(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】反射防止フィルム、及び、反射防止フィルムを有する積層体フィルム
(51)【国際特許分類】
G02B 1/111 20150101AFI20230704BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20230704BHJP
【FI】
G02B1/111
G02B1/14
(21)【出願番号】P 2020500996
(86)(22)【出願日】2019-02-20
(86)【国際出願番号】 JP2019006329
(87)【国際公開番号】W WO2019163829
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2018029416
(32)【優先日】2018-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019002847
(32)【優先日】2019-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100156476
【氏名又は名称】潮 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】掛谷 文彰
(72)【発明者】
【氏名】福永 泰隆
(72)【発明者】
【氏名】加藤 亮太
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-145952(JP,A)
【文献】特開2014-041244(JP,A)
【文献】特開2007-262124(JP,A)
【文献】特開2010-095695(JP,A)
【文献】国際公開第2016/060100(WO,A1)
【文献】特開2000-017028(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0261389(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/10 - 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を含む基材層と、
前記基材層の少なくとも一方の表面上に積層され、前記基材層の屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率層とを有し、
前記低屈折率層が、含フッ素ウレタンアクリレートと(メタ)アクリレートとを含む第1の樹脂材料の重合体を含
み、
前記第1の樹脂材料に含まれる前記(メタ)アクリレートが、少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基と、少なくとも1つのビニルエーテル基とを含み、置換基を有していても良い炭素数4~20の化合物である、反射防止フィルム。
【請求項2】
前記基材層の屈折率は、1.49~1.65であり、前記低屈折率層の屈折率は、1.31~1.40である、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
前記基材層の屈折率と前記低屈折率層の屈折率との差が、少なくとも0.09である、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
前記含フッ素ウレタンアクリレートが下記式(I)で表される、請求項1に記載の反射防止フィルム。
(A3)-O(OC)HN-A2-HN(OC)-O-A1-O-(CO)NH-A2-NH-(CO)O-(A3)・・・(
I)
(式(I)において、
A1は、置換基を有していても良い炭素数8以下の含フッ素ジオール由来のアルキレン基であり、
A2は、それぞれ独立して、置換基を有していても良い炭素数4~20の脂肪族または脂環式のイソシアネート由来のアルキレン基であり、
A3は、それぞれ独立して、少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基を含み、置換基を有していても良い炭素数4~30のアルキル基である)。
【請求項5】
前記式(I)において、
前記A1は、置換基を有していても良い炭素数6以下の含フッ素ジオール由来のアルキレン基であり、
前記A2は、それぞれ独立して、置換基を有していても良い炭素数6~16の脂肪族または脂環式のイソシアネート由来のアルキレン基であり、
前記A3は、それぞれ独立して、少なくとも2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を含み、置換基を有していても良い炭素数6~20のアルキル基である、請求項4に記載の反射防止フィルム。
【請求項6】
前記含フッ素ウレタンアクリレートが下記式(II)で表される化合物を含む、請求項
1に記載の反射防止フィルム。
【化1】
【請求項7】
前記(メタ)アクリレートが
、置換基を有していても良い炭素数
6~
18の化合物である、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項8】
前記低屈折率層が、低屈折率部材をさらに含む、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項9】
前記低屈折率部材が中空シリカを含む、請求項8に記載の反射防止フィルム。
【請求項10】
前記低屈折率層が、光開始剤とフッ素系レベリング剤との少なくとも1つをさらに含む、請求項8に記載の反射防止フィルム。
【請求項11】
前記低屈折率層が、前記第1の樹脂材料と前記低屈折率部材とを20:80~70:3
0の重量比で含む、請求項8に記載の反射防止フィルム。
【請求項12】
前記第1の樹脂材料が、前記含フッ素ウレタンアクリレートと前記(メタ)アクリレートとを99:1~30:70の重量比で含む、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項13】
2層以上の前記基材層を含む、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項14】
前記基材層の厚さが50~500μmであり、前記低屈折率層の厚さが10~200nmである、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項15】
前記基材層と前記低屈折率層との間に積層されたハードコート層をさらに有する、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項16】
前記基材層の屈折率は、1.49~1.65であり、前記基材層の屈折率と前記ハードコート層の屈折率との差の範囲が、0.04以下である、請求項15に記載の反射防止フィルム。
【請求項17】
前記基材層の屈折率よりも高い屈折率を有する高屈折率層をさらに有する、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項18】
前記基材層の屈折率は、1.49~1.65であり、低屈折率層の屈折率は、1.31~1.40であり、前記高屈折率層の屈折率は、1.68~1.75である、請求項17に記載の反射防止フィルム。
【請求項19】
前記高屈折率層が、前記基材層と前記低屈折率層との間に積層されている、請求項17に記載の反射防止フィルム。
【請求項20】
前記基材層と前記高屈折率層との間に積層されたハードコート層をさらに有する、請求項19に記載の反射防止フィルム。
【請求項21】
ハードコート層をさらに有し、
前記基材層の厚さが50~500μmであり、前記ハードコート層の厚さが1~10μmであり、前記高屈折率層の厚さが10~200nmであり、前記低屈折率層の厚さが10~200nmである、請求項17に記載の反射防止フィルム。
【請求項22】
前記高屈折率層が、フルオレン系ジオール、イソシアネート、及び、(メタ)アクリレート由来のウレタン(メタ)アクリレートと、(メタ)アクリレートとを含む第2の樹脂材料の重合体を含む、請求項17に記載の反射防止フィルム。
【請求項23】
熱可塑性樹脂を含む基材層と、
前記基材層の少なくとも一方の表面上に積層されたハードコート層と、
前記ハードコート層における前記基材層とは反対側に積層された反射防止層とを有し、
前記反射防止層が、前記基材層の屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率
層を有し、
前記低屈折率層が、含フッ素ウレタンアクリレートと(メタ)アクリレートとを含む第1の樹脂材料の重合体を含み、
前記第1の樹脂材料に含まれる前記(メタ)アクリレートが、少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基と、少なくとも1つのビニルエーテル基とを含み、置換基を有していても良い炭素数4~20の化合物である、
反射防止フィルム。
【請求項24】
熱可塑性樹脂を含む基材層と、
前記基材層の少なくとも一方の表面上に積層され、前記基材層の屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率層とを有し、
前記低屈折率層が、
含フッ素ウレタンアクリレートと(メタ)アクリレートとを含む第1の樹脂材料の重合体を含み、
前記第1の樹脂材料に含まれる前記(メタ)アクリレートが、少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基と、少なくとも1つのビニルエーテル基とを含み、置換基を有していても良い炭素数4~20の化合物である、反射防止フィルム。
【請求項25】
210mm×297mm×0.3mm(厚さ)に裁断して得られた前記反射防止フィルムの試料において前記基材層を190℃で40秒間予熱し、1mm以上の深絞り高さを持つとともに縦と横のサイズがいずれも30mmである直角形状の突起部を含む金型に、前記基材層が接するように前記試料を配置し、1.5MPaの高圧空気を用いて前記試料の圧空成形を行なったとき、得られた圧空成形体が前記金型の前記直角形状部に接する領域の半径Rが3.0mm以内である、請求項1~24のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項26】
210mm×297mm×0.3mm(厚さ)に裁断して得られた前記反射防止フィルムの試料において前記基材層を190℃で40秒間予熱し、1mm以上の深絞り高さを持つとともに縦と横のサイズがいずれも30mmである直角形状の突起部を含む金型に、前記基材層が接するように前記試料を配置し、1.5MPaの高圧空気を用いて前記試料の圧空成形を行なったとき、得られた圧空成形体が前記金型の前記直角形状部に接する領域における、
(圧空成形後の所定の2点間の長さ‐圧空成形前の前記2点間の長さ)/圧空成形前の前記2点間の長さ×100(%)・・・式(III)で得られる値である伸び率(%)が、
前記金型の前記深絞り高さ(mm)の値を10倍した数値以上である、
請求項1~24のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項27】
前記低屈折率層側の表面における反射率をJIS Z 8722-2009の条件で測定した値が2.0%以下である反射防止フィルムであって、
210mm×297mm×0.3mm(厚さ)に裁断して得られた前記反射防止フィルムの試料において前記基材層を190℃で40秒間予熱し、1mm以上の深絞り高さを持つとともに縦と横のサイズがいずれも30mmである直角形状の突起部を含む金型に、前記基材層が接するように前記試料を配置し、1.5MPaの高圧空気を用いて前記試料の圧空成形を行なったとき、得られた圧空成形体が前記金型の前記直角形状部に接する領域の半径Rが3.0mm以内である、
請求項1~24のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項28】
透明樹脂基材と、請求項1~27のいずれか一項に記載の反射防止フィルムとを有する、積層体フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材層と、基材層の屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率層を含む反射防止フィルム、及び、反射防止フィルムを有する積層体フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、反射率の低い表面を有し、反射防止フィルムとして使用可能な積層フィルムが知られている(特許文献1参照)。表面反射率が低い積層フィルムは、例えば、コンピューター画面、テレビ画面、プラズマディスプレーのパネル、液晶表示装置に使用される偏光板の表面、サングラスレンズ、度付き眼鏡レンズ、カメラ用ファインダーレンズ、様々な計器のカバー、自動車のガラス、電車のガラス、車載用表示パネルや電子機器筐体等の用途において使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の用途において従来、反射防止フィルムとして用いられている積層フィルムにおいては、十分な熱成形性を有しておらず、また、耐擦傷性が必ずしも良好ではないものが多い。
【0005】
そこで、本発明の課題は、表面反射率が低く、熱成形性に優れているとともに耐擦傷性も良好な積層体である反射防止フィルム、及び、反射防止フィルムを有する積層体フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上述の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、熱可塑性樹脂を含む基材層と、低屈折率層とを有し、低屈折率層が所定の樹脂材料の重合体を含む反射防止フィルムが、熱成形性と耐擦傷性に優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は下記のとおりである。
(1)熱可塑性樹脂を含む基材層と、
前記基材層の少なくとも一方の表面上に積層され、前記基材層の屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率層とを有し、
前記低屈折率層が、含フッ素ウレタンアクリレートと(メタ)アクリレートとを含む第1の樹脂材料の重合体を含む、反射防止フィルム。
(2)前記基材層の屈折率は、1.49~1.65であり、前記低屈折率層の屈折率は、1.31~1.40である、上記(1)に記載の反射防止フィルム。
(3)前記基材層の屈折率と前記低屈折率層の屈折率との差が、少なくとも0.09である、上記(1)に記載の反射防止フィルム。
(4)前記含フッ素ウレタンアクリレートが下記式(I)で表される、上記(1)に記載の反射防止フィルム。
(A3)-O(OC)HN-A2-HN(OC)-O-A1-O-(CO)NH-A2-NH-(CO)O-(A3)・・・(I)
(式(I)において、
A1は、置換基を有していても良い炭素数6以下の含フッ素ジオール由来のアルキレン基であり、
A2は、それぞれ独立して、置換基を有していても良い炭素数4~20の脂肪族または脂環式のイソシアネート由来のアルキレン基であり、
A3は、それぞれ独立して、少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基を含み、置換基を有していても良い炭素数3~15のアルキル基である)。
(5)前記式(I)において、
前記A1は、置換基を有していても良い炭素数6以下の含フッ素ジオール由来のアルキレン基であり、
前記A2は、それぞれ独立して、置換基を有していても良い炭素数6~16の脂肪族または脂環式のイソシアネート由来のアルキレン基であり、
前記A3は、それぞれ独立して、少なくとも2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を含み、置換基を有していても良い炭素数6~20のアルキル基である、上記(IV)に記載の反射防止フィルム。
(6)前記含フッ素ウレタンアクリレートが下記式(II)で表される化合物を含む、上記(5)に記載の反射防止フィルム。
【化1】
(7)前記(メタ)アクリレートが、少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基と、少なくとも1つのビニルエーテル基とを含み、置換基を有していても良い炭素数4~20の化合物である、上記(1)に記載の反射防止フィルム。
(8)前記低屈折率層が、低屈折率部材をさらに含む、上記(1)に記載の反射防止フィルム。
(9)前記低屈折率部材が中空シリカを含む、上記(8)に記載の反射防止フィルム。
(10)前記低屈折率層が、光開始剤とフッ素系レベリング剤との少なくとも1つをさらに含む、上記(8)に記載の反射防止フィルム。
(11)前記低屈折率層が、前記第1の樹脂材料と前記低屈折率部材とを20:80~70:30の重量比で含む、上記(8)に記載の反射防止フィルム。
(12)前記第1の樹脂材料が、前記含フッ素ウレタンアクリレートと前記(メタ)アクリレートとを99:1~30:70の重量比で含む、上記(1)に記載の反射防止フィルム。
(13)2層以上の前記基材層を含む、上記(1)に記載の反射防止フィルム。
(14)前記基材層の厚さが50~500μmであり、前記低屈折率層の厚さが10~200nmである、上記(1)に記載の反射防止フィルム。
(15)前記基材層と前記低屈折率層との間に積層されたハードコート層をさらに有する、上記(1)に記載の反射防止フィルム。
(16)前記基材層の屈折率は、1.49~1.65であり、前記基材層の屈折率と前記ハードコート層の屈折率との差の範囲が、0.04以下である、上記(15)に記載の反射防止フィルム。
(17)前記基材層の屈折率よりも高い屈折率を有する高屈折率層をさらに有する、上記(1)に記載の反射防止フィルム。
(18)前記基材層の屈折率は、1.49~1.65であり、低屈折率層の屈折率は、1.31~1.40であり、前記高屈折率層の屈折率は、1.68~1.75である、上記(17)に記載の反射防止フィルム。
(19)前記高屈折率層が、前記基材層と前記低屈折率層との間に積層されている、上記(17)に記載の反射防止フィルム。
(20)前記基材層と前記高屈折率層との間に積層された層をさらに有する、上記(19)に記載の反射防止フィルム。
(21)ハードコート層をさらに有し、
前記基材層の厚さが50~500μmであり、前記ハードコート層の厚さが1~10μmであり、前記高屈折率層の厚さが10~200nmであり、前記低屈折率層の厚さが10~200nmである、上記(17)に記載の反射防止フィルム。
(22)前記高屈折率層が、フルオレン系ジオール、イソシアネート、及び、(メタ)アクリレート由来のウレタン(メタ)アクリレートと、(メタ)アクリレートとを含む第2の樹脂材料の重合体を含む、上記(17)に記載の反射防止フィルム。
(23)熱可塑性樹脂を含む基材層と、
前記基材層の少なくとも一方の表面上に積層されたハードコート層と、
前記ハードコート層における前記基材層とは反対側に積層された反射防止層とを有し、
前記反射防止層が、前記基材層の屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率層と、前記基材層の屈折率よりも高い屈折率を有する高屈折率層との少なくともいずれかを有する、
反射防止フィルム。
このような反射防止フィルムにおいては、ハードコート層上(基材層とは反対側)に反射防止層が設けられている。
(24)熱可塑性樹脂を含む基材層と、
前記基材層の少なくとも一方の表面上に積層され、前記基材層の屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率層とを有し、
前記低屈折率層が、ウレタンアクリレートの重合体と前記低屈折率部材とを含む、反射防止フィルム。
(25)210mm×297mm×0.3mm(厚さ)に裁断して得られた前記反射防止フィルムの試料において前記基材層を190℃で40秒間予熱し、1mm以上の深絞り高さを持つとともに縦と横のサイズがいずれも30mmである直角形状の突起部を含む金型に、前記基材層が接するように前記試料を配置し、1.5MPaの高圧空気を用いて前記試料の圧空成形を行なったとき、得られた圧空成形体が前記金型の前記直角形状部に接する領域の半径Rが3.0mm以内である、上記(1)~(24)のいずれかに記載の反射防止フィルム。
(26)熱可塑性樹脂を含む基材層と、
前記基材層の少なくとも一方の表面上に積層され、前記基材層の屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率層とを有し、
210mm×297mm×0.3mm(厚さ)に裁断して得られた前記反射防止フィルムの試料において前記基材層を190℃で40秒間予熱し、1mm以上の深絞り高さを持つとともに縦と横のサイズがいずれも30mmである直角形状の突起部を含む金型に、前記基材層が接するように前記試料を配置し、1.5MPaの高圧空気を用いて前記試料の圧空成形を行なったとき、得られた圧空成形体が前記金型の前記直角形状部に接する領域における、
(圧空成形後の所定の2点間の長さ-圧空成形前の前記2点間の長さ)/圧空成形前の前記2点間の長さ×100(%)・・・式(III)で得られる値である伸び率(%)が、前記金型の前記深絞り高さ(mm)の値を10倍した数値以上である、反射防止フィルム。
(27)熱可塑性樹脂を含む基材層と、
前記基材層の少なくとも一方の表面上に積層され、前記基材層の屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率層とを有し、
前記低屈折率層側の表面における反射率をJIS Z 8722-2009の条件で測定した値が3.0%以下である反射防止フィルムであって、
210mm×297mm×0.3mm(厚さ)に裁断して得られた前記反射防止フィルムの試料において前記基材層を190℃で40秒間予熱し、1mm以上の深絞り高さを持つとともに縦と横のサイズがいずれも30mmである直角形状の突起部を含む金型に、前記基材層が接するように前記試料を配置し、1.5MPaの高圧空気を用いて前記試料の圧空成形を行なったとき、得られた圧空成形体が前記金型の前記直角形状部に接する領域の半径Rが3.0mm以内である、反射防止フィルム。
(28)透明樹脂基材と、上記(1)~(27)のいずれかに記載の反射防止フィルムとを有する、積層体フィルム。
【発明の効果】
【0008】
本発明の反射防止フィルムは、上述のように、基材層と、基材層の少なくとも一方の表面上に積層され、基材層の屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率層とを有する。そして、反射防止フィルムの低屈折率層側の表面の反射率は十分に低く、さらに、反射防止フィルムは、熱成形性に優れているとともに高い耐擦傷性を有する。
【0009】
このように優れた特徴を有するため、本発明の反射防止フィルムは、コンピューター、テレビ、プラズマディスプレー等の表示部、液晶表示装置使用される偏光板の表面、サングラスレンズ、度付き眼鏡レンズ、カメラ用ファインダーレンズ、車載用表示パネルや電子機器筐体等の用途において好適に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1の反射防止フィルムの積層体構造を示す断面図である。
【
図2】実施例2の反射防止フィルムの積層体構造を示す断面図である。
【
図3】実施例3の反射防止フィルムの積層体構造を示す断面図である。
【
図4】実施例1~3とは異なる反射防止フィルムの積層体構造を示す断面図である。
【
図5】実施例4の反射防止フィルムの積層体構造を示す断面図である。
【
図6】所定の間隔の格子状の線を表面上に印刷した反射防止フィルムにおける、圧空成形後の伸びを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、発明の効果を有する範囲において任意に変更して実施することができる。
【0012】
[反射防止フィルム]
第1態様の反射防止フィルムは、熱可塑性樹脂を含む基材層と、基材層の少なくとも一方の表面上に積層され、基材層の屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率層とを有する。そして低屈折率層は、含フッ素ウレタンアクリレートと(メタ)アクリレートとを含む第1の樹脂材料の重合体を含む。
第2態様の反射防止フィルムは、熱可塑性樹脂を含む基材層と、基材層の少なくとも一方の表面上に積層されたハードコート層と、ハードコート層における基材層とは反対側に積層された反射防止層とを有する。そして反射防止層は、基材層の屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率層と、基材層の屈折率よりも高い屈折率を有する高屈折率層との少なくともいずれかを有する。
また、第3態様の反射防止フィルムは、熱可塑性樹脂を含む基材層と、基材層の少なくとも一方の表面上に積層され、基材層の屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率層とを有し、低屈折率層は、ウレタンアクリレートの重合体と低屈折率部材とを含む。
以下、このような積層体である反射防止フィルムに含まれる各層状部材について、説明する。
【0013】
[基材層]
反射防止フィルムに含まれる基材層は、熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂の種類について特に限定されないが、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、含ノルボルネン樹脂、ポリエーテルスルホン、セロファン、芳香族ポリアミド等の各種樹脂が用いられる。基材層の熱可塑性樹脂は、これらの選択肢のうち、少なくともポリカーボネート樹脂を含むことが好ましい。
【0014】
基材層に含まれるポリカーボネート樹脂の種類としては、分子主鎖中に炭酸エステル結合を含む-[O-R-OCO]-単位(Rが脂肪族基、芳香族基、又は脂肪族基と芳香族基の双方を含むもの、さらに直鎖構造あるいは分岐構造を持つもの)を含むものであれば、特に限定されないが、ビスフェノール骨格を有するポリカーボネート等が好ましく、ビスフェノールA骨格、又はビスフェノールC骨格を有するポリカーボネートが特に好ましい。ポリカーボネート樹脂としては、ビスフェノールAとビスフェノールCの混合物、又は、共重合体を用いても良い。ビスフェノールC系のポリカーボネート樹脂、例えば、ビスフェノールCのみのポリカーボネート樹脂、ビスフェノールCとビスフェノールAの混合物あるいは共重合体のポリカーボネート樹脂を用いることにより、基材層の硬度を向上できる。
また、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、15,000~40,000であることが好ましく、より好ましくは20,000~35,000であり、さらに好ましくは22,500~25,000である。
【0015】
また、基材層に含まれるアクリル樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メチルメタクリレート(MMA)に代表される各種(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、またはPMMAやMMAと他の1種以上の単量体との共重合体であり、さらにそれらの樹脂の複数種が混合されたものが挙げられる。これらのなかでも、低複屈折性、低吸湿性、耐熱性に優れた環状アルキル構造を含む(メタ)アクリレートが好ましい。以上のような(メタ)アクリル樹脂の例として、アクリペット(三菱レイヨン製)、デルペット(旭化成ケミカルズ製)、パラペット(クラレ製)があるが、これらに限定されない。
なお、ポリカーボネート樹脂と上述のアクリル樹脂を含む混合物を用いると、基材層、特に、積層体たる基材層の表層(低屈折率層側の層)の硬度を向上させることができる点で好ましい。
【0016】
また、基材層は、熱可塑性樹脂以外の成分として添加剤を含んでいても良い。例えば、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、離型剤及び着色剤から成る群から選択された少なくとも1種類の添加剤などである。また、帯電防止剤、蛍光増白剤、防曇剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤等を基材層に添加してもよい。
【0017】
基材層においては、熱可塑性樹脂が80質量%以上、含まれていることが好ましく、より好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上の熱可塑性樹脂が含まれている。また、基材層の熱可塑性樹脂のうち、ポリカーボネート樹脂が80質量%以上、含まれていることが好ましく、より好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上のポリカーボネート樹脂が含まれている。
【0018】
基材層は、1.49~1.65の範囲の屈折率を有することが好ましい。基材層の屈折率は、より好ましくは1.49~1.60、さらに好ましくは1.51~1.60であり、特に好ましくは1.53~1.59程度である。
【0019】
基材層の厚さは、特に制限されないが、好ましくは30~1000μm(1mm)であり、より好ましくは50~700μm、特に好ましくは100~500μmである。また、反射防止フィルムにおいて、2層以上の基材層が設けられていても良く、複数の基材層が設けられている場合、基材層の合計厚さは、例えば100~1000μm、好ましくは200~500μm程度である。
【0020】
上述の複数の層を含む基材層、すなわち、多層の積層体たる基材層として、例えば、以下のものが挙げられる。上述のポリカーボネート樹脂(PC)、例えばビスフェノールA等の層に、表層(低屈折率層側の層)として上述のアクリル樹脂、例えば、ポリ(メタ)クリル酸メチル樹脂(PMMA:ポリアクリル酸メチル及び/又はポリメタククリル酸メチル)等のアクリル系樹脂層を積層させたもの、ビスフェノールA等のポリカーボネート樹脂(PC)の層にビスフェノールC等のポリカーボネート樹脂(PC)を積層させたもの等である。ビスフェノールAを含むポリカーボネート樹脂(PC)の層とビスフェノールCを含むポリカーボネート樹脂(PC)を積層させた積層体においては、例えば、ビスフェノールCを含むポリカーボネート樹脂を表層として用いる。
また、表層としては、硬度の高いもの、特に、他の基材層よりも硬度の高いものの使用が好ましい。
【0021】
積層体において用いられる熱可塑性樹脂であるポリカーボネート樹脂としても、単層の基材層を形成するポリカーボネート樹脂と同様に、上述のものが好適に用いられる。例えば、ビスフェノールAとビスフェノールCの混合物、又は、共重合体を用いても良い。ビスフェノールC系のポリカーボネート樹脂、例えば、ビスフェノールCのみのポリカーボネート樹脂、ビスフェノールCとビスフェノールAの混合物あるいは共重合体のポリカーボネート樹脂を用いることにより、特に、積層体たる基材層の表層(低屈折率層側の層)の硬度を向上できるという効果が認められる。そして、さらに硬度を向上させるためには、ポリカーボネート樹脂、例えば、ビスフェノールC系のポリカーボネート樹脂に、上述のアクリル系の樹脂を加えた混合物を用いても良い。
【0022】
[低屈折率層(反射防止層)]
反射防止フィルムに含まれる低屈折率層は、反射防止の機能を有する。
そして第1態様における低屈折率層は、含フッ素ウレタンアクリレートと(メタ)アクリレートとを含む第1の樹脂材料の重合体を含む。すなわち、低屈折率層は、少なくとも含フッ素ウレタンアクリレートと(メタ)アクリレートとを含む樹脂材料を硬化、重合させて形成されることが好ましい。
低屈折率層は、反射防止フィルムの反射を抑制するために、反射防止フィルムの最も外側に配置されることが好ましい。
【0023】
<含フッ素ウレタンアクリレート>
低屈折率層の第1の樹脂材料に含まれる含フッ素ウレタンアクリレートは、下記式(I)で表される成分を少なくとも含むことが好ましい。
(A3)-O(OC)HN-A2-HN(OC)-O-A1-O-(CO)NH-A2-NH-(CO)O-(A3)・・・(I)
上記式(I)において、A1は、置換基を有していても良く、合計の炭素数が8以下の含フッ素ジオール由来のアルキレン基であることが好ましく、合計炭素数は、好ましくは6以下、例えば4個である。A1のアルキレン基に含まれる置換基としては、アルキル基などが挙げられる。
【0024】
上記式(I)において、A2は、それぞれ独立して、置換基を有していても良い合計の炭素数4~20の脂肪族または脂環式のイソシアネート由来のアルキレン基である。A2の炭素数は、好ましくは6~16であり、より好ましくは8~12である。A2のアルキレン基の置換基としては、アルキル基などが挙げられる。
また、A2を形成する脂環式のイソシアネートとして、例えば、下記式のイソホロンジイソシアネートが用いられる。
【化2】
【0025】
上記式(I)において、A3は、それぞれ独立して、少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基を含み、置換基を有していても良い合計の炭素数が4~30のアルキル基である。A2の合計炭素数は、好ましくは6~20であり、より好ましくは8~16である。A3のアルキル基の置換基としては、分岐状のアルキル基などが挙げられる。A3は、少なくとも2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を含むことが好ましく、例えば、3つの(メタ)アクリロイルオキシ基を含む。
また、A3を形成する化合物として、例えば、下記式のペンタエリスリトールトリアクリレートが用いられる。
【化3】
【0026】
含フッ素ウレタンアクリレートとしては、上述の各化合物から形成されて、例えば下記式(II)で表される化合物を含む。
【化4】
【0027】
上述のように、低屈折率層の材料モノマーとして、含フッ素ウレタンアクリレートを用いることが好ましいが、これには限定されない。例えば、上記第3態様の反射防止フィルムのように、低屈折率層が、ウレタンアクリレートの重合体と、後述する低屈折率部材とを主な成分として形成されても良い。
このように、低屈折率部材と併用され得るウレタンアクリレート重合体としては、環状骨格を含むウレタンアクリレートが好ましい。より具体的には、イソシアネート化合物と、アクリレート化合物との重合体、あるいは、以下の式で表されるイソシアネート化合物、アクリレート化合物、及び、ポリオール化合物との重合体が挙げられる。
【0028】
イソシアネート化合物としては、例えば、下記式によって表されるジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等が挙げられる。
【化5】
【0029】
アクリレート化合物としては、例えば、下記式によって表される、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル(アクリル酸ヒドロキシプロピル:HPA)等が挙げられる。
【化6】
【0030】
ポリオール化合物としては、例えば、下記式によって表される、トリシクロジデカンジメタノール(TCDDM)等が挙げられる。
【化7】
【0031】
上述のウレタンアクリレート重合体の好ましい具体例としては、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)と、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)との重合体、イソホロンジイソシアネート(IPDI)とPETAとの重合体、トリシクロジデカンジメタノール(TCDDM)とIPDIとPETAとの重合体、TCDDMとH12MDIとPETAとの重合体、キシリレンジイソシアネート(XDI)と(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル(HPA)との重合体、等が挙げられる。
【0032】
<第1の樹脂材料の(メタ)アクリレート>
低屈折率層の第1の樹脂材料に含まれる(メタ)アクリレートは、少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基と、少なくとも1つのビニルエーテル基とを含み、置換基を有していても良い炭素数4~20の化合物であることが好ましい。(メタ)アクリレートの炭素数は、好ましくは6~18であり、より好ましくは8~16である。(メタ)アクリレートの置換基としては、アルキル基などが挙げられる。
(メタ)アクリレートとして、例えば、下記式の(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA)が用いられる。
【化8】
(上記式中、Rは水素、又はメチル基である。)
【0033】
第1の樹脂材料において、含フッ素ウレタンアクリレートと(メタ)アクリレートとの比率は、99:1~30:70(重量比)であることが好ましく、より好ましくは97:3~60:40であり、さらに好ましくは95:5~80:20であり、特に好ましくは90:10~50:50である。
【0034】
低屈折率層の屈折率の値は、基材層の屈折率の値よりも低い。低屈折率層の屈折率は、好ましくは1.31~1.40であり、より好ましくは1.32~1.39であり、さらに好ましくは1.33~1.38程度である。
また、低屈折率層の屈折率と基材層の屈折率との差は、少なくとも0.09であることが好ましく、より好ましくは少なくとも0.12であり、さらに好ましくは少なくとも0.15であり、特に好ましくは少なくとも0.17である。このように、低屈折率層の屈折率の値と、基材層の屈折率の値との差を大きくすることにより、反射防止フィルムの低屈折率層側の表面の反射率を高くすることができる。
【0035】
<低屈折率部材>
低屈折率層は、低屈折率部材を含むことが好ましい。低屈折率部材は、低屈折率層の屈折率を低下させるために添加される。すなわち、低屈折率部材を用いて低屈折率層を形成することにより、低屈折率層と基材層との屈折率の差を大きくし、反射防止フィルムの反射率をより低下させることができる。
低屈折率部材として、シリカ、金属フッ化物微粒子等が好ましく、シリカ、特に中空シリカがさらに好ましい。また、金属フッ化物微粒子を用いる場合、粒子に含まれる金属フッ化物としては、フッ化マグネシウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム等が挙げられる。
低屈折率部材は、粒子状の部材であることが好ましく、粒子状の低屈折率部材の粒径(直径)は、特に制限されないが例えば10~200nmであり、好ましくは30~100nmであり、より好ましくは35~80nmであり、特に好ましくは45~65nmである。
【0036】
<その他の成分>
低屈折率層、又は、低屈折率層を形成する第1の樹脂材料には、光開始剤(光重合開始剤)、レベリング剤との少なくとも1つが含まれることが好ましく、特に、光開始剤が含まれることが好ましい。他にも、第1の樹脂材料には溶剤が含まれていても良い。また、レベリング剤の例としては、フッ素系レベリング剤、及び、シリコーン系レベリング剤が挙げられる。
【0037】
低屈折率層は、第1の樹脂材料と低屈折率部材とを20:80~70:30の重量比で含むことが好ましく、第1の樹脂材料と低屈折率部材との比率は、より好ましくは30:70~65:35であり、さらに好ましくは35:65~60:40である。
【0038】
低屈折率層の厚さは、特に制限されないが、好ましくは10~200nmであり、より好ましくは30~160nm、さらに好ましくは50~120nm、特に好ましくは80~110nmである。
【0039】
[付加層(基材層と低屈折率層以外の層:他の層)]
反射防止フィルムにおいては、基材層と低屈折率層以外の層(付加層)を積層させても良い。例えば、反射防止フィルムにおいて、基材層と低屈折率層との間に他の層を設けても良い。
他の層(付加層)の厚さは、特に制限されないが、好ましくは0.1~10μmであり、より好ましくは0.5~5μmである。
【0040】
[高屈折率層(反射防止層)]
反射防止フィルムにおいては、上記他の層(付加層)として、高屈折率層をさらに有することが好ましい。高屈折率層は、基材層の屈折率よりも高い屈折率を有するものであり、 低屈折率層と同様に反射防止の機能を有する。
高屈折率層は、フルオレン系ジオール、イソシアネート、及び、(メタ)アクリレート由来のウレタン(メタ)アクリレートと、(メタ)アクリレートとを含む第2の樹脂材料の重合体を含むことが好ましい。すなわち、高屈折率層は、少なくとも、フルオレン系ジオール、イソシアネート、及び、(メタ)アクリレートの三成分を脱水縮合反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートと、(メタ)アクリレートとの混合物であることが好ましい。
【0041】
<ウレタン(メタ)アクリレート>
高屈折率層の第2の樹脂材料に含まれるウレタン(メタ)アクリレートは、下記式(IV)で表される成分を少なくとも含むことが好ましい。
(A3)-O(OC)HN-A2-HN(OC)-O-A1-O-(CO)NH-A2-NH-(CO)O-(A3) ・・・(IV)
(式(IV)において、
A1は、フルオレン系ジオールに由来構成単位であり、
A2は、それぞれ独立して、置換基を有していても良いイソシアネート由来の構成単位であり、
A3は、それぞれ独立して、少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基を含み、例えばアリール基等の置換基を有していても良い、合計炭素数が4~30のアルキル基であり、上記(メタ)アクリロイルオキシ基の数は、好ましくは1~3であり、上記合計炭素数は、好ましくは8~24である。)
【0042】
・フルオレン系ジオール(A1)
上述のA1の構成単位を形成するためのフルオレン系ジオール、すなわち、フルオレン骨格を有する化合物の代表的な具体例としては、以下のものが挙げられる。なお本明細書において、フルオレン系ジオールは、3つ以上のヒドロキシル基を含むフルオレン化合物を包含するものである。
すなわち、2つのヒドロキシル基を有するフルオレン系ジオールとしては、例えば、9,9-ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類、9,9-ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類、9,9-ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類、9,9-ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン類などが挙げられる。
また、3つ以上のヒドロキシル基を有するフルオレン系ジオールとしては、例えば、9,9-ビス(ポリヒドロキシフェニル)フルオレン類、9,9-ビス[ポリ(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ)フェニル]フルオレン類、9,9-ビス(ポリヒドロキシナフチル)フルオレン類、9,9-ビス[ポリ(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ)ナフチル]フルオレン類等が挙げられる。
【0043】
9,9-ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類としては、例えば、9,9-ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン[9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(ビスフェノールフルオレン)など]、置換基を有する9,9-ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9-ビス(アルキル-ヒドロキシフェニル)フルオレン[9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン(ビスクレゾールフルオレン)、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-エチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(3-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(モノ又はジC1-4アルキル-ヒドロキシフェニル)フルオレンなど]、9,9-ビス(シクロアルキル-ヒドロキシフェニル)フルオレン[9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(モノ又はジC5-8シクロアルキル-ヒドロキシフェニル)フルオレンなど]、9,9-ビス(アリール-ヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(モノ又はジC6-8アリール-ヒドロキシフェニル)フルオレンなど]、9,9-ビス(アラルキル-ヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-ベンジルフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(C6-8アリールC1-2アルキル-ヒドロキシフェニル)フルオレンなど]など}などが挙げられる。
【0044】
9,9-ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類としては、例えば、9,9-ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(3-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(4-ヒドロキシブトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9-ビス(ヒドロキシC2-4アルコキシフェニル)フルオレンなど}、9,9-ビス(ヒドロキシアルコキシ-アルキルフェニル)フルオレン{例えば、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]フルオレン[又は2,2’-ジメチル-4,4’-(9-フルオレニリデン)-ビスフェノキシエタノール]、9,9-ビス[2-(2-ヒドロキシエトキシ)-5-メチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-エチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-プロピルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(3-ヒドロキシプロポキシ)-3-メチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(4-ヒドロキシブトキシ)-3-メチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル]フルオレン[又は2,2’,6,6’-テトラメチル-4,4’-(9-フルオレニリデン)-ビスフェノキシエタノール]、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジエチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(3-ヒドロキシプロポキシ)-3,5-ジメチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(4-ヒドロキシブトキシ)-3,5-ジメチルフェニル]フルオレンなどの9,9-ビス(ヒドロキシC2-4アルコキシ-モノ又はジC1-6アルキルフェニル)フルオレンなど}、9,9-ビス(ヒドロキシアルコキシ-シクロアルキルフェニル)フルオレン{例えば、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-シクロヘキシルフェニル]フルオレンなどの9,9-ビス(ヒドロキシC2-4アルコキシ-モノ又はジC5-8シクロアルキルフェニル)フルオレンなど}、9,9-ビス(ヒドロキシアルコキシ-アリールフェニル)フルオレン{例えば、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレン[又は2,2’-ジフェニル-4,4’-(9-フルオレニリデン)-ビスフェノキシエタノール]、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジフェニルフェニル]フルオレンなどの9,9-ビス(ヒドロキシC2-4アルコキシ-モノ又はジC6-8アリールフェニル)フルオレンなど}、9,9-ビス(ヒドロキシアルコキシ-アラルキルフェニル)フルオレン{例えば、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-ベンジルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジベンジルフェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[ヒドロキシC2-4アルコキシ-モノ又はジ(C6-8アリールC1-4アルキル)フェニル]フルオレン}およびこれらの9,9-ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン類に対応し、上記式(1)においてnが2以上である9,9-ビス(ヒドロキシポリアルコキシフェニル)フルオレン類{例えば、9,9-ビス{4-[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニル}フルオレンなどの9,9-ビス[(ヒドロキシC2-4アルコキシ)C2-4アルコキシフェニル]フルオレン(n=2の化合物)など}などが挙げられる。
【0045】
9,9-ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類としては、例えば、9,9-ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類{例えば、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシナフチル)]フルオレン(又は6,6-(9-フルオレニリデン)-ジ(2-ナフトール))、9,9-ビス[1-(6-ヒドロキシナフチル)]フルオレン(又は5,5-(9-フルオレニリデン)-ジ(2-ナフトール))、9,9-ビス[1-(5-ヒドロキシナフチル)]フルオレン(又は5,5-(9-フルオレニリデン)-ジ(1-ナフトール))などの置換基を有していてもよい9,9-ビス(モノヒドロキシナフチル)フルオレン}などが挙げられる。
【0046】
9,9-ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン類としては、上記9,9-ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類に対応する化合物、例えば、9,9-ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン{例えば、9,9-ビス[6-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)ナフチル)]フルオレン、9,9-ビス[1-(6-(2-ヒドロキシエトキシ)ナフチル)]フルオレン[又は5,5’-(9-フルオレニリデン)-ビス(2-ナフチルオキシエタノール)]、9,9-ビス[1-(5-(2-ヒドロキシエトキシ)ナフチル)]フルオレンなどの置換基を有していてもよい9,9-ビス(ヒドロキシC2-4アルコキシナフチル)フルオレンなど}などが挙げられる。
【0047】
9,9-ビス(ポリヒドロキシフェニル)フルオレン類としては、9,9-ビス(ジヒドロキシフェニル)フルオレン類、9,9-ビス(トリヒドロキシフェニル)フルオレン類などが含まれる。9,9-ビス(ジヒドロキシフェニル)フルオレン類としては、例えば、9,9-ビス(ジヒドロキシフェニル)フルオレン[9,9-ビス(3,4-ジヒドロキシフェニル)フルオレン(ビスカテコールフルオレン)、9,9-ビス(3,5-ジヒドロキシフェニル)フルオレンなど]、置換基を有する9,9-ビス(ジヒドロキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9-ビス(アルキル-ジヒドロキシフェニル)フルオレン[9,9-ビス(3,4-ジヒドロキシ-5-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(3,4-ジヒドロキシ-6-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(2,4-ジヒドロキシ-3,6-ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(モノ又はジC1-4アルキル-ジヒドロキシフェニル)フルオレンなど]、9,9-ビス(アリール-ジヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9-ビス(3,4-ジヒドロキシ-5-フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(モノ又はジC6-8アリール-ジヒドロキシフェニル)フルオレンなど]、9,9-ビス(アルコキシ-ジヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9-ビス(3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(モノ又はジC1-4アルコキシ-ジヒドロキシフェニル)フルオレン]など}などが例示できる。
【0048】
9,9-ビス(トリヒドロキシフェニル)フルオレン類としては、9,9-ビス(トリヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9-ビス(2,4,6-トリヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(2,4,5-トリヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(3,4,5-トリヒドロキシフェニル)フルオレンなど]が含まれる。
【0049】
9,9-ビス[ポリ(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ)フェニル]フルオレン類としては、9,9-ビス[ジ(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ)フェニル]フルオレン類、9,9-ビス[トリ(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ)フェニル]フルオレン類などが含まれる。
【0050】
9,9-ビス[ジ(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ)フェニル]フルオレン類としては、9,9-ビス[ジ(ヒドロキシアルコキシ)フェニル]フルオレン{例えば、9,9-ビス[3,4-ジ(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン[又は2,2’-ビスヒドロキシエトキシ-4,4’-(9-フルオレニリデン)-ビスフェノキシエタノール]、9,9-ビス[3,5-ジ(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン[又は3,3’-ビスヒドロキシエトキシ-5,5’-(9-フルオレニリデン)-ビスフェノキシエタノール]、9,9-ビス[3,4-ジ(3-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[3,5-ジ(3-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[3,4-ジ(2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[3,5-ジ(2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[3,4-ジ(4-ヒドロキシブトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[3,5-ジ(4-ヒドロキシブトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[ジ(ヒドロキシC2-4アルコキシ)フェニル]フルオレン}、置換基を有する9,9-ビス[ジ(ヒドロキシアルコキシ)フェニル]フルオレン{例えば、9,9-ビス[アルキル-ジ(ヒドロキシアルコキシ)フェニル]フルオレン[例えば、9,9-ビス[3,4-ジ(2-ヒドロキシエトキシ)-5-メチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[3,4-ジ(2-ヒドロキシエトキシ)-6-メチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[2,4-ジ(2-ヒドロキシエトキシ)-3,6-ジメチルフェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[モノ又はジC1-4アルキル-ジ(ヒドロキシC2-4アルコキシ)フェニル]フルオレンなど]、9,9-ビス[アリール-ジ(ヒドロキシアルコキシ)フェニル]フルオレン[例えば、9,9-ビス[3,4-ジ(2-ヒドロキシエトキシ)-5-アリールフェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[モノ又はジC6-8アリール-ジ(ヒドロキシC2-4アルコキシ)フェニル]フルオレンなど]、9,9-ビス[アルコキシ-ジ(ヒドロキシアルコキシ)フェニル]フルオレン[例えば、9,9-ビス[3,4-ジ(2-ヒドロキシエトキシ)-5-メトキシフェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[モノ又はジC1-4アルコキシ-ジ(ヒドロキシC2-4アルコキシ)フェニル]フルオレンなど]など}などの9,9-ビス[ジ(ヒドロキシアルコキシ)フェニル]フルオレン類;これらの9,9-ビス[ジ(ヒドロキシアルコキシ)フェニル]フルオレン類に対応し、上記式(1)においてnが2以上である9,9-ビス[ジ(ヒドロキシポリアルコキシ)フェニル]フルオレン類{例えば、9,9-ビス{3,4-ジ[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニル}フルオレン、9,9-ビス{3,5-ジ[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニル}フルオレンなどの9,9-ビス[ジ(ヒドロキシC2-4アルコキシC2-4アルコキシ]フェニル]フルオレン(n=2の化合物)など}などが挙げられる。
【0051】
9,9-ビス[トリ(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ)フェニル]フルオレン類としては、上記9,9-ビス[ジ(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ)フェニル]フルオレン類に対応する化合物、例えば、9,9-ビス[トリ(ヒドロキシアルコキシ)フェニル]フルオレン{例えば、9,9-ビス[2,3,4-トリ(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン[又は2,2’,6,6’-テトラヒドロキシエトキシ-5,5’-(9-フルオレニリデン)-ビスフェノキシエタノール]、9,9-ビス[2,4,6-トリ(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[2,4,5-トリ(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[3,4,5-トリ(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[トリ(ヒドロキシC2-4アルコキシ)フェニル]フルオレン}、これらの9,9-ビス[トリ(ヒドロキシアルコキシ)フェニル]フルオレン類に対応し、上記式(1)においてnが2以上である9,9-ビス[トリ(ヒドロキシポリアルコキシ)フェニル]フルオレン類{例えば、9,9-ビス{2,4,6-トリ[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニル}フルオレン、9,9-ビス{2,4,5-トリ[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニル}フルオレン、9,9-ビス{3,4,5-トリ[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニル}フルオレンなどの9,9-ビス[トリ(ヒドロキシC2-4アルコキシC2-4アルコキシ]フェニル]フルオレン(n=2の化合物)など}などが挙げられる。
【0052】
9,9-ビス(ポリヒドロキシナフチル)フルオレン類としては、上記9,9-ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類に対応する化合物、例えば、9,9-ビス(ジ又はトリヒドロキシナフチル)フルオレンなどが含まれる。
【0053】
また、9,9-ビス[ポリ(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ)ナフチル]フルオレン類としては、上記9,9-ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン類に対応する化合物、例えば、9,9-ビス[ジ又はトリ(ヒドロキシC2-4アルコキシ)ナフチル]フルオレンなどの9,9-ビス[ジ又はトリ(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ)ナフチル]フルオレン類などが含まれる。
【0054】
上述のフルオレン系ジオールの好ましい具体例として、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンが挙げられる。
【0055】
・イソシアネート(A2)
上述のA2の構成単位を形成するためのイソシアネートは、特に限定されることなく、例えば芳香族系、脂肪族系、脂環式系等のイソシアネートが挙げられる。
【0056】
例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、フェニレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等のポリイソシアネート或いはこれらポリイソシアネートの3量体化合物又は4量体化合物、ビューレット型ポリイソシアネート、水分散型ポリイソシアネート(例えば、日本ポリウレタン工業(株)社製の、「アクアネート100」、「アクアネート110」、「アクアネート200」、「アクアネート210」等)、又は、これらポリイソシアネートとポリオールの反応生成物等が挙げられる。
これらのイソシアネートの中でも、高い屈折率を容易に実現できるという点から、例えばキシリレンジイソシアネート等の芳香族系イソシアネート化合物が好ましい。
【0057】
・(メタ)アクリロイルオキシ基含有アルキル基(A3)
上述のA3のアルキル基を形成するための成分の好ましい具体例としては、ヒドロキシル基を有する単官能性(メタ)アクリル系化合物が挙げられる。
ヒドロキシル基を有する単官能性(メタ)アクリル系化合物としては、例えば、ヒドロキシル基含有モノ(メタ)アクリレート{例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート[例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC2-20アルキル-(メタ)アクリレート、好ましくはヒドロキシC2-12アルキル-(メタ)アクリレート、さらに好ましくはヒドロキシC2-6アルキル-(メタ)アクリレート]、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート[例えば、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのポリC2-4アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート]、3以上のヒドロキシル基を有するポリオールのモノ(メタ)アクリレート[例えば、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールモノ(メタ)アクリレート、ジグリセリンモノ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールの多量体のモノ(メタ)アクリレートなど]など}、N-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド(例えば、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミドなどのN-ヒドロキシC1-4アルキル(メタ)アクリルアミドなど)、これらの化合物(例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート)のヒドロキシル基にラクトン(例えば、ε-カプロラクトンなどのC4-10ラクトン)が付加した付加体(例えば、ラクトンが1~5モル程度付加した付加体)などが挙げられる。
なお、これらの(メタ)アクリル系化合物は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
(メタ)アクリロイルオキシ基を含有するアルキル基(A3)を形成するための化合物の好ましい具体例として、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレートが挙げられる。
【0058】
第2の樹脂材料に含まれるウレタン(メタ)アクリレートの好ましい具体例として、以下の化合物が挙げられる。
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【0059】
<第2の樹脂材料の(メタ)アクリレート>
第2の樹脂材料に含まれる(メタ)アクリレート、すなわち、上述のウレタン(メタ)アクリレートと併用されることの好ましい(メタ)アクリレートとしては、第1の樹脂材料に含まれる(メタ)アクリレートと同じ種類の化合物が採用され得る。
第2の樹脂材料に含まれる(メタ)アクリレートは、少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基と、少なくとも1つのビニルエーテル基とを含み、置換基を有していても良い炭素数4~20の化合物であることが好ましい。(メタ)アクリレートの炭素数は、好ましくは6~18であり、より好ましくは8~16である。(メタ)アクリレートの置換基としては、アルキル基などが挙げられる。
(メタ)アクリレートとして、例えば、(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル[アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル:VEEA]が用いられる。
【0060】
また、第2の樹脂材料に含まれる(メタ)アクリレートの好ましい具体例としては、エトキシ基を有するビスフェノールAジ(メタ)アクリレート化合物も挙げられる。エトキシ基を有するビスフェノールAジ(メタ)アクリレート化合物の好ましい具体例としては、エトキシ化(3モル)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化(4モル)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化(10モル)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化(3モル)ビスフェノールAジアクリレート、より好ましい具体例として、エトキシ化(4モル)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0061】
第2の樹脂材料において、ウレタン(メタ)アクリレートと(メタ)アクリレートとの比率は、99:1~50:50(重量比)であることが好ましく、より好ましくは95:5~70:30、さらに好ましくは93:7~80:20、特に好ましくは、90:10~85:15である。
【0062】
高屈折率層の屈折率の値は、基材層の屈折率の値よりも高く、高屈折率層の屈折率は、好ましくは1.68~1.75であり、より好ましくは1.69~1.74であり、さらに好ましくは1.70~1.73程度である。
また、高屈折率層の屈折率と基材層の屈折率との差は、少なくとも0.09であることが好ましく、より好ましくは少なくとも0.12であり、さらに好ましくは少なくとも0.15であり、特に好ましくは少なくとも0.17である。また、高屈折率層の屈折率と基材層の屈折率との差の範囲は、例えば、0.03~0.70であり、好ましくは0.10~0.50、さらに好ましくは、0.15~0.26である。このように、高屈折率層の屈折率の値と、基材層の屈折率の値との差を大きくすることにより、反射防止フィルムの高屈折率層側の表面の反射率を高くすることができる。
【0063】
<高屈折率部材>
高屈折率層は、高屈折率部材を含むことが好ましい。高屈折率部材は、高屈折率層の屈折率を高くさせるために添加される。すなわち、高屈折率部材を用いて高屈折率層を形成することにより、高屈折率層と基材層との屈折率の差を大きくし、反射防止フィルムの反射率をより高下させることができる。
高屈折率部材として、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化亜鉛、アルミナ、コロイダルアルミナ、チタン酸鉛、鉛丹、黄鉛、亜鉛黄、酸化クロム、酸化第二鉄、鉄黒、酸化銅、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル(Ta2O5)、酸化バリウム、酸化インジウム、酸化ユーロピウム、酸化ランタン、ジルコン、酸化スズ、及び、酸化鉛、並びに、これらの複酸化物であるニオブ酸リチウム、ニオブ酸カリウム、タンタル酸リチウム、及び、アルミニウム・マグネシウム酸化物(MgAl2O4)等が挙げられる。
また、高屈折率部材として希土類酸化物を用いることができ、例えば、酸化スカンジウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化プラセオジム、酸化ネオジム、酸化サマリウム、酸化ユウロピウム、酸化ガドリニウム、酸化テルビウム、酸化ジスプロシウム、酸化ホルミウム、酸化エルビウム、酸化ツリウム、酸化イッテルビウム、酸化ルテチウム等を用いることができる。
上述の多くの選択肢のうち、高屈折率部材としてはジルコニア(酸化ジルコニウム)が好ましい。
【0064】
高屈折率部材は、粒子状の部材であることが好ましい。粒子状の高屈折率部材の粒径(直径)は、特に制限されないが例えば1~100nmであり、好ましくは5~50nmであり、より好ましくは7.5~30nmであり、特に好ましくは10~25nmである。 また、例えば粒子状である高屈折率部材は、金属酸化物等の外側表面を覆う表面処理層としての有機層のコーティングを含むことが好ましい。有機層のコーティングにより、高屈折率層を形成する樹脂材料に対する高屈折率部材の相溶性が向上し、高屈折率部材を樹脂材料に強固に結合させることができる。
表面処理層としては、紫外線反応(硬化)型の官能基が表面に導入された有機層のコーティング等が好ましい。
【0065】
高屈折率層は、第2の樹脂材料と高屈折率部材とを10:90~40:60の重量比で含むことが好ましく、第2の樹脂材料と高屈折率部材との比率は、より好ましくは15:85~35:65であり、さらに好ましくは20:80~30:70である。
【0066】
高屈折率層の厚さは、特に制限されないが、好ましくは10~300nmであり、より好ましくは30~250nm、さらに好ましくは80~200nm、特に好ましくは130~170nmである。
【0067】
高屈折率層は、基材層と低屈折率層との間に積層されていることが好ましい。このような積層体構造を有する反射防止フィルムにおいては、フィルム全体の反射率を確実に低下させることができる。
【0068】
<その他の成分>
高屈折率層、又は、高屈折率層を形成する第2の樹脂材料には、光開始剤、レベリング剤との少なくとも1つが含まれることが好ましく、特に、光開始剤が含まれることが好ましい。他にも、第2の樹脂材料には溶剤が含まれていても良い。また、レベリング剤の例としては、フッ素系レベリング剤、アクリル系レベリング剤、及び、シリコーン系レベリング剤が挙げられる。
【0069】
[ハードコート層]
反射防止フィルムは、ハードコート層をさらに有することが好ましい。ハードコート層を設けることにより、反射防止フィルムの表面硬度、及び、耐擦傷性が向上する。
【0070】
ハードコート層は、基材層と低屈折率層との間に積層されていることが好ましい。
また、低屈折率層、高屈折率層、及び、ハードコート層を含む積層体構造の反射防止フィルムにおいては、ハードコート層が、基材層と高屈折率層との間に積層されていることが好ましい。すなわち、基材層と低屈折率層に加え、高屈折率層とハードコート層をさらに含む積層体である反射防止フィルムにおいては、基材層、ハードコート層、高屈折率層、及び、低屈折率層の順にこれらの層が積層されていることが好ましい。
このような積層体構造を有する反射防止フィルムにおいては、高い反射防止効果が実現されるとともに、表面硬度、すなわち、基材層とは反対側の表面における硬度が向上される。
【0071】
ハードコート層は、基材層等の表面に施すハードコート処理により形成されることが好ましい。すなわち、熱硬化、あるいは活性エネルギー線による硬化が可能なハードコート材料を塗布後、硬化させることにより、ハードコート層を積層することが好ましい。
活性エネルギー線を用いて硬化させる塗料の一例としては、1官能あるいは多官能のアクリレートモノマーあるいはオリゴマーなどの単独あるいは複数からなる樹脂組成物、より好ましくは、ウレタンアクリレートオリゴマーを含む樹脂組成物等が挙げられる。これらの樹脂組成物には、硬化触媒として光重合開始剤が加えられることが好ましい。
また、熱硬化型樹脂塗料としてはポリオルガノシロキサン系、架橋型アクリル系などのものが挙げられる。この様な樹脂組成物は、アクリル樹脂またはポリカーボネート樹脂用ハードコート剤として市販されているものもあり、塗装ラインとの適正を加味し、適宜選択すれば良い。
これらの塗料には、必要に応じて、有機溶剤の他、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤などの各種安定剤やレベリング剤、消泡剤、増粘剤、帯電防止剤、防曇剤などの界面活性剤等を適宜添加してもよい。
【0072】
活性エネルギー線を用いて硬化させるハードコート塗料の一例としては、6官能性ウレタンアクリレートオリゴマー40~95重量%と、例えば、(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル[アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル:VEEA]等の(メタ)アクリレートを5~60重量%程度の割合で混合させた光重合性樹脂組成物100重量部に対し、光重合開始剤を1~10重量部添加したものが挙げられる。
【0073】
また、上述の光重合開始剤としては、一般に知られているものが使用できる。具体的には、ベンゾイン、ベンゾフェノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド等が挙げられる。
【0074】
ハードコート層の屈折率の値は、基材層の屈折率と同程度であることが好ましい。具体的には、ハードコート層は、1.49~1.65の範囲の屈折率を有することが好ましい。ハードコート層の屈折率は、より好ましくは1.49~1.60、さらに好ましくは1.51~1.60であり、特に好ましくは1.53~1.59程度である。
そして、基材層の屈折率とハードコート層の屈折率との差は、0.04以下であることが好ましく、より好ましくは0.03以下であり、さらに好ましくは0.02以下である。
【0075】
ハードコート層の厚さは、特に制限されないが、好ましくは1~10μmであり、より好ましくは2~8μm、さらに好ましくは3~7μm程である。
【0076】
[反射防止フィルムの性状]
<反射率>
反射防止フィルムの低屈折率層側の表面における反射率は、JIS Z 8722 2009の条件で測定した値が3.0%以下であることが好ましく、2.5%以下であることがより好ましく、1.5%以下であることがさらに好ましい。
【0077】
<鉛筆硬度>
反射防止フィルムの低屈折率層側の表面は、高い硬度を有することが好ましい。具体的には、低屈折率層側の表面において、JIS K-5400の規定する鉛筆硬度が、3B以上であることが好ましく、より好ましくは2B以上、さらに好ましくF以上、特に好ましくは2H以上である。
【0078】
<耐擦傷性>
反射防止フィルムの低屈折率層側の表面は、耐擦傷性に優れていることが好ましい。具体的には、医療用不織布RPクロスガーゼ4号(オオサキメディカル株式会社製)に対して250g/cm2の荷重を掛けつつ、各実施例のフィルムの低屈折率層側の表面上に積層させた状態で10回往復させたとき、視認され得る傷が生じないことが好ましい。
【0079】
<熱成形性(深絞り性、直角形状賦形性を含む成形加工性)>
このように、上記半径Rの値が十分に小さい圧空成形体が得られるということは、反射防止フィルムが、金型の直角な領域に沿うように賦形されやすく、深絞り性、及び、直角形状賦形性に優れることを意味する。
【0080】
<フィルム表面の状態>
反射防止フィルムにおいては、表面、特に、低屈折率層側の表面の状態が良好であることが好ましい。具体的には、低屈折率層を形成するための第1の樹脂材料を塗布し、乾燥、硬化させるという工程を経ても、反射防止フィルムの表面に、クラック、白化、発泡、及び、ムラ(主に色ムラ)が観察されず、得られた反射防止フィルム表面の外観が良好であるといえることが好ましい。
【0081】
<伸び率>
反射防止フィルムは、成形時の伸び率にも優れている。具体的には、熱成形性の評価時と同様に、210mm×297mm×0.3mm(厚さ)に裁断したサンプルのポリカーボネート樹脂側を190℃で40秒予熱し、1mm以上の深絞り高さを有し、縦と横の長さがいずれも30mmである直角形状の突起部を有する金型に、基材層が接するように試料を配置し、1.5MPaの高圧空気を用いて試料の圧空成形を行なったとき、得られた圧空成形体が金型の直角形状の突起部に接する領域において、以下のように算出される伸び率の値が高いことが好ましい。
具体的には、反射防止フィルムのサンプル表面に、例えば1mm等の所定の間隔の格子線を印刷し、圧空成形前に比べて圧空成形後に所定の格子線同士の間隔がどれだけ増加したかに基づき、以下の式(III)にて伸び率の値が算出される。
(圧空成形後の格子状の線の間隔(mm)-圧空成形前の格子状の線の間隔(mm))/圧空成形前の格子状の線の間隔(mm)×100(%)・・・式(III)
上記式(III)は、すなわち、(圧空成形後の所定の2点間の長さ-圧空成形前の前記2点間の長さ)/(圧空成形前の前記2点間の長さ)×100(%)を示す式と等価であるともいえる。
このような上記式(III)を用いて、1mm以上の深絞り高さを有する直角形状部を覆うように圧空成形前の反射防止フィルムを配置した後、圧空成形後のある領域の伸び率(%)が算出できる。
図6に例示されるように、いずれも1mm間隔の格子状の線を圧空成形前の反射防止フィルムの表面上に印刷しておき、圧空成形後の所定の領域、例えば
図6にて菱形で囲まれる領域の格子線の間隔が2mmであれば、伸び率は、上記式(III)により、(2(mm)-1(mm))/1(mm)×100=100(%)と算出される。
【0082】
反射防止フィルムにおいては、上記式(III)に基づき算出される伸び率の値が十分に大きくなるように、成形可能であることが好ましい。
例えば、210mm×297mm×0.3mm(厚さ)に裁断して得られた前記反射防止フィルムの試料において前記基材層を190℃で40秒間予熱し、1mm以上5mm以下の深絞り高さを持ち、縦と横の長さがいずれも30mmである直角形状の突起部を有する金型に、前記基材層が接するように前記試料を配置し、1.5MPaの高圧空気を用いて前記試料の圧空成形を行なったとき、得られた圧空成形体が前記金型の前記直角形状部に接する領域における、式(III)で算出される伸び率(%)の値が、金型の深絞り高さ(mm)の値を10倍した数値(%)以上であることが好ましく、より好ましくは14倍した数値(%)以上である。
より具体的には、本実施例の反射防止フィルムによれば、深絞り高さが1mmである金型の直角形状部を覆うように配置した後、圧空成形において、10(%)以上、さらには14(%)以上の伸び率を実現することができる。また、本実施例の反射防止フィルムを深絞り高さが3mmである金型の直角形状部(突起部)を覆うように配置して圧空成形すると、30(%)以上、さらには42(%)以上の伸び率を実現することができる。同様に、金型の直角形状部の深絞り高さが7mmであれば、少なくとも70%、さらには約100%(98%)の伸び率が達成可能である。
【0083】
[積層体フィルム]
本発明の積層体フィルムは、透明樹脂基材と、上述の反射防止フィルムとを有する。透明樹脂基材としては、例えば、ビスフェノールAのポリカーボネート層上にメタクリル樹脂層を積層させたもの、及び、ビスフェノールAのポリカーボネート層上にビスフェノールCのポリカーボネート層を積層させたもの等が用いられ、透明樹脂基材の厚さは、特に制限されないが、好ましくは30~1000μm(1mm)であり、より好ましくは50~700μmであり、さらに好ましくは100~500μmである。
積層体フィルムとして、例えば、コンピューター画面、テレビ画面、プラズマディスプレーのパネル等の表面に貼付されるフィルム、及び、液晶表示装置に使用される偏光板、サングラスレンズ、度付き眼鏡レンズ、カメラ用ファインダーレンズ、様々な計器のカバー、自動車のガラス、電車のガラス、車載用表示パネルや電子機器筐体等の表面に用いられるフィルムが挙げられる。
【0084】
[反射防止フィルム及び積層体フィルムの製造方法]
反射防止フィルムの製造においては、まず、基材層が形成されることが好ましい。基材層の製造においては、樹脂組成物等の材料を従来の手法で層状(シート状)に加工する。例えば、押出成形、キャスト成形による方法である。押出成形の例としては、本発明の樹脂組成物のペレット、フレークあるいは粉末を押出機で溶融、混練後、Tダイ等から押出し、得られる半溶融状のシートをロールで挟圧しながら、冷却、固化してシートを形成する方法が挙げられる。
【0085】
そして単一、もしくは複数の基材層の外側表面に樹脂材料を塗布し、硬化させることにより低屈折率層が形成される。樹脂材料を硬化させる手法としては、光硬化、及び熱硬化などの手法が採用され得る。
【0086】
また、こうして製造される反射防止フィルムに対し、さらに公知の手法で透明樹脂基材を積層させることにより、積層体フィルムが製造される。
【実施例】
【0087】
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
【0088】
[合成例]
特許第6078258号公報の合成例2と同様の製法により、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン/2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン=6/4(重量比)の共重合体のポリカーボネートを製造した。
【0089】
[実施例1]
上述のように合成した2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(ビスフェノールC)と2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)の共重合体から成る厚さ60μmの第1ポリカーボネート樹脂層20と、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)の重合体(ユーピロンS-2000(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製))から成る厚さ240μmのポリカーボネート樹脂22とを、共押出法の手法で積層させ、合計厚みが300μmである透明基材層を形成した(
図1参照)。
【0090】
共押出法の手法は以下の通りである。軸径40mmの単軸押出機に上記ビスフェノールCを連続的に導入し、シリンダー温度240℃の条件で押し出した。また、軸径75mmの単軸押出機に上記ビスフェノールAを連続的に導入し、シリンダー温度270℃で押し出した。各押出機で押し出された樹脂をマルチマニホールド内部で積層し、シート状にしてTダイから押し、上流側から温度130℃、130℃、185℃とした3本の鏡面仕上げロールで鏡面を転写させながら冷却し、ビスフェノールCとビスフェノールAの積層体を得た。
こうして得られた基材層のうち、第1ポリカーボネート樹脂層の屈折率の値は1.577であり、第2ポリカーボネート樹脂層の屈折率の値は1.584であった。
【0091】
次に、低屈折率層を形成するために、硬化性の低屈折率塗料を以下のように調製した。まず、攪拌機、温度計、冷却器、モノマ一滴下ロート及び乾燥空気導入管を備えた5つ口フラスコに、予め乾燥空気を流入させて系内を乾燥させた。そして5つ口フラスコに、2,2,3,3-テトラフルオロ-1,4ブタンジオール(Exfluor Research Corporation 製のC4DIOL)58.9重量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート279.8重量部、重合触媒としてのジブチ錫ラウリレート0.5重量部、及び溶剤としてのメチルエチルケトン500重量部を投入し、60℃に加温した。その後、イソホロンジイソシアネート161.3重量部を投入後、60~70℃にて反応させた。反応物中のイソシアネート残基が消費されたことを赤外線吸収スペクトルで確認し、反応を終了させ6官能ウレタンアクリレートオリゴマーを得た。
さらに、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA)を、ウレタンアクリレートオリゴマー(ウレタンアクリレート液)に対して、ウレタンアクリレート液/VEEA=90/10(wt%)の割合で混合した。
【0092】
こうして得られた樹脂材料の液体成分に対し、中空シリカ(日揮触媒化成 スルーリア4320)を添加し、樹脂材料/中空シリカ=35/65(wt%)の割合で混合した。さらに、光開始剤として1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(BASF社製I-184)を5重量%、レベリング剤 RS-78(DIC製:レベリング剤としての固形分は40重量%であり溶剤MEKで希釈されたもの)を1重量%、添加して溶解させ、溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテル)を加えて、固形分が1.5重量%となるように濃度を調整した。
【0093】
こうして得られた低屈折率塗料(以下、低屈折率塗料Bともいう)を、透明基材層の第1ポリカーボネート樹脂層20上に、乾燥塗膜が100nmとなる様に塗装し、100℃にて2分間乾燥させた。さらに、紫外線硬化装置にて紫外線の積算光量が500mJ/cm
2となるように照射し、低屈折率塗料を硬化させた。こうして、第1ポリカーボネート樹脂層20の外側表面に低屈折率層12を形成させ、反射防止フィルム10Aを製造した(
図1参照)。
なお、低屈折率塗料の樹脂材料、すなわち、中空シリカ添加前の屈折率は1.486であり、中空シリカ添加後の低屈折率塗料Bの屈折率の値は、1.3651であった。
【0094】
[実施例2]
基材層として、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から成るポリカーボネート樹脂層22に、メタクリル樹脂層16を積層させた透明基材層(MGCフィルシート株式会社製のDF02;合計厚さは300μm)を用いた他、実施例1と同様に反射防止フィルム10Bを製造した(
図2参照)。
こうして得られた基材層のうち、ポリカーボネート樹脂層の屈折率の値は1.584であり、メタクリル樹脂層の屈折率の値は1.491であった。
【0095】
[実施例3]
基材層として、2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から成るポリカーボネート樹脂の透明基材層22(MGCフィルシート株式会社製NF-2000;厚さは300μm)を用いた他、実施例1と同様に反射防止フィルム10Cを製造した(
図3参照)。
なお、基材層としてのポリカーボネート樹脂層の屈折率の値は1.584であった。
【0096】
[実施例4]
基材層として、2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から成るポリカーボネート樹脂の透明基材層22(MGCフィルシート株式会社製FE-2000;厚さは300μm)を用いた。
基材層としてのポリカーボネート樹脂層の屈折率の値は1.584であった。
また、ウレタンアクリレート液として、市販品を使用した。すなわち、フッ素を含んでいないCN-968(脂肪族ウレタンヘキサアクリレートオリゴマー;サートマー(Sartomer)製)をウレタンアクリレート液として用い、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA)を、ウレタンアクリレート液に対して、ウレタンアクリレート液/VEEA=90/10(wt%)の割合で混合し、低屈折率層を形成するためのた塗料Dを得た。
その他については、実施例1と同様に反射防止フィルム10Cを製造した。
なお、塗料Dの樹脂材料、すなわち、中空シリカ添加前の屈折率の値は、1.4914であり、中空シリカを添加した後の塗料Dの屈折率の値は、1.3670あった。
【0097】
さらに、低屈折率層のみならずハードコート層と高屈折率層とを有する、実施例5以下の反射防止フィルムを以下のように製造した。
【0098】
<ハードコート層の形成>
3Lの三口フラスコに、トリシクロデカンジメタノールを442部(分子量1000)、HEAを521部、MEKを840部、ジブチル錫ジラウレ-ト1.4部、及び、2,6-tert-ブチル-4-メチルフェノ-ル(BHT)2.8部を仕込み、均一に混合した。反応系を60℃に制御しながら、さらにイソホロンイソシアネート997部を投入し、投入終了後、70℃で15時間撹拌し、反応を完結させた。このようにして、6官能のウレタンアクリレートオリゴマーを得た。
さらに、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA)を、上記6官能ウレタンアクリレートオリゴマー(ウレタンアクリレート液)に対して、ウレタンアクリレート液/VEEA=90/10(wt%)の割合で混合した。
こうして得られた樹脂材料の液体成分に対し、光開始剤として1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(BASF社製I-184)を5重量%、及び、溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテル)を加えて、固形分が30重量%となるように濃度を調整した。こうして得られたハードコート材料(ハードコート塗料)をH-1とした。
ハードコート材料H-1の屈折率は1.4998であった。
【0099】
また、上述のハードコート材料H-1の製造に用いたウレタンアクリレートオリゴマーとは異なる種類の脂肪族の6官能性ウレタンアクリレートオリゴマー(ウレタンアクリレート液:サートマー社製CN-968)に対して、(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA)を、ウレタンアクリレート液/VEEA=90/10(wt%)の割合で混合した。
こうして得られた樹脂材料の液体成分に対し、光開始剤として1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(BASF社製I-184)を5重量%、及び、溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテル)を加えて、固形分が30重量%となるように濃度を調整した。こうして得られたハードコート材料(ハードコート塗料)をH-2とした。
ハードコート材料H-2の屈折率は1.4900であった。
【0100】
<高屈折率塗料>
さらに、高屈折率層を形成するために、硬化性の高屈折率塗料を以下のように調製した。
まず、攪拌機、温度計、冷却器、滴下ロート、及び、乾燥空気導入管を備えた3Lの5つ口フラスコに、予め乾燥空気を流入させて系内を乾燥させた。そして5つ口フラスコに、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(田岡化学株式会社製のTBIS-G)553重量部、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート(共栄社化学株式会社製M-600A)592重量部、重合触媒としてのジブチ錫ラウリレート1.5重量部、2,6-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)3重量部、及び、溶剤としてのメチルエチルケトン1500重量部を投入し均一に混合し、60℃に加温した。その後、キシレンジイソシアネート(三井化学株式会社製XDI)448重量部を反応系に投入後、70℃にて反応させた。反応物中のイソシアネート残基が消費されたことを赤外線吸収スペクトルで確認し、反応を終了させ、2官能ウレタンアクリレートオリゴマーを得た。
こうして得られた樹脂材料の液体成分、すなわち、2官能ウレタンアクリレートオリゴマー(ウレタンアクリレート液)に対して、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA)を、ウレタンアクリレート液/VEEA=90/10(wt%)の割合で混合した。この樹脂材料に、ジルコニア粒子(株式会社日本触媒製)を、樹脂材料/ジルコニア=20/80(wt%)の割合で添加し、混合した。ここで用いたジルコニア粒子は、表面に有機層のコーティングを有するものであり、約20nmの粒子径を有し、核となるジルコニアの粒子径は約11nmであった。
さらに、光開始剤として1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(BASF社製I-184)を5重量%溶解させ、溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテル)を加えて、固形分が7重量%となるように濃度を調整した。得られたものを高屈折率層用の高屈折率塗料(以下、高屈折率塗料Aともいう)とした。
なお、高屈折率塗料の樹脂材料、すなわち、ジルコニア添加前の樹脂材料の屈折率は1.5580であり、ジルコニア添加後の高屈折率塗料Aの屈折率は1.7196であった。
【0101】
<基材>
基材層として、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から成るポリカーボネート樹脂層に、メタクリル樹脂層を積層させた透明基材層(MGCフィルシート株式会社製のDF02;合計厚さは300μm)を用いた。
これらの基材層のうち、ポリカーボネート樹脂層の屈折率の値は1.584であり、メタクリル樹脂層の屈折率の値は1.491であった。
【0102】
[実施例5]
上記基材上に、上述のハードコート材料H-1を乾燥膜厚3μmになる様に塗装し、100℃にて2分間乾燥させた。さらに、紫外線硬化装置にて積算光量が250mJ/cm2となるように紫外線を照射した。
こうして得られたハードコートフィルム(ハードコート層)上に、上述の高屈折率塗料Aを、乾燥膜厚150nmになる様に塗装し、100℃にて2分間乾燥させた。さらに、紫外線硬化装置にて積算光量が250mJ/cm2となるように紫外線を照射した。こうして、高屈折率層を形成した。
次いで、得られた高屈折率層の上、すなわち、高屈折率層におけるハードコートフィルム(ハードコート層)とは反対側の表面上に、低屈折率塗料Bを乾燥膜厚100nmになる様に塗装し、100℃にて2分間乾燥させた。さらに、紫外線硬化装置にて積算光量が250mJ/cm2となるように紫外線を照射した。こうして、低屈折率層を形成した。
【0103】
[実施例6]
上記基材上に、上述のハードコート材料H-1を乾燥膜厚3μmになる様に塗装し、100℃にて2分間乾燥させた。さらに、紫外線硬化装置にて積算光量が250mJ/cm2となるように紫外線を照射した。
こうして得られたハードコートフィルム(ハードコート層)上に、上述の低屈折率塗料Bを乾燥膜厚100nmになる様に塗装し、100℃にて2分間乾燥させた。さらに、紫外線硬化装置にて積算光量が250mJ/cm2となるように紫外線を照射した。こうして、低屈折率層を形成した。
【0104】
[比較例]
ポリエステルアクリレート(ダイセル・オルネクス株式会社製のEBECRYL1830)とアクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA)を、90/10(wt%)の割合で混合し、樹脂材料の液体成分に対し、中空シリカ(日揮触媒化成 スルーリア4320)を添加し、樹脂材料/中空シリカ=35/65(wt%)の割合で混合した。さらに、光開始剤として1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(BASF社製I-184)を5重量%、レベリング剤 RS-78(DIC製:レベリング剤としての固形分は40重量%であり溶剤MEKで希釈されたもの)を1重量%、添加して溶解させ、溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテル)を加えて、固形分が1.5重量%となるように濃度を調整した。
こうして得られた低屈折率塗料(以下、低屈折率塗料Cともいう)を用いるとともに、上述のハードコート材料H-1の代わりにハードコート材料H-2を用いた他は、実施例5と同様に反射防止フィルムを製造した。
なお、低屈折率塗料Cの樹脂材料、すなわち、中空シリカの添加前の樹脂材料の屈折率は1.4941であり、中空シリカの添加後の低屈折率塗料の屈折率は1.3679であった。
【0105】
こうして製造した実施例1~5等の反射防止フィルムの物性を以下のように測定した。
<物性測定>
密着性:
硬化皮膜にカッターで1mm間隔に縦横に各11本の切れ目を入れて100個のマス目を作り、この目にセロテープ(登録商標)(ニチバン株式会社製粘着テープ)を貼り付けた後、90°の方向に一気に剥した。硬化皮膜が剥離せず、残ったマス目の数を数えた。
そして、全てマス目に塗膜がある状態を「良好」、少しでも剥離した状態を「不良」と評価した。
【0106】
鉛筆硬度:
JIS K-5400の条件に基づき測定を行い、傷の入らないもっとも硬い鉛筆の番手で評価した。
耐擦傷性:
医療用不織布RPクロスガーゼ4号(オオサキメディカル株式会社製)に対して250g/cm2の荷重を掛けて、各実施例のフィルムの低屈折率層側の表面上に10回往復させ、傷の状況を目視で判定した。
【0107】
屈折率:JIS K0062-1992に準じて、株式会社アタゴ製のアッベ屈折計(型式:NAR-1T LIQUID)を用いて、25℃で波長589nmのD線により屈折率の値(nD)を測定した。なお、溶剤を含んだ溶液においては、溶剤を含んだ状態のままで屈折率を測定し、測定された値と溶剤の希釈率から、溶剤を除いた溶液の屈折率の値を算出した。
【0108】
反射率(視感反射率):
日本電色工業株式会社製のSD6000により、JIS Z 8722-2009に沿って測定した。測定は、各実施例のフィルムの裏面(基材層側)からの反射を防ぐため、塗工面の反対の面に黒のビニルテープを貼り測定した。
【0109】
耐擦傷性、及び、熱成形性(深絞り性、直角形状賦形性を含む成形加工性):
各実施例で得られた反射防止フィルムを210mm×297mm×(厚さ)0.3mmに裁断し、得られたサンプルのポリカーボネート樹脂側を190℃約40秒予熱した。その直後に、1.5MPaの高圧空気により、深絞り高さで、直角形状の突起部を有する金型を用いて圧空成形を行なった。なお、深絞り高さは、直角形状金型において1mm、2mm、さらには5mm以上と1mmきざみで設定した。そして、1mm以上の深絞り高さを有するとともに縦と横のサイズがいずれも30mmである直角形状の突起部を有する金型を用いて圧空成形を行なったときに得られた圧空成形体の金型の直角形状部に接する領域の半径Rの値を測定し、下記表1にて「直角形状半径R(mm)」として記載した。この値が小さいほど、優れた成形性を有するといえる。
なお、直角形状部の半径Rの測定は、接触式輪郭形状測定機CONTOURECORD2700/503(株式会社東京精密製)を使用し、実測した。
【0110】
さらに、得られた成形体の表面状態(クラック、白化、発泡、ムラ)状態を観察し、クラック、白化、発泡及びムラのいずれも観察されない場合に耐擦傷性として「傷無し」と評価した。さらに、1mm以上深絞り高さで、直角形状部の半径Rが3.0mm以内である成形体で傷無しの状態に成形できたものについて、熱成形性「良好」と総合評価した。また、熱成形の結果、得られた成形体の深絞り高さ、すなわち、成形体であるフィルムにおいて基準となる平面に対する金型凸部(突起部)上で成形された領域までの高さを「深絞り高さ(mm)」の値として実測した。
【0111】
上記圧空成形の手法は、以下の通りである。まず、反射防止フィルムの上記サンプルを保持具にて固定し、サンプルを保持具ごと加熱ゾーンへ移動させ、上方から赤外線照射し、サンプルシートのTgよりも高温となるように加熱させ、軟化させた。さらに、サンプルシートを保持具ごと金型上に移動させ、型締を行い、同時に、加圧空気を導入した。そして、サンプルシートを金型表面に接触するまで急速に伸ばし、その後、金型表面に接触させてサンプルシート樹脂のTg以下の温度となるように急冷し、金型の表面形状に沿って固定された賦形品を得た。加圧空気など排出した後、賦形品を取り出し、上述の方法で性状を測定した。
【0112】
伸び率:
圧空成形前の反射防止フィルムの上記サンプルの表面において、一定の間隔の格子状の線を印刷した。そして圧空成形後のサンプルの隣同士の線の間隔がどの程度伸びたかを示す結果に基づき、上記式(III)に沿って伸び率を算出したところ、56%であった。
【0113】
上述の実施例1~4のフィルムの性状の測定結果は、表1の通りであった。表中の屈折率は、重合前の塗料の値であり、重合後の屈折率の値は、いずれの層においても概ね重合前の塗料の値よりも0.02程度、大きかった。
【表1】
【0114】
また、ハードコート層を設けた実施例5、6等のフィルムの性状の測定結果は、表2の通りであった。表1と同様に、表2に示す屈折率は、重合前の塗料の値であり、重合後の屈折率の値は、いずれの層においても概ね重合前の塗料の値よりも0.02程度、大きかった。
【表2】
【0115】
以上より、実施例の反射防止フィルムについて、層間の密着性が高く、耐擦傷性が良好であり、高い表面硬度を有するにも関わらず熱成形性に優れ、表面反射率が低いことが確認された。
なお、実施例4においては、成形性に必ずしも優れない結果が示されたものの、基材層の屈折率と低屈折率層の屈折率との差は十分に大きく、反射防止フィルムとしての性能は比較例よりも良好であることが確認された。
【0116】
また、実施例1~4と異なり、付加層(他の層)18を形成しても優れた特性の反射防止フィルム10Dを得ることができる(
図4参照)。
例えば、低屈折率層以外の付加層18として、高屈折率層を用いた反射防止フィルム10Eを製造しても良い(実施例5に関する
図5参照)。また、反射防止フィルム10Eにおいては、高屈折率層18とともにハードコート層24が設けられているが、高屈折率層18を除き、低屈折率層12、ハードコート層24、及び、基材層(ポリカーボネート樹脂層)の積層体としての反射防止フィルムを得ることもできる(実施例6参照)。
【符号の説明】
【0117】
10A~10E 反射防止フィルム
12 低屈折率層
16 メタクリル樹脂層
18 付加層(他の層)/高屈折率層
20 第1ポリカーボネート樹脂層
22 第2ポリカーボネート樹脂層(ポリカーボネート樹脂層)
24 ハードコート層