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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】遠心圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/42 20060101AFI20230704BHJP
   F04D 29/063 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
F04D29/42 M
F04D29/063
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020081288
(22)【出願日】2020-05-01
(65)【公開番号】P2021175882
(43)【公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正悟
(72)【発明者】
【氏名】福山 了介
(72)【発明者】
【氏名】竹内 花帆
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 大祐
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼瀬 陽平
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-186238(JP,A)
【文献】特開2019-157707(JP,A)
【文献】特開2021-175881(JP,A)
【文献】特開2020-56320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/42
F04B 39/02
F04D 29/063
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源によって回転する低速シャフトと、
前記低速シャフトよりも高速に回転する高速シャフトに取り付けられたインペラと、
前記低速シャフトの動力を前記高速シャフトに伝達する増速機と、
前記駆動源を収容する駆動室、前記インペラを収容するインペラ室及び前記増速機を収容する増速機室が形成され、前記高速シャフトが挿通される挿通孔を有するとともに前記インペラ室と前記増速機室とを仕切る仕切壁を備えたハウジングと、
前記高速シャフトの外周面と前記挿通孔の内周面との間に設けられるシール部材と、
前記増速機に供給されるオイルが貯留されるオイルパンと、
前記オイルパンの上部と前記ハウジングの外面に開口する圧抜き孔とを連通する圧抜き通路と、を備える遠心圧縮機であって、
前記圧抜き通路は、第1圧抜き通路及び第2圧抜き通路を有し、
前記圧抜き孔は、前記第1圧抜き通路における重力方向上方に設けられ、
前記第2圧抜き通路は、前記第1圧抜き通路と合流して合流部を形成し、
前記第2圧抜き通路における最大の流路断面積は、前記第1圧抜き通路における最小の流路断面積に比べて小さいことを特徴とする遠心圧縮機。
【請求項2】
前記圧抜き通路は、
前記第1圧抜き通路の途中における重力方向下方から重力方向上方まで迂回して繋がる迂回圧抜き通路を有し、
前記第2圧抜き通路における最大の流路断面積は、前記迂回圧抜き通路における最小の流路断面積に比べて小さいことを特徴とする請求項1に記載の遠心圧縮機。
【請求項3】
前記迂回圧抜き通路と、前記第2圧抜き通路とは、前記合流部を介して連通しており、
前記ハウジングは、互いに対向する第1の側面及び第2の側面を有し、
前記合流部は、前記第1の側面寄りの重力方向上方に形成され、前記圧抜き孔は、前記第2の側面寄りの重力方向上方に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の遠心圧縮機。
【請求項4】
前記第2圧抜き通路は、前記オイルパンの上部に連通する下端部と、前記合流部に接続される上端部との間に、流路断面積が前記上端部及び前記下端部に比べて小さい絞り部とを有することを特徴とする請求項3に記載の遠心圧縮機。
【請求項5】
前記合流部の重力方向上方には前記圧抜き孔が配置されるとともに、前記合流部の重力方向下方には前記第1圧抜き通路が配置されることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の遠心圧縮機。
【請求項6】
駆動源によって回転する低速シャフトと、
前記低速シャフトよりも高速に回転する高速シャフトに取り付けられたインペラと、
前記低速シャフトの動力を前記高速シャフトに伝達する増速機と、
前記駆動源を収容する駆動室、前記インペラを収容するインペラ室及び前記増速機を収容する増速機室が形成され、前記高速シャフトが挿通される挿通孔を有するとともに前記インペラ室と前記増速機室とを仕切る仕切壁を備えるハウジングと、
前記高速シャフトの外周面と前記挿通孔の内周面との間に設けられるシール部材と、
前記増速機にオイル通路を介して供給されるオイルが貯留されるオイルパンと、
前記オイルパンの上部と前記ハウジングの外部に開口する圧抜き孔とを連通する圧抜き通路と、を備える遠心圧縮機であって、
前記圧抜き通路は、第1圧抜き通路と迂回圧抜き通路とを有し、
前記圧抜き孔は、前記第1圧抜き通路における重力方向上方に設けられ、
前記迂回圧抜き通路は、前記第1圧抜き通路の途中における重力方向下方から重力方向上方まで迂回して繋がる迂回圧抜き通路を有し、
前記迂回圧抜き通路における最小の流路断面積は、前記第1圧抜き通路における最小の流路断面積と比べて小さいことを特徴とする遠心圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載される遠心圧縮機が知られている。
上記の遠心圧縮機は、低速シャフトと、高速シャフトに取り付けられたインペラと、低速シャフトの動力を高速シャフトに伝達する増速機と、を備えている。遠心圧縮機は、インペラを収容するインペラ室及び増速機を収容する増速機室が形成されたハウジングと、インペラ室と増速機室とを仕切る仕切壁と、仕切壁に形成されるとともに高速シャフトが挿通される挿通孔と、を備えている。遠心圧縮機は、高速シャフトの外周面と挿通孔の内周面との間に設けられるシール部材と、増速機に供給されるオイルが貯留されるオイルパンと、オイルパンに貯留されたオイルを増速機に供給し、オイルパンに戻すオイル通路と、を備えている。増速機に供給されるオイルは、高速シャフトと増速機との摺動部分の摩擦や焼き付きを抑制する。シール部材は、増速機室内に貯留されるオイルが、挿通孔を介してインペラ室内へ洩れ出すことを抑制する。
【0003】
しかしながら、インペラの回転に伴って気体が圧縮されて、インペラ室内の圧力が高くなると、インペラ背面の縁側からインペラ背面の空隙に対して圧縮した気体が流れ、インペラ背面の空隙の圧力が上昇し、高速シャフトの外周面と挿通孔の内周面との間を介してインペラ背面の空隙から増速機室への気体の洩れが生じ、増速機室内の圧力が上昇する場合がある。そして、例えば、インペラが低速で回転している場合や、遠心圧縮機の運転が停止している場合のように、インペラ室内の圧力が増速機室内の圧力よりも低くなる条件となると、増速機室内のオイルが高速シャフトの外周面と挿通孔の内周面との間を介してインペラ室に洩れ出してしまう虞がある。
【0004】
そこで、例えば特許文献2の遠心圧縮機では、増速機室内の圧力の上昇を抑えるために、オイルパンと遠心圧縮機の外部(大気側)とを連通する圧抜き通路を備えている。これによれば、増速機室内の圧力が上昇しても、圧抜き通路の圧抜き孔から圧力を抜くことができるため、増速機室内の圧力の上昇が抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-186238号公報
【文献】特開2019-157707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、増速機にオイルを供給することにより増速機室にオイルが溜まり、増速機室に溜まったオイルは増速機により撹拌されるため、オイルに気泡が生じる。オイルに生じた気泡は、増速機からオイルパンを介して圧抜き通路に到達して貯留される。このため、圧抜き通路にオイル内の気泡が貯留されることによってオイルの液面の上昇へと繋がり、圧抜き通路の圧抜き孔に至り、圧抜き孔の開口からのオイル漏れが発生する虞がある。
【0007】
本発明の目的は、オイルの液面が圧抜き通路の圧抜き孔に到ることを抑制できる遠心圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する遠心圧縮機は、駆動源によって回転する低速シャフトと、前記低速シャフトよりも高速に回転する高速シャフトに取り付けられたインペラと、前記低速シャフトの動力を前記高速シャフトに伝達する増速機と、前記駆動源を収容する駆動室、前記インペラを収容するインペラ室及び前記増速機を収容する増速機室が形成され、前記高速シャフトが挿通される挿通孔を有するとともに前記インペラ室と前記増速機室とを仕切る仕切壁を備えたハウジングと、前記高速シャフトの外周面と前記挿通孔の内周面との間に設けられるシール部材と、前記増速機に供給されるオイルが貯留されるオイルパンと、前記オイルパンの上部と前記ハウジングの外面に開口する圧抜き孔とを連通する圧抜き通路と、を備える遠心圧縮機であって、前記圧抜き通路は、第1圧抜き通路及び第2圧抜き通路を有し、前記圧抜き孔は、前記第1圧抜き通路における重力方向上方に設けられ、前記第2圧抜き通路は、前記第1圧抜き通路と合流して合流部を形成し、前記第2圧抜き通路における最大の流路断面積は、前記第1圧抜き通路における最小の流路断面積に比べて小さい。
【0009】
増速機室内のオイルは、増速機により撹拌されるため気泡が発生する。増速機室で発生したオイル内の気泡は、オイルパンに到る。オイルパンに到達した気泡は、オイルパンに貯留されるため、オイルパンに貯留されるオイルの液面が上昇する。オイルパンにおいて、オイルの液面が上昇すると、オイルの液面が第1圧抜き通路及び第2圧抜き通路に到達する。
【0010】
これによれば、第2圧抜き通路における最大の流路断面積が第1圧抜き通路における最小の流路断面積に比べて小さい。すなわち、第2圧抜き通路における流路断面積が全長に亘って第1圧抜き通路における流路断面積よりも小さいため、オイルパンに貯留されるオイル内の気泡は、第1圧抜き通路よりも第2圧抜き通路に対して毛細管現象のように引き込まれ易くなる。そのため、第1圧抜き通路に設けられる圧抜き孔にオイル内の気泡が到達し難くなる。したがって、オイルの液面が圧抜き通路の圧抜き孔に到ることを抑制できる。
【0011】
上記の遠心圧縮機において、前記圧抜き通路は、前記第1圧抜き通路の途中における重力方向下方から重力方向上方まで迂回して繋がる迂回圧抜き通路を有し、前記第2圧抜き通路における最大の流路断面積は、前記迂回圧抜き通路における最小の流路断面積に比べて小さいとよい。
【0012】
これによれば、オイルパンにおいてオイルの液面が第1圧抜き通路に到達しても、第2圧抜き通路に引き込まれる。また、第2圧抜き通路が気泡で満たされて第1圧抜き通路に気泡が到達しても、迂回圧抜き通路に気泡が引き込まれ易くなる。よって、オイルの液面が圧抜き通路の圧抜き孔に到ることを抑制できる。
【0013】
上記の遠心圧縮機において、前記迂回圧抜き通路と、前記第2圧抜き通路とは、前記合流部を介して連通しており、前記ハウジングは、互いに対向する第1の側面及び第2の側面を有し、前記合流部は、前記第1の側面寄りの重力方向上方に形成され、前記圧抜き孔は、前記第2の側面寄りの重力方向上方に形成されているとよい。
【0014】
これによれば、第2圧抜き通路に流れ込むオイル内の気泡が合流部を介して迂回圧抜き通路に到るが、圧抜き孔は合流部から離間しているため、合流部に到るオイルが圧抜き通路の圧抜き孔に到ることを抑制できる。
【0015】
上記の遠心圧縮機において、前記第2圧抜き通路は、前記オイルパンの上部に連通する下端部と、前記合流部に接続される上端部との間に、流路断面積が前記上端部及び前記下端部に比べて小さい絞り部とを有するとよい。
【0016】
これによれば、第2圧抜き通路の流路断面積を局所的に小さくすることができる。そのため、オイルパンに貯留されるオイル内の気泡を第2圧抜き通路に向けて流れ込み易くすることができる。よって、第1圧抜き通路に流れ込むオイル内の気泡をより少なくすることができ、オイルの液面が圧抜き通路の圧抜き孔に到ることが抑制できる。
【0017】
上記の遠心圧縮機において、前記合流部の重力方向上方には前記圧抜き孔が配置されるとともに、前記合流部の重力方向下方には前記第1圧抜き通路が配置されることを特徴とするとよい。
【0018】
これによれば、合流部に至ったオイルは、合流部の重力方向下方に位置する第1圧抜き通路に戻されるため、圧抜き孔に至り難くなる。したがって、オイルの液面が圧抜き通路の圧抜き孔に到ることをより抑制できる。
【0019】
上記課題を解決する遠心圧縮機は、駆動源によって回転する低速シャフトと、前記低速シャフトよりも高速に回転する高速シャフトに取り付けられたインペラと、前記低速シャフトの動力を前記高速シャフトに伝達する増速機と、前記駆動源を収容する駆動室、前記インペラを収容するインペラ室及び前記増速機を収容する増速機室が形成され、前記高速シャフトが挿通される挿通孔を有するとともに前記インペラ室と前記増速機室とを仕切る仕切壁を備えるハウジングと、前記高速シャフトの外周面と前記挿通孔の内周面との間に設けられるシール部材と、前記増速機にオイル通路を介して供給されるオイルが貯留されるオイルパンと、前記オイルパンの上部と前記ハウジングの外部に開口する圧抜き孔とを連通する圧抜き通路と、を備える遠心圧縮機であって、前記圧抜き通路は、第1圧抜き通路と迂回圧抜き通路とを有し、前記圧抜き孔は、前記第1圧抜き通路における重力方向上方に設けられ、前記迂回圧抜き通路は、前記第1圧抜き通路の途中における重力方向下方から重力方向上方まで迂回して繋がる迂回圧抜き通路を有し、前記迂回圧抜き通路における最小の流路断面積は、前記第1圧抜き通路における最小の流路断面積と比べて小さい。
【0020】
これによれば、迂回圧抜き通路における最小の流路断面積が第1圧抜き通路における最小の流路断面積に比べて小さいことから、オイルパンに貯留されるオイル内の気泡は、第1圧抜き通路よりも迂回圧抜き通路に対して毛細管現象のように引き込まれ易くなる。そのため、第1圧抜き通路に設けられる圧抜き孔にオイル内の気泡が到達し難くなる。したがって、オイルの液面が圧抜き通路の圧抜き孔に到ることを抑制できる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、オイルの液面が圧抜き通路の圧抜き孔に到ることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態における遠心圧縮機を示す側断面図。
図2図1におけるII-II線で切断したときの断面図。
図3図1におけるIII-III線で切断したときの断面図。
図4図1におけるIV-IV線で切断したときの断面図。
図5図1におけるV-V線で切断したときの断面図。
図6】変更例における第1通路及び第2通路の断面図。
図7】変更例における第1通路及び第2通路の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、遠心圧縮機を具体化した一実施形態を図1図5にしたがって説明する。本実施形態の遠心圧縮機は、燃料電池を電力源として走行する燃料電池車両に搭載され、燃料電池に対して空気を供給する。
【0024】
図1に示すように、遠心圧縮機10のハウジング11は略筒状である。ハウジング11は、有底円筒状のモータハウジング12と、モータハウジング12に連結される有底円筒状の増速機ハウジング13と、増速機ハウジング13に連結されるプレート14と、プレート14に連結されるコンプレッサハウジング15と、モータハウジング12に対して増速機ハウジング13とは反対側に連結されるリヤハウジング16とを備えている。モータハウジング12、増速機ハウジング13、プレート14、コンプレッサハウジング15、及びリヤハウジング16は、例えばアルミニウムにより形成された金属材料製であり、ハウジング11の軸線方向にこの順序で配列されている。
【0025】
ハウジング11内には、電動モータ18を収容する駆動室としてのモータ室12c、増速機30を収容する増速機室13c、インペラ24を収容するインペラ室15bが形成されている。
モータ室12cは、モータハウジング12の円板状の底壁12aの内面、周壁12bの内周面、及び増速機ハウジング13の底壁13aの外面によって区画されている。すなわち、周壁12bにおける底壁12aとは反対側の開口は、増速機ハウジング13の底壁13aにより閉塞されている。底壁12aの内面には、筒状のボス部12fが突出している。底壁12aにはリヤハウジング16が連結されている。リヤハウジング16の中央部には、底壁12aを貫通した後述する低速シャフト17が挿通される挿通孔16aが形成されている。モータハウジング12とリヤハウジング16とは複数のボルト80によって締結されている。複数のボルト80は、リヤハウジング16を貫通してモータハウジング12の底壁12aに到るまで螺合される。
増速機室13cは、増速機ハウジング13の円板状の底壁13aの内面、周壁13bの内周面、及びプレート14により区画されている。すなわち、周壁13bにおける底壁13aとは反対側の開口は、プレート14の面14aより閉塞されている。底壁13aの中央部には、貫通孔13hが形成されている。増速機室13c内にはオイルが貯留されている。
インペラ室15bは、コンプレッサハウジング15とプレート14とにより区画されている。コンプレッサハウジング15は、プレート14における増速機ハウジング13とは反対側の面に連結されている。コンプレッサハウジング15には、気体である空気が吸入される吸入口15aが形成されている。吸入口15aは、コンプレッサハウジング15におけるプレート14とは反対側の端面の中央部に開口するとともに、コンプレッサハウジング15におけるプレート14とは反対側の端面の中央部からハウジング11の軸線方向に延びている。インペラ室15bと吸入口15aとは連通している。インペラ室15bは、吸入口15aから離れるにつれて徐々に拡径していく略円錐台孔形状になっている。後述する高速シャフト31におけるコンプレッサハウジング15内に突出している。
プレート14は、インペラ室15bと増速機室13cとを仕切る仕切壁である。プレート14の中央部には、高速シャフト31が挿通される挿通孔14hが形成されている。
図1に示すように、遠心圧縮機10は、駆動源としての電動モータ18と、電動モータ18によって回転する低速シャフト17と、低速シャフト17よりも高速に回転する高速シャフト31と、低速シャフト17の動力を高速シャフト31に伝達する増速機30と、を備えている。
電動モータ18は、筒状のステータ22と、ステータ22の内側に配置されるロータ23とからなる。ロータ23は、低速シャフト17に固定されるとともに低速シャフト17と一体的に回転する。ステータ22は、ロータ23を囲んでいる。ロータ23は、低速シャフト17に止着された円筒状のロータコア23aと、ロータコア23aに設けられた複数の永久磁石(図示せず)と、を有している。ステータ22は、モータハウジング12の周壁12bの内周面に固定された筒状のステータコア22aと、ステータコア22aに捲回されたコイル22bと、を有している。そして、コイル22bに電流が流れることによりロータ23と低速シャフト17とが一体的に回転する。
低速シャフト17は、低速シャフト17の軸線方向がモータハウジング12の軸線方向に一致した状態でモータハウジング12内に収容されている。低速シャフト17の第1端部は、ボス部12f内に挿入されている。低速シャフト17の第1端部とボス部12fとの間には、第1軸受19が設けられている。そして、低速シャフト17の第1端部は、第1軸受19を介してモータハウジング12の底壁12aに回転可能に支持されている。低速シャフト17の第1端部は、モータハウジング12の底壁12a及びリヤハウジング16の挿通孔16aを貫通して外部に突出している。
低速シャフト17の第2端部は、貫通孔13hに挿入されている。低速シャフト17の第2端部と貫通孔13hとの間には、第2軸受20が設けられている。そして、低速シャフト17の第2端部は、第2軸受20を介して増速機ハウジング13の底壁13aに回転可能に支持されている。よって、低速シャフト17は、ハウジング11に回転可能に支持されている。低速シャフト17の第2端部は、モータ室12cから貫通孔13hを通過して増速機ハウジング13内に突出している。
【0026】
低速シャフト17の第2端部と貫通孔13hとの間には、シール部材21が設けられている。シール部材21は、低速シャフト17の第2端部と貫通孔13hとの間において、第2軸受20よりもモータ室12c寄りに配置されている。シール部材21は、増速機室13c内に貯留されているオイルが、低速シャフト17の外周面と貫通孔13hの内周面との間を介してモータ室12cに洩れ出すことを抑制している。
【0027】
高速シャフト31は、増速機室13cに収容されている。高速シャフト31におけるモータハウジング12とは反対側の端部は、プレート14の挿通孔14hを通過してコンプレッサハウジング15内に突出している。高速シャフト31の軸線は、低速シャフト17の軸線と一致している。
増速機30は、低速シャフト17の回転を増速させて高速シャフト31に伝達する。増速機30は、所謂トラクションドライブ式(摩擦ローラ式)である。増速機30は、低速シャフト17の第2端に連結されたリング部材32を備えている。リング部材32は金属製である。リング部材32は、低速シャフト17の第2端に連結された円板状のベース33と、ベース33の外縁部から円筒状に延設された筒部34と、を有する有底円筒状である。ベース33は、低速シャフト17に対して低速シャフト17の径方向に延びている。筒部34の軸線は、低速シャフト17の軸線と一致している。
【0028】
図2に示すように、高速シャフト31の一部は、筒部34の内側に配置されている。また、増速機30は、筒部34と高速シャフト31との間に設けられる3つのローラ35を備えている。3つのローラ35は、高速シャフト31の周方向に互いに所定の間隔(例えば120度ずつ)をあけて配置されている。3つのローラ35は同一形状である。3つのローラ35は、筒部34の内周面及び高速シャフト31の外周面の双方と当接する。
【0029】
図1に示すように、各ローラ35は、円柱状のローラ部35aと、ローラ部35aの軸線方向の第1端面35bから突出する円柱状の第1突起35cと、ローラ部35aの軸線方向の第2端面35dから突出する円柱状の第2突起35eと、を有している。ローラ部35aの軸心、第1突起35cの軸心、及び第2突起35eの軸心は一致している。各ローラ35のローラ部35aの軸心が延びる方向(回転軸線方向)と高速シャフト31の軸線方向とは一致している。
【0030】
図1及び図2に示すように、増速機30は、プレート14と協働して各ローラ35を回転可能に支持する支持部材39を備えている。支持部材39は、筒部34の内側に配置されている。支持部材39は、円板状の支持ベース40と、支持ベース40から立設された柱状の3つの立設壁41と、を有している。支持ベース40は、プレート14に対して各ローラ35の回転軸線方向に対向配置されている。3つの立設壁41は、支持ベース40におけるプレート14側の面40aからプレート14に向けてそれぞれ延びている。そして、3つの立設壁41は、筒部34の内周面と、隣り合う2つのローラ部35aの外周面とによって区画された3つの空間を埋めるようにそれぞれ配置されている。
【0031】
支持部材39には、ボルト44が挿通可能なボルト挿通孔45が3つ形成されている。各ボルト挿通孔45は、3つの立設壁41それぞれをローラ35の回転軸線方向に貫通している。図1に示すように、プレート14における支持部材39側の面14aには、各ボルト挿通孔45に連通する雌ねじ孔46がそれぞれ形成されている。そして、支持部材39は、各ボルト挿通孔45に挿通された各ボルト44が各雌ねじ孔46に螺合されることによってプレート14に取り付けられている。
【0032】
プレート14の面14aは、3つの凹部51(図1では一つの凹部51のみ図示)を有している。3つの凹部51は、高速シャフト31の周方向に互いに所定の間隔(例えば120度ずつ)をあけて配置されている。3つの凹部51内には、円環状のローラ軸受52がそれぞれ配置されている。
【0033】
支持ベース40におけるプレート14側の面40aは、3つの凹部53(図1では一つの凹部53のみ図示)を有している。3つの凹部53は、高速シャフト31の周方向に互いに所定の間隔(例えば120度ずつ)をあけて配置されている。3つの凹部53内には、円環状のローラ軸受54が配置されている。
【0034】
各ローラ35の第1突起35cは、各凹部51内のローラ軸受52内に挿入され、ローラ軸受52を介してプレート14に回転可能に支持されている。各ローラ35の第2突起35eは、各凹部53内のローラ軸受54内に挿入され、ローラ軸受54を介して支持部材39に回転可能に支持されている。
【0035】
高速シャフト31には、高速シャフト31の軸線方向に離間して対向配置された一対のフランジ部31fが設けられている。3つのローラ35のローラ部35aは、一対のフランジ部31fによって挟持されている。これにより、高速シャフト31の軸線方向における高速シャフト31と3つのローラ35のローラ部35aとの位置ずれが抑制されている。
【0036】
図2に示すように、3つのローラ35、リング部材32、及び高速シャフト31は、3つのローラ35と高速シャフト31及び筒部34とが互いに押し付けあっている状態でユニット化されている。そして、高速シャフト31は、3つのローラ35によって回転可能に支持されている。
【0037】
3つのローラ35のローラ部35aの外周面と筒部34の内周面との当接箇所であるリング側当接箇所Paには押し付け荷重が付与されている。また、3つのローラ35の外周面と高速シャフト31の外周面との当接箇所であるシャフト側当接箇所Pbには、押し付け荷重が付与されている。リング側当接箇所Pa及びシャフト側当接箇所Pbは、高速シャフト31の軸線方向に延びている。
【0038】
図1に示すように、遠心圧縮機10は、高速シャフト31に取り付けられたインペラ24を備えている。インペラ24は、基端面24aから先端面24bに向かうに従って徐々に縮径した筒状である。インペラ24は、インペラ24の回転軸線方向に延び、且つ、高速シャフト31が挿通可能な挿通孔24cを有している。インペラ24は、高速シャフト31におけるコンプレッサハウジング15内に突出している突出端部が挿通孔24cに挿通された状態で、高速シャフト31と一体的に回転可能に高速シャフト31に取り付けられている。これにより、高速シャフト31が回転することによってインペラ24が回転して、吸入口15aから吸入された空気が圧縮される。よって、インペラ24は、高速シャフト31と一体回転して空気を圧縮する。なお、基端面24aは、インペラ背面である。
【0039】
図1に示すように、遠心圧縮機10は、インペラ24によって圧縮された空気が流入するディフューザ流路25と、ディフューザ流路25を通過した空気が流入する吐出室26と、を備えている。
【0040】
図1に示すように、ディフューザ流路25は、コンプレッサハウジング15におけるプレート14と対向する面と、プレート14におけるコンプレッサハウジング15と対向する面とによって区画されている。ディフューザ流路25は、インペラ室15bよりも高速シャフト31の径方向外側に位置するとともにインペラ室15bを囲む環状に形成されている。
【0041】
図1に示すように、吐出室26は、ディフューザ流路25よりも高速シャフト31の径方向外側に位置するとともにディフューザ流路25に連通している。吐出室26は環状である。インペラ室15bと吐出室26とはディフューザ流路25を介して連通している。インペラ24により圧縮された空気は、ディフューザ流路25を通ることにより、更に圧縮されて吐出室26に流れ、吐出室26から吐出される。
【0042】
図1に示すように、遠心圧縮機10は、挿通孔14hに設けられるシール部材71を備えている。シール部材71は、高速シャフト31の外周面と挿通孔14hの内周面との間に設けられる。シール部材71は、メカニカルシールである。シール部材71は、増速機室13c内に貯留されているオイルが挿通孔14hを介してインペラ室15bに洩れ出すことを抑制する。
【0043】
図1に示すように、遠心圧縮機10は、増速機30に供給されるオイルが貯留されるオイルパン56と、オイルパン56に貯留されたオイルを増速機30に供給し、オイルパン56に戻すオイル通路60と、オイル通路60に流れるオイルを冷却するオイルクーラ55と、オイルパン56に貯留されたオイルを吸い上げて吐出するオイルポンプ57と、を備えている。
【0044】
図1に示すように、オイル通路60は、増速機室13cとオイルクーラ55とを接続する第1接続通路61を有している。第1接続通路61の第1端は、増速機室13c内に開口している。第1接続通路61の第2端は、オイルクーラ55に接続されている。
【0045】
遠心圧縮機10は、第1接続通路61における増速機室13c内に開口する部分が重力方向下方に位置するように燃料電池車両に搭載されている。
オイル通路60は、オイルクーラ55とオイルパン56とを接続する第2接続通路62を有している。第2接続通路62の第1端は、オイルクーラ55に接続されている。第2接続通路62の第2端は、オイルパン56内に開口している。
【0046】
オイル通路60は、オイルパン56とオイルポンプ57とを接続する第3接続通路63を有している。第3接続通路63は、リヤハウジング16の内部に形成されている。第3接続通路63の第1端は、オイルパン56内に突出している。第3接続通路63の第2端は、オイルポンプ57の吸入口57aに接続されている。
【0047】
オイル通路60は、オイルポンプ57の吐出口57bに接続され、リヤハウジング16及びモータハウジング12の周壁12bを経由して増速機ハウジング13の周壁13bの内部まで延びている。第4接続通路64の第1端は、オイルポンプ57の吐出口57bに接続されている。第4接続通路64の第2端は、増速機ハウジング13の周壁13bの内部に位置している。
【0048】
オイル通路60は、第4接続通路64の第2端から分岐する第1分岐通路65及び第2分岐通路66を有している。第1分岐通路65は、第4接続通路64の第2端からモータハウジング12側に向けて延び、貫通孔13hに開口している。
【0049】
第2分岐通路66は、第4接続通路64の第2端からプレート14側に向けて延び、増速機ハウジング13の周壁13bに開口している。
オイル通路60は、第2分岐通路66に連通する共通通路67を有している。共通通路67の第1端は、第2分岐通路66に連通している。共通通路67の第2端は、プレート14の内部に位置している。また、オイル通路60は、共通通路67の第2端部から分岐するシール部材側供給通路69及び増速機側供給通路70を有している。シール部材側供給通路69の第1端は、共通通路67に連通し、第2端は、挿通孔14hに開口している。増速機側供給通路70の第1端は、共通通路67に連通し、第2端は立設壁41におけるローラ部35aの外周面と向かい合う位置に開口している。よって、増速機側供給通路70は、増速機室13cに連通している。
【0050】
遠心圧縮機10は、オイルパン56の上部とハウジング11の外面に開口する圧抜き孔90bとを連通する圧抜き通路90を備えている。
図1図3、及び図4に示すように、圧抜き通路90は、接続通路90aと、第1バッファ室91と、第2バッファ室92と、連通路93とを有している。接続通路90a、第1バッファ室91、第2バッファ室92、及び連通路93は、リヤハウジング16の内部に形成されている。
【0051】
第1バッファ室91は、オイルパン56の重力方向上方に配置されている。低速シャフト17の軸線方向及び低速シャフト17の径方向で見たとき、第1バッファ室91は、重力方向に延びる矩形状をなしている。接続通路90aは、オイルパン56と第1バッファ室91とを連通している。接続通路90aの第1端は、オイルパン56内の重力方向上方の部分に開口し、接続通路90aの第2端は、第1バッファ室91内の重力方向下方の部分に開口している。接続通路90aは、低速シャフト17の軸線方向で見たとき、重力方向に延びる矩形状をなしている。接続通路90aは、低速シャフト17の径方向で見たとき、重力方向に延びる矩形状をなしている。図1に示すように、低速シャフト17の軸線方向において、接続通路90aの幅及び第1バッファ室91の幅は、同じ幅H1である。低速シャフト17の軸線方向において、接続通路90aの配置と第1バッファ室91の配置とは一致している。図3に示すように、低速シャフト17の径方向において、接続通路90aの幅H3は、第1バッファ室91の幅H4よりも小さい。
【0052】
図1図3、及び図4に示すように、第2バッファ室92は、オイルパン56に連通している。第2バッファ室92は、オイルパン56から第1バッファ室91と並行して重力方向上方に向けて延びている。第2バッファ室92は、重力方向において、第1バッファ室91と同程度の高さまで延びている。
【0053】
重力方向に直交する方向である水平方向のうち低速シャフト17の軸線に直交する方向を第1水平方向Aとする。図1に示すように、第1水平方向Aで見て、第2バッファ室92は、重力方向に延びる矩形状をなしている。低速シャフト17の軸線方向において、第2バッファ室92の幅H2は、接続通路90a及び第1バッファ室91の幅H1と同じである。
【0054】
接続通路90a及び第1バッファ室91と、第2バッファ室92とは、低速シャフト17の軸線方向において位置をずらして配置されている。第2バッファ室92は、低速シャフト17の軸線方向において、第1バッファ室91よりもモータハウジング12寄りに配置されている。
【0055】
図3及び図4に示すように、低速シャフト17の軸線方向から見て、第1バッファ室91及び第2バッファ室92は、第1水平方向Aにおいて位置をずらして配置されている。
ハウジング11は、第1水平方向Aで互いに対向し、第1バッファ室91を区画する第1の側面91a及び第2の側面91bを有している。第1の側面91aは、第2バッファ室92側に位置し、第2の側面91bは、第2バッファ室92とは反対側に位置している。ハウジング11は、第1水平方向Aで互いに対向し、第2バッファ室92を区画する第1の側面92a及び第2の側面92bを有している。低速シャフト17の軸線方向で第2バッファ室92を見たとき、第2バッファ室92は、第1水平方向Aにおいて、第1の側面91aに隣り合うように配置されている。低速シャフト17の軸線方向で第2バッファ室92を見たとき、第1水平方向Aにおいて、第1の側面92aは、第1の側面91aと隣り合っている。第1水平方向Aにおいて、第2の側面92bは、第1バッファ室91とは反対側に位置している。
【0056】
図1図3、及び図4に示すように、連通路93は、第1バッファ室91と第2バッファ室92とを連通している。連通路93は、第1バッファ室91の重力方向上方の部分と第2バッファ室92の重力方向上方の部分とを連通している。連通路93は、低速シャフト17の軸線方向に延びている。
【0057】
図1及び図3に示すように、第1バッファ室91内には、低速シャフト17が挿通される挿通孔16aを形成するための矩形柱状の突出部16bが配置されている。突出部16bは、第1バッファ室91の内部において、低速シャフト17の軸線方向で対向する一対の内壁間を接続するように配置されている。突出部16bは、当該一対の内壁に一体的に形成されている。
【0058】
図3に示すように、第1水平方向Aにおいて、突出部16bは、第1水平方向Aにおいて第1の側面91a及び第2の側面91bの中間に位置している。重力方向において、突出部16bは、第1バッファ室91の重力方向上方の部分と第1バッファ室91の重力方向下方の部分との間に配置されている。重力方向において、突出部16bは、第1バッファ室91の重力方向下方の部分寄りに配置されている。
【0059】
突出部16bを低速シャフト17の径方向で切断したときの断面は、正方形である。突出部16bの側面のうち第1の側面91aと対向する面と、第1の側面91aとの間の幅W1と、突出部16bの側面のうち第2の側面91bと対向する面と、第2の側面91bとの間の幅W2とは、同じである。突出部16bの側面のうち第1バッファ室91の重力方向下方の部分と対向する面と、第1バッファ室91の重力方向下方の部分との幅W3は、幅W1,W2と同じ幅である。幅W1,W2,W3は、接続通路90aの幅H3よりも大きい。
【0060】
第1バッファ室91には、突出部16bと第2の側面91bとの間に形成される第1通路911が形成されている。第1バッファ室91には、突出部16bと第1バッファ室91の重力方向下方の部分との間に形成される通路及び突出部16bと第1の側面91aとの間に形成される通路により構成される第2通路912が形成されている。第1通路911の重力方向下方には、接続通路90aが連通している。第2通路912は、第1通路911から第1の側面91aに向けて延び、突出部16bを迂回して重力方向上方に向けて延びている。第1通路911と第2通路912とは、第1バッファ室91内における突出部16bよりも重力方向上方に位置する領域で繋がっている。第1通路911及び第2通路912は、第1バッファ室91内における突出部16bよりも重力方向上方に位置する領域を共用している。なお、突出部16bには、モータハウジング12とリヤハウジング16とを締結する3つのボルト80が貫通している。
【0061】
図1に示すように、圧抜き孔90bは、リヤハウジング16のモータハウジング12とは反対側の壁部に形成されている。圧抜き孔90bの第1端は、第1バッファ室91の重力方向上方の部分に開口している。圧抜き孔90bの第2端は、リヤハウジング16の外面に開口している。すなわち、第1バッファ室91は、圧抜き孔90bを介してハウジング11の外部と連通している。
【0062】
圧抜き孔90bは、低速シャフト17の軸線方向に延びるように形成されている。リヤハウジング16における圧抜き孔90bが開口している外面には、圧抜きパイプ94が設けられている。圧抜きパイプ94は、L字形状に湾曲する筒状部材である。圧抜きパイプ94の第1端は、圧抜き孔90bに連通し、圧抜きパイプ94の第2端は、圧抜きパイプ94の第1端よりも重力方向上方に位置するとともに重力方向上方に向けて開口している。圧抜きパイプ94の第2端の内部には、換気膜90cが配置されている。換気膜90cは、気体は通過し、液体は通過させない膜である。
【0063】
図3及び図4に示すように、接続通路90a、第1通路911、及び第1バッファ室91内における突出部16bよりも重力方向上方に位置する領域により第1圧抜き通路95が形成されている。そのため、圧抜き通路90は、第1圧抜き通路95を有している。圧抜き孔90bは、第1圧抜き通路95における重力方向上方に設けられている。
【0064】
また、第2通路912、及び第1バッファ室91内における突出部16bよりも重力方向上方に位置する領域により迂回圧抜き通路97が形成されている。そのため、圧抜き通路90は、迂回圧抜き通路97を有している。第1通路911及び第2通路912は、第1バッファ室91内における重力方向上方に位置する領域を共用しているため、迂回圧抜き通路97は、第1圧抜き通路95の途中における重力方向下方から重力方向上方まで突出部16bを迂回して繋がっている。
【0065】
さらに、第2バッファ室92、及び連通路93により第2圧抜き通路96が形成されている。そのため、圧抜き通路90は、第2圧抜き通路96を有している。第2圧抜き通路96は、連通路93により第1バッファ室91の第1の側面91a寄りにおける重力方向上方の領域に連通している。第1圧抜き通路95と第2圧抜き通路96は、オイルパン56から分岐して延在する通路であり、第2圧抜き通路96は、第1圧抜き通路95と合流して合流部98を形成している。合流部98は、第1バッファ室91と連通路93との接続部を示している。
【0066】
また、第1圧抜き通路95と迂回圧抜き通路97とは、第1バッファ室91内における重力方向上方に位置する領域を共用しているため、迂回圧抜き通路97と、第2圧抜き通路96とは、合流部98を介して連通している。
【0067】
合流部98は、第1の側面91a寄りに形成された第2通路912の重力方向上方に配置されている。合流部98は、第1水平方向Aにおける第2バッファ室92の第1の側面92a寄りの重力方向上方の領域に形成されている。そのため、合流部98の重力方向下方には第1圧抜き通路95及び迂回圧抜き通路97が配置されている。
【0068】
圧抜き孔90bは、第2の側面91b寄りに形成された第1通路911の重力方向上方に配置されている。圧抜き孔90bは、第1水平方向Aにおける第1バッファ室91の第2の側面91b寄りの重力方向上方の領域に形成されている。
【0069】
圧抜き孔90b及び合流部98は、第1水平方向Aにおいて離間している。重力方向において、合流部98のオイルパン56からの高さは、圧抜き孔90bのオイルパン56からの高さよりも低い。すなわち、合流部98の斜め上方に圧抜き孔90bが配置されている。よって、合流部98の重力方向上方には、圧抜き孔90bが配置されている。
【0070】
図4に示すように、第2バッファ室92は、オイルパン56の上部に連通する第2圧抜き通路96の下端部である基端側通路92cと、上端側通路92dと、連通路93に接続される第2圧抜き通路96の上端部である淀み部92eと、を有している。
【0071】
基端側通路92cは、オイルパン56から重力方向上方に向けて延びている。基端側通路92cの第1端は、オイルパン56と接続されている。基端側通路92cの第2端は、オイルポンプ57よりも重力方向上方に位置している。基端側通路92cの第1水平方向Aにおける幅H5は、接続通路90aの幅H3よりも小さい。
【0072】
上端側通路92dは、基端側通路92cと連通している。上端側通路92dは、基端側通路92cの第2端から重力方向上方に延びている。上端側通路92dの第1端は、基端側通路92cの第2端に接続されている。上端側通路92dは、オイルポンプ57の固定に使用している3つのボルト80を除く複数のボルト80の間を通るように形成されている。上端側通路92dの第1水平方向Aにおける幅H6は、基端側通路92cの幅H5よりも小さい。上端側通路92dを挟み込むように配置される複数のボルト80の第1水平方向Aの間隔は、上端側通路92dの流路断面積が基端側通路92cの流路断面積よりも小さくなるように設定されている。
【0073】
淀み部92eは、上端側通路92dに連通している。淀み部92eは、上端側通路92dの第2端と接続されている。淀み部92eは、第2バッファ室92のオイルパン56とは反対側の端部に形成されている。第1水平方向Aにおいて、淀み部92eの幅H7は、基端側通路92cの幅H5及び上端側通路92dの幅H6よりも大きくなっている。
【0074】
淀み部92eにおける上端側通路92dとは反対側には、重力方向に対して交わる壁面92fを有している。壁面92fは、第1水平方向Aに延びている。淀み部92eは、第2バッファ室92の重力方向上方に形成されている。
【0075】
図3及び図4に示すように、第1バッファ室91の第1の側面91a寄りの重力方向上方の領域と、第2バッファ室92の第1の側面92a寄りの重力方向上方の領域である淀み部92eの一部とは、低速シャフト17の軸線方向において重なっている。
【0076】
連通路93は、第1バッファ室91と第2バッファ室92とが重力方向上方において低速シャフト17の軸線方向で重なっている部分に低速シャフト17の軸線方向に延びるように形成されている。連通路93は、オイルの流動方向において淀み部92eの壁面92fよりも下流において第2バッファ室92と第1バッファ室91とを連通している。
【0077】
図5に示すように、第2バッファ室92の延びる方向と、連通路93の延びる方向とが交差している。そのため、第2圧抜き通路96は、オイルパン56から延びる方向が連通路93に向かって屈曲している。すなわち、オイルの流れる方向が重力方向から低速シャフト17の軸線方向に変化している。
【0078】
上記のように構成された圧抜き通路90において、第1圧抜き通路95、第2圧抜き通路96、及び迂回圧抜き通路97の流路断面積について説明する。なお、流路断面積とは、オイルの流れる方向に直交する方向で切断したときの断面積を示している。
【0079】
図3及び図4に示すように、第1圧抜き通路95において、接続通路90aの流路断面積は、第1通路911の流路断面積よりも小さい。接続通路90a及び第1通路911の流路断面積は、第1バッファ室91内における突出部16bよりも重力方向上方に位置する領域の流路断面積よりも小さい。すなわち、第1圧抜き通路95における最小の流路断面積は、接続通路90aの流路断面積である。
【0080】
迂回圧抜き通路97において、突出部16bと第1バッファ室91の重力方向下方の部分との間に形成される通路の流路断面積と、突出部16bと第1の側面91aとの間に形成される通路の流路断面積とが最小の流路断面積である。本実施形態において、迂回圧抜き通路97における最小の流路断面積は、第1通路911の流路断面積と同じである。
【0081】
第2圧抜き通路96において、基端側通路92cの流路断面積は、上端側通路92dの流路断面積よりも大きい。基端側通路92c及び上端側通路92dの流路断面積は、淀み部92eの流路断面積よりも小さい。基端側通路92c及び上端側通路92dの流路断面積は、連通路93の流路断面積よりも大きい。すなわち、第2圧抜き通路96における最大の流路断面積は、淀み部92eの流路断面積であり、第2圧抜き通路96における最小の流路断面積は、連通路93の流路断面積である。連通路93の流路断面積は、第1圧抜き通路95における最小の流路断面積である接続通路90aの流路断面積よりも小さい。また、第2圧抜き通路96において、上端側通路92dは、淀み部92e及び基端側通路92cに比べて流路断面積が小さい絞り部である。
【0082】
第2圧抜き通路96における最大の流路断面積である淀み部92eの流路断面積は、第1圧抜き通路95における最小の流路断面積である接続通路90aの流路断面積に比べて小さい。すなわち、第2圧抜き通路96における流路断面積が重力方向の全長に亘って第1圧抜き通路95における流路断面積よりも小さい。また、第2圧抜き通路96における最大の流路断面積である淀み部92eの流路断面積は、迂回圧抜き通路97における最小の流路断面積である第2通路912の流路断面積に比べて小さい。
【0083】
本実施形態の作用を説明する。
電動モータ18が駆動されると、低速シャフト17の回転によりオイルポンプ57が駆動されて、オイルパン56内に貯留されているオイルが第3接続通路63及び吸入口57aを介してオイルポンプ57内に吸入され、吐出口57bを介して第4接続通路64に吐出される。そして、第4接続通路64に吐出されたオイルは、第4接続通路64を流れて第1分岐通路65及び第2分岐通路66にそれぞれ分配される。
【0084】
第4接続通路64から第1分岐通路65に分配されたオイルは、第1分岐通路65を流れて貫通孔13h内に流入し、シール部材21及び第2軸受20に供給される。これにより、シール部材21と低速シャフト17との摺動部分、及び第2軸受20と低速シャフト17との摺動部分の潤滑が良好なものとなる。
【0085】
第4接続通路64から第2分岐通路66に分配されたオイルは、第2分岐通路66を介して共通通路67に流入する。共通通路67を流れるオイルは、その一部がシール部材側供給通路69に分配され、その他のオイルが増速機側供給通路70を流れる。共通通路67からシール部材側供給通路69に分配されたオイルは、シール部材側供給通路69を流れて挿通孔14hに流入し、シール部材71に供給される。また、増速機側供給通路70を流れるオイルは、ローラ部35aの外周面に供給される。これにより、ローラ部35aと高速シャフト31との摺動部分の潤滑が良好なものとなる。シール部材71及びローラ部35aの外周面に供給されたオイルは、増速機室13c内に戻される。
【0086】
図1に示すように、増速機室13c内のオイルは、増速機30により撹拌されるため気泡Bが発生する。増速機室13cで発生したオイル内の気泡Bは、オイル通路60を通じてオイルパン56に到る。
【0087】
図3及び図4に示すように、オイルパン56に到達した気泡Bは、オイルパン56に貯留されるため、オイルパン56に貯留されるオイルの液面としての気泡Bによって重力方向上方に上昇し、オイルの液面が第1圧抜き通路95及び第2圧抜き通路96に到達する。
【0088】
本実施形態では、第2圧抜き通路96における最大の流路断面積である淀み部92eの流路断面積が第1圧抜き通路95における最小の流路断面積である接続通路90aの流路断面積に比べて小さい。すなわち、第2圧抜き通路96における流路断面積が全長に亘って第1圧抜き通路95における流路断面積よりも小さくなるため、オイルパン56に貯留されるオイル内の気泡Bは、毛細管現象によって第1圧抜き通路95よりも第2圧抜き通路96に対して引き込まれ易くなる。そのため、第1圧抜き通路95に設けられる圧抜き孔90bにオイルの液面が到達し難くなる。
【0089】
本実施形態の効果を説明する。
(1)第2圧抜き通路96における流路断面積が全長に亘って第1圧抜き通路95における流路断面積よりも小さくなるため、オイルパン56に貯留されるオイル内の気泡Bは、毛細管現象によって第1圧抜き通路95よりも第2圧抜き通路96に対して引き込まれ易くなる。そのため、第1圧抜き通路95に設けられる圧抜き孔90bにオイル内の気泡Bが到達し難くなる。したがって、オイルの液面が圧抜き通路90の圧抜き孔90bに到ることを抑制できる。
【0090】
(2)圧抜き通路90は、迂回圧抜き通路97を有している。オイルパン56においてオイルの液面が第1圧抜き通路95に到達し、オイルの液面が図3及び図4に示す一点鎖線L1まで上昇しても、第2圧抜き通路96に引き込まれる。また、第2圧抜き通路96が気泡で満たされて第1圧抜き通路95に気泡Bが到達しても、第2圧抜き通路96における最大の流路断面積が迂回圧抜き通路97における最小の流路断面積よりも大きいため、迂回圧抜き通路97に気泡Bが引き込まれ易くなる。よって、オイルの液面が圧抜き通路90の圧抜き孔90bに到ることを抑制できる。
【0091】
(3)第2圧抜き通路96に流れ込むオイル内の気泡Bが合流部98を介して迂回圧抜き通路97に到るが、圧抜き孔90bは合流部98から離間しているため、合流部98に到るオイルが圧抜き通路90の圧抜き孔90bに到ることを抑制できる。
【0092】
(4)第2圧抜き通路96は、絞り部である上端側通路92dを有している。よって、第2圧抜き通路96の流路断面積を局所的に小さくすることができる。そのため、オイルパン56に貯留されるオイル内の気泡Bを第2圧抜き通路96に向けて流れ込み易くすることができる。よって、第1圧抜き通路95に流れ込むオイル内の気泡Bをより少なくすることができ、オイルの液面が圧抜き通路90の圧抜き孔90bに到ることが抑制できる。
【0093】
(5)合流部98の重力方向上方には圧抜き孔90bが配置されている。よって、合流部98に至ったオイルは、合流部98の重力方向下方に位置する第1圧抜き通路95に戻されるため、圧抜き孔90bに至り難くなる。したがって、オイルの液面が圧抜き通路90の圧抜き孔90bに到ることをより抑制できる。
【0094】
(6)第2圧抜き通路96に引き込まれたオイル内の気泡Bは、連通路93に到達する際に屈曲することによりオイル内の気泡Bが潰される。そして、連通路93から合流部98に達したオイルは第1圧抜き通路95を介してオイルパン56に戻され、連通路93から合流部98に達した気体は、圧抜き孔90bを介してハウジング11の外部に排出される。すなわち、オイルパン56に貯留されたオイルが、気泡Bを含んだ状態で圧抜き孔90bから外部へ噴き出すことが抑制される。したがって、増速機30に供給されるオイルの量が少なくなることを抑制できる。
【0095】
(7)第2圧抜き通路96に流れ込むオイル内の気泡Bが連通路93及び合流部98を介して第1バッファ室91に到るが、圧抜き孔90bは連通路93及び合流部98から離間しているため、合流部98に到るオイルが圧抜き孔90bに到ることを抑制できる。
【0096】
(8)淀み部92eでオイルが淀むことにより淀み部92eでの圧力は、第2バッファ室92における淀み部92eよりもオイルの流動方向の上流側の部分の圧力よりも高くなり、淀み部92eの圧力によってオイルに含まれる気泡Bが割れる。
【0097】
また、淀み部92eで消気泡しきれなった気泡Bが連通路93を介して連通路93よりも広い空間である第1バッファ室91に至った場合、第1バッファ室91に至ったオイル内の気泡Bは、圧力変化により消気泡される。よって、オイルパン56に貯留されたオイルが、気泡Bを含んだ状態で圧抜き通路90の圧抜き孔90bから外部へ噴き出すことが抑制される。したがって、増速機30に供給されるオイルの量が少なくなることを抑制できる。
【0098】
(9)淀み部92eに到達したオイル内の気泡Bは、淀み部92eの壁面92fに衝突するため、オイル内の気泡Bは、壁面92fに衝突したときに消気泡される。
(10)第1バッファ室91よりも第2バッファ室92にオイル内の気泡Bが流れ易くなり、且つ淀み部92e及び第2圧抜き通路96から連通路93に到達する際に屈曲することによるオイル内の気泡Bの消気泡により、圧抜き孔90bからオイルが漏れることを抑制できる。したがって、遠心圧縮機10の信頼性を向上させることができる。
【0099】
(11)圧抜き孔90bからのオイル漏れを考慮すると、遠心圧縮機10に貯留されるオイルの総量を多くしておくことが好ましいが、本実施形態では、オイル漏れを抑制できるため、遠心圧縮機10の総封入オイル量を減らすことができ、遠心圧縮機10の製造コストを低減することができる。
【0100】
(12)圧抜き通路90には、気体は通過し、液体は通過させない換気膜90cが配置されている。そのため、圧抜き通路90を介して外部から遠心圧縮機10内に異物や水分が侵入してしまうことを換気膜90cによって抑制することができる。
【0101】
(13)圧抜き孔90bにオイル内の気泡Bが到達することを抑制できるため、換気膜90cの目詰まりを抑制できる。
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施できる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0102】
○ 圧抜き通路90は、第2圧抜き通路96を割愛し、第1圧抜き通路95及び迂回圧抜き通路97により構成されていてもよい。例えば、図6に示すように変更するとよい。
図6に示すように、第1バッファ室91内には、第1水平方向Aにおいて、突出部16bに隣り合うように第2突出部16cが設けられている。第2突出部16cは、第1バッファ室91の内部において、低速シャフト17の軸線方向で対向する一対の内壁間を接続するように配置されている。第2突出部16cは、当該一対の内壁に一体的に形成されている。
【0103】
第1水平方向Aにおいて、第2突出部16cは、第1の側面91a及び突出部16bの中間に位置している。重力方向において、第2突出部16cは、第1バッファ室91の重力方向下方寄りに配置されている。
【0104】
第2突出部16cを低速シャフト17の径方向で切断したときの断面は、長方形である。第2突出部16cの重力方向における幅は、突出部16bの重力方向における幅と同じである。突出部16bの側面のうち第1の側面91aと対向する面と、第2突出部16cの側面のうち突出部16bと対向する面との間の幅W4と、第2突出部16cの側面のうち第1の側面91aと対向する面と、第1の側面91aとの間の幅W5とは、同じである。幅W4,W5は、幅W2よりも小さい。
【0105】
第1バッファ室91には、突出部16bと第1バッファ室91の重力方向下方の部分との間に形成される通路及び突出部16bと第2突出部16cとの間に形成される通路により構成される第2通路912が形成されている。第1バッファ室91には、突出部16b及び第2突出部16cと第1バッファ室91の重力方向下方の部分との間に形成される通路、及び第2突出部16cと第1の側面91aとの間に形成される通路により構成される第3通路913が形成されている。
【0106】
第2通路912は、第1通路911から第1の側面91aに向けて延び、突出部16bを迂回して重力方向上方に向けて延びている。第3通路913は、第1通路911から第1の側面91aに向けて延び、第2突出部16cを迂回して重力方向上方に延びている。
【0107】
第1通路911、第2通路912、及び第3通路913は、第1バッファ室91内における突出部16b及び第2突出部16cよりも重力方向上方に位置する領域で繋がっている。第1通路911、第2通路912、及び第3通路913は、第1バッファ室91内のける突出部16b及び第2突出部16cよりも重力方向上方に位置する領域を共用している。
【0108】
ここで、迂回圧抜き通路97は、第2通路912、第3通路913、及び第1バッファ室91内における突出部16b及び第2突出部16cよりも重力方向上方に位置する領域により形成されている。迂回圧抜き通路97は、突出部16b及び第2突出部16cそれぞれを迂回して第1圧抜き通路95に繋がっている。
【0109】
迂回圧抜き通路97における最小の流路断面積は、第2通路912及び第3通路913の流路断面積である。迂回圧抜き通路97における最小の流路断面積は、第1圧抜き通路95における最小の流路断面積と比べて小さい。
【0110】
このように変更しても、迂回圧抜き通路97における最小の流路断面積である第2通路912及び第3通路913の流路断面積が第1圧抜き通路95における最小の流路断面積である接続通路90aの流路断面積に比べて小さいことから、オイルパン56に貯留されるオイル内の気泡Bは、第1圧抜き通路95よりも迂回圧抜き通路97に対して毛細管現象のように引き込まれ易くなる。そのため、第1圧抜き通路95に図6に示す一点鎖線L2までオイルの液面が到達したとしても、迂回圧抜き通路97には、図6に示す一点鎖線L2よりも高い位置にある一点鎖線L3までオイルの液面が到達する。よって、第1圧抜き通路95に設けられる圧抜き孔90bにオイル内の気泡Bが到達し難くなる。したがって、オイルの液面が圧抜き通路90の圧抜き孔90bに到ることを抑制できる。
【0111】
図6に示す変更例において、第2突出部16cを更に第1の側面91aに移動させ、幅W4を幅W5よりも大きくしてもよい。また、第2突出部16cを更に第2の側面91bに向けて移動させ、幅W5を幅W4よりも大きくしてもよい。
【0112】
図7に示すように、圧抜き通路90を第1圧抜き通路95と迂回圧抜き通路97により構成することを前提として、第1水平方向Aにおいて、突出部16bを第1の側面91a寄りに配置し、幅W2が幅W1よりも大きくなるように変更してもよい。すなわち、迂回圧抜き通路97における最小の流路断面積を、第2通路912の流路断面積としてもよい。
【0113】
○ 重力方向において、圧抜き孔90bは、合流部98の真上に配置されてもよい。このように変更しても、圧抜き孔90bは、合流部98の重力方向上方に配置される。
○ 圧抜き孔90bと、合流部98とは重力方向において同じ位置に配置されていてもよい。
【0114】
○ 圧抜き孔90b及び合流部98は、低速シャフト17の軸線方向において同じ位置に配置されてもよい。
○ リヤハウジング16をモータハウジング12に対して複数のボルト80で締結せず、モータハウジング12にオイルパン56、オイルポンプ57、オイル通路60、第1バッファ室91、及び第2バッファ室92を形成してもよい。
【0115】
○ リヤハウジング16の内部に接続通路90a、第1バッファ室91、第2バッファ室92及び連通路93を形成せず、リヤハウジング16とモータハウジング12との間に形成してもよい。
【0116】
○ 基端側通路92cの第2端は、重力方向において、オイルポンプ57よりも上方に位置していたが、基端側通路92cの第2端は、オイルポンプ57よりも下方に位置してもよい。この場合、上端側通路92dの第1端は、基端側通路92cの第2端まで延ばすとよい。
【0117】
○ 第2バッファ室92は、基端側通路92cを直接淀み部92eに接続するように変更してもよい。
○ 圧抜き孔90bは、第1の側面91a寄りに形成された第1通路911の重力方向上方に配置されていてもよい。この場合、低速シャフト17の軸線方向において、圧抜き孔90bと連通路93が重ならないようにすることが好ましい。
【0118】
○ 接続通路90a及び第1バッファ室91と、第2バッファ室92とは、低速シャフト17の軸線方向において位置をずらして配置され、第2バッファ室92は、低速シャフト17の軸線方向において、第1バッファ室91よりもモータハウジング12寄りに配置されていたが、これに限らない。例えば、接続通路90a、第1バッファ室91、第2バッファ室92とは、低速シャフト17の軸線方向において同じ位置に配置されていてもよい。このように変更する場合、連通路93を第1水平方向Aに延びるように変更し、第1バッファ室91と第2バッファ室92とを連通させるとよい。
【0119】
○ 圧抜き通路90が第1圧抜き通路95、第2圧抜き通路96、及び迂回圧抜き通路97を有していることを前提として、第1圧抜き通路95を第1バッファ室91と接続通路90aにより構成し、迂回圧抜き通路97を第1バッファ室91外に形成してもよい。このように変更しても、迂回圧抜き通路97は、第1圧抜き通路95及び第2圧抜き通路96に連通するように形成するとよい。
【0120】
○ 圧抜き通路90が第1圧抜き通路95、第2圧抜き通路96、及び迂回圧抜き通路97を有していることを前提として、迂回圧抜き通路97を圧抜き通路90の構成から割愛してもよい。
【0121】
○ 低速シャフト17の軸線方向において、第1バッファ室91の幅H1と第2バッファ室92の幅H2とは、同じ大きさであったが、幅H1と幅H2とは大きさが異なっていてもよい。第2圧抜き通路96の流路断面積が全長に亘って第1圧抜き通路95の流路断面積よりも小さければ幅H1,H2は適宜変更してもよい。なお、上記変更例においても同様の変更を実施する。
【0122】
○ 遠心圧縮機10の適用対象及び圧縮対象の気体は任意である。例えば、遠心圧縮機10は空調装置に用いられてもよく、圧縮対象の気体は冷媒ガスであってもよい。また、遠心圧縮機10の搭載対象は、車両に限られず任意である。
【符号の説明】
【0123】
10…遠心圧縮機、11…ハウジング、12…モータハウジング、13c…増速機室、14…仕切壁であるプレート、14h…挿通孔、15b…インペラ室、16…リヤハウジング、17…低速シャフト、24…インペラ、30…増速機、31…高速シャフト、56…オイルパン、60…オイル通路、71…シール部材、90…圧抜き通路、90a…接続通路、90b…圧抜き孔、91…第1バッファ室、91a…第1の側面、91b…第2の側面、92…第2バッファ室、92c…基端側通路、92d…上端側通路、93…連通路、95…第1圧抜き通路、96…第2圧抜き通路、97…迂回圧抜き通路、98…合流部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7