(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】診療用装置
(51)【国際特許分類】
A61G 15/12 20060101AFI20230704BHJP
A47C 7/38 20060101ALI20230704BHJP
A61G 15/00 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
A61G15/12 510
A47C7/38
A61G15/00 A
(21)【出願番号】P 2019097735
(22)【出願日】2019-05-24
【審査請求日】2022-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390011121
【氏名又は名称】株式会社モリタ東京製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【氏名又は名称】古部 次郎
(72)【発明者】
【氏名】日比野 徹
(72)【発明者】
【氏名】坂下 洋平
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-066136(JP,U)
【文献】米国特許第04515406(US,A)
【文献】特開2017-93502(JP,A)
【文献】実開昭52-168010(JP,U)
【文献】特開2011-50632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 15/00-12
A47C 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の頭部
に接触する接触面と当該接触面とは反対側に位置する反対面とを有し、当該頭部を支持する頭部支持部と、
曲率を有し、前記頭部支持部の前記反対面の対向位置に配置されるとともに、当該反対面から離れる方向に向かって凸となるように形成され、当該頭部支持部に連動する連動部分と、
前記連動部分
のうちの、前記反対面の対向位置に位置する部分に押し当てられ、回転駆動を行い
前記頭部支持部の姿勢を変化させる回転体と、
を備え、
前記頭部支持部に対して前記回転体以外から荷重が加わった場合に、前記連動部分と当該回転体との間に滑りが生じて、当該頭部支持部の姿勢が変化する診療用装置。
【請求項2】
前記連動部分を挟み前記回転体とは反対側に、当該連動部分に押し当てられる反対側回転体が設けられ、
前記回転体と前記反対側回転体の両者が前記連動部分に押し当てられ、当該回転体と当該反対側回転体とにより当該連動部分が挟まれている請求項1に記載の診療用装置。
【請求項3】
前記回転体および前記反対側回転体は、複数組設けられ、
複数組設けられた前記回転体および前記反対側回転体は、前記連動部分の移動方向における位置が互いにずらされた状態で設けられている請求項2に記載の診療用装置。
【請求項4】
曲率を有する前記連動部分は、曲率中心側に位置する中心側面であって前記反対面側を向く中心側面と、当該中心側面とは反対側に位置する反対面とを有し、
前記回転体は、前記連動部分の前記反対面に押し当てられ、
前記回転体を駆動させるモータが設けられ、
前記モータの出力軸が、前記回転体の回転軸の延長線上に位置しておらず、
曲率を有する前記連動部分から前記曲率中心に向かう方向における位置を比べた場合に、前記モータの前記出力軸が、前記回転体の前記回転軸よりも当該曲率中心に近い側に位置する請求項1に記載の診療用装置。
【請求項5】
前記連動部分は、曲率を有する板状部材により構成され、曲率中心側に位置する中心側面
であって前記反対面側を向く中心側面と、当該中心側面とは反対側に位置する反対面とを有し、
前記回転体は、前記連動部分の前記反対面に押し当てられている請求項1に記載の診療用装置。
【請求項6】
前記連動部分は、板状部材により構成され、
前記回転体は、前記板状部材の一方の面に押し当てられ、
前記板状部材の厚み方向における位置を比べた場合に、前記回転体を駆動させる駆動源が、当該回転体よりも当該板状部材側に位置する請求項1に記載の診療用装置。
【請求項7】
前記駆動源は、モータであり、
前記モータの出力軸の延長線上に前記板状部材が位置する請求項
6に記載の診療用装置。
【請求項8】
前記回転体を駆動させる駆動源は、複数設けられている請求項1に記載の診療用装置。
【請求項9】
複数設けられた前記駆動源は、前記連動部分の移動方向における位置が互いにずらされた状態で設けられている請求項
8に記載の診療用装置。
【請求項10】
前記連動部分に押し当てられる前記回転体は、複数設けられ、
複数の前記回転体の各々に対応して、当該回転体を回転させる駆動源が設けられている請求項1に記載の診療用装置。
【請求項11】
前記連動部分は、一方向へ移動するように設けられているとともに当該一方向と交差する方向に幅を有し、
前記連動部分に押し当てられた前記回転体は、当該連動部分の幅方向における一端部側から他端部側にかけて設けられている請求項1に記載の診療用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診療用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、後方に倒された背もたれを起立させるのに先駆けて、角度調整されたヘッドレストの左右の位置と前後の位置とを予め設定された設定位置に復元させる姿勢制御スイッチを備えたチェアが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
診療に用いられる診療用装置では、患者の頭部を支持する頭部支持部が設けられることがあり、駆動機構を用いてこの頭部支持部を駆動すると、頭部支持部の姿勢を変化させることができる。その一方で、この構成では、頭部支持部に対して駆動機構以外の箇所から荷重が作用すると、この荷重が駆動機構に伝わることになる。
本発明の目的は、頭部支持部に加わった荷重がこの頭部支持部を駆動する駆動機構に伝わってこの駆動機構が損傷することを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと、本発明が適用される診療用装置は、患者の頭部を支持する頭部支持部と、前記頭部支持部に連動する連動部分に押し当てられ、回転駆動を行い当該頭部支持部の姿勢を変化させる回転体と、を備え、前記頭部支持部に対して前記回転体以外から荷重が加わった場合に、前記連動部分と当該回転体との間に滑りが生じて、当該頭部支持部の姿勢が変化する診療用装置である。
ここで、前記連動部分を挟み前記回転体とは反対側に、当該連動部分に押し当てられる反対側回転体が設けられ、前記回転体と前記反対側回転体の両者が前記連動部分に押し当てられ、当該回転体と当該反対側回転体とにより当該連動部分が挟まれていることを特徴とすることができる。
また、前記回転体および前記反対側回転体は、複数組設けられ、複数組設けられた前記回転体および前記反対側回転体は、前記連動部分の移動方向における位置が互いにずらされた状態で設けられていることを特徴とすることができる。
また、前記連動部分は、曲率を有する板状部材により構成され、曲率中心側に位置する中心側面と、当該中心側面とは反対側に位置する反対面とを有し、前記回転体は、前記連動部分の前記反対面に押し当てられていることを特徴とすることができる。
【0006】
また、前記連動部分は、板状部材により構成され、前記回転体は、前記板状部材の一方の面に押し当てられ、前記板状部材の厚み方向における位置を比べた場合に、前記回転体を駆動させる駆動源が、当該回転体よりも当該板状部材側に位置することを特徴とすることができる。
また、前記駆動源は、モータであり、前記モータの出力軸の延長線上に前記板状部材が位置することを特徴とすることができる。
また、前記回転体を駆動させる駆動源は、複数設けられていることを特徴とすることができる。
また、複数設けられた前記駆動源は、前記連動部分の移動方向における位置が互いにずらされた状態で設けられていることを特徴とすることができる。
また、前記連動部分に押し当てられる前記回転体は、複数設けられ、複数の前記回転体の各々に対応して、当該回転体を回転させる駆動源が設けられていることを特徴とすることができる。
また、前記連動部分は、一方向へ移動するように設けられているとともに当該一方向と交差する方向に幅を有し、前記連動部分に押し当てられた前記回転体は、当該連動部分の幅方向における一端部側から他端部側にかけて設けられていることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、頭部支持部に加わった荷重がこの頭部支持部を駆動する駆動機構に伝わってこの駆動機構が損傷することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】歯科用診療システムの全体構成を示した斜視図である。
【
図2】(A)、(B)は、ヘッドレストを説明する図である。
【
図3】外装カバーを取り外した状態のヘッドレストを示した図である。
【
図4】正面からヘッドレストを見た場合の図である。
【
図5】
図3の矢印Vで示す方向からヘッドレストを見た場合の図である。
【
図6】
図5の矢印VIで示す方向から移動機構を見た場合の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態にかかる歯科用診療システム1の全体構成を示した斜視図である。
同図に示すように、本実施形態の歯科用診療システム1では、床面の上に、患者を下方から支持する診療用椅子2が設けられている。
なお、本実施形態では、歯科にて用いられる診療用椅子2を説明するが、本実施形態の診療用椅子2は、歯科に限らず、耳鼻科、内科等の他の科の診療にも用いることができる。
【0010】
診療用装置の一例としての診療用椅子2は、基台2a、基台2aにより支持され昇降可能に設けられた座板2bを備える。さらに、診療用椅子2は、一端が座板2bに取り付けられこの一端を中心に回転する背板2c、背板2cに取り付けられ患者の頭部を支えるヘッドレスト2dを備える。
なお、
図1では、診療用装置として、椅子型の診療用装置を一例に示したが、診療用装置としては、その他に、例えば、
図7(診療用装置の他の一例を示した図)に示すようにベッド型としてもよい。
このベッド型の診療用装置では、面状に構成され寝た状態の患者を下方から指示する支持部2f、この支持部2fに取り付けられ患者の頭部を支えるヘッドレスト2d、支持部2fを昇降させる昇降機構2gが設けられている。
【0011】
図1を参照し、歯科用診療システム1についてさらに説明する。
診療用椅子2の脇には、医師用のトレーテーブル3が設けられ、さらに、医師用のインスツルメントホルダ10が設けられている。
さらに、診療用椅子2を挟みトレーテーブル3の反対側には、アシスタント用のインスツルメントホルダ4が設けられている。
また、患者の口腔への光照射を行う歯科用照明装置100、歯科用照明装置100を支持するアーム6b、アーム6bを支持する支柱6cが設けられている。
【0012】
なお、ドクター用のインスツルメントホルダ10及びアシスタント用のインスツルメントホルダ4には、歯科用の診療用器具(インスツルメント)11が抜差し自在に保持される(
図1では、アシスタント用の診療用器具11のみを図示)。
ドクター用の診療用器具11としては、例えば、エアタービンハンドピース、マイクロモータハンドピース、スケーラ、スリーウェーシリンジ、根管長測定器、根管拡大器、口腔内カメラを挙げることができる。
【0013】
また、アシスタント用の診療用器具11としては、例えば、患者の口腔内の唾液、血液、切削屑など(以下、「廃液」と称することがある)を吸引する吸引用器具20を挙げることができる。
なお、
図1では、インスツルメントホルダ4によって、吸引用器具20の一例としてのサクションシリンジ(バキュームシリンジ)21、サライバエジェクタ22が保持されている。
吸引用器具20の各々は、真空ポンプやコンプレッサーなどの不図示の吸気源(後述)に接続されており、この吸気源にて吸気が行われることで、上記廃液の吸引を行う。
【0014】
また、本実施形態では、診療用椅子2の脇に、患者がうがいに用いるコップに水を供給する供給装置(スピットン装置)5が設けられている。
供給装置5には、ベースユニット51、ベースユニット51の上に設置され患者の口腔内から排出された廃液を受ける廃液受け部(ベースン)52、コップに対し水を供給するコップ用給水部53、清掃用の水を廃液受け部52に供給する清掃用給水部54が設けられている。
【0015】
さらに、供給装置5には、ベースユニット51の内部に、廃液を収容する収容容器(サクションタンク)60が設けられている。
収容容器60には、上記吸引用器具20(サクションシリンジ21、サライバエジェクタ22等)によって吸引された廃液(患者の口腔内から吸引された廃液)が収容される。
さらに、本実施形態では、歯科用診療システム1の各部を制御する制御装置80が設けられている。制御装置80は、CPU、RAM、ROMなどを備えたコンピュータ装置により構成されている。
【0016】
さらに、本実施形態では、医師からの指示を受け付ける受け付け装置(不図示)が設けられている。
本実施形態では、この受け付け装置に対する指示が医師からあると、この指示が制御装置80に出力される。そして、制御装置80が、この指示に応じた処理を実行する。これにより、歯科用診療システム1の各部が駆動する。
ここで、受け付け装置としては、タッチパネルや、医師の足により操作されるフットスイッチが一例として挙げられる。
【0017】
図2(A)、(B)は、ヘッドレスト2dを説明する図である。なお、
図2(A)は、ヘッドレスト2dの背面側からヘッドレスト2dを見た場合の図であり、
図2(B)は、ヘッドレスト2dの正面側からヘッドレスト2dを見た場合の図である。
【0018】
図2(B)に示すように、ヘッドレスト2dには、患者の頭部に接触しこの頭部を支持する頭部支持部200が設けられている。頭部支持部200は、その断面形状がV字状となるように形成されている。付言すると、頭部支持部200には、患者の頭部が入り込む凹部が設けられている。
【0019】
ヘッドレスト2dには、ヘッドレスト2dを背板2c(
図1参照)に接続するための接続部材290が取り付けられ、ヘッドレスト2dは、この接続部材290を介して背板2cに取り付けられる。
本実施形態では、接続部材290に対して頭部支持部200が移動できるようになっている。具体的には、頭部支持部200は、
図2(A)の矢印2Aで示す方向へ移動できるようになっている。これにより、本実施形態では、頭部支持部200の姿勢を変化させることができる。
【0020】
図2(A)に示すように、頭部支持部200の背面側には、外装カバー300が設けられている。
外装カバー300には、ヘッドレスト2dの移動方向(図中、矢印2Aで示す方向)に沿って延びる貫通孔310が形成されている。本実施形態では、この貫通孔310に、接続部材290が通されている。
さらに、本実施形態では、外装カバー300よりも内側に位置し、貫通孔310を塞ぐ塞ぎ部材320が設けられている。
【0021】
図3は、外装カバー300を取り外した状態のヘッドレスト2dを示した図である。また、
図4は、正面からヘッドレスト2dを見た場合の図である。なお、
図4では、頭部支持部200を取り外した状態を示している。
図2(B)に示すように、頭部支持部200は、患者の頭部に接触する接触面201を有する。さらに、
図3に示すように、頭部支持部200は、この接触面201とは反対側に位置する反対面202を有する。
【0022】
図3に示すように、頭部支持部200の反対面202には、頭部支持部200に連動する連動部分の一例としての連動部材400が取り付けられている。
連動部材400は、頭部支持部200の移動方向(図中矢印3Aで示す方向)に延びるように設けられている。また、連動部材400は、長手方向における両端の部分が頭部支持部200に固定されている。より具体的には、連動部材400は、ねじ401によって、両端の部分が頭部支持部200に固定されている。
【0023】
また、連動部材400は、頭部支持部200の反対面202との間に間隙を有した状態で、この反対面202に対して取り付けられている。
また、連動部材400は、曲率を有する板状部材により構成され、曲率中心2C(
図2(B)参照)側に位置する中心側面400A(
図4参照)と、中心側面400Aとは反対側に位置する反対面400B(
図3参照)とを有する。
【0024】
さらに、
図3、
図4に示すように、本実施形態では、頭部支持部200を移動させる移動機構500が設けられている。
移動機構500は、接続部材290(
図3参照)に取り付けられており、本実施形態では、頭部支持部200の姿勢が変化しても、接続部材290に対する移動機構500の姿勢は変化しない。
【0025】
図3に示すように、移動機構500には、円柱状の回転体510が設けられている。
具体的には、回転体510として、第1回転体511および第2回転体512の2つの回転体510が設けられている。
第1回転体511、第2回転体512の各々は、円柱状に形成され、また、少なくとも外表面がシリコーンゴムや樹脂材料などの弾性を有する材料により構成されている。
【0026】
また、第1回転体511、第2回転体512の各々は、連動部材400に押し当てられている。第1回転体511、第2回転体512の各々は、後述するモータからの駆動力を受けて回転し、頭部支持部200の姿勢を変化させる。
【0027】
具体的には、本実施形態では、第1回転体511、第2回転体512が回転すると、連動部材400が、
図4の矢印4Aで示すように、連動部材400の長手方向に沿って移動する。これに伴い、頭部支持部200の姿勢が変化する。
より具体的には、頭部支持部200は、
図2(B)の符号2Xで示す回転軸(患者の頭頂部から顎方向に向かう回転軸)を中心に回転する。
【0028】
さらに、
図4に示すように、移動機構500には、円柱状の反対側回転体600が設けられている。具体的には、反対側回転体600として、第1反対側回転体610および第2反対側回転体620の2つの反対側回転体600が設けられている。
第1反対側回転体610および第2反対側回転体620の各々は、円柱状に形成され、また、少なくとも外表面がシリコーンゴムや樹脂材料などの弾性を有する材料により構成されている。
【0029】
反対側回転体600の各々は、連動部材400を挟み回転体510(
図3参照)とは反対側に設けられている。また、反対側回転体600は、連動部材400の中心側面400Aに押し当てられている。
本実施形態では、回転体510と反対側回転体600の両者が連動部材400に押し当てられ、回転体510と反対側回転体600とにより連動部材400が挟まれている。
【0030】
より具体的には、第1回転体511(
図3参照)と第1反対側回転体610(
図4参照)とが連動部材400を挟んで互いに対向配置され、第1回転体511と第1反対側回転体610とにより連動部材400が挟まれている。
また、第2回転体512(
図3参照)と第2反対側回転体620(
図4参照)とが連動部材400を挟んで互いに対向配置され、第2回転体512と第2反対側回転体620とにより連動部材400が挟まれている。
【0031】
本実施形態では、このように、第1回転体511、第1反対側回転体610が設けられ、また、第2回転体512、第2反対側回転体620が設けられ、回転体510および反対側回転体600は、複数組設けられている(本実施形態では、2組)。
また、本実施形態では、複数組設けられた回転体510および反対側回転体600は、連動部材400の移動方向における位置が互いにずらされた状態で設けられている。
【0032】
本実施形態のように、回転体510および反対側回転体600を複数組設けると、回転体510および反対側回転体600が1組設けられている場合に比べ、連動部材400がより安定的に支持される。
さらに、本実施形態では、
図4に示すように、回転体510、反対側回転体600、モータ(後述)等を支持する支持フレーム580が設けられている。
【0033】
本実施形態では、上記の通り、連動部材400は、曲率を有する板状部材により構成され、曲率中心2C側に位置する中心側面400Aと、中心側面400Aとは反対側に位置する反対面400B(
図3参照)とを有する。
図3に示すように、回転体510は、連動部材400の反対面400Bに押し当てられている。回転体510を、連動部材400の反対面400Bに押し当てると、連動部材400の位置の制御をより細かく行える。
【0034】
より具体的には、回転体510を反対面400Bに押し当てると、回転体510を中心側面400Aに押し当てる場合に比べ、回転体510がある単位角度だけ回転した際の連動部材400(頭部支持部200)の移動量が小さくなる。
この場合、回転体510を中心側面400Aに押し当てる場合に比べ、連動部材400(頭部支持部200)の位置の制御をより細かく行える。
【0035】
さらに、本実施形態では、
図4に示すように、回転体510を駆動させる駆動源の一例であるモータ70が、複数設けられている。
複数設けられたこのモータ70は、連動部材400の移動方向における位置が互いにずらされた状態で設けられている。
【0036】
さらに、本実施形態では、上記の通り、回転体510は複数設けられ、また、複数のこの回転体510の各々に対応して、回転体510を回転させるモータ70が設けられている。
より具体的には、本実施形態では、
図3の左側に位置する第1回転体511は、
図4の右側に位置する第1モータ71により駆動され、また、
図3の右側に位置する第2回転体512は、
図4の左側に位置する第2モータ72により駆動される。
【0037】
ここで、本実施形態のようにモータ70を複数設けると、モータ70が単数である場合に比べ、個々のモータ70のサイズを小さくできる。
この場合、例えば、
図2(B)の矢印2Zで示す方向におけるヘッドレスト2dの寸法を小さくできる。言い換えると、ヘッドレスト2dの厚みを小さくできる。
【0038】
さらに、本実施形態では、連動部材400は、一方向(
図4の矢印4Aで示す方向)へ移動するように設けられているとともに、この一方向と交差する方向(
図4の矢印4Bで示す方向)に幅を有して形成されている。
そして、本実施形態では、
図3に示すように、連動部材400に押し当てられた回転体510は、連動部材400の幅方向における一端部400C側から他端部400D側にかけて設けられている。
【0039】
より具体的には、回転体510は、連動部材400の幅方向における全域に亘って、連動部材400に押し当てられている。
より具体的には、回転体510は、外径よりも軸方向における長さの方が大きい形状を有し、細長い形状となっている。そして、本実施形態では、この細長い形状の回転体510が、連動部材400の幅方向の全域に亘って押し当てられている。
【0040】
これにより、外径よりも軸方向における長さの方が小さい形状を有する回転体510が連動部材400に押し当てられる構成や、連動部材400の幅方向における一端部400C側のみや他端部400D側のみに対して回転体510が押し当てられる構成に比べ、連動部材400をより安定的に移動させることができる。
【0041】
さらに、本実施形態では、
図4に示すように、支持フレーム580に、頭部支持部200(
図4では不図示)が押し当てられる押し当て部565が設けられている。
この押し当て部565は、上側の1箇所、下側の2箇所に設けられており、3つの押し当て部565に対して、頭部支持部200が押し当てられる。さらに、押し当て部565は、回転可能となっており、これにより、支持フレーム580に対して頭部支持部200が円滑に移動する。
【0042】
ここで、本実施形態では、頭部支持部200を移動させる移動機構500の損傷が生じにくくなる。
本実施形態の構成では、移動機構500以外から、頭部支持部200に対して過度な荷重が加わった場合に(予め定められた荷重を超える荷重が加わった場合に)、連動部材400と回転体510との間に滑りが生じ、頭部支持部200の姿勢が変化する。
【0043】
これにより、本実施形態では、移動機構500へ荷重が伝わりにくくなり、移動機構500の損傷が生じにくくなる。
ここで、滑りが生じる箇所が設けられていないと、頭部支持部200から移動機構500へ荷重が伝わりやすくなり、移動機構500の損傷などを招きやすくなる。
これに対して、本実施形態のように滑りが生じると、移動機構500に対して荷重が伝わりにくくなり、移動機構500の損傷が抑えられる。
【0044】
図5は、
図3の矢印Vで示す方向からヘッドレスト2dを見た場合の図である。
本実施形態では、図中符号291で示す箇所が、接続部材290が固定される被固定部となっている。
本実施形態では、この被固定部の一方の脇および他方の脇のそれぞれに、モータ70が設けられている。さらに、本実施形態では、モータ70からの駆動力を回転体510に伝達する伝達ギア130が設けられている。
具体的には、第1モータ71からの駆動力を第1回転体511に伝達する第1伝達ギア131、第2モータ72からの駆動力を第2回転体512に伝達する第2伝達ギア132が設けられている。
【0045】
より具体的には、本実施形態では、回転体510の各々には、回転体510と同軸上に配置された受けギア230が取り付けられている。
モータ70の各々にて発生した駆動力は、伝達ギア130を介してこの受けギア230に伝達される。これにより、受けギア230が回転し、これに伴い、回転体510が回転する。そして、回転体510が回転すると、連動部材400が移動する(頭部支持部200の姿勢が変化する)。
【0046】
図6は、
図5の矢印VIで示す方向から移動機構500を見た場合の図である。
本実施形態では、板状に形成された連動部材400の厚み方向における位置を比べた場合に、モータ70の方が、回転体510よりも連動部材400側に位置する。
この場合、モータ70の方が、回転体510よりも連動部材400から離れた側に位置する場合に比べ、連動部材400の厚み方向におけるヘッドレスト2dの寸法を小さくできる。
【0047】
さらに、本実施形態では、
図6に示すように、モータ70の出力軸70A(
図5参照)の延長線上に、連動部材400が位置している。
これにより、モータ70の出力軸70Aの延長線上に連動部材400が位置しない場合に比べ、連動部材400の厚み方向におけるヘッドレスト2dの寸法を小さくできる。
【0048】
さらに、本実施形態では、
図3に示すように、頭部支持部200の移動方向における頭部支持部200の位置を検知するセンサ30が設けられている。
より具体的には、本実施形態では、センサ30として、頭部支持部200が、移動方向における中央部に位置することを検知する第1中央部センサ31、第2中央部センサ32が設けられている。
また、移動方向における一端部に頭部支持部200が位置することを検知する第1端部センサ33、移動方向における他端部に頭部支持部200が位置することを検知する第2端部センサ34が設けられている。
【0049】
また、本実施形態では、センサ30による検知が行われる被検知部材39が、連動部材400に取り付けられている。
この被検知部材39は、頭部支持部200の移動方向に沿って延びるように配置されている。
また、被検知部材39の長手方向における中央部に、被検知部材39の長手方向と交差する方向に向かって突出する中央部突出部39Aが設けられている。
また、被検知部材39には、被検知部材39の長手方向における両端部の各々に、連動部材400の厚み方向に向かって突出した端部突出部39Bが設けられている。
【0050】
本実施形態では、頭部支持部200が移動方向における中央部にあると、中央部突出部39Aが第1中央部センサ31、第2中央部センサ32により検知される。
制御装置80は、中央部突出部39Aが第1中央部センサ31、第2中央部センサ32により検知されている場合には、頭部支持部200が中央部に位置すると判断する。
【0051】
また、制御装置80は、一方(図中左側)の端部突出部39Bが第1端部センサ33により検知されている場合は、頭部支持部200が、頭部支持部200の移動方向における一端部に位置すると判断する。
また、制御装置80は、他方(図中右側)の端部突出部39Bが第2端部センサ34により検知されている場合は、頭部支持部200が、頭部支持部200の移動方向における他端部に位置すると判断する。
【0052】
本実施形態では、医師からの指示に応じて、頭部支持部200が移動し頭部支持部200の姿勢が変化する。
具体的には、医師は、頭部支持部200の姿勢を変化させる場合、フットスイッチなどの操作受け付け部(不図示)に対する操作を行う。
これにより、操作受け付け部から制御装置80へ信号が出力され、これに応じ、制御装置80が、モータ70を回転駆動する。
【0053】
これにより、例えば、ヘッドレスト2dは、
図1の矢印1Aで示す方向へ回転(移動)する。これにより、患者は、一方の側方を向くようになる。
また、例えば、ヘッドレスト2dは、
図1の矢印1Bで示す方向へ回転(移動)する。これにより、患者は、他方の側方を向くようになる。
【0054】
(その他)
上記では、患者の顔が側方を向くように頭部支持部200を回転(移動)させる場合を説明したが、上記の構成は、患者の両耳を結ぶ線に沿った軸を中心として頭部支持部200を回転(移動)させる場合にも適用することができる。
この場合は、例えば、連動部材400を、
図4の矢印4Bで示す方向に沿わせて配置し、また、回転体510を矢印4Aで示す方向に沿わせて配置する。これにより、回転体510を回転させると、患者の両耳を結ぶ線に沿った軸を中心として頭部支持部200が移動(回転)する。
【符号の説明】
【0055】
2…診療用椅子、200…頭部支持部、400…連動部材、510…回転体