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  • 特許-尿毒素を除去するための方法及び組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】尿毒素を除去するための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/22 20060101AFI20230704BHJP
   A61L 31/12 20060101ALI20230704BHJP
   B01D 15/00 20060101ALI20230704BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20230704BHJP
   A61M 1/16 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
B01J20/22 C
A61L31/12
B01D15/00 101B
B01J20/30
A61M1/16 190
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021529042
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 US2019063664
(87)【国際公開番号】W WO2020113044
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-06-01
(31)【優先権主張番号】16/203,058
(32)【優先日】2018-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591013229
【氏名又は名称】バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
(73)【特許権者】
【識別番号】501453189
【氏名又は名称】バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】Baxter Healthcare S.A.
【住所又は居所原語表記】Thurgauerstr.130 CH-8152 Glattpark (Opfikon) Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】イエ, ローザ ハン-チェン
(72)【発明者】
【氏名】ディン, ユアンパン サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】メンゼル ブエノ, クリスティアン アドルフォ
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05587157(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0336568(US,A1)
【文献】特表2006-519299(JP,A)
【文献】特開昭48-088192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/28
B01J 20/30-20/34
A61L 31/12
B01D 15/00
A61M 1/16
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン-グリオキサール複合体及び多孔性支持材料を含み、
多孔性支持材料が、活性炭、グラフェン、酸化グラフェン、ケイ素、又は多孔性ケイ素の少なくとも1つを含む、収着剤。
【請求項2】
透析を行うための装置において使用するために構成されている、請求項1に記載の収着剤。
【請求項3】
チタン-グリオキサール複合体が、チタン架橋水和グリオキサール部分を含む、請求項1又は2に記載の収着剤。
【請求項4】
チタン-グリオキサール複合体が、式I、式II、式III、式IV、
【化1】

又はそれらの組合せの分子を含む構造を有する、請求項1又は2に記載の収着剤。
【請求項5】
チタン-グリオキサール複合体が、多孔性支持材料と会合している、多孔性支持材料に接着している、吸着している、コーティングされている、及び/又は固定されている、請求項1又は2に記載の収着剤。
【請求項6】
チタン-グリオキサール複合体が、多孔性支持材料の細孔内に存在している、請求項1又は2に記載の収着剤。
【請求項7】
0mg尿素/g収着剤を超える尿素収容能力を有し、
尿素収容能力が以下の式にしたがって計算される、請求項1又は2に記載の収着剤。
q=([BUN]-[BUN])×(60/28)×V/100/S
[式中、
qはmg尿素/g収着剤での尿素収容能力であり、
[BUN]は時間0での透析溶液中のBUNの濃度(mg/dL)であり、
[BUN]は時間tでの透析溶液中のBUNの濃度(mg/dL)であり、
Vは試験溶液の体積(ml)であり、
Sは収着剤の重量(g)である]
【請求項8】
チタン対グリオキサールのモル比が1:4である、請求項1又は2に記載の収着剤。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の収着剤を含む、収着剤カートリッジ。
【請求項10】
固定化ウレアーゼ層を含まない、請求項に記載の収着剤カートリッジ。
【請求項11】
カートリッジの流体流区画における活性ウレアーゼの全含量が、カートリッジ内容物の全固定化重量を基準として5wt%未満である、請求項に記載の収着剤カートリッジ。
【請求項12】
収着剤と連通している透析液を保持するように構成される、請求項に記載の収着剤カートリッジ。
【請求項13】
酸化チタン、含水二酸化チタン、及び/又はリン酸チタンを含む層をさらに含む、請求項に記載の収着剤カートリッジ。
【請求項14】
尿素を含む流体を請求項1の収着剤及び/又は請求項に記載の収着剤カートリッジに通し、それにより尿素をチタン-グリオキサール複合体に結合させるステップを含む、方法。
【請求項15】
透析を行うための装置であって、請求項に記載の収着剤カートリッジと、収着剤カートリッジと流体連通している透析器とを備え、使用済み透析液が透析器から収着剤カートリッジへ向かい収着剤カートリッジを通る、装置。
【請求項16】
透析器が患者の血液と流体連通している、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
請求項に記載の収着剤カートリッジと、使用済み透析液の供給源とを備える透析システムであって、使用済み透析液の供給源が収着剤カートリッジと流体連通しており、使用済み透析液が収着剤カートリッジへ向かい収着剤カートリッジを通る、透析システム。
【請求項18】
尿素を結合させるための収着剤を作製する方法であって、
(i)グリオキサール、チタンイオン源、及び溶媒を合わせて、チタン-グリオキサール複合体を含む混合物を得るステップと、
(ii)混合物に活性炭を加えて処理済み活性炭を得るステップと、
(iii)処理済み活性炭から溶媒を分離するステップと、
(iv)処理済み活性炭を洗浄して洗浄済み処理済み活性炭を得るステップと、
(v)洗浄済み処理済み活性炭を乾燥させて、尿素を結合させるための収着剤を得るステップとを含む、方法。
【請求項19】
チタンイオン源が、四塩化チタン、塩化チタン(II)、塩化チタン(III)、オキシ塩化チタン、及びそれらの組合せから成る群から選択される、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
[0001]この開示は一般には透析法に関し、より詳細には収着剤、収着剤を含有するカートリッジ、並びに透析においてカートリッジを使用する方法及びシステムに関する。
【0002】
[関連技術の説明]
[0002]疾患、損傷、又は他の要因は、人間の腎臓系の不全を引き起こすことがある。腎不全は、体内の水と無機物(例えば、Na、K、Cl、Ca、P、Mg、SO)との不均衡、並びに固定水素イオンの日常的な代謝負荷の排出の不全をもたらす。腎不全の間、尿素、クレアチニン、及び尿酸を含めた窒素代謝の毒性最終生成物が、血液及び組織中に蓄積するおそれがある。
【0003】
[0003]透析法は、濃度勾配による半透膜を通した拡散によって溶液中の要素を分離するために考案された。主に、米国での透析は2つの方法、血液透析及び腹膜透析を含む。
【0004】
[0004]血液透析(「HD」)治療は、患者の血液、HD透析液、及び透析器を利用して老廃物、毒素、及び過剰の水を患者から除去する。患者は血液透析装置に接続され、患者の血液を透析器により汲みだし患者へ戻す。カテーテルを患者の静脈及び動脈に挿入して血液が透析器へ及び透析器から流れるようにする。老廃物、毒素、及び過剰の水が患者の血液からHD透析液へ拡散及び/又はろ過により除去され、血液が患者へ注入されて戻される。患者の自宅で夜間の毎日の治療を可能にするいくつかの方法が提案されているが、血液透析治療は数時間続き、一般には治療センターで週に約3回又は4回行われる。
【0005】
[0005]腹膜透析(「PD」)はPD透析溶液を使用し、これは患者の腹腔へ注入される。PD透析液は腹腔内で患者の腹膜に接触する。所定の滞留時間の間、拡散及び浸透によって、老廃物、毒素、及び過剰の水が患者の血流から腹膜を通して透析液へ入る。使用済み透析液を次いで患者の腹腔から排出させて老廃物、毒素、及び水を患者から除去する。治療を日中若しくは夜間、又はその両方で数回繰り返して、所望のレベルの老廃物、毒素、及び過剰の水の除去を実現することができる。
【0006】
[0006]透析治療の際、使用済み透析液から老廃物を除去するために収着剤を使用することができ、それにより使用済み透析液を再使用のために再生させる。透析液の再生は、透析治療に必要とされる透析溶液の全体積を有利に削減する。収着材料としては、カチオン性及び/又はアニオン性老廃物を除去するイオン交換収着剤としてのリン酸ジルコニウム及び酸化ジルコニウムが挙げられ、例えば米国特許公開第2014/0001112号に開示されている。他の収着材料としては、米国特許公開第2014/0336568号に記載されている、活性炭上にコーティングされたジルコニウム-グリオキサール複合体が挙げられる。
【0007】
[概要]
[0007]本明細書の開示に照らして、また本発明の範囲を決して限定することはないが、別途指定されない限り本明細書に記載の任意の他の実施形態と組み合わせることができる本開示の第1の実施形態において、開示は、チタン-グリオキサール複合体及び活性炭などの多孔性支持材料を含む収着剤を提供する。
【0008】
[0008]別途指定されない限り本明細書に記載の任意の他の実施形態と組み合わせることができる本開示の第2の実施形態において、多孔性支持材料は、活性炭、グラフェン、酸化グラフェン、ケイ素、多孔性ケイ素、又はそれらの組合せを含む。
【0009】
[0009]別途指定されない限り本明細書に記載の任意の他の実施形態と組み合わせることができる本開示の第3の実施形態において、チタン-グリオキサール複合体は、チタン架橋水和グリオキサール部分を含む。
【0010】
[0010]別途指定されない限り本明細書に記載の任意の他の実施形態と組み合わせることができる本開示の第4の実施形態において、チタン-グリオキサール複合体は、水和グリオキサールをチタンイオンと反応させることにより形成される。
【0011】
[0011]別途指定されない限り本明細書に記載の任意の他の実施形態と組み合わせることができる本開示の第5の実施形態において、チタン-グリオキサール複合体は、式I、式II、式III、式IV、
【化1】

又はそれらの組合せの分子を含む構造を有する。
【0012】
[0012]別途指定されない限り本明細書に記載の任意の他の実施形態と組み合わせることができる本開示の第6の実施形態において、チタン-グリオキサール複合体は、活性炭などの多孔性支持材料と会合している、多孔性支持材料に接着している、吸着している、コーティングされている、及び/又は固定されている。
【0013】
[0013]別途指定されない限り本明細書に記載の任意の他の実施形態と組み合わせることができる本開示の第7の実施形態において、チタン-グリオキサール複合体は、活性炭などの多孔性支持材料の細孔内に存在している。
【0014】
[0014]別途指定されない限り本明細書に記載の任意の他の実施形態と組み合わせることができる本開示の第8の実施形態において、収着剤は、約50mg尿素/g収着剤を超える、例えば約60mg/gを超える、約70mg/gを超える、約75mg/gを超える、約80mg/gを超える、約90mg/gを超える、約50mg/g~約200mg/g、約50mg/g~約150mg/g、約50mg/g~約100mg/g、約60mg/g~約100mg/g、約70mg/g~約90mg/g、約75mg/g~約85mg/g、及び/又は約80mg/gなどの、尿素収容能力を有する。
【0015】
[0015]別途指定されない限り本明細書に記載の任意の他の実施形態と組み合わせることができる本開示の第9の実施形態において、チタン対グリオキサールのモル比は約1:4である。
【0016】
[0016]別途指定されない限り本明細書に記載の任意の他の実施形態と組み合わせることができる本開示の第10の実施形態において、開示は、本明細書に記載の任意の他の実施形態による収着剤を含む収着剤カートリッジを提供する。
【0017】
[0017]別途指定されない限り本明細書に記載の任意の他の実施形態と組み合わせることができる本開示の第11の実施形態において、収着剤カートリッジは固定化ウレアーゼ層を含まない。
【0018】
[0018]別途指定されない限り本明細書に記載の任意の他の実施形態と組み合わせることができる本開示の第12の実施形態において、収着剤カートリッジ内の活性ウレアーゼの全含量は、カートリッジ内容物の全固定化重量部分を基準として約5wt%未満である。
【0019】
[0019]別途指定されない限り本明細書に記載の任意の他の実施形態と組み合わせることができる本開示の第13の実施形態において、収着剤カートリッジは、収着剤と連通している透析液をさらに含む。別途指定されない限り本明細書に記載の任意の他の実施形態と組み合わせることができる本開示の一実施形態において、透析液は、約5~約9のpH、例えば約5.5~約8.5、約6~約8、約6.1~約7.9、約6.2~約7.8、約6.3~約7.7、約6.4~約7.6、約6.5~約7.5、約6.6~約7.4、約6.7~約7.3、約6.8~約7.2、約6.9~約7.1、及び/又は約7などのpHを有する。
【0020】
[0020]別途指定されない限り本明細書に記載の任意の他の実施形態と組み合わせることができる本開示の第14の実施形態において、収着剤カートリッジは、酸化チタン、含水二酸化チタン、及び/又はリン酸チタンを含む層をさらに含む。
【0021】
[0021]別途指定されない限り本明細書に記載の任意の他の実施形態と組み合わせることができる本開示の第15の実施形態において、開示は、尿素を含む流体を本明細書に記載の任意の他の実施形態による収着剤に通す、及び/又は本明細書に記載の任意の他の実施形態による収着剤カートリッジに通し、それにより尿素をチタン-グリオキサール複合体に結合させるステップを含む、方法を提供する。別途指定されない限り本明細書に記載の任意の他の実施形態と組み合わせることができる本開示の一実施形態において、尿素を含む流体は使用済み透析液である。別途指定されない限り本明細書に記載の任意の他の実施形態と組み合わせることができる本開示の一実施形態において、尿素を含む流体は、約5~約9のpH、例えば約5.5~約8.5、約6~約8、約6.1~約7.9、約6.2~約7.8、約6.3~約7.7、約6.4~約7.6、約6.5~約7.5、約6.6~約7.4、約6.7~約7.3、約6.8~約7.2、約6.9~約7.1、及び/又は約7などのpHを有する。
【0022】
[0022]別途指定されない限り本明細書に記載の任意の他の実施形態と組み合わせることができる本開示の第16の実施形態において、開示は、透析を行うための装置であって、本明細書に記載の任意の他の実施形態による収着剤カートリッジと、収着剤カートリッジと流体連通している透析器とを備え、使用済み透析液が透析器から収着剤カートリッジへ向かい収着剤カートリッジを通る、装置を提供する。別途指定されない限り本明細書に記載の任意の他の実施形態と組み合わせることができる本開示の一実施形態において、使用済み透析液は、使用済み血液透析液又は使用済み腹膜透析液である。
【0023】
[0023]別途指定されない限り本明細書に記載の任意の他の実施形態と組み合わせることができる本開示の第17の実施形態において、透析器は患者の血液と流体連通している。
【0024】
[0024]別途指定されない限り本明細書に記載の任意の他の実施形態と組み合わせることができる本開示の第18の実施形態において、開示は、本明細書に記載の任意の他の実施形態の収着剤カートリッジと、使用済み透析液の供給源とを備える透析システムであって、使用済み透析液の供給源が収着剤カートリッジと流体連通しており、使用済み透析液が収着剤カートリッジへ向かい収着剤カートリッジを通る、透析システムを提供する。別途指定されない限り本明細書に記載の任意の他の実施形態と組み合わせることができる本開示の一実施形態において、使用済み透析液は、使用済み血液透析液又は使用済み腹膜透析液である。
【0025】
[0025]別途指定されない限り本明細書に記載の任意の他の実施形態と組み合わせることができる本開示の第19の実施形態において、開示は、尿素を結合させるための収着剤を作製する方法であって、(i)グリオキサール、チタンイオン源、及び溶媒を合わせて、チタン-グリオキサール複合体を含む混合物を得るステップと、(ii)混合物に多孔性支持材料を加えて処理済み支持材料を得るステップと、(iii)処理済み支持材料から溶媒を分離するステップと、(iv)処理済み支持材料を洗浄して洗浄済み処理済み支持材料を得るステップと、(v)洗浄済み処理済み支持材料を乾燥させて、尿素を結合させるための収着剤を得るステップとを含む、方法を提供する。別途指定されない限り本明細書に記載の任意の他の実施形態と組み合わせることができる本開示の一実施形態において、多孔性支持材料は、活性炭、グラフェン、酸化グラフェン、ケイ素、多孔性ケイ素、又はそれらの組合せを含む。別途指定されない限り本明細書に記載の任意の他の実施形態と組み合わせることができる本開示の一実施形態において、開示は、尿素を結合させるための収着剤を作製する方法であって、(i)グリオキサール、チタンイオン源、及び溶媒を合わせて、チタン-グリオキサール複合体を含む混合物を得るステップと、(ii)混合物に活性炭を加えて処理済み活性炭を得るステップと、(iii)処理済み活性炭から溶媒を分離するステップと、(iv)処理済み活性炭を洗浄して洗浄済み処理済み活性炭を得るステップと、(v)洗浄済み処理済み活性炭を乾燥させて、尿素を結合させるための収着剤を得るステップとを含む、方法を提供する。別途指定されない限り本明細書に記載の任意の他の実施形態と組み合わせることができる本開示の一実施形態において、乾燥させるステップは、少なくとも25℃の温度、例えば少なくとも30℃、少なくとも35℃、少なくとも40℃、約25℃~約40℃、約30℃~約40℃、約35℃~約40℃、及び/又は約37℃の温度などで行われる。
【0026】
[0026]別途指定されない限り本明細書に記載の任意の他の実施形態と組み合わせることができる本開示の第20の実施形態において、チタンイオン源は、四塩化チタン、塩化チタン(II)、塩化チタン(III)、オキシ塩化チタン、及びそれらの組合せから成る群から選択される。
【0027】
[0027]本明細書に示す開示及び実施形態に照らせば、本開示の利点はしたがって、尿素除去の際にアンモニアの生成を低減又は回避する透析法のための収着剤、収着剤カートリッジ、方法、及びシステムを提供することである。
【0028】
[0028]本開示の別の利点は、収着材料へさらす前の使用済み透析液、及び収着材料へさらした後の精製済み又は再生済み透析液のpHを調整することを不要とし、生理的pHにおいて又は生理的pH付近で尿素を効率的に吸着することである。
【0029】
[0029]開示される配合物のさらなる特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図において記載され、明らかとなる。本明細書に記載の特徴及び利点はすべてを含むものではなく、特に、説明に照らして多くのさらなる特徴及び利点が当業者に明らかとなる。さらに、いかなる特定の実施形態も、本明細書に記載される利点のすべてを必ずしも有しているわけではない。さらに、本明細書において使用される言語は主に読みやすさ及び説明の目的で選択されており、本発明の主題の範囲を限定するためではないことに注意するべきである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本明細書で開示されるカートリッジの樹脂床の断面図の実施形態を示す図である。
【0031】
[詳細な説明]
[0031]本明細書に記載の特定の実施形態は、一般には透析法の分野に関する。より詳細には、本明細書に記載のいくつかの実施形態は、透析液に蓄積する尿毒素などの老廃物を除去する透析法において使用するための収着剤に関する。本明細書に記載の関連する実施形態は、収着剤を含有するカートリッジに関する。本明細書に記載のさらなる関連する実施形態は、透析法においてカートリッジを使用するための方法及びシステムに関する。
【0032】
[0032]本明細書に記載の収着剤、収着剤カートリッジ、方法、及びシステムは、透析液に蓄積する老廃物(例えば、尿毒素)の除去に有用である。収着材料は、除去プロセスに有用な収着剤を保持することが可能な容器(例えば、1つ又は複数の収着剤カートリッジ)中に存在させることができる。下記に詳細に説明される収着剤、又は収着剤の配置は、例えば血液透析又は腹膜透析を行った結果として透析液に蓄積する老廃物の除去に有用である、透析システム又は他の同様のタイプのシステムにおいて使用できる。下記により詳細に説明するように、収着剤及び収着剤カートリッジは、血液透析及び腹膜透析で使用される透析液を精製又は再生するのに有用である。腹膜透析又は血液透析用の従来の透析溶液を使用することができ、記載される方法によって有利に再生できる。
【0033】
[0033]一態様において、本明細書に記載の収着剤、収着剤カートリッジ、方法、及びシステムは、非酵素的尿素結合性収着材料を用いた透析により患者から尿毒素を除去するのに有用である。より具体的には、非酵素的尿素結合性収着材料は、透析における透析液の再生又は精製のための1つ又は複数の収着剤カートリッジにおいて使用できる。収着剤カートリッジ(複数可)は、尿毒症及び/又は他の状態の治療に使用できる。有利なことに、本明細書に記載の収着材料及び収着剤カートリッジは、ウレアーゼの従来の使用に関連する尿素の酵素加水分解反応がないために、尿素除去の際にアンモニアの生成を低減又は回避することができる。さらに、本明細書に記載のチタンを含む収着材料は、収着材料へさらす前の使用済み透析液、及び収着材料へさらした後の精製済み又は再生済み透析液のpHを調整することを不要とし、生理的pHにおいて又は生理的pH付近で尿素を効率的に吸着することができる。
【0034】
[0034]本明細書で開示される収着剤は、チタン-グリオキサール複合体及び多孔性支持材料を含む。多孔性支持材料は、活性炭、グラフェン、酸化グラフェン、ケイ素、多孔性ケイ素、又はそれらの組合せを含んでいてもよい。収着剤のチタン対グリオキサールのモル比は約1:4であってもよい。チタン-グリオキサール複合体は、チタン-架橋水和グリオキサール部分を含んでいてもよい。例えば、チタン-グリオキサール複合体は、式I、式II、式III、式IV、
【化2】

又はそれらの組合せの分子を含む構造を有していてもよい。
【0035】
[0035]チタン-グリオキサール複合体はまた、Ti[水和グリオキサール部分](式中、nは2~10の整数、例えば2~8、2~6、3~5、又は4などの整数である)の構造を有するチタン-グリオキサールポリマー複合体も含む。
【0036】
[0036]本明細書で使用される場合、「水和グリオキサール」という用語は、水和グリオキサール二量体、水和グリオキサール三量体、水和グリオキサールオリゴマー、及び水和グリオキサールポリマーなどの水和グリオキサールのオリゴマー種及びポリマー種を含む。
【0037】
[0037]本明細書に記載のチタン-グリオキサール複合体は、例えば水和グリオキサールをチタンイオンと反応させることにより形成することができる。尿素結合性収着剤は、本明細書に記載の支持材料(例えば活性炭)をチタン-グリオキサール複合体で処理することにより形成することができる。チタン-グリオキサール複合体は、活性炭などの支持材料と会合させる、支持材料に接着させる、吸着させる、及び/又はコーティングさせることができる。いくつかの事例において、チタン-グリオキサール複合体を支持材料の細孔内に捕捉させる、或いは支持材料に固定する、例えば、チタン-グリオキサール複合体を炭素細孔内に捕捉させる、或いは炭素に固定する。尿素含有(例えば、使用済み)透析液を、形成された収着剤の層に通して尿素と収着剤との複合体を形成させることができ、それにより使用済み透析液を精製又は再生させる。
【0038】
[0038]本明細書に記載の収着剤は尿素吸着に対して有効であり、収着剤カートリッジ内に固定化ウレアーゼ層又は同様の作用をする酵素を含むことを不要とするのに十分な尿素結合能を提供することが可能である。本明細書で使用される場合、「固定化ウレアーゼ層を含まない」カートリッジとは、流体流に利用可能である、カートリッジの内部断面にわたって広がる固定されたウレアーゼの連続層がカートリッジ内に存在しないことを指す。さらに、本発明のカートリッジは、カートリッジの流体流区画において活性ウレアーゼを実質的に含まない又は完全に含まないものとすることができる。例えば、カートリッジの流体流区画における活性ウレアーゼの全含量は、カートリッジ内容物の全固定化重量部分を基準として約5wt%未満、例えばカートリッジ内容物の全固定化重量部分を基準として約3wt%未満、約2wt%未満、約1wt%未満、約0.5wt%未満、0.1未満wt%未満、及び/又は0~約5wt%であってもよい。
【0039】
[0039]本明細書に記載の収着剤は、生理的pHにおいて又は生理的pH付近で尿素吸着が可能であり、このことは、収着剤カートリッジに入る使用済み透析液を酸性化すること、及び透析液が透析器で再使用される前に収着剤カートリッジから出る再生済み透析液を中和することを不要とする。特に、本明細書に記載の収着剤が生理的pHにおいて又は生理的pH付近で尿素を効率的に吸着する能力のおかげで、収着剤と連通している透析液のpHは、尿素結合性収着剤との反応前に調整される(例えば酸性化する)必要がなく、そのため収着剤カートリッジを出る際に中性pHに戻す必要もない。収着剤と連通している透析液は、約5~約9のpH、例えば約5.5~約8.5、約6~約8、約6.1~約7.9、約6.2~約7.8、約6.3~約7.7、約6.4~約7.6、約6.5~約7.5、約6.6~約7.4、約6.7~約7.3、約6.8~約7.2、約6.9~約7.1、及び/又は約7などのpHを有していてもよい。同様に、収着剤カートリッジを出る精製済み又は再生済み透析液のpHは、約5~約9のpH、例えば約5.5~約8.5、約6~約8、約6.1~約7.9、約6.2~約7.8、約6.3~約7.7、約6.4~約7.6、約6.5~約7.5、約6.6~約7.4、約6.7~約7.3、約6.8~約7.2、約6.9~約7.1、及び/又は約7などのpHを有していてもよい。
【0040】
[0040]活性炭は、それ自体は尿素に対する吸着能が非常に低いが、例えば、チタンにより架橋されたグリオキサールなどのチタン-グリオキサール複合体を炭素に添加することにより有効な尿素収着剤へと変換させることができる、一つの支持材料である。チタン-グリオキサール複合体を含有する溶液で炭素を処理することにより、活性炭を直接的尿素結合性活性材料へと変換させることができる。グリオキサールをチタンイオンにより架橋させてチタン架橋ポリマー複合体を形成することができ、この複合体は炭素細孔内に捕捉させるか或いは炭素に固定することができる。架橋チタン-グリオキサール複合体は、例えば処理済み炭素を乾燥させると、炭素細孔内で形成され捕捉させることができる。処理済み炭素が使用済み透析液中の尿素と接触すると、処理済み炭素の架橋チタン-グリオキサールポリマー複合体は尿素と結合することができ、すると尿素は処理済み炭素により捕捉される。
【0041】
[0041]記載の通りに処理すると、乾燥済み処理済み炭素は尿素結合活性となり、例えば処理済み炭素1g当たり約50mgを超える尿素、例えば、約60mg/gを超える、約70mg/gを超える、約75mg/gを超える、約80mg/gを超える、約90mg/gを超える、約50mg/g~約200mg/g、約50mg/g~約150mg/g、約50mg/g~約100mg/g、約60mg/g~約100mg/g、約70mg/g~約90mg/g、約75mg/g~約85mg/g、及び/又は約80mg/gなどの尿素吸着能を得ることができる。尿素結合能は、尿素を含有する透析液をカラムに通すことにより、カラム試験で測定できる。尿素結合性炭素は、酵素ウレアーゼを使用して尿素を炭酸アンモニウムに変換させる収着材料に関連する、指摘された考えうる問題を、安全で場合によってはコスト削減的な方法で回避又は低減することができる。得られる尿素結合性炭素は、様々な尿毒素(尿素、クレアチニン、尿酸、リン酸塩、カリウム、カルシウムなど)を患者から除去する収着剤再生型透析のための収着剤カートリッジの形態で、さらなるチタン収着剤、例えば、リン酸チタン、酸化チタン、及び/又は含水二酸化チタンなどと組み合わせることができる。尿素を変換させるためのウレアーゼを使用した従来の収着剤カートリッジにおけるような炭酸アンモニウムが生成されないので、再生済み透析液は純度が高く組成が均一であり、透析システムを大幅に単純化することが可能となる。さらに、チタン-グリオキサール複合体は生理的pHにおいて尿素を効率的に吸着することができるので、使用済み透析液及び精製済み又は再生済み透析液のpH調整は最小限又は不要である。
【0042】
[0042]尿素結合性収着剤は、1つの層(又は複数の層)として収着剤カートリッジ内に存在していてもよく、リン酸チタン、酸化チタン、及び/又は含水二酸化チタンなどのさらなるチタン収着剤を含めたさらなる収着剤が、収着剤カートリッジ内にさらなる層として存在していてもよい。尿素結合性チタン-グリオキサール複合体を含む収着剤層を、例えば、透析カートリッジ1本当たり約500~約2000gの量で、例えば血液透析で使用されるカートリッジ1本当たり約1000~約2000gの処理済み炭素(又はこれらの範囲を超える若しくは下回る他の量)、又は腹膜透析で使用されるカートリッジ1本当たり約750~約1250g(又はこれらの範囲を超える若しくは下回る他の量)などの量で使用できる。さらなる層が任意選択で、チタングリオキサール複合体を含む収着剤層、例えば酸化チタンを含む層、リン酸チタンを含む層、及び/又は含水二酸化チタンを含む層などの前、及び/又は後でカートリッジに含まれていてもよい。
【0043】
[0043]本明細書に記載の尿素結合性収着剤は、(i)グリオキサール、チタンイオン源、及び溶媒を合わせて、チタン-グリオキサール複合体を含む混合物を得るステップと;(ii)混合物に、多孔性支持材料、例えば活性炭、グラフェン、酸化グラフェン、ケイ素、多孔性ケイ素、又はそれらの組合せを加えて、処理済み支持材料(例えば、処理済み活性炭)を得るステップとにより、調製できる。それによりチタン-グリオキサール複合体を、活性炭などの支持材料の細孔と会合させる、支持材料の細孔に接着させる、吸着させる、コーティングする、固定する、及び/又は存在させる。溶媒としては、限定はされないが、水、並びに有機溶媒、例えば極性プロトン性溶媒及び極性非プロトン性溶媒などを挙げることができる。収着剤カートリッジにおいて使用するのに適した収着材料を得るために、溶媒を処理済み支持材料(例えば、処理済み活性炭)から分離してもよく、処理済み支持材料(例えば、処理済み活性炭)を洗浄して洗浄済み処理済み支持材料(例えば、洗浄済み処理済み活性炭)を得てもよく;及び/又は洗浄済み処理済み支持材料(例えば、洗浄済み、処理済み活性炭)を乾燥させて、尿素を結合させるための乾燥済み収着剤を得てもよい。処理済み支持材料(例えば、活性炭)を洗浄するための溶液としては、限定はされないが、水又は塩酸溶液などの酸性溶液(例えば、3.5N HCl溶液)を挙げることができる。チタンイオン源は、四塩化チタン、塩化チタン(II)、塩化チタン(III)、オキシ塩化チタン、及びそれらの組合せであってもよい。乾燥させるステップは、少なくとも25℃、例えば少なくとも30℃、少なくとも35℃、少なくとも40℃、約25℃~約40℃、約30℃~約40℃、約35℃~約40℃、及び/又は約37℃などの温度で行うことができる。
【0044】
[0044]本明細書に記載の収着剤及び収着剤カートリッジは、流体から尿素を除去するプロセスにおいて、例えば尿素除去も含む、使用済み透析液を精製及び/又は再生するプロセスなどにおいて使用できる。このプロセスは、尿素を含む流体を本明細書に記載の尿素結合性収着剤及び尿素結合性収着剤を含有する収着剤カートリッジに通し、それにより尿素を尿素結合性収着剤のチタン-グリオキサール複合体に結合させるステップを含んでいてもよい。このプロセスは、使用済み(例えば、尿素含有)透析液を収着剤又はカートリッジに通すステップを含んでいてもよい。カートリッジは収着剤層の多孔性支持材料(例えば、活性炭)に結合しているチタン-グリオキサール複合体を含んでいてもよい。例えば、チタン-グリオキサール複合体は、支持材料(例えば、活性炭)の細孔と会合させる、支持材料の細孔に接着させる、吸着させる、コーティングする、固定する、及び/又は存在させることができる。その結果、不溶化チタン-グリオキサール複合体を添加した収着剤層に使用済み透析液を通すことができる。不溶化チタン-グリオキサール複合体は、さらなる尿素結合性材料を必要とせずに、尿素結合剤自体として使用できる。使用済み透析液を通すさらなる層が任意選択で、チタングリオキサール複合体を含む収着剤層の前、及び/又は後でカートリッジに含まれていてもよい。そのような層としては、酸化チタンを含む層、リン酸チタンを含む層、含水二酸化チタンを含む層、又はそれらの組合せ、例えば酸化チタン及びリン酸チタンの両方を含む層などを挙げることができる。そのような層は集合的に、本明細書で開示されるカートリッジの樹脂床を構成する。
【0045】
[0045]図1は、本明細書で開示される樹脂床10の断面図の実施形態を示す。例証される実施形態の樹脂床10は、20、22、及び24の3つの層を含む。第1の層20は、リン酸チタンを含む層である。第2の層22は、酸化チタンを含む層である。第3の層24は、チタン-グリオキサール複合体を含む層である。流体は、矢印で示される方向へ向かって層を通る。さらなる層が収着剤カートリッジに含まれていてもよく、収着剤カートリッジの層は任意の順番で設けられていてもよい。
【0046】
[0046]流体から尿素を除去して使用済み透析液を精製及び/又は再生するプロセスにおいて、尿素結合性収着剤と接触する前又は収着剤カートリッジに入る前の流体は、約5~約9のpH、例えば約5.5~約8.5、約6~約8、約6.1~約7.9、約6.2~約7.8、約6.3~約7.7、約6.4~約7.6、約6.5~約7.5、約6.6~約7.4、約6.7~約7.3、約6.8~約7.2、約6.9~約7.1、及び/又は約7などのpHを有していてもよい。さらに、尿素結合性収着剤と接触した後又は収着剤カートリッジを出た後、流体は約5~約9の同様のpH、例えば約5.5~約8.5、約6~約8、約6.1~約7.9、約6.2~約7.8、約6.3~約7.7、約6.4~約7.6、約6.5~約7.5、約6.6~約7.4、約6.7~約7.3、約6.8~約7.2、約6.9~約7.1、及び/又は約7などのpHを有していてもよい。
【0047】
[0047]本明細書に記載の収着剤及び収着剤カートリッジは、使用済み透析液を精製及び/又は再生するために、透析を行うための装置において使用できる。装置は、本明細書に記載の収着剤カートリッジと、収着剤カートリッジと流体連通している透析器とを備えていてもよく、使用済み透析液は透析器から収着剤カートリッジへ向かい収着剤カートリッジを通る。使用済み透析液は、使用済み血液透析液、使用済み腹膜透析液、使用済み血液ろ過流体、又は使用済みダイアフィルトレーション流体であってもよい。透析器は患者の血液と流体連通してしてもよい。透析を行うための装置は、例えば、収着血液透析の装置、装着型人工腎臓、又は収着腹膜透析の装置であってもよい。
【0048】
[0048]本明細書に記載の収着剤及び収着剤カートリッジは、使用済み透析液を精製及び/又は再生するために、透析システムにおいて使用できる。透析システムは、本明細書に記載の収着剤カートリッジ及び使用済み透析液の供給源を備えていてもよく、使用済み透析液の供給源は、収着剤カートリッジと流体連通しており、使用済み透析液は収着剤カートリッジへ向かい収着剤カートリッジを通る。使用済み透析液は、使用済み血液透析液、使用済み腹膜透析液、又は上記に記載のその他であってもよい。使用済み透析液は、例えば約10ml/min~約1000ml/min、約100ml/min~約550ml/min、及び/又は約150ml/min~約400ml/minの速度で収着剤カートリッジを通ってもよい。透析システムは、使用済み透析液のpHを調整することを必要とせずに使用済み透析液を再生することができ、使用済み透析液を新しい透析液のpHレベルとじほぼ同等のpHレベルまで再生することができる。システムはさらに、アンモニアを生成させずに使用済み透析液を再生することができる。
【実施例
【0049】
(実施例1)
〔チタン-グリオキサール複合体の調製〕
[0049]4.87gのTiCl(純度99%)を15.28gのグリオキサール(39%グリオキサール水溶液)へ加えることにより、スキーム1に示すようにチタン-グリオキサール複合体を調製した。混合物を約20分撹拌し、必要に応じ反応フラスコを氷浴に浸してTiCl:グリオキサールのモル比が1:4であるチタングリオキサール複合体を得た。
【化3】
【0050】
(実施例2)
〔活性炭上のチタン-グリオキサール複合体の調製〕
[0050]表1に示すように約10gのチタン-グリオキサール溶液を約5gの活性炭(AC)へ加えることにより、実施例1にしたがって調製されたチタン-グリオキサール複合体で活性炭をコーティングした。
【表1】
【0051】
[0051]チタン-グリオキサール複合体を活性炭に3時間かけてしみこませた後、混合物を40mlの3.5N HClで2回洗浄して過剰のチタン及びグリオキサールを除去した。チタン-グリオキサールコーティング活性炭をろ過し37℃で22時間乾燥させ、次いで秤量して表1に示すチタン-グリオキサール-活性炭(Ti-Gly-AC)の最終乾燥重量を得た。
【0052】
(実施例3)
〔チタン-グリオキサール-活性炭による尿素収着〕
[0052]チタン-グリオキサール複合体コーティング活性炭による尿素収着を測定するために、実施例2にしたがって調製された1gの各Ti-Gly-ACを50mL遠心管に加えた。次に、尿素を含有する50mlの腹膜透析(PD)溶液(60mg/dL又は257mg/dLの尿素/PD溶液)を遠心管に加えた。各々100mlの2.5%デキストロース入りDIANEAL(登録商標)低カルシウム(2.5mEq/L)腹膜透析溶液(カタログ番号5B9776)は、2.5gの含水デキストロースUSP、538mgの塩化ナトリウムUSP、448mgの乳酸ナトリウム、18.3mgの塩化カルシウムUSP、及び5.08mgの塩化マグネシウムUSPを含有し、約5.2のpHを有する。次いで遠心管を回転させ、尿素、化学分析、及びpHのために、液体試料を様々な時点で遠心管から採取した。
【0053】
[0053]以下の式にしたがって尿素収着能を計算した:
q=([BUN]-[BUN])×(60/28)×V/100/S
[式中、
qはmg尿素/g収着剤での尿素収容能力であり、
[BUN]は時間0での透析溶液中のBUNの濃度(mg/dL)であり、
[BUN]は時間tでの透析溶液中のBUNの濃度(mg/dL)であり、
Vは試験溶液の体積(ml)であり、
Sは収着剤の重量(g)である]。
【0054】
[0054]35gの39%グリオキサール水溶液を75mlのオキシ塩化ジルコニウム(IV)八水和物(ZrOCl・8HO)の40%水溶液と共に混合することにより、ジルコニウム-グリオキサール活性炭試料を調製し、次いで50mlの5N HCl溶液を加え、一晩混合した。次に、得られる溶液の55mLを20gの活性炭と4時間混合し、150mlの3.5N HClを用いてろ過し、38℃のオーブン内で一晩乾燥させた。
【0055】
[0055]表2に示すように、チタン-グリオキサール複合体コーティング活性炭は、ジルコニウムグリオキサール複合体コーティング活性炭又は活性炭単独のどちらよりも高い尿素収着能を示した。例えば、活性炭上にコーティングされたチタン-グリオキサールは、pH4の257mg/dLの尿素腹膜透析(PD)溶液において68時間後に81mg/g収着剤の尿素収容能力を示した。対照的に、活性炭上のジルコニウム-グリオキサールの尿素収容能力は、同じ尿素溶液に対して37mg/g収着剤であった。さらに、水ですすぐと(pH>2となるようにする)、活性炭上にコーティングされたジルコニウム-グリオキサールの尿素収容能力は12g/kgであったが、一方で水ですすいだ、活性炭上にコーティングされたチタン-グリオキサールは、pH5の257mg/dLの尿素腹膜透析(PD)溶液において68時間後に41g/kg収着剤のより高い尿素収容能力を示した。さらに、表3に示すように、活性炭上にコーティングされたチタン-グリオキサールは、活性炭上にコーティングされたジルコニウム-グリオキサールと比較して低いアンモニア値を示した。
【表2】


【表3】


【0056】
(実施例4)
〔中性pHでのチタン-グリオキサール-活性炭による尿素収着〕
[0056]チタン-グリオキサール複合体コーティング活性炭による尿素収着を測定するために、実施例2にしたがって調製された1gのTi-Gly-ACを50mL遠心管に加えた。次に、50mlの112mg/dL尿素窒素透析溶液を遠心管に加えた。透析溶液は112mg/dLのBUN、0.2mg/dLのCa2+、17mmol/Lの重炭酸塩、2.6mg/dLのMg2+、3.1mg/dLのリン、130mmol/LのNa、3.2mmol/LのK、及び113mmol/LのClを含有し、pH8.8である。すすいだ試料を、RO水ですすぎ、ろ過し、37℃で乾燥させた。次いで遠心管を回転させ、尿素、電解質分析、及びpHのために、液体試料を様々な時点で遠心管から採取した。
【0057】
[0057]以下の式にしたがって尿素収着能を計算した:
q=([BUN]-[BUN])×(60/28)×V/100/S
[式中、
qはmg尿素/g収着剤での尿素収容能力であり、
[BUN]は時間0での透析溶液中のBUNの濃度(mg/dL)であり、
[BUN]は時間tでの透析溶液中のBUNの濃度(mg/dL)であり、
Vは試験溶液の体積(ml)であり、
Sは収着剤の重量(g)である]。
【0058】
[0058]ジルコニウムグリオキサール複合体コーティング活性炭を実施例3に記載のように調製した。
【0059】
[0059]表4に示すように、チタン-グリオキサール複合体コーティング活性炭は、ジルコニウムグリオキサール複合体コーティング活性炭又は活性炭単独のどちらよりも高い尿素収着能を示した。例えば、活性炭上にコーティングされたチタン-グリオキサールは、pH7付近の112mg/dLの尿素窒素透析液において68時間後に58mg/g収着剤の尿素収容能力を示した。対照的に、活性炭上のジルコニウム-グリオキサールの尿素収容能力は、同じ尿素溶液に対して11mg/g収着剤であった。
【表4】

【0060】
[0060]上記は本発明の好ましい実施形態のすべての説明であるが、様々な代替物、修正物、及び均等物を使用してもよい。したがって、上記の説明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定するものとして見なされるべきではない。
図1