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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】光学式変位計
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20230704BHJP
【FI】
G01B11/24 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019085201
(22)【出願日】2019-04-26
(65)【公開番号】P2020180919
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 隆志
(72)【発明者】
【氏名】本間 達朗
【審査官】飯村 悠斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-151067(JP,A)
【文献】特開2018-144158(JP,A)
【文献】特開2008-096125(JP,A)
【文献】特開昭57-208404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Y方向に搬送される測定対象物のX-Z断面のプロファイルを三角測距の原理に基づき測定する光切断方式の光学式変位計であって、
X方向に幅を有するスリット光またはスポット光をX方向に走査して前記測定対象物に照射する投光部と、
前記測定対象物からの反射光を受光する画像センサであって、前記X方向に対応するU方向とZ方向に対応するV方向とに二次元配列された複数の画素を有し、前記複数の画素による前記反射光の受光量を出力する画像センサと、
前記U方向に並んだ複数の画素列のそれぞれについて受光量のピークとなる前記V方向における画素の位置をピーク位置として検出する検出手段と、
前記U方向における前記複数の画素列のそれぞれの位置と、前記V方向における前記ピーク位置とからX-Z断面についてのプロファイルを、前記Y方向における異なる位置で複数取得し、取得した複数のプロファイルに基づき前記測定対象物の三次元形状を測定する測定手段と、
前記三角測距の原理に基づく前記投光部の投光軸と前記画像センサの受光軸とがなす角度に応じてY-Z断面に発生する高さの測定が不可能な死角領域に、前記測定手段により取得された前記X-Z断面についてのプロファイルが存在する場合、前記測定手段により生成された三次元形状のうち前記死角領域に存在するプロファイルで構成される部分を誤検出値として判定する判定手段と
を有することを特徴とする光学式変位計。
【請求項2】
前記判定手段により誤検出値と判定されたプロファイルの部分を削除する削除手段をさらに有し、
前記測定手段は、前記三次元形状のうち前記誤検出値を除外して前記測定対象物の三次元形状を測定することを特徴とする請求項1に記載の光学式変位計。
【請求項3】
前記測定対象物からの反射光を前記画像センサの受光面に結像させる受光レンズをさらに有し、
前記Y方向において並んだ複数の測定点のうちで注目測定点における前記測定対象物の高さと、前記受光レンズの受光軸と、前記投光部の投光方向とに基づき、前記注目測定点についての死角領域を決定する死角領域決定手段をさらに有し、
前記判定手段は、前記注目測定点の前後に測定される測定点における前記測定対象物の高さが前記死角領域に属しているかどうかに基づき、前記誤検出値を判定することを特徴とする請求項1または2に記載の光学式変位計。
【請求項4】
前記死角領域は、前記注目測定点を一つの頂点とする直角三角形であり、
前記直角三角形における直角を挟む第一の辺と第二の辺のうち前記第一の辺は前記Z方向と平行であり、前記第二の辺は前記Y方向と平行であり、前記直角三角形の斜辺は、前記受光レンズの光軸と平行であることを特徴とする請求項3に記載の光学式変位計。
【請求項5】
前記死角領域は、前記注目測定点を一つの頂点とする直角三角形であり、
前記直角三角形における直角を挟む第一の辺と第二の辺のうち前記第一の辺は前記Z方向と平行であり、前記第二の辺は前記Y方向と平行であり、前記直角三角形の斜辺は、前記受光レンズの開口数によって定まる頂角を有し、かつ、前記注目測定点を頂点とする二等辺三角形の二つの等辺の間に位置していることを特徴とする請求項3に記載の光学式変位計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式変位計に関する。
【背景技術】
【0002】
コンベイヤによってY方向に搬送される測定対象物(ワーク)についてZ方向における高さを測定するために、光切断方式の光学式変位計が提案されている(特許文献1、2)。Y方向とZ方向とに直交する方向がX方向であり、XY平面にワークが載置されている。光学式変位計は、X方向に幅を有するスリット光をワークに照射し、ワークからの反射光を二次元配列の画像センサで受光する。スリット光の投光方向と画像センサの受光方向とは傾いており、三角測距の原理に基づき、ワークの高さが算出される。このような、光切断方式の光学式変位計はワークのX-Z断面の輪郭(プロファイル)を一度に取得できる。Y方向にワークを搬送しながら繰り返し撮像を実行することで、Y方向における異なる位置でのプロファイルが取得される。また、複数のプロファイルからワークの三次元形状を示すデータが取得される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-096125号公報
【文献】特開2012-103266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、光学式変位計に要求される測定精度が高くなるにつれて、従来は無視可能であった測定誤差が顕在する可能性がある。光学式変位計は、三角測距の原理を用いてワークの高さを測定するため、原理上、測定不可能な死角領域がY方向において発生し、この死角領域において偽の測定結果が生じてしまうことがある。そこで、本発明は光切断方式の光学式変位計において三次元形状の一部を誤検出値として判定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、たとえば、
Y方向に搬送される測定対象物のX-Z断面のプロファイルを三角測距の原理に基づき測定する光切断方式の光学式変位計であって、
X方向に幅を有するスリット光またはスポット光をX方向に走査して前記測定対象物に照射する投光部と、
前記測定対象物からの反射光を受光する画像センサであって、前記X方向に対応するU方向とZ方向に対応するV方向とに二次元配列された複数の画素を有し、前記複数の画素による前記反射光の受光量を出力する画像センサと、
前記U方向に並んだ複数の画素列のそれぞれについて受光量のピークとなる前記V方向における画素の位置をピーク位置として検出する検出手段と、
前記U方向における前記複数の画素列のそれぞれの位置と、前記V方向における前記ピーク位置とからX-Z断面についてのプロファイルを、前記Y方向における異なる位置で複数取得し、取得した複数のプロファイルに基づき前記測定対象物の三次元形状を測定する測定手段と、
前記三角測距の原理に基づく前記投光部の投光軸と前記画像センサの受光軸とがなす角度に応じてY-Z断面に発生する高さの測定が不可能な死角領域に、前記測定手段により取得された前記X-Z断面についてのプロファイルが存在する場合、前記測定手段により生成された三次元形状のうち前記死角領域に存在するプロファイルで構成される部分を誤検出値として判定する判定手段と
を有することを特徴とする光学式変位計を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、三次元形状の原理に基づき発生する高さの測定が不可能な死角領域においてプロファイルが存在するかどうかに基づき、三次元形状の一部が誤検出値として判定可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】光学式変位計を説明する図
図2】三角測距の原理を説明する図
図3】プロファイルの測定を説明する図
図4】ピーク位置の検出方法を説明する図
図5】誤ったプロファイルの発生原理を説明する図
図6】誤ったプロファイルを説明する図
図7】誤ったプロファイルを説明する図
図8】死角領域を説明する図
図9】死角領域を説明する図
図10】誤った測定結果が削除されたことを説明する図
図11】修正された三次元形状を説明する図
図12】光学式変位計を構成する機能を説明するブロック図
図13】死角領域の調整を説明する図
図14】測定方法を説明するフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態が詳しく説明される。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一または同様の構成には同一の参照番号が付され、重複した説明は省略される。
【0009】
<光学式変位計>
図1は光学式変位計100を示す図である。光学式変位計100はベルトコンベイヤ4によりY方向に搬送されるワークWのプロファイルおよび三次元形状を測定する装置である。この例では、Z方向はワークWの高さ方向に対応している。ヘッド部1はXZ平面と平行なスリット光L1を出力し、ワークWからの反射光L2を受光することで、受光結果を制御部2に出力する。制御部2は、ヘッド部1が出力する受光結果に基づきワークWのプロファイルを演算する。なお、制御部2はヘッド部1に統合されてもよい。プロファイルとはXZ平面と平行なワークWの切断面の外縁を示すデータである。たとえば、プロファイルは(xi,zi)の集合体である(iはインデックス)。xiはX方向における位置を示す。ziはZ方向における高さを示す。なお、3次元形状は、(xi,yi,zi)の集合体である。yiは、Y方向における位置を示す。制御部2は、一定周期ごとに、ヘッド部1に撮像を実行させることで、yiが異なるワークWのプロファイル(xi,zi)を求める。表示部3は、光学式変位計100によるワークWの測定結果を表示したり、光学式変位計100の設定を行うためのUI(ユーザインタフェース)を表示したりする。操作部5は、光学式変位計100に対するユーザ入力を受け付けるための入力装置である。
【0010】
<三次元測距の原理>
図2は光切断方式(三角測距)の原理を説明する図である。ヘッド部1の筐体15の内部には、光源6、投光レンズ7、受光レンズ12および画像センサ13が内蔵されている。光源6から出力された光は投光レンズ7を通過することでスリット光L1に変換される。筐体15には、スリット光L1が通過するための透光窓8が設けられている。透光窓8には、防塵のための透光ガラス9aが設けられている。同様に、筐体15には反射光L2を筐体15の内部に導くための受光窓10が設けられている。受光窓10には、防塵のための透光ガラス9bが設けられている。受光レンズ12は反射光L2を画像センサ13に結像させるためのレンズである。画像センサ13は二次元配列された複数の画素(受光素子や光電変換素子と呼ばれてもよい)を有するセンサである。図2が示すように、光源6の投光軸に対して、画像センサ13の受光軸は角度θだけ傾いている。つまり、高さZ0からの反射光L2は画像センサ13のV方向におけるV0の位置に結像する。高さZ1からの反射光L2は画像センサ13のV方向におけるV1の位置に結像する。高さZ2からの反射光L2は画像センサ13のV方向におけるV2の位置に結像する。このように画像センサ13のV方向は、ワークWのZ方向に対応している。画像センサ13のU方向は図示されていないが、U方向はワークWのX方向に対応している。つまり、画像センサ13が出力する受光結果である画像の縦方向はV方向であり、横方向はU方向である。
【0011】
図2においてはスリット光L1がZ軸方向に出力されるように光源6が配置されているが、光源6および投光レンズ7のペアと、画像センサ13および結像レンズ12とのペアとの位置関係は逆であってもよい。
【0012】
図3は画像センサ13が出力する画像I1と、ワークWの断面との関係を説明する図である。この例では、ワークWのXZ断面において高さが三段階に変化している。より具体的には、X方向における位置X0から位置X1までの高さはZ0である。位置X1からX2までの高さはZ2である。位置X2からX3までの高さはZ1である。画像I1は、このようなワークWをヘッド部1により撮像して得られる画像である。なお、画像I1のU方向(横方向)はワークWのX方向に対応している。つまり、画像I1の位置U0、U1、U2、U3はそれぞれ位置X0、X1、X2、X3に対応している。同様に、画像I1のV方向における位置V0、V1、V2はそれぞれ高さZ0、Z1、Z2に対応している。スリット光L1がXY平面に入射することで形成される光スポット(反射位置の集合)は直線状である。つまり、ベルトコンベイヤ4上にワークWが存在しないときにヘッド部1が出力する画像には、ほぼ一直線状の光スポットが並ぶことになる。その一方で、一般的なワークWの切断面のエッジの高さは一定でないことが多い。この場合、図3が示すように、複数の高さのそれぞれに対応したV方向の位置に光スポットが並ぶことになる。高さに応じてV方向の位置が変わることは、図2が示す通りである。このように制御部2は、あるY方向の位置で取得された画像IMから各U方向の位置ごとにV方向の位置を演算することでプロファイルを生成する。なお、なお、XZ座標系とUV座標系との間には一定の縮尺関係があるため、制御部2は、簡単な演算により、UV座標系におけるプロファイルをXZ座標系におけるプロファイルに変換できる。
【0013】
<位置(高さの演算)>
図4は画像I1からプロファイルを構成する高さを演算する方法を説明する図である。スリット光L1はY方向において、ある程度の幅を持っている。そのため、反射光L2が画像センサ13にもたらす光スポットの幅も複数画素にまたがるような幅となる。そこで、制御部2は各画素の輝度値から輝度値の変化を示す近似曲線P1を求め、近似曲線P1においてピーク値をもたらすV方向における位置を演算する。図4では一番左の列が注目列であり、注目列の輝度値の分布(近似曲線P1)が例示されている。近似曲線P1は、複数のサンプル値をカーブフィッティングするなどして求められる。検出閾値未満のサンプル値は考慮されない。このピーク値をもたらすV方向における位置がワークWの高さを示している。制御部2は、U方向における各位置(各画素列)ごとに近似曲線P1を求め、近似曲線P1からピーク値をもたらすV方向の位置(高さ)を演算する。この演算処理をU方向における各位置で実行することで、一つのプロファイルが得られる。このような演算処理はサブピクセル処理と呼ばれてもよい。
【0014】
<三角測距の原理に起因した高さの誤検出>
図5は三角測距の原理に起因した高さの誤検出を説明する図である。上述したように三角測距ではスリット光L1の光軸と反射光L2の光軸との間には所定の角度θが存在する。そのため、原理上、高さを測定不可能な形状が存在する。図5が示すようなワークWに対してスリット光L1を照射すると、反射光L2はスリット光L1に対して角度θとなる方向に進む。しかし、反射光L2が進んだ方向にワークWの一部が存在するため、反射光L2は遮光されてしまい、画像センサ13に届かない。その一方で多重反射によって発生した偽の反射光L3が画像センサ13に入射してしまうことがある。とくに、ワークWの表面に反射率の高い金属などが存在すると、このような多重反射が起きやすい。反射光L3はあたかも高さZcで反射した反射光と同じように、画像センサ13に入射する。もちろん、本来の高さはZbである。
【0015】
図6は誤った高さの測定値に基づき生成されたプロファイルPrを示している。図6が示すように、Y方向における位置Yaから位置Ybまでの区間は、三角測距の原理上、測定値が得られない死角区間である。それにもかかわらず多重反射光L3によって、死角区間においてワークWのプロファイルPrに高さZcの突起が生じてしまっている。
【0016】
図7はボールグリッドアレイ(BGA)についての三次元形状の測定結果を示している。よく知られているように、CPU(中央演算処理装置)などの端子としてBGAが採用される。多数の半田ボール70の高さは一定である必要があるため、光学式変位計100により各半田ボール70の高さが公差を満たしているどうかが判定される。しかし、図7が示すように、半田ボール70に誤検出に伴う突起71が発生することがある。実際の半田ボール70には突起71が存在していないにもかかわらず、測定結果には突起71が生じてしまう。突起71は死角区間の上方に発生する。
【0017】
<誤検出された測定結果の削除方法>
図8は正しく検出された測定値であることを判定する方法を説明する図である。ピーク検出に基づきワークWの三次元形状の測定が終了すると、Y方向における複数のサンプリング点(測定点)についての高さの測定結果が得られる。ここでは、あるサンプリング点Yiについての高さの測定結果がZaであった。そこで、座標(Yi,Za)に対してスリット光L1の投光軸と、理想的な反射光L2の軸とを延長してできる直角三角形の死角領域Deが考慮される。直角を挟む第一の辺Sd1と第二の辺Sd2とのうち第一の辺Sd1は、スリット光L1の投光軸を延長した方向に存在する線分である。第二の辺Sd2はXY平面内の線分である。斜辺Hyは、画像センサ13の受光軸(反射光L2)を延長した方向に存在する線分である。第一の辺Sd1と斜辺Hyとがなす角度はθである。第二の辺Sd2と斜辺Hyとがなす角度は90°-θである。直角三角形の頂点Apは判定対象の注目測定点である。サンプリング点Yiについての測定結果Zaが正しい測定値(真値)であれば、死角領域Deには他のサンプリング点の測定結果は存在しないはずである。図8が示す事例では死角領域Deの内部には測定結果が存在しないため、サンプリング点Yiについての測定結果Zaが正しい測定値であることがわかる。
【0018】
図9は誤検出の測定値を削除する方法を説明する図である。ここでは、あるサンプリング点Yjについての高さの測定結果がZcであった。そこで、座標(Yj,Zc)を頂点Apとする直角三角形の死角領域Deを設定すると、死角領域Deの内部に、破線で示された測定結果が存在することがわかる。したがって、あるサンプリング点Yjについての高さの測定結果Zcは誤検出であることが分かる。なお、死角領域Deの設定方法は図8を用いて説明された通りである。
【0019】
図10は誤検出された測定結果を削除した事例を示している。上述された誤った突起が消去されていることが分かる。図11はBGAについて誤検出された測定結果を削除した事例を示している。図11図7とを比較すると、図7で存在していた誤検出による突起71が、図11では消去されていることが分かる。
【0020】
<内部機能>
図12は光学式変位計100の内部機能を示している。ヘッド部1の通信部21aは、制御部2と通信するための通信回路である。駆動部22は、通信部21aを介して受信される制御部2からの指示にしたがって駆動電流を光源6に流すことで光源6を点灯させる駆動回路である。センサ制御部23は、通信部21aを介して受信される制御部2からの指示にしたがった所定の露光時間により画像センサ13に撮像を実行させる制御回路である。なお、本実施形態では、センサ制御部23は、通信部21aを介して受信される制御部2からの指示にしたがって所定のビニングを画像センサ13に実行させる。
【0021】
制御部2の通信部21bはヘッド部1と通信するための通信回路である。CPU25は記憶部30に記憶されている制御プログラムを実行することでヘッド部1を制御し、ヘッド部1から出力される受光結果に基づきワークWのプロファイルおよび三次元形状を測定する。ピーク検出部26は、画像センサ13が出力する受光結果に基づき輝度値のピークをもたらすV方向の位置(ピーク位置)を検出する。ピーク位置はワークWの高さに対応している。つまり、ピーク検出部26は、X方向における各位置ごとのワークWの高さを演算により求める。プロファイル生成部27は、ピーク検出部26により求められたX方向における各位置(xi)ごとのワークWの高さ(zi)をまとめることで、一つのプロファイルデータを生成する。つまり、一つのプロファイルデータは、複数の高さ(zi)の集合体である。プロファイル生成部27は、Y方向における異なる位置(yj)ごとにプロファイルデータを求め、求められた複数のプロファイルデータからワークWの三次元形状を示すデータを生成する。三次元形状のデータは、(xi,yj,zij)と表記されてもよい。iとjはインデックスである。このように、ワークWの三次元形状のデータは、求められた複数のプロファイルデータの集合体である。
【0022】
設定部28は、ワークWの三次元形状のデータに含まれているY方向において並んだ複数の測定点のうちで注目測定点におけるワークWの高さと、画像センサ13の受光軸と、光源6の投光方向とに基づき、注目測定点についての死角領域Deを決定する。光学式変位計100では、XZ平面と平行な断面のプロファイルが一度に測定されるが、誤った測定結果を判定する際には、YZ断面におけるプロファイルを構成する複数の測定結果が判定対象となる。ワークWからの反射光L2を画像センサ13の受光面に結像させる受光レンズ12の光軸は、画像センサ13の受光軸である。図8が示すように、死角領域Deは、注目測定点を一つの頂点Apとする直角三角形である。直角三角形における直角を挟む第一の辺Sd1と第二の辺Sd2のうち第一の辺Sd1はZ方向と平行であり、第二の辺Sd2はY方向と平行である。死角領域Deとなる直角三角形の斜辺Hyは、受光レンズ12の光軸と平行である。このように、死角領域Deは、三角測距の原理に基づく光源6の投光軸と画像センサ13の受光軸とがなす角度θに応じてY-Z断面に発生する高さの測定が不可能な領域である。
【0023】
判定部29は、注目測定点の死角領域DeにおいてプロファイルPr(測定結果)が存在するかどうかに基づき、注目測定点の測定結果が誤っているかどうかを判定する。つまり、判定部29は、注目測定点の死角領域DeにおいてプロファイルPr(測定結果)が存在するかどうかに基づき、ワークWの三次元形状のデータを構成する複数のプロファイルのうちで三次元形状の一部を誤検出値として判定する。判定部29は、注目測定点よりも前に測定される測定点におけるワークWの高さが死角領域Deに属しているかどうかに基づき、注目測定点のプロファイルが誤ったプロファイル(誤検出値)かどうかを判定してもよい。判定部29は、注目測定点よりも後に測定される測定点におけるワークWの高さが死角領域Deに属しているかどうかに基づき、注目測定点のプロファイルが誤ったプロファイル(誤検出値)かどうかを判定してもよい。ここでは、+Y方向にワークWが搬送され、+Y方向に光源6が存在し、-Y方向に画像センサ13が存在することが仮定されている。仮に、ワークWが-Y方向に搬送される場合、判定部29は、注目測定点よりも後に測定される測定点におけるワークWの高さが死角領域Deに属しているかどうかを判定する。
【0024】
削除部31は、ワークWの三次元形状のデータを構成する複数のプロファイルのうちで判定部29により誤ったプロファイルと判定されたプロファイル(測定結果)を削除する。なお、プロファイルPrの全体が削除されてもよいし、プロファイルPrのうち、誤った測定結果が削除されてもよい。このようにプロファイルを削除するとは、一つのプロファイルデータを構成する複数の測定点の測定結果のうち、少なくとも誤った測定結果を削除することをいう。
【0025】
プロファイル生成部27は、複数のプロファイルのうちで誤ったプロファイル(誤検出値)を除外してワークWの三次元形状のデータを生成または修正する。
【0026】
<受光レンズの開口数の考慮>
図13は受光レンズ12の開口数を考慮した死角領域Deの設定方法を示している。図13が示すように、受光レンズ12には開口数に応じた取込角度γが存在する。MSは受光レンズ12の主面を示している。ここで、取込角度γは、受光レンズ12の光軸と直線Laとがなす角度である。受光レンズ12の光軸と直線Lbがなす角度も、取込角度γである。図13によれば、頂点Apを含む直角三角形としては、受光レンズ12の光軸と平行な斜辺を有する死角領域De0と、直線Laを斜辺とする死角領域Deaと、直線Lbを斜辺とする死角領域Debとが図示されている。つまり、死角領域De0は第一の辺Sd1と、第二の辺Sd20と、斜辺Hy0とにより構成されている。死角領域Deaは第一の辺Sd1と、第二の辺Sd2aと、斜辺Hyaとにより構成されている。死角領域Debは第一の辺Sd1と、第二の辺Sd2bと、斜辺Hybとにより構成されている。頂点Apにおける死角領域De0の頂角はθである。頂点Apにおける死角領域Debの頂角はθ+γである。頂点Apにおける死角領域Deaの頂角はθ-γである。
【0027】
図13が示すように、死角領域Deaの面積Saが最も小さく、死角領域Debの面積Sbが最も大きい。死角領域De0の面積S0は、面積Saよりも大きく、かつ、面積Sbよりも小さい。設定部28は、死角領域Debから死角領域Deaまでの範囲内で死角領域Deを設定する。設定部28は、操作部5から入力される設定角度δ(δは-γから+γまでの範囲)に基づき、死角領域Debから死角領域Deaまでの範囲内で死角領域Deが設定されてもよい。設定角度δは受光レンズの光軸(反射光L2の中心軸)に対する角度である。つまり、設定角度δが-γに近づくほど死角領域Deの面積Sが大きくなる。設定角度δが+γに近づくほど死角領域Deの面積Sが小さくなる。ユーザは、表示部3に表示されるワークWの三次元形状を見ながら、設定角度δを調整してもよい。つまり、CPU25は、ユーザにより設定された設定角度δに応じて死角領域を設定し、注目測定点を頂点Apとする直角三角形の死角領域Deを設定し、死角領域De内に他の測定点の測定結果が存在するかどうかを判定する。CPU25は、死角領域De内に他の測定点の測定結果が存在する場合、注目測定点の測定結果を削除または除外し、三次元形状のデータを修正する。設定角度δが変更されると、CPU25は、死角領域Deの設定から、三次元形状のデータの修正までの処理を再度実行する。
【0028】
<フローチャート>
図14はCPU25が制御プログラムにしたがって実行する三次元形状の測定方法を示している。制御プログラムは記憶部30のROM領域に記憶されている。
【0029】
S1401でCPU25は操作部5を通じて死角領域Deの設定角度γを受け付けてもよい。S1401はオプションである。S1401が採用されない場合、設定角度γは0となる。
【0030】
S1402でCPU25(ピーク検出部26およびプロファイル生成部27)はヘッド部1を制御し、ワークWの三次元形状を測定する。上述されたように、CPU25は、ベルトコンベイヤ4によりワークWをY方向に搬送しながら、画像センサ13にワークWの画像を取得させる。ピーク検出部26は、画像からピーク位置を検出する。プロファイル生成部27は、複数のピーク位置のデータの集合であるプロファイルデータを生成する。さらに、プロファイル生成部27は、複数のプロファイルデータの集合である三次元形状のデータを生成する。三次元形状のデータは記憶部30のRAM領域に格納され、CPU25に利用される。なお、この時点で表示部3に表示されるワークWの三次元形状は、図7が示すように、誤った測定結果を含んでいることがある。三次元形状のデータは、たとえば、(xi、yj、zij)と表現されてもよい。ここで、zijは、X方向における位置がxiであり、Y方向における位置がyjである場合の高さを示している。iとjはインデックスである。たとえば、X方向における測定点の数がN個である場合、iは1からNまでの値をとる。Y方向における測定点の数がM個である場合、jは1からMまでの値をとる。
【0031】
S1403でCPU25(設定部28)は三次元形状のデータを構成する複数の測定点のうち注目測定点についての死角領域Deを決定する。CPU25は、(xi、yj、zij)のうちiを1に設定し、かつ、jを1からMまで一つずつ変化させることで、注目測定点の座標を順番に設定する。jを一つ増やすごとに、S1403ないしS1406が繰り返し実行される。次に、CPU25は、(xi、yj、zij)のうちiを2に設定し、かつ、jを1からMまで一つずつ変化させることで、注目測定点の座標を順番に設定する。最終的に、CPU25は、(xi、yj、zij)のうちiをNに設定し、かつ、jを1からMまで一つずつ変化させることで、注目測定点の座標を順番に設定する。これにより、XY平面に並んだN×M個の測定点のそれぞれについて高さの測定値が正しいか誤っているかが判定される。上述されたように、設定部28は、注目測定点の座標(xi、yj、zij)を頂点Apとする死角領域Deを決定する。死角領域DeはYZ平面と平行に設定される。
【0032】
S1404でCPU25(判定部29)は死角領域De内に他の測定点の座標(測定結果)が存在するかどうかを判定する。死角領域De内に他の測定点の座標(測定結果)が存在する場合、CPU25はS1405に進む。死角領域De内に他の測定点の座標(測定結果)が存在しない場合、CPU25はS1405をスキップしてS1406に進む。
【0033】
S1405でCPU25(削除部31)は注目測定点の測定結果を誤った測定結果であると判定し、注目測定点の測定結果を除外する。
【0034】
S1406でCPU25は三次元形状のデータを構成するすべての測定点を注目測定点として、死角領域についての判定が完了したかどうかを判定する。すべての測定点について判定が完了していなければ、CPU25は、S1403に進む。CPU25は次の注目測定点についてS1403ないしS1406を実行する。すべての測定点について判定が完了すると、CPU25は、S1407に進む。
【0035】
S1407でCPU25(プロファイル生成部27および削除部31)は三次元形状のデータを修正する。削除部31は、三次元形状のデータから除外された測定結果を削除し、三次元形状のデータを再構成する。たとえば、三次元形状のデータが測定結果と、隣り合った測定点の測定結果から補間演算により求められた三次元形状の座標データとを含む場合がある。この場合、プロファイル生成部27は、誤った測定結果を削除した残りの三次元形状のデータに対して補間演算を実行することで、修正された三次元形状のデータを生成してもよい。あるいは、削除部31が、三次元形状のデータから除外された測定結果を削除するだけでもよい。
【0036】
S1408でCPU25は三次元形状のデータを表示部3に表示する。図11が示すように、誤った測定結果が削除された、ワークWの三次元形状が表示部3に表示される。
【0037】
<まとめ>
[観点1]
図1が示すように、光学式変位計100は、Y方向に搬送される測定対象物のX-Z断面のプロファイルを三角測距の原理に基づき測定する光切断方式の光学式変位計の一例である。光源6はX方向に幅を有するスリット光L1を測定対象物(ワークW)に照射する光源として機能する。また、光源6はX方向に幅を有するスリット光を測定対象物に照射する光源の一例である。また、光源6は、X方向に幅を有するスリット光またはスポット光をX方向に走査して前記測定対象物に照射する投光部として機能してもよい。画像センサ13は、測定対象物からの反射光L2を受光する画像センサであって、X方向に対応するU方向とZ方向に対応するV方向とに二次元配列された複数の画素を有し、複数の画素による反射光の受光量を出力する画像センサの一例である。ピーク検出部26はU方向に並んだ複数の画素列のそれぞれについて受光量のピークとなるV方向における画素の位置をピーク位置として検出する検出手段として機能する。プロファイル生成部27は、U方向における複数の画素列のそれぞれの位置と、V方向におけるピーク位置とからX-Z断面について複数のプロファイルを生成し、Y方向における異なる位置で複数取得し、取得された複数のプロファイルに基づき測定対象物の三次元形状を測定する測定手段として機能する。判定部29は、三角測距の原理に基づく光源6の投光軸と画像センサ13の受光軸とがなす角度θに応じてY-Z断面に発生する高さの測定が不可能な死角領域Deにおいてプロファイルが存在するかどうかに基づき、測定手段により生成された三次元形状の一部を誤検出値として判定する判定手段として機能する。このように、本実施例によれば、死角領域Deという概念が導入されるため、光切断方式の光学式変位計100において、三角測距の原理に基づく誤ったプロファイル(測定結果)が判定可能となる。
【0038】
[観点2]
削除部31は、判定手段により誤検出値と判定された測定結果(プロファイルの一部分)を削除する削除手段として機能する。プロファイル生成部27は、三次元形状のうち誤検出値を除外して測定対象物の三次元形状を測定(取得)してもよい。これにより、より正確なワークWの三次元形状が得られるようになろう。つまり、ワークWの測定精度が向上するであろう。
【0039】
[観点3]
受光レンズ12は、測定対象物からの反射光L2を画像センサ13の受光面に結像させる受光レンズとして機能する。設定部28は、Y方向において並んだ複数の測定点のうちで注目測定点における測定対象物の高さと、受光レンズ12の受光軸と、光源の投光方向とに基づき、注目測定点についての死角領域Deを決定する死角領域決定手段として機能する。判定部29は、注目測定点の前後に測定される測定点における測定対象物の高さが死角領域Deに属しているかどうかに基づき、誤検出値を判定してもよい。
【0040】
[観点4]
画像センサ13の法線方向は受光レンズ12の光軸に一致していてもよい。図8図9および図13が示すように、死角領域Deは、注目測定点を一つの頂点Apとする直角三角形であってもよい。直角三角形における直角を挟む第一の辺と第二の辺のうち第一の辺はZ方向と平行である。第二の辺はY方向と平行である。直角三角形の斜辺は、受光レンズ12の光軸と平行であってもよい。図8などでは、直角三角形の斜辺は、受光レンズ12の光軸を延長して得られる直線の線分である。
【0041】
[観点5]
図13が示すように、直角三角形の斜辺は、受光レンズ12の開口数によって定まる頂角を有し、かつ、注目測定点を頂点とする二等辺三角形の二つの等辺の間に位置していてもよい。図13によれば、受光レンズ12の主面MSを表す直線と、直線Laと、直線Lbとによって二等辺三角形が形成されている。二等辺三角形の頂角の角度は2γである。また、二つの等辺は、直線Laの線分と、直線Lbの線分に相当する。設定角度δを-γから+γとの間で調整することで、直角三角形の斜辺が調整される。つまり、死角領域Deが調整される。これにより、正しい測定結果を残しつつ、不要な測定結果が除外されるように、ユーザは死角領域Deを調整できるようになろう。
【0042】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
図1
図2
図3
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図7
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図11
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図13
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