(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】パン用包装フィルムおよびパン用包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20230704BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B27/32 Z
(21)【出願番号】P 2017196165
(22)【出願日】2017-10-06
【審査請求日】2020-08-06
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】三井化学東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】並木 陽生
(72)【発明者】
【氏名】袴田 智宣
【合議体】
【審判長】藤原 直欣
【審判官】森本 哲也
【審判官】稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-237641(JP,A)
【文献】特開2008-162163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/00-65/46
B32B 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンを包装するためのパン用包装フィルムであって、
ポリオレフィンを含むコア層と、
前記コア層の一方の面に設けられたヒートシール層と、
を備え、
軽荷重引裂き試験機を使用して測定温度23±3℃、測定湿度50±5%RHの条件で測定される、前記パン用包装フィルムのTD方向の引裂き強度が4.0N/mm以上であり、
スリップテスターを使用し、下記方法1(傾斜法)により測定される、前記パン用包装フィルムの前記ヒートシール層側の表面の静摩擦係数(tanθ)が2.0以下であるパン用包装フィルム。
(方法1)
50mm×75mmのサイズに切断した前記パン用包装フィルムを2枚(以下、パン用包装フィルム1および2とする。)準備し、そのうちの1枚の前記パン用包装フィルム1を前記ヒートシール層側が上になるように傾斜板に固定する。次いで、もう1枚の前記パン用包装フィルム2の前記ヒートシール層側とは反対側の表面の中心に底面(サイズが41mm×26mm)が真鍮から構成されている摩擦体を固定し、前記摩擦体の上に、前記摩擦体から前記パン用包装フィルム2にかかる質量が150gとなるように重りを取り付ける。次いで、2枚の前記パン用包装フィルム1、2の前記ヒートシール層側の面同士を重ねる。次いで、前記傾斜板を1°/secの速度で傾斜させ、上部の前記パン用包装フィルム2が滑り出したときの角度θからtanθの値を求める。
【請求項2】
請求項1に記載のパン用包装フィルムにおいて、
JIS K7127:1999に準拠して、引張試験機を用いて測定温度23±3℃、測定湿度50±5%RH、引張速度5mm/minの条件で測定される、前記パン用包装フィルムのMD方向のヤング率T
1とTD方向のヤング率T
2との合計値(T
1+T
2)が700MPa以上1500MPa以下であるパン用包装フィルム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のパン用包装フィルムにおいて、
JIS K7127:1999に準拠して、引張試験機を用いて測定温度23±3℃、測定湿度50±5%RH、引張速度5mm/minの条件で測定される、前記パン用包装フィルムのMD方向のヤング率T
1が300MPa以上800MPa以下であるパン用包装フィルム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のパン用包装フィルムにおいて、
5±2℃、50±5%RHの条件で測定される、前記パン用包装フィルムの衝撃強度が3.0kg・cm以上8.0kg・cm以下であるパン用包装フィルム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のパン用包装フィルムにおいて、
JIS Z1707:1997に準拠して、23±2℃、50±5%RHの条件で測定される、前記パン用包装フィルムの突き刺し強度が1.5N以上3.5N以下であるパン用包装フィルム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のパン用包装フィルムにおいて、
前記ポリオレフィンがプロピレン系ブロック共重合体を含むパン用包装フィルム。
【請求項7】
請求項6に記載のパン用包装フィルムにおいて、
前記コア層に含まれる前記プロピレン系ブロック共重合体の含有量が、前記コア層に含まれる前記ポリオレフィンの含有量を100質量%としたとき、50質量%以上100質量%以下であるパン用包装フィルム。
【請求項8】
請求項6または7に記載のパン用包装フィルムにおいて、
JIS K7210に準拠し、230℃、2.16kg荷重の条件で測定される前記プロピレン系ブロック共重合体のメルトフローレート(MFR)が、0.5g/10分以上20g/10分以下であるパン用包装フィルム。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のパン用包装フィルムにおいて、
前記コア層の前記ヒートシール層が設けられた面とは反対側の面に表面層をさらに備えるパン用包装フィルム。
【請求項10】
請求項9に記載のパン用包装フィルムにおいて、
前記表面層はホモポリプロピレン、プロピレン系ブロック共重合体およびプロピレンと炭素数が2以上10以下のα-オレフィンとのランダム共重合体から選択される一種または二種以上を含むパン用包装フィルム。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載のパン用包装フィルムにおいて、
前記ヒートシール層は前記コア層の前記一方の面に直接接するように設けられているパン用包装フィルム。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載のパン用包装フィルムにおいて、
前記ヒートシール層がホモポリプロピレンおよびプロピレンと炭素数が2以上10以下のα-オレフィンとのランダム共重合体から選択される一種または二種以上を含むパン用包装フィルム。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載のパン用包装フィルムにおいて、
前記パンが食パンを含むパン用包装フィルム。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか一項に記載のパン用包装フィルムを用いたパン用包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パン用包装フィルムおよびパン用包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
パン用包装フィルムとしては、一般的に、ポリオレフィン系の樹脂フィルムが用いられている。
このようなパン用包装フィルムに関する技術としては、例えば、特許文献1(特開2003-55509号公報)および特許文献2(特開2007-152730号公報)に記載のものが挙げられる。
【0003】
特許文献1には、メルトフローレートが3~10g/10分の範囲にある、プロピレン重合体(A)75~85重量%、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(B)4~12重量%及びエチレン重合体(C)8~18重量%とのポリオレフィン組成物から得られることを特徴とするポリオレフィンフィルムが記載されている。
特許文献1には、上記のような構成を有するポリオレフィンフィルムは溶断シール強度やスリップ性に優れると記載されている。
【0004】
特許文献2には、プロピレン系ブロック共重合体樹脂(C)70~100重量%と、プロピレン系ブロック共重合体樹脂(D)0~30重量%とからなる樹脂組成物を含む印刷層と、プロピレレン系ランダム共重合体樹脂(A)50~100重量%と、エチレン・α-オレフィン共重合体樹脂(B)0~50重量%とからなる樹脂組成物を含むシール層の2層を含むポリオレフィン系樹脂積層フィルムが記載されている。特許文献2には、上記積層フィルムにおいて、印刷層表面のグロスが13%以下、かつ印刷層表面のぬれ指数が34~36mN/mであり、更にはフィルムのヘイズが60%以上であることが特徴であると記載されている。
特許文献2には、上記のような構成を有するポリオレフィン系樹脂積層フィルムはマット感があり、かつ、溶剤系インク密着強度とその水性印字にじみ防止性に優れると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-55509号公報
【文献】特開2007-152730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らの検討によれば、従来のポリオレフィン系の樹脂フィルムを用いて作製した包装袋は、特に冬場において、パンを袋に充填する際にパンと袋との接触や擦れ等によって裂けやすい場合があることが明らかになった。袋が裂けてしまうと、製品の生産性が低下してしまう。
そのため、従来のパン用包装フィルムには、特に冬場において、パンを袋に充填する際の袋の裂けの発生を抑制し、パンの充填性や製品の生産性を低下させないという観点から早急な改善が求められていた。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、特に冬場において、パンを袋に充填する際の袋の裂けの発生を抑制でき、パンの充填性や製品の生産性を低下させず、結果的に生産性を向上させることができるパン用包装フィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、引裂き強度および静摩擦係数(tanθ)が特定の範囲にあるフィルムを用いた場合に、パンを袋に充填する際の袋の裂けの発生を抑制でき、パンの充填性や製品の生産性を向上させることができるパン用包装体が得られることを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明によれば、以下に示すパン用包装フィルムおよびパン用包装体が提供される。
【0010】
[1]
パンを包装するためのパン用包装フィルムであって、
ポリオレフィンを含むコア層と、
上記コア層の一方の面に設けられたヒートシール層と、
を備え、
軽荷重引裂き試験機を使用して測定温度23±3℃、測定湿度50±5%RHの条件で測定される、上記パン用包装フィルムのTD方向の引裂き強度が4.0N/mm以上であり、
スリップテスターを使用し、下記方法1(傾斜法)により測定される、上記パン用包装フィルムの上記ヒートシール層側の表面の静摩擦係数(tanθ)が2.0以下であるパン用包装フィルム。
(方法1)
50mm×75mmのサイズに切断した上記パン用包装フィルムを2枚(以下、パン用包装フィルム1および2とする。)準備し、そのうちの1枚の上記パン用包装フィルム1を上記ヒートシール層側が上になるように傾斜板に固定する。次いで、もう1枚の上記パン用包装フィルム2の上記ヒートシール層側とは反対側の表面の中心に底面(サイズが41mm×26mm)が真鍮から構成されている摩擦体を固定し、上記摩擦体の上に、上記摩擦体から上記パン用包装フィルム2にかかる質量が150gとなるように重りを取り付ける。次いで、2枚の上記パン用包装フィルム1、2の上記ヒートシール層側の面同士を重ねる。次いで、上記傾斜板を1°/secの速度で傾斜させ、上部の上記パン用包装フィルム2が滑り出したときの角度θからtanθの値を求める。
[2]
上記[1]に記載のパン用包装フィルムにおいて、
JIS K7127:1999に準拠して、引張試験機を用いて測定温度23±3℃、測定湿度50±5%RH、引張速度5mm/minの条件で測定される、上記パン用包装フィルムのMD方向のヤング率T1とTD方向のヤング率T2との合計値(T1+T2)が700MPa以上1500MPa以下であるパン用包装フィルム。
[3]
上記[1]または[2]に記載のパン用包装フィルムにおいて、
JIS K7127:1999に準拠して、引張試験機を用いて測定温度23±3℃、測定湿度50±5%RH、引張速度5mm/minの条件で測定される、上記パン用包装フィルムのMD方向のヤング率T1が300MPa以上800MPa以下であるパン用包装フィルム。
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか一つに記載のパン用包装フィルムにおいて、
5±2℃、50±5%RHの条件で測定される、上記パン用包装フィルムの衝撃強度が3.0kg・cm以上8.0kg・cm以下であるパン用包装フィルム。
[5]
上記[1]乃至[4]のいずれか一つに記載のパン用包装フィルムにおいて、
JIS Z1707:1997に準拠して、23±2℃、50±5%RHの条件で測定される、上記パン用包装フィルムの突き刺し強度が1.5N以上3.5N以下であるパン用包装フィルム。
[6]
上記[1]乃至[5]のいずれか一つに記載のパン用包装フィルムにおいて、
上記ポリオレフィンがプロピレン系ブロック共重合体を含むパン用包装フィルム。
[7]
上記[6]に記載のパン用包装フィルムにおいて、
上記コア層に含まれる上記プロピレン系ブロック共重合体の含有量が、上記コア層に含まれる上記ポリオレフィンの含有量を100質量%としたとき、50質量%以上100質量%以下であるパン用包装フィルム。
[8]
上記[6]または[7]に記載のパン用包装フィルムにおいて、
JIS K7210に準拠し、230℃、2.16kg荷重の条件で測定される上記プロピレン系ブロック共重合体のメルトフローレート(MFR)が、0.5g/10分以上20g/10分以下であるパン用包装フィルム。
[9]
上記[1]乃至[8]のいずれか一つに記載のパン用包装フィルムにおいて、
上記コア層の上記ヒートシール層が設けられた面とは反対側の面に表面層をさらに備えるパン用包装フィルム。
[10]
上記[9]に記載のパン用包装フィルムにおいて、
上記表面層はホモポリプロピレン、プロピレン系ブロック共重合体およびプロピレンと炭素数が2以上10以下のα-オレフィンとのランダム共重合体から選択される一種または二種以上を含むパン用包装フィルム。
[11]
上記[1]乃至[10]のいずれか一つに記載のパン用包装フィルムにおいて、
上記ヒートシール層は上記コア層の上記一方の面に直接接するように設けられているパン用包装フィルム。
[12]
上記[1]乃至[11]のいずれか一つに記載のパン用包装フィルムにおいて、
上記ヒートシール層がホモポリプロピレンおよびプロピレンと炭素数が2以上10以下のα-オレフィンとのランダム共重合体から選択される一種または二種以上を含むパン用包装フィルム。
[13]
上記[1]乃至[12]のいずれか一つに記載のパン用包装フィルムにおいて、
上記パンが食パンを含むパン用包装フィルム。
[14]
上記[1]乃至[13]のいずれか一つに記載のパン用包装フィルムを用いたパン用包装体。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特に冬場において、パンを袋に充填する際の袋の裂けの発生を抑制でき、パンの充填性や製品の生産性を向上させることができるパン用包装フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る実施形態のパン用包装フィルムの構造の一例を模式的に示した断面図である。
【
図2】本発明に係る実施形態のパン用包装フィルムの構造の一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。なお、文中の数字の間にある「~」は特に断りがなければ、以上から以下を表す。
【0014】
<パン用包装フィルム>
図1および
図2は、本発明に係る実施形態のパン用包装フィルム100の構造の一例を模式的に示した断面図である。
本実施形態に係るパン用包装フィルム100は、パンを包装するためのパン用包装フィルムであって、ポリオレフィンを含むコア層101と、コア層101の一方の面に設けられたヒートシール層103と、を備え、軽荷重引裂き試験機を使用して測定温度23±3℃、測定湿度50±5%RHの条件で測定される、パン用包装フィルム100のTD方向の引裂き強度が4.0N/mm以上であり、スリップテスターを使用し、傾斜法により測定される、パン用包装フィルム100のヒートシール層103側の表面の静摩擦係数(tanθ)が2.0以下である。
(方法1)
50mm×75mmのサイズに切断した本実施形態に係るパン用包装フィルムを2枚(以下、パン用包装フィルム1および2とする。)準備し、そのうちの1枚のパン用包装フィルム1をヒートシール層103側が上になるように傾斜板に固定する。次いで、もう1枚のパン用包装フィルム2のヒートシール層103側とは反対側の表面の中心に底面(サイズが41mm×26mm)が真鍮から構成されている摩擦体を固定し、上記摩擦体の上に、上記摩擦体からパン用包装フィルム2にかかる質量が150gとなるように重りを取り付ける。次いで、2枚のパン用包装フィルム1、2のヒートシール層103側の面同士を重ねる。次いで、上記傾斜板を1°/secの速度で傾斜させ、上部の前記パン用包装フィルム2が滑り出したときの角度θからtanθの値を求める。
【0015】
上述したように、本発明者らの検討によれば、従来のポリオレフィン系の樹脂フィルムを用いて作製した包装袋は、特に冬場において、パンを袋に充填する際にパンと袋との接触や擦れ等によって裂けやすい場合があることが明らかになった。袋が裂けてしまうと、製品の生産性が低下してしまう。
そのため、従来のパン用包装フィルムには、特に冬場において、パンを袋に充填する際の袋の裂けの発生を抑制し、パンの充填性や製品の生産性を低下させないという観点から早急な改善が求められていた。
【0016】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、引裂き強度が上記下限値以上であり、かつ、静摩擦係数(tanθ)が上記上限値以下であるパン用包装フィルム100を用いた場合に、パンを袋に充填する際の袋の裂けの発生を抑制でき、パンの充填性や製品の生産性を向上させることができるパン用包装体が得られることを見出した。
ここで、パン用包装フィルム100を用いた場合に、パンを袋に充填する際の袋の裂けの発生を抑制できる理由は必ずしも明らかではないが、以下の理由が考えられる。
まず、パン用包装フィルム100の引裂き強度を上記下限値以上に制御することによって、パンとの接触や擦れ等に対するパン用包装フィルム100の耐性が高まる。さらに静摩擦係数(tanθ)を上記上限値以下に制御することによって、袋に対するパンの滑り性が向上し、パンを袋の内部へスムーズに充填することが可能となり、その結果、袋を構成するフィルムとパンとの間に生じる摩擦力を低減できる。そして、これらの相乗効果によって、パンと袋との接触や擦れによる袋の裂けの発生を抑制できていると推察される。
すなわち、本実施形態に係るパン用包装フィルム100によれば、引裂き強度および静摩擦係数(tanθ)を一定範囲内に制御することにより、パンを袋に充填する際の袋の裂けの発生を抑制でき、パンの充填性や製品の生産性を向上させることができるパン用包装体を実現できる。
以上から、本実施形態によれば、パンを袋に充填する際の袋の裂けの発生を抑制でき、パンの充填性や製品の生産性を向上させることができるパン用包装体を提供することができる。
【0017】
本実施形態に係るパン用包装フィルム100において、TD方向の引裂き強度は、4.0N/mm以上であるが、パンを袋に充填する際の袋の裂けの発生をより一層抑制できる観点から、4.5N/mm以上であることが好ましく、5.0N/mm以上であることがより好ましく、5.5N/mm以上であることがさらに好ましい。
また、本実施形態に係るパン用包装フィルム100において、TD方向の引裂き強度の上限値は特に限定されないが、例えば、12N/mm以下であり、好ましくは10N/mm以下である。
【0018】
本実施形態に係るパン用包装フィルム100において、ヒートシール層103側の表面の静摩擦係数(tanθ)は2.0以下であるが、パンを袋に充填する際の袋の裂けの発生をより一層抑制できる観点から、1.7以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、0.7以下であることがさらに好ましく、0.5以下であることが特に好ましい。
また、本実施形態に係るパン用包装フィルム100において、ヒートシール層103側の表面の静摩擦係数(tanθ)の下限値は特に限定されないが、例えば0.01以上である。
【0019】
本実施形態において、例えば、(1)コア層101を構成するポリオレフィンの種類や配合割合、(2)ヒートシール層103や表面層105の構成材料や厚み等を適切に調節することにより、パン用包装フィルム100の引裂き強度およびヒートシール層103側の表面の静摩擦係数(tanθ)を上記範囲内に制御することが可能である。
これらの中でも、例えばコア層101を構成するポリオレフィンとしてプロピレン系ブロック共重合体を含むこと、ポリオレフィンとして分子量(MFR)が異なるプロピレン系ブロック共重合体を2種以上用いること、分子量(MFR)が異なるプロピレン系ブロック共重合体の配合割合等が、パン用包装フィルム100の引裂き強度およびヒートシール層103側の表面の静摩擦係数(tanθ)を所望の数値範囲とするための要素として挙げられる。
【0020】
ここで、食パンの耳部は鋭利であるため、食パンを袋に充填する際に食パンの耳部が袋の内面に衝突し、袋の裂けが特に発生しやすい傾向にある。そのため、本実施形態に係るパン用包装フィルム100は食パンを包装するための食パン用包装体を構成するフィルムとして特に好適に用いることができる。
【0021】
本実施形態に係るパン用包装フィルム100において、JIS K7127:1999に準拠して、引張試験機を用いて測定温度23±3℃、測定湿度50±5%RH、引張速度5mm/minの条件で測定されるMD方向のヤング率T1とTD方向のヤング率T2との合計値(T1+T2)は700MPa以上1500MPa以下であることが好ましく、800MPa以上1350MPa以下であることがより好ましく、900MPa以上1250MPa以下であることがさらに好ましく、950MPa以上、1150MPa以下であることが特に好ましい。
MD方向のヤング率T1とTD方向のヤング率T2との合計値(T1+T2)が上記範囲内であると、本実施形態に係るパン用包装フィルム100のコシをより一層良好なものとすることができ、その結果、ヒートシールする際のフィルムの位置ずれ等を抑制でき、シール不良が発生することをより一層抑制することができる。
すなわち、MD方向のヤング率T1とTD方向のヤング率T2との合計値(T1+T2)が上記範囲内であると、本実施形態に係るパン用包装フィルム100の包装適性をより一層良好にすることができる。
このようなMD方向のヤング率T1とTD方向のヤング率T2との合計値(T1+T2)は、例えば、コア層101に含まれるポリオレフィンの種類や含有割合、ヒートシール層103や表面層105の構成材料や厚み等を調整することにより達成できる。
【0022】
また、本実施形態に係るパン用包装フィルム100において、JIS K7127:1999に準拠して、引張試験機を用いて測定温度23±3℃、測定湿度50±5%RH、引張速度5mm/minの条件で測定されるMD方向のヤング率T1が300MPa以上800MPa以下であることが好ましく、350MPa以上700MPa以下であることがより好ましく、400MPa以上650MPa以下であることがさらに好ましく、450MPa以上600MPa以下であることが特に好ましい。
MD方向のヤング率T1が上記範囲内であると、本実施形態に係るパン用包装フィルム100のコシをより一層良好なものとすることができ、その結果、ヒートシールする際のフィルムの位置ずれ等を抑制でき、シール不良が発生することをより一層抑制することができる。
すなわち、MD方向のヤング率T1が上記範囲内であると、本実施形態に係るパン用包装フィルム100の包装適性をより一層良好にすることができる。
このようなMD方向のヤング率T1は、例えば、コア層101に含まれるポリオレフィンの種類や含有割合、ヒートシール層103や表面層105の構成材料や厚み等を調整することにより達成できる。
【0023】
本実施形態に係るパン用包装フィルム100において、パンを袋に充填する際の袋の裂けの発生をより一層抑制できる観点から、5±2℃、50±5%RHの条件で測定される衝撃強度が3.0kg・cm以上8.0kg・cm以下であることが好ましく、4.0kg・cm以上7.0kg・cm以下であることがより好ましく、4.5kg・cm以上6.5kg・cm以下であることがさらに好ましい。
このような衝撃強度は、例えば、コア層101に含まれるポリオレフィンの種類や含有割合、ヒートシール層103や表面層105の構成材料や厚み等を調整することにより達成できる。
【0024】
本実施形態に係るパン用包装フィルム100において、パンを袋に充填する際の袋の裂けの発生をより一層抑制できる観点から、JIS Z1707:1997に準拠して、23±2℃、50±5%RHの条件で測定される突き刺し強度が1.5N以上3.5N以下であることが好ましく、2.0N以上3.5N以下であることがより好ましい。
このような突き刺し強度は、例えば、コア層101に含まれるポリオレフィンの種類や含有割合、ヒートシール層103や表面層105の構成材料や厚み等を調整することにより達成できる。
【0025】
本実施形態に係るパン用包装フィルム100の厚みは特に限定しないが、耐引裂き性、耐衝撃性、水蒸気バリア性、コスト、製袋性、機械的特性、取扱い性、外観、透明性、成形性、軽量性等の所望の目的に応じて任意に設定することができ、特に限定されないが、通常は5μm以上100μm以下であり、好ましくは10μm以上50μm以下であり、より好ましく15μm以上40μm以下である。
パン用包装フィルム100の厚みが上記範囲内であると、耐引裂き性、耐衝撃性、水蒸気バリア性、コスト、製袋性、機械的特性、取扱い性、外観、透明性、成形性、軽量性等のバランスがより優れる。
【0026】
以下、パン用包装フィルム100を構成する各層について説明する。
【0027】
[コア層]
本実施形態に係るコア層101は、例えば、ポリオレフィンを含む樹脂組成物(P)により形成することができる。
【0028】
本実施形態に係るコア層101は単層であってもよいし、樹脂組成物(P)により構成された層が複数積層された構成でもよい。また、本実施形態に係るコア層101は、無延伸であってもよいし、一軸延伸または二軸延伸されていてもよい。
【0029】
また、パン用包装フィルム100において、パン用包装フィルム100の全体の厚みに対するコア層101の厚みの比が、好ましくは0.40以上0.998以下であり、より好ましくは0.50以上0.99以下であり、さらに好ましくは0.55以上0.97以下であり、特に好ましくは0.60以上0.95以下である。
【0030】
(ポリオレフィン)
本実施形態に係る樹脂組成物(P)すなわちコア層101はポリオレフィンを含む。これにより、耐引裂き性、耐衝撃性、耐熱性、水蒸気バリア性、透明性、機械的特性および剛性等の性能バランスに優れたコア層101を得ることが可能となる。
本実施形態に係るポリオレフィンは、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1、4-メチル-ペンテン-1、オクテン-1等のα-オレフィンの単独重合体または共重合体;高圧法低密度ポリエチレン;線状低密度ポリエチレン(LLDPE);高密度ポリエチレン;ポリプロピレン;プロピレンと炭素数が2以上10以下のα-オレフィンとのランダム共重合体;プロピレン系ブロック共重合体;エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA);アイオノマー樹脂等が挙げられる。これらのポリオレフィンは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、パンを袋に充填する際の袋の裂けの発生をより一層抑制できる観点から、本実施形態に係るポリオレフィンはプロピレン系ブロック共重合体を含むことが好ましい。
【0031】
本実施形態に係るプロピレン系ブロック共重合体としては、例えば、プロピレンと炭素数が2以上10以下のα-オレフィン(プロピレンを除く)とのブロック共重合体を用いることができる。α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル・1-ペンテン、1-オクテン等が挙げられる。これらの中でも、耐寒性・剛性のバランスに優れることから、エチレンが好ましい。
【0032】
また、本実施形態に係るプロピレン系ブロック共重合体としては、プロピレンにより構成された重合体部と、エチレンおよび炭素数4~20のα-オレフィンからなる群から選択される一種以上により構成された重合体部とを含む共重合体であることがより好ましい。
炭素数4~20のα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。
本実施形態に係るプロピレン系ブロック共重合体中の、エチレンおよび炭素数4~20のα-オレフィンからなる群から選択される一種以上により構成された重合体部を構成するα-オレフィンとしては、エチレンまたは炭素数4~10のα-オレフィンが好ましく、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセンがより好ましい。これらのα-オレフィンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、本実施形態に係るプロピレン系ブロック共重合体は、プロピレンにより構成された重合体部がプロピレン系ブロック共重合体のマトリックス部であり、エチレンおよび炭素数4~20のα-オレフィンからなる群から選択される一種以上により構成された重合体部がドメイン部である構造であることが好ましい。
【0033】
本実施形態に係るプロピレン系ブロック共重合体中のα-オレフィンの含有量は、耐衝撃性や剛性により一層優れる観点から、1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、2質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上12質量%以下であることがさらに好ましい。
【0034】
本実施形態に係るプロピレン系ブロック共重合体の融点は、得られるパン用包装フィルム100の耐熱性、透明性、機械的特性、剛性、流動性および成形性等のバランスをより一層良好にする観点から、好ましくは150℃以上175℃以下、より好ましくは155℃以上170℃以下、さらに好ましくは160℃以上168℃以下の範囲にある。
【0035】
JIS K7210に準拠し、230℃、2.16kg荷重の条件で測定される本実施形態に係るプロピレン系ブロック共重合体のメルトフローレート(MFR)は、流動性および成形性をより良好にする観点から、好ましくは0.5g/10分以上、より好ましくは1g/10分以上、さらに好ましくは2g/10分以上であり、成形性をより安定化させる観点から、好ましくは20g/10分以下、より好ましくは15g/10分以下、さらに好ましくは12g/10分以下である。
【0036】
本実施形態に係るコア層101を構成するポリオレフィンとしては、JIS K7210に準拠し、230℃、2.16kg荷重の条件で測定されるMFRが0.5g/10分以上5.0g/10分以下のプロピレン系ブロック共重合体1と、JIS K7210に準拠し、230℃、2.16kg荷重の条件で測定されるMFRが5.0g/10分超過20g/10分以下のプロピレン系ブロック共重合体2と、を組み合わせて用いることが好ましい。
また、コア層101中の上記プロピレン系ブロック共重合体1とプロピレン系ブロック共重合体2との含有量の比率は、質量比でプロピレン系ブロック共重合体1/プロピレン系ブロック共重合体2=15/85~90/10であることが好ましく、20/80~85/15であることがより好ましい。これにより、特に低温下における耐破袋性および耐摩擦性をより一層良好にすることができる。
【0037】
本実施形態に係るプロピレン系ブロック共重合体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
本実施形態に係るプロピレン系ブロック共重合体は種々の方法により製造することができる。例えばチーグラー・ナッタ系触媒やメタロセン系触媒等の公知の触媒を用いて製造することができる。
【0039】
本実施形態に係る樹脂組成物(P)すなわちコア層101に含まれるプロピレン系ブロック共重合体の含有量は、パンを袋に充填する際の袋の裂けの発生をより一層抑制できる観点から、コア層101に含まれるポリオレフィンの含有量を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上100質量%以下、より好ましくは70質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは80質量%以上100質量%以下、さらにより好ましくは90質量%以上100質量%以下、特に好ましくは95質量%以上100質量%以下である。
【0040】
本実施形態に係る樹脂組成物(P)すなわちコア層101に含まれるポリオレフィンの含有量は、コア層101の全体を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上100質量%以下、より好ましくは70質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは90質量%以上100質量%以下、特に好ましくは95質量%以上100質量%以下である。これにより、耐引裂き性、耐衝撃性、水蒸気バリア性、製袋性、機械的特性、取扱い性、外観、透明性、成形性、軽量性等のバランスをより良好にすることができる。
【0041】
(その他の成分)
本実施形態に係る樹脂組成物(P)には、必要に応じて、粘着付与剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機または有機の充填剤等の各種添加剤を本実施形態の目的を損なわない範囲で添加してもよい。
【0042】
(樹脂組成物(P)の調製方法)
本実施形態に係る樹脂組成物(P)は、例えば、各成分をドライブレンド、タンブラーミキサー、バンバリーミキサー、単軸押出機、二軸押出機、高速二軸押出機、熱ロール等により混合または溶融・混練することにより調製することができる。
【0043】
[ヒートシール層]
本実施形態に係るパン用包装フィルム100は、ヒートシール性を付与するために、コア層101の一方の面にヒートシール層103を備える。
また、ヒートシール層103は、パン用包装フィルム100のヒートシール性をより良好にする観点から、本実施形態に係るパン用包装フィルム100の最外層に設けられることが好ましい。
【0044】
また、ヒートシール層103は、コア層101の表面上に直接接するように設けられていることが好ましい。これにより、パン用包装フィルム100の製造工程を簡略化することができる。
【0045】
パン用包装フィルム100において、ヒートシール層103の厚みは、好ましくは0.1μm以上10μm以下、より好ましくは0.2μm以上9μm以下、さらに好ましくは0.5μm以上8μm以下、特に好ましくは1μm以上8μm以下である。
ヒートシール層103の厚みが上記下限値以上であることにより、パン用包装フィルム100のヒートシール性をより一層良好にすることができる。
また、ヒートシール層103の厚みが上記上限値以下であることにより、コア層101との接着性が向上し、接着剤を用いなくともコア層101上にヒートシール層103を積層させることが容易となる。
すなわち、コア層101の表面上に直接接するようにヒートシール層103を設けることが容易となるため、パン用包装フィルム100の製造工程を簡略化することができる。
【0046】
パン用包装フィルム100において、一方の面に設けられるヒートシール層103は、単層であることが好ましい。これにより、パン用包装フィルム100の製造工程をより一層簡略化することができる。
【0047】
また、ヒートシール層103は、コア層101の延伸前の状態にあるフィルムと同時に一軸延伸または二軸延伸されてもよい。これにより、共押出し成形法等の成形方法、すなわち一度の成形で作製した積層フィルムを用いて、一軸延伸または二軸延伸されたパン用包装フィルム100を作製することができるため、パン用包装フィルム100の製造工程をより一層簡略化することができる。
【0048】
(ポリオレフィン)
本実施形態に係るヒートシール層103は、例えば、ポリオレフィンを含むポリオレフィン系樹脂組成物(A)により構成される。ヒートシール層103を構成するポリオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1、4-メチル-ペンテン-1、オクテン-1等のα-オレフィンの単独重合体または共重合体;高圧法低密度ポリエチレン;線状低密度ポリエチレン(LLDPE);高密度ポリエチレン;ポリプロピレン;プロピレンと炭素数が2以上10以下のα-オレフィンとのランダム共重合体;エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA);アイオノマー樹脂等が挙げられる。これらのポリオレフィンは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、ヒートシール層103を構成するポリオレフィンとしては、コア層101との接着性や、ヒートシール性等のバランスが優れる点から、ホモポリプロピレンおよびプロピレンと炭素数が2以上10以下のα-オレフィンとのランダム共重合体から選択される少なくとも一種が好ましい。
【0049】
本実施形態に係るプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体は、プロピレンとα-オレフィン(ただし、α-オレフィンはプロピレンを除く)とのランダム共重合体であり、α―オレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等が挙げられる。これらの共重合体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体の中でも、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体、プロピレン・1-ブテンランダム共重合体が好ましい。
【0050】
本実施形態に係るヒートシール層103を構成するポリオレフィンの融点は、好ましくは50℃以上175℃以下、より好ましくは60℃以上170℃以下、さらに好ましくは65℃以上167℃以下の範囲にある。ポリオレフィンの融点が上記下限値以上であると、ヒートシール層103の表面のベタツキを抑制することができ、パン用包装フィルム100の耐ブロッキング性を向上させることができる。
また、ポリオレフィンの融点が上記上限値以下であると、パン用包装フィルム100のヒートシール性をより良好にすることができる。
【0051】
JIS K7210に準拠し、230℃、2.16kg荷重の条件で測定される本実施形態に係るヒートシール層103を構成するポリオレフィンのメルトフローレート(MFR)は、流動性および成形性をより良好にする観点から、好ましくは0.5g/10分以上、より好ましくは1g/10分以上、さらに好ましくは2g/10分以上であり、成形性をより安定化させる観点から、好ましくは20g/10分以下、より好ましくは15g/10分以下、さらに好ましくは10g/10分以下である。
【0052】
本実施形態に係るポリオレフィン系樹脂組成物(A)すなわちヒートシール層103中のポリオレフィンの含有量は、ポリオレフィン系樹脂組成物(A)の全体を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上100質量%以下、より好ましくは70質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは90質量%以上100質量%以下、特に好ましくは95質量%以上100質量%以下である。これにより、コア層101との接着性や、ヒートシール性等のバランスをより良好にすることができる。
【0053】
(その他の成分)
本実施形態に係るヒートシール層103を構成するポリオレフィン系樹脂組成物(A)には、必要に応じて、粘着付与剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機または有機の充填剤等の各種添加剤を本実施形態の目的を損なわない範囲で添加してもよい。
【0054】
(ポリオレフィン系樹脂組成物(A)の調製方法)
本実施形態に係るポリオレフィン系樹脂組成物(A)は、例えば、各成分をドライブレンド、タンブラーミキサー、バンバリーミキサー、単軸押出機、二軸押出機、高速二軸押出機、熱ロール等により混合または溶融・混練することにより調製することができる。
【0055】
[表面層]
本実施形態に係るパン用包装フィルム100は、表面の印刷適性を向上させるために、
図2に示すようにコア層101のヒートシール層103が設けられた面とは反対側の面に表面層105をさらに備えることが好ましい。
また、表面層105は、パン用包装フィルム100の印刷適性をより良好にする観点から、本実施形態に係るパン用包装フィルム100の最外層に設けられることが好ましい。
【0056】
また、表面層105は、コア層101の表面上に直接接するように設けられていることが好ましい。これにより、パン用包装フィルム100の製造工程を簡略化することができる。
【0057】
パン用包装フィルム100において、表面層105の厚みは、好ましくは0.1μm以上10μm以下、より好ましくは0.2μm以上9μm以下、さらに好ましくは0.5μm以上8μm以下、特に好ましくは1μm以上8μm以下である。
表面層105の厚みが上記下限値以上であることにより、パン用包装フィルム100の印刷適性をより一層良好にすることができる。
また、表面層105の厚みが上記上限値以下であることにより、コア層101との接着性が向上し、接着剤を用いなくともコア層101上に表面層105を積層させることが容易となる。
すなわち、コア層101の表面上に直接接するように表面層105を設けることが容易となるため、パン用包装フィルム100の製造工程を簡略化することができる。
【0058】
パン用包装フィルム100において、表面層105は単層であることが好ましい。これにより、パン用包装フィルム100の製造工程をより一層簡略化することができる。
【0059】
また、表面層105は、コア層101の延伸前の状態にあるフィルムと同時に一軸延伸または二軸延伸されてもよい。これにより、共押出し成形法等の成形方法、すなわち一度の成形で作製した積層フィルムを用いて、一軸延伸または二軸延伸されたパン用包装フィルム100を作製することができるため、パン用包装フィルム100の製造工程をより一層簡略化することができる。
【0060】
また、表面層105は、パン用包装フィルム100の印刷適性をより良好にする観点から、表面処理を行ってもよい。具体的には、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、プライマーコート処理、オゾン処理等の表面活性化処理を行ってもよい。
【0061】
(ポリオレフィン)
本実施形態に係る表面層105は、例えば、ポリオレフィンを含むポリオレフィン系樹脂組成物(B)により構成される。表面層105を構成するポリオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1、4-メチル-ペンテン-1、オクテン-1等のα-オレフィンの単独重合体または共重合体;高圧法低密度ポリエチレン;線状低密度ポリエチレン(LLDPE);高密度ポリエチレン;ポリプロピレン;プロピレンと炭素数が2以上10以下のα-オレフィンとのランダム共重合体;プロピレン系ブロック共重合体;エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA);アイオノマー樹脂等が挙げられる。これらのポリオレフィンは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、表面層105を構成するポリオレフィンとしては、コア層101との接着性や、印刷適性等のバランスが優れる点から、ホモポリプロピレン、プロピレン系ブロック共重合体およびプロピレンと炭素数が2以上10以下のα-オレフィンとのランダム共重合体から選択される少なくとも一種が好ましい。
【0062】
本実施形態に係るプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体は、プロピレンとα-オレフィン(ただし、α-オレフィンはプロピレンを除く)とのランダム共重合体であり、α―オレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等が挙げられる。これらの共重合体は、単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体の中でも、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体、プロピレン・1-ブテンランダム共重合体が好ましい。
【0063】
表面層105に用いられるプロピレン系ブロック共重合体としては、例えば、コア層101に用いられる前述したプロピレン系ブロック共重合体と同様のものを好ましく使用できる。プロピレン系ブロック共重合体は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
本実施形態に係る表面層105を構成するポリオレフィンの融点は、好ましくは90℃以上175℃以下、より好ましくは95℃以上170℃以下、さらに好ましくは100℃以上167℃以下の範囲にある。ポリオレフィンの融点が上記下限値以上であると、表面層105の表面のベタツキを抑制することができ、パン用包装フィルム100の耐ブロッキング性を向上させることができる。
【0065】
JIS K7210に準拠し、230℃、2.16kg荷重の条件で測定される本実施形態に係る表面層105を構成するポリオレフィンのメルトフローレート(MFR)は、流動性および成形性を良好にする観点から、好ましくは0.5g/10分以上、より好ましくは1g/10分以上、さらに好ましくは2g/10分以上であり、成形性をより安定化させる観点から、好ましくは20g/10分以下、より好ましくは15g/10分以下、さらに好ましくは10g/10分以下である。
【0066】
本実施形態に係るポリオレフィン系樹脂組成物すなわち表面層105中のポリオレフィンの含有量は、ポリオレフィン系樹脂組成物(B)の全体を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上100質量%以下、より好ましくは70質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは90質量%以上100質量%以下、特に好ましくは95質量%以上100質量%以下である。これにより、コア層101との接着性や、印刷適性等のバランスをより良好にすることができる。
【0067】
(その他の成分)
本実施形態に係る表面層105を構成するポリオレフィン系樹脂組成物(B)には、必要に応じて、粘着付与剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機または有機の充填剤等の各種添加剤を本実施形態の目的を損なわない範囲で添加してもよい。
【0068】
(ポリオレフィン系樹脂組成物(B)の調製方法)
本実施形態に係るポリオレフィン系樹脂組成物(B)は、例えば、各成分をドライブレンド、タンブラーミキサー、バンバリーミキサー、単軸押出機、二軸押出機、高速二軸押出機、熱ロール等により混合または溶融・混練することにより調製することができる。
【0069】
<パン用包装フィルムの製造方法>
本実施形態に係るパン用包装フィルム100は、例えば、コア層101を形成するための樹脂組成物(P)と、ヒートシール層103を形成するためのポリオレフィン系樹脂組成物(A)と、必要に応じて表面層105を形成するためのポリオレフィン系樹脂組成物(B)と、をフィルム状に共押出し成形することにより得ることができる。また、共押出し成形により得た積層フィルムを、公知の一軸延伸法または二軸延伸法を用いて一軸延伸または二軸延伸をおこなってもよい。
成形装置および成形条件としては特に限定されず、従来公知の成形装置および成形条件を採用することができる。成形装置としては、多層T-ダイ押出機あるいは多層インフレーション成形機等を用いることができる。
また、本実施形態に係るパン用包装フィルム100は、コア層101とヒートシール層103と必要に応じて表面層105とをそれぞれ別々に成形し、これらを積層して加熱成形することによっても得ることができる。
【0070】
本実施形態に係るパン用包装フィルム100はパン用包装体を構成するフィルムとして好適に用いることができる。本実施形態に係るパン用包装体は、例えば、パンを収容することを目的として使用される包装袋自体または当該袋にパンを収容したものである。また、本実施形態に係るパン用包装体は用途に応じその一部にパン用包装フィルム100を使用してもよいし、パン用包装体の全体にパン用包装フィルム100を使用してもよい。
【0071】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0072】
以下、本実施形態を、実施例・比較例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0073】
1.原料
実施例および比較例で用いた原料について以下に示す。
【0074】
(1)プロピレン系ブロック共重合体
bPP1:プロピレン系ブロック共重合体(MFR:6.8g/10分、融点:164℃、密度:910kg/m3、プライムポリマー社製)
bPP2:プロピレン系ブロック共重合体(MFR:2.5g/10分、融点:164℃、密度:910kg/m3、プライムポリマー社製)
bPP3:プロピレン系ブロック共重合体(MFR:3.8g/10分、融点:132℃/162℃、密度:910kg/m3、プライムポリマー社製)
bPP4:プロピレン系ブロック共重合体(MFR:2.6g/10分、融点:164℃、密度:910kg/m3、プライムポリマー社製)
bPP5:プロピレン系ブロック共重合体(MFR:8.7g/10分、融点:160℃)
(2)プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体
rPP1:プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(MFR:7g/10分、融点:133℃、密度:910kg/m3)
rPP2:プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(MFR:7.8g/10分、融点:131℃、密度:910kg/m3)
rPP3:プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(融点:138℃)
rPP4:プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(メタロセン触媒を用いた重合体、MFR:10g/10分、融点:118℃)
(3)ホモポリプロピレン
hPP1:ホモプロピレン(MFR:6.8g/10分、融点:162℃、密度910kg/m3)
(4)ポリエチレン
PE1:線状低密度ポリエチレン(MFR:2.3g/10分、融点:126℃、密度937kg/m3)
(5)ブチレン・プロピレン共重合体
BPR1:MFR:9g/10分、融点:58℃
BPR2:MFR:9g/10分、融点:100℃
(6)添加剤
AB:スリップ剤含有アンチブロッキング剤
【0075】
2.測定および評価方法
(1)プロピレン系ブロック共重合体のMFR
JIS K7210に準拠し、230℃、2.16kg荷重の条件で測定した。
【0076】
(2)プロピレン系ブロック共重合体の融点
DSC(示差走査熱量計)を用いて得られた、プロピレン系ブロック共重合体のDSC曲線の最大融解ピークの温度を融点とした。
【0077】
(3)ヤング率
実施例および比較例で得られたパン用包装フィルムから、流れ方向(MD)及び幅方向(TD)にそれぞれ短冊状の試験片(長さ:200mm、幅:15mm)をそれぞれ切り出した。
次いで、JIS K7127:1999に準拠して、引張試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225)を用いて、測定温度23±3℃、測定湿度50±5%RH、引張速度(クロスヘッドスピード)5mm/min、チャック間距離100mmの条件で各試験片のヤング率をそれぞれ測定し、実施例および比較例で得られたパン用包装フィルムのMD方向のヤング率T1およびTD方向のヤング率T2とした。
【0078】
(4)衝撃強度
実施例および比較例で得られたパン用包装フィルムから、100mm幅の試験片をそれぞれ切り出した。次いで、東洋精機製作所社製のフィルムインパクトテスターを用いて、5±2℃、50±5%RHの雰囲気下で、先端形状が0.5インチ径の半球により各試験片の衝撃強度をそれぞれ測定した。
【0079】
(5)突き刺し強度
実施例および比較例で得られたパン用包装フィルムから、幅60mm、長さ200~300mmの試験片をそれぞれ切り出した。次いで、オリエンテック社製のテンシロンRTC-1225を用いて、JIS Z1707:1997に準拠して、23±2℃、50±5%RHの条件で測定した。
【0080】
(6)引裂き強度
東洋精機製作所社製の軽荷重引裂き試験機を使用して、測定温度23±3℃、測定湿度50±5%RHの条件で、実施例および比較例で得られたパン用包装フィルムのTD方向の引裂き強度をそれぞれ測定した。
【0081】
(7)静摩擦係数(tanθ)
スリップテスターを用いて、下記方法1(傾斜法)により、実施例および比較例で得られたパン用包装フィルムのヒートシール層側の表面の静摩擦係数(tanθ)をそれぞれ測定した。
(方法1)
50mm×75mmのサイズに切断したパン用包装フィルムを2枚(以下、パン用包装フィルム1および2とする。)準備し、そのうちの1枚の上記パン用包装フィルム1をヒートシール層側が上になるように傾斜板に固定した。次いで、もう1枚のパン用包装フィルム2のヒートシール層側とは反対側の表面の中心に底面(サイズが41mm×26mm)が真鍮から構成されている摩擦体を固定した。次いで、上記摩擦体の上に、上記摩擦体から上記パン用包装フィルム2にかかる質量が150gとなるように重りを取り付けた。次いで、2枚のパン用包装フィルム1、2のヒートシール層側の面同士を重ねた。次いで、上記傾斜板を1°/secの速度で傾斜させ、上部のパン用包装フィルム2が滑り出したときの角度θからtanθの値を求めた。
【0082】
(8)パンの充填性評価
実施例および比較例で得られたパン用包装フィルムを用いて、ヒートシール層が袋の内側になるようにして縦12cmm×横12cm×高さ22cmの大きさの底部ガゼット袋を作製した。次いで、上記ガセット袋を開口させて保持し、市販の5枚切りの食パンを、上下ヒーターを有するオーブントースターで、1000Wの電力で3分間焼いて5枚重ねて揃えた。5枚重ねた食パンの大きさを測定したところ縦11.5cm×横10.5cm×高さ13cmであった。次に上記ガセット袋の重ね合わせた食パンを開口上部から一度に落とし入れた。そのときのガセット袋の裂けの有無により評価した。
○:袋の裂けが発生しない
×:袋の裂けが発生する
【0083】
[実施例1~6および比較例1~4]
表1および2に示す層構成で各層を共押出成形することでパン用包装フィルムをそれぞれ作製し、各評価をおこなった。共押出成形条件は以下のとおりである。
多層押出成形機:60mmφ多層T-ダイ押出成形機(L/D=27、スクリュー精機株式会社製)
押出設定温度:200~270℃、加工速度:34m/min
【0084】
【0085】
【0086】
実施例のパン用包装フィルムを用いた場合、パンを袋に充填する際の袋の裂けの発生を抑制できた。すなわち、実施例のパン用包装フィルムを用いた場合、パンの充填性や製品の生産性を向上させることができることがわかった。
【符号の説明】
【0087】
100 パン用包装フィルム
101 コア層
103 ヒートシール層
105 表面層