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特許7306678回転力伝達制御機構、およびそれを備えたリフター機構、ならびに座席構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】回転力伝達制御機構、およびそれを備えたリフター機構、ならびに座席構造
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/16 20060101AFI20230704BHJP
   F16D 41/08 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
B60N2/16
F16D41/08 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019067110
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020164055
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000109738
【氏名又は名称】デルタ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】西本 真司
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-168632(JP,A)
【文献】特開2015-148332(JP,A)
【文献】特開2006-189139(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0273319(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102008052892(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 - B60N 2/90
A47C 1/02 - A47C 1/037
A47C 3/20 - A47C 3/40
F16D 41/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力部と出力部との間に転動体が係合することによって当該入力部が受けた回転力を当該出力部へ伝達する回転力伝達制御機構であって、
複数のカム面を有する多角形のカム部を備えた回転可能な前記入力部と、
前記複数のカム面のそれぞれに対向するカム対向面を有し、前記入力部と同軸状に回転可能な前記出力部と、
前記カム面と前記カム対向面との間に形成された空間にそれぞれ配置された複数の前記転動体と、
前記入力部の回転軸が延びる軸方向において前記入力部に対して前記出力部と反対側に位置し、前記入力部を回転可能に保持するとともに前記複数の転動体を転動可能に保持する保持部と、
前記入力部および前記複数の転動体の前記入力部の軸方向への移動を規制するように、前記保持部を前記出力部へ向けて前記軸方向に付勢する軸方向付勢部材と
を備えている回転力伝達制御機構。
【請求項2】
前記出力部は、前記軸方向を向いて前記入力部に対向する軸方向対向面をさらに有し、
前記軸方向付勢部材は、前記入力部を前記軸方向対向面に押圧するように、前記保持部に対して前記軸方向に付勢する、
請求項1に記載の回転力伝達制御機構。
【請求項3】
前記保持部と前記軸方向に並んで配置された固定部材をさらに備え、
前記軸方向付勢部材は、前記保持部と前記固定部材との間に圧縮された状態で挟まれて配置されている、
請求項1または2に記載の回転力伝達制御機構。
【請求項4】
前記軸方向付勢部材は、板バネである、請求項3に記載の回転力伝達制御機構。
【請求項5】
前記保持部の前記軸方向を向く面から前記軸方向へ突出する少なくとも1つの突起部をさらに備え、
前記突起部は、前記板バネが前記入力部の回転中心からのずれを抑制するように、前記板バネの周縁の少なくとも一部に当接する、
請求項4に記載の回転力伝達制御機構。
【請求項6】
2つの前記突起部は、前記板バネを当該板バネの幅方向両側から挟むように配置され、
前記突起部は、前記入力部の一部分であり、前記保持部の前記軸方向を向く面を貫通して前記軸方向へ突出している、
請求項5に記載の回転力伝達制御機構。
【請求項7】
前記板バネは、前記突起部を前記回転中心を基準とする周方向両側から挟むことが可能な間隔だけ離間し、当該板バネの周縁から板バネ表面に沿った方向に突出する一対の角部を有し、
前記板バネは、前記一対の角部が前記突起部を前記周方向両側から挟むように、前記保持部に取り付けられている、
請求項5または6に記載の回転力伝達制御機構。
【請求項8】
前記板バネは、前記突起部に対向する縁において当該突起部から離れる方向に凹む凹部が形成され、
前記凹部は、前記突起部における前記回転中心を向く面の両端縁に当接することが可能な内縁辺を有し、
前記板バネは、前記凹部の内縁辺が前記突起部における前記回転中心を向く面の両端縁に当接するように、前記保持部に取り付けられている、
請求項5~7のいずれか1項に記載の回転力伝達制御機構。
【請求項9】
前記板バネは、前記突起部に対向する縁において当該突起部へ向けて突出する凸部が形成され、
前記凸部は、前記突起部における前記回転中心を向く面に接触することが可能な外縁辺を有し、
前記板バネは、前記凸部の外縁辺が前記突起部における前記回転中心を向く面に接触するように、前記保持部に取り付けられている、
請求項5~8のいずれか1項に記載の回転力伝達制御機構。
【請求項10】
前記板バネは、その端部において腕部を有し、前記腕部によって前記保持部に位置決めされる、
請求項4~9に記載の回転力伝達制御機構。
【請求項11】
前記腕部は、先端へ向かうにつれて細くなる形状の先端部を有しており、
前記腕部の先端部は、前記保持部に形成された凹部に挿入されている、
請求項10に記載の回転力伝達制御機構。
【請求項12】
前記腕部は、前記保持部に設けられた被係合部に係合可能な係合部を有しており、
前記腕部は、前記係合部を前記被係合部に係合することにより、前記保持部に連結されており、
前記被係合部は、前記保持部に取り付けられ、前記入力部に対して当該入力部の回転中心を基準とする所定の周方向位置に復帰する周方向の力を与える周方向付勢部材である、
請求項10に記載の回転力伝達制御機構。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の回転力伝達制御機構を備えた、シートを昇降するリフター機構。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか1項に記載の回転力伝達制御機構をそれぞれ備えたリフター機構、リクライニング機構、またはランバー制御機構のうちの少なくとも1つを備えた座席構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転力伝達制御機構、およびそれを備えたリフター機構、ならびに座席構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のシートなどの高さを変更するリフター機構などの種々の機構は、回転力の伝達を制御するための機構として、操作レバーを手動で往復揺動操作するときに発生する回転力を一方向の回転力のみを出力側の部分へ伝達するワンウェイクラッチを備えている。
【0003】
このようなワンウェイクラッチは、例えば、特許文献1に記載されるように、複数のカム面を有する多角形のカム部を備えた回転可能な入力部(外輪)と、当該複数のカム面のそれぞれに対向する対向面を有し、入力部と同軸状に回転可能な出力部(内輪)と、カム面と対向面との間に形成された空間にそれぞれ配置された複数の転動体(円筒ころ)とを有する。
【0004】
操作レバーを手動で搖動させて入力部を回転させると、転動体が入力部のカム面と出力部の対向面との間に挟まれた状態で係合され、これにより、転動体を介して入力部から出力部へトルクを伝達することが可能である。一方、操作レバーの回転操作を止めれば、入力部がバネによって回転方向と逆向きに戻され、転動体による入力部のカム面と出力部の対向面との間の係合状態が解除され、入力部から出力部へのトルク伝達が解除される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-9065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなワンウェイクラッチでは、操作レバーの操作前の初期状態からすでに出力部に負荷がかかっている場合、例えば、シートに大重量の利用者が座っている場合などでは、出力部から大きなトルクを出力する必要があるために、操作レバーから大きな操作力を入力する必要がある。そのような場合には、入力部の回転軸の軸方向で見れば、操作レバーから入力部に荷重が入力される位置と入力部が回転軸から反力を受ける位置の軸方向のずれによって、入力部が回転軸に対して傾斜し、入力部の一部が軸方向へずれるおそれがある。その場合、入力部は複数の転動体の一部との接触が不十分になって入力部から出力部への良好なトルク伝達ができなくなり、操作レバーおよび入力部が空転する問題がある。
【0007】
また、上記従来技術のように、ワンウェイクラッチを備えるリフター機構には、当該ワンウェイクラッチに、板状かつ多角形であるカムと、当該カムの周面に当接される複数のローラとを備える機構が存在する。
【0008】
このような多角形のカムを有するリフター機構では、体重が重い利用者がシートに座った状態で、シート(具体的には座部)を上昇させるように操作レバーを操作、つまり、操作レバーを上方向に回動した際、操作レバーを上方向に回動したにも関わらずシートが上昇しない事象、いわゆる操作レバーが滑るという事象が発生する場合がある。この事象の発生原因としては、ワンウェイクラッチの構造内部の部品の影響、つまり、カム及びローラを保持するロックベースにカムの周方向位置を保持するスプリング(すなわち、カムに周方向の力を与えて保持するスプリング)の影響により、カムがその軸方向(すなわち、カムの厚さ方向)にズレることが主な原因である。より詳しく説明すると、操作レバーが回動された際に、操作レバーを介してカムに伝わった動力(回転力)と、スプリングがカムに加える周方向の付勢力とが、カムに作用し、カムがロックベースから軸方向にズレることで、ロックベースに保持されるローラとカムとが軸方向にズレてしまい、軸方向の一方に偏った状態でローラの周面がカムの周面に当接してしまう。
【0009】
このようなカムが軸方向にズレた状態では、カムの周面に軸方向の一方に偏った状態でローラの圧力が掛かり、軸方向の一方に偏った圧痕がカムの周面に形成される。特に体重が重い利用者がシートに座った状態で、シートを上昇させるように操作レバーを上方向に回動した場合、ローラからの強い圧力がカムの周面に掛かってしまうため、カムの周面に軸方向の一方に偏った圧痕が強く残ってしまう。また、ワンウェイクラッチでは、複数のローラの周囲に当該ローラに近接するように外輪が設けられている。例えば、シートを上昇させるように操作レバーを上方向に回動した場合、カムによってローラが外輪の方向に向けて押圧され、ローラの周面と外輪の内周面とが当接した状態となる。この際、カムの中心点と、ローラの中心点とを結ぶ延長線上にローラの周面と外輪の内周面との接点があることによって、ローラと外輪とが密接に接触した状態となる。しかしながら、カムの周面に軸方向の一方に偏った圧痕が強く残っている場合、ローラの周面と外輪の内周との接点が上述した延長線から大きくずれた状態となり、ローラと外輪とが密接に接触することが困難となる。そのため、ローラが外輪に対して固定されずに外輪の周方向に滑ってしまい、その結果、操作レバーが滑ることになる。
【0010】
本発明は、かかる問題を解消するためになされたものであり、入力部の空転を抑制することが可能な回転力伝達制御機構の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の回転力伝達制御機構は、入力部と出力部との間に転動体が係合することによって当該入力部が受けた回転力を当該出力部へ伝達する回転力伝達制御機構であって、複数のカム面を有する多角形のカム部を備えた回転可能な前記入力部と、前記複数のカム面のそれぞれに対向するカム対向面を有し、前記入力部と同軸状に回転可能な前記出力部と、前記カム面と前記カム対向面との間に形成された空間にそれぞれ配置された複数の前記転動体と、前記入力部の回転軸が延びる軸方向において前記入力部に対して前記出力部と反対側に位置し、前記入力部を回転可能に保持するとともに前記複数の転動体を転動可能に保持する保持部と、前記入力部および前記複数の転動体の前記入力部の軸方向への移動を規制するように、前記保持部を前記出力部へ向けて前記軸方向に付勢する軸方向付勢部材とを備えていることを特徴とする。
【0012】
かかる構成では、軸方向付勢部材が入力部および複数の転動体の軸方向への移動を規制するように、保持部を出力部へ向けて軸方向に付勢する。これにより、入力部は、大きな操作力が入力されても、軸方向付勢部材からの付勢力によって複数の転動体とともに軸方向への移動が規制されているので、入力部の回転軸の軸方向に関してみれば、入力部および複数の転動体は、軸方向へずれるおそれが低減する。その結果、転動体を介して入力部から出力部への良好なトルク伝達が可能になり、入力部の空転を抑制することが可能である。
【0013】
上記の回転力伝達制御機構において、前記出力部は、前記軸方向を向いて前記入力部に対向する軸方向対向面をさらに有し、前記軸方向付勢部材は、前記入力部を前記軸方向対向面に押圧するように、前記保持部に対して前記軸方向に付勢するのが好ましい。
【0014】
かかる構成では、軸方向付勢部材が入力部を前記軸方向対向面に押圧するように、保持部に対して軸方向に付勢する。これにより、入力部は、大きな操作力が入力されても、軸方向付勢部材からの付勢力によって出力部の軸方向対向面に押圧されて軸方向への移動が規制されているので、入力部の回転軸の軸方向に関してみれば、入力部は、軸方向へずれるおそれがさらに低減する。その結果、転動体を介して入力部から出力部へのより良好なトルク伝達が可能になり、入力部の空転をさらに抑制することが可能である。
【0015】
上記の回転力伝達制御機構において、前記保持部と前記軸方向に並んで配置された固定部材をさらに備え、前記軸方向付勢部材は、前記保持部と前記固定部材との間に圧縮された状態で挟まれて配置されているのが好ましい。
【0016】
かかる構成では、軸方向付勢部材は、保持部と固定部材との間に圧縮された状態で挟まれて配置されており、常時、入力部は、軸方向付勢部材からの付勢力によって複数の転動体とともに軸方向への移動が規制されている。そのため、入力部は、複数の転動体とともに軸方向へずれるおそれがさらに低減する。その結果、転動体を介して入力部から出力部へのより良好なトルク伝達が可能になり、入力部の空転をさらに確実に抑制することが可能である。
【0017】
上記の回転力伝達制御機構において、前記軸方向付勢部材は、板バネであるのが好ましい。
【0018】
かかる構成では、軸方向付勢部材が板バネであるので、当該板バネを保持部と固定部材との間に圧縮状態で挟んで配置することを容易に行うことが可能であり、回転力伝達制御機構の組立作業性を向上することが可能である。また、かかる構成では、軸方向付勢部材が板バネであるので、厚みを抑制することが可能である。
【0019】
上記の回転力伝達制御機構において、前記保持部の前記軸方向を向く面から前記軸方向へ突出する少なくとも1つの突起部をさらに備え、前記突起部は、前記板バネが前記入力部の回転中心からのずれを抑制するように、前記板バネの周縁の少なくとも一部に当接するのが好ましい。
【0020】
かかる構成により、前記板バネが前記入力部の回転中心からのずれを抑制することが可能である。
【0021】
上記の回転力伝達制御機構において、2つの前記突起部は、前記板バネを当該板バネの幅方向両側から挟むように配置され、前記突起部は、前記入力部の一部分であり、前記保持部の前記軸方向を向く面を貫通して前記軸方向へ突出しているのが好ましい。
【0022】
かかる構成では、2つの突起部が板バネを両側から挟むことにより、前記板バネが前記入力部の回転中心からのずれを確実に抑制することが可能である。
【0023】
しかも、入力部に形成された突起部は、外部からの操作力を受ける入力部として用いられるだけでなく、板バネのずれを規制することにも用いることが可能であるので、部品点数の増加や大幅な設計変更を抑制することが可能である。
【0024】
上記の回転力伝達制御機構において、前記板バネは、前記突起部を前記回転中心を基準とする周方向両側から挟むことが可能な間隔だけ離間し、当該板バネの周縁から板バネ表面に沿った方向に突出する一対の角部を有し、前記板バネは、前記一対の角部が前記突起部を前記周方向両側から挟むように、前記保持部に取り付けられているのが好ましい。
【0025】
かかる構成により、板バネを保持部に取り付ける際に、一対の角部によって突起部を周方向両側から挟むことにより、板バネが突起部に対する周方向両側へのずれを抑制することが可能であり、板バネの取付け作業が容易である。また、一対の角部の位置に基づいて板バネの組付けが良好か否か容易に判定することが可能である。
【0026】
上記の回転力伝達制御機構において、前記板バネは、前記突起部に対向する縁において当該突起部から離れる方向に凹む凹部が形成され、前記凹部は、前記突起部における前記回転中心を向く面の両端縁に当接することが可能な内縁辺を有し、前記板バネは、前記凹部の内縁辺が前記突起部における前記回転中心を向く面の両端縁に当接するように、前記保持部に取り付けられているのが好ましい。
【0027】
かかる構成により、板バネを保持部に取り付ける際に、板バネの凹部の内縁辺が突起部における回転中心を向く面の両端縁に当接することにより、板バネと突起部との距離のずれを抑制することが可能であり、板バネの取付け作業が容易である。
【0028】
上記の回転力伝達制御機構において、前記板バネは、前記突起部に対向する縁において当該突起部へ向けて突出する凸部が形成され、前記凸部は、前記突起部における前記回転中心を向く面に接触することが可能な外縁辺を有し、前記板バネは、前記凸部の外縁辺が前記突起部における前記回転中心を向く面に接触するように、前記保持部に取り付けられているのが好ましい。
【0029】
かかる構成により、板バネを保持部に取り付ける際に、板バネの凸部の外縁辺が突起部における回転中心を向く面に接触することにより、板バネと突起部との距離のずれを抑制することが可能であり、板バネの取付け作業が容易である。
【0030】
上記の回転力伝達制御機構において、前記板バネは、その端部において腕部を有し、前記腕部によって前記保持部に位置決めされるのが好ましい。
【0031】
かかる構成により、板バネの端部の腕部によって板バネを保持部に位置決めすることにより、板バネを保持部に対して位置ズレを抑えて容易に取り付けることが可能である。
【0032】
上記の回転力伝達制御機構において、前記腕部は、先端へ向かうにつれて細くなる形状の先端部を有しており、前記腕部の先端部は、前記保持部に形成された凹部に挿入されているのが好ましい。
【0033】
かかる構成により、腕部の先端部を保持部の凹部に容易に挿入することが可能であり、板バネの取付け作業が容易である。
【0034】
上記の回転力伝達制御機構において、前記腕部は、前記保持部に設けられた被係合部に係合可能な係合部を有しており、前記腕部は、前記係合部を前記被係合部に係合することにより、前記保持部に連結されており、前記被係合部は、前記保持部に取り付けられ、前記入力部に対して当該入力部の回転中心を基準とする所定の周方向位置に復帰する周方向の力を与える周方向付勢部材であるのが好ましい。
【0035】
かかる構成により、腕部の係合部を保持部の被係合部に容易に係合することが可能であり、板バネの取付け作業が容易である。しかも、周方向付勢部材が板バネの腕部の係合部が係合される被係合部として用いられるので、板バネを組み付けた際に、組み付け位置の位置ズレを抑制し、組み付け位置を安定化させることが可能である。
【0036】
上記の回転力伝達制御機構において、前記板バネは、そのばね定数を調整することができるように穴または切欠きを有するのが好ましい。
【0037】
かかる構成により、板バネの穴または切欠きによって板バネのばね定数を容易に調整することが可能である。
【0038】
本発明のリフター機構は、上記の回転力伝達制御機構を備えていることを特徴とする。
【0039】
リフター機構が上記の回転力伝達制御機構を備えているので、転動体を介して入力部から出力部への良好なトルク伝達が可能になり、入力部の空転を抑制することが可能である。とくに、シートに大重量の利用者が座っているなどの場合にシートを持ち上げるために出力部から大きなトルクを出力する場合に、大きな操作力を入力部に入力しても、入力部の空転を抑制することが可能である。
【0040】
本発明の座席構造は、上記の回転力伝達制御機構をそれぞれ備えたリフター機構、リクライニング機構、またはランバー制御機構のうちの少なくとも1つを備えていることを特徴とする。
【0041】
上記の回転力伝達制御機構をそれぞれ備えたリフター機構、リクライニング機構、またはランバー制御機構を座席構造に適用することにより、シートの昇降動作、リクライニング動作、およびランバー動作のいずれを行うときでも、入力部の空転を抑制することが可能である。
【発明の効果】
【0042】
本発明の回転力伝達制御機構、リフター機構、および座席構造によれば、回転力伝達制御機構の入力部の空転を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明の一実施形態の回転力伝達制御機構が内蔵されたリフター機構を自動車用シートに適用した座席構造の概略斜視図である。
図2図1のリフター機構における回転力伝達制御機構の周辺部を示す斜視図である。
図3図2の回転力伝達制御機構の分解斜視図である。
図4図3のクラッチ機構部におけるロックベースの前面側の部分の構成を示す正面図である。
図5図3のレバーベースアセンブリを示す正面図である。
図6図5のレバーベースアセンブリの分解斜視図である。
図7図5のレバーベースアセンブリの背面図である。
図8図4の板バネの正面図である。
図9図8の板バネの上面図である。
図10図9の板バネの側面図である。
図11図3の回転力伝達制御機構の水平断面図である。
図12図6のレバーベースおよび第2スプリングを示す斜視図であって、レバーベースに操作力が入力されたときのレバーベースに作用する力を説明するための斜視説明図である。
図13図3の回転力伝達制御機構の水平断面図であって、操作力が入力されたときのレバーベースに作用する力を説明するための断面説明図である。図である。
図14】本実施形態の回転力伝達制御機構のクラッチ機構部の動作説明図であって、レバーベースに回転力が入力される直前の状態を示す動作説明図である。
図15】本実施形態の回転力伝達制御機構のクラッチ機構部の動作説明図であって、レバーベースに回転力が入力されて回転した瞬間の状態を示す動作説明図である。
図16図3の減速機構部の分解斜視図である。
図17】本実施形態の回転力伝達制御機構の変形例である板バネが係合部を有する形態を示す断面説明図である。
図18図17の板バネの正面図である。
図19】本実施形態の回転力伝達制御機構の他の変形例である板バネの側面に凸部が形成されるとともにばね定数調整のための穴が形成されている形態を示す板バネの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
【0045】
図1に示される座席構造1は、本発明の一実施形態の回転力伝達制御機構3が内蔵されたリフター機構2が自動車用シートに適用された構造である。
【0046】
この座席構造1は、シートの左右両側にリフター機構2を備えている。図1の座席構造1の右側(手前側)に位置するリフター機構2は、図1~2に示されるように、回転力伝達制御機構3と、当該回転力伝達制御機構3に操作力を与える操作部4と、昇降可能な昇降フレーム5と、車体のレールなどに固定されたベースフレーム6と、昇降フレーム5とベースフレーム6とのそれぞれの前側部分をリンク結合する前側リンクアーム7とを備えている。昇降フレーム5とベースフレーム6とのそれぞれの後側部分は、回転力伝達制御機構3の後側リンク部材33を介してリンク結合されている。
【0047】
回転力伝達制御機構3は、固定プレート21を有しており、当該固定プレート21が昇降フレーム5にボルトなどで締結されることによって、回転力伝達制御機構3が昇降フレーム5に固定されている。
【0048】
図1に示される操作部4は、上下方向に揺動可能に昇降フレーム5に取り付けられた操作レバー4aと、操作レバー4aと回転力伝達制御機構3の入力側の部材(図3のレバー側連結プレート22)との間にリンク結合する伝達リンクアーム4b、4cとを備えている。なお、操作部4は、利用者が手動で操作することによって発生する回転操作力を回転力伝達制御機構3へ伝達可能な機構であれば、本発明ではとくに限定されない。
【0049】
回転力伝達制御機構3は、操作部4から操作力を受けたときに、後側リンク部材33を正逆いずれかの方向に揺動させることにより、昇降フレーム5を昇降させることが可能である。なお、座席構造1の左側(奥側)に位置するリフター機構2の構成は、概略的には操作部4および後述のクラッチ機構部11を有しない点だけ異なり、その他の点では上記の構成とほぼ共通している。
【0050】
また、左右両側のリフター機構2のそれぞれの回転力伝達制御機構3は、シートの左右方向(幅方向)に延びる伝達シャフト8によって連結されている。そのため、右側の回転力伝達制御機構3が受けた操作力は、伝達シャフト8を介して左側の回転力伝達制御機構3へ伝達され、それにより、左右両側のリフター機構2の回転力伝達制御機構3を同期させて動作させることが可能である。
【0051】
以下、回転力伝達制御機構3についてさらに具体的に説明する。
【0052】
回転力伝達制御機構3は、図3に示されるように、大きく分けると、クラッチ機構部11と、減速機構部12とを備える。クラッチ機構部11は、操作レバー4aを手動で往復揺動操作するときに発生する回転操作力を一方向の回転力のみを出力側の減速機構部12へ伝達するワンウェイクラッチとして機能する構成を有する。
【0053】
クラッチ機構部11は、入力部であるレバーベース15と出力部であるクラッチ板16との間に転動体である複数のローラ17が係合することによって当該レバーベース15が受けた回転力を当該クラッチ板16へ伝達するように構成されている。具体的には、クラッチ機構部11は、ベースブラケット13と、ロックベース14と、入力部であるレバーベース15(詳しくは図6参照)と、出力部であるクラッチ板16と、転動体である複数のローラ17(図6参照)と、板バネ18とを備える。
【0054】
図3に示されるように、ベースブラケット13と、板バネ18と、ロックベース14と、レバーベース15と、クラッチ板16とは、入力部であるレバーベース15の回転軸Cの軸方向Aに並んで配置されている。板バネ18は、ベースブラケット13とロックベース14との間に挟まれた状態で配置されている。
【0055】
ベースブラケット13は、図3および図11に示されるように、固定プレート21にボルトなどによって固定されている。ベースブラケット13の外側の面には、レバー側連結プレート22が支持軸23を介して回転自在に連結されている。レバー側連結プレート22には、図1の操作部4の出力側端部である伝達リンクアーム4cがねじなどによって固定されている。
【0056】
ベースブラケット13の内部には、ロックベース14と、入力部であるレバーベース15と、複数のローラ17(図6参照)とが一体になって構成されたレバーベースアセンブリ24が収容されている。
【0057】
具体的には、レバーベースアセンブリ24は、図3~7に示されるように、ロックベース14と、入力部であるレバーベース15と、複数のローラ17(図6~7参照)と、第1スプリング19と、第2スプリング20とが組み合わされることにより構成されている。
【0058】
ロックベース14は、ナイロン(登録商標)などの合成樹脂などで形成された略円盤状の部材であり、レバーベース15を回転可能に保持するカム支持軸14h(図6および11参照)と、複数のローラ17を転動可能に保持するローラ保持部14f(図6~7参照)とを有している。ロックベース14は、レバーベース15の回転軸Cの軸方向Aにおいてレバーベース15に対してクラッチ板16と反対側に位置している。
【0059】
入力部であるレバーベース15は、図6~7および図12に示されるように、複数(本実施形態では6つ)のカム面15cを有するスチールなどの剛性の高い材料で形成された部材である。レバーベース15は、具体的には、6つのカム面15cを外周に有する略六角形の板状のカム部15aと、カム部15aの表面から前方へ(すなわちロックベース14へ向けて)突出する一対の突起部15bとを備えている。
【0060】
略六角形のカム部15aの中央には、軸受孔15eが形成されている。レバーベース15は、軸受孔15eに挿入されたロックベース14のカム支持軸14h(図6および11参照)およびクラッチ板16のカム支持軸16c(図3および11参照)によって、回転軸Cを回転中心として回転自在に支持されている。
【0061】
一対の突起部15bは、ロックベース14の軸方向Aを向く面14iを貫通して軸方向Aへ突出している。具体的には、一対の突起部15bは、ロックベース14の軸方向Aを向く面14iに形成された貫通孔14jを通してロックベース14の後方側から前方側へ貫通して突出している。貫通孔14jは、突起部15bが貫通孔14iの内部で周方向に移動可能な隙間(遊び)を許容するように、当該突起部15bよりも周方向に若干長い。
【0062】
また、図3に示されるように、一対の突起部15bにおけるロックベース14よりも前方側に突出した部分は、ベースブラケット13に形成されたスリット(図示せず)を通して、レバー側連結プレート22に形成された係合孔22aに係合している。したがって、突起部15bは、レバー側連結プレート22を介して操作部4からの回転操作力を受けることが可能である。
【0063】
複数のローラ17は、図6~7に示されるように、ロックベース14のローラ保持部14fに回転自在に保持されている。これにより、複数のローラ17は、ロックベース14に取り付けられたレバーベース15の略六角形のカム部15aの各カム面15cにそれぞれ対向する位置に配置されている。
【0064】
第1スプリング19は、図3~7に示されるように、リング状のねじりコイルばねであり、半径方向外側に突出する一対の端末部19aを有する。第1スプリング19は、ロックベース14の外周面に嵌合した状態で取り付けられている。一対の端末部19aは、ロックベース14の上端に設けられた端末保持部14aに形成された一対の溝14bにそれぞれ係合された状態で保持されている。第1スプリング19のリング状の部分は、ロックベース14の外周面に設けられた複数のリング保持部14cによって保持されている。
【0065】
さらに、第1スプリング19の一対の端末部19aは、ロックベース14の端末保持部14aに保持された状態で、さらに、図3に示されるベースブラケット13の上端に設けられた端末保持部13aに形成された一対の溝13bにそれぞれ係合された状態で保持されている。これにより、図3に示されるように、突起部15bを介して回転力が入力されたレバーベースアセンブリ24がベースブラケット13の内部で回転するときに、第1スプリング19は、一対の端末部19aのうちの一方がロックベース14の溝14bに拘束される一方で他方がベースブラケット13の溝13bに拘束された状態でたわめられて弾性エネルギーが蓄積される。一方、回転力の入力が無くなったときには、第1スプリング19に蓄積された弾性エネルギーによって、レバーベースアセンブリ24は初期状態に復帰することが可能である。
【0066】
第2スプリング20は、ロックベース14に取り付けられ、レバーベース15に対して当該レバーベース15の回転中心Cを基準とする所定の周方向位置に復帰するように周方向の力を与える付勢部材である。
【0067】
第2スプリング20は、図3~6および図12に示されるように、略リング状(C字状)の線細工ばねであり、軸方向Aに突出する一対の端末部20aを有する。一対の端末部20aは、ロックベース14の軸方向Aに向く面14iに形成された一対の端末貫通孔14d(図5参照)に挿入された状態で保持されている。
【0068】
図5に示されるように、一対の端末貫通孔14dは、一対の端末部20aが周方向への若干の移動可能な隙間(遊び)を許容するように、当該端末部20aよりも周方向に若干長い。また、第2スプリング20のリング状の部分は、ロックベース14に設けられた複数のリング保持部14eによって保持されている。
【0069】
さらに、第2スプリング20の一対の端末部20aは、ロックベース14の端末貫通孔14dを貫通した状態で、さらに、図6および図12に示されるレバーベース15のカム部15aに形成された一対の端末保持孔15dにそれぞれ係合された状態で保持されている。これにより、図5~6に示されるように、突起部15bを介して回転力が入力されたレバーベースアセンブリ24がベースブラケット13の内部で回転するときに、突起部15bがロックベース14の貫通孔14j内部で周方向に移動しながらレバーベース15がロックベース14に対して相対的にわずかに回転する。第2スプリング20は、一対の端末部20aのうちの一方がロックベース14の端末貫通孔14dに拘束される一方で他方がレバーベース15の端末保持孔15dに拘束された状態でたわめられて弾性エネルギーが蓄積される。一方、回転力の入力が無くなったときには、第2スプリング20に蓄積された弾性エネルギーによって、レバーベース15はロックベース14に対する相対的な初期位置に復帰することが可能である。
【0070】
クラッチ板16は、図3図11、および図16に示されるように、レバーベース15と共通の回転軸Cで同軸状に回転可能な円盤状の部材である。クラッチ板16の外周には、前方側に突出したリング状のつば部が形成され、当該リング状のつば部の内周面には、レバーベース15の複数のカム面15cのそれぞれに対向するカム対向面16aが形成されている。さらに、クラッチ板16は、ベース15の回転軸Cが延びる軸方向Aを向いてレバーベース15に対向する軸方向対向面16bを有する。
【0071】
図11に示されるように、回転力伝達制御機構3を組み立てた状態では、クラッチ板16の円周状のカム対向面16aと軸方向対向面16bとによって形成された空間部16fに、レバーベース15のカム部15aおよび複数のローラ17が収容される。この状態では、複数のローラ17は、図14~15に示されるように、レバーベース15のカム面15cとクラッチ板16のカム対向面16aとの間に形成された空間25にそれぞれ配置されている。
【0072】
図7および図14~15に示されるように、各カム面15cの中間位置には、凹部15c1が形成されている。図14に示されるように、レバーベース15が操作力を受けていない初期状態では、レバーベース15は、第2スプリング20の端末部20aから当該第2スプリング20の弾性力を受けているので、ロックベース14内部の所定の周方向位置に保持され、ローラ17は、カム面15cの凹部15c1に対向する位置になる。このとき、カム面15cとローラ17との間に微小な隙間があるので、ローラ17はカム面15cとクラッチ板16のカム対向面16aとの間に係合していない状態、すなわち、クラッチが切れている状態になっている。
【0073】
一方、図15に示されるように、レバーベース15が操作力を受けた状態では、レバーベース15は、第2スプリング20の弾性力に抗しながらロックベース14内部で相対的に回転することにより、ローラ17は、カム面15cの凹部15c1からずれた位置になり、カム面15cとクラッチ板16のカム対向面16aとの間に係合した状態、すなわち、クラッチが接続された状態になる。すなわち、カム面15cとローラ17とは接触点P1で接触し、ローラ17とカム対向面16aとは接触点P2で接触する。これにより、カム面15cからカム対向面16aへ接触点P1、P2を通してトルクが伝達される。また、レバーベース15への操作力が再び解除されれば、第2スプリング20の弾性力によって、レバーベース15はロックベース14内部の所定の周方向位置に復帰して、クラッチが切れている状態に戻ることが可能である。
【0074】
板バネ18は、図3~4および図8~11に示されるように、レバーベース15および複数のローラ17の当該レバーベース15の軸方向Aへの移動を規制するように、ロックベース14をクラッチ板16に向けて軸方向Aに付勢する軸方向付勢部材である。板バネ18は、レバーベース15の軸方向Aへの移動を規制するために必要な付勢力を確保するのに十分な曲げ剛性を有する材料からなり、そのような要求を満たす材料として、例えば炭素工具鋼鋼材(SK材)などが使用される。
【0075】
本実施形態では、板バネ18は、レバーベース15および複数のローラ17をクラッチ板16の軸方向対向面16bに押圧するように、ロックベース14に対して軸方向Aに付勢する。
【0076】
図4および図8~10に示されるように、板バネ18は、その両端部において一対の腕部18dを有する。一対の腕部18dによって、板バネ18がロックベース14に位置決めされる。それぞれの腕部18dは、先端へ向かうにつれて細くなる形状の先端部18eを有している。それぞれの腕部18dの先端部18eは、ロックベース14に形成された凹部14g(図4および図11参照)に挿入されて、ロックベース14の表面上で位置決めされている。
【0077】
なお、本実施形態では、板バネ18の両端部に一対の腕部18dを有しており、安定してロックベース14に連結することが可能であるが、1本の腕部18dを有する構成であってもロックベース14に連結することは可能である。
【0078】
板バネ18は、図3および図11に示されるように、ロックベース14とベースブラケット13との間に圧縮された状態で挟まれて配置されている。図11では、板バネ18は、ロックベース14に設けられた第2スプリング20の上に載置され、当該第2スプリング20とベースブラケット13(具体的には当該ベースブラケット13に設けられた支持軸23)との間で圧縮された状態で挟まれている。
【0079】
図3~4に示されるように、レバーベース15の少なくとも1つの突起部15bは、ロックベース14を貫通して、ロックベース14の軸方向Aを向く面14iから軸方向Aへ突出している。突起部15bは、板バネ18がレバーベース15の回転中心Cからのずれを抑制するように、板バネ18の周縁の少なくとも一部に当接する。
【0080】
本実施形態では、2つの突起部15bが、板バネ18を当該板バネ18の幅方向両側から挟むように配置されている。
【0081】
板バネ18は、図4および図8~10に示されるように、突起部15bを回転中心Cを基準とする周方向両側から挟むことが可能な間隔だけ離間し、当該板バネ18の周縁から板バネ18表面に沿った方向に突出する一対の角部18aを有する。
【0082】
板バネ18は、一対の角部18aが突起部15bを周方向両側から挟むように、ロックベース14に取り付けられている。
【0083】
板バネ18は、突起部15bに対向する縁において当該突起部15bから離れる方向に凹むV字形形状の凹部18b(図8参照)が形成されている。凹部18bは、突起部15bにおける回転中心Cを向く面の両端縁に当接することが可能な一対の傾斜面によって構成された内縁辺18cを有する。図8に示される内縁辺18cを構成する一対の傾斜面は、具体的には、一対の角部18aの内側の縁辺の端から板バネ18の左右方向の中心に向かって、当該板バネ18の上下方向の中心に近づくように傾斜している。
【0084】
板バネ18は、凹部18bの内縁辺18cが突起部15bにおける回転中心Cを向く面の両端縁に当接するように、ロックベース14に取り付けられている。
【0085】
つぎに、操作部4からの回転操作力がレバーベース15に作用した際に、レバーベース15の軸方向への移動を規制するために必要な軸方向荷重、すなわち、板バネ18に要求される軸方向荷重(軸方向付勢力)について、図12図13を参照しながら検討する。
【0086】
操作部4の操作レバー4a(図1参照)から回転操作力の入力があると、レバーベースアセンブリ24のうちレバーベース15の突起部15bに荷重F2が入力されるとする。このとき、第2スプリング20の弾性力による荷重F1を上記荷重F2と逆向きにレバーベース15のカム部15aの端末保持孔15dの内周面に受けるとする。そして、カム部15aの軸受孔15eの内周面15fには、荷重F2および荷重F1の合成成分である荷重F3(=F2-F1)が発生する。荷重F3は、内周面15fがロックベース14のカム支持軸14hを押す方向で発生する。
【0087】
ここで、レバーベース15のカム部15aの肉厚部15gの角部を回転中心Oとして、荷重F1、F2によって発生するレバーベース15の回転中心O回りに作用するトルクTを考える。荷重F1、F2の各力点と回転中心Oからの距離をそれぞれX1、X2とした場合、回転中心O回りのトルクTは、時計回りを正として、T=F1×X1+F2×X2で表される。
【0088】
また、ロックベース14(のカム支持軸14h)の材料(例えばナイロン(登録商標))とレバーベース15の材料(例えばスチール)との静止摩擦係数をμcとした場合、カム部15aの軸受孔15eの内周面15fにおいて荷重F3によって発生する摩擦抵抗Fcは、Fc=F3×μcとなる。
【0089】
レバーベース15の軸受孔15eで受ける荷重F3の力点と回転中心Oからの距離をX3とした場合、レバーベース15を持ち上げるための回転中心O回りのトルクTuは、
Tu=T-Fc×X3となる。
【0090】
このレバーベース15を持ち上げるトルクTuによって、ロックベース14の図13における左右両端には力F4がそれぞれ作用する。具体的には、ロックベース14の回転中心Oから最も遠い端部(図13の右端部)を押し下げる下向きの力F4がロックベース14に作用して、レバーベース15のカム部15aの右側の部分がロックベース14から離れようとする。一方、それと同等の力であって、当該回転中心Oの側の端部(図13の左端部)を押し上げる上向きの力F4も作用する。
【0091】
回転中心Oから最も遠い端部(図13の右端部)の力F4の力点と回転中心Oからの距離をX4とした場合、
F4=Tu/X4となる。
【0092】
したがって、板バネ18は、ロックベース14を上記の力F4でレバーベース15に向けて軸方向に作用することにより、レバーベース15(とくに、カム部15a)の軸方向へのずれまたは傾きを防止することが可能である。
【0093】
つぎに、減速機構部12について説明する。
【0094】
図3に示される減速機構部12は、上記のクラッチ板16に回転力が伝達されたときに、その回転力を減速しながら出力側端部の後側リンク部材33に伝達して、当該後側リンク部材33を正逆いずれかの方向に揺動するように構成されている。
【0095】
減速機構部12の構成については、本発明ではとくに限定されないが、例えば、図16に示される構成の減速機構部12が採用される。
【0096】
図16示される減速機構部12は、上記のクラッチ板16と、3個の遊星歯車31と、太陽歯車32と、上記の固定プレート21と、後側リンク部材33と、支持プレート34と、3本の連結ピン35とを備えている。クラッチ板16は、上記のクラッチ機構部11と共用している。
【0097】
クラッチ板16の軸方向対向面16bには、3個の軸受孔16dおよび3個のピン孔16eが互い違いに等間隔に形成されている。同様に、支持プレート34においても、3個の軸受孔34aおよび3個のピン孔34bが互い違いに等間隔に形成されている。
【0098】
各遊星歯車31は、ギア部31aと、当該ギア部31aの軸方向両側に延びる軸部31bを有する。各遊星歯車31は、両側の軸部31bがクラッチ板16の軸受孔16dおよび支持プレート34の軸受孔34aに挿入されることにより、クラッチ板16と支持プレート34の間で回転自在に支持されている。
【0099】
太陽歯車32は、3個の遊星歯車31に同時に噛み合うことが可能な位置に配置されている。太陽歯車32は、上記の伝達シャフト8の端部に連結されている。
【0100】
固定プレート21の中央には、開口が形成されている。開口の内周には、内歯歯車部
21aおよび収容凹部21bが形成されている。内歯歯車部21aは、3個の遊星歯車
31に噛み合っている。収容凹部21bには、クラッチ板16が回転自在に収容されている。
【0101】
後側リンク部材33のアーム部33aの根元側端部(上端部)には、開口が形成されている。開口の内周には、内歯歯車部33bおよび収容凹部33cが形成されている。内歯歯車部33bの歯数は、固定プレート21の内歯歯車部21aの歯数よりも少なくなるように設定されている。内歯歯車部33bは、内歯歯車部21aと軸方向に並んで配置され、3個の遊星歯車31に噛み合っている。収容凹部33cには、固定プレート21が収容されている。これにより、後側リンク部材33は、固定プレート21に回転自在に支持される。
【0102】
3本の連結ピン35は、クラッチ板16と支持プレート34との間に配置され、これらのピン孔16e、34bに係合することにより、クラッチ板16と支持プレート34とを連結している。
【0103】
なお、図1の左側(奥側)の回転力伝達制御機構3は、上記とほぼ同様の減速機構部12を備えているが、クラッチ板16の代わりに上記の支持プレート34とほぼ同様の支持プレートを備え、当該支持プレートにおける連結ピン35を挿入するための穴の大きさが小さくなっている点で異なっており、その他の点では共通している。
【0104】
以上のように構成された回転力伝達制御機構3を内蔵するリフター機構2は、以下のようにしてシートの昇降動作を行う。
【0105】
まず、図1の操作部4の操作レバー4aを時計方向に回動操作する。これにより、図15に示されるように、レバーベース15のカム部15aがロックベース14及びクラッチ板16に対して僅かに回動し、その回動によって、ローラ17がカム部15aのカム面15cとクラッチ板16のカム対向面16aとに挟まれてカム部15aがクラッチ板16に対してロック状態になる。
【0106】
この状態で、更に、操作レバー4aを同方向に回動操作すると、クラッチ板16が同方向に回動し、そのクラッチ板16の回動に伴って、遊星歯車31の軸部31bがクラッチ板16の軸受孔16dの内周面によってクラッチ板16の回転方向に押されることにより、遊星歯車31それぞれが太陽歯車32、後側リンク部材33の内歯歯車部33b、および固定プレート21の内歯歯車部21aそれぞれのギアと噛み合って、遊星歯車31それぞれが自転しながら太陽歯車32の回りを公転する。このとき、遊星歯車31は、後側リンク部材33の内歯歯車部33b、および固定プレート21の内歯歯車部21aに沿って周回する。
【0107】
後側リンク部材33の内歯歯車部33bが固定プレート21の内歯歯車部21aよりも歯数が少ないため、遊星歯車31が後側リンク部材33の内歯歯車部33bおよび固定プレート21の内歯歯車部21aに沿って周回することにより、後側リンク部材33が固定プレート21に対して相対的に反時計方向に回動する。これにより、後側リンク部材33は、上端を軸に反時計方向に揺動する。
【0108】
また、上記遊星歯車31それぞれが太陽歯車32を周回するに際し、太陽歯車32が回転(自転)し、これに伴い伝達シャフト8を介して図1のシート左側のリフター機構2内部の太陽歯車32も回転することにより、図1のシート左側の後側リンク部材33も上端を軸に反時計方向に揺動することが可能になる。これにより、シートの両側の昇降フレーム5を所定量だけ上昇することが可能である。
【0109】
昇降フレーム5を更に上昇させる場合は、一旦、回動操作している操作レバー4aから手を離す。これにより、カム部15aがロックベース14に対して第2スプリング20の付勢力によって反時計方向に回転する。カム部15aが反時計方向に回動し始めると、カム部15aのカム面15cとクラッチ板16のカム対向面16aとに挟まれていたローラ17がロック解除状態になる。
【0110】
これにより、クラッチ板16はカム部15aと共に回動せずに、カム部15aだけが反時計方向に回動する。従って、ローラ17がクラッチ板16とカム部15aのカム面15cとの間でロックされるロック状態から当該ローラ17がクラッチ板16とカム部15aの凹部15c1との間に位置するロック解除状態との限られた範囲において、クラッチ板16とカム部15aとローラ17とがワンウェイ(一方向)クラッチを構成し、クラッチ板16が回動せず、又、遊星歯車31、後側リンク部材33も可動することがなく、昇降フレーム5は昇降しない。
【0111】
一方、カム部15aの反時計方向への回動に際し、それに係止された操作レバー4aが共に同方向に回動し、図1の元の状態に戻る。この状態から、再度、上記のように、操作レバー4aが図1の時計方向に回動操作する。
【0112】
これにより、昇降フレーム5を更に所定量だけ上昇させることができる。更に所定量だけ上昇させる場合は、上記操作を繰り返すことにより、昇降フレーム5を上昇させる動作を間欠的に行なうことができる。
【0113】
一方、上昇後の昇降フレーム5を下ろす場合は、操作レバー4aを、上記の上昇動作の場合とは逆に、図1の反時計方向に回動操作することにより行なうことができる。
【0114】
(本実施形態の特徴)
(1)
本実施形態の回転力伝達制御機構3は、入力部であるレバーベース15と出力部であるクラッチ板16との間に転動体である複数のローラ17が係合することによって当該レバーベース15が受けた回転力を当該クラッチ板16へ伝達する回転力伝達制御機構であり、具体的には、複数のカム面15cを外周に有する多角形のカム部15aを備えた回転可能なレバーベース15と、当該複数のカム面15cのそれぞれに対向するカム対向面16aを有し、レバーベース15と同軸状に回転可能なクラッチ板16と、カム面15cとカム対向面16aとの間に形成された空間にそれぞれ配置された複数のローラ17と、レバーベース15の回転軸Cが延びる軸方向Aにおいてレバーベース15に対してクラッチ板16と反対側に位置し、レバーベース15を回転可能に保持するとともに複数のローラ17を転動可能に保持するロックベース14と、レバーベース15および複数のローラ17の当該レバーベース15の軸方向Aへの移動を規制するように、ロックベース14をクラッチ板16へ向けて軸方向Aに付勢する軸方向付勢部材としての板バネ18とを備えている。
【0115】
かかる構成では、軸方向付勢部材としての板バネ18がレバーベース15および複数のローラ17の軸方向Aへの移動を規制するように、ロックベース14をクラッチ板16へ向けて軸方向Aに付勢する。これにより、レバーベース15は、大きな操作力が入力されても、板バネ18からの付勢力によって複数のローラ17とともに軸方向Aへの移動が規制されているので、レバーベース15の回転軸Cの軸方向Aに関してみれば、レバーベース15および複数のローラ17は、軸方向Aへずれるおそれが低減する。その結果、ローラ17を介してレバーベース15からクラッチ板16への良好なトルク伝達が可能になり、レバーベース15の空転を抑制することが可能である。
【0116】
なお、上記の実施形態では、転動体としてローラを例に挙げて説明しているが、転動可能な部材であればよく、例えば、ボール、またはピンなどでもよい。
【0117】
(2)
本実施形態の回転力伝達制御機構3では、クラッチ板16は、レバーベース15の回転軸Cが延びる軸方向Aを向いてレバーベース15に対向する軸方向対向面16bをさらに有する。板バネ18は、レバーベース15および複数のローラ17を軸方向対向面16bに押圧するように、ロックベース14に対して軸方向Aに付勢する。
【0118】
かかる構成では、板バネ18がレバーベース15および複数のローラ17を軸方向対向面16bに押圧するように、ロックベース14に対して軸方向Aに付勢する。これにより、レバーベース15は、大きな操作力が入力されても、板バネ18からの付勢力によって複数のローラ17とともにクラッチ板16の軸方向対向面16bに押圧されて軸方向Aへの移動が規制されているので、レバーベース15の回転軸Cの軸方向Aに関してみれば、レバーベース15および複数のローラ17は、軸方向Aへずれるおそれがさらに低減する。その結果、ローラ17を介してレバーベース15からクラッチ板16へのより良好なトルク伝達が可能になり、レバーベース15の空転をさらに抑制することが可能である。
【0119】
(3)
本実施形態の回転力伝達制御機構3は、ロックベース14と軸方向Aに並んで配置されたベースブラケット13を備えている。板バネ18は、ロックベース14とベースブラケット13との間に圧縮された状態で挟まれて配置されている。
【0120】
かかる構成では、板バネ18は、ロックベース14とベースブラケット13との間に圧縮された状態で挟まれて配置されており、常時、レバーベース15は、板バネ18からの付勢力によって複数のローラ17とともに軸方向Aへの移動が規制されている。そのため、レバーベース15は、複数のローラ17とともに軸方向Aへずれるおそれがさらに低減する。その結果、ローラ17を介してレバーベース15からクラッチ板16へのより良好なトルク伝達が可能になり、レバーベース15の空転をさらに確実に抑制することが可能である。
【0121】
(4)
本実施形態の回転力伝達制御機構3では、軸方向付勢部材として板バネ18が用いられている。これにより、板バネ18をロックベース14と固定壁との間に圧縮状態で挟んで配置することを容易に行うことが可能であり、回転力伝達制御機構3の組立作業性を向上することが可能である。また、かかる構成では、軸方向付勢部材が板バネ18であるので、軸方向付勢部材の厚みだけでなく当該軸方向付勢部材を含む回転力伝達制御機構3の全体の厚みを抑制することが可能である。
【0122】
(5)
本実施形態の回転力伝達制御機構3では、ロックベース14の軸方向Aを向く面14iから軸方向Aへ突出する少なくとも1つの突起部15bをさらに備えている。突起部15bは、板バネ18がレバーベース15の回転中心Cからのずれを抑制するように、板バネ18の周縁の少なくとも一部に当接する。かかる構成により、板バネ18がレバーベース15の回転中心Cからのずれを抑制することが可能である。
【0123】
(6)
本実施形態の回転力伝達制御機構3では、2つの突起部15bは、板バネ18を当該板バネ18の幅方向両側から挟むように配置されている。かかる構成により、板バネ18がレバーベース15の回転中心Cからのずれを確実に抑制することが可能である。
【0124】
(7)
本実施形態の回転力伝達制御機構3では、上記の突起部15bは、レバーベース15の一部分であり、ロックベース14の軸方向Aを向く面14iを貫通して軸方向Aへ突出している。かかる構成により、レバーベース15に形成された突起部15bは、外部からの操作力を受けるレバーベース15として用いられるだけでなく、板バネ18のずれを規制することにも用いることが可能であるので、部品点数の増加や大幅な設計変更を抑制することが可能である。
【0125】
(8)
本実施形態の回転力伝達制御機構3では、板バネ18は、突起部15bを回転中心Cを基準とする周方向両側から挟むことが可能な間隔だけ離間し、当該板バネ18の周縁から板バネ18表面に沿った方向に突出する一対の角部18aを有している。板バネ18は、一対の角部18aが突起部15bを周方向両側から挟むように、ロックベース14に取り付けられている。
【0126】
かかる構成により、板バネ18をロックベース14に取り付ける際に、一対の角部18aによって突起部15bを周方向両側から挟むことにより、板バネ18が突起部15bに対する周方向両側へのずれを抑制することが可能であり、板バネ18の取付け作業が容易である。また、一対の角部18aの位置に基づいて板バネ18の組付けが良好か否か容易に判定することが可能である。
【0127】
製造時には、上記の一対の角部18aによって左右方向(すなわち、一対の角部18aが並ぶ方向)への位置規制がされて、板バネ18の左右方向への位置ズレが起こりづらいので、板バネ18の組付けが容易になる。
【0128】
また、角部18aが設けられることで、組付け失敗時に、組付け失敗であることを作業員に明確に認識させることができる。例えば、板バネ18の組付けに失敗して、いずれかの角部18aがレバーベース15の突起部15bに乗り上がっている状態となった場合、板バネ18が大きく傾いた状態となり、組付け失敗を作業員に明確に認識させることができる。この結果、板バネ18が組付け失敗したにもかかわらず、発見されずに出荷されることを抑制できる。
【0129】
また、センサなどの検出部によって板バネ18の位置を自動的に検出して、板バネ18の組付け正否を判定する場合にも、角部18aがレバーベース15の突起部15bに乗り上がっている状態では、ロックベース14に対して板バネ18が大きく離れた位置となるので、組付けを失敗と判定することが可能である。
【0130】
(9)
本実施形態の回転力伝達制御機構3では、板バネ18は、突起部15bに対向する縁において当該突起部15bから離れる方向に凹む凹部18bが形成されている。凹部18bは、突起部15bにおける回転中心Cを向く面の両端縁に当接することが可能な内縁辺18cを有している。板バネ18は、凹部18bの内縁辺18cが突起部15bにおける回転中心Cを向く面の両端縁に当接するように、ロックベース14に取り付けられている。
【0131】
かかる構成により、板バネ18をロックベース14に取り付ける際に、板バネ18の凹部18bの内縁辺18cが突起部15bにおける回転中心Cを向く面の両端縁に当接することにより、板バネ18と突起部15bとの距離のずれを抑制することが可能であり、板バネ18の取付け作業が容易である。
【0132】
なお、実施例では、凹部の形状がV字形を示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、半円形の形状の凹部であっても上記の作用を奏することが可能である。
【0133】
(10)
本実施形態の回転力伝達制御機構3では、板バネ18は、その端部において腕部18dを有し、腕部18dによってロックベース14に位置決めされる。かかる構成では、板バネ18の端部の腕部18dによって板バネ18をロックベース14に位置決めすることにより、板バネ18をロックベース14に対して位置ズレを抑えて容易に取り付けることが可能である。
【0134】
(11)
本実施形態の回転力伝達制御機構3では、腕部18dは、先端へ向かうにつれて細くなる形状の先端部18eを有している。腕部18dの先端部18eは、ロックベース14に形成された凹部18bに挿入されている。
【0135】
かかる構成により、腕部18dの先端部18eをロックベース14の凹部18bに容易に挿入することが可能であり、板バネ18の取付け作業が容易である。
【0136】
(12)
本実施形態の回転力伝達制御機構3は、ロックベース14に取り付けられ、レバーベース15に対して当該レバーベース15の回転中心Cを基準とする所定の周方向位置に復帰するように周方向の力を与える第2スプリング20をさらに備えている。かかる構成により、第2スプリング20からレバーベース15へ周方向の力を与えることにより、当該レバーベース15の回転中心Cを基準とする所定の周方向位置に復帰することが可能である。
【0137】
(13)
本実施形態のリフター機構2は、上記の構造の回転力伝達制御機構3を備えている。これにより、ローラ17を介してレバーベース15からクラッチ板16への良好なトルク伝達が可能になり、レバーベース15の空転を抑制することが可能である。とくに、シートに大重量の利用者が座っているなどの場合にシートを持ち上げるためにクラッチ板16から大きなトルクを出力する場合に、大きな操作力をレバーベース15に入力しても、レバーベース15の空転を抑制することが可能である。
【0138】
(変形例)
(A)
本発明の変形例として、図17~18に示されるように、板バネ18の腕部18dは、ロックベース14に設けられた被係合部である第2スプリング20に係合可能な係合部18fを有しているようにしてもよい。その場合、腕部18dは、係合部18fを被係合部である第2スプリング20に係合することにより、ロックベース14に連結するようにすればよい。
【0139】
具体的には、係合部18fは、一対の腕部18dのうちのいずれか一方の腕部18dの先端部をヘアピン状またはU字状に小さい曲率半径で曲げて形成されている。係合部18fは、板バネ18のバネ性を利用して第2スプリング20をくわえ込むようにして変形することにより第2スプリング20に確実に係合することが可能である。なお、係合部18fの形状は、第2スプリング20などの被係合部に係合可能であれば、ヘアピン状またはU字状以外の形状であってもよい。
【0140】
この図17~18に示される変形例では、腕部18dの係合部18fをロックベース14の被係合部である第2スプリング20に容易に係合することが可能であり、板バネ18の取付け作業が容易である。
【0141】
図17~18に示される変形例では、被係合部である第2スプリング20は、ロックベース14に取り付けられ、レバーベース15に対して当該レバーベース15の回転中心Cを基準とする所定の周方向位置に復帰する周方向の力を与える周方向付勢部材である。この構成では、第2スプリング20を、板バネ18の腕部18dの係合部18fが係合される被係合部として用いることが可能であり、板バネ18を組み付けた際に、組み付け位置の位置ズレを抑制し、組み付け位置を安定化させることが可能である。
【0142】
なお、図17~18の変形例では、板バネ18の腕部18dの係合部18fが係合する被係合部として、ロックベース14に設けられた周方向付勢部材である第2スプリング20が用いられているが、本発明はこれに限定されるものではない。被係合部として、ロックベース14に設けられた部分であって、第2スプリング20とは別の部分を採用してもよい。
【0143】
(B)
本発明の他の変形例として、図19に示されるように、板バネ18は、突起部15bに対向する縁において当該突起部15bへ向けて突出する凸部18hが形成されてもよい。
【0144】
図19に示される凸部18hは、突起部15bにおける回転中心Cを向く面(例えば、図4において一対の突起部15bの互いに対向する内側の面)に接触することが可能な外縁辺18h1を有している。板バネ18は、凸部18hの外縁辺18h1が図3~4に示される突起部15bにおける回転中心Cを向く面に接触するように、ロックベース14に取り付けられるようにすればよい。
【0145】
この図19に示される変形例では、板バネ18をロックベース14に取り付ける際に、板バネ18の凸部18hの外縁辺18h1が突起部15bにおける回転中心Cを向く面に接触することにより、板バネ18と突起部15bとの距離のずれを抑制することが可能であり、板バネ18の取付け作業が容易である。
【0146】
(C)
本発明のさらに他の変形例として、図19に示されるように、板バネ18は、そのばね定数を調整することができるように穴18gまたは切欠きを有するようにしてもよい。この場合、板バネ18の穴18gまたは切欠きによって板バネ18のばね定数を容易に調整することが可能である。なお、図19に示す板バネ18も、図9および図17に示す板バネ18と同様、中央部を頂点に厚さ方向に折れ曲がっている。
【0147】
(D)
上記実施形態では、板バネ18が1つ設けられている例が示されているが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明のさらに他の変形例として、複数の板バネ18によってロックベース14(保持部)を軸方向Aに付勢してもよい。その場合、ロックベース14が軸方向Aに対してずれや傾斜するおそれが低減する。
【0148】
また、本発明のさらに他の変形例として、軸方向付勢部材として、上記板バネ18の代用として、圧縮コイルバネ等の他の付勢部材を用いてもよい。さらに、板バネ18および他の付勢部材(圧縮コイルバネ等)を併用して用いてもよい。
【0149】
(E)
上記の実施形態では、回転力伝達制御機構3を内蔵したリフター機構2を備えた座席構造1を例に挙げて説明しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の回転力伝達制御機構3を座席構造1の他の機構の少なくとも1つに採用するようにしてもよい。すなわち、本発明のさらに他の変形例として、座席構造1は、上記の実施形態の回転力伝達制御機構3をそれぞれ備えたリフター機構2、リクライニング機構、またはランバー制御機構のうちの少なくとも1つを備えているようにしてもよい。
【0150】
このように、上記の回転力伝達制御機構3をそれぞれ備えたリフター機構2、リクライニング機構、またはランバー制御機構を座席構造1に適用することにより、シートの昇降動作、リクライニング動作、およびランバー動作のいずれを行うときでも、入力部であるレバーベース15の空転を抑制することが可能である。
【符号の説明】
【0151】
1 座席構造
2 リフター機構
3 回転力伝達制御機構
4 操作部
5 昇降フレーム
6 ベースフレーム
7 前側リンクアーム
11 クラッチ機構部
12 減速機構部
13 ベースブラケット(固定部材)
14 ロックベース(保持部)
14i 軸方向を向く面
14j 貫通孔
15 レバーベース(入力部)
15a カム部
15b 突起部
15c カム面
16 クラッチ板(出力部)
16a カム対向面
16b 軸方向対向面
17 ローラ(転動体)
18 板バネ(軸方向付勢部材)
18a 角部
18b 凹部
18c 内縁辺
18d 腕部
18e 先端部
18f 係合部
18g 穴部
18h 凸部
18h1 外縁辺
25 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19