(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】IL-37バリアント
(51)【国際特許分類】
C12N 15/24 20060101AFI20230704BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230704BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230704BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230704BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230704BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230704BHJP
C07K 14/54 20060101ALI20230704BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20230704BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230704BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230704BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230704BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
C12N15/24 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K14/54
A61K38/20
A61P29/00
A61P37/06
A61P43/00 111
A61P31/04
(21)【出願番号】P 2020074084
(22)【出願日】2020-04-17
(62)【分割の表示】P 2017565833の分割
【原出願日】2016-06-15
【審査請求日】2020-05-14
(32)【優先日】2015-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(32)【優先日】2016-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】501249191
【氏名又は名称】モナッシュ ユニバーシティ
(73)【特許権者】
【識別番号】517437379
【氏名又は名称】ハドソン インスティテュート オブ メディカル リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】ノールド、マルセル
(72)【発明者】
【氏名】ノールド、クラウディア
(72)【発明者】
【氏名】エリスドン、アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ウィストック、ジェームス
【審査官】中村 俊之
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104083755(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0275229(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0148467(US,A1)
【文献】国際公開第2000/024899(WO,A2)
【文献】Database UniProtKB, Accession No. Q9NZH6[online],2002年11月08日,インターネット:<URL:https://www.uniprot.org/uniprot/Q9NZH6>,[retrieved on 2021-06-03]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00- 19/00
C12N 1/00- 7/08
C12N 15/00- 15/90
A61K 38/20
A61P 1/00- 43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL-37ポリペプチドのアミノ酸配列を含む抗炎症性ポリペプチドであって、
該ポリペプチドが、該ポリペプチドの全長にわたって配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有し、
該抗炎症性ポリペプチドが、配列番号1の配列を含むポリペプチドと比較して、抗炎症性ポリペプチドの二量体形成能を低下させる突然変異又は改変を含み、
該突然変異又は改変が、配列番号1中の残基85、71~74、78、80、83、84、86~88及び184の任意の1以上におけるか、又はそれらと同等の残基におけるものであり、
配列番号1中の位置85における、もしくはそれと同等の位置におけるアミノ酸残基がTyrではなく;
配列番号1中の位置73における、もしくはそれと同等の位置におけるアミノ酸残基がAspではなく;
配列番号1中の位置83における、もしくはそれと同等の位置におけるアミノ酸残基がLysではなく;
配列番号1中の位置71における、もしくはそれと同等の位置におけるアミノ酸残基がValではなく;
配列番号1中の位置72における、もしくはそれと同等の位置におけるアミノ酸残基がLeuではなく;
配列番号1中の位置74における、もしくはそれと同等の位置におけるアミノ酸残基がSerではなく;
配列番号1中の位置78における、もしくはそれと同等の位置におけるアミノ酸残基がIleではなく;
配列番号1中の位置80における、もしくはそれと同等の位置におけるアミノ酸残基がValではなく;
配列番号1中の位置84における、もしくはそれと同等の位置におけるアミノ酸残基がAsnではなく;
配列番号1中の位置86における、もしくはそれと同等の位置におけるアミノ酸残基がIleではなく;
配列番号1中の位置87における、もしくはそれと同等の位置におけるアミノ酸残基がArgではなく;
配列番号1中の位置88における、もしくはそれと同等の位置におけるアミノ酸残基がProではなく;かつ/又は
配列番号1中の位置184における、もしくはそれと同等の位置におけるアミノ酸残基がAsnではない、
ポリペプチド。
【請求項2】
前記突然変異が、IL-37単量体の二量体形成を可能とする二量体形成面を抗炎症性ポリペプチドが形成することを防止する、請求項1に記載の抗炎症性ポリペプチド。
【請求項3】
前記突然変異が、IL-37単量体の二量体形成面を形成するアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有する抗炎症性ポリペプチドの領域中に位置する、請求項2に記載の抗炎症性ポリペプチド。
【請求項4】
前記突然変異が、IL-37単量体の二量体形成面を形成するβ3又はβ4ストランド間のループ中に位置する、請求項3に記載の抗炎症性ポリペプチド。
【請求項5】
前記突然変異又は改変が、配列番号1中の残基83~88の領域内、又はそれらと同等の領域内に位置する、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗炎症性ポリペプチド。
【請求項6】
前記突然変異又は改変が、配列番号1中の位置Y85、D73、K83、N84、I86、R87又はP88における残基、又はそれらと同等の位置における残基において起こる、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗炎症性ポリペプチド。
【請求項7】
前記抗炎症性ポリペプチドが、配列番号1と少なくとも96
%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の抗炎症性ポリペプチド。
【請求項8】
前記突然変異が、Y85Aである、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗炎症性ポリペプチド。
【請求項9】
前記突然変異が、D73Aである、請求項1~4、6および7のいずれか1項に記載の抗炎症性ポリペプチド。
【請求項10】
前記突然変異が、D73Kである、請求項1~4、6および7のいずれか1項に記載の抗炎症性ポリペプチド。
【請求項11】
前記突然変異が、K83Eである、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗炎症性ポリペプチド。
【請求項12】
配列番号1の残基83~88の位置、又はそれらと同等の位置における1つ以上の残基が欠失している、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗炎症性ポリペプチド。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の抗炎症性ポリペプチド
においてN末端トランケーションを有するポリペプチドである、抗炎症性ポリペプチド。
【請求項14】
前記N末端トランケーションが、残基1~20又は残基1~45のものであるか、又は配列番号1の配列から残基1~20又は残基1~45の欠失と同等の位置におけるものである、請求項13に記載の抗炎症性ポリペプチド。
【請求項15】
IL-37ポリペプチドのアミノ酸配列を含む抗炎症性ポリペプチドであって、
該ポリペプチドが、配列番号1の残基1~20又は残基1~45又はそれらと同等の位置のN末端トランケーションを有し、
該ポリペプチドが、配列番号1の
アミノ酸配列の21
番目~218
番目または46
番目~218
番目の残基と少なくとも95%の配列同一性を有し、
該ポリペプチドが、配列番号1の配列を含むポリペプチドと比較して、抗炎症性ポリペプチドの二量体形成能を低下させる突然変異又は改変を含み、かつ
該ポリペプチドの該突然変異又は改変が、Y85A、D73A、D73K、およびK83E
から選択されるの任意の1以上
の突然変異又は改変である、
ポリペプチド。
【請求項16】
前記ポリペプチドが、炎症性サイトカインの産生又は機能を阻害する
、請求項1~15のいずれか1項に記載の抗炎症性ポリペプチド。
【請求項17】
前記ポリペプチドが、IL-1産生を減少させる、請求項1~16のいずれか1項に記載の抗炎症性ポリペプチド。
【請求項18】
請求項1~
17のいずれか1項に記載の抗炎症性ポリペプチドと、医薬上許容される希釈剤、賦形剤又は担体とを含む、炎症性疾患又は状態の治療、予防又は症状の緩和もしくは改善における使用のための、又は個体における炎症を抑制するための、医薬組成物。
【請求項19】
炎症性疾患もしくは状態の治療もしくは予防、又は炎症性疾患もしくは状態の症状の緩和もしくは改善を、それを必要とする対象においてするための医薬の製造における、治療有効量の請求項1~
17のいずれか1項に記載の抗炎症性ポリペプチドの使用。
【請求項20】
炎症の抑制を、それを必要とする対象においてするための医薬の製造における、治療有効量の請求項1~
17のいずれか1項に記載の抗炎症性ポリペプチドの使用。
【請求項21】
前記炎症性疾患が、
(a)TLR2もしくはTLR4の活性化によって主に媒介される;
(b)TLR7、8もしくは9の活性化によって主に媒介される;
(c)自己免疫疾患である、又は
(d)内毒素ショックである
、
請求項
18に記載の医薬組成物。
【請求項22】
請求項1~
17のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする、核酸分子。
【請求項23】
前記炎症性疾患が、
(a)TLR2もしくはTLR4の活性化によって主に媒介される;
(b)TLR7、8もしくは9の活性化によって主に媒介される;
(c)自己免疫疾患である、又は
(d)内毒素ショックである
、
請求項
19に記載の使用。
【請求項24】
請求項
22に記載の核酸分子を含む、ベクター又は細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願(複数可)の相互参照
本出願は、オーストラリア仮出願第2015902262号及び同第2016900703号に基づく優先権を主張し、参照により両出願の内容全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、インターロイキン-37(IL-37)のバリアントを含むポリペプチド、並びにそれに関連する治療法及び組成物に関する。本発明はまた、炎症性疾患又は状態の治療方法におけるポリペプチド及び組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
炎症は、宿主防御及び免疫介在性疾患の進行において基本的な役割を果たす。炎症反応は、組織障害(例えば、外傷、虚血、及び異質粒子など)並びにケミカルメディエーター(例えば、サイトカイン及びプロスタグランジンなど)及び炎症細胞(例えば、白血球など)を含む、事象の複雑なカスケードによる感染、に応答して惹起される。炎症反応は、血流の増加、毛細血管透過性の増大、及び食細胞の流入によって特徴づけられる。これらの事象は、膨張、発赤、温感(ヒートパターンの変化)、及び外傷の部位における化膿をもたらす。
【0004】
炎症反応における体液性免疫エレメントと細胞性免疫エレメントとの間の相互作用は、有害な薬剤の排除と損傷された組織の修復開始を可能とする。この相互作用が妨害された場合、炎症反応は、制御されない炎症反応での正常組織に対するかなりの損傷をもたらし得、組織損傷と器官の機能障害を予防するために、臨床的措置が必要となる。
【0005】
インターロイキン-37(IL-37)は、サイトカインのIL-1ファミリーのメンバーであり、自然免疫及び獲得免疫における独特かつ幅広い抗炎症効果を持つ。IL-37は、IL-1β及びTNFなどの受容体を介してIL-1β及びTNFなどの炎症促進性サイトカイン、並びにToll様受
容体リガンド、によって媒介される炎症を特異的に減少させ、感染又は他の非感染性の攻撃によって起こされる炎症において広範な防御的役割を有する。IL-37は、細胞膜(IL-18受容体α及びIL-1R8(Sigirr)との相互作用を通して)並びに細胞内(Smad3との相互作
用を通して)の両方において、シグナル伝達を惹起する。しかしながら、構造、機能とIL-37活性の制御との関係に対する理解は、現在不足している。
【0006】
改善された抗炎症組成物及び治療方法への需要が存在する。
【0007】
本明細書中の、任意の先行技術の参照は、この先行技術が任意の法域において技術常識の一部を形成することを承認又は示唆するものではなく、あるいはこの先行技術が当業者によって理解され、適切であるとみなされ、かつ/又は先行技術の他の部分と組み合わされることを合理的に期待できることを承認又は示唆するものでもない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要旨
本発明は、IL-37単量体のアミノ酸配列を含む単量体抗炎症性ポリペプチドを提供し、
該アミノ酸配列は、抗炎症性ペプチドがホモ二量体を形成することを防止する突然変異又は改変を有する。
【0009】
本発明は、IL-37ポリペプチドのアミノ酸配列を含む抗炎症性ポリペプチドを提供し、
該アミノ酸配列は、抗炎症性ポリペプチドが二量体を形成する能力を低下させる突然変異又は改変を有する。
【0010】
好ましくは、突然変異又は改変は、IL-37単量体の二量体形成を可能とする二量体形成
面をポリペプチドが形成することを、減少させる又は防止する。典型的には、突然変異又は改変は、IL-37単量体の二量体形成面を形成するアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を
有するペプチドの領域中に位置する。突然変異又は改変は、IL-37単量体の二量体形成面
を形成するβ3ループ又はβ4ループ中に位置し得る。
【0011】
本発明は、IL-37ポリペプチドのアミノ酸配列を含むポリペプチド又はそのフラグメン
トを提供し、ここでポリペプチドは、配列番号1の配列を有するポリペプチドと比較して
、二量体を形成する能力が低下している。
【0012】
本発明は、配列番号1と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、81%、82%、83%
、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供し、ここでポリペプチドは、配列番号1の配列を有するポリペプチドと比較して、二量体を形成
する能力が低下している。
【0013】
本発明は、配列番号1の配列を有するポリペプチドと比較して、二量体を形成する能力
が低下しているIL-37ポリペプチドを提供する。
【0014】
本発明は、IL-37ポリペプチドのアミノ酸配列を含むポリペプチド又はそのフラグメン
トを提供し、ここでポリペプチドは、配列番号1の配列を有するポリペプチドと比較して
、二量体を形成する能力が低下しており、ここでポリペプチドは、配列番号1のβ3-β4ループ領域と同等の位置に配置された少なくとも1つの残基の突然変異又は改変を有する。
好ましくは、β3-β4ループ領域は、配列番号1の残基83~91からなるか、又はそれらと同等である。好ましくは、突然変異又は改変は、位置K83、N84、Y85、I86、R87及び/もし
くはP88における残基、又はそれらと同等の位置における残基について生じる。好ましく
は、突然変異は、非保存的残基との置換であり、より好ましくは、突然変異は、アラニン又は反対電荷を持つアミノ酸との置換である。
【0015】
本発明は、IL-37ポリペプチドのアミノ酸配列を含むポリペプチド又はそのフラグメン
トを提供し、ここでポリペプチドは、配列番号1の配列を有するポリペプチドと比較して
、二量体を形成する能力が低下しており、ここで、ポリペプチドは、D73、K83及びY85に
おける残基、又はそれらと同等の位置における残基の突然変異又は改変を有する。好ましくは、突然変異は、非保存的アミノ酸残基との置換であり、より好ましくは、突然変異は、アラニン又は反対電荷を持つアミノ酸との置換である。より好ましくは、突然変異は、D73A、D73K、K83E、K83A及びY85Aの任意の1つ以上である。
【0016】
本発明は、IL-37ポリペプチドのアミノ酸配列を含むポリペプチド又はそのフラグメン
トを提供し、ここでポリペプチドは、配列番号1の配列を有するポリペプチドと比較して
、二量体を形成する能力が低下しており、ここでポリペプチドは、V71、V80及びI78の、
又はそれらと同等の位置における突然変異又は改変を有する。好ましくは、突然変異は、非保存的残基との置換であり、より好ましくは、突然変異は、アラニン又は反対電荷を持つアミノ酸との置換である。
【0017】
本発明は、配列番号1の配列を有するポリペプチドと比較して、二量体を形成する能力
が低下しているIL-37ポリペプチドを提供し、ここで、ポリペプチドは、配列番号1のβ3-β4ループ領域と同等の領域の改変を有する。改変としては、ループを欠失させること、
ループを短縮すること、ループを延長させること、ループの残基を変異させること及び/又はループの残基を化学的に修飾することが挙げられる。
【0018】
本発明は、配列番号1と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、81%、82%、83%
、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む単量体ポリペプチドを提供する。
【0019】
本発明は、単量体として存在する単離、組換え又は合成IL-37ポリペプチドを提供する
。
【0020】
本発明は、配列番号1に示される配列とパラロガス又はオルソロガスな配列を含むポリ
ペプチドを提供し、ここで、ポリペプチドは、単量体として存在するか又は配列番号1の
配列を有するポリペプチドと比較して、二量体を形成する能力が低下している。好ましくは、配列番号1に示される配列とパラロガス又はオルソロガスな配列を含むポリペプチド
は、配列番号1について本明細書中に記載される二量体形成面と同等の二量体形成面中に
配置される残基(例えば、表1中の残基)における突然変異又は改変を有する。
【0021】
本発明のポリペプチドは、単離、精製、実質的に精製、濃縮、合成又は組換えであってもよい。
【0022】
本明細書中で使用される場合、二量体を形成する能力の低下とは、ヘテロ二量体及び/又はホモ二量体を形成する能力の低下をいってもよい。
【0023】
本発明はまた、IL-37ポリペプチドのアミノ酸配列を含むか、IL-37ポリペプチドのアミノ酸配列から本質的になるか、又はIL-37ポリペプチドのアミノ酸配列からなるポリペプ
チド、あるいはそのフラグメントを提供し、ここでアミノ酸配列は、配列番号1の二量体
界面における残基、又は配列番号1の二量体界面と同等の位置における残基の少なくとも1つの突然変異又は改変を含む。配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドに関して
、二量体界面は、表1中の残基を含む。典型的には、ポリペプチドは、配列番号1の位置73、83及び85における、又はそれらと同等の位置における残基の突然変異又は改変を含む
アミノ酸配列を含む。より好ましくは、突然変異は、D73A、D73K、K83E、K83A及びY85Aの任意の1つ以上である。
【0024】
本発明は、二量体を形成する能力を有さないか、又は二量体を形成する能力が低下している単離、組換え又は合成IL-37ポリペプチドを提供する。本明細書中に記載される、本
発明のこの局面又は任意の他の局面において、ポリペプチドの二量体を形成する能力は、サイズ排除クロマトグラフィー及び多角度光散乱、非変性条件下での分析用ゲル電気泳動、分析用遠心、質量分析又は逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)を含む、本明
細書中に記載される任意の方法によって決定されてもよい。
【0025】
二量体形成の減少は、参照ポリペプチドと比較され得る。参照ポリペプチドは典型的には、天然の、野生型の、非改変又は未変異のIL-37ポリペプチドであるだろう。好ましく
は、参照ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を有する。あるいは、本発明のポリ
ペプチドが、配列番号1とパラロガス又はオルソロガスなアミノ酸配列を有する場合には
、参照ペプチドは、天然の、野生型の、非改変又は未変異のパラロガス又はオルソロガスなアミノ酸配列である。
【0026】
本発明は、配列番号1と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、81%、82%、83%
、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供し、ここで:
配列番号1中の位置71における、又はそれと同等の位置におけるアミノ酸残基がValで
はなく;
配列番号1中の位置72における、又はそれと同等の位置におけるアミノ酸残基がLeuで
はなく;
配列番号1中の位置73における、又はそれと同等の位置におけるアミノ酸残基がAspで
はなく;
配列番号1中の位置74における、又はそれと同等の位置におけるアミノ酸残基がSerで
はなく;
配列番号1中の位置78における、又はそれと同等の位置におけるアミノ酸残基がIleで
はなく;
配列番号1中の位置80における、又はそれと同等の位置におけるアミノ酸残基がValで
はなく;
配列番号1中の位置83における、又はそれと同等の位置におけるアミノ酸残基がLysで
はなく;
配列番号1中の位置84における、又はそれと同等の位置におけるアミノ酸残基がAsnで
はなく;
配列番号1中の位置85における、又はそれと同等の位置におけるアミノ酸残基がTyrで
はなく;
配列番号1中の位置86における、又はそれと同等の位置におけるアミノ酸残基がIleで
はなく;
配列番号1中の位置87における、又はそれと同等の位置におけるアミノ酸残基がArgで
はなく;
配列番号1中の位置88における、又はそれと同等の位置におけるアミノ酸残基がProで
はなく;かつ/又は
配列番号1中の位置184における、又はそれと同等の位置におけるアミノ酸残基がAsnではない。好ましくは、アミノ酸残基は、配列番号1中のその位置に存在するアミノ酸に関
して、非保存的置換である。1つの実施態様において、位置85におけるアミノ酸はアラニ
ンであり、位置83におけるアミノ酸はグルタミン酸であり、位置73におけるアミノ酸はアラニンであり、かつ/又は位置73におけるアミノ酸はリジンである。1つの実施態様にお
いて、配列番号1中の位置71、72、73、74、78、80、83、84、85、86、87、88及び/又は184におけるアミノ酸残基、又はそれらと同等の位置におけるアミノ酸残基は欠失している。
【0027】
本明細書中に記載される任意の本発明のポリペプチドに関して、ポリペプチドは、配列番号1の1~20又は1~45のN末端トランケーション、あるいはそれらと同等の残基のN末端
トランケーションを有し得る。
【0028】
本明細書中に記載される任意の本発明のポリペプチドはまた、配列番号1のアミノ酸配
列を有するポリペプチド、非改変もしくは未変異のIL-37アミノ酸配列、又は二量体を形
成する能力の低下を示さないIL-37ポリペプチドと比較して、より大きな抗炎症特性を示
し得る。抗炎症特性は、本明細書中、特に実施例1、3及び4を含む実施例中、に記載され
るアッセイによって決定されてもよい。1つの実施態様において、本発明のポリペプチド
は、実施例1及び3中に記載されるLPS刺激IL-1βアッセイを含む本明細書中に記載される
アッセイにおいて試験した場合に、約1μg/ml、100ng/ml、10ng/ml、100pg/ml、10pg/ml
又は1pg/ml又はそれ未満の濃度で抗炎症特性を示す。炎症性の刺激には、HKLM、イミキモド、CpG-A又はssRNA40などの、Toll様受容体(TLR)2、4、7、8及び/又は9のリガンドが
含まれてもよい。本発明のポリペプチドは、実施例1及び3中に記載されるLPS刺激IL-1β
アッセイにおいて試験した場合に、IL-1βを、10pg/mlにおいて少なくとも30%、10ng/mlにおいて少なくとも40%、あるいは1pg/ml、10pg/ml、100pg/ml、10ng/ml又は100ng/mlの任意の1つ以上において少なくとも約50%減少させ得る。IL-6などの他の炎症促進性サイ
トカインにおける減少もまた観察され得る。本発明のポリペプチドは、実施例1及び3中に記載されるLPS刺激IL-1βアッセイを含む本明細書中に記載されるアッセイにおいて、10ng/ml及び100ng/mlで試験した場合に、抗炎症特性における統計学的に有意な差を示さなくてもよい。本発明のポリペプチドは、実施例中に記載される変異IL-37と同一又は同様の
抗炎症特性を示してもよい。
【0029】
本発明は、炎症性疾患又は状態を治療又は予防するための医薬組成物を提供し、医薬組成物は、本発明のポリペプチドと、医薬上許容される希釈剤、賦形剤又は担体とを含む。1つの実施態様において、組成物中に存在する唯一の有効成分は、本発明のポリペプチド
である。
【0030】
本発明は、炎症性疾患又は状態を治療又は予防するための医薬組成物を提供し、医薬組成物は本発明のポリペプチドを有効成分として含み、かつ医薬上許容される希釈剤、賦形剤又は担体を含む。1つの実施態様において、組成物中に存在する唯一の有効成分は、本
発明のポリペプチドである。
【0031】
本発明は、炎症性疾患又は状態を治療又は予防するための医薬組成物を提供し、医薬組成物は本発明のポリペプチドを主成分として含み、かつ医薬上許容される希釈剤、賦形剤又は担体を含む。1つの実施態様において、組成物中に存在する唯一の有効成分は、本発
明のポリペプチドである。
【0032】
本発明はまた、炎症性疾患又は状態の治療における使用のための本発明のポリペプチドを提供する。
【0033】
本発明はまた、炎症性疾患又は状態の治療における使用のための、本発明のポリペプチドと、医薬上許容される希釈剤、賦形剤又は担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0034】
本発明はまた、炎症の抑制を、それを必要とする対象においてする方法を提供し、方法は、治療有効量の本発明のポリペプチド、又は本発明の医薬組成物を対象に投与し、それによって炎症を抑制することを含む。
【0035】
本発明は、炎症性疾患又は状態を治療又は予防する方法を提供し、方法は、治療又は予防のために対象に組成物を投与する工程を含み、ここで、組成物は、本発明のポリペプチドと医薬上許容される希釈剤、賦形剤又は担体とを含むか、から本質的になるか、又はからなる。
【0036】
本明細書中に記載される任意の本発明の方法又は使用において、本発明のポリペプチドは、全身性投与又は疾患の部位へと直接投与され得る。本発明のポリペプチドは、経口投与のために処方されてもよい。
【0037】
本発明は、炎症性疾患又は状態の治療又は予防を、それを必要とする対象においてする方法を提供し、方法は、治療有効量の本発明のポリペプチド又は医薬組成物を対象に投与し、それによって対象において炎症性疾患又は状態を治療又は予防することを含む。
【0038】
本発明はまた、炎症性疾患又は状態の症状の緩和又は改善を、それを必要とする対象においてする方法を提供し、方法は、治療有効量の本発明のポリペプチド又は医薬組成物の
投与を、それを必要とする対象にし、それによって対象において炎症性疾患又は状態の症状を緩和又は改善することを含む。
【0039】
本発明はまた、炎症性疾患又は状態の治療又は予防を、それを必要とする対象においてするための医薬の製造における、治療有効量の本発明のポリペプチド又は医薬組成物の使用を提供する。
【0040】
本発明は、対象における炎症性疾患又は状態の治療のための方法を提供し、方法は以下の工程を含む:
炎症性疾患又は状態を有する対象を同定する工程;及び
治療有効量の本発明のポリペプチド又は医薬組成物の投与を、それを必要とする対象にし、
それによって対象における炎症性疾患又は状態を治療する工程。
【0041】
本発明、炎症性疾患又は状態の治療のための方法は、以下の工程を含む:
炎症性疾患又は状態を有する対象を同定する工程;及び
治療有効量の本発明のポリペプチド又は医薬組成物の投与を、それを必要とする対象にし、
それによって対象における炎症性疾患又は状態を治療する工程。
【0042】
本発明はまた、本明細書中に記載されるポリペプチドをコードする核酸分子を提供する。
【0043】
本発明はまた、本明細書中に記載される核酸分子を含むベクターを提供する。
【0044】
本発明はまた、本明細書中に記載されるベクター又は核酸分子を含む細胞を提供する。
【0045】
本発明はまた、本明細書中に記載される細胞を含む動物又はその動物由来の組織を提供する。
【0046】
本明細書中で使用される場合、文脈上、他の解釈が必要である場合を除き、用語「含む(comprise)」並びに「含む(comprising)」、「含む(comprises)」及び「含んだ(comprised)」等の用語の変形は、さらなる付加要素、構成要素、整数又は工程を排除することを意図しない。用語「含む(including)」もまた、「含む(comprising)」と互換
的に使用され、やはりさらなる付加要素、構成要素、整数又は工程を排除することを意図しない。
【0047】
本発明のさらなる局面及び前記段落中に記載された局面のさらなる実施態様は、例示としてかつ添付図面を参照して説明する以下の記述から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】IL-37は、新規のヘッドトゥヘッドの対称なホモ二量体を形成する。(A)精製した野生型IL-37(1-218)、並びにN末端を切断したバリアント、IL-37(21-218)及びバリアントIL-37(46-218)のSDS-PAGE。SDSに安定なIL-37二量体のごく一部が示されている。(B)単量体IL-18と比較したIL-37ホモ二量体のSEC-MALS解析。SECトレースは、左のy軸に対応し、平均分子量のMALSによる決定(右のy軸)は、屈折率トレースの下の不連続線として示されている。(C)横軸を中心として時計回りに90度の関係にある、2つの配向性から見たIL-37ホモ二量体の全体像である。構造は、模式図形式で表されており、IL-37Aが左側、IL-37Bが右側である(A及びBは、ホモ二量体におけるIL-37分子を区別するために使用された)。
【
図2】IL-37二量体界面の構造的解析及び変異解析。(A)ホモ二量体のC
2対称軸を丸で標識された、模式図形式のIL-37ホモ二量体。(B)決定的な相互作用を作る側鎖がスティックで示され、水素結合が破線として示された、ホモ二量体形成面。(C)決定的な側鎖がスティックで示された、(B)と比較して横軸を中心として180度回転されたIL-37界面。(D)IL-37二量体界面の突然変異体のSEC-MALS解析であり、SECトレースは左のy軸に対応し、平均分子量のMALSによる決定(右のy軸)は、屈折率トレースの下の不連続線として示されている。
【
図3】IL-37二量体界面のSEC MALS。野生型IL-37及びIL-37界面の突然変異体のSEC-MALS解析。280 nmにおける吸収によってモニターされたSEC(左軸)及び右軸に示す、MALSから取得された平均分子量。
*二量体のピークと野生型のピークとの間に位置するピークは、カラムを通過するときに解離を経ている二量体に特徴的である(Woodbury et al., Protein Science 2002を参照)。すなわち、タンパク質はSECのラン中には単量体と二量体間で平衡状態ではないが、カラム上での希釈に際し、濃度が低下するとともに一定量が解離している。
【
図4】IL-37アイソフォーム1(配列番号1)。受入番号NP_055254。これは、本明細書中で使用されたIL-37アイソフォームの全長配列であり、本明細書中で参照されるナンバリングと相関する。結晶試験において使用された配列は、この配列の残基46-218由来であった。
【
図5】ヒトPBMCにおける組換えIL-37のバリアントによるLPS刺激IL-1βの差次的抑制。健康なボランティアから新たに単離されたPBMCを、示された濃度の組換えIL-37bの4つのバリアント(両方ともがアミノ酸21(21-218)又は46(46-218)のいずれかでN末端切断された、天然タンパク質(野生型)及び単量体突然変異体(D73K)、を含む)と一緒にインキュベートした。その30分後、培養物をLPS(50 pg/ml)又はビヒクル(IL-1β誘導なし、示さず)で刺激した。LPS添加の20時間後に上清を回収し、IL-1βをELISAによって測定した。グラフは、LPS+ビヒクル(0として設定)と比較して、IL-37bバリアントによって得られたIL-1βの変化の割合(%)±SEMを示す;n=15ドナー;
*,ビヒクル+LPS対全ての他の群についてP<0.05;同一濃度におけるmonoIL-37対全ての他のバリアントについて#, P<0.05及び##, P<0.01。
【
図6】THP-1マクロファージ中にトランスフェクトされたIL-37bバリアントによるIL-1βの減少。THP-1マクロファージを示されたIL-37bのバリアント(全長、1-218)でトランスフェクトし、次いで細胞をPMAで分化させ、引き続き、LPS(250 ng/ml)又はビヒクルで刺激した。上清を24時間後に回収し、IL-1βについてELISAによってアッセイした。上清IL-1β±SEM;n=11~26;
*,コントロール対IL-37bトランスフェクトについてP<0.05;#,natIL-37b対monoIL-37についてP<0.05。コントロールのトランスフェクションと比較して、IL-37bバリアントのトランスフェクションについてP<0.001。
【
図7】C57Bl/6野生型(WT)マウスに、10 mg/kgのLPS又はビヒクル(時間は0時間)の60分前に、組換えIL-37バリアント(40μg/kg)又はビヒクルを腹腔内に注射した。IL-37tgマウスにもまた、直接比較のためにLPS又はビヒクルを注射した。マウス全体でn=94、WTについて4~24匹/群、IL-37tgについて5匹。示された時点において体温を測定して、グラフ化する(±SEM);全てのビヒクルマウスは、一緒に表されている。LPS対全ての他の条件について
*, P < 0.05及び
***, P < 0.001;D73K又はY85Aバリアント対天然recIL-37について#, P < 0.05;##, P < 0.01、及び###, P < 0.001;ns-tg,非有意対IL-37tg;ns-v,非有意対ビヒクル;
*1-4, 7時間における統計値:
*1,
*及びns-v;
*2,
*及びns-v及びns-tg;並びに
*3,
***及びns-tg;
*4,
*及びns-tg。直接比較のためにRecIL-37
21-218を灰色で示す、これらの群の統計値は、別に計算した。
【
図8】
図7による、19時間におけるWTマウスにおける血漿IL-1β±SEM。Veh, ビヒクル;Nat, 天然recIL-37;Mono, D73K;数は、バリアントのN末端トランケーションを示す。
【
図9-1】ヒトPBMCにおける組換えIL-37のバリアントによるHKLM刺激IL-1β又はIL-6の差次的抑制。新たに単離されたPBMCを、示されたように刺激した。HKLM(加熱処理リステリア菌(heat-killed listeria monocytogenes))は、10
6細胞/mlで使用し、recIL-37バリアントの30分後に添加した。黒, HKLM単独;白, HKLM+天然recIL-37;淡い灰色, HKLM+D73K;濃い灰色, HKLM+Y85A(全て、バリアント46-218)。上清をHKLM添加の20時間後に回収し、IL-1β(a-c, g)及びIL-6(d-f, h)をELISAによって測定した。(a-f)濃度(conc) 1, 10 ng/ml; conc 2, 100 pg/ml; conc 3, 10 pg/ml。グラフは、個別のドナーFC(a, d)、JM(b, e)、及びLM(c, f)の培養物の上清におけるサイトカインの絶対濃度± SEMを示す。(e-f)HKLM + D73K conc 1のデータは取得できず。(g, h)IL-1β(g)及びIL-6(h)における変化の割合(%)を、パネルa-fに示される生データから計算して、表す(± SEM)。recIL-37の濃度は、pg/mlで表されている。HKLM単独対HKLM + recIL-37について、
*, P< 0.05;
**, P < 0.01;
***, P < 0.001;同一の濃度のY85A対天然recIL-37について、##, P < 0.01。
【
図9-2】ヒトPBMCにおける組換えIL-37のバリアントによるHKLM刺激IL-1β又はIL-6の差次的抑制。新たに単離されたPBMCを、示されたように刺激した。HKLM(加熱処理リステリア菌(heat-killed listeria monocytogenes))は、10
6細胞/mlで使用し、recIL-37バリアントの30分後に添加した。黒, HKLM単独;白, HKLM+天然recIL-37;淡い灰色, HKLM+D73K;濃い灰色, HKLM+Y85A(全て、バリアント46-218)。上清をHKLM添加の20時間後に回収し、IL-1β(a-c, g)及びIL-6(d-f, h)をELISAによって測定した。(a-f)濃度(conc) 1, 10 ng/ml; conc 2, 100 pg/ml; conc 3, 10 pg/ml。グラフは、個別のドナーFC(a, d)、JM(b, e)、及びLM(c, f)の培養物の上清におけるサイトカインの絶対濃度± SEMを示す。(e-f)HKLM + D73K conc 1のデータは取得できず。(g, h)IL-1β(g)及びIL-6(h)における変化の割合(%)を、パネルa-fに示される生データから計算して、表す(± SEM)。recIL-37の濃度は、pg/mlで表されている。HKLM単独対HKLM + recIL-37について、
*, P< 0.05;
**, P < 0.01;
***, P < 0.001;同一の濃度のY85A対天然recIL-37について、##, P < 0.01。
【
図9-3】ヒトPBMCにおける組換えIL-37のバリアントによるHKLM刺激IL-1β又はIL-6の差次的抑制。新たに単離されたPBMCを、示されたように刺激した。HKLM(加熱処理リステリア菌(heat-killed listeria monocytogenes))は、10
6細胞/mlで使用し、recIL-37バリアントの30分後に添加した。黒, HKLM単独;白, HKLM+天然recIL-37;淡い灰色, HKLM+D73K;濃い灰色, HKLM+Y85A(全て、バリアント46-218)。上清をHKLM添加の20時間後に回収し、IL-1β(a-c, g)及びIL-6(d-f, h)をELISAによって測定した。(a-f)濃度(conc) 1, 10 ng/ml; conc 2, 100 pg/ml; conc 3, 10 pg/ml。グラフは、個別のドナーFC(a, d)、JM(b, e)、及びLM(c, f)の培養物の上清におけるサイトカインの絶対濃度± SEMを示す。(e-f)HKLM + D73K conc 1のデータは取得できず。(g, h)IL-1β(g)及びIL-6(h)における変化の割合(%)を、パネルa-fに示される生データから計算して、表す(± SEM)。recIL-37の濃度は、pg/mlで表されている。HKLM単独対HKLM + recIL-37について、
*, P< 0.05;
**, P < 0.01;
***, P < 0.001;同一の濃度のY85A対天然recIL-37について、##, P < 0.01。
【
図10-1】ヒトPBMCにおける組換えIL-37のバリアントによるイミキモド刺激IL-1β又はIL-6の差次的抑制。新たに単離されたPBMCを、示された通りに刺激した。イミキモドは、10μg/mlで使用し、recIL-37bバリアントの30分後に添加した。黒, イミキモド単独; 白, イミキモド + 天然recIL-37; 淡い灰色, イミキモド + D73K; 濃い灰色, イミキモド + Y85A(全て、バリアント 46-218)。上清をイミキモド添加の20時間後に回収し、IL-1β(a-c, g)及びIL-6(d-f, h)をELISAによって測定した。(a-f)濃度(conc) 1, 10 ng/ml; conc 2, 100 pg/ml; conc 3, 10 pg/ml。グラフは、個別のドナーFC(a, d)、JM(b, e)、及びLM(c, f) の培養物の上清におけるサイトカインの絶対濃度± SEMを示す。イミキモド + 天然conc 2のデータは取得できず。(g, h)IL-1β(g)及びIL-6(h)における変化の割合(%)を、パネルa-fに示される生データから計算して、表す(± SEM)。recIL-37の濃度は、pg/mlで表されている。イミキモド単独対イミキモド + recIL-37について、
*, P < 0.05;
**, P < 0.01; 同一の濃度のY85A対天然recIL-37について、#, P < 0.05。
【
図10-2】ヒトPBMCにおける組換えIL-37のバリアントによるイミキモド刺激IL-1β又はIL-6の差次的抑制。新たに単離されたPBMCを、示された通りに刺激した。イミキモドは、10μg/mlで使用し、recIL-37bバリアントの30分後に添加した。黒, イミキモド単独; 白, イミキモド + 天然recIL-37; 淡い灰色, イミキモド + D73K; 濃い灰色, イミキモド + Y85A(全て、バリアント 46-218)。上清をイミキモド添加の20時間後に回収し、IL-1β(a-c, g)及びIL-6(d-f, h)をELISAによって測定した。(a-f)濃度(conc) 1, 10 ng/ml; conc 2, 100 pg/ml; conc 3, 10 pg/ml。グラフは、個別のドナーFC(a, d)、JM(b, e)、及びLM(c, f) の培養物の上清におけるサイトカインの絶対濃度± SEMを示す。イミキモド + 天然conc 2のデータは取得できず。(g, h)IL-1β(g)及びIL-6(h)における変化の割合(%)を、パネルa-fに示される生データから計算して、表す(± SEM)。recIL-37の濃度は、pg/mlで表されている。イミキモド単独対イミキモド + recIL-37について、
*, P < 0.05;
**, P < 0.01; 同一の濃度のY85A対天然recIL-37について、#, P < 0.05。
【
図10-3】ヒトPBMCにおける組換えIL-37のバリアントによるイミキモド刺激IL-1β又はIL-6の差次的抑制。新たに単離されたPBMCを、示された通りに刺激した。イミキモドは、10μg/mlで使用し、recIL-37bバリアントの30分後に添加した。黒, イミキモド単独; 白, イミキモド + 天然recIL-37; 淡い灰色, イミキモド + D73K; 濃い灰色, イミキモド + Y85A(全て、バリアント 46-218)。上清をイミキモド添加の20時間後に回収し、IL-1β(a-c, g)及びIL-6(d-f, h)をELISAによって測定した。(a-f)濃度(conc) 1, 10 ng/ml; conc 2, 100 pg/ml; conc 3, 10 pg/ml。グラフは、個別のドナーFC(a, d)、JM(b, e)、及びLM(c, f) の培養物の上清におけるサイトカインの絶対濃度± SEMを示す。イミキモド + 天然conc 2のデータは取得できず。(g, h)IL-1β(g)及びIL-6(h)における変化の割合(%)を、パネルa-fに示される生データから計算して、表す(± SEM)。recIL-37の濃度は、pg/mlで表されている。イミキモド単独対イミキモド + recIL-37について、
*, P < 0.05;
**, P < 0.01; 同一の濃度のY85A対天然recIL-37について、#, P < 0.05。
【
図11-1】新たに単離されたPBMCを、示された通りに刺激した。CpG-Aは3μMで使用し、recIL-37bバリアントの30分後に添加した。黒, CpG-A単独; 白, CpG-A + 天然recIL-37; 淡い灰色, CpG-A + D73K; 濃い灰色, CpG-A + Y85A(全て、バリアント 46-218)。上清をCpG-A添加の20時間後に回収し、IL-6(a-c)をELISAによって測定した。(a-c)濃度(conc) 1, 10 ng/ml; conc 2, 100 pg/ml; conc 3, 10 pg/ml。グラフは、個別のドナーFC(a)、JM(b)、及びLM(c)の培養物の上清におけるサイトカインの絶対濃度± SEMを示す。CpG-A + D73K conc 3のデータは取得できず。(d)IL-6における変化の割合(%)を、パネルa-cに示される生データから計算して、表す(± SEM)。recIL-37の濃度は、pg/mlで表されている。CpG-A単独対CpG-A + recIL-37について、
*, P< 0.05;
**, P < 0.01。
【
図11-2】新たに単離されたPBMCを、示された通りに刺激した。CpG-Aは3μMで使用し、recIL-37bバリアントの30分後に添加した。黒, CpG-A単独; 白, CpG-A + 天然recIL-37; 淡い灰色, CpG-A + D73K; 濃い灰色, CpG-A + Y85A(全て、バリアント 46-218)。上清をCpG-A添加の20時間後に回収し、IL-6(a-c)をELISAによって測定した。(a-c)濃度(conc) 1, 10 ng/ml; conc 2, 100 pg/ml; conc 3, 10 pg/ml。グラフは、個別のドナーFC(a)、JM(b)、及びLM(c)の培養物の上清におけるサイトカインの絶対濃度± SEMを示す。CpG-A + D73K conc 3のデータは取得できず。(d)IL-6における変化の割合(%)を、パネルa-cに示される生データから計算して、表す(± SEM)。recIL-37の濃度は、pg/mlで表されている。CpG-A単独対CpG-A + recIL-37について、
*, P< 0.05;
**, P < 0.01。
【
図12】新たに単離されたPBMCを、示された通りに刺激した。ssRNA40は0.5μg/mlで使用し、recIL-37バリアントの30分後に添加した。黒, ssRNA40単独; 白, ssRNA40 + 天然recIL-37; 淡い灰色, ssRNA40 + D73K; 濃い灰色, ssRNA40 + Y85A(全て、バリアント46-218)。上清をssRNA40添加の20時間後に回収し、IL-1βをELISAによって測定した。(a, b)濃度(conc) 1, 10 ng/ml; conc 2, 100 pg/ml; conc 3, 10 pg/ml。グラフは、個別のドナーJF(a)及びMS(b)の培養物の上清におけるサイトカインの絶対濃度± SEMを示す。ssRNA40 + D73K conc 3(JF)及び2(MS)のデータは取得できず。(c)IL-1βにおける変化の割合(%)を、パネルa及びbに示される生データから計算して、表す(± SEM)。recIL-37の濃度は、pg/mlで表されている。2つのデータセットのみが取得可能なため、統計計算は実施せず。
【発明を実施するための形態】
【0049】
実施態様の詳細な説明
本明細書中に開示され、記載された発明は、本文もしくは図面に記述されるか又は本文もしくは図面から明らかである2つ以上の個々の特徴の全ての代替の組み合わせにまで及
ぶことが理解されるだろう。全てのこれらの異なる組み合わせは、本発明の種々の代替の局面を構成する。
【0050】
ここで、本発明の一定の実施態様が詳細に参照される。本発明は、実施態様と組み合わせて説明されるものの、本発明がそれらの実施態様に限定されることを意図しないことが理解されるだろう。逆に、本発明は、請求項によって定義される本発明の範囲内に含まれ得る全ての代替、変更、及び均等物を包含することが意図される。
【0051】
当業者は、本発明を実施するために使用され得る、本明細書中に記載される方法及び材料と類似した又は均等な多数の方法及び材料を認識するだろう。本発明は、決して記載された方法及び材料に限定されるものではない。本明細書中に開示され、定義された発明は、本文もしくは図面に記述されるか又は本文もしくは図面から明らかである2つ以上の個
々の特徴の全ての代替の組み合わせにまで及ぶことが理解されるだろう。全てのこれらの異なる組み合わせは、本発明の種々の代替の局面を構成する。
【0052】
本明細書中に参照される全ての特許及び公報は、参照によりその全体が組み込まれる。
【0053】
本明細書を解釈するために、単数形で使用される用語はまたその複数形を含み、逆もまた同様である。
【0054】
本発明につながる発明者らの研究には、12のβストランドと3つのαヘリックスからな
る特徴的なIL-1サイトカインβトレフォイルフォールドを明らかにした2.3Åの分解能のIL-37の結晶構造を含む。予想外に、IL-37は、IL-1スーパーファミリー内で独特であるヘ
ッドトゥヘッドのホモ二量体の配置を形成する。IL-37は溶液中では二量体であり、二量
体界面内の構造情報に基づく点変異は、IL-37を単量体へと変換する。単量体IL-37は、ヒト血液細胞を含む様々な細胞型において、炎症促進性サイトカインの放出を抑制することにおいて有意により効果的である。まとめると、これらのデータは、IL-37ホモ二量体形
成は、その抗炎症性シグナル伝達を密に制御する新規の自己制御機構を構成することを示す。意義深いことに、単量体IL-37は、様々な炎症性疾患の治療において治療上の利点を
持つ可能性のある分子となる。
【0055】
本発明のポリペプチドは、有意に上昇した抗炎症活性を示す。本発明のポリペプチドの利点は、上昇させた濃度における野生型(すなわち、天然の、内在性の)IL-37で観察さ
れる効力の減少が、起こらないことである。言い換えれば、本発明のポリペプチドは、高濃度において、少なくとも4 logの濃度範囲にわたって、抗炎症効果を示し続ける。これ
は、野生型組換えIL-37と比較して、本発明のポリペプチドの治療域が相当に広くなり、
特に有利となる。
【0056】
IL-37ポリペプチドとは、IL-37の少なくとも1つの生化学的又は生物物理学的活性を有
する分子であり、例えば、それはインターロイキン18受容体(IL-18R1/IL-1Rrp)と結合
し得、そのリガンドであり得る。それはまた、インターロイキン18(IL-18)の結合抑制
性タンパク質であるインターロイキン18結合タンパク質(IL-18BP)に結合し得、その後
、IL-18受容体β鎖と複合体を形成し、それを通してIL-18の活性を阻害し得る。他のIL-37の生化学的又は生物物理学的活性としては、IL-1R8(Sigirr)への結合、ヒト又はマウ
ス免疫細胞におけるTLRリガンド、IFNγ、TNF及びIL-1βを含む広範囲の炎症性攻撃によ
って起こる炎症促進性サイトカイン生成の遮断(抗炎症性サイトカイン生成は遮断しない)、樹状細胞の活性化の阻害(CD86及びMHC IIの表面発現の減少)、mTOR、MAPK及びNF-
κB経路の遮断を含む細胞内キナーゼ制御の特異的なパターンの始動、並びにMer及びPTENなどの抗炎症性キナーゼの誘導((5)中に記載のとおり)が挙げられる。
【0057】
IL-37はまた、インターロイキン-37(FIL1ゼータ;IL-1ゼータ;IL-1F7b(IL-1H4、IL-1H、IL-1RP1);IL-1Xタンパク質;IL1F7(カノニカル産物(canonical product)IL-1F7b);インターロイキン1ファミリーメンバー7;インターロイキン1, ゼータ;インターロイキン-1ホモログ4;インターロイキン-1スーパーファミリーz;インターロイキン-1関連タンパク質及びインターロイキン-23)としても知られている。ヒトIL-37は、5つのアイ
ソフォームa、b、c、d及びeを有し、そのすべてが、他に明確に述べられていない限り、
本明細書中でIL-37に言及される場合に含まれる。表1中の二量体界面残基と等しい少なくとも1つの残基を含むヒトIL-37ポリペプチドの任意のアイソフォーム又はオルソログもまた、本発明内であることが意図される。例えば、本発明は、ヒトIL-37アイソフォームa、b、c、d又はeの任意のものと同一性を持つポリペプチドを含む。
【0058】
IL-37単量体の二量体形成を可能とする二量体形成面とは、2つのIL-37分子間の界面で
あって、1つの分子の他方への結合に関与する界面をいう。典型的には、界面は、2つの分子が相互作用している場合には、溶媒が到達することはできない。界面は、決定的な相互作用を作り出す残基及び/又は界面の表面積の埋没に寄与する残基を含む。界面は、相互作用における各分子の表面積の大きさ又は残基の組成の点からは、同じであっても異なっていてもよい。界面は、以下の表1中にリスト化された任意の1つ以上の決定的な相互作用を作り出す残基及び/又は界面の表面積の埋没に寄与する残基を含む。β3-β4ループ(
残基83-91)は、二量体形成を制御する、二次構造の決定的な領域である。他の領域もま
た界面に寄与する。Y85は、Val71、Val80及びIle78によって形成される疎水性表面上にパッキングされる。Y85のこの表面領域中への埋め込みは、側鎖のアラニンへの突然変異が
二量体を破壊(ablate)することから、二量体形成にとって決定的であると思われるだろう。
【0059】
【0060】
表1中の任意の1つ以上の残基の突然変異又は改変であって、特定の相互作用の型に関与するその能力が低下又は抑制される突然変異又は改変もまた意図される。例えば、Asp73
におけるか、又はそれと同等の位置の任意の突然変異であって、塩橋を形成する能力が低下又は抑制される突然変異が、本発明に含まれる。同様のことが、Ser74、Asn84、Tyr85
、Ile86及びArg87によって形成される水素結合に適用される。
【0061】
β3-β4ループ(残基83-91)領域の任意の改変は、平衡を二量体から単量体へと移動させ得る。それは、ループを除去すること、ループを短縮すること、ループを延長させること、ループの残基を変異させること及び/又はループの残基を化学的に修飾することを含むが、それらに限定されないだろう。ループ領域内で、Lys83、Asn84、Tyr85、Ile86、Arg87及びPro88が最も決定的な残基のようであり、したがって突然変異又は改変のために考慮される。
【0062】
本発明はまた、IL-37ポリペプチドの二量体形成を阻害する化合物を提供する。好まし
くは、化合物は二量体形成面に結合しかつ/又は二量体形成面を破壊する。化合物は、二量体形成面中の少なくとも1つのアミノ酸残基と相互作用するペプチド、ペプチド模倣物
、抗体又は小分子であり得る。
【0063】
さらに、本発明はまた、炎症を抑制するための医薬の製造における、IL-37ポリペプチ
ドの二量体形成を阻害する化合物の使用を提供する。また、本発明は、炎症の抑制を、それを必要とする対象においてする方法を提供し、方法は、IL-37ポリペプチドの二量体形
成を阻害する化合物を投与することを含む。好ましくは、化合物は二量体形成面に結合し、二量体形成面を破壊する。化合物は、二量体形成面中の少なくとも1つのアミノ酸残基
と相互作用するペプチド、ペプチド模倣物、抗体又は小分子であり得る。
【0064】
本発明はまた、配列番号1の二量体形成面のアミノ酸配列の少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17又は18の連続したアミノ酸を含むか、それらから本質的になるか、あるいはそれらからなるペプチドを提供する。好ましくは、連続したアミノ酸は配列番号1のV71~P88である。ペプチドは、IL-37ポリペプチドの二量体形成を阻害し得る抗体を作出するのに使用されてもよい。
【0065】
本明細書中で使用される場合、配列番号1中の位置と同等の位置のアミノ酸残基は、当業者に公知の任意の手段によって決定され得る。例えば、1つ以上の配列と、配列番号1のアミノ酸配列とのアライメントは、当業者が配列番号1中の位置と同等の位置におけるアミノ酸を決定することを可能とするだろう。当業者は、あるポリペプチドの三次元構造を、配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドの三次元構造と比較して、配列番号1
中の位置と同等の位置におけるアミノ酸残基を決定し得る。
【0066】
本明細書中で使用される場合、「二量体を形成する能力が低下した」とは、参照ポリペプチドと比較して、ポリペプチドがホモ二量体及び/又はヘテロ二量体を形成する傾向がより低いことをいう。ポリペプチドが二量体を形成する能力は、本明細書中に記載される、サイズ排除クロマトグラフィー及び多角度光散乱などの方法を含む種々の手段を介して測定されてもよい。好ましくは、二量体を形成する能力が低下したポリペプチドは、二量体形成において、参照ポリペプチドと比較して少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%の低下を示す。参照ポリペプチドは典型的には、
天然の、野生型の、非改変又は未変異のポリペプチドであるだろう。一定の形態(すなわち、単量体又は二量体)で存在するポリペプチドの割合の評価のための適切な方法は、例えば、非変性条件下での分析用ゲル電気泳動である。そのような方法において、ポリペプチドの溶液は、ポリアクリルアミドゲル中を、標準的な分子量マーカーのセットと並んで流される。ポリペプチドが二量体を形成する場合、ポリペプチドのアミノ酸の和として計算された分子量のおよそ2倍の分子量を持つ種に対応するタンパク質バンドがゲル中に観
察されるだろう。およそポリペプチドのアミノ酸の和として計算された分子量を持つ種に対応する2つ目のバンドもまた観察され得-これは単量体形態での配列を表す。バンドの
相対強度が、各形態で存在するポリペプチドの割合を定量化するために使用され得る。例えば、分析用遠心、質量分析又はサイズ排除クロマトグラフィーなどの別の手段によって、同様の方法で分子量が評価され得る。あるいは、単量体又は二量体は、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)を使用して定量化されてもよく、ここで二量体及びより高
次のオリゴマー種は単量体からそれらの疎水性における違いに基づいて分離される。種の同定は、質量分析検出を使用して達成され得る。一定のポリペプチドが、ヘテロ二量体形成又はホモ二量体形成する傾向を示すかを評価するために、同じ方法が適応されてもよい。
【0067】
本発明のポリペプチドの抗炎症特性は、本明細書中、特に実施例中、に記載される任意
の方法によって決定され得る。
【0068】
本明細書中に開示された種々のポリペプチドを説明するのに使用される場合、「単離された(Isolated)」とは、ポリペプチドがその天然環境の構成要素から同定並びに分離及び/又は回収されたことを意味する。その天然環境の混入成分は、ポリペプチドの診断的又は治療的な使用を典型的には妨げるであろう物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性又は非タンパク質性溶質を含み得る。好ましい実施態様において、ポリペプチドは、(1)スピニングカップシークエネーターの使用によって、少なくとも15残基のN末端又は内部アミノ酸配列を取得するのに十分な程度まで、あるいは(2)クーマシーブル
ー染色、又は好ましくは、銀染色を使用した非還元条件下もしくは還元条件下でSDS-PAGEによる均質性を示すまで、精製されるだろう。ポリペプチドの天然環境の少なくとも1つの構成要素が存在しないため、単離されたタンパク質には組み換え細胞内のin situでの
ポリペプチドが含まれる。しかしながら、通常は、単離されたポリペプチドは少なくとも1つの精製工程によって調製されるだろう。
【0069】
「フラグメント」は、本発明のポリペプチドと実質的に同様の機能的活性又はポリペプチドと実質的に同一の生物学的機能もしくは活性(本明細書中に記載されるアッセイを用いて決定され得る)を保持する本発明のポリペプチドの一部分である。
【0070】
ポリペプチド(すなわち、本明細書中に定義される本発明のポリペプチド)配列に関して、「アミノ酸配列の同一性の割合(%)」又は「同一な割合(%)」は、特定の本発明
のポリペプチド中のアミノ酸残基と候補配列中のアミノ酸残基の配列をアラインメントさせ、必要であれば、最大の配列同一性の割合を得るためにギャップを導入し、いかなる保存的置換も配列同一性の一部として考慮しない場合の、特定の本発明のポリペプチド中のアミノ酸残基と同一である、候補配列中のアミノ酸残基の割合として定義される。
【0071】
当業者は、比較する全長配列に対して最大のアライメントを得るのに必要な任意のアルゴリズム(非限定的な例を以下に記載した)を含む、アライメント測定のための適当なパラメータを決定し得る。アミノ酸配列をアライメントすれば、所定のアミノ酸配列Bへの
、配列Bとの、又は、配列Bに対する、所定のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列の同一性の割
合(%)(それはあるいは、所定のアミノ酸配列Bに、配列Bと、又は、配列Bに対して、
あるアミノ酸配列の同一性の割合(%)を有する、又は構成する、所定のアミノ酸配列A
と言い表すことができる)は、以下のように計算され得る:アミノ酸配列の同一性の割合(%)=X/Y100、ここでXは配列アライメントプログラム又はアルゴリズムのAとBとのア
ライメントによって、同一のマッチとスコアされたアミノ酸残基の数であり、YはBにおける全アミノ酸残基数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBに対するアミノ酸配列の同一性の割合(%)は、BのAに対するアミノ酸配列の同一性の割合(%)と等しくならないであろう。
【0072】
同一性の割合(%)を計算する際には、典型的には完全な一致が数えられる。2配列間
の同一性の割合(%)の決定は、数学的アルゴリズムを用いて達成され得る。2配列の比
較に利用される数学的アルゴリズムの非限定的な例としては、Karlin及びAltschul (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264に記載され、Karlin及びAltschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877において改変されたアルゴリズムがある。このよう
なアルゴリズムは、Altschul et al. (1990) J. MoI. Biol. 215:403に記載のBLASTNプログラム及びBLASTXプログラムに組み込まれている。比較目的のギャップアライメントを得るためには、Altschul et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3389に記載のように、Gapped BLAST(Blast 2.0において)を利用することができる。あるいは、PSI-Blastを使用
して、分子間の距離関係を検出する繰り返しの検索を実行することができる。上記Altschulら(1997)を参照のこと。BLAST、Gapped BLAST及びPSI-Blastプログラムが利用される
場合、それぞれのプログラム(例えば、BLASTX及びBLASTN)のデフォルトパラメーターが使用され得る。アライメントは、検査によって手動で実行されてもよい。配列の比較のために利用される数学的アルゴリズムの別の非限定的な例は、ClustalWアルゴリズム(Higgins et al. (1994) Nucleic Acids Res. 22:4673-4680)である。ClustalWは配列を比較
して、アミノ酸又はDNA配列の全体をアラインメントし、したがって、全アミノ酸配列の
配列保存性に関するデータを提供することができる。ClustalWアルゴリズムは、Vector NTI Program Suite(Invitrogen Corporation, Carlsbad, CA)のALIGNXモジュールなどの、いくつかの商業的に入手可能なDNA/アミノ酸分析ソフトウェアパッケージで使用されている。ClustalWによるアミノ酸配列のアライメント後、アミノ酸同一性の割合(%)を評価することができる。ClustalWアライメントの分析のために有用なソフトウェアプログラムの非限定的な例は、GENEDOC(商標)又はJalView(http://www.jalview.org/)で
ある。GENEDOC(商標)は、複数のタンパク質間のアミノ酸(又はDNA)類似性及び同一性の評価を可能にする。配列の比較のために利用される数学的アルゴリズムの別の非限定的な例は、Myers及びMiller (1988) CABIOS 4:11-17のアルゴリズムである。そのようなア
ルゴリズムは、GCG Wisconsin Genetics Software Package, Version 10(Accelrys, Inc., 9685 Scranton Rd., San Diego, CA, USAから入手可能である)の一部である、ALIGN
プログラム(Version 2.0)に組み込まれている。アミノ酸配列を比較するためにALIGNプログラムを利用する場合、PAM 120残基質量表、12のギャップ長ペナルティ、及び4のギャップペナルティが使用され得る。
【0073】
ポリペプチドは望ましくは、アミノ末端及びカルボキシル末端を含む。ポリペプチドは、Dアミノ酸、Lアミノ酸、又はDアミノ酸とLアミノ酸の混合物を含み得る。しかしながら、Dアミノ酸からなるポリペプチドの方が、in vivoにおいてその生物学的活性のより高い保持率を有することが期待されるため、アミノ酸のD型が特に好ましい。
【0074】
ポリペプチドは、数多くの従来技術のいずれかによって調製され得る。ポリペプチドは、天然起源の供給源又は組換え供給源から単離又は精製され得る。組換え体の産生が好ましい。例えば、組換えポリペプチドの場合、所望されるペプチドをコードするDNAフラグ
メントが、周知の分子遺伝学的技術を使用して、適当なベクター中へとサブクローニングされ得る(例えば、Maniatis et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed. (Cold Spring Harbor Laboratory, 1982);Sambrook et al., Molecular Cloning A Laboratory Manual, 2nd ed. (Cold Spring Harbor Laboratory, 1989)を参照のこと)。
フラグメントは、転写され、引き続きin vitroでポリペプチドが翻訳され得る。商業的に入手可能なキットもまた、利用され得る(例えば、Clontech, Palo Alto, Calif.;Amersham Pharmacia Biotech Inc., Piscataway, N.J.;InVitrogen, Carlsbad, Calif.などによって製造された物など)。核酸の操作においては、ポリメラーゼ連鎖反応が随意に利用され得る。
【0075】
本明細書中で使用される場合、用語「保存的置換」とは、ペプチドの天然配列中に存在するアミノ酸の、同様の立体的特性を有する天然起源又は非天然起源のアミノ酸あるいはペプチド模倣物、との置換をいう。置換されるべき天然アミノ酸の側鎖が、極性であるか又は疎水性である場合に、保存的置換は、(置換されたアミノ酸の側鎖と同一の立体的特性を有することに加えて、)同様に極性であるか又は疎水性である天然起源のアミノ酸、非天然起源のアミノ酸と、あるいはペプチド模倣物部分とされるべきである。
【0076】
機能上類似したアミノ酸を提示する、保存的アミノ酸置換表が、当業者に周知である。以下の6つの群が、互いに保存的置換であるとみなされ得るアミノ酸の例である:
1)アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);及び
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
【0077】
天然起源のアミノ酸は典型的にはそれらの特性によってグループ分けされるため、立体的に類似した非荷電アミノ酸による荷電アミノの置換は保存的置換とみなされるという事実を念頭に置いて、天然起源のアミノ酸による保存的置換が決定され得る。非天然起源のアミノ酸による保存的置換を作出するためにはまた、当技術分野において周知のアミノ酸アナログ(合成アミノ酸)を使用することも可能である。天然起源のアミノ酸のペプチド模倣物は、当業者に公知の文献において十分に記述されており、非天然又は自然的でないアミノ酸は、以下にさらに記載される。保存的置換に影響を与える場合、置換するアミノ酸は、元のアミノ酸と同一又は類似した側鎖中の官能基を有するべきである。
【0078】
本明細書中で使用される場合、語句「非保存的置換」又は「非保存的残基」とは、親配列中に存在するアミノ酸の、別の天然起源又は非天然起源のアミノ酸で異なる電気化学特性及び/又は立体特性を有するアミノ酸、による置換をいう。したがって、置換するアミノ酸の側鎖は、置換される天然のアミノ酸の側鎖よりも有意に大きく(又は小さく)てもよく、かつ/又は置換されるアミノ酸よりも有意に異なる電気特性を有する官能基を有していてもよい。この種類の非保存的置換の例としては、アラニンのフェニルアラニンもしくはシクロヘキシルメチルグリシン(cycohexylmethyl glycine)による置換、グリシン
のイソロイシンによる置換、又はアスパラギン酸の-NH-CH[(-CH2)5-COOH]-CO-による置換が挙げられる。非保存的置換には、保存的であるとみなされない任意の突然変異が含まれる。
【0079】
非保存的アミノ酸置換は:(a)置換の領域におけるアミノ酸バックボーンの構造;(b)アミノ酸の電荷又は疎水性;あるいは(c)アミノ酸側鎖の嵩、における変化の結果も
たらされ得る。タンパク質特性における最大の変化を産生すると一般的に予想される置換は、以下の置換である:(a)疎水性残基の親水性残基への(又は疎水性残基による親水
性残基の)置換;(b)任意の他の残基のプロリンへの(又は任意の他の残基によるプロ
リンの)置換;(c)側鎖を有さない残基(例えば、グリシン)の嵩高い側鎖を有する残
基(例えば、フェニルアラニン)への(又は側鎖を有さない残基による嵩高い側鎖を有する残基の)置換;(d)負電荷を持った残基(例えば、グルタミル又はアスパルチル)の
正電荷を持った側鎖を有する残基(例えば、リジル、アルギニル、又はヒスチジル(histadyl))への(又は負電荷を持った残基による正電荷を持った側鎖を有する残基の)置換。
【0080】
変異ポリペプチドを作製するための、例えば、挿入、欠失及び/又は置換などの天然のアミノ酸配列の変更は、当業者に公知の種々の手段によって行われ得る。例えば、部位特異的変異は、修飾部位を含む合成オリゴヌクレオチドを発現ベクター中へとライゲーションすることによって導入され得る。あるいは、Walder et al., Gene 42: 133 (1986);Bauer et al., Gene 37: 73 (1985);Craik, Biotechniques, 12-19 (January 1995);並びに米国特許第4,518,584号及び同第4,737,462号などに開示されているオリゴヌクレオチド指定部位特異的突然変異の手順が使用され得る。突然変異を導入するための好ましい手段は、QuikChange Site-Directed Mutagenesis Kit(Stratagene, LaJolla, Calif.)であ
る。
【0081】
任意の適当な発現ベクター(例えば、Pouwels et al., Cloning Vectors: A Laboratory Manual (Elsevier, N.Y.: 1985)に記載されているような)及び対応する適切な宿主が
、組換えポリペプチドの作製のために利用され得る。発現宿主としては、エシェリキア属、バチルス属、シュードモナス属、サルモネラ属内の細菌種、哺乳動物宿主細胞又はバキ
ュロウイルス系を含む昆虫宿主細胞系(例えば、Luckow et al., Bio/Technology 6: 47 (1988)に記載されるような)、及びCOS-7、C127、3T3、CHO、HeLa、及びBHK細胞株などの樹立細胞株、等が挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、発現宿主の選択が、産生されるポリペプチドの種類に対して波及効果を有することを認識している。例えば、酵母又は哺乳動物細胞(例えば、COS-7細胞)中で産生されるポリペプチドの糖鎖付加は
、大腸菌などの細菌細胞中で産生されるポリペプチドのそれとは異なるだろう。
【0082】
あるいは、本発明のポリペプチドは、当業者に周知の標準的なペプチド合成技術を使用して合成され得る(例えば、Bodanszky, Principles of Peptide Synthesis (Springer-Verlag, Heidelberg: 1984)において概説されているような)。具体的には、ポリペプチドは、固相合成の手順を使用して合成され得る(例えば、Merrifield, J. Am. Chem. Soc. 85: 2149-54 (1963);Barany et al., Int. J. Peptide Protein Res. 30: 705-739 (1987);及び米国特許第5,424,398号を参照のこと)。所望される場合、これは自動化ペプチ
ド合成機を使用して行われ得る。t-ブチルオキシカルボニル(t-BOC)又は9-フルオレニ
ルメチルオキシカルボニル(Fmoc)アミノ酸保護基の除去、及び樹脂からのポリペプチドの分離は、例えば、低温での酸処理によって達成され得る。ポリペプチド含有混合物は次に、非ペプチド性の有機化合物を除去するために、例えば、ジメチルエーテル、で抽出され得、合成ポリペプチドは、(例えば、約25% w/v酢酸で)樹脂粉末から抽出され得る。ポリペプチドの合成に続き、任意の不完全なポリペプチド又は遊離アミノ酸を排除するために、さらなる精製(例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して)が随意に行われ得る。合成ポリペプチドの同一性を検証するために、それに対してアミノ酸及び/又はHPLC解析が実施され得る。本発明による他の用途のためには、本明細書に記載された方法又は他の遺伝学的手段などによって、より大きな融合タンパク質の一部として、あるいは本明細書中に記載され当業者に公知の物理的結合又は化学的結合を通してなどで、より大きな抱合体の一部として、ポリペプチドを作製することが好ましい場合がある。
【0083】
本発明のポリペプチドはまた、精製を促進する、又はポリペプチドのin vivo半減期を
増加させる、又は当技術分野で公知の方法を使用した免疫アッセイにおける使用のために、別の部分によって改変されるか、別の部分と結合されるか又は融合されてもよい。例えば、本発明のポリペプチドは、糖鎖付加、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、公知の保護(protecting)基/又は保護(blocking)基による誘導体化、タンパク質切断、細胞リガンド又は他のタンパク質への連結などによって改変されてもよい。
【0084】
「ペプチド模倣物」とは、本発明のポリペプチドと実質的に同一の構造及び/又は機能的特徴を有する合成化学化合物であり、機能的特徴は、本明細書中でさらに記述される。典型的には、ペプチド模倣物は、本発明のポリペプチドと同一又は類似した構造(例えば、二量体を形成する能力が低下した、配列番号1と同一もしくは類似した配列又はそのフ
ラグメント)を有する。ペプチド模倣物は一般的には、天然には合成されない少なくとも1つの残基を含有する。ペプチド模倣物化合物の非天然の構成成分は、1つ以上の:a)天
然のアミド結合(「ペプチド結合」)による結合以外の残基の結合基;b)天然起源のア
ミノ酸残基の代わりの非天然の残基;又はc)例えば、βターン、γターン、βシート、
及びαヘリックス立体構造などの、二次構造の模倣を誘導する、すなわち、二次構造を誘導するか又は安定化するため、の残基、によるものであってもよい。
【0085】
ペプチド模倣物は、例えば、Organic Syntheses Collective Volumes, Gilman et al. (Eds) John Wiley & Sons, Inc., NY, al-Obeidi (1998) Mol. Biotechnol. 9:205-223;Hruby (1997) Curr. Opin. Chem. Biol. 1:114-119;Ostergaard (1997) Mol. Divers. 3:17-27; Ostresh (1996) Methods Enzymot.267:220-234などの科学的文献及び特許文献において記載されている種々の手順及び方法論を使用して合成され得る。
【0086】
本明細書中で意図される改変としては、側鎖の改変、ポリペプチド合成の間の自然的でないアミノ酸及び/又はそれらの誘導体の導入、並びに架橋剤の使用並びに本発明のポリペプチドに立体構造上の制約を課す他の方法の使用など、が挙げられるが、これらに限定されない。翻訳後修飾を含む、分子が二量体を形成する能力を低下させる任意の改変が、本明細書中で意図される。例としては、当技術分野で公知のクリックケミストリーによって導入される改変が挙げられる。例示的な改変としては、PEG化及び糖鎖付加が挙げられ
る。
【0087】
本発明によって意図される側鎖の改変の例としては、アルデヒドとの反応とそれに続くNaBH4での還元による還元アルキル化;メチルアセトイミデートでのアミジン化(amidination);無水酢酸でのアシル化;シアン酸塩によるアミノ基のカルバモイル化;2, 4, 6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)でのアミノ基のトリニトロベンジル化;無水コハク酸及び無水テトラヒドロフタル酸でのアミノ基のアシル化;並びにピリドキサール-5-
リン酸でのリジンのピリドキシル化とそれに続くNaBH4での還元、が挙げられる。
【0088】
アルギニン残基のグアニジン基は、2,3-ブタンジオン、フェニルグリオキサール及びグリオキサールなどの試薬で複素環縮合産物の形成によって改変されてもよい。
【0089】
カルボキシル基は、O-アシルイソウレア形成を介したカルボジイミド活性化とそれに続く、例えば、対応するアミドへの続いての誘導体化によって改変されてもよい。
【0090】
スルフヒドリル基は、ヨード酢酸又はヨードアセトアミドでのカルボキシメチル化;システイン酸への過ギ酸の酸化;他のチオール化合物との混合ジスルフィドの形成;マレイミド、無水マレイン酸又は他の置換マレイミドとの反応;4-クロロ水銀安息香酸、4-クロロ水銀フェニルスルホン酸、塩化フェニル水銀、2-クロロ水銀-4-ニトロフェノール及び
他の水銀剤を使用した水銀誘導体の形成;アルカリ性pHにおけるシアン酸塩とのカルバモイル化、などの方法によって改変されてもよい。
【0091】
トリプトファン残基は、例えばN-ブロモスクシンイミドによる酸化あるいは2-ヒドロキシ-5-ニトロベンジルブロミド又はハロゲン化スルフェニルでのインドール環のアルキル
化により改変されてもよい。もう一方で、チロシン残基は、テトラニトロメタンでのニトロ化により改変されて3-ニトロチロシン誘導体を形成し得る。
【0092】
ヒスチジン残基のイミダゾール環の改変は、ヨード酢酸誘導体でのアルキル化又はジエチルピロカルボン酸によるN-カルボエトキシル化によって達成され得る。
【0093】
タンパク質合成の間に自然的でないアミノ酸及び誘導体を組込む例としては、ノルロイシン、4-アミノ酪酸、4-アミノ-3-ヒドロキシ-5-フェニルペンタン酸、6-アミノヘキサン酸、t-ブチルグリシン、ノルバリン、フェニルグリシン、オルニチン、サルコシン、4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸、2-チエニルアラニン及び/又はアミノ酸のD-異性体の使用が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中で意図される自然的でないアミノ酸のリストを表2に示す。
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
3D立体構造を安定化させるために、架橋剤が使用され得、例えば、n=1~n=6の(CH2)nスペーサー基を有する二官能性のイミドエステルの、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステルなどのホモ二官能性架橋剤、及びN-ヒドロキシスクシンイミドなどのアミノ反応性部分と別の基特異的に反応する部分とを通常含むヘテロ二官能性試薬が使用され得る。
【0099】
本発明のいずれかのポリペプチドをコードする核酸分子もまた、本発明の範囲内である。核酸は、例えば、本発明のポリペプチドを作ることにおいて及び治療剤として有用である。それらは、培養中の細胞に又はin vivoで投与されてもよく、その細胞からの本発明
のポリペプチドの分泌を指示又は促進する分泌シグナルを含んでいてもよい。本発明の核酸を含有するか又は含む発現ベクター及び宿主細胞(下に詳述される)もまた、本発明の範囲内である。本発明の核酸は、定義上「単離された」と言及され得る一方で、本発明のポリペプチドは野生型ポリペプチドではなく、したがって、天然起源の核酸によってはコードされないだろう。したがって、本発明のポリペプチド及び核酸は、「精製された」、「実質的に精製された」、「単離された」、「組換えの」又は「合成の」ものであり得る一方で、それらを天然起源の物質から識別するためにそうである必要はない。
【0100】
「単離された」核酸分子とは、ポリペプチド、典型的にはIL-37、をコードする核酸の
天然の供給源において通常結合している少なくとも1つの混入核酸分子から同定及び分離
される核酸分子である。単離された核酸分子は、それが天然において発見される形態又は状況とは異なる形態又は状況である。単離された核酸分子はしたがって、天然の細胞中で存在するままの核酸分子からは識別される。しかしながら、単離された核酸分子は、通常IL-37を発現する細胞に含まれる核酸を含み、ここで例えば、核酸分子は、天然の細胞の
染色体上の位置とは異なる染色体上の位置にある。
【0101】
用語「核酸分子」と「ポリヌクレオチド」とは、本明細書中で互換的に使用され、任意の長さのヌクレオチドの重合体形態である、デオキシリボヌクレオチドか又はリボヌクレオチドのいずれか、あるいはそれらのアナログをいう。ポリヌクレオチドの例としては、遺伝子、遺伝子フラグメント、伝令RNA(mRNA)、cDNA、組換えポリヌクレオチド、プラ
スミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブ及びプライマーが挙げられるが、これらに限定されない。本発明のポリヌクレオチドは、単離された又は精製された形態で提供され得る。選択されたポリペプチドを「コードする」核酸配列は、適当な制御配列の調節下に置かれた場合に、in vivoで(DNAの場合に)転写され、(mRNAの場合に)翻訳されてポリペプチドとなる核酸分子である。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端における開始コドンと、3’(カルボキシ)末端における翻訳終止コドンによって決定される。本発明の目的のために、そのような核酸配列には、ウイルスmRNA、原核生物mRNA又は真核生物mRNA由来のcDNA、ウイルス又は原核生物DNAもしくはRNA由来のゲノム配列、及び合成DNA配列までもが含まれ得るが、これらに限定されない。転写終
結配列が、コード配列の3’側に位置していてもよい。
【0102】
本発明のポリヌクレオチドは、例としてSambrook et al (1989, Molecular Cloning-a laboratory manual; Cold Spring Harbor Press)中に記載されるような、当技術分野に
おいて周知の方法に従って合成され得る。
【0103】
本発明のポリヌクレオチド分子は、挿入配列と作動可能に連結した調節配列を含み、それによって標的化された対象においてin vivoで本発明のポリペプチドの発現を可能にす
る発現カセットの形態で提供されてもよい。次に、これらの発現カセットは、典型的には、核酸免疫試薬として使用されるのに適切なベクター(例えば、プラスミド又は組換えウイルスベクター)内に提供される。そのような発現カセットは、宿主対象に直接投与されてもよい。あるいは、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターが宿主対象に投与されてもよい。好ましくは、ポリヌクレオチドは、遺伝子ベクターを使用して調製及び/又は投与される。適切なベクターは、十分な量の遺伝情報を運搬することができ、本発明のポリペプチドの発現を可能にする任意のベクターであり得る。
【0104】
したがって、本発明は、そのようなポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターを含む。したがって、本発明は、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含み、随意に本明細書中に記載されるポリペプチドと異なるポリペプチドをコードする1つ以
上のさらなるポリヌクレオチド配列を含む、炎症性疾患又は状態の予防又は治療における使用のためのベクターを提供する。
【0105】
さらに、本発明の組成物及び製品は、ポリペプチドとポリヌクレオチドとの混合物を含み得ることが理解されるだろう。したがって、本発明は、本明細書中に定義される組成物又は製品を提供し、ここで前記ポリペプチドを発現することができるポリヌクレオチドが、いずれか1つのポリペプチドの代わりになる。
【0106】
発現ベクターは、分子生物学の分野で日常的に構築され、例えばプラスミドDNA、並び
に本発明のペプチドの発現を可能にするために必要となることがあり、正しい方向に位置付けられる適当なイニシエーター、プロモーター、エンハンサー及び他のエレメント(例えばポリアデニル化シグナルなど)の使用を伴い得る。他の適切なベクターは、当業者には明らかであろう。これに関連するさらなる例としては、我々はSambrookらを参照する。
【0107】
したがって、本発明のポリペプチドは、そのようなベクターを細胞へと送達し、ベクターからの転写を起こさせることによって提供され得る。好ましくは、ベクター中の本発明のポリヌクレオチド又は本発明における使用のためのポリヌクレオチドは、宿主細胞によ
るコード配列の発現をもたらすことが可能な制御配列に作動可能に連結されている(すなわち、ベクターは、発現ベクターである)。
【0108】
「作動可能に連結(した)」とは、そう記載された構成成分が、それらの通常の機能を奏するように構成される、エレメントの配置をいう。したがって、核酸配列に作動可能に連結した、例えばプロモーターなど、の所定の制御配列は、適切な酵素が存在する場合にその配列の発現をもたらし得る。プロモーターは、配列の発現を指示するように機能する限り、その配列と連続している必要はない。したがって、例えば、介在する、非翻訳配列(転写はされる)が、プロモーター配列と核酸配列との間に存在し得、そしてなおこのプロモーター配列は、コード配列に「作動可能に連結され」ているとみなされ得る。
【0109】
多くの発現系が、当技術分野において記載されており、その各々が典型的には、発現制御配列に作動可能に連結した興味の対称である遺伝子又はヌクレオチド配列を含むベクターからなる。これらの制御配列としては、転写プロモーター配列並びに転写開始配列及び転写終結配列が挙げられる。本発明のベクターは、例えば、複製起点と、随意に前記ポリヌクレオチドの発現プロモーター及び随意にプロモーターの制御因子とともに提供される、プラスミド、ウイルス又はファージベクターであってもよい。「プラスミド」とは、染色体外遺伝因子の形態であるベクターである。ベクターは、1つ以上の選択マーカー遺伝
子(例えば、細菌プラスミドの場合にはアンピシリン耐性遺伝子、又は真菌ベクターのための耐性遺伝子)を含んでいてもよい。ベクターは例えばin vitroで、DNA又はRNA生産のために使用されるか、又は例えば、哺乳動物宿主細胞などの宿主細胞をトランスフェクトもしくは形質転換するために使用され得る。ベクターはまた例えば、ポリペプチドのin vivo発現を可能とするために、in vivoで使用するために適応されてもよい。
【0110】
「プロモーター」とは、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの転写を開始及び制御するヌクレオチド配列である。プロモーターには、誘導性プロモーター(ここで、プロモーターに作動可能に連結したポリヌクレオチド配列の発現は、分析物、補助因子、制御タンパク質などによって誘導される)、抑制性プロモーター(ここで、プロモーターに作動可能に連結したポリヌクレオチド配列の発現は、分析物、補助因子、制御タンパク質などによって抑制される)、及び構成型プロモーター、が含まれ得る。用語「プロモーター」又は「制御因子」には、全長プロモーター領域及びこれらの領域の機能性(例えば、転写又は翻訳を制御する)セグメントが含まれることが意図される。
【0111】
本発明のポリヌクレオチド、発現カセット又はベクターはさらに、シグナルペプチド配列を含んでいてもよい。シグナルペプチド配列は一般に、プロモーターと一緒に作動可能に連結されて挿入され、それによってシグナルペプチドが発現され、プロモーターとまた作動可能に連結されたコード配列によってコードされるポリペプチドの分泌が促進される。
【0112】
典型的にはシグナルペプチド配列は、10~30アミノ酸(例えば、15~20アミノ酸)のペプチドをコードする。しばしば、アミノ酸は、主に疎水性である。典型的な状況において、シグナルペプチドは、シグナルペプチドを持つ伸長しているポリペプチド鎖を、それを発現する細胞の小胞体に標的化する。シグナルペプチドは、小胞体中で切断されて取り除かれ、ゴルジ装置を介したポリペプチドの分泌を可能とする。したがって、本発明のペプチドは、個体内の細胞からの発現、及びそれらの細胞からの分泌によって、その個体に提供され得る。
【0113】
語句「治療有効量」は一般に、(i)特定の疾患、状態、又は障害を治療する、(ii)
その特定の疾患、状態、又は障害の1つ以上の症状を減弱させる、改善する、又は排除す
る、あるいは(iii)本明細書中に記載されるその特定の疾患、状態、又は障害の1つ以上
の症状の発症を遅らせる、1つ以上の本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの量を
いう。
【0114】
本発明は、種々の炎症性疾患又は状態の治療における適用が見出される。本明細書中で使用される場合、「炎症性疾患又は状態」には、急性もしくは慢性の炎症、あるいは自己免疫疾患と関連する炎症、循環器炎症(例えば、アテローム性動脈硬化症、脳卒中)、胃腸炎、肝臓の炎症性障害、肺炎症(例えば、喘息、人工呼吸器誘発肺損傷)、腎炎症、眼性炎症(例えば、ブドウ膜炎)、膵臓炎症、尿生殖器炎症、神経炎症性障害(例えば、多発硬化症、アルツハイマー病)、アレルギー(例えば、アレルギー性鼻炎/副鼻腔炎、皮膚アレルギー及び障害(例えば、じんま疹(urticaria)/じんま疹(hives)、血管浮腫、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、乾癬)、食物アレルギー、薬物アレルギー、昆虫アレルギー、肥満細胞症)、骨格炎症(例えば、関節炎、変形性関節症、関節リウマチ、脊椎関節症)、感染症(例えば、細菌感染又はウイルス感染;口腔炎症障害(例えば、歯周病(perodontis)、歯肉炎又は口内炎);及び移植(例えば、同種移植片又は異種移植片拒絶、母胎-胎児寛容、移植片対宿主病)、などの炎症性障害、が含まれる。
【0115】
本発明は、組換え野生型IL-37での治療が提案されている種々の炎症性疾患又は状態(
例えば、Dinarello et al. Eur. J. Immunol. (2016) 46: 1067-1081、特に表3、中に言
及されている疾患又は状態)の治療における適用が見出される。
【0116】
本発明の方法もしくは使用における治療、又は本発明のポリペプチドもしくは医薬組成物による治療で意図される炎症性疾患又は状態には、Toll様受容体(TLR)2、4、7、8及
び/又は9の活性化によって主に媒介される疾患又は状態が含まれる。TLR活性化と関連するそれらの疾患及び状態の概要が、Connolly et al Current Opinion in Pharmacology 2012,12:510-518中の
図1及び表1中に見られる。本発明の方法もしくは使用による治療、又は本発明のポリペプチドもしくは医薬組成物による治療で意図される例示的な徴候、及びそれらの徴候の炎症を主に媒介するTLRは以下の通りである:
・ 虚血/再灌流傷害、心虚血、臓器移植後臓器機能障害(TLR 2);
・ 関節リウマチ(TLR 2);
・ 全身性エリテマトーデス(TLR7、8及び/又は9);
・ 敗血症(他のTLRのうち特にTLR 4);並びに
・ 急性及び慢性炎症(TLR 4)。
【0117】
本発明の方法もしくは使用、又は本発明のポリペプチドもしくは医薬組成物による方法もしくは使用は、他のサイトカイン(IL-1、IFNγなど)、他のメディエーター(例えば
、補体、ロイコトリエンなど)並びに化学的及び物理的刺激など、の他のメディエーターによって誘発される炎症を減少、抑制又は予防することにおける適用が見出される。
【0118】
自己免疫疾患には、例えば、後天性免疫不全症候群(自己免疫要素を伴うウイルス疾患であるAIDS)、円形脱毛症、強直性脊椎炎(ankylosing, spondylitis)、抗リン脂
質抗体症候群、自己免疫性アジソン病、自己免疫性溶血性貧血(autoimmune haemolytic,
anemia)、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患(AIED)、自己免疫性リンパ球増
殖性症候群(ALPS)、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、ベーチェット病、心筋症、セリアックスプルー-疱疹状皮膚炎;慢性疲労免疫不全症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIPD)、瘢痕性類天疱瘡、寒冷凝集素症、クレスト症候群、クローン病、デゴス病、小児皮膚筋炎、円板状エリテマトーデス、本態性混合性クリオグロブリン血症、線維筋痛線維筋炎、グレーヴス病、ギラン・バレー症候群、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA腎症、インスリン依存性糖尿病(I型糖尿病)、若年性慢性関節炎(スティル病)、若年性関節リウマチ、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、悪性貧血(
pemacious anemia)、結節性多発性動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛、多発性筋炎及び皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症(進行性全身性硬化症(PSS)、全身性硬化症(SS)としても知られる)、シェーグレン症候群、スティッフマン症候群、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、白斑、及びヴェゲナー肉芽腫症が含まれる。
【0119】
好ましくは、炎症性疾患又は状態は、多発性硬化症、関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎などの皮膚過敏症、乾癬、炎症性腸疾患、ブドウ膜炎、ドライアイ疾患、全身性硬化症(強皮症)、歯周疾患、白斑、SLE/円板状エリテマトーデス/グレーヴス
病(Grave disease)、アテローム性動脈硬化症、喘息、又は遅延型過敏である。
【0120】
多発性硬化症(MS)は、脳及び脊髄の軸索を包囲するミエリン鞘の脱髄が関与する炎症性疾患である。MSの症状としては、脳内の白質及び/又は脊髄の瘢痕並びに幅広い種類の神経性症状(例えば、感受性の低下、もしくはピリピリ感、刺痛、もしくはしびれ感(知覚鈍麻及び異常知覚(parasthesia))などの感覚変化、筋力低下、クローヌス、筋痙縮
又は運動障害;共調運動及び平衡性障害(運動失調);発話の問題(構音障害)又は嚥下の問題(嚥下障害)、視覚の問題(眼振、視神経炎など)、疲労、急性/慢性疼痛、並びに膀胱及び腸障害が含まれるが、これらに限定されない)が含まれるが、これらに限定されない。異なる度合いの認知障害及びうつ状態もまた一般的である。MSの症状は通常、神経機能の、一過性の急性期における悪化において、ゆっくりとした進行性増悪において、又は両者の組み合わせにおいて現れる。
【0121】
関節リウマチは、多数の組織及び器官に影響し得る慢性全身性炎症障害であるが、主に滑膜関節を攻撃する。その過程は、滑膜細胞の過形成、過剰な滑膜液、及び滑膜における繊維組織の発生による、関節周囲の滑液包の炎症反応が関与する。疾患の経過の病態はしばしば、関節軟骨の破壊及び関節強直をもたらす。関節リウマチはまた、肺、心膜、肺胸膜、強膜におけるびまん性炎症、及び結節性病変(最も一般的には皮下組織における)を引き起こし得る。
【0122】
他の炎症性疾患又は状態としては、脳卒中、心筋梗塞、虚血-再灌流傷害及び移植と関
連した急性炎症が挙げられる。さらに、自己炎症性疾患又は自己免疫疾患と関連した慢性炎症(上記の多発性硬化症など)及び糖尿病(1型又は2型糖尿病)。
【0123】
さらなる炎症性疾患又は状態は、敗血症、敗血性ショック又は内毒素ショックである。敗血症又は内毒素ショックは、細菌、真菌、ウイルス、又は寄生体によって起こされ得る。細菌からの原因物質は、リポグリカン及びエンドトキシンとしても知られるリポ多糖類(LPS)であり得、それらは共有結合で連結された脂質と、O-抗原、外部コア及び内部コ
アからなる多糖類とからなる大きな分子である;それらはグラム陰性細菌の外膜中に見られ、動物において強力な免疫応答を誘発する。
【0124】
本明細書中に記載されるいずれかの炎症性疾患又は状態について、本発明のポリペプチドがヒトに局所投与される場合、治療有効量の化合物は、好ましくは約0.01~約10%(w/w)の間、又は約0.1~10%(w/w)の間、又は約1.0~約10%(w/w)の間、約0.1~約5%
(w/w)の間、又は約1.0~約5%(w/w)の間に相当する。本明細書中に記載されるいずれかの炎症性疾患又は状態(conditions diseases)において、本発明のポリペプチドが対
象に経口投与される場合、治療有効量の化合物は、好ましくは約1~約50 mg/kgの間、又
は約1~25 mg/kgの間、又は約1~約10 mg/kgの間、約5~約25 mg/kgの間、又は約10~約20 mg/kgの間に相当する。
【0125】
本発明の組成物において、単量体として存在する本発明のポリペプチドの割合は、適切な条件下で適切な期間、溶液中で典型的に保管された組成物中に存在する全ポリペプチドの少なくとも約0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%であり得る。適切な期間及び条件には、当業者が使用前に溶液中にポリペプチドを維持する、と合理的に予想され得る時間及び条件の範囲が含まれる。例えば、約24時間、約48時間、又は約72時間の期間が典型的であるが、いくつかの溶液は、より長期間(例えば、少なくとも1週間、1か月間、6か月間、1年間、2年間、又は3年間以上)維持され得る。保管条件は、典型的には、室温及び相対湿度であり得、又は典型的には25℃で60%の相対湿度であり得るが、当業者が遭遇する任意の標準的な保管条件(例えば、およそ4℃、20℃、又は80℃)を含み得る。
【0126】
投与の頻度は、毎日1回、又は毎日2回もしくは3回であってもよい。治療期間は、検出
可能な疾患の持続期間であってもよい。
【0127】
典型的には、治療有効用量は、少なくとも約0.1%~約50%以上までの(重量)濃度、
並びにその中の範囲の全てのコンビネーション及びサブコンビネーションを含むように処方される。組成物は、1つ以上の本発明のポリペプチドを、約0.1~約50%未満(例えば、約49、48、47、46、45、44、43、42、41又は40%)の濃度で、約0.1%より大きい濃度(
例えば、約0.2、0.3、0.4又は0.5%)~約40%未満(例えば、約39、38、37、36、35、34、33、32、31又は30%)の濃度で含むように処方され得る。例示的な組成物は、約0.5%
~約30%未満(例えば、約29、28、27、26、25、25、24、23、22、21又は20%)で、約0.5%より大きい濃度(例えば、約0.6、0.7、0.8、0.9又は1%)~約20%未満(例えば、約19、18、17、16、15、14、13、12、11又は10%)の濃度で含み得る。組成物は、約1%よ
り大きい(例えば、約2%)~約10%未満(例えば、約9又は8%)を含み得、これには約2%より大きい(例えば、約3又は4%)~約8%未満(例えば、約7又は6%)の濃度が含ま
れる。活性薬剤は例えば、約5%の濃度で存在し得る。全ての場合において、治療される
細胞又は組織に実際に送達される有効成分の量における違いを補償するように量が調整され得る。
【0128】
本発明は、ヒトにおける適用が見出されるものの、本発明はまた、獣医学上の治療目的でも有用である。本発明は、ウシ、ヒツジ、ウマ及び家禽類などの飼育動物又は家畜用;ネコ及びイヌなどのコンパニオン動物用;並びに動物園の動物用に有用である。
【0129】
医薬組成物は、例えば、局所(例えば、経皮又は点眼)、経口、口腔、経鼻、膣内、直腸又は非経口投与などの任意の適当な投与経路用に処方されてもよい。本明細書中で使用される場合、用語、非経口は、皮下、皮内、血管内(例えば、静脈内)、筋肉内、脊髄、頭蓋内、くも膜下腔内、眼球内、眼窩周囲、眼窩内、滑膜内及び腹腔内注射並びに任意の同様の注射又は注入技術を含む。特定の実施態様において、経口使用又は非経口使用のために適切な形態の組成物が好ましい。適切な経口形態としては、例えば、錠剤、トローチ剤、ロゼンジ、水性もしくは油性懸濁液、分散性の散剤もしくは顆粒剤、乳剤、硬カプセル剤もしくは軟カプセル剤、又はシロップ剤もしくはエリキシル剤が挙げられる。さらに他の実施態様中において、本明細書中に提供される組成物は、凍結乾燥物として処方されてもよい。
【0130】
種々の単位投与量は、各々が別個の投与量の錠剤、カプセル剤、ロゼンジ、糖衣錠、ガム、又は他の種類の固体処方物として好ましくは提供される。カプセル剤は、粉末、液体、又はゲルを被包し得る。固体処方物は、嚥下されてもよく、又は吸引可能もしくは咀嚼可能(フランジブル(frangible)又はガム様のいずれか)な種類であってもよい。本発
明は、単位投与量を保持する、ブリスターパック以外の器具(例えば、ビン、チューブ、
キャニスター、小包などのパッケージ)を意図する。単位投与量はさらに、製剤処方の実践において周知の通常の賦形剤(例えば、結合剤、ゲル化剤、注入剤、打錠用滑沢剤、崩壊剤、界面活性剤、及び着色剤など)、及び吸引可能又は咀嚼可能な処方物用の賦形剤を含んでいてもよい。
【0131】
経口使用が意図される組成物は、見た目や味が良い処方物を提供するために、甘味剤、香味剤、着色剤、及び/又は保存剤などの1つ以上の構成成分をさらに含んでいてもよい
。錠剤は、錠剤の製造に適切な生理学的に許容可能な賦形剤と混合された有効成分を含有する。そのような賦形剤としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤、トウモロコシデンプン又はアルギン酸などの顆粒化剤及び崩壊剤、デンプン、ゼラチン又はアラビアゴムなどの結合剤、並びにステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクなどの滑沢剤、が挙げられる。錠剤はコーティングされていなくてもよく、又は消化管での崩壊及び吸収を遅らせ、それによってより長期間にわたる持続的作用が得られるよう、公知の技術によってコーティングされていてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延材料が利用されてもよい。
【0132】
経口使用のための処方物はまた、有効成分が、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、又はカオリンなどの不活性固体希釈剤と混合されている硬質ゼラチンカプセルとして、あるいは有効成分が水又は例えば、ラッカセイ油、流動パフィンもしくはオリーブ油などの油媒体と混合されている軟質ゼラチンカプセルとして提供されてもよい。
【0133】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適切な賦形剤と混合された有効成分(複数可)を含有する。そのような賦形剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム及びアラビアゴムなどの懸濁化剤、並びに例えば、天然起源のホスファチド(例えば、レシチン)などの分散剤又は湿潤剤、例えば、ポリオキシエチレンステアレートなどのアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物、例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノールなどのエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエートなどのエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトールから誘導される部分エステルとの縮合生成物、あるいは例えば、ポリエチレンソルビタンモノオレエートなどの、エチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトール無水物から誘導される部分エステルとの縮合生成物、が挙げられる。水性懸濁液はまた、1つ以上の保存剤、例えば、pヒドロキシ安息香酸エチル、又はpヒドロキシ安息香酸nプロピル、1つ以上の着色剤、1つ以上の香味剤、及び1つ以上の甘味剤、例えば、スクロース又はサッカリンも含み得る。
【0134】
油性懸濁液は、有効成分を植物油、例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油、又はヤシ油中、あるいは流動パラフィンなどの鉱物油中に懸濁させることによって処方され得る。油性懸濁液は、例えば、蜜蝋、固形パラフィン又はセチルアルコールなどの増粘剤を含有してもよい。味の良い経口製剤を提供するために、上述のような甘味剤、及び/又は香味剤が添加されてもよい。そのような懸濁液は、アスコルビン酸などの抗酸化剤を添加することによって保存されてもよい。
【0135】
水の添加による水性懸濁液の調製に適切な分散性の散剤及び顆粒剤は、分散剤又は湿潤剤、懸濁化剤、及び1つ以上の保存剤と混合された有効成分を提供する。適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤は、既に上述したものによって例示される。甘味剤、香味剤、及び着色剤などのさらなる賦形剤もまた存在してもよい。
【0136】
医薬組成物はまた、水中油型エマルジョンの形態であってもよい。油相は、例えば、オ
リーブ油又はラッカセイ油などの植物油、例えば、流動パラフィンなどの鉱物油、あるいはこれらの混合物であってもよい。適切な乳化剤としては、例えば、アラビアゴムもしくはトラガカントゴムなどの天然起源のゴム、例えば、大豆レシチンなどの天然起源のホスファチド、並びに脂肪酸及びヘキシトール無水物から誘導されるエステルもしくは部分エステル(例えば、ソルビタンモノオレエート)、並びに脂肪酸及びヘキシトール由来の部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)が挙げられる。エマルジョンはまた、1つ以上の甘味剤及び/又は香味
剤も含み得る。
【0137】
シロップ及びエリキシルは、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール又はスクロースなどの甘味剤と一緒に処方されてもよい。このような処方物はまた、1つ以上の鎮痛薬、保存剤、香味剤及び/又は着色剤も含み得る。
【0138】
本発明のポリペプチドは、皮膚への局所適用などの、局所(local)投与又は局所(topical)投与のために処方されてもよい。局所投与のための処方物は典型的には、有効成分(複数可)と組み合わされた局所用ビヒクルを、必要に応じて更なる成分を伴うか、又は伴わないで含む。
【0139】
適切な局所用ビヒクル及び追加の成分は、当技術分野において周知であり、ビヒクルの選択は、送達の特定の物理的形態及び方法に依存することが明らかであるだろう。局所用ビヒクルとしては、アルコールなどの有機溶媒(例えば、エタノール、イソプロピルアルコール又はグリセリン)、ブチレン、イソプレン又はプロピレングリコールなどのグリコール、ラノリンなどの脂肪族アルコール、水と有機溶媒との混合物及びアルコールなどの有機溶媒とグリセリンとの混合物、脂肪酸、アシルグリセロール(鉱物油などの油、及び天然又は合成起源の脂肪を含む)、ホスホグリセリド、スフィンゴリピド及びワックスのような脂質をベースとする物質、コラーゲン及びゼラチンなどのタンパク質をベースとする物質、シリコンをベースとする物質(不揮発性と揮発性の両方)、並びにマイクロスポンジ及び高分子物質などの炭化水素をベースとする物質、が挙げられる。
【0140】
組成物はさらに、安定化剤、懸濁化剤、乳化剤、粘度調節剤、ゲル化剤、保存剤、抗酸化剤、皮膚浸透増強剤、保湿剤及び徐放物質などの、適用される処方物の安定性又は効果を高めるのに適応させた、1つ以上の成分を含んでいてもよい。そのような成分の例は、Martindale - The Extra Pharmacopoeia (Pharmaceutical Press, London 1993)及びMartin (ed.), Remington's Pharmaceutical Sciencesに記載されている。処方物は、ヒドロ
キシメチルセルロースもしくはゼラチン-マイクロカプセルなどのマイクロカプセル、リポソーム、アルブミン小球体、マイクロエマルジョン、ナノ粒子又はナノカプセルを含んでいてもよい。
【0141】
局所用処方物は例えば、固体、ペースト、クリーム、フォーム(泡)、ローション、ゲル、粉末、水性液体、乳剤、スプレー及び皮膚パッチを含む、種々の物理的形態に製剤化することができる。このような形態の物理的な外観及び粘度は、その処方物に存在する乳化剤(複数可)及び粘度調節剤(複数可)の存在及び量によって規定され得る。固体剤は一般的には、硬質かつ非流動性であって、一般に棒状又はスティック状、あるいは粒子状の形態として処方される。固体剤は不透明又は透明であり得、溶媒、乳化剤、保湿剤、皮膚軟化剤、香料、染料/着色剤、保存剤及び最終産物の効力を増加又は増強させる、その他の有効成分を随意に含み得る。クリーム及びローションはしばしば互いに同様なものであり、主にそれらの粘度が異なる。ローションとクリームの両者は、不透明、半透明又は透明であってもよく、しばしば、乳化剤、溶媒、及び粘度調節剤、並びに保湿剤、皮膚軟化剤、香料、染料/着色剤、保存剤及び最終産物の効力を増加又は増強させる、その他の有効成分を含む。ゲルは濃い又は高粘度から薄い又は低粘度の範囲の粘度で調製され得る
。これらの処方物もまた、ローション及びクリームのそれと同様に、溶媒、乳化剤、保湿剤、皮膚軟化剤、香料、染料/着色剤、保存剤及び最終産物の効力を増加又は増強させる、その他の有効成分を含有していてもよい。液剤は、クリーム、ローション、又はゲルよりも薄く、しばしば乳化剤を含まない。液状の局所用製品はしばしば、溶媒、乳化剤、保湿剤、皮膚軟化剤、香料、染料/着色剤、保存剤及び最終産物の効力を増加又は増強させる、その他の有効成分を含有する。
【0142】
局所用処方物中での使用のための乳化剤としては、イオン性乳化剤、セテアリルアルコール、(ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ステアリン酸PEG-40、セテアレス-12、
セテアレス-20、セテアレス-30、セテアレスアルコール、ステアリン酸PEG-100及びステ
アリン酸グリセリルのような)非イオン性乳化剤が挙げられるが、これらに限定されない。適切な粘度調節剤としては、保護コロイド、又はヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、マグネシウムアルミニウムシリケート、シリカ、微結晶性ワックス、蜜蝋、パラフィン、及びパルミチン酸セチルなどの非イオン性のゴムが挙げられるが、これらに限定されない。ゲル組成物は、キトサン、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリクオタニウム(polyquaterniums)、ヒドロキシエチルセルロース(hydroxyethylceilulose)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボマー(carbomer)又はグリチルリチン酸アンモニウム(ammoniated glycyrrhizinate)などのゲル化剤の添加によって形成されてもよい。適切な界面活性剤としては、非イオン性、両性、イオン性及び陰イオン性界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、ジメチコンコポリオール(dimethicone copolyol)、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ラウラミドDEA、コ
カミドDEA、及びコカミドMEA、オレイルベタイン、コカミドプロピルホスファチジルPG-ジモニウムクロリド(PG-dimonium chloride)、並びにラウレス硫酸アンモニウムの1つ
以上が局所用処方物中で使用され得る。
【0143】
保存剤としては、メチルパラベン、プロピルパラベン、ソルビン酸、安息香酸及びホルムアルデヒドなどの抗菌薬、並びに物理的安定剤、及びビタミンE、アスコルビン酸ナトリウム/アスコルビン酸及び没食子酸プロピルなどの抗酸化剤、が挙げられるが、これらに限定されない。適切な保湿剤としては、乳酸及びその他のヒドロキシ酸及びそれらの塩、グリセリン、プロピレングリコール、並びにブチレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。適切な皮膚軟化剤としては、ラノリンアルコール、ラノリン、ラノリン誘導体、コレステロール、ワセリン、ネオペンタン酸イソステアリル及び鉱物油が挙げられる。適切な香料及び着色剤としては、FD&C赤色40号及びFD&C黄色5号が挙げられるが、これらに限定されない。局所用処方物に含まれ得るその他の適切な追加成分としては、研磨剤、吸収剤、固結防止剤、消泡剤、帯電防止剤、収れん剤(例えば、アメリカマンサクからの薬用エキス)、アルコール及びカモミールエキスなどのハーブエキス、結合剤/賦形剤、緩衝剤、キレート化剤、フィルム形成剤、品質改良剤、高圧ガス、不透明化剤、pH調節剤並びに保護剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0144】
局所用組成物の典型的な送達方法には、指を使用する塗布、布、ティッシュー、綿棒、スティック又はブラシなどの物理的な塗布具を用いる塗布、霧、エアロゾル又は泡のスプレーを含むスプレー、点滴器での投与、散布、浸漬、及びすすぎ、が含まれる。放出制御用ビヒクルもまた使用され得、組成物は、経皮投与のために処方されてもよい(例えば、経皮パッチとして)。
【0145】
医薬組成物は、スプレー、ミスト又はエアロゾルを含む吸入用処方物として処方されてもよい。これは特に、特定の炎症性疾患又は状態の治療のために好ましいかもしれない。吸入用処方物について、本明細書で提供される組成物又は組み合わせは、当業者に公知の任意の吸入方法を介して送達されてもよい。そのような吸入方法及び器具としては、CFC
又はHFAなどの高圧ガス、又は生理学的かつ環境的に許容される高圧ガスを用いる定量吸
入器が挙げられるが、これらに限定されない。その他の適切な装置は、呼吸操作吸入器(breath operated inhaler)、複数回投与(multidose)乾燥粉末吸入器及びエアロゾル噴霧器である。対象方法で使用するためのエアロゾル処方物は典型的には、高圧ガス、界面活性剤及び共溶媒を含み、適切な絞り弁によって閉じられる従来型のエアロゾル容器に充填され得る。
【0146】
吸入組成物は、噴霧及び経気管支用途に適切な有効成分を含有する液体又は粉末組成物、あるいは定量用量を分注するエアロゾルユニットを介して投与されるエアロゾル組成物を含み得る。適切な液体組成物は、水性の医薬上許容される吸入溶媒(例えば、等張の生理食塩水又は静菌水など)中に有効成分を含む。この溶液は、ポンプ又は圧迫によって駆動される噴霧スプレーディスペンサーを用いるか、あるいは必要な用量の液体組成物を患者の肺に吸入されるようにするか又はそれを可能にする任意の他の従来手段によって投与される。担体が液体で、例えば鼻腔用スプレーとして又は点鼻剤として投与するために適切な処方物は、有効成分の水性又は油性溶液を含む。
【0147】
医薬組成物はまた、直腸投与などのための坐剤の形態で調製されてもよい。このような組成物は、薬物を、常温では固体であるが、直腸温度では液体となり、そのため直腸内で融解して薬物を放出する適切な非刺激性の賦形剤と混合することによって調製され得る。適切な賦形剤としては、例えば、カカオバター及びポリエチレングリコールが挙げられる。
【0148】
医薬組成物は、投与後に調節剤の徐放をもたらすカプセルなどの徐放性処方物として処方されてもよい。このような処方物は一般に、周知の技術を用いて調製され得、例えば、経口、直腸もしくは皮下移植によって、又は目的の標的部位における移植によって投与され得る。そのような処方物内で使用される担体は、生体適合性があり、また生体分解性であってもよい。好ましくは、処方物は比較的一定レベルで調節剤を放出する。徐放用処方物中に含まれる調節剤の量は、例えば、移植部位、放出の速度及び期待される時間、並びに治療又は予防される状態の性質によって決まる。
【0149】
別の実施態様において、1つ以上の、上記の本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチ
ド及び/又は医薬組成物を含むキット又は製品が提供される。
【0150】
他の実施態様において、上記の治療用又は予防用の適用における使用のためのキットが提供され、キットは:
‐本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド又は医薬組成物を保持する容器;
‐使用のための指示が掲載された表示又は添付文書、を含む。
【0151】
一定の実施態様においては、キットは炎症性疾患又は状態の治療のための1つ以上のさ
らなる有効成分又は有効成分(active principles or ingredients)を含んでいてもよい。
【0152】
キット又は「製品」は、容器と、容器上又は容器に付随した表示又は添付文書を含み得る。適切な容器としては、例えば、ビン、バイアル、シリンジ、ブリスターパックなどが挙げられる。容器は、ガラス又はプラスチックなどの種々の物質から形成されていてもよい。容器は、状態を治療するために効果的な治療用組成物を保持し、無菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は静脈用溶液バッグ又は皮下注射針によって穴を開けることが可能なストッパーを有するバイアルであり得る)。表示又は添付文書は、治療用組成物が選択された状態を治療するために使用されることを示す。1つの実施態様において、表示
又は添付文書は、使用のための指示を含み、治療用又は予防用組成物が、本明細書中に記
載される炎症性疾患又は状態を治療するために使用され得ることを示す。
【0153】
キットは、(a)治療用又は予防用組成物;及び(b)第二の有効成分又は有効成分をそこに含む第二の容器、を含み得る。本発明のこの実施態様におけるキットはさらに、組成物及び他の有効成分が、本明細書中に記載された炎症性疾患又は状態から派生する障害を治療するか、又は合併症を予防するために使用され得ることを示す添付文書を含み得る。あるいは、又はさらに、キットは、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝食塩水、リンゲル液及びブドウ糖溶液などの医薬上許容されるバッファーを含む第二の(又は第三の)容器をさらに含み得る。それはさらに、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業的及び使用者の観点から所望される他の材を含んでいてもよい。
【0154】
特定の実施態様において、治療用組成物は、治療用組成物、予防用組成物又は医薬組成物を保持するための入れ物を含む、使い捨て又は再利用可能な器具の形態で提供され得る。1つの実施態様において、器具はシリンジである。器具は、1~2 mLの治療用組成物を保持してもよい。治療用又は予防用組成物は、器具中で使用準備済みの状態又はさらなる成分の混合もしくは追加が必要な状態で提供されてもよい。
【0155】
本発明のポリペプチド又は組成物は、例えば、ステントなどの、移植可能な物質及び器具のための抗炎症性コーティングとして使用されてもよい。本発明のポリペプチド又は組成物は、移植可能な物質もしくは器具上に、又は物質もしくは器具と一体となって、コーティングされ得る。本発明のポリペプチド又は組成物は、ポリマーコーティングの一部であってもよい。
【0156】
本明細書中に開示され、定義された発明は、本文又は図面に記述されるか又は本文又は図面から明らかである2つ以上の個々の特徴の全ての代替の組み合わせにまで及ぶことが
理解されるだろう。全てのこれらの異なる組み合わせは、本発明の種々の代替の局面を構成する。
【実施例】
【0157】
実施例1
クローニング及びタンパク質精製
コドン最適化IL-37(46-218)を、pGEX-4T-1の改変タバコエッチ病ウイルスプロテアーゼ-切断可能バージョン(GE Healthcare)(7)内へとクローニングした。組換えタンパク質を、18℃でのIPTG誘導によって、BL21-CodonPlus(DE3)-RIL細胞(Stratagene)中で
発現させた。GST-IL-37バリアントを発現する細胞を、2つの完全なEDTAフリープロテアーゼ阻害剤タブレット(Roche)で、20 mM Tris-HCl(pH 8.0)、500 mM NaCl、3 mM β-メルカプトエタノール中で、高圧キャヴィテーション(10~15 K psi)によって溶解した。細胞を遠心分離によって浄化し、0.45 μmの膜を通して濾過し、グルタチオンSepharose 4B樹脂(GE Healthcare)に1時間、4℃で結合させた。樹脂を、500 mlの20 mM Tris-HCl
(pH 8.0)、200 mM NaCl、及び3 mM β-メルカプトエタノールで洗浄した。タンパク質
をHis-TEVプロテアーゼと一晩4℃でインキュベートすることによって、GST-タグから切り離した。タンパク質をさらに、HiLoad Superdex75 16/60 prep-gradeカラム(GE Healthcare)上で、20 mM Hepes(pH 7.2)、100 mM NaCl、2 mM DTT、及び1 mM EDTA中で精製した。
【0158】
結晶化及び構造決定
IL-37の結晶を、1:1のドロップ比(drop ratio)での2.1 M 硫酸アンモニウム及び0.1 M 酢酸ナトリウム(pH 4.5)中のハンギングドロップ蒸気拡散法によって、20℃で育成させた。結晶を、20 %(v/v)のグリセロールを含む母液中で、液体窒素中でフラッシュ冷却した。X線データを、Australian SynchrotronのMX2ビームライン(微小焦点)で、1°
の振動で、0.9537Åの波長で収集した。データを、XDS及びCCP4スイート内の複数のプロ
グラム(8)を使用して、処理及びスケーリングした。MRage and Phaserを使用して、PHENIXにおけるサーチモデルとしてマウスIL-F5(PDBコード1MD6(9))を使用し、分子置換によって構造を解析した(10, 11)。構造は、自動的にPHENIX AutoBuild内に構築された(11)。Buster (12)を使用して、精密化の反復サイクルを実行し、COOT(13)を用い
て部分的に再構築し、18.22 %のR- 因子(21.74 %のRfree)及び優れた幾何学的形状を持つモデルを得た(表3)。構造は、Ramachandran外れ値を有さず、98.64 %の残基が好
ましい領域にあり、MolProbityの最終スコアは0.95(100番目の百分位数)であった(14
)。
【0159】
サイズ排除クロマトグラフィー及び多角度光散乱法(SEC-MALS)
SEC-MALS測定を、10 mM HEPES(pH 7.3)、100 mM NaCl、1 mM EDTA及び2 mM DTTで平
衡化したSuperdex75 10/300カラム(GE Healthcare)上で実行した。全ての実験を、上記のバッファー中、25 ℃で、0.4 mL/分の流量で行った。各ランについて、110 μLの量の
タンパク質を、6 mg/mLで注入した。2 mg/mlのウシ血清アルブミン(Thermo Scientific Pierce)の試験的注入を、較正の目的で使用した。SEC-MALSシステムは、Shimadzu DGU-20A5デガッサー、LC-20AD液体クロマトグラフ、SIL-20AHTオートサンプラー、CBM-20A通信バスモジュール、SPD-20A UV/VIS検出器及びCTO-20ACカラムオーブンから構成され、これはOptilab T-rEX屈折率検出器を備えたDAWN HELEO-II多角度光散乱検出器(Wyatt Technology)に連結されていた。モル質量を、18の異なる散乱角での散乱光の強度を測定することによって算出した。モル質量の算出は、Astra 6.1software(Wyatt Technology)を使用して行った。
【0160】
細胞培養及びトランスフェクション。
PBMC実験は、Monash Healthヒト研究倫理委員会(Human Research Ethics Committee)Bによって承認され、明確な同意書を全てのボランティアから(form)得て実施した。PBMCを、記載されたように、健常なボランティアの末梢静脈血から、密度勾配遠心法によっ
て単離した(15)。PBMCを、1% v/vヒト血清及び1:500 MycoZap PRを含有するRPMI培地
に播種し、次にビヒクル又はrec IL-37のいずれかで示されるとおりに30分間、前処理
し、次に50 pg/ml LPS、又は本明細書中に記載される濃度のHKLM、イミキモド、CpG-Aも
しくはssRNA40で、20時間刺激した。次に上清をサイトカイン解析に供した。THP-1細胞は、ATCCから調達された。それらは常に、抗生剤、抗真菌剤、及び抗マイクプラズマ剤を含有するMycoZap Plus-CL(Lonza)の存在下で培養した。
【0161】
THP 1細胞を天然のIL-37bタンパク質又は単量体D73Kバリアントをコードするコンスト
ラクトで、(16、1及び5)に記載のようにトランスフェクトした。簡単には、各IL 37bバリアントをGFP発現配列と構成的活性型のCMVプロモーターとを共にpIRESベクター中に挿
入し、IL 37bのC末端をFLAGにライゲーションした。細胞は、Amaxa Nucleofector Kit V
(THP 1)及びプログラムV001を使用してトランスフェクトし、次いで一晩回復させた。
トランスフェクションの20時間後、細胞を計数し、播種した。トランスフェクトされたTHP 1細胞を、50 ng/mlのPMAと24時間インキュベートすることによって、マクロファージへと分化させた。その後、培地を、ペニシリン/ストレプトマイシン及び1% ヒト血清を含むRPMIに変更し、刺激を加えた。図面の説明文に示されたインキュベーション期間の後、上清を回収し、解析まで-80℃で保管した。試料の回収及び解析は、盲検様式で行った。
【0162】
ELISA及びマルチプレックスELISA。
サイトカインを、従来のELISA(BD, elisakit.com)によって測定した。製造者によっ
て推奨されるように、両方のELISA法を実施した。
【0163】
統計解析。
データセット(生データ)を最初に、SigmaPlot 12.5(Systat Software Inc.)を使用して、正規性及び等分散性について検定した(棄却するためのP値 = 0.05)。その後、対応のない(unpaired)t-検定(両側, α=0.05)、Mann-Whitney順位和検定、一元配置ANOVA、又は順位に基づく一元配置ANOVAを含む適当な統計検定を適用した。
【0164】
動物実験。
マウスにかかわる全ての手順は、Monash Health 動物倫理委員会(Animal Ethics Committee)によって承認されていた。C57Bl/6野生型マウスに、40 μg/kgの組換えIL-37バリアント又はビヒクルの腹腔内注射を行い、60分後にLPS(10 mg/kg)の腹腔内注射を行っ
た。IL-37bについてトランスジェニックなホモ接合体マウス(1, 5)もまた、直接比較のためにLPS(10 mg/kg)又はビヒクルで処置した。室温及び湿度を継続的にモニターした
。(1)に記載のように、体温を測定した。LPS注射の24時間後、マウスに麻酔をかけ、ヘパリン処置したチューブ中への眼窩出血によって血漿を取得した。
【0165】
試薬
ヒトIL-1β(ベータ)ELISA: Cat#, 557953、ヒトIL-6 ELISA, Cat#: 555220、マウスIL-1β(ベータ)ELISA, Cat#: 559603(BD Biosciences, New Jersey, USA)、E.Coli由来のLPS 055:85, #L4005-100mg(Sigma, St Louis MO, USA)、CpG-A ODN 2216 Innaxon #INAX-200-005(Adipogen, Switzerland)、イミキモド VacciGrade #vac-img, HKLM #Tlrl-hklm,(Invivogen, San Diego, CA, USA)。
【0166】
実施例2
前駆体IL-37及び成熟IL-37は、溶液中でホモ二量体形成する
細菌から精製した前駆体IL-37(アイソフォームb、本明細書中ではIL-37という)のサ
イズ排除クロマトグラフィー(SEC)解析は、タンパク質が溶液中でホモ二量体を形成す
ることを示した(
図1A及び1B、左軸)。タンパク質がホモ二量体であることを確認するために、SECと組み合わされた多角度光散乱法(MALS)(
図1B、右軸)を実行した。前駆体IL-37(残基1~218)は、43.9 kDaの測定された分子量を有し、IL-37二量体の理論上の分
子量である48 kDaと整合していた。これらのデータは、ヒトPBMCにおける二量体IL-37(
~45 kDa)を検出した以前の研究及び組換えIL-37の超遠心による以前の研究(1, 2)と
相関する。
図1Bにおいて、IL-37(1-218)は9.8 mlで溶出し、IL-37(21-218)は10 mlで溶出し、IL-37(46-218)は11 mlで溶出し、IL-18(37-193)は12.6 mlで溶出する。
【0167】
前駆体から成熟形態へのN末端トランケーションが二量体形成を防ぐかどうかを検討す
るために、IL-37(残基21-218)及びIL-37(残基46-218)を細菌細胞から精製し、MALS解析を実行した(
図1A及び1B)。成熟IL-37(21-218)及びIL-37(46-218)はそれぞれ、溶液中でそれぞれ40.7 kDa及び37.3 kDaの分子量の二量体を形成した。IL-37と比較して、
成熟IL-18(残基37-193)は、17.3 kDaの測定された分子量を有し、単量体の構造と整合
していた(
図1B)(3)。
【0168】
IL-37ホモ二量体の結晶構造
IL-37二量体形成の分子的基盤を解明するために、成熟IL-37(残基46-218)をハンギングドロップ蒸気拡散法によって結晶化した。構造を、分子置換によって解析し、2.3Åの
分解能で精密化したところ、それぞれ18.22%及び21.74%のR
work/R
free及び優れた幾何学
的形状となった(表3)。非対称ユニットは、ヘッドトゥヘッド型の対称なホモ二量体を
形成するIL-37A及びIL-37Bと名付けられた2コピーのIL-37を含んでいる(
図1C)。我々の知る限りでは、IL-37サブユニットの、対称なホモ二量体へのこの配置は、今まで解析さ
れたIL-1ファミリーのサイトカインの構造の中で独特である。2つのサブユニットは、高
度な構造相同性を有し、142のCα原子上で0.70Åの二乗平均平方根偏差を示す。IL-37Aが最も完全なサブユニットであり、残基48-207を含み、最終的なマップから残基126のみを
欠いている。全体的に見て、IL-37Bは、より高いB-因子を有し、より不完全であり、残基49-206を含み、ループ領域から残基125-128、161、及び194-196を欠いている。βトレフ
ォイルフォールドの二次構造は、Lys58にて開始し、N-末端残基48-57の大部分は構造をとらず、残基46-48は電子密度を欠く。成熟IL-37の2つの可能性のある切断部位は、残基21
及び46と同定され、その構造に基づいて、それぞれは、切断後にIL-37のβトレフォイル
フォールドを維持することと矛盾しない。
【0169】
各IL-37サブユニットは、IL-1スーパーファミリーに特徴的なβトレフォイルフォール
ドを形成する、12のβストランド及び3つのαヘリックスから構成される(
図1C)。4つのβストランドの3つのシュードリピート(pseuodorepeat)が一緒にパッキングされ、各リピートからの2つのストランドが、6ストランドのβバレルに寄与し、残りの2つのストラ
ンドが、6ストランドのキャッピング領域に寄与している。逆平行のβバレルにおけるN末端及びC末端ストランドであるβ1とβ12との相互作用は、βトレフォイルフォールドを閉じる。3つのαヘリックスが、βトレフォイルフォールドの外側を装飾し、α1ヘリックス及びα2ヘリックスはストランドβ7とストランドβ8との間に位置し、短い3
10ヘリックスが、ストランドβ11の後に位置している。
【0170】
【0171】
IL-37ホモ二量体は、ヘッドトゥヘッドの、対称でかつ高度に組織化された界面を有す
る
対称なヘッドトゥヘッドIL-37二量体界面は、合計487Å
2の表面積を覆い隠し、各サブ
ユニットのβ3-β4ループ及び3ストランドのβシート(β2-β3-β11)によって形成されている(
図2A)。二量体界面は高度に組織化されているように見え、多数の鏡像的な相互作用が、各IL-37サブユニットのβ3-β4ループ間の中心に位置するC
2対称軸を横断して形
成されている。界面のコア内には、2つの主鎖水素結合が、各IL-37単量体からのTyr85とArg87との間で形成される(
図2B)。各サブユニットの部分的に疎水性であるTyr85側鎖は
、β2-β3-β11 βシートの表面に形成された疎水性ポケットに埋もれている。この界面
の疎水性コアは、溶媒に曝されている縁において、Lys83とAsp73との間のイオン性相互作用によって遮蔽されている。水素結合はまた、各分子のIle86の主鎖カルボニル基とArg87の側鎖によっても形成されており、β3-β4ループの界面をさらに強化している(
図2C)
。
【0172】
界面の分子レベルでの詳細を検証し、単量体IL-37を作出するために、IL-37二量体形成を妨害することを標的とした、数多くの構造情報に基づく突然変異を設計した。Asp73は
、界面内のLys83とイオン性相互作用を形成し、Asp73における電荷が変わる突然変異(D73K)は、界面を効率的に破壊して、IL-37単量体に相当する18.8 kDaの分子質量を得た(
図2D)。Tyr85は、疎水性コアに位置し、界面の大きな表面積の埋没に寄与し、アラニン
への突然変異(Y85A)はまた二量体界面を破壊し、SEC-MALSによって18.2 kDaと測定された分子量を得た(
図2D; IL-37 WTは11 mlで溶出し、IL-37 D73Aは11.6 ml溶出し、IL-37 D73Kは12.7 mlで溶出し、IL-37 Y85Aは12.6 mlで溶出する)。IL-37二量体界面の対称性
のために、各点突然変異は、界面における2つの相互作用部位を効率的に標的化し、さら
に二量体界面の破壊を促進した可能性がある。
【0173】
単量体-二量体界面における改変を評価するために、界面のコアに位置する5つのIL-37突然変異体が今回SEC-MALSによって試験されており(
図3; IL-37 D73A + K83Aは11.1 ml
で溶出し、IL-37 K83Eは11.6mlで溶出し、他の突然変異体及び野生型の溶出は、
図2Dに関して上に述べた)、アラニンへの突然変異(Y85A)は、IL-37を単量体へと変換する。Asp73は、界面の境界に位置し、Lys83とイオン性相互作用を形成する。Asp73のアラニンへの突然変異(D73A)は、二量体界面を部分的に破壊し、平衡状態を単量体へと移動させる。Asp73の電荷が変わる突然変異(D73K)は、おそらくLys83との電荷の反発によって、二量体界面を破壊する。Lys83の電荷が変わる突然変異(K83E)は、平衡状態を単量体へと移
動させたが、界面を破壊することにおいてD73Kほど効果的ではなかった。興味深いことに、界面を開閉するイオン性相互作用の完全な除去(D73A/K83A)は、平衡状態に対して、
軽微な影響のみを有するようである。これらの突然変異は、イオン性の開閉相互作用は、界面の形成には必要ではないことを示唆する。代わりに、埋もれたTyr85側鎖及びβ3-β4ループ領域の水素結合が、より重大な意味を持つ可能性がある。
【0174】
実施例3
IL-37単量体形成の機能的な関わりを評価するために、2つのアプローチを使用した。最初に、新鮮なヒトPBMCを、非常に低濃度でも自発的に二量体形成する天然タンパク質(野生型)、及びアミノ酸73のDからKへの突然変異によってこの二量体形成が防止されるバリアント、を含む異なる組換え(rec)IL-37バリアントで処置した。これらの両方のバリアントを、アミノ酸21及び46でN末端切断して試験した。
【0175】
これまでの研究から予想されたように、natIL-37(野生型recIL-37)は、LPS誘導IL-1
βタンパク質の中程度の減少をもたらした(natIL-37(21-218)によって~40%、natIL-37(46-218)によって~52%;
図5、左の群)。興味深いことに、10 ng/mlを超えてnatIL-37の濃度を増加させることで(例えば、100 ng/ml)、natIL-37の効果を強く減少させた
(
図5);実際に、3人のドナーにおいて、100 ng/mlのnatIL-37(46-218)は、炎症促進性の応答を誘導した(IL-1βにおいて、~36%の増加)。
【0176】
IL-37の単量体化は、これらの抗炎症性活性を顕著に上昇させた。monoIL-37(D73K)は、試験した全ての濃度において、LPS-処置PBMCからのIL-1β放出を遮断することにおいて、natIL-37よりも相当に効果的であった(
図5)。10 pg/mlでは、monoIL-37b(46-218)
は、IL-1βを59%減少させ、これはnatIL-37(46-218)に対して2倍近い改善であり、100
ng/mlでは、monoIL-37(46-218)はnatIL-37b(46-218)よりも5倍を超えて効果的であ
った。そのうえ、monoIL-37bは、その抗炎症活性を、より高い濃度で保持していた;した
がって、二量体形成は、そのような濃度でIL-37活性を低下させることに寄与しているか
、又はそれどころか、100 ng/ml での21-218バリアントの場合のように、炎症促進性活性へと変換している可能性がある(natIL-37によってIL-1βにおける26%の増加と比較して、monoIL-37bによってIL-1βにおける21%の減少)。monoIL-37(46-218)について、濃
度範囲をさらに拡張し、1 pg/mlにおいて(IL-1βにおける52%の減少)、また1μg/mlにおいても消炎を観察した。そのうえ抗炎症性機能の低下は、natIL-37の濃度よりも10倍高い濃度(1μg/ml)において起こった。注目すべきことに、濃度範囲の下端である1 pg/mlにおいて、単量体46-218 recIL-37bは、依然として10 pg/mlの天然の二量体recIL-37よりも1.6倍活性が高かった(
図5)。N末端トランケーションはまた、IL-37機能に影響を与えた:天然及びD73K突然変異体の両方を、それらのカウンターパートと比較すると、46-218
バリアントは、IL-1β産生を遮断することにおいて、21-218バリアントよりも相当に効果的であった(
図5、第1群対第3群及び第2群対第4群;群は、左から右に向かって1~4と名付けた)。
【0177】
IL-37の細胞内作用機構を考慮に入れるために、IL 37単量体化が、その、THP-1マクロ
ファージ内へとトランスフェクトすることによる抗炎症性効力に対して与える影響を評価した。したがって、二量体天然IL-37b(natIL-37)の抗炎症活性と突然変異体単量体IL-37b(D73K、monoIL-37)の抗炎症活性との最初の比較を、THP-1マクロファージにおいて行った(
図6)。全長natIL-37のトランスフェクションは、LPS-誘導IL-1βタンパク質存在
量を、コントロールのトランスフェクションと比較して、71%減少させた(271 pg/mlか
ら80 pg/mlへ)。monoIL-37の抗炎症活性は、2.7倍強力であり、IL-1βを89%減少させた(271 pg/mlから30 pg/mlへ)。natIL-37と異なり、monoIL-37はまた、ビヒクルで処置した培養物においてもIL-1βを減少させた。これらのデータは、 monoIL-37の抗炎症活性は、二量体natIL-37の抗炎症活性よりも大きく、かつIL-37の生理活性のためには二量体形
成は必要ではないことを実証する。
【0178】
PMBC及びTHP-1培養物の上清におけるTNFのタンパク質存在量もまた評価し、IL-1βよりはいくらか低い効力ではあるが、IL-37はまたこの炎症促進性サイトカインも遮断するこ
とが明らかになった(データは示さず)。
【0179】
実施例4
内毒素ショックのIn vivoモデル
これらの知見に、in vivoの観点を追加するために、内毒素ショックのマウスモデルを
利用した。C57Bl/6野生型マウスに、組換えIL-37バリアント(40μg/kg)又はビヒクルの腹腔内注射を行い、次いで腹腔内へのLPS注射を行った。直接比較のために、IL-37についてトランスジェニックなマウスもまた、LPS又はビヒクルで処置した。各IL-37バリアントが、内毒素ショックを改善した(低体温及び血漿IL-1βを減少させた、
図7及び8)一方で、両方の単量体IL-37タンパク質の抗炎症活性は、それらの二量体natIL-37カウンターパ
ートの抗炎症活性よりも大きかった。注目すべきことに、monoIL-37(46-218)によって
提供された保護作用は、IL-37トランスジーンによって付与された保護作用とほぼ等しく
強力であった。実際、monoIL-37(46-218)群における体温及び血漿IL-1βと、LPSを与えられなかったマウスにおける体温及び血漿IL-1βとの間の差は、極小であった。
【0180】
実施例5
位置85におけるチロシンからアラニンへの突然変異は、IL-37二量体界面を破壊するた
めの(D73K突然変異に加えて)別のアプローチである。各サブユニットの位置85における部分的に疎水性のチロシン残基は、二量体界面によって形成される疎水性ポケット中に埋
もれている。この残基をアラニンへと変異させることは、これらの相互作用を有意に減少させ、二量体界面を破壊する。したがって、recIL-37 Y85Aは、ホモ二量体を形成するこ
とができない。単量体IL-37が、二量体IL-37bよりも大きな生物学的活性を保有するとい
う概念と一致して、recIL-37 Y85Aの抗炎症効果は、recIL-37 D73Kと比較して増加しており、特に、in vitroではTLR2アゴニストである加熱処理リステリア菌(heat-killed listeria monocytogenes)で刺激されたPBMCにおいて(HKLM、
図9)、またin vivoではTLR4アゴニストであるLPSを注射されたマウスにおいて(
図7)、天然recIL-37bと比較して、増
加していた。しかしながら、TLR7及びTLR9のリガンドであるイミキモド及びCpG-Aでそれ
ぞれ刺激されたPBMCにおいて、recIL-37 D73KとY85Aとの生物学的活性の間には小さな差
しかなかった。
【0181】
全体的に見て、Y85Aバリアントに関するデータは、細胞外処置として使用される場合、IL-37の単量体対二量体の平衡状態を単量体側へと移動させることで、IL-37の抗炎症特性が増大される、という概念を支持している。
【0182】
実施例6
LPS以外のTLRアゴニストによって誘導される炎症に対するrecIL-37及び単量体バリアントの影響
IL-37は、広範囲の炎症性攻撃によって起こる炎症の強力な緩衝材として作用する。In vitroでは、発明者らは、LPSに加えて、そのような攻撃には、TLR1アゴニストPam
3CSK
4(Nold et al, Nat Immunol 2010中の
図1)、IL-1β(Nold et al, Nat Immunol 2010中の
図3及び4)、LPS+IL-12、TNF及びIL-12+IL-18(Nold et al, Nat Immunol 2010中の
図7及びNold-Petry et al, Nat Immunol 2015中の
図4)が含まれることを示してきた。そのう
え、IL-37は、多数の疾患の動物モデルにおいて防御効果を発揮する;内毒素ショックの
モデルに加えて、これらにはDSS大腸炎、道化師様魚鱗癬、接触過敏症等が含まれる。
【0183】
幅広い炎症性トリガーに対するそのような活性はしたがって、IL-37が、感冒から乾癬
、心筋梗塞、脳卒中及び多くの他の疾患までにわたる同等に広範囲の疾患における炎症を改善することにおいて効果的であるだろうことが期待されるために、非常に適切な解釈である。
【0184】
しかしながら、Nold et al, Nat Immunol 2010及びNold-Petry et al, Nat Immunol 2015中に記載されるデータは、IL-37を発現するようにトランスフェクトされた細胞又はIL-37についてトランスジェニックなマウス系統のいずれかを使用して生み出された。IL-37
は、細胞内及び細胞外シグナル伝達経路を含む二重の作用機構を持つため、細胞外の、IL-37受容体媒介経路を通してほぼ排他的に作用する可能性があるrecIL-37での処置は、LPSによって起こる炎症の遮断のみではなく、他の炎症性薬剤によって起こる炎症の遮断においても、同等に効果的であることを証明することが重要である。本明細書中に記載されるデータは、これがまさに事実であることを示す。
【0185】
TLR2アゴニストHKLMで刺激されたヒトPBMCにおいて、recIL-37は、IL-1βにおける~51%の減少及びIL-6タンパク質存在量における~36%の減少をもたらした(
図9)。炎症促
進性サイトカインの存在量はまた、以下で処置した培養物においてより低かった:TLR7リガンドイミキモド+recIL-37b(~36%少ないIL-1β、
図10)、TLR9アゴニストCpG-A+recIL-37b(~30%少ないIL-6、
図11)、及びTLR8のリガンドssRNA40(~49%少ないIL-1β、
図12)。
【0186】
さらに、本明細書中のデータは、単量体recIL-37の抗炎症効果は、ホモ二量体を形成することができるrecIL-37の抗炎症効果よりも大きいことを強く示唆する。
図5は、TLR4リ
ガンドであるLPSで刺激されたPBMCにおいて、単量体D73Kバリアントが、その天然の二量
体カウンターパートよりも、大部分の濃度において有意に活性が高いことを示す。TLR2及び7、8及び9のリガンドで刺激されたPBMCにおいては、同様の所見がみられる:Y85Aバリアントは、天然のrecIL-37よりも、HKLM-(TLR 2リガンド)及びイミキモド(TLR 7リガン
ド)によって誘導されるIL-1β又はIL-6を遮断することにおいて、有意に活性が高かった(それぞれ、
図9及び10)。そのうえ、D73K及びY85Aの両方によってもたらされたIL-1β
及びIL-6の阻害は、イミキモド刺激培養物及びCpG-A(TLR 9リガンド)刺激培養物において有意であった一方で、natIL-37bによってもたらされた阻害は有意ではなかった(それ
ぞれ、
図10及び11)。2人のドナーのみが検討されたため、TLR8のリガンドであるssRNA40についての統計解析はできなかったものの、試験された各濃度において、natIL-37よりもD73KはIL-1βを遮断することにおいて顕著に強力であった(
図12)。
【0187】
IL-37の単量体バリアントは、広範囲の炎症性刺激によって引き起こされる幅広い疾患
における炎症を遮断する薬物の有効成分として、臨床的に有効であるだろう。
【0188】
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