(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】運転支援装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20230704BHJP
【FI】
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2020095115
(22)【出願日】2020-05-29
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黄 峻
(72)【発明者】
【氏名】野倉 邦裕
(72)【発明者】
【氏名】佐山 仁康
(72)【発明者】
【氏名】青木 香織
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-208784(JP,A)
【文献】特開2018-161950(JP,A)
【文献】特開2007-180622(JP,A)
【文献】特開2003-165404(JP,A)
【文献】特開2012-137974(JP,A)
【文献】特開2003-291689(JP,A)
【文献】特開2012-256273(JP,A)
【文献】特開2012-221487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60K 35/00-37/06
G01C 21/00-21/36
23/00-25/00
B62D 1/00-1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に対して左前方、左後方、右前方または右後方から接近する検知対象の接近方向を各々個別に検知する接近センサと、
運転席の前方に配置され、前記接近センサの検知結果に基づいて光る光表示部と、を具備し、
前記光表示部は、前後に離れて配置される一対の表示領域を、前記運転席の左右に各々有し、前記接近センサで検知した前記接近方向に応じた位置の前記表示領域を光らせ
、
一対の前記表示領域のうち前側に位置する前側表示領域の後端部は、一対の前記表示領域のうち後側に位置する後側表示領域の前端部より高い位置に設置されている、運転支援装置。
【請求項2】
前記表示領域のうち、助手席側に位置する第1表示領域対と、前記助手席の逆側に位置する第2表示領域対と、の左右方向における距離は、前記車両における車幅の3/4以下である、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記第1表示領域対と前記第2表示領域対との左右方向における距離は、前記運転席の幅の1.5倍以下である、請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記光表示部が前記表示領域を光らせる際に音を発する警告音発生部を有する、請求項1~請求項3の何れか一項に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記前側表示領域の前端と、
前記後側表示領域の後端と、の距離は、10cm以上である、請求項1~請求項4の何れか一項に記載の運転支援装置。
【請求項6】
運転席の前方に配置され、
車両に対して左前方、左後方、右前方または右後方から接近する検知対象の接近方向を各々個別に検知する接近センサの検知結果に基づいて光る光表示部を具備し、
前記光表示部は、前後に離れて配置される一対の表示領域を、前記運転席の左右に各々有し、前記接近センサで検知した前記接近方向に応じた位置の前記表示領域を光らせ
、
一対の前記表示領域のうち前側に位置する前側表示領域の後端部は、一対の前記表示領域のうち後側に位置する後側表示領域の前端部より高い位置に設置されている、運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用の運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両に搭載され当該車両の安全走行を支援する各種の運転支援装置が提案されている。その一種として、後側方からの接近車両があることを運転者に通知するものがある(例えば、特許文献1~特許文献3参照)。
【0003】
特許文献1に紹介されている運転支援表示装置は、フロントウインドガラスに後方用支援表示を行う表示手段を有する。当該後方用支援表示は、自車両の後側方に他車両が存在することを示すものである。
特許文献2に紹介されている運転支援装置は、右左折時や車線変更時において後側方からの接近物を検知すると、自車両のフロントピラーにそれぞれ設けられた発光部のうち、接近物側のものを発光させて運転者に警告する。
特許文献3に紹介されている運転支援装置は、自車両後方の風景を表示するモニタの画面を囲む発光素子を有する。そして、他車両が自車の後方から接近すると、モニタ画面における当該他車両の位置および表示サイズに基づいて、発光素子を点灯する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6524395号
【文献】特開2013-161257号公報
【文献】特開2010-092171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した各種の運転支援装置によると、後側方からの接近車両があることを運転者に通知することは可能である。しかし乍ら、上記の運転支援装置を用いる場合にも、上記通知に基づいた適切な対応を運転者が行い難い場合がある。
例えば、通知があったこと自体を運転者が認識し難い場合や、通知の種類を運転者が適切に認識するまでに時間を要する場合等には、運転支援装置によって通知を発したにも拘わらず、運転者が適切な対応をできない虞がある。
【0006】
上記した各特許文献を例に挙げて説明すると、特許文献1に紹介されている技術によると、フロントウインドガラスに後方用支援表示を行う。ここで、フロントウインドガラスは車両前方を透過するものであり、運転者は当該フロントウインドガラスを通して道路状況等を目視確認する。また、フロントウインドガラスにはヘッドアップディスプレイによる各種の情報が投影される場合もあり、運転者は多くの視覚情報をフロントウインドガラスから収集する。このため、フロントウインドガラスに表示された後方用支援表示の意味、すなわち、後側方からの接近車両があることを、運転者が迅速に認識できない場合がある。
【0007】
また、特許文献3に紹介されている技術によると、他車両が自車の後方から接近するとモニタ画面を囲む発光素子が点灯する。しかし、モニタ画面には運転者に向けた多くの視覚情報が表示される。したがってこの場合にも、発光素子が点灯する意味、すなわち、後側方からの接近車両があることを、運転者が迅速に認識できない場合がある。
【0008】
特許文献2に紹介されている技術によると、後側方からの接近物を検知するとフロントピラーに設けられた発光部が発光する。しかし、特に助手席側のフロントピラーは、運転席に対して車幅方向に大きく離れているために、運転者の視界から外れ易く、発光部が発光していること自体を運転者が認識し難い場合がある。
【0009】
さらに、これらの運転支援装置によって後側方以外の側方、例えば左前方や右前方等からの接近物も検知し、かつ、運転者に通知する場合には、運転者に通知する視覚情報に、接近物の接近方向が追加される。この場合、運転者が、当該視覚情報を基にして接近物の接近方向までも迅速に認識するには更なる困難を伴う。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、側方からの検知対象の接近がある場合に運転者に通知し、かつ、当該通知が運転者に認識され易い、運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明の運転支援装置は、
車両に対して左前方、左後方、右前方または右後方から接近する検知対象の接近方向を各々個別に検知する接近センサと、
運転席の前方に配置され、前記接近センサの検知結果に基づいて光る光表示部と、を具備し、
前記光表示部は、前後に離れて配置される一対の表示領域を、前記運転席の左右に各々有し、前記接近センサで検知した前記接近方向に応じた位置の前記表示領域を光らせる、運転支援装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の運転支援装置は、側方からの検知対象の接近がある場合に運転者に通知し、かつ、当該通知が運転者に認識され易いものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1の運転支援装置を車両に搭載した様子を模式的に表す説明図である。
【
図2】実施例2の運転支援装置を車両に搭載した様子を模式的に表す説明図である。
【
図3】実施例3の運転支援装置を車両に搭載した様子を模式的に表す説明図である。
【
図4】実施例4の運転支援装置を車両に搭載した様子を模式的に表す説明図である。
【
図5】実施例5の運転支援装置を車両に搭載した様子を模式的に表す説明図である。
【
図6】実施例6の運転支援装置を車両に搭載した様子を模式的に表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の運転支援装置は、接近センサと光表示部とを具備する。
【0015】
このうち接近センサは、車両に対して左前方、左後方、右前方または右後方から接近する検知対象の接近方向を各々個別に検知する。
また、光表示部は、運転席の前方に配置され、上記した接近センサの検知結果に基づいて光る。
これにより、本発明の運転支援装置は、側方からの検知対象の接近がある場合に運転者に通知することができる。
【0016】
また光表示部は、前後に離れて配置される一対の表示領域を、前記運転席の左右に各々有する。つまり、本発明の運転支援装置における光表示部は、運転席の左右に一対ずつ、合計4つの表示領域を有する。そして、上記した接近センサで検知した検知対象の接近方向に応じた位置の当該表示領域を光らせる。これにより、本発明の運転支援装置によると、検知対象の接近方向の情報を、運転者が認識し易い単純な視覚情報に変換できる。
本発明の運転支援装置では、これらの協働により、側方からの検知対象の接近がある場合に運転者に通知でき、かつ、当該通知が運転者に認識され易い。
【0017】
以下、本発明の運転支援装置をその構成要素毎に説明する。なお、本明細書における「前後方向」は、本発明の運転支援装置を搭載する車両の進行方向と一致する。また、「左右方向」は、本発明の運転支援装置を搭載する車両の車幅方向と一致する。本発明の運転支援装置を搭載する車両は、右ハンドル車であっても良いし、左ハンドル車であっても良い。
【0018】
本発明の運転支援装置は、接近センサと光表示部とを具備する。
【0019】
接近センサは、車両に搭載され、車両に対して左前方、左後方、右前方または右後方から接近する検知対象の接近方向を各々個別に検知するものであれば良い。このような接近センサは、如何なる検知様式で検知対象の接近方向を検知しても良い。
【0020】
例えば、接近センサとして、超音波やミリ波、レーザー等を発信するものであって検知対象に反射した超音波等を受信することで検知対象の接近方向を検知するものを用いることができる。
【0021】
また、接近センサとして、車両に搭載されたカメラおよび演算要素を有し、当該カメラにより撮像した画像を分析して検知対象の接近方向を検知するものを用いても良い。この場合、本発明の運転支援装置における接近センサは専用の演算要素を有しても良いし、車両に搭載されているECU(Electoronic Control Unit)等の演算要素を接近センサの演算要素として兼用しても良い。
【0022】
光表示部は、既述したように、前後に離れて配置される一対の表示領域を、運転席の左右に各々有する。換言すると、本発明の運転支援装置は、表示領域を運転席の左右に一対ずつ、合計二対有する。
【0023】
当該二対の表示領域のうち助手席側に位置する一対を第1表示領域対と称し、他の一対、つまり助手席の逆側に位置する一対を第2表示領域対と称する。また、一対の表示領域のうち前側に位置するものを前側表示領域と称し、後側に位置するものを後側表示領域と称する。さらに、必要に応じて、第1表示領域対に属する表示領域のうち、前側に位置するものを前側第1表示領域と称し、後側に位置するものを後側第1表示領域と称する。第2表示領域対に属する表示領域のうち、前側に位置するものを前側第2表示領域と称し、後側に位置するものを後側第2表示領域と称する。
【0024】
本発明の運転支援装置における光表示部は、前後方向および左右方向に互いに離れて配置される前側第1表示領域、後側第1表示領域、前側第2表示領域および後側第2表示領域を有する。これらの各表示領域は、互いに離れていれば良いが、運転者が迅速に各表示領域を認識し、識別するためには、各表示領域の距離はある程度大きい方が好ましい。
【0025】
具体的には、第1表示領域対(すなわち、前側第1表示領域および後側第1表示領域)と第2表示領域対(すなわち、前側第2表示領域および後側第2表示領域)と、の左右方向における距離は、10cm以上であるのが好ましい。
【0026】
ところで、第1表示領域対と第2表示領域対との左右方向の距離が過大であると、第1表示領域対および/または第2表示領域対が走行中の運転者の視界から外れる虞がある。この場合には、第1表示領域対および第2表示領域対を確認するために運転者が視線を広域にわたって動かす必要が生じ、運転者の快適性を損なう虞がある。また、場合によっては、各表示領域が光っていることを運転者が迅速に認識し難くなる虞もある。このため、運転者の視界から外れないようにするためには、各表示領域の距離はある程度小さい方が好ましい。
【0027】
具体的には、第1表示領域対と第2表示領域対との左右方向における距離は、本発明の運転支援装置が搭載される車両における車幅の3/4以下であるのが好ましい。
または、第1表示領域対と第2表示領域対との左右方向における距離は、本発明の運転支援装置が搭載される車両における運転席の幅の1.5倍以下であるのが好ましい。
【0028】
また、運転者が迅速に各表示領域を認識し、識別するためには、前側表示領域の前端と後側表示領域の後端と、の距離もまたある程度大きい方が好ましい。
具体的には、前側表示領域の前端と後側表示領域の後端との距離は、5cm以上であるのが好ましい。
【0029】
さらに、運転者の快適性を損なわず、各表示領域が光っていることを運転者が迅速に認識するためには、前側表示領域の前端と後側表示領域の後端との距離はある程度小さい方が好ましい。
具体的には、前側表示領域の前端と後側表示領域の後端との距離は、70cm以下であるのが好ましい。
【0030】
さらに、検知対象の接近方向が前側方であるのか後側方であるのかを、運転者が適切に識別できるよう、光表示部は、前側表示領域と後側表示領域とを奥行きをもって表示するのが好ましい。
【0031】
具体的には、各部分における幅すなわち左右方向の長さまたは間隔すなわち左右方向の距離は、以下の〔1〕~〔5〕の1または複数を満たすのが好ましい。
〔1〕各前側表示領域における前端の幅は、同じ表示領域対に属する後側表示領域における後端の幅よりも短い、
〔2〕各前側表示領域における後端の幅は、同じ表示領域対に属する後側表示領域における前端の幅よりも短い、
〔3〕各前側表示領域における前端の幅は、同じ前側表示領域における後端の幅よりも短い、
〔4〕各後側表示領域における前端の幅は、同じ後側表示領域における後端の幅よりも短い。
〔5〕二つの前側表示領域の間隔は、二つの後側領域の間隔よりも短い。
こうすることで、前側表示領域と後側表示領域との間に遠近感が生じ、および/または一つの表示領域のなかに遠近感が生じ、前側表示領域が前方にあり後側表示領域が後方にあることを、運転者が直感的に認識する。
【0032】
なお、第1表示領域対と第2表示領域対との間隔は、前後方向において一定であっても良いが、前側において後側よりも短いのが好ましい。前側表示領域と後側表示領域とを奥行きをもって表示するためである。
具体的には、既述した〔5〕のように、二つの前側表示領域の間隔を二つの後側表示領域の間隔よりも短くしても良い。または、二つの前側表示領域の間隔を後側から前側に向けて徐々に短くし、および/または、二つの後側表示領域の間隔を後側から前側に向けて徐々に短くよりも短くしても良い。
【0033】
さらに、光表示部が、前側表示領域と後側表示領域とをより奥行きをもって表示するために、各表示領域は、長手方向を前後に向けた長尺形状を有するのが好ましい。
【0034】
本発明の運転支援装置において、各後側表示領域は、各々、運転席から対応するサイドミラーまでの延長線上またはその近傍に位置するのが好ましい。
つまり、各後側表示領域は、左後方または右後方から検知対象が接近したときに光るが、このとき運転者は、サイドミラーを目視することにより、実際に検知対象が接近していることを確認する。したがって各後側表示領域からこれに対応するサイドミラーまで、運転者が視線を自然に移動させ得るような位置に、各後側表示領域を配置することで、検知対象が接近したときに、運転者に対して迅速な対応を促すことができる。
【0035】
より具体的には、後側第1表示領域は、運転席のヘッドレストの中心から右側のサイドミラーの中心までの延長線上にあるのが好ましい。または、後側第1表示領域は、ヘッドレストの中心から延び上記の延長線に対して45°以下、30°以下、15°以下または10°以下の角度で交差する直線上にあるのが好ましい。
同様に、後側第2表示領域は、運転席のヘッドレストの中心から左側のサイドミラーの中心までの延長線上にあるのが好ましい。または、後側第2表示領域は、ヘッドレストの中心から延び上記の延長線に対して45°以下、30°以下、15°以下または10°以下の角度で交差する直線上にあるのが好ましい。
【0036】
光表示部は、如何なる様式で表示領域を光らせても良い。例えば、表示領域に光源を設け、当該光源を発光させることで、表示領域を光らせても良い。または、表示領域に光を照射することで、当該表示領域を光らせても良い。これらの場合、表示領域は単に光るだけであっても良いし、何らかの画像や動画等を表示しても良い。
【0037】
さらに、本発明の運転支援装置における光表示部は、上記した前側第1表示領域、後側第1表示領域、前側第2表示領域および後側第2表示領域の4つのみの表示領域を有しても良いし、その他の表示領域を有しても良い。例えば、前側表示領域と後側表示領域との間に1または複数の表示領域を有しても良い。以下、必要に応じて、前側表示領域と後側表示領域との間にある表示領域を連絡表示領域と称する。
【0038】
本発明の運転支援装置が連絡表示領域を有する場合、当該連絡表示領域は前側表示領域や後側表示領域に連動して光るのが良い。
例えば、本発明の運転支援装置を搭載する車両に対して、後側方から後続車が接近し、さらに前側方に向けて移動する場合には、先ず、後側表示領域が光り、次いで、連絡表示領域が光り、その後、前側表示領域が光るのが良い。この場合には、検知対象たる後続車の動きを運転者が直感的に認識し易くなる利点がある。
【0039】
連絡表示領域を複数の領域で構成し、当該複数の連絡表示領域のうち、後側表示領域に近い領域と、前側表示領域に近い領域と、を順番に光らせても良い。例えば、本発明の運転支援装置を搭載する車両に対して、後側方から後続車が接近し、さらに前側方に向けて移動する場合には、先ず後側表示領域が光り、次いで連絡表示領域が、後側表示領域に近い領域、前側表示領域に近い領域の順に光り、その後前側表示領域が光るのが良い。
【0040】
各前側表示領域および後側表示領域は、各々一つのみの領域からなっても良いし、複数の領域からなっても良い。
各前側表示領域および後側表示領域が複数の領域からなる場合、各領域が順番に光るのが良い。例えば、後側方から後続車が接近した場合には、同じ後側表示領域を構成する複数の領域が後から前に向けて順番に光るのが良い。
【0041】
上記したように、複数の表示領域や、同じ表示領域を構成する複数の領域が順番に光ることで、運転者の注意を喚起できる。これにより、運転者は、各表示領域が光っていることを迅速に認識することが可能である。
【0042】
本発明の運転支援装置には、光表示部が表示領域を光らせる際に音を発する警告音発生部を設けても良い。警告音発生部により音を発することで、運転者に対して多角的に注意喚起ができ、運転者の注意をより強く惹起することが可能である。
【0043】
本発明の運転支援装置における光表示部は、表示領域を適宜適切に光らせるための制御要素を有し得る。当該制御要素は本発明の運転支援装置専用のものであっても良いし、車両に搭載されているECU等を本発明の運転支援装置の制御要素として兼用しても良い。
【0044】
さらに、本発明の運転支援装置における接近センサとして、走行安全や歩行者保護等を目的として車両に搭載されている接近センサを兼用しても良い。このような場合、本発明の運転支援装置を光表示部のみからなるものと捉えることもできる。すなわち、本明細書の運転支援装置の他の態様は、以下のとおりである。
【0045】
運転席の前方に配置され、
車両に対して左前方、左後方、右前方または右後方から接近する検知対象の接近方向を各々個別に検知する接近センサの検知結果に基づいて光る光表示部を具備し、
前記光表示部は、前後に離れて配置される一対の表示領域を、前記運転席の左右に各々有し、前記接近センサで検知した前記接近方向に応じた位置の前記表示領域を光らせる、運転支援装置。
【0046】
以下、具体例を挙げて本発明の運転支援装置を説明する。
【0047】
(実施例1)
実施例1の運転支援装置を車両に搭載した様子を模式的に表す説明図を
図1に示す。
以下、上、下、左、右、前、後とは、各図に示す上、下、左、右、前、後を指すものとする。なお、上下方向は鉛直方向と一致し、前後方向は車両進行方向と一致し、左右方向は車幅方向と一致する。
【0048】
図1に示すように、実施例1の運転支援装置1は、接近センサ10、光表示部2、表示立壁3および警告音発生部15を具備する。
【0049】
このうち接近センサ10は、車両90の左前側、左後側、右前側および右後側の4カ所に各々搭載された超音波センサであり、車両90に対して左前方、左後方、右前方または右後方から接近する検知対象の接近方向を、各々個別に検知する。接近センサ10は、光表示部2に接続されている。なお、車両90は左ハンドル車である。
【0050】
表示立壁3は、車両90におけるステアリングホイール91の右前方、前方および左前方を略コ字状に囲い、ステアリングホイール91の前方において、インストルメントパネル92から上方に立設されている。表示立壁3のうちステアリングホイール91の右前方に位置する部分を右壁31、前方に位置する部分を前壁32、左前方に位置する部分を左壁33と称する。
【0051】
表示立壁3のうち、右壁31における前端部および左壁33における前端部の突出高さは、前壁32の突出高さと略同じである。左壁33における前端部は前壁32の左端部に滑らかに連続し、右壁31における前端部は前壁32の右端部に滑らかに連続している。また、表示立壁3のうち、右壁31における後部分および左壁33における後部分の突出高さは、後端に向けて徐々に低くなっている。
表示立壁3の前壁32における後面には、各種のメーター(図略)を含むメータークラスタ93が配置されている。
【0052】
光表示部2は、4つの表示領域20と、制御要素28とを具備する。実施例1の運転支援装置1においては、車両90のECUを制御要素28として兼用している。制御要素28は接近センサ10および各表示領域20に接続されている。
【0053】
4つの表示領域20は、一対の第1表示領域対20fと、一対の第2表示領域対20sとで構成されている。第1表示領域対20fは
図1中の右側すなわち図略の助手席側に配置され、第2表示領域対20sは左側すなわち助手席の逆側に配置されている。
【0054】
第1表示領域対20fは、長手方向を前後に向ける長尺形状をなす二つの表示領域20で構成されている。このうち前側に位置する前側第1表示領域21は、右壁31における前端部の上面に配置されている。また、第1表示領域対20fのうち後側に位置する後側第1表示領域22は、右壁31における後端部の上面に配置されている。
【0055】
第2表示領域対20sもまた、長手方向を前後に向ける長尺形状をなす二つの表示領域20で構成されている。このうち前側に位置する前側第2表示領域23は、左壁33における前端部の上面に配置されている。また、第2表示領域対20sのうち後側に位置する後側第2表示領域24は、左壁33における後端部の上面に配置されている。これにより、4つの表示領域20(前側第1表示領域21、後側第1表示領域22、前側第2表示領域23および後側第2表示領域24)は、運転席95の前方で、運転席95およびステアリングホイール91を取り囲むように、各々距離をおいて配置されている。
【0056】
なお、実施例1の運転支援装置1において、第1表示領域対20f(すなわち、前側第1表示領域21および後側第1表示領域22)と第2表示領域対20s(すなわち、前側第2表示領域23および後側第1表示領域22)と、の左右方向における距離は、45cm程度である。
【0057】
また、上記の第1表示領域対20fと第2表示領域対20sとの左右方向における距離は、実施例1の運転支援装置1が搭載される車両90における車幅の1/4~1/5程度である。
【0058】
さらに、第1表示領域対20fと第2表示領域対20sとの左右方向における距離は、実施例1の運転支援装置1が搭載される車両90における運転席95の幅の0.8倍程度である。
【0059】
実施例1の運転支援装置1において、前側第1表示領域21の前端と後側第1表示領域22の後端との距離、および、前側第2表示領域23の前端と後側第2表示領域24の後端との距離は、各々40cm程度である。
【0060】
前側第1表示領域21、後側第1表示領域22、前側第2表示領域23および後側第2表示領域24は、各々、LEDランプを有し、当該LEDランプが点灯することによって個別に光る。
【0061】
制御要素28は、接近センサ10により右前方からの検知対象の接近を検知すると、前側第1表示領域21を光らせる。同様に、接近センサ10により右後方からの検知対象の接近を検知すると、後側第1表示領域22を光らせる。接近センサ10により左前方からの検知対象の接近を検知すると、前側第2表示領域23を光らせる。さらに、接近センサ10により左後方からの検知対象の接近を検知すると、後側第2表示領域24を光らせる。このように、実施例1の運転支援装置1によると、光表示部2は、接近センサ10で検知した検知対象の接近方向に応じた位置の表示領域20を光らせることができる。
【0062】
さらに、実施例1の運転支援装置1では、カーステレオを、警告音発生部15として兼用している。当該警告音発生部15はECUすなわち制御要素28に接続され、光表示部2が表示領域20を光らせる際に警告音を発する。
【0063】
実施例1の運転支援装置1では、接近センサ10によって、車両90に対して左前方、左後方、右前方または右後方から接近する検知対象の接近方向を各々個別に検知する。また、該接近センサ10の検知結果に基づいて、運転席95の前方に配置された光表示部2の表示領域20が光る。これにより、実施例1の運転支援装置1によると、側方から検知対象が接近したことを通知することができる。
【0064】
また、光表示部2は4つの表示領域20すなわち前側第1表示領域21、後側第1表示領域22、前側第2表示領域23および後側第2表示領域24を有し、これらの各表示領域20のうち、接近センサ10で検知した検知対象の接近方向に応じた位置にあるものを光らせる。これにより、実施例1の運転支援装置1によると、検知対象の接近方向の情報を、運転者が直感的に認識し易い単純な視覚情報に変換できる。
【0065】
さらに、光表示部2が上記の表示領域20を光らせる際に、警告音発生部15が警告音を発する。これにより、運転者に対してより強く注意を喚起できる。
【0066】
実施例1の運転支援装置1では、これらの協働により、側方から検知対象が接近した場合に、運転者に対して、認識され易い通知を行うことが可能である。
【0067】
さらに、実施例1の運転支援装置1においては、4つの表示領域20を表示立壁3の上面に配置したことで、通常時には運転者の注意をフロントウインドガラス96から逸らし難く、かつ、表示領域20が光った際に運転者の注意をより強く惹くことができる。
【0068】
つまり、表示立壁3は、運転者の視界を妨げないよう、フロントウインドガラス96よりも下方に配置される。このため、通常の走行時、すなわち、表示領域20が光っていないときには、運転者は表示立壁3および当該表示立壁3の上面に配置されている表示領域20には注意を惹かれ難い。
【0069】
しかし、表示立壁3は、ステアリングホイール91を取り囲む立壁状をなしているため、当該ステアリングホイール91を操舵する運転者は、表示立壁3に取り囲まれているかのように感じる。表示領域20は、このような表示立壁3の上面に配置されているため、光ったときには運転者の注意を迅速に惹くことができる。
また、このとき光る表示領域20は、検知対象の実際の接近方向と同じ方向に位置するため、運転者は検知対象の接近方向を直感的に識別することができる。これにより、実施例1の運転支援装置1によると、検知対象が接近したときに、運転者に対して迅速な対応を促すことができる。
【0070】
さらに、4つの表示領域20は全てステアリングホイール91の近傍に配置され、左右方向すなわち車幅方向においてコンパクトに纏められている。このため、運転者は、首を左右に動かす等の大きな動作をする必要なく、表示領域20を視界に入れることができる。また、各表示領域20は光るために、運転者は各表示領域20に焦点を合わせず、周辺視するだけで、表示領域20が光ったことおよびその方向を認識できる。これにより、運転者は検知対象の接近およびその接近方向を迅速に認識することが可能である。
【0071】
(実施例2)
実施例2の運転支援装置を車両に搭載した様子を模式的に表す説明図を
図2に示す。実施例2の運転支援装置は、表示領域の位置以外は、実施例1の運転支援装置と概略同じである。以下、実施例1の運転支援装置との相違点を中心に、実施例2の運転支援装置を説明する。
【0072】
図2に示すように、実施例2の運転支援装置1における表示領域20は、前側第1表示領域21が表示立壁3における右壁31と前壁32との境界部分に配置されていること、および、前側第2表示領域23が表示立壁3における左壁33と前壁32との境界部分に配置されていること以外は、実施例1の運転支援装置1における表示領域20と概略同じである。
【0073】
実施例2の運転支援装置1によると、実施例1の運転支援装置1と同様に、接近センサ(図略)および光表示部2を有することにより、側方から検知対象が接近した場合に、運転者に対して、認識され易い通知を行うことが可能である。
【0074】
(実施例3)
実施例3の運転支援装置1を車両に搭載した様子を模式的に表す説明図を
図3に示す。実施例3の運転支援装置は、表示立壁を有さないことと、表示領域の位置以外は、実施例1の運転支援装置と概略同じである。以下、実施例1の運転支援装置との相違点を中心に、実施例3の運転支援装置を説明する。
【0075】
図3に示すように、実施例3の運転支援装置1は、第1表示領域対20fおよび第2表示領域対20sを有する。第1表示領域対20fおよび第2表示領域対20sは、図略の運転席の前方において、インストルメントパネル92の上面に設けられている。実施例1の運転支援装置1と同様に、第1表示領域対20fは図略の助手席側に配置され、前側に位置する前側第1表示領域21と、後側に位置する後側第1表示領域22とで構成されている。第2表示領域対20sは助手席の逆側に配置され、前側に位置する前側第2表示領域23と、後側に位置する後側第2表示領域24とで構成されている。
【0076】
前側第1表示領域21、後側第1表示領域22、前側第2表示領域23および後側第2表示領域24は、何れも長手方向を前後に向けた長尺形状を有する。
なお、実施例3の運転支援装置1において、各表示領域20は前側に向けて徐々に狭幅になる先細り形状をなす。つまり、各々の表示領域20において、前端の幅aと後端の幅bとはa<bの関係にある。また、各々の表示領域対20f, 20sにおいて、前側に位置する表示領域20の後端の幅b1と後側に位置する表示領域20の前端の幅a1とは、a1≦b1の関係である。
【0077】
実施例3の運転支援装置1によると、実施例1~2の運転支援装置1と同様に、図略の接近センサおよび光表示部2を有することにより、側方から検知対象が接近した場合に、運転者に対して、認識され易い通知を行うことが可能である。
【0078】
さらに、実施例3の運転支援装置1によると、各表示領域20が前側に向けて徐々に狭幅になる先細り形状をなすことにより、前側第1表示領域21と後側第1表示領域22とが互いに奥行きを持って表示され、両者の間に遠近感が生じる。同様に、前側第2表示領域23と後側第2表示領域24とが互いに奥行きをもって表示され、両者の間に遠近感が生じる。
これにより、前側表示領域20が前方にあり後側表示領域20が後方にあることを、運転者が直感的に認識し易くなり、検知対象の接近方向が前側方であるのか後側方であるのかを、運転者が迅速にかつ適切に識別できる利点がある。
【0079】
(実施例4)
実施例4の運転支援装置を車両に搭載した様子を模式的に表す説明図を
図4に示す。実施例4の運転支援装置は、表示立壁を有さないことと、表示領域の位置以外は、実施例1の運転支援装置と概略同じである。以下、実施例1の運転支援装置との相違点を中心に、実施例4の運転支援装置を説明する。
【0080】
図4に示すように、実施例4の運転支援装置1における第1表示領域対20fおよび第2表示領域対20sは、メーターフード97に配置されている。
具体的には、実施例4の運転支援装置1における第1表示領域対20fはメーターフード97における右側後端面に配置され、前側に位置する前側第1表示領域21と、後側に位置する後側第1表示領域22とで構成されている。第2表示領域対20sはメーターフード97における左側後端面に配置され、前側に位置する前側第2表示領域23と、後側に位置する後側第2表示領域24とで構成されている。
【0081】
実施例4の運転支援装置1によると、実施例1~3の運転支援装置1と同様に、図略の接近センサおよび光表示部2を有することにより、側方から検知対象が接近した場合に、運転者に対して、認識され易い通知を行うことが可能である。
【0082】
なお、実施例4の運転支援装置1における各表示領域20はメーターフード97に配置されている。当該メーターフード97の内側にはメータークラスタ93が配置され、当該メータークラスタ93には、運転者に向けた多くの視覚情報が表示される。
【0083】
しかし乍ら、実施例4の運転支援装置1においては、実施例1~3の運転支援装置1と同様に、各表示領域20が図略の運転席の前方において、右前方、右後方、左前方および左後方に各々離れて配置され、かつ、各表示領域20が長手方向を前後に向ける長尺形状をなす。そして、検知対象が接近した場合には、検知対象の実際の接近方向と同じ方向に位置する表示領域20を光らせることができる。
【0084】
これにより、メータークラスタ93に表示される視覚情報と、表示領域20が表示する視覚情報とを、視覚的、または体感的に切り離すことができる。よって、実施例4の運転支援装置1によっても、検知対象の接近方向を運転者が認識し易い単純な視覚情報に変換でき、その結果、側方から検知対象が接近した場合に、運転者に対して、認識され易い通知を行うことが可能である。
【0085】
(実施例5)
実施例5の運転支援装置を車両に搭載した様子を模式的に表す説明図を
図5に示す。実施例5の運転支援装置は、表示立壁を有さないことと、表示領域の位置以外は、実施例1の運転支援装置と概略同じである。以下、実施例1の運転支援装置との相違点を中心に、実施例5の運転支援装置を説明する。
【0086】
図5に示すように、実施例5の運転支援装置1における第1表示領域対20fおよび第2表示領域対20sは、メーターフード97の左右側方において、インストルメントパネル92の上面に配置されている。
【0087】
このような実施例5の運転支援装置1においても、実施例1~4の運転支援装置1と同様に、図略の接近センサおよび光表示部2を有することにより、側方から検知対象が接近した場合に、運転者に対して、認識され易い通知を行うことが可能である。
【0088】
(実施例6)
実施例6の運転支援装置を車両に搭載した様子を模式的に表す説明図を
図6に示す。実施例6の運転支援装置は、表示立壁を有さないことと、表示領域の位置以外は、実施例1の運転支援装置と概略同じである。以下、実施例1の運転支援装置との相違点を中心に、実施例6の運転支援装置を説明する。
【0089】
図6に示すように、実施例6の運転支援装置1における第1表示領域対20fおよび第2表示領域対20sは、ステアリングコラム98に配置されている。
具体的には、実施例6の運転支援装置1における第1表示領域対20fはステアリングコラム98における右端部に配置され、前側に位置する前側第1表示領域21と、後側に位置する後側第1表示領域22とで構成されている。第2表示領域対20sはステアリングコラム98における左端部に配置され、前側に位置する前側第2表示領域23と、後側に位置する後側第2表示領域24とで構成されている。
なお、実施例6の運転支援装置1において、第1表示領域対20fと第2表示領域対20sとの左右方向における距離は、12cm程度である。
また、第1表示領域対20fと第2表示領域対20sとの左右方向における距離は、実施例6の運転支援装置1が搭載される車両90における車幅の3/50程度である。
さらに、第1表示領域対20fと第2表示領域対20sとの左右方向における距離は、実施例6の運転支援装置1が搭載される車両90における運転席95の幅の0.3倍程度である。
さらに、実施例6の運転支援装置1において、前側表示領域20の前端と後側表示領域20の後端との距離は、15cm程度である。
【0090】
実施例6の運転支援装置1によると、実施例1~5の運転支援装置1と同様に、図略の接近センサおよび光表示部2を有することにより、側方から検知対象が接近した場合に、運転者に対して、認識され易い通知を行うことが可能である。
【0091】
なお、実施例6の運転支援装置1における各表示領域20はステアリングコラム98に配置され、第1表示領域対20fおよび第2表示領域対20sは左右方向すなわち車幅方向において比較的近くに配置され、かつ、各表示領域20の長手方向の長さは比較的短い。さらに、前側第1表示領域21と後側第1表示領域22との距離、および、前側第2表示領域23と後側第2表示領域24との距離は比較的短い。
【0092】
しかし、実施例6の運転支援装置1においても、各表示領域20が運転席95の前方において、右前方、右後方、左前方および左後方に各々離れて配置され、かつ、各表示領域20が長手方向を前後に向ける長尺形状をなす。そして、検知対象が接近した場合には、検知対象の実際の接近方向と同じ方向に位置する表示領域20を光らせることができる。
【0093】
これにより、実施例6の運転支援装置1によっても、検知対象の接近方向の情報を運転者が直感的に認識し易い単純な視覚情報に変換でき、その結果、側方から検知対象が接近した場合に、運転者に対して、認識され易い通知を行うことが可能である。
【0094】
(評価試験)
ドライビングシミュレータを用いて本発明の運転支援装置の性能を評価した。
具体的には、ドライビングシミュレータを準備し、ドライビングシミュレータにおける運転席とスクリーンとの間に、実施例2の運転支援装置と同様の4つの表示領域および警告音発生部を配置した。さらに、ドライビングシミュレータのスクリーンと運転席との間に、4つのモニタ(右前方モニタ、左前方モニタ、右後方モニタおよび左後方モニタ)を配置した。
【0095】
ドライビングシミュレータは、運転者から見た走行中の道路および風景をそのスクリーンに投影する。道路は二車線あり、ドライビングシミュレータの運転席に座った被験者は、自分が左側の車線を走行していると認識する。
ドライビングシミュレータは、運転席の前側に、ステアリングホイールを有する。ステアリングホイールには4つのスイッチが設けられている。このうち2つはステアリングコラムに対して左側に配置され、他の2つはステアリングコラムに対して右側に配置されている。ステアリングコラムの左側に配置されている2つのスイッチは前後に配列し、ステアリングコラムの右側に配置されている2つのスイッチもまた前後に配列している。
【0096】
左前方モニタは、スクリーンに投影される道路のうち左側の車線の一部に重なるように、スクリーンの近くに配置されている。
右前方モニタは、スクリーンに投影される道路のうち右側の車線の一部に重なるように、スクリーンの近くに配置されている。
左後方モニタは、運転席に対して、運転席側すなわち左側のサイドミラーに相当する位置に配置されている。
右後方モニタは、運転席に対して、助手席側すなわち右側のサイドミラーに相当する位置に配置されている。
運転者は、ドライビングシミュレータによる走行試験を行う際に、左前方モニタおよび右前方モニタに表示される画像を、フロントウインドガラスを通して車両進行方向先側に見える視覚情報として認識する。また、左後方モニタおよび右後方モニタに表示される画像を、運転席側サイドミラーまたは助手席側サイドミラーを通して車両進行方向後側に見える視覚情報として認識する。
【0097】
左前方モニタ、右前方モニタ、左後方モニタおよび右後方モニタには、各々、丸いターゲットが表示され、当該ターゲットの中にはA、Bまたは○の3種のサインがランダムに表示される。また、当該サインの表示は3~6秒間隔で入れ替わり、各サインの1回の表示時間は3秒間である。各サインの表示回数は合計30回であり、そのうち12回は○が現れ、残りの18回はAかBが現れる。
なお、ドライビングシミュレータに表示される道路は緩やかな周回路であり、ドライビングシミュレータの走行時間は4分間である。
【0098】
実施例2の運転支援装置は、
図2に示すように、4つの表示領域20すなわち前側第1表示領域21、後側第1表示領域22、前側第2表示領域23および後側第2表示領域24と、警告音発生部15とを有する。右前方モニタにAサインが表示されると前側第1表示領域21が光り、右後方モニタにAサインが表示されると後側第1表示領域22が光り、左前方モニタにAサインが表示されると前側第2表示領域23が光り、左後方モニタにAサインが表示されると後側第2表示領域24が光る。また、上記の4つのモニタの何れかにAサインが表示されると、警告音発生部15が警告音を発する。なお、4つの表示領域20と警告音発生部15とは独立してオン/オフできるようになっており、後述する評価試験の系統に応じてオンまたはオフされる。
【0099】
なお、後側第1表示領域は、運転席のヘッドレストの中心から右側のサイドミラーの中心までの延長線上にある。同様に、後側第2表示領域は、運転席のヘッドレストの中心から左側のサイドミラーの中心までの延長線上にある。
【0100】
既述したステアリングホイールの4つのスイッチは、4つのモニタに各々対応する位置にある。
【0101】
評価試験において、被験者は、ドライビングシミュレータのスクリーンに投影される画像情報に基づいて、当該ドライビングシミュレータのステアリングホイールやアクセルペダル、ブレーキペダル等を実際に操作する。その際、4つのモニタの何れかにAサインが表示されると、被験者はそのモニタに対応するスイッチを押す。
【0102】
本評価試験は、Aサインの表示時に、当該Aサインを表示したモニタ(右前方モニタ、右後方モニタ、左前方モニタまたは左後方モニタ)の位置に対応する表示領域(前側第1表示領域、後側第1表示領域、前側第2表示領域または後側第2表示領域)を光らせるものと光らせないもの、警告音を発するものと発しないものとを組み合わせた、以下の4系統を行った。詳細を表1に示す。
#1~#4の各々につき、Aサインが表示されてからスイッチが押されるまでの反応時間、および、Aサインが表示されたことによる運転操作への影響を評価した。評価試験は#1~#4の各々につき、n=5で行った。
【0103】
【表1】
#1:Aサインの表示時に、対応する表示領域を光らせ、かつ、警告音を発する、
#2:Aサインの表示時に、対応する表示領域を光らせ、かつ、警告音は発しない、
#3:Aサインの表示時に、対応する表示領域は光らせず、かつ、警告音は発する、
#4:Aサインの表示時に、対応する表示領域を光らせず、かつ、警告音も発しない。
【0104】
なお、サインの表示による運転操作への影響は、ステアリングホイールの操舵角で評価した。
具体的には、ステアリングホイールの操舵角を基に車両の進行方向を求め、当該車両の進行方向と、スクリーンに表示される道路におけるセンターラインと、のずれ幅を算出した。そして、当該ずれ幅のばらつきが大きい場合に、車両のふらつきが大きいと判断した。
また、ステアリングホイールの操舵角の積算値から、ステアリングホイールの操舵量を算出した。既述したように、ドライビングシミュレータに表示される道路は緩やかな周回路であるため、ステアリングホイールの操舵量が多い場合には、被験者が不必要な操舵を多く行ったと判断できる。
また、ステアリングホイールの操舵速度をモニタした。操舵速度が大きい場合には被験者が急操舵を多く行ったと判断できる。
評価試験の結果を
図7~
図14に示す。
【0105】
図7~
図11に示すように、表示領域を光らせた#1および#2については、表示領域を光らせなかった#3および#4に比べて、Aサインが表示されてからスイッチが押されるまでの反応時間が大幅に短縮された。
図9および
図10に示すように、後側方に位置する右後方モニタまたは左後方モニタにサインが表示される場合、つまり、検知対象が後側方から接近する場合に、その効果は特に顕著である。
また、#1~#4の各々につき、各位置の反応時間の平均をとった
図11においても、表示領域を光らせた#1および#2が、表示領域を光らせなかった#3および#4に比べて、Aサインが表示されてからスイッチが押されるまでの反応時間は明らかに短い。
【0106】
図12~
図14に示すように、表示領域を光らなかった#3および#4については、車両のふらつきも大きく、不必要な操舵や急操舵も多かった。これに対して、表示領域を光らせた#1および#2については、車両のふらつきも少なく、不必要な操舵や急操舵も少なかった。
なお、
図12~
図14に示すグラフの縦軸は、何れも、#1~#4の異なる試験条件による運転操作への影響を相対評価するための、相対的な値である。
【0107】
以上の結果から、表示領域を光らせる通知は、運転者に認識され易いことが裏付けられる。
【0108】
なお、上記した系統#1~#4の評価試験に際し、スクリーン上での被験者の注視点をモニタしたところ、表示領域を光らせた系統#1および系統#2においては、当該注視点はセンターライン付近に保たれていた。これに対して、表示領域を光らせなかった系統#3および系統#4においては、当該注視点がセンターラインから大きく外れた位置になる場合が多かった。
【0109】
この結果から、Aサインの表示時に表示領域を光らせない場合には、運転者はAサインの位置、すなわち、検知対象の接近方向を、視線を動かせて確認しているといい得る。そして、Aサインの表示時に表示領域を光らせることにより、運転者はAサインの位置、すなわち、検知対象の接近方向を周辺視により確認できるため、運転中における視線の移動が少なくて済むといい得る。
【0110】
以上の結果から、本発明の運転支援装置が、車両の走行安全に寄与し得ることがより明らかになる。
【0111】
本発明は、上記し且つ図面に示した実施形態にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。また、実施形態を含む本明細書に示した各構成要素は、それぞれ任意に抽出し組み合わせて実施できる。
【符号の説明】
【0112】
1:運転支援装置 10:接近センサ
15:警告音発生部 2:光表示部
20:表示領域 20f:第1表示領域対
20s:第2表示領域対 21:前側表示領域(前側第1表示領域)
22:後側表示領域(後側第1表示領域) 23:前側表示領域(前側第2表示領域)
24:後側表示領域(後側第2表示領域) 90:車両
95:運転席