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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】水中油型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/37 20060101AFI20230704BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20230704BHJP
   A61K 8/894 20060101ALI20230704BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20230704BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20230704BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20230704BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
A61K8/37
A61K8/06
A61K8/894
A61K8/81
A61Q1/00
A61K8/891
A61K8/39
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018145176
(22)【出願日】2018-08-01
(65)【公開番号】P2020019743
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】松藤 陽子
(72)【発明者】
【氏名】秦 英夫
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-138099(JP,A)
【文献】国際公開第2004/075621(WO,A1)
【文献】Brightening Eye Concentrate,ID 5210509,Mintel GNPD[online],2017年11月,[検索日2022.06.29],URL,https://www.portal.mintel.com
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中自己分散型架橋型シリコーンエラストマー2~10質量%と、
HLBが12.5以上であるノニオン界面活性剤と、
乳化能を有する水溶性高分子と、
25℃における動粘度が20mm/s以下であるシリコーン油10~40質量%と、
乳化助剤としてHLBが6以下であるシリコーン系界面活性剤0.01~0.3質量%と、
水系増粘剤0.05~0.3質量%と、
を含み、
前記水中自己分散型架橋型シリコーンエラストマーが(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマーであり、
前記水溶性高分子が、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体であり、
前記ノニオン界面活性剤と前記水溶性高分子の合計含有量が0.2~1質量%であり、
25℃における動粘度が10000mPa・s以下である、水中油型乳化化粧料。
【請求項2】
前記ノニオン界面活性剤及び前記水溶性高分子を共に含み、前記ノニオン界面活性剤の含有量が0.3質量%以下である、請求項に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項3】
前記水系増粘剤がカルボキシビニルポリマーを含む、請求項1または2に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項4】
前記カルボキシビニルポリマーの含有量が0.05~0.3質量%である、請求項に記載の水中油型乳化化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水中油型乳化化粧料に関し、詳しくは、従来の良好な使用感(べたつきやぬるつきがない)や凹凸補正効果に加え、保存安定性に優れ、低粘度で化粧のりにも優れた水中油型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
良好な使用感(べたつきやぬるつきがない)や凹凸補正といった効果が得られる化粧料として、水中油型乳化化粧料が知られており、例えば特許文献1には、使用感に優れ、かつ保存安定性にも優れた水中油型乳化化粧料として、架橋型メチルポリシロキサンを配合した水中油型乳化皮膚化粧料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5588164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、架橋型メチルポリシロキサン等、従来の架橋型シリコーンエラストマーを配合した水中油型乳化化粧料は、架橋型シリコーンエラストマー自身に水に対する分散性がないことから、安定に分散、配合するためには親水性部分と疎水性部分とを有する界面活性剤を一定量以上配合する必要があった。
また良好に分散した場合であっても、時間経過と共に沈降や凝集が懸念されることから、あえて粘性を持たせて高粘度の水中油型乳化化粧料とすることで、良好な保存安定性を付与していた。
【0005】
上記に対し、本発明者らは、低粘度であっても保存安定性に優れた水中油型乳化化粧料が得られれば、従来の良好な使用感や凹凸補正効果に加え、使用感がさらに改善され、化粧のりにも優れる化粧料が得られるものと考えた。すなわち本発明は、保存安定性に優れ、低粘度で化粧のりにも優れた水中油型乳化化粧料を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、水中自己分散型架橋型シリコーンエラストマーを用いることにより、低粘度であっても保存安定性に優れた水中油型乳化化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は下記の構成からなるものである。
<1> 水中自己分散型架橋型シリコーンエラストマー2~10質量%と、HLBが12.5以上であるノニオン界面活性剤及び乳化能を有する水溶性高分子の少なくともいずれか一方と、25℃における動粘度が20mm/s以下であるシリコーン油と、を含み、25℃における動粘度が10000mPa・s以下である水中油型乳化化粧料。
<2> 前記水中自己分散型架橋型シリコーンエラストマーが、親水性基としてポリエチレングリコールを含む、前記<1>に記載の水中油型乳化化粧料。
<3> 前記水中自己分散型架橋型シリコーンエラストマーが、(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマーである、前記<1>又は<2>に記載の水中油型乳化化粧料。
<4> 前記水溶性高分子が、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体である、前記<1>~<3>のいずれか1に記載の水中油型乳化化粧料。
<5> 前記ノニオン界面活性剤及び前記水溶性高分子を共に含み、前記ノニオン界面活性剤の含有量が0.3質量%以下である、前記<1>~<4>のいずれか1に記載の水中油型乳化化粧料。
<6> 前記シリコーン油の含有量が10~40質量%である、前記<1>~<5>のいずれか1に記載の水中油型乳化化粧料。
<7> さらに水系増粘剤を含む、前記<1>~<6>のいずれか1に記載の水中油型乳化化粧料。
<8> 前記水系増粘剤がカルボキシビニルポリマーを含む、前記<7>に記載の水中油型乳化化粧料。
<9> さらに乳化助剤としてHLBが6以下であるシリコーン系界面活性剤を含む、前記<1>~<8>のいずれか1に記載の水中油型乳化化粧料。
<10> 前記シリコーン系界面活性剤の含有量が0.01~0.3質量%である、前記<9>に記載の水中油型乳化化粧料。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低粘度で保存安定性に優れた水中油型乳化化粧料を得ることができる。そのため、従来の良好な使用感や凹凸補正効果に加え、使用感がさらに改善され、化粧のりにも優れた化粧料を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<<水中油型乳化化粧料>>
本発明に係る水中油型乳化化粧料(以下、単に「化粧料」と称することがある。)は、水中自己分散型架橋型シリコーンエラストマー(以下、単に「シリコーンエラストマー」と称することがある。)2~10質量%と、HLBが12.5以上であるノニオン界面活性剤及び乳化能を有する水溶性高分子の少なくともいずれか一方と、25℃における動粘度が20mm/s以下であるシリコーン油と、を含み、25℃における動粘度が10000mPa・s以下であることを特徴とする。
【0010】
<水中自己分散型架橋型シリコーンエラストマー>
本発明における水中自己分散型架橋型シリコーンエラストマー(以下「シリコーンエラストマー」とも称する。)は親水性基を十分に有しており、分散剤等の存在なしに、エラストマー単体で水中で分散する(水中自己分散する)ことができればよく、適宜分子設計することが可能である。
従来の架橋型シリコーンエラストマーを用いた化粧料では、保存安定性の観点から25℃における動粘度は通常20000mPa・s以上であることが一般的であった。しかし、本発明におけるシリコーンエラストマーを用いることにより、25℃における動粘度を10000mPa・s以下としても、十分な分散性と保存安定性(長期的な分散性)を実現することができるようになる。
化粧料の粘度は操作性や使用感から10000mPa・s以下が好ましい。一方、化粧料の良好な使用性や付着性から極度に粘度が低いことは好ましくなく、2000mPa・s以上が好ましく、3000mPa・s以上がより好ましい。
【0011】
シリコーンエラストマーは一般的にシリコーン油に練り込まれた状態で使用され、一般的にその濃度は10~40質量%程度である。本発明におけるシリコーンエラストマーの水中での分散性は以下の方法で評価している。
適宜分散するシリコーン油に練り込まれた状態のシリコーンエラストマーペースト3gを30gのイオン交換水に添加し、1分間振とう・撹拌後、3分経過後も目視で観測する方法で分散性の評価を行う。この方法で、上部に塊状の浮遊物が観測されず、水部が白濁してシリコーン油およびシリコーンエラストマーが明らかに分散していることが確認できるものを水中自己分散性があると判断する。本発明ではこのような水中自己分散性を有しているシリコーンエラストマーを使用することが必須である。
【0012】
シリコーンエラストマーとしては、例えばシリコーン化合物と親水性モノマーとの共重合体が挙げられる。また、親水性基としては、例えばポリエーテル基やグリセリル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
シリコーンエラストマーにおける親水性基としては、両親媒性のシリコーン化合物を作製する際に一般的に用いられるものであれば特に制限はないが、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)ポリグリセリン等が挙げられ、中でもポリエチレングリコールを含むことが好ましい。親水性基は1種のみを含んでも複数種を含んでいてもよい。
【0014】
シリコーン化合物と親水性モノマーとの共重合体としては、例えば、下記一般式(I)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、下記一般式(II)で表されるポリオキシアルキレン化合物を、ヒドロシリル化反応用触媒の存在下に反応させて得られた架橋型オルガノポリシロキサンが挙げられる。
SiO(4-a-b)/2 (I)
(式中、Rは、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、アルケニル基を有しない、置換又は非置換で炭素数1~30の1価炭化水素基である。Rは、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、水素原子または炭素数1~30のアルキル基である。a及びbはそれぞれ、1.0≦a≦2.5、0.001≦b≦1.2であって、1.0≦a+b≦2.6を満たす正数である。)
2c-1O(CO)(CO)2c-1 (II)
(式中、cは2~6の整数であり、d及びeはそれぞれ5≦d≦200、0≦e≦200を満たす整数である。)
【0015】
架橋型オルガノポリシルオキサンが十分な親水性を有するために、架橋型オルガノポリシロキサン全体に対するポリオキシエチレン単位(CO)の割合は、好ましくは20~50wt%であり、より好ましくは30~50wt%である。
【0016】
一般式(I)における、Rの例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の飽和脂環式炭化水素基;フェニル基、トリル基等のアリール基;トリフロロプロピル基、ノナフロロヘキシル基、ヘプタデシルフロロデシル基等のフッ素置換アルキル基などを挙げることができる。一般式(I)のRにおけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等を挙げることができる。
【0017】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよいが、重合反応を円滑に進めるためには直鎖状であることが好ましい。
【0018】
一般式(II)中、dはより好ましくは5≦d≦100である。eはより好ましくは5≦e≦100である。
【0019】
より具体的には、シリコーンエラストマーとして、(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマーがより好ましい。
【0020】
シリコーンエラストマーは十分な親水性基を有していることにより、分散剤を用いることなく水中への分散が可能となる。そのため、化粧料に対する分散剤の配合は必ずしも必要ではなく、分散剤を配合するとしても従来と比して少量で足りることから、低粘度であっても分散性や保存安定性(長期的な分散性)に優れた水中油型乳化化粧料を得ることができる。
【0021】
化粧料において、シリコーンエラストマーを配合することにより良好な使用感や凹凸補正効果が得られる。ここで本発明では、分散剤の未配合又は少量の配合に付随して、シリコーンエラストマーを従来と比して多く配合することができることから、それら良好な使用感や凹凸補正効果に加え、使用感のさらなる改善や非常に優れた化粧のりの実現が可能となる。
また、本発明におけるシリコーンエラストマーを用いることにより、グリセリン等のべたつきを助長するような保湿剤を高配合した場合においても、化粧料全体としてべたつくことなく、上記効果を得ることができる。
【0022】
化粧料に対するシリコーンエラストマーの含有量を2質量%以上とすることにより、良好な使用感、凹凸補正効果、及び化粧のりが得られ、特に化粧料がファンデーションである場合には、よれを防止したり、肌への付きを良くすることができる。シリコーンエラストマーの含有量は3質量%以上がより好ましい。
一方、シリコーンエラストマーの過剰な含有は、使用性が著しく重くなることから、その含有量は10質量%以下である。
【0023】
<ノニオン界面活性剤、水溶性高分子>
HLBが12.5以上であるノニオン界面活性剤及び乳化能を有する水溶性高分子はいずれも、分散性や乳化性を向上させる成分であり、シリコーンエラストマーのさらに良好な分散性にも寄与する。ノニオン界面活性剤のHLBは14以上がより好ましい。
【0024】
HLBとは水と油への親和性の度合いを表し、HLBが12.5以上であるノニオン界面活性剤を配合することにより、化粧料が水中油型となる。ノニオン界面活性剤はHLBが12.5以上であり化粧料に一般的に用いられるものであれば特に限定されないが、例えば、グリセリン又はポリグリセリン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン(POE)ソルビタン脂肪酸エステル類、POEソルビット脂肪酸エステル類、POEグリセリン脂肪酸エステル類、POE脂肪酸エステル類、POEアルキルエーテル類、POEアルキルフェニルエーテル類、POE・ポリオキシプロピレン(POP)アルキルエーテル類、POEヒマシ油又はPOE硬化ヒマシ油、POE蜜ロウ・ラノリン誘導体、アルカノールアミド類、POEプロピレングリコール脂肪酸エステル類、POEアルキルアミン、POE脂肪酸アミド、POE変性シリコーン、POE・POP変性シリコーン等が挙げられる。これらの中でも特にPOEヒマシ油又はPOE硬化ヒマシ油が好ましい。これらは1種を用いても複数種を用いてもよく、複数種のノニオン界面活性剤を用いる際には、各ノニオン界面活性剤のHLBの値の加重平均が、ノニオン界面活性剤全体のHLBの値となる。
【0025】
乳化能を有する水溶性高分子も化粧料に一般的に用いられるものであれば特に限定されないが、例えば、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体が挙げられる。具体的にはLubrizol社製のPemulen(登録商標)TR-1、Pemulen(登録商標)TR-2(いずれも(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー)などが挙げられる。
【0026】
化粧料は、前記HLBが12.5以上であるノニオン界面活性剤及び乳化能を有する水溶性高分子の少なくともいずれか一方を含めばよく、ノニオン界面活性剤及び水溶性高分子を共に含むことがより好ましい。
前記ノニオン界面活性剤の含有量は0.3質量%以下が使用性の点から好ましく、0.2質量%以下がより好ましい。
また、ノニオン界面活性剤及び水溶性高分子の合計の含有量は安定性の確保と使用性が良好な粘度域(2000~10000mPa・s)を両立するという観点から0.2質量%以上が好ましく、0.25質量%以上がより好ましい。また、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。
【0027】
<シリコーン油>
化粧料は、前記シリコーンエラストマーに加えて、油分を含むことが、化粧料を塗布した皮膚を保護する点から好ましく、シリコーンエラストマーと組成が近く、乳化性をより向上させると共に、シリコーンエラストマーのさらに良好な分散性に寄与することからシリコーン油を含むことがより好ましい。シリコーン油としては、べたつきの少ない化粧料とできることから、25℃における動粘度が20mm/s以下のシリコーン油がさらに好ましい。
【0028】
シリコーン油の含有量は上記効果を得られる点から10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましい。また、過剰な配合は安定性が低下し使用性も油っぽくなることから、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
【0029】
シリコーン油としては、揮発性・不揮発性いずれのものでもよく、化粧料に一般的に用いられるものであれば特に限定されないが、例えばメチルポリシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、デカメチルポリシロキサン、ドデカメチルポリシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンポリシロキサン、シクロテトラジメチルシロキサン、シクロペンタジメチルシロキサン等の直鎖状または環状のポリシロキサンが挙げられ、これらは1種を用いても複数種を用いてもよい。
【0030】
また、シリコーン油以外のその他の油分を含んでいてもよく、例えば、油脂、ロウ類、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、合成エステル油、天然エステル油等が挙げられる。また、日焼け防止を目的として、紫外線吸収剤としての極性油(油溶性紫外線吸収剤)を用いることも好ましい。
【0031】
油溶性紫外線吸収剤としては、例えばオクチルシンナメート、エチル-4-イソプロピルシンナメート、エチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、メチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソプロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、オクチルメトキシシンナメート、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメート、シクロヘキシル-p-メトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート等の桂皮酸系紫外線吸収剤が挙げられる。
【0032】
シリコーン油および油溶性紫外線吸収剤の合計の含有量は40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。また、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましい。
また、それ以外の油分を含む場合には、シリコーン油、油溶性紫外線吸収剤、及びそれ以外の油分の合計の含有量が上記範囲であることが好ましい。
【0033】
<水系増粘剤>
化粧料は、粘度を一定値以上に調整することができ、かつ安定性が向上する点から、さらに水系増粘剤を含有することが好ましく、化粧料の粘度を好ましくは2000mPa・s以上、より好ましくは3000mPa・s以上とすることができる。
【0034】
水系増粘剤は、化粧料として一般的に用いられているものであれば特に限定されないが、例えばカルボキシビニルポリマーがさっぱりした使用性の点から好ましい。またその他に、例えば下記に示す水系増粘剤が挙げられるが、これらは1種を用いても、複数種を用いてもよい。
【0035】
グアーガム、キサンタンガム、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子;2-アクリルアミド-2-プロパンスルホン酸(アクリロイルジメチルタウリン酸)又はその塩(AMPS構造)を構成単位として有する重合体及び/又は共重合体(架橋重合体含む)等のタウレート系高分子系増粘剤;アクリレート系合成高分子系増粘剤;その他各種増粘剤等を使用することができる。
【0036】
タウレート系高分子系増粘剤としては、例えば、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ベヘネス-25)クロスポリマー(Aristoflex(登録商標) HMB、クラリアントジャパン社)、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマー(Aristoflex(登録商標) AVC、クラリアントジャパン社)、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/アクリル酸カルボキシルエチル)クロスポリマー(Aristoflex(登録商標) TAC、クラリアントジャパン社)、ポリアクリレートクロスポリマー-11(Aristoflex(登録商標) Velvet、クラリアントジャパン社)、(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)クロスポリマー、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)コポリマー(SEPINOV EMT10ピノブ、SEPPIC社)、(アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリン/ジメチルアクリルアミド)クロスポリマー(SEPINOV P88、SEPPIC社)、(アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)コポリマー(SIMULGEL EG、SEPPIC社)、(アクリロイルジメチルタウリンナトリウム/メタクリルアミドラウリン酸)コポリマー(AMO-51、大東化成工業社)、及び(アクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム/アクリル酸)コポリマー(アキュダインSCP、ダウケミカル社)等を使用することができる。 アクリレート系合成高分子系増粘剤としては、例えば、(アクリレート/メタクリル酸ステアレス-20)共重合体(ACULYN(登録商標)22、ダウケミカル社)、(アクリレーツ/C10-30アルキルアクリレート)クロスポリマー(PEMULEN(登録商標)TR-1、PEMULEN(登録商標)TR-2、Lubrizol社)等を使用することができる。
その他各種増粘剤としては、例えば、アラビアガム、カラギーナン、カラヤガム、トラガカントガム、キャロブガム、クインスシード(マルメロ)、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、ペクチン酸ナトリウム、アラギン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルメチルエーテル(PVM)、PVP(ポリビニルピロリドン)、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ローカストビーンガム、グアガム、タマリントガム、ジアルキルジメチルアンモニウム硫酸セルロース、キサンタンガム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ベントナイト、ヘクトライト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(ビーガム)、ラポナイト、無水ケイ酸等を使用することができる。
【0037】
化粧料における水系増粘剤の好ましい含有量は、用いる水系増粘剤の種類によって異なる。水系増粘剤として、例えばカルボキシビニルポリマーを用いる場合、その含有量は0.05~0.3質量%が好ましい。
【0038】
<乳化助剤>
化粧料は、乳化性をより向上するための乳化助剤をさらに含有することが好ましい。
乳化助剤としては、シリコーン油に相溶するHLBが6以下である両親媒性の成分が好ましく、HLBが6以下であるシリコーン系界面活性剤がより好ましい。HLBが6以下であるシリコーン系界面活性剤としては、ポリエーテル変性シリコーン、アルキル・ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、アルキル・ポリグリセリン変性シリコーンなどが挙げられる。乳化助剤は1種を用いても複数種を用いてもよい。
【0039】
乳化助剤としてHLBが6以下であるシリコーン系界面活性剤を用いる場合、その含有量は0.01質量%以上とすることが乳化性をより向上できることから好ましく、0.03質量%以上がより好ましい。一方、過剰な配合は、化粧料が油中水型乳化化粧料となるおそれがあることから、0.5質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましい。
【0040】
<その他成分>
化粧料には、上述した各成分の他、本発明の効果を損なわない範囲において、任意のその他の成分を含有することができる。
その他の成分としては、例えば、保湿剤、pH調整剤、中和剤、酸化防止剤、アルコール類、防腐剤、抗菌剤、薬剤、(植物)抽出液、香料、色素、上述した油溶性紫外線吸収剤以外の紫外線吸収剤等が挙げられ、これらは従来一般的に用いられているものを、一般的な配合量で使用することができる。
【0041】
保湿剤としては、グリセリン、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール、アミノ酸、核酸、コラーゲン、エラスチン等のタンパク質、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸等のムコ多糖類等が挙げられる。
pH調整剤としては、乳酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、dl-リンゴ酸、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等が挙げられる。
酸化防止剤としては、アスコルビン酸、α-トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等が挙げられる。
アルコール類としてエチルアルコールを用いることができる。
防腐剤、抗菌剤としては、パラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール、安息香酸、サリチル酸、石炭酸、ソルビン酸、パラクロルメタクレゾール、ヘキサクロロフェン、塩化ベンザルコニウム、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニリド、感光素等が挙げられる。
【0042】
<<製造方法>>
本発明に係る水中油型乳化化粧料は、例えば下記の方法により製造することができる。
配合成分のうち、油相成分(疎水性粉体や架橋型シリコーンエラストマーを含む)をあらかじめホモミキサーにより混合分散させることで粉体分散液を得ておき、得られた粉体分散液を、水相成分に対して添加しながらホモミキサーで混合、乳化を行う。この際、生成する乳化粒子より大きい粒子径をもつ粉体粒子が存在すると、ホモミキサー処理により粉体の一部が油相から出て凝集物を形成してしまうので、粉体の平均粒子径は乳化粒子径より小さくすることが好ましいが、分散液を得る条件において、攪拌条件を過酷にする、あるいは長時間にするなどの方法で分散粉末の粒子径を十分小さくし、乳化粒子径よりも十分小さい破砕粉末を得ることができる。
【0043】
油相成分、水相成分には、本発明の効果を損なわない範囲において、通常化粧料に用いられる各種成分、例えば上述した保湿剤、紫外線吸収剤、pH調整剤、中和剤、酸化防止剤、アルコール類、防腐剤、抗菌剤、薬剤、抽出液、香料、色素等を配合することができる。
【0044】
<<用途>>
本発明に係る水中油型乳化化粧料の製品形態は任意であり、例えば、化粧水、乳液、クリーム等のフェーシャル化粧料;化粧下地、ファンデーション、口紅、アイシャドー、チーク、アイライナー、マスカラ、サンスクリーン等のメーキャップ化粧料;ボディー化粧料;芳香化粧料;等に用いることが好ましく、中でも、ファンデーションなどのベースメーキャップの化粧のりを向上させるという観点から、化粧下地や乳液などベースメーキャップ製品の前に使用される化粧料がより好ましい。
【実施例
【0045】
以下に試験例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
なお、各成分の配合量を示す「%」とは「質量%」を意味する。
【0046】
<<実施例1~8及び比較例1~5>>
<評価方法>
得られた水中油型乳化化粧料の粘度、保存安定性、使用感および固形パウダーファンデーションの化粧のりの評価を行った。
評価方法はそれぞれ下記に示すとおりであり、結果を表2及び3に示す。
【0047】
(動粘度)
水中油型乳化化粧料の粘度はShibaura system社製Digital Vismetron VDA2を用いて、ローター回転数を12rpmすることにより、25℃における動粘度(mPa・s)を測定した。
評価基準は以下のとおりである。
○:動粘度が10000mPa・s以下である。
×:動粘度が10000mPa・s超である。
【0048】
(保存安定性)
水中油型乳化化粧料を製造した後50℃で1か月間静置し、その外観変化を目視により観察した。
評価基準は以下のとおりである。
◎:油分もしくはエラストマー成分の分離が見られない。
○:乳化物表面に軽微な油分もしくはエラストマー成分の分離が見られる。
×:著しい油分もしくはエラストマー成分の分離が見られる。
【0049】
(使用感)
化粧品専門パネル5名により、水中油型乳化化粧料を顔に塗布し、べたつき及びぬるつきに対して、悪い:1点、やや悪い:2点、普通:3点、やや良い:4点、良い:5点、とし、その平均点を用いて評価を行った。評価基準は以下のとおりである。
◎:平均点が4.5以上、
○:平均点が3.5以上4.5未満、
△:平均点が2.5以上3.5未満、
×:平均点が1.0以上2.5未満以下。
【0050】
(化粧のり)
下記表1に示す処方及び製造方法で固形パウダーファンデーションを作製した。化粧品専門パネルにより、水中油型乳化化粧料を顔に塗布後、上記で得た固形パウダーファンデーションを顔に塗布した。当該固形パウダーファンデーションの化粧のりに対して、悪い:1点、やや悪い:2点、普通:3点、やや良い:4点、良い:5点、とし、その平均点を用いて評価を行った。評価基準は以下のとおりである。なお、化粧のりとは、よれを防止したり、肌への付きの良さ・均一さのことを意味する。
◎:平均点が4.5以上、
○:平均点が3.5以上4.5未満、
△:平均点が2.5以上3.5未満、
×:平均点が1.0以上2.5未満
【0051】
【表1】
【0052】
・製造方法
上記処方例における粉末部を撹拌混合した後、均一に加熱溶解した上記処方例における油相部を加えて混合し、パルペライザーにて粉砕した。得られた粉末を中皿へ充填し、加圧成型することにより、固形パウダーファンデーションを得た。
【0053】
<水中油型乳化化粧料の製造>
表2及び3に記載のエタノールを除く水相成分を加温溶解し、常温に戻した後にエタノールを添加した。そして予めホモミキサーで混合分散した油相成分を添加し、ホモジナイザーで乳化させることで、水中油型乳化化粧料を製造した。
表2及び3中、(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマーが水中自己分散型架橋型シリコーンエラストマーであり、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.)(HLB=14)(=ニッコールHCO-60(日光ケミカル社製))及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(20E.O.)(HLB=10.5)(=ニッコールHCO-20(日光ケミカル社製))がそれぞれノニオン界面活性剤、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(=Pemulen(登録商標)TR-2(Lubrizol社))が乳化能を有する水溶性高分子、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン及びメチルポリシロキサン(6cs)が25℃における動粘度が20mm/s以下であるシリコーン油、カルボキシビニルポリマーが水系増粘剤、PEG-10ジメチコン(=KF-6017(信越化学))がHLBが6以下であるシリコーン系界面活性剤、にそれぞれ該当する。なお、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.)及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(20E.O.)を0.15質量%ずつ含む比較例におけるノニオン界面活性剤のHLBは、その加重平均から12.25である。
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
<<実施例9及び10>>
表4又は5に記載のエタノールを除く水相成分を加温溶解し、常温に戻した後にエタノールを添加した。そして予めホモミキサーで混合分散した油相成分を添加し、ホモジナイザーで乳化させた。その後、粉末部を添加し、再度ホモジナイザーで分散させて、本発明の水中油型乳化化粧料を製造した。
表4及び5中、(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマーが水中自己分散型架橋型シリコーンエラストマーであり、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(100E.O.)(HLB=16.5)(=ニッコールHCO-100(日光ケミカル社製))及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.)(HLB=14)(=ニッコールHCO-60(日光ケミカル社製))がそれぞれノニオン界面活性剤、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(=Pemulen(登録商標)TR-2(Lubrizol社))が乳化能を有する水溶性高分子、メチルポリシロキサン(6cs)及びジフェニルシロキシフェニルトリメチコンが25℃における動粘度が20mm/s以下であるシリコーン油、カルボキシビニルポリマーが水系増粘剤、PEG-10ジメチコン(=KF-6017(信越化学))がHLBが6以下であるシリコーン系界面活性剤、にそれぞれ該当する。また、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンは信越化学社製KF6038を、それぞれ用いた。
【0057】
【表4】
【0058】
【表5】