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  • 特許-作業機械のキャビン及び作業機械 図1
  • 特許-作業機械のキャビン及び作業機械 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】作業機械のキャビン及び作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/16 20060101AFI20230704BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
E02F9/16 E
B60J5/00 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018178846
(22)【出願日】2018-09-25
(65)【公開番号】P2020051044
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2020-08-07
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 真介
(72)【発明者】
【氏名】白土 勇輝
【合議体】
【審判長】前川 慎喜
【審判官】土屋 真理子
【審判官】佐藤 史彬
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-92209(JP,A)
【文献】特開2009-83570(JP,A)
【文献】特開2001-287549(JP,A)
【文献】特開平6-135241(JP,A)
【文献】特開昭59-192615(JP,A)
【文献】特開2004-306797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F9/16,B60J5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械を操作する作業者が搭乗する作業機械のキャビンであって、
幅方向の一方側で上下方向に延設された第1支柱と、
前記第1支柱よりも後方で上下方向に延設され、作業者が搭乗するための出入口を前記第1支柱と共に画定する第2支柱と、
前記第2支柱に回動可能に支持され、前記出入口を閉鎖する閉位置、および前記出入口を開放する開位置の間を回動するドアと、を備え、
前記第1支柱は、前記幅方向の最も外側に位置する角部と、前記角部から前方且つ前記幅方向の内側に延びる曲面から成る外面と、前記角部より後方で且つ前記角部よりも前記幅方向の内側に位置した当接部と、有し、
前記ドアの前縁を画定するビームの外面は、前記ドアが前記閉位置のときに、前後方向に延びる第1の面と、前記ドアが前記閉位置のときに、前記第1の面の前端から前方、且つ、前記第1支柱の外面に沿った仮想曲面よりも前記幅方向の内側に湾曲して延設される第2の面と、を有し、
前記第2の面の先端は、前記ドアが前記閉位置のときに、前記第1支柱の前記角部を通り、且つ前後方向及び前記上下方向に延びる仮想面よりも、前記幅方向の内側に位置しており、
前記ビームの前記幅方向の内側には、前記ドアが前記閉位置のときに、前記第1支柱の前記当接部と前記ビームとの間で弾性圧縮される弾性部材が、前記第2の面の先端よりも後方の位置に設けられており、
前記第1支柱の断面形状が、前記幅方向の外側に突出して湾曲した第1湾曲断面と、前記第1湾曲断面の後端に連続して設けられ、前記幅方向の内側に凹んで湾曲した第2湾曲断面と、により形成されており、
前記第2の面の断面形状は、略直線状の部分を含んで形成されており、
前記略直線状の部分の先端が、前記第2の面の先端となっており、
前記ドアが前記閉位置のときに、前記第2の面の断面形状の前記略直線状の部分の延長が、前記第2湾曲断面と交わるように配置される、
ことを特徴とする作業機械のキャビン。
【請求項2】
請求項1に記載のキャビンを備える作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェザーストリップが取り付けられたドアを有する作業機械のキャビン、及びこのようなキャビンを備えた作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の建設機械は、ヒンジを介して支柱に開閉可能に支持されたドアを有するキャビンを備えている。また、特許文献1に記載のドアの前縁部には、キャビン内への雨水の侵入を防止するために、ドアを閉じたときにキャビンの支柱に当接するインナーが取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-221973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成のキャビンでは、弾性変形したインナーが復元するときの反力によって、ドアの先端が外側に押し出される。その結果、ドアの先端とキャビンの支柱との間の隙間が大きくなって、この隙間に塵埃が進入しやすくなるという課題がある。
【0005】
本発明は、上記した実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、支柱とドアとの間の隙間に塵埃が進入しにくい作業機械のキャビン、及びこのようなキャビンを備える作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、作業機械を操作する作業者が搭乗する作業機械のキャビンであって、幅方向の一方側で上下方向に延設された第1支柱と、前記第1支柱よりも後方で上下方向に延設され、作業者が搭乗するための出入口を前記第1支柱と共に画定する第2支柱と、前記第2支柱に回動可能に支持され、前記出入口を閉鎖する閉位置、および前記出入口を開放する開位置の間を回動するドアと、を備え、前記第1支柱は、前記幅方向の最も外側に位置する角部と、前記角部から前方且つ前記幅方向の内側に延びる曲面から成る外面と、前記角部より後方で且つ前記角部よりも前記幅方向の内側に位置した当接部と、有し、前記ドアの前縁を画定するビームの外面は、前記ドアが前記閉位置のときに、前後方向に延びる第1の面と、前記ドアが前記閉位置のときに、前記第1の面の前端から前方、且つ、前記第1支柱の外面に沿った仮想曲面よりも前記幅方向の内側に湾曲して延設される第2の面と、を有し、前記第2の面の先端は、前記ドアが前記閉位置のときに、前記第1支柱の前記角部を通り、且つ前後方向及び前記上下方向に延びる仮想面よりも、前記幅方向の内側に位置しており、前記ビームの前記幅方向の内側には、前記ドアが前記閉位置のときに、前記第1支柱の前記当接部と前記ビームとの間で弾性圧縮される弾性部材が、前記第2の面の先端よりも後方の位置に設けられており、前記第1支柱の断面形状が、前記幅方向の外側に突出して湾曲した第1湾曲断面と、前記第1湾曲断面の後端に連続して設けられ、前記幅方向の内側に凹んで湾曲した第2湾曲断面と、により形成されており、前記第2の面の断面形状は、略直線状の部分を含んで形成されており、前記略直線状の部分の先端が、前記第2の面の先端となっており、前記ドアが前記閉位置のときに、前記第2の面の断面形状の前記略直線状の部分の延長が、前記第2湾曲断面と交わるように配置される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、支柱とドアとの間の隙間に塵埃が進入しにくい作業機械のキャビンを得ることができる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る作業機械の代表例である油圧ショベルの側面図。
図2】油圧ショベルのキャビンの側面図。
図3図2のIII-IIIにおける水平断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る作業機械の実施形態について、図面を用いて説明する。図1は本発明に係る作業機械の代表例である油圧ショベル1の側面図である。なお、本明細書中の前後左右は、特に断らない限り、油圧ショベル1に搭乗して操作する作業者の視点を基準としている。また、作業機械の具体例は油圧ショベル1に限定されず、ダンプトラック、モータグレーダー、ホイールローダー等であってもよい。
【0010】
図1に示すように、油圧ショベル1は、走行体2と、この走行体2の上側に旋回可能に取り付けられる旋回体3とを備える。旋回体3は、ベースとなる旋回フレーム10と、この旋回フレーム10の前方左側に配置されるキャビン7と、旋回フレーム10の前方中央に上下方向に回動可能に取り付けられるフロント作業機4と、旋回フレーム10の後方に配置されるカウンタウェイト6とを備える。
【0011】
キャビン7には、油圧ショベル1を操作する作業者が搭乗する内部空間が形成されている。フロント作業機4は、ブーム4a、アーム4b、バケット4c、及び油圧シリンダ(油圧アクチュエータ)4d~4fを含む。カウンタウェイト6は、フロント作業機4との重量バランスを取るためのもので、円弧状をした重量物である。
【0012】
キャビン7の内部空間には、走行体2を走行させ、旋回体3を旋回させ、フロント作業機4の動作させるための作業者の操作を受け付け、受け付けた操作に対応する信号をコントローラ(図示省略)に出力する操作装置(ステアリング、ペダル、レバー、スイッチなど)が配置されている。すなわち、キャビン7に搭乗した作業者が操作装置を操作することによって、油圧ショベル1が動作する。
【0013】
図2は、キャビン7の左側面図である。キャビン7は、外骨格を構成する複数の支柱、及び隣接する支柱の間に配置される天井、床、壁、ドア、窓などで構成される。作業者は、左側面に形成された出入口を通じて、キャビン7に乗降することができる。但し、出入口の位置はキャビン7の左側面に限定されず、キャビン7の右側面であってもよい。より詳細には、キャビン7の出入口は、第1支柱71と、第2支柱72とで画定されている。また、キャビン7の出入口は、ドア73によって開閉される。
【0014】
第1支柱71は、キャビン7の左端で且つ前端において上下方向に延設され、キャビン7の上端からさらに後方に延設されている。第2支柱72は、キャビン7の左端で且つ第1支柱71より後方において、上下方向に延設されている。そして、第1支柱71及び第2支柱72で囲まれた開口が、キャビン7の出入口となる。
【0015】
ドア73は、ヒンジ74a、74bを介して第2支柱72に回動可能に支持されている。すなわち、ドア73は、その後端を回動基端とし、その前端を回動先端として、ヒンジ74a、74bの位置を通って上下方向に延びる回転軸線周りに回動する。そして、ドア73は、キャビン7の出入口を閉鎖する閉位置(図2参照)と、キャビン7の出入口を開放する開位置との間を回動する。すなわち、作業者は、ドア73を開位置にしてキャビン7に乗降し、ドア73を閉位置にして操作装置を操作する。
【0016】
ドア73は、ドア73の前縁及び上縁を画定するビーム75と、ビーム75に支持された窓76とを備える。ビーム75は、ドア73が閉位置のときに第1支柱71に最も近づき、且つ第1支柱71と概ね平行に延設される。窓76は、ビーム75の内側で支持されている。
【0017】
図3は、図2のIII-IIIにおける水平断面図である。第1支柱71は、幅方向の最も外側(すなわち、最左端)に位置する角部71aと、角部71aより後方で且つ角部71aより幅方向の内側に位置する当接部71bとを有する。また、角部71aより前方の第1支柱71の外面は、図3に一点鎖線で示す仮想曲面Xに沿って延びている。
【0018】
ビーム75の内側には、ウェザーストリップ(弾性部材)77が取り付けられている。ウェザーストリップ77は、ビーム75の延設方向に沿って延びており、ビーム75のほぼ全域に設けられている。ウェザーストリップ77は、第1支柱71の当接部71bに当接し得る位置に配置される。そして、ウェザーストリップ77は、ドア73が閉位置のときに、第1支柱71とビーム75とに挟まれて弾性圧縮される。
【0019】
その結果、ウェザーストリップ77は、ドア73が閉位置のときに、第1支柱71とビーム75との間を通って、キャビン7の内部に塵埃や水滴(以下、「塵埃等」と表記する。)が進入するのを防止する。一方、ウェザーストリップ77は、弾性圧縮された状態から復元しようとして、ドア73を閉位置から開位置へ向けて移動させようとする反力を、ビーム75に作用させる。
【0020】
また、ビーム75の外面は、複数の面を延設方向に連ねて構成される。より詳細には、ビーム75は、第1の面78と、第1の面78の前端に連なる第2の面79とを含む。第1の面78及び第2の面79は、平面でもよいし、単一の曲面(円弧面)でもよいし、複数の平面或いは曲面を組み合わせた複合面でもよい。
【0021】
第1の面78は、平面部78aと、平面部78aの前端に接続された曲面部78bとで構成される。平面部78aは、ビーム75が支持する窓76と平行な面である。すなわち、第1の面78は、窓76と平行な面を含む。曲面部78bは、平面部78aの前端から前方且つ幅方向の内側に湾曲する円弧面である。
【0022】
また、第1の面78は、仮想曲面X上の点を含む。好ましくは、曲面部78bが仮想曲面X上の点を含む。さらに好ましくは、第1の面78の前端(すなわち、第2の面79との接続端)が仮想曲面X上に位置する。なお、第1の面78のうち、仮想曲面X上に位置するのは一箇所に限定されず、複数個所であってもよい。
【0023】
第2の面79は、第1の面78の曲面部78bの前端から前方且つ幅方向の内側に湾曲する円弧面である。より詳細には、第2の面79は、ドア73が閉位置のときに、仮想曲面Xより内側に向けて湾曲する湾曲面である。すなわち、第2の面79は、前方ほど幅方向の内側に位置し、後方ほど幅方向の外側に位置する。また、ドア73が閉位置のときに、第2の面79のうち、その先端が仮想曲面Xから最も遠くなる。
【0024】
また、第2の面79の先端は、ドア73が閉位置のときに、図3に二点鎖線で示す仮想平面Xより幅方向の内側に位置する。すなわち、第2の面79は、仮想平面Xと交差する面である。なお、仮想平面Xは、第1支柱71の角部71aを通り、且つ前後方向に延びる鉛直面である。
【0025】
ただし、第2の面79の先端は、ドア73が閉位置のときに、当接部71bより幅方向の外側に位置する。すなわち、第2の面79の先端は、ドア73が閉位置のときに、角部71aより幅方向の内側に位置し、且つ当接部71bに接触しない位置に配置される。
【0026】
さらに、図3に示すビーム75の水平断面において、第1の面78の延設長さLと、第2の面79の延設長さLとを比較すると、L≦Lの関係が成立する。すなわち、第2の面79は、ビーム75の外面の半分以上の領域を占める。換言すれば、ビーム75の前後方向において、少なくとも前端から中央までの領域は仮想曲面Xより内側に位置する。
【0027】
上記の実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0028】
油圧ショベル1を前進させると、図3の矢印で示すように、油圧ショベル1の前方側から飛んでくる塵埃等がキャビン7に当たる。第1支柱71の外面に当たった塵埃等は、仮想曲面Xに沿って後方に導かれる。そこで上記の実施形態のように、第2の面79を仮想曲面Xより内側に配置することによって、仮想曲面Xに沿って移動する塵埃等が第1支柱71とビーム75との間の隙間に進入するのを抑制できる。
【0029】
また、上記の実施形態のように、第2の面79の前方ほど幅方向の内側に位置し、第2の面79の後方ほど幅方向の外側に位置するように、第2の面79を湾曲させることによって、第2の面79に当たった塵埃等を、第2の面79の外面に沿って後方に導くことができる。その結果、第1支柱71とビーム75との間の隙間への塵埃等の進入をさらに有効に抑制することができる。上記の作用効果は、ビーム75の外面の半分以上を第2の面79で構成(すなわち、L≦L)することによって、特に顕著になる。
【0030】
さらに、第2の面79の先端を仮想平面Xより内側に配置することによって、第1支柱71とビーム75との間の隙間が小さくなる。その結果、第1支柱71とビーム75との間の隙間への塵埃等の進入をさらに有効に抑制することができる。
【0031】
上記の実施形態に係る第1支柱71とビーム75との位置関係は、第1支柱71とビーム75との間の隙間への塵埃等の進入を抑制する効果のみならず、キャビン7の見た目を向上させる効果も期待できる。
【0032】
より詳細には、仮に第2の面79の先端が仮想曲面X上に位置するように設計すると、実際には、ウェザーストリップ77の反力やヒンジ74a、74bのガタ等によって、第2の面79の先端が仮想曲面Xより外側に移動する。そうすると、キャビン7を外から見た人に、ドア73がきちんと閉まっていないという違和感を与える可能性がある。
【0033】
そこで上記の実施形態のように、仮想曲面Xと第2の面79とを異なる面とし、且つ第2の面79の先端を仮想曲面Xより内側に配置することによって、ウェザーストリップ77からの反力やヒンジ74a、74bのガタ等で第2の面79の先端が理想位置からずれたとしても、キャビン7を外から見た人の違和感を少なくする効果がある。
【0034】
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 油圧ショベル(作業機械)
2 走行体
3 旋回体
4 フロント作業機
71 第1支柱
71a 角部
71b 当接部
72 第2支柱
73 ドア
74a,74b ヒンジ
75 ビーム
76 ガラス
77 ウェザーストリップ
78 第1の面
78a 平面部
78b 曲面部
79 第2の面
図1
図2
図3