、入力された静止画像に基づいて制御部5で生成された制御信号が出力部6へ出力される。すなわち、カメラ4で撮像された静止画像に基づく判定の主体が制御部5であり、制御部5による制御の対象が出力部6である。
以下、入力系,制御系,出力系の順に判定装置3の構成を述べる。
【0020】
――入力系――
判定装置3の入力系には、上述のカメラ4(撮像部)が設けられるほか、検査対象のカートン1を照射するライト4L(照射部)が設けられ、カメラ4を作動させるためのトリガー部4Tやシャッター部4Sも設けられている。
ライト4Lは、所望の姿勢をなすカートン1における側壁部1S(カートン1における側方の部位)を照射する照明機器である。
【0021】
このライト4Lは、カートン1に対して側方に設けられ、以下に示す上位置P1または下位置P2に配置されている。
・上位置P1:カートン1に対して斜め上方から照射する位置
・下位置P2:カートン1に対して斜め下方から照射する位置
上記の位置P1,P2に配置されたライト4Lからの光が照射される方向は、側壁部1Sをなすフラップ対Fo,Fiが平板状に延在する方向(上下方向および搬送方向の双方に沿う方向)およびこの方向の法線方向(いわゆるCD方向)の双方に対して傾斜した所定方向である。
【0022】
この所定方向は、上記の傾斜した方向であって、上位置P1に配置されたライト4Lからの照射方向であれば下記の方向D1であり、下位置P2に配置されたライト4Lからの照射方向であれば下記の方向D2である。
・方向D1:上方(外フラップFoの基端側)から下方(内フラップFiの基端側)
へ向かう方向
・方向D2:下方(内フラップFiの基端側)から上方(外フラップFoの基端側)
へ向かう方向
【0023】
カメラ4は、搬送中のカートン1における側方の部位を撮像する装置である。
このカメラ4は、検査対象のカートン1が所望に姿勢であれば、天壁部1Uが上側であって底壁部1Bが下側に位置するカートン1における側壁部1Sの少なくとも所定領域RPを撮像する。ここでいう「所定領域RP」とは、側壁部1Sにおいて影が生じうるエリアを含む領域を意味する。すなわち、外フラップFoの下端縁FEおよびその周辺領域(いわば段差による影が形成される領域)が所定領域RPに含まれる。
【0024】
ここでは、側壁部1Sの法線方向Xに沿う光軸が設定され、この光軸で側壁部1Sを撮像するカメラ4を例示する。このようにカートン1に対して側方に配置されたカメラ4は、つぎに説明するトリガー部4Tやシャッター部4Sによって撮像させられる。
トリガー部4Tは、カメラ4による撮像タイミングを発信するタイミング機器である。トリガー部4Tから発信された撮像タイミングは、シャッター部4Sに入力される。シャッター部4Sは、トリガー部4Tから入力された撮像タイミングでカメラ4のシャッターを切る開閉機器である。
【0025】
トリガー部4Tには、カートン1における搬送方向下流側の端部がカートン1を撮像すべき領域に対応する所定の撮像箇所Pに到達したことを検出する構成が設けられている。
ここでは、同期型の光電スイッチTS(反射型の光電センサ)と、光電スイッチTSからの検査光を反射するリフレクタTR(反射板)とがトリガー部4Tとして設けられる。
搬送されているカートン1が撮像箇所Pに到達すると、カートン1における搬送方向下流側の端部によって光電スイッチTSの検査光が遮断される。このとき、リフレクタTRで反射した検査光が光電スイッチTSに受光されなくなり、このタイミングが撮像タイミングとしてシャッター部4Sに発信される。
【0026】
このシャッター部4Sは、トリガー部4Tから撮像タイミングが入力されると、カメラ4にカートン1を撮像させる。
このようにして、トリガー部4T,シャッター部4S,カメラ4が協働することにより、ライト4Lで側方から照射されたカートン1が撮像箇所Pで順次撮像される。
なお、ライト4L,カメラ4,トリガー部4T,シャッター部4Sのそれぞれは、搬送されるカートン1が移動するのに対し、固定された状態に設けられている。
【0027】
そのほか、撮像箇所Pにおいてカメラ4で撮像されるカートン1の背部には、カートン1の色と相違する単色に設けられた撮像補助部が設けられている。
ここでは、カメラ4で撮像されるカートン1の背部にアルミパネル4Pが撮像補助部として設けられている。たとえば、アルミパネル4Pはアルミ色(銀色)の単色をなしているのに対し、これとは異なる色をなす側壁部1Sがカメラ4で撮像される。
【0028】
なお、アルミパネル4Pは、トリガー部4TのリフレクタTRとして兼用することも可能である。
上記のようにカメラ4で撮像されるカートン1の背景に映り込む背景領域がカートン1の色と相違する単色に設けられた撮像補助部によって、カメラ4で撮像されたカートン1の外形と背景とのコントラストが確保される。
【0029】
――制御系――
判定装置3の制御系には、制御部5が設けられている。たとえば、コンベア2の近傍に設けられた制御盤に制御部5が内蔵される。
なお、制御部5は、プロセッサー(中央処理装置),メモリやストレージなどの記憶装置,インターフェース装置などが内蔵され、これらが内部バスを介して互いに接続されたコンピュータ(演算装置)として構成されている。
【0030】
制御部5には、以下に示す二種のインターフェース部5i,5oが設けられている。
・入力インターフェース部5i:カメラ4で撮像された画像(入力系からの情報)が
入力されるインターフェース(
図1では「IF部」
と略記する)
・出力インターフェース部5o:制御部5で生成された制御信号を出力するインター
フェース(
図1では「IF部」と略記する)
【0031】
この制御部5は、カートン1の良否を判定する要素として、記憶部51および判定部52を備えている。
記憶部51では、カートン1の良否を判定するための情報を記憶している。判定部52では、入力インターフェース部5iから入力されたカメラ4で撮像された静止画像と記憶部51に記憶された情報とに基づいて、カートン1の良否を判定(演算)する。
【0032】
<記憶部>
記憶部51には、カートン1の良否を判定するための基準(情報)が予め登録(記憶)されている。
具体的には、カメラ4で撮像された静止画像において影の存在する領域の大小を判定するための基準として、カメラ4で静止画像が撮像される上記の所定領域RPに収まる所定の大きさに予め設定された基準領域RSが記憶部51に予め登録されている。
【0033】
基準領域RSは、良品のカートン1が撮像された静止画像において影が存在しうる範囲が含まれる領域であって、不良品のカートン1が撮像された静止画像において影が存在しうる範囲がはみ出すあるいは含まれない領域である。
たとえば、外フラップFoの外重合部Moが内フラップFiの内重合部Miから捲れている不良品のカートン1において側壁部1Sの捲れた箇所による影の範囲は、上記の基準領域RSからはみ出す、または、上記の基準領域RSに含まれない。
【0034】
<判定部>
判定部52は、側壁部1Sに生じうる影に着目して、カートン1の良否を判定する。判定部52で良品と判定されるカートン1は、少なくとも所望の姿勢をなす。
図3に示すように、所望の姿勢をなす良品のカートン1における側壁部1Sでは、上位置P1にライト4Lが配置された場合に外フラップFoの下端縁FEから下方に影Sが生じるのに対し、下位置P2にライト4Lが配置された場合には下端縁FEの周辺に影が生じない。
【0035】
一方、判定部52で不良品と判定されるカートン1は、側壁部1Sが側方を向くものの所望の姿勢ではない、または、外フラップFoの外重合部Moが内フラップFiの内重合部Miから捲れている。
図4に示すように、所望の姿勢ではないカートン1における側壁部1Sでは、上位置P1にライト4Lが配置された場合に外フラップFoの下端縁FEの周辺に影が生じないのに対し、下位置P2にライト4Lが配置された場合には下端縁FEから上方に影S′が生じる。
図2に示すようにフラップFoの外重合部Moが捲れた不良品のカートン1は、上記の影よりも大きい領域の影が外フラップFoの下端縁FEから生じうる。
【0036】
このような影の有無または影の領域に基づいて、判定部52はカートン1の良否を判定する。
この判定部52は、少なくとも下記の必須判定条件の成否を判定して、カートン1のなす姿勢の良否を判定する。
・必須判定条件:カメラ4で撮像された静止画像における影の有無に基づく条件
【0037】
上記の必須判定条件には、上位置P1にライト4Lが配置されていれば下記の第一必須条件が適用され、下位置P2にライト4Lが配置されていれば下記の第二必須条件が適用される。
・第一必須条件:カメラ4で撮像された静止画像に影が有ると成立する条件
(カメラ4で撮像された静止画像に影が無いと成立しない条件)
・第二必須条件:カメラ4で撮像された静止画像に影が無いと成立する条件
(カメラ4で撮像された静止画像に影が有ると成立しない条件)
【0038】
必須判定条件の成立を判定した判定部52は、カートン1が所望の姿勢である良品と判定する。第一必須条件が必須判定条件に適用された判定部52は、外重合部Moの下端縁FEに沿う影が有ると検出された場合にカートン1の向きが設定されたとおりの良品と判定する。第二必須条件が必須判定条件に適用された判定部52は、外重合部Moの下端縁FEに沿う影が無いと検出された場合にカートン1の向きが設定されたとおりの良品と判定する。
【0039】
一方、必須判定条件の不成立を判定した判定部52は、カートン1の向きが設定されたとおりではなく、所望の姿勢ではないカートン1を不良品と判定する。第一必須条件が必須判定条件に適用された判定部52は、外重合部Moの下端縁FEに沿う影が無いと検出された場合にカートン1の向きが設定されたとおりではない不良品と判定する。第二須条件が必須判定条件に適用された判定部52は、外重合部Moの下端縁FEに沿う影が有ると検出された場合にカートン1の向きが設定されたとおりではない不良品と判定する。
【0040】
この判定部52は、下記の加重判定条件の成否も判定して、カートン1の良否を判定している。
・加重判定条件:所定領域RP内で基準領域RS以外に影が無いと成立する条件
(所定領域RP内で基準領域RS以外に影が有ると成立する条件)
必須判定条件の成立に加えて加重判定条件の成立も判定した判定部52は、カートン1を良品と判定する。たとえば、フラップ対Fo,Fiどうしが正常に貼合されたカートン1の側壁部1Sでは、側壁部1Sに生じうる影が基準領域RSに収まるとともに基準領域RS以外に影が無いため、カートン1が良品と判定される。
【0041】
一方、必須判定条件の成立は判定したものの加重判定条件の不成立を判定した判定部52は、カートン1を不良品と判定する。たとえば、フラップFoの外重合部Moが捲れたカートン1の側壁部1Sでは、捲れた外重合部Moによる影が所定領域RP内で基準領域RS以外にはみ出すため、カートン1が不良品と判定される。
このように、基準領域RSよりも静止画像における影の領域が大きい場合に判定部52は、おいてフラップ対Fo,Fiどうしが正常に貼合されていない不良品と判定する。
【0042】
上述の判定内容より、カートン1が不良品と判定されるのは以下に列挙するケース1,2であり、カートン1が良品と判定されるのは下記のケース3である。
・ケース1:必須判定条件の不成立が判定された場合
・ケース2:必須判定条件の成立が判定されたものの
加重判定条件の不成立が判定された場合
・ケース3:必須判定条件および加重判定条件の成立が判定された場合
上記のケース1,2のようにカートン1が不良品であると判定した判定部52は、出力系の構成を作動させる制御信号を生成する。この制御信号は、つぎに説明する出力系の構成へ出力インターフェース部5oを介して出力される。
【0043】
――出力系――
判定装置3の出力系には、カートン1が不良品と判定された際に生成される制御信号で作動する出力部6が設けられている。
出力部6の一例としては、不良品のカートン1が判定された旨をオペレータに報知するアラーム灯やブザーなどの報知器が挙げられる。出力部の他の例としては、不良品と判定されたカートン1を製造ラインから排出するもの,不良品と判定されたカートン1の製造ラインを停止させるものなどが挙げられる。
【0044】
[1-3.フローチャート]
つぎに、
図5のフローチャートを参照して、上記の判定装置3によるカートン1の良否を判定する手順を例示する。ここで例示する手順は、所定の周期で繰り返し実施される。
まず、検査対象のカートン1が撮像箇所Pに到達したか否かを判定する(ステップA1)。この判定は、トリガー部4Tから撮像タイミングが発信されたときに肯定判定され、そうでなければ否定判定される。
検査対象のカートン1が撮像箇所Pに到達していないと判定されると(ステップA1の否定判定)、再び、検査対象のカートン1が撮像箇所Pに到達したか否かを判定する(ステップA1)。
【0045】
検査対象のカートン1が撮像箇所Pに到達したと判定されると(ステップA1の肯定判定)、トリガー部4Tから発信された撮像タイミングでシャッター部4Sによって作動したカメラ4がカートン1の静止画像を撮像する(ステップA2)。
それから、判定部52によってカートン1の良否を判定する(ステップA3~A6)。具体的には、必須判定条件の成否を判定し(ステップA3)、その後に加重判定条件の成否も判定する(ステップA4)。
【0046】
必須判定条件および加重判定条件が成立したと判定されると(ステップA4の肯定判定)、カートン1が良品であると判定する(ステップA5)。
一方、必須判定条件または加重判定条件の不成立が判定されると(ステップA3,A4の何れかの否定判定)、カートン1が不良品であると判定する(ステップA6)。
そして、本手順の周期を終了する(リターン)。
【0047】
[2.作用および効果]
本実施形態の判定装置3は、上述のような構成を備えるため、下記のような作用および効果を得ることができる。
(1)判定装置3によれば、カメラ4で撮像したカートン1の静止画像に基づいて判定部52がカートン1の良否を判定するため、カートン1が上述のように搬送される状態に限らず静止した状態であっても、原理的にカートン1の良否を判定することができる。
よって、検査対象であるカートン1の移動状態とは独立してカートン1の良品を判定することができる。
【0048】
一方、「発明が解決しようとする課題」で言及した従来技術では、受光量の経時的な変化に基づいて検査対象の良否を判定するため、静止した検査対象の良否が判定不能(検査対象の搬送が必須)であるだけでなく、下記の課題イ,ロも挙げられる。
・課題イ:受光量の変化を検出可能な期間以下には判定時間の短縮が不能である
・課題ロ:検査対象における影の延在方向と搬送方向とが交差することが必須である
これに対し、判定装置3によれば、カメラ4で撮像したカートン1の静止画像に基づいて判定部52がカートン1の良否を判定することから、上記の課題イ,ロを以下に述べるように解決することができる。
【0049】
課題イについては、静止画像に基づくカートン1の良否を判定する処理に要する期間が判定時間となるため、上記の課題イの「受光量の変化を検出可能な期間」のような判定時間の制約が原理的に回避される。よって、判定装置3によれば、カートン1の良否を判定する時間を原理的に短縮することが可能である。
課題ロについては、カートン1において影が生じうる所定領域PRがカメラ4で撮像された静止画像に基づいてカートン1の良否が判定されることから、カートン1における影の延在方向やカートン1の搬送方向にかかわらず、カートン1の良否を判定することができる。
【0050】
(2)上位置P1にライト4Lが配置された判定装置3によれば、カメラ4で撮像された静止画像に影が有る場合に第一必須条件が必須判定条件として成立し、カートン1が所望の姿勢であると判定することができる。また、上位置P1にライト4Lが配置された判定装置3によれば、カメラ4で撮像された静止画像に影が無い場合に第一必須条件が必須判定条件として成立せず、カートン1が所望の姿勢でないと判定することができる。これらのように、カメラ4で撮像された静止画像における影が有るか否か(有無)を判定するだけの簡素なロジックで、カートン1が所望の姿勢であるか否かを判定することができる。
【0051】
(3)下位置P2にライト4Lが配置された判定装置3によれば、カメラ4で撮像された静止画像に影が無い場合に第二必須条件が必須判定条件として成立し、カートン1が所望の姿勢であると判定することができる。また、下位置P2にライト4Lが配置された判定装置3によれば、カメラ4で撮像された静止画像に影が有る場合に第二必須条件が必須判定条件として成立せず、カートン1が所望の姿勢でないと判定することができる。これらのように、カメラ4で撮像された静止画像における影が無いか否か(有無)を判定するだけの簡素なロジックで、カートン1が所望の姿勢であるか否かを判定することができる。
【0052】
(4)さらに、カメラ4で撮像された静止画像における影の領域が基準領域RSよりも大きい場合に加重判定条件は成立せず、フラップ対Fo,Fiどうしが正常に貼合されていない不良品のカートン1と判定される。反対に、カメラ4で撮像された静止画像における影の領域が小さく基準領域RSに収まる場合には加重判定条件が成立し、フラップ対Fo,Fiどうしが正常に貼合された良品のカートン1と判定される。これらのように、カメラ4で撮像された静止画像における影の領域が基準領域RSよりも小さいか否かを判定するだけの簡素な追加ロジックにより、カートン1の良否を判定する精度を高めることができる。
【0053】
(5)そのほか、カートン1が撮像箇所Pに到達したのを検出したトリガー部4Tから発信された撮像タイミングでシャッター部4Sがカメラ4でカートン1を撮像させるため、搬送されるカートン1の良否を順次判定することができる。よって、カートン1の製造ラインに判定装置3を組み込むことができ、カートン1の良否を判定する効率を高めることもできる。
【0054】
(6)なお、カートン1が不良品と判定された際には、不良品のカートン1が判定された旨が出力部6より報知されれば、不良品のカートン1をオペレータによって処理させることができる。あるいは、カートン1が不良品と判定された際に、不良品と判定されたカートン1を製造ラインから排出したり、製造ラインを停止したりすれば、不良品のカートン1が出荷製品に混在するのを防止することができる。
そのほか、アルミパネル4P(撮像補助部)がカートン1とは相違する単色に設けられていることから、カメラ4によって撮像されたカートン1の静止画像の識別性が底上げされる。よって、カートン1の良否を判定する精度を向上させるのに資する。
【0055】
[II.変形例]
上述の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、適宜組み合わせることもできる。
たとえば、判定部は少なくとも必須判定条件に基づいてカートンのなす姿勢の良否を判定すればよく、加重判定条件に基づくカートンの良否判定は省略してもよい。この場合には、制御部から基準領域の登録および基準領域の登録された記憶部を省略することができ、カートンの良否判定に要する演算処理を簡素化することができる。
【0056】
また、良否の判定されるカートンは、搬送されているものに限らず、静止したものであってもよい。この場合には、トリガー部やシャッター部を省略することができ、より簡素な構成の判定装置を実現することができる。
さらに、一実施形態で上述の方向D1,D2からカートン1の周囲に既設の光源や自然光が照射されていれば、カートンの側壁部を照射するライトを省略することもできる。
なお、出力部は、上述の例に限らず不良品のカートンが判定されたことに応じて機能する種々の構成を適用することができ、最小構成の判定装置で上述のように必須ではない。
【符号の説明】
【0057】
1 カートン
1B 底壁部
1S 側壁部
1U 天壁部
2 コンベア(搬送装置)
3 判定装置
4 カメラ(撮像部)
4L ライト(照射部)
4S シャッター部
4T トリガー部
4P アルミパネル(撮像補助部)
5i 入力インターフェース部
5o 出力インターフェース部
5 制御部
51 記憶部
52 判定部
6 出力部
FE 下端縁(先端縁)
Fo 外フラップ(第二フラップ)
Fi 内フラップ(第一フラップ)
M オーバーラップ部
Mo 外重合部(第二重合部)
Mi 内重合部(第一重合部)
P 撮像箇所
RP 所定領域
RS 基準領域
S,S′ 影
TR リフレクタ
TS 光電スイッチ
X 側壁部1Sの法線方向