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特許7306428共焦点スキャナ、共焦点スキャナシステム、及び共焦点顕微鏡システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】共焦点スキャナ、共焦点スキャナシステム、及び共焦点顕微鏡システム
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/06 20060101AFI20230704BHJP
   G02B 21/00 20060101ALI20230704BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
G02B21/06
G02B21/00
G01N21/64 E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021094657
(22)【出願日】2021-06-04
(65)【公開番号】P2022186436
(43)【公開日】2022-12-15
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(74)【代理人】
【識別番号】100202326
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】景 虹之
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-085759(JP,A)
【文献】特開2011-090145(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0094261(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0061857(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 19/00 - 21/36
G01N 21/62 - 21/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1ピンホールがアレイ状に配置されている第1ピンホールアレイディスクと、
複数の第2ピンホールがアレイ状に配置されている第2ピンホールアレイディスクと、
複数の集光素子がアレイ状に配置されている集光素子アレイディスクであって、前記第1ピンホールアレイディスクと前記第2ピンホールアレイディスクとの間に位置する前記集光素子アレイディスクと、
前記第1ピンホールアレイディスク、前記第2ピンホールアレイディスク、及び前記集光素子アレイディスクを連結する連結軸と、
前記連結軸と共に前記第1ピンホールアレイディスク、前記第2ピンホールアレイディスク、及び前記集光素子アレイディスクを回転させるモータと、
を備え、
前記第1ピンホールアレイディスクは、前記集光素子アレイディスクにおける一の前記集光素子の第1焦点面に一の前記第1ピンホールが位置するように前記連結軸に取り付けられ、
前記第2ピンホールアレイディスクは、前記集光素子アレイディスクにおける一の前記集光素子の第2焦点面に一の前記第2ピンホールが位置するように前記連結軸に取り付けられ、
前記第1ピンホールの径と前記第2ピンホールの径とは互いに異なる、
共焦点スキャナ。
【請求項2】
前記第1ピンホールアレイディスクと前記集光素子アレイディスクとの間、及び前記第2ピンホールアレイディスクと前記集光素子アレイディスクとの間の少なくとも一方に配置されている分岐素子をさらに備える、
請求項1に記載の共焦点スキャナ。
【請求項3】
前記複数の第1ピンホールは、前記第1ピンホールアレイディスクにおいて等ピッチでかつ螺旋状に配置され、
前記複数の第2ピンホールは、前記第2ピンホールアレイディスクにおいて等ピッチでかつ螺旋状に配置されている、
請求項1又は2に記載の共焦点スキャナ。
【請求項4】
前記第1ピンホールアレイディスクにおける前記複数の第1ピンホールの配置と前記第2ピンホールアレイディスクにおける前記複数の第2ピンホールの配置とは互いに同一である、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の共焦点スキャナ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の共焦点スキャナと、
前記第1ピンホールアレイディスクと前記集光素子アレイディスクとの組み合わせである第1共焦点スキャナを含む第1光学系であって、前記第1共焦点スキャナを通過して試料を含む顕微鏡まで照射光を導き、かつ第1共焦点像に寄与する、前記照射光に基づく前記試料からの被測定光を検出器まで導く前記第1光学系と、
前記第2ピンホールアレイディスクと前記集光素子アレイディスクとの組み合わせである第2共焦点スキャナを含む第2光学系であって、前記第2共焦点スキャナを通過して前記顕微鏡まで前記照射光を導き、かつ第2共焦点像に寄与する、前記照射光に基づく前記試料からの前記被測定光を前記検出器まで導く前記第2光学系と、
を備える、
共焦点スキャナシステム。
【請求項6】
前記第1光学系は、複数の可動ミラーを含み、
前記複数の可動ミラーの各々が光路に寄与しない位置に移動することで前記第1光学系から前記第2光学系へと切り替わる、
請求項5に記載の共焦点スキャナシステム。
【請求項7】
前記第1光学系は、前記第1ピンホールアレイディスクのピンホール面と、前記顕微鏡の像面と、を共役関係に結ぶ第1組のリレーレンズと、前記第1ピンホールアレイディスクのピンホール面と、前記検出器の受光面と、を共役関係に結ぶ第2組のリレーレンズと、を含む、
請求項5又は6に記載の共焦点スキャナシステム。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか1項に記載の共焦点スキャナシステムと、
前記共焦点スキャナシステムに入射する前記照射光を照射する光源と、
前記照射光が照射される前記試料を含む前記顕微鏡と、
前記試料からの前記被測定光を検出する前記検出器と、
を備える、
共焦点顕微鏡システム。
【請求項9】
前記顕微鏡が有する対物レンズの倍率に合わせて前記第1光学系及び前記第2光学系のいずれか一方が用いられる、
請求項8に記載の共焦点顕微鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、共焦点スキャナ、共焦点スキャナシステム、及び共焦点顕微鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、共焦点顕微鏡システムにおいて用いられる、マイクロレンズ付きニポウディスク方式の共焦点スキャナに関する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ピンホール径が互いに異なるピンホールアレイディスクを照明光の光路にかかる位置と、光路から退避させる位置との間で交互に切り替えて、マイクロレンズアレイディスクとそれぞれ組み合わせた2種類のディスクユニットを提供可能な共焦点光スキャナが記載されている。このような共焦点光スキャナにより、ピンホール径が可変となるマイクロレンズ付きニポウディスク方式の共焦点スキャナが実現される。したがって、顕微鏡における対物レンズの倍率に合わせてピンホール径を変更することで共焦点性を維持して精細な画像を得ることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-085759号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来技術では2種類のディスクユニットが必要となり、コストが増加する。また、高速回転するディスクユニットを可動機構に取り付けるため、可動機構に関する設計が複雑となる。その結果、精密部品の点数が増加し、コストがさらに増加する。
【0006】
本開示は、複雑な可動機構を必要とせずコストを低減した状態でピンホール径を変更可能な共焦点スキャナ、共焦点スキャナシステム、及び共焦点顕微鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
幾つかの実施形態に係る共焦点スキャナは、複数の第1ピンホールがアレイ状に配置されている第1ピンホールアレイディスクと、複数の第2ピンホールがアレイ状に配置されている第2ピンホールアレイディスクと、複数の集光素子がアレイ状に配置されている集光素子アレイディスクであって、前記第1ピンホールアレイディスクと前記第2ピンホールアレイディスクとの間に位置する前記集光素子アレイディスクと、前記第1ピンホールアレイディスク、前記第2ピンホールアレイディスク、及び前記集光素子アレイディスクを連結する連結軸と、前記連結軸と共に前記第1ピンホールアレイディスク、前記第2ピンホールアレイディスク、及び前記集光素子アレイディスクを回転させるモータと、を備え、前記第1ピンホールアレイディスクは、前記集光素子アレイディスクにおける一の前記集光素子の第1焦点面に一の前記第1ピンホールが位置するように前記連結軸に取り付けられ、前記第2ピンホールアレイディスクは、前記集光素子アレイディスクにおける一の前記集光素子の第2焦点面に一の前記第2ピンホールが位置するように前記連結軸に取り付けられ、前記第1ピンホールの径と前記第2ピンホールの径とは互いに異なる。
【0008】
これにより、複雑な可動機構を必要とせずコストを低減した状態でピンホール径を変更可能である。例えば、一実施形態に係る共焦点スキャナでは、特許文献1に記載のようなピンホールアレイディスクに対する複雑な可動機構を必要とせず、固定化された一組のディスクユニットによってピンホール径を変更可能である。共焦点スキャナは、複雑な可動機構を用いることなく共焦点スキャナにおける後述の第1共焦点スキャナ及び第2共焦点スキャナのいずれか一方を選択可能であり、ピンホール径を可変にする技術においても低コストの装置を実現可能である。一実施形態によれば、マイクロレンズ付きニポウディスク方式の共焦点レーザ顕微鏡において、共焦点スキャナのピンホール径を可変にすることができる。このようにピンホール径を変えることで、顕微鏡における低倍率及び高倍率の対物レンズに対して互いに同様の共焦点性を実現可能である。
【0009】
一実施形態における共焦点スキャナは、前記第1ピンホールアレイディスクと前記集光素子アレイディスクとの間、及び前記第2ピンホールアレイディスクと前記集光素子アレイディスクとの間の少なくとも一方に配置されている分岐素子をさらに備えてもよい。これにより、共焦点スキャナは、光源からの照射光の光路と顕微鏡における試料からの蛍光の光路とを切り分けることが可能である。共焦点スキャナが2つの分岐素子の両方を有することで、後述の第1共焦点スキャナ及び第2共焦点スキャナのいずれに対しても同様の効果が得られる。
【0010】
一実施形態における共焦点スキャナでは、前記複数の第1ピンホールは、前記第1ピンホールアレイディスクにおいて等ピッチでかつ螺旋状に配置され、前記複数の第2ピンホールは、前記第2ピンホールアレイディスクにおいて等ピッチでかつ螺旋状に配置されていてもよい。これにより、共焦点スキャナは、後述の第1共焦点スキャナ及び第2共焦点スキャナのいずれにおいても、顕微鏡上の試料に対する光源からの照射光の高速スキャンを実現可能である。
【0011】
一実施形態における共焦点スキャナでは、前記第1ピンホールアレイディスクにおける前記複数の第1ピンホールの配置と前記第2ピンホールアレイディスクにおける前記複数の第2ピンホールの配置とは互いに同一であってもよい。これにより、共焦点スキャナの設計がさらに容易になる。
【0012】
幾つかの実施形態に係る共焦点スキャナシステムは、上記のいずれかの共焦点スキャナと、前記第1ピンホールアレイディスクと前記集光素子アレイディスクとの組み合わせである第1共焦点スキャナを含む第1光学系であって、前記第1共焦点スキャナを通過して試料を含む顕微鏡まで照射光を導き、かつ第1共焦点像に寄与する、前記照射光に基づく前記試料からの被測定光を検出器まで導く前記第1光学系と、前記第2ピンホールアレイディスクと前記集光素子アレイディスクとの組み合わせである第2共焦点スキャナを含む第2光学系であって、前記第2共焦点スキャナを通過して前記顕微鏡まで前記照射光を導き、かつ第2共焦点像に寄与する、前記照射光に基づく前記試料からの前記被測定光を前記検出器まで導く前記第2光学系と、を備えてもよい。
【0013】
これにより、複雑な可動機構を必要とせずコストを低減した状態でピンホール径を変更可能である。例えば、共焦点スキャナでは、特許文献1に記載のようなピンホールアレイディスクに対する複雑な可動機構を必要とせず、固定化された一組のディスクユニットによってピンホール径を変更可能である。共焦点スキャナシステムは、複雑な可動機構を用いることなく共焦点スキャナにおける第1共焦点スキャナ及び第2共焦点スキャナのいずれか一方を選択可能であり、ピンホール径を可変にする技術においても低コストの装置を実現可能である。一実施形態によれば、マイクロレンズ付きニポウディスク方式の共焦点レーザ顕微鏡において、共焦点スキャナのピンホール径を可変にすることができる。このようにピンホール径を変えることで、顕微鏡における低倍率及び高倍率の対物レンズに対して互いに同様の共焦点性を実現可能である。
【0014】
一実施形態における共焦点スキャナシステムでは、前記第1光学系は、複数の可動ミラーを含み、前記複数の可動ミラーの各々が光路に寄与しない位置に移動することで前記第1光学系から前記第2光学系へと切り替わってもよい。これにより、可動ミラーに対する単純な可動機構のみによって共焦点スキャナにおける第1共焦点スキャナ及び第2共焦点スキャナのいずれか一方を選択可能である。したがって、共焦点スキャナにおけるピンホール径を可変にする技術においても低コストの装置を実現可能である。
【0015】
一実施形態における共焦点スキャナシステムでは、前記第1光学系は、前記第1ピンホールアレイディスクのピンホール面と、前記顕微鏡の像面と、を共役関係に結ぶ第1組のリレーレンズと、前記第1ピンホールアレイディスクのピンホール面と、前記検出器の受光面と、を共役関係に結ぶ第2組のリレーレンズと、を含んでもよい。これにより、第1ピンホールアレイディスクのピンホール面、顕微鏡の像面、及び検出器の受光面の間で共役関係を維持した状態で光学系を適切に構築することが可能である。
【0016】
幾つかの実施形態に係る共焦点顕微鏡システムは、上記のいずれかの共焦点スキャナシステムと、前記共焦点スキャナシステムに入射する前記照射光を照射する光源と、前記照射光が照射される前記試料を含む前記顕微鏡と、前記試料からの前記被測定光を検出する前記検出器と、を備えてもよい。
【0017】
これにより、複雑な可動機構を必要とせずコストを低減した状態でピンホール径を変更可能である。例えば、共焦点スキャナでは、特許文献1に記載のようなピンホールアレイディスクに対する複雑な可動機構を必要とせず、固定化された一組のディスクユニットによってピンホール径を変更可能である。共焦点顕微鏡システムは、複雑な可動機構を用いることなく共焦点スキャナにおける第1共焦点スキャナ及び第2共焦点スキャナのいずれか一方を選択可能であり、ピンホール径を可変にする技術においても低コストの装置を実現可能である。一実施形態によれば、マイクロレンズ付きニポウディスク方式の共焦点レーザ顕微鏡において、共焦点スキャナのピンホール径を可変にすることができる。このようにピンホール径を変えることで、顕微鏡における低倍率及び高倍率の対物レンズに対して互いに同様の共焦点性を実現可能である。
【0018】
一実施形態における共焦点顕微鏡システムでは、前記顕微鏡が有する対物レンズの倍率に合わせて前記第1光学系及び前記第2光学系のいずれか一方が用いられてもよい。これにより、顕微鏡における低倍率及び高倍率の対物レンズに対して互いに同様の共焦点性を実現可能である。例えば、第1ピンホールアレイディスクでは第1ピンホールの径をφ50μm、第2ピンホールアレイディスクでは第2ピンホールの径をφ25μmとすれば、第1光学系は高倍率の対物レンズに対応可能であり、第2光学系は低倍率の対物レンズに対応可能である。これにより、高倍率から低倍率まで幅広く共焦点性が向上し、ボケが抑制された鮮明な画像を得ることが可能である。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、複雑な可動機構を必要とせずコストを低減した状態でピンホール径を変更可能な共焦点スキャナ、共焦点スキャナシステム、及び共焦点顕微鏡システムを提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一実施形態に係る共焦点顕微鏡システムの構成の一例を示す模式図である。
図2】第1ピンホールアレイディスクの一例を上方から見たときの模式図である。
図3】第1光学系に切り替わったときの共焦点顕微鏡システムの構成の一例を示す図1に対応する模式図である。
図4】第2光学系に切り替わったときの共焦点顕微鏡システムの構成の一例を示す図1に対応する模式図である。
図5】集光素子アレイディスクの一例を上方から見たときの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
従来技術の背景及び問題点についてより詳細に説明する。
【0022】
従来技術における、マイクロレンズ付きニポウディスク方式の共焦点スキャナの代表的な構成について説明する。このような共焦点スキャナは、ピンホールアレイディスクを有する。ピンホールアレイディスクは、顕微鏡の対物レンズで観察する焦点面のみの信号光を通過させる。共焦点スキャナは、焦点面以外のノイズ光を遮断する。このようなピンホールによって共焦点画像が得られる。
【0023】
共焦点スキャナは、マイクロレンズアレイディスクをさらに有する。マイクロレンズアレイディスクは、顕微鏡上の試料に照射する照明光の利用効率を向上させる。ピンホールアレイディスク上に形成されている各ピンホールの位置とマイクロレンズアレイディスク上に形成されている集光手段としての各マイクロレンズの位置とは、互いに一対一の関係にある。
【0024】
共焦点スキャナは、ピンホールアレイディスク及びマイクロレンズアレイディスクを連結する連結軸をさらに有する。ピンホールアレイディスク及びマイクロレンズアレイディスクが取り付けられた連結軸の先端はモータに取り付けられている。モータは、連結軸と共にピンホールアレイディスク及びマイクロレンズアレイディスクを互いに同一方向に回転させる。共焦点スキャナは、照明光の光路と信号光の光路とを分けるためのビームスプリッタをさらに有する。
【0025】
ピンホールアレイディスク及びマイクロレンズアレイディスクをモータで互いに同一方向に回転させることにより、共焦点スキャナの機能が達成される。以上のような従来技術では、ピンホールアレイディスク上のピンホール径は1種類であり固定化されている。
【0026】
以上のようなマイクロレンズ付きニポウディスク方式の共焦点スキャナの問題点はピンホール径が固定化されていることにある。ピンホール径が固定化されていると、高倍率の対物レンズ及び低倍率の対物レンズのいずれか一方に対してのみしか高い共焦点性が得られない。例えば、60倍以上の対物レンズに合わせてピンホール径がφ50μmに設計された場合、このような高倍率の対物レンズに対しては共焦点性が高く、精細な画像が得られる。しかしながら、例えば20倍以下の低倍率の対物レンズに対しては共焦点性が低く、画像内のボケが十分に除去されない。特に、光軸方向、すなわち試料の深さ方向では共焦点性の低下が顕著である。
【0027】
これに対して、特許文献1に記載の共焦点光スキャナでは、ピンホールの径が互いに異なるピンホールアレイディスクを照明光の光路にかかる位置と、光路から退避させる位置との間で交互に切り替えて、マイクロレンズアレイディスクとそれぞれ組み合わせた2種類のディスクユニットが提供される。このような共焦点光スキャナにより、ピンホールの径が可変となるマイクロレンズ付きニポウディスク方式の共焦点スキャナが実現される。
【0028】
より具体的には、特許文献1に記載の共焦点光スキャナでは、2種類のディスクユニットを直動機構上に配置し、いずれかを光路上に移動させることが可能である。例えば、顕微鏡に備わっている対物レンズが高倍率であるとき、大きいピンホール径のピンホールアレイディスクを含むディスクユニットが使用される。例えば、顕微鏡に備わっている対物レンズが低倍率であるとき、小さいピンホール径のピンホールアレイディスクを含むディスクユニットが使用される。以上により、対物レンズの倍率の高低によらず、同一の共焦点性が得られる。
【0029】
しかしながら、特許文献1に記載の共焦点光スキャナでは、ピンホール径の異なるマイクロレンズ付きニポウディスク方式のディスクユニットが2種類用意され、それぞれ高倍率の対物レンズ及び低倍率の対物レンズに応じて使い分けされる。このような従来技術では2種類のディスクユニットが必要となり、コストが増加する。また、高速回転するディスクユニットを可動機構に取り付けるため、可動機構に関する設計が複雑となりその難易度が上がる。その結果、精密部品の点数が増加し、コストがさらに増加する。
【0030】
以下では、これらの問題点を解決可能な共焦点スキャナ、共焦点スキャナシステム、及び共焦点顕微鏡システムについて説明する。本開示の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0031】
本開示は、共焦点レーザ顕微鏡の他にも、共焦点レーザ顕微鏡法を利用した創薬支援装置などの製品にも応用可能である。共焦点レーザ顕微鏡では、点光源と見なせるレーザ光源をコリメートレンズなどで広げ、2次元の面光源にしてから、共焦点レーザ顕微鏡の励起光、すなわち照射光とする。共焦点光学系及び顕微鏡光学系を介して細胞などの試料に照射光を照射し、試料を励起する。細胞には予め蛍光物質を融合しておき、励起光を受けたとき、細胞から蛍光が放出される。蛍光信号を顕微鏡光学系で画像として撮影し、細胞の観察及び細胞の挙動の解析を行う。このような顕微手法は、生物の基礎研究から創薬の応用開発の分野まで幅広く利用可能である。細胞の画像を撮影する際、ボケの無い高画質な画像を得るために、光学系には共焦点方式が利用される。さらにマイクロレンズ付きニポウディスク方式の共焦点レーザ顕微鏡は、高速に画像を取得可能であり、生きた細胞のダイナミックな動きをリアルタイムで撮影可能である。
【0032】
図1は、一実施形態に係る共焦点顕微鏡システム1の構成の一例を示す模式図である。図1を主に参照しながら、一実施形態に係る共焦点顕微鏡システム1の構成について説明する。
【0033】
共焦点顕微鏡システム1は、光源10と、共焦点スキャナシステム20と、顕微鏡30と、検出器40と、を有する。
【0034】
光源10は、共焦点スキャナシステム20に入射して、顕微鏡30上の試料Sに照射される照射光を出力する。光源10は、例えばレーザ光源を含む。光源10から照射される照射光の波長は、例えば試料Sの吸収帯に含まれ、試料Sから蛍光を発生させることが可能な波長領域に含まれる。例えば、光源10から照射される照射光の波長は、可視領域に含まれていてもよい。
【0035】
共焦点スキャナシステム20は、共焦点スキャナ21と、複数の光学素子を含む第1光学系Saと、複数の光学素子を含む第2光学系Sbと、を有する。
【0036】
共焦点スキャナ21は、複数の第1ピンホールがアレイ状に配置されている第1ピンホールアレイディスク211aと、複数の第2ピンホールがアレイ状に配置されている第2ピンホールアレイディスク211bと、を有する。一実施形態に係る共焦点スキャナ21では、第1ピンホールの径と第2ピンホールの径とは互いに異なる。例えば、第1ピンホールの径は、第2ピンホールの径よりも大きい。例えば、第1ピンホールの径がφ50μmであり、第2ピンホールの径がφ25μmであってもよい。
【0037】
図2は、第1ピンホールアレイディスク211aの一例を上方から見たときの模式図である。図2では、第1ピンホールアレイディスク211aのみについて示しているが、第2ピンホールアレイディスク211bについても図2と同様に構成されてもよい。例えば、第1ピンホールアレイディスク211aにおける複数の第1ピンホールの配置と第2ピンホールアレイディスク211bにおける複数の第2ピンホールの配置とは互いに同一であってもよい。
【0038】
第1ピンホールアレイディスク211aに形成されている複数の第1ピンホールは、第1ピンホールアレイディスク211aにおいて等ピッチでかつ螺旋状に配置されている。同様に、第2ピンホールアレイディスク211bに形成されている複数の第2ピンホールは、第2ピンホールアレイディスク211bにおいて等ピッチでかつ螺旋状に配置されている。
【0039】
図1を再度参照すると、共焦点スキャナ21は、複数の集光素子がアレイ状に配置されている集光素子アレイディスク212を有する。集光素子アレイディスク212は、第1ピンホールアレイディスク211aと第2ピンホールアレイディスク211bとの間に挟まれるように位置する。集光素子は、例えばマイクロレンズを含む。
【0040】
共焦点スキャナ21は、第1ピンホールアレイディスク211a、第2ピンホールアレイディスク211b、及び集光素子アレイディスク212を連結する連結軸213と、連結軸213と共に第1ピンホールアレイディスク211a、第2ピンホールアレイディスク211b、及び集光素子アレイディスク212を同一方向に回転させるモータ214と、を有する。
【0041】
第1ピンホールアレイディスク211aは、集光素子アレイディスク212における一の集光素子の第1焦点面に一の第1ピンホールが位置するように連結軸213に取り付けられている。第2ピンホールアレイディスク211bは、集光素子アレイディスク212における一の集光素子の第2焦点面に一の第2ピンホールが位置するように連結軸213に取り付けられている。
【0042】
より具体的には、集光素子アレイディスク212におけるマイクロレンズアレイは、図1の上下方向に2つの焦点面を有する。第1ピンホールアレイディスク211aは、上方の第1焦点面の位置に取り付けられている。第2ピンホールアレイディスク211bは、下方の第2焦点面の位置に取り付けられている。第1ピンホールアレイディスク211a及び第2ピンホールアレイディスク211bを含むピンホールアレイディスク211上に形成されている各ピンホールの位置と集光素子アレイディスク212上に形成されている集光素子としての各マイクロレンズの位置とは、互いに一対一の関係にある。
【0043】
以上のように、共焦点スキャナ21は、例えば1枚のマイクロレンズアレイディスクとそれを挟むように配置したピンホール径が異なる2枚のピンホールアレイディスク211から構成されるピンホール径が可変のマイクロレンズ付きピンホールアレイディスクである。第1ピンホールアレイディスク211aと集光素子アレイディスク212との組み合わせで第1共焦点スキャナが形成される。同様に、第2ピンホールアレイディスク211bと集光素子アレイディスク212との組み合わせで第2共焦点スキャナが形成される。
【0044】
共焦点スキャナ21は、第1ピンホールアレイディスク211aと集光素子アレイディスク212との間に配置されている第1分岐素子215a、及び第2ピンホールアレイディスク211bと集光素子アレイディスク212との間に配置されている第2分岐素子215bをさらに有する。第1分岐素子215a及び第2分岐素子215bを含む分岐素子215は、例えばダイクロイックミラーを含む。
【0045】
第1光学系Saは、第1ピンホールアレイディスク211aと集光素子アレイディスク212との組み合わせである第1共焦点スキャナを含む。第1光学系Saは、複数の可動ミラー22aを含む。例えば、第1光学系Saは、光源10から検出器40に向かって順に配置されている第1可動ミラー22a1、第2可動ミラー22a2、及び第3可動ミラー22a3を含む。第1光学系Saは、これら3つの可動ミラー22aの各々が光路に寄与する位置に移動することで構成される。
【0046】
第1光学系Saは、固定された複数のミラー23aを含む。例えば、第1光学系Saは、光源10から検出器40に向かって順に配置されている第1ミラー23a1、第2ミラー23a2、第3ミラー23a3、第4ミラー23a4、第5ミラー23a5、第6ミラー23a6、第7ミラー23a7、第8ミラー23a8、及び第9ミラー23a9を含む。
【0047】
第1光学系Saは、固定された複数のレンズ24aを含む。例えば、第1光学系Saは、光源10から検出器40に向かって順に配置されている第1レンズ24a1、第2レンズ24a2、第3レンズ24a3、第4レンズ24a4、第5レンズ24a5、及び第6レンズ24a6を含む。
【0048】
第1光学系Saは、第6レンズ24a6の直前に配置されている蛍光フィルタ25aを含む。
【0049】
第2光学系Sbは、第2ピンホールアレイディスク211bと集光素子アレイディスク212との組み合わせである第2共焦点スキャナを含む。第2光学系Sbは、第1光学系Saに含まれる3つの可動ミラー22aの各々が光路に寄与しない位置に移動することで構成される。
【0050】
第2光学系Sbは、固定された複数のミラー23bを含む。例えば、第2光学系Sbは、光源10から検出器40に向かって順に配置されている第1ミラー23b1及び第2ミラー23b2を含む。
【0051】
第2光学系Sbは、固定された複数のレンズ24bを含む。例えば、第2光学系Sbは、光源10から検出器40に向かって順に配置されている第1レンズ24b1及び第2レンズ24b2を含む。
【0052】
第2光学系Sbは、第2レンズ24b2の直前に配置されている蛍光フィルタ25bを含む。
【0053】
第1光学系Saと第2光学系Sbとは、複数の可動ミラー22aの各々が光路に寄与する位置と寄与しない位置との間でそれぞれ移動することで互いに切り替わる。このとき、第1光学系Saの第1レンズ24a1と第2光学系Sbの第1レンズ24b1とは互いに同一のレンズである。すなわち、当該レンズは、第1光学系Saの第1レンズ24a1及び第2光学系Sbの第1レンズ24b1として共通に利用される。同様に、第1光学系Saの第6レンズ24a6と第2光学系Sbの第2レンズ24b2とは互いに同一のレンズである。第1光学系Saの蛍光フィルタ25aと第2光学系Sbの蛍光フィルタ25bとは互いに同一の蛍光フィルタである。
【0054】
顕微鏡30は、例えば試料Sの観察に利用可能な任意の顕微鏡を含む。顕微鏡30には、光源10からの照射光が照射される試料Sが含まれる。顕微鏡30は、光源10から照射された照射光を試料Sに対して最終的に集光する対物レンズ31を有する。
【0055】
検出器40は、顕微鏡30上の試料Sからの被測定光としての蛍光を検出する。検出器40は、例えばカメラを含む。このようなカメラは、試料Sから放出される蛍光の波長帯域において適切な受光感度を有する。例えば、検出器40は、可視領域において適切な受光感度を有してもよい。
【0056】
図3は、第1光学系Saに切り替わったときの共焦点顕微鏡システム1の構成の一例を示す図1に対応する模式図である。図3を主に参照しながら、第1光学系Saに切り替わったときの共焦点顕微鏡システム1の機能について説明する。第1光学系Saは、第1共焦点スキャナを通過して試料Sを含む顕微鏡30まで照射光を導き、かつ第1共焦点像に寄与する、照射光に基づく試料Sからの被測定光、すなわち蛍光を検出器40まで導く。
【0057】
光源10から拡散しながら出力された照射光は、共焦点スキャナシステム20における第1光学系Saの第1レンズ24a1によって平行光となる。すなわち、第1レンズ24a1はコリメートレンズとして機能する。平行光となった照射光は、第1可動ミラー22a1、第1ミラー23a1、第2ミラー23a2、及び第3ミラー23a3で反射して共焦点スキャナ21の集光素子アレイディスク212に入射する。
【0058】
集光素子アレイディスク212上に配置されているマイクロレンズを通過した照射光は、第1分岐素子215aを透過して、各マイクロレンズの焦点で収束する。各マイクロレンズの焦点に収束した照射光は、マイクロレンズの第1焦点面の位置に配置されている第1ピンホールアレイディスク211aの各第1ピンホールを通過する。図2の実線囲み部で示されているとおり、各マイクロレンズの焦点に収束した照射光は、第1ピンホールアレイディスク211aにおいて、例えば上方から見て3時の方向に位置する所定領域に照射されてもよい。
【0059】
図3に示すとおり、第1ピンホールアレイディスク211aにおいて多数の点光源となった照射光は、第4ミラー23a4、第5ミラー23a5、第6ミラー23a6、及び第2可動ミラー22a2で反射して顕微鏡30に入射する。このとき、第1ピンホールアレイディスク211aにおいて多数の点光源となった照射光は、光路内の第2レンズ24a2及び第3レンズ24a3によって、顕微鏡30の像面P1にリレーされる。すなわち、第2レンズ24a2及び第3レンズ24a3は、第1ピンホールアレイディスク211aのピンホール面と、顕微鏡30の像面P1と、を共役関係に結ぶ一組のリレーレンズとして機能する。
【0060】
第1ピンホールアレイディスク211aによる多数の点光源が、顕微鏡30内の対物レンズ31によって試料Sで点像となり、試料Sを励起する。共焦点スキャナ21のモータ214の回転によって多数の点光源が試料Sの全面を走査し、2次元の画像情報を得ることが可能となる。
【0061】
多数の点光源によって励起された試料Sから蛍光が放出される。このような蛍光は逆光路を辿り、顕微鏡30の像面P1において蛍光像が得られる。蛍光は、第6ミラー23a6、第5ミラー23a5、及び第4ミラー23a4で反射し、光路内の第3レンズ24a3及び第2レンズ24a2によって第1ピンホールアレイディスク211aのピンホール面にリレーされる。蛍光は、第1ピンホールの回転走査によって第1共焦点像となる。
【0062】
第1ピンホールアレイディスク211aのピンホール像、すなわち第1共焦点像は、照射光が透過し蛍光が反射する特性を有する第1分岐素子215aのダイクロイックミラーで反射する。第1共焦点像は、さらに第7ミラー23a7、第8ミラー23a8、及び第9ミラー23a9で反射し、光路内の第4レンズ24a4及び第5レンズ24a5によって顕微鏡30の像面P1の共役面P2にリレーされる。すなわち、第4レンズ24a4及び第5レンズ24a5は、第1ピンホールアレイディスク211aのピンホール面と、顕微鏡30の像面P1の共役面P2と、を共役関係に結ぶ一組のリレーレンズとして機能する。
【0063】
第1共焦点像は、第3可動ミラー22a3で反射し、蛍光フィルタ25a及び第6レンズ24a6を介して、検出器40のカメラにより画像として撮影される。第4レンズ24a4、第5レンズ24a5、及び第6レンズ24a6は、第1ピンホールアレイディスク211aのピンホール面と、検出器40の受光面と、を共役関係に結ぶ一組のリレーレンズとして機能する。蛍光フィルタ25aは、観察すべき試料Sの情報を含む蛍光のみを透過させる。
【0064】
図4は、第2光学系Sbに切り替わったときの共焦点顕微鏡システム1の構成の一例を示す図1に対応する模式図である。複数の可動ミラー22aの各々が光路に寄与しない位置に移動することで第1光学系Saから第2光学系Sbへと切り替わる。図4を主に参照しながら、第2光学系Sbに切り替わったときの共焦点顕微鏡システム1の機能について説明する。第2光学系Sbは、第2共焦点スキャナを通過して試料Sを含む顕微鏡30まで照射光を導き、かつ第2共焦点像に寄与する、照射光に基づく試料Sからの被測定光、すなわち蛍光を検出器40まで導く。
【0065】
光源10から拡散しながら出力された照射光は、共焦点スキャナシステム20における第2光学系Sbの第1レンズ24b1によって平行光となる。すなわち、第1レンズ24b1はコリメートレンズとして機能する。平行光となった照射光は、第1ミラー23b1及び第2ミラー23b2で反射して共焦点スキャナ21の集光素子アレイディスク212に入射する。
【0066】
集光素子アレイディスク212上に配置されているマイクロレンズを通過した照射光は、第2分岐素子215bを透過して、各マイクロレンズの焦点で収束する。各マイクロレンズの焦点に収束した照射光は、マイクロレンズの第2焦点面の位置に配置されている第2ピンホールアレイディスク211bの各第2ピンホールを通過する。図2の破線囲み部で示されているとおり、各マイクロレンズの焦点に収束した照射光は、第2ピンホールアレイディスク211bにおいて、例えば上方から見て9時の方向に位置する所定領域に照射されてもよい。
【0067】
図4に示すとおり、第2ピンホールアレイディスク211bにおいて多数の点光源となった照射光は、顕微鏡30内の対物レンズ31によって試料Sで点像となり、試料Sを励起する。共焦点スキャナ21のモータ214の回転によって多数の点光源が試料Sの全面を走査し、2次元の画像情報を得ることが可能となる。
【0068】
多数の点光源によって励起された試料Sから蛍光が放出される。このような蛍光は逆光路を辿り、第2ピンホールアレイディスク211bのピンホール面に入射する。蛍光は、第2ピンホールの回転走査によって第2共焦点像となる。
【0069】
第2ピンホールアレイディスク211bのピンホール像、すなわち第2共焦点像は、照射光が透過し蛍光が反射する特性を有する第2分岐素子215bのダイクロイックミラーで反射する。第2共焦点像は、蛍光フィルタ25b及び第2レンズ24b2を介して、検出器40のカメラにより画像として撮影される。蛍光フィルタ25bは、観察すべき試料Sの情報を含む蛍光のみを透過させる。
【0070】
以上のように、一組の回転するディスクユニットによって2種類の異なるピンホール径をそれぞれ有する第1共焦点スキャナ及び第2共焦点スキャナが実現される。第1共焦点スキャナ及び第2共焦点スキャナのいずれか一方は、顕微鏡30が有する対物レンズ31の倍率に合わせて用いられる。すなわち、顕微鏡30が有する対物レンズ31の倍率に合わせて第1光学系Sa及び第2光学系Sbのいずれか一方が用いられる。
【0071】
図5は、集光素子アレイディスク212の一例を上方から見たときの模式図である。図5は、図2の第1ピンホールアレイディスク211aと同一方向から見たときの集光素子アレイディスク212の様子を示したものである。
【0072】
図5に示すとおり、集光素子アレイディスク212において、多数のマイクロレンズがアレイ状に配置されている。図3を用いて上述した第1光学系Saにおいて照射光が集光素子アレイディスク212に照射されるとき、図5の実線囲み部Iで示されているとおり、照射光は、集光素子アレイディスク212において、例えば上方から見て3時の方向に位置する所定領域に照射されてもよい。一方で、図4を用いて上述した第2光学系Sbにおいて照射光が集光素子アレイディスク212に照射されるとき、図5の実線囲み部IIで示されているとおり、照射光は、集光素子アレイディスク212において、例えば上方から見て9時の方向に位置する所定領域に照射されてもよい。
【0073】
以上のような一実施形態によれば、複雑な可動機構を必要とせずコストを低減した状態でピンホール径を変更可能である。例えば、共焦点スキャナ21では、特許文献1に記載のようなピンホールアレイディスクに対する複雑な可動機構を必要とせず、固定化された一組のディスクユニットによってピンホール径を変更可能である。共焦点スキャナシステム20及び共焦点顕微鏡システム1では、可動ミラー22aに対する単純な可動機構のみによって共焦点スキャナ21における第1共焦点スキャナ及び第2共焦点スキャナのいずれか一方を選択可能であり、ピンホール径を可変にする技術においても低コストの装置を実現可能である。一実施形態によれば、マイクロレンズ付きニポウディスク方式の共焦点レーザ顕微鏡において、共焦点スキャナ21のピンホール径を可変にすることができる。このようにピンホール径を変えることで、顕微鏡30における低倍率及び高倍率の対物レンズ31に対して互いに同様の共焦点性を実現可能である。
【0074】
共焦点スキャナ21は、分岐素子215を有することで、光源10からの照射光の光路と顕微鏡30における試料Sからの蛍光の光路とを切り分けることが可能である。共焦点スキャナ21が第1分岐素子215a及び第2分岐素子215bの両方を有することで、第1共焦点スキャナ及び第2共焦点スキャナのいずれに対しても同様の効果が得られる。
【0075】
複数の第1ピンホールは、第1ピンホールアレイディスク211aにおいて等ピッチでかつ螺旋状に配置されている。複数の第2ピンホールは、第2ピンホールアレイディスク211bにおいて等ピッチでかつ螺旋状に配置されている。以上により、共焦点スキャナ21は、第1共焦点スキャナ及び第2共焦点スキャナのいずれにおいても、顕微鏡30上の試料Sに対する光源10からの照射光の高速スキャンを実現可能である。
【0076】
第1ピンホールアレイディスク211aにおける複数の第1ピンホールの配置と第2ピンホールアレイディスク211bにおける複数の第2ピンホールの配置とが互いに同一であることで、共焦点スキャナ21の設計がさらに容易になる。
【0077】
共焦点スキャナシステム20では、複数の可動ミラー22aの各々が光路に寄与しない位置に移動することで第1光学系Saから第2光学系Sbへと切り替わる。これにより、可動ミラー22aに対する単純な可動機構のみによって共焦点スキャナ21における第1共焦点スキャナ及び第2共焦点スキャナのいずれか一方を選択可能である。したがって、共焦点スキャナ21におけるピンホール径を可変にする技術においても低コストの装置を実現可能である。
【0078】
共焦点スキャナシステム20における第1光学系Saは、第1組のリレーレンズとして、第2レンズ24a2及び第3レンズ24a3を含む。第1光学系Saは、第2組のリレーレンズとして、第4レンズ24a4、第5レンズ24a5、及び第6レンズ24a6を含む。これにより、第1ピンホールアレイディスク211aのピンホール面、顕微鏡30の像面P1、及び検出器40の受光面の間で共役関係を維持した状態で光学系を適切に構築することが可能である。
【0079】
顕微鏡30が有する対物レンズ31の倍率に合わせて第1光学系Sa及び第2光学系Sbのいずれか一方が用いられることで、顕微鏡30における低倍率及び高倍率の対物レンズ31に対して互いに同様の共焦点性を実現可能である。例えば、第1ピンホールアレイディスク211aでは第1ピンホールの径をφ50μm、第2ピンホールアレイディスク211bでは第2ピンホールの径をφ25μmとすれば、第1光学系Saは高倍率の対物レンズ31に対応可能であり、第2光学系Sbは低倍率の対物レンズ31に対応可能である。これにより、高倍率から低倍率まで幅広く共焦点性が向上し、ボケが抑制された鮮明な画像を得ることが可能である。
【0080】
本開示は、その精神又はその本質的な特徴から離れることなく、上述した実施形態以外の他の所定の形態で実現できることは当業者にとって明白である。したがって、先の記述は例示的であり、これに限定されない。開示の範囲は、先の記述によってではなく、付加した請求項によって定義される。あらゆる変更のうちその均等の範囲内にあるいくつかの変更は、その中に包含されるとする。
【0081】
例えば、上述した各構成部の形状、配置、向き、及び個数は、上記の説明及び図面における図示の内容に限定されない。各構成部の形状、配置、向き、及び個数は、その機能を実現できるのであれば、任意に構成されてもよい。
【0082】
上記実施形態では、例えば第1ピンホールの径がφ50μmであり第2ピンホールの径がφ25μmであると説明したが、これに限定されない。第1ピンホールの径と第2ピンホールの径とが互いに異なっていれば、第1ピンホールアレイディスク211a及び第2ピンホールアレイディスク211bは、互いに任意のピンホール径で設計されてもよい。例えば、第1ピンホールの径が第2ピンホールの径よりも小さくてもよい。
【0083】
上記実施形態では、共焦点スキャナ21は、第1分岐素子215a及び第2分岐素子215bを有すると説明したが、これに限定されない。共焦点スキャナ21は、第1分岐素子215a及び第2分岐素子215bのいずれか一方のみを有してもよいし、両方有さなくてもよい。例えば、第1分岐素子215aは、顕微鏡30上の試料Sから放出された蛍光が第1ピンホールアレイディスク211a及び集光素子アレイディスク212を通過した後の第1光学系Saにおける任意の箇所に配置されていてもよい。例えば、第2分岐素子215bは、顕微鏡30上の試料Sから放出された蛍光が第2ピンホールアレイディスク211b及び集光素子アレイディスク212を通過した後の第2光学系Sbにおける任意の箇所に配置されていてもよい。
【0084】
上記実施形態では、分岐素子215は例えばダイクロイックミラーを含むと説明したが、これに限定されない。分岐素子215は、例えば光源10からの照射光を透過させて顕微鏡30上の試料Sからの蛍光を反射させる任意の素子を含んでもよい。例えば、分岐素子215は、ビームスプリッタを含んでもよい。
【0085】
上記実施形態では、複数の第1ピンホールが第1ピンホールアレイディスク211aにおいて等ピッチでかつ螺旋状に配置され、複数の第2ピンホールが第2ピンホールアレイディスク211bにおいて等ピッチでかつ螺旋状に配置されていると説明したが、これに限定されない。複数の第1ピンホールは、第1ピンホールアレイディスク211aにおいて任意の状態で配置されていてもよい。複数の第2ピンホールは、第2ピンホールアレイディスク211bにおいて任意の状態で配置されていてもよい。
【0086】
上記実施形態では、第1ピンホールアレイディスク211aにおける複数の第1ピンホールの配置と第2ピンホールアレイディスク211bにおける複数の第2ピンホールの配置とが互いに同一であると説明したが、これに限定されない。第1ピンホールアレイディスク211aにおける複数の第1ピンホールの配置と第2ピンホールアレイディスク211bにおける複数の第2ピンホールの配置とは互いに異なっていてもよい。
【0087】
上記実施形態では、第1光学系Saに含まれる複数の可動ミラー22aの各々が光路に寄与しない位置に移動することで第1光学系Saから第2光学系Sbへと切り替わると説明したが、これに限定されない。第1光学系Saと第2光学系Sbとは、可動ミラー22a以外の任意の簡易的な可動要素によって互いに切り替わってもよい。
【0088】
上記実施では、第1光学系Saは、複数組のリレーレンズを含むと説明したが、これに限定されない。第1光学系Saに代えて、第2光学系Sbがこのような複数組のリレーレンズを含んでもよい。第1光学系Sa及び第2光学系Sbは、対物レンズ31の異なる倍率に対して第1共焦点像及び第2共焦点像の両方を鮮明に得ることが可能であれば任意に構成されてもよい。
【0089】
上記実施形態では、光源10は例えばレーザ光源を含むと説明したが、これに限定されない。光源10は、第1共焦点像及び第2共焦点像を得ることが可能な任意の光源を含んでもよい。例えば、光源10は、LED(Light Emitting Diode)を含んでもよい。また、上記実施形態では、光源10から照射される照射光の波長は可視領域に含まれていると説明したが、これに限定されない。光源10から照射される照射光の波長は、紫外領域及び赤外領域などに含まれていてもよい。
【0090】
上記実施形態では、集光素子アレイディスク212を構成する集光素子はマイクロレンズを含むと説明したが、これに限定されない。このような集光素子は、第1ピンホールアレイディスク211a及び第2ピンホールアレイディスク211bの位置で光源10からの照射光を集光可能な任意の素子を含んでもよい。
【0091】
上記実施形態では、図2及び図5に示すとおり、上方から見たときに第1ピンホールアレイディスク211a、第2ピンホールアレイディスク211b、及び集光素子アレイディスク212において3時及び9時の位置にある所定領域に照射光又は蛍光が入射すると説明したが、これに限定されない。照射光又は蛍光が入射する領域は、第1光学系Saと第2光学系Sbとの間で任意の配置関係にあってもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 共焦点顕微鏡システム
10 光源
20 共焦点スキャナシステム
21 共焦点スキャナ
211 ピンホールアレイディスク
211a 第1ピンホールアレイディスク
211b 第2ピンホールアレイディスク
212 集光素子アレイディスク
213 連結軸
214 モータ
215 分岐素子
215a 第1分岐素子
215b 第2分岐素子
22a 可動ミラー
22a1 第1可動ミラー
22a2 第2可動ミラー
22a3 第3可動ミラー
23a ミラー
23a1 第1ミラー
23a2 第2ミラー
23a3 第3ミラー
23a4 第4ミラー
23a5 第5ミラー
23a6 第6ミラー
23a7 第7ミラー
23a8 第8ミラー
23a9 第9ミラー
23b ミラー
23b1 第1ミラー
23b2 第2ミラー
24a レンズ
24a1 第1レンズ
24a2 第2レンズ
24a3 第3レンズ
24a4 第4レンズ
24a5 第5レンズ
24a6 第6レンズ
24b レンズ
24b1 第1レンズ
24b2 第2レンズ
25a 蛍光フィルタ
25b 蛍光フィルタ
30 顕微鏡
31 対物レンズ
40 検出器
P1 像面
P2 共役面
S 試料
Sa 第1光学系
Sb 第2光学系
図1
図2
図3
図4
図5