(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】評価システム及び評価方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20230704BHJP
【FI】
G01N21/64 Z
(21)【出願番号】P 2019001457
(22)【出願日】2019-01-08
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】510241915
【氏名又は名称】エバ・ジャパン 株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】野呂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】高良 洋平
(72)【発明者】
【氏名】安藤 史識
(72)【発明者】
【氏名】藤森 雄大
【審査官】柳澤 朱香
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-185757(JP,A)
【文献】特開2014-057972(JP,A)
【文献】特開2010-151632(JP,A)
【文献】特開2000-230903(JP,A)
【文献】特開2018-146578(JP,A)
【文献】特開2005-283273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査領域における検出対象物を評価する評価システムであって、
1次元の波長情報を有する分光データを取得する取得手段と、
上記分光データに基づいて算出値を算出する算出手段と、
上記算出値に基づいて上記検査領域における検出対象物を評価する評価手段とを備え、
上記検出対象物は、励起光の照射によって発光する任意の第1蛍光成分を含み、
上記取得手段は、
上記検査領域に被覆される被覆材の分光データである第1分光データと、
上記検査領域の分光データである第2分光データと、
励起光が照射された上記被覆材の分光データである第3分光データと、
励起光が照射された上記検査領域の分光データである第4分光データと、を取得し、
上記算出手段は、上記第1分光データと、上記第2分光データと、上記第3分光データと、上記第4分光データと、に基づいて上記算出値を算出すること
を特徴とする評価システム。
【請求項2】
上記被覆材は、励起光の照射によって発光する任意の第2蛍光成分を含むこと
を特徴とする請求項1記載の評価システム。
【請求項3】
検査領域における検出対象物を評価する評価システムであって、
1次元の波長情報を有する分光データを取得する取得手段と、
上記分光データに基づいて算出値を算出する算出手段と、
上記算出値に基づいて上記検査領域における検出対象物を評価する評価手段とを備え、
上記検出対象物は、励起光の照射によって発光する任意の第1蛍光成分を含み、
上記取得手段は、
上記検査領域の分光データである第2分光データと、
励起光が照射された上記検査領域に被覆される被覆材の分光データである第3分光データと、
励起光が照射された上記検査領域の分光データである第4分光データと、を取得し、
上記算出手段は、上記第2分光データと、上記第3分光データと、上記第4分光データと、に基づいて上記算出値を算出すること
を特徴とする評価システム。
【請求項4】
上記検査領域は、凹凸状の第2凹凸部が形成され、
上記被覆材は、上記第2凹凸部に嵌め込まれる第1凹凸部が形成されること
を特徴とする
請求項1~3の何れか1項に記載の評価システム。
【請求項5】
上記分光データを作成する分光データ作成手段を更に備え、
上記取得手段は、上記分光データ作成手段により作成された上記分光データを取得すること
を特徴とする請求項1~4の何れか1項
に記載の評価システム。
【請求項6】
検査領域における検出対象物を評価する評価方法であって、
1次元の波長情報を有する分光データを取得する取得ステップと、
上記分光データに基づいて算出値を算出する算出ステップと、
上記算出値に基づいて上記検査領域における検出対象物を評価する評価ステップとを備え、
上記検出対象物は、励起光の照射によって発光する任意の第1蛍光成分を含み、
上記取得ステップでは、
上記検査領域に被覆される被覆材の分光データである第1分光データと、
上記検査領域の分光データである第2分光データと、
励起光が照射された上記被覆材の分光データである第3分光データと、
励起光が照射された上記検査領域の分光データである第4分光データと、を取得し、
上記算出ステップでは、上記第1分光データと、上記第2分光データと、上記第3分光データと、上記第4分光データと、に基づいて上記算出値を算出すること
を特徴とする評価方法。
【請求項7】
検査領域における検出対象物を評価する評価方法であって、
1次元の波長情報を有する分光データを取得する取得ステップと、
上記分光データに基づいて算出値を算出する算出ステップと、
上記算出値に基づいて上記検査領域における検出対象物を評価する評価ステップとを備え、
上記検出対象物は、励起光の照射によって発光する任意の第1蛍光成分を含み、
上記取得ステップでは、
上記検査領域の分光データである第2分光データと、
励起光が照射された上記検査領域に被覆される被覆材の分光データである第3分光データと、
励起光が照射された上記検査領域の分光データである第4分光データと、を取得し、
上記算出ステップでは、上記第2分光データと、上記第3分光データと、上記第4分光
データと、に基づいて上記算出値を算出すること
を特徴とする評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、評価システム及び評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1には、蛍光強度を利用して塗布面におけるダイカスト用離型剤の評価方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の付着評価方法は、塗布面の特定領域について蛍光強度を連続的に測定して強度分布を得る。このため、特許文献1の付着評価方法は、蛍光灯や太陽光等の外乱光の影響のない場所において蛍光剤の蛍光強度から離型剤の付着状態を評価できる。しかしながら、特許文献1の付着評価方法は、外乱光の影響を考慮することができないため、外乱光下において離型剤を検出することができない。このため、離型剤を高精度で評価することができないという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、外乱光下であっても検出対象物を高精度で評価することが可能となる評価システム及び評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る評価システムは、検査領域における検出対象物を評価する評価システムであって、1次元の波長情報を有する分光データを取得する取得手段と、上記分光データに基づいて算出値を算出する算出手段と、上記算出値に基づいて上記検査領域における検出対象物を評価する評価手段とを備え、上記検出対象物は、励起光の照射によって発光する任意の第1蛍光成分を含み、上記取得手段は、上記検査領域に被覆される被覆材の分光データである第1分光データと、上記検査領域の分光データである第2分光データと、励起光が照射された上記被覆材の分光データである第3分光データと、励起光が照射された上記検査領域の分光データである第4分光データと、を取得し、上記算出手段は、上記第1分光データと、上記第2分光データと、上記第3分光データと、上記第4分光データと、に基づいて上記算出値を算出することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る評価システムは、検査領域における検出対象物を評価する評価システムであって、1次元の波長情報を有する分光データを取得する取得手段と、上記分光データに基づいて算出値を算出する算出手段と、上記算出値に基づいて上記検査領域における検出対象物を評価する評価手段とを備え、上記検出対象物は、励起光の照射によって発光する任意の第1蛍光成分を含み、上記取得手段は、上記検査領域の分光データである第2分光データと、励起光が照射された上記検査領域に被覆される被覆材の分光データである第3分光データと、励起光が照射された上記検査領域の分光データである第4分光データと、を取得し、上記算出手段は、上記第2分光データと、上記第3分光データと、上記第4分光データと、に基づいて上記算出値を算出することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る評価方法は、検査領域における検出対象物を評価する評価方法であって、1次元の波長情報を有する分光データを取得する取得ステップと、上記分光データに基づいて算出値を算出する算出ステップと、上記算出値に基づいて上記検査領域における検出対象物を評価する評価ステップとを備え、上記検出対象物は、励起光の照射によって発光する任意の第1蛍光成分を含み、上記取得ステップでは、上記検査領域に被覆される被覆材の分光データである第1分光データと、上記検査領域の分光データである第2分光データと、励起光が照射された上記被覆材の分光データである第3分光データと、励起光が照射された上記検査領域の分光データである第4分光データと、を更に取得し、上記算出ステップでは、上記第1分光データと、上記第2分光データと、上記第3分光データと、上記第4分光データと、に基づいて上記算出値を算出することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る評価方法は、検査領域における検出対象物を評価する評価方法であって、1次元の波長情報を有する分光データを取得する取得ステップと、上記分光データに基づいて算出値を算出する算出ステップと、上記算出値に基づいて上記検査領域における検出対象物を評価する評価ステップとを備え、上記検出対象物は、励起光の照射によって発光する任意の第1蛍光成分を含み、上記取得ステップでは、上記検査領域の分光データである第2分光データと、励起光が照射された上記検査領域に被覆される被覆材の分光データである第3分光データと、励起光が照射された上記検査領域の分光データである第4分光データと、を取得し、上記算出ステップでは、上記第2分光データと、上記第3分光データと、上記第4分光データと、に基づいて上記算出値を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、検出対象物は、励起光の照射によって発光する任意の第1蛍光成分を含み、取得部は、第1分光データと、第2分光データと、第3分光データと、第4分光データと、を取得し、算出部は、第1分光データと、第2分光データと、第3分光データと、第4分光データと、に基づいて算出値を算出する。これにより、検出対象物に含まれる第1蛍光成分の発光から検出対象物を高精度に検出することができる。このため、外乱光下であっても検査領域における検出対象物を高精度で評価することが可能となる。
【0014】
また、本発明によれば、算出部は、第2分光データと、第3分光データと、第4分光データに基づいて、算出値を算出する。これにより、外乱光の影響を除去するとともに、検出対象物に含まれる蛍光成分の発光から検出対象物を高精度に検出することができる。このため、外乱光下であっても検査領域3における検出対象物を高精度で評価することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明を適用した評価システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図2】スペクトル撮像装置の構成例を示す図である。
【
図3】スペクトル撮像装置における制御部の詳細な構成を説明するための図である。
【
図5】(a)は、第1分光データを作成する手順を説明するための図であり、(b)は、第3分光データを作成する手順を説明するための図である。
【
図6】(a)は、第2分光データを作成する手順を説明するための図であり、(b)は、第4分光データを作成する手順を説明するための図である。
【
図8】本発明を適用した評価方法のフローを示す図である。
【
図9】(a)は、第1分光データを作成する手順を説明するための図であり、(b)は、第2分光データを作成する手順を説明するための図である。
【
図10】スペクトル撮像装置の他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を適用した評価システムを実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
本発明を適用した評価システム1は、検査領域における検出対象物の付着量や含有量等を定量的に評価するために用いられる。検査領域は、例えば、検査の対象となる領域であり、例えば、金型、タイヤ等の所定の形状の部材である。検出対象物は、例えば、切削油等の油剤等である。検出対象物には、励起光照射によって発光する蛍光成分が含まれていてもよい。この蛍光成分は、検出対象物に添加される蛍光剤であってもよい。
【0018】
<第1実施形態>
図1は、実施形態に係る評価システム1の全体構成を示すブロック図である。評価システム1は、評価装置2と、スペクトル撮像装置4と、励起光照射部6と、を備える。本発明を適用した評価システム1は、外乱光の影響下にある明るい工場等の屋内環境に設置される。なお、評価システム1は、屋外環境に設置されてもよい。
【0019】
<励起光照射部6>
励起光照射部6は、例えば、紫外線を照射する紫外線照射装置が用いられ、300nm以上400nm以下の紫外線、好ましくは365nmの波長を含む紫外線を照射する光源である。励起光照射部6は、蛍光成分が発光できる励起光が照射されるものであれば、如何なる波長で照射されるものであってもよい。
【0020】
<スペクトル撮像装置4>
図2は、スペクトル撮像装置4の構成例を示している。スペクトル撮像装置4は、カラーフィルタを交換する方式のいわゆるマルチスペクトルカメラや、プリズムを用いた方式のいわゆるハイパースペクトルカメラで構成されている。スペクトル撮像装置4は、例えば、200nm以上13μm以下の波長範囲において任意の計測波長範囲を設定することができ、0.1nm以上100nm以下の波長分解能とされている。
【0021】
スペクトル撮像装置4は、例えば、撮像対象が自ら発する光や被写体から発せられ、或いは反射又は透過する光、すなわち被写体からの撮像光Lを取り込む対物レンズ41と、XYZからなる3軸の直交座標系におけるY軸方向に移動する精密直動ステージ42と、対物レンズ41の像面においてZ軸方向に設けられたスリット開口部43aを配設するためのスリット板43と、スリット開口部43aを通過した光束を平行光とするコリメートレンズ44と、コリメートレンズ44からの平行光を分光させる分光部45と、分光部45から出射された光束を取り込む結像レンズ46と、結像レンズ46の像面上に設けられた受光部47と、精密直動ステージ42および受光部47を制御し、各種処理を行う制御部48とを備えている。なお、このスペクトル撮像装置4は、特開2015-166682号公報の開示技術を用いるようにしてもよい。
【0022】
精密直動ステージ42は、例えば、制御部48による制御の下でスリット板43、コリメートレンズ44、分光部45、結像レンズ46、受光部47を一体的にY軸方向に向けて稼働させる。
【0023】
分光部45は、例えば、回折格子、プリズム等の分散光学素子により具現化される。分光部45は、コリメートレンズ44を通過してくる光束を波長毎の成分に分光させる機能を有している。
【0024】
受光部47は、例えばCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等の任意数の撮像素子により構成される。この受光部47は、撮像面に結像された光を光電変換により電気信号へと変換する。そして、受光部47により変換された電気信号は、制御部48に送信される。仮に赤外領域、近赤外領域、紫外領域の光を受光するのであれば、それに適した受光部47を配設することになる。
【0025】
図3は、制御部48の更なる詳細な構成を示している。制御部48は、受光部47により電気信号を取得するタイミングを制御する撮影制御部481と、精密直動ステージ42のY軸方向における移動方向、移動量、移動タイミングを制御する移動制御部482と、受光部47からの電気信号に基づいて分光データを作成する分光データ作成部483と、分光データ作成部483により作成された分光データに基づいて、算出値を算出する算出部484と、分光データを取得する取得部485を備える。なお、この制御部48の一部の構成要素又は全て要素については、独立したパーソナルコンピュータ(PC)内に実装されるものであってもよい。
【0026】
分光データ作成部483は、受光部47から送信されてきた電気信号に基づいて、被写体の撮像領域における2次元の空間情報毎に1次元の波長情報を有する分光データを作成する。
【0027】
詳細には、分光データ作成部483は、先ず所定の位置に固定された精密直動ステージ42に設置された受光部47からの電気信号に基づいて、第3方向Zの座標軸上の1点に対応する1次元の空間情報毎に、波長情報を有する2次元の分光データを作成し、これを記憶する。そして、精密直動ステージ42を第2方向Yに所定の移動量だけ稼働させた上で、再度受光部47からの電気信号に基づいて、第3方向Zの座標軸上の1点に対応する1次元の空間情報毎に、波長情報を有する2次元の分光データを作成し、これを記憶する。これらの処理を繰り返し実行し、全ての撮像領域の撮像が終了する。これにより、分光データ作成部483は、第2方向Y及び第3方向Zのそれぞれの座標軸上の一点に対応する2次元の空間情報毎に、1次元の波長情報を有する3次元分光データを作成する。
【0028】
分光データ作成部483は、作成した3次元分光データを用いて、波長毎の分光画像を生成してもよい。
図4は、作成した3次元分光データを用いて、波長毎に生成した分光画像を示す図である。
図4に示すように、何れかの波長の分光画像には、当該波長成分の第2方向Yと、第3方向Zの座標軸上におけるスペクトル強度の分布状況が映し出される。
【0029】
なお、分光データ作成部483は、1次元の波長情報のみを有する分光データを作成してもよい。
【0030】
分光データ作成部483は、第1分光データと、第2分光データと、第3分光データと、第4分光データと、を作成する。
【0031】
第1分光データを作成する際には、
図5(a)に示すように、スペクトル撮像装置4は、外乱光下において、検査領域3に被覆された被覆材7を被写体として撮像する。このとき、励起光照射部6は、励起光を照射していないこととなる。分光データ作成部483は、外乱光下における被覆材7を被写体としたときの分光データを第2分光データとして作成する。第1分光データは、撮像領域における2次元の空間情報毎に1次元の波長情報を有する。
【0032】
第3分光データを作成する際には、
図5(b)に示すように、スペクトル撮像装置4は、外乱光下において励起光照射部6により励起光が照射された被覆材7を被写体として撮像する。分光データ作成部483は、外乱光において励起光が照射された被覆材7を被写体としたときの分光データを第3分光データとして作成する。第3分光データは、撮像領域における2次元の空間情報毎に1次元の波長情報を有する。後述する被覆材7に励起光照射によって発光する蛍光成分が含まれる場合には、この蛍光成分が励起光照射によって発光する。
【0033】
第2分光データを作成する際には、
図6(a)に示すように、スペクトル撮像装置4は、外乱光下において検査領域3を被写体として撮像する。このとき、励起光照射部6は、励起光を照射していないこととなる。分光データ作成部483は、外乱光下における検査領域3を被写体としたときの分光データを第2分光データとして作成する。第2分光データは、撮像領域における2次元の空間情報毎に1次元の波長情報を有する。
【0034】
第4分光データを作成する際には、
図6(b)に示すように、スペクトル撮像装置4は、外乱光下において、励起光照射部6により励起光が照射された検査領域3を被写体として撮像する。分光データ作成部483は、外乱光下において励起光が照射された検査領域3を被写体としたときの分光データを第4分光データとして作成する。第4分光データは、撮像領域における2次元の空間情報毎に1次元の波長情報を有する。検出対象物に励起光照射によって発光する蛍光成分が含まれる場合には、この蛍光成分が励起光照射によって発光する。
【0035】
被覆材7は、検査領域3に対して着脱自在であり、板材、型枠材、紙、布、金型等の部材や液剤、粉材等が用いられる。被覆材7は、如何なる色に着色されていてもよいが、白色であることが好ましい。被覆材7が白色であることにより、被覆材7の反射率が高くなるため、被覆材7をより高精度に検出することができる。
【0036】
被覆材7には、励起光照射によって発光する任意の蛍光成分が含まれる。被覆材7は、所定の厚みを有し、少なくともスペクトル撮像装置4により撮像される撮像領域全体を被覆するものとなる。被覆材7は、検査領域3全体を被覆するものであってもよい。
図7に示すように、検査領域3に凹凸状の第2凹凸部31が形成されている場合、被覆材7は、第2凹凸部31に嵌め込まれる第1凹凸部71が形成されてもよい。
【0037】
取得部485は、分光データを取得する。取得部485は、算出部484により算出値を算出する前に、第1分光データと、第2分光データと、第3分光データと、第4分光データと、を取得する。
【0038】
算出部484は、第1分光データと、第2分光データと、第3分光データと、第4分光データと、に基づいて、算出値Sを算出する。ここで、第1分光データと、第2分光データと、第3分光データと、第4分光データとは、同一の波長λを含む波長情報を有している。このとき、例えば、第1分光データにおける波長λの第1スペクトル強度I1とし、第2分光データにおける波長λの第2スペクトル強度I2とし、第3分光データにおける波長λの第3スペクトル強度I3とし、第4分光データにおける波長λの第4スペクトル強度I4とする。このとき、算出部484は、算出値Sを以下の数式(1)により算出してもよい。
【0039】
【0040】
このようにして、算出部484は、第1分光データと、第2分光データと、第3分光データと、第4分光データと、に基づいて、算出値Sを算出する。
【0041】
なお、第1分光データと第3分光データとは、第1波長を含む波長情報を有し、第2分光データと第4分光データとは、第1波長とは異なる第2波長を含む波長情報を有していてもよい。例えば、第1分光データにおける第1波長λ1の第1スペクトル強度I1とし、第2分光データにおける第2波長λ2の第2スペクトル強度I2とし、第3分光データにおける第1波長λ1の第3スペクトル強度I3とし、第4分光データにおける第2波長λ4の第4スペクトル強度I4とする。このときであっても、算出部484は、算出値Sを上記の数式(1)により算出してもよい。
【0042】
このように、少なくとも、第1分光データと第3分光データとは、同一の波長を含む波長情報を有し、かつ、第2分光データと第4分光データとは、同一の波長を含む波長情報を有していればよい。
【0043】
また、撮像領域における2次元の空間情報毎に波長情報を有する分光データを作成した場合には、算出部484は、2次元の空間情報毎に算出値を算出してもよい。
【0044】
算出部484は、暗電流に起因するノイズ除去、画素間感度偏差補正処理、輝度校正処理、空間内の光源光の照明ムラの補正等を行ってもよい。
【0045】
算出部484は、2次元の空間情報毎に算出された算出値を、解析画像として生成してもよい。算出部484は、生成した解析画像を所定の表示方法により表示するための処理を行ってもよい。算出部484は、解析画像を評価装置2に送信する。送信された解析画像は、表示部23に描画される。なお、算出部484は、波長毎の分光画像に基づいて、解析画像を生成してもよい。
【0046】
<評価装置2>
評価装置2は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)等を始めとした電子機器で構成されているが、PC以外に、携帯電話、スマートフォン、タブレット型端末、ウェアラブル端末等、他のあらゆる電子機器で具現化されるものであってもよい。
【0047】
評価装置2は、
図4に示すように評価装置2全体を制御するための制御部24と、操作ボタンやキーボード等を介して各種制御用の指令を入力するための操作部25と、有線通信又は無線通信を行うための通信部26と、実際の評価を行う評価部27と、ハードディスク等に代表され、実行すべき検索を行うためのプログラムを格納するための記憶部28とが内部バス21にそれぞれ接続されている。さらに、この内部バス21には、実際に情報を表示するモニタとしての表示部23が接続されている。
【0048】
制御部24は、内部バス21を介して制御信号を送信することにより、評価装置2内に実装された各構成要素を制御するためのいわゆる中央制御ユニットである。また、この制御部24は、操作部25を介した操作に応じて各種制御用の指令を内部バス21を介して伝達する。
【0049】
操作部25は、キーボードやタッチパネルにより具現化され、プログラムを実行するための実行命令がユーザから入力される。この操作部25は、上記実行命令がユーザから入力された場合には、これを制御部24に通知する。この通知を受けた制御部24は、評価部27を始め、各構成要素と協調させて所望の処理動作を実行していくこととなる。
【0050】
評価部27は、算出部484により算出された算出値に基づいて、検査領域における検出対象物を評価する。評価部27は、検出対象物を2次元の空間情報毎に評価してもよい。
【0051】
表示部23は、制御部24による制御に基づいて表示画像を作り出すグラフィックコントローラにより構成されている。この表示部23は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)等によって実現される。
【0052】
記憶部28は、ハードディスクで構成される場合において、制御部24による制御に基づき、各アドレスに対して所定の情報が書き込まれるとともに、必要に応じてこれが読み出される。また、この記憶部28には、本発明を実行するためのプログラムが格納されている。このプログラムは制御部24により読み出されて実行されることになる。更にこの記憶部28には、判別対象を検知するためのアルゴリズムに関する情報も記憶されている。記憶部28には、分光データ作成部483により作成された分光データが記憶される。
【0053】
次に、本発明を適用した評価方法の一例を説明する。
図8は、本発明を適用した評価方法のフローを示す図である。本発明を適用した評価方法は、分光データ作成ステップS11と、取得ステップS12と、算出ステップS13と、評価ステップS14とを備える。以下、検出対象物に、励起光の照射によって発光する任意の蛍光成分(以下、第1蛍光成分ともいう)が含まれるとともに、被覆材7に、励起光の照射によって発光する任意の蛍光成分(以下、第2蛍光成分ともいう)が含まれる場合について、説明する。第2蛍光成分は、被覆材に添加される蛍光剤であってもよい。なお、第1蛍光成分と第2蛍光成分とは、同種のものであってもよいし、異種のものであってもよい。
【0054】
分光データ作成ステップS11では、分光データ作成部483は、1次元の波長情報を有する分光データを作成する。分光データ作成部483は、第1分光データと、第2分光データと、第3分光データと、第4分光データと、を作成する。
【0055】
分光データ作成部483は、先ず、第1分光データを作成する。第1分光データを作成する際には、
図5(a)に示すように、検査領域3に被覆材7を被覆する。そして、スペクトル撮像装置4は、外乱光下において被覆材7を被写体として撮像する。このとき、励起光照射部6は、励起光を照射していないこととなる。分光データ作成部483は、外乱光下における被覆材7を被写体としたときの分光データを第1分光データとして作成する。作成した第1分光データは、記憶部28に記憶させる。
【0056】
次に、分光データ作成部483は、第3分光データを作成する。第3分光データを作成する際には、
図5(b)に示すように、励起光照射部6を起動し、被覆材7に励起光を照射する。被覆材7に励起光照射によって発光する第2蛍光成分が含まれるため、この第2蛍光成分が励起光照射によって発光する。そして、スペクトル撮像装置4は、外乱光下において、励起光照射部6により励起光が照射された被覆材7を被写体として撮像する。分光データ作成部483は、外乱光下において励起光が照射された被覆材7を被写体としたときの分光データを第3分光データとして作成する。作成した第3分光データは、記憶部28に記憶させる。
【0057】
次に、分光データ作成部483は、第2分光データを作成する。第2分光データを作成する際には、
図6(a)に示すように、被覆材7を検査領域3から取り外す。また、励起光照射部6からの励起光の照射を停止させる。そして、スペクトル撮像装置4は、外乱光下において、検査領域3を被写体として撮像する。分光データ作成部483は、外乱光下における検査領域3を被写体としたときの分光データを第2分光データとして作成する。作成した第2分光データは、記憶部28に記憶させる。
【0058】
次に、分光データ作成部483は、第4分光データを作成する。第4分光データを作成する際には、
図6(b)に示すように、励起光照射部6を起動し、
検査領域3に励起光を照射する。これにより、検出対象物に含まれる第1蛍光成分が、励起光照射によって発光する。そして、スペクトル撮像装置4は、外乱光下において、励起光照射部6により励起光が照射された検査領域3を被写体として撮像する。分光データ作成部483は、外乱光下において励起光が照射された検査領域3を被写体としたときの分光データを第4分光データとして作成する。作成した第4分光データは、記憶部28に記憶させる。
【0059】
本実施形態では、第1分光データと、第3分光データと、を作成した後に、第2分光データと、第4分光データとを作成する。これにより、被覆材7を検査領域3から取り外す回数を減らすことができ、検出対象物を短時間で評価することができる。
【0060】
なお、本発明では、第2分光データと、第4分光データと、を作成した後に、第1分光データと、第3分光データとを作成してもよい。これにより、被覆材7を検査領域3に取り付ける回数を減らすことができ、検出対象物の付着状態を短時間で評価することができる。
【0061】
なお、本実施形態では、第1分光データを作成した後に、第3分光データを作成したが、本発明では、第3分光データを作成した後に、第1分光データを作成してもよい。また、本実施形態では、第2分光データを作成した後に、第4分光データを作成したが、本発明では、第4分光データを作成した後に、第2分光データを作成してもよい。
【0062】
<取得ステップS12>
次に、取得ステップS12では、取得部485は、記憶部28に記憶させていた、第1分光データと、第2分光データと、第3分光データと、第4分光データと、を取得する。
【0063】
なお、本実施形態では、取得ステップS12では、分光データ作成ステップS11において作成した、第1分光データと、第2分光データと、第3分光データと、第4分光データと、を取得するのが好ましい。これにより、それぞれの分光データは、いわば検査の直前のものとなるため、検査領域における検出対象物を評価する精度を向上させることができる。
【0064】
なお、本発明では、第2分光データと、第4分光データは、分光データ作成ステップS11において作成したものを用いるとともに、第1分光データと、第3分光データとは、過去に予め作成されたものを用いてもよい。これにより、第1分光データと、第3分光データを作成する手間を省略することができる。このため、検査領域における検出対象物をより短時間で評価することができる。
【0065】
なお、本発明では、取得ステップS12では、予め作成された、第1分光データと、第2分光データと、第3分光データと、第4分光データと、を取得してもよい。このとき、分光データ作成ステップは省略できる。
【0066】
<算出ステップS13>
次に、算出ステップS13では、取得ステップS12において取得した、第1分光データと、第2分光データと、第3分光データと、第4分光データと、に基づいて、上記した数式(1)により算出値を算出する。
【0067】
算出値を算出する際、第1分光データと、第2分光データと、第3分光データと、第4分光データとは、同一の波長λを含む波長情報を有する。ここで、例えば、第1分光データにおける第1スペクトル強度I1(w,λ)とし、第2分光データにおける第2スペクトル強度I2(w,λ)とし、第3分光データにおける第3スペクトル強度I3(w,λ)とし、第4分光データにおける第4スペクトル強度I4(w,λ)とする。wは、任意の画素を表し、2次元の位置情報を有する。このとき、算出部484は、算出値Sを例えば以下の数式(2)により算出する。このとき、波長λは、第1蛍光成分及び第2蛍光成分の発光波長とすることが好ましい。
【0068】
【0069】
また、第1分光データと、第2分光データと、第3分光データと、第4分光データとは、同一の波長λを含む波長情報を有する。これにより、作成すべき分光データの容量を低減させることができる。このため、算出値の算出処理の速度を早くすることができる。
【0070】
なお、発光強度を算出する際、第1分光データと第3分光データとは、第1波長を含む波長情報を有し、第2分光データと特徴データとは、第1波長とは異なる第2波長を含む波長情報を有していてもよい。例えば、第1分光データにおける第1スペクトル強度I1(w,λ’)とし、第3分光データにおける第3スペクトル強度I3(w,λ’)とし、第2分光データにおける第2スペクトル強度I2(w,λ)とし、特徴データにおける第4スペクトル強度I4(w,λ)とする。このとき、算出部484は、算出値Sを例えば以下の数式(3)により算出する。第1波長λ’と第2波長λは、任意の異なる2波長であればよく、例えば、第1波長λ’は、第2蛍光成分の発光波長であり、第2波長λは、第1蛍光成分の発光波長であることが好ましい。
【0071】
【0072】
算出部484は、2次元の空間情報毎に算出された算出値を、解析画像として生成してもよい。算出部484は、算出した算出値を、評価装置2の評価部27に送信する。
【0073】
<評価ステップS14>
次に、評価ステップS14では、評価部27は、算出ステップS13において算出した算出値に基づいて、検査領域3における検出対象物を評価する。
【0074】
表示部23は、算出部484により生成した、2次元の空間情報毎に算出された算出値を、解析画像として映し出す。ユーザは、この表示部23上に映し出される解析画像から、検出対象物を判別することができ、また当該領域において検出対象物が付着していることを判別することが可能となる。
【0075】
評価部27が検出対象物を評価する場合には、2次元の空間情報毎の算出値と閾値とを比較し、閾値を上回る算出値を持つ領域が、検出対象物が付着しているものと判断するようにしてもよい。この算出値が検出対象物の付着量等と相関を持っている場合には、算出値の大きさに応じて検出対象物の付着量等を判別するようにしてもよい。かかる場合には、複数段階設定した閾値を介して算出値を判別し、判別した算出値に基づいて検出対象物の付着量等を定量的に評価して、完了する。
【0076】
本実施形態によれば、検出対象物は、励起光の照射によって発光する任意の第1蛍光成分を含み、取得部485は、第1分光データと、第2分光データと、第3分光データと、第4分光データと、を取得し、算出部484は、第1分光データと、第2分光データと、第3分光データと、第4分光データと、に基づいて算出値を算出する。これにより、検出対象物に含まれる第1蛍光成分の発光から検出対象物を高精度に検出することができる。このため、外乱光下であっても検査領域3における検出対象物を高精度で評価することが可能となる。
【0077】
本実施形態によれば、被覆材7は、励起光の照射によって発光する任意の第2蛍光成分を含む。これにより、被覆材7に含まれる蛍光成分の発光から外乱光の影響を考慮することができ、検出対象物を高精度に検出することができる。このため、外乱光下であっても検査領域3における検出対象物を高精度で評価することが可能となる。
【0078】
本実施形態によれば、第1分光データと、第2分光データと、第3分光データと、第4分光データとは、同一の波長を含む波長情報を有する。これにより、算出部484の算出処理を早く行うことができる。
【0079】
本実施形態によれば、第1分光データと第3分光データとは、第1波長を含む波長情報を有し、第2分光データと特徴データとは、第1波長とは異なる第2波長を含む波長情報を有する。これにより、各蛍光成分の発光が強く表れる波長を、第1波長と第2波長として用いることができる。このため、外乱光の影響を除去を更に高精度に行うことができ、検出対象物を更に高精度に検出することができる。
【0080】
本実施形態によれば、被覆材7は、検査領域3の第2凹凸部31に嵌め込まれる第1凹凸部71が形成される。これにより、検査領域3の第2凹凸部31により形成される影が、被覆材7の第1凹凸部71により形成される影で、再現される。つまり、第1分光データは、影を加味して外乱光の影響を考慮することができる。このため、奥行きがある検査領域3であっても、検出対象物を高精度に検出することができる。よって、検出対象物を高精度で評価することが可能となる。
【0081】
本実施形態によれば、分光データを作成する分光データ作成部483を更に備え、取得部485は、分光データ作成部483により作成された分光データを取得する。これにより、検査の直前に作成された分光データが取得されることとなり、事前に取得した分光データを用いるよりも、検出対象物をより高い精度で検出することができる。このため、外乱光下であっても検査領域3における検出対象物を高精度で評価することが可能となる。
【0082】
以上、被覆材7に第2蛍光成分が含まれる場合について説明したが、被覆材7には第2蛍光成分が含まれていなくてもよい。以下、検出対象物には第1蛍光成分が含まれ、被覆材7には第2蛍光成分が含まれない場合について説明する。
【0083】
かかる場合において、発光強度を算出する際、第1分光データと第3分光データとは、第1波長を含む波長情報を有し、第2分光データと第4分光データとは、第1波長とは異なる第2波長を含む波長情報を有する。ここで、例えば、第1分光データにおける第1スペクトル強度I1(w,λ’)とし、第3分光データにおける第3スペクトル強度I3(w,λ’)とし、第2分光データにおける第2スペクトル強度I2(w,λ)とし、第4分光データにおける第4スペクトル強度I4(w,λ)とする。このとき、算出部484は、算出値Sを例えば上記した数式(3)により算出する。第1波長λ’は、励起光の波長であり、第2波長λは、検出対象物に含まれる第1蛍光成分の発光波長とすることが好ましい。
【0084】
本実施形態によれば、算出部484は、第1分光データと、第2分光データと、第3分光データと、第4分光データと、に基づいて算出値を算出する。これにより、外乱光の影響を除去するとともに、検出対象物に含まれる第1蛍光成分の発光から検出対象物を高精度に検出することができる。このため、外乱光下であっても検査領域3における検出対象物を高精度で評価することが可能となる。
【0085】
本実施形態によれば、第1分光データは、第1波長を含む波長情報を有し、第2分光データは、第1波長とは異なる第2波長を含む波長情報を有する。これにより、外乱光の影響が大きい波長と、検出対象物の影響が大きい波長から、それぞれの影響を考慮することができる。このため、外乱光下であっても検査領域3における検出対象物を高精度で評価することが可能となる。
【0086】
本実施形態によれば、第1分光データと第3分光データとは、第1波長を含む波長情報を有し、第2分光データと第4分光データとは、第1波長とは異なる第2波長を含む波長情報を有する。これにより、外乱光の影響が大きい波長と、検出対象物に含まれる第1蛍光成分の影響が大きい波長とから、それぞれの影響を考慮することができる。このため、外乱光下であっても検査領域3における検出対象物を高精度で評価することが可能となる。
【0087】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る評価システム1について、説明する。第2実施形態では、第1分光データの取得を省略し、第2分光データと、第3分光データと、第4分光データとに基づいて算出値を算出する点で、第1実施形態と相違する。なお、上述した各構成と同様の場合は、適宜説明を省略する。
【0088】
第2実施形態に係る評価システム1は、工場等の屋内環境に設置される。工場等の屋内環境では、外乱光に含まれる励起光は、極めて少ないと考えられる。このため、屋内環境では、上記数式(3)における第1スペクトル強度I1(w,λ’)=0とできる。即ち、屋内環境では、第1分光データの取得を省略することもできる。
【0089】
詳細には、屋内環境で検出対象物を評価する際、取得部485は、算出部484により算出値を算出する前に、記憶部28に記憶した、第2分光データと、第3分光データと、第4分光データを取得する。
【0090】
次に、算出部484は、第2分光データと、第3分光データと、第4分光データと、に基づいて、算出値を算出する。
【0091】
本実施形態によれば、算出部484は、第2分光データと、第3分光データと、第4分光データと、に基づいて算出値を算出する。これにより、外乱光の影響を除去するとともに、検出対象物に含まれる第1蛍光成分の発光から検出対象物を高精度に検出することができる。このため、外乱光下であっても検査領域3における検出対象物を高精度で評価することが可能となる。
【0092】
また、算出部484は、第2分光データと、第3分光データと、第4分光データと、に基づいて算出値を算出する。これにより、第1分光データの取得を省略することができる。このため、算出処理の速度を向上させることができ、検査領域3における検出対象物を短時間で評価することが可能となる。
【0093】
本実施形態によれば、第3分光データは、第1波長を含む波長情報を有し、第2分光データと第4分光データとは、第1波長とは異なる第2波長を含む波長情報を有する。これにより、外乱光の影響が大きい波長と、検出対象物に含まれる第1蛍光成分の影響が大きい波長とから、それぞれの影響を考慮することができる。このため、外乱光下であっても検査領域3における検出対象物を高精度で評価することが可能となる。
【0094】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態に係る評価システム1について、説明する。第3実施形態では、第3分光データと第4分光データの取得を省略し、第1分光データと、第2分光データとに基づいて算出値を算出する点で、第1実施形態と相違する。なお、上述した各構成と同様の場合は、適宜説明を省略する。
【0095】
本実施形態では、分光データ作成ステップS11と、取得ステップS12と、算出ステップS13と、評価ステップS14とを備える。
【0096】
<分光データ作成ステップS11>
分光データ作成ステップS11では、分光データ作成部483は、1次元の波長情報を有する分光データを作成する。分光データ作成部483は、第1分光データと、第2分光データと、を作成する。
【0097】
分光データ作成部483は、先ず、第1分光データを作成する。第1分光データを作成する際には、
図9(a)に示すように、検査領域3に被覆材7を被覆する。そして、スペクトル撮像装置4は、外乱光下において被覆材7を被写体として撮像する。分光データ作成部483は、外乱光下における被覆材7を被写体としたときの分光データを第1分光データとして作成する。作成した第1分光データは、記憶部28に記憶させる。
【0098】
次に、分光データ作成部483は、第2分光データを作成する。第2分光データを作成する際には、
図9(b)に示すように、被覆材7を検査領域3から取り外す。そして、スペクトル撮像装置4は、外乱光下において、検査領域3を被写体として撮像する。分光データ作成部483は、外乱光下における検査領域3を被写体としたときの分光データを第2分光データとして作成する。作成した第2分光データは、記憶部28に記憶させる。
【0099】
<取得ステップS12>
次に、取得ステップS12では、取得部485は、記憶部28に記憶させていた、第1分光データと、第2分光データと、を取得する。
【0100】
<算出ステップS13>
次に、算出ステップS13では、取得ステップS12において取得した、第1分光データと、第2分光データと、に基づいて、下記の数式(4)により算出値Sを算出する。
【0101】
【0102】
算出値を算出する際、第1分光データと、第2分光データと、同一の波長λを含む波長情報を有する。このとき、例えば、第1分光データにおける第1スペクトル強度I1(w,λ)とし、第2分光データにおける第2スペクトル強度I2(w,λ)とする。なお、第1分光データは、第1波長を含む波長情報を有し、第2分光データは第1波長とは異なる第2波長を含む波長を有していてもよい。
【0103】
<評価ステップS14>
次に、評価ステップS14では、評価部27は、算出ステップS13において算出した算出値に基づいて、検査領域3における検出対象物を評価する。
【0104】
本実施形態によれば、算出部484は、第1分光データと、第2分光データと、に基づいて、算出値を算出する。これにより、第1分光データから外乱光の影響を考慮することができ、外乱光下であっても検出対象物を高精度に検出することができる。このため、外乱光下であっても検査領域3における検出対象物を高精度で評価することが可能となる。
【0105】
本実施形態によれば、第1分光データと、第2分光データとは、同一の波長を含む波長情報を有する。これにより、算出部484の算出処理を早く行うことができる。
【0106】
本実施形態によれば、第1分光データは、第1波長を含む波長情報を有し、第2分光データは、第1波長とは異なる第2波長を含む波長情報を有する。これにより、外乱光の影響が大きい波長と、検出対象物の影響が大きい波長から、それぞれの影響を考慮することができる。このため、検査領域3における検出対象物を外乱光の影響下においても高精度で評価することが可能となる。
【0107】
スペクトル撮像装置4は、以下の
図10に示す形態に具現化されるものであってもよい。このスペクトル撮像装置4は、一般的なデジタルカメラや、マルチスペクトルカメラ、更には携帯電話やスマートフォン、タブレット型端末、ウェラブル端末にそれぞれ実装されるあらゆるデジタルカメラを含むものである。このスペクトル撮像装置4は、通常の可視光の画像撮影に加えて、予め特定した波長範囲に限定してスペクトルデータを検知することを意図するものである。このスペクトル撮像装置4は、結像光学系51と、分光部52と、受光部53と、制御部48とを備えている。
【0108】
結像光学系51は、少なくとも1つの撮像レンズ56を有し、被写体からの光を集光し受光部53の撮像面上に像を形成する。
【0109】
分光部52は、被写体と撮像レンズ56との間に配置される。分光部52は、受光部53に到達する光の経路上に配置され、光を波長毎の成分に分光させる機能を有している。分光部52は、例えば、フィルタが用いられ、所定の分光透過率からなる素子である。即ち、この分光部52は、予め設定されている波長範囲の光のみを透過させ、それ以外の波長範囲の光を反射するように作用する。分光部52は、実際に透過させたい光の波長及び波長幅に応じてその種類が選択される。分光部52は、スペクトル撮像装置4内に予め固定配置される場合を例にとり説明をするが、これに限定されるものではない。即ち、この分光部52は、互いに透過する波長範囲が異なる複数の分光部52を順次切換可能に構成されていてもよい。
【0110】
受光部53は、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等の任意数の撮像素子により構成される。この受光部53は、撮像面に結像された光を光電変換により電気信号へと変換する。そして、受光部53により変換された電気信号は、制御部48に送信される。
【0111】
制御部48は、受光部53から送られてくる電気信号を処理する回路である。この制御部48は、受光部53によって取得された分光データに基づいて、被写体からの光の波長毎に分離された分光画像(分光分離画像)を生成する。また制御部48は、取得した電気信号に基づいて、各種焦点制御を行うようにしてもよい。その他制御部48による制御内容は、上述した
図3pに示す形態と同様である。
【0112】
分光データ作成部483は、受光部53から送信されてきた電気信号に基づいて、被写体の撮像領域における2次元の空間情報毎に波長情報を有する分光データを作成する。分光データ作成部483は、受光部53から送信されてきた電気信号に基づいて、第2方向Y及び第3方向Zのそれぞれの座標軸上の一点に対応する2次元の空間情報毎に、波長情報とを有する3次元分光データを作成する。分光データ作成部483は、作成した3次元分光データを用いて、波長毎の分光画像(分光分離画像)を生成してもよい。
【0113】
このスペクトル撮像装置4では、電気信号を生成することで、制御部48では、被写体の撮像領域である2次元の空間情報毎に波長情報を有する分光データを対応させ、3次元分光データを取得することができる。このとき、スペクトル撮像装置4には、一度の撮像で2次元の空間情報毎に波長情報を取得できる。このため、スペクトル撮像装置4では、同一時刻における3次元分光データを得ることができる。このため、スペクトル撮像装置4では、この3次元分光データから分光画像を生成し、時間的に連続して撮像することにより、動画像としても取得することもできる。したがって、検出対象物の付着状態について、その時間変化量を評価することも可能となる。
【0114】
本発明の実施形態を説明したが、実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0115】
1 :評価システム
2 :評価装置
3 :検査領域
4 :スペクトル撮像装置
6 :励起光照射部
7 :被覆材
21 :内部バス
23 :表示部
24 :制御部
25 :操作部
26 :通信部
27 :評価部
28 :記憶部
31 :第2凹凸部
41 :対物レンズ
42 :精密直動ステージ
43 :スリット板
43a :スリット開口部
44 :コリメートレンズ
45 :分光部
46 :結像レンズ
47 :受光部
48 :制御部
51 :結像光学系
52 :分光部
53 :受光部
56 :撮像レンズ
71 :第1凹凸部
481 :撮影制御部
482 :移動制御部
483 :分光データ作成部
484 :算出部
485 :取得部