(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】さや管内への本管搬送装置
(51)【国際特許分類】
F16L 1/00 20060101AFI20230704BHJP
【FI】
F16L1/00 N
(21)【出願番号】P 2018242475
(22)【出願日】2018-12-26
【審査請求日】2021-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】509175078
【氏名又は名称】中川企画建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】317004999
【氏名又は名称】ヤマトガワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104318
【氏名又は名称】深井 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100182796
【氏名又は名称】津島 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100181308
【氏名又は名称】早稲田 茂之
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100104318
【氏名又は名称】深井 敏和
(72)【発明者】
【氏名】西岡 眞明
(72)【発明者】
【氏名】井上 純一
(72)【発明者】
【氏名】檜皮 安弘
(72)【発明者】
【氏名】山本 弘実
(72)【発明者】
【氏名】上田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】藤田 弘司
(72)【発明者】
【氏名】小仲 正純
(72)【発明者】
【氏名】吉田 義徳
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-182732(JP,A)
【文献】特開昭60-155080(JP,A)
【文献】特開2018-159427(JP,A)
【文献】特開平07-208646(JP,A)
【文献】実開昭50-064307(JP,U)
【文献】特開昭64-083740(JP,A)
【文献】特開2014-141997(JP,A)
【文献】特開平11-113129(JP,A)
【文献】特開2001-136619(JP,A)
【文献】特開昭63-110397(JP,A)
【文献】特開2000-329258(JP,A)
【文献】中国実用新案第201425119(CN,Y)
【文献】韓国登録特許第10-0961212(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
さや管内に、継ぎ合わせた本管を連続して挿入し、管路を敷設する管押込工法に使用する本管搬送装置であって、
前記本管の外周面に巻回して取り付けられる本管保持手段と、
前記本管保持手段に取り付けられ、
前記さや管内を移動するための本管搬送手段と、を備え、
前記本管搬送手段が
、
前記さや管内に設けられる枕木と、
前記枕木上に敷設され、
両側にフランジ部を有する2本の走行レールと、
前記本管の下部で前記本管保持手段の両側に取り付けられ、前記2本の走行レール上を走行するキャスターを下部にそれぞれ有する一対の台車と、を含み、
前記走行レール間の
前記枕木上に設けられ、上下のフランジ部と、
該上下のフランジ部を鉛直方向に連結するウェブ部と、から構成されるガイドレールと、
前記本管保持手段
から鉛直方向下向きに延びる一対の軸にそれぞれ取り付けられ、前記ガイドレールの
前記ウェブ部を介して周面が対向して設けられた一対のガイドローラー
(5a、5b)と、をさらに備え、
一方の前記ガイドローラー(5a)と前記ガイドレールの前記ウェブ部との離隔幅X1は、前記ウェブ部を介して前記ガイドローラー(5a)から離れた位置にある前記キャスターと該キャスターよりも外側に位置する前記走行レールの前記フランジ部との離隔幅Y1より小さく、
他方の前記ガイドローラー(5b)と前記ガイドレールの前記ウェブ部との離隔幅X2は、前記ウェブ部を介して前記ガイドローラー(5a)から離れた位置にある前記キャスターと該キャスターよりも外側に位置する前記走行レールの前記フランジ部との離隔幅Y2より小さいことを特徴とする、さや管内への本管搬送装置。
【請求項2】
前記一対のガイドローラー
(5a、5b)の少なくとも一方が、前記ガイドレールの上下フランジ部間に位置している請求項1に記載の本管搬送装置。
【請求項3】
前記さや管と前記本管との間に、本管に対するさや管の鉛直方向の間隙を維持するためのさや管位置決め手段を有する請求項1または2に記載の本管搬送装置。
【請求項4】
さや管内に、継ぎ合わせた本管を連続して挿入し、管路を敷設する管押込工法に使用する本管搬送装置であって、
前記本管の外周面に
巻き付けて取り付けられるバンドを含む本管保持手段と、
前記本管保持手段に取り付けられ、
前記さや管内を移動する本管搬送手段と、を備え、
前記本管搬送手段が、
前記さや管上部から固定金具により
前記さや管内に吊り下げられる断面が逆T字形またはL字形の走行レールと、
前記走行レール上に走行可能に載置されたキャスターと、
前記キャスターから前記本管を吊り下げるための吊り金具と、を備え
、
前記吊り金具は、前記キャスターを内面上部に備える筒状体と、該筒状体に接続され、前記バンドに取り付けられた板状吊り金具とを含むことを特徴とする、さや管内への本管搬送装置。
【請求項5】
さや管内に、継ぎ合わせた本管を連続して挿入し、管路を敷設する管押込工法に使用する本管搬送装置であって、
前記本管の外周面に取り付けられる本管保持手段と、
前記本管保持手段に取り付けられ、
前記さや管内を移動する本管搬送手段と、を備え、
前記本管搬送手段が、
前記さや管と
前記本管との間隙部に、
前記さや管側から吊り下げられ、上下のフランジ部とこれら上下のフランジ部を鉛直方向に連結するウェブ部とから構成される走行レールと、
前記走行レールの
前記ウェブ部の両側に位置する下部フランジ部上に
それぞれ走行可能に載置された
一対のキャスターと
、
を備え
、
前記本管保持手段が、前記本管の外周面に巻き付けられる金属製のバンドであり、該バンドを前記本管の外周面に巻き付けた状態で前記バンドの両端がそれぞれ上方に立ち上がった相対向する一対の立上がり部を有し、該一対の立上がり部がそれぞれ前記一対のキャスターに回転自在に取り付けられていることを特徴とする、さや管内への本管搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲線を含んだ長距離・小断面のさや管内へ本管を搬送するための本管搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水道施設における導・送・配水本管(以下、本管という)を中心とした基幹管路の経年化に伴い、更新が必要となる中大口径管路が増加している。この中大口径管路の敷設にあたり、開削して敷設する場合には掘削幅が大きくなることで、道路交通や輻輳する地下埋設物に悪影響を与えてしまう。そのため、近年、都市部では推進工法もしくはシールド工法にて、さや管を構築した後、該さや管内に中大口径管(本管)を挿入・敷設するという工法が多用されている。
【0003】
挿入する本管の口径が例えばφ700mmまたは800mm以上の場合であれば、さや管内に本管を1本ずつ運搬した後、順次持ち運んだ本管内に作業員が入り、接合することを繰り返す、いわゆる持込工法によって敷設することができる。
しかしながら、本管の口径がφ600mm以下の場合では、さや管内に本管を持ち込むことは前述と同様に行えるが、作業員が本管内に入って接合作業をすることができない。そのため、本管の外側周囲に接合作業スペースが必要となり、本管の口径に比べてさや管の口径が増大するという問題があった。
【0004】
そのため、立坑内にて本管の接合を行い、接合し終わった本管を、ジャッキ等を用いてさや管内に挿入することを繰り返すことにより管の敷設を行う押込工法を用いることがある。さや管内に本管を挿入配管する際には、例えば特許文献1に示すような、本管の外周に取り付けられ、一対のローラ(キャスター)でさや管の内周面を走行する本管挿入台車が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本管の平面線形上、急曲線を含んだ場合や押込距離が長距離となった場合などで押込工法を用いると、押し込み力が増大する。また、押し込み作業中に、立坑内で接合済みの数珠繋ぎ状になった複数の管が予期せぬ方向に推し進められ、本管の継手の位置で管が折れ曲がる等、計画した位置に円滑に管を押し込むことができなくなる。
【0007】
さらに、一般的に公道下に埋設される水道管等の敷設工事では、さや管と本管との隙間部である空間を地中に残すことを避けるため、本管の敷設完了後に当該隙間部分を例えばエアモルタル等で充填する、いわゆる中詰充填が行われる。
その際、まだ固まっていないエアモルタルが本管に浮力を与え、コンクリートの硬化状況程度の差異により、本管が浮上する箇所と浮上しない箇所とが発生することがある。そのため、管の据付高さにばらつきが発生し、最悪の場合、そのばらつき具合から本管が有する継手の許容曲げ角度を超えてしまうことで漏水事故が生じてしまう。
【0008】
押込工法により配管する場合では、持込工法のように、作業員がさや管内に入って、浮上防止のための鋼材や木材等をさや管と本管の間に噛ますという作業が、スペースの点からできない。また、非開削工法区間の長距離・急曲線対応のため、さや管の構築方法が推進工法とシールド工法との併用で構築される場合、さや管材料として遠心力鉄筋コンクリート管(推進管)と鋼製セグメントとが混在する。それらのため、管の浮上を防止する装置の構造・寸法及び固定方法の決定上、煩雑になるという問題がある。
【0009】
本発明の課題は、さや管が曲線を含んだ場合や本管の押込距離が長くなった場合でも、本管搬送台車の脱線を防止し、本管の押し込み力増大を抑制し、且つ中詰充填時の管の浮上を防止できる、さや管内への本管搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、以下の構成からなる解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)さや管内に、継ぎ合わせた本管を連続して挿入し、管路を敷設する管押込工法に使用する本管搬送装置であって、
前記本管の外周面に周回して取り付けられる本管保持手段と、
前記本管保持手段に取り付けられ、さや管内を移動するための本管搬送手段と、を備え、
前記本管搬送手段が、
前記本管の下部で前記本管保持手段に取り付けられ、下部にキャスターを有する台車と、
前記さや管内に設けられる枕木と、
前記枕木上に敷設され、前記台車のキャスターが走行する走行レールと、を備え、
前記走行レール間の枕木上に設けられ、上下のフランジ部と、上下のフランジ部を鉛直方向に連結するウェブ部と、から構成されるガイドレールと、
前記本管保持手段に取り付けられ、前記ガイドレールのウェブ部を介して周面が対向する設けられた一対のガイドローラーと、を備えたことを特徴とする、さや管内への本管搬送装置。
(2)前記一対のガイドローラーが、ガイドレールの上下のフランジ部間に位置している(1)に記載の本管搬送装置。
(3)前記さや管と前記本管との間に、本管に対するさや管の鉛直方向の間隙を維持するさや管位置決め手段を有する(1)または(2)に記載の本管搬送装置。
(4)さや管内に、継ぎ合わせた本管を連続して挿入し、管路を敷設する管押込工法に使用する本管搬送装置であって、
前記本管の外周面に取り付けられる本管保持手段と、
前記本管保持手段に取り付けられ、さや管内を移動する本管搬送手段と、を備え、
前記本管搬送手段が、
さや管上部からさや管内に吊り下げられる断面が逆T字形またはL字形の走行レールと、
前記走行レール上に走行可能に載置されたキャスターと、
前記キャスターから前記本管を吊り下げるための吊り金具と、を備えたことを特徴とする、さや管内への本管搬送装置。
(5)さや管内に、継ぎ合わせた本管を連続して挿入し、管路を敷設する管押込工法に使用する本管搬送装置であって、
前記本管の外周面に取り付けられる本管保持手段と、
前記本管保持手段に取り付けられ、さや管内を移動する本管搬送手段と、を備え、
前記本管搬送手段が、
さや管と本管との間隙部に、さや管側から吊り下げられ、上下のフランジ部と上下のフランジ部を鉛直方向に連結するウェブ部とから構成される走行レールと、
前記走行レールの下部フランジ部上に走行可能に載置されたキャスターと、
前記キャスターから前記本管を吊り下げるための吊り金具と、を備えたことを特徴とする、さや管内への本管搬送装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明の本管搬送装置は、本管口径に対するさや管口径および押込み力の増大を抑制し、本管を計画した位置に正確に押し込むことができ、且つ本管挿入後に行う中詰充填時には本管の浮上を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】トンネル内への本管押込工法の一実施形態を示す説明図である。
【
図2】(a)は推進工法区間における本管搬送装置の一実施形態を示す断面図、(b)は(a)の台車部分の底面図である。
【
図4】(a)は本管搬送装置の一実施形態を示す側面図であり、(b)はガイドローラー部分を示す側面図である。
【
図5】シールド工法区間において、さや管として鋼製セグメントを用いる本管搬送装置の一実施形態を示す断面図である。
【
図6】本管搬送装置の別の実施形態を示す正面図である。
【
図9】(a)は
図7に示す吊り金具の上面図、(b)はバンドの上面図、(c)は吊り金具およびバンドの本管への取り付け状態を示す上面図である。
【
図10】本管搬送装置のさらに別の実施形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る本管搬送装置を図面に基づいて説明する。
図1に示すようなトンネルの押込工法では、トンネル(以下、さや管2と言う)に繋がっている立坑90内にて中小口径管(以下、本管1と言う)同士の接合を行う。その後、接合した本管1を、例えばジャッキ9(油圧ジャッキ)などを用いてさや管2内へ挿入することを繰り返し、本管1の敷設をする。このとき、さや管2内へ押し込まれる本管1の搬送には本管搬送装置100が用いられる。
本管搬送装置100は、複数の本管1の各外周面に取り付けられる。
【0014】
本管1は、さや管2の内側に挿入され敷設される管体であり、例えば金属管、ダクタイル鉄管、樹脂管、コンクリート管などが挙げられる。本管1の口径はφ600mm以下、特にφ300~600mmの範囲で使用されるのがよい。この本管1は、例えば水道管やガス管などに用いられる。
【0015】
複数の本管1は、立坑90内で継ぎ合わせられ、連続してさや管2内へ挿入され、敷設される。このとき、本管1の一端には、他端より口径が広い受口が設けられていてもよく、受口と別の本管の他端とを継ぐことで本管1同士の接続が容易になる。
【0016】
さや管2は、地中などに例えばシールド工法などにより形成される管体である。このさや管2の径の大きさは、本管1および本管搬送装置100を収容可能であれば特に限定されないが、例えばφ1000mm以上であるのがよい。また、さや管2の形状は特に限定されず、断面が、円形、楕円形、四角形などのいずれであってもよい。
【0017】
さや管2の種類としては、例えば鉄筋コンクリートを用いたヒューム管、鋼製セグメントなどが挙げられる。さや管2の構築上、ヒューム管はさや管2の直線区間、鋼製セグメントは曲線区間に用いられるのがよい。
【0018】
さや管2には、一定間隔でグラウト孔(例えば
図6に符号48bで示す)が設けられる。グラウト孔は、さや管2と掘削穴との隙間にさや管2内から充填材を充填する目的で設けられる。
【0019】
本管1とさや管2との間隙部には、本管1の敷設完了後に充填材が充填される(以下、この充填を中詰充填という)。これは本管1とさや管2との間の空間を地中に残すことを避けるためである。このとき、使用される充填材としては例えばエアモルタルなどが挙げられる。
【0020】
図2(a)に示すように、本管搬送装置100は、本管1の外周面に取り付けられる本管1に巻回された本管保持手段3と、この本管保持手段3に取り付けられ、さや管2内で本管1を進行方向に移動させる本管搬送手段4とを備える。すなわち、本管1は本管保持手段3で保持された状態で本管搬送手段4によりさや管2内に敷設される。
【0021】
図2(a)に示す本管保持手段3は、例えば金属や樹脂などからなる環状部材であり、本管1を保持する。具体的には、本管保持手段3は、本管1の上部外周面に取り付けられる上部保持材31と、下部外周面に取り付けられる下部保持材32とからなる。上部保持材31と下部保持材32の固定方法は特に限定されず、例えばそれぞれの端部同士にフランジ部を有し、このフランジ部同士をボルト等で接合してもよい。
【0022】
図3および
図4(a)に示すように、本管搬送手段4は、台車41と、さや管2内に設けられる枕木43と、この枕木43上に敷設され台車41のキャスター42が走行する走行レール44と、を含む。台車41は、下部保持材32の下端両側に溶接等で取り付けられる略L次形のアングル411と、このアングル411の下部にU字形の軸受保持部421によって回転可能に取り付けられるキャスター42とを備える。
【0023】
図4(a)に示すように、キャスター42を有する台車41は、下部保持材32の両側下端にそれぞれ取り付けられる。台車41は本管1を載置できるならば特に形状や材質は限定されないが、下部保持材32の幅以下であるのがよい。キャスター42は特にタイヤ方式であるのがよい。また、キャスター42は台車41に複数個設けてもよい。
【0024】
さや管2内に設けられる枕木43は、敷設される走行レール44の間隔を一定に保ち、水平を維持するために用いられる。枕木43としては、溝形鋼(チャネル材)などの金属材が用いられるが、木材等を用いてもよい。枕木43は両端に溶接、ボルト止め等により取り付けられた略L字形の取り付け具24を介してさや管2の内周面に取り付けられる。
【0025】
走行レール44は、さや管2内に設けられる枕木43上に、枕木43と直交方向に、二本平行に敷設される。本工法を用いる場合、さや管2の内面と運搬時のセグメントおよび本管1との間隙部が極めて少ないため、走行レール44としては、高さが微小となり、両側にフランジ部441を有し、上方向に開口した溝形鋼(チャネル材)が使用されるが、これに限定されるものではない。なお、チャネル材の走行レール44は、さや管2の縦断勾配が大きい場合にも好適に使用される。
【0026】
走行レール44の両側のフランジ部441は、緩曲線区間ではそれぞれキャスター42の脱線を防ぐための壁部となる。この両側のフランジ部441の高さは、キャスター42の高さの約30~50%であるのがよい。走行レール44の幅(両側のフランジ部441間の幅)は、キャスター42の幅より大きく、キャスター42との間に間隙を有する。具体的には、走行レール44の幅はキャスター42の幅の約300~400%であるのがよい。
【0027】
走行レール44の材質は特に限定されないが、走行レール44は、経済性や施工性の観点から、さや管2を形成するセグメントを組み立てる一次覆工の際に使用されるレールと兼用可能であるのがよい。
【0028】
枕木43上には、上下のフランジ部51,52と、この上下のフランジ部51,52とを鉛直方向に連結するウェブ部53とから構成される、断面溝形(チャンネル材)のガイドレール50が設けられる。このガイドレール50は、
図3および
図4(b)に示すように、二本の走行レール44間に、走行レール44と同距離にわたって枕木43上に設けられる。下のフランジ部52は、枕木43に例えばボルト、溶接などで固定される。
【0029】
図3および
図4(b)に示すように、本管保持手段3の下端において、キャスター42、42間に、ガイドレール50のウェブ部53を挟んで一対のガイドローラー5a、5bが回転自在に設けられる。このガイドローラー5a、5bは、キャスター42と直交方向に設けられており、少なくとも一方がウェブ部53と近接ないしは接触するように構成されている。本管1が急曲線区間を走行する場合、走行レール44も急曲線状となるため、ガイドレール50およびガイドローラー5a、5bがないと、キャスター42が走行レール44の曲線部外側のフランジ部441を乗り越えてしまい脱線するおそれがある。一方、ガイドレール50およびガイドローラー5a、5bを設けた場合、キャスター42が走行レール44の曲線部外側のフランジ部441に接触する前または接触と同時にガイドローラー5a、5bのいずれかがガイドレール50に接触するため脱線するのを防ぐことができる。
また、ガイドローラー5a、5bは、接触したウェブ部53の面を走行することができるので、接触することにより台車41の進行の妨げとなることはない。このとき、一対のガイドローラー5a、5bは、上下のフランジ部51,52間に非接触であるのがよい。また、ガイドローラー5a、5bの径は、大きさが同じであっても異なっていてもよいが、キャスター42間に省スペースで設置するため、いずれかの径が小さくなっていてもよい。また、
図3に示すように、ガイドローラー5aは、ガイドレール50のウェブ53と接触させる必要があるため、必然的に上側フランジ51より大きな径にする必要がある。一方、ガイドローラー5b側は上下共フランジがないため小さな径で済む。
【0030】
一方のガイドローラー5aとガイドレール50との離隔幅X1は、キャスター42と走行レール44との離隔幅Y1より小さいのがよい。離隔幅X1が離隔幅Y1より小さければ、急曲線などで、キャスター42が走行レール44から脱輪する(あるいはフランジ部441に接触する)より先に、ガイドローラー5a、5bが先にガイドレール50に接触する。これにより、例えば押込工法による本管搬送手段4の押込み力が増大した場合の急曲線区間などで、キャスター42が走行レール44から脱輪するのを防ぐことができる。
同様の理由から、他方のガイドローラー5bとガイドレール50とのもう一つの離隔幅X2も、キャスター42と走行レール44とのもう一つの離隔幅Y2より小さいのがよい。
【0031】
さらに、ガイドレール50の上側のフランジ部51は、ガイドローラー5aの一方を係止する長さであるのがよい(
図3ではガイドローラー5aがガイドレール50の上側フランジ51に係止する場合を示している)。これにより、さや管2の急曲線区間で本管1が押し込まれ、キャスター42の一方が走行レール44より浮いた場合や、充填材による中詰充填時に本管1が浮上する場合に、上のフランジ部51に、ガイドローラー5a、5bの少なくとも一方が引っ掛かり、本管1を載置した台車41の転倒や浮上などを防ぐことができる。
【0032】
本管1の敷設完了後、さや管2と本管1との間に充填材を充填する中詰充填が行なわれる。この中詰充填時に、例えばさや管2が遠心力鉄筋コンクリート管の場合、枕木43とさや管2との固定ピッチの粗密の程度により、浮力による本管1の浮上が起こる場合がある。そのため、さや管2と本管1との間には、本管1に対するさや管2の鉛直方向における間隙を維持するさや管位置決め手段として、例えば
図2(a)に示すような浮上防止バー8が使用される。
浮上防止バー8は、本管1の浮上を押さえつけて防止するものであり、本管1の上部保持材31上に設置されるが、さや管2の頂部に中詰充填用の配管等がある場合は、本管1の鉛直線から左右斜め30°の範囲内にそれぞれ1本設けるのがよい。
【0033】
図5に示すように、さや管2’として鋼製セグメントが使用される区間の場合、さや管2’と枕木43とが原則全数溶接で固定される。この場合は、浮上防止バー8を使用しなくてもよい。
【0034】
なお、本管搬送装置100は、本管1を所定の位置まで移動させた後は、中詰充填時にさや管2内にそのまま残して充填材で埋めればよい。
また、上記の説明では、断面溝形(チャンネル材)のガイドレール50を用いたが、断面I字形ないし断面H形のガイドレールを用いてもよい。この場合には、ガイドローラー5a、5bは同径であってもよい。
【0035】
(別の実施形態)
次に、本発明の本管搬送装置の別の実施形態を説明する。なお、上述した部材と同じ部材には同一符号を付して説明は省略する。
【0036】
図6は、本管搬送装置の別の実施形態を示している。この本管搬送装置101は、本管1の外周面に取り付けられる本管保持手段3aと、この本管保持手段3aに取り付けられ、さや管2内を移動する本管搬送手段4aとを備える。
【0037】
本管搬送手段4aは、さや管2側から固定金具23で吊り下げられる走行レール44aと、この走行レール44a上を走行可能に載置されるキャスター42aと、このキャスター42aから本管1を吊り下げるための吊り金具40aとを含む。
【0038】
図7に示すように、走行レール44aは、さや管2と本管1との間隙部に、さや管2の上部側から吊り下げられる。この走行レール44aは断面が逆T字形またはL字形であり、端部には、フランジ部441aが設けられる。このフランジ部441aはキャスター42aの脱輪を防ぐものである。
【0039】
走行レール44aは、略中央部に鉛直方向に伸びる仕切板45を有する。仕切板45と走行レール44aとは溶接などで接合してもよく、一体成型されていてもよい。この仕切板45は、さや管2の頂部に設けられ内周面に雌ねじを有するグラウト孔48bと、このグラウト孔48bに螺合する雄ねじ部を外周面に有するソケット22と、このソケット22の下端に螺合等によって固定される固定金具23とを介して吊り下げられ、これによってレール44aがさや管2内に敷設される。
【0040】
図8に示すように、固定金具23は、グラウト孔48bに螺合するソケット22を有する一端と反対側の下端に、走行レール44aの仕切板45を挟持可能な挟持部23aを有している。この固定金具23は、挟持部23aで仕切板45の一端を挟持した後、仕切板45と挟持部23aとにそれぞれ設けた孔部(図示せず)にボルト23bを挿通させて、ナットで締結して、レール44aを保持する。なお、ボルト23bに代えてピンなどを使用してもよい。
【0041】
図8に示すように、吊り金具40aは、一対のキャスター42aを上面に備える筒状体46と、この筒状体46の下端の雄ねじ部461と螺合・接続される雌ねじ部471を有する板状の吊り金具47aとを含む。
【0042】
筒状体46の一対のキャスター42aの間には、仕切板45および固定金具23が挿通可能である間隙部46aが設けられる。筒状体46の下部の雄ねじ部461は、吊り金具47aの上端の雌ねじ部471と螺合する。
【0043】
本管保持手段3aは、本管1の外周面に巻き付けられたバンド30aと、このバンド30aを本管1の外周面に締め付けるためのラチェット30bとを備える。ラチェット30bとしては、例えば、東レインターナショナル社製の商品名「ラチェットバックル」、藤原産業社製の商品名「ラッシングベルト」等が使用可能である。
【0044】
次に、本管保持手段3aへの本管搬送手段4aの取り付け構造を説明する。
図9(a)に示すように、吊り金具47aは、略中央部の上端に設けた雌ねじ部471と、その両側に設けた2つの開口部472,472とを有する板状部材である。バンド30aは、
図9(b)、(c)に示すように、吊り金具47aの一方の開口部472内に上から挿入し、吊り金具47aの下を通して、他方の開口部472に下から挿通させるようにする。その後、前記したラチェット30bでバンド30aを本管1の外周面に締め付ける。
図9(c)では、1本の本管1に対して2本のバンド30aを巻き付けているが、1本のみでもよく、特に制限されない。バンド30aは、本管1本につき、1または2箇所で固定するのがよい。バンド30aの材質は、伸縮性と耐久性に優れたものであれば特に限定されず、例えばナイロンスリングなどが挙げられる。
【0045】
図7に示すように、固定金具23によってさや管2から吊り下げられた走行レール44aは、走行レール44a上に走行可能に載置されたキャスター42aと、キャスター42aを取り付けた筒状体46aを含む吊り金具40aとを介して、本管1を吊り下げている。これにより、本管1は、キャスター42aが走行レール44a上を移動することにより、さや管2内を移動することができる。
【0046】
このように、本管搬送装置101の一対のキャスター42aは、両側をそれぞれ、仕切板45と、筒状体46の側面とで囲われているため、急曲線区間でも脱輪するおそれがない。さらに、本管搬送手段4aは、固定金具23によりさや管2側から吊り下げられているので、中詰充填時に浮力による本管1の浮上を防止することができる。
【0047】
(さらに別の実施形態)
本管搬送装置102のさらに別の実施形態を
図10、
図11に示す。
図10に示すように、この本管搬送装置102は、本管1の外周面に周回して取り付けられる本管保持手段3bと、この本管保持手段3bに取り付けられ、さや管2´(鋼製セグメント)内を移動する本管搬送手段4bとを備える。
【0048】
本管保持手段3bは、本管1の外周面に取り付けられる金属製のバンド33である。このバンド33は、本管1の外周面に取り付けられた状態で両端が上方に立ち上がった立上がり部33a、33aを有する。互いに対向した立上がり部33a、33aには、図示しない貫通孔が設けられており、これにボルト33bを挿通させ、ナット33cと螺合させることにより、バンド33が本管1の外周面に締め付けられ、固定できると共に、後述する一対のキャスター42b、42b間の間隙を一定に保持するという機能も有する。
【0049】
本管搬送手段4bは、さや管2´と本管1との間隙部に、さや管2´側から吊り下げられ、上下のフランジ部51b,52bと、上下のフランジ部51b,52bを鉛直方向に連結するウェブ部53bとから構成される走行レール44bと、この走行レール44bの下のフランジ部52b上を走行可能に載置された一対のキャスター42b、42bとを備える。各キャスター42bは、相対向する立上がり部33aの上部に回転自在に取り付けられている。
【0050】
図11に示すように、走行レール44bは、断面I型(Iビーム)の形状または断面H字型である。走行レール44bの上フランジ部51bには雄ねじ部49bが螺合、溶接などによって固定されている。一方、さや管2´のグラウト孔48bは内周面に雌ねじが形成されており、これに雄ねじ部49bが螺合することにより、走行レール44bを吊り下げている。
【0051】
走行レール44bの下フランジ部52b上には、キャスター42bが走行可能に載置される。
【0052】
このようなモノレール形式で走行レール44a、44bを敷設した本管搬送装置101、102を用いれば、立坑内に設置したジャッキにより本管1をさや管2、2´内へ押し込む際、必要となるさや管2、2´の口径及び押し込み力の増大を極力抑え、挿入時に脱線などを防止して、計画した位置に本管1を安全・正確に敷設できる。さらに、本管1の敷設完了後に施されるさや管2と本管1との隙間部に、充填材(エアモルタルなど)を充填する際に、それぞれさや管2、2´の頂部から吊り下げられる方式であるので、浮力による本管1の浮上を防止することができる。
なお、さや管2´(鋼製セグメント)に代えて、鉄筋コンクリートを用いたヒューム管からなるさや管2を用いる場合も、同様にして適用することができる、
【0053】
以上、本発明の実施形態に係る本管搬送装置を説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の改善や改良が可能である。
例えば、上記のモノレール形式の本管搬送装置101,102に加えて、本管1の下部に、本管搬送装置100の本管搬送手段4を用いることもできる。すなわち、モノレール形式の本管搬送装置101,102に、本管1を載置する台車41と、この台車のキャスター42が走行する走行レール44とが設けられていてもよい。さらに、ガイドローラー5a、5bとガイドレール50とが設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 本管
2、2’ さや管
22 ソケット
23 固定金具
23a 挟持部
23b ボルト
24 取り付け具
3、3a、3b 本管保持手段
30a バンド
30b ラチェット
31 上部保持部材
32 下部保持部材
33 バンド
33a 立上がり部
33b ボルト
33c ナット
4、4a、4b 本管搬送手段
40a 吊り金具
41 台車
42、42a、42b キャスター
43 枕木
44、44a、44b 走行レール
411 アングル
421 軸受保持部
441、441a フランジ部
45 仕切板
46 筒状体
46a 間隙部
47a 吊り金具
48b グラウト孔
5a、5b ガイドローラー
50 ガイドレール
51、51b 上のフランジ部
52、52b 下のフランジ部
53、53b ウェブ部
8 浮上防止バー
9 ジャッキ
90 立坑
100、101、102 本管搬送装置