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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】音出力制御システム
(51)【国際特許分類】
   B66B 3/00 20060101AFI20230704BHJP
【FI】
B66B3/00 Z
B66B3/00 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022107809
(22)【出願日】2022-07-04
【審査請求日】2022-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】物部 愛
(72)【発明者】
【氏名】濱口 萌子
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/155597(WO,A1)
【文献】特開2013-216427(JP,A)
【文献】特開昭53-008948(JP,A)
【文献】特開2011-121694(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0145487(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/00-3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータにおける乗りかごが戸開閉を行う階の乗場の音を集音するマイクと、
前記マイクで集音された音を前記乗りかご内に出力するスピーカと、
前記乗りかごの戸開閉動作を取得する乗りかご情報取得部と、
前記乗りかご情報取得部が取得した前記乗りかごの戸開閉動作に応じて、前記乗場に設置された前記マイクによって集音された音を前記スピーカが出力するように制御する音出力制御部と、を備える、
音出力制御システム。
【請求項2】
前記音出力制御部は、出発階における前記乗りかごの戸閉動作中から、前記乗りかごの移動運転開始後の所定のタイミングまで、前記出発階の乗場に設置された前記マイクによって集音された音を前記スピーカが出力するように制御する、
請求項1に記載の音出力制御システム。
【請求項3】
前記音出力制御部は、前記乗りかごの行先階到着前の所定のタイミングから、行先階における前記乗りかごの戸開動作中まで、前記行先階の乗場に設置された前記マイクによって集音された音を前記スピーカが出力するように制御する、
請求項1に記載の音出力制御システム。
【請求項4】
前記音出力制御部は、前記乗りかごの移動運転開始後に、前記出発階の乗場の音の出力レベルが漸減するように制御する、
請求項2に記載の音出力制御システム。
【請求項5】
前記音出力制御部は、前記行先階到着前の所定のタイミングから、前記行先階の乗場の音の出力レベルが漸増するように制御する、
請求項3に記載の音出力制御システム。
【請求項6】
前記乗場の音量を取得する音量取得部を備え、
前記音出力制御部は、前記音量取得部が取得した前記音量に応じて、前記スピーカの音出力レベルの変化を制御する、
請求項4または5に記載の音出力制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は音出力制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータの乗りかご内には、例えばBGM(Back Ground Music)や音声案内等が放送されている。乗りかご内の放送に関する技術として、例えば、特許文献1には、待機空間であるかご室において、利用者が気まずさを感じているか否かを判断し、判断結果に応じて放送を行う技術が開示されている。特許文献1に開示されている技術では、利用者が気まずさを感じていると判断した場合、気まずさを緩和する放送を行うことで、エレベータ利用時におけるストレスを軽減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-056755
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術を含め、乗りかごの戸の開閉時に、乗りかご内で乗場と雰囲気が異なる音を聴くことで、利用者が違和感を覚える場合がある。
【0005】
本発明の一態様は、乗りかごの戸開閉時に、聞こえてくる音によって利用者が違和感を覚えることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の態様1に係る音出力制御システムは、エレベータにおける乗りかごが戸開閉を行う階の乗場の音を集音するマイクと、前記マイクで集音された音を前記乗りかご内に出力するスピーカと、前記乗りかごの戸開閉動作を取得する乗りかご情報取得部と、前記乗りかご情報取得部が取得した前記乗りかごの戸開閉動作に応じて、前記スピーカの出力を制御する音出力制御部と、を備える。
【0007】
当該構成によれば、乗りかごの戸開閉動作に応じて、マイクで集音された乗場の音が乗りかご内に出力されるため、乗りかごの戸の開閉時に、利用者に聞こえてくる音の変化が緩和される。その結果、乗りかごの戸開閉時に聞こえてくる音によって利用者が違和感を覚えることを抑制することができる。
【0008】
本発明の態様2に係る音出力制御システムは、上記態様1において、前記音出力制御部は、出発階における前記乗りかごの戸閉動作中から、前記乗りかごの移動運転開始後の所定のタイミングまで、前記出発階の乗場に設置された前記マイクによって集音された音を前記スピーカが出力するように制御してもよい。
【0009】
当該構成によれば、出発階における戸閉動作中から移動運転開始後の所定のタイミングまでの間に、出発階の乗場の音が利用者に聞こえてくるので、利用者は乗場の雰囲気から乗りかご内の雰囲気への変化を緩やかに感じることができる。よって、利用者に、閉塞した空間である乗りかごに入ったことを意識しにくくさせることができる。
【0010】
本発明の態様3に係る音出力制御システムは、上記態様1において、前記音出力制御部は、前記乗りかごの行先階到着前の所定のタイミングから、行先階における前記乗りかごの戸開動作中まで、前記行先階の乗場に設置された前記マイクによって集音された音を前記スピーカが出力するように制御してもよい。
【0011】
当該構成によれば、行先階到着前の所定のタイミングから行先階における戸開動作中までの間に、行先階の乗場の音が利用者に聞こえてくるので、利用者は乗りかご内の雰囲気から乗場の雰囲気への変化を緩やかに感じることができる。よって、利用者に、乗りかご内の閉塞した空間から乗場への移行をよりスムーズに感じさせることができる。
【0012】
本発明の態様4に係る音出力制御システムは、上記態様2において、前記音出力制御部は、前記乗りかごの移動運転開始後に、前記出発階の乗場の音の出力レベルが漸減するように制御してもよい。
【0013】
当該構成によれば、出発階からの移動運転開始後に、出発階の乗場の音が徐々に小さくなっていくので、出発階の乗場の雰囲気を徐々に薄めていくことができる。よって、利用者に、雰囲気の切り替わりをスムーズに感じさせることができる。
【0014】
本発明の態様5に係る音出力制御システムは、上記態様3において、前記音出力制御部は、前記行先階到着前の所定のタイミングから、前記行先階の乗場の音の出力レベルが漸増するように制御してもよい。
【0015】
当該構成によれば、行先階到着前の所定のタイミングから、行先階の乗場の音が徐々に大きくなっていくので、行先階の乗場の雰囲気を徐々に高めていくことができる。よって、利用者に、雰囲気の切り替わりをスムーズに感じさせることができる。
【0016】
本発明の態様6に係る音出力制御システムは、上記態様4または5において、前記乗場の音量を取得する音量取得部を備え、前記音出力制御部は、前記音量取得部が取得した前記音量に応じて、前記スピーカの音出力レベルの変化を制御してもよい。
【0017】
当該構成によれば、戸開閉を行う階の乗場の音量にあわせて乗りかご内での音出力レベルの変化が制御される。よって、乗場の音量に応じて、乗りかご内での音出力レベルをより自然に変化させることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、乗りかごの戸開閉時に、聞こえてくる音によって利用者が違和感を覚えることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態1に係る音出力制御システムの構成を示すブロック図である。
図2】音出力制御システムにおいて行われる音出力制御の内容を説明するグラフである。
図3】音出力制御システムに含まれる各装置が実行する処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
図4】変形例に係る音出力制御システムにおいて行われる音出力制御を説明するグラフである。
図5】本発明の実施形態2に係る音出力制御システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔実施形態1〕
<音出力制御システム100の概要>
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態1に係る音出力制御システム100の構成を示すブロック図である。音出力制御システム100は、エレベータ1の出発階および行先階の乗場の音を取得し、取得した音を乗りかご11の中で出力するシステムである。図1に示すように、音出力制御システム100は、エレベータ1、エレベータ制御装置2、マイク3、および音出力制御装置5を備える。
【0021】
<エレベータ1>
図1に示すように、エレベータ1は、複数の階床間を移動可能な少なくとも1つの乗りかご11を備える。また、エレベータ1は、乗りかご11内に設けられるスピーカ4を備える。また、エレベータ1は、各乗りかご11を各階床に移動させるためのモータ等の動作部(不図示)を備える。エレベータ1は、乗りかご11を移動させることで、利用者を各階床間において移動させる搬送装置である。エレベータ1はエレベータ制御装置2からの制御信号を受信し、当該制御信号に従い、動作部を動作させることで、乗りかご11を各階床に移動させる。また、乗りかご11は、エレベータ制御装置2からの制御信号により各階床において戸の開閉を行う。また、エレベータ1の各乗場には各乗りかご11に対応した戸が設けられ、当該戸は、各乗りかご11の戸の開閉に連動して開閉する。各乗りかご11は、位置、動作状況および戸開閉状態を示す信号を随時エレベータ制御装置2に送信する。
【0022】
(スピーカ4)
スピーカ4は、マイク3で集音された音を、音出力制御装置5の制御に従い乗りかご11内に出力する。スピーカ4は、音出力制御装置5から音声信号を受信し、受信した音声信号を出力する。
【0023】
図1に示すように、スピーカ4は、エレベータ1の乗りかご11内に設けられる。乗りかご11が複数存在する場合、スピーカ4は、それぞれの乗りかご11内に少なくとも1つずつ設けられる。なお、スピーカ4は、1つの乗りかご11内に複数設けられていてもよい。
【0024】
<エレベータ制御装置2>
図1に示すように、エレベータ制御装置2は、制御部21および通信部22を備える。エレベータ制御装置2は、エレベータ1を利用する利用者の入力(乗場での呼び登録や乗りかご11内での行先階入力など)に応じてエレベータ1を動作させる。エレベータ制御装置2は、エレベータ1を利用する利用者によって行われた入力に応じて動作部を動作させることでエレベータ1の乗りかご11の移動を制御する。
【0025】
具体的には、乗場に設けられた呼びボタンなどの入力装置(不図示)に入力が行われると、制御部21は、入力が行われた階を出発階とし、いずれかの乗りかご11を当該出発階に移動させる。当該乗りかご11が出発階に到着すると、制御部21は、当該乗りかご11の戸を開くよう制御する。また、当該乗りかご11の戸が開いてから所定時間後、または乗りかご11内の入力装置(不図示)に対して乗りかご11の戸を閉じることを指示する入力が行われると、制御部21は、当該乗りかご11の戸を閉じるよう制御する。
【0026】
利用者が乗りかご11に乗り込んだ後、乗りかご11内の行先階入力ボタンなどの入力装置(不図示)を用いて行先階が入力されると、制御部21は、乗りかご11に行先階を指示する制御信号をエレベータ1の動作部に送信し、当該乗りかご11を行先階に移動させる。なお、他の装置によって出発階および行先階が登録されてもよい。例えば、制御部21は、利用者が用いる端末装置と通信を行い、当該端末装置から受信した情報に基づき、乗りかご11の動作を制御してもよい。
【0027】
出発階または行先階に乗りかご11が到着すると、制御部21は当該乗りかご11の戸を開かせ、乗りかご11の戸が開いてから所定時間後に戸を閉じさせるよう制御する。また、利用者によって戸の開閉を指示する入力が行われた場合、当該入力に従って乗りかご11の戸を開閉させる。また、制御部21は通信部22を介して音出力制御装置5と通信を行い、各乗りかご11に関する乗りかご情報を、音出力制御装置5に送信する。
【0028】
乗りかご情報とは、例えば乗りかご11が乗り場で戸を閉じている状態、開いている途中の状態、全開の状態、および閉じている途中の状態等、乗りかご11の戸開閉動作の状態を示す情報である。また、乗りかご情報とは、乗りかご11が出発階で停止している状態、出発階から行先階へ移動している状態、および行先階で停止している状態等、乗りかご11の位置および階床間の移動を示す情報も含まれる。
【0029】
なお、乗りかご情報には、出発階へ移動させる乗りかご11が利用中であるか否かを示す情報が含まれていてもよい。乗りかご11が利用中である状態とは、乗りかご11に、既に利用者が乗車している状態であってもよい。例えば、乗りかご11に重量センサや人感センサが設けられていたり、カメラによる撮像画像に対する画像認識装置が行われたりすることによって、乗りかご11内に利用者が乗車していることを認識することが可能である。
【0030】
<マイク3>
マイク3は、エレベータ1の各乗場に設けられる複数のマイクである。マイク3は、エレベータ1における乗りかご11が戸開閉を行う階、換言すると、乗りかご11の出発階および行先階の乗場の音を集音する。また、マイク3は、集音した音を示す音声信号を音出力制御装置5に出力する。乗場の音とは、具体的には館内BGM、周囲の人の会話、および人または物の動作音など、人が乗場にいれば耳にし得る音である。
【0031】
マイク3は、エレベータ1の乗場付近に設けられる。マイク3は、乗場の任意の位置に設けられていてよい。例えば、マイク3は、乗場において利用者がエレベータ1を呼ぶために操作する入力装置(不図示)付近に設けられていてもよい。また、マイク3は、直立した人の耳の高さ程度の位置に設けられていてもよい。マイク3は、人または物が接触した時の接触音を取得する可能性を低減するために、人および物が接触できない位置に設けられていてもよい。
【0032】
マイク3は、少なくともエレベータ1の出発階と行先階に設けられる。エレベータ1が、出発階と行先階とが固定された直通エレベータである場合、マイク3は、それら2つの階床の乗場に設けられる。マイク3は、エレベータ1の乗場が存在する全ての階床にそれぞれ設けられていてもよい。各階床に設けられるマイク3の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。また、各マイク3は同じ種類のマイクであってもよいし、異なる種類のマイクであってもよい。
【0033】
図1に示すように、複数のマイク3には、少なくとも第1マイク31と第2マイク32とが含まれる。乗場に設けられる複数のマイク3の中で、エレベータ1の乗りかご11の出発階に設けられているマイク3が第1マイク31であり、当該乗りかご11の行先階に設けられているマイク3が第2マイク32である。
【0034】
複数のマイク3の中で、どのマイク3が第1マイク31となり、どのマイク3が第2マイク32となるかは、乗りかご11の出発階および行先階によって変動し得る。例えばエレベータ1の乗りかご11が1階から8階へ移動する場合、1階に設けられるマイク3が第1マイク31となり、8階に設けられるマイク3が第2マイク32となる。また、乗りかご11が8階から2階へ移動する場合、8階に設けられるマイク3が第1マイク31となり、2階に設けられるマイク3が第2マイク32となる。このように、乗りかご11の出発階および行先階に応じてどのマイク3が第1マイク31または第2マイク32となるかが決定される。
【0035】
また、エレベータ1が複数の乗りかご11を備える場合、各乗りかご11に対応するマイク3が各階床に設けられていてもよい。この場合、ある乗りかご11の出発階に設けられているマイク3のうち、当該乗りかご11に対応するマイク3が第1マイク31となる。
【0036】
<音出力制御装置5>
音出力制御装置5は、エレベータ1の乗りかご11の動作状況を示す乗りかご情報に応じて、出発階および行先階の乗場の音声を乗りかご11内に出力させる装置である。音出力制御装置5は、エレベータ1の乗りかご11に関する乗りかご情報に応じて、出発階および行先階の乗場の音声を乗りかご11内に出力させる装置である。
【0037】
図1に示すように、音出力制御装置5は、制御部51、通信部52、および音声信号セレクタ53を備え、エレベータ制御装置2と通信可能に接続されている。また、音出力制御装置5は、マイク3、およびスピーカ4と接続されており、マイク3からの音声信号の取得およびスピーカ4への音声信号の出力が可能である。制御部51は、音出力制御装置5の各部の動作を制御する。
【0038】
図1に示すように、制御部51は、乗りかご情報取得部54、および音出力制御部55を備える。通信部52は、音出力制御装置5とエレベータ制御装置2との間における情報の送受信を行う。当該送受信の方法は特に限定されず、無線通信であってもよいし、有線通信であってもよい。
【0039】
音声信号セレクタ53は、マイク3およびスピーカ4と接続されており、マイク3からの音声信号の取得およびスピーカ4への音声信号の出力を行う。音声信号セレクタ53は、音出力制御部55の制御に従い、選択されたマイク3、例えば第1マイク31から出発階の乗場の音を示す音声信号を、選択された乗りかご11内のスピーカ4へ出力するように切り替える。また、音声信号セレクタ53は、音出力制御部55の制御により、スピーカ4へ出力する音声信号の出力レベルを制御する。
【0040】
(乗りかご情報取得部54)
乗りかご情報取得部54は、通信部52を介してエレベータ制御装置2と通信を行い、エレベータ制御装置2から、乗りかご情報を受信する。乗りかご情報取得部54が受信する乗りかご情報には、各乗りかご11の出発階、行先階、位置、移動状況および戸開閉動作の状態を示す情報が含まれる。乗りかご情報取得部54は、乗りかご11の出発階、行先階、位置および戸開閉動作の状態を示す情報を音出力制御部55に出力する。
【0041】
(音出力制御部55)
以下、図2を用いて音出力制御部55が行う制御について説明する。図2は、音出力制御装置5において行われる音出力制御の内容を説明するためのグラフである。図2の符号201で示すグラフは、乗りかご11内に乗車中の利用者に聞こえる音の音量を示すグラフであり、符号202で示すグラフは、スピーカ4から出力される音の出力レベル(音量)を示すグラフである。符号202のグラフにおいて、符号Aで示される線は、出発階の乗場で集音された音の出力レベルを示し、符号Bで示される破線は、行先階の乗場で集音された音の出力レベルを示す。
【0042】
音出力制御部55は、乗りかご11の戸開閉動作、乗りかご11の出発階、行先階、位置、および移動状況に応じて、マイク3からの音声信号の取得およびスピーカ4からの音声信号の出力を制御する。音出力制御部55は、乗りかご情報取得部54から、乗りかご11の出発階、行先階、位置、移動状況、戸開閉動作等を示す乗りかご情報を取得する。音出力制御部55は、取得した乗りかご情報に基づき、音声信号セレクタ53に対して、選択すべきマイク3および出力先のスピーカ4を指示するとともに、スピーカ4へ出力される音声信号の出力レベルを指示する。
【0043】
一例として、音出力制御部55は、出発階における乗りかご11の戸閉動作中から、乗りかご11の移動運転開始後の所定のタイミングまで、出発階の乗場に設置された第1マイク31によって集音された音をスピーカ4が出力するように制御する。また、音出力制御部55は、乗りかご11の移動運転開始後に、出発階の乗場の音の出力レベルが漸減するようにスピーカ4へ出力される音声信号の出力レベルを制御する。これにより、スピーカ4から出力される音の出力レベル(音量)が制御される。
【0044】
より具体的には、音出力制御部55は、乗りかご情報取得部54から、乗りかご11の出発階を示す情報を取得すると、当該出発階に設けられたマイク3である第1マイク31を特定する。また、音出力制御部55は、音声信号セレクタ53を制御し、特定した第1マイク31から、第1マイク31が集音した出発階の乗場の音を示す音声信号を取得させる。音出力制御部55は、乗りかご情報取得部54から、乗りかご11が出発階に到着し、戸を開いた後、戸を閉じ始めたことを示す情報を取得すると、乗りかご11内のスピーカ4に出力する音声信号の出力レベルを上げることで、スピーカ4による出発階の乗場の音の出力を開始させる。音出力制御部55は、戸が閉じ始めた時点(図2の符号T1で示す時点)では音声信号の出力レベルが低くなり、戸が閉まっていく期間(図2の矢印X1で示す期間)中に亘って、音声信号の出力レベルが漸増するように音声信号セレクタ53を制御する。また、音出力制御部55は、乗りかご11が戸を閉じた時点(図2の符号T2で示す時点)で音声信号の出力レベルを最大とするように制御を行う。このような制御により、スピーカ4から出力される音の出力レベル(音量)は図2のX1で示す期間の出力レベルのようになる。
【0045】
音出力制御部55は、乗りかご11が行先階に向かって移動を開始したことを示す情報を乗りかご情報取得部54から取得すると、図2の符号202のグラフで示すように、スピーカ4から出力させている音の出力レベルを漸減させる。音の出力レベルを漸減させる期間(図2の矢印X2で示す期間)は、例えば乗りかご11が出発階から行先階まで移動するために要する時間に応じて適宜変更されてよい。また、音の出力レベルを漸減させ始めるタイミングは、戸が閉じた後、所定時間が経過したタイミングであってもよい。音出力制御部55は、利用者に聞こえる総音量の漸減の程度が、スピーカ4からの音の出力がない状態で乗りかご11内の利用者に聞こえる音の漸減の程度よりも緩やかになるように、スピーカ4から出力させる音の出力レベルを変化させる。また、音出力制御部55は、出発階の音の出力レベルを、乗りかご11が出発階と行先階の中間地点に差し掛かった辺り、または差し掛かる前の時点(図2の符号T3で示す時点)で0にするよう制御する。音出力制御部55は、音の出力レベルを、漸減させ始めてから所定時間後に0となるように制御を行ってもよい。音出力制御部55は、音の出力レベルを0にさせた後、音声信号セレクタ53を制御し、音声信号セレクタ53と第1マイク31との間の接続を切断させてもよい。
【0046】
乗りかご11に乗車している利用者には、戸の外から聞こえてくる音と、スピーカ4から出力される音との両方が聞こえる。戸が閉じるにつれて戸の外から聞こえる実際の乗場の音は小さくなっていくが、図2の符号202のグラフで示すように、スピーカ4から聞こえる音は大きくなっていく。そのため、図2の符号201のグラフで示されるように、乗りかご11の戸開中から戸閉までの期間中、利用者に聞こえる総音量の変化が抑制される。また、乗りかご11が移動開始後、スピーカ4から出力される音の出力レベルは漸減し、図2の符号T3に示す時点で0となる。これにより、乗りかご11内の利用者に聞こえる乗場の音は、徐々に小さくなっていき、最終的には聞こえなくなる。
【0047】
一般的に、エレベータの乗りかごの戸が閉まると、急激に乗場から聞こえる音が小さくなる。このように急激に聞こえる音の音量が変化すると、違和感または不安感を覚える利用者が存在する。ここで、音出力制御システム100によって音出力制御が行われている乗りかご11では、戸が閉鎖した時点において、乗場で聞こえる音と大きく変わらない出力レベルの音がスピーカ4から出力される。そのため、利用者に対して乗りかご11という閉塞した空間内にいることを意識しにくくさせることができる。また、音の出力レベルが緩やかに漸減するため、出発階の乗場の雰囲気を徐々に薄めていくことができる。そのため、利用者に与える違和感を低減しつつ、雰囲気の切り替わりをスムーズに感じさせることができる。なお、図2に示すように、出発階において戸閉動作中に利用者に聞こえる音の音量は、戸開中と同程度となっている。しかしながら、戸閉動作中に利用者に聞こえる音の音量は、漸減していってもよい。ただし、音出力制御部55は、出発階において戸閉動作中に利用者に聞こえる音の音量が、音出力制御装置5による音出力制御が行われない場合よりも漸減の程度が小さくなるように乗場の音を出力させる。
【0048】
また、音出力制御部55は、乗りかご11の行先階到着前の所定のタイミングから、行先階における乗りかご11の戸開動作中まで、行先階の乗場に設置されたマイク3によって集音された音をスピーカ4が出力するように制御する。また、音出力制御部55は、行先階到着前の所定のタイミングから、行先階の乗場の音の出力レベルが漸増するようにスピーカ4を制御する。
【0049】
具体的には、音出力制御部55は、乗りかご情報取得部54から、乗りかご11の行先階を示す情報を取得すると、当該行先階に設けられたマイク3である第2マイク32を特定し、音声信号セレクタ53の接続先を第2マイク32に切り替えさせる制御を行う。これにより、第2マイク32から行先階の乗場の音を示す音声信号が音声信号セレクタ53により取得される。また、音出力制御部55は、音声信号セレクタ53を制御し、出発階の音の出力レベルを0にさせた後(図2の符号T3で示す時点の後)、スピーカ4に行先階の音を示す音声信号を送信させる。これにより、スピーカ4からの行先階の音の出力が開始される。行先階の音の出力開始の時点(図2の符号T4で示す時点)は、スピーカ4から出力させている出発階の音の出力レベルが0になった後すぐであってもよいし、当該出力レベルを0にしてから所定時間が経過した後であってもよい。その他、スピーカ4による行先階の音の出力開始は、乗りかご11が出発階と行先階の中間地点を通り過ぎた後であってもよいし、乗りかご11が行先階に到着するタイミングから予め設定された所定時間前の時点であってもよい。
【0050】
音出力制御部55は、行先階の音の出力開始後、乗りかご11が行先階に到着する時点(図2の符号T5で示す時点)までの期間(図2の矢印X3で示す期間)中、当該音の出力レベルを漸増させ、符号T5で示す時点で出力レベルが最大となるよう音声信号セレクタ53を制御する。音出力制御部55は、乗りかご情報取得部54から、行先階で乗りかご11が戸を開き始めたことを示す情報を取得すると、音声信号セレクタ53を制御し、乗りかご11の戸開動作中の期間(図2の矢印X4で示す期間)中に亘って、行先階の音の出力レベルを漸減させる。音出力制御部55は、戸が全開になった時点(図2の符号T6で示す時点)で当該出力レベルが0となるように音声信号セレクタ53からの出力を制御する。これによりスピーカ4からの音の出力レベルが0となる。
【0051】
図2の符号201のグラフに示すように、乗りかご11内の利用者には、行先階への移動中、行先階の乗場の音が徐々に大きくなっていくように聞こえる。また、乗りかご11が行先階に到着し戸を開くと、スピーカ4から出力される音の出力レベルが漸減するため、行先階到着時点から戸が全開になるまでの間に利用者に聞こえる音は大きく変化せず、利用者に対して与える違和感が少ない。また、利用者にとって聞こえる音が大きくなり過ぎる可能性が低減されている。
【0052】
<音出力制御システム100の効果>
上述のように、本実施形態に係る音出力制御システム100は、エレベータ1における乗りかご11が戸開閉を行う階の乗場の音を集音するマイク3(第1マイク31および第2マイク32)と、マイク3で集音された音を乗りかご11内に出力するスピーカ4と、乗りかご11の戸開閉動作を取得する乗りかご情報取得部54と、乗りかご情報取得部54が取得した乗りかご11の戸開閉動作に応じて、スピーカ4の出力を制御する音出力制御部55と、を備える。
【0053】
上記の構成によれば、乗りかご11の戸開閉動作に応じて、マイク3で集音された乗場の音が乗りかご11内に出力されるため、乗りかご11の戸の開閉時に、利用者に聞こえてくる音の変化が緩和される。その結果、乗りかご11の戸開閉時に聞こえてくる音によって利用者が違和感を覚えることを抑制することができる。
【0054】
また、音出力制御システム100において、音出力制御部55は、出発階における乗りかご11の戸閉動作中から、当該乗りかご11の移動運転開始後の所定のタイミングまで、出発階の乗場に設置された第1マイク31によって集音された音をスピーカ4が出力するように制御する。
【0055】
上記の構成によれば、出発階における戸閉動作中から移動運転開始後の所定のタイミングまでの間に、出発階の乗場の音が利用者に聞こえてくるので、利用者は乗場の雰囲気から乗りかご11内の雰囲気への変化を緩やかに感じることができる。よって、利用者に、閉塞した空間である乗りかご11に入ったことを意識しにくくさせることができる。
【0056】
また、音出力制御システム100において、音出力制御部55は、乗りかご11の行先階到着前の所定のタイミングから、行先階における乗りかご11の戸開動作中まで、行先階の乗場に設置された第2マイク32によって集音された音をスピーカ4が出力するように制御する。
上記の構成によれば、行先階到着前の所定のタイミングから行先階における戸開動作中までの間に、行先階の乗場の音が利用者に聞こえてくるので、利用者は乗りかご11内の雰囲気から乗場の雰囲気への変化を緩やかに感じることができる。よって、利用者に、乗りかご11内の閉塞した空間から乗場への移行をよりスムーズに感じさせることができる。
【0057】
また、音出力制御システム100において、音出力制御部55は、乗りかご11の移動運転開始後に、出発階の乗場の音の出力レベルが漸減するように制御する。上記の構成によれば、出発階からの移動運転開始後に、出発階の乗場の音が徐々に小さくなっていくので、出発階の乗場の雰囲気を徐々に薄めていくことができる。よって、利用者に、雰囲気の切り替わりをスムーズに感じさせることができる。
【0058】
また、音出力制御システム100において、音出力制御部55は、行先階到着前の所定のタイミングから、行先階の乗場の音の出力レベルが漸増するように制御する。上記の構成によれば、行先階到着前の所定のタイミングから、行先階の乗場の音が徐々に大きくなっていくので、行先階の乗場の雰囲気を徐々に高めていくことができる。よって、利用者に、雰囲気の切り替わりをスムーズに感じさせることができる。
【0059】
なお、上記の例では、スピーカ4から出力される音の出力レベルは、音声信号セレクタ53がスピーカ4へ出力する音声信号の出力レベルを制御することによって制御されているが、これに限定されるものではない。例えば、音出力制御部55が、スピーカ4のアンプの出力レベルを制御するようになっていてもよい。
【0060】
<音出力制御システム100における処理の流れの一例>
以下、図3を用いて本実施形態に係る音出力制御システム100における処理の流れの一例を説明する。図3は、音出力制御システム100における処理の流れの一例を説明するシーケンス図である。
【0061】
まず、乗場の入力装置に入力が行われるなどして呼び登録が行われると(S1でYES)、エレベータ制御装置2の制御部21は、当該入力に基づき出発階を特定し、出発階に移動させる乗りかご11を特定する(S2)。
【0062】
次に、制御部21は、決定した乗りかご11に、出発階へ移動するよう指示する信号をエレベータ1の動作部に送信する。エレベータ1の動作部は当該信号を受信すると、決定された乗りかご11を、指示された出発階へ移動させる(S11)。
【0063】
続いて、制御部21は、通信部22を介して音出力制御装置5と通信を行い、音出力制御装置5に、出発階へ移動させた乗りかご11を示す識別情報および当該乗りかご11が向かう出発階を示す乗りかご情報を送信する。
【0064】
乗りかご情報取得部54は、通信部52を介してエレベータ制御装置2から乗りかご情報を受信する。乗りかご情報取得部54は、受信した乗りかご情報に基づき出発階を特定する(S21)。なお、この例では、乗りかご情報には、出発階へ移動させる乗りかご11が利用中でない、すなわち乗りかご11内に利用者が乗車していないことを示す情報も含まれていることを想定している。
【0065】
乗りかご情報取得部54は、特定した出発階を示す情報を音出力制御部55に出力する。音出力制御部55は、出発階を示す情報を取得すると、当該出発階の乗場に設けられた第1マイク31を特定し、音声信号セレクタ53を制御することで第1マイク31からの乗場の音の取得を開始する(S22)。
【0066】
ステップS11の後、乗りかご11が出発階に到着すると(S12)、エレベータ1は、出発階に到着したことを示す信号をエレベータ制御装置2に送信する。エレベータ制御装置2の制御部21は、当該信号を受信すると、乗りかご11の戸を開くことを指示する信号を乗りかご11に送信する。
【0067】
乗りかご11は、当該信号を受信すると、乗りかご11の戸開動作を開始させる(S13)。この時、出発階の乗場の戸も乗りかご11の戸に連動して開く。戸が全開になってから所定時間後、または戸を閉じることを指示する入力が行われた場合、エレベータ制御装置2の制御部21は、乗りかご11の戸を閉じることを指示する信号を乗りかご11に送信する。乗りかご11は、当該信号を受信すると、乗りかご11の戸を閉じさせる(S14)。
【0068】
また、制御部21は、乗りかご11の戸が閉じ始めたことを示す情報を乗りかご情報取得部54に送信する。乗りかご情報取得部54は、通信部52を介して乗りかご11の戸が閉じ始めたことを示す情報を受信すると、乗りかご11の識別情報および当該乗りかご11が戸を閉じ始めたことを示す情報を音出力制御部55に出力する。音出力制御部55は、当該情報を取得すると、音声信号セレクタ53を制御し、出発階で第1マイク31によって集音された音の音声信号を、当該乗りかご11のスピーカ4から出力させる。音出力制御部55は、戸の閉鎖に伴い、スピーカ4から出力される音の出力レベルが漸増するように音声信号セレクタ53からの出力を制御する(S23)。
【0069】
続いて、利用者の入力によって行先階が指定されると(S3でYES)、エレベータ制御装置2の制御部21は、当該行先階へ移動することを指示する信号をエレベータ1の動作部に送信する。エレベータ1の動作部は、当該信号を受信すると、乗りかご11の行先階への移動を開始させる(S15)。なお、S3の処理は、S13の処理の後からS14の処理の前までの間に行われてもよい。
【0070】
乗りかご情報取得部54は、通信部52を介して乗りかご11の行先階を示す情報をエレベータ制御装置2の制御部21から受信すると、当該情報を音出力制御部55に出力する。音出力制御部55は、行先階を示す情報を取得すると、当該行先階の乗場に設けられた第2マイク32を特定し、音声信号セレクタ53を制御することで第2マイク32からの乗場の音の取得を開始する(S24)。
【0071】
次に、エレベータ制御装置2の制御部21は、乗りかご11が行先階への移動を開始したことを示す情報を乗りかご情報取得部54に送信する。乗りかご情報取得部54は、乗りかご11が行先階への移動を開始したことを示す情報を音出力制御部55に出力する。
【0072】
乗りかご11が行先階への移動を開始してから所定時間が経過すると、音出力制御部55は、出発階の音の出力レベルを漸減させ(S25)、漸減開始から所定時間後に出力レベルが0になるよう音声信号セレクタ53を制御する。出発階の音の出力レベルが0になった後(S26でYES)、音出力制御部55は、行先階の音の出力を開始し、スピーカ4から出力される当該音の出力レベルを漸増させるよう音声信号セレクタ53を制御する(S27)。
【0073】
一方、乗りかご11が行先階へ到着すると(S16)、エレベータ1は、行先階に到着したことを示す信号をエレベータ制御装置2に送信する。当該信号を受信すると、エレベータ制御装置2の制御部21は、乗りかご11の戸を開くことを指示する信号を乗りかご11に送信する。乗りかご11は、当該信号を受信すると、戸の開放を開始させる(S17)。
【0074】
また、エレベータ制御装置2の制御部21は、乗りかご11の行先階での戸の開放が開始したことを示す情報を音出力制御装置5に送信する。乗りかご情報取得部54は、通信部52を介して乗りかご11が行先階で戸の開放を開始したことを示す情報を受信し、当該情報を音出力制御部55に出力する。
【0075】
音出力制御部55は、当該情報を取得すると、行先階の音の出力レベルを漸減させ(S28)、漸減開始から所定時間後に出力レベルが0になるよう音声信号セレクタ53を制御する。以上で音出力制御システム100における一連の処理が終了する。
【0076】
<変形例>
(変形例1)
上述の音出力制御システム100では、音出力制御部55は、出発階および行先階の乗場の音を乗りかご11内に出力させていたが、出発階の音のみを出力させてもよい。この場合マイク3は、第1マイク31のみが用いられる。
【0077】
(変形例2)
また、音出力制御部55は、行先階の音のみを出力させてもよい。この場合マイク3は、第2マイク32のみが用いられる。
【0078】
(変形例3)
戸開状態の時にスピーカ4から大きな音を出力させた場合、ハウリングが発生する可能性がある。従って、ハウリングの発生を防ぐため、スピーカ4が出力可能な音量の最大値が予め設定されていてもよい。
【0079】
(変形例4)
上述の音出力制御システム100では、エレベータ制御装置2と音出力制御装置5とが別体の装置であり、これらが通信を行うことで情報の送受信を行う構成について説明したが、エレベータ制御装置2と音出力制御装置5とは一体の装置であってもよい。
【0080】
(変形例5)
また、音出力制御部55は、乗りかご11が出発階で戸を閉じてから移動を開始するまでの間においてスピーカ4から出力させる音の出力レベルを漸減させてもよい。さらに、音出力制御部55は、乗りかご11が出発階からの移動を開始してから音の出力レベルを0にするまでの間における漸減の程度を、乗りかご11が出発階で戸を閉じてから移動を開始するまでの間における音の出力レベルの漸減の程度よりも緩やかにしてもよい。
【0081】
出発階で戸を閉じてから移動を開始するまでの間、乗場から乗りかご11内に漏れ聞こえる音の出力レベルは大きく変動せず、乗りかご11が移動を開始すると急激に漸減する。ここで、上述のような音出力制御を行うことで、乗りかご11の戸が閉じてから出発するまでの間において利用者に聞こえる音の総音量は緩やかに漸減する。また、乗りかご11が出発してからスピーカ4が出力する音の出力レベルは、出発前よりも漸減の程度が緩やかになっているため、利用者にとっては、聞こえる音が急激に漸減することなく、戸が閉じたタイミングから通して緩やかに漸減していく。これにより、利用者に対して乗場の雰囲気から乗りかご11内の雰囲気への変化を緩やかに感じさせることが可能である。
【0082】
(変形例6)
上述した実施形態では、乗場の音は音声信号の形式で各装置間において伝送されていた。しかしながら、乗場の音の伝送方法は、音声信号の形式に限られない。例えば、音出力制御装置5とマイク3およびスピーカ4との間にLAN等の通信ネットワークを構築していてもよい。この場合、音出力制御装置5は、乗場の音を示す音声データをマイク3に接続された通信装置から取得し、スピーカ4に接続された通信装置に当該音声データおよび出力に関する制御データを送信することで乗りかご11内に乗場の音を出力させる。
【0083】
(変形例7)
音出力制御部55は、乗りかご11の移動中、出発階および行先階の乗場の音とは異なる音(例えばBGMなど)をスピーカ4から出力させてもよい。スピーカ4から出力させる出発階の乗場の音の出力レベルを漸減させている間、または当該出力レベルが0になってから緩やかに漸増させ、行先階の乗場の音の出力を開始させるまでに緩やかに漸減させる。これにより、乗りかご11内で利用者に聞こえる音がない、または非常に小さい音のみが聞こえる時間を減少させ、利用者が無音の空間にいることによる不安感を覚える可能性を低減させることができる。
【0084】
(変形例8)
乗りかご11が出発階から行先階へ移動している間、途中の階床で停止する場合がある。例えば、乗りかご11が1階から8階へ移動している途中、5階でエレベータ1の呼びが行われ、当該乗りかご11が5階に停止する乗りかご11として選択された場合、当該乗りかご11は一旦5階で停止し、その後8階へ移動する。このように、乗りかご11が停止する階が追加される場合、エレベータ制御装置2は、乗りかご11の識別情報、乗りかご11の停止階が追加されたことを示す情報、および乗りかご11の新たな停止階を示す情報を音出力制御装置5に送信する。乗りかご情報取得部54は、これらの情報を受信すると、新たな停止階を示す情報を音出力制御部55に出力する。音出力制御部55は、当該情報を取得すると、新たな停止階に設置されたマイク3を特定する。また、音出力制御部55は音声信号セレクタ53を制御し、当該マイク3から新たな停止階の乗場の音声信号を取得させる。また、乗りかご情報取得部54は、乗りかご11の停止階が追加されたことを示す情報、および乗りかご11の新たな停止階を示す情報を音出力制御部55に出力する。
【0085】
音出力制御部55は、これらの情報を取得すると、音声信号セレクタ53を制御することで、スピーカ4からの出力を制御する。具体的には、音出力制御部55は、スピーカ4から出発階の音を出力させている場合、新たな停止階に到着する前までに当該音の出力レベルを漸減させ、0にする。また、音出力制御部55は、音声信号セレクタ53を制御し、新たな停止階の乗場の音声信号を、元の行先階の音の出力方法と同様の方法でスピーカ4から出力させる。具体的には、音出力制御部55は、乗りかご11が新たな停止階に到着する所定時間前のタイミングで音声信号セレクタ53を制御し、スピーカ4からの出力を開始させ、その後音の出力レベルを漸増させる。また、音出力制御部55は、乗りかご11が停止階で戸を開くと音の出力レベルを漸減させる。その後、乗りかご11が新たな停止階から元の行先階への移動を開始する時、音出力制御部55は、当該停止階の音声信号を、出発階の音の出力方法と同様の方法でスピーカ4から出力させる。具体的には、音出力制御部55は、乗りかご11の戸の閉鎖に伴い音の出力レベルを漸増させ、乗りかご11が出発すると当該出力レベルを漸減させる。
【0086】
(変形例9)
【0087】
以下、図4を用いて本実施形態の変形例に係る音出力制御システム100において行われる音出力制御について説明する。図4は、本変形例に係る音出力制御装置5において行われる音出力制御の内容を説明するためのグラフである。図4の符号401で示すグラフは、乗りかご11内に乗車中の利用者に聞こえる音の音量を示すグラフであり、符号402で示すグラフは、スピーカ4から出力される音の出力レベル(音量)を示すグラフである。符号402のグラフにおいて、符号Aで示される線は、出発階の乗場で集音された音の出力レベルを示し、符号Bで示される破線は、行先階の乗場で集音された音の出力レベルを示す。なお、図4に示すように、本変形例では、出発階の音の音量と行先階の音の音量が同じまたは大きく変わらない例について説明する。
【0088】
音出力制御部55は、移動中に出発階と行先階の乗場の音とを同時に出力させる。また、音出力制御部55は、出発階の乗場で聞こえる音の音量と移動中に聞こえる音の音量とが大きく変わらないように音声信号セレクタ53からの出力を制御する。また、音出力制御部55は、行先階の乗場で聞こえる音の音量と移動中に聞こえる音の音量とが大きく変わらないように音声信号セレクタ53からの出力を制御する。
【0089】
具体的には、図4に示すように、音出力制御部55は、乗りかご11において出発階での戸閉動作が開始(図4の符号T7)してから終了(図4の符号T8)するまでの期間中(図4の矢印X5で示す期間中)、実施形態1において説明したものと同様の音出力制御を行う。
【0090】
その後、音出力制御部55は、乗りかご11が移動を開始した時点(図4の符号T8で示す時点)では音の出力レベルを変化させず、乗りかご11の移動開始から所定時間経過後の時点(図4の符号T9で示す時点)で出発階の音の出力レベルの漸減を開始する。また、音出力制御部55は、行先階に到着する前の時点(図4の符号T10で示す時点)で出発階の音の出力レベルが0になるよう音声信号セレクタ53からの出力を制御することで、スピーカ4から出力される音の出力レベルを制御する。
【0091】
音出力制御部55は、出発階の音の出力レベルの漸減を開始した時点(図4の符号T9で示す時点)で行先階の音の出力を開始し、出力開始から乗りかご11が行先階に到着するまでの期間中(図4の矢印X6で示す期間中)に亘って行先階の音の出力レベルを漸増させる。音出力制御部55は、出発階の音の出力レベルが0になった時点(図4の符号T10で示す時点)で行先階の音の出力レベルが最大になるよう制御を行う。
【0092】
その後、音出力制御部55、乗りかご11において行先階での戸開動作が開始(図4の符号T11)してから終了(図4の符号T12)するまでの期間中(図4の矢印X7で示す期間中)、実施形態1において説明したものと同様の音出力制御を行う。
【0093】
以上のように、音出力制御部55は、出発階の音と行先階の音とを同時に出力させる。これにより、図4の符号401のグラフに示すように、スピーカ4から出力される出発階の音の音量とスピーカ4から出力される行先階の音の音量と戸の外から聞こえる乗場の音の音量との合計がほぼ一定となる。換言すると、出発階で乗りかご11に乗車してから行先階で乗りかご11から降車するまでの間、利用者に聞こえる音の音量の変化が抑制される。従って、より自然に階床間での雰囲気の移り変わりを利用者に感じさせることができる。
【0094】
(変形例10)
上述の変形例9では、出発階の乗場の音の音量と行先階の乗場の音の音量とが同じかあまり変わらない例について説明した。しかしながら、出発階の音量と行先階の音量が大きく異なる場合、音出力制御部55は、スピーカ4から出力される出発階の音の音量とスピーカ4から出力される行先階の音の音量との合計が、行先階の乗場の音量に近づくように制御してもよい。
【0095】
一例として、一方の乗場の音の音量が大きい場合、音出力制御部55は、音量が大きい側の乗場の音の出力レベルの変化をより大きく、換言するとより早く音量が変化するように音声信号セレクタ53からの出力を制御してもよい。具体的には、出発階の乗場の音量が行先階の乗場の音量よりも大きい場合、音出力制御部55は、出発階の音の出力レベルの漸減を早めるよう音声信号セレクタ53を制御する。これにより、乗りかご11内の利用者に聞こえる音の総音量を、行先階の乗場の音の音量にあわせて徐々に小さくすることができる。
【0096】
別の例として、一方の乗場の音の音量が大きい場合、音出力制御部55は、音量が小さい側の乗場の音の出力レベルの変化をより小さく、換言するとよりゆっくりと音量が変化するように音声信号セレクタ53からの出力を制御してもよい。具体的には、出発階の乗場の音量が行先階の乗場の音量よりも大きい場合、音出力制御部55は、行先階の音の出力レベルの漸増を遅くするよう音声信号セレクタ53を制御する。これにより、乗りかご11内の利用者に聞こえる音の総音量を、行先階の乗場の音の音量にあわせて徐々に小さくすることができる。
【0097】
(変形例11)
また、出発階の乗場の音と行先階の乗場の音とが同時に出力されたとき、利用者に対して不快感を与える可能性を低減するため、上述の変形例9に係る音出力制御システム100において、乗場の音を同時に出力可能な階床が予め設定されていてもよい。音出力制御部55は、乗りかご11の出発階および行先階が、乗場の音を同時に出力可能な階床の組み合わせである場合には変形例9において説明した音出力制御を行ってもよい。一方、乗りかご11の出発階および行先階が、乗場の音を同時に出力可能な階床の組み合わせでない場合、音出力制御部55は、上述の実施形態において記載した方法で音出力制御を行ってもよい。
【0098】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0099】
図5は、本発明の実施形態2に係る音出力制御システム100Aの構成を示すブロック図である。図5に示すように、音出力制御システム100Aは、音出力制御装置5に代えて音出力制御装置5Aを備える点において実施形態1に係る音出力制御システム100と異なる。図5に示すように、音出力制御装置5Aは、制御部51Aを備える。制御部51Aは、音出力制御部55Aおよび音量取得部56を備える点において制御部51と異なる。
【0100】
音量取得部56は、乗場の音量を示す情報を取得する。具体的には、音量取得部56は、音声信号セレクタ53から出発階および行先階の音声信号を取得し、当該音声信号の音量を特定する。音量取得部56は、特定した音声信号の音量を示す情報を音出力制御部55に出力する。
【0101】
音出力制御部55Aは、音量取得部56が取得した音量に応じて音声信号セレクタ53から出力させる音声信号の出力レベルの変化を変更することで、スピーカ4の音出力レベルの変化を制御する。一例として、音出力制御部55Aは、スピーカ4から出力させる音の最大音量を、乗場の音の音量に比例するように音声信号セレクタ53を制御する。別の例として、音出力制御部55Aは、乗場の音の音量に応じて、音声信号セレクタ53から出力させる音声信号の出力レベルの減衰率または増大率を変更する。例えば、音出力制御部55Aは、乗場の音が比較的大きい場合、音声信号の出力レベルの減衰率または増大率を大きくする。これにより、乗場の音が出力されている期間を、乗場の音量によらず一定にすることができる。
【0102】
以上のように、本実施形態に係る音出力制御システム100Aは、音量取得部56および音出力制御部55Aを備える。上記の構成によれば、戸開閉を行う階の乗場の音量にあわせて乗りかご11内での音出力レベルの変化が制御される。よって、乗場の音量に応じて、乗りかご11内での音出力レベルをより自然に変化させることが可能となる。
【0103】
<変形例>
音出力制御システム100Aは、乗りかご11内で聞こえる音を集音可能な乗りかごマイク(不図示)を備えていてもよい。この場合、音声信号セレクタ53は、乗りかごマイクとも接続し、乗りかごマイクが集音した音を示す音声信号を制御部51Aに出力する。また、この場合、音出力制御装置5Aの制御部51Aは、音声信号セレクタ53を介して乗りかごマイクから乗りかご11内で聞こえる音の音声信号を取得可能なかご内音量取得部をさらに備える。なお、音出力制御システム100Aに乗りかご11が複数設けられる場合、乗りかごマイクはそれぞれの乗りかご11内に設けられていてもよい。
【0104】
かご内音量取得部は、乗りかごマイクが集音した乗りかご11内で聞こえる音の音声信号を取得する。また、かご内音量取得部は、当該音声信号に基づき乗りかご11内で聞こえる音の音量を特定し、当該音量を示す情報を音出力制御部55Aに出力する。音出力制御部55Aは、乗場の音の音量に加え、かご内音量取得部から取得した乗りかご11内で聞こえる音の音量を示す情報に基づき、スピーカ4から出力させる音の出力レベルの変化を制御する。
【0105】
例えば、音出力制御部55Aは、乗りかご11内への音声出力を行っていない時点において、乗りかご11の音の音量が所定値以下である場合に、乗りかご11内への音出力を開始する。または、音出力制御部55Aは、乗りかご11内への音声出力を行っていない時点において、乗場の音の音量が乗りかご11内の音の音量よりも所定値以上大きい場合に、乗りかご11内への音出力を開始する。
【0106】
例えば、乗りかご11内で利用者が会話をしている場合、または乗りかご11内において館内アナウンスまたはBGMが流されている場合、これらの音が乗場の音によって妨げられることは利用者にとって好ましくない可能性が高い。ここで、音出力制御部55Aが、上述のように乗りかご11内で聞こえる音の音量に基づく制御を行うことで、これらの音に対してスピーカ4から出力される乗場の音が利用者に対する妨げになる可能性を低減することができる。
【0107】
〔ソフトウェアによる実現例〕
音出力制御装置5および5A(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部51、51Aに含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0108】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0109】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0110】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。
【0111】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0112】
1 エレベータ
3 マイク
4 スピーカ
5、5A 音出力制御装置
11 乗りかご
31 第1マイク
32 第2マイク
54 乗りかご情報取得部
55、55A 音出力制御部
56 音量取得部
100、100A 音出力制御システム
【要約】
【課題】乗りかごの戸開閉時に、聞こえてくる音によって利用者が違和感を覚えることを抑制する。
【解決手段】音出力制御システム(100)は、エレベータ(1)における乗りかご(11)が戸開閉を行う階の乗場の音を集音するマイク(3)と、マイクで集音された音を乗りかご内に出力するスピーカ(4)と、乗りかごの戸開閉動作を取得する乗りかご情報取得部(54)と、乗りかご情報取得部が取得した乗りかごの戸開閉動作に応じて、スピーカの出力を制御する音出力制御部(55)と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5