(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】ナビゲーション装置及びナビゲーション装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01C 19/5783 20120101AFI20230704BHJP
G01D 11/30 20060101ALI20230704BHJP
G01P 1/02 20060101ALI20230704BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20230704BHJP
G01P 15/08 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
G01C19/5783
G01D11/30 S
G01P1/02
G01C21/26 A
G01P15/08 102Z
(21)【出願番号】P 2022503145
(86)(22)【出願日】2021-01-15
(86)【国際出願番号】 JP2021001253
(87)【国際公開番号】W WO2021171822
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-07-11
(31)【優先権主張番号】P 2020033583
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020033587
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年1月8日 CES2020にて展示
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】向山 卓也
(72)【発明者】
【氏名】岡本 一元
(72)【発明者】
【氏名】田中 久紀
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第99/02943(WO,A1)
【文献】特開平10-019922(JP,A)
【文献】特開2006-275947(JP,A)
【文献】特開2007-131146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 19/5783
G01D 11/30
G01P 1/02
G01C 21/26
G01P 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に離隔して対向する一対の側板を有する外殻パネルと、
前記一対の側板に設けられ、移動体側固定部材に固定される一対の固定部と、
前記外殻パネルで囲まれた内部に設けられ、前記第1の方向における前記一対の固定部に挟まれる位置に配置されている慣性センサと、
を備えるナビゲーション装置。
【請求項2】
前記一対の側板は平行に対向しており、
前記一対の側板に直交して配置されたシャーシと、
前記シャーシにおける前記第1の方向に離隔した位置に取り付けられている一対の脚部と、前記一対の脚部を連結する基部とを有するブラケットと、
をさらに備え、
前記慣性センサは、前記ブラケットの前記基部に直接的または間接的に取り付けられている
請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記シャーシは、前記第1の方向から見て、前記固定部の位置に対応しない位置に配置されている請求項2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記慣性センサは、前記第1の方向から見て、前記固定部の位置に対応する位置に配置されている請求項1~3のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
ナビゲーション装置における外殻パネルの一対の側板は第1の方向に離隔して平行に対向しており、前記一対の側板は、車両側固定部材に固定される一対の固定部を有し、前記第1の方向から見て、前記一対の側板の間の前記一対の固定部の位置に対応しない位置に、前記一対の側板に直交する姿勢で平板状のシャーシを配置し、
慣性センサを実装したセンサ基板を所定形状のブラケットに取り付け、
前記ナビゲーション装置に振動を付与したときに前記シャーシにおける振幅が他の部位における振幅よりも小さい部位に前記ブラケットを固定して、前記慣性センサを前記第1の方向における前記一対の固定部に挟まれる位置に配置する
ナビゲーション装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、慣性センサを備えるナビゲーション装置及びナビゲーション装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、慣性センサを備えるカーナビゲーション装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
ナビゲーション装置に搭載されている慣性センサは、ナビゲーション装置が取り付けられている車両などの移動体の動きと同じ動きをすることが望ましい。従来のカーナビゲーション装置においては、車両側部材との固定位置に対する慣性センサの設置位置が考慮されていない。そのため、慣性センサの設置位置が固定位置から遠い場合などにおいて、外部から受ける力または振動によるカーナビゲーション装置に生じる変形または振れなどによって慣性センサの挙動と車両の挙動とのずれが大きくなることがある。これにより、カーナビゲーション装置が搭載されている車両の位置を高精度に検出できないことがある。
【0005】
1またはそれ以上の実施形態は、移動体の位置の検出精度を向上させることができるナビゲーション装置及びナビゲーション装置の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
1またはそれ以上の実施形態の第1の態様によれば、第1の方向に離隔して対向する一対の側板を有する外殻パネルと、前記一対の側板に設けられ、移動体側固定部材に固定される一対の固定部と、前記外殻パネルで囲まれた内部に設けられ、前記第1の方向における前記一対の固定部に挟まれる位置に配置されている慣性センサとを備えるナビゲーション装置が提供される。
【0007】
1またはそれ以上の実施形態の第2の態様によれば、ナビゲーション装置における外殻パネルの一対の側板は第1の方向に離隔して平行に対向しており、前記一対の側板は、車両側固定部材に固定される一対の固定部を有し、前記第1の方向から見て、前記一対の側板の間の前記一対の固定部の位置に対応しない位置に、前記一対の側板に直交する姿勢で平板状のシャーシを配置し、慣性センサを実装したセンサ基板を所定形状のブラケットに取り付け、前記ナビゲーション装置に振動を付与したときに前記シャーシにおける振幅が他の部位における振幅よりも小さい部位に前記ブラケットを固定して、前記慣性センサを前記第1の方向における前記一対の固定部に挟まれる位置に配置するナビゲーション装置の製造方法が提供される。
【0008】
1またはそれ以上の実施形態に係るナビゲーション装置及びナビゲーション装置の製造方法によれば、移動体の位置の検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、1またはそれ以上の実施形態に係るナビゲーション装置であるナビゲーション装置91及びその取付構造を示す組み立て斜視図である。
【
図2】
図2は、ナビゲーション装置91の取付姿勢を示す左側面図である。
【
図3】
図3は、ナビゲーション装置91が備えるシャーシ22及びブラケット23を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3におけるS4A-S4A位置及びS4B-S4B位置での断面図である。
【
図5】
図5は、シャーシ22の外部振動に対する振幅応答のシミュレーション結果を含む分解斜視図である。
【
図6】
図6は、ナビゲーション装置91における慣性センサ31の重心位置G31の設定範囲を説明するための第1の模式図である。
【
図7】
図7は、重心位置P31の設定範囲を説明するための第2の模式図である。
【
図8】
図8は、重心位置P31の設定範囲を説明するための第3の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1またはそれ以上の実施形態に係るナビゲーション装置を
図1に示すナビゲーション装置91を例にして説明する。
図1は、ナビゲーション装置91の移動体側固定部材である車両側固定部材71への取付構造を示す斜視的な組み立て図である。説明の便宜のため、ナビゲーション装置91における上下左右前後の各方向を、
図1に示す矢印の方向で規定する。また、左右方向に延びる軸をX軸、前後方向に延びる軸をY軸、上下方向に延びる軸をZ軸と称する。X軸の延びる方向を第1の方向と称することがある。
【0011】
ナビゲーション装置91は、車両、飛行機、船舶などの移動体に搭載される。以下の説明におけるナビゲーション装置91は、車両に搭載されるカーナビゲーション装置である。
【0012】
図1に示すように、ナビゲーション装置91は、外観上で概ね六面体の本体1を有する。本体1は、前部に前面パネル部12を有し、上部及び左右の側部が外殻パネル11で覆われている。前面パネル部12は、画像を表示する画像表示部13を有する。外殻パネル11は、上部の天板11bと左右一対の側板11aとを有する。一対の側板11aは、左右方向に離隔して平行に対向している。
【0013】
それぞれの側板11aは、前方側に、雄ねじを螺合可能な固定部Kを備えている。この例では、固定部Kとして、複数(本例で4つ)の固定部11a1~11a4を備えている。固定部11a1~11a4は、左右の側板11aにおいて左右対称となる位置に設けられている。
【0014】
各側板11aにおいて、固定部11a1~11a4は、各辺が上下前後に延びる長方形Raの頂点位置に配置されている。詳しくは、固定部11a1が前下位置、固定部11a2が後下位置、固定部11a3が前上位置、固定部11a4が後上位置に位置している。このように、4つの固定部11a1~11a4が四角形の頂点にあるときの、四角形の対角中心位置を通り左右方向に延びる仮想の軸線を固定軸線CL1とする。
【0015】
本体1の内部における前部には、慣性センサ31が実装されたセンサ基板21が配置されている。慣性センサ31は、一対の固定部Kに挟まれた位置に配置されている。慣性センサ31には、直交3軸である検出基準軸31X、31Y、31Zが設定されている。慣性センサ31は、各軸方向の加速度及び各軸回りの角加速度を検出する6軸のセンサである。
【0016】
車両側固定部材71は、例えば車両のダッシュボードに備えられ左右に離隔した一対の部材である。一対の車両側固定部材71は、それぞれナビゲーション装置91の一対の側板11aにほぼ密着する間隔で離隔して配置されている。車両側固定部材71は、ナビゲーション装置91の側板11aにおける固定部11a1~11a4それぞれに対応する4つの貫通孔71aを有する。
【0017】
この構成において、固定ねじN1を車両側固定部材71の貫通孔71aに通し、ナビゲーション装置91の固定部11a1~11a4に螺合して締め付けることで、ナビゲーション装置91は、車両側固定部材71に固定される。以下、ナビゲーション装置91が車両側固定部材71に固定された状態でのナビゲーション装置91の姿勢を、設置姿勢と称する。
【0018】
図2は、設置姿勢でのナビゲーション装置91の左側面図である。
図2に示すように、重力方向を鉛直軸V(鉛直軸)とし、鉛直軸Vに垂直な前後方向の軸を水平軸H(水平前後軸)とし、鉛直軸Vに垂直な左右方向(
図2の紙面表裏方向)の軸を水平左右軸LRとする。設置姿勢におけるナビゲーション装置91のX軸は水平左右軸LRと一致し、Y軸及びZ軸は、それぞれ水平軸H及び鉛直軸Vに対し、
図2の時計周りに角度θaだけ回転した方向に設定されている。すなわち、設置姿勢において、ナビゲーション装置91は、前方側が水平方向に対し上方に角度θaだけ傾いた傾斜姿勢となっている。
【0019】
図2に示すように、ナビゲーション装置91の本体1の内部には、シャーシ22及びブラケット23が備えられている。シャーシ22は、ナビゲーション装置91の上下方向の中心線CL91よりも上方において、天板11bと平行に配置されている。シャーシ22は、X軸方向から見て、固定部Kの位置に対応しない位置、換言すれば固定部Kから外れた位置に配置されている。ブラケット23はシャーシ22に固定され、センサ基板21をシャーシ22の下方に位置させるように支持している。
【0020】
設置姿勢において、慣性センサ31は、固定軸線CL1と交わる位置に配置されている。例えば、慣性センサ31は、検出基準軸31Xが固定軸線CL1と一致するように配置されている。
【0021】
図3は、シャーシ22、ブラケット23、センサ基板21、及び慣性センサ31の取り付け態様を示す斜視図である。
図4は、
図3におけるS4A-S4A位置及びS4B-S4B位置での断面を示す断面図である。
図5は、シャーシ22に対し、ブラケット23及びセンサ基板21の取付方法を示
す分解斜視図である。
図3及び
図5は、該当部位を右後方斜め下から見た斜視図であって上下を反転させて、紙面上方がZ軸の下方となるように示されている。
図4は、左側面から見た断面図であり、上下を反転させて、紙面上側がZ軸の下方となるように示されている。また、
図5には、シャーシ22の外部振動に対する振幅応答のシミュレーション結果である領域M1及びM2(詳細は後述)が併せて示されている。
【0022】
図3及び
図5に示すように、シャーシ22は、金属製であって、略矩形の板状に形成されている。シャーシ22は、外殻パネル11の天板11bに対してねじで固定するために切り起こしによって形成された複数の固定部221を有する。この例において、シャーシ22は、前部において左右方向に離隔した一対の固定部221L及び221Rを有し、後部において左右方向に離隔した一対の固定部221を有する。シャーシ22は、固定ねじN2によってそれぞれの固定部221が天板11bに形成された不図示の雌ねじ部に締め付けられることで外殻パネル11に固定されている。
【0023】
一方、ブラケット23は金属の板材から形成され、基部23a、張り出し部23b、一対の傾斜連結
部23c、及び一対の座部23dを有する。基部23aは、左右方向に延びる細長い板状部分である。張り出し部23bは、基部23aの左右方向中央部において、後ろ斜め上方に傾斜して張り出した矩形板状の部分である。傾斜連結
部23cは、基部23aの左右両端からそれぞれ外方斜め上方に延出して、基部23aと座部23dとを連結する部分である。座部23dは、傾斜連結
部23cの先端から基部23aと平行に延出し固定ねじN3のねじ部を挿通可能な貫通孔23d1(
図5参照)を有する板状部分である。一対の座部23dの上側の面は、同じ仮想平面に含まれている。基部23aは、一対の座部23d及び傾斜連結
部23cを連結している。
【0024】
傾斜連結部23c及び座部23dの全体を脚部とすると、基部23aは一対の脚部を連結する。一対の脚部は、シャーシ22におけるX軸の方向に離隔した位置に取り付けられている。
【0025】
張り出し部23bの下側の面には、センサ基板21が固定ねじN4によりねじ止めされている。センサ基板21の下側の面には慣性センサ31が実装されている。
【0026】
ブラケット23の一対の座部23dは、シャーシ22の四隅のうちの前部の一対の隅部それぞれに近い固定部位Q1及びQ2(
図5参照)に、それぞれ固定ねじN3によって固定されている。また、シャーシ22の前部の一対の隅部の近傍には、既述のように左右に離隔した固定部221L及び221Rが配置されて、天板11bと固定されている。そのため、固定部位Q1及びQ2は、シャーシ22の中央部よりも剛性が高い部位となっている。
【0027】
図3及び
図4に示すように、センサ基板21がブラケット23に固定され、ブラケット23がシャーシ22に取り付けられている。この状態で、慣性センサ31の検出基準軸31X、31Y、31Zのうち、検出基準軸31Xは、既述のようにナビゲーション装置91の固定軸線CL1と一致している。また、検出基準軸31Yは水平軸Hと平行に延び、検出基準軸31Zは、Z軸と平行に延びている。
【0028】
次に、以上の構成における慣性センサ31の取り付け位置の詳細を、
図6を参照して説明する。
図6は、ナビゲーション装置91の設置姿勢における慣性センサ31と固定部11a1~11a4との位置関係を説明する図であり、固定軸線CL1の左方から見た模式図である。
【0029】
図6に示すように、慣性センサ31は、重心位置G31が固定軸線CL1の位置と一致するよう設定されている。ナビゲーション装置91において、この重心位置G31は、固定軸線CL1に一致するものに限定されず、範囲AR1内に設定されていればよい。
【0030】
範囲AR1は、水平方向(水平軸H方向)の範囲ARhと鉛直方向(鉛直軸V方向)の範囲ARvとに囲まれた矩形の範囲である。詳しくは、水平方向の範囲ARhは、4つの固定部11a1~11a4のうちの水平軸H方向における最前位置にある固定部11a1の中心と最後位置にある固定部11a4の中心との間の範囲である。鉛直方向の範囲ARvは、鉛直軸V方向における最上位置にある固定部11a3の中心と最下位置にある固定部11a2の中心との間の範囲である。
【0031】
ナビゲーション装置91に一方向の外力または振動が付与された際に、側板11a及び車両側固定部材71における範囲AR1の内側の部位には、水平軸H回り及び鉛直軸V回りの曲げまたはねじれの変形が実質的に発生しない。そのため、ナビゲーション装置91は、範囲AR1内に重心位置G31があると、慣性センサ31の挙動と車両の挙動とのずれが抑制され、範囲AR1以外に重心位置G31がある場合と比較して高い精度で自車位置を検出できる。これにより、ナビゲーション装置91は、自車位置の検出精度が向上する。
【0032】
また、重心位置G31が、範囲AR1に含まれるより狭い範囲AR1a内にあるとよりよい。範囲AR1aは、固定部11a1~11a4の中心位置を線分で繋いだ四角形の範囲である。
【0033】
ナビゲーション装置91に一方向の外力または振動が付与された際に、側板11a及び車両側固定部材71の全体に、水平軸H及び鉛直軸Vに対し傾斜した、例えばY軸またはZ軸などの軸回りの変形が生じることがある。この場合でも、側板11a及び車両側固定部材71における範囲AR1aの内側の部位はその変形の影響を受けない。そのため、ナビゲーション装置91は、範囲AR1a内に重心位置G31があると、慣性センサ31の挙動と車両の挙動とのずれがさらに抑制され、範囲AR1内に重心位置G31がある場合よりもさらに高い精度で自車位置を検出できる。これにより、ナビゲーション装置91は、自車位置の検出精度がより向上する。
【0034】
また、外部から振動が付与された場合の応答シミュレーションとして、取付姿勢において、車両側固定部材71をランダムな振動方向で振動させたときのシャーシ22の振幅分布を求めた。
図5には、得られた振幅分布を振幅の大きさに応じて小、中、大の3段階に分類した結果が示されている。すなわち、クロスハッチングを付した領域M2は振幅が大となる領域であり、シングルハッチングを付した領域M1は振幅が中の領域である。領域M2は領域M1の内部に位置する。領域M2及び領域M1以外のハッチングを付していない領域は、振幅が小の領域である。領域M1及びM2は、外部から付与された振動に対し、共振を生じている領域であるとみなすことができる。
【0035】
図5に示すように、領域M1及びM2は、シャーシ22における前方の左右方向の中央部分に、左右方向に延びて分布している。この領域M1及び領域M2にブラケット23を固定すると、慣性センサ31の動作にシャーシ22の共振が大きく影響すると予測される。そこで、ナビゲーション装置91では、シャーシ22における振幅が小となる部位にブラケット23を固定している。詳しくは、シャーシ22において、前後方向で領域M1に概ね対応し、左右方向で左右それぞれ領域M1の外側となる固定部位Q1及びQ2を選定し、固定部位Q1及びQ2でブラケット23を固定するようにしている。
【0036】
このように、ブラケット23は、固定部位Q1及びQ2でシャーシ22に固定されている。従って、ブラケット23をシャーシ22の領域M1またはM2で固定した場合と比較して、外部振動などの外力が付与されても、慣性センサ31は、シャーシ22の共振による過大な振動の影響を受けにくい。すなわち、ブラケット23に固定されているセンサ基板21上の慣性センサ31は、本体1が振動しても過大に振動しにくい。これにより、ナビゲーション装置91は、外部振動が付与されても自車位置を高精度に検出できる。
【0037】
上述の構成のナビゲーション装置91は、次の方法で製造される。まず、ナビゲーション装置91は、第1の方向であるX軸の方向に離隔して平行に対向する一対の側板11aを有している。また、ナビゲーション装置91は、一対の側板11aに車両側固定部材71に固定される固定部K(11a1~11a4)を有する外殻パネル11を備えている。固定部Kは、外殻パネル11を、固定ねじN1によって一対の側板11aの両外側に位置する一対の車両側固定部材71に固定する。
【0038】
製造方法として、X軸の方向から見て、一対の側板11aの間の固定部11a1~11a4の位置に対応しない位置に、側板11aに直交する姿勢で平板状のシャーシ22を配置する。すなわち、シャーシ22を、X軸の方向から見て、固定部11a1~11a4から外れた位置に配置する。
【0039】
また、慣性センサ31を実装したセンサ基板21を所定形状のブラケット23に取り付ける。ブラケット23を、シャーシ22に対し、シャーシ22における、ナビゲーション装置91に振動を付与したときの振幅が他の部位における振幅よりも小さい部位に固定して、X軸の方向から見たときに慣性センサ31を一対の固定部Kに挟まれる位置に配置する。望ましくは、慣性センサ31を、X軸の方向から見て、固定部Kの位置に対応する位置に配置させる。慣性センサ31がX軸の方向から見て固定部Kの位置に対応する位置に位置している状態とは、X軸の方向から見たときに慣性センサ31が固定部Kと重なる位置にあるということである。このとき、慣性センサ31のY軸及びZ軸の方向の位置は、固定部KのY軸及びZ軸の方向の位置と実質的に同じである。
【0040】
シャーシ22における他の部位とは、ナビゲーション装置91に振動が付与されたときに共振によって比較的大きな振幅が発生する領域M1及びM2である。
【0041】
本発明は以上説明した1またはそれ以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形可能である。
【0042】
固定部Kの数は、上述の4か所に限定されない。例えば2か所または3か所であってもよい。
【0043】
図7に示すように、固定部Kが2か所の固定部α1,α2で構成される場合には、慣性センサ31の重心位置G31は、範囲AR2内に設定されていればよい。範囲AR2は、水平方向(水平軸H方向)の範囲ARh2と鉛直方向(鉛直軸Vの方向)の範囲ARv2とに囲まれた範囲である。詳しくは、水平方向の範囲ARh2は、2つの固定部α1,α2のうちの水平軸H方向における最前位置にある固定部α1と最後位置にある固定部α2との中心間の範囲である。鉛直方向の範囲ARv2は、鉛直軸Vの方向における最上位置にある固定部α2と最下位置にある固定部α1との中心間の範囲である。
【0044】
また、
図8に示すように、固定部Kが3か所の固定部β1~β3で構成される場合には、慣性センサ31の重心位置G31は、範囲AR3内に設定されていればよい。範囲AR3は、水平方向(水平軸H方向)の範囲ARh3と鉛直方向(鉛直軸V軸の方向)の範囲ARv3とに囲まれた範囲である。詳しくは、水平方向の範囲ARh3は、3つの固定部β1~β3のうちの水平軸H方向における最前位置にある固定部β1と最後位置にある固定部β2との中心間の範囲である。鉛直方向の範囲ARv3は、鉛直軸Vの方向における最上位置にある固定部β3と最下位置にある固定部β2との中心間の範囲である。
【0045】
ナビゲーション装置91に一方向の外力または振動が付与された際に、側板11a及び車両側固定部材71における範囲AR2または範囲AR3のそれぞれ内側の部位には、水平軸H回り及び鉛直軸V回りの曲げまたはねじれの変形が実質的に発生しない。そのため、範囲AR2または範囲AR3内に重心位置G31があれば、慣性センサ31の挙動と車両の挙動とのずれが抑制され、範囲AR2及び範囲AR3以外に重心位置G31がある場合よりも高い精度で自車位置を検出できる。これにより、固定部Kが2か所または3か所であっても、ナビゲーション装置91は、自車位置の検出精度が向上する。
【0046】
固定部Kが2か所の場合、重心位置G31は、
図7に示す固定部α1と固定部α2とをつなぐ線分LN1上にあるとよりよい。固定部Kが3か所の場合、重心位置G31は、
図8に示す範囲AR3a内にあるとよりよい。範囲AR3aは、固定部β1~β3の中心位置を線分で繋いだ三角形の範囲である。
【0047】
ナビゲーション装置91に一方向の外力または振動が付与された際に、側板11a及び車両側固定部材71の全体として水平軸H及び鉛直軸Vに対し傾斜した、例えばY軸またはZ軸などの軸回りの変形が生じることがある。この場合でも、側板11a及び車両側固定部材71の線分LN1上及び範囲AR3aの内側部位はその変形の影響を受けない。そのため、ナビゲーション装置91は、線分LN1上または範囲AR3a内に重心位置G31があると、慣性センサ31の挙動と車両の挙動とのずれがさらに抑制され、範囲AR2または範囲AR3内に重心位置G31がある場合と比較してさらに高い精度で自車位置を検出できる。これにより、ナビゲーション装置91は、自車位置の検出精度がより向上する。
【0048】
慣性センサ31は、基板実装タイプに限定されない。慣性センサ31はブラケット23の基部23aに直接的に取り付けられていてもよい。すなわち、慣性センサ31は、ブラケット23の基部23aに対して、センサ基板21などの別部材を介して間接的に取り付けられていてもよいし、基部23aに対し直接的に取り付けられていてもよい。
【0049】
ナビゲーション装置91は、車両以外の他の移動体にも搭載される。車両以外に搭載された場合、上述の説明における車両は、すべて移動体と置き換えできる。
【0050】
本願は、2020年2月28日に日本国特許庁に出願された特願2020-033583号及び特願2020-033587号に基づく優先権を主張するものであり、それらの全ての開示内容は引用によりここに援用される。