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  • 特許-トルクコンバータ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】トルクコンバータ
(51)【国際特許分類】
   F16H 45/02 20060101AFI20230704BHJP
   F16D 43/18 20060101ALI20230704BHJP
   F16F 15/10 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
F16H45/02 D
F16H45/02 Y
F16D43/18
F16F15/10 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019043499
(22)【出願日】2019-03-11
(65)【公開番号】P2020148212
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】松岡 佳宏
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公告第00934000(GB,A)
【文献】実開昭51-143045(JP,U)
【文献】特開2004-150597(JP,A)
【文献】実開昭51-135249(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 45/02
F16D 43/18
F16F 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力が入力されるフロントカバーと、
前記フロントカバーに連結されて前記フロントカバーとともに作動油室を構成し、インペラコアを有するインペラと
前記インペラに対向して設けられ、タービンコアを有し、動力を出力するタービンと、
前記インペラの内周部と前記タービンの内周部との間に配置され、前記タービンから前記インペラに流れる作動油を整流するためのステータと、
磁石を有する遠心子を有し、前記インペラコアと前記タービンコアとの間の空間に配置され、前記タービンが所定の回転数以上になると前記インペラから前記タービンに動力を直接伝達する遠心クラッチと、
前記遠心子の径方向内方に配置され、前記遠心子の磁石を吸引可能な保持部材と、
を備え、
前記インペラコアは、環状の摩擦面を有しており、
前記遠心子は、前記タービンコアに相対回転不能かつ径方向移動可能に支持され、前記タービンの回転に伴う遠心力によって前記摩擦面に押圧されるとともに、前記タービンが前記所定の回転数に満たないときに前記保持部材に保持されて前記インペラコアの摩擦面から離れており、
前記タービンコアは、前記遠心子を挟んで前記インペラコアの摩擦面の径方向内方に配置された環状の保持面を有しており、
前記保持部材は、前記保持面に設けられた鉄製で環状の保持バンドである、
トルクコンバータ。
【請求項2】
前記保持部材は、前記遠心子の軸方向の移動を規制するための規制部を有している、請求項に記載のトルクコンバータ。
【請求項3】
前記インペラコア及び前記タービンコアは非磁性体材料で形成されている、請求項1又は2に記載のトルクコンバータ。
【請求項4】
前記遠心子は、外周面に摩擦材を有している、請求項1から3のいずれかに記載のトルクコンバータ。
【請求項5】
前記フロントカバーから前記タービンに動力を直接伝達する補助クラッチをさらに備えた請求項1からのいずれかに記載のトルクコンバータ。
【請求項6】
動力が入力されるフロントカバーと、
前記フロントカバーに連結されて前記フロントカバーとともに作動油室を構成し、インペラコアを有するインペラと
前記インペラに対向して設けられ、タービンコアを有し、動力を出力するタービンと、
前記インペラの内周部と前記タービンの内周部との間に配置され、前記タービンから前記インペラに流れる作動油を整流するためのステータと、
前記インペラコアと前記タービンコアとの間の空間に配置され、前記タービンが所定の回転数以上になると前記インペラから前記タービンに動力を直接伝達する遠心クラッチと、
前記遠心子と前記タービンコアとを回転方向に弾性的に連結する弾性部材と、
を備え、
前記タービンコアは、前記遠心子の円周方向の両端部から離れた部分に第1及び第2係合部を有しており、
前記弾性部材は、前記遠心子と前記第1及び第2係合部との間に配置されている、
トルクコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトルクコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
トルクコンバータにおいては、燃費低減のためにロックアップ装置が設けられている。ロックアップ装置は、フロントカバーとタービンとの間に配置されており、フロントカバーとタービンとを機械的に連結して両者の間でトルクを直接伝達するものである。
【0003】
この種のロックアップ装置として、例えば特許文献1に示される装置が提案されている。このロックアップ装置は、フロントカバーとタービンとの間に円板状のクラッチプレートが設けられ、このクラッチプレートの外周部に、リング部材及びシュー組立体を有する遠心クラッチが設けられている。
【0004】
また、特許文献2には、ロックアップ装置ではないが、トルクコンバータの流体室内に遠心クラッチを設け、この遠心クラッチによって、主インペラと補助インペラとを接続及び接続解除する構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭61-31731号公報
【文献】特開昭55-78851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のトルクコンバータは、フロントカバーとタービンとの軸方向間にロックアップ装置が配置され、さらにフロントカバーの外周部内面にシューを押圧するものである。このため、トルクコンバータの軸方向及び径方向において遠心クラッチのための占有スペースが必要となる。したがって、トルクコンバータのコンパクト化の妨げになる。
【0007】
本発明の課題は、遠心クラッチを用いたロックアップ装置を有するトルクコンバータにおいて、装置のコンパクト化を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係るトルクコンバータは、動力が入力されるフロントカバーと、インペラと、タービンと、ステータと、遠心クラッチと、を備えている。インペラは、フロントカバーに連結されてフロントカバーとともに作動油室を構成し、インペラコアを有する。タービンは、インペラに対向して設けられ、タービンコアを有し、動力を出力する。ステータは、インペラの内周部とタービンの内周部との間に配置され、タービンからインペラに流れる作動油を整流する。遠心クラッチは、インペラコアとタービンコアとの間の空間に配置され、タービンが所定の回転数以上になるとインペラからタービンに動力を直接伝達する。
【0009】
このトルクコンバータでは、インペラコアとタービンコアとの間の空間に遠心クラッチが配置されている。そしてタービンの回転数が高くなると、遠心クラッチが作動し、インペラからタービンに動力が直接伝達される。
【0010】
ここでは、トルクコンバータのトーラス内のデッドスペースに遠心クラッチが配置されているので、トルクコンバータをコンパクトに維持したまま遠心クラッチを搭載することが可能になる。
【0011】
(2)好ましくは、インペラコアは、環状の摩擦面を有している。また、好ましくは、遠心クラッチは、タービンコアに相対回転不能かつ径方向移動可能に支持された遠心子を有し、遠心子はタービンの回転に伴う遠心力によって摩擦面に押圧される。
【0012】
ここでは、インペラコアを利用して摩擦面を構成し、この摩擦面に、タービンコアに連結された遠心子が押圧されて動力が伝達される。
【0013】
(3)好ましくは、遠心子は磁石を有している。この場合は、インペラコアを例えば鉄等の強磁性体材料で構成することにより、遠心子は遠心力に加えて磁力によっても摩擦面に押圧される。このため、クラッチ容量を大きくすることができる。
【0014】
(4)好ましくは、遠心子の径方向内方に配置され、遠心子の磁石を吸引可能な保持部材をさらに備えている。そして、遠心子は、タービンが所定の回転数に満たないときに保持部材に保持されてインペラコアの摩擦面から離れている。
【0015】
ここでは、遠心クラッチがオフ(動力の伝達をしていないとき)のときに、遠心子は磁力によって保持部材に保持される。すなわち、遠心子のリターン力を、バネ要素ではなく、重りとして機能する磁石によって得ている。このため、構造が簡単になる。
【0016】
(5)好ましくは、保持部材は、遠心子の軸方向の移動を規制するための規制部を有している。
【0017】
(6)好ましくは、タービンコアは、遠心子を挟んでインペラコアの摩擦面の径方向内方に配置された環状の保持面を有している。そして、保持部材は、保持面に設けられた鉄製で環状の保持バンドである。
【0018】
(7)好ましくは、インペラコア及びタービンコアは非磁性体材料で形成されている。ここでは、遠心子の磁力は鉄製の保持バンドのみに向かうので、磁力の低下を抑えることができる。
【0019】
(8)好ましくは、遠心子は、外周面に摩擦材を有している。この場合は、摩擦材を種々変更することによって、摩擦力(伝達トルク容量)を簡単に調整することができる。
【0020】
(9)好ましくは、フロントカバーからタービンに動力を直接伝達する補助クラッチをさらに備えている。
【0021】
ここでは、補助クラッチとして、従来から周知の差圧式クラッチを用いれば、クラッチを作動させるための油圧を低くすることができる。一方、補助クラッチとして遠心クラッチ等の機械式クラッチを用いれば、クラッチを作動させるための油圧ポンプが不要になる。
【0022】
(10)好ましくは、タービンコアは、遠心子の円周方向の両端部から離れた部分に第1及び第2係合部を有している。また、好ましくは、遠心子と第1及び第2係合部との間に配置され、遠心子とタービンコアとを回転方向に弾性的に連結する弾性部材をさらに備えている。
【発明の効果】
【0023】
以上のような本発明では、遠心クラッチを用いたロックアップ装置を有するトルクコンバータにおいて、装置のコンパクト化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態によるトルクコンバータの断面図。
図2図1のX方向矢視図。
図3図2III-III線断面図。
図4】本発明の他の実施形態による図2に相当する図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の一実施形態によるトルクコンバータ1の断面部分図である。また、図2は、図1のX方向矢視図である。図1の左側には駆動源として例えば電動機(図示せず)が配置され、図の右側にトランスミッション(図示せず)が配置されている。なお、図1に示すO-Oがトルクコンバータ1の回転軸線である。また、以下では、回転軸から離れる方向を「径方向」とし、回転軸に沿う方向を「軸方向」とする。
【0026】
[トルクコンバータ1の全体構成]
トルクコンバータ1は、電動機からトランスミッションの入力シャフト(図示せず)にトルクを伝達するための装置である。図1に示すように、トルクコンバータ1は、フロントカバー2と、トルクコンバータ本体3と、遠心クラッチ4と、補助クラッチ5と、を備えている。
【0027】
フロントカバー2は、円板部2aと、外周筒状部2bと、を有している。外周筒状部2bは円板部2aの外周部からトランスミッション側に延びて形成されている。この外周筒状部2bの先端に、後述するインペラ10が溶接により固定されている。この結果、フロントカバー2とインペラ10とによって、内部に作動油が充填される作動油室が形成されている。
【0028】
[トルクコンバータ本体3]
トルクコンバータ本体3は、インペラ10と、タービン11と、ステータ12と、を有している。
【0029】
インペラ10は、インペラシェル15と、複数のインペラブレード16と、インペラコア17と、インペラハブ18と、を有している。
【0030】
インペラシェル15の外周部はフロントカバー2側に延びており、前述のように、先端部がフロントカバー2の外周筒状部2bに溶接により固定されている。複数のインペラブレード16は、インペラシェル15の内部に固定されている。インペラコア17は、環状に形成されており、複数のインペラブレード16のタービン側端部を支持している。なお、インペラコア17の詳細については、後述する。インペラハブ18は、インペラシェル15の内周部に形成され、トランスミッション側に延びている。
【0031】
タービン11は、タービンシェル20と、複数のタービンブレード21と、タービンコア22と、タービンハブ23と、を有している。
【0032】
タービンシェル20は、環状の部材であって、内周側がタービンハブ23側に延びている。タービンシェル20の外周端部において、フロントカバー2側の面には、複数の係合凹部20aが形成されている。複数のタービンブレード21は、インペラブレード16に対向して配置され、タービンシェル20のインペラ側の面に固定されている。タービンコア22は、環状に形成され、タービンブレード21のインペラ側端部を支持している。なお、タービンコア22の詳細については後述する。タービンハブ23は、円板状のフランジ部23aと、フランジ部23aの内周端部に軸方向に延びて形成された筒状部23bと、を有している。フランジ部23aには、タービンシェル20の内周端部がリベット24によって固定されている。また、筒状部23bの内周面には、スプライン孔23cが形成されており、このスプライン孔23cに、トランスミッション側の入力シャフトが係合可能である。
【0033】
ステータ12は、タービン11からインペラ10に戻る作動油の流れを整流するための機構である。ステータ12は、樹脂やアルミ合金等で鋳造により形成された一体の部材である。ステータ12はインペラ10の内周部とタービン11の内周部との間に配置されている。ステータ12は、主に、ステータシェル26と、ステータシェル26の外周面に設けられた複数のステータブレード27と、複数のステータブレード27の先端に設けられた環状のステータコア28と、を有している。
【0034】
ステータシェル26はワンウェイクラッチ30を介して図示しない固定シャフトに支持されている。また、ワンウェイクラッチ30の軸方向フロントカバー側にはリテーナ31が配置されている。リテーナ31は、ワンウェイクラッチ30とタービンハブ23のフランジ部23aとの間に配置されており、ワンウェイクラッチ30を保持している。
【0035】
また、インペラハブ18とステータシェル26との間にはスラストベアリング32が設けられ、リテーナ31とタービンハブ23のフランジ部23aとの間にはスラストベアリング33が設けられている。
【0036】
[インペラコア17及びタービンコア22]
インペラコア17及びタービンコア22は、前述のように環状に形成されている。図2及び図2のIII-III線断面図である図3に示すように、インペラコア17の外周部の内周面17aは、環状の摩擦面となっている。また、タービンコア22は、環状の保持面22aと、複数の係合部22bと、を有している。保持面22aは、インペラコア17の摩擦面17aと同じ曲率半径であり、径方向において対向して配置されている。複数の係合部22bは、円周方向に並べて配置され、インペラ10側に突出して形成されている。インペラコア17は非磁性体材料あるいは鉄等の強磁性体材料で形成されている。また、タービンコア22は非磁性体で形成されているのが好ましい。
【0037】
タービンコア22の外周面には保持バンド35が装着されている。保持バンド35は、鉄製で環状に形成されている。保持バンド35は、それぞれ円周方向に所定の間隔で形成された複数の弾性変形部35aと、複数の規制爪35bと、を有している。弾性変形部35aと規制爪35bとは円周方向に交互に形成されている。
【0038】
弾性変形部35aは、径方向外側に突出する概略U字形状に形成されている。この弾性変形部35aが円周方向に弾性変形することにより、保持バンド35の径を拡張することができる。したがって、保持バンド35の径を広げた状態でタービンコア22の外周面22aに装着することで、保持バンド35をタービンコア22の外周面22aに圧入して固定することができる。
【0039】
規制爪35bは、保持バンド35のインペラ10側の先端を、径方向外方に折り曲げて形成されている。この規制爪35bによって、後述する遠心子の軸方向の移動が規制される。
【0040】
[遠心クラッチ4]
遠心クラッチ4は、インペラコア17の摩擦面17aと、複数の遠心子38と、によって構成されている。
【0041】
複数の遠心子38は、タービンコア22の複数の係合部22bの円周方向間に配置されている。各遠心子38は、係合部22bによって円周方向の移動が禁止され、かつ係合部22bの円周方向の端面に沿って径方向に移動が可能である。したがって、遠心子38は、タービンコア22の回転とともに回転し、遠心力により径方向外方に移動する。また、遠心子38とタービン11とはタービンコア22の係合部22bを介して動力の伝達が可能である。なお、遠心子38は、前述のように、保持バンド35の規制爪35bによって、軸方向の移動が規制されている。
【0042】
遠心子38は、内部に磁石39を収容しており、金属又は樹脂によって形成されている。したがって、磁石39は、遠心子38の重りとしても機能している。遠心子38の外周面及び内周面は、円弧状に形成されており、その曲率半径は、インペラコア17の摩擦面17a及びタービンコア22の保持面22aの曲率半径と同じである。また、外周面には摩擦材40が固定されている。遠心子38は、内部に磁石39を有しているので、タービン11の停止時あるいは遠心子38の遠心力が小さい場合は、磁力によって保持バンド35に吸引されて保持されている。遠心子38が保持バンド35に保持された状態では、遠心子38の外周面に固定された摩擦材40とインペラコア17の摩擦面17aとの間には隙間が形成されている。
【0043】
[補助クラッチ5]
補助クラッチ5は、フロントカバー2とタービン11との間に配置されたピストン42を有している。
【0044】
ピストン42は、円板部42aと、複数の外周係合部42bと、内周筒状部42cと、を有している。円板部42aは、概略フロントカバー2に沿った形状である。円板部42aの外周部において、フロントカバー2側の面には摩擦部材43が固定されている。複数の外周係合部42bは、円板部42aの外周端部からタービン11側に突出し、円周方向に所定に間隔で形成されている。この外周係合部42bが、タービンシェル20の外周部に形成された複数の係合凹部20aに係合している。内周筒状部42cは、円板部42aの内周端部にインペラ10側に突出して形成されている。内周筒状部42cは、タービンハブ23の筒状部23bの外周面に軸方向に移動可能に支持されている。
【0045】
この補助クラッチ5は、ピストン42のフロントカバー2側の作動油と、タービン11側の作動油の差圧によって、軸方向に移動が可能である。そして、その差圧によってピストン42の摩擦部材43がフロントカバー2の側面に押圧されると、フロントカバー2からの動力がピストン42を介してタービン11に伝達される。
【0046】
[動作]
タービン11が回転していない、あるいはタービン11の回転数が低い状態では、遠心クラッチ4は作動しない。すなわち、遠心子38は磁石39の磁力によって保持バンド35に保持されており、摩擦材40を含む遠心子38の外周面と、インペラコア17の摩擦面17aと、の間には隙間が維持されている。
【0047】
また、差圧式の補助クラッチ5も作動しておらず、ピストン42はフロントカバー2から離れている。
【0048】
このようなロックアップオフの状態では、トルクコンバータ本体3内において、作動油はインペラ10からタービン11へ流れ、さらにステータ12を介してインペラ10に流れる。これにより、作動油を介してインペラ10からタービン11へ動力が伝達される。タービン11に伝達された動力は、タービンハブ23を介してトランスミッションの入力シャフトに伝達される。
【0049】
トルクコンバータ1の速度比が上昇し、タービン11の回転数が所定の回転数以上になると、遠心子に作用する遠心力が、保持バンド35が遠心子38を保持する保持力(磁石による磁力)よりも大きくなる。このため、遠心子38は径方向外方に移動し、遠心子38の摩擦材40がインペラコア17の摩擦面17aに押圧される。すなわち、遠心クラッチ4がオン状態になる。
【0050】
この場合は、インペラ10のインペラコア17から遠心子38を介してタービンコア22、すなわちタービン11に、作動油を介さずに直接動力が伝達される。タービン11に伝達された動力は、前述のように、タービンハブ23を介してトランスミッションの入力シャフトに伝達される。
【0051】
また、ピストン42の両側の差圧によってピストン42はフロントカバー2側に移動し、ピストン42の摩擦部材43がフロントカバー2に押圧される。このため、フロントカバー2からの動力は、遠心クラッチ4を介してタービンハブ23に伝達されるとともに、補助クラッチ5を介してもタービンハブ23に伝達される。
【0052】
ここで、遠心子38が径方向外方に移動して保持バンド35から離れ、インペラコア17に近接又は押圧されると、インペラコア17を、例えば鉄等の強磁性体で構成した場合は、遠心子38の磁石39の磁力が保持力とは逆方向に作用する。すなわち、遠心子38は、遠心力によって摩擦面17aに押圧されるとともに、磁力によっても摩擦面17aに押圧される。
【0053】
一方、インペラコア17を非磁性体で構成した場合、磁力は遠心子38を摩擦面17aに押圧する力としては作用しない。しかし、磁力は保持バンド35にのみ向かうので、保持力を強くすることができる。
【0054】
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0055】
(a)前記実施形態では、補助クラッチとして差圧式のクラッチを設けたが、差圧式のクラッチに代えて、遠心式のクラッチを設けてもよい。この場合は、補助クラッチを作動させるための油圧ポンプが不要になる。
【0056】
(b)前記実施形態では、遠心子38とタービンコア22の係合部22bとを直接当接させて動力を伝達するようにしたが、図4に示すように、遠心子38と係合部22bとの間に、スプリング等の弾性部材を設けてもよい。この場合は、遠心子38は、保持バンド35の規制爪35bに沿って径方向に移動することになる。すなわち、規制爪35bが遠心子38の径方向ガイドを兼ねることになる。このような実施形態によっても、前記実施形態と同様に振動減衰性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 トルクコンバータ
2 フロントカバー
4 遠心クラッチ
5 補助クラッチ
10 インペラ
11 タービン
12 ステータ
17 インペラコア
17a 摩擦面
22 タービンコア
22a 保持面
22b 係合部
35 保持バンド
35b 規制爪
38 遠心子
39 磁石
40 摩擦材
図1
図2
図3
図4