(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】蓄エネルギー装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0656 20160101AFI20230704BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20230704BHJP
H01M 8/0612 20160101ALI20230704BHJP
H01M 8/04014 20160101ALI20230704BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20230704BHJP
【FI】
H01M8/0656
H01M8/10 101
H01M8/0612
H01M8/04014
H01M8/04746
(21)【出願番号】P 2019149413
(22)【出願日】2019-08-16
【審査請求日】2022-03-28
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和1年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、センター・オブ・イノベーション事業「持続的共進化地域創成拠点」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯沼 広基
(72)【発明者】
【氏名】松崎 良雄
(72)【発明者】
【氏名】馬場 好孝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洸基
(72)【発明者】
【氏名】立川 雄也
(72)【発明者】
【氏名】中島 裕典
(72)【発明者】
【氏名】谷口 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 一成
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-513915(JP,A)
【文献】特開2014-072119(JP,A)
【文献】特開2001-160404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/0656
H01M 8/10
H01M 8/0612
H01M 8/04014
H01M 8/04746
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料極と、空気極と、前記燃料極と前記空気極との間に設けられ、プロトン伝導性を有する固体酸化物を含む電解質とを有する燃料電池本体と、
少なくとも水素を含む燃料ガスと、二酸化炭素とを保持する燃料タンクを有し、前記燃料極に
前記燃料ガスを供給する燃料供給部と、
前記空気極に少なくとも酸素を含む酸素含有ガスを供給する酸素供給部と、
前記空気極に水を供給する水供給部と、
を備える蓄エネルギー装置。
【請求項2】
外部から受電して前記燃料電池本体によって水を電気分解する充電モードと、前記燃料電池本体を放電させる放電モードとを切り換えるモード切換部を備え、
前記燃料供給部は、前記放電モードにおいて前記燃料ガスを供給し、
前記酸素供給部は、前記放電モードにおいて前記酸素含有ガスを供給し、
前記水供給部は、前記充電モードにおいて前記水を供給する請求項1に記載の蓄エネルギー装置。
【請求項3】
前記水供給部および前記酸素供給部は、前記酸素含有ガスを保持する酸素タンクを含む請求項1
または2に記載の蓄エネルギー装置。
【請求項4】
燃料極と、空気極と、前記燃料極と前記空気極との間に設けられ、プロトン伝導性を有する固体酸化物を含む電解質とを有する燃料電池本体と、
前記燃料極に少なくとも水素を含む燃料ガスを供給する燃料供給部と、
少なくとも酸素を含む酸素含有ガスと、水とを保持するタンクを有し、前記空気極に
前記酸素含有ガス
および前記水を供給する
空気極供給部と、
を備える蓄エネルギー装置。
【請求項5】
外部から受電して前記燃料電池本体によって水を電気分解する充電モードと、前記燃料電池本体を放電させる放電モードとを切り換えるモード切換部を備え、
前記燃料供給部は、前記放電モードにおいて前記燃料ガスを供給し、
前記
空気極供給部は、前記放電モードにおいて前記酸素含有ガスを供給し
、前記充電モードにおいて前記水を供給する請求項
4に記載の蓄エネルギー装置。
【請求項6】
前記燃料極に供給されるガスと、前記燃料極から排気される燃料極排気ガスとを熱交換させる第1熱交換器を備える請求項1から5のいずれか1項に記載の蓄エネルギー装置。
【請求項7】
前記空気極に供給されるガスと、前記空気極から排気される空気極排気ガスとを熱交換させる第2熱交換器を備える請求項1から6のいずれか1項に記載の蓄エネルギー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質を有する燃料電池本体を利用した蓄エネルギー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水素を燃料として放電するとともに、充電時に水を電気分解して水素を生成する可逆高温燃料電池が開発されている(例えば、特許文献1)。特許文献1の技術では、放電の際、燃料極に水素が供給され、充電の際、燃料極に水が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のような充電および放電が可能な燃料電池において、ラウンドトリップ効率を向上させることができる技術の開発が希求されている。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑み、ラウンドトリップ効率を向上させることが可能な蓄エネルギー装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る蓄エネルギー装置は、燃料極と、空気極と、燃料極と空気極との間に設けられ、プロトン伝導性を有する固体酸化物を含む電解質とを有する燃料電池本体と、少なくとも水素を含む燃料ガスと、二酸化炭素とを保持する燃料タンクを有し、燃料極に燃料ガスを供給する燃料供給部と、空気極に少なくとも酸素を含む酸素含有ガスを供給する酸素供給部と、空気極に水を供給する水供給部と、を備える。
【0007】
また、蓄エネルギー装置は、外部から受電して燃料電池本体によって水を電気分解する充電モードと、燃料電池本体を放電させる放電モードとを切り換えるモード切換部を備え、燃料供給部は、放電モードにおいて燃料ガスを供給し、酸素供給部は、放電モードにおいて酸素含有ガスを供給し、水供給部は、充電モードにおいて水を供給してもよい。
【0010】
また、水供給部および酸素供給部は、酸素含有ガスを保持する酸素タンクを含んでもよい。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る他の蓄エネルギー装置は、燃料極と、空気極と、燃料極と空気極との間に設けられ、プロトン伝導性を有する固体酸化物を含む電解質とを有する燃料電池本体と、燃料極に少なくとも水素を含む燃料ガスを供給する燃料供給部と、少なくとも酸素を含む酸素含有ガスと、水とを保持するタンクを有し、空気極に酸素含有ガスおよび水を供給する空気極供給部と、を備える。
また、蓄エネルギー装置は、外部から受電して燃料電池本体によって水を電気分解する充電モードと、燃料電池本体を放電させる放電モードとを切り換えるモード切換部を備え、燃料供給部は、放電モードにおいて燃料ガスを供給し、空気極供給部は、放電モードにおいて酸素含有ガスを供給し、充電モードにおいて水を供給してもよい。
また、蓄エネルギー装置は、燃料極に供給されるガスと、燃料極から排気される燃料極排気ガスとを熱交換させる第1熱交換器を備えてもよい。
【0012】
また、蓄エネルギー装置は、空気極に供給されるガスと、空気極から排気される空気極排気ガスとを熱交換させる第2熱交換器を備えてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ラウンドトリップ効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施形態にかかる蓄エネルギー装置を説明する図である。
【
図2】第1の実施形態の充電モードにおけるガスの流れを説明する図である。
【
図3】第1の実施形態の放電モードにおけるガスの流れを説明する図である。
【
図4】水および水蒸気の電気分解における電圧を説明する図である。
【
図5】メタネーション反応における反応エンタルピーを説明する図である。
【
図7】第1の変形例にかかる蓄エネルギー装置を説明する図である。
【
図8】第2の変形例にかかる蓄エネルギー装置を説明する図である。
【
図9】第2の変形例の充電モードにおけるガスの流れを説明する図である。
【
図10】第2の変形例の放電モードにおけるガスの流れを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
[第1の実施形態:蓄エネルギー装置100]
図1は、第1の実施形態にかかる蓄エネルギー装置100を説明する図である。
図1に示すように、蓄エネルギー装置100は、燃料電池本体110と、燃料タンク120と、燃料供給管122と、第1排気管124と、酸素タンク150と、酸素供給管152と、第2排気管154と、第1熱交換器160と、第2熱交換器162と、中央制御部170とを含む。
図1中、破線の矢印は、信号の流れを示す。
【0017】
燃料電池本体110は、キャリアをプロトン(H+)とする固体酸化物形燃料電池(PCFC:Proton-conducting Ceramic-electrolyte Fuel Cell)である。燃料電池本体110は、燃料極112と、空気極114と、電解質部116とを含む。
【0018】
燃料極112は、例えば、NiおよびNi化合物(例えば、NiO)のいずれか一方または両方を含むサーメット材料で構成される。燃料極112は、多孔体である。
【0019】
空気極114は、電子伝導性を有する酸化物を含む。電子伝導性を有する酸化物は、例えば、ランタンマンガナイト(LSM)、ストロンチウムドープトランタンコバルタイトフェライト(LSCF)、および、ストロンチウムドープトランタンコバルタイト(LSC)のうち、少なくとも1つを含む。空気極114は、多孔体である。
【0020】
電解質部116は、燃料極112と空気極114との間に設けられる。電解質部116は、プロトン伝導性を有する固体酸化物を含む。プロトン伝導性を有する固体酸化物は、例えば、BaZrYbO3-δ、BaZrCeYAO3-δ(ただし、Aは、ランタノイド元素およびScのうち、いずれか1または複数である)、BaCeAO3-δ(ただし、Aは、ランタノイド元素およびScのうち、いずれか1または複数である)、BaSrCeZrAO3-δ(ただし、Aは、ランタノイド元素およびScのうち、いずれか1または複数である)、BaSrCeZrYAO3-δ(ただし、Aは、ランタノイド元素およびScのうち、いずれか1または複数である)、LaSrAO3-δ(ただし、Aは、ランタノイド元素およびScのうち、いずれか1または複数である)、および、LaWO3-δのうち、いずれか1または複数である。なお、上記固体酸化物における各元素の含有率に限定はない。
【0021】
燃料タンク120(燃料供給部)には、水素吸着剤が収容されており、燃料タンク120は、燃料ガスとして水素(H2)を貯留(保持)する。水素吸着剤は、例えば、セラミックやゼオライトの多孔体、または、水素吸蔵合金である。燃料タンク120が水素吸着剤を備えることにより、燃料タンク120は、小さい容積で大量の水素を貯留することができる。また、燃料タンク120は、不図示の保温設備によって所定の温度(例えば、500℃)に保持される。なお、燃料タンク120を蓄熱材で覆うことにより、保温設備を省略することができる。
【0022】
燃料供給管122(燃料供給部)は、燃料タンク120と、燃料極112の供給口(または、供給マニホールド)とを接続(連通)する。第1排気管124(燃料供給部)は、燃料極112の排気口(または、排気マニホールド)と、燃料タンク120とを接続(連通)する。
【0023】
酸素タンク150(酸素供給部、水供給部)は、酸素(O2)および水蒸気(水(H2O))を貯留(保持)する。酸素タンク150は、不図示の保温設備によって所定の温度(例えば、500℃)に保持される。なお、酸素タンク150を蓄熱材で覆うことにより、保温設備を省略することができる。
【0024】
酸素供給管152(酸素供給部、水供給部)は、酸素タンク150と、空気極114の供給口(または、供給マニホールド)とを接続(連通)する。第2排気管154(酸素供給部、水供給部)は、空気極114の排気口(または、排気マニホールド)と、酸素タンク150とを接続(連通)する。
【0025】
第1熱交換器160は、燃料極112に供給されるガス(水素)と、燃料極112から排気される燃料極排気ガスとを熱交換させる。本実施形態において、第1熱交換器160は、燃料供給管122を通過するガスと、第1排気管124を通過する燃料極排気ガスとを熱交換させる。
【0026】
第2熱交換器162は、空気極114に供給される酸素と、空気極114から排気される空気極排気ガスとを熱交換させる。本実施形態において、第2熱交換器162は、酸素供給管152を通過する酸素と、第2排気管154を通過する空気極排気ガスとを熱交換させる。
【0027】
中央制御部170は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成される。中央制御部170は、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出す。中央制御部170は、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働して蓄エネルギー装置100全体を管理および制御する。本実施形態において、中央制御部170は、モード切換部172として機能する。
【0028】
モード切換部172は、燃料電池本体110の運転モードを充電モードと、放電モードとに切り換える。以下、本実施形態の充電モードおよび放電モードについて詳述する。
【0029】
[充電モード]
図2は、第1の実施形態の充電モードにおけるガスの流れを説明する図である。
図2中、実線の矢印は、ガスの流れを示す。充電モードは、外部から受電して燃料電池本体110によって水を電気分解する運転モードである。
【0030】
図2に示すように、運転モードを充電モードに設定する場合、モード切換部172は、電力供給源10から燃料電池本体110に電力を供給させる。つまり、モード切換部172は、燃料電池本体110と電力供給源10とを通電させる。電力供給源10は、例えば、太陽光発電装置、水力発電装置、風力発電装置等の再生可能エネルギーを利用した発電装置である。
【0031】
そうすると、酸素タンク150から空気極114に水蒸気Wが供給され、受電した電力によって、下記式(1)に示す反応が進行する。
H2O → 1/2O2 + 2H+ + 2e- …式(1)
【0032】
そして、プロトン(H+)が電解質部116を伝導(移動)することにより、燃料極112において下記式(2)に示す反応が進行する。
2H+ + 2e- → H2 …式(2)
【0033】
こうして、充電モードにおいて、空気極114で酸素が生成される(上記式(1))。空気極114で生成された酸素は、空気極排気ガスとして酸素タンク150に導かれる。そして、酸素タンク150に貯留された酸素は、後述する放電モードで利用される。なお、充電モードでは、空気極114における水蒸気Wの消費量を1とすると、酸素の生成量は、1/2となる(上記式(1))。したがって、酸素供給管152と、第2排気管154との間(酸素タンク150と、空気極114との間)で差圧が生じ、空気極114から酸素タンク150へ自動的に酸素が移動することになる。なお、空気極排気ガスには、空気極114において未反応であった水蒸気も含まれる。
【0034】
また、充電モードにおいて、燃料極112で水素が生成される(上記式(2))。燃料極112で生成された水素は、燃料極排気ガスとして燃料タンク120に導かれる。そして、燃料タンク120に貯留された水素は、放電モードで利用される。なお、充電モードでは、燃料極112において、ガス(水素)は消費されないが、水素が生成される(上記式(2))。したがって、燃料供給管122と、第1排気管124との間(燃料タンク120と、燃料極112との間)で水素の濃度差(差圧)が生じ、燃料極112から燃料タンク120へ自動的に水素が移動することになる。
【0035】
[放電モード]
図3は、第1の実施形態の放電モードにおけるガスの流れを説明する図である。
図3中、実線の矢印は、ガスの流れを示す。放電モードは、燃料電池本体110を放電させる運転モードである。
【0036】
図3に示すように、運転モードを放電モードに設定する場合、モード切換部172は、燃料電池本体110を負荷12に接続する。
【0037】
そうすると、充電モードにおいて燃料極112において生成され、燃料タンク120に貯留された水素が燃料極112に供給されて、下記式(3)に示す反応が進行する。
H2 → 2H+ + 2e- …式(3)
【0038】
また、充電モードにおいて空気極114において生成され、酸素タンク150に貯留された酸素が空気極114に供給されて、下記(4)に示す反応が進行する。
1/2O2 + 2H+ + 2e- → H2O …式(4)
【0039】
そして、プロトン(H+)が電解質部116を伝導(移動)することにより、燃料電池本体110が発電する。こうして、発電された電力は、燃料電池本体110に接続された負荷12に供給される。
【0040】
また、放電モードにおいて、空気極114で水(水蒸気W)が生成される(上記式(4))。空気極114で生成された水蒸気Wは、空気極排気ガスとして酸素タンク150に導かれる。そして、酸素タンク150に導かれた水は、充電モードにおける水蒸気W(水)の電気分解に利用される。なお、放電モードでは、空気極114における酸素の消費量を1とすると、水の生成量は、2となる(上記式(4))。したがって、酸素供給管152と、第2排気管154との間(酸素タンク150と、空気極114との間)で差圧が生じ、酸素タンク150から空気極114へ自動的に酸素が移動することになる。なお、空気極排気ガスには、空気極114において未反応であった酸素も含まれる。
【0041】
また、放電モードでは、燃料極112において、水素が消費されるものの、ガス(水素)は生成されない(上記式(3))。したがって、燃料供給管122と、第1排気管124との間(燃料タンク120と、燃料極112との間)で水素の濃度差(差圧)が生じ、燃料タンク120から燃料極112へ自動的に水素が移動することになる。なお、燃料極排気ガスには、燃料極112において未反応であった水素も含まれる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態の蓄エネルギー装置100は、プロトン伝導性を有する固体酸化物を含む電解質部116を有する燃料電池本体110を備える。したがって、キャリアを酸化物イオン(O2-)とする従来の固体酸化物形燃料電池と比較して、蓄エネルギー装置100は、OCV(Open Circuit Voltage:開回路電圧)を向上させることができる。これにより、蓄エネルギー装置100は、従来の固体酸化物形燃料電池と比較して、放電モードにおいて、発電電圧(放電電圧)を向上させることが可能となる。したがって、蓄エネルギー装置100は、ラウンドトリップ効率を向上させることができる。
【0043】
また、本実施形態の蓄エネルギー装置100は、燃料電池本体110の燃料極112に連通された燃料タンク120を備える。したがって、蓄エネルギー装置100は、充電モードにおいて得られた水素を燃料タンク120に貯蔵することが可能となる。つまり、蓄エネルギー装置100は、充電によって得られるエネルギーを水素に変換して、長期間安定して貯蔵することができる。
【0044】
また、蓄エネルギー装置100は、燃料極112と燃料タンク120とを連通する第1排気管124を備える。したがって、放電モードにおいて燃料極112で未反応であった水素を燃料タンク120に返送することができる。つまり、蓄エネルギー装置100は、未利用の水素が外部に廃棄されてしまう事態を回避することができる。したがって、蓄エネルギー装置100は、水素の利用率を実質的に100%とすることが可能となる。
【0045】
また、蓄エネルギー装置100は、燃料タンク120と、燃料極112と燃料タンク120とを連通する燃料供給管122および第1排気管124とを備える。上記したように、充電モードにおいて、燃料極112で水素は生成されるもののガスの消費はない。一方、放電モードにおいて、燃料極112で水素が消費されるものの、ガスの生成はない。したがって、蓄エネルギー装置100は、燃料極112に連通された燃料タンク120を備えることにより、差圧のみで水素を燃料極112に移動させたり、燃料タンク120に移動させたりすることができる。これにより、蓄エネルギー装置100は、水素を移動するための専用のブロワを省略することが可能となる。
【0046】
また、蓄エネルギー装置100は、酸素タンク150と、空気極114と酸素タンク150とを連通する酸素供給管152および第2排気管154とを備える。上記したように、充電モードにおいて、空気極114での水の消費量と酸素の生成量とは異なる。また、放電モードにおいて、空気極114での酸素の消費量と水の生成量とは異なる。したがって、蓄エネルギー装置100は、空気極114に連通された酸素タンク150を備えることにより、差圧のみで酸素を空気極114に移動させたり、酸素タンク150に移動させたりすることができる。これにより、蓄エネルギー装置100は、酸素を移動するための専用のブロワを省略することが可能となる。
【0047】
また、上記したように、蓄エネルギー装置100は、第1熱交換器160を備える。これにより、第1熱交換器160は、燃料極排気ガスが有する熱を、水素に付与することができる。したがって、蓄エネルギー装置100は、水素の加熱に要するエネルギーを削減することが可能となる。
【0048】
同様に、蓄エネルギー装置100は、第2熱交換器162を備える。これにより、第2熱交換器162は、空気極排気ガスが有する熱を酸素、および、水蒸気Wに付与することができる。したがって、蓄エネルギー装置100は、酸素、および、水蒸気Wの加熱に要するエネルギーを削減することが可能となる。
【0049】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、燃料タンク120が貯留するガスの組成が第1の実施形態と異なるが、他の構成は第1の実施形態と実質的に等しい。このため、上記蓄エネルギー装置100と同一の符号を付して一部説明を省略する。
【0050】
燃料タンク120は、燃料ガスとして水素、および、メタン(CH4)と、二酸化炭素(CO2)とを貯留(保持)する。第2の実施形態において、燃料タンク120は、不図示の保温設備によって所定の温度(例えば、500℃)に保持される。なお、燃料タンク120を蓄熱材で覆うことにより、保温設備を省略することができる。また、第2の実施形態において、酸素タンク150は、不図示の保温設備によって所定の温度(例えば、500℃)に保持される。なお、酸素タンク150を蓄熱材で覆うことにより、保温設備を省略することができる。
【0051】
続いて、第2の実施形態の充電モードにおける反応および放電モードにおける反応について説明する。
【0052】
[充電モード]
モード切換部172によって、燃料電池本体110に電力供給源10が接続されると、酸素タンク150から空気極114に水蒸気が供給され、受電した電力によって、下記式(1)に示す反応が進行する。
H2O → 1/2O2 + 2H+ + 2e- …式(1)
【0053】
そして、プロトン(H+)が電解質部116を伝導(移動)することにより、燃料極112において、下記式(2)に示す反応が進行する。
2H+ + 2e- → H2 …式(2)
【0054】
また、燃料タンク120から燃料極112に二酸化炭素および水素が供給され、下記式(5)に示す反応が進行する。
CO2 + 4H2 → CH4 + 2H2O …式(5)
【0055】
こうして、充電モードにおいて、燃料極112で水素、メタン、および、水(水蒸気W)が生成される(上記式(2)、式(5))。なお、平衡反応により、二酸化炭素と水素の一部は、一酸化炭素(CO)に変換される(CO2 + H2 → CO + H2O)。燃料極112で生成された水素、メタン、一酸化炭素、および、水蒸気Wは、燃料極排気ガスとして燃料タンク120に導かれる。こうして、燃料タンク120に導かれた水素、メタン、および、水蒸気Wは、後述する放電モードにおいて利用される。なお、燃料極排気ガスには、燃料極112において未反応であった二酸化炭素も含まれる。
【0056】
また、上記したように、充電モードにおいて、空気極114で酸素が生成される(上記式(1))。空気極114で生成された酸素は、空気極排気ガスとして酸素タンク150に導かれる。そして、酸素タンク150に貯留された酸素は、後述する放電モードで利用される。なお、空気極排気ガスには、空気極114において未反応だった水蒸気も含まれる。
【0057】
続いて、充電モードにおける二酸化炭素および水素の効果について説明する。
図4は、水および水蒸気の電気分解における電圧を説明する図である。なお、
図4中、横軸は温度[℃]を示し、縦軸は電解電圧[V]を示す。また、
図4中、実線は理論電解電圧を示し、破線は熱中立電圧を示す。
【0058】
水および水蒸気の電気分解は吸熱反応であるため、
図4に示すように、水および水蒸気の電気分解における熱中立電圧は、理論電解電圧よりも大幅に上回る。具体的に説明すると、水蒸気の電気分解において、100℃を上回ると、温度が上昇するに従って、理論電解電圧と熱中立電圧との差が大きくなる。したがって、燃料電池本体110によって水蒸気のみを電気分解する場合、投入される電力の電圧を熱中立電圧(例えば、1.3V程度)まで高くしなければならない。
【0059】
そこで、上記したように、第2の実施形態の蓄エネルギー装置100は、充電モードにおいて、二酸化炭素および水素を燃料極112に供給する。これにより、上記式(1)の反応に加えて上記式(5)の反応(メタネーション反応、サバティエ反応)が進行する。
【0060】
図5は、メタネーション反応における反応エンタルピーを説明する図である。なお、
図5中、横軸は温度[℃]を示し、縦軸は反応エンタルピーdrH[kJ/mol]を示す。
【0061】
図5に示すように、上記式(5)のメタネーション反応は、690℃程度の境界温度に到達するまでは、発熱反応である。一方、境界温度を上回ると、メタネーション反応は、吸熱反応となる。
【0062】
したがって、第2の実施形態の蓄エネルギー装置100は、充電モードを300℃以上700℃以下の所定の温度で実行する、すなわち、水蒸気の電気分解およびメタネーション反応を300℃以上700℃以下の所定の温度で行うことにより、水蒸気の電気分解に要する熱(吸熱)をメタネーション反応で生じる熱(発熱)で補うことができる。
【0063】
これにより、第2の実施形態の蓄エネルギー装置100は、熱中立電圧を理論電解電圧に近づけることが可能となる。したがって、第2の実施形態の蓄エネルギー装置100は、充電モードにおいて、燃料電池本体110に投入する電力の電圧を低減することができる。
【0064】
また、水の電気分解の際に電力供給源10から供給される電流密度が高い場合、燃料電池本体110の温度が高くなる。しかし、
図5に示すように、メタネーション反応は、温度が上昇するに従って吸熱量が大きくなる。したがって、充電モードにおいて、水蒸気の電気分解と並行してメタネーション反応を行うことにより、第2の実施形態の蓄エネルギー装置100は、電力供給源10から供給される電流密度が高い場合でも燃料電池本体110を所定の温度に維持することが可能となる。
【0065】
同様に、水の電気分解の際に電力供給源10から供給される電流密度が低い場合、燃料電池本体110の温度が低くなる。しかし、
図5に示すように、メタネーション反応は、温度が下降するに従って発熱量が大きくなる。したがって、充電モードにおいて、水蒸気の電気分解と並行してメタネーション反応を行うことにより、第2の実施形態の蓄エネルギー装置100は、電力供給源10から供給される電流密度が低い場合でも燃料電池本体110を所定の温度に維持することが可能となる。
【0066】
つまり、第2の実施形態の蓄エネルギー装置100は、水蒸気の電気分解と並行してメタネーション反応を行うことにより、電力供給源10から供給される電流密度が変動した場合でも燃料電池本体110を所定の温度に維持することができる。
【0067】
[放電モード]
モード切換部172によって、燃料電池本体110に負荷12が接続されると、燃料極112に水素、メタン、および、水蒸気Wが供給されて、下記式(3)、式(6)に示す反応が進行する。
H2 → 2H+ + 2e- …式(3)
CH4 + 2H2O → CO2 + 4H2 …式(6)
【0068】
また、空気極114に酸素が供給されて、下記式(4)に示す反応が進行する。
1/2O2 + 2H+ + 2e- → H2O …式(4)
そして、プロトン(H+)が電解質部116を伝導(移動)することにより、燃料電池本体110が発電する。こうして、発電された電力は、燃料電池本体110に接続された負荷12に供給される。
【0069】
また、放電モードにおいて、燃料極112で二酸化炭素および水素が生成される(上記式(6))。燃料極112で生成された二酸化炭素および水素は、燃料極排気ガスとして燃料タンク120に導かれる。こうして、燃料タンク120に導かれた二酸化炭素および水素は、充電モードにおけるメタネーション反応に利用される。また、燃料極112で生成された水素の一部または全部は、放電モードにおいて、燃料として利用することができる。なお、燃料極排気ガスには、燃料極112において未反応であった水素、メタン、水蒸気も含まれる。
【0070】
以上説明したように、第2の実施形態の蓄エネルギー装置100は、充電モードにおいて、二酸化炭素および水素を燃料極112に供給する。これにより、第2の実施形態の蓄エネルギー装置100は、充電の際に投入される電力の電圧を低減することができる。
【0071】
[シミュレーション]
上記第1の実施形態の蓄エネルギー装置100、第2の実施形態の蓄エネルギー装置100、および比較例におけるラウンドトリップ効率をシミュレーションによって算出した。
【0072】
図6は、シミュレーション結果を説明する図である。
図6(a)は、第1の実施形態の蓄エネルギー装置100のシミュレーション結果を示す。
図6(b)は、第2の実施形態の蓄エネルギー装置100のシミュレーション結果を示す。
図6(c)は、比較例のシミュレーション結果を示す。
【0073】
なお、ラウンドトリップ効率は、下記式(7)で算出される。
ラウンドトリップ効率 = 発電電圧 / 電解電圧 …式(7)
【0074】
比較例は、蓄エネルギー装置100の電解質部116に代えて、酸化物イオン伝導性を有する固体酸化物(ここでは、YSZ(イットリア安定化ジルコニア))を含む電解質部を備える装置である。
図6(c)に示すように、充電モードにおいて、比較例の電解電圧は、700℃の際1.284Vであり、600℃の際1.280Vであり、550℃の際1.278Vであり、500℃の際1.276Vであった。また、比較例の放電モードにおける発電電圧は、燃料電池本体110の温度に拘わらず、0.85Vである。
【0075】
したがって、比較例のラウンドトリップ効率は、700℃の際0.662であり、600℃の際0.664であり、550℃の際0.665であり、500℃の際0.666となった。つまり、比較例では、燃料電池本体110の温度に拘わらず、ラウンドトリップ効率が0.66程度となることが確認された。
【0076】
また、
図6(a)に示すように、充電モードにおいて、蓄エネルギー装置100の電解電圧は、比較例と実質的に等しく、700℃の際1.284Vであり、600℃の際1.280Vであり、550℃の際1.278Vであり、500℃の際1.276Vであった。一方、放電モードにおいて、蓄エネルギー装置100の発電電圧は、0.9Vである。
【0077】
したがって、蓄エネルギー装置100のラウンドトリップ効率は、700℃の際0.701であり、600℃の際0.703であり、550℃の際0.704であり、500℃の際0.705となった。つまり、蓄エネルギー装置100では、燃料電池本体110の温度に拘わらず、ラウンドトリップ効率が0.70程度となることが確認された。
【0078】
以上の結果から、第1の実施形態の蓄エネルギー装置100は、比較例の蓄エネルギー装置と比較して、ラウンドトリップ効率を向上できることが確認された。
【0079】
また、
図6(b)に示すように、充電モードにおいて、第2の実施形態の蓄エネルギー装置100の電解電圧は、700℃の際1.294Vであり、600℃の際1.21Vであり、550℃の際1.16Vであり、500℃の際1.12Vであった。第2の実施形態の蓄エネルギー装置100は、充電モードにおいて水蒸気Wの電気分解と並行してメタネーション反応を行うことができるため、第1の実施形態の蓄エネルギー装置100と比較して、電解電圧を低減することが可能となることが確認された。
【0080】
なお、第2の実施形態の蓄エネルギー装置100の放電モードにおける発電電圧は、第1の実施形態の蓄エネルギー装置100と同様に、燃料電池本体110の温度に拘わらず、0.9Vである。したがって、第2の実施形態の蓄エネルギー装置100のラウンドトリップ効率は、700℃の際0.696であり、600℃の際0.744であり、550℃の際0.776であり、500℃の際0.804となった。
【0081】
以上の結果から、第2の実施形態の蓄エネルギー装置100は、第1の実施形態の蓄エネルギー装置100と比較して、ラウンドトリップ効率が高いことが確認された。
【0082】
[第1の変形例]
図7は、第1の変形例にかかる蓄エネルギー装置200を説明する図である。
図7に示すように、蓄エネルギー装置200は、燃料電池本体110と、燃料タンク120と、燃料供給管122と、第1排気管124と、酸素タンク150と、酸素供給管152と、第2排気管154と、第1熱交換器160と、第2熱交換器162と、中央制御部170と、水タンク210と、加熱部220とを含む。
図7中、破線の矢印は、信号の流れを示す。
【0083】
また、上記蓄エネルギー装置100と実質的に等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0084】
水タンク210(水供給部)は、水を貯留(保持)する。水タンク210は、水供給管212を通じて、酸素タンク150に接続される。水供給管212(水供給部)には、開閉弁214が設けられる。
【0085】
加熱部220は、水タンク210を加熱する。加熱部220は、例えば、電気ヒータで構成される。
【0086】
モード切換部172は、運転モードを充電モードとする場合、燃料電池本体110と電力供給源10とを接続する。また、第1の変形例において、モード切換部172は、加熱部220を駆動し、開閉弁214を開弁する。
【0087】
これにより、水タンク210において水蒸気が生成され、酸素タンク150、酸素供給管152を通じて、燃料電池本体110の空気極114に水蒸気が供給される。
【0088】
以上説明したように、第1の変形例にかかる蓄エネルギー装置200は、水タンク210を備える。水タンク210は、水を液体の状態で保持する。このため、第1の変形例にかかる蓄エネルギー装置200は、酸素タンク150を小さくすることができる。
【0089】
[第2の変形例]
図8は、第2の変形例にかかる蓄エネルギー装置300を説明する図である。
図8に示すように、蓄エネルギー装置300は、燃料電池本体110と、燃料タンク120と、燃料供給管122と、第1排気管124と、第1接続管310A、310Bと、第2接続管330A、330Bと、開閉弁312A、312B、332A、332Bと、酸素タンク150と、酸素供給管152と、第2排気管154と、第1熱交換器160と、第2熱交換器162と、中央制御部170とを含む。
【0090】
図8中、破線の矢印は、信号の流れを示す。なお、図を簡明化するために、
図8中、モード切換部172から、開閉弁312A、312B、332A、332Bへの信号の流れを示す破線の図示を省略する。
【0091】
また、上記蓄エネルギー装置100と実質的に等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0092】
図8に示すように、蓄エネルギー装置300は、複数の燃料タンク120(
図8中、120A、120Bで示す)を備える。
【0093】
第1接続管310Aは、燃料供給管122と、燃料タンク120Aとを接続(連通)する。開閉弁312Aは、第1接続管310Aに設けられる。開閉弁312Aは、第1接続管310Aに形成される流路を開放したり、遮断したりする。第1接続管310Bは、燃料供給管122と、燃料タンク120Bとを接続(連通)する。開閉弁312Bは、第1接続管310Bに設けられる。開閉弁312Bは、第1接続管310Bに形成される流路を開放したり、遮断したりする。
【0094】
第2接続管330Aは、第1排気管124と、燃料タンク120Aとを接続(連通)する。開閉弁332Aは、第2接続管330Aに設けられる。開閉弁332Aは、第2接続管330Aに形成される流路を開放したり、遮断したりする。第2接続管330Bは、第1排気管124と、燃料タンク120Bとを接続(連通)する。開閉弁332Bは、第2接続管330Bに設けられる。開閉弁332Bは、第2接続管330Bに形成される流路を開放したり、遮断したりする。
【0095】
続いて、第2の変形例の充電モードおよび放電モードにおけるモード切換部172の制御について説明する。
【0096】
[充電モード]
図9は、第2の変形例の充電モードにおけるガスの流れを説明する図である。
図9中、実線の矢印はガスの流れを示す。また、
図9中、開閉弁312A、312B、332Bの閉弁状態を黒い塗りつぶしで示す。
【0097】
第2の変形例において、運転モードを充電モードに設定する場合、モード切換部172は、開閉弁332Aを開弁する。また、モード切換部172は、燃料電池本体110と電力供給源10とを通電させる。
【0098】
そうすると、酸素タンク150から空気極114に水蒸気Wが供給され、受電した電力によって、空気極114において、水の電気分解が行われる。これにより、燃料極112において生成された水素は、燃料タンク120Aに導かれる。
【0099】
そして、燃料タンク120Aが満タンになったら、開閉弁332Aを閉弁して、開閉弁332Bを開弁する。そうすると、燃料極112において生成された水素は、燃料タンク120Bに導かれる。
【0100】
[放電モード]
図10は、第2の変形例の放電モードにおけるガスの流れを説明する図である。
図10中、実線の矢印はガスの流れを示す。また、
図10中、開閉弁312B、332Bの閉弁状態を黒い塗りつぶしで示す。
【0101】
第2の変形例において、運転モードを放電モードに設定する場合、モード切換部172は、開閉弁312A、332Aを開弁する。また、モード切換部172は、燃料電池本体110と負荷12とを接続する。
【0102】
そうすると、燃料タンク120Aから燃料極112に水素が供給され、発電がなされる。これにより、空気極114において生成された水蒸気W(水)は、酸素タンク150に導かれる。
【0103】
そして、燃料タンク120Aが空になったら、開閉弁312A、332Aを閉弁して、開閉弁312B、332Bを開弁する。そうすると、燃料タンク120Bから燃料極112に水素が供給される。
【0104】
以上説明したように、第2の変形例の蓄エネルギー装置300は、複数の燃料タンク120A、120B、第1接続管310A、310B、開閉弁312A、312B、332A、332B、第2接続管330A、330Bを備える。これにより、蓄エネルギー装置300は、燃料タンク120A、120Bを蓄エネルギー装置300から切り離すことができる。したがって、充電モードで運転される時間が長い場合、つまり、余剰する電力量が多い場合、燃料タンク120A、120Bを外部の水素利用設備に移動(搬送)させることができる。
【0105】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0106】
例えば、上記実施形態において、酸素タンク150が酸素を貯留する場合を例に挙げた。これにより、酸素タンク150を小さくすることができる。しかし、酸素タンク150は、少なくとも酸素を含む酸素含有ガスを貯留すればよい。酸素含有ガスは、例えば、空気である。
【0107】
また、上記実施形態において、蓄エネルギー装置100が燃料タンク120および酸素タンク150を備える場合を例に挙げた。しかし、蓄エネルギー装置は、燃料タンク120および酸素タンク150のいずれか一方を備えていればよい。なお、燃料タンク120を備えない場合、蓄エネルギー装置は、燃料供給管と、ブロワと、開閉弁とを含む燃料供給部を備えるとよい。燃料供給管は、水素の供給源と、燃料極112の供給口(または、供給マニホールド)とを接続する。ブロワは、燃料供給管に設けられる。ブロワは、吸入側が水素の供給源に接続され、吐出側が燃料極112に接続される。開閉弁は、燃料供給管におけるブロワと燃料極112との間に設けられる。開閉弁は、燃料供給管に形成される流路を開放したり、遮断したりする。
【0108】
また、酸素タンク150を備えない場合、蓄エネルギー装置は、酸素供給部と、水供給部とを備えるとよい。酸素供給部は、酸素供給管と、ブロワと、開閉弁とを含む。酸素供給管は、酸素の供給源と、空気極114の供給口(または、供給マニホールド)とを接続する。ブロワは、酸素供給管に設けられる。ブロワは、吸入側が酸素の供給源に接続され、吐出側が空気極114に接続される。開閉弁は、酸素供給管におけるブロワと空気極114との間に設けられる。開閉弁は、酸素供給管に形成される流路を開放したり、遮断したりする。
【0109】
また、水供給部は、水蒸気供給管と、ブロワと、開閉弁とを含む。水蒸気供給管は、水蒸気Wの供給源と、空気極114の供給口とを接続する。ブロワは、水蒸気供給管に設けられる。ブロワは、吸入側が水蒸気Wの供給源に接続され、吐出側が空気極114に接続される。開閉弁は、水蒸気供給管におけるブロワと空気極114との間に設けられる。開閉弁は、水蒸気供給管に形成される流路を開放したり、遮断したりする。
【0110】
また、蓄エネルギー装置100において、燃料電池本体110、燃料タンク120、および、酸素タンク150の数に限定はない。
【0111】
また、上記実施形態において、蓄エネルギー装置100が第1熱交換器160および第2熱交換器162を備える場合を例に挙げた。しかし、第1熱交換器160および第2熱交換器162は、必須の構成ではない。
【0112】
また、上記実施形態において、燃料タンク120が水素吸着剤を収容する場合を例に挙げた。しかし、燃料タンク120は、水素吸着剤を収容せずともよい。
【0113】
また、上記第2の実施形態において、燃料タンク120が保持する二酸化炭素は、ボンベに貯留された二酸化炭素、バイオガス、発電所等から排気された排気ガスに含まれる二酸化炭素、および、空気中に含まれる二酸化炭素のいずれか1または複数であってもよい。ボンベは、液化二酸化炭素を貯留する。バイオガスは、生物の排泄物、有機質肥料、生分解性物質、汚泥、汚水、ゴミ、エネルギー作物等の発酵、または、嫌気性消化により発生するガスである。バイオガスは、二酸化炭素およびメタンを含む(例えば、含有率は、二酸化炭素:メタン=25%以上50%以下:50%以上75%以下)。排気ガスに含まれる二酸化炭素は、例えば、PSA(圧力スイング吸着)法等によって排気ガスから分離される。
【0114】
空気中に含まれる二酸化炭素は、DAC(direct air capture)装置等によって分離される。DAC装置によって二酸化炭素を分離して燃料タンク120に収容させる場合、DAC装置は、充電モード以外のモード(例えば、放電モード)において空気中の二酸化炭素を吸収しておき、充電モードで二酸化炭素を放出する。
【0115】
蓄エネルギー装置100、200、300がDAC装置を備える場合、DAC装置による二酸化炭素の吸収は、下記式(8)または式(9)によって示され、DAC装置からの二酸化炭素の放出は、下記式(10)によって示される。
K2O + CO2 → K2CO3 …式(8)
2KOH + CO2 → K2CO3 + H2O …式(9)
K2CO3 → K2O + CO2 …式(10)
【0116】
なお、DAC装置による二酸化炭素の吸収(上記式(8)、式(9))は、常温(例えば、25℃)以下の所定の温度範囲内で為される。一方、DAC装置からの二酸化炭素の放出(上記式(10))は、250℃以上800℃以下の所定の温度範囲内で為される。このため、DAC装置から二酸化炭素を放出させる場合、燃料電池本体110が生じる熱を利用するとよい。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明は、固体電解質を有する燃料電池本体を利用した蓄エネルギー装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0118】
100、200、300 蓄エネルギー装置
110 燃料電池本体
112 燃料極
114 空気極
116 電解質部
120、120A、120B 燃料タンク(燃料供給部)
150 酸素タンク(酸素供給部、水供給部)
160 第1熱交換器
162 第2熱交換器
172 モード切換部