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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】レーザ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/268 20060101AFI20230704BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20230704BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20230704BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20230704BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20230704BHJP
   B23K 26/08 20140101ALI20230704BHJP
   B23K 26/10 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
H01L21/268 G
H01L21/20
H01L29/78 627G
H01L21/68 A
B23K26/10
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019075288
(22)【出願日】2019-04-11
(65)【公開番号】P2020174134
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】521476506
【氏名又は名称】JSWアクティナシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下地 輝昭
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大介
(72)【発明者】
【氏名】松島 達郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 良
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-162856(JP,A)
【文献】国際公開第2018/066172(WO,A1)
【文献】特開2009-135430(JP,A)
【文献】国際公開第2018/097087(WO,A1)
【文献】特開2018-037431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/268
H01L 21/20
H01L 21/336
H01L 21/677
B23K 26/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含むレーザ処理装置:
表面および前記表面とは反対側の裏面を有し、前記表面から気体を噴出させることで基板を浮上搬送可能なステージ;
前記基板にレーザ光を照射するレーザ発振器;および
前記ステージの上方であって、前記レーザ光の焦点位置と平面視において重なる位置に配置された不活性ガスを噴出するためのガス噴出口、
ここで、前記ステージの前記表面は第1の上部構造体および第2の上部構造体で構成され、
前記第1の上部構造体および前記第2の上部構造体は互いに離間し、かつ対向するように配置され、
前記第1の上部構造体および前記第2の上部構造体の間の隙間と前記レーザ光の焦点位置は平面視において重なり、
前記第1の上部構造体と前記第2の上部構造体の間に前記隙間を埋めるように充填部材が配置されている。
【請求項2】
前記ガス噴出口から噴出された前記不活性ガスは前記充填部材よりも下方に流動しない請求項1に記載のレーザ処理装置。
【請求項3】
前記充填部材の上面は前記第1の上部構造体および前記第2の上部構造体のそれぞれの上面よりも低い位置にある請求項1または2に記載のレーザ処理装置。
【請求項4】
前記第1の上部構造体および前記第2の上部構造体のそれぞれの上面の高さは、互いに同じである請求項3に記載のレーザ処理装置。
【請求項5】
前記レーザ光の前記ステージの前記表面上での平面形状は長軸と短軸を有する長方形であり、
前記充填部材は前記長軸の方向に沿って配置されている請求項1から4のいずれか1項に記載のレーザ処理装置。
【請求項6】
前記基板はガラス基板である請求項1から5のいずれか1項に記載のレーザ処理装置。
【請求項7】
前記基板には非晶質の半導体膜が形成され、前記レーザ光の照射により前記非晶質の半導体膜は多結晶の半導体膜に変質する請求項1から6のいずれか1項に記載のレーザ処理装置。
【請求項8】
前記第1の上部構造体は、前記気体を噴出する第1の表面側部材を有し、
前記第2の上部構造体は、前記気体を噴出する第2の表面側部材を有し、
前記充填部材は前記気体を噴出しない請求項1から7のいずれか1項に記載のレーザ処理装置。
【請求項9】
前記第1の表面側部材および前記第2の表面側部材は、それぞれ多孔質体からなる請求項8に記載のレーザ処理装置。
【請求項10】
前記レーザ光は、前記ガス噴出口を通過して前記基板に照射される請求項1から9のいずれか1項に記載のレーザ処理装置。
【請求項11】
前記基板を前記ステージ上に浮上させながら搬送し、前記ガス噴出口から前記不活性ガスを噴出し、前記基板に前記レーザ光を照射する請求項1から10のいずれか1項に記載のレーザ処理装置。
【請求項12】
前記ガス噴出口から噴出された前記不活性ガスからなる雰囲気中で、前記基板に前記レーザ光が照射される請求項1から11のいずれか1項に記載のレーザ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開WO2015/174347号(特許文献1)には、被処理体にレーザ光を照射してアニール処理を行うレーザアニール装置に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開WO2015/174347号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、レーザ処理装置のステージ上に被処理体を浮上させながらその被処理体を移動させ、移動する被処理体にレーザを照射するレーザ処理装置について検討している。そのようなレーザ処理装置において、被処理体に対するレーザ処理の条件が変動するのを抑制または防止することが望まれる。
【0005】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態によれば、レーザ処理装置は、表面から気体を噴出させることで基板を浮上搬送可能なステージと、前記基板にレーザ光を照射するレーザ発振器と、前記レーザ光の焦点位置と平面視において重なる位置に配置された不活性ガスを噴出するためのガス噴出口と、を有している。前記ステージの前記表面は第1の上部構造体および第2の上部構造体で構成され、前記第1の上部構造体および前記第2の上部構造体は互いに離間し、かつ対向するように配置されている。前記第1の上部構造体および前記第2の上部構造体の間の隙間と前記レーザ光の焦点位置は平面視において重なり、前記第1の上部構造体と前記第2の上部構造体との間に前記隙間を埋めるように充填部材が配置されている。
【発明の効果】
【0007】
一実施の形態によれば、被処理体に対するレーザ処理の条件の変動を抑制または防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施の形態におけるレーザ処理装置の模式的な構成を示す断面図である。
図2】一実施の形態におけるレーザ処理装置の動作を説明するための平面図である。
図3】一実施の形態におけるレーザ処理装置の要部平面図である。
図4】一実施の形態におけるレーザ処理装置の要部断面図である。
図5】一実施の形態におけるレーザ処理装置の要部断面図である。
図6】第1検討例のレーザ処理装置の模式的な構成を示す断面図である。
図7】第2検討例のレーザ処理装置の模式的な構成を示す断面図である。
図8】第2検討例のレーザ処理装置の要部断面図である。
図9】第2検討例のレーザ処理装置の課題を説明するための説明図である。
図10】第2検討例のレーザ処理装置の課題を説明するための説明図である。
図11】第2検討例のレーザ処理装置の課題を説明するための説明図である。
図12】一実施の形態におけるレーザ処理装置の効果を説明するための説明図である。
図13】一実施の形態におけるレーザ処理装置の効果を説明するための説明図である。
図14】一実施の形態におけるレーザ処理装置の効果を説明するための説明図である。
図15】液晶表示装置としての大画面テレビジョンを示す外観図である。
図16】液晶表示装置としてのモバイル通信機器を示す外観図である。
図17】一実施の形態における表示装置を製造する製造工程の流れを示すフローチャートである。
図18】一実施の形態における表示装置の構成例を示す図である。
図19図13に示す画素の構成例を示す図である。
図20】薄膜トランジスタのデバイス構造を示す断面図である。
図21】薄膜トランジスタの製造工程の流れを示すフローチャートである。
図22】チャネル膜の形成工程の流れを説明するフローチャートである。
図23】第1変形例のレーザ処理装置の要部平面図である。
図24】第2変形例のレーザ処理装置のステージを示す平面図である。
図25】第2変形例のレーザ処理装置の要部平面図である。
図26】第2変形例のレーザ処理装置の要部断面図である。
図27】第3変形例のレーザ処理装置の要部断面図である。
図28】第3変形例のレーザ処理装置の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0010】
(実施の形態1)
<レーザ処理装置の全体構成について>
本実施の形態におけるレーザ処理装置1の全体構成について、図1を参照して説明する。図1は、本実施の形態におけるレーザ処理装置1の模式的な構成を示す断面図である。
【0011】
図1に示されるように、本実施の形態におけるレーザ処理装置1は、レーザ光発生部21と、光減衰器22と、光学系モジュール23と、密閉筐体24と、処理室25とを備えている。
【0012】
レーザ光発生部(レーザ発振器)21は、レーザ光(例えばエキシマレーザ光)を出力するレーザ発振器(レーザ光源)から構成されており、レーザ光発生部21の出力先には、レーザ光の出力を調整するための光減衰器(アッテネータ)22が配置されている。光減衰器22は、レーザ光の透過率を調整することにより、レーザ光の出力を調整する機能を有している。
【0013】
光減衰器22で出力調整されたレーザ光の進行先には、光学系モジュール23が配置されている。光学系モジュール23は、反射ミラー23aとレンズ(図示せず)などから構成されており、光減衰器22から光学系モジュール23に入力されたレーザ光をラインビーム状のレーザ光に成形する機能を有している。光学系モジュール23の出力部には、レーザ光に対して透光性を有するシールウィンドウ23bが設けられている。光学系モジュール23で成形されたレーザ光は、シールウィンドウ23bを介して、光学系モジュール23から出力される。
【0014】
光学系モジュール23から出力されるレーザ光の進行先(ここでは光学系モジュール23の下側)には、密閉筐体24が設けられている。密閉筐体24の内部は、密閉空間となっており、この密閉空間をレーザ光が進行するようになっている。密閉筐体24の出力部には、レーザ光に対して透光性を有するシールウィンドウ24aが設けられている。
【0015】
密閉筐体24から出力されるレーザ光の進行先(ここでは密閉筐体24の下側)には、処理室25が配置されている。処理室25には、密閉筐体24の出力部に設けられているシールウィンドウ24aと接続するシールボックス26が取り付けられている。シールボックス26には、例えば、窒素ガスに代表される不活性ガスが供給されるようになっている。また、図1に示されるように、シールボックス26の上側は、密閉筐体24に設けられたシールウィンドウ24aによって封止されている一方、シールボックス26の下側には、開口部(ガス噴出口)27が設けられている。このため、シールボックス26に供給された不活性ガス(例えば窒素ガス)は、開口部27からシールボックス26の下側に(すなわちステージ2に向かって)噴出されることになる。
【0016】
シールボックス26の下方には、ステージ2が配置されている。ステージ2は、処理室25内において、シールボックス26の下方に配置されている。ステージ2は、上面(表面)およびそれとは反対側の裏面(下面)を有し、その上面(表面)からガス(気体)を噴出させることで基板3を浮上搬送可能なステージである。ステージ2の上面上には、例えばガラスまたは石英から形成されている基板3が配置され得るが、この基板3は、ステージ2の上面(より特定的にはステージ2を構成する複数の上部構造体5の上面)から吹き出すガスによって、ステージ2上を浮上しながら、水平方向(具体的にはX方向)に搬送されるようになっている。
【0017】
基板3の表面(上面)には、非晶質(アモルファス)の半導体膜が形成されており、より特定的にはアモルファスシリコン膜3aが形成されている。シールボックス26に設けられた開口部27から噴出(排出)された不活性ガス(例えば窒素ガス)は、基板3の表面に形成されたアモルファスシリコン膜3aに吹き付けられるようになっている。
【0018】
基板3上に形成されている非晶質の半導体膜(ここではアモルファスシリコン膜3a)は、後述するように、レーザ処理装置1を用いたレーザ処理(レーザアニール処理)によって、多結晶の半導体膜(ここでは多結晶シリコン膜)に変質(変化)する。以下では、基板3の表面に形成されている非晶質の半導体膜がアモルファスシリコン膜3aであるものとして説明する。非晶質の半導体膜(アモルファスシリコン膜3a)が形成された基板3を、被処理体とみなすこともできる。
【0019】
ステージ2は、定盤(ベース部材)4と、複数の上部構造体(基板浮上用構造体、ステージ部材、基板浮上用ステージ部材、浮上用ユニット)5とを有している。複数の上部構造体5の上面が、ステージ2の上面を構成している。このため、複数の上部構造体5は、互いに積み重ねられているのではなく、水平方向に並んで配置されており、それら複数の上部構造体5が、ステージ2の上部を構成している。複数の上部構造体5は、定盤4上に並んで配置されて支持されている。
【0020】
なお、図1には、後述する上部構造体5a,5bだけでなく、上部構造体5a,5b以外の上部構造体5cも、共通の定盤4上に配置されている場合が示されているが、他の形態として、上部構造体5cは定盤4上には搭載せずに、上部構造体5a,5bが配置される定盤4とは別部材を用いて、上部構造体5cを支持することもできる。但し、そのような場合でも、上部構造体5a,5bおよび上部構造体5a,5b間の充填部材8は、共通の定盤4上に配置することが好ましい。上部構造体5a,5bを搭載する定盤4は、例えば石材(グラナイトなど)により形成することができ、一方、上部構造体5cを支持する部材は、例えば金属材料により形成することができる。
【0021】
各々の上部構造体5は、その上面(表面)から気体を噴出することができるにように構成されている。すなわち、上部構造体5の上面(表面)からガス(気体)を噴出し、噴出するガスによって基板3を浮上させることができる。このため、上部構造体5は、その上面(表面)からガスを噴出して基板3を浮上させるように機能する構造体(部材)、すなわち、基板浮上用の構造体である。
【0022】
具体的には、上部構造体5の上面(表面)には、複数(多数)の微細な孔が存在し、その微細な孔からガスを噴出することができる。基板3がステージ2上を浮上しながら移動する際には、上部構造体5の上面(表面)が基板3の下面と対向し、上部構造体5の上面(表面)の複数(多数)の微細な孔から噴出するガス(以下、基板浮上用ガスと称する場合もある)が、基板3の下面に当たって、基板3を浮上させるように作用する。
【0023】
次に、レーザ処理装置1の動作について、図1および図2を参照しながら説明する。図2は、レーザ処理装置1の動作を説明するための平面図であり、レーザ処理装置1のステージ2と、ステージ2上を浮上しながら搬送される基板3とが示されている。
【0024】
図1において、レーザ光発生部(レーザ発振器)21から出力されたレーザ光(レーザビーム)20は、光減衰器22で光出力が調整された後、光学系モジュール23に入力する。光学系モジュール23に入力したレーザ光20は、光学系モジュール23の内部に設けられたレンズ系によって、ラインビーム形状(長方形状)に成形される。ラインビーム形状に成形されたレーザ光20は、例えば、光学系モジュール23の内部に配置されている反射ミラー23aで反射された後、シールウィンドウ23bから密閉筐体24に入射する。密閉筐体24に入射したレーザ光20は、密閉筐体24の内部空間を進行した後、シールウィンドウ24aから、処理室25に設けられたシールボックス26に入射する。そして、シールボックス26に入射したレーザ光20は、シールボックス26に設けられている開口部27を通過してステージ2に向かって進行する。ここで、シールボックス26の開口部27を通過してステージ2(基板3)に向かって進行するレーザ光20を、符号20aを付してレーザ光20aと称することとする。レーザ光20aは、ステージ2上を浮上しながら移動している基板3(より特定的には基板3上のアモルファスシリコン膜3a)に照射される。アモルファスシリコン膜3aにおけるレーザ光照射領域は、局所的に加熱され、多結晶シリコン膜(ポリシリコン膜)に変化(変質)する。
【0025】
レーザ光20aは、Y方向を長軸方向(長手方向)とするラインビーム形状に成形されている。図2と後述の図3および図25とにおいて、レーザ光20aが照射され得る領域(平面領域)を、符号20bを付してレーザ光照射領域20bとして示してある。レーザ光照射領域20bは、長軸(長辺)と短軸(短辺)とを有する長方形状であり、長軸(長辺)は短軸(短辺)よりも大きく、長軸(長辺)方向はY方向であり、短軸(短辺)方向はX方向である。すなわち、レーザ光20aのステージ2の表面(上面)上での平面形状は、長軸(長辺)と短軸(短辺)とを有する長方形状であり、長軸(長辺)方向はY方向であり、短軸(短辺)方向はX方向である。別の見方をすると、基板3(アモルファスシリコン膜3a)に照射されるレーザ光20aの平面形状は、長軸(長辺)と短軸(短辺)とを有する長方形状であり、長軸(長辺)方向はY方向であり、短軸(短辺)方向はX方向である。つまり、基板3(アモルファスシリコン膜3a)の表面上、あるいは、ステージ2の表面上での、レーザ光20aの平面形状は、長軸(長辺)と短軸(短辺)とを有する長方形状であり、その長軸(長辺)の方向はY方向である。レーザ光照射領域20bの長辺の長さ(Y方向の長さ)は、例えば、基板3のY方向の長さと同程度とすることができる。一方、レーザ光照射領域20bの短辺の長さ(X方向の長さ)は、基板3のX方向の長さよりもかなり小さい。
【0026】
ここで、X方向およびY方向は、互いに交差する方向であり、好ましくは、互いに直交する方向である。また、X方向およびY方向は、ステージ2の上面に略平行であり、従って、ステージ2上を浮上しながら移動する基板3の上面に略平行である。
【0027】
基板3に対するレーザ処理を行う際には、ステージ2自体は移動せず、固定されたステージ2上を基板3が浮上しながらX方向に搬送される(移動する)。すなわち、図2の(a)の状態から、図2の(b)の状態、図2の(c)の状態に、順に移行する。図2の(a)は、基板3の移動開始前、図2の(b)は、基板3の移動中、図2の(c)は、基板3の移動終了時に、それぞれ対応している。ステージ2上に配置された基板3は、ステージ2の上面(すなわちステージ2を構成する複数の上部構造体5の上面)から噴出するガスによって、ステージ2から浮上することができる。そして、基板搬送用のロボットアーム(図示せず)などで基板3をつかんでX方向に移動させることで、ステージ2上に浮上する基板3をX方向へ移動させることができる。
【0028】
基板3に対するレーザ処理を行う際には、ステージ2自体は移動せず、また、レーザ光20の照射位置も移動しない。このため、ステージ2に対するレーザ光20aの照射位置は、固定されている。すなわち、ステージ2から見たときのレーザ光照射領域20bは固定されている。しかしながら、基板3がステージ2上を浮上しながらX方向に移動することで、基板3(アモルファスシリコン膜3a)におけるレーザ光20aの照射位置(照射領域)は、基板3の移動とともに移動することになる。すなわち、位置が固定されたステージ2およびレーザ光20aに対して、基板3が移動することで、基板3(アモルファスシリコン膜3a)におけるレーザ光20aの照射位置(照射領域)が、基板3の移動とともに移動することになる。これにより、アモルファスシリコン膜3aにおけるレーザ光照射領域を走査することができ、アモルファスシリコン膜3a全体にレーザ光20aの照射処理を施すことができる。なお、レーザ光20は、連続的なレーザ光、あるいは、所定の周波数のパルス状のレーザ光とすることができる。
【0029】
また、シールボックス26には、不活性ガス(例えば窒素ガス)が供給されており、シールボックス26の下部に設けられた開口部27からその不活性ガスが噴出(排出、排気)される。そして、シールボックス26に設けられた開口部27から噴出された不活性ガスは、ステージ2上を浮上しながらX方向に移動している基板3(より特定的には基板3上のアモルファスシリコン膜3a)の上面に吹き付けられる。このため、シールボックス26に設けられた開口部27は、不活性ガスを噴出するためのガス噴出口とみなすことができる。
【0030】
シールボックス26の開口部27から基板3上のアモルファスシリコン膜3aに対して不活性ガスを吹き付けるのは、基板3上のアモルファスシリコン膜3aにレーザ光を照射してアモルファスシリコン膜3aを多結晶シリコン膜に変化させる際に、不要な反応が発生しないようにするため(例えば多結晶シリコン膜の表面に酸化シリコン膜が生成されないようにするため)である。すなわち、シールボックス26の開口部27から噴出された不活性ガスの雰囲気中でアモルファスシリコン膜3aにレーザ光を照射してアモルファスシリコン膜3aを多結晶シリコン膜に変化させるためである。
【0031】
つまり、ステージ2上に基板3を浮上させてX方向に移動させながら、基板3の表面に形成されているアモルファスシリコン膜3aに対して、不活性ガス(例えば窒素ガス)を吹き付けつつ、ラインビーム形状に成形されたレーザ光20aが照射される。その結果、基板3上に形成されているアモルファスシリコン膜3aが局所的に加熱されることになり、それによって、アモルファスシリコン膜3aのレーザ光照射領域を多結晶シリコン膜に変化させながら、アモルファスシリコン膜3aにおけるレーザ光照射領域を走査することができる。このようにして、アモルファスシリコン膜3a全体に対してレーザ処理(レーザアニール処理)を施し、アモルファスシリコン膜3a全体を多結晶シリコン膜に変化させることができる。つまり、基板3上に形成されている非晶質の半導体膜(ここではアモルファスシリコン膜3a)を、多結晶の半導体膜(ここでは多結晶シリコン膜)に変質(変化)させることができる。
【0032】
このように、レーザ処理装置1を用いてレーザ処理を行う際には、基板3をステージ2上に浮上させながら搬送し、シールボックス26の開口部27から不活性ガスを噴出し、基板3(アモルファスシリコン膜3a)にレーザ光20aを照射する。
【0033】
<レーザ処理装置の詳細構成について>
次に、本実施の形態におけるレーザ処理装置1のステージ2の詳細構成について、図3図5を参照して説明する。
【0034】
図3は、本実施の形態のレーザ処理装置1の要部平面図であり、図4および図5は、本実施の形態のレーザ処理装置1の要部断面図である。図3は、本実施の形態のレーザ処理装置1が有するステージ2の一部の平面図が示されているが、図3に示されている平面領域は、上記図2の(b)の領域29にほぼ対応している。なお、図3においては、レーザ光照射領域20bをハッチングを付して示してある。図4は、図3に示されるA1-A1線の位置での断面図にほぼ対応し、図5は、図3に示されるA2-A2線の位置での断面図にほぼ対応している。また、図4の断面図にはレーザ光20aを示してあるが、図5の断面図では、アモルファスシリコン膜3aの上面全体にレーザ光20aが照射されているため、レーザ光20aの図示は省略している。
【0035】
上述のように、本実施の形態のレーザ処理装置1のステージ2は、定盤4と、定盤4上に配置された複数の上部構造体5とを有している。ステージ2の上面(表面)は、複数の上部構造体5により構成されており、すなわち、複数の上部構造体5の上面(表面)がステージ2の上面を構成している。ステージ2が有する複数の上部構造体5のそれぞれは、上面(表面)からガスを噴出し、噴出するガスにより基板3を浮上させるように機能することができる。本実施の形態のレーザ処理装置1のステージ2は、更に、充填部材8も有している。
【0036】
ステージ2を構成する複数の上部構造体5は、平面視においてレーザ光照射領域20bを間に挟んでX方向に隣り合う上部構造体5a,5bを含んでいる(図2および図3参照)。上部構造体5aと上部構造体5bとは、X方向において互いに離間し、かつ対向するように配置されている。従って、上部構造体5aと上部構造体5bとは、X方向に所定の間隔を空けて配置されており、X方向における上部構造体5aと上部構造体5bとの間には、充填部材8が配置されている。すなわち、上部構造体5aと上部構造体5bとは、充填部材8を介してX方向に隣り合っており、上部構造体5aと上部構造体5bとの互いに対向する側面間に、充填部材8が配置されている。上部構造体5a,5bと、上部構造体5a,5b間に配置された充填部材8とは、定盤4の上面上に配置(搭載)されている。充填部材8は、上部構造体5aまたは上部構造体5bにネジなどを用いて取り付けることもできる。
【0037】
充填部材8は、上部構造体5aと上部構造体5bとの間の隙間を塞ぐ(埋める、充填する)ための部材である。このため、充填部材8は、上部構造体5aと上部構造体5bとの間の隙間を埋めるように配置されている。上部構造体5a,5bは、上部構造体5a,5b間の充填部材8に接していることが好ましい。上部構造体5とは異なり、充填部材8は、基板3を浮上させるためのガス(基板浮上用ガス)は噴出せず、従って、基板3を浮上させるように作用する部材ではない。充填部材8を間に挟んでX方向に隣り合う上部構造体5aと上部構造体5bとの間には、他の上部構造体5は配置されていないため、上部構造体5aの構造と上部構造体5bとの間の領域では、基板3を浮上させるためのガス(基板浮上用ガス)は噴出されない。
【0038】
上部構造体5aと上部構造体5bとの間に、上部構造体5aと上部構造体5bとの間の隙間を埋めるように、充填部材8が配置されているため、充填部材8は、シールボックス26の開口部27から噴出された不活性ガスが、上部構造体5aと上部構造体5bとの間の隙間を、充填部材8よりも下側(下方)に流れる(流動する)のを防止するように機能することができる。すなわち、上部構造体5aと上部構造体5bとの間に充填部材8が存在することで、シールボックス26の開口部27から噴出された不活性ガスは、充填部材8よりも下方(より特定的には充填部材8の上面よりも下方)には流動しない。
【0039】
充填部材8は、例えば金属材料からなる。例えばステンレス鋼(SUS)などを充填部材8の材料として用いることができる。また、充填部材8は、上部構造体5a,5b間に配置できるように、例えば板状の外形を有している。このため、充填部材8は、板状の金属部材(金属板)を加工することにより形成することができる。
【0040】
上部構造体5aの構造と上部構造体5bの構造とは、基本的には同様であるので、ここでは、上部構造体5aの構造について説明するが、上部構造体5aの構造についての説明は、上部構造体5bの構造にも適用することができる。
【0041】
上部構造体5aは、表面側部材6とベース部(台座部)7とを有しており、ベース部7上に表面側部材6が配置されて支持されている。表面側部材6の上面(表面)が、上部構造体5aの上面(表面)を構成し、従って、ステージ2の上面(表面)の一部を構成している。
【0042】
表面側部材6は、好ましくは多孔質体(多孔質材料)からなる。多孔質体は、多数の微細な気孔(すなわち細孔)を有している。使用する多孔質体としては、多孔質カーボン、多孔質セラミックスまたは多孔質金属などを例示できる。また、表面側部材6は、板状の部材とすることができる。このため、多孔質板(多孔質体からなる板状の部材)を表面側部材6として好適に用いることができ、その場合、基板3を浮上させるためのガスが、多孔質板が有する多数の細孔を通って、多孔質板の上面から噴出することができるようになっている。この場合、多孔質板の細孔が、上部構造体5aの上面の上述した「微細な孔」に対応する。
【0043】
ベース部7は、金属材料により形成することができ、好ましくは、アルミニウムまたはアルミニウム合金により形成することができる。ベース部7は、例えば、板状の部材(金属板)を加工したものを用いることができる。また、定盤4は、平坦な上面を有しており、定盤4の上面上に、上部構造体5a,5bおよび充填部材8が配置されている。上部構造体5a,5bのそれぞれの外形形状は、例えば、略直方体とすることができる。
【0044】
上部構造体5aは、上部構造体5aの上面(表面側部材6)から基板浮上用ガスを噴出するための構造を含んでおり、具体的には以下のような構造を含んでいる。
【0045】
図4に示されるように、上部構造体5aは、ベース部7および表面側部材6に加えて、更に、ベース部7と表面側部材6との間に配置された中間板10を有している。中間板10は、ベース部7よりも薄い板状の部材とすることができ、例えば、金属材料(アルミニウムなど)により形成することができる。上部構造体5aにおいて、ベース部7上に接着層(接着材)11bを介して中間板10が接着されて固定され、また、ベース部7上に接着層(接着材)11aを介して表面側部材6が接着されて固定されている。上部構造体5aにおいて、中間板10は、ベース部7と表面側部材6との間に配置されており、表面側部材6と中間板10との間には、空間(加圧空間)12aが設けられ、ベース部7と中間板10との間には、空間(減圧空間)12bが設けられている。空間12aは、中間板10と表面側部材6と接着層11aとによって囲まれおり、また、空間12bは、ベース部7と中間板10と接着層11bとによって囲まれている。
【0046】
中間板10には、複数(多数)の貫通孔13bが設けられており、また、表面側部材6にも、中間板10の貫通孔13bと整合する位置に、複数(多数)の貫通孔13aが設けられている。表面側部材6の下面における各貫通孔13a周囲と、中間板10の上面における各貫通孔13bの周囲とは、環状の接着層11cを介して接着されている。このため、表面側部材6の各貫通孔13aと中間板10の各貫通孔13bとは、環状の接着層11c内の空間を介してつながっている。このため、多孔質体(多孔質板)からなる表面側部材6は、多孔質体自身が有する細孔に加えて、機械的に形成した複数(多数)の貫通孔13aも更に有している。加工性を考慮すると、好ましくは、貫通孔13a(直径)は、多孔質体の細孔(直径)よりも大きい。
【0047】
空間12aには、ベース部7に設けられた貫通孔(図示せず)などを介して加圧ガスが導入され、空間12aに導入された加圧ガスが、表面側部材6の複数の微細な孔(多孔質体を構成する細孔)を通って表面側部材6の上面から噴出し、噴出するガスによって基板3を浮上させるようになっている。この表面側部材6の上面から噴出するガスを、図4では上向きの矢印として模式的に示してある。表面側部材6の上面から噴出するガスは、例えば、窒素ガスに代表される不活性ガスを用いることができる。そして、空間12bは、ベース部7に設けられた貫通孔(図示せず)などを介して減圧され、それによって、表面側部材6上のガスを、表面側部材6の貫通孔13aと、環状の接着層11c内の空間と、中間板10の貫通孔13bとを介して、空間12bに吸引するようになっている。図4では、表面側部材6の上面(貫通孔13a)から吸引するガスを、下向きの矢印で模式的に示してある。
【0048】
このため、表面側部材6の微細な孔(ここでは多孔質体を構成する細孔)からガスを噴出して基板3を浮上させつつ、表面側部材6の貫通孔13aから表面側部材6上のガスを吸引して基板3を吸引している。このため、表面側部材6からのガスの噴出とガスの吸引とを調整することにより、浮上する基板3の高さ位置を高精度で制御することができる。
【0049】
なお、ここでは、一例として、上部構造体5a,5bの上面からガスの噴出とガスの吸引とを行うための構造を、中間板10、接着層11a,11b,11c、空間12a,12bおよび貫通孔13a,13bなどを用いて形成した場合について説明したが、これに限定されるものではない。上部構造体5a,5bは、その上面からガス(基板浮上用ガス)の噴出とガスの吸引とを行うための構造を有していればよい。
【0050】
レーザ光20aは、基板3(より特定的には基板3上に形成されているアモルファスシリコン膜3a)に照射されるが、もしも基板3およびアモルファスシリコン膜3aが無ければ、レーザ光20aは、上部構造体5aと上部構造体5bとの間の領域(すなわち充填部材8)に照射される。すなわち、レーザ光20aは、上部構造体5aと上部構造体5bとの間の領域に向かって進行している。このため、基板3(アモルファスシリコン膜3a)におけるレーザ光照射領域20b(レーザ光20aが照射される領域)は、上部構造体5aと上部構造体5bとの間の領域の上方(すなわち充填部材8の上方)に位置しており、平面視において、上部構造体5aと上部構造体5bとの間の領域(すなわち充填部材8)と重なっている。このため、上部構造体5aと上部構造体5bとの間の隙間(充填部材8)と、レーザ光20aの焦点位置とは、平面視において重なっている。
【0051】
ガス噴出口としての開口部27は、ステージ2の上方に配置されている。そして、ガス噴出口としての開口部27は、レーザ光20aの焦点位置と平面視において重なる位置に配置されている。すなわち、開口部27は、平面視において、レーザ光照射領域20bと重なっている。平面視において、レーザ光照射領域20bが開口部27に内包されていれば、より好ましい。これは、レーザ光照射領域20b近傍を不活性ガス雰囲気とし、シールボックス26の開口部27から噴出(排出)された不活性ガスからなる雰囲気中で基板3(アモルファスシリコン膜3a)にレーザ光20aが照射されるようにするためである。
【0052】
このため、ガス噴出口としての開口部27は、平面視において、上部構造体5aと上部構造体5bとの間の隙間(充填部材8)と重なっている。すなわち、開口部27の少なくとも一部は、平面視において上部構造体5aと上部構造体5bとの間の隙間(充填部材8)と重なっている。
【0053】
また、ガス噴出口としての開口部27は、処理室25内においてステージ2の上方に配置されており、また、レーザ光発生部21、光減衰器22、光学系モジュール23、および密閉筐体24よりも下方(低い位置)に配置されている。
【0054】
<検討の経緯>
図6は、本発明者が検討した第1検討例のレーザ処理装置101の模式的な構成を示す断面図であり、上記図1に相当するものである。
【0055】
図6に示される第1検討例のレーザ処理装置101においては、上記基板3に相当する基板103は、ステージ102上にそのステージ102と接するように配置されており、ステージ102を移動させることによってステージ102と一緒に基板103も移動させながら、その基板103にレーザ光20を照射する。すなわち、第1検討例のレーザ処理装置101においては、基板103は、ステージ102上を浮上して移動するのではなく、ステージ102上に配置されて固定されており、ステージ102と基板103とが一緒に移動するようになっている。ステージ102と一緒に基板103が移動することにより、基板103上に形成されているアモルファスシリコン膜103aにおけるレーザ光照射領域を走査することができ、アモルファスシリコン膜103a全体を多結晶シリコン膜に変化させることができる。
【0056】
しかしながら、第1検討例のレーザ処理装置101においては、ステージ102と基板103とを一緒に移動させる必要があるため、ある基板103に対するレーザ処理を行った後には、レーザ処理の終了位置まで移動しているステージ102を、初期位置まで戻す必要がある。そして、その後に、ステージ102上に次の基板103を配置してから、ステージ102と基板103とを一緒に移動させながらその基板103に対するレーザ処理を行う必要がある。この場合、レーザ処理が済んだ基板103をステージ102から降ろしてから、ステージ102を初期位置まで戻す動作が必要になることから、複数の基板103にレーザ処理を施す際には、1枚の基板103あたりの処理時間が長くなってしまい、スループットが低くなってしまう。
【0057】
そこで、本発明者は、レーザ処理装置のステージ上に基板を浮上させながらその基板を水平方向に移動させ、移動する基板に対してレーザ光を照射することを検討している。この場合、ステージを移動させる必要がないため、複数の基板にレーザ処理を施す際には、1枚の基板あたりの処理時間を短くすることができ、スループットを向上させることができる。
【0058】
図7は、本発明者が検討した第2検討例のレーザ処理装置201の模式的な構成を示す断面図であり、上記図1に相当するものである。図8は、第2検討例のレーザ処理装置201の要部断面図であり、上記図4に相当するものである。
【0059】
第2検討例のレーザ処理装置201(図7および図8)が、本実施の形態のレーザ処理装置1(図1および図4)と相違しているのは、本実施の形態のレーザ処理装置1のステージ2(図1および図4)が上記充填部材8を有しているのに対して、第2検討例のレーザ処理装置201のステージ202(図7および図8)は、上記充填部材8に相当するものを有していないことである。すなわち、第2検討例のレーザ処理装置201のステージ202においては、上部構造体5aと上部構造体5bとの間に上記充填部材8に相当するものは配置されていない。
【0060】
まず、図7および図8に示される第2検討例のレーザ処理装置201と、本実施の形態のレーザ処理装置1(図1および図4)とにおいて、上部構造体5aと上部構造体5bとが離間している理由について説明する。
【0061】
第2検討例のレーザ処理装置201(図7および図8)および本実施の形態のレーザ処理装置1(図1および図4)においては、固定されたステージ(2,202)上を、基板3が浮上しながら水平方向に移動し、移動する基板3に対してレーザ光20aが照射される。これにより、基板3上に形成されているアモルファスシリコン膜3aにおけるレーザ光照射領域を走査することができ、アモルファスシリコン膜3a全体を多結晶シリコン膜に変化させることができる。
【0062】
しかしながら、第2検討例のレーザ処理装置201(図7および図8)および本実施の形態のレーザ処理装置1(図1および図4)においては、基板3は移動させるがステージ(2,202)は固定されていることに伴い、ステージ(2,202)から見た基板3におけるレーザ光照射位置が固定されてしまい、ステージ(2,202)が局所的に加熱されてしまう虞がある。
【0063】
すなわち、図4および図7において、基板3およびその上のアモルファスシリコン膜3aは、レーザ光20aが照射されている領域とその近傍が局所的に加熱され、従って、符号28を付した点線で囲まれた領域(以下、基板加熱領域28と称する)が局所的に加熱され、かなり高い温度になる。基板3を移動させながらレーザ光を照射するため、基板3およびその上のアモルファスシリコン膜3aにおいて、基板加熱領域28は、基板3の移動とともに移動する。しかしながら、ステージ(2,202)は固定されているため、ステージ(2,202)から見ると基板加熱領域28の位置は移動せずに固定されている。このため、基板3に対するレーザ処理を行っている間、ステージ(2,202)における基板加熱領域28の下方に位置する領域は固定されていることになる。
【0064】
従って、基板3に対するレーザ処理を行っている間、ステージ(2,202)において、基板加熱領域28の下方に位置する領域とその近傍では、基板加熱領域28から伝わる熱で継続的に加熱されることになるため、基板加熱領域28から伝わる熱が蓄積されてしまい、局所的に加熱されて局所的な温度上昇が発生してしまうことが懸念される。ステージ(2,202)が局所的に加熱されて局所的な温度上昇が発生してしまうと、ステージ(2,202)に熱歪(熱に起因した歪)が発生し、ステージ(2,202)が変形してしまう虞がある。
【0065】
ステージ(2,202)が局所的に変形してしまうと、ステージ(2,202)上に浮上する基板3の高さ位置が変動してしまうため、基板3に対するレーザ処理の条件の変動を招く虞がある。すなわち、基板3はステージ(2,202)上を浮上しながら移動するため、ステージ(2,202)が変形してしまうと、ステージ(2,202)上に浮上する基板3の高さ位置が変わってしまうが、基板3の高さ位置が変わると、その基板3に照射されるレーザ光の焦点位置と基板3との間の距離も変わってしまうため、基板3に対するレーザ処理の条件が変動してしまう。
【0066】
例えば、ステージ(2,202)が熱歪によって変形する前は、ステージ(2,202)上に浮上する基板3の高さ位置がレーザ光20aの焦点位置と一致していたとしても、もしもステージ(2,202)が基板加熱領域28からの熱伝導に起因して変形してしまうと、ステージ(2,202)上に浮上する基板3の高さ位置が、レーザ光20aの焦点位置からずれてしまう。これは、ステージ(2,202)が熱歪によって局所的に変形する前と後とで、基板3に対するレーザ処理の条件が変動したことにつながる。
【0067】
ステージ(2,202)が熱歪によって変形する前と後とで、基板3に対するレーザ処理の条件が変動してしまうと、レーザ処理によって基板3上に形成されたアモルファスシリコン膜3aを多結晶シリコン膜に変えた場合の、その多結晶シリコン膜の特性の変動につながる虞がある。例えば、多結晶シリコン膜の結晶化状態が変動する虞がある。このため、1つの基板3に形成されている多結晶シリコン膜の特性の変動や、複数の基板3に形成されている多結晶シリコン膜同士の特性の変動を抑制するためには、基板加熱領域28からの熱伝導によってステージ(2,202)が変形してしまうのを、抑制することが望まれる。
【0068】
ここで、第1検討例(図7および図8)および本実施の形態(図1および図4)とは異なり、上部構造体5aと上部構造体5bとが互いに接して一体化している構成も考えられる。しかしながら、この場合は、基板3(アモルファスシリコン膜3a)におけるレーザ光照射領域の直下にも、従って基板加熱領域28の直下にも、ステージの上部構造体が存在することになり、基板加熱領域28からステージの上部構造体に熱が伝わりやすくなってしまう。このため、基板加熱領域28の直下に存在する上部構造体(特に表面側部材6に相当するもの)が、基板加熱領域28からの熱伝導に起因して変形しやすくなることが懸念される。
【0069】
それに対して、第1検討例(図7および図8)および本実施の形態(図1および図4)においては、ステージを構成する上部構造体5aと上部構造体5bとを所定の間隔で離間させ、レーザ光20aの焦点位置が、平面視において、上部構造体5aと上部構造体5bとの間の隙間(領域)に重なるようにしている。別の見方をすると、基板3(アモルファスシリコン膜3a)におけるレーザ光照射領域が、平面視において、上部構造体5aと上部構造体5bとの間の隙間(領域)に重なるようにしている。これにより、基板3(アモルファスシリコン膜3a)に対するレーザ処理を行っている間に、基板加熱領域28から上部構造体5a,5b(特に上部構造体5a,5bの表面側部材6)に熱が伝わりにくくすることができる。すなわち、基板3(アモルファスシリコン膜3a)におけるレーザ光照射領域の直下には、上部構造体(5a,5b)が存在しなくなるため、基板加熱領域28から上部構造体(5a,5b)に熱が伝わりにくくなり、上部構造体(5a,5b)を構成する表面側部材6が、基板加熱領域28からの熱伝導に起因して変形するリスクを低減することができる。これにより、ステージ2上を浮上しながら移動する基板3の高さ位置が変動するリスクを低減することができる。
【0070】
このような理由から、第2検討例(図7および図8)および本実施の形態(図1および図4)においては、ステージ(2,202)を構成する上部構造体5aと上部構造体5bとを離間させ、レーザ光20aの焦点位置が、平面視において、上部構造体5aと上部構造体5bとの間の隙間(領域)に重なるようにしている。
【0071】
ところで、第2検討例(図7および図8)および本実施の形態(図1および図4)においては、レーザ処理の際は、上述したように、シールボックス26の開口部27から基板3(アモルファスシリコン膜3a)に対して不活性ガスを吹き付ける。これは、基板3上のアモルファスシリコン膜3aにレーザ光20aを照射してアモルファスシリコン膜3aを多結晶シリコン膜に変化させる際に、不要な反応が発生しないようにするためである。すなわち、シールボックス26の開口部27から噴出された不活性ガスの雰囲気中でアモルファスシリコン膜3aにレーザ光20aを照射してアモルファスシリコン膜3aを多結晶シリコン膜に変化させるためである。
【0072】
このため、第2検討例(図7および図8)および本実施の形態(図1および図4)においては、ステージ(2,202)上に基板3を浮上させて水平方向に移動させながら、基板3の表面に形成されているアモルファスシリコン膜3aに対して、不活性ガス(例えば窒素ガス)を吹き付けつつ、レーザ光20aを照射する。これに付随して、第2検討例のレーザ処理装置201(図7および図8)の場合は、図9図11を参照して説明する次のような課題が発生することが、本発明者の検討により分かった。図9図11は、第2検討例のレーザ処理装置201の課題を説明するための説明図であり、上記図8に相当する位置での断面図が示されている。
【0073】
なお、図9図11および後述の図12図14では、シールボックス26の開口部27から噴出される不活性ガス(例えば窒素ガス)によって形成された不活性ガス雰囲気を、ドットのハッチングを付して模式的に示してある。また、上部構造体5a,5bを構成する表面側部材6の上面から噴出するガスを示す矢印(図4および図8における上向きの矢印)と、上部構造体5a,5bを構成する表面側部材6の上面(貫通孔13a)から吸引するガスを示す矢印(図4および図8における下向きの矢印)については、図9図11および後述の図12図14では図示を省略している。
【0074】
図9に示されるように、ある基板3に対するレーザ処理(レーザ光20a照射処理)を行っている間は、シールボックス26の開口部27から噴出される不活性ガスは、基板3(アモルファスシリコン膜3a)に吹き付けられ、基板3上の空間を水平方向に拡がる。このとき、シールボックス26の開口部27から噴出される不活性ガスは、基板3で遮蔽されることで、上部構造体5aと上部構造体5bとの間の隙間には供給されない。
【0075】
一方、ある基板3に対するレーザ処理が終了してから次の基板3のレーザ処理が開始するまでの間は、図10に示されるように、上部構造体5aと上部構造体5bとの間の隙間の上方に基板3が存在しない。このとき、シールボックス26の開口部27から噴出される不活性ガスは、ガスの進行先に基板3が存在していないことから、基板3で遮蔽されることなくステージ2に向かって進行し、上部構造体5aと上部構造体5bとの間の隙間に供給される。図10に示されるように、第2検討例の場合は、上部構造体5aと上部構造体5bとの間に上記充填部材8に相当するものは配置されていないため、シールボックス26の開口部27から上部構造体5aと上部構造体5bとの間の隙間に供給された不活性ガスは、上部構造体5aと上部構造体5bとの間を下方に流れてしまう。不活性ガスは、上部構造体5aと上部構造体5bとの間を下方に流れる分、上部構造体5a,5bの上面上において、水平方向(特にX方向)には拡がりにくくなるので、平面視において、不活性ガス雰囲気の範囲は、上部構造体5aと上部構造体5bとの間の隙間とその近傍に制限されてしまい、平面視における不活性ガス雰囲気の範囲が狭くなってしまう(図10参照)。
【0076】
次の基板3がステージ2上を浮上しながら移動し、図11に示されるように、その基板3の端部が上部構造体5aと上部構造体5bとの間の隙間の上方に達すると、その基板3に対するレーザ処理(レーザ光20a照射処理)が開始される。この際、その基板3の対するレーザ処理が開始されてすぐの段階(すなわち図11のように基板3の端部付近に対してレーザ光20aを照射している段階)では、上述のように平面視における不活性ガス雰囲気の範囲が狭くなっていたことの影響により、レーザ光照射領域(20b)近傍の不活性ガス雰囲気が安定せずに大気成分が混入しやすい。このため、その基板3の対するレーザ処理が開始されてすぐの段階(すなわち図11の段階)では、不活性ガスを含むが大気成分も混入している雰囲気中で基板3(アモルファスシリコン膜3a)にレーザ光20aが照射される虞がある。
【0077】
図11の状態から基板3が更に移動を続けると、上記図9の状態になり、シールボックス26の開口部27から噴出される不活性ガスは、基板3上を水平方向(特にX方向)に拡がるため、平面視における不活性ガス雰囲気の範囲は広くなり、レーザ光照射領域(20b)近傍の不活性ガス雰囲気は安定して大気成分は混入しにくくなる。このため、図9の状態では、大気成分がほとんど混入していない不活性ガス雰囲気中で基板3(アモルファスシリコン膜3a)にレーザ光20aが照射されることになる。
【0078】
このため、第2検討例の場合は、基板3の端部近傍と端部から離れた位置とで、基板3(アモルファスシリコン膜3a)に対するレーザ処理の条件が変動してしまう虞がある。具体的には、基板3の端部近傍と端部から離れた位置とで、レーザ光20aが照射されたときの雰囲気(レーザ光照射領域20b近傍の雰囲気)が相違してしまい、アモルファスシリコン膜3aが多結晶シリコン膜に変化したときの結晶化の程度が相違してしまう虞がある。例えば、基板3上のアモルファスシリコン膜3aをレーザ処理により多結晶シリコン膜に変化させたときに、基板3の端部近傍における多結晶シリコン膜の結晶粒径と、基板3の端部から離れた位置(例えば基板3の中央付近)における多結晶シリコン膜の結晶粒径とが、相違してしまい、基板3上の多結晶シリコン膜における結晶粒径にムラが生じてしまう(不均一になってしまう)。これは、その多結晶シリコン膜を用いる素子(例えば薄膜トランジスタ素子)または装置(例えば表示装置)の信頼性の低下につながるため、防ぐことが望まれる。
【0079】
また、大気成分が混入した雰囲気中でアモルファスシリコン膜3aにレーザ光20aが照射されることは、アモルファスシリコン膜3aを多結晶シリコン膜に変化させる際に、不要な反応が発生してしまうことにつながる。これは、その多結晶シリコン膜を用いる素子(例えば薄膜トランジスタ素子)または装置(例えば表示装置)の信頼性の低下につながるため、防ぐことが望まれる。
【0080】
<主要な特徴と効果について>
次に、本実施の形態のレーザ処理装置の主要な特徴と効果について説明する。図12図14は、本実施の形態のレーザ処理装置1の効果を説明するための説明図であり、上記図8に相当する位置での断面図が示されている。
【0081】
本実施の形態においては、上部構造体5aと上部構造体5bとを所定の間隔で離間させ、上部構造体5aと上部構造体5bとの間に充填部材8を配置し、レーザ光20aの焦点位置(基板3におけるレーザ光照射領域)が、平面視において、上部構造体5aと上部構造体5bとの間の隙間(充填部材8)に重なるようにしている。これにより、基板加熱領域28から熱が伝わりやすい領域である、基板3のレーザ光照射領域の直下の領域には、上部構造体5a,5bではなく充填部材8が存在することになるため、上部構造体5a,5b(特に表面側部材6)が熱歪によって変形してしまうのを、抑制または防止することができる。従って、ステージ2上を浮上しながら移動する基板3の高さ位置が変動するのを抑制または防止することができる。
【0082】
上部構造体5a,5bは、その上面からガス(基板浮上用ガス)を噴出して基板3を浮上するように作用することから、上部構造体5a,5b(特に表面側部材6)が熱歪によって変形してしまうことは、ステージ2上を浮上しながら移動する基板3の高さ位置の変動につながってしまう。それに対して、充填部材8は、その上面からガス(基板浮上用ガス)を噴出する部材ではなく、すなわち、基板3を浮上させるように作用する部材ではない。このため、充填部材8が基板加熱領域28からの熱伝導に起因して熱歪により変形したとしても、上部構造体5a,5b(特に表面側部材6)が熱歪によって変形した場合に比べると、基板3の高さ位置に影響を与えるリスクは小さい。このため、上部構造体5aと上部構造体5bとを所定の間隔で離間させ、上部構造体5aと上部構造体5bとの間に充填部材8を配置したことで、基板3を浮上させるためのガスを噴出する部材が、基板加熱領域28からの熱伝導に起因して変形するリスクを低減することができるので、ステージ2上を浮上しながら移動する基板3の高さ位置が変動するのを抑制または防止することができる。
【0083】
また、第2検討例の場合は、上部構造体5a,5b間に上記充填部材8に相当するものを配置していないため、上記図9図11を参照して説明したように、上部構造体5aと上部構造体5bとの間の隙間の上方に基板3が存在しないとき(図10の段階)には、シールボックス26の開口部27から噴出される不活性ガスが、上部構造体5aと上部構造体5bとの間を下方に流れてしまう。この場合、不活性ガスは、上部構造体5a,5bの上面上において、水平方向(特にX方向)には拡がりにくくなるので、平面視における不活性ガス雰囲気の範囲が狭くなってしまうことから、レーザ光照射領域(20b)近傍の不活性ガス雰囲気が安定せず、大気成分が混入した雰囲気中で基板3(アモルファスシリコン膜3a)にレーザ光20aが照射される虞がある。
【0084】
本実施の形態では、図12に示されるように、ある基板3に対するレーザ処理(レーザ光20a照射処理)を行っている間は、シールボックス26の開口部27から噴出される不活性ガスは、基板3(アモルファスシリコン膜3a)に吹き付けられ、基板3上の空間を水平方向に拡がる。そして、ある基板3に対するレーザ処理が終了してから次の基板3のレーザ処理が開始するまでの間は、図13に示されるように、上部構造体5aと上部構造体5bとの間の隙間の上方に基板3が存在しないが、上部構造体5aと上部構造体5bとの間には充填部材8が配置されている。このとき、図13からも分かるように、シールボックス26の開口部27から噴出される不活性ガスは、ガスの進行先に基板3が存在していないことから、基板3で遮蔽されることなくステージ2に向かって進行し、従って、上部構造体5aと上部構造体5bとの間の隙間に向かって進行し得るが、充填部材8によりガスの流れが制限される。すなわち、本実施の形態では、シールボックス26の開口部27から噴出された不活性ガスは、上部構造体5aと上部構造体5bとの間を、充填部材8よりも下方(より特定的には充填部材8の上面よりも下方)に流れずに済む。このため、シールボックス26の開口部27から噴出された不活性ガスは、上部構造体5aと上部構造体5bとの間を下方に流れずに済む分、上部構造体5a,5bの上面上において水平方向(特にX方向)に拡がりやすくなるので、平面視において、不活性ガス雰囲気の範囲は、上部構造体5a,5b間の隙間からある程度離れた(X方向に離れた)位置にまで達することができる(図13参照)。従って、平面視における不活性ガス雰囲気の範囲が広くなる。
【0085】
次の基板3がステージ2上を浮上しながら移動し、図14に示されるように、その基板3の端部が上部構造体5aと上部構造体5bとの間の隙間の上方に達すると、その基板3に対するレーザ処理(レーザ光20a照射処理)が開始される。この際、その基板3の対するレーザ処理が開始されてすぐの段階(すなわち図14のように基板3の端部付近に対してレーザ光20aを照射している段階)でも、上述のように平面視における不活性ガス雰囲気の範囲が広くなっていたことから、レーザ光照射領域(20b)近傍の不活性ガス雰囲気は安定し、大気成分は混入しにくい。このため、その基板3の対するレーザ処理が開始されてすぐの段階(すなわち図4の段階)でも、大気成分がほとんど混入していない不活性ガス雰囲気中で基板3(アモルファスシリコン膜3a)にレーザ光20aが照射されることになる。
【0086】
図14の状態から基板3が更に移動を続けると、上記図12の状態になり、シールボックス26の開口部27から噴出される不活性ガスは、基板3上を水平方向に拡がる。この段階(図12の段階)でも、平面視における不活性ガス雰囲気の範囲は広くなっているため、レーザ光照射領域(20b)近傍の不活性ガス雰囲気は安定して大気成分は混入しにくく、大気成分がほとんど混入していない不活性ガス雰囲気中で基板3(アモルファスシリコン膜3a)にレーザ光20aが照射されることになる。
【0087】
このため、本実施の形態では、基板3の端部近傍と端部から離れた位置とで、基板3(アモルファスシリコン膜3a)に対するレーザ処理の条件が変動してしまうのを抑制または防止することができる。具体的には、複数の基板3に対するレーザ処理を行う場合に、各基板3に対するレーザ処理が開始されてからその基板3に対するレーザ処理が終了するまでの間、大気成分がほとんど混入していない不活性ガス雰囲気中でその基板3(アモルファスシリコン膜3a)にレーザ光20aを照射することができる。このため、各基板3について、その基板3の端部近傍と端部から離れた位置とで、レーザ光20aが照射されたときの雰囲気(レーザ光照射領域20b近傍の雰囲気)を同じにすることができ、アモルファスシリコン膜3aが多結晶シリコン膜に変化したときの結晶化の程度を同じ(均一)にすることができる。例えば、基板3上のアモルファスシリコン膜3aをレーザ処理により多結晶シリコン膜に変化させたときに、基板3の端部近傍における多結晶シリコン膜の結晶粒径と、基板3の端部から離れた位置(例えば基板3の中央付近)における多結晶シリコン膜の結晶粒径とを同じにすることができ、基板3上の多結晶シリコン膜における結晶粒径を均一にすることができる。このため、その多結晶シリコン膜を用いる素子(例えば薄膜トランジスタ)または装置(例えば表示装置)の信頼性を向上させることができる。
【0088】
また、本実施の形態では、大気成分が混入した雰囲気中でアモルファスシリコン膜3aにレーザ光20aが照射されることを防ぐことができるため、アモルファスシリコン膜3aを多結晶シリコン膜に変化させる際に、不要な反応が発生してしまうのを防止することができる。これにより、その多結晶シリコン膜を用いる素子(例えば薄膜トランジスタ)または装置(例えば表示装置)の信頼性を向上させることができる。
【0089】
また、上部構造体5aと上部構造体5bとの間に配置された充填部材8の上面は、上部構造体5a,5bの各上面(すなわち上部構造体5a,5bをそれぞれ構成する表面側部材6の上面)よりも、低いことが好ましい。その理由は、以下のようなものである。
【0090】
もしも、充填部材8の上面が、上部構造体5a,5bの各上面よりも高い位置にあると、上部構造体5a,5bの各上面から充填部材8の一部が突出した状態になるため、ステージ2上を浮上しながら水平方向に移動する基板3の動きを、充填部材8が阻害してしまう虞がある。このため、充填部材8の上面の高さ位置を、上部構造体5a,5bの各上面と同じかそれよりも低くすることで、ステージ2上を浮上しながら水平方向に移動する基板3の動きを、充填部材8が阻害しないようすることができる。
【0091】
そして、充填部材8の上面の高さ位置を、上部構造体5a,5bの各上面よりも低くすれば、上部構造体5a,5b(表面側部材6)の上面と基板3の下面との間の間隔を変えずに、基板加熱領域28から充填部材8の上面までの距離を大きくすることができる。これにより、基板加熱領域28の下方に位置する充填部材8の上面の高さ位置を低くした分、基板加熱領域28からステージ2に熱が伝わりにくくなるため、ステージ2が、基板加熱領域28からの熱伝導に起因して変形するリスクを低減することができる。
【0092】
すなわち、基板加熱領域28から充填部材8に伝わった熱は、充填部材8から上部構造体5a,5bにも伝導されてしまうため、基板加熱領域28から充填部材8へ熱が伝わりにくくすることは、上部構造体5a,5bの温度上昇を抑制し、上部構造体5a,5b(特に表面側部材6)が変形するリスクを低下させるように作用する。このため、充填部材8の上面の高さ位置を、上部構造体5a,5bの各上面よりも低くすることで、基板加熱領域28から充填部材8に熱が伝わりにくくすることができ、それによって、上部構造体5a,5bの温度上昇を抑制することができるため、上部構造体5a,5b(特に表面側部材6)が変形するリスクを低下させることができる。また、充填部材8は、基板3を浮上させるためのガスを噴出する部材ではないため、充填部材8の上面の高さ位置を、上部構造体5a,5bの各上面よりも低くしても、基板3を浮上させながら移動させることに対して、悪影響は生じずに済む。
【0093】
また、充填部材8の上面と上部構造体5a,5bの各上面との高さの差h1は、40mm以下(h1≦40mm)であることが好ましい。これにより、充填部材8により不活性ガスの流れを制限する効果を得やすくなる。このため、上部構造体5aと上部構造体5bとの間の隙間の上方に基板3が存在しないときに、開口部27から噴出された不活性ガスが、上部構造体5a,5bの上面上を水平方向(特にX方向)に拡がりやすくすることができ、平面視における不活性ガス雰囲気の範囲をより的確に広くすることができる。
【0094】
また、上部構造体5aの上面と上部構造体5bの上面とは、互いに同じ高さ位置にあることが好ましい。これにより、レーザ光20aが照射される位置での基板3の高さ位置を、所定の高さに制御しやすくなり、基板3(アモルファスシリコン膜3a)に対するレーザ処理の条件を所定の条件に制御しやすくなる。
【0095】
また、充填部材8は、シールボックス26の開口部27から噴出された不活性ガスが、上部構造体5aと上部構造体5bとの間を充填部材8よりも下側に流れる(流動する)のを防止するように機能する。このため、充填部材8は、上部構造体5a,5bに接することが好ましく、従って、充填部材8の側面(上部構造体5aに対向する側の側面)と上部構造体5aの側面(充填部材8に対向する側の側面)とが接し、かつ、充填部材8の側面(上部構造体5bに対向する側の側面)と上部構造体5bの側面(充填部材8に対向する側の側面)とが接することが好ましい。これにより、シールボックス26の開口部27から噴出された不活性ガスが、上部構造体5aと上部構造体5bとの間を充填部材8よりも下側に流れるのを、より的確に防止することができるようになる。充填部材8が上部構造体5a,5bと接している場合は、充填部材8のX方向の寸法は、上部構造体5aと上部構造体5bとの間の間隔(X方向の間隔)とほぼ一致している。
【0096】
また、平面視において、上部構造体5aと上部構造体5bとの間の領域全体にわたって充填部材8が配置されていることが好ましい。すなわち、平面視において、上部構造体5aと上部構造体5bとの間におけるY方向に沿った位置の一部にだけ充填部材8が存在しているのではなく、上部構造体5aと上部構造体5bとの間におけるY方向に沿った位置全体にわたって充填部材8が存在(延在)していることが好ましい。これにより、充填部材8により不活性ガスの流れを制限する効果を、上部構造体5aと上部構造体5bとの間の領域全体にわたって得ることができる。このため、上部構造体5aと上部構造体5bとの間の隙間の上方に基板3が存在しないときに、開口部27から噴出された不活性ガスが、上部構造体5a,5bの上面上を水平方向(特にX方向)に拡がりやすくなり、平面視における不活性ガス雰囲気の範囲をより的確に広くすることができる。
【0097】
また、充填部材8は、上部構造体5aと上部構造体5bとの間において、Y方向に延在しており、すなわち、Y方向に沿って配置されている。このY方向は、基板3(アモルファスシリコン膜3a)に照射されるレーザ光20aの長軸方向である。すなわち、充填部材8は、上部構造体5aと上部構造体5bとの間において、レーザ光20a(レーザ光照射領域20b)の長軸方向に沿って配置されている。これにより、X方向に離間する上部構造体5aと上部構造体5bとの間の隙間を、Y方向全体にわたって充填部材8で埋めやすくなり、充填部材8により不活性ガスの流れを制限する効果をY方向全体にわたって的確に得ることができる。
【0098】
また、シールボックス26の開口部27は、不活性ガスの噴出口(吹き出し口)として機能する。シールボックス26の開口部27から噴出された不活性ガスは、レーザ光照射領域20bとその近傍に供給されるべきものである。なぜなら、シールボックス26の開口部27から噴出された不活性ガスは、レーザ光照射領域20bとのその近傍の雰囲気を不活性ガス雰囲気とし、その不活性ガス雰囲気中で基板3(アモルファスシリコン膜3a)にレーザ光20aが照射されるようにするために用いられるからである。このため、シールボックス26の開口部27は、平面視において、レーザ光照射領域20bと重なるようにし、従って、レーザ光20aの焦点位置と重なるようにする。平面視において、レーザ光照射領域20bが、シールボックス26の開口部27に内包されていれば、更に好ましい。これにより、シールボックス26の開口部27からレーザ光照射領域20bとその近傍に不活性ガスを供給しやすくなる。なお、シールボックス26の開口部27が、平面視において、レーザ光照射領域20bと重なる場合は、シールボックス26の開口部27は、平面視において、上部構造体5aと上部構造体5bとの間の隙間(充填部材8)と重なることになる。
【0099】
また、ステージ2が有する複数の上部構造体5は、上部構造体5a,5bと、それ以外の上部構造体5cとを含んでいる。図2の場合は、X方向に隣り合う上部構造体5a,5bをX方向に挟むように、上部構造体5cが配置されており、上部構造体5cと上部構造体5aとがX方向に隣り合い、上部構造体5aと上部構造体5bとがX方向に隣り合い、上部構造体5bと上部構造体5cとがX方向に隣り合っている。
【0100】
X方向に隣り合う上部構造体5a,5b間には、上述したように充填部材8が配置されている。しかしながら、隣り合う上部構造体5c,5a間と、隣り合う上部構造体5b,5c間とには、上記充填部材8に相当するものを設けても、設けなくてもよい。なぜなら、上部構造体5a,5b間の領域は、平面視において、レーザ光照射領域20bと重なっているが、上部構造体5c,5a間の領域と、上部構造体5b,5c間の領域とは、平面視において、レーザ光照射領域20bとは重ならずに、レーザ光照射領域20bからある程度離れているからである。
【0101】
すなわち、シールボックス26の開口部27から噴出される不活性ガスは、レーザ光照射領域20bとその近傍に供給されるべきものであるため、シールボックス26の開口部27からレーザ光照射領域20bに向かって、別の見方をすると、シールボックス26の開口部27から上部構造体5a,5b間の隙間に向かって、シールボックス26の開口部27から不活性ガスが噴出される。このため、上部構造体5a,5b間に充填部材8が無いと、上記図9図11を参照して説明した課題が発生するが、隣り合う上部構造体5c,5a間や隣り合う上部構造体5b,5c間に上記充填部材8に相当するものが無くとも、上記図9図11を参照して説明した課題は発生せずに済む。このため、上部構造体5a,5c間と上部構造体5b,5c間とに充填部材8に相当するものを設けない場合であっても、上部構造体5a,5b間に充填部材8を設ければ、上記図9図11を参照して説明した課題を改善または解決することができる。また、上部構造体5a,5c間と上部構造体5b,5c間とに充填部材8に相当するものを設けない場合は、ステージ2の構造をより単純にできるので、ステージ2を組み立てやすくなる。隣り合う上部構造体5a,5c間および隣り合う上部構造体5b,5c間と同様に、隣り合う上部構造体5c間にも、充填部材8に相当するものは設けなくともよい。
【0102】
また、上部構造体5a,5b,5cのそれぞれは、上面(表面)からガス(気体)を噴出し、噴出するガスによって基板3を浮上させるように作用する。但し、上部構造体5cのガスを噴出する機構は、上部構造体5a,5bと相違する場合もあり得る。例えば、上述したように、上部構造体5a,5bについては、上部構造体5a,5bを構成する表面側部材6の微細な孔(多孔質体を構成する細孔)からガスを噴出して基板3を浮上させつつ、表面側部材6の貫通孔13aから表面側部材6上のガスを吸引して基板3を吸引している。すなわち、上部構造体5a,5bでは、上面からのガスの噴出とガスの吸引との両方を行い、そのバランスを調整している。それに対して、上部構造体5cについては、上部構造体5cを構成する表面側部材(表面側部材6に相当するもの)に設けられた複数の貫通孔からガスを噴出するが、表面側部材上のガスを吸引する機構は上部構造体5cには設けていない。このため、上部構造体5cを構成する表面側部材は、多孔質体でなくともよく、例えば複数(多数)の貫通孔を形成した金属板を用いることができる。
【0103】
ステージ2上に浮上する基板3の高さ位置を制御しやすいのは、上面からガスの噴出を行うがガスの吸引は行わない上部構造体5cではなく、上面からガスの噴出とガスの吸引との両方を行うことができる上部構造体5a,5bである。一方、ステージ2上に浮上する基板3の高さ位置を正確に制御することが望まれるのは、レーザ光照射領域20bに近い領域である。このため、レーザ光照射領域20bに近い上部構造体5a,5bについては、上面からガスの噴出とガスの吸引との両方を行うことができるようにすることで、レーザ光20aが照射される位置での基板3の高さ位置をより的確に制御して、レーザ処理条件を制御しやすくする。一方、レーザ光20aが照射される位置から遠い上部構造体5cについては、上面からガスの噴出を行うがガスの吸引は行わないようにすることで、上部構造体5cの構造を単純にすることができる。これにより、上部構造体5cを準備しやすくなるため、レーザ処理装置の製造コストを低減できる。
【0104】
<表示装置の一例>
本実施の形態のレーザ処理装置1は、例えば、表示装置の製造工程に好適に用いることができる。
【0105】
図15は、液晶表示装置としての大画面テレビジョンを示す外観図であり、図16は、液晶表示装置としてのモバイル通信機器を示す外観図である。図15に示される大画面テレビジョン31および図16に示されるモバイル通信機器としてのスマートフォン32は、それぞれ、本実施の形態における表示装置の一例である。
【0106】
このように本実施の形態における表示装置としては、いろいろなサイズの表示装置が対象となっている。また、本実施の形態における表示装置は、液晶表示装置に限定されるものではなく、例えば、有機EL表示装置も対象となっている。
【0107】
<表示装置の製造工程>
次に、本実施の形態における表示装置の製造工程の概要について、液晶表示装置の製造工程を例に挙げて、図17を参照しながら簡単に説明する。図17は、本実施の形態における表示装置を製造する製造工程の流れを示すフローチャートである。
【0108】
まず、TFTガラス基板とカラーフィルタガラス基板のそれぞれを形成する。
【0109】
具体的には、ガラス基板を用意し、このガラス基板に薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)を形成することで、TFTガラス基板(TFTが形成されたガラス基板)を得る(図17のステップS1)。薄膜トランジスタ形成工程は、上記レーザ処理装置1を用いたレーザ処理も含んでおり、このガラス基板が上記基板3および後述の基板50に対応する。
【0110】
続いて、TFTガラス基板の表面に配向膜を塗布した後(図17のステップS2)、ラビング処理を施す(図17のステップS3)。その後、TFTガラス基板の表面にシール剤を塗布する(図17のステップS4)。
【0111】
一方、他のガラス基板を用意し、このガラス基板にカラーフィルタを形成することにより、カラーフィルタガラス基板(カラーフィルタが形成されたガラス基板)を得る(図17のステップS5)。
【0112】
続いて、カラーフィルタガラス基板の表面に配向膜を塗布した後(図17のステップS6)、ラビング処理を施す(図17のステップS7)。その後、カラーフィルタガラス基板の表面にスペーサを塗布する(図17のステップS8)。
【0113】
次に、TFTガラス基板とカラーフィルタガラス基板とを貼り合せた後(図17のステップS9)、スクライブ(分断)処理を施す(図17のステップS10)。これにより、貼り合せたTFTガラス基板とカラーフィルタガラス基板は、個々の液晶表示装置のサイズに切断される。
【0114】
その後、シール剤とスペーサによって確保されているTFTガラス基板とカラーフィルタガラス基板との間の隙間に液晶を注入した後(図17のステップS11)、その隙間を封止する(図17のステップS12)。
【0115】
続いて、貼り合せたTFTガラス基板とカラーフィルタガラス基板を挟むように一対の偏光板を貼り付ける(図17のステップS13)。このようにして液晶ディスプレイパネルを製造することができる。そして、液晶ディスプレイパネルに対して、駆動回路を圧着した後(図17のステップS14)、さらに、バックライトを着装する(図17のステップS15)。このようにして、液晶表示装置が完成する(図17のステップS16)。
【0116】
<表示装置の詳細な構成>
続いて、本実施の形態における表示装置の詳細な構成について説明する。図18は、本実施の形態における表示装置の構成例を示す図である。
【0117】
図18に示される構成例では、表示装置は、複数の画素40がマトリクス状(行列状)に配置された画素部(画素領域)41と、走査線駆動回路42と、信号線駆動回路43とを有している。画素40は、走査線駆動回路42と電気的に接続された配線44(走査線)によって供給される走査信号によって、行ごとに選択状態か非選択状態かが決定される。また、走査信号によって選択されている画素40は、信号線駆動回路43と電気的に接続された配線45(信号線)によって、画像信号(映像信号)が供給される。
【0118】
図19は、図18に示す画素の構成例を示す図である。図19に示されるように、画素40には、画素を制御するスイッチング素子として機能する薄膜トランジスタ46と、表示部として機能する液晶素子47とが設けられている。例えば、液晶素子47は、一対の電極(画素電極と対向電極)の間に液晶材料を挟んだ構造を有している。
【0119】
薄膜トランジスタ46においては、ゲート電極が配線44(走査線)と電気的に接続され、ソース電極およびドレイン電極のいずれか一方が、配線45A(信号線)と電気的に接続され、他方が液晶素子47の画素電極と電気的に接続されている。
【0120】
<薄膜トランジスタのデバイス構造>
続いて、薄膜トランジスタ46のデバイス構造について説明する。図20は、薄膜トランジスタのデバイス構造を示す断面図である。
【0121】
図20に示される薄膜トランジスタ46は、トップゲート型構造を有している。薄膜トランジスタ46は、絶縁表面を有する基板50(例えばガラス基板)上に形成されたチャネル膜51を有している。チャネル膜51は、多結晶の半導体膜である多結晶シリコン膜からなる。そして、基板50上に、チャネル膜51を覆うように、ゲート絶縁膜52が形成されており、ゲート絶縁膜52上にゲート電極53が形成されている。ゲート絶縁膜52上に、ゲート電極53を覆うように、層間絶縁膜54が形成されており、層間絶縁膜54上に、ソース電極55aおよびドレイン電極55bが形成されている。ソース電極55aおよびドレイン電極55bのそれぞれは、層間絶縁膜54およびゲート絶縁膜52に設けられたスルーホールを通じて、チャネル膜51と接している。層間絶縁膜54、ソース電極55aおよびドレイン電極55bを覆うように、保護膜56が形成されている。以上のようにして、薄膜トランジスタ46が形成されている。
【0122】
また、ここでは、薄膜トランジスタ46がトップゲート型構造を有する場合について説明したが、他の形態として、薄膜トランジスタ46は、ボトムゲート型構造を有していてもよい。
【0123】
<薄膜トランジスタの製造工程>
次に、薄膜トランジスタ(46)の製造工程について説明する。図21は、薄膜トランジスタの製造工程の流れを示すフローチャートである。
【0124】
まず、例えば、ガラスからなる基板であるガラス基板(上記基板3,50に対応)上にチャネル膜(51)を形成する(図21のステップS21)。次に、ガラス基板(3,50)上に、チャネル膜(51)を覆うように、ゲート絶縁膜(52)を形成する(図21のステップS22)。次に、ゲート絶縁膜(52)上にゲート電極(53)を形成する(図21のステップS23)。ゲート電極(53)の形成後、チャネル膜(51)にソース・ドレイン用の不純物を注入することもできる。次に、層間絶縁膜(54)を形成する(図21のステップS24)。次に、層間絶縁膜(54)およびゲート絶縁膜(52)にスルーホールを形成してから、ソース電極(55a)およびドレイン電極(55b)を形成する(図21のステップS25)。次に、保護膜(56)を形成する(図21のステップS26)。以上のようにして、薄膜トランジスタを製造することができる。
【0125】
<チャネル膜の形成工程>
ここで、チャネル膜(51)の形成工程の詳細について説明する。図22は、チャネル膜の形成工程の流れを説明するフローチャートである。
【0126】
まず、ガラス基板(3,50)上にアモルファスシリコン膜を形成する(図22のステップS31)。その後、アモルファスシリコン膜に対してレーザ光(20a)を照射して、レーザアニール処理を施す(図22のステップS32)。これにより、アモルファスシリコン膜は加熱され、その結果、アモルファスシリコン膜から多結晶シリコン膜が形成される(図22のステップS33)。すなわち、アモルファスシリコン膜が多結晶シリコン膜に変化(変質)する。以上のようにして、多結晶シリコン膜からなるチャネル膜(51)を形成することができる。また、レーザアニール処理の後、多結晶シリコン膜からなるチャネル膜(51)は、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術などを用いて所定の形状にパターニングすることもできる。
【0127】
チャネル膜は、電子の通り道となる機能を有することから、チャネル膜の特性が薄膜トランジスタの性能を左右することになる。アモルファスシリコンに比べて多結晶シリコンは、移動度が高いため、チャネル膜を多結晶シリコン膜で構成することより、薄膜トランジスタの性能を高めることができる。このため、本実施の形態では、チャネル膜を多結晶シリコン膜から構成している。具体的には、上述したように、アモルファスシリコン膜を形成した後、アモルファスシリコン膜に対してレーザアニール処理を施すことにより、アモルファスシリコン膜を多結晶シリコン膜に変化させている。従って、チャネル膜を多結晶シリコン膜から構成するためには、レーザアニール処理(加熱処理)が必要であり、このレーザアニール処理を実施するためには、レーザ処理装置が必要となる。本実施の形態では、このレーザアニール処理を実施するために、上述したレーザ処理装置1を用いることができる。
【0128】
本実施の形態のレーザ処理装置1を用いた場合、ステージ2上に基板3を浮上させながらその基板3を水平方向に移動(搬送)させ、移動する基板3(より特定的には基板3上のアモルファスシリコン膜3a)に対してレーザ光20aを照射することで、基板3上に形成されているアモルファスシリコン膜3aを多結晶シリコン膜に変化させる。この多結晶シリコン膜が、上述したチャネル膜(51)に対応している。ステージ2を移動させる必要がないため、複数の基板にレーザ処理を施す際に、1枚の基板あたりの処理時間を短くすることができ、スループットを向上させることができる。
【0129】
また、本実施の形態のレーザ処理装置1では、上部構造体5aと上部構造体5bとを離間させ、レーザ光20aの焦点位置(基板3におけるレーザ光照射領域)が、平面視において、上部構造体5aと上部構造体5bとの間の隙間(充填部材8)に重なるようにしていることで、上部構造体5a,5bが熱歪によって変形してしまうのを抑制または防止することができる。これにより、ステージ2上を浮上しながら移動する基板3の高さ位置が変動するのを抑制または防止することができる。また、本実施の形態のレーザ処理装置1では、上述したように、上部構造体5aと上部構造体5bとの間の隙間を埋めるように充填部材8が配置されていることで、上記図9図11を参照して説明した課題を解決または改善することができる。
【0130】
このため、本実施の形態のレーザ処理装置1を用いることで、基板3(アモルファスシリコン膜3a)に対するレーザ処理の条件が変動してしまうのを抑制または防止することができる。これにより、レーザ処理によって基板3上に形成されたアモルファスシリコン膜3aを多結晶シリコン膜に変えた場合の、その多結晶シリコン膜の特性の変動を抑制または防止することができる。このため、多結晶シリコン膜からなるチャネル膜(51)の特性が変動するのを抑制または防止することができ、それゆえ、薄膜トランジスタ(46)の特性が変動するのを抑制または防止することができる。従って、薄膜トランジスタ(46)を有する表示装置の性能や信頼性を向上させることができる。
【0131】
<変形例>
次に、本実施の形態のレーザ処理装置1の第1変形例について説明する。
【0132】
図23は、本実施の形態のレーザ処理装置1の第1変形例を示す要部断面図であり、上記図4に対応するものである。
【0133】
上記図4の場合は、上部構造体5a,5bと上部構造体5a,5b間に配置された充填部材8とは、定盤4の上面上に配置されており、上部構造体5a,5bおよび充填部材8の各下面は、定盤4の上面に接していた。
【0134】
それに対して、図23(第1変形例)の場合は、充填部材8の下面は、定盤4の上面から所定の距離、離れており、上部構造体5a,5b間に配置された充填部材8と定盤4の上面上との間には、充填部材8が存在していない所定の空間が存在している。すなわち、図4の場合と図23の場合とで、上部構造体5a,5bおよび充填部材8の各上面の高さ位置は同じであるが、充填部材8の高さ方向(Z方向)の寸法は、図4の充填部材8よりも図23の充填部材8の方が小さく、それゆえ、充填部材8の下面の高さ位置は、図4の充填部材8の下面よりも図23の充填部材8の下面の方が高くなっている。
【0135】
図23(第1変形例)の場合も、充填部材8は、シールボックス26の開口部27から噴出された不活性ガスが、上部構造体5aと上部構造体5bとの間を充填部材8よりも下側に流れる(流動する)のを防止するように機能する。すなわち、図23(第1変形例)の場合も、上部構造体5aと上部構造体5bとの間に充填部材8が存在することで、シールボックス26の開口部27から噴出された不活性ガスは、充填部材8よりも下方(より特定的には充填部材8の上面よりも下方)には流動しない。このため、上部構造体5aと上部構造体5bとの間において、充填部材8と定盤4との間に充填部材8が存在しない空間があったとしても、シールボックス26の開口部27から噴出された不活性ガスの流れには影響を与えないで済む。図23(第1変形例)の場合も、充填部材8は、上部構造体5a,5bに接することが好ましく、従って、充填部材8の側面(上部構造体5aに対向する側の側面)と上部構造体5aの側面(充填部材8に対向する側の側面)とが接し、かつ、充填部材8の側面(上部構造体5bに対向する側の側面)と上部構造体5bの側面(充填部材8に対向する側の側面)とが接することが好ましい。
【0136】
また、更なる変形例として、上部構造体5a,5b間だけでなく、上部構造体5a,5bの下(すなわち上部構造体5a,5bと定盤4との間)にも充填部材8が存在している場合もあり得る。この場合、充填部材8は、上部構造体5aと上部構造体5bとの間から、上部構造体5a,5bと定盤4との間にかけて、延在したものとなる。いずれにしても、充填部材8は、上部構造体5a,5b間に配置された(挟まれた)部分を有している。
【0137】
次に、本実施の形態のレーザ処理装置1の第2変形例について説明する。
【0138】
図24は、第2変形例のレーザ処理装置1のステージ2を示す平面図であり、図25は、第2変形例のレーザ処理装置1の要部平面図であり、図26は、第2変形例のレーザ処理装置1の要部断面図である。図24には、上記図2の(a)に相当する平面図が示されている。図25は、図24の一部を拡大して示した部分拡大平面図であり、上記図3に相当している。図25においては、レーザ光照射領域20bをハッチングを付して示してある。図26は、図25に示されるC1-C1線の位置での断面図にほぼ対応している。また、図26に示されるC2-C2線の位置での断面図、C3-C3線の位置での断面図、C4-C4線の位置での断面図、およびC5-C5線の位置での断面図は、いずれも上記図4とほぼ同様であるので、ここでは繰り返しの図示は省略する。
【0139】
上記図2の場合は、上部構造体5a,5b,5cのそれぞれのY方向の寸法は、基板3のY方向の寸法と同程度かそれよりも大きく、X方向に隣り合う一対の上部構造体5a,5b上を、基板3が浮上しながらX方向に移動し、その移動する基板3(より特定的には基板3上のアモルファスシリコン膜3a)にレーザ光20aを照射していた。そして、X方向に隣り合う上部構造体5a,5b間には、上記実施の形態1で説明した充填部材8が配置されていた。
【0140】
それに対して、図24図26(第2変形例)の場合は、上部構造体5a,5b,5cのそれぞれのY方向の寸法は、基板3のY方向の寸法よりも小さい。そして、充填部材8を挟んでX方向に隣り合う一対の上部構造体5a,5bが、Y方向に複数並んで配置されている。X方向に隣り合う上部構造体5a,5b間には、上記充填部材8が配置されているため、一対の上部構造体5a,5bがY方向に複数並んでいることに対応して、上部構造体5a,5b間の充填部材8も、Y方向に複数並んでいる。つまり、図24図26の場合は、上部構造体5aと上部構造体5bとそれらの間の充填部材8とを1組とし、それがY方向に複数組並んでいる。なお、図24図26の場合は、Y方向に4組並んでいる場合が示されているが、Y方向に並ぶ組数は、4組には限定されない。また、図24の場合は、上部構造体5a,5bだけでなく、上部構造体5a,5b以外の上部構造体5cのY方向の寸法も、基板3のY方向の寸法よりも小さいため、上部構造体5cもY方向に複数並んでいる。
【0141】
上部構造体5a,5bおよび充填部材8のそれぞれの構造は、図24図26の場合も、上記図3図5を参照して説明したものと基本的には同様であるので、ここではその繰り返しの説明は省略する。
【0142】
図24図26(第2変形例)の場合は、個々の上部構造体5a,5b,5cの寸法(平面積)を小さくすることができるため、上部構造体5a,5b,5cを準備しやすくなり、ステージ2を組立やすくなる。このため、レーザ処理装置を製造しやすくなる。
【0143】
また、図24図26(第2変形例)の場合に、Y方向に並ぶ複数の充填部材8を一体化することもできる。この場合、Y方向に延在する共通の充填部材8の一方の側面側に複数の上部構造体5aが並び、他方の側面側に複数の上部構造体5bが並んだ構造となる。すなわち、Y方向に延在する共通の充填部材8を間に挟んで、複数組の上部構造体5a,5bが並んだ構造となる。
【0144】
また、上記図23(第1変形例)の場合の充填部材8を、図24図26(第2変形例)の場合に適用することもできる。
【0145】
次に、本実施の形態のレーザ処理装置1の第3変形例について説明する。充填部材8の高さ(上面の高さ位置)は、一定でない場合もあり得る。図27および図28は、第3変形例のレーザ処理装置1の要部断面図であり、充填部材8の高さが一定でない場合の例が示されている。なお、図27は、上記図5に対応する断面図であり、図28は、上記図26に対応する断面図である。断面が図27の場合の平面図は、上記図3とほぼ同様であり、断面が図28の場合の平面図は、上記図25とほぼ同様である。
【0146】
図27の場合は、上記図3図5の場合と同様に、一対の上部構造体5a,5b間に充填部材8が配置されている。上記図5の場合は、充填部材8の高さ(上面の高さ位置)は、Y方向の位置によらずほぼ一定であったが、図27の場合は、充填部材8の高さ(上面の高さ位置)は一定ではない。具体的には、図27の場合は、Y方向の両端部で充填部材8の高さ(上面の高さ位置)を高くし、Y方向の両端部以外(すなわちY方向における両端部よりも内側)では、両端部よりも充填部材8の高さ(上面の高さ位置)を低くしている。なお、基板3が浮上しながらY方向に移動する際に、充填部材8の高さが高くなっている領域(Y方向の両端部)は、平面視において、基板3とは重ならないことが好ましい。
【0147】
また、図28の場合は、上記図25および図26の場合と同様に、一対の上部構造体5a,5bがY方向に複数並んでいることに対応して、上部構造体5a,5b間の充填部材8も、Y方向に複数並んでいる。すなわち、図28の場合も、上記図25および図26の場合と同様に、上部構造体5aと上部構造体5bとそれらの間の充填部材8とを1組とし、それがY方向に複数組並んでいる。上記図26の場合は、Y方向に並ぶ複数の充填部材8の高さ(上面の高さ位置)は、Y方向の位置によらずほぼ一定であったが、図28の場合は、Y方向に並ぶ複数の充填部材8の高さ(上面の高さ位置)は一定ではない。具体的には、図28の場合は、Y方向に並ぶ複数の充填部材8全体におけるY方向の両端部で充填部材8の高さ(上面の高さ位置)を高くし、Y方向の両端部以外(すなわちY方向における両端部よりも内側)では、両端部よりも充填部材8の高さ(上面の高さ位置)を低くしている。なお、基板3が浮上しながらY方向に移動する際に、充填部材8の高さが高くなっている領域(Y方向の両端部)は、平面視において、基板3とは重ならないことが好ましい。
【0148】
図27の場合および図28の場合は、Y方向の両端部で充填部材8の高さ(上面の高さ位置)が高くなっていることで、開口部27から供給された不活性ガスのY方向の流れを、充填部材8の高さが高くなっている領域(Y方向の両端部)で制限する効果を得られる。これにより、上部構造体5aと上部構造体5bとの間の隙間の上方に基板3が存在しないときに、開口部27から噴出された不活性ガスが、上部構造体5a,5bの上面上を水平方向(特にX方向)に拡がりやすくなる。
【0149】
次に、本実施の形態のレーザ処理装置1の第4変形例について説明する。第4変形例は、上記図3図5の場合、上記図23(第1変形例)の場合、図24図26(第2変形例)の場合、図27および図28(第3変形例)の場合のいずれにも適用することができる。
【0150】
第4変形例は、充填部材8が、その上面からガスを噴出することができる構造を有している場合に対応している。充填部材8の上面から噴出するガスは、例えば、窒素ガスに代表される不活性ガスを用いることができる。
【0151】
第4変形例の場合は、シールボックス26の開口部27から噴出された不活性ガスの流れ(下方に向かう流れ)を、充填部材8の上面から噴出するガスにより制限する効果も得られるため、上部構造体5aと上部構造体5bとの間の隙間の上方に基板3が存在しないときに、開口部27から噴出された不活性ガスが、上部構造体5a,5bの上面上を水平方向(特にX方向)に更に拡がりやすくなる。
【0152】
一方、充填部材8が、その上面からガスを噴出することができる構造を有していない場合、すなわち、充填部材8の上面からガスが噴出されない場合には、充填部材8の上面から噴出するガスが基板3に当たることはない。これにより、充填部材8の上面から噴出するガスに影響されずに済むため、レーザ光20aが照射される位置での基板3の高さ位置を、上部構造体5a,5bの上面からのガスの噴出と吸引とにより、的確に制御することができる。このため、レーザ処理条件を制御しやすくなる。
【0153】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0154】
1,101 レーザ処理装置
2,102,202 ステージ
3,103 基板
3a,103a アモルファスシリコン膜
4 定盤
5,5a,5b,5c 上部構造体
6 表面側部材
7 ベース部
8 充填部材
10 中間板
11a,11b,11c 接着層
12a,12b 空間
13a,13b 貫通孔
20,20a レーザ光
20b レーザ光照射領域
21 レーザ光発生部
22 光減衰器
23 光学系モジュール
23a 反射ミラー
23b シールウィンドウ
24 密閉筐体
24a シールウィンドウ
25 処理室
26 シールボックス
27 開口部
28 基板加熱領域
31 大画面テレビジョン
32 スマートフォン
40 画素
41 画素部
42 走査線駆動回路
43 信号線駆動回路
44,45,45A 配線
46 薄膜トランジスタ
47 液晶素子
50 基板
51 チャネル膜
52 ゲート絶縁膜
53 ゲート電極
54 層間絶縁膜
55a ソース電極
55b ドレイン電極
56 保護膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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