(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】レール送り装置を備えた台車
(51)【国際特許分類】
E21D 11/10 20060101AFI20230704BHJP
E21D 11/38 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
E21D11/10 Z
E21D11/38 Z
(21)【出願番号】P 2019171794
(22)【出願日】2019-09-20
【審査請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000158725
【氏名又は名称】岐阜工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】中林 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】三宅 拓也
(72)【発明者】
【氏名】佐佐木 秀行
(72)【発明者】
【氏名】鷲見 大介
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-278498(JP,A)
【文献】特開2006-336259(JP,A)
【文献】特開2010-163795(JP,A)
【文献】特開平07-081638(JP,A)
【文献】特開2009-114751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/10
E21D 11/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車の右側及び左側にそれぞれ前後一対で車輪を備えるととともに、台車を昇降させるアウトリガーを備え、前記アウトリガーによって台車を上昇させた状態で、レールを前後進可能に吊持するとともに、前記レールを進行方向前後に送り出し可能としたレール送り装置を備えた台車において、
前記台車は前後左右の4箇所にそれぞれ台車昇降回転装置を備えるとともに、前記台車昇降回転装置は、台車に対して鉛直軸周りに回転自在に支持された回転基台と、この回転基台に対して水平方向に沿って相対的に移動可能に設けられた横向スライドフレームと、前記横向スライドフレームの両端部にそれぞれ設けられたアウトリガーと、前記回転基台と前記横向スライドフレームとの間に連結された横移動制御用ジャッキとからなることを特徴とするレール送り装置を備えた台車。
【請求項2】
前記横向スライドフレームは、前記回転基台に対して貫通した状態で設けられるとともに、前記回転基台の貫通孔内部において前記横向スライドフレームの側面に対面する両壁面は横向スライドフレーム側に向かって凸状の曲面となっている請求項1記載のレール送り装置を備えた台車。
【請求項3】
前記横向スライドフレームは門型形状を成し、両側の支柱に前記アウトリガーが支持されている請求項1、2いずれかに記載のレール送り装置を備えた台車。
【請求項4】
前記横移動制御用ジャッキは、復動型両ロッド形の油圧ジャッキが用いられ、シリンダが前記回転基台に保持され、ピストンロッドの両端がそれぞれ両側の支柱に連結されている請求項3記載のレール送り装置を備えた台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に曲線走行を可能としたレール送り装置を備えた台車に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、トンネルの施工に当たっては、各作業工程に応じて、シート張り台車、セントル、足場台車などの各種台車が用いられている。これら台車の走行は、下記特許文献1、2に示されるように、地盤上に左右一対のレールを敷設し、台車の車輪が前記レールを走行させるようにしたものが多く採用されている。この場合、前記レールは長手方向に沿って複数に分割され、台車の走行に伴って、走行し終えたレールを進行方向前方側に順次盛替えしながら台車を走行させるようにしていた。
【0003】
しかしながら、この方法の場合は、例えばバックホウなどの重機でレールを引きずって移動させ、重機のバケットなどでレール位置の微調整を行うようにしていたため、バックホウの後進・作業との複合作業のため接触・挟まれ事故の災害が懸念されるなどの危険要因が多くなるとともに、ズリ出し時、インバート埋戻し時、資機材運搬時は作業に時間的制約を受け、レールの盛替えができないためレール送り作業が遅延化するなどの問題があった。更には見張り等を含め複数の作業員を必要とするなどの問題もあった。
【0004】
そこで、近年はレール送り装置を備えた台車が提案され実用化されている。このレール送り装置について、
図21~
図24に基づいて詳述する。なお、
図21~
図23はレールを地盤から上昇させて進行方向前方に移動させている状態を示している。
【0005】
図21に示されるように、台車50の左右一対の前側支柱50A、50Bと、左右一対の後側支柱50C、50Dの下端には車輪60が回転自在に設けられているとともに、その側部にアウトリガー51が設けられている。
【0006】
図23に示されるように、前記車輪60の両側には鉛直配向部材62、62が設けられ、これらの鉛直配向部材62,62の下端にはレール61の側面凹部に嵌合する送りローラー63が設けられ、前記アウトリガー51を伸長して台車50を上昇させた際にレール61が地盤から離れ上方に引き上げられるようになっている。前記レール61は、車輪60が走行するレール本体61Aと、このレール本体61Aの下側に一体に連設されたH形鋼からなる送りレール61Bとから構成され、前記送りレール61Bによって前記送りローラ63が嵌合する側面凹部が構成されている。
【0007】
一方、レールの送り機構は、
図22に示されるように、レール61の前端と後端との間にローラーチェン64を張架するとともに、このローラーチェーン64に歯合する原動スプロケット66を配設し、前記原動スプロケット66をモータ駆動させるようにしている。従って、アウトリガー51によって台車50を上方に引き上げた状態としたならば、前記ローラーチェーン64を駆動させることによってレール61を進行方向前方に送り出し、
図24に示されるように、アウトリガー51を収縮させてレール61を地盤上に設置する。その後は、レール61の上を車輪60が走行し台車50が前進するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2000-291392号公報
【文献】特開2003-35098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記レール送り機構によって、重機などを用いてレールを進行方向前側に盛替えしていた際の問題点は解消されるようになったが、前記レール送り機構は直線的にしかレールを送ることができないためトンネルが曲線である場合に対応できないという問題点があった。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、レール送り装置を曲線走行に対応させた台車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、台車の右側及び左側にそれぞれ前後一対で車輪を備えるととともに、台車を昇降させるアウトリガーを備え、前記アウトリガーによって台車を上昇させた状態で、レールを前後進可能に吊持するとともに、前記レールを進行方向前後に送り出し可能としたレール送り装置を備えた台車において、
前記台車は前後左右の4箇所にそれぞれ台車昇降回転装置を備えるとともに、前記台車昇降回転装置は、台車に対して鉛直軸周りに回転自在に支持された回転基台と、この回転基台に対して水平方向に沿って相対的に移動可能に設けられた横向スライドフレームと、前記横向スライドフレームの両端部にそれぞれ設けられたアウトリガーと、前記回転基台と前記横向スライドフレームとの間に連結された横移動制御用ジャッキとからなることを特徴とするレール送り装置を備えた台車が提供される。
【0012】
上記請求項1記載の発明では、台車の前後左右の4箇所にそれぞれ台車昇降回転装置を備えるようにしている。この台車昇降回転装置は、台車に対して鉛直軸周りに回転自在に支持された回転基台と、この回転基台に対して水平方向に沿って相対的に移動可能に設けられた横向スライドフレームと、前記横向スライドフレームの両端部にそれぞれ設けられたアウトリガーと、前記回転基台と前記横向スライドフレームとの間に連結された横移動制御用ジャッキとからなる。
【0013】
従って、曲線方向に進行したい場合は、後述する要領によって、前記台車昇降回転装置を用い、アウトリガーによって台車全体を上昇させた状態としたならば、台車を平面視で所定量だけ回転させるようにすることで進行方向を変えることができるようになり、曲線走行に対応することが可能となる。
【0014】
請求項2に係る本発明として、前記横向スライドフレームは、前記回転基台に対して貫通した状態で設けられるとともに、前記回転基台の貫通孔内部において前記横向スライドフレームの側面に対面する両壁面は横向スライドフレーム側に向かって凸状の曲面となっている請求項1記載のレール送り装置を備えた台車が提供される。
【0015】
上記請求項2記載の発明では、前記回転基台に対して前記横向スライドフレームの取付け状態の好適例を示したものである。具体的には、前記横向スライドフレームを前記回転基台に対して貫通した状態で設けるようにするとともに、前記回転基台の貫通孔内部において前記横向スライドフレームの側面に対面する両壁面は横向スライドフレーム側に向かって凸状の曲面としている。従って、台車の回転時に、回転方向に対する横移動のシフト差を許容することが容易になる。
【0016】
請求項3に係る本発明として、前記横向スライドフレームは門型形状を成し、両側の支柱に前記アウトリガーが支持されている請求項1、2いずれかに記載のレール送り装置を備えた台車が提供される。
【0017】
上記請求項3記載の発明では、前記横向スライドフレームの好適な構造形状と、アウトリガーの取付け態様を示したものである。
【0018】
請求項4に係る本発明として、前記横移動制御用ジャッキは、復動型両ロッド形の油圧ジャッキが用いられ、シリンダが前記回転基台に保持され、ピストンロッドの両端がそれぞれ両側の支柱に連結されている請求項3記載のレール送り装置を備えた台車が提供される。
【0019】
上記請求項4記載の発明では、前記横移動制御用ジャッキの好適な構造を示すとともに、その取付け態様を示したものである。
【発明の効果】
【0020】
以上詳説のとおり本発明によれば、レール送り装置を曲線走行に対応させた台車を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係るレール送り装置を備えた台車1の横断面図である。
【
図5】台車昇降回転装置6を示す、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【
図6】その平面図であり、(A)は回転前の状態、(B)は回転後の状態を示している。
【
図7】台車昇降回転装置2による台車1の横移動要領(その1)(A)~(C)である。
【
図8】台車昇降回転装置2による台車1の横移動要領(その2)(D)~(F)である。
【
図9】台車昇降回転装置2のヨー回転要領(曲線走行)を示す図である。
【
図10】台車昇降回転装置2による台車1の曲線走行手順(その1)である。
【
図11】台車昇降回転装置2による台車1の曲線走行手順(その2)である。
【
図12】台車昇降回転装置2による台車1の曲線走行手順(その3)である。
【
図13】台車昇降回転装置2による台車1の曲線走行手順(その4)である。
【
図14】台車昇降回転装置2による台車1の曲線走行手順(その5)である。
【
図15】台車昇降回転装置2による台車1の曲線走行手順(その6)である。
【
図16】台車昇降回転装置2による台車1の曲線走行手順(その7)である。
【
図17】台車昇降回転装置2による台車1の曲線走行手順(その8)である。
【
図18】台車昇降回転装置2による台車1の曲線走行手順(その9)である。
【
図19】台車昇降回転装置2による台車1の曲線走行手順(その10)である。
【
図20】台車昇降回転装置2による台車1の曲線走行手順(その11)である。
【
図21】従来のレール送り装置50を示す台車1の横断面図である。
【
図23】アウトリガー部分の正面図(台車上昇状態)である
【
図24】アウトリガー部分の正面図(台車下降状態)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0023】
本発明に係るレール送り装置を備えた台車1は、直線走行しか出来なかった従来のレール送り装置付き台車を曲線走行に対応させるようにしたものである。
【0024】
〔台車1のレール送り装置について〕
先ず、
図1~
図4に基づいて、台車1のレール送り装置の構造について詳述する。
【0025】
前記レール送り装置は、例えばトンネルの施工の場合は、掘削後に壁面に防水シートを張設するためのシート張り台車、鉄筋組立などのための足場台車、覆工コンクリートを打設するためのセントルなどの各種台車に対して適用される。
【0026】
台車1の左右一対の前側支柱1A、1Bと、左右一対の後側支柱1C、1Dの下端又はその近傍、すなわち台車の右側及び左側にそれぞれ前後一対で、レール11を走行するための車輪10が回転自在に設けられている。前記レール11は、詳細には
図4に示されるように、車輪10が走行するためのレール本体11Aと、このレール本体11Aの下側に一体に連設されたH形鋼からなる送りレール11Bとから構成されている。
【0027】
図4に示されるように、前記車輪10を保持する両側の車輪支持部に対して、縦方向部材12A、12Bを設けるとともに、この縦方向部材12A、12Bの下端に内側に向けて送りローラ13A、13Bが設けられ、この送りローラ13A、13Bが前記送りレール11Bの側面凹部に嵌合し前記レール11を進行方向前後に送り出し可能としている。
【0028】
前記車輪10の近傍位置には、後述の台車昇降回転装置2が設けられている。この台車昇降回転装置2にはアウトリガー22A,22Bが設けられており、このアウトリガー22A、22Bによって台車1全体を上昇させた際に、前記レール11が地盤から離れ上方に引き上げられるようになっている。
【0029】
一方、前記レール11の送り機構は、
図2及び
図3に示されるように、レール10の前端と後端にぞれぞれチェーン端固定部14A、14Bを有し、これらチェーン端固定部14A、14B間にローラーチェン15を方向転換ギア16、16…を介しながら張設するとともに、中間にモータ駆動される原動スプロケット17を設け前記ローラーチェーン15に歯合させるようにしている。前記チェーン端固定部14Aは、螺設されたネジ棒の螺進退によってローラーチェーン15の張力が調整可能となっている。
【0030】
前記アウトリガー22A、22Bによって台車1を上方に引き上げた状態としたならば、前記ローラーチェーン15を駆動させることによってレール11を進行方向前方に送り出し、所定の位置(
図2の状態)まで移動させたならば、
図1に示されるように、アウトリガー22を収縮させてレール11を地盤上に設置する。その後は、レール11の上を車輪10が走行し台車1が前進するようになっている。
【0031】
なお、前記レール送り機構として、ローラーチェーン方式を採用した例について述べたが、前記送りローラ13A、13Bを油圧モータによって駆動させることによりレール11を前方に送るようにしても良いし、レール11にラックギアを設けるとともに、台車側にモータ駆動されるピニオンギアを設けることによりレールを送り出すようにすることも可能である。
【0032】
〔台車昇降回転装置2について〕
従来のレール送り装置は直線走行にしか対応出来ない構造であるが、本発明では前記レール送り装置を用いながら曲線走行に対応させるため、台車1に台車昇降回転装置2を設けるようにしている。
【0033】
前記台車昇降回転装置2は、台車1の前後左右の4箇所にそれぞれ設けられている。具体的には、
図3に示されるように、台車の車輪10を支持する進行方向に沿って配置された側部フレーム1Eであって、車輪10の近傍位置にそれぞれ前記側部フレーム1Eを跨ぐように配置されている。前記側部フレーム1Eは、
図5に示されるように、溝型鋼を空間を空けた状態で背面合わせした断面構造となっている。
【0034】
前記台車昇降回転装置2は、同
図5に示されるように、台車1(側部フレーム1E)に対して鉛直軸周りに回転自在に支持された回転基台20と、この回転基台20に対して水平方向に沿って相対的に移動可能に設けられた横向スライドフレーム21と、前記横向スライドフレーム21の両端部にそれぞれ設けられたアウトリガー22A、22Bと、前記回転基台20と前記横向スライドフレーム21との間に連結された横移動制御用ジャッキ23とから構成されている。
【0035】
更に詳述すると、前記回転基台20は、軸部20Aと基台本体20Bとから構成され、溝形鋼を背面合わせした形成された側部フレーム1Eの空間に形成された円形孔1eに対して前記軸部20Aが嵌合支持されることにより、鉛直軸周りに回転自在に支持されている。前記基台本体20Bには、水平方向に貫通する貫通孔20bが設けられている。前記回転基台20は人力によって回転させるようにしているが、駆動モータを付設しモータ駆動によって回転させるようにすることも可能である。
【0036】
前記横向スライドフレーム21は、水平フレーム21Aと、その両端に設けられた脚柱フレーム21B、21C(本発明の「支柱」に相当する。)とからなる門型形状のフレームが用いられている。前記水平フレーム21Aが前記回転基台20の貫通孔20bを貫通した状態で設けられており、前記回転基台20に対して水平方向に沿って相対的に移動可能に設けられている。前記横向スライドフレーム21の移動可能量は、両側の脚柱フレーム21B、21Cが前記基台本体20Bに衝突するまでの範囲となる。
【0037】
前記脚柱フレーム21B、21Cに対してアウトリガー22A,22Bが設けられている。前記回転基台20の貫通孔20bにおいて、前記横向スライドフレーム21の側面(水平フレーム21Aの側面)に対面する両壁面20cは、
図6に示されるように、水平フレーム21A側に向かって凸状の曲面となっていることが望ましい。
図6(B)に示されるように、後述する台車1の回転時に、回転方向に対する横移動のシフト差を許容することが容易になる。すなわち、後述するように、台車1の移動は平面視で台車1の平面中心点Oを回転中心とした円運動方向になる。これに対して、アウトリガー22A,22Bによって台車1を持ち上げた状態での前記回転基台20の移動は前記横向スライドフレーム21をガイドとする直線運動となるため、台車1の回転に伴って両者間にシフト差が生じることになる。このシフト差を吸収するためには、例えば、前記回転基台20と横向スライドフレーム21との嵌合状態に遊びを設けておき前記シフト差を吸収させるようにしたり、前記回転基台20の貫通孔20bの側面にゴム板などの弾性易変形部材を介して摺動板を固設することにより前記シフト差を吸収したりすることもできるが、本形態例では前記両壁面20cを水平フレーム21A側に向かって凸状の曲面とすることにより、
図6(B)に示されるように、前記シフト差を吸収させるようにしている。前記凸状の曲面は、前記回転基台20(側部フレーム1Eも同様)の振れ角に対応した曲率となっている。
【0038】
前記横移動制御用ジャッキ23は、シリンダ23Aとピストンロッド23B、23Cとからなる復動型両ロッド形の油圧ジャッキが好適に用いられる。前記「復動型」とはヘッド側とキャップ側の両方に油の出入口を設けて、交互に油の流入と流出とを行い往復運動を行わせる形式であり、前記「両ロッド形」とはシリンダの両端からピストンロッドが突出し、これら両端のロッドが一体のピストンとされ一体的挙動を示すものを言う。
【0039】
前記横移動制御用ジャッキ23は、前記回転基台20と前記横向スライドフレーム21との間に連結するように設けられる。具体的には、シリンダ23Aが前記回転基台20に保持され、ピストンロッド23B、23Cの両端がそれぞれ横向スライドフレーム21の脚柱フレーム21B、21Cに連結されるように設けられている。
【0040】
前記横移動制御用ジャッキ23として、片側ずつ独立のジャッキを設けるようにした場合はこれらジャッキの連動が煩雑となり油圧制御が難しいが、前記復動型両ロッド形の油圧ジャッキを用いることにより、油圧制御が単純化することができるようになる。
【0041】
前記横移動制御用ジャッキ23の稼働によって移動される対象は、前記横向スライドフレーム21と前記回転基台20となる。アウトリガー22A,22Bが収縮している状態(非機能状態)では回転基台20を固定側として前記横移動制御ジャッキ23によって横向スライドフレーム21が水平方向に移動される。また、アウトリガー22A,22Bを伸長させ台車1が上昇している状態(機能状態)ではアウトリガー22A,22Bを固定側として、前記横移動制御ジャッキ23によって回転基台20とともに、台車1が水平方向に移動される。
【0042】
〔台車1の横移動要領〕
次に、前記台車昇降回転装置2による台車1の横移動要領について
図7及び
図8に基づいて詳述する。
【0043】
図7(A)は台車1がレール11上を走行可能とされ、前記横向スライドフレーム21が回転基台20の中央に位置している状態である。この状態から横向スライドフレーム21とともに、アウトリガー22A,22Bを水平方向に移動する。具体的には横移動制御用ジャッキ23のピストン23B,23Cを油圧駆動によって図面右方側に移動させることによって、
図7(B)に示されるように、横向スライドフレーム21を右方側に移動させる。
図7(C)は横向スライドフレーム21を右方側に移動し終えた後に、アウトリガー22A,22Bを伸ばして台車1全体を上昇させた状態を示している。
【0044】
次に、アウトリガー22A、22Bによって台車1全体を上昇させた状態で、
図8(D)に示されるように、横移動制御用ジャッキ23のシリンダ23Aを油圧駆動によって移動させる。シリンダ23Aの移動によって、回転基台20とともに、台車1が右方側に移動される。
【0045】
台車1の移動が完了したならば、
図8(E)に示されるように、アウトリガー22A、22Bを収縮して上方に引き上げ、横移動制御用ジャッキ23のピストン23B,23Cを油圧駆動によって図面右方側に移動させることによって、
図7(F)に示されるように、横向スライドフレーム21を右方側に移動させて回転基台20の中央に位置させるようにする。
【0046】
台車1に配置された4箇所の台車昇降回転装置2において、上記作業手順によって台車1を移動させるようにするが、台車1が曲線走行するには、台車1の移動は平面視で台車1の平面中心点Oを回転中心とした円運動方向になるため、
図9に示されるように、4箇所に配置された各台車昇降回転装置2、2…は、台車1の平面中心点Oを回転中心とし、かつ各回転基台20の回転軸(軸部20A)を通る円軌跡Lの接線方向に前記台車昇降回転装置2の向きを変えた状態(±θずつ回転)させた状態で行うようにすることによって台車1を平面的に回転させることが可能となる。なお、図中、台車昇降回転装置1の回転方向は、時計回りを+回転、反時計回りを-回転として表示している。
【0047】
〔台車1の曲線走行要領について〕
次に、前記台車昇降回転装置2を用いた台車1の曲線走行要領について、
図10~
図21に基づいて詳述することにする。各図において(A)は台車の平面状態を示し、(B)は台車昇降回転装置2の作動状態を示している。
【0048】
図10は台車1がレール11上に走行可能な状態であり、横向スライドフレーム21は回転基台20の中央に位置している。また、アウトリガー22A、22Bは上昇させた状態としている。
【0049】
曲線走行するために台車1の向き(進行方向)を変えるには、
図11に示されるように、回転基台20を手動によって回転させることにより各台車昇降回転装置2、2…を回転させる。回転量は前述したように、台車1の移動は平面視で台車1の平面中心点Oを回転中心とした円運動方向になるため、
図9に示されるように、4箇所に配置された各台車昇降回転装置2、2…は、台車1の平面中心点Oを回転中心とし、かつ各回転基台20の回転軸を通る円軌跡Lの接線方向に前記台車昇降回転装置2の向きを変えた状態(±θずつ回転)とする。なお、各所毎の回転量は決まっているため、回転停止位置にストッパーを設けておくことが望ましい。
【0050】
次に、
図12に示されるように、アウトリガー22A,22Bを伸長させ地盤に接地させ、さらに伸ばして台車昇降回転装置2とともに、台車1を上昇させたならば、
図13に示されるように、横移動制御用ジャッキ23のシリンダ23Aを油圧駆動によって移動させることにより、回転基台20とともに、台車1を右方側に移動させる。この操作を4つの台車昇降回転装置2、2…で同時的に行うことにより台車1が平面中心点Oを回転中心として所定量(回転量:φ)だけ回転させることが可能となる。
【0051】
次に、
図14に示されるように、アウトリガー22A,22Bを収縮させてレール11を地盤上に載置させるとともに、このレール11上に台車1の荷重を預けるようにする。
【0052】
次いで、
図15に示されるように、横移動制御用ジャッキ23のピストン23B,23Cを油圧駆動によって図面右方側に移動させることによって、横向スライドフレーム21を右方側に移動させて回転基台20の中央に位置させるようにする。
【0053】
図16に示されるように、台車昇降回転基台2を回転させて元の状態、すなわち台車1の向いている進行方向に対して垂直方向に戻す。ここまでの作業が台車1の進行方向を変え終えた状態である。
【0054】
この後の作業は、レール11の送り作業となる。
図17に示されるように、アウトリガー22A、22Bを伸長し台車1を上昇させた状態としたならば、
図18に示されるように、前記ローラーチェーン15を駆動させることによってレール11を進行方向前方に送り出し、所定の位置(
図2の状態)まで移動させたならば、
図19に示されるように、アウトリガー22A、22Bを収縮させる。その後は、
図20に示されるように、台車1がレール11上を走行することにより前進する。
【0055】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、山岳トンネルの施工に使用される各種台車を例に採り本発明を説明したが、山岳トンネル用の台車に限定されるものではなく、台車一般に対して適用が可能である。
【符号の説明】
【0056】
1…台車、2…台車昇降回転装置、10…車輪、11…レール、12A・12B…縦方向部材、13A・13B…送りローラ、14A・14B…チェーン端固定部、15…ローラーチェーン、20…回転基台、20b…貫通孔、20c…両壁面、21…横向スライドフレーム、21A…水平フレーム、21B・21C…脚柱フレーム、22A・22B…アウトリガー、23…横移動制御用ジャッキ、23A…シリンダ、23B・23C…ピストンロッド