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特許7306727リアル・タイム分析および信号最適化による電荷検出質量分光分析法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】リアル・タイム分析および信号最適化による電荷検出質量分光分析法
(51)【国際特許分類】
   H01J 49/00 20060101AFI20230704BHJP
   H01J 49/42 20060101ALI20230704BHJP
   H01J 49/02 20060101ALI20230704BHJP
   G01N 27/62 20210101ALI20230704BHJP
【FI】
H01J49/00 360
H01J49/42 500
H01J49/42 650
H01J49/02 700
H01J49/00 400
G01N27/62 E
【請求項の数】 41
(21)【出願番号】P 2020568366
(86)(22)【出願日】2019-01-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-11
(86)【国際出願番号】 US2019013277
(87)【国際公開番号】W WO2019236140
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-01-07
(31)【優先権主張番号】62/680,245
(32)【優先日】2018-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520477485
【氏名又は名称】ザ・トラスティーズ・オブ・インディアナ・ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100173565
【弁理士】
【氏名又は名称】末松 亮太
(72)【発明者】
【氏名】ジャロルド,マーティン・エフ
(72)【発明者】
【氏名】ドレイパー,ベンジャミン・イー
【審査官】牧 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-026349(JP,A)
【文献】米国特許第6888130(US,B1)
【文献】米国特許第5880466(US,A)
【文献】DAVID Z. KEIFER et al,Charge detection mass spectrometry: weighing heavier things,THE ANALYST,2017年05月21日,Vol.142, No.10,p.1654-1671
【文献】ANDREW G. ELLIOTT et al,Simultaneous Measurements of Mass and Collisional Cross-Section of Single Ions with Charge Detection Mass Spectrometry,ANALITICAL CHEMISTRY,2017年06月16日,Vol.89, No.14,P.7701-7708
【文献】DOUSSINEAU TRISTAN et al,Infrared multiphoton dissociation tandem charge detection-mass spectrometry of single megadalton electrosprayed ions,REVIEW OF SCIENTIFIC INSTRUMENTS ,2011年10月07日,Vol.82, No.8,p.084104-1~084104-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 49/00 - 49/48
G01N 27/62
H01J 37/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電荷検出質量分光分析計であって、
静電線形イオン・トラップ(ELIT)またはオービトラップと、
イオンを前記ELITまたはオービトラップに供給するように構成されたイオン源と、
前記ELITまたはオービトラップに動作可能に結合された入力を有する少なくとも1つの増幅器と、
前記ELITまたはオービトラップおよび前記少なくとも1つの増幅器の出力に動作可能に結合された少なくとも1つのプロセッサと、
命令が内部に格納されている少なくとも1つのメモリと、
を備え、
前記命令が前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記少なくとも1つのプロセッサに、(i)イオン捕捉イベントの一部として、前記ELITまたはオービトラップ内に、前記イオン源によって供給された単一イオンを捕捉しようとするように、前記ELITまたはオービトラップを制御させ、(ii)前記イオン捕捉イベントの期間にわたって、前記少なくとも1つの増幅器によって生成された出力信号に基づいて、イオン測定情報を記録させ、(iii)前記記録したイオン測定情報に基づいて、前記ELITまたはオービトラップの制御の結果、単一イオンをその中に捕捉したか、イオンを捕捉しなかったか、または複数のイオンを捕捉したか判定させ、(iv)前記捕捉イベントの間に単一イオンが前記ELITまたはオービトラップに捕捉された場合にのみ、前記記録したイオン測定情報に基づいて、イオン質量およびイオン質量電荷比の内少なくとも1つを計算させ
(v)(i)から(iv)を繰り返し実行させ、(vi)前記ELITまたはオービトラップの制御の結果、単一イオンをその中に取り込んだという各判定、ならびに前記イオン質量およびイオン質量電荷比の内前記少なくとも1つの後続の計算に続いて、複数の異なるイオン捕捉イベントの各々について、前記イオン質量およびイオン質量電荷比の内前記少なくとも1つの計算されたもののヒストグラムを構築させ、かつ、新たなイオン測定情報が入手可能になるに連れて継続的に更新させる、電荷検出質量分光分析計。
【請求項2】
請求項1載の電荷検出質量分光分析計であって、更に、ディスプレイ・モニタを備え、前記少なくとも1つのメモリに格納された前記命令が、更に、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記少なくとも1つのプロセッサに、前記ヒストグラムを表示するように前記ディスプレイ・モニタを制御させる命令を含む、電荷検出質量分光分析計。
【請求項3】
請求項記載の電荷検出質量分光分析計であって、更に、ディスプレイ・モニタを備え、前記少なくとも1つのメモリに格納された前記命令が、更に、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記少なくとも1つのプロセッサに、前記ヒストグラムの構築をリアル・タイムで表示するように前記ディスプレイ・モニタを制御させる命令を含む、電荷検出質量分光分析計。
【請求項4】
請求項記載の電荷検出質量分光分析計において、前記少なくとも1つのメモリに格納された前記命令が、更に、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記少なくとも1つのプロセッサに、(i)から(iv)を繰り返し実行させ、単一イオン捕捉イベント、無イオン捕捉イベント、および複数イオン捕捉イベントの途中経過を表示するように、前記ディスプレイ・モニタを制御させる命令を含む、電荷検出質量分光分析計。
【請求項5】
請求項1からまでのいずれか1項記載の電荷検出質量分光分析計において、前記ELITが前記イオン源および前記少なくとも1つのプロセッサに動作可能に結合され、前記少なくとも1つの増幅器が、前記ELITおよび前記少なくとも1つのプロセッサに動作可能に結合された電荷プリアンプを含み、前記ELITが、第1通路を定める第1イオン・ミラーと第2通路を定める第2イオン・ミラーと、第3通路を定める電荷検出シリンダとを含み、前記第1、第2、および第3通路の各々の中心を長手方向軸が通過するように、前記第1、第2、および第3通路が、前記第1および第2イオン・ミラーの間に位置付けられた前記電荷検出シリンダと同軸状に整列され、前記第1イオン・ミラーがイオン注入アパーチャを定め、前記イオン源によって供給されたイオンが、前記イオン注入アパーチャを通って前記ELITに入射し、
前記電荷検出質量分光分析計が、更に、前記少なくとも1つのプロセッサならびに前記第1および第2イオン・ミラーに動作可能に結合され、イオン透過電界またはイオン反射電界を内部に選択的に確立するように構成された少なくとも1つの電圧源を備え、前記イオン透過電界が、前記第1および第2イオン・ミラーのそれぞれを通過するイオンを、前記長手方向軸に向けて収束させ、前記イオン反射電界が、前記電荷検出シリンダから前記第1および第2イオン・ミラーのそれぞれに入射するイオンを、停止させ、逆方向に前記電荷検出シリンダを通り前記第1および第2イオン・ミラーの他方に向けて加速させつつ、前記イオンを前記長手方向軸に向けて収束させ、
前記少なくとも1つのメモリに格納された前記命令が、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記少なくとも1つのプロセッサに、前記少なくとも1つの電圧源を制御して、前記イオン源によって供給されたイオンがELITを通過するように、前記第1および第2イオン・ミラーの各々に前記イオン透過電界を選択的に確立することによって、続いて前記少なくとも1つの電圧源を制御して、前記ELIT内に捕捉された任意のイオンまたは複数のイオンが前記第1および第2ミラー間において前記電荷検出シリンダ中を前後に発振するように、前記第1および第2イオン・ミラーの各々にイオン反射電界を選択的に確立することによって、前記単一イオンを内部に捕捉しようとするようにELITを制御させる命令を含む、電荷検出質量分光分析計。
【請求項6】
請求項項記載の電荷検出質量分光分析計において、前記少なくとも1つのメモリに格納された前記命令が、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記少なくとも1つの電圧源を制御して、前記第1および第2イオン・ミラーの各々に、少なくとも第1時間期間にわたって、または軸方向に前記電荷検出シリンダ中を移動する少なくとも1つのそれぞれのイオンによって前記電荷検出シリンダ上に誘発される少なくとも1つの対応する電荷に由来する少なくとも1つの電荷検出信号が前記電荷プリアンプ信号によって生成されるまで、前記イオン透過電界を確立することによって、続いて、前記少なくとも1つの電圧源を制御して、前記第2イオン・ミラー内に前記イオン反射電界を確立することによって、続いて、遅延期間後に、前記少なくとも1つの電圧源を制御して、前記第1イオン・ミラー内に前記イオン反射電界を確立することによって、連続捕捉プロセスにしたがって内部に前記単一イオンを捕捉しようとするように、前記少なくとも1つのプロセッサに、前記ELITを制御させる命令を含む、電荷検出質量分光分析計。
【請求項7】
請求項項記載の電荷検出質量分光分析計において、前記少なくとも1つのメモリに格納された前記命令が、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記少なくとも1つの電圧源を制御して、前記第1および第2イオン・ミラーの各々に、少なくとも第1時間期間にわたって、または軸方向に前記電荷検出シリンダ中を移動する少なくとも1つのそれぞれのイオンによって前記電荷検出シリンダ上に誘発される少なくとも1つの対応する電荷に由来する少なくとも1つの電荷検出信号が前記電荷プリアンプ信号によって生成されるまで、前記イオン透過電界を確立することによって、続いて、前記少なくとも1つの電圧源を制御して、前記第2イオン・ミラー内に前記イオン反射電界を確立することによって、続いて、軸方向に前記電荷検出シリンダ中を移動するイオンによって前記電荷検出シリンダ上に誘発される対応する電荷に由来する電荷検出信号が前記電荷プリアンプ信号によって生成されたことに応答して、前記少なくとも1つの電圧源を制御して、前記第1イオン・ミラー内に前記イオン反射電界を確立することによって、第1トリガ捕捉プロセスにしたがって内部に前記単一イオンを捕捉しようとするように、前記少なくとも1つのプロセッサに、前記ELITを制御させる命令を含む、電荷検出質量分光分析計。
【請求項8】
請求項項記載の電荷検出質量分光分析計において、前記少なくとも1つのメモリに格納された前記命令が、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記少なくとも1つの電圧源を制御して、前記第1および第2イオン・ミラーの各々に前記イオン透過電極を確立し、続いて、軸方向に前記電荷検出シリンダ中を移動するイオンによって前記電荷検出シリンダ上に誘発される対応する電荷に起因する電荷検出信号が前記電荷プリアンプ信号によって生成されたことに応答して、前記少なくとも1つの電圧源を制御して、前記第1および第2イオン・ミラーの各々に前記イオン反射電界を確立することによって、第2トリガ捕捉プロセスにしたがって内部に前記単一イオンを捕捉しようとするように、前記少なくとも1つのプロセッサに、前記ELITを制御させる命令を含む、電荷検出質量分光分析計。
【請求項9】
請求項からまでのいずれか1項記載の電荷検出質量分光分析計において、前記少なくとも1つのメモリに格納された前記命令が、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記第1および第2イオン・ミラーの各々に前記イオン反射電界を確立するための前記少なくとも1つの電圧源の前記制御に続いて、少なくとも1つのメモリに、前記捕捉イベントの期間中に前記電荷プリアンプ信号によって生成各電荷検出信号を格納することによって、前記少なくとも1つのプロセッサに、前記イオン測定情報を記録させる命令を含む、電荷検出質量分光分析計。
【請求項10】
請求項1からまでのいずれか1項記載の電荷検出質量分光分析計であって、更に、前記イオン源を出射して前記ELITまたはオービトラップに入射するイオンの強度または流れを、複数イオン捕捉イベントおよび無イオン捕捉イベントを最小に抑えるイオン強度またはイオン流に制御する手段を備える、電荷検出質量分光分析計。
【請求項11】
請求項1から1までのいずれか1項記載の電荷検出質量分光分析計であって、更に、
前記イオン源と前記ELITまたはオービトラップとの間に動作可能に位置付けられた少なくとも1つの質量電荷フィルタと、
前記少なくとも1つのプロセッサおよびイオン質量電荷フィルタに動作可能に結合された少なくとも1つの他の電圧源と、
少なくとも1つの選択電圧を生成するように前記少なくとも1つの他の電圧源を制御する手段であって、前記イオン質量電荷フィルタが、前記少なくとも1つの選択信号に応答して、選択された質量電荷比を有するイオンのみ、または質量電荷比値の選択された範囲を有するイオンのみを、前記ELITまたはオービトラップに通過させる、手段と、
を備える、電荷検出質量分光分析計。
【請求項12】
請求項1から1までのいずれか1項記載の電荷検出質量分光分析計において、前記少なくとも1つのメモリに格納された前記命令が、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記イオン測定情報を前記少なくとも1つのメモリの中にあるファイルに格納することによって、前記少なくとも1つのプロセッサに、前記イオン測定情報を記録させる命令を含む、電荷検出質量分光分析計。
【請求項13】
請求項1記載の電荷検出質量分光分析計において、前記少なくとも1つのメモリに格納された前記命令が、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記少なくとも1つのプロセッサに、前記ファイルに格納された前記イオン測定情報のフーリエ変換を計算してその周波数ドメイン・スペクトルを生成させる命令を含む、電荷検出質量分光分析計。
【請求項14】
請求項1記載の電荷検出質量分光分析計において、前記少なくとも1つのメモリに格納された前記命令が、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記少なくとも1つのプロセッサに、前記記録されたイオン測定情報のフーリエ変換を計算する前に、前記格納されたファイルに収容されている前記イオン測定情報を、ハイパス・フィルタ・アルゴリズムに通過させて、前記記録されたイオン測定情報における低周波ノイズを除去させる命令を含む、電荷検出質量分光分析計。
【請求項15】
請求項1または請求項1記載の電荷検出質量分光分析計において、前記少なくとも1つのメモリに格納された前記命令が、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記少なくとも1つのプロセッサに、前記記録されたイオン測定情報の周波数ドメイン・スペクトルをスキャンさせて、前記周波数ドメイン・スペクトルにおけるピークを突き止め識別させる命令を含む、電荷検出質量分光分析計。
【請求項16】
請求項1記載の電荷検出質量分光分析計において、
前記記録されたイオン測定情報の周波数ドメイン・スペクトルがノイズ・フロアを定め、
前記少なくとも1つのメモリに格納された前記命令が、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記少なくとも1つのプロセッサに、前記ノイズ・フロアの既定の倍数よりも大きな振幅をいずれも、前記周波数ドメイン・スペクトルにおけるピークとして識別させる命令を含む、電荷検出質量分光分析計。
【請求項17】
請求項1または請求項1記載の電荷検出質量分光分析計において、前記少なくとも1つのメモリに格納された前記命令が、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記少なくとも1つのプロセッサに、前記記録されたイオン測定情報の周波数スペクトルをスキャンしてピークが突き止められなかった場合、前記ELITまたはオービトラップの制御の結果、イオンが捕捉できなかったと判定させ、次いで暫定的に前記イオン捕捉イベントを空捕捉イベントとして識別させる命令を含む、電荷検出質量分光分析計。
【請求項18】
請求項1から1までのいずれか1項記載の電荷検出質量分光分析計において、前記少なくとも1つのメモリに格納された前記命令が、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記少なくとも1つのプロセッサに、前記記録されたイオン測定情報の周波数ドメイン・スペクトルをスキャンしてピークが突き止められた場合、前記突き止められたピークの内最も大きな振幅を有するものを、前記周波数ドメイン・スペクトルの基本周波数として識別させ、前記突き止められたピークの残りのものが、前記基本周波数に対して高調波周波数に位置するか否か判定させる命令を含む、電荷検出質量分光分析計。
【請求項19】
請求項18記載の電荷検出質量分光分析計において、前記少なくとも1つのメモリに格納された前記命令が、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記少なくとも1つのプロセッサに、前記突き止められたピークの残りのものが、前記基本周波数に対して高調波周波数に位置していない場合、前記ELITまたはオービトラップの制御の結果、複数のイオンが捕捉されたと判定させ、次いで前記イオン捕捉イベントを複数イオン捕捉イベントとして識別させる命令を含む、電荷検出質量分光分析計。
【請求項20】
請求項18または請求項19記載の電荷検出質量分光分析計において、前記少なくとも1つのメモリに格納された前記命令が、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記少なくとも1つのプロセッサに、前記突き止められたピークの残りのものが、前記基本周波数に対して高調波周波数に位置する場合、前記ELITまたはオービトラップの制御の結果、単一イオンが取り込まれたと判定させ、次いで前記イオン捕捉イベントを単一イオン捕捉イベントとして識別させる命令を含む、電荷検出質量分光分析計。
【請求項21】
請求項1または請求項2記載の電荷検出質量分光分析計において、前記少なくとも1つのメモリに格納された前記命令が、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記少なくとも1つのプロセッサに、前記イオン捕捉イベントが暫定的に空イオン捕捉イベントまたは単一イオン捕捉イベントとして識別された場合、(a)対応する周波数ドメイン・スペクトルを生成するために、前記ファイルの先頭において前記記録されたイオン測定情報のウィンドウのフーリエ変換を計算させ、前記ウィンドウが、前記記録されたイオン測定情報の既定数のデータ点として定められるウィンドウ・サイズを有し、(b)前記記録されたイオン測定情報の前記ウィンドウの周波数ドメイン・スペクトルをスキャンさせて、その中のピークを突き止め識別させ、(c)前記記録されたイオン測定情報の前記ウィンドウの周波数ドメイン・スペクトルをスキャンしてピークが突き止められなかった場合、前記ウィンドウのサイズを広げて(a)および(b)を再度実行させ、(d)ピークが突き止められるまで、または記録され前記ファイルに格納されている前記イオン測定情報の全てを含むまでに前記ウィンドウ・サイズが広げられるまで、(a)~(c)を繰り返させる命令を含む、電荷検出質量分光分析計。
【請求項22】
請求項2記載の電荷検出質量分光分析計において、前記少なくとも1つのメモリに格納された前記命令が、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記少なくとも1つのプロセッサに、前記イオン捕捉イベントが暫定的に空イオン捕捉イベントとして識別された場合、前記ELITまたはオービトラップの制御の結果、イオンが取り込まれなかったことを確認させ、前記記録されたイオン測定情報の前記ウィンドウの周波数ドメイン・スペクトルをスキャンして、ピークが周波数ドメイン・スペクトルにおいて突き止められず、記録され前記ファイルに格納されている前記イオン測定情報の全てを含むまでに前記ウィンドウ・サイズを広げ終えた場合、前記イオン捕捉イベントを空捕捉イベントとして最終的に識別させる命令を含む、電荷検出質量分光分析計。
【請求項23】
請求項2記載の電荷検出質量分光分析計において、前記少なくとも1つのメモリに格納された前記命令が、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記記録されたイオン測定情報の前記ウィンドウの前記周波数ドメイン・スペクトルをスキャンして、前記周波数ドメイン・スペクトルにおいてピークが突き止められた場合、前記少なくとも1つのプロセッサに、ウィンドウ・サイズを格納させる命令を含む、電荷検出質量分光分析計。
【請求項24】
請求項2記載の電荷検出質量分光分析計において、前記少なくとも1つのメモリに格納された前記命令が、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記捕捉イベントが暫定的に空捕捉イベントとして識別された場合、前記少なくとも1つのプロセッサに、前記捕捉イベントを単一イオン捕捉イベントとして再識別させる命令を含む、電荷検出質量分光分析計。
【請求項25】
請求項2または請求項2記載の電荷検出質量分光分析計において、前記少なくとも1つのメモリに格納された前記命令が、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記少なくとも1つのプロセッサに、(e)前記ファイルに格納されている、前記記録されたイオン測定情報全域にわたり、前記格納したウィンドウ・サイズを有するウィンドウを増分的にスキャンさせ、前記ウィンドウの増分毎に、(i)前記記録されたイオン測定情報のウィンドウのフーリエ変換を計算して対応する周波数ドメイン・スペクトルを生成させ、(ii)前記記録されたイオン測定情報のウィンドウの前記スキャンした周波数ドメイン・スペクトルの周波数ドメイン・データの発振周波数および振幅を判定させ、(f)前記発振周波数および振幅の判定に基づいて、平均イオン質量電荷比、平均イオン電荷、および平均イオン質量を計算させる命令を含む、電荷検出質量分光分析計。
【請求項26】
静電線形イオン・トラップ(ELIT)またはオービトラップと、イオンを前記ELITまたはオービトラップに供給するように構成されたイオン源と、前記ELITまたはオービトラップに動作可能に結合された入力を有する少なくとも1つの増幅器とを含む電荷検出質量分光分析計の動作方法であって、
プロセッサによって、前記イオン源によって供給された単一イオンを捕捉しようとするイオン捕捉イベントの一部として、前記ELITまたはオービトラップを制御するステップと、
前記プロセッサによって、前記イオン捕捉イベントの期間にわたって前記少なくとも1つの増幅器によって生成された出力信号に基づいて、イオン測定情報を記録するステップと、
前記記録されたイオン測定情報に基づいて、前記プロセッサによって、前記ELITまたはオービトラップの制御の結果、単一イオンが捕捉されたか、イオンが捕捉されなかったか、または複数のイオンが捕捉されたか判定するステップと、
前記捕捉イベントの間に前記ELITまたはオービトラップに単一イオンが捕捉された場合にのみ、前記記録されたイオン測定情報に基づいて、イオン質量およびイオン質量電荷比の内少なくとも1つを計算するステップと、
前記プロセッサによって、前記制御するステップ、前記記録するステップ、前記判定するステップ、および前記計算するステップが繰り返し実行されるステップと、
前記ELITまたはオービトラップの制御の結果、単一イオンをその中に取り込んだという各判定、ならびに前記イオン質量およびイオン質量電荷比の内前記少なくとも1つの後続の計算に続いて、複数の異なるイオン捕捉イベントの各々について、前記イオン質量およびイオン質量電荷比の内前記少なくとも1つの計算されたもののヒストグラムを構築し、新たなイオン測定情報が入手可能になるに連れて継続的に更新するステップと、
を含む、方法。
【請求項27】
電荷検出質量分光分析計であって、
静電線形イオン・トラップ(ELIT)またはオービトラップと、
前記ELITにイオンを供給するように構成されたイオン源と、
前記イオン源と前記ELITまたはオービトラップとの間に配置されたイオン強度またはイオン流制御装置と、
ELITまたはオービトラップおよび前記イオン強度またはイオン流制御装置に動作可能に結合された少なくとも1つのプロセッサと、
命令が内部に格納されている少なくとも1つのメモリと、
を備え、前記命令が前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記少なくとも1つのプロセッサに、(i)複数の連続捕捉イベントの各々の一部として、前記イオン源から単一イオンを捕捉しようとするように、前記ELITまたはオービトラップを制御させ、(ii)前記複数の連続捕捉イベントの各々について、前記捕捉イベントによって、前記ELITまたはオービトラップに単一イオンを捕捉したか、イオンを捕捉しなかったか、または複数のイオンを捕捉したか判定させ、前記捕捉イベントで単一イオンを取り込んだ場合のみに、前記イオン測定情報に基づいて、イオン質量およびイオン質量電荷比の内少なくとも1つの計算を行い、(iii)前記複数の連続捕捉イベントの過程において、単一イオン捕捉イベントの発生に対して、空イオン捕捉イベントまたは複数イオン捕捉イベントの発生を最小に抑え、前記単一イオン捕捉イベントの発生を最大化するという仕方で、前記イオン源から前記ELITまたはオービトラップへのイオンの強度または流れを制御するように、前記イオン強度またはイオン流制御装置を選択的に制御させ
(iv)前記イオン質量およびイオン質量電荷比の内前記少なくとも1つの計算されたもののヒストグラムを構築させ、新たなイオン測定情報が入手可能になるに連れて継続的に更新させる、電荷検出質量分光分析計。
【請求項28】
電荷検出質量分光分析計であって、
静電線形イオン・トラップ(ELIT)またはオービトラップと、
イオンを前記ELITまたはオービトラップに供給するように構成されたイオン源と、
前記ELITまたはオービトラップに動作可能に結合された少なくとも1つの増幅器と、
前記イオン源と前記ELITまたはオービトラップとの間に配置された質量電荷フィルタと、
前記ELITまたはオービトラップおよび前記少なくとも1つの増幅器に動作可能に結合された少なくとも1つのプロセッサと、
命令が内部に格納されている少なくとも1つのメモリと、
を備え、
前記命令が前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記少なくとも1つのプロセッサに、(i)選択された質量電荷比または質量電荷比の範囲内にあるイオンだけを前記イオン源から前記ELITまたはオービトラップに入射させるように、前記質量電荷フィルタを制御させ、(ii)前記複数の連続捕捉イベントの各々の一部として、前記質量電荷フィルタによって供される単一イオンを取り込もうとするように、前記ELITまたはオービトラップを制御させ、(iii)前記複数の連続捕捉イベントの各々について、当該捕捉イベントの期間中に前記少なくとも1つの増幅器によって生成されたイオン測定情報から、前記捕捉イベントが単一イオン捕捉イベントか、空イオン捕捉イベントか、または複数イオン捕捉イベントか判定させ、(iv)前記複数の連続捕捉イベントの各々について、前記イオン捕捉イベントが単一イオン捕捉イベントであると判定された場合にのみ、前記イオン測定情報からイオン質量およびイオン質量電荷比の内少なくとも1つの形態で、イオン分布情報を計算させ、これによって前記計算したイオン分布情報が、選択された質量電荷比を有するイオンまたは選択された質量電荷比範囲に入るイオンのみについての情報を含
(v)前記計算したイオン分布情報のヒストグラムを構築させ、新たなイオン測定情報が入手可能になるに連れて継続的に更新させる、電荷検出質量分光分析計。
【請求項29】
請求項1から25までおよび27から28までのいずれか1項記載の電荷検出質量分光分析計において、前記ELITが、前記イオン源および前記少なくとも1つのプロセッサに動作可能に結合され、前記ELITが、第1および第2イオン・ミラー間に配置された電荷検出シリンダを含み、前記電荷検出シリンダ中を移動するイオンによって費やされる時間と、1回の完全な発振サイクル中に前記第1および第2イオン・ミラーならびに前記電荷検出シリンダの組み合わせを横断するイオンによって費やされる総時間との比率に対応する、約50%のデューティ・サイクルで、前記ELITの内部に捕捉されたイオンが、前記第1および第2イオン・ミラー間で前記電荷検出シリンダ中を前後に発振するように、前記ELITが構成および制御される、電荷検出質量分光分析計。
【請求項30】
請求項1から25までおよび27から28までのいずれか1項記載の電荷検出質量分光分析計において、前記ELITが、前記イオン源および前記少なくとも1つのプロセッサに動作可能に結合され、前記ELITが、軸方向に整列された複数の電荷検出シリンダを含み、各電荷検出シリンダが、対応する複数のELIT領域の1つを形成するために、それぞれのイオン・ミラー間に配置され、前記メモリに格納された命令が、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記少なくとも1つのプロセッサに、前記複数のELIT領域の各々において単一イオンを連続的に捕捉するように、前記ELITを制御させる命令を含む、電荷検出質量分光分析計。
【請求項31】
請求項1から25までおよび27から28までのいずれか1項記載の電荷検出質量分光分析計において、前記ELITが、各々少なくとも1つのプロセッサに動作可能に結合された複数のELITを含み、更に、前記電荷検出質量分光分析計が、前記イオン源から前記複数のELITの各々にイオンを案内する(guide)手段を備え、前記メモリに格納された命令が、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記少なくとも1つのプロセッサに、前記複数のELITの各々に連続的に単一イオンを捕捉するように、前記ELITおよび前記イオン源から前記複数のELITの各々にイオンを案内する前記手段を制御させる命令を含む、電荷検出質量分光分析計。
【請求項32】
請求項1から25までおよび27から28までのいずれか1項記載の電荷検出質量分光分析計において、前記イオン源が、試料からイオンを生成するように構成されたイオン源と、前記生成されたイオンを少なくとも1つの分子特性の関数として分離するように構成された少なくとも1つのイオン分離機器とを含み、前記少なくとも1つのイオン分離機器を出射したイオンが、前記ELITまたはオービトラップに供給される、電荷検出質量分光分析計。
【請求項33】
請求項32項記載の電荷検出質量分光分析計において、前記少なくとも1つのイオン分離機器が、質量電荷比の関数としてイオンを分離する少なくとも1つの機器、イオン移動度の関数としてイオンを時間的に分離する少なくとも1つの機器、イオン保持時間の関数としてイオンを分離する少なくとも1つの機器、および分子サイズの関数としてイオンを分離する少なくとも1つの機器の内の1つまたは任意の組み合わせを含む、電荷検出質量分光分析計。
【請求項34】
請求項32項記載の電荷検出質量分光分析計において、前記少なくとも1つのイオン分離機器が、質量分光分析計およびイオン移動度分光分析計の内の1つまたは組み合わせを含む、電荷検出質量分光分析計。
【請求項35】
請求項32から34までのいずれか1項記載の電荷検出質量分光分析計であって、更に、前記イオン源と前記少なくとも1つのイオン分離機器との間に位置付けられた少なくとも1つのイオン処理機器を備え、前記イオン源と前記少なくとも1つのイオン分離機器との間に位置付けられた前記少なくとも1つのイオン処理機器が、イオンを収集または格納する少なくとも1つの機器、分子特性にしたがってイオンをフィルタリングする少なくとも1つの機器、イオンを解離させる少なくとも1つの機器、およびイオン荷電状態を正規化するまたは移す少なくとも1つの機器の内の1つまたは任意の組み合わせを含む、電荷検出質量分光分析計。
【請求項36】
請求項32から35までのいずれか1項記載の電荷検出質量分光分析計であって、更に、前記少なくとも1つのイオン分離機器と前記ELITまたはオービトラップとの間に位置付けられた少なくとも1つのイオン処理機器を備え、前記少なくとも1つのイオン分離機器と前記ELITまたはオービトラップとの間に位置付けられた前記少なくとも1つのイオン処理機器が、イオンを収集または格納する少なくとも1つの機器、分子特性にしたがってイオンをフィルタリングする少なくとも1つの機器、イオンを解離させる少なくとも1つの機器、およびイオン荷電状態を正規化するまたは移す少なくとも1つの機器の内の1つまたは任意の組み合わせを含む、電荷検出質量分光分析計。
【請求項37】
請求項32から36までのいずれか1項記載の電荷検出質量分光分析計において、前記ELITまたはオービトラップが、イオンがそこから出射することを許容するように構成され、更に、前記ELITまたはオービトラップから出射したイオンを受け取り、前記受け取ったイオンを少なくとも1つの分子特性の関数として分離するように位置付けられた少なくとも1つのイオン分離機器を備える、電荷検出質量分光分析計。
【請求項38】
請求項37記載の電荷検出質量分光分析計であって、更に、前記ELITまたはオービトラップと前記少なくとも1つのイオン分離機器との間に位置付けられた少なくとも1つのイオン処理機器を備え、前記ELITまたはオービトラップと前記少なくとも1つのイオン分離機器との間に位置付けられた前記少なくとも1つのイオン処理機器が、イオンを収集または格納する少なくとも1つの機器、分子特性にしたがってイオンをフィルタリングする少なくとも1つの機器、イオンを解離させる少なくとも1つの機器、およびイオン荷電状態を正規化するまたは移す少なくとも1つの機器の内の1つまたは任意の組み合わせを含む、電荷検出質量分光分析計。
【請求項39】
請求項37記載の電荷検出質量分光分析計であって、更に、前記少なくとも1つのイオン分離機器から出射したイオンを受け取るように位置付けられた少なくとも1つのイオン処理機器を備え、前記少なくとも1つのイオン分離機器が、前記ELITまたはオービトラップから出射したイオンを受け取るように位置付けられ、前記ELITまたはオービトラップから出射したイオンを受け取るように位置付けられた前記少なくとも1つのイオン分離機器から出射したイオンを受け取るように位置付けられた前記少なくとも1つのイオン処理機器が、イオンを収集または格納する少なくとも1つの機器、分子特性にしたがってイオンをフィルタリングする少なくとも1つの機器、イオンを解離させる少なくとも1つの機器、およびイオン荷電状態を正規化するまたは移す少なくとも1つの機器の内の1つまたは任意の組み合わせを含む、電荷検出質量分光分析計。
【請求項40】
請求項32から36までのいずれか1項記載の電荷検出質量分光分析計において、前記ELITまたはオービトラップが、イオンがそこから出射することを許容するように構成され、更に、前記電荷検出質量分光分析計が、前記ELITまたはオービトラップから出射したイオンを受け取るように位置付けられた少なくとも1つのイオン処理機器を備え、前記ELITまたはオービトラップから出射したイオンを受け取るように位置付けられた前記少なくとも1つのイオン処理機器が、イオンを収集または格納する少なくとも1つの機器、分子特性にしたがってイオンをフィルタリングする少なくとも1つの機器、イオンを解離させる少なくとも1つの機器、およびイオン荷電状態を正規化するまたは移す少なくとも1つの機器の内の1つまたは任意の組み合わせを含む、電荷検出質量分光分析計。
【請求項41】
イオン分離システムであって、
試料からイオンを生成するように構成されたイオン源と、
前記生成されたイオンを質量電荷比の関数として分離するように構成された第1質量分光分析計と、
前記第1質量分光分析計から出射したイオンを受け取るように位置付けられ、前記第1質量分光分析計から出射したイオンを解離させるように構成されたイオン解離ステージと、
前記イオン解離ステージから出射した解離イオンを、質量電荷比の関数として分離するように構成された第2質量分光分析計と、
請求項1から25までおよび27から28までのいずれか1項記載の電荷検出質量分光分析計(CDMS)であって、前記CDMSが前記第1質量分光分析計および前記イオン解離ステージのいずれかから出射したイオンを受け取ることができるように、前記イオン解離ステージと並列に結合される、電荷検出質量分光分析計(CDMS)と、
を備え、
前記第1質量分光分析計から出射した先駆イオンの質量が、CDMSを使用して測定され、閾値質量未満の質量値を有する先駆イオンの解離イオンの質量電荷比が、前記第2質量分光分析計を使用して測定され、前記閾値質量以上の質量値を有する先駆イオンの解離イオンの質量電荷比および電荷値が、前記CDMSを使用して測定される、イオン分離システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互引用
[0001] 本願は、2018年6月4日に出願された米国仮特許出願第62/680245号の権利および優先権を主張する。この特許出願をここで引用したことにより、その内容全体が本願にも含まれるものとする。
【0002】
政府の実施権
[0002] 本発明は、全米科学財団によって授与された契約第CHE1531823の下で政府支援によって行われた。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
技術分野
[0003] 本開示は、一般的には、電荷検出質量分光分析機器(instrument)に関し、更に特定すれば、このような機器による質量および電荷測定の実行に関する。
【従来技術】
【0004】
[0004] 質量分光分析法は、イオン質量および電荷にしたがって物質の気体イオンを分離することによって、物質の化学成分の識別を可能にする。このような分離イオンの質量を判定するために、種々の機器および技法が開発されており、このような技法の1つが、電荷検出質量分光分析法(CDMS:charge detection mass spectrometry)として知られている。CDMSでは、イオン毎に個々にイオン質量を、「m/z」と通例呼ばれる、測定イオン質量電荷比、および測定イオン電荷の関数として判定する。
【0005】
[0005] 早期のCDMS検出器では、m/zおよび電荷測定において高レベルの不確実性があったことから、静電線形イオン・トラップ(ELIT:electrostatic linear ion trap)検出器の開発に至った。この検出器では、イオンを電荷検出シリンダ全域で前後に発振させる。このような電荷検出シリンダを通るイオンの経路(pass)が複数あるので、イオン毎に複数回の測定に対応し(provide for)、電荷測定における不確実性はn1/2で減少することが示されている。ここで、nは電荷測定回数である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0006] CDMSは、従来通りの単一粒子手法であり、イオン毎に質量を直接判定するので、1つ1つのイオンを捕捉して、ELIT内において発振させる。単一イオン捕捉イベントの条件は厳しく制限される。しかしながら、入力されるイオン信号の強度が低過ぎる場合、殆どのイオン捕捉イベントは空であり、入力されるイオン信号の強度が高過ぎる場合、複数のイオンが捕捉される。更に、従来のCDMSシステムにおいてイオン毎に収集された測定値の分析には、収集時間よりも遙かに長い時間がかかるので、分析プロセスはオフラインで、例えば、夜間に、またはイオン測定および収集プロセスからずらした他のいずれかの時間に行われるのが通例である。その結果、イオン捕捉イベントが空なのか、または複数のイオンを収容するのか、イオン測定が行われてかなり後まで分からないのが通例である。したがって、このようなCDMSシステムおよび技法において改善を求めることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0007] 本開示は、添付した請求項において記載された特徴の内1つ以上、および/または以下の特徴およびその組み合わせの内1つ以上を含むことができる。1つの態様において、電荷検出質量分光分析計は、静電線形イオン・トラップ(ELIT)またはオービトラップと、イオンをELITまたはオービトラップに供給するように構成されたイオン源と、ELITまたはオービトラップに動作可能に結合された入力を有する少なくとも1つの増幅器と、ELITまたはオービトラップおよび少なくとも1つの増幅器の出力に動作可能に結合された少なくとも1つのプロセッサと、命令が内部に格納されている少なくとも1つのメモリとを備えることができ、命令が少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、少なくとも1つのプロセッサに、(i)イオン捕捉イベントの一部として、ELITまたはオービトラップ内に、イオン源によって供給された単一イオンを捕捉しようとするように、ELITまたはオービトラップを制御させ、(ii)イオン捕捉イベントの期間にわたって、少なくとも1つの増幅器によって生成された出力信号に基づいて、イオン測定情報を記録させ、(iii)記録したイオン測定情報に基づいて、ELITまたはオービトラップの制御の結果、単一イオンをその中に捕捉したか、イオンを捕捉しなかったか、または複数のイオンを捕捉したか判定させ、(iv)捕捉イベントの間に単一イオンがELITまたはオービトラップに捕捉された場合にのみ、記録したイオン測定情報に基づいて、イオン質量およびイオン質量電荷比の内少なくとも1つを計算させる。
【0008】
[0008] 他の態様において、静電線形イオン・トラップ(ELIT)またはオービトラップと、イオンをELITまたはオービトラップに供給するように構成されたイオン源と、ELITまたはオービトラップに動作可能に結合された入力を有する少なくとも1つの増幅器とを含む電荷検出質量分光分析計の動作方法を提供する。この方法は、プロセッサによって、イオン源によって供給された単一イオンを捕捉しようとするイオン捕捉イベントの一部として、ELITまたはオービトラップを制御するステップと、プロセッサによって、イオン捕捉イベントの期間にわたって少なくとも1つの増幅器によって生成された出力信号に基づいて、イオン測定情報を記録するステップと、記録されたイオン測定情報に基づいて、プロセッサによって、ELITまたはオービトラップの制御の結果、単一イオンが捕捉されたか、イオンが捕捉されなかったか、または複数のイオンが捕捉されたか判定するステップと、捕捉イベントの間にELITまたはオービトラップに単一イオンが捕捉された場合にのみ、記録されたイオン測定情報に基づいて、イオン質量およびイオン質量電荷比の内少なくとも1つを計算するステップとを含むことができる。
【0009】
[0009] 更に他の態様において、電荷検出質量分光分析計は、静電線形イオン・トラップ(ELIT)またはオービトラップと、ELITまたはオービトラップにイオンを供給するように構成されたイオン源と、ELITまたはオービトラップの動作を制御する手段と、ELITまたはオービトラップおよびELITまたはオービトラップを制御する手段に動作可能に結合された少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのプロセッサに結合されたディスプレイ・モニタと、命令が格納された少なくとも1つのメモリとを備えることができ、命令が少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、少なくとも1つのプロセッサに、(i)制御グラフィカル・ユーザ・インターフェース(GUI)アプリケーションを実行させ、(ii)ディスプレイ・モニタ上に制御GUIアプリケーションの制御GUIを生成させ、制御GUIが、ELITまたはオービトラップの少なくとも1つの対応する動作パラメータのために、少なくとも1つの選択可能なGUIエレメントを含み、(iii)制御GUIとのユーザ対話処理によって、少なくとも1つの選択可能なGUIエレメントの選択に対応する第1ユーザ・コマンドを受け取らせ、(iv)第1ユーザ・コマンドの受け取りに応答して、ELITまたはオービトラップの少なくとも1つの対応する動作パラメータを制御するために、ELITまたはオービトラップの動作を制御する手段を制御させる。
【0010】
[0010] 更に他の態様において、電荷検出質量分光分析計は、静電線形イオン・トラップ(ELIT)またはオービトラップと、ELITまたはオービトラップにイオンを供給するように構成されたイオン源と、イオン源とELITまたはオービトラップとの間に配置されたイオン強度またはイオン流制御装置と、ELITまたはオービトラップおよびイオン強度またはイオン流制御装置に動作可能に結合された少なくとも1つのプロセッサと、命令が内部に格納されている少なくとも1つのメモリとを備えることができ、命令が少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、少なくとも1つのプロセッサに、(i)複数の連続捕捉イベントの各々の一部として、イオン源から単一イオンを捕捉しようとするように、ELITまたはオービトラップを制御させ、(ii)複数の連続捕捉イベントの各々について、捕捉イベントによって、ELITまたはオービトラップに単一イオンを捕捉したか、イオンを捕捉しなかったか、または複数のイオンを捕捉したか判定させ、(iii)複数の連続捕捉イベントの過程において、単一イオン捕捉イベントの発生に対して、無イオン捕捉イベントまたは複数イオン捕捉イベントの発生を最小に抑え、単一イオン捕捉イベントの発生を最大化するという仕方で、イオン源からELITまたはオービトラップへのイオンの強度または流れを制御するように、イオン強度またはイオン流制御装置を選択的に制御させる。
【0011】
[0011] 他の態様において、電荷検出質量分光分析計は、静電線形イオン・トラップ(ELIT)またはオービトラップと、イオンをELITまたはオービトラップに供給するように構成されたイオン源と、ELITまたはオービトラップに動作可能に結合された少なくとも1つの増幅器と、イオン源とELITまたはオービトラップとの間に配置された質量電荷フィルタ(mass-to-charge filter)と、ELITまたはオービトラップおよび少なくとも1つの増幅器に動作可能に結合された少なくとも1つのプロセッサと、命令が内部に格納されている少なくとも1つのメモリとを備えることができ、命令が少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、少なくとも1つのプロセッサに、(i)選択された質量電荷比または質量電荷比の範囲内にあるイオンだけをイオン源からELITまたはオービトラップに流入させるように、質量電荷フィルタを制御させ、(ii)複数の連続捕捉イベントの一部として、質量電荷フィルタによって供される単一イオンを取り込もうとするように、ELITまたはオービトラップを制御させ、(iii)複数の連続捕捉イベントの各々について、当該捕捉イベントの期間中に少なくとも1つの増幅器によって生成されたイオン測定情報から、捕捉イベントが単一イオン捕捉イベントか、空イオン捕捉イベントか、または複数イオン捕捉イベントか判定させ、(iv)複数の連続捕捉イベントの各々について、イオン捕捉イベントが単一イオン捕捉イベントであると判定された場合にのみ、イオン測定情報からイオン質量およびイオン質量電荷比の内少なくとも1つの形態で、イオン分布情報を計算させ、これによって計算したイオン分布情報が、選択された質量電荷比を有するイオンまたは選択された質量電荷比範囲に入るイオンのみについての情報を含む。
【0012】
[0012] 更に他の態様において、イオン分離システムは、試料からイオンを生成するように構成されたイオン源と、生成されたイオンを質量電荷比の関数として分離するように構成された第1質量分光分析計と、第1質量分光分析計から出射したイオンを受け取るように位置付けられ、第1質量分光分析計から出射したイオンを解離させるように構成されたイオン解離ステージと、イオン解離ステージから出射した解離イオンを、質量電荷比の関数として分離するように構成された第2質量分光分析計と、以上に記載した態様の内任意の1つまたは組み合わせの電荷検出質量分光分析計(CDMS)であって、CDMSが第1質量分光分析計およびイオン解離ステージのいずれかから出射したイオンを受け取ることができるように、イオン解離ステージと並列に結合される、電荷検出質量分光分析計(CDMS)とを備えることができ、第1質量分光分析計から出射した先駆イオンの質量が、CDMSを使用して測定され、閾値質量未満の質量値を有する先駆イオンの解離イオンの質量電荷比が、第2質量分光分析計を使用して測定され、閾値質量以上の質量値を有する先駆イオンの解離イオンの質量電荷比および電荷値が、CDMSを使用して測定される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、制御および測定コンポーネントが結合された、静電線形イオン捕捉(ELIT)の実施形態を含むCDMSシステムの簡略図である。
図2A図2Aは、図1に示すELITのイオン・ミラーM1の拡大図であり、M1のミラー電極を制御してイオン透過電界を内部に生成する。
図2B図2Bは、図1に示すELITのイオン・ミラーM2の拡大図であり、M2のミラー電極を制御してイオン反射電界を内部に生成する。
図3図3は、図1に示すプロセッサの実施形態の簡略図である。
図4A図4Aは、図1のELITの簡略図であり、少なくとも1つのイオンをELIT内に捕獲する(capture)ため、そしてイオン・ミラー間および電荷検出シリンダ全域で前後にイオン(1つまたは複数)を発振させて、複数の電荷検出イベントを測定および記録するための、イオン・ミラーおよび電荷生成器のシーケンス制御ならびに動作を明確に示す。
図4B図4Bは、図1のELITの簡略図であり、少なくとも1つのイオンをELIT内に捕獲する(capture)ため、そしてイオン・ミラー間および電荷検出シリンダ全域で前後にイオン(1つまたは複数)を発振させて、複数の電荷検出イベントを測定および記録するための、イオン・ミラーおよび電荷生成器のシーケンス制御ならびに動作を明確に示す。
図4C図4Cは、図1のELITの簡略図であり、少なくとも1つのイオンをELIT内に捕獲する(capture)ため、そしてイオン・ミラー間および電荷検出シリンダ全域で前後にイオン(1つまたは複数)を発振させて、複数の電荷検出イベントを測定および記録するための、イオン・ミラーおよび電荷生成器のシーケンス制御ならびに動作を明確に示す。
図5図5は、イオン測定イベント・データがCDMS機器によって生成されるに連れてリアル・タイムで分析するプロセッサの実施形態の簡略フローチャートである。
図6A図6Aは、図1のCDMS機器のユーザによるリアル・タイム仮想制御のためのグラフィカル・ユーザ・インターフェースの実施形態の模式図である。
図6B図6Bは、CDMS機器によって生成されたイオン測定イベント・データのリアル・タイム分析によって得られた出力データの収集体の一例の模式図である。
図6C図6Cは、イオン測定イベント・データがCDMS機器によって生成されるに連れて、そのリアル・タイム分析によって得られた出力データから構築されたヒストグラムのリアル・タイム・スナップショットである。
図7A図7Aは、図1および図3に示すCDMSシステムと同様であり、ELITによる単一イオン捕捉イベントを最適化するために、イオン入射条件を制御するためにイオン源とELITとの間に挿入された装置の実施形態を含む、CDMSシステムの簡略図である。
図7B図7Bは、図7Aに示す装置の一部を形成する可変アパーチャ・ディスクの簡略図である。
図8図8は、図1および図3に示すCDMSシステムと同様であり、イオン源とELITとの間に挿入された質量フィルタの実施形態を含む、CDMSシステムの簡略図である。
図9A図9Aは、図1のCDMSによって生成された、生体試料例の完全な質量スペクトルのプロットである。
図9B図9Bは、図9Aの完全な質量スペクトルを生成するために使用された同じ試料について、図8のCDMSによって生成された質量スペクトルのプロットであり、完全な質量スペクトルの指定範囲内に質量を有するイオンが、ELITによる分析の前に、質量フィルタによって除去されている。
図10A図10Aは、図1図7A図7B、および図8のCDMS機器の内任意のものを含むイオン分離機器の実施形態の簡略ブロック図であり、ELITの上流側にあるイオン源の一部を形成することができ、および/またはELITから出射したイオン(1つまたは複数)を更に処理するためにELITの下流側に配置することができるイオン処理機器の例を示す。
図10B図10Bは、図1図7A図7B、および図8のCDMS機器の内任意のものを含むイオン分離機器の他の実施形態の簡略ブロック図であり、従来のイオン処理機器を、本明細書において図示および説明するCDMSシステムの実施形態の内任意のものと組み合わせた実施態様例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0029] 本開示の原理の理解を促進するという目的のために、これより添付図面に示す複数の例示的な実施形態を参照し、これらを説明するために特定的な文言を使用する。
【0015】
[0030] 本開示は、イオン電荷、質量電荷(mass-to-charge)、および質量を測定および判定するために静電線形イオン・トラップ(ELIT)を含む電荷検出質量分光分析計(CDMS)の動作をリアル・タイムで制御するための装置および技法に関する。この開示に限って言えば、「電荷検出イベント」(charge detection event)という語句は、イオンが1回電荷検出器を通過することによって、ELITの電荷検出器上に誘発される電荷の検出と定義する。そして、「イオン測定イベント」(ion measurement event)という語句は、選択された回数または選択された時間期間における、電荷検出器全域にわたるイオンの前後の発振(oscillation)から生じる電荷検出イベントの集合体と定義する。以下で詳しく説明するが、ELIT内において制御されたイオン捕捉から、電荷検出器全域にわたるイオンの前後の発振が発生するので、「イオン測定イベント」という語句は、代わりに、「イオン捕捉イベント」(ion trapping event)、または簡単に「捕捉イベント」(trapping event)と本明細書では呼ぶこともでき、「イオン測定イベント」、「イオン捕捉イベント」、「捕捉イベント」、およびその変形は互いに同義語であると理解されるものとする。
【0016】
[0031] 図1を参照すると、制御および測定コンポーネントが結合された、静電線形イオン・トラップ(ELIT)14の実施形態を含むCDMSシステム10が示されている。図示する実施形態では、CDMSシステム10は、ELIT14の入射口に動作可能に結合されたイオン源12を含む。図10Aに関して更に説明するが、イオン源12は、実例として、試料からイオンを生成する任意の従来のデバイスまたは装置を含み、更に、1つ以上の分子特性にしたがってイオンの電荷状態を分離する、収集する、フィルタリングする、断片化する、および/または正規化する、もしくは移す(shift)ための1つ以上のデバイスおよび/または機器も含んでもよい。限定とは絶対に解釈してはならない1つの実例として、イオン源12は、従来のエレクトロスプレー・イオン化源、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI:matrix-assisted laser desorption ionization)源等を含み、従来の質量分光分析計の入射口に結合されてもよい。質量分光分析計は、任意の従来の設計でもよく、例えば、飛行時間(TOF:time-of-flight)質量分光分析計、リフレクトロン質量分光分析計、フーリエ変換イオン・サイクロトロン共鳴(FTICR:Fourier transform ion cyclotron resonance)質量分光分析計、四重極型質量分光分析計、三連四重極型質量分光分析計、磁場型質量分光分析計等を含むが、これらに限定されるのではない。いずれにしても、質量分光分析計のイオン出射口は、ELIT14のイオン入射口に動作可能に結合される。イオンが生成される元の試料は、任意の生体または他の材料でもよい。ある実施形態では、CDMSシステム10は、ELIT14の代わりに、またはこれに加えて、オービトラップ(orbitrap)を含んでもよい。
【0017】
[0032] 図示する実施形態では、ELIT14は、実例として、接地チェンバ(ground chamber)または円筒GCによって包囲され、対向するイオン・ミラーM1、M2に動作可能に結合された電荷検出器CDを含む。イオン・ミラーM1、M2は、それぞれ、電荷検出器CDの反対側の両端に位置付けられている。イオン・ミラーM1は、イオン源12と電荷検出器CDの一端との間に動作可能に位置付けられ、イオン・ミラーM2は、電荷検出器CDの逆端に動作可能に位置付けられている。各イオン・ミラーM1、M2は、その内部にそれぞれのイオン・ミラー領域R1、R2を定める。イオン・ミラーM1、M2の領域R1、R2、電荷検出器CD、および電荷検出器CDとイオン・ミラーM1、M2との間の空間は、一体となって、その中央を貫通する長手方向軸20を定める。長手方向軸20は、実例として、ELIT14を貫通し、イオン・ミラーM1、M2の間を通過する理想的なイオン移動路を表す。これについては、以下で更に詳しく説明する。
【0018】
[0033] 図示する実施形態では、電圧源V1、V2が、それぞれ、イオン・ミラーM1、M2に電気的に接続されている。各電圧源V1、V2は、実例として、1つ以上の切り替え可能なDC電圧源を含む。DC電圧源は、N通りのプログラム可能または制御可能な電圧を選択的に生成するように、制御またはプログラミングすることができる。ここで、Nは任意の正の整数としてよい。以下で詳しく説明するように、イオン・ミラーM1、M2の各々に2つの異なる動作モードの1つを確立するための、このような電圧の実例について、図2Aおよび図2Bに関して以下で説明する。いずれの場合でも、イオンは、EFLIT14内において、長手方向軸20の近くを移動する。長手方向軸20は、電圧源V1、V2によってそれぞれ確立される電界の影響下で、電荷検出器CDおよびイオン・ミラーM1、M2の中央を貫通する。
【0019】
[0034] 電圧源V1、V2は、実例をあげると、P本の信号経路によって、電気的に従来のプロセッサ16に接続されて示されている。プロセッサ16は、命令が内部に格納されているメモリ18を含む。命令がプロセッサ16によって実行されると、それぞれのイオン・ミラーM1、M2の領域R1、R2内に、イオン透過およびイオン反射電界TEF、REFをそれぞれ選択的に確立するために所望のDC出力電圧を生成するように、プロセッサ16に電圧源V1、V2を制御させる。Pは、任意の正の整数としてよい。ある代替実施形態では、電圧源V1、V2のいずれかまたは双方は、1つ以上の一定出力電圧を選択的に生成するようにプログラミングされてもよい。他の代替実施形態では、電圧源V1、V2のいずれかまたは双方は、任意の所望の形状の1つ以上の時間可変出力電圧を生成するように構成されてもよい。尚、代替実施形態では、もっと多いまたはもっと少ない電圧源をミラーM1、M2に電気的に接続してもよいことは理解されよう。
【0020】
[0035] 電荷検出器CDは、実例として、導電性シリンダの形態で設けられている。導電性シリンダは、電荷感応プリアンプ(charge sensitive preamplifier)CPの信号入力に電気的に接続され、電荷プリアンプCPの信号出力はプロセッサ16に電気的に接続されている。電圧源V1、V2は、実例として、以下で詳しく説明するように、ELIT14に入射するイオンを選択的に捕捉し、その内部においてイオン・ミラーM1、M2間で前後に発振させて、捕捉されたイオンが繰り返し電荷検出器CDを通過するように、制御される。イオンをELIT14内部に捕捉し、イオン・ミラーM1、M2間を前後に発振させることによって、電荷プリアンプCPは、実例として、イオンが電荷検出シリンダCDを通過しイオン・ミラーM1、M2の間を通過するときに電荷検出シリンダCD上に誘発される電荷(CH)を検出し、それに対応する電荷検出信号(CHD)を生成するように従来通りに動作可能である。電荷検出信号CDHは、実例として、発振周期値の形態で記録され、これに関して,各発振周期値は、1回のそれぞれの電荷検出イベントについてのイオン測定情報を表す。複数のこのような発振周期値が測定され、それぞれのイオン測定イベントの間(即ち、イオン捕捉イベントの間)に捕捉されたイオンについて記録される。イオン測定イベントについて記録された複数の発振周期値、即ち、記録されたイオン測定情報の集合体が得られ、これらが処理されて、以下で詳しく説明するように、イオン電荷、質量電荷比、および/または質量値を判定する。このように、複数のイオン測定イベントが処理され、試料の質量電荷比および/または質量スペクトルが、実例として、リアル・タイムで構築される。これについても、以下で詳しく説明する。
【0021】
[0036] これより図2Aおよび図2Bを参照すると、図1に示したELIT14のイオン・ミラーM1、M2のそれぞれの実施形態が示されている。実例として、イオン・ミラーM1、M2は互いに同一であり、各々が、4つの離間された導電性ミラー電極のカスケード状配列を含む。イオン・ミラーM1、M2の各々について、第1ミラー電極30は厚さW1を有し、直径P1の中心を貫通する通路を定める。エンドキャップ32が第1ミラー電極30の外面に固定またそうでなければ結合され、中央を貫通する開口A1を定める。開口A1は、対応するイオン・ミラーM1、M2それぞれへの入射口、および/または対応するイオン・ミラーM1、M2それぞれからのイオンの出射口として機能する。イオン・ミラーM1の場合、エンドキャップ32は、図1に示すイオン源12のイオン出射口に結合されるか、またはその一部となる。各エンドキャップ32のアパーチャA1は、実例として、直径P2を有する。
【0022】
[0037] 各イオン・ミラーM1、M2の第2ミラー電極30は、第1ミラー電極30から、幅W2を有する空間だけ離間されている。第2ミラー電極30は、ミラー電極30と同様、厚さW1を有し、直径P2の中心を貫通する通路を定める。各イオン・ミラーM1、M2の第3ミラー電極30も同様に、第2ミラー電極30から幅W2の空間だけ離間されている。第3ミラー電極30は、厚さW1を有し、幅P1の中央を貫通する通路を定める。
【0023】
[0038] 第4ミラー電極30は、第3ミラー電極30から幅W2の空間だけ離間されている。第4ミラー電極30は、実例として、W1の厚さを有し、電荷検出器CDの周囲に配置された接地シリンダGCのそれぞれの端部によって形成される。第4ミラー電極30は、その中央を貫通するアパーチャA2を定める。アパーチャA2は、実例として、円錐形状をなし、接地シリンダGCの内面と外面との間で、接地シリンダGCの内面において定められた直径P3から、接地シリンダGCの外面(それぞれのイオン・ミラーM1、M2の内面でもある)における直径P1まで線形に増大する。
【0024】
[0039] ミラー電極30~30の間に定められた空間は、ある実施形態では、空隙、即ち、真空ギャップでもよく、他の実施形態では、このような空間に1つ以上の非導電性材料、例えば、誘電体材料を充填してもよい。ミラー電極30~30およびエンドキャップ32は、軸方向に整列されており、即ち、共線状であり、長手方向軸22が、整列された各通路の中央を貫通し、更にアパーチャA1、A2の中央を貫通するようになっている。ミラー電極30~30間の空間が1つ以上の非導電性材料を含む実施形態では、このような材料も同様に、それらを貫通するそれぞれの通路を定める。これらの通路は、ミラー電極30~30を貫通して定められた通路と軸方向に整列され、即ち、 共線状であり、実例としてP2以上の直径を有する。実例をあげると、P1>P3>P2であるが、他の実施形態では、他の相対的直径構成も可能である。
【0025】
[0040] 領域R1が、イオン・ミラーM1のアパーチャA1、A2間に定められ、他の領域R2も、同様に、イオン・ミラーM2のアパーチャA1、A2間に定められている。領域R1、R2は、実例をあげると、互いに形状および容積が同一である。
【0026】
[0041] 先に説明したように、電荷検出器CDは、実例として、イオン・ミラーM1、M2のそれぞれ対応するものの間に位置付けられ、幅W3の空間だけ離間された細長い導電性シリンダの形態で設けられている。一実施形態では、W1>W3>W2、およびP1>P3>P2であるが、他の代替実施形態では、他の相対的幅構成も可能である。いずれの場合でも、長手方向軸20は、実例として、長手方向軸20がイオン・ミラーM1、M2および電荷検出シリンダCDの複合体の中央を貫通するように、電荷検出シリンダCDを貫通して定められた通路の中央を貫通する。動作において、接地シリンダGCは、実例として、各イオン・ミラーM1、M2の第4ミラー電極30が常時接地電位となるように、接地電位に制御される。ある代替実施形態では、イオン・ミラーM1、M2のいずれかまたは双方の第4ミラー電極30は、任意の所望のDC基準電位に、または切り替え可能なDCに、または他の時間可変電圧源に設定されてもよい。
【0027】
[0042] 図2Aおよび図2Bに示す実施形態では、電圧源V1、V2は、各々、4通りのDC電圧D1~D4を生成し、電圧D1~D4をそれぞれのイオン・ミラーM1、M2のミラー電極30~30のそれぞれに供給するように各々構成されている。ミラー電極30~30の内1つ以上が常時接地電位に保持される実施形態では、このようなミラー電極30~30の1つ以上が、代わりに、それぞれの電圧源V1、V2の接地基準に電気的に接続されてもよく、対応する1つ以上の電圧出力D1~D4が省略されてもよい。あるいはまたは加えて、ミラー電極30~30の内任意の2つ以上が同じ非ゼロDC値に制御される実施形態では、任意のこのような2つ以上のミラー電極30~30が電圧出力D1~D4の内の1つに電気的に接続されてもよく、出力電圧D1~D4の内余分なものは省略されてもよい。
【0028】
[0043] 各イオン・ミラーM1、M2は、実例として、電圧D1~D4の選択的印加によって、イオン透過モード(図2A)とイオン反射モード(図2B)との間で制御可能であり切り替えることができる。イオン透過モードでは、それぞれの電圧源V1、V2によって生成された電圧D1~D4がそれぞれの領域R1、R2においてイオン透過電界(TEF)を確立し、イオン反射モードでは、それぞれの電圧源V1、V2によって生成された電圧D1~D4が、それぞれの領域R1、R2においてイオン反射電界(REF)を確立する。図2Aにおける例によって示されるように、一旦イオン源12からのイオンがイオン・ミラーM1の入射アパーチャA1を抜けてイオン・ミラーM1の領域R1に飛び込むと、このイオンは、V1の電圧D1~D4の選択的制御によってイオン・ミラーM1の領域R1内に確立されたイオン透過電界TEFによって、ELIT14の長手方向軸20に向かって収束される。イオン・ミラーM1の領域R1における透過電界TEFの収束効果の結果、接地チェンバGCのアパーチャA2を抜けてイオン・ミラーM1の領域R1から出るイオンは、電荷検出器CDに入りこれを貫通する狭い軌道を達成し(attain)、即ち、長手方向軸20に近い電荷検出器CDを通過するイオン移動経路(path of ion travel)を維持する。同じイオン透過電界TEFが、電圧源V2の電圧D1~D4の同様の制御によって、イオン・ミラーM2の領域R2内において選択的に確立されてもよい。イオン透過モードでは、M2のアパーチャA2を抜けて電荷検出シリンダCDから領域R2に入るイオンは、イオン・ミラーM2のアパーチャA1から出射するように、領域R2内におけるイオン透過電界TEFによって、イオンは長手方向軸20に向けて収束される。
【0029】
[0044] 図2Bにおける例によって示されるように、V2の電圧D1~D4の選択的制御によってイオン・ミラーM2の領域R2内に確立されたイオン反射電界REFは、M2のイオン入射アパーチャA2を抜けて電荷検出シリンダCDからイオン領域R2に入るイオンを減速および停止させるように作用し、イオン軌道42によって示すように、停止させたイオンを逆方向に加速させてM2のアパーチャA2を抜けて、M2に隣接する電荷検出シリンダCDの端部にまで進ませるように作用し、このイオンをイオン・ミラーM2の領域R2内において中央長手方向軸20に向けて収束させ、電荷検出器CDを抜けて逆にイオン・ミラーM1に向かうイオンの狭い軌道を維持するように作用する。同じイオン反射電界REFが、電圧源V1の電圧D1~D4の同様の制御によって、イオン・ミラーM1の領域R1内に選択的に確立されてもよい。イオン反射モードでは、M1のアパーチャA2を抜けて電荷検出シリンダCDから領域R1に入ったイオンは、領域R1内部に確立されたイオン反射電界REFによって減速および停止させられ、次いで逆方向に加速されてM1のアパーチャA2を抜けてM1に隣接する電荷検出シリンダCDの端部にまで進められ、イオン・ミラーM1の領域R1内において中央長手方向軸20に向かって収束され、電荷検出器CDを抜けてイオン・ミラーM1に逆に向かうイオンの狭い軌道を維持する。丁度説明したように、ELIT14の長さにわたって横断し、イオン・ミラーM1、M2の間において電荷検出シリンダCD中を前後に移動し続けることをイオンに可能にするように、イオン領域R1、R2におけるイオン反射電界REFによって反射されたイオンは、ELIT14内に捕捉されたと見なされる。
【0030】
[0045] それぞれのイオン・ミラーM1、M2を、前述のイオン透過および反射モードに制御するために電圧源V1、V2によってそれぞれ生成される1組の出力電圧D1~D2の複数の例を、以下の表1に示す。尚、D1~D4の以下の値は、一例として提示されるに過ぎず、D1~D4の内1つ以上に、代わりに他の値を使用してもよいことは理解されよう。
【0031】
【表1】
【0032】
[0046] イオン・ミラーM1、M2および電荷検出シリンダCDは、図1図2Bでは、それらを通過する円筒状通路を定めるように示されているが、代替実施形態では、長手方向軸20が中央を通過する通路(1つまたは複数)の1つ以上が円形でない断面エリアおよび外周を表すように、イオン・ミラーM1、M2のいずれかまたは双方、および/または電荷検出シリンダCDが、それらを通過する非円筒状通路を定めてもよいことは理解されよう。更に他の実施形態では、断面外周の形状に関係なく、イオン・ミラーM1を貫通するように定められる通路の断面エリアは、イオン・ミラーM2を貫通するように定められる通路とは異なってもよい。
【0033】
[0047] これより図3を参照して、図1に示したプロセッサ16の実施形態を示す。図示する実施形態では、プロセッサ16は、従来の増幅回路40を含む。増幅回路40は、電荷プリアンプCPによって生成される電荷検出信号CHDを受け取る入力と、従来のアナログ-ディジタル(A/D)変換器42の入力に電気的に接続された出力とを有する。A/D変換器42の出力は、第1プロセッサ50(P1)に電気的に接続されている。増幅器40は、従来のように、電荷プリアンプCPによって生成された電荷検出信号CHDを増幅するように動作可能であり、一方A/D変換器は、従来のように、増幅された電荷検出信号をディジタル電荷検出信号CDSに変換するように動作可能である。図示する実施形態では、プロセッサ50は、電荷検出イベント毎に電荷検出信号CDSを受け取り、このようなイベント毎に、関連する電荷およびタイミング測定データを、以下で詳しく説明するリアル・タイム分析のために、下流のプロセッサ52に受け渡すように動作可能である。
【0034】
[0048] 更に、図3に示すプロセッサ16は従来の比較器44を含む。比較器44は、電荷プリアンプCPによって生成された電荷検出信号CHDを受け取る第1入力と、閾値電圧生成器(TG)46によって生成された閾値電圧CTHを受け取る第2入力と、プロセッサ50に電気的に接続された出力とを有する。比較器44は、従来のように、その出力において、トリガ信号TRを生成するように動作可能である。トリガ信号TRは、閾値電圧CTHの振幅に対する電荷検出信号CHDの振幅に依存する。一実施形態では、例えば、比較器44は、CHDがCTH未満である限り、基準電圧、例えば、接地電位またはその付近の「インナクティブ」トリガ信号TRを生成し、CHDがCTH以上であるときには、回路40、42、44、46、50の供給電圧またはその付近の、あるいはそうでなければインナクティブTR信号から区別可能な、「アクティブ」TR信号を生成するように動作可能である。代替実施形態では、比較器44は、CHDがCTH未満である限り、供給電圧またはその付近の「インナクティブ」トリガ信号TRを生成するように動作可能であり、CHDがCTH以上であるときには基準電位またはその付近の「アクティブ」トリガ信号TRを生成するように動作可能であってもよい。尚、他の異なるトリガ信号振幅および/または異なるトリガ信号極性も、このような異なるトリガ信号振幅および/または異なるトリガ信号極性がプロセッサ50によって区別可能である限り、トリガ信号TRの「インナクティブ」および「アクティブ」状態を確立するために使用することができることは、当業者には認められよう。更に、任意のこのような他の異なるトリガ信号振幅および/または異なるトリガ信号極性は、本開示の範囲内に該当することを意図していることは理解されよう。いずれの場合でも、比較器44は、従来のように、基準電圧と供給電圧との間の出力の素早い切り替えを防止するために、更に所望量のヒステリシスを含むように設計されてもよい。
【0035】
[0049] プロセッサ50は、実例として、閾値電圧制御信号THCを生成し、THCを閾値生成器46に供給してその動作を制御するように動作可能である。ある実施形態では、プロセッサ50は、閾値電圧生成器46を制御して所望の振幅および/または極性のCTHを生成するという仕方で、閾値電圧制御信号THCの生成を制御するようにプログラミングされる、またはプログラミング可能である。他の実施形態では、同様にリアル・タイムで、閾値電圧生成器46を制御して所望の振幅および/または極性のCTHを生成するという仕方で、閾値電圧制御信号THCの生成を制御するために、ユーザがプロセッサ50に命令をリアル・タイムで、 例えば、下流のプロセッサ52を介して、以下で説明するような仮想制御および可視化ユニット56を通じて、供給してもよい。いずれの場合でも、閾値電圧生成器46は、実例として、ある実施形態では、ディジタル形態の閾値制御信号THC、例えば、1つのシリアル・ディジタル信号または複数のパラレル・ディジタル信号の形態に応答して、ディジタル閾値制御信号THCによって定められる極性および振幅を有するアナログ閾値電圧CTHを生成するように構成された、従来の制御可能なDC電圧源の形態で実装される。ある代替実施形態では、閾値電圧生成器46は、シリアルまたはパラレル・ディジタル閾値電圧TCHに応答して、ディジタル閾値制御信号THCによって定められる振幅、および、ある実施形態では、極性を有するアナログ閾値電圧CTHを生成する、従来のディジタル-アナログ(D/A)変換器の形態で設けられてもよい。このような実施形態の中には、D/A変換器がプロセッサ50の一部を形成してもよいものもある。尚、制御信号THCの1つ以上のディジタルおよび/またはアナログ形態に応答して所望の振幅および/または極性の閾値電圧CTHを選択的に生成するための他の従来の回路および技法も当業者には認められよう。更に、任意のこのような他の従来の回路および/または技法は、本開示の範囲に該当することを意図していることは理解されよう。
【0036】
[0050] プロセッサ50によって実行される前述の機能に加えて、プロセッサ50は、更に、イオン・ミラーM1、M2の領域R1、R2内に、それぞれ、イオン透過および反射電界を選択的に確立するために、図2A図2Bに関して先に説明したように、電圧源V1、V2を制御するように動作可能である。ある実施形態では、プロセッサ50は、電圧源V1、V2を制御するようにプログラミングされるか、またはプログラミング可能である。他の実施形態では、電圧源(1つまたは複数)V1および/またはV2が、例えば、下流のプロセッサ52を介して、以下で説明するような仮想制御および可視化ユニット56を通じて、リアル・タイムでユーザによってプログラミングされても、またそうでなければ制御されてもよい。いずれの場合でも、プロセッサ50は、一実施形態では、実例として、電荷検出イベントおよびイオン測定イベントについての電荷検出信号CDSを収集および格納し、閾値電圧CTHの振幅および/または極性が判定または導出される閾値制御信号(1つまたは複数)TCHを生成し、電圧源V1、V2を制御するように、ユーザによってプログラミングまたそうでなければ命令されるフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)の形態で設けられる。この実施形態では、図1に関して説明したメモリ18がFPGAに統合され、FPGAのプログラミングの一部を形成する。代替実施形態では、プロセッサ50は、1つ以上の従来のマイクロプロセッサまたはコントローラ、および1つ以上の付随するメモリ・ユニットの形態で設けられてもよい。メモリ・ユニットには命令が格納されており、1つ以上のプロセッサまたはコントローラによって命令が実行されると、1つ以上のマイクロプロセッサまたはコントローラに、丁度説明したように動作させる。他の代替実施形態では、処理回路50が、先に説明した通りに動作するように設計された1つ以上の従来のハードウェア回路の形態で純粋に実装されてもよく、あるいは1つ以上のこのようなハードウェア回路と、先に説明したように動作するようにメモリに格納された命令を実行するように動作可能な少なくとも1つのマイクロプロセッサまたはコントローラとの組み合わせとして実装されてもよい。
【0037】
[0051] 更に、図3に示すプロセッサ16の実施形態は、実例として、第1プロセッサ50と少なくとも1つのメモリ・ユニット54にも結合された第2プロセッサ52も含む。ある実施形態では、プロセッサ52は、ディスプレイ・モニタ、1つ以上の入力および/または出力デバイス等のような、1つ以上の周辺デバイスも含んでもよいが、他の実施形態では、プロセッサ52はこのような周辺デバイスを全く含まなくてもよい。いずれの場合でも、プロセッサ52は、実例として、リアル・タイムで、即ち、イオン測定イベントがプロセッサ50によって収集されるに連れて、イオン測定イベントを分析するために少なくとも1つのプロセスを実行するように構成される、即ち、プログラミングされる。電荷検出信号CDSを通じてプロセッサ50によって受け取られる電荷振幅および検出タイミング・データの形態としたデータは、実例として、各イオン測定イベントの完了時に、処理および分析のために、プロセッサ50から直接プロセッサ52に転送される。 プロセッサ52は、実例として、このようなデータの収集/格納および分析の双方を実行するように動作可能な高速サーバの形態で設けられる。1つ以上の高速メモリ・ユニット54は、プロセッサ52に結合され、プロセッサ52によって受け取られ分析されたデータを格納するように動作可能である。一実施形態では、1つ以上のメモリ・ユニット54は、実例として、プロセッサ52によって使用されているまたは使用されることになっているデータを格納する少なくとも1つのローカル・メモリ・ユニットと、データを長期間格納する少なくとも1つの永続記憶メモリ・ユニットとを含む。
【0038】
[0052] 一実施形態では、プロセッサ52は、実例として、4つのIntel(登録商標)Xeon(商標)プロセッサ(例えば、E5-465L v2,12core、2.4GHz)を有するLinux(登録商標)サーバ(例えば、OpenSuse Leap 42.1)の形態で設けられる。この実施形態では、従来のWindows(登録商標)PC(例えば、i5-2500K、4core、3.3Ghz)と比較して、単一イオン測定イベント・ファイルの平均分析時間の100倍以上もの改善が実現した。同様に、この実施形態のプロセッサ52は、高速高性能メモリ・ユニット(1つまたは複数)54と共に、実例として、データ格納速度において100倍以上の改善を可能にする。尚、1つ以上の他の高速データ処理および分析システムも、プロセッサ52として実装できることは、当業者には認められよう。更に、任意のこのような1つ以上の他の高速データ処理および分析システムは、本開示の範囲に該当することを意図していることも理解されよう。
【0039】
[0053] 図示する実施形態では、メモリ・ユニット54、例えば、ローカル・メモリ・ユニットは、実例として、CDMSシステム10のユーザによるリアル・タイム仮想制御のためにグラフィック・ユーザ・インターフェース(GUI)(「リアル・タイム制御GUI)を提供するために、プロセッサ52によって実行可能な命令が内部に格納されている。このようなリアル・タイム制御GUIの一実施形態を、図6Aにおける例によって示し、以下で詳しく説明する。更に、メモリ・ユニット54は、イオン測定イベント・データがELIT14によって生成されるに連れてそれをリアル・タイムで分析して、分析対象試料についてのイオン質量スペクトル情報を判定するために、プロセッサ52によって実行可能な命令(「リアル・タイム分析プロセス」)も内部に格納されている。リアル・タイム分析プロセスの一実施形態では、プロセッサ52は、イオン測定イベント・データがプロセッサ50によって収集されるにつれて、即ち、「イオン測定イベント」(この用語が先に定義されたように)を構成する複数の「電荷検出イベント」(この用語が先に定義されたように)の各々の間に測定された電荷振幅および電荷検出タイミング情報の形態で、プロセッサ50から受け取り、このようなイオン測定イベントの各々が終了したときに、このようなイオン測定イベント・データのファイルを作成し、このように作成されたイオン測定イベント・ファイルの各々をリアル・タイムで処理して、それが空の捕捉イベントか、単一イオン捕捉イベントか、または複数イオン捕捉イベントか判定し、単一イオン捕捉イベント・ファイルのみを処理して、イオン電荷、質量電荷、および質量データを判定し、分析対象試料についての質量スペクトル情報を作成し、新たなイオン測定データが入手可能になるに連れて継続的にこれを更新するように動作可能である。このようなリアル・タイム分析プロセスの実施形態例について、以下で図5に関して詳しく説明する。
【0040】
[0054] ある実施形態では、以上で端的に説明したリアル・タイム制御GUIは、プロセッサ52によって直接管理することができ、CDMSシステム10の、そして具体的にはELIT14の、動作パラメータを、例えば、リアル・タイムでまたはいずれの時点であっても選択することができ、出力ファイル管理および表示を管理することができる。他の実施形態では、プロセッサ16は、図3における例に示すように、プロセッサ52に結合された別個のプロセッサ56を含む。このような実施形態では、プロセッサ56は、実例として、従来のプロセッサまたは処理システムであり、これらには、広く知られ使用されているグラフ作成ユーティリティおよびデータ処理プログラムが入手可能である。一実施形態例では、プロセッサ56は、インストールされた1つ以上のこのようなグラフ作成ユーティリティおよびデータ処理プログラムを含む従来のWINDOWS(登録商標)ベースのパーソナル・コンピュータ(PC)の形態で実装される。尚、他の従来のプロセッサまたは処理システムにもプロセッサ56として使用するのに適したものもあることは、当業者には認められよう。更に、任意のこのような他の従来のプロセッサまたは処理システムは、本開示の範囲に該当することを意図していることも理解されよう。
【0041】
[0055] いずれの場合でも、プロセッサ56を含む実施形態では、グラフィカル・ユーザ・インターフェース(GUI)、例えば、RTA GUIが、プロセッサ56を通じてアクセス可能な、ユーザにとって使いやすいリアル・タイム制御GUIを提供するために含まれる。一実施形態では、リアル・タイム制御GUIは、メモリ54に格納され、プロセッサ52によって実行され、プロセッサ56は、例えば、2つのプロセッサ52、56間の安全なシェル(ssh)接続を通じて、プロセッサ52からユーザGUIにアクセスするために使用される。代替実施形態では、リアル・タイム制御GUIは、プロセッサ56上に格納され、プロセッサ56によって実行されてもよい。いずれの場合でも、プロセッサ56は、実例として、仮想制御および可視化(VCV)ユニットとして作用し、ユーザは、このユニットによって、リアル・タイム分析プロセスおよびCDMS10のリアル・タイム動作の全ての態様を、リアル・タイム制御GUIを通じて可視化および制御することができ、更に、ユーザは、リアル・タイム分析プロセスの制御下でCDMS機器によって生成されるリアル・タイム出力データおよびスペクトル情報を可視化することもできる。1つのこのようなリアル・タイム制御GUIの画面例を、図6A図6Cに示し、以下で詳しく説明する。
【0042】
[0056] 図2Aおよび図2Bに関して端的に説明したように、イオン・ミラーM1の領域R1およびイオン・ミラーM2の領域R2においてイオン透過およびイオン反射電界を選択的に確立し、ELIT14に導入されたイオンをイオン源12からELIT14を抜けるように案内し、次いで単一イオンを選択的にELIT14内に捕捉して閉じ込めさせ、捕捉されたイオンが、M1およびM2間を前後に発振するときに、繰り返し電荷検出器CDを通過するという仕方で、電圧源V1、V2は、実例として、プロセッサ50によって、例えば、プロセッサ52および/またはプロセッサ56を通じて制御される。図4A図4Gを参照すると、図1のELIT14の簡略化した図が示されており、ELIT14のイオン・ミラーM1、M2のこのようなシーケンス制御および動作の一例を表す。以下の例では、プロセッサ52は、そのプログラミングにしたがって、電圧源V1、V2の動作を制御するように説明するが、電圧源V1の動作および/または電圧源V1の動作は、先に端的に説明したように、少なくとも部分的にユーザによってプロセッサ56を通じて仮想的に制御されてもよいことは、理解されよう。
【0043】
[0057] 図4Aに示すように、ELIT制御シーケンスが開始すると、プロセッサ52が電圧源V1を制御して、イオン・ミラーM1の領域R1内にイオン透過電界を確立することによって、イオン・ミラーM1をイオン透過動作モード(T)に制御し、更に電圧源V2を制御して、同様にイオン・ミラーM2の領域R2内にイオン透過電界を確立することによって、イオン・ミラーM2をイオン透過動作モード(T)に制御する。その結果、イオン源12によって生成されたイオンはイオン・ミラーM1内に入射し、領域R1内に確立されたイオン透過電界によって、電荷検出シリンダCD内に進むに連れて、長手方向軸20に向かって収束される。次いで、イオンは電荷検出シリンダCDを通過し、イオン・ミラーM2内に入射し、ここで、M2の領域R2内に確立されているイオン透過電界がイオンを長手方向軸20に向けて収束させ、イオンは、図4Aに図示したイオン軌道60によって示すように、M2の出射口アパーチャA1を通過する。ある実施形態では、例えば、先に説明したユーザ・インターフェースを通じて、ELIT14の動作を制御するために、ELIT14の1つ以上の動作条件を、図4Aに示す状態の間に制御することができる。動作のいくつかの例については、図6Aに関して以下で説明する。あるいはまたは加えて、1つ以上の装置をイオン源12とELIT14との間に挿入し、図4Aに示す状態の一部として、またはそれとは別個に、ELIT14内部における単一イオン捕捉を最適化するという仕方で、イオン入射状態を制御することもできる。このような装置の一例を図7Aおよび図7Bに示し、以下で詳しく説明する。
【0044】
[0058] これより図4Bを参照すると、イオン・ミラーM1、M2の双方が選択した時間期間だけ、および/または、例えば、プロセッサ50によって捕獲された電荷検出信号CDSを監視し、必要に応じてELIT14の1つ以上の動作パラメータまたは状態を調節/修正することによって、イオン透過に成功するまで、イオン透過動作モードで動作した後、プロセッサ52は、実例として、電圧源V2を制御して、図示のように、イオン・ミラーM2の領域R2内にイオン反射電界を確立しつつ、イオン・ミラーM1をイオン透過動作モード(T)に維持することによって、イオン・ミラーM2をイオン反射動作モード(R)に制御するように動作可能である。その結果、イオン源12によって生成された少なくとも1つのイオンがイオン・ミラーM1内に入射し、領域R1において確立されているイオン透過電界によって長手方向軸20に向かって収束され、図4Aに関して丁度説明したように、この少なくとも1つのイオンがイオン・ミラーM1を通過し、電荷検出シリンダCD内に入射する。次いで、イオン(1つまたは複数)は、電荷検出シリンダCDを通過してイオン・ミラーM2内に入射し、図4Bにおけるイオン軌道62によって示すように、M2の領域R2内に確立されているイオン反射電界がイオン(1つまたは複数)を反射して、逆方向に移動させ、電荷検出シリンダCD内に戻す。
【0045】
[0059] これより図4Cを参照すると、イオン反射電界がイオン・ミラーM2の領域R2内に確立された後、イオン(1つまたは複数)をELIT14内に捕捉するために、プロセッサ52は、電圧源V1を制御して、イオン・ミラーM1の領域R1内にイオン反射電界を確立しつつ、イオン・ミラーM2をイオン反射動作モード(R)に維持することによって、イオン・ミラーM1をイオン反射動作モード(R)に制御するように動作可能である。ある実施形態では、プロセッサ52は、実例として、ELIT14を「ランダム捕捉モード」または「連続捕捉モード」に制御するように動作可能、即ち、プログラミング可能である。このモードでは、プロセッサ52は、ELIT14が図4Bに示した状態、即ち、M1をイオン透過モード、M2をイオン反射モードとして、選択した時間期間だけ動作した後、イオン・ミラーM1を反射動作モード(R)に制御するように動作可能である。選択した時間期間が経過し終えるまで、ELIT14は図4Bに示す状態において動作するように制御される。
【0046】
[0060] ELIT14内に少なくとも1つのイオンを捕捉する確率は、ランダム捕捉動作モードを使用すると、少なくとも1つのイオンがELIT14内を移動しているという確認が全くなく、M1をイオン反射動作モードに時間的に制御するために、比較的低い。ランダム捕捉動作モードの間にELIT14内に捉えられるイオンの数は、ポアソン分布に従い、単一イオン捕捉イベントの回数を最大化するようにイオン入射信号強度を調節することによって、ランダム捕捉モードにおける捕捉イベントの約37%だけが、単一イオンを収容できることが示された。イオン入射信号強度が小さ過ぎる場合、捕捉イベントの殆どが空になり、大き過ぎる場合、殆どが複数のイオンを収容することになる。
【0047】
[0061] 他の実施形態では、プロセッサ52は、ELIT14を「トリガ捕捉モード」に制御するように動作可能である、即ち、プログラミングされる。トリガ捕捉モードでは、実例として、単一イオンを捕捉する確率が実質的に高くなる。トリガ捕捉モードの第1バージョンでは、プロセッサ50は、比較器44によって生成されたトリガ信号TRを監視し、トリガ信号TRが「インナクティブ」から「アクティブ」状態に変化した場合/とき、ELIT14内にイオンを捕捉するために、電圧源V1を制御して、イオン・ミラーM1を反射動作モード(R)に制御する。ある実施形態では、プロセッサ50は、トリガ信号TRの状態変化の検出時に直ちに、電圧源V1を制御して、イオン・ミラーM1を反射モード(R)に制御するように動作可能であってもよく、他の実施形態では、プロセッサ50は、トリガ信号TRの状態の変化の検出後規定のまたは選択可能な遅延期間の経過後に、電圧源V1を制御して、反射モード(R)にイオン・ミラーM1を制御するように動作可能であってもよい。いずれの場合でもトリガ信号TRの「インナクティブ」状態から「アクティブ」状態への状態変化は、電荷プリアンプCPによって生成される電荷検出信号CHDが閾値電圧CTHに達するかまたは超過することによって生じ、したがって、内部に収容されたイオンによって電荷検出シリンダCD上に誘発された電荷の検出に対応する。このように電荷検出シリンダCD内にイオンが収容されると、イオン・ミラーM1を反射動作モード(R)に制御するためのプロセッサ50による電圧源V1の制御の結果、ELIT14内部に単一イオンを捕捉する確率を、ランダム捕捉モードと比較して、実質的に高めることになる。つまり、イオンがイオン・ミラーM1を通ってELIT14に入射し、最初に電荷検出シリンダCDを通過してイオン・ミラーM2に向かっているとして検出されると、または図4Bに示すようにイオン・ミラーM2の領域R2内に確立されているイオン反射電界によって反射された後に逆方向に電荷検出シリンダCDを通過したとして検出されると、いずれの場合でも、このイオンをELIT14内に捕捉するために、図4Cに示すように、イオン・ミラーM1を反射モード(R)に制御する。また、先にランダム捕捉動作モードに関して端的に説明したように、トリガ捕捉でも信号強度を最適化することも望ましい。イオン入射信号強度を最適化したトリガ捕捉モードでは、例えば、ここでは単一イオン捕捉イベントと取得された全ての捕捉イベントとの比率として定義される捕捉効率が、ランダム捕捉の37%と比較して、90%に近づくことができる。しかしながら、イオン入射信号強度が大き過ぎると、捕捉効率は90%未満となり、イオン入射信号強度を下げることが必要となる。
【0048】
[0062] トリガ捕捉モードの第2バージョンでは、図4Bに示したプロセスまたはステップを省略または迂回し、図4Aに示したようにELIT14が動作して、プロセッサ50は、比較器44によって生成されたトリガ信号TRを監視し、トリガ信号TRが「インナクティブ」から「アクティブ」状態に変化した場合/とき、イオンをELIT14内に捕捉または捕獲するために、電圧源V1、V2の双方を制御し、それぞれのイオン・ミラーM1、M2を反射動作モード(R)に制御するように動作可能である。つまり、イオンがイオン・ミラーM1を通ってELIT14に入射し、図4Aに示すように、最初に電荷検出シリンダCDを通過しイオン・ミラーM2に向かっているものとして検出されると、イオン・ミラーM1およびM2は双方共、イオンをELIT14内に捕捉するために、図4Cに示すように反射モード(R)に制御される。
【0049】
[0063] いずれの場合でも、イオンをELIT14内に捕捉するためにイオン・ミラーM1、M2の双方をイオン反射動作モード(R)に制御することにより、イオンは、図4Cに図示したイオン軌道64によって示し先に説明したように、電荷検出シリンダCDを通過する毎に、イオン・ミラーM1およびM2のそれぞれの領域R1およびR2内に確立されている逆向きのイオン反射電界によって、イオン・ミラーM1およびM2間を前後に発振させられる。一実施形態では、選択した回数だけイオンが電荷検出シリンダCDを通過するまで、プロセッサ50は図4Cに示す動作状態を維持するように動作可能である。代替実施形態では、プロセッサ50は、M1(および実施形態によってはM2も)イオン反射動作モード(R)に制御した後、選択した時間期間だけ、図4Cに示す動作状態を維持するように動作可能である。いずれの実施形態でも、図4Cに示す状態において費やされるサイクル数または時間は、実例として、ユーザ・インターフェースを通じて制御することができる。これについては以下で図6Aに関して説明する。そしていずれの場合でも、イオンが電荷検出シリンダCDを通過する毎に得られるイオン検出イベント情報を、一時的にプロセッサ50に格納する。選択した回数だけイオンが電荷検出シリンダCDを通過したとき、または選択した時間期間だけイオン・ミラーM1、M2間を前後に発振したとき、プロセッサ50内に格納された電荷検出イベントの総数は、イオン測定イベントを定め、イオン測定イベントの完了時に、イオン測定イベントを定める格納イオン検出イベントが、プロセッサ52に受け渡されるか、またはプロセッサ52によって引き出される。次いで、図4A図4Cに示すシーケンスは、図4Aに示すそれに戻り、前述のように、電圧源V1、V2を制御して、イオン・ミラーM1、M2の領域R1、R2内にそれぞれイオン透過電界を確立することによって、イオン・ミラーM1、M2をそれぞれイオン透過動作モード(R)に制御する。次いで、図示するシーケンスは、所望通りに何度でも繰り返す。
【0050】
[0064] これより図5を参照すると、先に端的に説明したリアル・タイム分析プロセス80の実施形態を表すフローチャートが示されている。プロセス80では、図4A図4Cに示したシーケンスを繰り返す間にプロセッサ50によって収集されるに連れて、イオン源12によってイオンが生成される所与の試料について、プロセッサ50によって収集されたイオン測定イベント情報を連続的に処理および分析する。実例をあげると、リアル・タイム分析プロセス80は、メモリ54に命令の形態で格納され、命令がプロセッサ52によって実行されると、以下で説明するステップをプロセッサ52に実行させる。プロセス80は、実例として、ステップ82において開始し、ここで、プロセッサ52は、分析すべき複数のイオン測定イベントの各々についての電荷検出イベント・データを格納するための出力ファイルを作成するように動作可能である。その後、ステップ84から開始して、プロセッサ52は、先に説明したように、イベントの終了時に、プロセッサ50からのイオン測定イベント情報の新たな集合体の各々を受け取って処理するように動作可能である。ステップ84において、プロセッサ52は、作成したイオン測定イベント・ファイルを開き、プロセッサ50から受け取った、未フォーマットのイオン測定イベント情報を整数アレイに読み込む。
【0051】
[0065] 各イオン測定ファイルは、実例として、1つのイオン測定イベント(即ち、1回のイオン捕捉イベント)についての電荷検出データを収容する。ある実施形態では、各イオン測定ファイルは、実例として、短期捕捉前および捕捉後期間を更に含む。これらは、先に説明したように、電圧源V1、V2がイオン透過およびイオン反射モード間で一方または他方に切り替えられたときに電荷検出シリンダCD上に誘発されるノイズを収容する。実例として、捕捉イベントの期間は、数ミリ秒(ms)および数十秒の間の範囲を取ることができ、典型的な捕捉イベント期間は10msおよび30秒の間の範囲を取る。図1図3に示し以上で詳細に説明したCDMS10では、100msの捕捉イベント期間例を実例として使用してもよい。何故なら、この捕捉イベント期間例は、データ収集速度と電荷判定における不確実性との間で、容認可能なバランスが取れるからである。
【0052】
[0066] いずれの場合でも、プロセス80はステップ84からステップ86に進み、未フォーマットのイオン測定イベント情報を収容するイオン測定ファイルを前処理する。一実施形態では、プロセッサ52は、ステップ86において、イオン検出イベント情報だけを含むように、即ち、捕捉前および捕捉後のノイズ情報を除去するように、整数アレイを切り詰めることによって、イオン測定ファイルを前処理するように動作可能である。これを含む実施形態では、次に計算効率のために、アレイに0を詰め込んで、最も近い2の累乗にする。実例として、捕捉イベント期間が100msである実施形態では、ステップ86の完了によって、実例をあげると、262144ポイントが結果的に得られる。
【0053】
[0067] ステップ86に続いて、プロセス80の一実施形態はステップ88を含み、ここで、プロセッサ52は前処理されたイオン測定ファイル内のデータを、ハイパス・フィルタに通して、CDMSシステム10においてそしてCDMSシステム10によって生成された低周波ノイズを除去する。このような低周波ノイズがないまたは最小である実施形態では、ステップ88を省略してもよい。その後、ステップ90において、プロセッサ52は、イオン測定ファイル内のデータ、即ち、イオン測定ファイルを構成する電荷検出イベントの時間ドメイン集合体全体のフーリエ変換を計算するように動作可能である。プロセッサ52は、実例として、例えば、従来の高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズムのような、しかしこれには限定されない任意の従来のディジタル・フーリエ変換(DFT)技法を使用して、このようなフーリエ変換を計算するように動作可能である。
【0054】
[0068] その後ステップ92において、結果的に得られた周波数ドメイン・スペクトルをスキャンしてピークを求める。一実施形態では、ピークとは、ノイズ・フロアの平均二乗偏差(RMSD:root-mean-square-deviation)の倍数、例えば、6倍を超える任意の振幅(magnitude)として定義される。尚、倍数6は一例として提示したに過ぎず、他の倍数を代わりに使用してもよいことは理解されよう。更に、フーリエ変換されたイオン測定ファイル・データにおいて周波数ドメイン・ピークを定める他の適した技法も、当業者には認められよう。更に、任意のこのような他の適した技法は本開示の範囲内に該当することを意図していることも理解されよう。
【0055】
[0069] ステップ92に続いて、プロセッサ52は、ステップ94において、ピーク発見ステップ92の結果を処理することによって、イオン測定ファイルに捕捉イベント識別子を割り当てるように動作可能である。ピーク発見ステップ92においてピークが発見されなかった場合、そのイオン測定ファイルは、空捕捉イベントまたは無イオン・イベントとして識別される。ピークが発見された場合、プロセッサ52は、最も大きな振幅を有するピークを、周波数ドメイン・イオン測定ファイル・データの基本周波数として識別するように動作可能である。次いで、プロセッサ52は、基本ピークに対して残りのピークを処理して、残りのピークが基本周波数の高調波周波数に位置するか否か判定するように動作することができる。残りのピークが基本周波数の高調波周波数に位置しない場合、イオン測定ファイルは、複数イオン捕捉イベントとして識別される。残りのピークが全て基礎の高調波周波数に位置する場合、イオン測定ファイルは単一イオン捕捉イベントとして識別される。
【0056】
[0070] ステップ94に続いて、イオン測定ファイルが複数捕捉イベントとして識別された場合、プロセッサ52は、ステップ96において、そのように識別されたイオン測定ファイルをメモリ54(例えば、長期または永続的メモリ)に格納するように動作可能である。複数捕捉イベントは、今後のイオン質量判定ステップには含まれず、したがって試料の質量スペクトル分布には寄与しない。したがって、プロセス80はステップ94から106に進む。
【0057】
[0071] イオン測定ファイルが空捕捉イベントとしてまたは単一イオン捕捉イベントとして識別された場合、プロセス80はステップ94からステップ98にも進む。空捕捉イベント・ファイルは、実例として、ステップ98に進む。何故なら、これらは、実際に、1回のイオン測定イベント全体よりも短い間に捕捉されたために、弱く荷電された可能性もあるイオンに対する電荷検出イベントを収容する場合もあるからである。ステップ90において計算された完全イベント・フーリエ変換(full-event Fourier Transform)における、このように弱く荷電されたイオンに対する周波数ドメイン・ピークの振幅は、先に説明したピーク判定閾値を超えない場合もあり、したがって、このイオン測定ファイルは、有用な電荷検出イベント・データを収容する可能性があるにも拘わらず、このイオン測定ファイルはステップ94において空捕捉イベントとして識別されたおそれがある。ステップ94において、空捕捉イベントとしてイオン測定ファイルが識別された場合、したがって、暫定的なこのような識別を表し、このファイルの追加処理がステップ98および100において実行され、そのファイルが実際に空捕捉イベントなのか、または代わりに試料の質量スペクトル分布に寄与することができるイオン検出情報を収容する可能性があるのか判定する。
【0058】
[0072] ステップ98において、プロセッサ52は、フーリエ変換ウィンドウ拡大プロセス(windowing process)を引き受けるように動作可能であり、このプロセスにおいて、プロセッサ52は、イオン測定ファイルにおける時間ドメイン電荷検出データの先頭における小区域即ちウィンドウの情報のフーリエ変換を計算する。その後ステップ100において、プロセッサ52は、ステップ98において計算したフーリエ変換の周波数ドメイン・スペクトルをスキャンしてピークを求めるように動作可能である。実例をあげると、プロセッサ52は、ステップ92に関して先に説明した同じピーク発見技法を使用して、ステップ100を実行するように動作可能であるが、他の実施形態では、1つ以上の代わりのまたは追加のピーク発見技法をステップ100において使用してもよい。いずれの場合でも、ステップ100においてピークが発見されない場合、プロセス80はステップ98に戻り、ここで、プロセッサ52は、例えば、規定の増分量だけ、現在のウィンドウのサイズの規定の端数または動的な端数だけ、あるいは何らかの他の量だけ、ウィンドウ・サイズを増大し、イオン測定ファイルにおける時間ドメイン電荷検出信号データの先頭における情報の新たなウィンドウのフーリエ変換を再計算するように動作可能である。
【0059】
[0073] ステップ98および100は、ピークが発見されるまで繰り返し実行される。イオン測定ファイルにおける時間ドメイン電荷検出データの全てを含むまでにウィンドウを最終的に拡大してもピークが発見されない場合、このイオン測定ファイルは、最終的にプロセッサ52によって、空捕捉イベントとして識別され、その後、プロセッサ52は、ステップ102において、そのように識別されたイオン測定ファイルをメモリ54(例えば、長期または永続的メモリ)に格納するように動作可能である。ステップ98および100を繰り返し実行した結果として検証または確認された空捕捉イベントは、今後のイオン質量判定ステップには含まれず、したがって試料の質量スペクトル分布に寄与しない。つまり、ステップ80はステップ102からステップ106に進む。
【0060】
[0074] ステップ98および100のウィンドウ拡大プロセスの間にピークが発見された場合/とき、周波数ドメイン・ピークが発見された、対応する最小ウィンドウ・サイズを書き留めて、プロセス80はステップ104に進む。暫定的に空捕捉イベントとして識別されたイオン測定ファイルのウィンドウ拡大プロセスにおいてピークが発見された場合、このイオン測定ファイルは、単一イオン捕捉イベントとして再識別され、このファイルの処理はステップ104に進む。
【0061】
[0075] ステップ104において、プロセッサ52は、ステップ98/100において発見した最小ウィンドウ・サイズから増分的に、イオン測定ファイルにおける時間ドメイン電荷検出信号データにわたってスキャンするように動作可能である。このイオン測定ファイルは、最初から単一イオン捕捉イベントとして識別されたファイル、または暫定的に空捕捉イベントとして識別されたがステップ98/100の間に単一イオン捕捉イベントとして識別され直されたファイルであってもよい。いずれの場合でも、ステップ104において、プロセッサ52は、最小ウィンドウ・サイズ・スキャンの各段階において、ウィンドウの現在の位置に収容されている時間ドメイン電荷検出情報のフーリエ変換を計算し、ウィンドウ内における周波数ドメイン・データの発振周波数および振幅を判定するように動作可能である。
【0062】
[0076] これらの値から、捕捉イベント長、平均質量電荷、イオン電荷および質量値を、ステップ106における既知の関係、およびイオン測定イベント・ファイルの一部からのこれらの値を使用して判定する。例えば、質量電荷は、計算されたフーリエ変換から直接決定される基本周波数ffの二乗に反比例し、イオン電荷は、イオン発振サイクルの回数を考慮すると、フーリエ変換の基本周波数の振幅に比例する。場合によっては、FFTの高調波周波数の1つ以上の振幅(1つまたは複数)を、イオン電荷zを決定する目的のために、基本周波数の振幅に加算してもよい。いずれの場合でも、次に、イオン質量mを、平均質量電荷および電荷値の関数として計算する。図6Cにおける例によって図示するように、プロセッサ52は、実例として、イオン測定イベント情報が入手可能になり、丁度説明したようにリアル・タイム分析プロセス80にしたがってプロセッサ52によって処理されるに連れて、各イオン測定イベント・ファイルのイオン質量および質量電荷値から、リアル・タイムで質量電荷比および質量スペクトルを構築する。代替実施形態では、プロセッサ52は、ステップ106において、質量電荷スペクトルまたは質量スペクトルのみを構築するように動作可能であってもよい。ある実施形態では、完全なイオン測定イベントの間捕捉されたまま残っていたイオンのみが、質量または質量電荷分布に寄与することを許容されてもよいが、他の実施形態では、完全なイオン測定イベントよりも短い間に捕捉されたイオンを質量または質量電荷分布に含ませてもよい。捕捉イベント、即ち、イオン測定は互いに独立であるので、丁度説明したデータ分析ステップの殆どをマルチスレッド化すると、図5のステップ84~104を取り囲む破線の境界線108によって表されるように、全分析時間を最短に抑えるまたは少なくとも短縮することができる。いずれの場合でも、プロセス80は、実例として、ステップ106からステップ84に戻り、他のイオン測定イベント・ファイルを処理する。イオン源12によってイオンが生成される元であるあらゆる個々の試料について、複数の、例えば、数百または数千回、あるいはそれ以上のイオン捕捉イベントが通例実行され、丁度説明したプロセス80を使用して、このようなイオン捕捉イベントの各々に対して、イオン質量電荷、イオン電荷、およびイオン質量値を、イオン測定イベント・ファイルから判定/計算する。
【0063】
[0077] これより図6Aを参照すると、図3に関して先に端的に説明したリアル・タイム制御GUIの実施形態が示されている。図示する実施形態では、リアル・タイム制御GUIは、仮想制御パネル120の形態で設けられ、複数の制御セクションを示し、各々が、CDMSシステム10全体の動作、そして具体的にはELIT14の動作を制御するための複数の選択可能なGUIエレメントを含む。このような制御セクションの1つに、捕捉モード・セクション122があり、実例として、連続(即ち、ランダム)捕捉およびトリガ捕捉の間で選択するための、選択可能なGUIエレメントを含む。これらの捕捉モードは前述した通りである。図示する制御パネル120では、ユーザはランダム即ち連続捕捉を選択している。
【0064】
[0078] 図示する仮想制御パネル120に含まれる他の制御セクションにELITタイミング・セクション124がある。これは、実例として、選択された捕捉モードに対するELIT14の動作に関するタイミング・パラメータを設定するためのGUIエレメントを含む。図6Aに示す例では、連続捕捉モードが、前述のような捕捉モード選択セクション122において選択されており、したがって、ELITタイミング・セクション124の最上位にあって強調されているタブが、ELITタイミング・パラメータGUIエレメントは連続捕捉モードに関係することを示す。同様に図6Aに示すように、トリガ捕捉モードが選択されたときには、異なるタブが強調される。図示のようにセクション122において選択された連続捕捉モードに対して、ELITタイミング・セクション124は、実例として、捕捉イベント間のタイミング(「捕捉間時間」)を選択するためのGUIエレメントを含み、ここでは実例として1.0msに設定されている。また、GUIエレメントは、図5に示したプロセス80のステップ86に関して先に説明したような、捕捉前および捕捉後ファイル書き込み時間の選択にも対応し、ここでは実例として、それぞれ、0.1msおよび0.8msに設定されている。また、GUIエレメントは、連続捕捉モードについて図4Bおよび図4Cに関して先に説明したような、電圧源V2を制御してイオン・ミラーM2をイオン反射モードに制御した後に、電圧源V1を制御してイオン・ミラーM1をイオン反射モードに制御する間の遅延時間(「フロント・キャップ遅延時間」)の選択にも対応する。ここでは、遅延時間は0.5msに設定されている。最後に、選択可能なGUIエレメントは、捕捉時間、即ち、捕捉されたイオンがイオン・ミラーM1、M2間、およびELIT14の電荷検出シリンダCD全域で前後に発振するのを許容される時間の選択にも対応する。この時間は、本明細書ではイオン測定イベント時間とも呼ぶ。この例では、捕捉時間は99msに設定されている。
【0065】
[0079] 図示する仮想制御パネル120に含まれる他の制御セクションに、分析セクション126がある。実例として、分析セクション126は、アナリストのリストからアナリストを選択するため、通常のまたはLC分析を開始するため、そして進展中の分析を停止するためのGUIエレメントを含む。
【0066】
[0080] 図示する仮想制御パネル120に含まれる更に他の制御セクションに、フォルダ命名セクション128がある。実例として、フォルダ命名セクション128は、分析結果をメモリ54にプロセッサ52によって格納するフォルダの名称を入力するGUIフィールドを含む。
【0067】
[0081] 図示する仮想制御パネル120に含まれる更に他の制御セクションに、データ取得セクション130がある。実例として、データ取得セクション130は、先に説明したリアル・タイム分析プロセスを開始および停止するための選択可能なGUIエレメントを含む。図示する実施形態では、データ取得セクション130は、更に、実例として、選択的にイオン・カウントGUIを見るための選択可能な「イオン・カウント」GUIエレメントも含む。
【0068】
[0082] これより図6Bを参照すると、先に説明したリアル・タイム分析プロセスによって得られた出力データの収集例が示されている。図示する例では、各ライン(行)が単一捕捉イベント・ファイルを表し、そのラインまたは行における最初の項目134はファイル名を識別する。空捕捉イベント・ファイル136は、0によって識別され、複数捕捉イベント・ファイル138は、「複数イオン・イベント」と指定される。各単一イオン捕捉イベントは、質量電荷比(m/z)値140、電荷(z)値142、イオン質量(m)値144、および全捕捉時間(time)146を含む。図示する例では、0.968...の捕捉時間は、図6Aに示した制御パネル120において設定された完全捕捉時間においてイオンが捕捉されたことを示す。この例において全捕捉時間は100msである(制御パネル120において選択された99msの「捕捉時間」と、1.0msの「捕捉間隔時間」パラメータとを含む)が、時間ドメイン信号の内、イオン透過モードおよびイオン反射モード間で切り替えられるイオン・ミラー電位から電荷プリアンプCPを回復させるための小さな区間は、破棄される。
【0069】
[0083] これより図6Cを参照すると、ELIT14によって生成された通りのイオン測定イベント・データのリアル・タイム分析から得られた出力データで構築されたヒストグラムを含む分析結果GUIのリアル・タイム・スナップショットを含む表示GUIの一例が示されている。実例として、GUIは、複数のセクションを含み、各々が表示GUIのプレゼンテーションを制御するために選択可能なGUIエレメントを含む。例えば、表示選択セクション137は、実例として、質量電荷ヒストグラムおよび質量ヒストグラムの表示を選択するため、そして低電荷イオンまたは標準電荷イオンに対して分析パラメータを選択するためのGUIエレメントを含む。図6Cでは、低電荷分析パラメータが選択されており、表示GUIには、結果的に得られたイオン質量スペクトル135が表示され、スナップショットが撮影された時点までに蓄積されたデータを表す。イオン電荷表示制御セクション135は、実例として、ヒストグラムに表示される、イオン電荷ビン・サイズならびにイオンの電荷上限および電荷下限を選択するためのGUIエレメントを含む。同様のイオン質量表示制御セクション141も、同様に、図6Cに示される例において図示するように、質量ヒストグラムが表示セクション137において選択されたときに、ヒストグラムに表示されるイオン質量ビン・サイズならびにイオンの質量上限および質量下限を選択するためのGUIエレメントを含む。質量電荷ヒストグラムが表示セクション137において選択された場合、制御セクション141は、同様に、このヒストグラムに表示されるイオン質量電荷比ビン・サイズならびにイオンの質量電荷比の上限および下限を選択するためのGUIエレメントを含む。捕捉効率監視セクション143は、実例として、単一イオン捕捉イベント、複数イオン捕捉イベント、および空捕捉イベントの途中集計を追跡および表示し、更に実例として、結果的に得られる捕捉効率も表示する。先に注記したように、ランダムな時点に到達するイオンに対する最大の達成可能な単一イオン捕捉の捕捉効率は37%であり、図6Cのセクション143に表示された35.7%の捕捉効率は、したがって、最大捕捉効率に近い。
【0070】
[0084] リアル・タイム制御GUIを通じて、分析結果のリアル・タイム分析プロセスおよびリアル・タイム可視化を組み合わせることによって、実例として、CDMSシステム10の動作をリアル・タイムで修正して、全体的にCDMSシステム10および/または特定的にELIT14の1つ以上の動作パラメータを選択的に最適化し、および/または分析結果を1つ以上の選択可能な範囲に選択的に制限する好機を得ることができる。図7Aおよび図7Bを参照すると、例えば、CDMSシステム150の他の実施形態が示されている。CDMSシステム150は、先に詳細に説明したCDMSシステム10と多くの観点において同一であり、これに関して、同様のコンポーネントを識別するために同様の番号を使用する。具体的には、イオン源12は、ELIT14と同様に、実例をあげると先に説明した通りである。図7Aおよび図7Bには具体的に示さないが、CDMSシステム150は、図1図3に示したように結合され、先に説明したように動作可能な電気コンポーネントおよび電圧源も含む。CDMS150は、実例として、イオン源12とELIT14との間に挿入された装置152の実施形態がCDMSシステム150に含まれることが、CDMSシステム10と相違する。この装置152は、例えば、リアル・タイム制御GUIのユーザによって、またはプロセッサ2によって自動的に、選択的に制御され、空捕捉イベントおよび/または複数イオン捕捉イベントに対して単一イオン捕捉イベントの回数を最大化するという仕方で、イオン源12から出射してELIT14に入射するイオンの信号強度を変更することができ、これによってイオン測定イベント収集回数を減らすことができる。
【0071】
[0085] 図示する実施形態では、イオン信号強度制御装置152は、駆動軸158を介して可変アパーチャ部材156に動作可能に結合された電子制御モータ154を含む可変アパーチャ制御装置の形態をなす。図示する実施形態では、可変アパーチャ部材156は、実例として、回転可能なディスクの形態で設けられ、回転可能なディスクは、それを貫通する異なる直径の複数のアパーチャ160~160を定める。アパーチャ160~160は全て、図示のようなELIT14のイオン・ミラーM1へのイオン入射口と整列するように、ELIT14の長手方向軸20と整列して位置付けられた共通半径162を中心として、そしてそれに沿って形成されている。変数Lは、任意の正の整数でよく、図7Bに示す例では、このようなアパーチャ160~160は、駆動軸158から離間された半径162の周りに均等に分散され、半径162を中心として形成されている。駆動軸158は、実例として、ディスク156の中心点に結合され、アパーチャ160~160の直径は、実例として、最も小さい直径のアパーチャ160と最も大きい直径のアパーチャ160との間で、直径が徐々に長くなっている。
【0072】
[0086] モータ154は、実例として、精密回転位置決めモータであり、モータ制御信号MCに応答して、アパーチャ160~160の1つが軸120と整列される位置から、次のアパーチャ、またはアパーチャ160~160から選択された1つが軸120と整列される位置までディスク156を回転させるように構成されている。ある実施形態では、モータ154は、一方の方向、即ち、時計回りまたは反時計回り方向にだけディスク156を回転させるように動作可能であり、他の実施形態では、モータ154はいずれの方向にもディスク156を回転させるように動作可能である。ある実施形態では、モータ154は連続駆動モータであってもよく、他の実施形態では、モータ154はステップ駆動、即ち、ステッパ・モータであってもよい。ある実施形態では、モータ154は、単一速度モータであってもよく、他の実施形態では、モータ154は可変速度モータであってもよい。
【0073】
[0087] 動作において、モータ154は、実例として、FLIT14に入射するイオンの軌道と一致するアパーチャ160~160の内所望のものを選択的に位置付けるように制御される。直径が小さいアパーチャ程、そこを通過するイオンの流れを制限することによって、直径が大きいアパーチャと比較して、ELIT14に入射するイオンの信号強度を低下させ、直径が大きいアパーチャ程、そこを通過するイオンの流れを増やすことによって、直径が小さいアパーチャと比較して、ELIT14に入射するイオンの信号強度を上昇させる。試料の組成、CDMSおよびELITコンポーネントの寸法ならびに他の要素に応じて、アパーチャ160~160の少なくとも1つにおいて、空捕捉イベントの回数および/または複数イオン捕捉イベントの回数と比較して、単一イオン捕捉イベントの回数が増える結果となる。例えば、アパーチャの直径を長くすると、入射イオンの信号強度が高くなり、したがって、空捕捉イベントの回数が減少する。一方、アパーチャの直径を短くすると、入射イオンの信号強度が低くなり、したがって複数イオン捕捉イベントの回数が減少する。したがって、アパーチャ160~160の1つは、空および複数イオン捕捉イベント双方を最小限に減らすことによって、空イベント捕捉イベントに対して、更に複数イオン捕捉イベントに対して単一イオン捕捉イベントの回数を最大化することによって、入射イオンの信号強度を最適化する。
【0074】
[0088] ある実施形態では、アパーチャ160~160からの所望の1つの選択は、CDMS150のユーザによって行われる人為プロセスであってもよい。このような実施形態では、リアル・タイム制御GUIは、実例として、アパーチャ制御セクションを含む。アパーチャ制御セクションは、モータ154にディスク156をアパーチャ160~160の内対応する1つまたは所望の1つまで駆動させるという仕方で、モータ制御信号MCを制御するための1つ以上の選択可能なGUIエレメントを含む。図6Cに示すディスプレイGUIの捕捉効率監視セクション143を見ることによって、ユーザは、選択的に、可変アパーチャ制御装置152を制御し、単一イオン捕捉効率を最大化することができる。代替実施形態では、またはリアル・タイム制御GUIを通じて選択可能な選択肢として、メモリ54は命令を含むことができる。この命令がプロセッサ52によって実行されると、プロセッサ52に捕捉効率を監視させ、単一イオン捕捉イベントを最大化するように可変アパーチャ制御装置152を自動的に制御させる。
【0075】
[0089] 尚、空捕捉イベントに対して、および/または複数イオン捕捉イベントに対して単一イオン捕捉イベントを最大化するために、ELIT14に入射するイオンの強度または流れを制御するためには他の構造および/または技法もあることは、当業者には認められよう。更に、このような他の構造および/または技法はいずれも、本開示の範囲内に入ることを意図していることは理解されよう。代わりのイオン強度またはイオン流制御装置の1つの非限定的な例として、図7Aおよび図7Bに示すモータ154およびディスク156を、1つの可変直径アパーチャを有する装置と置き換えることもできる。この場合、1つのアパーチャの直径は、先に説明したように、所望のアパーチャに人為的または自動的に制御することができる。他の非限定的な例として、モータ154およびディスク156を、線形駆動モータと、共通直線路に沿ってそれを中心として配置されたアパーチャを有する板または他の構造と置き換えることもできる。線形駆動モータは、先に説明したのと同様に、軸20と整列させるために、アパーチャの線形路に沿ってアパーチャから1つを選択するように制御され、ELITに入射するイオンが、この選択したアパーチャを通過しなければならいようにすることができる。代わりのイオン強度またはイオン流制御装置の更に他の非限定的な例として、従来のイオン・トラップを、イオン源12とFLIT14との間に配置してもよい。このようなイオン・トラップは、従来のように、ときの経過と共にイオンを蓄積するように制御することができ、このイオン・トラップの開放のタイミング、およびELIT14の開閉を、リアル・タイムで調節して、例えば、イオン・トラップとELITとの間でタイミングを制御するようにして質量電荷フィルタリング効果を平均的な線に落ち着かせることによって、単一イオン捕捉イベントの回数を最大化しつつ、特定の質量電荷値に対する区別(discrimination)を回避することができる。あるいは、このタイミングは、特定の質量電荷値または範囲のイオンを優先的に捕捉しつつ、単一イオン捕捉イベントも最大化するように、調節することができる。このようなイオン・トラップは、実例として、従来のRFトラップ(例えば、四重極、六重極、またはセグメント化四重極)、または他のELITの形態で実装されてもよい。
【0076】
[0090] 図8を参照すると、CDMSシステム180の他の実施形態例が示されている。リアル・タイム制御GUIによる分析結果のリアル・タイム分析プロセスおよびリアル・タイム可視化の組み合わせにより、実例として、分析結果の1つ以上の所望の範囲への選択的閉じ込め(confinement)に対応する(provide)。CDMSシステム180は、先に詳細に説明したCDMSシステム10と多くの観点において同一であり、これに関して、同様のコンポーネントを識別するために同様の番号を使用する。具体的には、イオン源12は、ELIT14と同様に、実例をあげると先に説明した通りである。図8には具体的に示さないが、CDMSシステム180は、図1図3に示したように結合され、先に説明したように動作可能な電気コンポーネントおよび電圧源も含むことは理解されよう。CDMS180は、実例として、イオン源12とELIT14との間に挿入された質量電荷フィルタ182の実施形態がCDMSシステム180に含まれることが、CDMSシステム10と相違する。質量電荷フィルタ182は、ELIT14に入射するイオンを、選択された質量電荷比またはイオン質量電荷比の範囲に制限して、結果的に得られる質量スペクトルも同様に、選択されたイオン質量電荷比の範囲または質量電荷比の範囲に制限されるように、例えば、リアル・タイム制御GUIのユーザによってまたはプロセッサ52によって自動的に、選択的に制御することができる。
【0077】
[0091] 図示する実施形態では、質量電荷フィルタ182は、従来の四重極デバイスの形態をなす。四重極デバイスは、CDMS180の長手方向軸20を中心として互いに離間された4つの細長ロッドを含む。細長ロッドの内2つの対向するものを図8において184として表し、細長ロッドの内他の2つの対向するものを186として表す。質量電荷フィルタの電圧源188(VMF)は、図示のように、2つの対向するロッド184が、他方の2つの対向するロッド186とは180°位相外れになるように、四重極ロッドに従来のように電気的に接続されている。質量電荷フィルタの電源188は、実例として、1つ以上の時間可変電圧源、例えば、従来のRF電圧源(1つまたは複数)を含むのでもよく、ある実施形態では、1つ以上のDC電圧源を含んでもよい。プロセッサ52と質量フィルタ電圧源188との間に、プロセッサ52による電圧源188の制御のために、任意の本数Kの信号線を結合し、選択した周波数の1つ以上の時間可変電圧を生成し、および/または1つ以上のDC電圧を生成することができる。ここで、Kは任意の整数でよい。
【0078】
[0092] 動作において、質量電荷フィルタ電圧源188によって生成された電圧(1つまたは複数)を制御して、選択された質量電荷比または質量電荷比の範囲のイオンのみを選択的に、質量電荷フィルタ182を通過させてELIT14に入射させる。したがって、このようなイオンだけがイオン測定イベントに含まれ、したがって、その分析から得られる質量または質量電荷比スペクトルに含まれる。ある実施形態では、質量電荷フィルタの電圧源188によって生成された1つ以上の電圧の選択は、CDMS180のユーザによって行われる人為的プロセスであってもよい。このような実施形態では、リアル・タイム制御GUIは、実例として、質量電荷フィルタ制御セクションを含む。質量電荷フィルタ制御セクションは、対応する質量電荷比または質量電荷比の範囲のイオンが選択されフィルタ182を通過しELIT14に入射するように、電圧源188によって生成される電圧(1つまたは複数)を制御するための1つ以上の選択可能なGUIエレメントを含む。このような選択は、試料分析の開始時に実行してもよく、図6Cに示す表示GUIにおいてリアル・タイムで構築された質量スペクトルを見た後に実行してもよい。後者の例を図9Aおよび図9Bに示す。
【0079】
[0093] 図9Aを参照すると、イオン・カウント対イオン質量の質量分布プロット190(メガダルトンまたはMDaの単位)が、B型肝炎ウィルス(HBV)カプシドの試料についてリアル・タイムで組み立てられたものとして、示されている。尚、プロット190は図6Cに示した分析結果GUIの一部であり、したがって、先に説明したリアル・タイム分析プロセスにしたがってプロセッサ152によって構築されているときの、HBV試料のリアル・タイム質量スペクトルを表すことは理解されてしかるべきである。図9Aに示す質量分布190の組み立て(assembly)における時点において、このスペクトルは、実例として、26.7分にわたって記録された15,999回の捕捉イベントからの5,737個のイオンを含む。図9Aに図示するように、質量分布190は、多数の低質量種(例えば、<500kDa)と、4MDa付近に、それよりも数が少なく質量が大きい種とを含む。これは、丁度4.1MDa上におけるHBV Cp149 T=4カプシドの予測質量に近い。
【0080】
[0094] 図9Aに示す分析では、ユーザ(分析者)は、質量スペクトル190を支配する低質量種には興味がないかもしれない。したがって、イオン収集および分析時間の大きな端数は無駄になった。何故なら、CDMSは単一粒子技法であり、低質量イオンを捕捉および分析するのに費やされる時間は、高質量イオンを捕捉および分析するために使用することができないからである。低質量イオンを収集および分析するのを回避するために、実例として、時間可変電圧(例えば、RF)のみを生成し、これによって質量電荷フィルタ182が、これによって選択した質量電荷比または質量電荷比の範囲よりも高いイオンだけを通過させるハイパス質量電荷フィルタとして作用するように、電圧源(1つまたは複数)188を制御するとよい。RFのみの四重極では、それを通過する最も低い質量電荷比は、電圧源188によって生成される時間可変電圧の周波数に依存することは一般に知られている。一実験例では、電圧源188によって四重極質量フィルタ182に印加される時間可変電圧の周波数を120kHzに設定し、その結果得られたイオン・カウント対イオン質量の質量分布プロット192(メガダルトンまたはMDaの単位)が、B型肝炎ウィルス(HBV)カプシド(図9Aに示したプロットを生成するために使用された)の同じ試料について、リアル・タイムで組み立てられたものとして、図9Bに示されている。電圧源188によって生成されたRFのみの電圧の周波数を120kHzに設定すると、ELIT14に捕捉されたイオンの殆どは、400kDaよりも大きい質量を有し、このため、図9Aのスペクトル190に存在していた多数の低質量種(例えば、<500kDa)が、スペクトル192から消失する。図9Bに示すスペクトル192を生成するためのイオン収集および分析時間の殆どは、したがって、それよりも高い質量のイオンを捕捉および分析するために費やされた。尚、RFのみの四重極は、質量フィルタよりもむしろ質量電荷フィルタとして動作することは注記してしかるべきである。図9Bにおける質量カットオフが鋭くないのはそのためである。また、捕捉されたイオンの内、400kDaよりも大きい質量を有するイオンのプロット192は、約3.1MDaの質量による低強度ピークを含むが、これは図9Aの質量分布では明らかでなかったことも注記してしかるべきである。
【0081】
[0095] 尚、実例として、電圧源188は、指定された周波数で1組の時間可変電圧(例えば、180度位相外れ)のみを印加するように制御されて、四重極フィルタ182にハイパス質量電荷フィルタとして作用させて、選択された質量電荷比値よりも高い質量電荷比を有するイオンだけを通過させてもよいことは理解されよう。あるいは、質量電荷フィルタの電圧源188は、実例として、指定された周波数で1組の時間可変電圧と、選択された振幅のdc電圧(例えば、四重極ロッドの異なる対向対に印加される逆極性を有する)との組み合わせを印加するように制御され、四重極フィルタ182をバンドパス・フィルタとして作用させて、選択された範囲の質量電荷比値内の質量電荷比を有するイオンだけを通過させてもよい。1組の時間可変電圧の周波数および1組のDC電圧の振幅が一緒になって、通過可能な質量電荷比の範囲を定める。ELIT14に入射するイオンの質量電荷比の範囲が制限されない更に他の実施形態では、四重極フィルタ182は、実例として、即ち、DC電圧のみを四重極ロッドに、そしてこれらの対向する対の間に印加することによって、ELIT14に入射するイオンを長手方向軸20に向けて収束させるDCのみの四重極としてとして動作させることもできる。
【0082】
[0096] 尚、ELIT14に入射するイオンの質量電荷比範囲を制限するためには他の構造および/または技法もあることは、当業者には認められよう。更に、このような他の構造および/または技法はいずれも、本開示の範囲内に入ることを意図していることは理解されよう。非限定的な一例として、質量電荷フィルタ182は、代わりに、従来の六重極または八重極イオン・ガイドの形態をなしてもよい。他の非限定的な例として、質量電荷フィルタ182は、代わりに、イオン源から出射したイオンを内部に捕捉し、選択された質量電荷比の範囲内にあるイオンだけを出射させ、したがってELIT14に入射させるように従来のように動作可能な1つ以上の従来のイオン・トラップの形態をなしてもよい。
【0083】
[0097] これより図10Aを参照すると、イオン分離機器200の実施形態の簡略図が示されている。イオン分離機器200は、本明細書において図示および説明したELIT14を含むことができ、本明細書において図示および説明した電荷検出質量分光分析計(CDMS)10、150、180を含むことができ、ELIT14の上流側においてイオン源12の一部を形成することができる任意の数のイオン処理機器を含むことができ、および/またはELIT14から出射するイオン(1つまたは複数)を更に処理するためにELIT14の下流側に配置することができる任意の数のイオン処理機器を含むことができる。これに関して、イオン源12は、図10Aでは、Q個のイオン源ステージIS~ISを含むように示されている。イオン源ステージIS~ISは、イオン源12であっても、イオン源12の一部を形成するのでもよい。あるいはまたは加えて、イオン処理機器210は、図10Aでは、ELIT14のイオン出口に結合されるように示され、イオン処理機器210は、任意の数のイオン処理ステージOS~OSを含むことができる。ここで、Rは任意の正の整数でよい。
【0084】
[0098] イオン源12に注目すると、ELIT14に入るイオンのイオン源12は、イオン源ステージIS~ISの1つ以上の形態で、先に説明したような1つ以上の従来のイオン源であってもまたは含んでもよく、更に、1つ以上の分子特性にしたがって(例えば、イオン質量、イオン質量電荷、イオン移動性、イオン保持時間等にしたがって)イオンを分離するための1つ以上の従来の機器、および/またはイオンを収集および/または格納するため(例えば、1つ以上の四重極、六重極、および/または他のイオン・トラップ)、イオンをフィルタリングするため(例えば、イオン質量、イオン質量電荷、イオン移動性、イオン保持時間等のような1つ以上の分子特性にしたがって)、イオンを断片化するまたそうでなければ解離させるため、イオン荷電状態を正規化するまたは移すため等の1つ以上の従来のイオン処理機器を含むことができることは理解されよう。尚、イオン源12は、任意のこのような従来のイオン源、イオン分離機器、および/またはイオン処理機器の内1つまたは任意の組み合わせを任意の順序で含んでもよいこと、そしてある実施形態は、任意のこのような従来のイオン源、イオン分離機器、および/またはイオン処理機器を複数個隣接してまたは離間して含んでもよいことは理解されよう。これらの非限定的な例の一部を図7A図7B、および図8に示す。1つ以上の質量分光分析計を含む任意の実施態様において、任意の1つ以上のこのような質量分光分析計を、本明細書において説明した形態のいずれでも、実装することができる。
【0085】
[0099] これよりイオン処理機器210に移ると、機器210は、イオン処理ステージOS~OSの1つ以上の形態で、1つ以上の分子特性にしたがって(例えば、イオン質量、イオン質量電荷、イオン移動性、イオン保持時間等にしたがって)イオンを分離するための1つ以上の従来の機器、および/またはイオンを収集および/または格納するため(例えば、1つ以上の四重極、六重極、および/または他のイオン・トラップ)、イオンをフィルタリングするため(例えば、イオン質量、イオン質量電荷、イオン移動性、イオン保持時間等のような1つ以上の分子特性にしたがって)、イオンを断片化するまたそうでなければ解離させるため、イオン荷電状態を正規化するまたは移すため等の1つ以上の従来のイオン処理機器であってもよく、または含んでもよいことは理解されよう。尚、イオン処理機器110は、任意のこのような従来のイオン分離機器および/またはイオン処理機器の内1つまたは任意の組み合わせを任意の順序で含んでもよいこと、そしてある実施形態は、任意のこのような従来のイオン分離機器および/またはイオン処理機器を複数個隣接してまたは離間して含んでもよいことは理解されよう。1つ以上の質量分光分析計を含む実施態様ではいずれも、任意の1つ以上のこのような質量分光分析計は、本明細書において説明した形態の内任意のもので実装することができる。
【0086】
[00100] 図10Aに示すイオン分離機器200の1つの具体的な実施態様として、イオン源12は、実例として、3つのステージを含み、イオン処理機器210を除外する。これは決して限定と見なしてはならない。この実施態様例では、イオン源ステージISは従来のイオン源、例えば、エレクトロスプレイ、MALDI等であり、イオン源ステージISは、従来のイオン・フィルタ、例えば、四重極または六重極イオン・ガイドであり、イオン源ステージISは、本明細書において先に説明した型式の内いずれかの質量分光分析計である。この実施形態では、イオン源ステージISは、従来通りに、下流質量分光計による分析のために、所望の分子特性を有するイオンを予め選択し、このように予め選択したイオンだけを質量分光分析計に受け渡すように制御され、ELIT14によって分析されたイオンが、予め選択されたイオンとなり、質量電荷比にしたがって質量分光分析計によって分離される。予め選択されたイオンがイオン・フィルタから出射すると、例えば、指定されたイオン質量または質量電荷比を有するイオン、指定されたイオン質量またはイオン質量電荷比よりも高いおよび/または低いイオン質量またはイオン質量電荷比を有するイオン、指定されたイオン質量またはイオン質量電荷比の範囲内のイオン質量またはイオン質量電荷比を有するイオン等となることができる。この例は、図8に示したCDMSシステム180の実施形態に可能な1つの異形を示す。この例のある代替実施態様では、イオン源ステージISは質量分光分析計であってもよく、そしてイオン源ステージISはイオン・フィルタであってもよく、イオン・フィルタは、他の場合では、下流ELIT14による分析のために、所望の分子特性を有して質量分光分析計から出射するイオンを予め選択するように、丁度説明した通りに、動作可能であってもよい。これは、図8における例によって示される構成である。この例の他の代替実施態様では、イオン源ステージISがイオン・フィルタであってもよく、イオン源ステージISが、他のイオン・フィルタの前にある質量分光分析計を含んでもよい。イオン・フィルタは、各々、丁度説明したように動作し、つまり、図8に示した例の更に他の異形として機能する。
【0087】
[00101] 図10Aに示すイオン分離機器200の他の具体的な実施態様として、イオン源12は、実例として、2つのステージを含み、ここでもイオン処理機器210を除外する。これは、決して限定とみなしてはならない。この実施態様例では、イオン源ステージISは、従来のイオン源、例えば、エレクトロスプレイ、MALDI等であり、イオン源ステージISは、先に説明した型式の内いずれかの従来の質量分光分析計である。これは、図1に関して先に説明した実施態様であり、ELIT14が、質量分光分析計を出射したイオンを分析するように動作可能である。
【0088】
[00102] 図10Aに示すイオン分離機器200の更に他の具体的な実施態様として、イオン源12は、実例として、2つのステージを含み、イオン処理機器210を除外する。これは決して限定とみなしてはならない。この実施態様例では、イオン源ステージISは、従来のイオン源、例えば、エレクトロスプレイ、MALDI等であり、イオン処理ステージOSは、従来の単一または多重ステージ・イオン移動度分光計である。この実施態様では、イオン移動度分光計は、イオン源ステージISによって生成されたイオンを、イオン移動度の1つ以上の関数にしたがって経時的に分離するように動作可能であり、ELIT14は、イオン移動度分光計から出射したイオンを分析するように動作可能である。この例の代替実施態様では、イオン源12は、1つのステージISのみを、従来のイオン源の形態で含んでもよく、イオン処理機器210は、従来の単一または多重ステージ・イオン移動度分光計を、唯一のステージOSとして(または多重ステージ機器210のステージOSとして)含んでもよい。この代替実施態様では、ELIT14は、イオン源ステージISによって生成されたイオンを分析するように動作可能であり、イオン移動度分光計OSは、ELIT14から出射したイオンを、イオン移動度の1つ以上の関数にしたがって、経時的に分離するように動作可能である。この例の他の代替実施態様として、単一または多重ステージ・イオン移動度分光計が、イオン源ステージISおよびELIT14双方の後ろにあってもよい。この代替実施態様では、イオン源ステージISに続くイオン移動度分光計が、イオン源ステージISによって生成されたイオンを、イオン移動度の1つ以上の関数にしたがって経時的に分離するように動作可能であり、ELIT14が、イオン源ステージのイオン移動度分光計から出射したイオンを分析するように動作可能であり、ELIT14の後ろにあるイオン処理ステージOSのイオン移動度分光計が、ELIT14から出射したイオンを、イオン移動度の1つ以上の関数にしたがって経時的に分離するように動作可能である。この節において説明した実施形態の実施態様のいずれにおいても、追加の異形が、イオン源12および/またはイオン処理機器210における単一または多重ステージ・イオン移動度分光計の上流側および/または下流側に動作可能に位置付けられた質量分光分析計を含むことができる。
【0089】
[00103] 図10Aに示すイオン分離機器200の更に他の具体的な実施態様として、イオン源12は、実例として、2つのステージを含み、イオン処理機器210を除外する。これは決して限定とみなしてはならない。この実施態様例では、イオン源ステージISは従来の液体クロマトグラフ、例えば、分子保持時間にしたがって溶液中の分子を分離するように構成されたHPLC等であり、イオン源ステージISは、従来のイオン源、例えば、エレクトロスプレイ等である。この実施態様では、液体クロマトグラフは、溶液中の分子成分を分離するように動作可能であり、イオン源ステージISは、液体クロマトグラフから出た溶液流からイオンを生成するように動作可能であり、ELIT14は、イオン源ステージISによって生成されたイオンを分析するように動作可能である。この例の代替実施態様では、イオン源ステージISは、代わりに、溶液中の分子を大きさによって分離するように動作可能な従来のサイズ排除クロマトグラフィ(SEC:size-exclusion chromatograph)にしてもよい。他の代替実施態様では、イオン源ステージISが、従来の液体クロマトグラフと、その後ろに従来のSECとを、またはこの逆を、含んでもよい。この実施態様では、イオンが、イオン源ステージISによって、2回分離された溶液から生成される。1回目は分子保持時間にしたがって分離され、続いて2回目は分子サイズにしたがって分離される、またはこの逆でもよい。この節において説明した実施形態の実施態様のいずれにおいても、追加の異形が、イオン源ステージISとELIT14との間に動作可能に位置付けられた質量分光分析計を含むことができる。
【0090】
[00104] これより図10Bを参照すると、イオン分離機器220の他の実施形態の簡略ブロック図が示されている。実例として、イオン分離機器220は、マルチステージ質量分光分析機器230を含み、更に、イオン質量検出システム10、150、180、即ち、本明細書において図示および説明し、高質量イオン分析コンポーネントとして実装したCDMSも含む。図示する実施形態では、マルチステージ質量分光分析機器230は、本明細書において図示および説明したイオン源(IS)12、その後ろにありこれに結合された第1の従来の質量分光分析計(MS1)232、その後ろにありこれに結合された従来のイオン解離ステージ(ID)234であって、例えば、衝突誘発解離(CID)、表面誘発解離(SID)、電子捕獲解離(ECD)、および/または光誘発解離(PID)等の内1つ以上によって、質量分光分析計232から出射したイオンを解離させるように動作可能な、従来のイオン解離ステージ(ID)234、その後ろにありこれに結合された第2の従来の質量分光分析計(MS2)236,その後ろにある、例えば、マイクロチャネル・プレート検出器または他の従来のイオン検出器のような従来のイオン検出器(D)238を含む。イオン質量検出システム10、150、180、即ち、CDMSは、イオン質量検出システム10、150、180、即ち、CDMSが、選択的に質量分光分析計236および/またはイオン解離ステージ232からイオンを受け取ることができるように、イオン解離ステージ234と並列に結合されている。
【0091】
[00105] 例えば、イオン分離機器230のみを使用するMS/MSは、定着した手法であり、特定の分子重量の先駆イオンが、それらのm/z値に基づいて、第1質量分光分析計232(MS1)によって分離される。質量で選択された先駆イオンは、例えば、衝突誘発解離、表面誘発解離、電子捕獲解離、または光誘発解離によって、イオン解離ステージ234において断片化される。断片イオンは、次いで、第2質量分光分析計236(MS2)によって分析される。MS1およびMS2の双方において、先駆イオンおよび断片イオンのm/z値だけが測定される。高質量イオンでは、荷電状態が解明されず、したがってm/z値のみに基づいて特定の分子重量の先駆イオンを選択するのは不可能である。しかしながら、機器230を、本明細書において図示および説明したCDMS10に結合することによって、m/z値の狭い範囲を選択し、次いでCDMS10、150、180を使用して、m/zによって選択された先駆イオンの質量を判定することが可能になる。質量分光分析計232、236は、例えば、磁気セクタ質量分光分析計、飛行時間質量分光分析計、または四重極質量分光分析計の内1つまたは任意の組み合わせでもよいが、代替実施形態では、他の型式の質量分光分析計も使用することができる。いずれの場合でも、m/zによって選択され、既知の質量を有し、MS1から出射した先駆イオンを、イオン解離ステージ234において断片化することができ、次いで、結果的に得られた断片イオンをMS2によって(m/z比率のみが測定される)および/またはCDMS機器10、150、180によって(m/z比率および電荷が同時に測定される)分析することができる。低質量の断片、即ち、閾値の質量値、たとえば、10,000Da(または他の質量値)よりも低い質量値を有する、先駆イオンの解離イオンは、したがって、従来のMSによって、MS2を使用して分析することができ、一方高質量の断片(電荷状態は解明されていない)即ち、閾値の質量値以上の質量値を有する、先駆イオンの解離イオンは、CDMSによって分析することができる。
【0092】
[00106] 尚、添付図面において示し先に説明したシステム10、150、180、200、220のいずれかにおいて実装される、ELIT14の種々のコンポーネントの寸法、およびその中で確立される電界の大きさは、実例として、ELIT14内において、電荷検出シリンダCDにおいてイオンによって費やされる時間と、1回の完全な発振サイクル中にイオンがイオン・ミラーM1、M2の組み合わせおよび電荷検出シリンダCDを横断することによって費やされる総時間との比率に対応する、イオン発振の所望のデューティ・サイクルを確立するように選択することができることは理解されよう。例えば、約50%のデューティ・サイクルは、測定信号の高調波周波数成分から得られる、基本周波数の振幅判定においてノイズを低減する目的には望ましいとしてよい。 例えば、50%のような所望のデューティ・サイクルを達成するためのこのような寸法および動作上の考慮事項に関する詳細は、2018年1月12日に出願された同時係属中の米国特許出願第62/616,860号、2018年6月4日に出願された同時係属中の米国特許出願第62/680,343号、および2019年1月11日に出願された、同時係属中の国際特許出願第PCT/US2019____号において図示および説明されている。これらは、全てELECTROSTATIC LINEAR ION TRAP DESIGN FOR CHARGE DETECTION MASS SPECTROMETRY(電荷検出質量分光分析のための静電線形イオン捕捉設計)と題され、これらの特許出願をここで引用したことにより、その内容全体が全て明示的に本願にも含まれるものとする。
【0093】
[00107] 更に、添付図面で図示し本明細書において説明したシステム10、150、180、200、220のいずれにおいても、例えば、トリガ捕捉または他の電荷検出イベントのために、1つ以上の電荷検出最適化技法をELIT14と共に使用してもよいことは理解されよう。このような電荷検出最適化技法のいくつかの例が、このような電荷検出最適化技法のいくつかの例が、2018年6月4日に出願された同時係属中の米国特許出願第62/680,296号、および2019年1月11日に出願された同時係属中の国際特許出願第PCT/US2019____号において図示および説明されている。これらは、双方共、APPARATUS AND METHOD FOR CAPTURING IONS IN AN ELECTROSTATIC LINEAR ION TRAP(静電線形イオン・トラップにおけるイオン捕獲装置および方法)と題し、これらの特許出願をここで引用したことにより、その内容全体が全て明示的に本願にも含まれるものとする。
【0094】
[00108] 更に、添付図面に示し本明細書において説明したシステム10、150、180、200、220のいずれにおいても、1つ以上の電荷較正またはリセット装置をELIT14の電荷検出シリンダCDと共に使用してもよいことも理解されよう。1つのこのような電荷較正または再設定装置の例が、2018年6月4日に出願された同時係属中の米国特許出願第62/680,272号、および2019年1月11日に出願された同時係属中の国際特許出願第PCT/US2019____号において図示および説明されている。これらは双方共、APPARATUS AND METHOD FOR CALIBRATING OR RESETTING A CHARGE DETECTOR(電荷検出器を較正または再設定するための装置および方法)と題し、これらの特許出願をここで引用したことにより、その内容全体が全て明示的に本願にも含まれるものとする。
【0095】
[00109] 更に、添付図面において図示し本明細書において説明したシステム10、150、180、200、220のいずれかの一部として、同様に添付図面に示し本明細書において説明したELIT14は、代わりに、2つ以上のELITまたはELIT領域を有する少なくとも1つのELITアレイの形態で、および/または2つ以上のELIT領域を含むいずれか1つのELITにおいて設けられてもよいこと、そして本明細書において説明した概念は、1つ以上のこのようなELITおよび/またはELITアレイを含むシステムにも直接適用可能であることも理解されよう。このようないくつかのELITおよび/またはELITアレイの例は、2018年6月4日に出願された同時係属中の米国特許出願第62/680,315号、および2019年1月11日に出願された同時係属中の国際特許出願第PCT/US2019____号において図示および説明されている。これらは双方共、ION TRAP ARRAY FOR HIGH THROUGHPUT CHARGE DETECTION MASS SPECTROMETRY(高スループット電荷検出質量分光分析のためのイオン・トラップ・アレイ)と題し、これらの特許出願をここで引用したことにより、その内容全体が全て明示的に本願にも含まれるものとする。
【0096】
[00110] 更に、1つ以上のイオン源最適化装置および/または技法は、本明細書において図示および説明したイオン源12の1つ以上の実施形態と共に、添付図面に示し本明細書において説明したシステム10、150、180、200、220のいずれかの一部としてまたはこれと組み合わせて使用されてもよいことも理解されよう。その一部の例が、2018年6月4日に出願された同時係属中の米国特許出願第62/680,223号、2018年6月4日に出願され、HYBRID ION FUNNEL-ION CARPET (FUNPET) ATMOSPHERIC PRESSURE INTERFACE FOR CHARGE DETECTION MASS SPECTROMETRY(電荷検出質量分光分析のための混成イオン・ファンネル-イオン・カーペット(FUNPET)大気圧インターフェース)と題する同時係属中の米国特許出願第62/680,223号、および2019年1月11日に出願に出願され、INTERFACE FOR TRANSPORTING IONS FROM AN ATMOSPHERIC PRESSURE ENVIRONMENT TO A LOW PRESSURE ENVIRONMENT(大気圧環境から低圧環境にイオンを輸送するためのインターフェース)と題する同時係属中の国際特許出願第PCT/US2019____号において図示および説明されている。これらの特許出願をここで引用したことにより、その内容全体が全て明示的に本願にも含まれるものとする。
【0097】
[00111] 更にまた、添付図面に図示し本明細書において説明したシステム10、150、180、200、220のいずれにおいても、ELIT14をオービトラップ(orbitrap)と置き換えてもよいことも理解されよう。このような実施形態では、添付図面に示し先に説明した電荷プリアンプを、従来の設計の1つ以上の増幅器と置き換えてもよい。このようなオービトラップの例は、2018年11月20日に出願された同時係属中の米国特許出願第62/769,952号、および2019年1月11日に出願に出願された同時係属中の国際特許出願第PCT/US2019____号において図示および記載されている。双方共、ORBITRAP FOR SINGLE PARTICLE MASS SPECTROMETRY(単一粒子質量分光分析用オービトラップ)と題し、これらの特許出願をここで引用したことにより、その内容全体が全て明示的に本願にも含まれるものとする。
【0098】
[00112] 更にまた、1つ以上のイオン入射軌道制御装置および/または技法を、添付図面において図示し本明細書において説明したシステム10、150、180、200、220のいずれかのELIT14と共に使用して、ELIT14内における複数の個々のイオンの同時測定に対応できるようにしてもよいことも理解されよう。いくつかのこのようなイオン入射軌道制御装置および/または技法の例は、2018年12月3日に出願された同時係属中の米国特許出願第62/774,703号、および2019年1月11日に出願された同時係属中の国際特許出願第PCT/US2019____号において図示および記載されている。これらは双方共、APPARATUS AND METHOD FOR SIMULTANEOUSLY ANALYZING MULTIPLE IONS WITH AN ELECTROSTATIC LINEAR ION TRAP(静電線形イオン・トラップによって複数のイオンを同時に分析する装置および方法)と題し、これらの特許出願をここで引用したことにより、その内容全体が全て明示的に本願にも含まれるものとする。
【0099】
[00113] 以上の図面および説明において本開示を詳しく図示し説明したが、これは性質上限定ではなく例示と見なされるものであり、その例示的な実施形態が図示および説明されたに過ぎないこと、そして本開示の主旨に該当する全ての変更および修正は保護されることが望まれることは理解されよう。例えば、添付図面に示し本明細書において説明したELIT14は、一例として設けられたに過ぎず、以上で説明した概念、構造、および技法は、種々の代替設計のELITにも直接実施できることは理解されよう。このような代替ELIT設計はいずれも、例えば、2つ以上のELIT領域、もっと多いイオン・ミラー電極、もっと少ないイオン・ミラー電極、および/または異なる形状のイオン・ミラー電極、もっと多いまたはもっと少ない電圧源、これらの電圧源の1つ以上によって生成されるもっと多いまたはもっと少ないDCもしくは時間可変信号、追加の電界領域を定める1つ以上のイオン・ミラー等の内任意の1つ以上の組み合わせを含んでもよい。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10A
図10B