(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】無線通信端末、方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 17/16 20150101AFI20230704BHJP
H04B 17/29 20150101ALI20230704BHJP
【FI】
H04B17/16
H04B17/29 100
(21)【出願番号】P 2021007010
(22)【出願日】2021-01-20
【審査請求日】2022-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】菅原 章
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-304209(JP,A)
【文献】米国特許第10038508(US,B1)
【文献】特開2006-319617(JP,A)
【文献】特開2013-157690(JP,A)
【文献】特開2002-290255(JP,A)
【文献】特開2006-270710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/16
H04B 17/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作モードに基づいて、RFフロントエンドから出力された送信信号をアンテナ又はカプラに出力し、前記アンテナが受信した受信信号を前記RFフロントエンド又は前記カプラに出力するスイッチと、
前記動作モードに基づいて、前記スイッチから出力された前記送信信号を分岐したモニタ送信信号又は前記スイッチから出力された前記受信信号を分岐したモニタ受信信号を電力測定部に出力する前記カプラと、
前記動作モードに基づいて、前記カプラと前記スイッチとを介して前記RFフロントエンドに試験信号を出力し、又は、前記カプラを介して前記電力測定部に入力する前記試験信号を出力する試験信号生成部と、
前記動作モードに基づいて、前記モニタ送信信号と前記モニタ受信信号と前記試験信号の少なくともいずれか1つの電力を測定する前記電力測定部と、
を備える無線通信端末。
【請求項2】
前記動作モードは、通常動作モードと診断動作モードとループバック動作モードと通信動作モードとを有し、
前記通常動作モードにおいて、前記スイッチは、前記RFフロントエンドから出力された前記送信信号を前記アンテナに出力し、前記アンテナが受信した前記受信信号を前記RFフロントエンドに出力し、
前記診断動作モードにおいて、前記スイッチは、前記RFフロントエンドから出力された前記送信信号を前記カプラに出力し、前記カプラは、前記スイッチから出力された前記送信信号を分岐した前記モニタ送信信号を前記電力測定部に出力し、前記電力測定部は、前記モニタ送信信号の電力を測定し、
前記診断動作モードにおいて、前記試験信号生成部は、前記試験信号を前記カプラに出力し、前記カプラは、前記試験信号生成部から出力された前記試験信号を前記スイッチに出力し、前記スイッチは、前記カプラから出力された前記試験信号を前記RFフロントエンドに出力し、
前記ループバック動作モードにおいて、前記試験信号生成部は、前記試験信号を前記カプラに出力し、前記カプラは、前記試験信号生成部から出力された前記試験信号を前記電力測定部に出力し、前記電力測定部は、前記カプラから出力された前記試験信号の電力を測定し、
前記通信動作モードにおいて、前記スイッチは、前記RFフロントエンドから出力された前記送信信号を前記カプラに出力し、前記カプラは、前記スイッチから出力された前記送信信号を分岐した前記送信信号を前記スイッチに出力するとともに分岐した前記モニタ送信信号を前記電力測定部に出力し、前記スイッチは、前記カプラが分岐した前記送信信号を前記アンテナに出力し、前記電力測定部は、前記モニタ送信信号の電力を測定し、
前記通信動作モードにおいて、前記スイッチは、前記アンテナから出力された前記受信信号を前記カプラに出力し、前記カプラは、前記スイッチから出力された前記受信信号を分岐した前記受信信号を前記スイッチに出力するとともに分岐した前記モニタ受信信号を前記電力測定部に出力し、前記スイッチは、前記カプラが分岐した前記受信信号を前記RFフロントエンドに出力し、前記電力測定部は、前記モニタ受信信号の電力を測定する、
請求項1に記載の無線通信端末。
【請求項3】
自己診断機能部は、前記スイッチと前記カプラと前記試験信号生成部と前記電力測定部とを含み、
前記自己診断機能部は、
自端末の送信通路と自端末の受信通路を含む送受信通路をリストアップし、
前記ループバック動作モードにおいて、前記自己診断機能部が正常であるか否かを判断し、
前記診断動作モードにおいて、前記送受信通路ごとに正常であるか否かを判断する、
請求項2に記載の無線通信端末。
【請求項4】
前記自己診断機能部は、
前記ループバック動作モードにおいて、前記電力測定部が測定した電力が所定電力範囲内である場合、前記自己診断機能部が正常であると判断し、
前記診断動作モードにおいて、
前記電力測定部が測定した電力が所定RF電力範囲内である場合、前記RFフロントエンドの前記送受信通路が正常であると判断し、
前記電力測定部が測定した電力が所定RF電力未満の場合、前記RFフロントエンドの前記送受信通路が故障であると判断する、
請求項3に記載の無線通信端末。
【請求項5】
前記自己診断機能部は、
前記診断動作モードにおいて、前記RFフロントエンドの前記送受信通路が正常であると判断した場合、前記通常動作モード又は前記通信動作モードに移行する、
請求項3又は4に記載の無線通信端末。
【請求項6】
前記RFフロントエンドから出力された前記送信信号の周波数は、前記アンテナが受信した前記受信信号の周波数とは異なり、
前記RFフロントエンドから出力された前記送信信号の周波数は、前記試験信号生成部から出力された前記試験信号の周波数とは異なる、
請求項1から5のいずれか1つに記載の無線通信端末。
【請求項7】
動作モードに基づいて、スイッチが、RFフロントエンドから出力された送信信号をアンテナ又はカプラに出力し、前記アンテナが受信した受信信号を前記RFフロントエンド又は前記カプラに出力することと、
前記動作モードに基づいて、前記カプラが、前記カプラに出力された前記送信信号を分岐したモニタ送信信号又は前記カプラに出力された前記受信信号を分岐したモニタ受信信号を電力測定部に出力することと、
前記動作モードに基づいて、試験信号生成部が、前記カプラを介して前記RFフロントエンドに試験信号を出力し、又は、前記カプラを介して前記電力測定部に入力する試験信号を出力することと、
前記動作モードに基づいて、前記電力測定部が、前記モニタ送信信号と前記モニタ受信信号と前記試験信号の少なくともいずれか1つの電力を測定することと、
を備える方法。
【請求項8】
前記動作モードは、通常動作モードと診断動作モードとループバック動作モードと通信動作モードとを有し、
前記通常動作モードにおいて、前記スイッチが、前記RFフロントエンドから出力された前記送信信号を前記アンテナに出力し、前記アンテナが受信した前記受信信号を前記RFフロントエンドに出力することと、
前記診断動作モードにおいて、前記スイッチが、前記RFフロントエンドから出力された前記送信信号を前記カプラに出力し、前記カプラが、前記スイッチから出力された前記送信信号を分岐した前記モニタ送信信号を前記電力測定部に出力し、前記電力測定部が、前記モニタ送信信号の電力を測定することと、
前記診断動作モードにおいて、前記試験信号生成部が、前記試験信号を前記カプラに出力し、前記カプラが、前記試験信号生成部から出力された前記試験信号を前記スイッチに出力し、前記スイッチが、前記カプラから出力された前記試験信号を前記RFフロントエンドに出力することと、
前記ループバック動作モードにおいて、前記試験信号生成部が、前記試験信号を前記カプラに出力し、前記カプラが、前記試験信号生成部から出力された前記試験信号を前記電力測定部に出力し、前記電力測定部が、前記カプラから出力された前記試験信号の電力を測定することと、
前記通信動作モードにおいて、前記スイッチが、前記RFフロントエンドから出力された前記送信信号を前記カプラに出力し、前記カプラが、前記スイッチから出力された前記送信信号を分岐した前記送信信号を前記スイッチに出力するとともに分岐した前記モニタ送信信号を前記電力測定部に出力し、前記スイッチが、前記カプラが分岐した前記送信信号を前記アンテナに出力し、前記電力測定部が、前記モニタ送信信号の電力を測定することと、
前記通信動作モードにおいて、前記スイッチが、前記アンテナから出力された前記受信信号を前記カプラに出力し、前記カプラが、前記スイッチから出力された前記受信信号を分岐した前記受信信号を前記スイッチに出力するとともに分岐した前記モニタ受信信号を前記電力測定部に出力し、前記スイッチが、前記カプラが分岐した前記受信信号を前記RFフロントエンドに出力し、前記電力測定部が、前記モニタ受信信号の電力を測定することと、
をさらに備える請求項7に記載の方法。
【請求項9】
動作モードに基づいて、スイッチが、RFフロントエンドから出力された送信信号をアンテナ又はカプラに出力し、前記アンテナが受信した受信信号を前記RFフロントエンド又は前記カプラに出力することと、
前記動作モードに基づいて、前記カプラが、前記カプラに出力された前記送信信号を分岐したモニタ送信信号又は前記カプラに出力された前記受信信号を分岐したモニタ受信信号を電力測定部に出力することと、
前記動作モードに基づいて、試験信号生成部が、前記カプラを介して前記RFフロントエンドに試験信号を出力し、又は、前記カプラを介して前記電力測定部に入力する試験信号を出力することと、
前記動作モードに基づいて、前記電力測定部が、前記モニタ送信信号と前記モニタ受信信号と前記試験信号の少なくともいずれか1つの電力を測定することと、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項10】
前記動作モードは、通常動作モードと診断動作モードとループバック動作モードと通信動作モードとを有し、
前記通常動作モードにおいて、前記スイッチが、前記RFフロントエンドから出力された前記送信信号を前記アンテナに出力し、前記アンテナが受信した前記受信信号を前記RFフロントエンドに出力することと、
前記診断動作モードにおいて、前記スイッチが、前記RFフロントエンドから出力された前記送信信号を前記カプラに出力し、前記カプラが、前記スイッチから出力された前記送信信号を分岐した前記モニタ送信信号を前記電力測定部に出力し、前記電力測定部が、前記モニタ送信信号の電力を測定することと、
前記診断動作モードにおいて、前記試験信号生成部が、前記試験信号を前記カプラに出力し、前記カプラが、前記試験信号生成部から出力された前記試験信号を前記スイッチに出力し、前記スイッチが、前記カプラから出力された前記試験信号を前記RFフロントエンドに出力することと、
前記ループバック動作モードにおいて、前記試験信号生成部が、前記試験信号を前記カプラに出力し、前記カプラが、前記試験信号生成部から出力された前記試験信号を前記電力測定部に出力し、前記電力測定部が、前記カプラから出力された前記試験信号の電力を測定することと、
前記通信動作モードにおいて、前記スイッチが、前記RFフロントエンドから出力された前記送信信号を前記カプラに出力し、前記カプラが、前記スイッチから出力された前記送信信号を分岐した前記送信信号を前記スイッチに出力するとともに分岐した前記モニタ送信信号を前記電力測定部に出力し、前記スイッチが、前記カプラが分岐した前記送信信号を前記アンテナに出力し、前記電力測定部が、前記モニタ送信信号の電力を測定することと、
前記通信動作モードにおいて、前記スイッチが、前記アンテナから出力された前記受信信号を前記カプラに出力し、前記カプラが、前記スイッチから出力された前記受信信号を分岐した前記受信信号を前記スイッチに出力するとともに分岐した前記モニタ受信信号を前記電力測定部に出力し、前記スイッチが、前記カプラが分岐した前記受信信号を前記RFフロントエンドに出力し、前記電力測定部が、前記モニタ受信信号の電力を測定することと、
をさらにコンピュータに実行させる請求項9に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線通信端末、方法、及びプログラムに関するものであり、特に、自端末のRFフロントエンドの故障を容易に検出することが可能な無線通信端末、方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動無線通信端末は、対向端末との位置関係によって無線信号の減衰量や雑音等の伝搬特性が時々刻々と変化するため、送受信するごとに無線信号の電力を調整する必要がある。この電力調整を行う機能ブロックをRFフロントエンド、又は、RFフロントエンド部という。RFフロントエンドはRFフロントエンド回路を有する。RFフロントエンド回路の主な役割は、トランシーバ部(信号処理部)とアンテナの仲介役として、無線信号を増幅することと、無線信号の無線周波数(RF:Radio Frequency)を後段のトランシーバ部が扱える中間周波数(IF:Intermediate Frequency)の信号に変換することである。RFフロントエンド回路は、送信と受信で同様の役割を有する。近年では、RFフロントエンド回路の集積化が進み、RFフロントエンドの一部の機能は、1つのIC(RFIC:Radio Frequency Integrated Circuit)に集積されるようになってきている。RFフロントエンドは、送信の最終段、受信の初段の増幅器とそれらに伴った諸部品を含む。近年ではさらに、複数の通信事業者で使用できるSIM(Subscriber Identity Module)フリー端末と呼ばれる通信端末が求められている。各通信事業者に割り当てられた周波数帯域(バンド)が異なるため、1つの通信端末が複数の周波数帯域に対応する必要があり、それに伴ってRFフロントエンド回路の回路規模は増大している。
【0003】
特許文献1の0010段落には、「通信用のアンテナと、送信信号を前記アンテナに出力する送信手段と、前記アンテナからの受信信号を信号処理する受信手段と、前記アンテナを前記送信手段及び前記受信手段の何れか一方に選択的に接続する送受信切換手段と、前記送受信切換手段を介して前記送信手段を前記アンテナに周期的に接続することにより前記送信手段による定期送信を実施させ、該定期送信後は、前記送受信切換手段を介して前記受信手段を前記アンテナに接続することにより、前記受信手段を受信待機状態に制御する通信制御手段と、を備えた無線通信装置において、前記受信手段が他の無線通信装置からの送信信号を受信しない非受信期間が、前記定期送信の周期の複数倍以上の長さに設定された診断開始判定期間に達したか否かを判定する診断開始判定手段と、前記診断開始判定手段にて、前記非受信期間が前記診断開始判定期間に達したと判定されると、前記送信手段から出力された送信信号を前記受信手段に入力する折返し経路を形成する折返し経路形成手段と、前記折返し経路形成手段により前記折返し経路が形成されると、前記受信手段にて受信される受信信号の信号レベルを検出して該信号レベルが正常か否かを判断する受信レベル判定手段と、前記折返し経路形成手段により前記折返し経路が形成されると、前記受信手段による前記受信信号の受信継続期間を計測し、該受信継続期間が異常判定用のしきい値を越えたか否かを判定する受信継続期間判定手段と、前記受信レベル判定手段にて前記受信信号の信号レベルが正常ではないと判定されるか、或いは、前記受信継続期間判定手段にて前記受信継続期間が前記しきい値を越えたと判定されると、当該無線通信装置が故障していると判断して、当該無線通信装置の故障を報知する故障断定手段と、を備えたことを特徴とする。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無線信号を受信する場合において、トランシーバ部が対応できる無線信号の受信電力レベルには上限と下限がある。RFフロントエンドは、互いのトランシーバ部が所望する受信電力になるように調整する。しかしながら、RFフロントエンドが調整可能な範囲は制限があるため、対向端末との間の距離が近すぎたり遠すぎたりする場合、トランシーバ部での復調後の信号の信号対雑音比(Signal/Noise比)が低下し通信が不安定になる。これと同様の症状は、RFフロントエンドが故障した場合にも発生する。高周波の無線信号は、高周波部品(伝搬部品と称する)が故障や破損している場合でも、大きな損失を伴いながら伝搬する。すなわち、RFフロントエンド回路に故障がある場合でも、アンテナが受信した受信信号はトランシーバ部まで伝搬し、RFフロントエンド回路が正常に動作しているように見えてしまう。これにより、受信信号の受信電力レベル変動を引き起こした要因が伝搬路の変動によるものなのか、或いは、アンテナやRFフロントエンドの故障によるものなのかを判断することが難しいという課題があった。
【0006】
本開示の目的は、上述した課題のいずれかを解決する無線通信端末、方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る無線通信端末は、
動作モードに基づいて、RFフロントエンドから出力された送信信号をアンテナ又はカプラに出力し、前記アンテナが受信した受信信号を前記RFフロントエンド又は前記カプラに出力するスイッチと、
前記動作モードに基づいて、前記スイッチから出力された前記送信信号を分岐したモニタ送信信号又は前記スイッチから出力された前記受信信号を分岐したモニタ受信信号を電力測定部に出力する前記カプラと、
前記動作モードに基づいて、前記カプラと前記スイッチとを介して前記RFフロントエンドに試験信号を出力し、又は、前記カプラを介して前記電力測定部に入力する前記試験信号を出力する試験信号生成部と、
前記動作モードに基づいて、前記モニタ送信信号と前記モニタ受信信号と前記試験信号の少なくともいずれか1つの電力を測定する前記電力測定部と、
を備える。
【0008】
本開示に係る方法は、
動作モードに基づいて、スイッチが、RFフロントエンドから出力された送信信号をアンテナ又はカプラに出力し、前記アンテナが受信した受信信号を前記RFフロントエンド又は前記カプラに出力することと、
前記動作モードに基づいて、前記カプラが、前記カプラに出力された前記送信信号を分岐したモニタ送信信号又は前記カプラに出力された前記受信信号を分岐したモニタ受信信号を電力測定部に出力することと、
前記動作モードに基づいて、試験信号生成部が、前記カプラを介して前記RFフロントエンドに試験信号を出力し、又は、前記カプラを介して前記電力測定部に入力する試験信号を出力することと、
前記動作モードに基づいて、前記電力測定部が、前記モニタ送信信号と前記モニタ受信信号と前記試験信号の少なくともいずれか1つの電力を測定することと、
を備える。
【0009】
本開示に係るプログラムは、
動作モードに基づいて、スイッチが、RFフロントエンドから出力された送信信号をアンテナ又はカプラに出力し、前記アンテナが受信した受信信号を前記RFフロントエンド又は前記カプラに出力することと、
前記動作モードに基づいて、前記カプラが、前記カプラに出力された前記送信信号を分岐したモニタ送信信号又は前記カプラに出力された前記受信信号を分岐したモニタ受信信号を電力測定部に出力することと、
前記動作モードに基づいて、試験信号生成部が、前記カプラを介して前記RFフロントエンドに試験信号を出力し、又は、前記カプラを介して前記電力測定部に入力する試験信号を出力することと、
前記動作モードに基づいて、前記電力測定部が、前記モニタ送信信号と前記モニタ受信信号と前記試験信号の少なくともいずれか1つの電力を測定することと、
をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、自端末のRFフロントエンドの故障を容易に検出することが可能な無線通信端末、方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態に係る無線通信端末を例示するブロック図である。
【
図2】RFフロントエンドとアンテナとトランシーバ部を例示するブロック図である。
【
図3】実施の形態に係る自己診断機能部を例示するブロック図である。
【
図4】実施の形態に係る自己診断機能部を例示するブロック図である。
【
図5】実施の形態に係る自己診断機能部を例示するブロック図である。
【
図6】実施の形態に係る自己診断機能部を例示するブロック図である。
【
図7】実施の形態に係る無線通信端末を例示するブロック図である。
【
図8】実施の形態に係る無線通信端末のトランシーバ部とアンテナとの接続関係を概念的に例示するブロック図である。
【
図9】実施の形態に係る無線通信端末のトランシーバ部とアンテナとの接続関係を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明を省略する。
【0013】
[実施の形態]
<無線通信端末の構成>
図1は、実施の形態に係る無線通信端末を例示するブロック図である。
図1は、無線通信端末の自己診断機能部を例示するブロック図であり、自己診断機能部の最小構成を示す。
【0014】
図1に示すように、実施の形態1に係る無線通信端末10は、自己診断機能部11と、RFフロントエンド12と、アンテナ13と、を備える、自己診断機能部11は、スイッチ111と、カプラ112と、試験信号生成部113と、電力測定部114と、を備える。自己診断機能部11は、RFフロントエンド12とアンテナ13との間に挿入される。RFフロントエンドは、信号を増幅する等の回路を有するので、RFフロントエンドをRFフロントエンド回路と称することもある。
【0015】
無線通信端末10は、例えば、スマートフォンやモバイルルータ等、LTE(Long Term Evolution)や5G(NR:New Radio)等の移動通信で使用する通信端末である。
【0016】
自己診断機能部11のスイッチ111は、RFフロントエンド12とアンテナ13との間に挿入される。スイッチ111は、動作モードに基づいて、RFフロントエンド12から出力された送信信号をアンテナ13又はカプラ112に出力する。スイッチ111は、動作モードに基づいて、アンテナ13が受信した受信信号をRFフロントエンド12又はカプラ112に出力する。動作モードの詳細は、後述する。スイッチ111を、マトリクススイッチと称することもある。
【0017】
カプラ112は、動作モードに基づいて、スイッチ111から出力された送信信号を分岐したモニタ送信信号又はスイッチ111から出力された受信信号を分岐したモニタ受信信号を電力測定部114に出力する。カプラは双方向性を有するものとし、カプラを双方向性結合機、又は、方向性結合器と称することもある。
【0018】
試験信号生成部113は、動作モードに基づいて、カプラ112とスイッチ111とを介してRFフロントエンド12に試験信号を出力し、又は、カプラ112を介して電力測定部114に入力する試験信号を出力する。試験信号生成部113は、無線通信端末10のRFフロントエンド12が対応する周波数帯域の試験信号を出力する。
【0019】
電力測定部114は、動作モードに基づいて、モニタ送信信号とモニタ受信信号と試験信号の少なくともいずれか1つの電力を測定する。電力測定部114は、無線通信端末10のRFフロントエンド12が対応する周波数帯域のモニタ送信信号、モニタ受信信号、試験信号の電力を測定する。
【0020】
<RFフロントエンド>
図2は、RFフロントエンドとアンテナとトランシーバ部を例示するブロック図である。
【0021】
図2に示すように、RFフロントエンド12は、増幅器接続部122aと増幅器接続部122bと送信信号増幅部123aと受信信号増幅部123bとフィルタ接続部124aとフィルタ接続部124bと送信フィルタ部125aと受信フィルタ部125bと送受混合部126と周波数帯域選択部127とを備える。
【0022】
トランシーバ部121は、アンテナ13から送信する送信信号とアンテナ13で受信した受信信号の信号処理を行う。送信信号増幅部123aと受信信号増幅部123bは、増幅素子(アンプ)を用いて入力信号を電力増幅して後段に出力する。送信フィルタ部125aと受信フィルタ部125bは、フィルタ素子を用いて後段で不要な信号成分を入力信号から除去して後段に出力する。
【0023】
RFフロントエンド12は、これらの増幅素子やフィルタ素子が送信部と受信部(送信部と受信部を総称して送受信部と称する)のそれぞれに必要となり、さらに、通信に使用する周波数帯域(バンド)毎にも必要となる。無線通信端末10は、これらの送受信部を適切なトランシーバ部121の入出力ポート(Port)と適切なアンテナ13にルーティング(接続)するためのスイッチング素子が必要とされる。スイッチング素子については後述する。RFフロントエンド12は、スマートフォン等の無線通信端末に使用される。
【0024】
<自己診断機能部>
図3は、実施の形態に係る自己診断機能部を例示するブロック図である。
図3は、通常動作モードを示す。
図4は、実施の形態に係る自己診断機能部を例示するブロック図である。
図4は、診断動作モードを示す。
図5は、実施の形態に係る自己診断機能部を例示するブロック図である。
図5は、ループバック動作モードを示す。
図6は、実施の形態に係る自己診断機能部を例示するブロック図である。
図6は、通信動作モードを示す。
【0025】
実施の形態に係る自己診断機能部11は、無線通信端末のRFフロントエンド12とアンテナ13との間に挿入される(
図1参照)。
【0026】
図3から
図6に示すように、自己診断機能部11は、動作モードとして、通常動作モードと診断動作モードとループバック動作モードと通信動作モードとを有する。
【0027】
図3に示すように、通常動作モードでは、スイッチ111で自己診断機能部11の機能と通常動作機能を分離する。
【0028】
図4に示すように、診断動作モードでは、検査対象であるRFフロントエンド12が出力する無線信号の電力測定を行い、また、RFフロントエンド12に試験信号(検査信号)を入力する。
【0029】
図5に示すように、ループバック動作モードでは、自己診断機能部11自身の正常性の確認を行う。
【0030】
図6に示すように、通信動作モードでは、通常動作中において、アンテナ13に入力する受信信号の電力の測定を行い、また、アンテナ13から出力する(送信する)送信信号の電力の測定を行う。
【0031】
通常動作モードを第1機能と称し、診断動作モードを第2機能と称し、ループバック動作モードを第3機能と称し、通信動作モードを第4機能と称することもある。
【0032】
自己診断機能部11は、試験信号生成部113と電力測定部114とカプラ112との間の接続を切り替えるためのスイッチ115と、カプラ112が出力した信号(送信信号、受信信号、試験信号)をスイッチ111に戻すかあるいは終端するかを決めるスイッチ116と、をさらに備えてもよい。
【0033】
自己診断機能部11は、RFフロントエンド12あるいはアンテナ13からの出力信号(送信信号又は受信信号)の電力を測定する機能を有する。また、自己診断機能部11は、試験信号をRFフロントエンド12に入力する機能を有する。自己診断機能部11は、これら機能を用いて予め正常時のRFフロントエンド12の伝搬特性を測定し記録しておき、正常時の測定結果と、試験時の測定結果とを比較し照合することにより、RFフロントエンド12が正常であるか否かを判断する。すなわち、自己診断機能部11は、RFフロントエンド12の自己診断を行う。
【0034】
<自己診断機能部の動作モードの詳細>
図3から
図6を用いて自己診断機能部11の動作モードの詳細を説明する。
通常動作モードでは、
図3の第1機能(通常動作モード)に示すように、スイッチ111は、RFフロントエンド12から出力された送信信号をアンテナ13に出力し、アンテナ13が受信した受信信号をRFフロントエンド12に出力する。すなわち、スイッチ111は、RFフロントエンド12とアンテナ13とを接続する。
【0035】
診断動作モードでは、
図4の第2機能(診断動作モード)に示すように、スイッチ111は、RFフロントエンド12から出力された送信信号をカプラ112に出力する。カプラ112は、スイッチ111から出力された送信信号を分岐したモニタ送信信号を電力測定部114に出力する。電力測定部114は、モニタ送信信号の電力を測定する。また、診断動作モードでは、カプラ112から出力された送信信号を、スイッチ116を介して終端する。これにより、アンテナ13からの送信信号の不要放射を防止する。
【0036】
診断動作モードでは、
図4の第2機能(診断動作モード)に示すように、試験信号生成部113は、試験信号をカプラ112に出力する。カプラ112は、試験信号生成部113から出力された試験信号をスイッチ111に出力する。スイッチ111は、カプラ112から出力された試験信号をRFフロントエンド12に出力する。尚、試験信号生成部113は、試験信号を、スイッチ115を介してカプラ112に出力してもよい。
【0037】
ループバック動作モードでは、
図5の第3機能(ループバック動作モード)に示すように、試験信号生成部113は、試験信号をカプラ112に出力する。カプラ112は、試験信号生成部113から出力された試験信号を電力測定部114に出力する。電力測定部114は、カプラ112から出力された試験信号の電力を測定する。
【0038】
通信動作モードでは、
図6の第4機能(通信動作モード)に示すように、スイッチ111は、RFフロントエンド12から出力された送信信号をカプラ112に出力する。カプラ112は、スイッチ111から出力された送信信号を分岐した送信信号をスイッチ111に出力するとともに分岐したモニタ送信信号を電力測定部114に出力する。スイッチ111は、カプラ112が分岐した送信信号をアンテナ13に出力する。電力測定部114は、モニタ送信信号の電力を測定する。
【0039】
通信動作モードでは、
図6の第4機能(通信動作モード)に示すように、スイッチ111は、アンテナ13から出力された受信信号をカプラ112に出力し、カプラ112は、スイッチ111から出力された受信信号を分岐した受信信号をスイッチ111に出力するとともに分岐したモニタ受信信号を電力測定部114に出力する。また、スイッチ111は、カプラ112が分岐した受信信号をRFフロントエンド12に出力する。電力測定部114は、モニタ受信信号の電力を測定する。通信動作モードでは、通信動作を中断せずにリアルタイムにRFフロントエンドを診断することができる。
【0040】
<自己診断機能部の動作の具体例>
図7は、実施の形態に係る無線通信端末を例示するブロック図である。
図7は、簡易的に2つのバンドに対応したLTE通信端末(無線通信端末)の回路ブロック図を示す。
図8は、実施の形態に係る無線通信端末のトランシーバ部とアンテナとの接続関係を概念的に例示するブロック図である。
図9は、実施の形態に係る無線通信端末のトランシーバ部とアンテナとの接続関係を例示する図である。
【0041】
この例では、以下を前提とするものとする。
図7に示すように、RFフロントエンド12は、周波数分割多重方式(FDD:Frequency Division Duplex方式)を採用し、2つの周波数帯域(バンド)に対応する。このため、送信(トランシーバ部121からアンテナ13に向かう方向)は、1つの周波数帯域に対応した送信増幅器と送信フィルタを周波数帯域ごとに備える。この例では、周波数帯域Aと周波数帯域Bである。また、受信(アンテナ13からトランシーバ部121に向かう方向)は、2つの周波数帯域に対応した受信増幅器を、2x2MIMO通信を行うように2つ実装する。また、送信増幅器は増幅モードが3つ有り、受信増幅器は増幅モードが2つ有るものとする。また、フィルタ、混合器、スイッチ等の通過特性は、各通過信号の周波数に対して一意とする。尚、スイッチ111を検査用マトリクススイッチと称することもある。また、無線通信端末10は、無線通信処理部128aと汎用情報処理部128bと不揮発性記憶部129とをさらに備えてもよい。
【0042】
この前提に基づいた場合、RFフロントエンド12の伝送線路(伝搬路)の通過特性は、増幅器のモード毎に変化するので、トランシーバ部121と自己診断機能部11のスイッチ111との間に存在する固有の伝搬路は送信側が6パターン存在し、受信側が8パターン存在する。これらのパターンを“通路”と表現し、通路と、トランシーバ部121とアンテナ13との接続関係と、増幅器が対応する周波数帯域と、増幅器の増幅モードと、の関係について、送信及び受信のそれぞれをまとめた図を
図9として示す。また、
図9を概念的に示した図を
図8として示す。各通路は周波数的に特性が異なるので、複数の周波数で測定したものを記録する。
【0043】
無線通信端末10は、FDD方式を採用しているので、RFフロントエンド12から出力された送信信号の周波数は、アンテナ13が受信した受信信号の周波数とは異なる。また、RFフロントエンド12から出力された送信信号の周波数は、試験信号生成部113から出力された試験信号の周波数とは異なる場合もある。
【0044】
<自己診断機能部を使用した試験から運用までのステップ>
実施の形態を使用した「試験から運用」までのステップは、以下の通りである。
【0045】
先ず、無線通信端末10のRFフロントエンド12の試験対象となる送信通路と受信通路(送受信通路と称する)をリストアップする(ステップS101)。具体的には、無線通信端末10のRFフロントエンド12について、送信信号又は受信信号が通る通路を自己診断機能部11と接続するためのスイッチ111の設定をリストアップする。尚、リストアップは、送信と受信とに分けて行う。これにより、例えば、
図9に示すようなリストを作成する。
【0046】
次に、事前測定を行う(ステップS102)。ステップS102では、製造検査等、無線通信端末10が正常であることが確保できている段階で、自己診断機能部11を用いて通路毎の通過損失や増幅量等の伝搬特性を測定し記録しておく。詳細は、以下のステップに従う。
【0047】
予め、
図5に示す第3機能(ループバック動作モード)で、試験信号生成部113が試験信号を出力し、カプラ112が結合端子間の通路を通して試験信号を電力測定部114に出力し、電力測定部114が試験信号の電力を測定する。これにより、試験信号生成部113が出力信号である試験信号を正常に出力できているか、或いは、電力測定部114が試験信号の電力を正常に測定できているかを確認する(ステップS102-1)。すなわち、自己診断機能部11が正常であるか否かを判断(確認)する。
【0048】
具体的には、自己診断機能部11は、ループバック動作モードにおいて、電力測定部114が測定した電力が所定電力範囲内である場合、自己診断機能部11が正常であると判断する。
【0049】
ステップS102-1において自己診断機能部11の正常性を確認した後、
図4に示す第2機能(診断動作モード)において、トランシーバ部121を操作し、各通路の伝搬特性を測定する(ステップS102-2)。
【0050】
ステップS102-2において測定した測定結果は、不揮発性記憶部129に記録する(ステップS102-3)。不揮発性記憶部129に記録した測定した結果は、今後の故障診断時の基準値として用いる。
【0051】
次に、本動作モード(通常動作モード又は通信動作モード)移行前の故障診断を行う(ステップS103)。無線通信端末10が起動してサービス動作を開始する前段階として、ステップS102の診断動作モードにおける事前測定と同様の測定を行い、ステップS102-3で記録した送受信通路の測定結果と比較する。送受信通路ごとに測定結果が一定の基準(正常値より数dB(デシベル)低い等)を基に、正常であるか又は故障であるかを判断する。
【0052】
具体的には、診断動作モードにおいて、電力測定部114が測定した電力が所定RF電力範囲内である場合、RFフロントエンド12の送受信通路が正常であると判断する。また、電力測定部114が測定した電力が所定RF電力未満の場合、RFフロントエンド12の送受信通路が故障であると判断する。
【0053】
次に、本動作を行う(ステップS104)。本動作前のステップS103の故障診断(第2機能(診断動作モード))において、RFフロントエンド12の送受信通路が正常であると判断された場合、自己診断機能部11を分離し、第1機能(通常動作モード)に移行し通信動作を開始する。
【0054】
尚、ステップS103の故障診断において、RFフロントエンド12の送受信通路が正常であると判断された場合、第4機能(通信動作モード)に移行してもよい。通信動作モードは、RFフロントエンド12とアンテナ13の接続の間にカプラ112を挿入して実現されている。これにより、通常動作中(運用中)のトランシーバ部121の送信設定、受信電力を参照し、自己診断機能部11の測定機能と照らし合わせることでRFフロントエンド12の正常、故障を判断することができる。
【0055】
実施の形態では、自己診断機能部11が有する複数の動作モードを使用して事前測定と故障診断を行い、それらの測定結果に基づいて、自端末が正常であるか又は故障であるかを判断する。その結果、自端末のRFフロントエンドの故障を容易に検出することが可能な無線通信端末、方法、及びプログラムを提供することができる。
【0056】
実施の形態を適用しない場合の事前測定は、厳密な測定器で無線通信端末の正常性を担保することを前提としている。このため、無線通信端末の製造検査の段階で実施されることを想定している。一方、実施の形態では、測定器の結果が事前に必要であることが無い。このため、無線通信端末10の開発段階である程度正常値の目安が想定できる場合、そのような想定した数値に基づいて、正常、又は異常の判断をすることができる。
【0057】
実施の形態では、自己診断機能部11は、無線通信端末10の本来の機能(送信機能と受信機能)から独立しており、本来の送受信動作に何ら影響なく診断機能(検査機能)をアドインできるので、適用が容易である。
【0058】
実施の形態では、RFフロントエンド12とアンテナ13との間に挿入するスイッチ111のポート数を増加させることで、1つのカプラ112を使用して複数の通路(と通路を実現する回路)の診断を行うことができる。これにより、診断機能を含めた全体的な製造コストを低減することができる。
【0059】
ここで、自己診断機能部11に自律的な回路検査機能を含めたことによる効果を以下に示す。
・故障した状態(異常状態)での無線通信端末10の動作を防止することができる。これにより、法令を遵守することができる。
・故障機能(故障個所)を自主的に無効化する。例えば、故障した通路を使用しない。これにより、故障による影響を最小化することができる(ロバスト性)。
・ユーザ(利用者)に故障状態と故障理由を通知できる。これにより、無線通信端末10を使用するユーザに対してアフターサポートを行うことができる。
・無線通信端末10の故障内容を特定することができる。例えば、故障している通路を特定することができる。これにより、無線通信端末10の修理性を向上させることができる(保守性の向上)。
【0060】
尚、実施の形態では、試験信号生成部113と電力測定部114を独立したものとして説明したが、これらは独立したものに限定されない。トランシーバ部121内に試験信号を生成する機能と電力を測定する機能が有る場合、そのような機能を、試験信号生成部113と電力測定部114の代わりに使用してもよい。例えば、送信電力のクローズドループ制御を目的として、トランシーバ部121内に電力測定部114に相当する機能を有する場合、該機能を電力測定部114の代わりに使用してもよい。
【0061】
また、実施の形態では、
図7に示すように、自己診断機能部11の挿入位置を検査端子の前段としたが、これには制限されない。
図7では簡単のため図示していないが、検査端子の後段にはRFフロントエンド12とアンテナ13との間のインピーダンス整合回路(部品)が存在する。よって、自己診断機能部11の挿入位置を、RFフロントエンド12とインピーダンス整合回路との間、又は、インピーダンス整合回路とアンテナ13との間にしてもよい。また、自己診断機能部11の挿入位置を、故障の可能性のある部品がより少ない部分とアンテナ13との間にしてもよい。
【0062】
実施の形態では、RFフロントエンド12の全ての通路をリストアップし、全ての通路について記録し診断したが、全ての通路を診断しなくてもよい。例えば、部品単位、周波数帯域単位等、判断すべき故障の粒度に併せて検査する通路を限定してもよい。
【0063】
LTEや5Gの無線通信端末には通信品質の向上を目的として、複数のアンテナから送信できるようにスイッチ(マトリクススイッチ)をアンテナの直近に挿入して送受信回路とアンテナの接続をスワップできるものが存在する。実施の形態は、RFフロントエンド12内の全通路に診断機能(検査機能)を提供することなので、この機能のために実装される既存のマトリクススイッチを1ポート増やして検査スイッチ(スイッチ111)としてもよい。
【0064】
<特徴>
ここで、実施の形態の特徴を以下に示す。
・高周波回路の異常を診断するために必要なループバック回路(
図5の試験信号生成部113からカプラ112を介して電力測定部114までの回路)において、カプラ112を使用するとともに、カプラ112を状態として回路に挿入するのではなく、診断時のみ挿入できるようにスイッチ111を用いて構成し、複数の回路を1つのカプラ112で診断できるようにした。
・診断時にアンテナ13へ不要な送信信号を入力しないように、あるいはアンテナ13の受信信号が診断結果に影響を及ぼさないようにするため、カプラ112とスイッチ111との間を切断できるようにスイッチ116を設けた。
・カプラ112において、通過用端子間と結合端子間の特性がほぼ同等の双方向性カプラを用いた場合、両結合端子に対して試験信号生成部113と電力測定部114を接続し、試験信号生成部113から出力した試験信号を電力測定部114で測定することで、自己診断機能部11内での故障を診断することができる。
【0065】
尚、上記の実施の形態では、本発明をハードウェアの構成として説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、各構成要素の処理を、CPU(Central Processing Unit)にコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。
【0066】
上記の実施の形態において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実態のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(具体的にはフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(具体的には光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(具体的には、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM))、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory)を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0067】
さらに、動作は特定の順序で描かれているが、これは、望ましい結果を達成するために、そのような動作が示された特定の順序または連続した順序で実行されること、または示されたすべての動作が実行されることを要求するものとして理解されるべきではない。特定の状況では、マルチタスクと並列処理が有利な場合がある。同様に、いくつかの特定の実施の形態の詳細が上記の議論に含まれているが、これらは本開示の範囲に対する制限としてではなく、特定の実施の形態に特有の特徴の説明として解釈されるべきである。別個の実施の形態の文脈で説明される特定の特徴は、単一の実施の形態に組み合わせて実装されてもよい。逆に、単一の実施の形態の文脈で説明される様々な特徴は、複数の実施の形態で別々にまたは任意の適切な組み合わせで実装されてもよい。
【0068】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0069】
尚、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0070】
10:無線通信端末
11:自己診断機能部
111:スイッチ
112:カプラ
113:試験信号生成部
114:電力測定部
115:スイッチ
116:スイッチ
12:RFフロントエンド
121:トランシーバ部
122a:増幅器接続部
122b:増幅器接続部
123a:送信信号増幅部
123b:受信信号増幅部
124a:フィルタ接続部
124b:フィルタ接続部
125a:送信フィルタ部
125b:受信フィルタ部
126:送受混合部
127:周波数帯域選択部
128a:無線通信処理部
128b:汎用情報処理部
129:不揮発性記憶部
13:アンテナ