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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】車両用空調ダクト
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20230704BHJP
【FI】
B60H1/00 102T
B60H1/00 102W
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021537559
(86)(22)【出願日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 JP2020002262
(87)【国際公開番号】W WO2021024514
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2019143943
(32)【優先日】2019-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183689
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 華子
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】衣斐 修司
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-185608(JP,U)
【文献】特開2003-104037(JP,A)
【文献】特開平07-032860(JP,A)
【文献】特開2004-210006(JP,A)
【文献】特開2010-023640(JP,A)
【文献】特開2015-044506(JP,A)
【文献】特開2018-020733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された空調装置に一端が接続されるとともに、互いに間隔をあけて延設される一対の第一ダクトと、
前記空調装置に一端が接続されるとともに、平面視で一対の前記第一ダクトの間に配置されて延設される第二ダクトとを備え、
前記第一ダクトは、互いの間に前記第二ダクトを嵌合させる形状に形成された一対の受け部を有し、
前記第二ダクトは、前記第一ダクト側に向かって突出形成されて一対の前記受け部の間に嵌合する嵌合部を有し、
前記嵌合部は、一対の前記受け部よりも上方に配置され、
前記嵌合部は、前記第二ダクトの延在方向に垂直な断面において下方に向かうにつれて先細るテーパー形状に形成されるとともに、一対の前記受け部の間に上方から嵌合される
ことを特徴とする、車両用空調ダクト。
【請求項2】
前記受け部及び前記嵌合部は、前記第一ダクト及び前記第二ダクトの前記空調装置と接続される接続箇所近傍に形成される
ことを特徴とする、請求項1記載の車両用空調ダクト。
【請求項3】
前記受け部が、前記嵌合部の前記テーパー形状に合わせて互いに接近する方向に向かって下方に傾斜する一対の受け面を有する
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の車両用空調ダクト。
【請求項4】
前記第二ダクトが、当該第二ダクトの延在方向を向き、前記受け部の前記受け面とは異なる箇所で当該受け部と当接する当接部を有する
ことを特徴とする請求項記載の車両用空調ダクト。
【請求項5】
前記受け部が、前面視及び下面視で三角形状の輪郭を有する三角錐状に形成される
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の車両用空調ダクト。
【請求項6】
前記第二ダクトが、車長方向に延在し前記空調装置に接続される横向き部と、前記横向き部の後端部から下方及び後方に向かって膨出した形状に形成された縦向き部とを有し、
前記嵌合部が、前記横向き部の下面から下方に向かって突出形成され、
前記当接部が、前記縦向き部の前面に形成される
ことを特徴とする、請求項記載の車両用空調ダクト。
【請求項7】
前記車両のコンソールボックスに固定されるとともに前記第二ダクトの他端に接続される第三ダクトを備え、
前記第三ダクトに接続される前記第二ダクトの端面が、前記第二ダクトの延在方向に対して傾斜した平面をなし、上方に向かって開口した形状に形成される
ことを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の車両用空調ダクト。
【請求項8】
前記第一ダクトが、前記車両のフロアパネルに沿って配索されて前記車両の後部座席の足元に空調風を導き、
前記第二ダクトが、前記車両のコンソールボックス内に配置されて前記車両の後部座席の上方に空調風を導く
ことを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の車両用空調ダクト。
【請求項9】
車両に搭載された空調装置に一端が接続されるとともに、互いに間隔をあけて延設される一対の第一ダクトと、
前記空調装置に一端が接続されるとともに、平面視で一対の前記第一ダクトの間に配置されて延設される第二ダクトとを備え、
前記第一ダクトは、互いの間に前記第二ダクトを嵌合させる形状に形成された一対の受け部を有し、
前記第二ダクトは、前記第一ダクト側に向かって突出形成され、一対の前記受け部よりも上方に配置され、一対の前記受け部の間に上方から嵌合する嵌合部を有する
ことを特徴とする、車両用空調ダクト。
【請求項10】
前記受け部及び前記嵌合部は、前記第一ダクト及び前記第二ダクトの前記空調装置と接続される接続箇所近傍に形成される
ことを特徴とする、請求項記載の車両用空調ダクト。
【請求項11】
前記車両のコンソールボックスに固定されるとともに前記第二ダクトの他端に接続される第三ダクトを備え、
前記第三ダクトに接続される前記第二ダクトの端面が、前記第二ダクトの延在方向に対して傾斜した平面をなし、上方に向かって開口した形状に形成される
ことを特徴とする、請求項9又は10記載の車両用空調ダクト。
【請求項12】
前記第一ダクトが、前記車両のフロアパネルに沿って配索されて前記車両の後部座席の足元に空調風を導き、
前記第二ダクトが、前記車両のコンソールボックス内に配置されて前記車両の後部座席の上方に空調風を導く
ことを特徴とする、請求項9~11のいずれか1項に記載の車両用空調ダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載の空調装置から送給される空調風を車室内の各所に導く車両用空調ダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される空調装置に複数のダクトを接続し、各々のダクトを車室内の各所に向かって配索するダクト構造が知られている。すなわち、空調風の吹き出し口をインストルメントパネルだけでなくコンソールボックス(センターコンソール)やフロア近傍にも形成し、それぞれの吹き出し口と空調装置との間を個別のダクトで接続したものである(特許文献1参照)。近年では、運転席や助手席に対する吹き出し口とは別個に、後部座席専用の吹き出し口が追加された車両も市販されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-044506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなダクト構造が適用された車両では、それぞれのダクトが他のダクトと干渉,接触しないように、ねじやボルト,クリップなどの固定具で車体にしっかりと固定される。しかし、空調装置の近傍では、複数のダクトがたこ足状に集中した状態となることから、限られた空間内に多数の固定具を取り付けることが難しく、取り付け状態の安定性を向上させにくいという課題がある。また、複数のダクトが空調装置の近傍に集中することから、ダクトの組み付けの作業性が低下しやすい(組み付けにくい)という課題もある。
【0005】
なお、複数のダクトを一体化したマニホールド(多分岐管)構造を適用することで、取り付け状態の安定性や組み付け作業性を向上させることも考えられる。しかしながら、空調装置に接続されるダクトの本数は、車両のグレードやオプションによって変化しうる。したがって、個々のダクトが個別に空調装置に着脱できる構造を採用することが好ましく、複数のダクトが一体化されたマニホールド構造を適用しにくいという実情がある。
【0006】
本件の目的の一つは、上記のような課題に鑑みて創案されたものであり、取り付け状態の安定性及び組み付け作業性を向上させることができるようにした車両用空調ダクトを提供することである。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用効果であって、従来の技術では得られない作用効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここで開示する車両用空調ダクトは、一対の第一ダクトと第二ダクトとを備える。第一ダクトは、車両に搭載された空調装置に一端が接続されるとともに、互いに間隔をあけて延設される。第二ダクトは、空調装置に一端が接続されるとともに、平面視で一対の第一ダクトの間に配置されて延設される。また、第一ダクトは、互いの間に第二ダクトを嵌合させる形状に形成された一対の受け部を有する。さらに、第二ダクトは、第一ダクト側に向かって突出形成されて一対の受け部の間に嵌合する嵌合部を有する。前記嵌合部は、一対の前記受け部よりも上方に配置される。また、前記嵌合部は、前記第二ダクトの延在方向に垂直な断面において下方に向かうにつれて先細るテーパー形状に形成されるとともに、一対の前記受け部の間に上方から嵌合される。
また、ここで開示する第二の車両用空調ダクトは、一対の第一ダクトと第二ダクトとを備える。第一ダクトは、車両に搭載された空調装置に一端が接続されるとともに、互いに間隔をあけて延設される。第二ダクトは、空調装置に一端が接続されるとともに、平面視で一対の第一ダクトの間に配置されて延設される。また、第一ダクトは、互いの間に第二ダクトを嵌合させる形状に形成された一対の受け部を有する。さらに、第二ダクトは、第一ダクト側に向かって突出形成され、一対の前記受け部よりも上方に配置され、一対の受け部の間に上方から嵌合する嵌合部を有する。
【発明の効果】
【0008】
個々のダクトが個別に空調装置に着脱できる構造において、第一ダクトにおける一対の受け部に第二ダクトの嵌合部を嵌合させる構造を採用することで、取り付け状態の安定性及び組み付け作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】車両用空調ダクトの分解斜視図である。
図2】第一ダクトの要部を拡大して示す斜視図である。
図3】第一ダクト,第二ダクトの嵌合状態を示す斜視図である。
図4】第一ダクト,第二ダクトの嵌合状態を示す見上げ図(図3のA矢視図)である。
図5】第二ダクトを下方から見上げた状態での分解斜視図である。
図6】第一ダクト,第二ダクトの嵌合状態を示す断面図(図4のB断面図)である。
図7】第一ダクト,第二ダクトの嵌合状態を示す断面図(図4のC断面図)である。
図8】車両用空調ダクトの側面図(図3のD矢視図)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[1.構成]
図1に示す車両用空調ダクトは、車両に搭載された空調装置4(HVACユニット)から供給される空調風を車室内の各所へと移送するためのダクトであって、第一ダクト1,第二ダクト2,第三ダクト3を備える。第一ダクト1及び第二ダクト2は、別体に形成されて各々の一端が空調装置4に接続される。一方、第三ダクト3は、第一ダクト1及び第二ダクト2とは別体に形成され、第二ダクト2の下流側に接続される。空調装置4は、車両のインストルメントパネルの前方やコンソールボックス9の内部に配置される。
【0011】
空調装置4には、空調風を吹き出すための開口部である供給口が複数箇所に設けられる。図1中には、後部座席の足元に供給される空調風が吹き出す一対のリヤ足元供給口22と、後部座席の上方に供給される空調風が吹き出すリヤ上方供給口23とを示す。一対のリヤ足元供給口22は、車幅方向に所定の間隔をあけて隣接配置される。リヤ上方供給口23は、一対のリヤ足元供給口22よりも上方に配置される。他の供給口(例えば、前部座席の足元やその上方に供給される空調風が吹き出す供給口,フロントガラス表面に供給される空調風が吹き出す供給口,サイドガラス表面に供給される空調風が吹き出す供給口など)については説明を省略する。
【0012】
第一ダクト1は、空調装置4の後面側から互いに間隔をあけて、車長方向に一対延設される。一対の第一ダクト1のうち、片方の第一ダクト1は右側後部座席の足元に空調風を導くように機能し、もう片方の第一ダクト1は左側後部座席の足元に空調風を導くように機能する。それぞれの第一ダクト1の上端開口部10は、リヤ足元供給口22に対して個別に接続される。第一ダクト1は、コンソールボックス9の内部やその脇のフロアパネル24に沿って配索される。第一ダクト1の下端開口部11は枝分かれした形状に形成され、後部座席の足元の各所に配置される。
【0013】
図2に示すように、一対の第一ダクト1には、互いの間に他のダクトを嵌合させる形状に形成された受け部5が設けられる。ここでいう嵌合とは、複数のダクトの外周同士を嵌め合わせて互いに移動を抑制するように固定することを意味する。例えば、あるダクトの外周面に突条を形成するとともに、その突条に対応する形状の溝を他のダクトの外周面に形成し、突条と溝とを嵌め合わせてダクト同士を固定してもよい。あるいは、あるダクトの外周面に凸部を形成するとともに、他のダクトの外周面に凹部を形成し、凹部と凸部とを嵌め合わせてダクト同士を固定してもよい。
【0014】
本実施形態では、第一ダクト1の空調装置4に対する接続箇所の近傍に受け部5が配置される。第一ダクト1には、空調装置4から車両の後方に向かって延びる横架部1Aと、横架部1Aの後端から下方に向かって延びる縦架部1Bと、縦架部1Bの下端からさらに後方に向かって延びる第二横架部1Cとが設けられる。受け部5の位置は、少なくとも横架部1Aに設けられる。好ましくは、横架部1Aが縦架部1Bに向かって屈曲する部位よりも前方に受け部5が設けられる。
【0015】
第二ダクト2は、一対の第一ダクト1に挟み込まれた状態になるように嵌め合わされて固定される。第一ダクト1の受け部5は、一対の第一ダクト1の対向面において、互いに接近するように膨出した瘤(こぶ)状に形成される。これにより第二ダクト2は、二つの受け部5の間に挟まれて固定される。好ましくは、二つの受け部5がほぼ鏡面対称形状(すなわち左右対称の形状)に形成される。これにより、一方の第一ダクト1に作用する荷重と他方の第一ダクト1に作用する荷重とがほぼ等しくなり、第二ダクト2の固定状態が安定する。
【0016】
本実施形態の受け部5は、前面視及び下面視で三角形状の輪郭を有する三角錐状に形成される。図3に示すように、第一ダクト1を前方から見たときの受け部5の形状は、ほぼ三角形状である。また、図4に示すように、第一ダクト1を下方から見たときの受け部5の形状も、ほぼ三角形状である。このような形状により、受け部5の剛性が高くなり、第二ダクト2の固定状態がさらに安定する。
【0017】
第二ダクト2及び第三ダクト3は、空調装置4の後面側から車長方向に延設される。これらの第二ダクト2,第三ダクト3は、コンソールボックス9の内部に配置され、後部座席の上方に空調風を導くように機能する。第二ダクト2の前端開口部14は、空調装置4のリヤ上方供給口23に接続される。第二ダクト2の後端開口部15は、第三ダクト3の前端開口部20に接続される。第二ダクト2の後端開口部15は、第二ダクト2の延在方向に対して傾斜した平面をなし、上方に向かって開口した形状に形成される。また、第三ダクト3の後端開口部21は、コンソールボックス9の後面側に形成された吹き出し口に接続される。
【0018】
図3に示すように、第二ダクト2は平面視(上面視または下面視)で一対の第一ダクト1の間に配置される。また、第二ダクト2には、第一ダクト1の受け部5と嵌合する嵌合部6が設けられる。嵌合部6は、図6に示すように、第二ダクト2の延在方向(ここでは車長方向)に垂直な断面において、一対の受け部5の間に上から嵌まるテーパー形状(先細り形状)に形成される。これにより、嵌合部6が上下方向だけでなく左右方向(車幅方向)にも支えられた状態となり、第二ダクト2の固定状態が安定する。嵌合部6の位置は、受け部5に対応する位置であって、第二ダクト2の空調装置4に対する接続箇所の近傍に設定される。これにより、接続箇所の近傍で第一ダクト1の受け部5と第二ダクト2の嵌合部6とが固定され、保持状態がより安定する。
【0019】
第二ダクト2は、図5に示すように、車長方向に延在する横向き部16とその後方の縦向き部18とに分類される。横向き部16は、空調装置4に接続される部位(リヤ上方供給口23に差し込み固定される部位)である。縦向き部18は、横向き部16の後端部から下方及び後方に向かって膨出した形状に形成された部位である。本実施形態の嵌合部6は、横向き部16の下面17から下方に向かって突出した形状に形成される。
【0020】
受け部5には、嵌合部6のテーパー形状に合わせて互いに接近する方向に向かって下方に傾斜する一対の受け面12が形成される。また、第二ダクト2には、受け部5と嵌合部6との接触箇所(一対の受け面12)とは異なる位置で受け部5に当接する当接部7が設けられる。当接部7は、第二ダクト2(横向き部16)の延在方向を向く位置に配置される。好ましくは、嵌合部6とは異なる角度で第一ダクト1の受け部5に接触する位置に、当接部7が配置される。本実施形態の当接部7の位置は、図5図7に示すように、縦向き部18の前面19に設定される。これにより、第二ダクト2の車長方向(前後方向)への移動が拘束された状態となり、第二ダクト2の固定状態が安定する。
【0021】
図6図7に示すように、第一ダクト1と第二ダクト2との嵌合箇所には、スポンジ板状のインシュレーター8が介装される。インシュレーター8は、第一ダクト1と第二ダクト2との接触による騒音や振動の発生を抑える機能を持つ。インシュレーター8が取り付けられる範囲は、図5に示すように、第二ダクト2の嵌合部6から当接部7にかけての矩形範囲とされる。少なくとも、嵌合部6の下面と当接部7の前面とにインシュレーター8を貼り付けておくことが好ましい。図7に示すように、嵌合部6は受け部5の受け面12で第一ダクト1に支えられる。これに対し、当接部7は、受け部5の後側13で支えられる。
【0022】
[2.作用,効果]
(1)上述の実施形態では、第一ダクト1の受け部5に第二ダクト2の嵌合部6が嵌合し、二つの第一ダクト1の間に第二ダクト2が挟まれて固定される。このように、別体に形成された第一ダクト1と第二ダクト2とを嵌合させる構造により、個々のダクト1,2が個別に空調装置4に着脱できる構造を採用しつつ、第一ダクト1の間に第二ダクト2を安定的に保持することができ、コンソールボックス9内の限られたスペースでダクトの取り付け状態の安定性を向上させることができる。また、ダクトを固定するためのブラケットや取り付け金具の数を削減することができ、省スペース化や省コスト化を図ることができる。
【0023】
また、ダクト同士を嵌合させることで、互いの干渉による破損や騒音発生を防止することができ、車両の製品品質を高めることができる。さらに、ダクトの組み付け工程が簡素化されることから、車両の生産効率を向上させることができる。このように、第一ダクトの間に第二ダクトを嵌合させる構造を採用することで、取り付け状態の安定性及び組み付け作業性を向上させることができる。
【0024】
(2)上述の実施形態では、受け部5及び嵌合部6が、第一ダクト1及び第二ダクト2の空調装置4との接続箇所近傍に形成される。このように、第一ダクト1と第二ダクト2とを接続箇所近傍で固定することで、例えば、車体振動や空調装置4の振動が発生したとしても、その振動が受け部5と嵌合部6との嵌合部に達するまでに増幅されにくくなる。したがって、受け部5と嵌合部6との緩みや嵌合はずれを抑制することができ、取り付け状態の安定性をさらに向上させることができる。
【0025】
(3)上述の実施形態では、テーパー形状の嵌合部6が一対の受け部5の上方から嵌め込まれて固定される。このような構造により、第二ダクト2の上下方向のぐらつきを抑制することができる。一対の受け部が並ぶ方向(本実施形態では車幅方向)のぐらつきをも抑制することができる。なお、二つの受け部5が一つの嵌合部6を下方から支える構造になることも、安定性の向上に大きく寄与する。さらに、断面形状がテーパー形状であることから、嵌合部6の剛性を高めることができる。したがって、ダクトの固定状態をさらに安定させることができる。
【0026】
(4)上述の実施形態では、受け部5に一対の受け面12が形成される。一対の受け面12は、嵌合部6のテーパー形状に合わせて、互いに接近する方向に向かって下方に傾斜した形状とされる。このような構造により、一対の受け面12から嵌合部6に与えられる荷重の反力を、嵌合部6が一対の受け面12の中央(すなわち、嵌合部6が最も安定する位置)に移動する方向に作用させることができる。これにより、嵌合部6の安定性を向上させることができる。なお、一対の受け面12を用いることで、二つの第一ダクト1の両方で第二ダクト2を支えることができる。言い換えれば、片方の第一ダクト1に過剰な負担をかけることなく、第二ダクト2を安定的に固定することができる。したがって、ダクトの固定状態をさらに安定させることができる。
【0027】
(5)図3図4に示すように、上述の実施形態では、受け部5が前面視及び下面視で三角形状の輪郭を有する三角錐状に形成される。これにより、受け部5の剛性を高めることができ、第二ダクト2の固定状態をさらに安定させることができる。また、図6に示すように、受け部5がテーパー形状の嵌合部6をその下方でしっかりと支えることができ、ダクトの取り付け状態の安定性を向上させることができる。
【0028】
(6)上述の実施形態では、嵌合部6とは異なる位置で受け部5に当接する当接部7が第二ダクト2に設けられる。受け部5に対する第二ダクト2の接触点を複数箇所に設定することで、ダクトの固定状態をさらに安定させることができる。また、第二ダクト2の回転方向のぐらつき(第二ダクト2と空調装置4との接続箇所を中心とした回動)を抑制することができる。これにより、図8に白抜き矢印で示すような方向に第二ダクト2が移動しにくくなり、ダクトの固定状態をさらに安定させることができる。
【0029】
(7)上述の実施形態では、図5に示すように、第二ダクト2には横向き部16と縦向き部18とが設けられる。横向き部16は、空調装置4の後面に接続されて車長方向に延在する。縦向き部18は、横向き部16の後端部から下方及び後方に向かって膨出した形状に形成される。このような構造により、第二ダクト2の重心点を前方かつ下方へと移動させることができる。したがって、第二ダクト2と空調装置4との接続箇所に作用しうる力のモーメントを小さくすることができ、第二ダクト2の固定状態を安定させることができる。
【0030】
また、第二ダクト2の嵌合部6は、横向き部16の下面17から下方に向かって突出した形状に形成される。このように、横向き部16の下面17に嵌合部6を配置することで、第二ダクト2と空調装置4との接続箇所に近い位置で第一ダクト1の受け部5と嵌合させて第二ダクト2を支えることができる。したがって、第二ダクト2の固定状態をさらに安定させることができる。
【0031】
さらに、第二ダクト2の当接部7は、縦向き部18の前面19に設けられる。このような構成により、第二ダクト2の前後方向の移動を拘束することができる。また、当接部7が嵌合部6よりも後方かつ下方に配置されていることから、第二ダクト2をその自重で第一ダクト1の受け部5に当接させることができる。したがって、第二ダクト2の固定状態をさらに安定させることができる。
【0032】
(8)上述の実施形態では、図8に示すように、第三ダクト3に接続される第二ダクト2の後端開口部15が斜め上方に向かって開口した形状に形成される。これにより、第三ダクト3を第二ダクト2に組み付ける際に、第三ダクト3の前端開口部20を第二ダクト2の後端開口部15に対して上から被せるように接続することができる。したがって、第二ダクト2と第三ダクト3との組み付け作業性を向上させることができる。
【0033】
(9)図1に示すように、受け部5が設けられる第一ダクト1は、車両の後部座席の足元に空調風を導くダクトである。一方、嵌合部6や当接部7が設けられる第二ダクト2は、車両の後部座席の上方に空調風を導くダクトである。このように、後部座席に空調風を供給するための二種類のダクトに受け部5,嵌合部6,当接部7を設けることで、他の固定用ブラケットや固定具などを追加することなく、これらのダクト1,2の固定状態を安定させることができる。なお、第一ダクト1及び第二ダクト2はペアで装備されることが多く、いずれか一方のダクトのみが車両に搭載されることはあまりない。したがって、これらのダクト1,2を嵌合させる構造は合理的であるといえる。
【0034】
[3.変形例]
上記の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、本実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0035】
上述の実施形態では、第二ダクト2に嵌合部6と当接部7とが設けられているが、当接部7は省略可能である。本件で開示する車両用空調ダクトの最小構成は、受け部5を有する第一ダクト1と嵌合部6を有する第二ダクト2とを備えた構成である。なお、当接部7,第三ダクト3,横向き部16,縦向き部18などに関する構成は、それぞれが独立して最小構成に付加することのできる要素である。
【0036】
上述の実施形態では、第一ダクト1が第二ダクト2の下方に配置された構造を例示したが、第二ダクト2を第一ダクト1の下方に配置した構造にしてもよい。この場合、第二ダクト2の嵌合部6を第一ダクト1の受け部5に対して下方から上方に向かって嵌合させればよい。少なくとも第一ダクト1の受け部5と第二ダクト2の嵌合部6とが嵌合する構造にすることで、上述の実施形態と同様の効果を奏するものとなる。
【符号の説明】
【0037】
1 第一ダクト
1A 横架部
1B 縦架部
1C 第二横架部
2 第二ダクト
3 第三ダクト
4 空調装置
5 受け部
6 嵌合部
7 当接部
8 インシュレーター
9 コンソールボックス
12 受け面

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8