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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】コンベヤ装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 21/00 20060101AFI20230704BHJP
   E02B 3/18 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
B65G21/00 B
E02B3/18 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020052101
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021147239
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000228707
【氏名又は名称】日本コンベヤ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 隆
(72)【発明者】
【氏名】吉川 勝博
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 公彦
(72)【発明者】
【氏名】駒田 弘明
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】特開平1-290831(JP,A)
【文献】特開昭48-54687(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第19518455(DE,A1)
【文献】実開平5-14013(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 21/00
E02B 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水上に並列して浮かぶ複数のフロート(20)と、
前記フロート(20)から立ち上がる支持フレーム(30)と、
前記支持フレーム(30)に取り付けられたプーリ(16,17)と、
前記プーリ(16,17)に掛け渡された無端状のコンベヤベルト(11)と、
前記支持フレーム(30)に取り付けられ前記コンベヤベルト(11)の下面を保持するローラ(12,14)と、
並列方向に隣り合う前記フロート(20)同士を連結する連結材(24)と、
前記フロート(20)の連結数を増減した際に前記コンベヤベルト(11)の張力を調整するストレージ部(50)と、
を備える浮遊式コンベヤ装置。
【請求項2】
前記フロート(20)は、前記プーリ(16,17)が取り付けられた前記支持フレーム(30)が立ち上がる第1種フロート(20a)と、前記第1種フロート(20a)以外の第2種フロート(20b)とを備え、
前記第2種フロート(20b)は、前記連結材(24)を切り離した状態で、前記支持フレーム(30)とともに前記コンベヤベルト(11)に対して前記並列方向に交差する方向へ水面に沿って横移動が可能である請求項1に記載の浮遊式コンベヤ装置。
【請求項3】
前記第2種フロート(20b)から立ち上がる前記支持フレーム(30)は前記ローラ(12,14)を備え、前記第2種フロート(20b)は、前記ローラ(12,14)を前記支持フレーム(30)から取り外した状態で前記横移動が可能である請求項2に記載の浮遊式コンベヤ装置。
【請求項4】
水上に並列して浮かぶ複数のフロート(20)と、
前記フロート(20)から立ち上がる支持フレーム(30)と、
前記支持フレーム(30)に取り付けられたプーリ(16,17)と、
前記プーリ(16,17)に掛け渡された無端状のコンベヤベルト(11)と、
前記支持フレーム(30)に取り付けられ前記コンベヤベルト(11)の下面を保持するローラ(12,14)と、
並列方向に隣り合う前記フロート(20)同士を連結する連結材(24)と、
前記フロート(20)の連結数を増減した際に前記コンベヤベルト(11)の張力を調整するストレージ部(50)と、を備えた浮遊式コンベヤ装置を用い、
前記並列方向に隣り合う前記フロート(20)間の前記連結材(24)を切り離して前記フロート(20)間の距離を遠ざけるとともに前記ストレージ部(50)で前記コンベヤベルト(11)の張力を調整し、前記フロート(20)間に追加の前記フロート(20)を横移動により差し入れて前記並列方向に隣り合う前記フロート(20)とを前記連結材(24)で連結し、追加の前記フロート(20)から立ち上がる前記支持フレーム(30)に取り付けられた前記ローラ(12,14)で前記コンベヤベルト(11)を保持させる浮遊式コンベヤ装置の全長調整方法。
【請求項5】
水上に並列して浮かぶ複数のフロート(20)と、
前記フロート(20)から立ち上がる支持フレーム(30)と、
前記支持フレーム(30)に取り付けられたプーリ(16,17)と、
前記プーリ(16,17)に掛け渡された無端状のコンベヤベルト(11)と、
前記支持フレーム(30)に取り付けられ前記コンベヤベルト(11)の下面を保持するローラ(12,14)と、
並列方向に隣り合う前記フロート(20)同士を連結する連結材(24)と、
前記フロート(20)の連結数を増減した際に前記コンベヤベルト(11)の張力を調整するストレージ部(50)と、を備えた浮遊式コンベヤ装置を用い、
単一の又は前記並列方向に連続する複数の前記フロート(20)を抜き取り範囲とし、前記抜き取り範囲の両端の前記連結材(24)を切り離し、前記抜き取り範囲の前記フロート(20)から立ち上がる前記支持フレーム(30)に取り付けられた前記ローラ(12,14)を取り外して、前記抜き取り範囲の前記フロート(20)を前記コンベヤベルト(11)の直下から横移動により抜き取り、前記抜き取り範囲に臨む対の前記フロート(20)間の距離を近づけるとともに前記ストレージ部(50)で前記コンベヤベルト(11)の張力を調整し、前記抜き取り範囲に臨む対の前記フロート(20)間を前記連結材(24)で連結する浮遊式コンベヤ装置の全長調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンベヤ装置に関し、特に、水上に浮かべて設置する浮遊式コンベヤ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
土砂や砕石、その他搬送物を移送する手段として、コンベヤ装置が用いられる。コンベヤ装置として、例えば、無端状のベルトを用いたベルトコンベヤがある。
【0003】
ベルトコンベヤは、駆動側のプーリと従動側のプーリとの間に無端状の帯状ベルトを巻回し、駆動側のプーリの回転によりベルトが移動して、そのベルト上の搬送物が運搬されるようになっている。駆動側のプーリ、従動側のプーリ、及び、中間部でベルトを案内するローラは、搬送物を移送する始終点間の地盤上に設置されたフレームに支持されている。
【0004】
また、水上に設置されるコンベヤ装置もある。例えば、特許文献1には、水上に浮かぶ複数のフロート上に支持フレームを立ち上げ、その支持フレームに多数のローラを設けて、そのローラで無端状のコンベヤベルトをガイドする浮遊式コンベヤ装置が開示されている。また、例えば、特許文献2には、支持フレームを載せた複数のフロートが、チェーンによって連結された技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開平5-14013号公報(第2頁第1図、第4図等参照)
【文献】特開平3-182411号公報(第5頁第5図参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1,2に記載された浮遊式コンベヤ装置では、一旦所定の長さのコンベヤ装置を水上に構築した後に作業場所の移動が生じた際、コンベヤの全長を変更することが困難である。
【0007】
例えば、湖沼や海洋での浚渫や埋め立てに際して、土砂を運搬するために浮遊式のコンベヤ装置を利用する場面を想定する。このような場面では、土砂を採取あるいは土砂を取り下ろす作業場所近くに、コンベヤ装置の先端(沖合側の端部)が位置することが望ましい。しかし、作業の進捗とともに作業場所は刻々と変化する。このため、従来の浮遊式コンベヤ装置では、このような作業場所の変化に対して迅速に対応できない。
【0008】
そこで、この発明の課題は、水上に設置される浮遊式コンベヤ装置において、コンベヤの全長を容易に変更できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、この発明は、水上に並列して浮かぶ複数のフロートと、前記フロートから立ち上がる支持フレームと、前記支持フレームに取り付けられたプーリと、前記プーリに掛け渡された無端状のコンベヤベルトと、前記支持フレームに取り付けられ前記コンベヤベルトの下面を保持するローラと、並列方向に隣り合う前記フロート同士を連結する連結材と、前記フロートの連結数を増減した際に前記コンベヤベルトの張力を調整するストレージ部と、を備える浮遊式コンベヤ装置を採用した。
【0010】
ここで、前記フロートは、前記プーリが取り付けられた前記支持フレームが立ち上がる第1種フロートと、前記第1種フロート以外の第2種フロートとを備え、前記第2種フロートは、前記連結材を切り離した状態で、前記支持フレームとともに前記コンベヤベルトに対して前記並列方向に交差する方向へ水面に沿って横移動が可能である構成を採用することができる。
【0011】
前記第2種フロートから立ち上がる前記支持フレームは前記ローラを備え、前記第2種フロートは、前記ローラを前記支持フレームから取り外した状態で前記横移動が可能である構成を採用することができる。
【0012】
また、上記の課題を解決するために、この発明は、水上に並列して浮かぶ複数のフロートと、前記フロートから立ち上がる支持フレームと、前記支持フレームに取り付けられたプーリと、前記プーリに掛け渡された無端状のコンベヤベルトと、前記支持フレームに取り付けられ前記コンベヤベルトの下面を保持するローラと、並列方向に隣り合う前記フロート同士を連結する連結材と、前記フロートの連結数を増減した際に前記コンベヤベルトの張力を調整するストレージ部と、を備えた浮遊式コンベヤ装置を用い、前記並列方向に隣り合う前記フロート間の前記連結材を切り離して前記フロート間の距離を遠ざけるとともに前記ストレージ部で前記コンベヤベルトの張力を調整し、前記フロート間に追加の前記フロートを横移動により差し入れて前記並列方向に隣り合う前記フロートとを前記連結材で連結し、追加の前記フロートから立ち上がる前記支持フレームに取り付けられた前記ローラで前記コンベヤベルトを保持させる浮遊式コンベヤ装置の全長調整方法を採用した。
【0013】
さらに、上記の課題を解決するために、この発明は、水上に並列して浮かぶ複数のフロートと、前記フロートから立ち上がる支持フレームと、前記支持フレームに取り付けられたプーリと、前記プーリに掛け渡された無端状のコンベヤベルトと、前記支持フレームに取り付けられ前記コンベヤベルトの下面を保持するローラと、並列方向に隣り合う前記フロート同士を連結する連結材と、前記フロートの連結数を増減した際に前記コンベヤベルトの張力を調整するストレージ部と、を備えた浮遊式コンベヤ装置を用い、単一の又は前記並列方向に連続する複数の前記フロートを抜き取り範囲とし、前記抜き取り範囲の両端の前記連結材を切り離し、前記抜き取り範囲の前記フロートから立ち上がる前記支持フレームに取り付けられた前記ローラを取り外して、前記抜き取り範囲の前記フロートを前記コンベヤベルトの直下から横移動により抜き取り、前記抜き取り範囲に臨む対の前記フロート間の距離を近づけるとともに前記ストレージ部で前記コンベヤベルトの張力を調整し、前記抜き取り範囲に臨む対の前記フロート間を前記連結材で連結する浮遊式コンベヤ装置の全長調整方法を採用した。
【発明の効果】
【0014】
この発明は、水上に設置される浮遊式コンベヤ装置において、コンベヤの全長を容易に変更できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明の一実施形態を示す浮遊式コンベヤ装置の縦断面図
図2】同実施形態の横断面図
図3図2の側面図
図4】同実施形態の要部拡大斜視図
図5】同実施形態の全体図
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。この実施形態の浮遊式コンベヤ装置1は、ダム湖の水底を浚って土砂等を取り去る浚渫工事に際して、水底から引き上げられた土砂を運搬するために用いられるものである。通常は、土砂を採取する作業場所近くに浮遊式コンベヤ装置1(以下コンベヤ装置1と称する)の先端が位置し、岸側にコンベヤ装置1の後端が位置するように配置される。コンベヤ装置1の後端は、岸に至るまでの途中あるいは岸近くに設けられた他の移送手段への積み替え場所に配置される。土砂を採取する作業場所は、その作業の進捗とともに刻々と変化するため、この発明のコンベヤ装置1では、コンベヤ装置1の後端と先端との間の距離を調整しながら使用できるようになっている。
【0017】
コンベヤ装置1は、水上に浮かぶ複数のフロート20と、それぞれのフロート20から立ち上がる支持フレーム30、支持フレーム30によって支持されるコンベヤユニット10とで構成されている。
【0018】
フロート20は、図2及び図3に示すように、水に浮かぶ浮力を発生させるフロート部材22がフレーム21によって保持されている。フロート部材22は、水よりも小さい比重を有する部材(例えば、発泡樹脂材や内部に気体が密封された袋状部材等)を主たる構成品としている。この実施形態では、フロート部材22は長手状部材で構成され、複数本(実施形態では図4に示すように4本)の長手状部材がフロートフレーム21によって保持されている。フロートフレーム21は、フロート部材22の下面側に配置される下部フレーム21aと、フロート部材22の上面側に配置される上部フレーム21bと、下部フレーム21aと上部フレーム21bとを上下方向に結ぶ縦フレーム21c、及び、下部フレーム21aと上部フレーム21bとを斜め方向に結ぶ筋交い21dとを備えている。フロート部材22は、上部フレーム21bと下部フレーム21aと縦フレーム21cとに挟まれて保持されている。縦フレーム21c同士は、図4に示すように、連結フレーム21eによって接続されている。
【0019】
なお、フロート部材22の断面形状は、この実施形態のように円形断面としてもよいし、多角形形状等の他の形状の断面としてもよい。また、フロート部材22は、長手状以外の形状からなる部材であってもよく、例えば、板状の部材やブロック状の部材で構成されていてもよい。フロートフレーム21は、フロート部材22を保持できる形状であればよい。
【0020】
複数のフロート20は、設置されるコンベヤの搬送方向に沿って1列に並列して配置されている。以下、コンベヤの搬送方向に沿ってフロート20が並列する方向を単に「並列方向」と称し、その並列方向に直交する方向を「幅方向」と称する。並列方向に隣り合うフロート20同士は、連結材24によって連結されている。この実施形態では、連結材24として鎖を採用し、その鎖がフロート20の長手方向端部に設けた係止部23の穴に係止されている。フロート20は、支持フレーム30によって支持されるコンベヤユニット10を支えつつ、水面上に浮かぶことができる浮力を有している。フロート部材22は、その長手方向がフロート20の並列方向に沿うように配置されている。この実施形態では、1つのフロート20に対して、4本のフロート部材22を並列して配置している。係止部23は、フロートフレーム21に設けてもよい。
【0021】
支持フレーム30は、フロート20から立ち上がる支柱材31を複数本備えている。支柱材31は、フロート20に対して並列方向に複数本(実施形態では図4に示すように4本)、幅方向に複数本(実施形態では同じく2本)設けられている。幅方向に隣り合う支柱材31同士は、上下の梁材32,33で連結されている。また、並列方向に隣り合う支柱材31同士は、連結材34によって連結されている。
【0022】
コンベヤユニット10の構成は、図1に示すように、図中右側の後端側に位置するプーリ(ヘッドプーリ)16と、図中左側の先端側に位置するプーリ(テールプーリ)17とを備えている。ヘッドプーリ16とテールプーリ17との間には、無端状のコンベヤベルト11が掛け渡されている。コンベヤベルト11には、所定幅を有する帯状のゴム素材が用いられ、その内部には繊維や金属等からなる補強部材が埋め込まれて、所定の可撓性と搬送物の荷重に耐え得る所定の強度が確保されている。
【0023】
ヘッドプーリ16には、図示しない駆動用モータ等から駆動力が入力されるようになっている。駆動力によってヘッドプーリ16が回転すると、上面側に位置する搬送側11aのコンベヤベルト11が下面側に位置するリターン側11bへと送り出されて、無端状のコンベヤベルト11が走行する。このとき、テールプーリ17は、コンベヤベルト11の走行に伴って従動して回転し、コンベヤベルト11をリターン側11bから搬送側11aへと案内する。また、ヘッドプーリ16及びテールプーリ17との間において、搬送側11aには、コンベヤベルト11を下面側から保持するキャリヤローラ12が、コンベヤベルト11の長手方向に沿って複数配置されている。リターン側11bには、コンベヤベルト11を同じく下面側から保持するリターンローラ14が、コンベヤベルト11の長手方向に沿って複数配置されている。また、コンベヤベルト11の搬送側11aは、その上方がカバー15で覆われている。
【0024】
ヘッドプーリ16及びテールプーリ17等のプーリ類、キャリヤローラ12及びリターンローラ14等のローラ類は、支持フレーム30に取り付けられている。プーリ類及びローラ類は、それぞれ支持フレーム30に着脱自在である。ヘッドプーリ16及びテールプーリ17は、図1に示すように、並列方向両端のフロート20から立ち上がる支持フレームに取り付けられている。キャリヤローラ12は、支持フレーム30の上側の梁材33から立ち上がるローラ支持部13によって回転自在に支持されている。リターンローラ14は、支持フレーム30の上側の梁材33、又は、連結材34によって回転自在に支持されている。キャリヤローラ12は、コンベヤの幅方向に3本並んで配置され、図2に示すように、中央のローラは水平に、両端のローラは幅方向外側に向かって上方へ向かうように傾斜して配置される。これにより、搬送側11aのコンベヤベルト11は、幅方向両端部が幅方向中央よりも上方へ持ち上がった形状、すなわち、正面視V字状に保持される。リターン側11bのコンベヤベルト11は、1本のリターンローラ14によってその幅方向全長がフラットに保持されている。
【0025】
ヘッドプーリ16を備えたヘッド部と、テールプーリ17を備えたテール部との間には、多段ローラを備えたストレージ部50が配置されている。ストレージ部50は、ヘッド部とテール部との間のいずれかの場所にあればよい。ストレージ部50は、図5に示すように、コンベヤベルト11の長手方向に沿って対向する対のローラ51,52が多段に配置されており、この多段のローラ51,52にコンベヤベルト11が掛け回されている。後述のように、フロート20の連結数を増加させてヘッドプーリ16とテールプーリ17との距離を遠ざける際には、対向するローラ51,52同士を接近させるとコンベヤベルト11に余長が生じるので、コンベヤベルト11の張力を適切な範囲に保つことができる。また、フロート20の連結数を減少させてヘッドプーリ16とテールプーリ17との距離を近づける際には、対向するローラ51,52同士を離反させるとコンベヤベルト11に弛みを生じさせず、同じく張力を適切な範囲に保つことができる。すなわち、ストレージ部50は、フロート20の連結数を増減した際にコンベヤベルト11の張力を調整する機能を有している。ストレージ部50としては、この実施形態の構成以外にも、周知の構成を採用できる。
【0026】
搬送物は、テールプーリ17側からヘッドプーリ16側へ移送され、コンベヤベルト11が搬送側11aからリターン側11bへと180度向きを変える反転部11cにおいて、次工程40へ落下する。図1及び図5では、他の移送手段からなる次工程40として、下流側に隣接して設けた別のコンベヤ装置42を配置しており、ホッパ41から別のコンベヤ装置42に搬送物が移送される。ただし、次工程40はコンベヤ装置には限定されず、例えば、ダンプトラック等への積み込み装置等でもよい。
【0027】
フロート20は、テールプーリ17及びヘッドプーリ16等のプーリ類が取り付けられた支持フレーム30が立ち上がる第1種フロート20aと、第1種フロート20a以外の第2種フロート20bとに分けられる。第1種フロート20aの支持フレーム30には、コンベヤベルト11が巻回されているヘッドプーリ16及びテールプーリ17等のプーリ類が取り付けられている。また、第2種フロート20bの支持フレーム30には、コンベヤベルト11を保持するキャリヤローラ12やリターンローラ14等のローラ類が取り付けられており、プーリ類は取り付けられていない。このため、第2種フロート20bは、並列方向両端の連結材24を切り離した状態で、支持フレーム30とともにコンベヤベルト11に対して幅方向へ、すなわち、並列方向に交差する方向へ水面に沿って横移動が可能である。この横移動により、フロート20の連結数を増減させることが可能である。フロート20の連結数の増減により、例えば、新たなフロート20を差し入れてフロート20の連結数を増加させればコンベヤ装置1の全長を長くし、一部のフロート20を抜き取ってフロート20の連結数を減少させればコンベヤ装置1の全長を短くし、その全長を調整することができる。一度に差し入れるフロート20、あるいは、一度に抜き取るフロート20は、単数でもよいし複数でもよい。
【0028】
ところで、第2種フロート20bから立ち上がる支持フレーム30にはキャリヤローラ12やリターンローラ14等のローラ類が取り付けられており、フロート20を横移動する際に、これらのローラ類とコンベヤベルト11とが干渉する場合がある。このため、第2種フロート20bは、これらのローラ類を支持フレーム30から取り外した状態で、コンベヤベルト11に対して横移動させることが作業の容易化につながる。また、ローラ類を取り外すだけでなく、それらを支える支持フレーム30の一部(例えば、キャリヤローラ12を支えるローラ支持部13等)も取り外してもよいし、それ以外の支持フレーム30の構成部材の一部又は全部を取り外したうえで、フロート20の抜き取りや差し入れを行ってもよい。ローラ類や支持フレーム30は、ボルトやナット等によって容易に分解及び組み立てができる構造となっている。また、支持フレーム30とフロート20との接続構造も同様に、ボルトやナット等によって容易に分解及び組み立てができる。
【0029】
なお、フロート20は、所定の長さのものが用意されている。フロート20に設定される所定の長さは、例えば、5mのものを1種類だけ用意しておいてもよいし、あるいは、5mのものの他に10mのものを用意するなど、複数種類の長さのものを用意しておいてもよい。これにより、コンベヤ装置1の全長の延伸長さ、又は、短縮長さに対応して、適切な長さのフロート20を扱うことができる。
【0030】
この発明のコンベヤ装置1の全長調整方法を説明すると、まず、上記の構成からなるコンベヤ装置1の全長を延伸する際には、コンベヤベルト11の駆動を停止するとともに、並列方向に隣り合うフロート20間の連結材24を切り離す。切り離す連結材24は1箇所でよい。その切り離し箇所を挟むフロート20同士の間に、新たなフロート20を差し入れる準備を行う。ここで、フロート20には、既に支持フレーム30が取り付けられていてもよい。また、コンベヤベルト11に支障しない限りにおいて、ローラ類が取り付けられていてもよい。
【0031】
切り離し箇所を挟むフロート20間の距離を、図5に矢印Bで示すように遠ざける。テールプーリ17が遠ざかることにより、コンベヤベルト11は矢印Aの方向へ引っ張られるので、ストレージ部50からコンベヤベルト11の不足長を送り出すことで、コンベヤベルト11の張力を調整する。そして、間隔が広く開いたフロート20同士の間に、図5に矢印Cで示すように追加のフロート20を横移動により差し入れる。追加のフロート20は単一のものであってもよいし、並列方向に連続する複数のフロート20であってもよい。追加のフロート20が複数である場合は、それらのフロート20同士を予め連結材24で連結しておくか、あるいは、差し入れ後に速やかに連結材24で互いを連結するとよい。
【0032】
追加のフロート20をコンベヤベルト11の直下に差し入れた後、その追加のフロート20に対して並列方向に隣り合う既設のフロート20との間を、連結材24で連結する。最後に、追加のフロート20から立ち上がる支持フレーム30に取り付けられたキャリヤローラ12やリターンローラ14等のローラ類で、コンベヤベルト11を保持させる。追加のフロート20を差し入れた段階で、ローラ類や支持フレーム30の一部又は全部が取り付けられていない場合は、フロート20をコンベヤベルト11の直下へ差し入れた後に、そのローラ類や支持フレーム30を取り付ける。
【0033】
一方、コンベヤ装置1の全長を短縮する際には、コンベヤベルト11の駆動を停止するとともに、単一の又は並列方向に連続する複数のフロート20を抜き取り範囲とし、その抜き取り範囲の両端の連結材24を切り離す。抜き取り範囲のフロート20が複数である場合は、それらの抜き取り範囲のフロート20同士を繋ぐ連結材24は、そのまま連結状態にしておくことが望ましい。そして、必要に応じて、抜き取り範囲のフロート20の支持フレーム30から、キャリヤローラ12やリターンローラ14等のローラ類の一部又は全部を取り外す。このとき、必要に応じて、支持フレーム30の一部又は全部をフロート20から取り外してもよい。
【0034】
次に、図5の矢印Cと反対方向に、抜き取り範囲のフロート20を、コンベヤベルト11の直下から横移動により抜き取る。そして、矢印Bと反対方向に、抜き取り範囲に臨む広く開いた対のフロート20間の距離を近づける。テールプーリ17が近づくことにより、コンベヤベルト11は矢印Aと反対方向へ弛むので、ストレージ部50でコンベヤベルト11の弛みを吸収することで、コンベヤベルト11の張力を調整する。抜き取り範囲に臨む対のフロート20間を連結材24で連結する。
【0035】
フロート20には、水上での位置が移動しないように固定する移動防止手段が付加される。移動防止手段としては、例えば、フロート20から水底に降ろす錨や、フロート20と岸とを結ぶ鎖やワイヤ等の係留装置がある。移動防止手段によるフロート20の固定を一時的に解除して、フロート20を移動させることにより、コンベヤ装置1の向き、すなわち、コンベヤ装置2の先端と後端を結ぶ方向を調整することができる。これにより、コンベヤ装置1の長さ調整機能とあいまって、水面上を面的に広くカバーすることが可能である。
【0036】
この実施形態では、コンベヤ装置1の後端は、湖岸までの途中の水上に設けられた他の移送手段への積み替え場所に配置されるようにしたが、コンベヤ装置1の後端位置は自由に設定できる。例えば、コンベヤ装置1の後端が、岸を超えて陸上に位置するようにしてもよい。また、この実施形態では、ダム湖における土砂の浚渫を想定したが、湖沼や海洋での浚渫のみならず、土砂による埋め立てに際して、その土砂を運搬するために浮遊式のコンベヤ装置に、この発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 浮遊式コンベヤ装置
10 コンベヤユニット
11 コンベヤベルト
12 ローラ(キャリヤローラ)
14 ローラ(リターンローラ)
16 プーリ(ヘッドプーリ)
17 プーリ(テールプーリ)
20 フロート
20a 第1種フロート
20b 第2種フロート
24 連結材
30 支持フレーム
50 ストレージ部
図1
図2
図3
図4
図5