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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/28 20060101AFI20230704BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20230704BHJP
【FI】
B60N2/28
B60N2/90
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019160704
(22)【出願日】2019-09-03
(65)【公開番号】P2021037852
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000109738
【氏名又は名称】デルタ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】遠地 淳司
(72)【発明者】
【氏名】松浦 雅尚
(72)【発明者】
【氏名】加藤 瑞樹
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-131199(JP,A)
【文献】特開2011-68200(JP,A)
【文献】特開2018-149881(JP,A)
【文献】特開2016-78627(JP,A)
【文献】特開2018-79708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部に曲面部分を有し、当該曲面部分において当該曲面部分に沿うように所定の曲線方向に湾曲した開口が形成された表皮と、
前記曲面部分における前記開口の周辺部分を補強する弾性変形可能な板状の補強部材であって、前記曲面部分の内側の面に沿うように湾曲した状態で配置された補強部材と、
前記曲面部分の外側の面から前記開口の周辺部分を押圧した状態で覆う押圧部材と
を備えており、
前記補強部材は、前記押圧部材に重なって前記押圧部材と協働して前記表皮を挟む本体部分と、前記本体部分の前記曲線方向に直交する幅方向における少なくとも一方の側縁につながり前記押圧部材に重ならない範囲に延設された延設部分とを有しており、
前記延設部分には、スリットが形成され、
前記スリットは、前記延設部分における幅方向外側の部分が前記本体部分から独立して弾性変形できるように、前記曲線方向に延びている、シート。
【請求項2】
前記補強部材は、熱可塑性樹脂板で構成されている、
請求項1に記載のシート。
【請求項3】
前記開口は、前記シートの側縁に近い位置に形成され、
前記スリットは、前記補強部材における前記シートの側縁と前記開口との間に挟まれた範囲において、当該スリットの長手方向の両端が閉じるように形成されている、
請求項1または2に記載のシート。
【請求項4】
前記スリットは、前記補強部材における前記本体部分に重なっている前記押圧部材の周縁に隣接する位置に形成されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載のシート。
【請求項5】
前記補強部材の前記延設部分は、前記本体部分の前記幅方向における両側の側縁から延設されており、
それぞれの前記延設部分には、前記スリットが形成されている、
請求項1~4のいずれか1項に記載のシート。
【請求項6】
前記本体部分は、前記表皮に縫着されている、
請求項1~5のいずれか1項に記載のシート。
【請求項7】
前記開口は、チャイルドシートのコネクタを挿入可能な大きさを有しており、それによって前記シートへの前記チャイルドシートの取付けを許容する、
請求項1~6のいずれか1項に記載のシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表皮に開口が形成されたシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートなどにおいて、種々の目的のために表皮に開口が形成されたシートが用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されているシートでは、シートバックに隣接するサイドシートの略垂直方向に延びる壁部分において、車内換気用の矩形形状の開口が表皮に形成されている。このシートでは、表皮の開口周囲の部分のしわの発生を抑制するために、表皮の開口の周辺には、表皮の外側からベゼルが取り付けられ、表皮の内側には、樹脂プレートが取り付けられている。ベゼルおよび樹脂プレートは、いずれも表皮の平面部分に形成された開口の周辺部分に当接するように、平面的な矩形の枠体形状をしている。
【0004】
この構成では、樹脂プレートが表皮を内側から押さえているので、ベゼルが表皮を外側から押さえても表皮が内側に沈み込むことが抑制され、表皮におけるしわの発生が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017―190094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年の表皮に開口が形成されたシートには、表皮の曲面部分に開口が形成された構成を有するシートが提案されている。
【0007】
例えば、ISOFIXと呼ばれる国際標準規格の固定方式のチャイルドシートを取付可能な構造を有するシートでは、当該方式のチャイルドシートの後部に設けられたコネクタと連結するために、シートクッションの後端の円柱状に盛り上がった曲線部分においてコネクタ挿入用の開口を有している。このようなシートでは、表皮の曲面部分に湾曲した開口が形成される。この湾曲した開口の周辺部分を保持するためには、表皮の曲面部分を内側から樹脂プレートを当接させた状態で、湾曲したベゼルによって表皮を外側から押さえる必要がある。
【0008】
しかし、表皮の曲面部分の外側からベゼルで押さえた場合、樹脂プレート全体がベゼルに沿うように凹んで表皮の曲面部分から離れる部分が生じるため、当該曲面部分の曲面に樹脂プレートを沿わせることは困難である。その結果、表皮の曲面部分の開口周辺におけるしわの発生を抑制することは困難である。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、表皮の曲面部分の開口周辺におけるしわの発生を抑制することが可能なシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明のシートは、少なくとも一部に曲面部分を有し、当該曲面部分において当該曲面部分に沿うように所定の曲線方向に湾曲した開口が形成された表皮と、前記曲面部分における前記開口の周辺部分を補強する弾性変形可能な板状の補強部材であって、前記曲面部分の内側の面に沿うように湾曲した状態で配置された補強部材と、前記曲面部分の外側の面から前記開口の周辺部分を押圧した状態で覆う押圧部材とを備えており、前記補強部材は、前記押圧部材に重なって前記押圧部材と協働して前記表皮を挟む本体部分と、前記本体部分の前記曲線方向に直交する幅方向における少なくとも一方の側縁につながり前記押圧部材に重ならない範囲に延設された延設部分とを有しており、前記延設部分には、スリットが形成され、前記スリットは、前記延設部分における幅方向外側の部分が前記本体部分から独立して弾性変形できるように、前記曲線方向に延びている、ことを特徴とする。
【0011】
かかる構成では、弾性変形可能な板状の補強部材は、押圧部材に重なって押圧部材と協働して表皮を挟む本体部分と、本体部分の前記曲線方向に直交する幅方向における少なくとも一方の側縁につながり押圧部材に重ならない範囲に延設された延設部分とを有しており、延設部分には、スリットが形成されている。スリットは、延設部分における幅方向外側の部分が本体部分から独立して弾性変形できるように、曲線方向に延びている。したがって、補強部材の延設部分は、このスリットによって本体部分から独立して弾性変形可能になっている。その結果、補強部材の延設部分は、表皮の曲面部分に沿いやすくなり、表皮の曲面部分に沿いながら当該曲面部分を外側に押すことにより、当該曲面部分におけるしわの発生を抑制することが可能になっている。
【0012】
上記のシートにおいて、前記補強部材は、熱可塑性樹脂板で構成されているのが好ましい。
【0013】
かかる構成によれば、補強部材は、熱可塑性樹脂板で構成されていることにより、表皮の曲面部分に沿うように曲げやすく、しかも当該曲面部分を外側に押すことが可能な曲げ剛性を有する。
【0014】
上記のシートにおいて、前記開口は、前記シートの側縁に近い位置に形成され、前記スリットは、前記補強部材における前記シートの側縁と前記開口との間に挟まれた範囲において、当該スリットの長手方向の両端が閉じるように形成されているのが好ましい。
【0015】
かかる構成によれば、表皮の開口がシートの側縁に近い位置に形成されている場合には、当該開口とシートの側縁との間に挟まれた狭い範囲では、当該表皮に覆われる被覆対象(パッドなど)の成形性が悪いなどの理由により、表皮にしわが発生しやすい傾向がある。そこで、上記のように、補強部材におけるシートの側縁と開口との間に挟まれた範囲において、当該スリットの長手方向の両端が閉じるように形成されていることにより、補強部材の延設部分は、スリットの両端付近の2つの箇所において本体部分に支持(すなわち両端支持)される。これにより、延設部分の曲げ剛性が向上し、表皮における開口とシートの側縁との間に挟まれた範囲におけるしわの発生を確実に抑制させることが可能である。
【0016】
上記のシートにおいて、前記スリットは、前記補強部材における前記本体部分に重なっている前記押圧部材の周縁に隣接する位置に形成されているのが好ましい。
【0017】
かかる構成によれば、押圧部材の周縁に隣接する位置にスリットが形成されているので、押圧部材の周縁と表皮の曲面部分における延設部分で外側に押されている部分との間隔隙を小さくすることが可能である。これにより、補強部材が表皮に沿わない部分を無くして表皮の外観を向上することが可能である。
【0018】
上記のシートにおいて、前記補強部材の前記延設部分は、前記本体部分の前記幅方向における両側の側縁から延設されており、それぞれの前記延設部分には、前記スリットが形成されているのが好ましい。
【0019】
かかる構成によれば、補強部材の延設部分は、本体部分の幅方向における両側の側縁から延設され、それぞれの延設部分に形成されたスリットによって本体部分から独立して弾性変形可能になっている。したがって、補強部材の両側の延設部分によって、表皮の曲面部分におけるしわの発生を抑制することが可能になる。
【0020】
上記のシートにおいて、前記本体部分は、前記表皮に縫着されているのが好ましい。
【0021】
かかる構成によれば、補強部材の本体部分は、表皮の外側の押圧部材と重なっており、当該本体部分が表皮に縫着されることにより、縫着部分が押圧部材によって覆われて外部から見えなくなる。その結果、表皮の見栄えの低下を防ぐことが可能である。
【0022】
上記のシートにおいて、前記開口は、チャイルドシートのコネクタを挿入可能な大きさを有しており、それによって前記シートへの前記チャイルドシートの取付けを許容するのが好ましい。
【0023】
かかる構成によれば、開口は、チャイルドシートのコネクタを挿入可能な大きさを有しているので、シートへの前記チャイルドシートの取付けを許容する。これにより、シートにおけるチャイルドシートのコネクタ挿入用の開口周辺における表皮のしわの発生を抑制することが可能になる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のシートによれば、表皮の曲面部分の開口周辺におけるしわの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係るシートの全体構成を示す斜視図である。
図2図1のコネクタ取付部を構成するベゼル、補強プレート、およびカバーの分解斜視図である。
図3図2のベゼル、補強プレート、およびカバーを組み合わせた状態を示す斜視図である。
図4図2のベゼル、補強プレート、およびカバーを組み合わせた状態を示す正面図である。
図5図2のベゼル、補強プレート、およびカバーを組み合わせた状態を示す左側面図である。
図6図2の補強プレートの表皮に取り付ける前の状態における平面図である。
図7図2の補強プレートを表皮に取り付ける直前の状態を示す斜視説明図である。
図8図7の表皮を挟むようにベゼルがカバーに係合する直前の状態を示す斜視説明図である。
図9図1のIX―IX断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
【0027】
(シート1の全体説明)
図1に示されるシート1は、自動車の助手席または後部座席などに用いられるシートであり、ISOFIX固定方式のチャイルドシートを取付可能な構造を有する。すなわち、シート1は、座部としてのシートクッション2および背もたれとしてのシートバック3を有するシート構造において、シートクッション2側に、パッド5(図9参照)と、当該パッド5の表面を覆うことが可能な形状の表皮6と、チャイルドシートのコネクタ(図示せず)と連結可能なコネクタ取付部4とを備えている。本実施形態では、コネクタ取付部4は、シートクッション後端(シートバック3側の端部)の盛り上がっている部分(表皮6の曲面部分6b参照)に設けられている。
【0028】
シートクッション2の表皮6についてさらに詳しく言えば、表皮6は、図7に示されるように、少なくとも一部、具体的には表皮6の後端付近において上方に盛り上がった半円柱状の曲面部分6bを有する。当該曲面部分6bにおいて当該曲面部分6bに沿うように所定の曲線方向Cに湾曲した表皮開口部6aが形成されている。表皮開口部6aは、シート1の両側の側縁(図1および図9に示されるシート1の幅方向Xにおける表皮6の側縁6d)に近い位置に形成されている。
【0029】
コネクタ取付部4は、図9に示されるように、パッド5および表皮6にそれぞれ形成されて互いに連通するように配置された矩形形状のパッド開口部5aおよび表皮開口部6aと、当該パッド開口部5aの内部にコネクタが係合可能な被係合部としてのコの字状の金属バー10(図2参照)とを備えた構造を有している。パッド開口部5aおよび表皮開口部6aは、コネクタが挿入可能な大きさを有する。金属バー10は、その中央部分がパッド開口部5aを横断する方向に延びるように、パッド開口部5aの内部に配置される。金属バー10は、シート1のパッド5を支持する金属製フレーム(図示略)に連結されている。
【0030】
コネクタ取付部4は、さらに、図2~6に示されるように、表皮6の内側におけるパッド開口部5aの内部に配置されてコネクタを受けるベゼル7と、当該ベゼル7の外側を覆うカバー8と、矩形形状の表皮開口部6aの周縁部を補強する補強部材としての補強プレート9とを備えている。補強プレート9の具体的な構成については、後段で詳細に説明する。
【0031】
ベゼル7およびカバー8は、ねじなどの締結部材(図示せず)で互いに連結された状態で、パッド開口部5a(図9参照)の内部に配置されている。
【0032】
ベゼル7は、図2~5に示されるように、表皮6の表側における表皮開口部6aの周縁部に当接する表側当接部7aと、コネクタを受け入れることが可能な斜め前方に開放された形状を有する受け部7bとを有している。これらの表側当接部7aおよび受け部7bが樹脂によって一体成形されることにより、本実施形態のベゼル7が構成されている。ベゼル7は、表側当接部7aを有していることによって、表皮6を外側から押圧する押圧部材として機能することが可能である。
【0033】
受け部7bは、図2~3に示されるように、前方から上方にかけての範囲に開放してコネクタを受け入れることが可能なコネクタ挿入空間7eを有する。また、受け部7bには、金属バー10(図2参照)の中央部分がコネクタ挿入空間7eの内部に突出できるように、スリット7cが形成されている。さらに、受け部7bの外側には、金属バー10(図2参照)の一対の腕部分を保持する保持部7dが設けられている。
【0034】
表側当接部7aは、表皮6の表側における表皮開口部6aの周縁部に当接することが可能な形状を有する。本実施形態では、表側当接部7aは、表皮開口部6aの湾曲した矩形形状の周縁部と相似形となる湾曲した矩形形状を有し、表皮開口部6aの周縁部の表面の全周に当接することが可能である。
【0035】
カバー8は、図2~3に示されるように、ベゼル7の受け部7bを下側から覆ってベゼル7の外部に係合可能な構成を有する。また、カバー8は、表皮6の裏側において補強プレート9に当接する裏側当接部8aを有している。
【0036】
図8に示されるように、ベゼル7は、カバー8とともに表皮6および補強プレート9を挟みながら、カバー8に取り付けられる。すなわち、表皮6の曲面部分6bの内側の面に補強プレート9が取り付けられた状態で、ベゼル7の受け部7bを表皮開口部6aに挿入する。ベゼル7の受け部7bは、表皮6および補強プレート9を貫通してカバー8に係合する。この状態では、図2~3に示されるように、ベゼル7の表側当接部7aは、表皮6の外側の面から表皮開口部6aの周辺部分を押圧した状態で覆う。これによって、ベゼル7の表側当接部7aとカバー8の裏側当接部8aとによって、表皮6および補強プレート9を挟んで保持することが可能である。
【0037】
(補強プレートの説明)
補強プレート9は、図2~7に示されるように、表皮6の曲面部分6bにおける表皮開口部6aの周辺部分を補強する弾性変形可能な板状の部材である。
【0038】
補強プレート9は、弾性変形可能であり、かつ、表皮6の曲面部分6bの形状を保持可能な曲げ剛性を有する材料として、例えば、熱可塑性樹脂板(例えば、ポリプロピレン)などで構成されている。
【0039】
補強プレート9は、表皮6の曲面部分6bの内側の面に沿うように前記曲線方向C(図7参照)に湾曲した状態で配置されている。
【0040】
補強プレート9は、本体部分9aと、当該本体部分9aの前記曲線方向C(図7参照)に直交する幅方向Wにおける両側に設けられた延設部分9b、9cとを有している。
【0041】
本体部分9aは、湾曲した矩形形状の表皮開口部6aに対応する矩形形状の開口9dを有する。補強プレート9を曲面部分6bに沿って湾曲させた状態では、開口9dは、前記曲線方向Cに湾曲した表皮開口部6aに一致する(図7~9参照)。
【0042】
補強プレート9は、本体部分9aは、ベゼル7に重なってベゼル7と協働して表皮6を挟むことができるようにベゼル7の表側当接部7aに対応する形状を有する。本体部分9aは、図6~8に示されるように、表皮6に縫着などによって固着される。具体的には、本体部分9aは、図6に示されるように、複数の縫着部Sにおいて表皮6に縫着されている。
【0043】
延設部分9b、9cは、本体部分9aの幅方向Wの両側の側縁につながりベゼル7に重ならない範囲に延設されている。なお、補強プレート9の延設部分9b、9cは、本体部分9aの幅方向Wの両側のうちの少なくとも一方の側縁に設けていればよく、パッド5の成形性が悪い箇所のみ延設部分を設けてもよい。
【0044】
それぞれの延設部分9b、9cには、スリット9e、9fが形成されている。これにより、延設部分9b、9cは、スリット9e、9fよりも幅方向Wの外側の部分9b1、9c1と、当該部分9b1、9c1を本体部分9aにつなぐ接続部分9b2、9c2とを備えた構成になる。
【0045】
スリット9e、9fは、延設部分9b、9cにおける幅方向W外側の部分9b1、9c1が本体部分9aから独立して弾性変形できるように、曲線方向Cに延びている。すなわち、スリット9e、9fは、表皮開口部6aに対応して曲線方向Cに湾曲した開口9dの幅方向Wの両側の側縁と平行な方向(すなわち曲線方向C)に延びている。
【0046】
スリット9e、9fは、補強プレート9のうちベゼル7に挟まれるベゼル7直下の本体部分9aとベゼル7両側にはみ出ている延設部分9b、9cの幅方向Wの外側の部分9b1、9c1とを分離する。これによって、本体部分9aの両側にはみ出ている延設部分9b、9cの幅方向Wの外側の部分9b1、9c1を、部分的に曲げやすくして表皮6の曲面部分6bを内方から支持する板バネとして機能させることができる。
【0047】
延設部分9b、9cの曲げ剛性は、表皮6の外側から外力が加わっても反力によって表皮6の曲面部分6bが元の湾曲形状に戻ることが可能な弾力性を生む程度の曲げ剛性であればよい。
【0048】
補強プレート9の一対のスリット9e、9fのうち、補強プレート9における上記の側縁6dと表皮開口部6aとの間に挟まれた範囲に位置するスリット9e(図2~3、図5~6における左側のスリット)は、当該スリット9eの長手方向の両端9e1、9e2が閉じるように形成されている。このような両端9e1、9e2が閉じられたスリット9eが形成されることによって、延設部分9bの幅方向W外側の部分9b1の両端は、本体部分9aに対して一対の接続部分9b2を介して部分的につながっているが、両端以外の部分ではつながっていない、いわゆる両端支持の状態になる。これにより、延設部分9bは、表皮6の外側からの力を受けたときに大きな反力を発生して表皮6の曲面部分6bに沿わせることが可能になる。
【0049】
一方、延設部分9cは、片方が開放されたスリット9f(図2~3、図5~6における右側のスリット)が形成されることによって、幅方向W外側の部分9c1が接続部分9c2を介して片持ち支持の状態になっており、パッド5(図9参照)に沿いやすいように曲げ剛性が調整されている。図9に示されるパッド開口部5aの右側部分は、パッド5の成形性が良いため、補強プレート9の反力を利用しての表皮6の曲面部分6bの形状保持をする必要はなく、パッド5を表皮6側に押し当てることによりきれいな外観形状を出すことが可能である。
【0050】
補強プレート9の一対のスリット9e、9fは、補強プレート9における本体部分9aに重なっているベゼル7の周縁に隣接する位置に形成されている。
【0051】
また、図9に示されるように、表皮6の表皮開口部6aを構成する当該開口部6aの周縁部分を、補強プレート9の開口9dの内側に巻き込むようにしてもよい。
【0052】
(本実施形態の特徴)
(1)
本実施形態のシート1では、表皮6の曲面部分6bにおいて当該曲面部分6bに沿うように所定の曲線方向Cに湾曲した表皮開口部6aが形成されている。弾性変形可能な板状の補強プレート9は、ベゼル7に重なってベゼル7と協働して表皮6を挟む本体部分9aと、本体部分9aの前記曲線方向Cに直交する幅方向Wの側縁につながりベゼル7に重ならない範囲に延設された延設部分9b、9cとを有している。延設部分9b、9cには、スリット9e、9fが形成されている。スリット9e、9fは、延設部分9b、9cにおける幅方向W外側の部分9b1、9c1が本体部分9aから独立して弾性変形できるように、曲線方向Cに延びている。
【0053】
したがって、補強プレート9の延設部分9b、9cは、これらのスリット9e、9fによって本体部分9aから独立して弾性変形可能になっている。その結果、補強プレート9の延設部分9b、9cは、表皮6の曲面部分6bに沿いやすくなり、表皮6の曲面部分6bに沿いながら当該曲面部分6bを外側に押すことにより、当該曲面部分6bにおけるしわの発生を抑制することが可能になっている。
【0054】
言い換えれば、補強プレート9にスリット9e、9fが形成されていない場合には、補強プレート9の剛性が高いので、補強プレート9が表皮6に沿いにくく、ベゼル7の形状に沿って湾曲する。そのため、補強プレート9が表皮6に沿わず、ベゼル7の周辺の表皮6の外観にしわが発生するなどの影響が出る。一方、本実施形態のように補強プレート9にスリット9e、9fが形成されることにより、スリット9e、9fよりも外側の延設部分9b、9cの剛性を部分的に下げて当該延設部分9b、9cを表皮6に沿いやすくしている。このように、スリット9e、9fが形成されることにより、延設部分9b、9cに反力が発生し、スリット9e、9fから外側の延設部分9b、9cを表皮6に沿わせることが可能になる。また、表皮6の曲面部分6bに外力が加わって変形しても、補強プレート9の延設部分9b、9cの反力によって当該曲面部分6bは元の形状に戻ることが可能になる。
【0055】
(2)
本実施形態のシート1では、補強プレート9は、熱可塑性樹脂板で構成されているので、表皮6の曲面部分6bに沿うように曲がりやすく、しかも当該曲面部分6bを外側に押すことが可能な曲げ剛性を有する。すなわち、熱可塑性樹脂板で構成された補強プレート9は、曲げやすくしかも剛性があり、適度に曲がるため、表皮6の曲面部分6bに沿いやすいという利点を有する。
【0056】
なお、本発明の補強部材は、上記の熱可塑性樹脂板で構成された補強プレート9以外であっても、弾性変形可能で表皮6の曲面部分6bに沿わせることが可能なものであればよい。
【0057】
(3)
本実施形態のシート1では、表皮開口部6aは、シート1の側縁(具体的には、図1および図9に示されるシート1の幅方向Xにおける表皮6の側縁6d)に近い位置に形成されている。スリット9eは、補強プレート9におけるシート1の側縁(すなわち、表皮6の側縁6d)と表皮開口部6aとの間に挟まれた範囲において、当該スリット9eの長手方向の両端が閉じるように形成されている。
【0058】
上記のように表皮6の表皮開口部6aがシートの側縁に近い位置に形成されている場合には、当該表皮開口部6aとシートの側縁との間に挟まれた狭い範囲では、当該表皮6に覆われる被覆対象(パッドなど)の成形性が悪いなどの理由により、表皮6にしわが発生しやすい傾向がある。そこで、上記のように、補強プレート9におけるシートの側縁と表皮開口部6aとの間に挟まれた範囲において、当該スリット9eの長手方向の両端が閉じるように形成されていることにより、補強プレート9の延設部分9bは、スリット9eの両端付近の2つの箇所において本体部分9aに支持(すなわち両端支持)される。これにより、延設部分9bの曲げ剛性が向上し、表皮6における表皮開口部6aとシートの側縁との間に挟まれた範囲におけるしわの発生を確実に抑制させることが可能である。
【0059】
また、表皮6における表皮開口部6aとシートの側縁との間に挟まれた範囲において、ベゼル7からの押圧による表皮6の沈み込みを低減することも可能である。
【0060】
言い換えれば、ベゼル7の両側のうち、図2および図9に示されるベゼル7の左側(すなわち、シートの側縁付近であって、パッド5の成形性が悪くて表皮6にしわが発生しやすい部分)では、スリット9eは、両端が閉じたスリットの形態にして、ベゼル7の左側にはみ出ている延設部分9bの曲げ剛性(ばね性)を上げている。
【0061】
とくに、表皮開口部6aがシートの側縁に近い位置に設けられている場合には、表皮開口部6aとシートの側縁に挟まれた狭い領域では表皮6にしわが発生しやすいとともに下方へ沈み込んだように見えやすい部分であるが、両端が閉じたスリット9eによって、表皮6におけるしわの軽減と沈み込みの防止を両方達成することが可能である。
【0062】
図6に示されるように、両端が閉じているスリット9eの長さLは、50mm程度の長さ(例えば、40~60mm程度)が好ましい。このような長さのスリット9eを形成することにより、延設部分9bは、表皮6の曲面部分6bへ沿うように確実に変形し、かつ、表皮6の曲面部分6bを外側へ押し出してしわの発生を確実に防止しうる曲げ剛性を得ることが可能になる。
【0063】
また、延設部分9bの幅方向外側の部分9b1の幅Pは、18mm程度(例えば、14~22mm程度)であれば、上記のベゼル7近傍の範囲で表皮6のしわの発生を確実に防止することが可能であり、表皮6の外観向上に寄与する。また、シート1の側縁に近い延設部分9bについては、幅Pを18mm程度にすれば、表皮6の内側を構成するインナーカバーなどに接触しないので好ましい。
【0064】
(4)
本実施形態のシート1では、スリット9e、9fは、補強プレート9における本体部分9aに重なっているベゼル7の周縁に隣接する位置に形成されている。この構成では、ベゼル7の周縁に隣接する位置にスリット9e、9fが形成されているので、ベゼル7の周縁と表皮6の曲面部分6bにおける延設部分9b、9cで外側に押されている部分との間隔を小さくすることが可能である。これにより、補強プレート9が表皮6に沿わない部分を無くして表皮6の外観を向上することが可能である。
【0065】
(5)
本実施形態のシート1では、補強プレート9の延設部分9b、9cは、本体部分9aの幅方向Wの両側の側縁から延設され、それぞれの延設部分9b、9cと本体部分9aとの間に形成されたスリット9e、9fによって本体部分9aから独立して弾性変形可能になっている。したがって、補強プレート9の幅方向Wの両側の延設部分9b、9cによって、表皮6の曲面部分6bにおけるしわの発生を抑制することが可能になる。
【0066】
(6)
本実施形態のシート1では、補強プレート9の本体部分9aは、表皮6の外側のベゼル7と重なっている。本体部分9aが表皮6に縫着されることにより、縫着部分がベゼル7によって覆われて外部から見えなくなる。その結果、表皮6の見栄えの低下を防ぐことが可能である。
【0067】
(7)
本実施形態のシート1では、表皮開口部6aは、チャイルドシートのコネクタを挿入可能な大きさを有しており、それによってシート1へのチャイルドシートの取付けを許容する。これにより、シート1におけるチャイルドシートのコネクタ挿入用の開口(すなわち表皮開口部6a)周辺における表皮6のしわの発生を抑制することが可能になる。
【0068】
(8)
また、本実施形態では、補強プレート9のスリット9eよりも外側の延設部分9bの下方に延びている部分9b3(図6参照)は、表皮6(例えば図1に示される表皮6の吊り込み部分6cなど)に縫着されていてもよい。これにより、補強プレート9の剛性を利用して表皮6の外観の折れしわを抑制することが可能になる。
【0069】
(変形例)
上記の実施形態では、表皮の曲面部分に開口が形成された構成を有するシートの例として、ISOFIX方式のチャイルドシートを取付可能な構造を有するシートを一例として挙げて説明しているが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、表皮の曲面部分に開口が形成された構成を有するシートであれば広く適用可能であり、表皮の曲面部分の開口周辺におけるしわの発生を抑制することが可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 シート
2 シートパッド
3 シートバック
4 コネクタ取付部
5 パッド
6 表皮
6a 表皮開口部
7 ベゼル(押圧部材)
9 補強プレート(補強部材)
9a 本体部
9b、9c 延設部分
9b1、9c1 幅方向外側の部分
9d 開口
9e、9f スリット
C 曲線方向
W 幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9