(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】ポリイミド樹脂、ポリイミドワニス及びポリイミドフィルム
(51)【国際特許分類】
C08G 73/10 20060101AFI20230704BHJP
【FI】
C08G73/10
(21)【出願番号】P 2020500997
(86)(22)【出願日】2019-02-20
(86)【国際出願番号】 JP2019006333
(87)【国際公開番号】W WO2019163830
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2018031246
(32)【優先日】2018-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松丸 晃久
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 重之
(72)【発明者】
【氏名】針生 智大
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-222745(JP,A)
【文献】特開2018-003009(JP,A)
【文献】特開2003-155342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/00 - 73/26
C08J 5/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位A及びジアミンに由来する構成単位Bを有するポリイミド樹脂であって、
構成単位Aが下記式(a-1)で表される化合物に由来する構成単位(A-1)を含み、
構成単位Bが下記式(b-1)で表される化合物に由来する構成単位(B-1)と、下記式(b-2-1)で表される化合物に由来する構成単位(B-2-1)、下記式(b-2-2)で表される化合物に由来する構成単位(B-2-2)、及び下記式(b-2-3)で表される化合物に由来する構成単位(B-2-3)からなる群より選ばれる少なくとも1つである構成単位(B-2)とを含
み、
構成単位A中における構成単位(A-1)の比率が99モル%以上であり、
構成単位B中における構成単位(B-1)の比率が10~50モル%であり、
構成単位B中における構成単位(B-2)の比率が50~90モル%である、ポリイミド樹脂。
【化1】
(式(b-1)中、
R
1~R
4は、それぞれ独立して、一価の脂肪族基又は一価の芳香族基であり、
Z
1及びZ
2は、それぞれ独立して、二価の脂肪族基又は二価の芳香族基であり、
rは、正の整数である。)
【請求項2】
構成単位(B-2)が構成単位(B-2-1)である、請求項
1に記載のポリイミド樹脂。
【請求項3】
構成単位(B-2)が構成単位(B-2-2)である、請求項
1に記載のポリイミド樹脂。
【請求項4】
構成単位(B-2)が構成単位(B-2-3)である、請求項
1に記載のポリイミド樹脂。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれかに記載のポリイミド樹脂が有機溶媒に溶解してなるポリイミドワニス。
【請求項6】
請求項1~
4のいずれかに記載のポリイミド樹脂を含む、ポリイミドフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリイミド樹脂、ポリイミドワニス及びポリイミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は、優れた機械的特性及び耐熱性を有することから、電気・電子部品等の分野において様々な利用が検討されている。例えば、液晶ディスプレイやOLEDディスプレイ等の画像表示装置に用いられるガラス基板をプラスチック基板へ代替することが望まれており、当該プラスチック基板として適するポリイミドフィルムの研究も進められている。このような用途のポリイミドフィルムには優れた無色透明性が求められる。
また、表示素子から発せられる光が位相差フィルムや偏光板を通過する画像表示装置(例えば、液晶ディスプレイ)に用いられるプラスチック基板として適するためには、ポリイミドフィルムには、優れた無色透明性だけでなく、優れた光学的等方性も要求される。
【0003】
上記のような要求性能を満たすために、様々なポリイミド樹脂の開発が進められている。例えば、特許文献1には、透明性、耐熱性及び光学的等方性が良好なポリイミド樹脂として、テトラカルボン酸成分として1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物を用い、ジアミン成分として9,9-ビス(3-メチル-4-アミノフェニル)フルオレン及び4,4’-ジアミノジフェニルエーテルを用いて合成されたポリイミド樹脂等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画像表示装置に用いられるガラス基板をプラスチック基板へ代替する目的の1つとしては、デバイスのフレキシブル化が挙げられる。ポリイミド樹脂は、ガラスとの対比で言えば、フレキシビリティーが高い(即ち、弾性率が低い)材料と言える。しかし、一般に、ポリイミド樹脂は主鎖が剛直であることから、他のプラスチック材料と対比すると、弾性率は高い傾向にある。したがって、ポリイミドフィルムをフレキシブル基板として用いるには低弾性率化が1つの課題であるが、優れた無色透明性及び光学的等方性を維持しつつ、それを達成することは容易ではなかった。
本発明は上記の状況に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、無色透明性及び光学的等方性に優れ、かつ弾性率の低いフィルムの形成が可能なポリイミド樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定の構成単位の組み合わせを含むポリイミド樹脂が上記課題を解決できることを見出し、発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明は、下記の[1]~[8]に関する。
[1]
テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位A及びジアミンに由来する構成単位Bを有するポリイミド樹脂であって、
構成単位Aが下記式(a-1)で表される化合物に由来する構成単位(A-1)を含み、
構成単位Bが下記式(b-1)で表される化合物に由来する構成単位(B-1)と、下記式(b-2-1)で表される化合物に由来する構成単位(B-2-1)、下記式(b-2-2)で表される化合物に由来する構成単位(B-2-2)、及び下記式(b-2-3)で表される化合物に由来する構成単位(B-2-3)からなる群より選ばれる少なくとも1つである構成単位(B-2)とを含む、ポリイミド樹脂。
【化1】
(式(b-1)中、
R
1~R
4は、それぞれ独立して、一価の脂肪族基又は一価の芳香族基であり、
Z
1及びZ
2は、それぞれ独立して、二価の脂肪族基又は二価の芳香族基であり、
rは、正の整数である。)
【0008】
[2]
構成単位A中における構成単位(A-1)の比率が50モル%以上である、上記[1]に記載のポリイミド樹脂。
[3]
構成単位B中における構成単位(B-1)の比率が10~50モル%であり、
構成単位B中における構成単位(B-2)の比率が50~90モル%である、上記[1]又は[2]に記載のポリイミド樹脂。
[4]
構成単位(B-2)が構成単位(B-2-1)である、上記[1]~[3]のいずれかに記載のポリイミド樹脂。
[5]
構成単位(B-2)が構成単位(B-2-2)である、上記[1]~[3]のいずれかに記載のポリイミド樹脂。
[6]
構成単位(B-2)が構成単位(B-2-3)である、上記[1]~[3]のいずれかに記載のポリイミド樹脂。
[7]
上記[1]~[6]のいずれかに記載のポリイミド樹脂が有機溶媒に溶解してなるポリイミドワニス。
[8]
上記[1]~[6]のいずれかに記載のポリイミド樹脂を含む、ポリイミドフィルム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、無色透明性及び光学的等方性に優れ、かつ弾性率の低いフィルムを形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[ポリイミド樹脂]
本発明のポリイミド樹脂は、テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位A及びジアミンに由来する構成単位Bを有し、構成単位Aが下記式(a-1)で表される化合物に由来する構成単位(A-1)を含み、構成単位Bが下記式(b-1)で表される化合物に由来する構成単位(B-1)と、下記式(b-2-1)で表される化合物に由来する構成単位(B-2-1)、下記式(b-2-2)で表される化合物に由来する構成単位(B-2-2)、及び下記式(b-2-3)で表される化合物に由来する構成単位(B-2-3)からなる群より選ばれる少なくとも1つである構成単位(B-2)とを含む。
【化2】
(式(b-1)中、
R
1~R
4は、それぞれ独立して、一価の脂肪族基又は一価の芳香族基であり、
Z
1及びZ
2は、それぞれ独立して、二価の脂肪族基又は二価の芳香族基であり、
rは、正の整数である。)
【0011】
<構成単位A>
構成単位Aは、ポリイミド樹脂に占めるテトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位であって、下記式(a-1)で表される化合物に由来する構成単位(A-1)を含む。
【化3】
【0012】
式(a-1)で表される化合物は、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物である。
構成単位Aが構成単位(A-1)を含むことによって、フィルムの無色透明性向上に寄与する。
【0013】
構成単位A中における構成単位(A-1)の比率は、好ましくは50モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上であり、更に好ましくは90モル%以上であり、特に好ましくは99モル%以上である。構成単位(A-1)の比率の上限値は特に限定されず、即ち、100モル%である。構成単位Aは構成単位(A-1)のみからなっていてもよい。
【0014】
構成単位Aは、構成単位(A-1)以外の構成単位を含んでもよい。そのような構成単位を与えるテトラカルボン酸二無水物としては、特に限定されないが、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、9,9’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、及び4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物;1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物及びノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物等の脂環式テトラカルボン酸二無水物(ただし、式(a-1)で表される化合物を除く);並びに1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
なお、本明細書において、芳香族テトラカルボン酸二無水物とは芳香環を1つ以上含むテトラカルボン酸二無水物を意味し、脂環式テトラカルボン酸二無水物とは脂環を1つ以上含み、かつ芳香環を含まないテトラカルボン酸二無水物を意味し、脂肪族テトラカルボン酸二無水物とは芳香環も脂環も含まないテトラカルボン酸二無水物を意味する。
構成単位Aに任意に含まれる構成単位(A-1)以外の構成単位は、1種でもよいし、2種以上であってもよい。
また、本発明のポリイミド樹脂の一態様として、構成単位Aが9,9’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物に由来する構成単位を含まないポリイミド樹脂が挙げられる。
【0015】
<構成単位B>
構成単位Bは、ポリイミド樹脂に占めるジアミンに由来する構成単位であって、下記式(b-1)で表される化合物に由来する構成単位(B-1)と、下記式(b-2-1)で表される化合物に由来する構成単位(B-2-1)、下記式(b-2-2)で表される化合物に由来する構成単位(B-2-2)、及び下記式(b-2-3)で表される化合物に由来する構成単位(B-2-3)からなる群より選ばれる少なくとも1つである構成単位(B-2)とを含む。
【化4】
(式(b-1)中、
R
1~R
4は、それぞれ独立して、一価の脂肪族基又は一価の芳香族基であり、
Z
1及びZ
2は、それぞれ独立して、二価の脂肪族基又は二価の芳香族基であり、
rは、正の整数である。)
【0016】
式(b-1)におけるR1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に一価の脂肪族基又は一価の芳香族基を示し、これらの基は少なくとも一部の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。一価の脂肪族基としては、一価の飽和炭化水素基、一価の不飽和炭化水素基、一価の炭化水素オキシ基等が挙げられる。一価の飽和炭化水素基としては炭素数1~22のアルキル基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基が例示できる。一価の不飽和炭化水素基としては炭素数2~22のアルケニル基が挙げられ、例えば、ビニル基、プロペニル基が例示できる。一価の炭化水素オキシ基としては炭素数1~22のアルコキシ基が挙げられ、例えば、前記で例示したアルキル基に酸素原子が結合してなる1価の基が例示できる。一価の芳香族基としては、炭素数6~24のアリール基、炭素数7~24のアラルキル基、炭素数6~24のアリールオキシ基等が挙げられ、例えば、フェニル基、フェノキシ基等が例示できる。R1、R2、R3及びR4としては、特に、メチル基又はフェニル基が好ましい。
また、Z1及びZ2は、それぞれ独立に二価の脂肪族基又は二価の芳香族基を示し、これらの基は少なくとも一部の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。二価の脂肪族基としては、二価の飽和炭化水素基又は二価の不飽和炭化水素基が挙げられる。二価の飽和炭化水素基としては炭素数1~22のアルキレン基が挙げられ、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基等が例示できる。二価の不飽和炭化水素基としては、炭素数2~22の不飽和炭素水素基が挙げられ、例えば、ビニレン基、プロペニレン基、末端に不飽和二重結合を有するアルキレン基が例示できる。二価の芳香族基としては炭素数6~24のアリーレン基、炭素数7~24のアラルキレン基、炭素数6~24のアリーレンオキシ基等が例示できる。これらの基は芳香環を構成する水素原子の少なくとも一部がアルキル基で置換されていてもよい。Z1及びZ2における炭素数6~24のアリーレン基の具体例としては、o-フェニレン基、m-フェニレン基、p-フェニレン基、4,4’-ビフェニリレン基、2,6-ナフチレン基等が挙げられる。炭素数7~24のアラルキレン基の具体例としては、ベンジレン基、フェネチレン基等が挙げられる。炭素数6~24のアリーレンオキシ基の具体例としては、前記で例示したアリーレン基に酸素原子が結合してなる2価の基が挙げられる。Z1及びZ2としては、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、p-フェニレン基、ベンジレン基が好ましく、トリメチレン基、テトラメチレン基、p-フェニレン基がより好ましい。
また、rは正の整数を示し、2~50の整数であることが好ましい。rが2以上のとき、複数のR1及びR2はそれぞれ、互いに同一でも異なってもよい。
【0017】
式(b-1)で表される化合物としては、1,3-ビス(3-アミノプロピル)-1,1,2,2-テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(3-アミノブチル)-1,1,2,2-テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ビス(4-アミノフェニル)ジシロキサン、1,1,3,3-テトラフェノキシ-1,3-ビス(2-アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3-テトラフェニル-1,3-ビス(2-アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3-テトラフェニル-1,3-ビス(3-アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ビス(2-アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ビス(3-アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ビス(4-アミノブチル)ジシロキサン、1,3-ジメチル-1,3-ジメトキシ-1,3-ビス(4-アミノブチル)ジシロキサン、1,1,3,3,5,5-ヘキサメチル-1,5-ビス(4-アミノフェニル)トリシロキサン、1,1,5,5-テトラフェニル-3,3-ジメチル-1,5-ビス(3-アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,5,5-テトラフェニル-3,3-ジメトキシ-1,5-ビス(4-アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5-テトラフェニル-3,3-ジメトキシ-1,5-ビス(5-アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,5,5-テトラメチル-3,3-ジメトキシ-1,5-ビス(2-アミノエチル)トリシロキサン、1,1,5,5-テトラメチル-3,3-ジメトキシ-1,5-ビス(4-アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5-テトラメチル-3,3-ジメトキシ-1,5-ビス(5-アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5-ヘキサメチル-1,5-ビス(3-アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5-ヘキサエチル-1,5-ビス(3-アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5-ヘキサプロピル-1,5-ビス(3-アミノプロピル)トリシロキサン等が挙げられる。式(b-1)で表される化合物は単独で用いてもよく、又は2種類以上組み合わせて用いてもよい。
式(b-1)で表される化合物の市販品として入手できるものとしては、信越化学工業株式会社製の「X-22-9409」、「X-22-1660B」、「X-22-161AS」、「X-22-161A」、「X-22-161B」等が挙げられる。
構成単位Bが構成単位(B-1)を含むことによって、フィルムの光学的等方性向上及び低弾性率化に寄与する。
【0018】
式(b-2-1)で表される化合物は、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパンである。
式(b-2-2)で表される化合物は、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパンである。
式(b-2-3)で表される化合物は、1-(4-アミノフェニル)-2,3-ジヒドロ-1,3,3-トリメチル-1H-インデン-5-アミンである。
本発明では、構成単位Bが構成単位(B-2)を構成単位(B-1)と組み合せて含むことにより、フィルムのガラス転移温度を制御することができる。構成単位(B-1)は、フィルムの光学的等方性向上及び低弾性率化に寄与するが、他方で、ガラス転移温度を下げるという側面もある。そこで、構成単位Bが構成単位(B-2)を含むことにより、構成単位(B-1)によるガラス転移温度の低下幅を小さくし、フィルムのガラス転移温度を制御することができる。また、優れた無色透明性及び優れた光学的等方性を有するフィルムを得る観点からも、構成単位Bに構成単位(B-2)が含まれることが好ましい。
【0019】
構成単位(B-2)は、構成単位(B-2-1)のみであってもよく、構成単位(B-2-2)のみであってもよく、又は構成単位(B-2-3)のみであってもよい。
また、構成単位(B-2)は、構成単位(B-2-1)と構成単位(B-2-2)の組み合せであってもよく、構成単位(B-2-2)と構成単位(B-2-3)の組み合わせであってもよく、又は構成単位(B-2-1)と構成単位(B-2-3)の組み合せであってもよい。
また、構成単位(B-2)は、構成単位(B-2-1)と構成単位(B-2-2)と構成単位(B-2-3)の組み合せであってもよい。
【0020】
構成単位B中における構成単位(B-1)の比率は、好ましくは10~50モル%であり、より好ましくは10~40モル%であり、更に好ましくは15~30モル%であり、特に好ましくは15~25モル%である。
構成単位B中における構成単位(B-2)の比率は、好ましくは50~90モル%であり、より好ましくは60~90モル%であり、更に好ましくは70~85モル%であり、特に好ましくは75~85モル%である。
構成単位B中における構成単位(B-1)及び構成単位(B-2)の合計の比率は、好ましくは50モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上であり、更に好ましくは90モル%以上であり、特に好ましくは99モル%以上である。構成単位(B-1)及び構成単位(B-2)の合計の比率の上限値は特に限定されず、即ち、100モル%である。構成単位Bは構成単位(B-1)と構成単位(B-2)とのみからなっていてもよい。
【0021】
構成単位Bは構成単位(B-1)及び(B-2)以外の構成単位を含んでもよい。そのような構成単位を与えるジアミンとしては、特に限定されないが、1,4-フェニレンジアミン、p-キシリレンジアミン、3,5-ジアミノ安息香酸、2,2’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジアミン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-アミノフェニル)スルホン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、α,α’-ビス(4-アミノフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)テレフタルアミド、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、及び9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン等の芳香族ジアミン(ただし、式(b-1)で表される化合物、式(b-2-1)で表される化合物、式(b-2-2)で表される化合物及び式(b-2-3)で表される化合物を除く);1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及び1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジアミン;並びにエチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン(ただし、式(b-1)で表される化合物を除く)が挙げられる。
なお、本明細書において、芳香族ジアミンとは芳香環を1つ以上含むジアミンを意味し、脂環式ジアミンとは脂環を1つ以上含み、かつ芳香環を含まないジアミンを意味し、脂肪族ジアミンとは芳香環も脂環も含まないジアミンを意味する。
構成単位Bに任意に含まれる構成単位(B-1)及び(B-2)以外の構成単位は、1種でもよいし、2種以上であってもよい。
【0022】
本発明のポリイミド樹脂の数平均分子量は、得られるポリイミドフィルムの機械的強度の観点から、好ましくは5,000~100,000である。なお、ポリイミド樹脂の数平均分子量は、例えば、ゲルろ過クロマトグラフィー測定による標準ポリメチルメタクリレート(PMMA)換算値より求めることができる。
【0023】
本発明のポリイミド樹脂を用いることで、無色透明性及び光学的等方性に優れ、かつ弾性率の低いフィルムを形成することができる。本発明のポリイミド樹脂を用いることで得られるフィルムの好適な物性値は以下の通りである。
【0024】
引張弾性率は、好ましくは2.1GPa以下であり、より好ましくは2.0GPa以下であり、更に好ましくは1.8GPa以下である。
引張強度は、好ましくは40MPa以上であり、より好ましくは50MPa以上であり、更に好ましくは60MPa以上である。
全光線透過率は、厚さ30μmのフィルムとした際に、好ましくは85%以上であり、より好ましくは88%以上であり、更に好ましくは90%以上である。
ヘイズは、厚さ30μmのフィルムとした際に、好ましくは1.0%以下であり、より好ましくは0.5%以下であり、更に好ましくは0.3%以下である。
イエローインデックス(YI)は、厚さ30μmのフィルムとした際に、好ましくは6.0以下であり、より好ましくは3.0以下であり、更に好ましくは1.5以下である。
厚み位相差(Rth)の絶対値は、厚さ30μmのフィルムとした際に、好ましくは100nm以下であり、より好ましくは50nm以下であり、更に好ましく30nm以下である。
ガラス転移温度(Tg)は、好ましくは150~300℃、より好ましくは150~280℃、更に好ましくは150~250℃である。
なお、本発明における引張弾性率、引張強度、全光線透過率、ヘイズ、イエローインデックス(YI)、厚み位相差(Rth)及びガラス転移温度(Tg)は、具体的には実施例に記載の方法で測定することができる。
【0025】
[ポリイミド樹脂の製造方法]
本発明のポリイミド樹脂は、上述の構成単位(A-1)を与える化合物を含有するテトラカルボン酸成分と、上述の構成単位(B-1)を与える化合物及び上述の構成単位(B-2)を与える化合物を含むジアミン成分とを反応させることにより製造することができる。
【0026】
構成単位(A-1)を与える化合物としては、式(a-1)で表される化合物が挙げられるが、それに限られず、同じ構成単位を与える範囲でその誘導体であってもよい。当該誘導体としては、式(a-1)で表されるテトラカルボン酸二無水物に対応するテトラカルボン酸(即ち、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸)、及び当該テトラカルボン酸のアルキルエステルが挙げられる。構成単位(A-1)を与える化合物としては、式(a-1)で表される化合物(即ち、二無水物)が好ましい。
【0027】
テトラカルボン酸成分は、構成単位(A-1)を与える化合物を、好ましくは50モル%以上含み、より好ましくは70モル%以上含み、更に好ましくは90モル%以上含み、特に好ましくは99モル%以上含む。構成単位(A-1)を与える化合物の含有量の上限値は特に限定されず、即ち、100モル%である。テトラカルボン酸成分は構成単位(A-1)を与える化合物のみからなっていてもよい。
【0028】
テトラカルボン酸成分は、構成単位(A-1)を与える化合物以外の化合物を含んでもよく、当該化合物としては、上述の芳香族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、及び脂肪族テトラカルボン酸二無水物、並びにそれらの誘導体(テトラカルボン酸、テトラカルボン酸のアルキルエステル等)が挙げられる。
テトラカルボン酸成分に任意に含まれる構成単位(A-1)を与える化合物以外の化合物は、1種でもよいし、2種以上であってもよい。
【0029】
構成単位(B-1)を与える化合物としては、式(b-1)で表される化合物が挙げられるが、それに限られず、同じ構成単位を与える範囲でその誘導体であってもよい。当該誘導体としては、式(b-1)で表されるジアミンに対応するジイソシアネートが挙げられる。構成単位(B-1)を与える化合物としては、式(b-1)で表される化合物(即ち、ジアミン)が好ましい。
【0030】
構成単位(B-2)を与える化合物としては、構成単位(B-2-1)を与える化合物、構成単位(B-2-2)を与える化合物、及び構成単位(B-2-3)を与える化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つを用いる。
構成単位(B-2-1)を与える化合物、構成単位(B-2-2)を与える化合物、及び構成単位(B-2-3)を与える化合物としては、それぞれ、式(b-2-1)で表される化合物、式(b-2-2)で表される化合物、及び式(b-2-3)で表される化合物が挙げられるが、それらに限られず、同じ構成単位を与える範囲でそれらの誘導体であってもよい。当該誘導体としては、式(b-2-1)で表される化合物で表されるジアミンに対応するジイソシアネート、式(b-2-2)で表される化合物で表されるジアミンに対応するジイソシアネート、及び式(b-2-3)で表される化合物で表されるジアミンに対応するジイソシアネートが挙げられる。構成単位(B-2-1)を与える化合物、構成単位(B-2-2)を与える化合物、及び構成単位(B-2-3)を与える化合物としては、それぞれ、式(b-2-1)で表される化合物(即ち、ジアミン)、式(b-2-2)で表される化合物(即ち、ジアミン)、及び式(b-2-3)で表される化合物(即ち、ジアミン)が好ましい。
【0031】
構成単位(B-2)を与える化合物として、構成単位(B-2-1)を与える化合物のみを用いてもよく、構成単位(B-2-2)を与える化合物のみを用いてもよく、又は構成単位(B-2-3)を与える化合物のみを用いてもよい。
また、構成単位(B-2)を与える化合物として、構成単位(B-2-1)を与える化合物と構成単位(B-2-2)を与える化合物の組み合せを用いてもよく、構成単位(B-2-2)を与える化合物と構成単位(B-2-3)を与える化合物の組み合わせを用いてもよく、又は構成単位(B-2-1)を与える化合物と構成単位(B-2-3)を与える化合物の組み合せを用いてもよい。
また、構成単位(B-2)を与える化合物として、構成単位(B-2-1)を与える化合物と構成単位(B-2-2)を与える化合物と構成単位(B-2-3)を与える化合物の組み合せを用いてもよい。
【0032】
ジアミン成分は、構成単位(B-1)を与える化合物を、好ましくは10~50モル%含み、より好ましくは10~40モル%含み、更に好ましくは15~30モル%含み、特に好ましくは15~25モル%含む。
ジアミン成分は、構成単位(B-2)を与える化合物を、好ましくは50~90モル%含み、より好ましくは60~90モル%含み、更に好ましくは70~85モル%含み、特に好ましくは75~85モル%含む。
ジアミン成分は、構成単位(B-1)を与える化合物及び構成単位(B-2)を与える化合物を合計で、好ましくは50モル%以上含み、より好ましくは70モル%以上含み、更に好ましくは90モル%以上含み、特に好ましくは99モル%以上含む。構成単位(B-1)を与える化合物及び構成単位(B-2)を与える化合物の合計の含有量の上限値は特に限定されず、即ち、100モル%である。ジアミン成分は構成単位(B-1)を与える化合物と構成単位(B-2)を与える化合物とのみからなっていてもよい。
【0033】
ジアミン成分は構成単位(B-1)を与える化合物及び構成単位(B-2)を与える化合物以外の化合物を含んでもよく、当該化合物としては、上述の芳香族ジアミン、脂環式ジアミン、及び脂肪族ジアミン、並びにそれらの誘導体(ジイソシアネート等)が挙げられる。
ジアミン成分に任意に含まれる構成単位(B-1)を与える化合物及び構成単位(B-2)を与える化合物以外の化合物は、1種でもよいし、2種以上であってもよい。
【0034】
本発明において、ポリイミド樹脂の製造に用いるテトラカルボン酸成分とジアミン成分の仕込み量比は、テトラカルボン酸成分1モルに対してジアミン成分が0.9~1.1モルであることが好ましい。
【0035】
また、本発明において、ポリイミド樹脂の製造には、前述のテトラカルボン酸成分及びジアミン成分の他に、末端封止剤を用いてもよい。末端封止剤としてはモノアミン類あるいはジカルボン酸類が好ましい。導入される末端封止剤の仕込み量としては、テトラカルボン酸成分1モルに対して0.0001~0.1モルが好ましく、特に0.001~0.06モルが好ましい。モノアミン類末端封止剤としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、4-メチルベンジルアミン、4-エチルベンジルアミン、4-ドデシルベンジルアミン、3-メチルベンジルアミン、3-エチルベンジルアミン、アニリン、3-メチルアニリン、4-メチルアニリン等が推奨される。これらのうち、ベンジルアミン、アニリンが好適に使用できる。ジカルボン酸類末端封止剤としては、ジカルボン酸類が好ましく、その一部を閉環していてもよい。例えば、フタル酸、無水フタル酸、4-クロロフタル酸、テトラフルオロフタル酸、2,3-ベンゾフェノンジカルボン酸、3,4-ベンゾフェノンジカルボン酸、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、シクロペンタン-1,2-ジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸等が推奨される。これらのうち、フタル酸、無水フタル酸が好適に使用できる。
【0036】
前述のテトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させる方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
具体的な反応方法としては、(1)テトラカルボン酸成分、ジアミン成分、及び反応溶剤を反応器に仕込み、室温~80℃で0.5~30時間撹拌し、その後に昇温してイミド化反応を行う方法、(2)ジアミン成分及び反応溶剤を反応器に仕込んで溶解させた後、テトラカルボン酸成分を仕込み、必要に応じて室温~80℃で0.5~30時間撹拌し、その後に昇温してイミド化反応を行う方法、(3)テトラカルボン酸成分、ジアミン成分、及び反応溶剤を反応器に仕込み、直ちに昇温してイミド化反応を行う方法等が挙げられる。
【0037】
ポリイミド樹脂の製造に用いられる反応溶剤は、イミド化反応を阻害せず、生成するポリイミドを溶解できるものであればよい。例えば、非プロトン性溶剤、フェノール系溶剤、エーテル系溶剤、カーボネート系溶剤等が挙げられる。
【0038】
非プロトン性溶剤の具体例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、1,3-ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチル尿素等のアミド系溶剤、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等のラクトン系溶剤、ヘキサメチルホスホリックアミド、ヘキサメチルホスフィントリアミド等の含リン系アミド系溶剤、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ピコリン、ピリジン等のアミン系溶剤、酢酸(2-メトキシ-1-メチルエチル)等のエステル系溶剤等が挙げられる。
【0039】
フェノール系溶剤の具体例としては、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール等が挙げられる。
エーテル系溶剤の具体例としては、1,2-ジメトキシエタン、ビス(2-メトキシエチル)エーテル、1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン、ビス〔2-(2-メトキシエトキシ)エチル〕エーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等が挙げられる。
また、カーボネート系溶剤の具体的な例としては、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。
上記反応溶剤の中でも、アミド系溶剤又はラクトン系溶剤が好ましい。また、上記の反応溶剤は単独で又は2種以上混合して用いてもよい。
【0040】
イミド化反応では、ディーンスターク装置などを用いて、製造時に生成する水を除去しながら反応を行うことが好ましい。このような操作を行うことで、重合度及びイミド化率をより上昇させることができる。
【0041】
上記のイミド化反応においては、公知のイミド化触媒を用いることができる。イミド化触媒としては、塩基触媒又は酸触媒が挙げられる。
塩基触媒としては、ピリジン、キノリン、イソキノリン、α-ピコリン、β-ピコリン、2,4-ルチジン、2,6-ルチジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、イミダゾール、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン等の有機塩基触媒、水酸化カリウムや水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基触媒が挙げられる。
また、酸触媒としては、クロトン酸、アクリル酸、トランス-3-ヘキセノイック酸、桂皮酸、安息香酸、メチル安息香酸、オキシ安息香酸、テレフタル酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等が挙げられる。上記のイミド化触媒は単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のうち、取り扱い性の観点から、塩基触媒を用いることが好ましく、有機塩基触媒を用いることがより好ましく、トリエチルアミンを用いることが更に好ましく、トリエチルアミンとトリエチレンジアミンを組み合わせて用いること特に好ましい。
【0042】
イミド化反応の温度は、反応率及びゲル化等の抑制の観点から、好ましくは120~250℃、より好ましくは160~200℃である。また、反応時間は、生成水の留出開始後、好ましくは0.5~10時間である。
【0043】
[ポリイミドワニス]
本発明のポリイミドワニスは、本発明のポリイミド樹脂が有機溶媒に溶解してなるものである。即ち、本発明のポリイミドワニスは、本発明のポリイミド樹脂及び有機溶媒を含み、当該ポリイミド樹脂は当該有機溶媒に溶解している。
有機溶媒はポリイミド樹脂が溶解するものであればよく、特に限定されないが、ポリイミド樹脂の製造に用いられる反応溶剤として上述した化合物を、単独又は2種以上を混合して用いることが好ましい。
本発明のポリイミドワニスは、重合法により得られるポリイミド樹脂が反応溶剤に溶解したポリイミド溶液そのものであってもよいし、又は当該ポリイミド溶液に対して更に希釈溶剤を追加したものであってもよい。
【0044】
本発明のポリイミド樹脂は溶媒溶解性を有しているため、室温で安定な高濃度のワニスとすることができる。本発明のポリイミドワニスは、本発明のポリイミド樹脂を5~40質量%含むことが好ましく、10~30質量%含むことがより好ましい。ポリイミドワニスの粘度は1~200Pa・sが好ましく、5~150Pa・sがより好ましい。ポリイミドワニスの粘度は、E型粘度計を用いて25℃で測定された値である。
また、本発明のポリイミドワニスは、ポリイミドフィルムの要求特性を損なわない範囲で、無機フィラー、接着促進剤、剥離剤、難燃剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、レベリング剤、消泡剤、蛍光増白剤、架橋剤、重合開始剤、感光剤等各種添加剤を含んでもよい。すなわち、本発明のポリイミド樹脂は、必要に応じて前記の添加剤を添加した樹脂組成物として構成されていてもよい。
本発明のポリイミドワニスの製造方法は特に限定されず、公知の方法を適用することができる。
【0045】
前記添加剤として例示した紫外線吸収剤は、任意の適切な紫外線吸収剤を採用することができる。その具体例としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、無機粒子系紫外線吸収剤、その他、蓚酸アニリド系紫外線吸収剤やマロン酸エステル系紫外線吸収剤等の有機系紫外線吸収剤が挙げられる。紫外線吸収剤は1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。中でも、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤およびトリアジン系紫外線吸収剤が好ましく、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤がより好ましい。
【0046】
樹脂組成物における紫外線吸収剤の添加量は、本発明のポリイミド樹脂100質量部に対して好ましくは、0.01~6質量部、より好ましくは0.1~5質量部、更に好ましくは0.5~4質量部である。紫外線吸収剤の量が多いと、光学特性や耐熱性等のポリイミド樹脂の特性が低下したり、フィルムにヘイズが生じたりすることがある。
本発明において、紫外線吸収剤は、樹脂組成物中において紫外線吸収剤の効果を達成できるものである。従って、紫外線吸収剤として添加した化合物がそのままの構造で樹脂組成物中に存在していてもよく、あるいは当該化合物が、加熱処理によって、紫外線吸収の効果を依然として有する変性物に変性されていてもよい。また、紫外線吸収剤は、樹脂組成物中で本発明のポリイミド樹脂と均一に混合されていることが好ましい。
【0047】
[ポリイミドフィルム]
本発明のポリイミドフィルムは、本発明のポリイミド樹脂を含む。したがって、本発明のポリイミドフィルムは、無色透明性及び光学的等方性に優れており、かつ弾性率が低い。本発明のポリイミドフィルムが有する好適な物性値は上述の通りである。
本発明のポリイミドフィルムの製造方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、本発明のポリイミドワニスを、ガラス板、金属板、プラスチックなどの平滑な支持体上に塗布、又はフィルム状に成形した後、該ワニス中に含まれる反応溶剤や希釈溶剤等の有機溶媒を加熱により除去する方法等が挙げられる。前記支持体の表面には、必要に応じて、予め離形剤を塗布しておいてもよい。
ワニス中に含まれる有機溶媒を加熱により除去する方法としては、以下の方法が好ましい。即ち、120℃以下の温度で有機溶媒を蒸発させて自己支持性フィルムとした後、該自己支持性フィルムを支持体より剥離し、該自己支持性フィルムの端部を固定し、用いた有機溶媒の沸点以上の温度で乾燥してポリイミドフィルムを製造することが好ましい。また、窒素雰囲気下で乾燥することが好ましい。乾燥雰囲気の圧力は、減圧、常圧、加圧のいずれでもよい。自己支持性フィルムを乾燥してポリイミドフィルムを製造する際の加熱温度は、特に限定されないが、200~400℃が好ましい。
【0048】
本発明のポリイミドフィルムの厚みは用途等に応じて適宜選択することができるが、好ましくは1~250μm、より好ましくは5~100μm、更に好ましくは10~80μmの範囲である。厚みが1~250μmであることで、自立膜としての実用的な使用が可能となる。
ポリイミドフィルムの厚みは、ポリイミドワニスの固形分濃度や粘度を調整することにより、容易に制御することができる。
【0049】
本発明のポリイミドフィルムは、カラーフィルター、フレキシブルディスプレイ、半導体部品、光学部材等の各種部材用のフィルムとして好適に用いられる。本発明のポリイミドフィルムは、液晶ディスプレイやOLEDディスプレイ等の画像表示装置の基板として、特に好適に用いられる。
【実施例】
【0050】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
実施例及び比較例で得たポリイミドワニスの固形分濃度及びポリイミドフィルムの各物性は以下に示す方法によって測定した。
【0051】
(1)固形分濃度
固形分濃度は、アズワン株式会社製の小型電気炉「MMF-1」で試料を320℃×120minで加熱して、加熱前後の試料の質量差から算出した。
(2)フィルム厚さ
フィルム厚さは、株式会社ミツトヨ製のマイクロメーターを用いて測定した。
(3)引張弾性率、引張強度
引張弾性率及び引張強度は、JIS K7127に準拠し、東洋精機株式会社製の引張試験機「ストログラフVG-1E」を用いて測定した。
(4)全光線透過率、イエローインデックス(YI)、ヘイズ
全光線透過率、YI及びヘイズは、日本電色工業株式会社製の色彩・濁度同時測定器「COH400」を用いて測定した。全光線透過率及びYIの測定はJIS K7361-1:1997に準拠し、ヘイズの測定はJIS K7136:2000に準拠した
(5)厚み位相差(Rth)
厚み位相差(Rth)は、日本分光株式会社製のエリプソメーター「M-220」を用いて測定した。測定波長550nmにおける、厚み位相差の値を測定した。なおRthは、ポリイミドフィルムの面内の屈折率のうち最大のものをnx、最小のものをnyとし、厚み方向の屈折率をnzとし、フィルムの厚みをdとしたとき、下記式によって表されるものである。
Rth=[{(nx+ny)/2}-nz]×d
(6)ガラス転移温度(Tg)
株式会社日立ハイテクサイエンス製の熱機械的分析装置「TMA/SS6100」を用いて、引張モードで試料サイズ2mm×20mm、荷重0.1N、昇温速度10℃/minの条件で、残留応力を取り除くのに十分な温度まで昇温して残留応力を取り除き、その後室温まで冷却した。その後、前記残留応力を取り除くための処理と同じ条件で試験片伸びの測定の測定を行い、伸びの変曲点が見られたところをガラス転移温度として求めた。
【0052】
実施例及び比較例にて使用したテトラカルボン酸成分及びジアミン成分、並びにその略号は以下の通りである。
<テトラカルボン酸成分>
HPMDA:1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(三菱ガス化学株式会社製;式(a-1)で表される化合物)
<ジアミン成分>
X-22-9409:両末端アミノ変性シリコーンオイル「X-22-9409」(信越化学工業株式会社製;式(b-1)で表される化合物)
HFBAPP:2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン(セイカ株式会社製;式(b-2-1)で表される化合物)
BAPP:2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(セイカ株式会社製;式(b-2-2)で表される化合物)
TMDA:1-(4-アミノフェニル)-2,3-ジヒドロ-1,3,3-トリメチル-1H-インデン-5-アミン(日本純良薬品株式会社製;式(b-2-3)で表される化合物)
BAPS:ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン(セイカ株式会社製)
【0053】
<実施例1>
ステンレス製半月型撹拌翼、窒素導入管、冷却管を取り付けたディーンスターク、温度計、ガラス製エンドキャップを備えた0.3Lの5ツ口ガラス製丸底フラスコ中で、HFBAPPを29.034g(0.056モル)、X-22-9409を18.76g(0.014モル)、γ-ブチロラクトン(三菱ケミカル株式会社製)を50g、及び触媒としてトリエチレンジアミン(東京化成工業株式会社製)を0.039g、トリエチルアミン(関東化学株式会社製)を3.54g、窒素雰囲気下、200rpmで撹拌して溶液を得た。この溶液に、HPMDAを15.692g(0.070モル)とγ-ブチロラクトン(三菱ケミカル株式会社製)を13.5g、それぞれ一括で加えた後、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を200℃まで上げた。留去される成分を捕集し、反応系内温度を200℃に3時間維持した。N,N-ジメチルアセトアミド(三菱ガス化学株式会社製)を78.76g添加後、100℃付近で約1時間撹拌して、固形分濃度30質量%の均一なポリイミドワニスを得た。
【0054】
続いて、得られたポリイミドワニスをPET基板上に塗布し、100℃で30分保持し、溶媒を揮発させることで自己支持性を有する無色透明な一次乾燥フィルムを得た。更に該フィルムをステンレス枠に固定し、230℃で窒素雰囲気下、2時間乾燥することにより溶媒を除去し、厚み30μmのフィルムを得た。得られたフィルムのFT-IR分析により原料ピークの消失及びイミド骨格に由来するピークの出現を確認した。このポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
【0055】
<実施例2>
ステンレス製半月型撹拌翼、窒素導入管、冷却管を取り付けたディーンスターク、温度計、ガラス製エンドキャップを備えた0.5Lの5ツ口ガラス製丸底フラスコ中で、BAPPを65.683g(0.160モル)、X-22-9409を53.600g(0.040モル)、γ-ブチロラクトン(三菱ケミカル株式会社製)を200g、及び触媒として、トリエチルアミン(関東化学株式会社製)を10.12g、窒素雰囲気下、200rpmで撹拌して溶液を得た。この溶液に、HPMDAを144.834g(0.200モル)とγ-ブチロラクトン(三菱ケミカル株式会社製)を46.2g、それぞれ一括で加えた後、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を200℃まで上げた。留去される成分を捕集し、反応系内温度を200℃に5時間維持した。N,N-ジメチルアセトアミド(三菱ガス化学株式会社製)を120.0g添加後、100℃付近で約1時間撹拌して、固形分濃度30質量%の均一なポリイミドワニスを得た。
【0056】
続いて、得られたポリイミドワニスをPET基板上に塗布し、100℃で30分保持し、溶媒を揮発させることで自己支持性を有する無色透明な一次乾燥フィルムを得た。更に該フィルムをステンレス枠に固定し、230℃で窒素雰囲気下、2時間乾燥することにより溶媒を除去し、厚み30μmのフィルムを得た。得られたフィルムのFT-IR分析により原料ピークの消失及びイミド骨格に由来するピークの出現を確認した。このポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
【0057】
<実施例3>
ステンレス製半月型撹拌翼、窒素導入管、冷却管を取り付けたディーンスターク、温度計、ガラス製エンドキャップを備えた0.5Lの5ツ口ガラス製丸底フラスコ中で、TMDAを14.906g(0.056モル)、X-22-9409を18.76g(0.014モル)、γ-ブチロラクトン(三菱ケミカル株式会社製)を30g、及び触媒として、トリエチレンジアミン(東京化成工業株式会社製)を0.031g、トリエチルアミン(関東化学株式会社製)を3.54g、窒素雰囲気下、200rpmで撹拌して溶液を得た。この溶液に、HPMDAを15.692g(0.070モル)とγ-ブチロラクトン(三菱ケミカル株式会社製)を10.4g、をそれぞれ一括で加えた後、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を200℃まで上げた。留去される成分を捕集し、反応系内温度を200℃で2.5時間保持したところでγ-ブチロラクトン(三菱ケミカル株式会社製)を10.91g添加し、さらに50分撹拌を続けた。その後γ-ブチロラクトン(三菱ケミカル株式会社製)を10.7g添加し、75分撹拌を続けた。その後、γ-ブチロラクトン(三菱ケミカル株式会社製)を13.9g添加し、4時間撹拌を続けた。最後にN,N-ジメチルアセトアミド(三菱ガス化学株式会社製)を35.24g添加し、100℃付近で約1時間撹拌して、固形分濃度30質量%の均一なポリイミドワニスを得た。
【0058】
続いて、得られたポリイミドワニスをPET基板上に塗布し、100℃で30分保持し、溶媒を揮発させることで自己支持性を有する無色透明な一次乾燥フィルムを得た。さらに該フィルムをステンレス枠に固定し、230℃で窒素雰囲気下、2時間乾燥することにより溶媒を除去し、厚み24μmのフィルムを得た。得られたフィルムのFT-IR分析により原料ピークの消失及びイミド骨格に由来するピークの出現を確認した。このポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
【0059】
<実施例4>
ステンレス製半月型撹拌翼、窒素導入管、冷却管を取り付けたディーンスターク、温度計、ガラス製エンドキャップを備えた3.0Lの5ツ口ガラス製丸底フラスコ中で、HFBAPPを355.41g(0.684モル)、X-22-9409を295.347g(0.216モル)、γ-ブチロラクトン(三菱ケミカル株式会社製)を500g、及び触媒として、トリエチレンジアミン(東京化成工業株式会社製)を0.501g、トリエチルアミン(関東化学株式会社製)を45.54g、窒素雰囲気下、150rpmで撹拌して溶液を得た。この溶液に、HPMDAを201.96g(0.900モル)とγ-ブチロラクトン(三菱ケミカル株式会社製)を192.0g、をそれぞれ一括で加えた後、マントルヒーターで加熱し、約50分かけて反応系内温度を200℃まで上げた。留去される成分を捕集し、反応系内温度を200℃で3.75時間保持した。最後にN,N-ジメチルアセトアミド(三菱ガス化学株式会社製)を1205.9g添加し、100℃付近で約1時間撹拌して、固形分濃度30質量%の均一なポリイミドワニスを得た。
続いて、得られたポリイミドワニスをPET基板上に塗布し、100℃で30分保持し、溶媒を揮発させることで自己支持性を有する無色透明な一次乾燥フィルムを得た。さらに該フィルムをステンレス枠に固定し、190℃で空気雰囲気下、20分間乾燥することにより溶媒を除去し、厚み38μmのフィルムを得た。得られたフィルムのFT-IR分析により原料ピークの消失及びイミド骨格に由来するピークの出現を確認した。このポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
【0060】
<実施例5>
ステンレス製半月型撹拌翼、窒素導入管、冷却管を取り付けたディーンスターク、温度計、ガラス製エンドキャップを備えた0.3Lの5ツ口ガラス製丸底フラスコ中で、HFBAPPを28.708g(0.055モル)、X-22-9409を12.870g(0.010モル)、γ-ブチロラクトン(三菱ケミカル株式会社製)を44.9g、及び触媒としてトリエチレンジアミン(東京化成工業株式会社製)を0.036g、トリエチルアミン(関東化学株式会社製)を3.29g、窒素雰囲気下、200rpmで撹拌して溶液を得た。この溶液に、HPMDAを14.586g(0.065モル)とγ-ブチロラクトン(三菱ケミカル株式会社製)を11.2g、それぞれ一括で加えた後、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を180℃まで上げた。留去される成分を捕集し、反応系内温度を180℃に4時間維持した。N,N-ジメチルアセトアミド(三菱ガス化学株式会社製)を69.3g添加後、100℃付近で約1時間撹拌して、固形分濃度30質量%の均一なポリイミドワニスを得た。
続いて、得られたポリイミドワニスをPET基板上に塗布し、100℃で30分保持し、溶媒を揮発させることで自己支持性を有する無色透明な一次乾燥フィルムを得た。更に該フィルムをステンレス枠に固定し、240℃で空気雰囲気下、10分乾燥したのち、250℃空気雰囲気下、10分さらに乾燥することにより溶媒を除去し、厚み36μmのフィルムを得た。得られたフィルムのFT-IR分析により原料ピークの消失及びイミド骨格に由来するピークの出現を確認した。このポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
【0061】
<実施例6>
実施例1と同様の方法で得られたポリイミドワニスに、紫外線吸収剤としてTinuvin234(BASFジャパン株式会社製、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)をポリイミド樹脂100質量部に対して0.5質量部添加した以外は、実施例1と同じ手法にて厚み33μmのフィルムを得た。このポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
【0062】
<実施例7>
実施例1と同様の方法で得られたポリイミドワニスに、紫外線吸収剤としてTinuvin234(BASFジャパン株式会社製、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)をポリイミド樹脂100質量部に対して4.0質量部添加した以外は、実施例1と同じ手法にて厚み25μmのフィルムを得た。このポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
【0063】
<比較例1>
ステンレス製半月型撹拌翼、窒素導入管、冷却管を取り付けたディーンスターク、温度計、ガラス製エンドキャップを備えた0.3Lの5ツ口ガラス製丸底フラスコ中で、HFBAPPを41.477g(0.080モル)、γ-ブチロラクトン(三菱ケミカル株式会社製)を70g、及び触媒として、トリエチルアミン(関東化学株式会社製)を0.405g、窒素雰囲気下、200rpmで撹拌して溶液を得た。この溶液に、HPMDAを17.952g(0.080モル)とγ-ブチロラクトン(三菱ケミカル株式会社製)を19.1g、それぞれ一括で加えた後、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を180℃まで上げた。留去される成分を捕集し、反応系内温度を180℃で4時間保持したところでN,N-ジメチルアセトアミド(三菱ガス化学株式会社製)を89.12g添加し、100℃付近で約1時間撹拌して、固形分濃度20質量%の均一なポリイミドワニスを得た。
【0064】
続いて、得られたポリイミドワニスをPET基板上に塗布し、100℃で30分保持し、溶媒を揮発させることで自己支持性を有する無色透明な一次乾燥フィルムを得た。更に該フィルムをステンレス枠に固定し、230℃で窒素雰囲気下、2時間乾燥することにより溶媒を除去し、厚み35μmのフィルムを得た。得られたフィルムのFT-IR分析により原料ピークの消失及びイミド骨格に由来するピークの出現を確認した。このポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。なお、このポリイミドフィルムについては、Tgは測定しなかった。
【0065】
<比較例2>
ステンレス製半月型撹拌翼、窒素導入管、冷却管を取り付けたディーンスターク、温度計、ガラス製エンドキャップを備えた0.3Lの5ツ口ガラス製丸底フラスコ中で、BAPSを20.76g(0.048モル)、X-22-9409を16.408g(0.012モル)、γ-ブチロラクトン(三菱ケミカル株式会社製)を32g、及び触媒としてトリエチルアミン(関東化学株式会社製)を3.04g、窒素雰囲気下、200rpmで撹拌して溶液を得た。この溶液に、HPMDAを13.450g(0.060モル)とγ-ブチロラクトン(三菱ケミカル株式会社製)を18g、それぞれ一括で加えた後、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を200℃まで上げた。留去される成分を捕集し、反応系内温度を200℃に3.5時間維持した。N,N-ジメチルアセトアミド(三菱ガス化学株式会社製)を62.0g添加後、100℃付近で約1時間撹拌して、固形分濃度30質量%の均一なポリイミドワニスを得た。
【0066】
続いて、得られたポリイミドワニスをPET基板上に塗布し、100℃で30分保持し、溶媒を揮発させることで自己支持性を有する無色透明な一次乾燥フィルムを得た。更に該フィルムをステンレス枠に固定し、230℃で窒素雰囲気下、2時間乾燥することにより溶媒を除去し、厚み46μmのフィルムを得た。得られたフィルムのFT-IR分析により原料ピークの消失及びイミド骨格に由来するピークの出現を確認した。このポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
【0067】
【0068】
表1に示されるように、実施例1~7のフィルムは、無色透明性及び光学的等方性に優れ、かつ弾性率が低かった。
実施例1のフィルムと比較例1のフィルムとの対比から、ポリイミド樹脂が構成単位(B-1)を含むことによる、弾性率の低下が確認された。
実施例1~7のフィルムと比較例2のフィルムとの対比から、ポリイミド樹脂が構成単位(B-2)を含むことによる、優れた無色透明性の発現が確認された。
また、実施例1のフィルムと比較例1のフィルムとの対比から、ポリイミド樹脂が構成単位(B-1)を含むことによるフィルムの光学的等方性の向上が確認され、実施例1~7のフィルムと比較例2のフィルムとの対比から、ポリイミド樹脂が構成単位(B-1)と構成単位(B-2)の両方を含むことによる、特に優れた光学的等方性の発現が確認された。